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日本におけるHPVワ クチン接種状況 問題と選択肢 A Report of the CSIS Global Health Policy Center 2014年5月 AUTHORS Rose Wilson Pauline Paterson Heidi J. Larson

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日本におけるHPVワクチン接種状況

問題と選択肢

A Report of the CSIS Global Health Policy Center

2014年5月

authors Rose WilsonPauline PatersonHeidi J. Larson

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日本における HPV ワクチン接種状況

問題と選択肢

Authors Rose Wilson

Pauline Paterson Heidi J. Larson

A Report of the CSIS Global Health Policy Center

2014 年 5 月

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About CSIS

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日本における HPV ワクチン接種状況: 問題と選択肢 Rose Wilson,Pauline Paterson,Heidi J. Larson1 2014 年 5 月

はじめに ヒトパピローマウイルス(HPV)は、ほとんどの子宮頸がんの原因である。このため、2006 年に有効な HPV ワクチ

ンの使用が承認されたときに世界の公衆衛生の重要な進歩として広く受け入れられた。日本においては、2009年 10 月に HPV ワクチン(Cervarix®)の使用が承認され、翌年、日本政府によって HPV ワクチン供給のための

助成金が支給された。そして 2013 年 4 月、日本政府は予防接種法上の定期接種として HPV ワクチンを追

加した。しかしながら 2013 年 6 月、厚生労働省は、接種後報告された有害事象について広く報道され、ワク

チンの安全性に関して国民に懸念が広まったことを受け、HPV ワクチン接種の積極的な推奨を一時中止する

と発表した。それ以来 HPV ワクチンは日本において宙に浮いた状態となっている。現在も無料で接種すること

が可能だが、接種に関し、厚生労働省による積極的な呼びかけはない。 本論文では、HPV ワクチン接種の懸念に対する日本の対応が世界ではどのように受け止められているかについ

て詳しく検証する。また、オーストラリアやフランス、インドやイギリス等、同様の課題に直面している国における例

を提示する。HPV が複数のがんの原因として広く認められているというその重要性とそれに反するワクチンの実

証された有効性を考えると、ワクチンに対する国民の信頼を維持することは、不可欠であると考える。本論文は、

国民の信頼を維持することに向けた日本政府への提案を結論として提示する。 HPV と子宮頸がん: 世界の状況に関する概説 世界健康機関(WHO)によると、「子宮頸がんは、世界において女性に 2 番目に多いがんで、女性がん患者

の死亡原因の第 3 位である。」2 毎年 27 万人 近くの女性が子宮頸がんで亡くなっており、発展途上国の女

性がその 85%を占めている 3(付録 14参照)。

子宮頸がんの原因の 70%が、ヒトパピローマウイルス 16 型と 18 型の 2 種類のヒトパピローマウイルスである。

HPV は主に皮膚と皮膚の接触や性行為で感染し、女性だけでなく男性にも感染するウィルスである。現在 16型と 18 型の予防ワクチンは、Cervarix®と Gardasil®の 2 種類である。どちらのワクチンも 6 ヶ月で 3 回接種さ

れ、接種を受ける者が性交渉を持つ前に接種すると最も効果が高い。

最初 HPV ワクチンは、非常に有効なワクチンとして発表された。2013 年 6 月にアメリカ疾病管理予防センター

(CDC)によって発表された研究により、がんの原因となる型の HPV の罹患率が 2006 年からワクチンの接種を

受けてきた十代の少女の間で 56%まで低下したことが明らかとなった。さらに、HPV ワクチンは当初世界的な子

宮頸がんの負担に対応するため使用が承認されたが、HPV が外陰がん、膣がん、陰茎がん、肛門がん、口腔

1 Rose Wilson は研究助手であり、Pauline Paterson は主任研究員であり、 Heidi Larson は、イギリスのロンドンにあるロ

ンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院(London School of Hygiene & Tropical Medicine)の感染症・疫学部

(Department of Infectious Disease Epidemiology)の上級講師。 また、本論文作成に貢献いただいた北海道大学の

Sharon Hanley 教授に謝辞を述べます。 2 World Health Organization (WHO), “Human papillomavirus (HPV) and cervical cancer,” 2013, http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs380/en/#. 3 International Agency for Research on Cancer, “GLOBOCAN 2012: Estimated Cancer Incidence, Mortality and Prevalence Worldwide in 2012,” 2012, http://globocan.iarc.fr/Pages/Map.aspx#. 4 WHO, “Human Papillomavirus (HPV) and Cervical Cancer.”

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咽頭がん、そしてがんに関連した死亡、さらには外部生殖器病変によるかなりの罹患率にも関係していることが

研究により明らかとなった。5 このため、HPV ワクチンはこれらのがんの予防と健康への脅威の軽減において重要

な役割を担うことができるワクチンである。

HPV ワクチンは、現在 128 カ国で使用が承認されており、その数は 2012 年末において使用が承認されていな

い国の数である 45 カ国の約 3 倍にあたる。6 女性に対しては 57 カ国、男性に対しては 6 カ国で HPV ワクチン

接種が推奨されており、女児に対しては 54 カ国、男児に対しては 2 カ国でワクチン接種のために国が資金を

提供している。

これは比較的新しいワクチンであることから、世界の推定予防接種率は不明であるが、世界中で 4,000 万を

超える HPV ワクチンの接種が行われている。7 オーストラリア、スコットランド、ルワンダでは、HPV ワクチンの第 1回目の接種率(2007 年に使用が承認)が 80%を上回っており、全 3 回の接種率も 70%である。8

5 大陸から 26,000 名を超える被験者が、HPV ワクチンに関する臨床試験に参加している。これには、2 つの大

規模な無作為化プラセボ対照二重盲検試験である Gardasil ワクチンの FUTURE(Females United To Unilaterally Reduce Endo/Ectocervical Disease) I および FUTURE II、PATRICIA 試験(PApilloma TRIal against Cancer In young Adults)が含まれる。PATRICIA 試験では、グレード 3 以上の子宮頚部上皮内腫瘍

(CIN3+)に対するワクチンの有効性と Cervarix ワクチンの有効性が評価された。9 これらの臨床試験により、有

効性に対する人種や地域の影響、ワクチンの安全性を調査することが可能となった。また、部分集団解析にお

いて、HPV ワクチンの有効性、免疫原性、安全性が人種や地域間で異ならないことが実証された点は重要で

ある。10

有効性が実証されているにも関わらず、未だ HPV ワクチンには課題がある 第一に、HPV ワクチンの接種方法

が比較的複雑である。小児期に接種する多くのワクチンが医師の診察時に接種される一方、このワクチンは青

年期に接種されることから、異なる接種の場が必要とされる。これは、小児が青年期まで成長するまでに、定

期的な健診を受けなくなっているという実情があるためである(ただし、これは学校をベースとするプログラムで対

応できるだろう)。また、接種のタイミングも問題となる。6 ヶ月の間に 3 回接種することにより、有効性が変わる

ため、HPV ワクチンの接種を完了するには、保護者の真剣な取り組みが要求される。さらに、このワクチンは性

感染症(STI)を予防するため、性行動について話し合うことや対応することに関して、道徳的判断および宗教

5 M. A. Kane, B. Serrano, S. de Sanjosé, and S. Wittet, “Implementation of Human Papillomavirus Immunization in the Developing World,” Vaccine 30 (2012): F192–F200. 6 WHO, “Global Immunization Data,” February 2014, http://www.who.int/immunization/monitoring_surveillance/Global_Immunization_Data.pdf?ua=1. 7 Ontario Ministry of Health and Long-Term Care, “Ontario’s HPV Vaccination Program,” 2014, http://www.health.gov.on.ca/en/ms/hpv/hpv_vaccine.aspx#skipnav. 8 E. Crowe et al., “Effectiveness of Quadrivalent Human Papillomavirus Vaccine for the Prevention of Cervical Abnormalities: Case-control Study Nested within a Population Based Screening Programme in Australia,” BMJ 348 (March 2014): g1458, http://dx.doi.org/10.1136/bmj.g1458; U.S. Centers for Disease Control and Prevention, “New Study Shows HPV Vaccine Helping Lower HPV Infection Rates in Teen Girls,” 2013, http://www.cdc.gov/media/releases/2013/p0619-hpv-vaccinations.html; ISD Scotland, “HPV Immunisation Uptake Statistics,” 2013, https://isdscotland.scot.nhs.uk/Health-Topics/Child-Health/Publications/2013-09-24/HPV-Report-September-2013.pdf?58488100768. 9 M. Lehtinen et al., “Overall Efficacy of HPV-16/18 AS04-Adjuvanted Vaccine against Grade 3 or Greater Cervical Intraepithelial Neoplasia: 4-year end-of-study analysis of the randomised, double-blind PATRICIA trial,” Lancet Oncology 13 (2012): 89–99. 10 H. Yoshikawa et al., “Efficacy of Quadrivalent Human Papillomavirus (types 6, 11, 16 and 18) Vaccine (GARDASIL) in Japanese Women Aged 18–26 years,” Cancer Science 104 (2013).

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上のタブーや文化的タブーを提議する。このため一部の医療従事者は、11婚前の性交渉を容認しているように

思わせることにより、十代の男女に「誤ったメッセージを送っている」のではないかと疑問視しており、ワクチン接種

に積極的ではない。しかしながら、研究によると、HPV ワクチンの接種を受けた十代の男女が、同世代の男女

よりも必ずしも性交渉に積極的ではないことが確認されている。12

日本における HPV ワクチン接種状況の概要

日本において子宮頸がんは女性のがん罹患率 5 番目に位置する(図 1 参照)が、その一方で、子宮頸がんを

検査するためのパップテスト(細胞診)の検査率は、イギリスの 78.3%に比べ 25.4%13と低い。14

図 1. 日本女性の推定年齢調整罹患率および死亡率 15

11 H. J. Larson, “The uptake of Human Papillomavirus Vaccination: The Power of Beliefs,” International Journal of Epidemiology 42 (2013): 908–10. 12 N. C. Liddon, J. S. Leichliter, and L. E. Markowitz, “Human Papillomavirus Vaccine and Sexual Behavior among Adolescent and Young Women,” American Journal of Preventive Medicine 42 (2012): 44–52. 13 T. Hoshino et al., “Does Removal of Out-of-pocket Costs for Cervical and Breast Cancer Screening Work? A Quasi-experimental Study to Evaluate the Impact on Attendance, Attendance Inequality and Average Cost per Uptake of a Japanese Government Intervention,” International Journal of Cancer 133 (2013): 972–83. 14 HSCIC, “Cervical Screening Programme England 2012–2013,” 2013, http://www.hscic.gov.uk/searchcatalogue?productid=12601&q=title%3a+cervical+screening+programme&sort=Relevance&size=10&page=1#top. 15 International Agency for Research on Cancer, “GLOBOCAN 2012: Estimated Cancer Incidence, Mortality and Prevalence Worldwide in 2012,” http://globocan.iarc.fr/Pages/Map.aspx#.

結腸直腸 胃

子宮頚部 子宮体部

卵巣

膵臓

甲状腺

非ホジキンリンパ腫

肝臓

胆嚢

白血病

腎臓 脳、神経系

罹患率

死亡率

年齢調整罹患率/死亡率(人

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また、1990 年と 2000 年の間に日本において口腔咽頭がんが劇的に増加した(付録 2 参照)16。過去 10 年

間は、毎年平均 5,955 の性器疣贅の症例が報告されており、女性よりも男性の症例数が常に多く報告され

ていた。性器疣贅の症例の大多数は、20 歳から 40 歳の男性で報告されているが、あらゆる年齢の男性で報

告されている。17

日本における子宮頸がんの約 67.1%が、HPV16 型および 18 型と関係があると考えられる。日本における

HPV16 型および 18 型の感染有病率は、アメリカおよびヨーロッパと同じくらい高い。ただし、日本において 12 歳

の女児全員がワクチン接種を受けていたら、子宮頸がんの症 例数は 73%まで軽減できたと言われている。18

HPV16 型と 18 型の予防のためのワクチンである Cervarix® および

Gardasil®ワクチンは、それぞれ 2009 年と 2011 年に日本で使用

が承認された。2009 年より、杉並区の地方自治体は、Cervarix®の資金を一部負担している。2010 年 4 月までに、1,747 ある地

方自治体のうち 32 の自治体が HPV ワクチンに資金を提供するこ

とを決定した。19 2010 年 10 月、中央政府および地方自治体は、

一時的な資金調達プログラムを立ち上げ、2013 年 4 月には、国

の定期接種に HPV ワクチンが含まれ、無料で接種することが可

能となった。 朝日新聞によれば、日本において 2013 年 6 月までに推定 829 万人が HPV ワクチンの接種を受けたとされて

いる。20 WHO により HPV ワクチンが安全であると発表した翌日の 2013 年 6 月 14 日 21、日本の厚生労働省は、12歳から 16 歳までの少女に対する HPV ワクチンの無料接種を引き続き行う一方で、積極的に接種を推奨、呼

びかけるべきではないという内容の通知を全国に発表した。厚生労働省専門部会の桃井真里子座長は、

「(副作用が)どのくらいの頻度で発生しているのかを正確に把握するため早急に情報を収集する必要があ

る」22と述べている。同日、Vaccine Adverse Reactions Review Committee(ワクチンによる有害事象の審査委

員会:VARRC) によって開かれた大規模な記者会見では、ワクチンによる副作用の影響を受け、けいれん、発

作、重度の頭痛、部分まひの症状が見られたとされる女児について取り上げられ、会見は 1 時間にもおよん

だ。23

16 D. Forman et al., “Global Burden of Human Papillomavirus and Related Diseases” Vaccine 30 (2012): F12–23. 17 Yoshikawa H, Ebihara K, Tanaka Y and Noda K (2012) Efficacy of quadrivalent human papillomavirus (types 6, 11, 16 and 18) vaccine (GARDASIL) in Japanese women aged 18–26 years. Cancer Science 104 (2012): 465-72 . 18 R. Konno et al., “Cervical Cancer Working Group Report,” Japanese Journal of Clinical Oncology 40 (2010): i44–i50. 19 T. Uehara and K. Asami, “Vaccine financing in local governments,” Asahi Shimbun (Kansai regional edition), March 25, 2010. 20 Editorial, “HPV Vaccine Raises Questions,” Japan Times, June 14, 2013, http://www.japantimes.co.jp/opinion/2013/06/14/editorials/hpv-vaccine-raises-questions/. 21 WHO, “Update on human papillomavirus vaccines,” June 2013, http://www.who.int/vaccine_safety/committee/topics/hpv/Jun_2013/en/index.html. 22 “Cervix Vaccine Issues Trigger Health Notice,” Japan Times, June 15, 2013, http://www.japantimes.co.jp/news/2013/06/15/national/cervix-vaccine-issues-trigger-health-notice/#.Uue5qdLFIdU. 23 “Victims Hit Cervical Cancer Vaccines,” Japan Times, August 24, 2013, http://www.japantimes.co.jp/news/2013/08/24/national/victims-hit-cervical-cancer-vaccines/#.Uue9kNLFIdU.

ヒトパピローマウイルスが複数のがん

の原因として広く認められているとい

うその重要性を考えると、この実証さ

れたワクチンに対する国民の信頼を

失わないことが必要不可欠である。

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推奨を一時中止する中で、厚生労働省は、報告された症例について調査を進める予定であるが、2014 年 4月の時点では、何の結論にもいたっていないとしている。その調査過程に関して政府が全くと言っていいほど沈

黙を貫いているため、政府以外の機関が公開されている情報の空白を埋めている。 ワクチン接種に反対する団体、ならびに子宮頸がんワクチン接種の「被害者」の保護者の団体は、勢力を得て

おり、日本国内だけでなく、世界的にも世間の注目を集めている。これらの団体のひとつは、Cervarix®接種後、

娘が歩行能力を失い、現在車椅子生活を余儀なくされていると主張する保護者が運営する団体である。24 別の女児の保護者は、複合性局所疼痛症候群(CRPS)が疑われている娘に対する補償を要求しようと試み

ている。このワクチンの接種は、日本の定期接種プログラムには入っていなかったため、日本政府はこの要求を

拒否した。また、杉並区の地方自治体も最初は家族に対し補償を提供することを拒否した。しかし、2013 年

4 月にこの症例が杉並区議会において報告された後、自治体は被害者団体により非難され、マスコミによる激

しい取材を受けたため、杉並区は補償を提供することに合意することとなった(ただし、まだ支払いは行われてい

ない)。25 国民はこれを罪を認めたと見なし、この問題が現在のワクチンに反対する感情の転換点となった。 日本のソーシャルネットワーク経由でも HPV ワクチンに関する懸念の声が広がっている。女性政治家の池田利

恵議員は、被害者を支援する団体である全国子宮頸癌ワクチン被害者連絡会の事務局長を務めている。

池田議員は、ツイッターのアカウントやフェイスブックのページを利用して、被害者団体の懸念に対し理解を求め

ている。26 日本にはメディアを監視する機関がなく、名誉棄損に関する法律が比較的緩い。これはつまり、新

聞、テレビのニュース番組、ソーシャルネットワーク、そして被害者支援団体が、HPV ワクチン接種後に有害事

象に苦しんでいると主張する女児に関する、信憑性を確認できない話や動画を公開できることを意味する。27 厚生労働省は、ワクチンの安全性に関するセクションを含む HPV ワクチンについての Q&A を同省のウェブサイト

に追加し(最終更新日は 2013 年 6 月 21 日)、28医療従事者に対しガイダンスを発行した。29 しかしながら、

ワクチンの安全性に関してより肯定的な認識を生み出すためのこれらの称賛に値する努力にも関わらず、政府

による決定が下されないことは、疑念と不信感の広がりを助長するものである。

24 Editorial, “HPV Vaccine Raises Questions.” 25 子宮頸がんワクチン重い副反応 中学生、長期通学不能, Apital Asahi, March 8, 2013, http://apital.asahi.com/article/news/2013030800002.html. 26 Hino Councillor Rie Ikeda Official Website, 日野市議会議員 池田利恵 公式ホームページ、2014, http://ikedatoshie.com/。 HPV ワクチン接種の推奨の中止にまつわる問題に関与する他の利害関係者として、厚生労

働省の副反応検討部会および日本の子宮頸がん征圧をめざす専門家会議が挙げられる。子宮頸がん征圧をめざす専

門家会議は、日本においてスクリーニングとワクチン接種を通して子宮頸がんを予防するための社会的活動を促進する指

導的な立場の組織である。 この組織は、提案を計画しており、厚生労働省をはじめ地方自治体やマスコミに対し、情報

を提供している。 この組織は 2009 年日本において HPV ワクチンが承認されたことに貢献したが、製薬業界とつながりがあ

ると言われていることから、一部の国民からは信用されていない。 また、日本の文部科学省および国立感染症研究所も

利害関係者である。 27 A. Gamble and T. Watanabe, A Public Betrayed: An Inside Look at Japanese Media Atrocities and Their Warnings to the West (Washington, DC: Regnery, 2004). 28 厚生労働省、一般の方向けの情報、2013 年、 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/qa_hpv.html. 29 厚生労働省、子宮頸がん予防ワクチンの接種を受ける皆さまへ、2013 年、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/pdf/leaflet_h25_6_01.pdf.

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日本における HPV ワクチンに関連する主な出来事(2009 年~2013 年)

不信感をもたらす要因: 日本の予防接種プログラムの過去の歴史 ノバルティス社によるアルツハイマー病に関する研究データの偽造など日本におけるこれまでの経験が、製薬業

界への不信感をもたらす要因となっている。30 また、日本には、予防接種後の有害事象に関連するワクチンの

30 Agence France Presse, “Novartis under fire over false Japanese drug data,” The Local (Stockholm), July 12, 2013, http://www.thelocal.ch/20130712/novartis-under-fire-over-false-drug-data; Agence France Presse, “Pharmaceutical Firms Accused of Falsifying Data in Major Alzheimer's Study,” Business Insider, January 10, 2014, http://www.businessinsider.com/pharmaceutical-firms-accused-of-falsifying-data-in-major-alzheimers-study-2014-1.

2009 年 10 月

日本において Cervarix®の使用

が承認される。 (Gardasil®は、2011 年 7 月に

使用が承認された)。

2010 年 3 月

HPV ワクチン接種後、女児 3人が CRPS を訴え、9 人が慢性

的疼痛を訴える。

2010 年 4 月

1,747 ある地方自治体のうち、

32 の自治体が HPV ワクチンの

ために資金を提供。

2010 年 10 月

中央政府および全地方自治

体が一時的な資金調達プログ

ラムを開始。

2013 年 3 月 8 日

朝日新聞が、HPV ワクチンの接

種をうけた後、女児 50 人が

CRPS を患い、100 人が学校を

欠席していると報道。

2013 年 3 月 10 日

テレビのニュースで有害事象が報

告される。

2013 年 3 月 25 日

「被害者」団体による記者会見

で、歩行障害と発作に苦しむ

女児の動画が上映される。この

動画は YouTube でも視聴でき

る。

2013 年 4 月 1 日

HPV ワクチンが、国の定期接種

に含まれる。接種は任意で、接

種を希望する者には無料で提

供される。

2013 年 4 月 13 日

杉並区の地方自治体が、翌年

度の予算を発表。予算には、

HPV ワクチン接種後、CRPS が

疑われた女児の保護者による訴

えに対する補償も含まれた。症

例は区議会において報告され

た。

2013 年 5 月 19 日 被害者団体による別の記者会

見。

2013 年 6 月 13 日

WHO のワクチンの安全性に関

する諮問委員会が HPV ワクチ

ンは安全であるという報告を発

表。日本のメディアでは報告さ

れなかった。

2013 年 6 月 14 日

Vaccine Adverse Reactions Review Committee (ワクチンに

よる有害事象の審査委員会:

VARRC)による第 2 回合同会

議。厚生労働省は、HPV ワクチ

ンの推奨を一時中止することを

決定。

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信頼性の問題の歴史がある。31 日本政府は、過去にワクチンに関する 2 つの問題、すなわち麻疹、流行性

耳下腺炎、風疹の 3 つの感染症を予防する 3 種混合ワクチン(MMR ワクチン)と、プレベナーとアクトヒブ

(ActHIB)に、それぞれ非常に異なる方法で対応している。

• 日本で製造された MMR ワクチンは、1989 年に接種が開始され、ワクチンの成分に関連する無菌性

髄膜炎の高い発生率を受け 1993 年に接種が中止された。32 それ以降、麻疹、流行性耳下腺炎、

風疹を予防するワクチンは、それぞれ個別に接種されるようになった。1994 年、日本の予防接種法に

大幅な変更が加えられ、すべての小児の予防接種は義務ではなくなった。ワクチンの接種を受けること

は国民に対して「強く推奨」されたが、最終的には個人の判断に一任されることとなった。33 2005 年ま

でに、麻疹(90~100%)と風疹(50~60%)に比べると、日本では流行性耳下腺炎予防ワクチンの接

種率が 30%へ低下した。34 2006 年、麻疹風疹混合ワクチンである MR ワクチンの接種が日本の定

期接種に導入され、日本政府により補助金が提供されるようになったが、成人男性は、風疹ワクチン

接種の対象から除外された。2011 年、MR ワクチンの摂取率は、1 歳時において 95.3%、17~18 際

において 81.4%と高い接種率となった。しかしながら、10 年が経過した現在も日本の定期接種に流行

性耳下腺炎予防ワクチンを再導入するかについては未解決のままである。また、2013 年に日本で風

疹が流行し、2013 年 1 月 1 日から 5 月 1 日の間に 5,442 症例が報告され、そのうちの多くが 20 歳

を超える男性であった。35 • また、2011 年 3 月、厚生労働省は、ワクチン接種後の 4 人の乳児の死亡を受けて原因がワクチンで

はないかという懸念を受け、髄膜炎と肺炎を予防するファイザー社の プレベナーおよび ヘモフィルス-インフルエンザ b 型菌を予防するサノフィ社の アクトヒブ(ActHIB)の使用を中止した。これらのワクチンが直

接的な死因ではないことが証明され、数週間後にこれらのワクチンは再導入された。36 日本における HPV に関する問題の国際的認識

WHO は、HPV ワクチン接種の推奨を一時中止するという日本政府の決定に対し、WHO のワクチンの安全性

に関する諮問委員会(GACVS)の報告書(2013 年 6 月)でヒトパピローマウイ

ルスワクチンに関する最新情報を提供することで対応した。同報告書では、

次のように述べられている。

同様の警告が他国から一切なく世界的に使用が増加していることを

考えると、HPV ワクチン [の副作用] が疑われる理由は一切ない。各

国の国民の声を認識した上で、当委員会は、各症例に関する詳細

31 H. J. Larson and D. L. Heymann, “Public Health Response to Influenza A (H1N1) as an Opportunity to Build Public Trust,” Journal of the American Medical Association 303 (2010): 271–72. 32 M. Kimura et al., “Adverse Events Associated with MMR Vaccines in Japan,” Acta paediatrica japonica 38 (1996): 201–11. 33 G. Harumi and T. Hiroshi, “Why Is Measles Still Endemic in Japan?” The Lancet 364 (2004): 328–29. 34 H. Honda, Y. Shimizu, and M. Rutter, “No effect of MMR withdrawal on the incidence of autism: a total population study,” Journal of Child Psychology and Psychiatry 46 (2005): 572–79. 35 Centers for Disease Control and Prevention, “National and State Vaccination Coverage among Adolescents Aged 13–17 Years—United States, 2012,” Morbidity and Mortality Weekly Report 62, no. 34 (August 30, 2013): 685–93, http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6234a1.htm#Fig1. 36 K. Matsuyama, “Japan Drug Panel Finds No Link between Child Deaths, Pfizer, Sanofi Shots,” Bloomberg, March 8, 2011, http://www.bloomberg.com/news/2011-03-08/japan-drug-panel-finds-no-link-between-child-deaths-vaccination.html.

HPV ワクチン接種の推奨を一時

中止した日本の対応に関する海

外の報道は、主にワクチン接種に

反対する団体から称賛された

が、世界の科学界を困惑させ

た。

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な記録資料の作成および、最も適切な治療指針を作成するため、医師による確定診断のための徹

底的な調査を要請する。37

インターネットとソーシャルメディアのおかげで、日本政府が HPV ワクチン接種を積極的に推奨することを中止し

たというニュースは、海外の人にまで伝わることとなったが、多くの場合、事実が曲解されていたり、曖昧であるも

のも含まれている。例えば、アメリカベースの Examiner.com に投稿された記事をひとつ例として挙げる。この記

事では、日本政府が「HPV ワクチンの投与を中止した」と報じられており、ケニヤのニュースサイトである Lifestyleをはじめ 38Catholic Philippines39や New Illuminati のフェイスブックページでこの記事が再投稿された。40 ワクチ

ン「投与」ではなく、ワクチン接種の「積極的な推奨」を一時中止するという決定の曖昧さにより、様々な解釈や

誤解が生まれることとなった。 アメリカでは、Age of Autism 等ワクチン接種に反対するいくつかのウェブサイトにおいて、脳障害を含むワクチン

接種後の有害事象の数と種類が詳細に記述された日本人内科医かつ心臓医の佐藤佐太郎医師によって

書かれた報告書が引用されている。41 また、記事には読者に署名を求めるワクチン撤廃を要請する厚生労働

大臣田村憲久大臣宛ての請願書についても記載されている。著者は、「いわゆる発がん性のある HPV に「感

染」することにより、実際には存在しないリスクに冒される」42という不正確な記述をしている。また、歩行障害と

発作に苦しむ女児の動画が上映された 2013 年の日本の記者会見へのリンクが貼られている。43 PR ウェブサイ

トの記事には、「他国の厚生労働省や保健省が懸念を示しているのに、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)と食品医薬品局(FDA)がなぜそこまで Gardasil を強く推奨するのか分からない」と記述されている。44 本論文の著者らによって分析されたワクチン接種に反対する多くのサイトには、製薬メーカーと政府は腐敗して

おり、日本の厚生労働省は、HPV ワクチンを信用していないと主張する読者からのワクチン反対のコメントの長

いリストが掲載されている。45

37 WHO, “Global Advisory Committee on Vaccine Safety, Report of meeting held 12–13 June 2013,” http://www.who.int/vaccine_safety/committee/reports/Jun_2013/en/. 38 K. Kaniaru, “Japan stops cancer vaccines as World Health Organization put in sharp focus,” The Standard (Nairobi), July 14, 2013, http://www.standardmedia.co.ke/lifestyle/article/2000088338/japan-stops-cancer-vaccines-as-who-put-in-sharp-focus. 39 Catholic Philippines, “World Health Organization Accused of Promoting Vaccines to Benefit Manufacturers,” Facebook, July 17, 2013, https://www.facebook.com/catholicph/posts/177436002428819. 40 New Illuminati, “Japan stops cancer vaccines as World Health Organization put in Sharp Focus: Gardasil & Cevarix Too Dangerous and Ineffective,” Facebook, July 16, 2013, https://www.facebook.com/the.new.illuminati/posts/10151799297344560; J. Stokowski-Bisanti, “World Health Organization Accused of Promoting Vaccines to Benefit Manufacturers,” Examiner.com, July 14, 2013, http://www.examiner.com/article/world-health-organization-accused-of-promoting-vaccines-to-benefit-manufacturers#sthash.WXd8O43w.gbpl. 41 “SaneVax Reports on Japan's Struggle with HPV Vaccination Injuries,” Age of Autism, August 26, 2013, http://www.ageofautism.com/2013/08/sanevax-reports-on-japans-struggle-with-hpv-vaccination-injuries.html. 42 “HPV Vaccines Exposed: Subterfuge in a Syringe?,” Dprogram.net, November 9, 2013, http://dprogram.net/2013/11/09/hpv-vaccines-exposed-subterfuge-in-a-syringe/. 43 Mahorobajapan, 子宮頸がんワクチン接種被害者映像 副反応のリスク, YouTube, April 9, 2013, http://www.youtube.com/watch?v=GRy6SYtCY1M&list=PLVamxbwCqPUi5TqaxPKbV15hciWNMBiYj. 44 “HPV Vaccine: Israel Health Ministry Considers Cancelling Vaccination Due to Side Effects,” Prweb.com, September 4, 2013, http://www.prweb.com/releases/2013/9/prweb11084444.htm. 45 “SaneVax Reports on Japan's Struggle with HPV Vaccination Injuries”; N. Erickson, “HPV Vaccines: Japan Leads the Way,” Robert Scott Bell Show, June 24, 2013, http://www.robertscottbell.com/government/hpv-vaccines-japan-leads-the-way-by-norma-erickson/.

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要するに、HPV ワクチン接種を推奨することを中止した日本の対応は、主にワクチンに反対する団体から称賛

され、その一方で世界の科学界を困惑させていると言える。46 ワクチンに反対する感情は主要なメディアでは広

く取り上げられてはいないが、先に述べたようなソーシャルネットワーク経由で拡散し、反対の感情が強まる結果

となっている。

HPV ワクチンに関する国別のケーススタディ HPV ワクチン接種後に報告された有害事象に直面している国は日本だけではない。インドやイギリス、フランス、

オーストラリア等、多くの国で HPV ワクチンにまつわる懸念が提起されている(表 2 参照)。あらゆるワクチン医

薬品と同様に、HPV ワクチンにも有害事象のリスクが伴うが、通常それらは深刻ではない。報告されているワク

チン投与後有害事象(AEFI)の多くが、最終的に因果関係がないと認められている。それにも関わらず、報告さ

れているワクチン投与後有害事象(AEFI)が重篤か否か、真実か感覚的なものかに関わらず、ワクチンに対する

国民の信用を維持し、再度信用を築くためには、迅速かつ適切な対応が不可欠である。 インドにおける最初の懸念は、HPV ワクチン接種を実際に行うプロジェクトの目標母集団、そして HPV ワクチン

の妥当性、安全性、費用対効果、さらに製薬業界に対する不信感に関するものであった。47 権利擁護団体

が無視されたことで、擁護団体の取り組みが激化し、2010 年 4 月 7 日、世界保健デーに最高潮に達した。

この日、68 の民間の医療機関と医師により HPV ワクチンに関する懸念を取り上げた記者会見が行われ、新た

に「Memorandum to the Health Minister on World Health Day Opposing HPV Vaccinations」(世界保健デーに HPV ワクチン反対に関する保健省への覚書)48が発行された。この覚書は、インターネットで公開されてお

り、一般の人々も閲覧できる。4 月の覚書は、HPV ワクチン接種を実際に行うプロジェクトの即時中止、さらに、

報告されている副作用や死因にワクチンが関与しているとされる研究に参加した 4 人の女児の死亡に対する

調査と補償を要請するものであった。49 これを受け政府は、死因に一切ワクチンが関与していないにも関わらず、

HPV ワクチン接種を実際に行うプロジェクトを即時中止した。これは、不十分な情報に基づく噂が拡散すること

を防ぐために、ワクチン接種を選択するための情報を国民に提供することが不可欠であることを示している。 イギリスにおいては、HPV ワクチンの接種を受けた後幼い女児が死亡したという報告を受け、政府は 24 時間

以内に調査を行い、女児の死因はワクチンではないことを明確にすることで対応を行った。マスコミによるマイナ

スな報道が広がることや国民の信頼の失速を阻止するためには、マスコミや国民に迅速に対応することが不可

欠である。50

46 S. Gilmour et al., “HPV Vaccination Programme in Japan,” The Lancet 382 (2013): 768; N. Erikson, “Japan and the HPV Vaccine Controversy,” Stranger in a Strange Land (blog), April 10, 2014, http://mnhopkins.blogspot.co.uk/2014/04/japan-and-hpv-vaccine-controversy-by.html?m=1. 47 H. J. Larson, P. Brocard, and G. Garnett, “The India HPV-Vaccine Suspension,” The Lancet 376 (2010): 572–73. 48 S. Azad, “Memorandum to the Health Minister on World Health Day Opposing HPV Vaccinations,” April 7, 2010, http://samawomenshealth.wordpress.com/2010/04/08/memorandum-to-the-health-minister-on-world-health-day-opposing-hpv-vaccinations/; L. C. Botha, “Breaking News: Organizations in India successfully halt HPV vaccination program,” Holy Hormones Journal, April 7, 2010, http://holyhormones.com/sister_song/breaking-news-organizations-in-india-successfully-halt-hpv-vaccination-program/. 49 R. Sankaranarayanan, “HPV Vaccination: The Promise & Problems,” Indian Journal of Medical Research 130 (2009): 322. 50 WHO, “Case Study C: How a Potential HPV Vaccination Crisis Was Averted,” http://www.vaccine-safety-training.org/c-serious-aefi-day-1.html.

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フランスでは、国の定期接種の下、ワクチンの投与とワクチン接種の推奨が継続されているが、AEFI を訴える若

い女性に対して相反する報告書が発表された。51 オーストラリアでは、メルボルンの学校の生徒である数十人の女児に有害事象が見られた後、HPV ワクチンに関

する肯定的でかつ明白な情報が提供された。2007 年 4 月、州政府は、新たなサービスである SAEFVIC(Surveillance of Adverse Events Following Vaccination in the Community)に資金を提供した。52 HPV ワク

チンの接種は中止されなかった。 日本、インド、フランス、オーストラリアにおける HPV ワクチンに対する懸念 国 使用が承

認された

日付

国の定期

接種に加

えられた

日付

ワクチンに対する懸念のきっかけおよび

日付 政府の対応(タイミングおよび内容)

日本

2009 年 10 月

2013 年 4 月

2013 年 4 月: HPV ワクチンによる「副

作用」の報告を受け、杉並区の地方

自治体は、影響を受けたとされる女児

の家族に対し補償の提供を決定し

た。

2013 年 6 月 14 日: 政府が HPV ワク

チン接種の推奨を中止した。

イン

2008 年 7 月

加えられ

ていない 2009 年 10 月: HPV ワクチンを実際

に行うプロジェクトに対する国民からの

非難、ワクチンの安全性に関する懸

念、費用、および倫理的な問題。 2010 年 4 月: 以前の懸念事項およ

び一時的に HPV ワクチン接種と関連

があったとされた 4 人の死亡を取り上

げた記者会見および保健省への覚

書。公益訴訟が開始された。

2010 年 4 月: 政府は HPV ワクチンを

実際に行うプロジェクトを中止した。

イギ

リス 2006 年 6 月

2008 年 9 月

2009 年 9 月 28 日: HPV ワクチンの

1 回目の投与直後、コベントリの幼い

女児が衰弱し、死亡した。

2009 年 9 月 28 日夜: イギリスの保健

省は、迅速に対応し、マスコミと国民に

対して死因は HPV ワクチンではなかった

ことを伝えた。ワクチンは一切中止され

ていない。

51 L. Clavreul and E. Cazi, “Des Experts font le lien entre Gardasil et Sclérose en Plaques,” Le Monde (Paris), November 24, 2013, http://www.lemonde.fr/sante/article/2013/11/24/premiere-plainte-contre-le-vaccin-anticancer-gardasil_3519409_1651302.html; “Santé: Le Vaccine Gardasil Bientôt Visé par Trios Nouvelle Plaintes,” La Parisienne (Paris), November 24, 2013, http://www.leparisien.fr/laparisienne/sante/sante-le-gardasil-au-coeur-d-une-plainte-24-11-2013-3344849.php; Sanofi Pasteur MSD, “Sanofi Pasteur MSD Rejects Opinion of Regional French Compensation Group in Gardasil Vaccination Claim,” media statement, November 25, 2013, https://www.spmsd.co.uk/upload/public/Files/10/Final%20SPMSD%20Media%20Statement_Gardasil%20FR.pdf. 52 J. P. Buttery et al., “Mass Psychogenic Response to Human Papillomavirus Vaccination,” Medical Journal of Australia 189 (2008): 261–62.

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フラ

ンス 2007 年 7 月

2007 年 10 月

2010 年: HPV ワクチン接種の 2 か月

後、10 代の少女に眩暈、嘔吐、一時

的な失明、一時的な歩行障害、顔

面まひが認められた。2013 年、この少

女は、サノフィパスツール MSD 社およ

びフランスの医薬品規制機関

(ANSM)を刑事告発し、自身の AEFIについて説明を行うための記者会見を

開いた。

国家委員会の委員長は、Gardasil と重篤な自己免疫状態を関連付ける証

拠は一切ないと言明したが、地方医療事故損害賠償・調停委員会(Commission régionale de conciliation et d'indemnisation des accidents médicaux;CRCI)は、病変と

ワクチン接種の関連を認めている。サノ

フィパスツール社は、HPV ワクチンの安

全性に関するデータを補強するプレスリ

リースを発行し、CRCI の声明に異議を

申し立てた。ワクチンは一切中止されて

いない。 オー

スト

ラリ

2007 年 4 月

2007 年 4 月

2007 年 5 月: メルボルンの女子校

で、720 人の女児が HPV ワクチンの接

種を受けた。26 人の女児に、眩暈、

失神、神経学的所見が認められた。う

ち 4 人が病院に搬送された。

当時の厚生大臣とビクトリア州知事の

ラジオ取材が行われた。州政府は、

2007年4月、新たなサービスである SAEFVIC(Surveillance of Adverse Events Following Vaccination in the Community)に資金を提供した。ワクチ

ンは一切中止されていない。 噂が与えるゆっくりと浸透する悪影響

この問題を分析する上で、噂と噂が国民の信用に与えるゆっくりと浸透する悪影響を理解することが重要であ

る。噂の心理に関する専門家によると、噂は人が世界を理解することを促し不安を起こす情報やイベントに関

する最初の説明に提供原とされている。53 疑念や不安が長期的となる状況が継続するほど、噂は拡散しやす

くなり、抑制することが困難となる。

アメリカ疾病管理予防センター(CDC)で、政府のリスク伝達を専門とするバーバラ・レイノルズ医師は、公衆衛

生に関する伝達における致命的な誤りとなる可能性があるとして、複数の専門家の意見が混同したメッセージ、

遅延して発表された情報、温情主義的な態度、リアルタイムで噂や作り話に対応しないこと、そして公権力の

争いや混乱の 5 つを指摘した。これらの誤りを防ぐため、CDC は政府に対し、次のことを推奨している。

1. 誰よりも早く、一番に情報を提供すること。情報が不足している場合は、不足している情報を得るた

めにこれまでに行ったことを伝えること。事実情報の公表を控えないこと。公表を控えた場合、空虚感

が残り、本質的に国民の事を一番に考えていない人々によってその空虚感が満たされることになる。 2. 情報は正確であること。正確であることは、迅速に対応することと同じくらい重要である。これらの側

面は、時として緊迫した状況となる。政府は速やかに事実情報を発表し、追加情報を得るために何を

行ったかを伝える必要がある。国民には、何か起こってから 1 ヶ月後に、完全な情報を提供するより、

信用できる情報を順次提供したほうが良い。

53 N. DiFonzo and P. Bordia, Rumor Psychology: Social and Organizational Approaches (Washington, DC: American Psychological Association, 2006).

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3. 信頼できる政府でいること。政府は、恥を恐れたり、国民が「パニック」に陥る可能性(確率は低い)

を回避するために情報の公開を控えるべきではない。不信感は、何も知らないことよりも悪い状況であ

る。厳しい現実以上に噂の被害は大きい。 4. 共感を示すこと。政府関係者が、言葉で国民の感情を理解していることを示すことによって信用が

築かれる。政府関係者は、「なぜこれが懸念されているか理解している」などと言うことができる。その後、

国民の懸念に応える情報を伝える必要がある。 5. 行動を起こすよう働きかける。国民に対し、例えば「医師の診断を受けること」、「これについての情

報はウェブサイトで確認できる」といった国民がとることのできる前向きな行動に関する指示を提供する

ことによって国民はより自分でコントロールでき、権利を与えられていると感じることができる。 6. 敬意を示すこと。特に、政府は絶対に国民を「守る」ために国民に対して情報の公表を控えたり、

懸念を拒絶することによって温情主義的になってはならない。

結論および推奨事項

日本では、HPV ワクチン接種の推奨を中止したこと、数名の女児に対して地方自治体が補償を提供すること

に同意したこと、そして、ソーシャルメディアによって拡散された噂が、国民がワクチンに対する不信感を抱くことに

つながっている。例え政府が再度積極的に推奨を開始するとしても、恐怖と不信感が拡散した環境において

HPV ワクチン接種プログラムの成功は妨げられるだろう。これは、日本においてパップテスト(細胞診)の検査率

が低く、子宮頸がんおよび口腔咽頭がんの罹患率が高いため、特に憂慮すべき状態である。日本政府は、メッ

セージをコントロールする力を再び取り戻すために早急に行動をとる必要がある。さもなければ、今後、女児や

女性の命を救うことにつながる歴史的に重要な機会を失うことになる。 第一に、日本政府は、現在進行中のプロセス(すなわち、特に日本人に対するワクチンの安全性に関する研

究)に関する明確な情報を提供するために、隠し事なく、逐一、マスコミ、主な利害関係者、そして国民と向き

合う必要がある。 今後、国民の信用と信頼を取り戻すための手段には、以下が含まれる。

• 国民に対して明確かつ簡潔な判断を提供し、ワクチンの安全性に関する統計などの証拠で裏付けら

れた HPV ワクチンの積極的な推奨を再開し、他の国々でワクチンが問題なく導入され、ワクチン接種

率が高いことを強調する。スイスを拠点とする Brighton Collaboration やアメリカ、イギリス、インドネシ

アに拠点を置く予防接種に関する戦略諮問委員会(Strategic Advisory Group of Experts;SAGE)等の機関は、膨大なデータベースと安全に関する研究基準に基づき、公共の保健機関がワクチンに関す

る決定を下すための援助を行うことができる。(付録 3「HPV ワクチンに関する情報が掲載された各地

の推奨されるウェブサイトへのリンク」を参照。) • 医師、看護師、その他医療従事者に対し、患者さんの懸念や質問に対応する際に使用できる正確

な資料を提供すること。何よりもこの情報は、次の点を補強するものでなければならない。 o パップテスト(細胞診)は子宮頸がんやその他の疾患の初期兆候を発見するために非常に有

益であるが、前がん病変の発生を防止するものではないこと。 o HPV ワクチンは、口腔咽頭がんやその他の命に関わる疾患を予防できること。 o HPV ワクチンの接種は、性的混乱の原因にはならないこと。 o HPV ワクチンの接種は、性と生殖に関する健康にとって重要であること。この情報は、学校や

病院、診療所、そしてオーストラリアがん協会と類似したウェブサイトやソーシャルメディアで広め

ることができる(付録 3 参照)。

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• HPV ワクチンの接種を保護者に積極的に呼びかけること(特に母親)。母親が家族の健康に関する意

思決定者であることが多い。自分の娘がワクチン接種を受けることに抵抗を感じないようにするため、保

護者は抱えている問題や懸念を伝える必要がある。 • 他のワクチン同様、HPV ワクチンにより副作用が起こることがあるが、他のワクチンよりもその発生率は

低く、がんを防げる点で有益性が高い。 • 学校に通学する学生が、ワクチンの接種を受けるために授業を欠席することや、接種が受けられる診

療所を探す労力を減らすため、予防接種を行うための全校的なプログラムを作成する。全校的なプロ

グラムは、教育委員会と関与することを示し、これにより、保護者と話し合いを行うことや、保護者自ら

が取り組む姿勢を育むための重要な場を設けることができる。藤原らによれば、54全校的なワクチン接

種および公的助成金は、HPV ワクチン接種率を上げる最も効果的な方法であるとされている。 • 国民が懸念を伝え、迅速に証拠に基づいた回答を得られるシステムを確立すること。

日本で明らかなように、政府による支援が失われると、例えワクチン接種が無料で提供されていたとしても、接

種率は大幅に低下する。このため、決定が下されたら、政府は、HPV ワクチンにまつわる国民の懸念や質問に

政府が対応できる揺るぎない証拠に基づいた伝達計画を確立する必要がある。

54 H. Fujiwara et al., “Community-Based Interventions to Improve HPV Vaccination Coverage among 13- to 15-Year-Old Females: Measures Implemented by Local Governments in Japan,” PLoS One 8 (2013): e84126.

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付録 1. 世界の子宮頸がん発生率(年齢別発生率の重み付き平均値)(IARC 2012)

国別のがん登録集団に関する記録データからの発生率と死亡率を用いモデル化した国内死亡率から推定される日本向け N.B. データ。国際がん研究機関(IARC)。

年齢調整発生率

女性

子宮頸がん

データなし

出典: GLOBOCAN 2012(IARC)

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付録 2. HPV 感染に関連する子宮頸がん以外のがんの年齢調整(世界標準)発生率(人口 10 万対)。が

ん登録選抜集団における 1978 年から 2007 年までの 5 年ごとの発生率(全年齢)。(Forman et al. 2012)

Based on Cancer Incidence in Five Continents, Volumes V to IX and Surveillance, Epidemiology, and End Results (SEER) Program, David Forman et al., Global Burden of Human Papillomavirus and Related Diseases, July 2012, http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0264410X12010808 - bib0125. 中咽頭と肛門に関しては、男性(M)と女性(F)のデータが統合されている。また、中咽頭には舌と扁桃腺は含まれて いない 。年齢調整発生率: 年齢調整(世界標準)発生率。

年齢調整発生率(人

口10

万対)

中咽頭 男性+ 女性

肛門 男性+ 女性

陰茎 膣 外陰

期間

インド、ムンバイ コロンビア、カリ 米国 SEER プログラム、白人 デンマーク

フィリピン、マニラ 日本、宮城 米国 SEER プログラム、黒人

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付録 3. HPV ワクチンに関する情報が掲載された各地の推奨されるウェブサイトへのリンク ヨーロッパ: European Cervical Cancer Association http://www.ecca.info/fileadmin/user_upload/HPV_Vaccination/ECCA_HPV_Vaccination_April_2009.pdf イギリス: 国民保健サービス(NHS) http://www.nhs.uk/Conditions/vaccinations/Pages/hpv-human-papillomavirus-vaccine.aspx http://www.nhs.uk/Conditions/vaccinations/Pages/hpv-vaccine-cervarix-gardasil-side-effects.aspx オーストラリア: オーストラリアがん協会(Cancer Council Australia) http://www.hpvvaccine.org.au/the-hpv-vaccine/has-the-program-been-successful.aspx ニュージーランド: 保健省 http://www.health.govt.nz/our-work/preventative-health-wellness/immunisation/hpv-immunisation-programme/hpv-vaccine アメリカ: アメリカ疾病管理予防センター(CDC) http://www.cdc.gov/vaccinesafety/vaccines/HPV/Index.html カナダ: カナダ公衆衛生庁 http://www.phac-aspc.gc.ca/std-mts/hpv-vph/hpv-vph-vaccine-eng.php Immunize BC http://www.immunizebc.ca/diseases-vaccinations/hpv

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1616 Rhode Island Avenue NW | Washington, DC 20036

t. 202.887.0200 | f. 202.775.3199 | www.csis.org

Cover photo: https://www.flickr.com/photos/matteo-mazzoni/993301393.

日本におけるHPVワクチン接種状況

問題と選択肢

A Report of the CSIS Global Health Policy Center

2014年5月

authors Rose WilsonPauline PatersonHeidi J. Larson