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東日本大震災の応急住宅政策 東日本大震災の応急住宅政策 4回生 山本大晃 2回生 田口麻人

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東日本大震災の応急住宅政策東日本大震災の応急住宅政策

4回生 山本大晃

2回生 田口麻人

0.目次

1. はじめに

2 建物被害と避難状況2. 建物被害と避難状況

3. 仮設住宅について

4 「みなし仮設住宅」について4. 「みなし仮設住宅」について

5. 住宅バウチャーについて

6 応急住居支援の経済モデル例6. 応急住居支援の経済モデル例

7. モデルを利用した制度評価

8 モデルを利用した制度比較8. モデルを利用した制度比較

9. まとめ

補足資料

阪神 淡路大震災 仮設住宅に・阪神・淡路大震災の仮設住宅について

・台湾 集集地震の家賃補助について

1 はじめに1.はじめに

2

東日本大震災における応急住宅支援は、当初、仮設住宅の供給によって行われ、平成23年4月30日には「みなし仮設住宅」制度も導入された。その他の方法として、仮設住宅建設による非効率を避けるために、住宅バウチャーによる家賃補助を採用すべきであるという考えもあった。

この研究では、どのような制度を採用することが望ましかったかということを、それぞれのメリット・デ望ましかったかということを、それぞれのメリット デメリットを挙げたうえで、モデルを利用して考えていく。。

3

2 建物被害と避難状況2.建物被害と避難状況

建物被害の状況

全壊(戸) 半壊(戸) 全焼+半焼 床上浸水 床下浸水(戸) (戸) (戸)

岩手県 20,189 4,680 15 1,761 323宮城県 84 749 147 165 135 15 403 12 842宮城県 84,749 147,165 135 15,403 12,842福島県 20,355 66,061 80 1,054 339その他 4,138 37,172 51 2,214 2,009合計 129,431 255,078 281 20,432 15,513

出典:警察庁 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の被害状況と警察措置

避難者数と応急仮設住宅の完成戸数の推移

出典:内閣府被災者生活支援チーム「(参考)全国の避難所の避難者数の推移」,国土交通省HP「応急仮設住宅の着工・完成状況等」を参考に作成

参考文献

• 警察庁 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の被害状況と警察措置

• 内閣府被災者生活支援チーム「(参考)全国の避難所の避難者数の推移」(平成23年7月22日)

• 東日本大震災:国土交通省HP「応急仮設住宅の着工・完成状況等」(平成23年8月22日)

7

3 仮設住宅について3.仮設住宅について

8

仮設住宅の仕様

• 仮設住宅の仕様は原則として災害救助法に定められている

– 1戸当たりの規模 29 7㎡(=約9坪)– 1戸当たりの規模…29.7㎡(=約9坪)

– 1戸当たりの費用(建物本体)…238.7万円を基準とする準とする

• 追加仕様として以下の様なものがある

寒冷地対策 断熱材の補強 風除室の設置– 寒冷地対策…断熱材の補強、風除室の設置

– 高齢者対策…バリアフリー化、グループホーム

9

東日本大震災の仮設住宅

• 必要戸数(H.23.10.17時点)

岩手県 13 984戸岩手県…13 984戸

宮城県…22,043戸

福島県…16,171戸

その他4県… 315戸その他 県 3 5戸

計…52,513戸(うち51,492戸完成)(出典:住宅局 応急仮設住宅着工・完成状況)

• 住戸面積別の供給割合(H23.10.17時点)

(出典 住宅局 応急仮設住宅着 完成状況)

1DK(6坪)…14%

2DK(9坪)…71%( 坪)3K(12坪)…15%

10

• みなし仮設住宅(4月30日に運用通知)

民間賃貸住宅との役割分担(H23 10 17時点)民間賃貸住宅との役割分担(H23.10.17時点)

建設応急仮設住宅…51,492戸

民間賃貸住宅 …60,556戸

<参考>阪神・淡路大震災時の仮設住宅( 終)

建設応急仮設住宅 48 300戸建設応急仮設住宅…48,300戸

民間賃貸住宅 … 139戸

• みなし仮設住宅の制度が中途半端な時期から始まった影響で、余剰資材が発生したった影響で、余剰資材が発生した

11

仮設住宅のデメリット

• 高い建設費用、撤去費用がかかる→後に恒久住宅を建設するため、二重投資となる

• 建設に時間がかかる。東日本大震災の場合は特に時間がかかった。

15日後 30日後 43日後後 後 後

阪神大震災 31戸 1,250戸 7,013戸

東日本大震災 0戸 36戸 517戸

職場や学校などから離れた場所が多く不便

出典:4月26日の予算委員会で自民党の小野寺衆議院議員が出したパネル

• 職場や学校などから離れた場所が多く不便

→抽選に当選しても入居しないケースの発生

• はじめのうちは抽選の倍率が非常に高い 12

仮設住宅の辞退

主な辞退の理由

• 仮設住宅が職場や学校などから離れた場所が多く不便であること

• 仮設住宅に入居すると、食費、水道光熱費などが自己負担になるため 迷 た末に避難所にとどまる選択をする人もいになるため、迷った末に避難所にとどまる選択をする人もいる

• 自分で民間の賃貸住宅を探したうえで、「応急仮設住宅」の指定を受け 県に家賃などを負担してもらう制度(=みなし仮指定を受け、県に家賃などを負担してもらう制度(=みなし仮設住宅制度)を利用するために辞退する人が多いとみられる

13

参考文献

• 国土交通省住宅局住宅生産課「東日本大震災における応急仮設住宅の建設に係る対応について」建設に係る対応について」

• 東日本大震災の仮設住宅の建設状況、阪神淡路大震災時と比べて大震 震幅な遅れ http://digimaga.net/2011/05/kan-says-spend-4-months-in-a-cardboard-house

14

4 「みなし仮設住宅 について4.「みなし仮設住宅」について

15

「みなし仮設住宅」制度について(1)

• 東日本大震災においては家賃補助として、いわゆる「みなし仮設住宅」制度が平成23年4月30日から導入された

みなし仮設住宅制度 東日本大震災の「り災世帯• みなし仮設住宅制度:東日本大震災の「り災世帯」で、3月11日以降、自ら手続きして民間賃貸住宅に入居している世帯に対し 家賃を公費で負担する入居している世帯に対し、家賃を公費で負担する

16

「みなし仮設住宅」制度について(2)

• 限度額などの詳細は都道府県ごとに異なる。以下では福島県の措置について見ていく。

概要• 概要

– H23.3.11~H23.4.30までの期間に、既に避難住民が自

ら手続き 居 た県内 賃貸住宅 避難先ら手続きして入居した県内の民間賃貸住宅で、避難先の市町村が要件に合致することを審査したものを、平成23年5月1日以降に県との賃貸借契約に切り替え 借上げ年5月1日以降に県との賃貸借契約に切り替え、借上げ住宅として取り扱う。

– H23.5.1以降から県が別途指定する期日までの間、入居

する住宅市町村が審査したものを県との賃貸借契約を締する住宅市町村が審査したものを県との賃貸借契約を締結した日から、県の借上げ住宅として取り扱う。

– 入居期間は、借上げ住宅としての契約に切替えた日から長2年間 17

「みなし仮設住宅」制度について(3)

• 対象住宅(一定の要件)

– ①家賃等が6万円以下かつ耐震性を有することが確認されたのもの。但し、ただし、入居人数が5名以上(乳幼児を除く)の場合の家賃は9万円以下を対象とするを除く)の場合の家賃は9万円以下を対象とする。

※ 乳幼児が2人以上いる世帯は、乳幼児1人あたり0.5人と換算し、世帯人数に加える

– ②貸主及び仲介業者が、県の借上げ住宅となることについて了承したもの

18

「みなし仮設住宅」制度について(4)

• 対象世帯

以下の3つの要件を全て満たす世帯とする以下の3つの要件を全て満たす世帯とする

– ①住宅の全壊等により居住する住宅がない世帯、又は、原発事故による避難指示等により長期の避難が必要な原発事故による避難指示等により長期の避難が必要な世帯。

②民間賃貸住宅を賃借する契約を締結し入居若しくは入居を予定し、自らの資力では当該契約の継続が困難である世帯る世帯。

③高齢者の介護 障害者や乳幼児への対応 子どもの③高齢者の介護、障害者や乳幼児への対応、子どもの通学などの理由により、避難所等での生活が困難であると市町村が認める世帯。

19

「みなし仮設住宅」制度について(5)

• 手続

– 1 不動産会社 貸主の了解を得る– 1 不動産会社、貸主の了解を得る

「借上げ住宅申出書」を現在居住している住宅の斡旋を受けた不動産会社に持参し 不動産会社と貸主の了解を受けた不動産会社に持参し、不動産会社と貸主の了解を得て、申出書に署名・押印を受ける。

※まだ入居していない住宅であっても 不動産会社の承諾※まだ入居していない住宅であっても、不動産会社の承諾があれば、制度の利用が可能。既に、入居している世帯と同様の手続きをすればよい。

– 2 市窓口に申請する

– 3 契約の切替えをする

その他 入居のために負担した費用の給付– その他 入居のために負担した費用の給付

20

「みなし仮設住宅」制度導入による弊害

• 仮設住宅の必要戸数が減少し、住宅メーカーが大量の在庫を抱えることになったを抱

• 仮設住宅の抽選に当選したにも関わらず、辞退する人の増仮設住宅の抽選に当選したにも関わらず、辞退する人の増加→落選者は不満

• 民間賃貸住宅の在庫が減少、家賃の上昇Ex)仙台の賃貸マンションの在庫件数

2月末1,595件→4月末(みなし仮設制度が周知)597件→5月末501件

(東日本不動産流通機構調べ)機

21

5 住宅バウチャ について5.住宅バウチャーについて

22

バウチャー制度とは

• 「バウチャー」は引換券・割引券の意

• 国や自治体などが目的を限定して個人を対象に補国や自治体などが目的を限定して個人を対象に補助金を支給する制度。所定の手続きにより引換券として支給する方式が多い。教育・保育・福祉などのして支給する方式が多い。教育 保育 福祉などの公共サービスが対象で、利用者はその中から必要なものを選択し、引換券を提出してサービスを受けなものを選択し、引換券を提出してサ ビスを受ける。

上智大学経済学部教授 山崎福寿氏の提言の概要(1)

• 避難者が民間賃貸住宅、公営住宅に入れるように、転居費用を補助する さらに避難者に住宅バウチ を発行する用を補助する。さらに避難者に住宅バウチャーを発行する。

住宅バウ 金額は家族ごと 定額部分と家族数比例• 住宅バウチャーの金額は家族ごとに定額部分と家族数比例部分から構成され、不公平の発生しないようにする。

• 低い家賃の住宅に入る場合は、差額を現金で給付できるようにする 高い家賃の住宅に入る場合の不足額は自己負担うにする。高い家賃の住宅に入る場合の不足額は自己負担とする。

• バウチャーは自治体を通じて、住宅の貸し手から、政府が買い取る。い取る。

上智大学経済学部教授 山崎福寿氏の提言の概要(2)

バウチャーによる家賃補助の利点

• 日本全国どこでも使用可能とすれば 全国の賃貸住宅が受• 日本全国どこでも使用可能とすれば、全国の賃貸住宅が受け入れ先となる。

• バウチャーを得るには、被災者が申請登録する必要があるので、仮に全国に被災者が散ってしまっても、同じ集落の人々を捕捉することが容易

→連絡先を確認でき、被災地に戻って復興する際にも便利

上智大学経済学部教授 山崎福寿氏の提言の概要(3)

仮設住宅について仮設住宅について

• 仮設住宅は一戸300~400万円もかかる

方 住宅バウチ を支給する場合• 一方、住宅バウチャーを支給する場合…月額15万円の家賃補助を2年間支給=15万円×24カ月

360万円=360万円

• 再度しっかりした住宅をつくるのであれば、二重投資になる仮設住宅は必要 小限にすべき→仮設住宅は必要 小限にすべき

• バウチャーを用いれば、全国にある空き家を有効利用できる

したが 仮設住宅よりもバウ による家賃補助を採したがって、仮設住宅よりもバウチャーによる家賃補助を採用すべき

住宅バウチャーのデメリット

• 民間賃貸住宅の家賃が上昇する可能性がある

• 家主が、家賃補助を利用する人の入居を嫌がる可能性がある

• 地域外に人口が流出して戻らない可能性があるある

27

6 応急住居支援の経済モデル例6.応急住居支援の経済モデル例

はじめに

• 地震時の政府(及び自治体)の住居支援は、( )主に緊急避難対策、応急住居支援、恒久住宅対策に分けられる。宅対策に分けられる。

• このうち今回は応急住居支援について、いくつか存在する支援方法を互いに比較するモか存在する支援方法を互いに比較するモデル例として、今西, 佐藤, 石橋(ほか)による、費用便益分析を用いたものを紹介する費用便益分析を用いたものを紹介する。

モデル分析の目的

• 応急住居支援として政府が行うことが考えられる政策としては、仮設住宅の建設、賃貸住宅の借り上げ 家賃補助 一括補助金の交宅の借り上げ、家賃補助、 括補助金の交付などいくつか考えられる。

• 政府がこうした様々な政策の中から、どれを政府がこうした様々な政策の中から、どれを選択するのが も適しているのかを検討するのが本モデル分析の目的であるのが本モデル分析の目的である。

仮定

1. 本モデルにおける行動主体は政府と住民のみあるである。

2. 住民は「住居」と「住居以外の財(全て)」のみを消費する。

3. 住民が消費する住居は借家か持ち家のいずれ住民が消費する住居は借家か持ち家の ずれかである。

4 住民は、借家か持ち家のどちらかに居住してい4. 住民は、借家か持ち家のどちらかに居住しているかを別にして、皆一様に合理的な行動を行う。

5 政府は税を徴収するが その税は住民に過不5. 政府は税を徴収するが、その税は住民に過不足なく配分される。

仮定(2)

6. 住居の消費水準(以下、居住水準)とは、住( )居の居住面積、立地条件などを総合的に数値化したものであり、 と表す。x値化したものであり、 と表す。

7. 住居以外の消費水準を として表す。2x1x

8. 財の価格は以下の通りとする。

– (計算の簡単の為)住居以外の財はニュメレール(計算の簡単の為)住居以外の財は ュメレ ルとする。

住居の単位当たり価格を とする1p– 住居の単位当たり価格を とする。1p

仮定(3)

9. 住民の所得を とする。y10.政府は住民の所得に応じて徴税することと

し その税率を とする 従って 住民の可tし、その税率を とする。従って、住民の可処分所得 となる。ytyd )1(

t

11.住民の効用は、コブ・ダグラス型効用関数

を用いて表わされるaa xxxxu 1)( を用いて表わされる。xxxxu 2121 ),(

仮定(4)

12.住民の支払う家賃は以下のように算定する。

– 住民が借家に住んでいる場合は、単位当たり家賃 を家主に支払っているものとする。家賃 を家主に支払っているものとする。

– 住民が自分の持ち家を所有している場合には、自分自身に対して 住居基準単位当たり帰属家

1p自分自身に対して、住居基準単位当たり帰属家賃として を支払っているものとする(帰属

家賃とは 「その家を借家として市場に供給した1p

家賃とは、「その家を借家として市場に供給した時の市場価格」である)。

仮定(5)

13.住居市場は完全競争市場であり、その市場価格は とする。

14 である

*1p

100* typpxx14. である。10,0,,,, 1121 typpxx

平常時における効用 大化問題

• 以上の仮定により、平常時における住民の効用 大化問題は以下のように定式化される。

aa xxxxu 12121 ),(max

00t *

効用関数はコブダグラス型であるから 予算制

0,0, s.t. 21211 xxyxxp d

効用関数はコブダグラス型であるから、予算制約条件を等号としても条件は変わらず、

d* yxxp 211

平常時における効用 大化問題(2)

効用関数から、限界代替率は

11u

aa

1

2

21

12

111

11 xaax

xxaxax

ux

aa

aa

よ て 効用 大化条件は

121

2xよって、効用 大化条件は

ax

*1

1

2

1p

xaax

37

平常時における効用 大化問題(3)

変形して、

xapx 1*1

21

これを予算制約式に代入して、

a2

を予算制約 代 、

d* yxapxp

1

*1

111

aa

dyp

x *1

1

38

平常時における効用 大化問題(4)

よって、)1(

となり、

dyax )1(2

aとなり、

dya

paxx )1(,, *

121

の時住民の効用は 大化される。この時の

の組み合わせを とする。xx BFRBFR xx

1

の組み合わせを とする。21 , xx xx21

,

政府の支援政策(1)

• 今回は、以下の3つの支援案を検討する。

1.仮設住宅の建設:政府は居住水準 の住居を単位当たり価格 で提供する。単

TMPxx 11 TMPp1住居を単位当たり価格 で提供する。単

位当たりの建設費用は とする。(政策1)p1

c

政府の支援政策(2)

2. 賃貸住宅の借り上げ:政府は住居市場におRNT

ける、居住水準 の賃貸住宅を市場価格 で借り上げ、住民に単位当

RNTxx 11 *1p

RNTたり価格 で提供する。(政策2)RNTp1

41

政府の支援政策(3)

3. 家賃補助:政府は、単位住居価格 に対sして の割合で家賃補助を行う。従って、住民の家賃は となる。(政策3)

1p1

* )( xrp 民の家賃は となる。(政策3)1)( xrp

42

災害の効果(1)

• 災害によって生じる、住民への影響は以下のう 考 るように考える。

1.災害によって住民の所得は の割合だけ減少する

少する。

災害の効果(1)

2. 住民は、災害前に暮らしていた住宅の契約を即刻で解除することができるものとする(持ち家の場合は 被害を受けた住宅の残余のち家の場合は、被害を受けた住宅の残余の帰属家賃は政府が支払ったと考える)。従って住民の災害後の可処分所得はて住民の災害後の可処分所得は

となる。ytyd )1)(1(

44

住民の応急住居の選択行動(1)

• まずは、全く政府による支援制度が存在しない場合を考える(政策0)。この時の効用 大化問題化問題は、化問題化問題は、

),(max 21 xxu )( 21

0 ,0 , s.t. 21211 xxyxxp d*

と定式化される。従って、その解は及び となる

dAFR y

pax *1

AFR及び となる。p1 d

AFR yax 12

住民の応急住居の選択行動(2)

• よって、この時の間接効用関数は、

a

aa yaaypV

1* 11)( dd yp

aaypV

*1

1 1),(

となる。

46

住民の応急住居の選択行動(3)

• 続いて政府が仮設住宅を建設する場合を考える(政策1) この時の効用 大化問題はえる(政策1)。この時の効用 大化問題は、

),(max 21

TMPTMP xxuTMPTMPTMP

となり(仮設住宅の居住水準は所与の為 住民

0, s.t. 221 1 xyxxp d

TMPTMPTMP

となり(仮設住宅の居住水準は所与の為、住民

はそれ以外の財の消費水準によって効用を大化する)大化する)、

TMPTMPd

TMP xpyx 112 となる。

d xpyx 112

住民の応急住居の選択行動(4)

• 従って、この時の間接効用関数は

aTMPTMPaTMPTMP xpyxypV 1)(となる。この時の間接効用関数を とする。

dd xpyxypV 1111 ),(

1V。 時 間接効用関数を す 。

• またこの政策を実施する為に必要な費用は、1世帯当たり である

1

TMPTMP1世帯当たり である。TMPTMP xpc 11

48

住民の応急住居の選択行動(5)

• 続いて政府が賃貸住宅の借り上げを行う場合を考える(政策2)。この時の効用 大化問題は前項と同様に、題は前項と同様に、

),(max 21

RNTRNT xxu

従って この解は

0 , s.t. 221 1 RNT

dRNTRNTRNT xyxxp

従って、この解はRNTRNT

dRNT xpyx 112

となる。d 112

49

住民の応急住居の選択行動(6)

• この時の間接効用関数も同様に、

aRNTRNTd

aRNTd

RNT xpyxypV

111112 ),(

である。

dd pyyp 11112 )(

あ 。

• またこの政策を実施する為に必要な費用は、1世帯当たり であRNTRNTRNT*1世帯当たり である。

RNTRNTRNT xpxp 1111

50

住民の応急住居の選択行動(7)

• 次に、家賃補助を行う場合(政策3)は、

)(max xxu ),(max 21 xxu

0,0,s.t. 2121*1 xxyxxrp d

を解けばよく、この時の解は

0,0, s.t. 21211 xxyxxrp d

dPRT y

rpax

*1

1

政府が何もしていない時と比較すると 住宅以外

dPRT yax 12

rp1

政府が何もしていない時と比較すると、住宅以外の消費水準は変わらないが、居住水準が高まっているている。

住民の応急住居の選択行動(8)

• この時の間接効用関数は、

daa

d yaayrpV 1*13

11),( dad yrp

aayrpV*

1

13 1),(

となる。

また 政策を実施する 必要な費用は• またこの政策を実施するのに必要な費用は、1世帯当たり である。PRTrx 11

52

各制度間の比較(1)

• 今回は、仮設住宅の建設(政策1)と、それ以( )外の政策を行った時の補償変分を、それぞれの政策を実施するのにかかった費用の差れの政策を実施するのにかかった費用の差と比較することで各制度を比較評価する。

53

各制度間の比較(2)

• まず仮設住宅の建設(制度1)から何もしない( )状態(制度0)に政策を切り替えた時の補償変分を求める。分を求める。

)( * CVypVypV TMP ),(, 101011 CVypVypV dd

1111 xpyx aTMPTMPd

aTMP

1

111

1

xpyxa

a

d

10*

1

1 11 CVyp

aa daa

各制度間の比較(3)

CV 10

dy10

aTMPTMP

daTMP

aa

a

xpyxp

1

1111

*1

1 daa

pyaa 11111

(注: は「政策1を政策0に変更した時の補償変分」とする。以下同様)10CV

55

各制度間の比較(4)

• 次に、仮設住宅の建設(政策1)から賃貸住宅( )の借り上げ(政策2)に政策を切り替えた時の補償変分を求める。補償変分を求める。

121211 ,),( CVypVypV dRNT

dTMP 121211 dd

aTMPTMPaTMP xpyx

1 aRNTRNT

daRNT

d

CVxpyx

xpyx

1

12111

111

d CVxpyx 12111

56

各制度間の比較(5)

CVRNTRNT

d xpy

CV

11

12

aa

TMP

d

x

py

1

11

TMPTMP

dRNT xpyxx

111

1

57

各制度間の比較(6)

• 続いて、仮設住宅の建設(制度1)から家賃補( )助(制度3)に政策を切り替えた時の補償変分を求める。を求める。

03*1311 ,),( CVyrpVypV dd

TMP 031311 dd

1111 xpyx aTMPTMPd

aTMP

1

111

1

xpyx

a

d

13*1

1 11 CVyrp

aa daaa

58

各制度間の比較(7)

aa yaaCV 11 aTMPTMPaTMPa

d

xpyxrp

yaaCV

1*

13 1

d xpyxrp 1111

59

問題点・課題

• 本文献で言及されている問題点として、以下のものが挙げられる。

① 住民が皆一様で 合理的な行動をとると仮定し① 住民が皆 様で、合理的な行動をとると仮定したこと。世帯ごとの多様性などを考慮していない 等い、等

② 家賃補助に 住宅市場 均衡条件等を② 家賃補助について、住宅市場の均衡条件等を一切考慮していない

③ 制度評価の際に、評価基準として社会的厚生が考慮されていないこと 例えば 仮設住宅をが考慮されていないこと。例えば、仮設住宅を大量に建設したことと、地域コミュニティの維持についての問題との関連等についての問題との関連等

④ 住居の移転に伴う住民の移転と、地域経済に与える影響について

• その他本文献では言及されていないが、今後の課題として

① 居住条件の決定方法について

② 「時間」の要素について:「応急住居」という点では、地震が発生してから 政府が政策を実行するまでの速さも重が発生してから、政府が政策を実行するまでの速さも重要になると思われる。これを定量的に評価する方法は考えられないか。

③ 政策の併用:現実には、阪神大震災や今回の東日本大震災の時にそうであったように、(住宅の供給限界の問

デ げ(

題などから)今回のモデルに取り上げられた政策であっても、2つ以上の政策が併用されることが考えられる。適切な併用方法を経済学的に推定できないだろうか。適切 併用方法を経済学 推定 う 。

参考文献

1. 経済学的アプローチによる災害応急居住支援の制度分析の試み. 今西, 佐藤, 石橋(ほか) 名古屋産業大学論集 名古屋産業大学 vol10 2007 pp15-21石橋(ほか). 名古屋産業大学論集. 名古屋産業大学. vol10. 2007. pp15 21

2. 演習ミクロ経済学. 武隈慎一. 1994. pp.30-31

7.モデルを利用した制度評価7.モデルを利用した制度評価-東日本大震災の応急住宅政策に関して-

64

趣旨

• 上で紹介した経済モデルを利用して、東日本大震災においては仮設住宅の供給と「みなし仮設住宅」制度のどちらを採用するのが良かったのかということを調べる。また、住宅バウチャーを採用した場合についても検討する(予定)。

• 東日本大震災において建設された仮設住宅の建設東日本大震災において建設された仮設住宅の建設は前述モデルにおいては制度1、「みなし仮設住宅」制度は制度2に該当すると考えられる。制度は制度2に該当すると考えられる。

65

定義等についての確認(1)

• :コブ・ダグラス型効用関数 の指数

aa xxxxu 12121 ),(a

指数

• :可処分所得。dyd

dy

• :住居市場における市場価格(市場は完全競争市場であると仮定)

*1p

市場であると仮定)

66

定義等についての確認(2)

• 政策1(仮設住宅)に関して

– :政府が提供する仮設住宅の居住水準。TMPx1

– :政府が居住水準 の住居を単位当たり価格で提供する際の価格。

TMPp1TMPx1

1

– :仮設住宅の単位当たりの建設費用。c

• 政策2(みなし仮設)に関して

:行政が借り上げる住宅の居住水準RNTx– :行政が借り上げる住宅の居住水準

– :被災者に提供する際の単位居住価格RNTp1

x1

• 政策3(家賃補助)に関すして

家賃補助 政府は 単位住居価格 対*p– : 家賃補助の政府は、単位住居価格 に対して

の家賃補助を行う。従って、家賃は 。67

rr

1p1

* )( xrp

以下 例として東日本大震災に関するデ以下、例として東日本大震災に関するデータを用いて各定数の値を推定し、比較評価を試みる。

68

定数の概算(1)

• は仮設住宅1戸にかかる(一月当たり)費用である

。建設費のほか、寒冷地対策費、撤去費用なども含c。建設費のほか、寒冷地対策費、撤去費用なども含めることにする。

69

定数の概算(2)

• 仮設住宅の建設費用(建物、外構、寒冷地対策含む)は、1戸あたり約500万円※参考文献[1]による

• 仮設住宅の撤去費用は、阪神大震災の場合は1戸あたり約60万円だった(維持管理・撤去・整は1戸あたり約60万円だった(維持管理 撤去 整

備費約290億円÷48,300戸≒60万円)

• 従って 建設総費用はおよそ560万円となる• 従って、建設総費用はおよそ560万円となるので、それを24カ月で償却するとすると、月当り費用 は23 3万円と推計されるc当り費用 は23.3万円と推計される。c

70

定数の概算(3)

• 居住水準 とは住居の消費水準のことである。本1x来「居住水準」は居心地・広さ・通勤のしやすさなどを総合的にあらわしたものであるが、ここでは住居の居住面積のみを居住水準を表す指標とする。

• 住居の(一月当たり)単位価格を とする。ここでは

「単位」は「畳」であるとする。従って は住居の畳1p

1x「単位」は「畳」であるとする。従って は住居の畳数を表す。

1x

71

定数の概算(4)

• は家賃の1畳当たり、一月の市場価格である。*1p

• 仙台大都市圏の2DK(≒18畳)の民間賃貸住宅(仙台大都市圏の2DK(≒18畳)の民間賃貸住宅(非木造)の1畳当たりの(一月当たり)家賃の平均は、平成20年住宅・土地統計調査 によると約3 100円、平成20年住宅 土地統計調査 によると約3,100円/畳

• これを参考に、 円とする100,3*1 p

72

定数の概算(5)

• は、政策1(仮設住宅)を実施した際に政府が支給する住宅の居住水準である

TMPx1

給する住宅の居住水準である。– 平均的な仮設住宅は2DK(≒18畳)であるので、仮設住宅1戸の居

住水準は とみなす。181 TMPx

• は 政策2(みなし仮設)を実施した際に政府が

81x

RNTx1 は、政策2(みなし仮設)を実施した際に政府が借り上げる住居の居住水準である。

今回は 政府は仙台都市圏の平均的な借家を借り上げ

1

– 今回は、政府は仙台都市圏の平均的な借家を借り上げると仮定して、 とみなす。

(平成20年住宅・土地統計調査による)

4.171 RNTx( )

73

定数の概算(6)

• は政府が仮設住宅を提供する際の単位TMPp1

当たり価格である。東日本大震災では、仮設住宅は当然無料で供給されたので 01 TMPp住宅は当然無料で供給されたのでである。

同様に 「みなし仮設 制度でも借上げたもの

01p

• 同様に、「みなし仮設」制度でも借上げたものを住民に無償で提供する(と考える)ので、 01 RNTp

である。

74

定数の概算(7)

• は一月当たり可処分所得である。dy

仙台市の平成23年7 9月期の平均的な世帯可処• 仙台市の平成23年7~9月期の平均的な世帯可処分所得は約35万8千円/月なので 円とする

358000dyとする。

75

定数の概算(8)

• はコブ・ダグラス型効用関数 のの指数であり 財 の支出額の割合 まりa aa xxxxu 1

2121 ),(の指数であり、財 への支出額の割合。 つまり、(住宅への支出):(住宅以外の財全てへの支出額)

である

1x

1= である。aa 1:

• 住宅への支出=5万6千円住宅以外への支出=可処分所得ー住宅への支出

=35.8万円ー5万6千円

=30万2千円=30万2千円

• 以上より、 万円万円: 2.306.51: aa• よって、 。

76

16.0≒a

評価試算(1)

• これまでの概算から、定数を以下のように設定した時の、両制度の比較評価を試算する。

835y 

4171833.23,16.0

8.35

ca

y

RNTTMP

d

  0,0

4.17,18

11

11

pp

xxRNTTMP

RNTTMP

(注:金額は全て「万円」に換算)  

31.0*1 p

77

評価試算(2)

• 仮設住宅の建設(制度1)から、賃貸住宅の借( )り上げ(制度2)に政策を変更した時の補償変分を計算する。分を計算する。

23.012 CV(注:計算にはMicrosoft社のMicrosoft Excelを利用、以下同じ)

12

78

評価試算(3)

• そして2つの政策を実施する費用差は

(制度2の費用)-(制度1の費用)* RNT

936.1733.23394.511

cxp RNT

79

評価試算(4)

• 従って、民間住宅の借り上げを実施した場合(政策2)は、仮設住宅の建設を実施した場合(政策1)に比較して、 1世帯当たりだけ0 23の政策1)に比較して、 1世帯当たりだけ0.23の

補償変分の分だけ得られる効用は減少するが 費用は17 936だけ安上がりである為 こが、費用は17.936だけ安上がりである為、こ

の場合には民間住宅の借り上げの方が有効な政策であるといえるな政策であるといえる。

80

参考文献

1. 産経ニュース2011.6.30 00:30仮設住宅高すぎ?阪神大震災時の2倍

「便乗値上げ」指摘もhttp://sankei jp msn com/affairs/news/110630/dst11063000300001-http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110630/dst11063000300001n1.htm

2. 児島達也. 阪神・淡路大震災における応急仮設住宅の費用算定に関する研究 http://www.arch.kobeu.ac.jp/~a7o/activity/theses-data/gra-mas/h11_m_kojima.pdf#searchj p

3. 総務省統計局. 平成20年住宅・土地統計調査

http://www.estat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001025723&cycode=0

4 総務省統計局 家計調査報告(家計収支編) 平成23年7~9月期平均4. 総務省統計局. 家計調査報告(家計収支編). 平成23年7~9月期平均速報 http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/shihanki/index.htm

81

5. 福島県. 民間賃貸住宅、県借上げの特例措置についてhttp://goldfish83.jugem.jp/?eid=451

6. いわき市. 「東日本大震災のり災者に提供する民間賃貸住宅の特例措置について」. http://www.city.iwaki.fukushima.jp/topics/011671.html

82

8 モデルを利用した制度比較8.モデルを利用した制度比較

83

以下 6及び7章において導出されたモデル以下、6及び7章において導出されたモデルを基に、モデル内の変数を仮想的に動かして再計算することによって各制度の特徴を考える。る。

84

• 以下の計算に於いて各変数の値は、明示しない限りは7章の計算で用いた値と同じものを用いる。を用いる。

 

33.23,16.08.35

cay d

 

00

4.17,18,

11 xxRNTTMP

RNTTMP

31.0

0,0*1

11

p

pp RNTTMP

  

85

• 東日本大震災時において、仮に家賃補助(制(度3)を行った場合について考える。

• 7章で述べたモデルのうち、様々な条件のもとで現実に行われた制度1から制度3に政策を変更した場合どうなるかを考える。を変更した場合どうなるかを考える。

86

• 1畳当たり家賃補助 の値を0.01から0.30まrrで0.01刻みで動かした時に得られる補償変分から費用差を除いた値分から費用差を除いた値

)1((13 の費用制度 CVE

及び家賃補助を行った場合の居住水準))3( の費用制度

PRTx1及び家賃補助を行った場合の居住水準の(近似的な)グラフは次頁の通りとなる。

x1

87

40.00

rの変動に伴う政策変更効果Eの変化

30.00

10 00

20.00

0.00

10.00

0 01 0 04 0 07 0 1 0 13 0 16 0 19 0 22 0 25 0 28E

-10.00

0.01 0.04 0.07 0.1 0.13 0.16 0.19 0.22 0.25 0.28

-20.00

-40.00

-30.00

88

rの変化に伴うx1PRTの変化

600.00

700.00

500.00

600.00

400.00

300.00

x1PRT

200.00

100.00

89

0.00 0.010.020.030.040.050.060.070.080.09 0.1 0.110.120.130.140.150.160.170.180.19 0.2 0.210.220.230.240.250.260.270.280.29 0.3

• グラフより、住民は住宅の価格が安くなれば、よりよい居住水準の住居を選ぶようになることが分かる。またこの傾向はrが大きくなることが分かる。またこの傾向はrが大きくなるほど激しくなる。

• 従って政策の変更を行ったことによる効果E従 て政策の変更を行 た とによる効果はrの値が大きくなるにつれて逓減しており、特にrの値が大きくなるとマイナスの効果を生特にrの値が大きくなるとマイナスの効果を生じるようになる。

90

• しかしr=0.25前後までは政策変更効果は正

の値を維持しており、この条件下では概ねの場合において家賃補助は仮設住宅の建設よ場合において家賃補助は仮設住宅の建設より適切な政策であると言える。

• また6章の計算おける政策効果E=17.91と比また 章の計算おける政策効果 と比較すると、r=0.14までの範囲なら政策1に代えて政策2を行うよりも 政策3を行った方がえて政策2を行うよりも、政策3を行った方が望ましいと言える。

91

• また特にr=0に近い値の場合、Eは20前後の

値を示しており、これは仮設住宅の償還価格を法令における原則上のc=9 38としても、依を法令における原則上のc 9.38としても、依然としてEは正の値を取ることが分かる。従っ

て法令の趣旨通り簡素な仮設住宅を建設すて法令の趣旨通り簡素な仮設住宅を建設する(できる)場合でも、政策1よりも3を採用した方が望ましい とが分かる方が望ましいことが分かる。

92

• 続いて、今回のモデルでは住居の市場価格は一定であると仮定しているが、家賃補助政策を行った場合市場価格が上昇する可能性策を行った場合市場価格が上昇する可能性がある。そこで 及び の値を変化させたことに伴うEの変化を考え その時のグラフを

*1p r

ことに伴うEの変化を考え、その時のグラフを次頁に示す。

93

市場価格の変動と政策変更効果の関係

15.00

20.00

10.00

5.00

P=0.30

5 00

0.00 0.01 0.04 0.07 0.1 0.13 0.16 0.19 0.22 0.25 0.28

E

P=0.40

P=0.50

P=0.60

-10.00

-5.00

-15.00

94

-20.00

• これを見るとrの値が低い時には、 は低い*1p

ほど政策変更効果は大きくなるが、rの値が

大きくなってくると この関係は逆転して の*1p大きくなってくると、この関係は逆転して の

値が高くなるほど政策変更効果が大きくなっている

1p

ている。

• 従って、 の値が高くなるほど、政策変更効果は 家賃補助率による変動が小さくなると

*1p

果は、家賃補助率による変動が小さくなるといえる。

95

• 次に、所得 の違いによる、政策変更効果dyの違いを考える。 が20,25,30,35,40のそれぞれの場合のrの変動に伴うEの変化は次

dydy

れぞれの場合のrの変動に伴うEの変化は次頁図の通り。

96

所得変化に伴う政策変更効果の推移

18.00

20.00

14.00

16.00

12.00 yd=20

yd=25

8.00

10.00 E

yd=25

yd=30

yd=35

yd=40

4 00

6.00

2.00

4.00

97

0.00 0.01 0.04 0.07 0.1 0.13 0.16 0.19 0.22 0.25 0.28

所得変化に伴う政策変更効果の推移(部分拡大)

19.80

20.00

19.40

19.60

19.00

19.20

yd=20

yd=25

18 60

18.80 軸ラ

ベル yd=25

yd=30

yd=35

yd=40

18.40

18.60

18.00

18.20

98

17.80 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.1

• これを見ると、rの値が大きくなれば、概ね所

得が低い人の場合の方が、そうでない人よりも政策変更効果が大きいことが分かる。も政策変更効果が大きいことが分かる。

• しかし部分拡大図を見ると、上述とは逆の現象が生じている部分がある。そこで、今度は象が生じている部分がある。そこで、今度はr=0.01, 0.06, 0.11, 0.16における の変化をグラフにすると 次頁のようになる

dyをグラフにすると、次頁のようになる。

99

家賃補助を変化させた時に伴う政策変更効果の推移30

25

20

r=0.01

r=0.04

r=0 0715

軸ラ

ベル r=0.07

r=0.10

r=0.13

r=0.16

r=0 1910

r=0.19

5

100

05 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 100 105 110 115 120 125 130 135 140 145 150

• 従っていづれの場合もある所得に至るまでは、政策変更効果は所得上昇に従って減少していくが それを越えると逆に政策変更効果ていくが、それを越えると逆に政策変更効果が増加し始める。

• そして家賃補助率が上がるほど、その極小値そして家賃補助率が上がるほど、その極小値に当たる所得は大きいものとなっていく。

101

• 後に、住民の住宅に対する(相対的な)選好( )が変化する場合を考える。

• これは今回のモデルに於いて、aの値が変化することで表わされる。aの値を0.1から0.5まで0.1刻みでグラフに表すと、次頁のようになで 刻みでグラ に表すと、次頁のようになる。

102

住宅選好の違いによる政策変更効果の推移30.00

25.00

20.00

a=0.1

a=0 215.00 E

a=0.2

a=0.3

a=0.4

a=0.5

10.00

5.00

103

0.00 0.01 0.04 0.07 0.1 0.13 0.16 0.19 0.22 0.25 0.28

• 従って、概ねaの値が大きくなるほど同じ家賃

補助率から得られる政策変更効果が大きくなる。る。

• 前述の通り、一般にrが大きくなればEは逓減していくが、aが非常に大きければrが大きくなして くが、 が非常に大きければ が大きくなった時に、Eがある時点までは増加していくことがあるとがある。

104

• 従って、このモデルに基づく仮設住宅の建設と、家賃補助を比較した場合には以下のことが言える。が言える。

1. 政策変更による効果は、東日本大震災時におけるように、住居に対する選好が一定の割合より低ければ、家賃補助率を上げるごとに逓減する。

105

2. 住居の市場価格が騰貴した場合、家賃補助を増額しても、政策効果は逓減し辛くなる(減額しても、政策効果は逓増しにくくなる)。

3 政策を変更したことによる効果を世帯ごとに見3. 政策を変更したことによる効果を世帯ごとに見ると、一定の所得の世帯までは、所得が増加するごとに政策効果が減少するが、その極小点をるごとに政策効果が減少するが、その極小点を過ぎると所得が増加することで、政策効果も逓増することになる、そして家賃補助率が高いほ増することになる、そして家賃補助率が高いほど、その極小点は高い収入に対応する。

106

4. 概ね住民の住居に関する選好が大きくなるほど同じ家賃補助率から得られる政策変更効果が大きくなる。

5 いずれの場合でも、政策変更効果はrが0 2を超5. いずれの場合でも、政策変更効果はrが0.2を超

えるような場合を除いて正の値を示している。従って政府は、その補助率が大きすぎない限り政って政府は、その補助率が大きすぎない限り政策1を実施するよりは、政策3を実施した方が適切であるということができる。切であるということができる。

107

9 まとめ9.まとめ

108

• モデルによる試算から、仮設住宅の供給よりも、民間賃貸住宅の借り上げや家賃補助による応急住宅支援のほうが有効な政策であるといえる。

• 現実には、 住宅の供給限界の問題などから、モデルで取り上げた政策のうち 2つ以上の政策が併用ルで取り上げた政策のうち、2つ以上の政策が併用

されることが考えられる。適切な併用方法を経済学的に推定することが今後の課題である的に推定することが今後の課題である。

109

• モデルによる制度評価では、評価基準として社会的厚生や地域経済への影響が考慮されていない。実際の住宅政策を考える際には、地域コミュニティの維持の問題などといった、定量的に把握しづらい項目についても十分に考慮する必要がある。

110

補足資料補足資料

111

阪神・淡路大震災における仮設住宅阪神 淡路大震災における仮設住宅について

阪神・淡路大震災

• 地震名:兵庫県南部地震

• 1995年1月17日5時46分発生、M7.3神戸 芦屋 西宮 宝塚市の 部で震度7を• 神戸、芦屋、西宮、宝塚市の一部で震度7を観測したほか、広い範囲で強い揺れ

• 死者6,434人、重軽傷者43,792人を記録し20世紀の日本の自然災害では2番目の規模世紀の日本の自然災害では2番目の規模

住宅への被害

• 全壊104,906棟、半壊144,274棟

• 他6,148棟が火災で全焼

兵庫県内の避難所 の避難者は1月23日に• 兵庫県内の避難所への避難者は1月23日にピークに達し、約316,000人が避難生活を送った。避難所への避難者は8月17日になってもまだ8,400人近く残っていた。てもまだ , 人近く残 て た。

災害救助法の定める仮設住宅

• 災害発生から原則として20日以内に着工

• 入居年限は2年以内

• 入居資格があるのは住宅が使用不能となり か• 入居資格があるのは住宅が使用不能となり、かつ自力再建が困難な者

設置は原則と 各都道府県が行う• 設置は原則として各都道府県が行う

• 設置数は原則として全壊・全焼住宅の3割以内設置数 原則 壊 焼住宅 割以内

• 規模は平均2630m2(約2DK)、設置費用は平均125万円以内125万円以内

建設過程(神戸市の例)

• 合計32,346戸を建設(市内被害住宅82,000約 割戸の約4割)

• 1月19日に第1次分1,013戸の発注、翌20日月 9日に第 次分 ,0 3戸の発注、翌 0日に104戸着工

• 標準的な工程では 発注から完成まで約42• 標準的な工程では、発注から完成まで約42日

当初は2DKタイプの住宅を建設していたが• 当初は2DKタイプの住宅を建設していたが、用地不足や工期短縮のため、5月発注分から1DKタイプが増加1DKタイプが増加

• 終第10次分2,533戸が完成したのは6月末

• 建設地:西区8941戸(30.7%)、北区5838戸( )(20.0%)など、郊外部が大きな割合を占める

– 一方で兵庫区654戸(2 2%) 長田区647戸– 方で兵庫区654戸(2.2%)、長田区647戸(2.2%)など、中心部は小さな割合

建設用地の問題 都市部では公園以外にめぼし– 建設用地の問題:都市部では公園以外にめぼしい建設可能地がない(他には学校の校庭程度)そ 為郊外 タウ 等に多く 仮設住宅– その為郊外のニュータウン等に多くの仮設住宅が建設され、またインフラが整備途上のポートアイランドにも約2500戸を整備イランドにも約2500戸を整備

入居について

• 神戸市においては、初期には募集定員を超える応募が想定されたため、以下の様な優先順位を設定した順位を設定した

– 第1順位:高齢者だけの世帯、障害者、母子世帯

第2順位 高齢者や乳幼児 妊婦のいる世帯等– 第2順位:高齢者や乳幼児・妊婦のいる世帯等

– 第3順位:病弱な者がいる世帯等

– 第4順位:その他

• この結果 初期に建設された仮設住宅団地• この結果、初期に建設された仮設住宅団地に高齢者が集中する結果に

• 兵庫県全体では、仮設住宅は48,300戸建設され、ピーク時(1995年11月15日)には46 617戸の入居があった46,617戸の入居があった

– 被災住宅の自力再建、復興住宅の整備、市外移住などが進んだ結果入居者は漸減していき 平住などが進んだ結果入居者は漸減していき、平成12年3月末に全住宅の撤去完了

使用された仮設住宅の 部は台湾 トル に送– 使用された仮設住宅の一部は台湾、トルコに送られている

課題・その他

• 仮設住宅の立地:中心部は非常に高倍率の抽選になる 方 郊外部は定員割れ選になる一方、郊外部は定員割れ– 神戸市第3回分の抽選では全体の募集数4635戸に

対し、53459世帯の応募(倍率約11 5倍)対し、53459世帯の応募(倍率約11.5倍)– そのうち中心部の兵庫区浜山では10戸の募集に対

して5872世帯の応募(倍率約587倍)– 一方西区竜ヶ丘中央公園では96戸の募集に対して

45世帯の応募で、定員割れが起きた

• 居住空間と収容人数のミスマッチ:先行して設置 抽選した2DKの住宅に一人暮らしの高齢者置、抽選した2DKの住宅に 人暮らしの高齢者が優先される一方、後発の1DKの住宅に複数人の世帯が入る。世帯 入る。

• 長く仮設住宅に残る被災者:自宅の再建や民間賃貸住宅への転居の見通しが立った被災者は仮設住宅から出て行くため 終的に仮者は仮設住宅から出て行くため、 終的に仮設住宅に残るのは「出たくても出られない」低所得者層や高齢者が集中する 96~98年に所得者層や高齢者が集中する。96~98年に

行われた調査によると、団地によっては高齢化率は約37 「 ンゲ 係数 は約37 に化率は約37%、「エンゲル係数」は約37%に及んでいる。

参考文献

• 阪神淡路大震災と住宅局営繕部. 神戸市住宅局営繕部. 1996年6月. http://www city kobe lg jp/life/town/institution/koukyou/shinsai-eizen htmlhttp://www.city.kobe.lg.jp/life/town/institution/koukyou/shinsai eizen.html

• 被災状況及び復興への取り組み状況. 神戸市. 2011年11月1日. http://www.city.kobe.lg.jp/safety/hanshinawaji/revival/promote/index.html

• 大震災関係デ タ 覧 神戸新聞• 大震災関係データ一覧. 神戸新聞. http://www.kobe-np.co.jp/sinsai/kiroku/higai0012.html

• 阪神・淡路大震災の復旧・復興の状況について. 兵庫県. 2010年12月. http://web.pref.hyogo.jp/wd33/wd33_000000010.html

• 避難生活の社会学. 阪神・淡路大震災の社会学, vol2. 岩崎他編. 昭和堂. 1999• 大規模災害後の応急住宅供給の多様化について. 佐藤慶一, 塚越功. 日本建築規 慶 , 越 建

学会学術講演梗概集. 2002• 第3回抽選分の入居決定者発表 阪神大震災仮設住宅第2次募集. 朝日新聞

1995年4月1日号兵庫面1995年4月1日号兵庫面

台湾 集集地震の家賃補助台湾 集集地震の家賃補助について

集集地震

• 発生日:1999年9月21日

• マグニチュード(Mw)7 6 大震度7相当マグニチュ ド(Mw)7.6、 大震度7相当

台湾中部の南投県集集鎮付近で発生 震源か• 台湾中部の南投県集集鎮付近で発生。震源から比較的離れた台北市でもビルが倒壊し、多くの死者が出た 住宅被害は約10万5千戸の死者が出た。住宅被害は約10万5千戸。

• 死者:2,415人

負傷者:11,306人負傷者 , 人

行方不明者:29人

台湾中央政府の施策

①公的住宅の低価格(公告価格の70%)での分譲分譲

②応急仮設住宅の無償提供②応急仮設住宅の無償提供

③被災者個人に対する家賃補助

以上の3つの施策を打ち出し その選択を被以上の3つの施策を打ち出し、その選択を被災者に任せた。

約9割の被災者が家賃補助を選択

家賃補助策について(1)

• 実施の背景として、被災地区においては約8万5千戸の空き家があり(空き家率22%) それを有千戸の空き家があり(空き家率22%)、それを有効活用したいという判断があった

• 家賃補助金の額は、人数に比例する。↑人数が多ければ減額しても良いのでは?という意見もあ↑人数が多ければ減額しても良いのでは?という意見もあ

るが、行政の立場から、効率的にするために簡略化した

• 家賃補助金が支給されるのは持ち家者のみ。仮家人には支給されない

• 支給額は、当時の台湾の家賃の水準を参考に支給額 、 時 湾 家賃 準を参考して定められた

家賃補助策について(2)

1年目の家賃補助の内容

• 対象:

被災地における全壊 半壊の持ち家者で 且つ分譲公営住被災地における全壊・半壊の持ち家者で、且つ分譲公営住宅、仮設住宅を選択していない者

内容• 内容:

1カ月3,000元/1人、1年分を一括して渡す ※1元=約4円

家賃補助策について(3)

2年目の家賃補助の内容• 対象①被災者における全壊・半壊の持ち家者であり、かつ家屋を撤去さ

れて1年目の家賃補助を受け、実際に借家契約を行っている者②低収入および中低収入の半壊の持ち家者で、 1年目の家賃補助②

を受け、実際に借家契約を行っている者

• 内容• 内容①1カ月 10,000元/1戸、二期に分けて配る ※1元=約4円

②申請に当たって、審査に通ると第一期の分を渡す。第二期の分は2001年4月1日以降に渡す2001年4月1日以降に渡す

• 実施期間:1年。2000年11月1日~2001年10月31日実施期間:1年。2000年11月1日 2001年10月31日

仮設住宅を選択しない理由

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出典:台湾地震における応急住宅の対策に関する研究

分譲公営住宅を選択しない理由

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出典:台湾地震における応急住宅の対策に関する研究

家賃補助の使い方

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出典:台湾地震における応急住宅の対策に関する研究

約9割が家賃補助を選択した理由

• 現在の家を修繕すれば住むことができる↑元通りの場所に住みたいということから、相当のダメージを受けている家でも修繕して住もうとするため

• 仮設住宅、分譲公営住宅の場所が遠い仮設住宅、分譲公営住宅の場所が遠い

• 仮設住宅が狭い

↑農村地域の平均住宅規模は30~40坪 仮設住宅は8~1↑農村地域の平均住宅規模は30~40坪。仮設住宅は8~12坪。

家賃補助策の成果と課題

• 成果:– 家屋の修繕や自力仮設の建設などに家賃補助金が

活用され、素早い住宅復興につながった。

家 を修繕 住む が多 ため が破– 家屋を修繕して住む人が多いため、コミュニティが破壊されなかった

• 課題:– 修理しても危険性の残っている家屋に住み続ける人

がいる

– 家賃補助の一部が生活費として消費されており、その分は住宅再建につながっていない

参考文献

• 921大地震 ‐wikipedia

• 地域安全学会論文集No.3,2001.11「台湾地震における応急住宅の対策に関する研究-家賃補助策の実施の実態と評価-」

• 台湾政府の震災復興施策ー台湾九二一震災後再建マニュアル(行政院再建推進委員会 九九九年 〇月 日)を中心として再建推進委員会、一九九九年一〇月一日)を中心としてー神戸大学教授 阿部泰隆