東日本大震災テレビ報道の検証 - NHK...8 NHK放送文化研究所年報2013...

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7 本稿では,震災報道のなかで,被害者数や被害状況の把握がどう推移したか,被災地や被災者が どのように伝えられていたかを検証した。 分析の対象は,NHK 総合,日本テレビ,フジテレビ 3 局の発災後 72 時間の報道および NHK 総合 の発災後 1 週間の報道である。内容分析とテキストマイニングの手法を用いて定量的な分析を行っ た。結果の概要は以下のとおりである。 ◇被害状況の把握の推移:被害の全容はなかなかつかめず,発災からしばらくの間,伝えられた被 害の規模と実際の被害規模には大きな乖離があった。1週間経過した時点で伝えられた被害者数も, 現在確認されている被害者数とは 3000 人程度の開きがあった。 ◇情報空白地域の発生:被害の大きいところの情報が伝えられず,「情報空白地域」が発生していた。 連日伝えられた地域がある一方で,大きな被害が出ているにもかかわらず 1 週間経ってもほとんど 伝えられない地域も残った。 ◇被災者向け情報と被災者発の情報:被災者向け情報である「生活情報」は発災後日を追うにつれ て増えていったが,14日以降,福島第一原発事故が多く伝えられるようになると相対的に少なく なった。被災者に関する情報についても,日を追うごとに増えていったが,被災者の情報が伝えら れる地域は限られていた。 ◇被災地・被災者の表現・描写:被災者の状況は,主にアナウンサーやレポーターによって伝えら れ,被災者自身の発言として伝えられることは多くなかった。今回の震災の被害の甚大さを示す特 徴的な語彙として,「壊滅的」という形容詞がかなり頻繁に使われていた。「がれき」という言葉は, この段階では,まだそれほど頻出していなかった。 被災者,被災地に関する表現や視点の置き方などの課題は,定量的な分析では検証が困難であっ た。事例を絞った定性的な分析が必要であり,今後の課題として残された。 Ⅰ 本稿の目的 …………………………………………… 8 Ⅱ 分析に用いるデータ ………………………………… 9 Ⅱ− 1 内容分析データ Ⅱ− 2 文字起こしデータ Ⅲ 被害状況の把握………………………………………11 Ⅲ− 1 被害者数把握の推移 Ⅲ− 2 被害地域の把握 Ⅳ 被災者向け情報と被災者発情報 …………………17 Ⅳ− 1 被災者情報の推移 Ⅳ− 2 救出情報 Ⅳ− 3 被災者向け情報 Ⅳ− 4 被害・被災者について語られた内容 Ⅳ− 5 被災者情報の地域差 Ⅳ− 6 誰が,どのように伝えていたか Ⅴ 分析結果のまとめ……………………………………31 Ⅵ 課題と考察…………………………………………… 33 要 約 目 次 東日本大震災テレビ報道の検証 ~ 被害や被災者はどのように伝えられたか ~ メディア研究部  原 由美子

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Page 1: 東日本大震災テレビ報道の検証 - NHK...8 NHK放送文化研究所年報2013 Ⅰ本稿の目的 2012年9月6日,厚生労働省は,2011年 の人口動態統計(確定数)で,東日本大震災

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 本稿では,震災報道のなかで,被害者数や被害状況の把握がどう推移したか,被災地や被災者がどのように伝えられていたかを検証した。 分析の対象は,NHK総合,日本テレビ,フジテレビ3局の発災後72時間の報道およびNHK総合の発災後1週間の報道である。内容分析とテキストマイニングの手法を用いて定量的な分析を行った。結果の概要は以下のとおりである。◇被害状況の把握の推移:被害の全容はなかなかつかめず,発災からしばらくの間,伝えられた被害の規模と実際の被害規模には大きな乖離があった。1週間経過した時点で伝えられた被害者数も,現在確認されている被害者数とは3000人程度の開きがあった。◇情報空白地域の発生:被害の大きいところの情報が伝えられず,「情報空白地域」が発生していた。連日伝えられた地域がある一方で,大きな被害が出ているにもかかわらず1週間経ってもほとんど伝えられない地域も残った。◇被災者向け情報と被災者発の情報:被災者向け情報である「生活情報」は発災後日を追うにつれて増えていったが,14日以降,福島第一原発事故が多く伝えられるようになると相対的に少なくなった。被災者に関する情報についても,日を追うごとに増えていったが,被災者の情報が伝えられる地域は限られていた。◇被災地・被災者の表現・描写:被災者の状況は,主にアナウンサーやレポーターによって伝えられ,被災者自身の発言として伝えられることは多くなかった。今回の震災の被害の甚大さを示す特徴的な語彙として,「壊滅的」という形容詞がかなり頻繁に使われていた。「がれき」という言葉は,この段階では,まだそれほど頻出していなかった。 被災者,被災地に関する表現や視点の置き方などの課題は,定量的な分析では検証が困難であった。事例を絞った定性的な分析が必要であり,今後の課題として残された。

Ⅰ 本稿の目的 …………………………………………… 8Ⅱ 分析に用いるデータ ………………………………… 9

Ⅱ−1 内容分析データⅡ−2 文字起こしデータ

Ⅲ 被害状況の把握……………………………………… 11Ⅲ−1 被害者数把握の推移Ⅲ−2 被害地域の把握

Ⅳ 被災者向け情報と被災者発情報 ………………… 17Ⅳ−1 被災者情報の推移

Ⅳ−2 救出情報Ⅳ−3 被災者向け情報Ⅳ−4 被害・被災者について語られた内容Ⅳ−5 被災者情報の地域差

Ⅳ−6 誰が,どのように伝えていたかⅤ 分析結果のまとめ…………………………………… 31Ⅵ 課題と考察…………………………………………… 33

要 約

目 次

東日本大震災テレビ報道の検証~被害や被災者はどのように伝えられたか ~

メディア研究部 原 由美子

Page 2: 東日本大震災テレビ報道の検証 - NHK...8 NHK放送文化研究所年報2013 Ⅰ本稿の目的 2012年9月6日,厚生労働省は,2011年 の人口動態統計(確定数)で,東日本大震災

8│NHK放送文化研究所年報2013

Ⅰ 本稿の目的

2012年9月6日,厚生労働省は,2011年

の人口動態統計(確定数)で,東日本大震災

による死亡者数が1万8877人にのぼったと

発表した1)。 また,2012年9月5日付警察庁

緊急災害警備本部広報資料によると,死者数

1万5870人,行方不明者数2846人となって

いる2)。どちらの数値によっても,この震災

で1万9000人近くの人が死亡または行方不

明になったことがわかる。

しかし,発災から1年半が過ぎた時点でさ

え行方不明者数が3000人近くにのぼってい

ることからもわかるように,被害者数を確定

することはなかなかできなかった。ましてや

発災後間もない時点においては,被害規模を

想定することさえ困難であった。

本稿の目的は,こうした被害者数や被害の

状況,そして被災地や被災者が,震災報道の

なかでどのように伝えられていたかを検証す

ることにある。

災害報道に関しての従来からの問題点災害報道に関しては,これまでの研究から,

いくつかの課題が指摘されてきた。小田

(1996)は,1995年に起きた阪神淡路大震災

報道を検証し,次のように課題を整理してい

る。

❶テレビとラジオのそれぞれの機能を生かし

た使い分けが必要。

❷(避難指示などの)行動指示情報が徹底さ

れないことが多い。

❸災害初期の状況把握ができず,報道の遅れ

が生じる。その原因として,①行政・防災

機関の対応の遅れ,②“公的情報”“数値情

報”への過度の依存,③大きな震度への慣

れと推理力不足,④災害情報のドーナツ化

現象の4点が挙げられる。

❹安否情報と生活情報,すなわち被災者発の

情報と被災者向けの情報をどうバランスよ

く伝えるかが課題であり,被災者向け情報

については,情報の伝達効果を上げるため

の工夫,改善が必要である。

❺被害報道には功罪あるが,「罪」の側面と

して,被害のひどいところ,絵になるとこ

ろに取材が集中する“局部拡大症候群”,

思い入れ過剰やステレオタイプな情景描

写,被災者の心情に配慮が足りないインタ

ビューなどを行う“表層エモーショナリズ

ム”が指摘される。

これらのうち❶については,今回の震災で

も,停電のために多くの被災地でテレビが見

られない状況になったことや,避難等移動中

の利用も可能であることから,あらためてラ

ジオの有効性が確認された3)。

❷の行動指示情報に関しても大きな課題と

して浮かび上がり,すでにいくつかの調査研

究が行われ,マニュアル等の改善作業が始め

られている4)。

こうした中,本稿では上記❸被害状況の把

握と❹の被災者向け情報,被災者発の情報の

バランスの問題,❺被害・被災者報道に関す

る問題に着目し,それらについての検証を試

みる。

具体的には,以下の4点である。

◇被害状況の把握はどのように推移したか

◇情報空白地域はどのように発生していたか

◇被災者向け情報と被災者発の情報のバラン

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東日本大震災テレビ報道の検証

スはどのようであったか

◇被災地・被災者はどのように伝えられてい

たか

小田が「ドーナツ化現象」と呼んだ現象に

ついては,本稿では「情報空白地域の発生」

と表現することにした。もともと「ドーナツ

化現象」とは,被害が大きい地域ほど行政や

防災機関の対応が遅れたり通信・交通手段が

遮断されることなどによって情報が得られな

くなり,伝えられなくなることを指している。

東日本大震災の場合は,被災の範囲が広大で

あり,情報が空白化した地域は1箇所にとど

まらなかった。したがって,「ドーナツ化」

という表現よりも,「情報空白地域の発生」

という表現の方がふさわしいと考えた。

Ⅱ 分析に用いるデータ

東日本大震災に関してどのようなテレビ

報道が行われたかについては,内容分析の

結果を,これまで2度にわたり放送文化研

究所発行の月刊誌『放送研究と調査』誌上で

報告してきた5)。これまでの分析では,NHK

総合および在京民放キー局の計6局につい

て発災後24時間,NHK総合,日本テレビ,

フジテレビの3局について72時間分を対象

としてきたが,本稿ではこれらに加え,

NHK総合について発災から1週間後の2011

年3月18日午後3時59分までを対象とした

分析も行う。

本稿では,これまでの報告で用いてきたの

と同様に,報道された音声・映像の内容を,

内容分析の手法で分析したデータを基本的に

用いる。それとともに,音声情報については

すべて文字に起こし,テキストマイニングの

手法を用いて分析したデータも合わせて利用

することにした。内容分析で把握した情報が,

どのような表現で伝えられていたのか,テキ

ストマイニングによって,より詳細な内容を

補完的に分析できると考えたためである。そ

れぞれの分析手法は,以下のとおりである。

Ⅱ-1 内容分析データ

今回の震災報道に関しては,前述したよう

に,①在京6局を対象とした24時間分析,

②NHK総合と民放2局(日本テレビ,フジテ

レビ)6)を対象とした72時間分析,③NHK総

合のみを対象とした1週間分析の3種の分析

を行った。本稿では,②と③を利用する。

今回の震災報道の特徴として,非常に長時

間にわたって連続して報道が行われたという

ことがある。そのため,通常の内容分析のよ

うに「番組」や「記事」「ニュース項目」等といっ

た単位でデータをとることができない。そこ

で標本抽出の考え方をとり,1分間に1秒間

ずつ画面を抽出し,その画面を分析対象とし

た。毎分同じ「○○秒」という特定の時点で

映し出された画面をコード化するのである。

報道内容については,「映像」と「音声」に分

けてコード化したが,本稿では主に音声情報

の分析結果を用いる。なお,内容分析に用い

たマニュアルの一部を巻末に掲載した。

Ⅱ-2 文字起こしデータ

また,NHK総合の1週間分の報道につい

ては,その音声をすべて文字化した。このデー

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タをテキストマイニングの手法を用いて分析

した結果も用いる7)。

テキストマイニングにあたっては,音声情

報をセンテンスごとに切り分けた。そして,

それぞれのセンテンスに,発話時間帯,情報

の内容分類(地震,津波,原発,被害,被災

者など),発言者(アナウンサー,レポーター,

専門家など)等の属性を付した。本稿の分析

では,情報内容分類のうち,「被害」「被災者」

に分類されたもの(すなわち,全報道のうち,

「被害」や「被災者」に関する情報のみ)を対象

とした。

表1 3局72時間 被害者数把握の推移NHK総合 日本テレビ フジテレビ

12日3~5時台

188人の死亡確認(NHKまとめ)。行方不明者も700人以上。 死者,行方不明者は合わせて1000人超。

午前2時現在,この地震による死者は151人にのぼっている(警察庁)。

全国の死者168人,行方不明246人(FNNまとめ)。これとは別に仙台市若林区荒浜で200人から300人の遺体がみつかった。

12日8~11時台

少なくとも227人の死亡確認(NHKまとめ)。このほか,仙台市若林区で200人から300人の遺体。 行方不明者は,岩手,福島,宮城,青森の4県で650人以上。

午前8時現在,地震による死者は217人(警察庁)。これとは別に,宮城県仙台市若林区で,200人から300人の遺体を確認。行方不明は全国で681人。

死者は全国で223人,行方不明者は628人(FNNまとめ)。これとは別に仙台市若林区荒浜で200人から300人にのぼる遺体発見。

12日19~21時台これまでに649人の死亡が確認され,この地震で死亡した人は1000人を超えるとみられている。

午後6時半現在での死者は,全国で606人(警察庁など)。……行方不明者は全国で654人。

宮城県南三陸町で町民1万人が安否不明の状態。

13日5~9時台

死者行方不明者は,これまでに合わせて1500人以上。

死者は691人,行方不明者は642人(FNNまとめ)。このほか身元がわからない遺体が200人以上。死者・行方不明者は合わせて1530人以上。

13日13時台宮城県の南三陸町で人口の半数以上のおよそ1万人と連絡が取れないなど,1万人を超える人の安否が不明。

13日18時台

死者は13都道県で972人,行方不明者は1697人(FNNまとめ)。このほか身元のわからない遺体が400人以上。死者・行方不明者は合わせて3000人を超えている。

13日23時台

これまでに死亡が確認された人は1300人を超えた。宮城県内で死亡した人の数について,宮城県警本部は,ほぼ1万人単位におよぶとの見通しを示した。

死者,行方不明者合わせて3200人以上,安否わからない人2万人を超えた(警察自治体など)。宮城県内の死者は1万人単位になる。

14日1時台

死者は13都道県で1352人,行方不明者は1920人(FNNまとめ)。このほか身元のわからない遺体が400人以上。死者・行方不明者は合わせて3600人を超えている。

14日5~8時台

死者1597人,行方不明者1912人(警察庁まとめ)。

死者は13都道県で1597人,行方不明者は1920人(FNNまとめ)。死者・行方不明者は合わせて3900人を超えている。

14日12~14時台

宮城県,牡鹿半島に流れ着いた遺体が1000人を超える。南三陸町でも1000人の遺体。福島県では401人の死亡を確認。

宮城県で死者が1万人以上におよぶのは必至(宮城県警本部長)。

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東日本大震災テレビ報道の検証

 Ⅲ 被害状況の把握

Ⅲ-1 被害者数把握の推移

72時間経過までの各局の被害把握状況は

表1のようになっており,この時点で確認さ

れた死亡者数は1500人強にとどまっていた

ほか,宮城県で死者が1万人以上におよぶと

見込まれるとの情報が伝えられ続けていた。

NHK総合の1週間の報道の推移を見てみ

る と( 表2),14日 夜 の 時 点 で, 死 亡 者 数

1800人強,行方不明者は1万5000人以上で

あった。15日には,確認された死亡者数は

徐々に増えるが,行方不明者数は1万5000

人以上で変わっていない。16日になると,

表2 NHK総合1週間 被害者数把握の推移日 時間帯 伝えられた被害者数

11日 23時台今回の地震では,岩手県や宮城県の沿岸部が津波で壊滅的な被害を受け,大勢の人が行方不明になるなど,被害の全容はわかっていません。警察によりますと,仙台市内では,若林区で200人から300人の遺体が見つかるなど,各地で多数の死者が出ています。また行方不明者も確認されただけで,数百人に上っているということです。

12日 0時台

今回の地震と津波で,岩手県や宮城県,福島県の沿岸部は壊滅的な被害を受け,東北を中心にこれまでに680人余りの死亡が確認されるなど,死亡した人は1000人以上になると見られています。また,宮城県は,南三陸町で町の人口の半数以上に当たる,およそ1万人と連絡が取れなくなっているとして,自衛隊の協力も得て,所在の確認を急いでいます。

13日 12時台 NHKが午前11時半現在でまとめたところ,東北を中心に,この地震による死者は少なくとも587人に上り,行方不明者と合わせますと1300人を超えました。

14日16時台

今回の地震で,東北地方を中心に死亡が確認された人は,これまでに1691人に上っています。警察庁によりますと,1180人については身元が判明したことがわかりました。安否がわからない人は1万人以上となっています。

19時台 東北関東大震災で,これまでに死亡が確認された方は1834人,安否がわからない人は1万5000人以上となっています。

15日

0時台 今回の大震災では,これまでに1898人の死亡が確認されており,東北地方を中心に安否がわからない人は1万5000人以上となっています。

7時台 今回の地震と津波で,東北地方を中心に,これまでに死亡が確認された人はおよそ1900人に上り,1万5000人以上の安否がわからなくなっています。

12時台

今回の,地震と津波で沿岸部の多くの地域が壊滅的な被害を受け,東北地方を中心に,これまでに死亡が確認された人は,2500人近くに上っています。また少なくとも,1万7000人以上の安否がわからなくなっています。また宮城県南三陸町で2000人あまりが避難して無事であることが新たにわかりましたが,依然として合わせて1万5000人以上の安否がわからなくなっています。

19時台 今回の大震災でこれまでに死亡が確認された人は,合わせて3079人となり,さらに東北地方では少なくとも1万5000人以上の安否がわからなくなっています。

16日

0時台警察庁のまとめによりますと,東北関東大震災でこれまでに死亡が確認された人は3300人に上ります。行方がわからなくなっている人と合わせて1万人を超えました。災害で死者と行方不明者の数が1万人を超えたのは,戦後では初めてです。

10時台 今回の地震と津波で沿岸部の多くの地域が壊滅的な被害を受け,警察庁のまとめで,これまでに死亡が確認された人は3700人近くに上り,死亡が確認された人と行方がわからなくなっている人は,合わせて1万1000人を超えました。

19時台 今回の地震と津波で,沿岸部の多くの地域が壊滅的な被害を受け,警察庁によりますとこれまでに死亡が確認された人は4164人となり,警察に届け出があった行方不明者を合わせますと,1万2000人を超えています。

17日0時台 今回の地震と津波で沿岸部の多くの地域が壊滅的な被害を受け,警察庁によりますと,これまでに死亡が確認された

人は4340人となりました。警察に届出があった行方不明者を合わせると1万3000人を超えています。

14時台 警察などによりますと今回の地震と津波でこれまでに死亡が確認された人は5198人と5000人を超えました。警察に届出があった行方不明者を合わせると1万4600人を超えています。

18日

0時台 今回の地震と津波でこれまでに死亡が確認された人は5692人となりました。警察に届け出があった行方不明者を合わせますと1万5000人を超えています。

15時台

警察庁によりますと今回の地震と津波で,これまでに死亡が確認された人は6539人となり,6434人が亡くなった阪神淡路大震災を上回り,国内では戦後最悪の自然災害となりました。警察庁によりますと今回の地震と津波で,これまでに宮城県で3860人,岩手県で2040人,福島県で583人の死亡が確認されています。この他茨城県で19人,千葉県で16人が死亡するなど,今回の大震災でこれまでに死亡が確認された人は,合わせて6539人となり,6434人が亡くなった阪神淡路大震災を上回り,国内では戦後最悪の自然災害となりました。また,警察に家族などから届け出があった行方不明者が1万354人となっていて,死亡した人と合わせますと1万6000人を超えています。

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12│NHK放送文化研究所年報2013

表3 NHK総合1週間 伝えた地域の推移11日14時46分~12日4時59分 12日5時~13日4時59分 13日5時~14日4時59分 14日5時~15日4時59分

地 名 出現数 時間帯中の比率 地 名 出現数 時間帯中

の比率 地 名 出現数 時間帯中の比率 地 名 出現数 時間帯中

の比率1 東京都渋谷区 112 13.1% 1 福島県大熊町 311 21.6% 1 福島県大熊町 207 14.4% 1 福島県大熊町 189 13.1%2 宮城県気仙沼市 70 8.2% 2 宮城県仙台市 58 4.0% 2 宮城県仙台市 82 5.7% 2 福島県双葉町 81 5.6%3 宮城県仙台市 67 7.8% 3 岩手県釜石市 42 2.9% 3 東京都千代田区 57 4.0% 3 岩手県陸前高田市 48 3.3%4 福島県大熊町 45 5.3% 4 宮城県気仙沼市 38 2.6% 4 宮城県南三陸町 44 3.1% 3 宮城県南三陸町 48 3.3%5 東京都千代田区 20 2.3% 4 宮城県南三陸町 38 2.6% 5 宮城県名取市 33 2.3% 5 宮城県石巻市 45 3.1%6 岩手県釜石市 15 1.8% 4 東京都渋谷区 38 2.6% 6 宮城県女川町 30 2.1% 6 宮城県仙台市 41 2.8%7 岩手県大船渡市 15 1.8% 7 東京都千代田区 32 2.2% 7 岩手県陸前高田市 27 1.9% 7 宮城県気仙沼市 20 1.4%8 青森県八戸市 14 1.6% 8 岩手県陸前高田市 29 2.0% 8 岩手県釜石市 26 1.8% 8 岩手県釜石市 18 1.3%9 宮城県名取市 13 1.5% 9 福島県相馬市 28 1.9% 9 宮城県気仙沼市 23 1.6% 9 東京都新宿区 17 1.2%9 東京都新宿区 13 1.5% 10 岩手県大船渡市 26 1.8% 10 青森県八戸市 18 1.3% 10 青森県八戸市 13 0.9%9 千葉県市原市 13 1.5% 10 宮城県石巻市 26 1.8% 11 岩手県宮古市 16 1.1% 11 岩手県宮古市 11 0.8%

12 福島県相馬市 10 1.2% 12 宮城県名取市 20 1.4% 12 宮城県石巻市 15 1.0% 11 宮城県名取市 11 0.8%13 宮城県石巻市 8 0.9% 13 福島県南相馬市 18 1.3% 13 宮城県東松島市 11 0.8% 13 宮城県女川町 10 0.7%14 北海道函館市 7 0.8% 14 岩手県宮古市 16 1.1% 13 福島県双葉町 11 0.8% 13 福島県南相馬市 10 0.7%14 福島県南相馬市 7 0.8% 15 福島県いわき市 10 0.7% 15 福島県双葉郡 10 0.7% 13 東京都千代田区 10 0.7%16 宮城県栗原市 6 0.7% 16 青森県八戸市 9 0.6% 16 岩手県大槌町 6 0.4% 16 福島県新地町 9 0.6%16 北海道釧路市 6 0.7% 17 茨城県東海村 8 0.6% 16 福島県南相馬市 6 0.4% 17 東京都中央区 8 0.6%16 岩手県陸前高田市 6 0.7% 18 福島県新地町 7 0.5% 18 福島県二本松市 4 0.3% 18 宮城県多賀城市 7 0.5%19 長野県栄村 5 0.6% 19 宮城県岩沼市 6 0.4% 19 岩手県盛岡市 3 0.2% 18 宮城県東松島市 7 0.5%19 茨城県大洗町 5 0.6% 19 宮城県女川町 6 0.4% 19 岩手県大船渡市 3 0.2% 18 福島県双葉郡 7 0.5%21 宮城県多賀城市 4 0.5% 21 茨城県大洗町 5 0.3% 19 岩手県山田町 3 0.2% 18 埼玉県さいたま市 7 0.5%21 福島県福島市 4 0.5% 21 長野県栄村 5 0.3% 19 宮城県塩釜市 3 0.2% 22 千葉県旭市 6 0.4%21 福島県白河市 4 0.5% 23 宮城県山元町 4 0.3% 19 宮城県松島町 3 0.2% 23 岩手県大船渡市 5 0.3%21 岩手県宮古市 4 0.5% 23 福島県小野町 4 0.3% 19 福島県いわき市 3 0.2% 23 神奈川県横浜市保土ヶ谷区 5 0.3%21 茨城県小美玉市 4 0.5% 23 東京都新宿区 4 0.3% 19 千葉県旭市 3 0.2% 25 岩手県野田村 4 0.3%26 福島県いわき市 3 0.4% 26 岩手県大槌町 3 0.2% 26 青森県十和田市 2 0.1% 25 福島県相馬市 4 0.3%26 新潟県十日町市 3 0.4% 27 宮城県多賀城市 3 0.2% 26 宮城県白石市 2 0.1% 25 茨城県水戸市 4 0.3%26 東京都港区 3 0.4% 28 福島県双葉郡 3 0.2% 26 福島県相馬市 2 0.1% 25 茨城県鹿嶋市 4 0.3%26 東京都町田市 3 0.4% 29 福島県富岡町 3 0.2% 26 福島県川俣町 2 0.1% 25 埼玉県さいたま市浦和区 4 0.3%26 東京都江東区 3 0.4% 30 福島県双葉町 3 0.2% 26 茨城県水戸市 2 0.1% 25 東京都調布市 4 0.3%26 岩手県盛岡市 3 0.4% 31 宮城県東松島市 2 0.1% 26 茨城県東海村 2 0.1% 31 宮城県塩釜市 3 0.2%26 岩手県久慈市 3 0.4% 31 宮城県松島町 2 0.1% 26 千葉県千葉市若葉区 2 0.1% 31 茨城県東海村 3 0.2%33 宮城県東松島市 2 0.2% 31 福島県福島市 2 0.1% 26 東京都江東区 2 0.1% 31 神奈川県横浜市 3 0.2%33 宮城県七ヶ浜町 2 0.2% 31 福島県川内村 2 0.1% 34 北海道函館市 1 0.1% 34 福島県田村市 2 0.1%33 宮城県女川町 2 0.2% 31 茨城県水戸市 2 0.1% 34 岩手県久慈市 1 0.1% 34 茨城県笠間市 2 0.1%33 北海道根室市 2 0.2% 31 茨城県ひたちなか市 2 0.1% 34 宮城県多賀城市 1 0.1% 34 千葉県銚子市 2 0.1%33 北海道札幌市 2 0.2% 31 千葉県市原市 2 0.1% 34 宮城県岩沼市 1 0.1% 34 東京都大田区 2 0.1%33 新潟県津南町 2 0.2% 31 東京都中央区 2 0.1% 34 宮城県栗原市 1 0.1% 34 東京都豊島区 2 0.1%33 長野県野沢温泉村 2 0.2% 31 新潟県十日町市 2 0.1% 34 宮城県七ヶ浜町 1 0.1% 34 東京都府中市 2 0.1%33 長野県中野市 2 0.2% 40 北海道函館市 1 0.1% 34 福島県福島市 1 0.1% 34 神奈川県横浜市西区 2 0.1%33 長野県飯山市 2 0.2% 40 青森県青森市 1 0.1% 34 福島県郡山市 1 0.1% 41 青森県青森市 1 0.1%33 茨城県水戸市 2 0.2% 40 青森県六ケ所村 1 0.1% 34 福島県相馬郡 1 0.1% 41 岩手県盛岡市 1 0.1%33 茨城県鹿嶋市 2 0.2% 40 青森県おいらせ町 1 0.1% 34 福島県新地町 1 0.1% 41 宮城県登米市 1 0.1%44 宮城県亘理町 1 0.1% 40 岩手県盛岡市 1 0.1% 34 茨城県ひたちなか市 1 0.1% 41 福島県郡山市 1 0.1%44 宮城県利府町 1 0.1% 40 岩手県遠野市 1 0.1% 34 茨城県大洗町 1 0.1% 41 福島県いわき市 1 0.1%44 宮城県塩釜市 1 0.1% 40 岩手県住田町 1 0.1% 34 埼玉県さいたま市 1 0.1% 41 福島県白河市 1 0.1%44 北海道苫小牧市 1 0.1% 40 宮城県塩釜市 1 0.1% 34 東京都渋谷区 1 0.1% 41 福島県川俣町 1 0.1%44 福島県富岡町 1 0.1% 40 宮城県栗原市 1 0.1% 34 東京都日野市 1 0.1% 41 茨城県大洗町 1 0.1%44 福島県双葉町 1 0.1% 40 宮城県亘理町 1 0.1% 34 神奈川県横浜市 1 0.1% 41 埼玉県さいたま市大宮区 1 0.1%44 福島県双葉郡 1 0.1% 40 福島県玉川村 1 0.1% 34 新潟県長岡市 1 0.1% 41 千葉県千葉市 1 0.1%44 新潟県新潟市 1 0.1% 40 福島県広野町 1 0.1% 34 新潟県津南町 1 0.1% 41 千葉県松戸市 1 0.1%44 新潟県上越市 1 0.1% 40 茨城県笠間市 1 0.1% 41 東京都港区 1 0.1%44 新潟県柏崎市 1 0.1% 40 茨城県鹿嶋市 1 0.1% 41 東京都渋谷区 1 0.1%44 東京都中央区 1 0.1% 40 茨城県那珂市 1 0.1% 41 東京都武蔵野市 1 0.1%44 東京都品川区 1 0.1% 40 埼玉県さいたま市大宮区 1 0.1% 41 神奈川県横浜市鶴見区 1 0.1%44 東京都大田区 1 0.1% 40 千葉県千葉市中央区 1 0.1% 41 神奈川県横浜市南区 1 0.1%44 東京都足立区 1 0.1% 40 千葉県旭市 1 0.1%44 千葉県成田市 1 0.1% 40 東京都大田区 1 0.1%44 千葉県銚子市 1 0.1% 40 東京都立川市 1 0.1%44 千葉県九十九里町 1 0.1% 40 神奈川県横浜市 1 0.1%44 埼玉県幸手市 1 0.1% 40 長野県長野市 1 0.1%44 神奈川県藤沢市 1 0.1%44 神奈川県小田原市 1 0.1%44 岩手県二戸市 1 0.1%44 岩手県滝沢村 1 0.1%44 岩手県大槌町 1 0.1%44 茨城県日立市 1 0.1%44 茨城県東海村 1 0.1%44 茨城県高萩市 1 0.1%44 青森県六ケ所村 1 0.1%

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13

東日本大震災テレビ報道の検証

15日5時~16日4時59分 16日5時~17日4時59分 17日5時~18日4時59分 18日5時~15時59分

地 名 出現数 時間帯中の比率 地 名 出現数 時間帯中

の比率 地 名 出現数 時間帯中の比率 地 名 出現数 時間帯中

の比率1 福島県大熊町 428 29.7% 1 福島県大熊町 305 21.2% 1 福島県大熊町 252 17.5% 1 福島県大熊町 113 17.1%2 宮城県気仙沼市 40 2.8% 2 福島県双葉町 48 3.3% 2 福島県双葉町 171 11.9% 2 福島県双葉町 50 7.6%3 宮城県南三陸町 38 2.6% 3 宮城県気仙沼市 42 2.9% 3 宮城県南三陸町 34 2.4% 3 岩手県陸前高田市 27 4.1%4 岩手県陸前高田市 37 2.6% 4 岩手県陸前高田市 39 2.7% 4 宮城県仙台市 27 1.9% 4 宮城県石巻市 20 3.0%5 宮城県仙台市 33 2.3% 5 岩手県宮古市 36 2.5% 5 岩手県陸前高田市 26 1.8% 5 福島県いわき市 15 2.3%6 東京都千代田区 29 2.0% 6 宮城県南三陸町 35 2.4% 6 宮城県気仙沼市 20 1.4% 6 宮城県仙台市 14 2.1%7 宮城県石巻市 25 1.7% 7 福島県南相馬市 34 2.4% 7 岩手県釜石市 19 1.3% 7 宮城県南三陸町 13 2.0%8 福島県南相馬市 23 1.6% 8 宮城県仙台市 29 2.0% 8 岩手県大槌町 18 1.3% 8 宮城県気仙沼市 10 1.5%9 福島県いわき市 12 0.8% 9 宮城県石巻市 19 1.3% 9 宮城県石巻市 16 1.1% 9 岩手県釜石市 9 1.4%

10 福島県双葉町 10 0.7% 10 岩手県山田町 12 0.8% 10 福島県福島市 14 1.0% 10 岩手県山田町 6 0.9%10 茨城県東海村 10 0.7% 11 福島県福島市 11 0.8% 10 福島県いわき市 14 1.0% 11 福島県福島市 5 0.8%12 福島県双葉郡 9 0.6% 11 埼玉県川越市 11 0.8% 10 東京都千代田区 14 1.0% 12 青森県八戸市 4 0.6%13 東京都渋谷区 8 0.6% 13 東京都千代田区 10 0.7% 13 東京都渋谷区 13 0.9% 12 宮城県多賀城市 4 0.6%14 岩手県宮古市 7 0.5% 14 岩手県遠野市 7 0.5% 14 岩手県山田町 11 0.8% 12 福島県南相馬市 4 0.6%14 岩手県釜石市 7 0.5% 15 宮城県東松島市 6 0.4% 14 宮城県塩釜市 11 0.8% 15 岩手県大船渡市 3 0.5%14 岩手県野田村 7 0.5% 15 宮城県女川町 6 0.4% 14 宮城県多賀城市 11 0.8% 15 宮城県塩釜市 3 0.5%14 宮城県女川町 7 0.5% 15 東京都品川区 6 0.4% 17 岩手県宮古市 8 0.6% 15 埼玉県杉戸町 3 0.5%18 福島県福島市 6 0.4% 15 新潟県新潟市 6 0.4% 17 福島県南相馬市 8 0.6% 15 東京都渋谷区 3 0.5%19 埼玉県上尾市 5 0.3% 19 岩手県大船渡市 5 0.3% 17 東京都新宿区 8 0.6% 19 岩手県大槌町 2 0.3%19 千葉県松戸市 5 0.3% 19 福島県二本松市 5 0.3% 20 宮城県名取市 7 0.5% 19 宮城県利府町 2 0.3%19 千葉県旭市 5 0.3% 21 岩手県滝沢村 4 0.3% 20 茨城県日立市 7 0.5% 19 宮城県大和町 2 0.3%22 岩手県大槌町 4 0.3% 21 福島県会津若松市 4 0.3% 22 茨城県笠間市 6 0.4% 19 茨城県水戸市 2 0.3%22 福島県相馬市 4 0.3% 21 福島県いわき市 4 0.3% 22 千葉県旭市 6 0.4% 19 千葉県君津市 2 0.3%22 福島県田村郡 4 0.3% 24 青森県八戸市 3 0.2% 24 岩手県大船渡市 5 0.3% 19 東京都新宿区 2 0.3%22 東京都新宿区 4 0.3% 24 宮城県亘理町 3 0.2% 24 宮城県東松島市 5 0.3% 25 青森県青森市 1 0.2%26 岩手県山田町 3 0.2% 24 福島県相馬市 3 0.2% 26 岩手県遠野市 4 0.3% 25 岩手県盛岡市 1 0.2%26 宮城県名取市 3 0.2% 24 茨城県東海村 3 0.2% 26 福島県相馬市 4 0.3% 25 宮城県白石市 1 0.2%26 宮城県東松島市 3 0.2% 24 東京都荒川区 3 0.2% 26 茨城県高萩市 4 0.3% 25 宮城県女川町 1 0.2%26 埼玉県所沢市 3 0.2% 30 青森県青森市 2 0.1% 26 埼玉県さいたま市中央区 4 0.3% 25 福島県相馬市 1 0.2%26 東京都八王子市 3 0.2% 30 岩手県釜石市 2 0.1% 30 青森県青森市 3 0.2% 25 福島県田村市 1 0.2%26 神奈川県横浜市 3 0.2% 30 宮城県塩釜市 2 0.1% 30 岩手県盛岡市 3 0.2% 25 福島県川内村 1 0.2%32 青森県青森市 2 0.1% 30 茨城県水戸市 2 0.1% 30 福島県田村市 3 0.2% 25 茨城県潮来市 1 0.2%32 岩手県大船渡市 2 0.1% 30 茨城県日立市 2 0.1% 30 茨城県東海村 3 0.2% 25 埼玉県さいたま市 1 0.2%32 福島県浪江町 2 0.1% 30 埼玉県所沢市 2 0.1% 30 東京都品川区 3 0.2% 25 埼玉県さいたま市見沼区 1 0.2%32 埼玉県さいたま市 2 0.1% 30 千葉県松戸市 2 0.1% 30 東京都中野区 3 0.2% 25 埼玉県さいたま市浦和区 1 0.2%32 埼玉県さいたま市浦和区 2 0.1% 37 青森県弘前市 1 0.1% 36 青森県八戸市 2 0.1% 25 千葉県松戸市 1 0.2%32 東京都中央区 2 0.1% 37 岩手県花巻市 1 0.1% 36 青森県東北町 2 0.1% 25 東京都千代田区 1 0.2%32 東京都大田区 2 0.1% 37 岩手県大槌町 1 0.1% 36 宮城県大崎市 2 0.1% 25 東京都足立区 1 0.2%40 青森県八戸市 1 0.1% 37 宮城県大河原町 1 0.1% 36 福島県二本松市 2 0.1% 25 東京都調布市 1 0.2%40 青森県東通村 1 0.1% 37 宮城県黒川郡 1 0.1% 36 千葉県千葉市 2 0.1% 25 新潟県新発田市 1 0.2%40 岩手県金ヶ崎町 1 0.1% 37 福島県郡山市 1 0.1% 36 千葉県浦安市 2 0.1%40 宮城県白石市 1 0.1% 37 茨城県土浦市 1 0.1% 36 東京都目黒区 2 0.1%40 宮城県柴田町 1 0.1% 37 茨城県笠間市 1 0.1% 36 東京都豊島区 2 0.1%40 福島県田村市 1 0.1% 37 埼玉県三郷市 1 0.1% 36 神奈川県相模原市 2 0.1%40 福島県磐梯町 1 0.1% 37 千葉県旭市 1 0.1% 36 新潟県新潟市中央区 2 0.1%40 福島県楢葉町 1 0.1% 37 東京都新宿区 1 0.1% 36 新潟県三条市 2 0.1%40 茨城県水戸市 1 0.1% 37 東京都渋谷区 1 0.1% 47 北海道函館市 1 0.1%40 茨城県ひたちなか市 1 0.1% 37 東京都豊島区 1 0.1% 47 青森県弘前市 1 0.1%40 茨城県大洗町 1 0.1% 47 青森県むつ市 1 0.1%40 埼玉県深谷市 1 0.1% 47 福島県川俣町 1 0.1%40 千葉県千葉市 1 0.1% 47 茨城県水戸市 1 0.1%40 千葉県成田市 1 0.1% 47 茨城県鹿嶋市 1 0.1%40 千葉県市原市 1 0.1% 47 茨城県大洗町 1 0.1%40 東京都町田市 1 0.1% 47 埼玉県さいたま市 1 0.1%40 東京都福生市 1 0.1% 47 埼玉県さいたま市岩槻区 1 0.1%40 神奈川県横浜市鶴見区 1 0.1% 47 埼玉県越谷市 1 0.1%40 神奈川県横浜市栄区 1 0.1% 47 千葉県千葉市中央区 1 0.1%40 神奈川県川崎市 1 0.1% 47 千葉県千葉市稲毛区 1 0.1%40 神奈川県川崎市川崎区 1 0.1% 47 千葉県銚子市 1 0.1%40 神奈川県川崎市高津区 1 0.1% 47 千葉県茂原市 1 0.1%40 神奈川県横須賀市 1 0.1% 47 神奈川県鎌倉市 1 0.1%40 新潟県新潟市 1 0.1% 47 長野県栄村 1 0.1%40 新潟県阿賀町 1 0.1%

■ 死者・行方不明者 1000人以上■ 死者・行方不明者 500人以上太字 死者・行方不明者 100人以上

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14│NHK放送文化研究所年報2013

死者・行方不明者数が修正され,合計で1万

1000人ないし1万2000人超と伝えられるよ

うになる。17日には,その数がまた次第に

増え,震災発生から丸1週間が経過した18

日午後3時台の時点では,死者・行方不明者

合計で1万6000人強と伝えられた。本稿執

筆時点で確認されている死者・行方不明者数

1万9000人弱に徐々に近づいてはいたが,

まだ3000人近い開きがあった。

ただ,予測される被害の大きさと,確認さ

れた数値の乖離を埋めるため,身元のわから

ない遺体の数や,ヘリコプターから目視され

た海岸に打ち上げられたと見られる遺体の状

況,連絡の取れない住民の数などを伝えるこ

とで,被害の実態に近づこうとする努力はな

されていた。

Ⅲ-2 被害地域の把握

伝えた時間量(頻度)の地域差では,被害地域はどのように把握されて

いったのだろうか。本節では,どの地域の情

報が伝えられ,どの地域の情報がなかなか伝

えられなかったか,など地域による偏りを検

証する8)。

NHK総合,日本テレビ,フジテレビの3

局が,発災から72時間の間に伝えた地域の

推移については,『放送研究と調査』2012年

3月号で報告した9)。本稿では,NHK総合が

1週間を通じて伝えた地域について,同様に

分析した10)。

12ページから14ページの表3は,音声情報

で伝えられた市町村を,1日ごとに多い順に並

べたものである。黒い網掛けに白抜きの市町

村は,死者・行方不明者が1000人を超えた地

表3 NHK総合1週間 伝えた地域の推移(つづき)11日14時46分~18日15時59分 11日14時46分~18日15時59分

地 名 出現数 時間帯中の比率 地 名 出現数 時間帯中

の比率1 福島県大熊町 1850 18.2% 72 宮城県七ヶ浜町 3 0.0%2 福島県双葉町 375 3.7% 72 宮城県利府町 3 0.0%3 宮城県仙台市 351 3.5% 72 福島県郡山市 3 0.0%4 宮城県気仙沼市 263 2.6% 72 福島県川内村 3 0.0%5 宮城県南三陸町 250 2.5% 72 埼玉県杉戸町 3 0.0%6 岩手県陸前高田市 239 2.4% 72 東京都中野区 3 0.0%7 東京都渋谷区 177 1.7% 72 東京都荒川区 3 0.0%8 宮城県石巻市 174 1.7% 72 東京都八王子市 3 0.0%9 東京都千代田区 173 1.7% 72 新潟県津南町 3 0.0%

10 岩手県釜石市 138 1.4% 81 北海道札幌市 2 0.0%11 福島県南相馬市 110 1.1% 81 北海道根室市 2 0.0%12 岩手県宮古市 98 1.0% 81 青森県弘前市 2 0.0%13 宮城県名取市 87 0.9% 81 青森県十和田市 2 0.0%14 青森県八戸市 64 0.6% 81 青森県東北町 2 0.0%14 岩手県大船渡市 64 0.6% 81 青森県六ケ所村 2 0.0%16 宮城県女川町 62 0.6% 81 宮城県大崎市 2 0.0%16 福島県いわき市 62 0.6% 81 宮城県大和町 2 0.0%18 福島県相馬市 56 0.6% 81 福島県浪江町 2 0.0%19 東京都新宿区 49 0.5% 81 埼玉県さいたま市大宮区 2 0.0%20 福島県福島市 43 0.4% 81 千葉県千葉市中央区 2 0.0%21 宮城県東松島市 36 0.4% 81 千葉県千葉市若葉区 2 0.0%22 岩手県大槌町 35 0.3% 81 千葉県成田市 2 0.0%22 岩手県山田町 35 0.3% 81 千葉県君津市 2 0.0%24 宮城県多賀城市 30 0.3% 81 千葉県浦安市 2 0.0%24 福島県双葉郡 30 0.3% 81 東京都目黒区 2 0.0%24 茨城県東海村 30 0.3% 81 東京都足立区 2 0.0%27 宮城県塩釜市 24 0.2% 81 東京都府中市 2 0.0%28 千葉県旭市 22 0.2% 81 神奈川県横浜市鶴見区 2 0.0%29 福島県新地町 17 0.2% 81 神奈川県横浜市西区 2 0.0%30 茨城県水戸市 16 0.2% 81 神奈川県相模原市 2 0.0%30 千葉県市原市 16 0.2% 81 新潟県新潟市中央区 2 0.0%32 茨城県大洗町 14 0.1% 81 新潟県三条市 2 0.0%33 東京都中央区 13 0.1% 81 長野県中野市 2 0.0%34 岩手県盛岡市 12 0.1% 81 長野県飯山市 2 0.0%34 岩手県遠野市 12 0.1% 81 長野県野沢温泉村 2 0.0%34 埼玉県さいたま市 12 0.1% 107 北海道苫小牧市 1 0.0%37 岩手県野田村 11 0.1% 107 青森県むつ市 1 0.0%37 福島県二本松市 11 0.1% 107 青森県おいらせ町 1 0.0%37 埼玉県川越市 11 0.1% 107 青森県東通村 1 0.0%37 長野県栄村 11 0.1% 107 岩手県花巻市 1 0.0%41 北海道函館市 10 0.1% 107 岩手県二戸市 1 0.0%41 青森県青森市 10 0.1% 107 岩手県金ヶ崎町 1 0.0%41 茨城県日立市 10 0.1% 107 岩手県住田町 1 0.0%41 茨城県笠間市 10 0.1% 107 宮城県登米市 1 0.0%41 東京都品川区 10 0.1% 107 宮城県大河原町 1 0.0%46 千葉県松戸市 9 0.1% 107 宮城県柴田町 1 0.0%47 宮城県栗原市 8 0.1% 107 宮城県黒川郡 1 0.0%47 茨城県鹿嶋市 8 0.1% 107 福島県磐梯町 1 0.0%47 神奈川県横浜市 8 0.1% 107 福島県玉川村 1 0.0%47 新潟県新潟市 8 0.1% 107 福島県広野町 1 0.0%51 宮城県岩沼市 7 0.1% 107 福島県楢葉町 1 0.0%51 福島県田村市 7 0.1% 107 福島県相馬郡 1 0.0%51 埼玉県さいたま市浦和区 7 0.1% 107 茨城県土浦市 1 0.0%54 北海道釧路市 6 0.1% 107 茨城県潮来市 1 0.0%54 東京都大田区 6 0.1% 107 茨城県那珂市 1 0.0%56 岩手県滝沢村 5 0.0% 107 埼玉県さいたま市見沼区 1 0.0%56 宮城県亘理町 5 0.0% 107 埼玉県さいたま市岩槻区 1 0.0%56 宮城県松島町 5 0.0% 107 埼玉県深谷市 1 0.0%56 福島県白河市 5 0.0% 107 埼玉県越谷市 1 0.0%56 茨城県高萩市 5 0.0% 107 埼玉県三郷市 1 0.0%56 埼玉県所沢市 5 0.0% 107 埼玉県幸手市 1 0.0%56 埼玉県上尾市 5 0.0% 107 千葉県千葉市稲毛区 1 0.0%56 東京都江東区 5 0.0% 107 千葉県茂原市 1 0.0%56 東京都豊島区 5 0.0% 107 千葉県九十九里町 1 0.0%56 東京都調布市 5 0.0% 107 東京都立川市 1 0.0%56 神奈川県横浜市保土ヶ谷区 5 0.0% 107 東京都武蔵野市 1 0.0%56 新潟県十日町市 5 0.0% 107 東京都日野市 1 0.0%68 岩手県久慈市 4 0.0% 107 東京都福生市 1 0.0%68 宮城県白石市 4 0.0% 107 神奈川県横浜市南区 1 0.0%68 宮城県山元町 4 0.0% 107 神奈川県横浜市栄区 1 0.0%68 福島県会津若松市 4 0.0% 107 神奈川県川崎市 1 0.0%

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15

東日本大震災テレビ報道の検証

域,薄いグレーの網掛けは500人以上,太字

は100人以上の地域を示している。発災当日

は,被害の全貌がつかめず,また津波の警報

も広い地域に及んでいたため,多くの地域が

言及されているが,必ずしも被害の大きい地

域が上位になっているわけではない。原発事

故のため,12日以降は常に,福島第一原発の

所在地である福島県大熊町が1位を占め続け

ることになるが,日が経つにつれて被害の大

きかった地域が上位に集中してきている。

表4の左側は,死者・行方不明者100人以

上の22の市町村を,死者・行方不明者数の

多かった順に並べたものである。右側には,

1日ごとに,それらの市町村が音声情報で伝

えられた頻度を示した。これを見ると,常に

一定程度伝えられていた地域がある一方で,

1週間の間ほとんど伝えられなかった地域も

あったことがわかる。

一貫して多く伝えられた地域宮城県気仙沼市,仙台市については,1週

間を通じて伝えていたほか,宮城県石巻市,

岩手県陸前高田市,釜石市,宮古市,福島県

南相馬市,いわき市についても,比較的安定

して伝えられた。宮城県南三陸町や女川町に

ついては,発災当日はほとんど伝えていな

かったが,2日目以降からは伝えられるよう

になった。

市町村名 死者 行方不明 死者・不明計

宮城県石巻市 3175 717 3892

岩手県陸前高田市 1554 385 1939

宮城県気仙沼市 1027 377 1404

岩手県大槌町 802 551 1353

宮城県東松島市 1044 94 1138

岩手県釜石市 884 194 1078

宮城県名取市 911 70 981

宮城県女川町 571 409 980

宮城県南三陸町 561 341 902

岩手県山田町 604 211 815

宮城県仙台市 704 26 730

宮城県山元町 671 19 690

福島県南相馬市 640 23 663

岩手県宮古市 420 121 541

福島県相馬市 456 3 459

岩手県大船渡市 339 107 446

福島県いわき市 310 38 348

宮城県亘理町 257 13 270

宮城県多賀城市 188 1 189

福島県浪江町 146 38 184

宮城県岩沼市 182 1 183

福島県新地町 109 1 110※死者・不明者数は,消防庁災害対策本部「平成23年東北地方太平洋沖地震に

ついて(第144報)」による

表4 市町村ごとの被害者数と伝えられた頻度(死者・行方不明者100人以上の市町村)

11日 12日 13日 14日 15日 16日 17日 18日(15時台まで)

8 26 15 45 25 19 16 20

6 29 27 48 37 39 26 27

70 38 23 20 40 42 20 10

1 3 6 ― 4 1 18 2

2 2 11 7 3 6 5 ―

15 42 26 18 7 2 19 9

13 20 33 11 3 ― 7 ―

2 6 30 10 7 6 ― 1

― 38 44 48 38 35 34 13

― ― 3 ― 3 12 11 6

67 58 82 41 33 29 27 14

― 4 ― ― ― ― ― ―

7 18 6 10 23 34 8 4

4 16 16 11 7 36 8 ―

10 28 2 4 4 3 4 1

15 26 3 5 2 5 5 3

3 10 3 1 12 4 14 15

1 1 ― ― ― 3 ― ―

4 3 1 7 ― ― 11 4

― ― ― ― 2 ― ― ―

― 6 1 ― ― ― ― ―

― 7 1 9 ― ― ― ―太字:30回以上 黒字:20~29回 ■:10~19回 ■:10回未満

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16│NHK放送文化研究所年報2013

当初伝えられたが,減少した地域 宮城県名取市,福島県相馬市,岩手県大船

渡市は,発災後数日は比較的よく伝えられた

が,日が経つにつれて言及頻度が低くなった。

あまり伝えられなかった地域1週間を通じて,伝えられることの少な

かった地域もあった。岩手県大槌町,山田町,

宮城県東松島市,多賀城市は,発災当日には

ほとんど伝えられず,2,3日経ってようや

く伝えられるようになった。宮城県山元町,

亘理町,岩沼市,福島県浪江町,新地町につ

いては,1週間を通じて言及頻度が極めて少

なかった。

今回の震災報道における地域の偏りについ

て,関谷(2012)は,次のように述べている。

「東日本大震災は広域災害という側面を持

つ。そして,広域災害であるがゆえに,結果

的にメディアに取り上げられる地域と取り上

げられない地域が生まれた。被害の規模が大

きすぎて,取材者のキャパシティを超えたと

いってもよいだろう。報道と視聴者,購読者

との相互作用によって,印象としての『被災

地』が決定され,一方で『被災地でない』地域

が形成されていくことになった。」11)

被災者自身からも,自分たちの地域が報道

されないことについて,多くの不満の声が聞

かれた。山元町の臨時災害FM局「りんごラ

ジオ」代表の高橋厚氏は,局立ち上げの動機

について次のように語っている。

「宮城県の場合は,当初ニュースになって

いたのは,仙北の気仙沼であったり南三陸町

ばかりだったんですね。仙台から南の山元町

や亘理町のニュースは全然なかったんです。

……そこで町民の皆さんから,いったい山元

町の情報はどうなっているんだというような

声が,仙台の放送局へ寄せられたという経緯

がありました。そういうことを聞いて,情報

はぜひ必要だと思ったわけです。」12)

東北3県以外の被災地今回の災害では,岩手,宮城,福島の3県

以外に茨城県や千葉県などでも甚大な被害が

出ていた。しかし,これらの地域についての

報道は,上記3県に比べて圧倒的に少なかっ

た。このことについて,関谷(2012)は,以

下のように指摘している。

「岩手県・宮城県・福島県以外でも,茨城

県北茨城市,千葉県旭市などある限定された

地域では津波による人的被害・物的被害は甚

大である。だが,今回の災害では,茨城県と

図1 死者・行方不明者数   100人以上の市町村

宮古市山田町大槌町 釜石市

大船渡市 陸前高田市   気仙沼市   南三陸町   

名取市 岩沼市 亘理町 山元町 新地町相馬市南相馬市浪江町

仙台市

いわき市

東松島市多賀城市 

女川町石巻市太字:

ほとんど伝えられなかった市町村

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17

東日本大震災テレビ報道の検証

千葉県を合わせても岩手県・宮城県・福島県

と比較すると人的被害が少なかったために,

報道の優先順位が低く,結果,これらの地域

はあまり報道はなされなかった。」13)

実際,茨城県北茨城市,千葉県旭市につい

て情報が伝えられた頻度を見てみると(表5),

NHK総合,日本テレビ,フジテレビのいずれ

でも,極めて少ない。県単位で見てみても,

いずれの局のどの日も,茨城県,千葉県の情

報頻度(音声)は1~2%しかなく,極めて限

られていたことが確かめられる(表6)。

報道量と被害量の相関表7は,被害者数(死者・行方不明者の合計)

が100人を超えた22の市町村について,被

害者数と,日ごとの報道量との相関係数を算

出したものである。発災当日は0.133,翌12

日は0.299,13日は0.234と相関はほとんど

なく,被害の全体像がつかめていなかったこ

とが窺える。しかし,14日には0.626と相関

がやや強くなっており,ようやく被害状況の

おおよそがつかめてきたと見られる。しかし,

15日以降は,また相関が見られなくなって

いった。これは,原発事故の発生や計画停電

など,地震津波以外の情報も多く伝えられる

ようになったため,必ずしも被災者数の多い

地域ほど多く伝えられるという状況でなく

なったためだと考えられる。

1週間全体で見たときの相関係数は0.444

で,ごく弱い相関にとどまっていた。

Ⅳ 被災者向け情報と被災者発情報

次に本章では,被災者向け情報と被災者発

情報について見ていく。ただし,本稿で分析

の対象としているのは,最初にも述べたよう

に,在京の放送局の報道を東京で録画したも

のである。したがって,地方で全国放送を脱

して報道された内容は含まれていない。また,

表 5 北茨城市,旭市の出現頻度北茨城市 旭市

NHK総合

11日 0.0% 0.0%

12日 0.1% 0.1%

13日 0.0% 0.2%

14日 0.1% 0.4%

15日 0.0% 0.4%

16日 0.1% 0.1%

17日 0.4% 0.4%

18日 0.0% 0.0%

1週間全体 0.1% 0.2%

日本テレビ

11日 0.0% 0.0%

12日 0.1% 0.1%

13日 0.0% 0.0%

14日 0.0% 0.0%

72時間全体 0.0% 0.0%

フジテレビ

11日 0.0% 0.2%

12日 0.0% 0.3%

13日 0.0% 0.1%

14日 0.0% 0.7%

72時間全体 0.0% 0.3%

表 6 伝えられた地域(県別)3局72時間 岩手県 宮城県 福島県 東京都 茨城県 千葉県

NHK総合 7.7% 17.6% 21.6% 8.2% 1.4% 1.2%

日本テレビ 11.5% 17.7% 22.0% 6.4% 1.2% 1.2%

フジテレビ 12.2% 21.5% 25.0% 4.7% 1.4% 1.9%

NHK総合 岩手県 宮城県 福島県 東京都 茨城県 千葉県

11日 6.1% 19.3% 10.5% 26.0% 2.2% 2.5%

12日 9.1% 19.9% 28.0% 6.7% 2.1% 1.3%

13日 8.2% 19.0% 23.2% 4.9% 1.0% 1.0%

14日 6.0% 15.0% 16.8% 5.2% 1.1% 0.7%

15日 5.6% 13.6% 40.8% 3.5% 1.0% 1.0%

16日 8.2% 10.4% 35.7% 2.1% 1.0% 0.6%

17日 6.7% 11.8% 32.3% 2.6% 1.8% 1.1%

18日 10.0% 12.4% 31.0% 2.3% 0.7% 0.5%

1週間全体 7.5% 14.9% 28.6% 5.2% 1.3% 1.0%

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18│NHK放送文化研究所年報2013

NHKでは,Eテレや音声波で安否情報や生

活情報を放送するなど,波の使い分けを行っ

ていた。さらに,各局とも画面の上下や左右

のスペースに文字情報を流すL字(または逆

L字)と呼ばれる付加情報も放送していたが,

これらも分析には加えていない。あくまでも,

当該のチャンネルの主画面で音声や映像で伝

えられた情報内容のみの分析である。

Ⅳ-1 被災者情報の推移

表8は,NHK総合,日本テレビ,フジテレ

ビの3局の発災後72時間と,NHK総合1週

間について,伝えた音声情報の内容がどのよ

うに推移していったかを見たものである。

おおまかに被災者向けと考えられる「生活

情報」「避難呼びかけ」「救援・支援・政府対応」

を薄いグレー,被災者発と解釈できる「被災

者」「救出」を黒地白抜きで示した。「生活情報」

には,「交通情報」「水道・ガスの情報」「電話

や通信網の情報」「病院や医療情報」「その他

の生活情報」が含まれている。また,「被災者」

には,「避難所・被災者の様子」「被災者の要望・

訴え」が含まれる。

「生活情報」は,72時間で見ると,NHK総

合では7.9%⇒10.7%⇒17.7%と徐々に増え

表 7 市町村・被害者数と音声情報出現数との相関

市町村名 死者・不明計

出現数11日14時46分~12日4時59分

12日5時~13日4時59分

13日5時~14日4時59分

14日5時~15日4時59分

15日5時~16日4時59分

16日5時~17日4時59分

17日5時~18日4時59分

1週間全体

宮城県石巻市 3892 8 26 15 45 25 19 16 174

岩手県陸前高田市 1939 6 29 27 48 37 39 26 239

宮城県気仙沼市 1404 70 38 23 20 40 42 20 263

岩手県大槌町 1353 1 3 6 0 4 1 18 35

宮城県東松島市 1138 2 2 11 7 3 6 5 36

岩手県釜石市 1078 15 42 26 18 7 2 19 138

宮城県名取市 981 13 20 33 11 3 0 7 87

宮城県女川町 980 2 6 30 10 7 6 0 62

宮城県南三陸町 902 0 38 44 48 38 35 34 250

岩手県山田町 815 0 0 3 0 3 12 11 35

宮城県仙台市 730 67 58 82 41 33 29 27 351

宮城県山元町 690 0 4 0 0 0 0 0 4

福島県南相馬市 663 7 18 6 10 23 34 8 110

岩手県宮古市 541 4 16 16 11 7 36 8 98

福島県相馬市 459 10 28 2 4 4 3 4 56

岩手県大船渡市 446 15 26 3 5 2 5 5 64

福島県いわき市 348 3 10 3 1 12 4 14 62

宮城県亘理町 270 1 1 0 0 0 3 0 5

宮城県多賀城市 189 4 3 1 7 0 0 11 30

福島県浪江町 184 0 0 0 0 2 0 0 2

宮城県岩沼市 183 0 6 1 0 0 0 0 7

福島県新地町 110 0 7 1 9 0 0 0 17

被害者数との相関係数 0.133 0.299 0.234 0.626** 0.491* 0.351 0.427* 0.444* (Pearson の相関係数) **1%水準で有意 * 5%水準で有意

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19

東日本大震災テレビ報道の検証

ている。日本テレビでは,最初の24時間が

最も多く6.9%であったが,続く時間帯では,

4.7%⇒5.9%であり,どの時間帯も7%に達

しない。フジテレビの場合も,6.1%⇒3.9%

⇒6.6%とやはり7%に満たない比率で推移

していた。NHK総合の1週間の推移を見る

と,時間帯によって変動があるものの,常時

10%前後で推移していた。1週間を通じても

13日の17.7%が最も高く,14日以降原発事

故関連の報道が3割以上を占めるようになる

と,生活情報に割かれる時間が限られてきた

ように見受けられる。

「被災者」情報は,最初の72時間において,

NHK総合では,4.1%⇒5.9%⇒8.4%,日本

テレビ5.3%⇒8.0%⇒9.0%,フジテレビ

4.9%⇒8.9%⇒8.9%と,いずれの局も時間

が経つにつれて増えていった。「救出」情報

については,局による違い,とくにNHK総

合と民放局に開きがあった。「救出」情報の

推移と詳細については,次節で詳しく見る。

Ⅳ-2 救出情報

「救出」情報について最初の72時間の報道

を 見 る と,NHK総 合 で は2.5% ⇒1.6%

⇒1.0%と,もともと少ないが72時間の間

徐々に減少している。日本テレビは0.9%

⇒6.5%⇒3.3%で,24~48時間帯が最も多

い。フジテレビも,5.2%⇒10.3%⇒7.4%と,

やはり24~48時間帯が最も多く,この時間

帯の1割以上を占めていたことがわかる。

なお,図2は,被災者情報,救出情報が伝

表 8 情報内容(音声)の推移

地震 津波 火災 停電 原発関連

生活情報

避難呼びかけ

救援・支援・政府

対応被災者 救出

被害まとめ・振り返り

帰宅困難

計画停電 その他

NHK総合

最初の24時間 15.3% 24.8% 7.0% 0.8% 7.0% 7.9% 7.2% 6.0% 4.1% 2.5% 11.1% 2.4% 0.0% 3.9%

24時間~48時間 7.9% 12.2% 1.0% 2.4% 29.4% 10.7% 3.4% 8.8% 5.9% 1.6% 11.7% 0.0% 0.1% 4.9%

48時間~72時間 4.0% 11.6% 0.1% 2.2% 15.4% 17.7% 1.5% 3.7% 8.4% 1.0% 5.4% 0.0% 18.6% 10.4%

日本テレビ

最初の24時間 18.8% 20.7% 8.6% 1.9% 6.7% 6.9% 9.2% 4.3% 5.3% 0.9% 9.5% 4.4% 0.0% 2.7%

24時間~48時間 5.5% 21.7% 1.8% 2.7% 27.8% 4.7% 2.6% 4.8% 8.0% 6.5% 7.4% 0.1% 0.0% 6.5%

48時間~72時間 3.9% 11.5% 0.6% 1.0% 22.0% 5.9% 1.9% 4.4% 9.0% 3.3% 7.5% 0.1% 17.9% 11.0%

フジテレビ

最初の24時間 15.0% 21.8% 10.4% 1.1% 8.4% 6.1% 4.0% 5.7% 4.9% 5.2% 7.9% 4.2% 0.0% 5.4%

24時間~48時間 7.0% 17.7% 3.6% 0.6% 27.6% 3.9% 1.4% 5.1% 8.9% 10.3% 8.4% 0.0% 0.0% 5.5%

48時間~72時間 4.3% 16.9% 0.7% 1.0% 15.1% 6.6% 1.5% 5.1% 8.9% 7.4% 8.0% 0.4% 9.6% 14.6%

地震 津波 火災 停電 原発関連

生活情報

避難呼びかけ

救援・支援・政府

対応被災者 救出

被害まとめ・振り返り

帰宅困難

計画停電 その他

NHK総合

11日14時46分~12日14時59分 15.3% 24.8% 7.0% 0.8% 7.0% 7.9% 7.2% 6.0% 4.1% 2.5% 11.1% 2.4% 0.0% 3.9%

12日15時~13日14時59分 7.9% 12.2% 1.0% 2.4% 29.4% 10.7% 3.4% 8.8% 5.9% 1.6% 11.7% 0.0% 0.1% 4.9%

13日15時~14日14時59分 4.0% 11.6% 0.1% 2.2% 15.4% 17.7% 1.5% 3.7% 8.4% 1.0% 5.4% 0.0% 18.6% 10.4%

14日15時~15日14時59分 2.7% 5.8% 0.9% 0.1% 35.9% 8.7% 0.8% 4.8% 10.5% 0.5% 7.9% 0.1% 15.0% 6.3%

15日15時~16日14時59分 9.8% 0.6% 0.1% 0.1% 34.5% 10.5% 0.6% 4.7% 14.6% 0.7% 7.2% 0.0% 6.6% 9.9%

16日15時~17日14時59分 0.8% 1.4% 0.0% 0.3% 31.0% 14.1% 1.1% 7.0% 13.6% 0.6% 8.1% 0.0% 4.2% 17.7%

17日15時~18日15時59分 1.3% 0.6% 0.0% 0.3% 29.0% 10.8% 1.9% 8.3% 18.9% 0.9% 7.6% 0.0% 6.5% 13.8%

1週間全体 5.9% 8.1% 1.3% 0.9% 26.0% 11.5% 2.3% 6.2% 10.9% 1.1% 8.4% 0.4% 7.3% 9.6%

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20│NHK放送文化研究所年報2013

図2 被災者情報,救出情報(音声)の推移

25

20

15

10

5

0

(%)

11日14-17

11日18-20

11日21-23

12日0-2

12日3-5

12日6-8

12日9-11

12日12-14

12日15-17

12日18-20

12日21-23

13日0-2

13日3-5

13日6-8

13日9-11

13日12-14

13日15-17

13日18-20

13日21-23

14日0-2

14日3-5

14日6-8

14日9-11

14日12-14

被災者情報救出情報

NHK総合

25

20

15

10

5

0

(%)

11日14-17

11日18-20

11日21-23

12日0-2

12日3-5

12日6-8

12日9-11

12日12-14

12日15-17

12日18-20

12日21-23

13日0-2

13日3-5

13日6-8

13日9-11

13日12-14

13日15-17

13日18-20

13日21-23

14日0-2

14日3-5

14日6-8

14日9-11

14日12-14

被災者情報救出情報

日本テレビ

25

20

15

10

5

0

(%)

11日14-17

11日18-20

11日21-23

12日0-2

12日3-5

12日6-8

12日9-11

12日12-14

12日15-17

12日18-20

12日21-23

13日0-2

13日3-5

13日6-8

13日9-11

13日12-14

13日15-17

13日18-20

13日21-23

14日0-2

14日3-5

14日6-8

14日9-11

14日12-14

被災者情報救出情報

フジテレビ

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21

東日本大震災テレビ報道の検証

えられた時間帯をさらに細かく示した。

表9は,発災後72時間に音声情報で「救出」

が伝えられた市町村の上位である。日本テレ

ビ,フジテレビで宮城県気仙沼市が突出して

いるほか,救出情報の多かったフジテレビで

は,福島県白河市,福島県相馬市,宮城県南

三陸町などにおける救出の様子が多く伝えら

れていた。またフジテレビでは,救出シーン

をまとめて編集したミニコーナーも,何度か

放送されていた。

表10は,「救出」情報が伝えられた際に,

誰が伝えていたか,その発話者を分析した

結果である。NHK総合では,アナウンサー,

キャスターが最も多く66.2%を占め,次い

でレポーター,記者,解説委員が25.4%,

被災者,被災地の人は2.8%と少ない。日本

テレビの場合はレポーター,記者,解説委

員の比率が半数近くを占め,アナウンサー,

キャスターが4割程度,フジテレビの場合は,

アナウンサー,レポーターともに4割前後で

あった。被災者,被災地の人は,日本テレ

ビ7.8%, フ ジ テ レ ビ6.9% と, い ず れ も

NHK総合に比べると高く,「救出」の現場で

も,被災者や被災地の人にマイクを向けて

いたことがわかる。

Ⅳ-3 被災者向け情報

前述したように,「生活情報」は,最初の

72時間,NHK総合では徐々に増えていった

が,14日以降は比率が下がり,10%前後で

推移していた。もっとも「生活情報」に関し

ては,先述したようにEテレやL字(または

逆L字)画面でも伝えられている。今回の分

析ではこれらは対象に加えていない。表8も

音声で伝えられた情報を集計

したものである。その限りで

はあるが,主にどのような内

容が伝えられたのかを見てみ

たい。

表11は,生活情報をさら

に細分化し,どのような内容

が伝えられたかを見たもので

あ る。 最 初 の72時 間 で も,

NHK総合の1週間で見ても,

交通情報が多く伝えられてお

り,その他のライフライン関

係の情報は極めて限られてい

たことがわかる。また,表12

表 9 「救出」が伝えられた市町村NHK総合 日本テレビ フジテレビ 3局計

件数 % 件数 % 件数 % 件数 %

宮城県気仙沼市 4 5.5% 66 42.6% 84 25.8% 154 27.8%

福島県白河市 0 0.0% 0 0.0% 69 21.2% 69 12.5%

岩手県陸前高田市 7 9.6% 21 13.5% 12 3.7% 40 7.2%

福島県相馬市 0 0.0% 2 1.3% 28 8.6% 30 5.4%

宮城県石巻市 15 20.5% 7 4.5% 7 2.2% 29 5.2%

宮城県南三陸町 1 1.4% 8 5.2% 20 6.2% 29 5.2%

岩手県大船渡市 3 4.1% 4 2.6% 15 4.6% 22 4.0%

宮城県名取市 5 6.8% 1 0.6% 16 4.9% 22 4.0%

宮城県仙台市 2 2.7% 2 1.3% 10 3.1% 14 2.5%

宮城県東松島市 1 1.4% 6 3.9% 3 0.9% 10 1.8%

福島県南相馬市 5 6.8% 0 0.0% 4 1.2% 9 1.6%

青森県八戸市 3 4.1% 1 0.6% 3 0.9% 7 1.3%

福島県双葉町 1 1.4% 4 2.6% 1 0.3% 6 1.1%100%=各局の「救出情報」(音声)

表 10 「救出」情報(音声)の話者NHK総合 日本テレビ フジテレビ

アナウンサー,キャスター 66.2% 39.6% 43.2%

レポーター,記者,解説委員 25.4% 49.4% 41.6%

専門家,研究者 1.4% 0.0% 6.3%

被災者,被災地の人 2.8% 7.8% 6.9%

その他 4.2% 3.2% 2.0%100%=各局の「救出情報」(音声)

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22│NHK放送文化研究所年報2013

に示したように,その多くを首都圏や関東地

方の情報が占めており,被災地に特化した生

活情報ではなかったことが確認できる。今回

の分析対象が在京局の全国放送中心であった

ことから,当然の結果ともいえる。それぞれ

の地域の生活情報については,よりきめ細か

い内容を,各種のメディア,手段を使って伝

える必要がある。今回も,L字画面の活用や

波の使い分けを行うなどの対応が行われてい

たが,さらに,地元放送局やコミュニティー

ラジオ等との連携,あるいはインターネット

の活用など,多様な連携や仕組みの構築が求

められる14)。

表 11 生活情報(音声)の推移交通情報 水道,ガスの情報 電話,通信網の情報 病院,医療情報

NHK総合

最初の24時間 6.6% 0.2% 0.9% 0.1%

24時間~48時間 4.5% 1.3% 1.1% 1.9%

48時間~72時間 11.7% 1.8% 1.1% 0.5%

72時間全体 7.6% 1.1% 1.0% 0.8%

日本テレビ

最初の24時間 5.1% 0.6% 1.0% 0.2%

24時間~48時間 2.8% 1.0% 0.1% 0.1%

48時間~72時間 4.1% 0.4% 0.1% 0.3%

72時間全体 4.0% 0.7% 0.4% 0.2%

フジテレビ

最初の24時間 4.7% 0.3% 0.8% 0.1%

24時間~48時間 2.2% 0.7% 0.2% 0.0%

48時間~72時間 4.4% 0.6% 0.1% 0.5%

72時間全体 3.8% 0.5% 0.3% 0.2%

交通情報 水道,ガスの情報 電話,通信網の情報 病院,医療情報

NHK総合

11日14時46分~12日14時59分 6.6% 0.2% 0.9% 0.1%

12日15時~13日14時59分 4.5% 1.3% 1.1% 1.9%

13日15時~14日14時59分 11.7% 1.8% 1.1% 0.5%

14日15時~15日14時59分 6.1% 0.3% 0.1% 0.5%

15日15時~16日14時59分 3.6% 0.1% 1.0% 2.2%

16日15時~17日14時59分 4.9% 0.6% 0.6% 3.4%

17日15時~18日15時59分 3.7% 0.3% 0.1% 2.6%

1週間全体 5.9% 0.7% 0.7% 1.6%

表 12 どの地域の生活情報を伝えたか

3局72時間 岩手県 宮城県 福島県 東日本・東北地方 東京・首都圏 関東地方 その他

NHK総合 1.9% 12.7% 2.3% 23.4% 33.5% 14.3% 11.8%

日本テレビ 6.3% 11.7% 5.8% 28.7% 26.0% 9.0% 12.6%

フジテレビ 13.7% 16.6% 3.9% 22.9% 32.7% 5.4% 4.9%

岩手県 宮城県 福島県 東日本・東北地方 東京・首都圏 関東地方 その他

NHK総合1週間 4.1% 11.3% 3.9% 25.5% 30.3% 10.8% 14.0%100%=各局の「生活情報」(音声)

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23

東日本大震災テレビ報道の検証

Ⅳ-4 被害・被災者について語られた内容

表13(24~25ページ)は,NHK総合で伝

えられた「被害」および「被災者」関連の音声

情報を,テキストマイニングの手法で分析し

た結果をまとめたものである。1日ごとに,

単語と単語の係り受け(TrueTellerでは「主

な話題」と表現)で出現数の多い順に上位50

を並べてある。

これを見ると,1週間を通じて,「死亡−

確認する」,「被害−受ける」「被害−大きい」

「人−避難する」が常に上位にあるが,順序

は変動しており,17日以降は「人−避難する」

が最も多くなる。このなかで,12日~14日は,

「人−取り残す」「人−孤立する」が上位にあ

り,連絡や救援の届かない状態や地域が生じ

ていたことを伝えている。また,「連絡−と

れない」「行方−わからない」などの文言も多

く被害の状況や規模がつかめないことを伝え

ていた。

図3は,NHK総合の12日から13日の報道

における「孤立」「取り残す」といった言葉を

含むセンテンス件数の推移を示している。

12日の12時台などセンテンス件数の多い

時間帯に,孤立している地域の情報がまとめ

て伝えられていた。

15日以降になると「寒さ−続く」「体調−

崩す」「物資−必要だ」など,被災地や避難所

の厳しい状況を伝える文言が目立つように

なる。

これらのなかで,「被害−壊滅的だ(壊滅

的な被害)」「沿岸部−壊滅的だ」など,「壊滅

的」という表現が多用されていたことも確認

できる。これについては,後述する。

Ⅳ-5 被災者情報の地域差

では,被災者について,どのようなことが

伝えられていたのだろうか。まず,被災者に

関する情報が伝えられた地域を見てみる。図

4(26ページ)は,「被災者の様子(避難所・被

災者の様子,救出の様子)」が伝えられた市

町村を多い順に示している。岩手県陸前高田

市が最も多く,「被災者の様子」全体の13%

を占めている。次いで,宮城県南三陸町が

11%,石巻市,宮城県仙台市,気仙沼市が9

~10%で,これらの5市町村だけで伝えら

れた「被災者の様子」の約半数を占めていた。

今回の震災は,被災が非常に広範囲にわたっ

たが,「被災者の様子」として具体的に伝え

図3 「孤立」を含むセンテンス件数の推移

3/12 53/12 63/12 73/12 83/12 93/12 103/12 113/12 123/12 133/12 143/12 153/12 163/12 173/12 183/12 193/12 203/12 213/12 223/12 233/13 03/13 13/13 23/13 33/13 43/13 53/13 63/13 73/13 83/13 93/13 103/13 113/13 123/13 133/13 143/13 153/13 163/13 173/13 183/13 193/13 203/13 213/13 223/13 23

50 10 15 20 25 30 35(件)

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24│NHK放送文化研究所年報2013

表13 NHK総合 被害・被災者情報「主な話題」の推移11日〈2008件) 12日〈3895件) 13日〈4400件) 14日〈3104件)

No. 単語1 単語2 テキスト件数 単語1 単語2 テキスト

件数 単語1 単語2 テキスト件数 単語1 単語2 テキスト

件数1 死亡 確認する 84 死亡 確認する 127 死亡 確認する 184 死亡 確認する 1072 情報 入る 80 被害 受ける 72 被害 受ける 97 人 避難する 903 1人 死亡する 68 被害 大きい 58 これ 確認する 67 被害 受ける 794 津波 流す 56 遺体 見つかる 54 人 避難する 67 遺体 見つかる 775 行方 わかる(否定) 55 被害 出る 53 連絡 取る(否定) 67 被害 大きい 596 遺体 見つかる 47 津波 流す 47 被害 大きい 65 連絡 取る(否定) 507 被害 大きい 45 津波 押し寄せる 44 津波 受ける 58 これ 確認する 438 情報 ある 44 行方 わかる(否定) 43 被害 壊滅的だ 54 人 超える 429 被害 受ける 41 これ 確認する 38 遺体 見つかる 49 見通し 示す 41

10 けが人 出る 29 中継 伝える 37 被害 出る 48 県警察本部 示す 3411 行方不明者 出る 28 情報 入る 36 1人 死亡する 47 1万人 超える 3212 人 避難する 28 人 避難する 35 3人 死亡する 44 見通し 超える 3213 被害 出る 27 様子 見える 35 人 いる 44 人 死亡する 3214 人 いる 25 被害 壊滅的だ 32 地震 受ける 44 明らかだ する 3215 津波 押し寄せる 25 人 いる 31 津波 流す 43 被害 壊滅的だ 3116 2人 死亡する 24 津波 受ける 31 人 死亡する 42 3人 死亡する 3017 津波 出る 24 連絡 取る(否定) 28 連絡 とる(否定) 38 安否 わかる(否定) 2818 これ 確認する 23 3人 死亡する 27 1万人 取る(否定) 32 津波 流す 2819 一部 倒壊する 23 煙 上がる 26 協力 得る 31 人 いる 2720 建物 倒壊する 23 火災 起きる 26 中継 伝える 31 県内 死亡する 2621 けが 軽い 22 救助 待つ 26 ふう 思う 30 遺体 超える 2422 詳しい わかる(否定) 21 状態 孤立する 26 確認 急ぐ 30 人 取り残す 2423 水 つかる 21 NHK まとめる 24 病院 ある 30 浜辺 見つかる 2424 下敷き 倒壊する 20 煙 白い 24 宮城県 確認する 29 南三陸町 見つかる 2225 警察 見つかる 20 1人 死亡する 23 人 孤立する 29 南相馬市 出る 2226 県警察本部 入る 20 今 見える 23 津波 押し寄せる 29 被害 出る 2227 死者 出る 20 津波 来る 22 水 浸かる 28 19人 死亡する 2128 情報 流す 20 建物 見える 20 青葉区 ある 27 いわき市 出る 2129 津波 受ける 20 水 つかる 20 津波 巻き込む 27 おそれ ある 2130 連絡 とる(否定) 19 範囲 広い 20 遺体 確認する 26 茨城県 死亡する 2131 確認 急ぐ 18 沿岸部 受ける 19 行方 分かる(否定) 26 中継 伝える 2132 気仙沼市 出る 18 炎 上がる 19 陸前高田市 確認する 26 100人前後 見つかる 2033 石巻市 出る 18 煙 立ち上る 18 市街地 確認する 25 1人 死亡する 2034 被害 壊滅的だ 18 可能性 ある 18 地震 確認する 25 岩手県 確認する 2035 4人 死亡する 17 水 浸かる 18 地震 死亡する 25 宮城県 確認する 2036 連絡 入る 17 行方 分かる(否定) 17 福祉施設 倒壊する 25 1,000人 見つかる 1937 3人 死亡する 16 行方不明 流す 17 それ 確認する 24 おそれ 超える 1938 下敷き 確認する 16 若林区 見つかる 17 気仙沼市 確認する 24 情報 ない 1939 船 流す 16 人 孤立する 17 仙台市 確認する 24 人 上る 1940 中継 伝える 16 6人 死亡する 16 大船渡市 確認する 24 津波 押し寄せる 1941 土砂崩れ 起きる 16 火災 大規模だ 16 東松島市 確認する 24 牡鹿半島 ある 1842 火災 起きる 15 火災 発生する 16 福島県内 確認する 24 半数 超える 1843 状況 伝える 15 人 死亡する 16 自衛隊 確認する 23 福島県内 確認する 1844 頭 打つ 15 1,000人 超える 15 栃木県 死亡する 23 県 開く 1745 範囲 広い 15 屋上 避難する 15 17人 死亡する 22 場所 ある 1746 NHK まとめる 14 活動 続く 15 2人 流す 22 人 確認する 1747 若林区 見つかる 14 人 取り残す 15 ワゴン車 さらう 22 石巻市 ある 1748 全容 わかる(否定) 14 岩手県内 確認する 14 沿岸部 壊滅的だ 22 地震 受ける 1749 多数 出る 14 警報 出る 14 群馬県 死亡する 22 中心 確認する 1750 地区 受ける 14 地震 確認する 14 市内 死亡する 22 東北地方 確認する 1751 津波 さらう 14 津波 巻き込む 14 水 流す 2252 天井 崩れる 14 津波 到達する 14 道路 さらう 2253 病院 ある 14 波 さらう 2254 函館市 死亡する 2255 避難所 設ける 2256575859

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25

東日本大震災テレビ報道の検証

15日〈2359件) 16日〈4248件) 17日〈2916件) 18日〈2647件)

No. 単語1 単語2 テキスト件数 単語1 単語2 テキスト

件数 単語1 単語2 テキスト件数 単語1 単語2 テキスト

件数1 死亡 確認する 94 死亡 確認する 113 人 避難する 66 人 避難する 782 人 避難する 72 人 避難する 91 死亡 確認する 57 死亡 確認する 723 遺体 見つかる 61 被害 受ける 89 被害 受ける 46 被害 受ける 644 被害 受ける 57 これ 確認する 72 人 いる 44 遺体 見つかる 525 これ 確認する 50 被害 大きい 56 行方 分かる(否定) 43 被害 大きい 466 被害 大きい 44 被害 壊滅的だ 51 これ 確認する 35 人 超える 357 人 確認する 41 行方 分かる(否定) 50 雪 降る 32 見通し 示す 348 安否 わかる(否定) 37 人 いる 45 冷え込み 厳しい 29 連絡 取る(否定) 349 被害 壊滅的だ 33 警察庁 確認する 44 被害 大きい 27 県警察本部 示す 31

10 1万人 超える 28 行方不明者 ある 44 人 確認する 24 明らかだ する 2811 行方 わかる(否定) 28 警察 ある 42 警察 ある 23 人 いる 2712 避難所 ある 27 雪 降る 35 行方不明者 ある 23 1万人 超える 2513 津波 流す 25 津波 受ける 32 体調 崩す 23 これ 確認する 2514 1人 死亡する 24 人 確認する 31 人 超える 19 見通し 超える 2515 中継 伝える 24 人 分かる(否定) 31 人 崩す 19 人 死亡する 2516 避難所 避難する 24 地震 受ける 31 人 死亡する 17 人 取り残す 2417 人 見つかる 22 家族 ある 30 冷え込み 続く 17 被害 壊滅的だ 2418 人 相次ぐ 22 中継 伝える 30 地震 受ける 16 県内 死亡する 2319 津波 受ける 21 届け出 ある 30 届け出 ある 16 中継 伝える 2120 人 いる 20 遺体 見つかる 28 被害 壊滅的だ 16 津波 流す 2121 石巻市 ある 20 寒さ 続く 28 ふう 思う 15 遺体 超える 1722 被害 出る 20 体調 崩す 27 人 分かる(否定) 15 場所 ある 1723 3人 死亡する 19 被害 出る 24 中継 伝える 15 3人 死亡する 1624 行方 分かる(否定) 19 市 避難する 22 避難所 ある 15 状況 伝える 1625 連絡 取る(否定) 18 人 多い 22 津波 受ける 14 津波 押し寄せる 1626 沿岸部 見つかる 17 見込み 続く 21 被害 出る 14 南三陸町 見つかる 1627 いわき市 出る 16 避難所 避難する 21 避難所 避難する 14 安否 分かる(否定) 1528 安否 確認する(否定) 16 状態 続く 20 連絡 取る(否定) 14 人 上る 1529 牡鹿半島 ある 16 いわき市 出る 19 姿 見る 13 津波 来る 1530 女川町 ある 16 牡鹿半島 ある 19 手 入る(否定) 13 南相馬市 出る 1531 南相馬市 出る 16 県警察本部 ある 19 病院 避難する 13 被害 出る 1532 浜辺 見つかる 16 女川町 ある 19 家族 ある 12 100人前後 見つかる 1433 おそれ ある 15 人 崩す 19 遺体 見つかる 11 19人 死亡する 1434 安否 分かる(否定) 15 石巻市 ある 19 市 避難する 11 いわき市 出る 1435 岩手県 確認する 15 南相馬市 出る 19 人 増える 11 きのう 開く 1436 人 上る 15 物資 必要だ 19 人 多い 11 茨城県 死亡する 1437 人 超える 15 1万人 超える 18 津波 流す 11 宮城県 確認する 1438 津波 巻き込む 15 宮城県 確認する 18 おそれ ある 10 県 開く 1439 1,000人 超える 14 県内 確認する 18 宮城県内 死亡する 10 行方 分かる(否定) 1440 およそ 確認する(否定) 14 大震災 確認する 18 見通し 示す 10 情報 ない 1441 状態 続く 13 地域 壊滅的だ 18 状態 続く 10 地震 ある 1442 人 崩す 13 被災地 送る 18 地震 確認する 10 浜辺 見つかる 1443 水 届く(否定) 13 避難所 ある 18 14人 死亡する 9 1,000 超える 1344 数 達する 13 1人 死亡する 17 3400人 超える 9 1,000人 見つかる 1345 体調 崩す 13 ガソリン 足りる(否定) 17 寒さ 厳しい 9 屋上 取り残す 1346 明らかだ する 13 ふう 思う 17 寒さ 続く 9 会議 超える 1347 避難所 伝える 17 警察庁 確認する 9 岩手県 確認する 1348 物資 送る 17 状況 厳しい 9 場所 取り残す 1349 人 訪れる 9 情報 ある 1350 濁流 流す 9 多数 ある 1351 地震 ある 9 大船渡市 確認する 1352 地震 発生する 9 中心 確認する 1353 内定 取り消す 9 津波 受ける 1354 余儀ない される 9 津波 襲う 1355 東北地方 確認する 1356 避難所 避難する 1357 福島県内 確認する 1358 物資 届く 1359 陸前高田市 確認する 13

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26│NHK放送文化研究所年報2013

られた地域は,ごく限られたところに集中し

ていたことになる15)。 

地域によっては,伝えられてはいても,「被

災者の様子」ではなく,別の情報が伝えられ

ていた場合もある。図5は,比較的多く伝え

られていた市町村について,それぞれどの

ような情報が伝えられていたかを見たもの

である。

岩手県陸前高田市や宮城県石巻市は,やは

り「被災者の様子」が多く伝えられており,

伝えられた情報の半数近くを占めている。岩

手県釜石市の場合は「津波の様子」が最も多

く伝えられていた。福島県相馬市や宮城県名

取市,岩手県大船渡市でも,「被災者の様子」

より「津波の被害」の方が多い。宮城県女川

町の場合は,伝えられた情報の半数以上が「原

発関連」であった。

Ⅳ-6 誰が,どのように伝えていたか

誰が伝えたか本節では,「被災者・救援」に関する情報

を誰が伝えているかを見てみる。表14は3

局72時間,NHK総合1週間について,それ

ぞれ分析した結果である。

表14を見ると,どの局も,アナウンサー,

キャスターないしレポーター,記者が伝える

図4 NHK1週間被災者の様子(音声情報)が伝えられた市町村

岩手県陸前高田市13%

宮城県南三陸町11%

100%=「被災者の様子」(音声)

宮城県石巻市10%

宮城県仙台市10%宮城県

気仙沼市9%

福島県南相馬市 3%

その他・区域不明11%

図5 市町村ごとに伝えられた情報内容(音声)

宮城県仙台市(322)

宮城県気仙沼市(263)

宮城県南三陸町(250)

岩手県陸前高田市(239)

宮城県石巻市(174)

岩手県釜石市(138)

福島県南相馬市(110)

岩手県宮古市(98)

宮城県名取市(87)

岩手県大船渡市(64)

宮城県女川町(62)

福島県いわき市(62)

福島県相馬市(56)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100(%)

■避難所・被災者の様子 ■津波の被害 ■津波の様子 ■被害まとめ・振り返り■救出の様子・情報 ■原発関連 ■その他

24 9 8 8 51

30 15 3 4 3 45

38 11 9 19 23

50 12 9 8 7 14

47 7 3 9 13 21

30 7 37 4 4 18

22 15 5 9 5 19 25

30 10 8 10 42

24 26 15 7 6 22

16 20 3 13 5 43

29 52 127

29 5 13 11 42

7 45 4 44

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27

東日本大震災テレビ報道の検証

ケースが多く,両者あわせるとNHK総合で

8割近くを占めるほか,日本テレビ,フジテ

レビでも7割以上となる。「被災者,被災地

の人」が伝えているのは,3局とも1割強で

ある。

NHK総合の1週間の推移を見てみると,

「被災者,被災地の人」が伝える比率は,13

日からは2割強に増えている。

図6は,被災者が発話していた比率の推移

を,より細かい時間帯で見たものである。

11日~13日の間は比較的少ないが,13日の

夜から深夜にかけて,さらに14日以降は日

中の時間帯に比較的多くなっている。

被災者,被災地の人が伝えたことは彼らは,どのようなことを伝えていたのだ

ろうか。テキストマイニングの結果を見てみ

る。

表15は,発話者が「被災者,被災地の人」

である発言について,1日ごとに「主な話題」

出現件数の多い順に並べたものである。11

日は,被災者の発言そのものが少ないので,

析出されていない16)。

図6 話者=「被災者・被災地の人」率の推移

11日14-1711日18-2011日21-2312日0-212日3-512日6-812日9-1112日12-1412日15‐1712日18‐2012日21‐2313日0‐213日3‐513日6‐813日9‐1113日12‐1413日15‐1713日18‐2013日21‐2314日0‐214日3‐514日6‐814日9‐1114日12‐1414日15‐1714日18‐2014日21‐2315日0‐215日3‐515日6‐815日9‐1115日12‐1415日15‐1715日18‐2015日21‐2316日0‐216日3‐516日6‐816日9‐1116日12‐1416日15‐1716日18‐2016日21‐2317日0‐217日3‐517日6‐817日9‐1117日12‐1417日15‐1717日18‐2017日21‐2318日0‐218日3‐518日6‐818日9‐1118日12‐14

0 2 4 6 8 10 12 14 16(%)

表 14 「被災者・救援」情報の発話者

発災後72時間アナウンサー,

キャスターレポーター,記者,

解説委員 専門家,研究者 被災者,被災地の人 その他

NHK総合 52.1% 26.8% 3.5% 11.8% 5.8%日本テレビ 47.6% 24.0% 7.5% 13.6% 7.3%フジテレビ 35.9% 35.9% 7.4% 13.7% 7.1%

発災後1週間アナウンサー,

キャスターレポーター,記者,

解説委員 専門家,研究者 被災者,被災地の人 その他

NHK総合

11日14時46分~12日4時59分 62.8% 25.6% 7.0% 0.0% 4.7%12日5時~13日4時59分 50.0% 31.4% 2.9% 6.6% 9.1%13日5時~14日4時59分 49.4% 26.4% 0.0% 22.5% 1.7%14日5時~15日4時59分 50.7% 16.7% 3.3% 22.0% 7.2%15日5時~16日4時59分 50.0% 16.5% 0.0% 24.7% 8.8%16日5時~17日4時59分 43.2% 18.7% 1.8% 23.1% 13.2%17日5時~18日4時59分 50.5% 14.6% 1.0% 25.6% 8.4%

18日5時~15時59分 55.2% 17.1% 7.2% 16.6% 3.9%1週間全体 50.2% 20.3% 2.5% 19.2% 7.8%

100%=当該チャンネルの「被災者・救援情報」(音声)

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28│NHK放送文化研究所年報2013

表15 話者=被災者 「主な話題」推移(各日上位20位まで,3件未満除く)12日(148件) 13日(324件) 14日(653件) 15日(665件)

No. 単語1 単語2 テキスト件数 単語1 単語2 テキスト

件数 単語1 単語2 テキスト件数 単語1 単語2 テキスト

件数1 全部 流す 7 水 ない 7 しょうが ない 7 ここ 来る 72 ここ 来る 6 寒い 寝る(否定) 6 津波 来る 7 声 聞く 63 津波 来る 6 頭 痛い 6 情報 ない 6 前向きだ いく 64 それ 探す 4 夜 寝る(否定) 6 1週間 過ぎる 5 いい わかる(否定) 55 威力 考える(否定) 4 連絡 とる(否定) 6 1人 産む 5 それ 来る 56 威力 流す 4 状態 探す 5 あと 別れる 5 だめだ おる 57 船 流す 4 生活 戻れる 5 ここ 途切れる 5 どっち いい 58 2階 上がる 3 生存者 探す 5 ここ 来る 5 一緒 おる 59 あと 流す 3 疲れ すごい 5 ショック 大きい 5 気持ち いう 5

10 いい 生きる 3 薬 飲む 5 ふう 感じる 5 気持ち やる 511 うち 流す 3 連絡 つく(否定) 5 ふう 大きい 5 気仙沼 動く(否定) 512 何(否定) 流す 3 2階 来る 4 ラジオ わかる(否定) 5 元気だ する 513 水 ふさがる 3 すごい 落ち着く 4 高台 逃げる 5 今 おる 514 騒ぎ えらい 3 それ つく(否定) 4 今 大きい 5 女房 おる 515 道路 ふさがる 3 何年 かく 4 妻 過ぎる 5 生活 いう 516 波 来る 3 感じ いう 4 姿 踊る 5 前向きだ やる 517 高い 落ち着く 4 子 頑張る 5 孫 おる 518 作業 かく 4 自分 産む 5 中学校 いる 519 子供たち 痛い 4 情報 わかる(否定) 5 電話 だめだ 520 情報 ない 4 大きい 途切れる 5 部分 ある 521 状態 ない 4 長男 守る 5 部分 不便だ 522 状態 やる 4 電話 通じる(否定) 523 食料 ない 4 妊婦 過ぎる 524 人 つく(否定) 4 飛行機 搬送する 525 知り合い つく(否定) 4 約束 産む 526 痛い 寝る(否定) 4 約束 守る 527 娘 いる(否定) 4 約束 別れる 528 踊り 踊る 529 歴史 途切れる 5

16日(1275件) 17日(973件) 18日(516件)

No. 単語1 単語2 テキスト件数 単語1 単語2 テキスト

件数 単語1 単語2 テキスト件数

1 人 いる 12 手 入る(否定) 9 しょうが ない 72 ふう 思う 11 どこ いる 8 津波 来る 73 これ ある 8 ふう 思う 8 ラジオ わかる(否定) 54 これ 生きる 8 人 いる 7 情報 わかる(否定) 55 5階 いる 7 部分 引っかかる 7 電話 通じる(否定) 56 あと 頼る 7 いい 思う 6 踏み場 ない 47 どこ 頼る 7 いっぱい いる 6 動き 取る(否定) 48 水 ない 7 ここ 来る 6 これ 行う 39 命 ある 7 状況 厳しい 6 だんだん 来る 3

10 10箱 出る 6 盛岡 行く 6 ない いう 311 遠野 寒い 6 いい 分かる(否定) 5 家族 会う 312 患者 使う 6 シート 敷く 5 情報 ない 313 車 ない 6 ない わかる 5 波 来る 314 津波 ある 6 ヒーター つける 5 本当 よい 315 灯油 ない 6 学校 敷く 516 透析 ある 6 行為(否定) できる(否定) 517 日 ある 6 私 助かる 518 避難 やる 6 柔道 使う 519 避難 無事だ 6 床 敷く 520 薬 ある 6 状態 できる(否定) 521 薬 使う 6 畳 ある 522 畳 いう 523 雪 降る 524 体育館 つける 525 部分 取り除く 526 薬(否定) できる(否定) 5

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東日本大震災テレビ報道の検証

12日は,「全部−流す」「津波−来る」など

津波の状況,13日には,「寒い−寝る(否定

=寝られない)」「疲れ−すごい」などの苛酷

な状況のほか,「連絡−とる(否定=とれな

い)」「情報−ない」など,情報がなく連絡が

とれない状況が語られ始める。これは14日

以降も続く。

表16は,単語(名詞)のランキング上位で

あるが,ここでも「状態」「状況」「情報」「連絡」

などの語が目立つ。そして,「家族」「息子」「娘」

「お父さん」など家族を表す言葉も上位にあ

る。避難はしたものの,家族の安否や行方が

わからない状況を語る人が多かったことがわ

かる。「どこ」という語が上位にあることも,

このことを示しているといえよう。

また,14日以降は,「電気」「食べ物」「薬」「灯

油」「ガソリン」なども上位に来ており,避難

が続く中で不足している物資についての訴え

が伝えられている。

アナウンサーやレポーターの表現被災者情報については,アナウンサーやレ

表16 話者=被災者 名詞ランキング(各日上位20位まで 2件未満除く)11日(35件) 12日(148件) 13日(324件) 14日(653件) 15日(665件) 16日(1275件) 17日(973件) 18日(516件)

No. 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数1 状態 5 うち 9 水 24 今 29 それ 40 あと 41 それ 61 それ 21 2 こちら 2 水 9 ない 21 これ 26 今 35 ここ 41 これ 27 これ 20 3 それ 2 ここ 8 いる 20 それ 26 ここ 22 それ 40 どこ 27 津波 19 4 みんな 2 人 8 ねる 16 あと 24 これ 22 これ 39 車 27 今 17 5 水 2 津波 8 ある 16 津波 22 息子 17 人 38 今 26 あと 13 6 地震 2 波 8 そこ 16 水 21 自分 16 薬 34 そこ 25 ここ 11 7 波 2 どこ 7 思う 16 ここ 20 あと 15 津波 30 私 25 上 11 8 私 7 来る 15 自分 18 人 14 今 27 水 25 状況 11 9 船 7 連絡 14 情報 18 電話 13 水 26 ここ 23 水 11

10 全部 7 言う 13 家族 15 うち 12 状態 25 自分 23 そこ 10 11 あと 6 流す 13 状況 14 どこ 12 状況 23 状態 22 情報 10 12 今 6 すごい 13 そこ 13 気持ち 11 病院 22 状況 21 中 10 13 息子 6 家 13 皆さん 12 お父さん 10 私 21 なん 20 皆さん 9 14 2階 5 今 12 人 12 水 10 灯油 21 感じ 20 人 9 15 それ 5 2階 12 安否 11 全部 10 命 20 娘 20 何 8 16 家 5 車 11 家 11 孫 10 ふう 19 中 19 家族 8 17 これ 4 いう 11 妻 11 薬 10 今日 19 家 18 電話 8 18 バック 4 それ 11 上 11 なん 9 連絡 19 人 18 波 8 19 威力 4 どこ 11 1人 10 一緒 9 家族 18 あと 16 しょうが 7 20 何(否定) 4 ヘリコプター 12 きのう 10 車 9 ガソリン 17 ふう 16 家 7 21 普通 4 窓 12 中 10 裕行 9 家 14 何か 16 自分 7 22 おじいさん 3 あと 11 電気 10 お母さん 8 何 13 部分 16 状態 7 23 車 3 これ 11 子 9 家 8 寒さ 13 何 15 かたち 6 24 上 3 次 11 私 9 家族 8 電話 13 みんな 14 みんな 6 25 騒ぎ 3 濁流 10 状態 9 先 8 きょう 12 手 14 ラジオ 6 26 道路 3 途中 10 食べ物 9 中学生 8 こっち 12 ガソリン 13 私 6 27 避難場所 3 2階 9 何 8 郵便局 8 そこ 12 こちら 13 足 6 28 民宿 3 ふう 9 電話 8 1人 7 災害 12 いっぱい 12 駄目 6 29 名前 3 外 9 波 8 シバタ 7 申し訳(否定) 12 気持ち 12 あら 5 30 上 9 うち 7 ぜんそく 7 中 12 上 12 うち 5 31 しょうが 7 安心 7 全部 12 安否 5 32 みんな 7 皆さん 7 朝 12 釜石 5 33 関係 7 情報 7 木 12 妻 5 34 車 7 状態 7 孫 5 35 心 7 生活 7 36 声 7 37 中学校 7 38 病院 7

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30│NHK放送文化研究所年報2013

ポーターが伝えるケースが圧倒的に多かった

が,どのような表現が用いられていたのだろ

うか。本節では,被災者や被災地の状況を伝

える際に用いられた語の特徴を見る。   

表17~19は,NHK総 合1週 間 の「 被 害・

被災者」に関する報道のうち,話者がアナウ

ンサー,キャスター,レポーター,記者,解

説委員であるものについて,1日ごとに語彙

を集計した結果である。

形容詞で見ると(表17),「壊滅的」という

語が,連日2位から7位と上位にあり,「大

規模だ」「深刻だ」などよりも多く使われてい

る。東日本大震災報道の中で,「壊滅的」と

いう語が頻繁に用いられていたことは記憶に

残っているが,発災初日から,すでに高頻度

で使われていたことが確認できた。

表18は名詞,表19は動詞の上位である。

「がれき」「瓦礫」という言葉について,震

災後に行われたNHKの放送用語委員会では,

倒壊した建物の残骸や漂着物など,震災に

よって生じた廃棄物を「がれき」「瓦礫」と表

現することについては慎重であるべきで,場

合によっては言い換えも必要という意見が出

されている17)。この表現がいつごろからど

の程度用いられたかを見ようと考えたが,発

災1週間の報道では,まだ出現頻度は低かっ

た。

表17 話者=アナウンサー等 形容詞ランキング(各日上位20位まで)11日(1883件) 12日(3496件) 13日(3677件) 14日(2260件) 15日(1616件) 16日(2857件) 17日(1867件) 18日(1946件)

No. 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数1 大きい 53 大きい 86 大きい 89 大きい 87 大きい 57 多い 75 厳しい 53 大きい 71 2 詳しい 38 白い 36 壊滅的だ 56 必要だ 39 壊滅的だ 32 大きい 70 多い 39 多い 36 3 軽い 22 必要だ 35 多い 42 多い 38 多い 28 必要だ 57 大きい 34 明らかだ 31 4 ない 20 壊滅的だ 33 詳しい 37 明らかだ 35 深刻だ 24 厳しい 56 必要だ 32 必要だ 30 5 壊滅的だ 18 詳しい 28 必要だ 36 壊滅的だ 33 必要だ 23 壊滅的だ 51 ない 20 壊滅的だ 26 6 強い 16 広い 24 難しい 32 ない 27 厳しい 21 ない 29 深刻だ 18 ない 24 7 広い 16 多い 23 ない 28 厳しい 23 明らかだ 17 強い 25 壊滅的だ 16 厳しい 20 8 男性だ 16 ない 22 新ただ 22 詳しい 18 ない 16 寒い 23 強い 14 難しい 15 9 多い 12 近い 22 広い 21 難しい 15 新ただ 15 深刻だ 21 難しい 9 寒い 11

10 危険だ 11 このようだ 18 明らかだ 19 寒い 14 無事だ 14 難しい 21 余儀ない 9 新ただ 11 11 必要だ 11 高い 18 厳しい 18 新ただ 14 どのようだ 11 不自由だ 20 十分だ(否定) 8 高い 10 12 具体的だ 9 大規模だ 18 高い 15 高い 10 長い 11 病院だ 15 詳しい 8 次々 9 13 大規模だ 9 新ただ 17 長い 14 次々 9 温かい 8 次々 14 長い 8 詳しい 9 14 近い 8 黒い 14 間違いない 13 何とか 8 白い 8 長い 14 不自由だ 8 何とか 8 15 厳しい 6 広範囲だ 13 悪い 10 深刻だ 8 寒い 7 十分だ 12 間違いない 7 深刻だ 7 16 病院だ 6 病院だ 13 早い 10 真っ暗だ 6 不安だ 7 重要だ 12 次々 7 真っ暗だ 6 17 明らかだ(否定) 6 明らかだ 12 無事だ 10 大事だ 6 冷たい 7 どのようだ 11 早い 7 どのようだ 5 18 はっきり 5 強い 11 黒い 9 長い 6 危険だ 6 余儀ない 11 冷たい 7 完全だ 5 19 安全だ 5 危険だ 10 どのようだ 8 余儀ない 6 なんとか 5 悪い 10 高い 6 強い 5 20 広範囲だ 5 激しい 10 何とか 8 どのようだ 5 緊急だ 5 大変だ 10 十分だ 6 十分だ 5 21 女性だ 5 次々 10 寒い 8 完全だ 5 十分だ 5 新ただ 6 病院だ 5 22 忙しい 5 無事だ 10 甚大だ 8 強い 5 難しい 5 短い 6 忙しい 5 23 無事だ 5 十分だ 5 必死だ 5 病院だ 6 欲しい(否定) 5 24 重い 5 欲しい(否定) 5 25 重要だ 5 26 多く 5 27 病院だ 5 28 粉々だ 5 29 忙しい 5 30 無事だ 5 31 欲しい(否定) 5

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東日本大震災テレビ報道の検証

Ⅴ 分析結果のまとめ

Ⅲ章,Ⅳ章での分析結果を以下に簡単にま

とめる。

□ 被害状況の把握の推移被害の全容はなかなかつかめず,伝えられ

た被害の規模と実際の被害規模には乖離が

あった。1週間経過した時点で伝えられた被

害者数も,現在確認されている被害者数とは

表18 アナウンサー等 名詞ランキング(各日上位50位まで)11日(1883件) 12日(3496件) 13日(3677件) 14日(2260件) 15日(1616件) 16日(2857件) 17日(1867件) 18日(1946件)

No. 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数1 津波 260 津波 320 津波 358 人 305 人 282 人 353 人 296 人 243 2 情報 182 人 259 人 339 津波 236 避難所 196 避難所 232 避難所 186 津波 204 3 1人 143 宮城県 219 地震 299 被害 175 津波 126 被災地 196 地震 134 被害 143 4 被害 138 今 207 宮城県 251 避難所 154 被害 114 被害 160 津波 122 避難所 126 5 人 137 被害 204 被害 244 地震 139 宮城県 112 これ 141 病院 87 宮城県 116 6 宮城県 113 建物 184 死亡 186 宮城県 138 死亡 103 地震 126 被害 86 地震 114 7 建物 105 ヘリコプター 173 岩手県 178 遺体 121 地震 85 死亡 121 これ 76 今 100 8 男性 105 様子 173 状況 177 これ 113 これ 78 物資 117 宮城県 72 状況 100 9 2人 104 地震 170 これ 174 状況 112 遺体 73 今 111 被災地 69 これ 92

10 死亡 93 現在 168 遺体 140 死亡 107 災害 71 宮城県 98 福島県 66 遺体 89 11 状況 93 状況 165 建物 136 今 101 安否 70 それ 97 岩手県 61 中 85 12 地震 92 これ 164 福島県 130 今回 93 1万人 64 状況 96 今日 60 今回 72 13 これ 86 水 162 それ 123 中 92 中 63 行方不明者 93 死亡 60 死亡 72 14 警察 81 岩手県 135 仙台市 120 東北地方 83 町 63 津波 92 状況 59 建物 63 15 けが 80 映像 130 連絡 119 建物 79 対策本部 59 岩手県 90 行方 57 東北地方 63 16 仙台市 78 死亡 130 水 118 岩手県 73 南三陸町 58 中 89 中 54 岩手県 61 17 午後 74 救助 124 町 116 連絡 72 水 57 寒さ 88 数 53 情報 58 18 岩手県 71 状態 112 避難所 114 県 71 今回 54 病院 86 町 53 南三陸町 58 19 多数 65 福島県 106 南三陸町 110 1万人 69 今日 53 今回 76 雪 49 こちら 55 20 行方 59 上空 103 病院 110 南三陸町 69 岩手県 52 支援 74 家族 48 活動 54 21 3人 57 ここ 98 救助 109 安否 66 今 52 家族 73 水 48 状態 54 22 大船渡市 56 情報 91 今回 107 災害 65 行方 50 地域 70 灯油 45 県 53 23 石巻市 53 活動 89 東北地方 102 陸前高田市 65 数 47 燃料 70 行方不明者 43 きょう 52 24 けが人 52 画面 85 今日 97 情報 63 食料 45 今日 69 警察 42 石巻市 52 25 現在 52 病院 85 自衛隊 97 状態 63 福島県 45 数 69 今回 42 陸前高田市 52 26 行方不明 52 仙台市 84 情報 95 石巻市 62 状況 43 福島県 69 市 42 1万人 51 27 今 51 それ 83 今 93 活動 61 1人 41 雪 67 ガソリン 41 宮城 51 28 市内 51 先 82 1万人 88 宮城 61 仙台市 41 行方 64 県 41 連絡 50 29 県警察本部 50 遺体 80 沿岸部 85 県警察本部 59 東北地方 41 水 63 昨日 41 県警察本部 49 30 福島県 50 午前 75 陸前高田市 84 およそ 57 状態 40 町 63 仙台市 38 災害 48 31 連絡 49 大船渡市 75 午後 83 自衛隊 57 地域 40 関東 62 寒さ 37 自衛隊 48 32 中 48 3人 73 状態 82 町 57 陸前高田市 40 市 62 車 37 がれき 46 33 遺体 47 煙 72 住民 79 対策本部 56 人口 38 ガソリン 60 今 36 住民 45 34 若林区 47 こちら 71 数 77 こちら 55 石巻市 38 状態 60 職員 36 仙台市 44 35 火災 46 火災 69 道路 77 仙台市 54 1万 37 こちら 59 冷え込み 36 ここ 42 36 女性 46 孤立 69 青森県 76 きょう 52 家族 37 市町村 59 住民 35 安否 41 37 300人 45 住宅 69 300人 75 きのう 51 気仙沼市 37 警察 58 状態 34 およそ 40 38 気仙沼市 45 気仙沼市 67 1人 74 福島県 50 大震災 37 警察庁 58 避難 33 今日 39 39 宮城 45 陸前高田市 66 県 74 1万 47 連絡 37 第一 58 それ 32 対策本部 39 40 病院 45 1人 65 災害 73 住民 47 ガソリン 36 自治体 55 活動 32 病院 38 41 200人 44 避難所 65 3人 72 がれき 46 市内 36 福島 55 関東 32 見通し 37 42 NHK 44 町 64 住宅 71 それ 46 自衛隊 36 1万 52 東北地方 32 場所 37 43 行方不明者 44 石巻市 63 中 71 見通し 44 情報 36 災害 52 県内 31 町 37 44 5人 43 行方 60 様子 71 姿 44 避難 36 灯油 52 支援 31 それ 36 45 水 43 周辺 60 活動 69 3人 43 病院 36 宮古市 50 南三陸町 31 福島県 36 46 映像 42 中継 60 市内 69 水 43 およそ 35 避難 50 体調 30 きのう 35 47 住宅 42 宮古市 58 現在 67 ここ 42 支援 35 沿岸部 49 1万 29 支援 35 48 避難所 41 行方不明 58 気仙沼市 66 支援 42 被災地 35 県 49 連絡 29 物資 35 49 様子 39 仙台 58 被災地 66 病院 42 女川町 34 南三陸町 48 NHK 28 水 34 50 災害 38 中 58 電話 65 家族 41 ここ 32 東北地方 47 市町村 28 捜索 33

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32│NHK放送文化研究所年報2013

3000人程度の開きがあった。

□ 情報空白地域の発生被害が大きいにもかかわらず情報が伝えら

れない「情報空白地域」が生じていた。連日

伝えられた地域がある一方で,1週間経って

もほとんど伝えられない地域が残っていた。

具体的には,宮城県気仙沼市,仙台市,石巻

市,岩手県陸前高田市,釜石市,宮古市,福

島県南相馬市,いわき市などは,安定して伝

えられていた。一方,宮城県山元町,亘理町,

岩沼市,福島県浪江町,新地町などは,1週

間を通じて言及頻度が極めて少なかった。

□ 被災者向け情報と被災者発の情報のバランス被災者向け情報である「生活情報」は,

NHK総合の場合,発災後日を追うにつれて

増えていったが,14日以降,福島第一原発

事故が多く伝えられるようになると相対的に

少なくなった。伝えられた「生活情報」の多

くを交通情報が占めており,岩手県,宮城県,

福島県や東北地方だけでなく,首都圏や関東

地方の情報も多く伝えられていた。

被災者に関する情報については,日を追う

ごとに増えていったが,被災者の情報が伝え

られる地域は限られていた。

表19 アナウンサー等 動詞ランキング(各日上位30位まで)11日(1883件) 12日(3496件) 13日(3677件) 14日(2260件) 15日(1616件) 16日(2857件) 17日(1867件) 18日(1946件)

No. 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数 単語 件数1 死亡する 217 ある 314 ある 304 ある 231 避難する 166 ある 284 ある 161 ある 186 2 ある 173 確認する 217 確認する 267 避難する 177 ある 151 避難する 183 避難する 142 避難する 157 3 確認する 128 死亡する 179 死亡する 246 確認する 152 確認する 109 確認する 122 確認する 79 確認する 106 4 わかる(否定) 121 見える 173 避難する 171 超える 122 受ける 68 受ける 108 いる 73 超える 104 5 出る 111 見る 162 受ける 158 受ける 98 わかる(否定) 67 続く 93 分かる(否定) 63 いる 75 6 避難する 103 流す 115 孤立する 141 死亡する 96 見つかる 67 いる 89 続く 62 受ける 75 7 入る 102 伝える 113 見る 126 見つかる 81 伝える 66 いう 79 受ける 61 伝える 70 8 流す 90 孤立する 112 伝える 108 いる 78 超える 57 分かる(否定) 78 超える 59 死亡する 68 9 伝える 73 思う 109 いる 107 見る 70 続く 50 伝える 74 死亡する 53 見る 61

10 倒壊する 70 避難する 107 続く 105 伝える 70 不足する 46 超える 69 伝える 53 続く 57 11 受ける 55 入る 99 流す 99 続く 66 出る 44 出る 63 見る 41 見つかる 56 12 いる 52 わかる(否定) 96 出る 89 わかる(否定) 57 死亡する 43 思う 61 出る 38 上る 42 13 見つかる 52 出る 93 取り残す 82 取る(否定) 53 いう 41 不足する 59 使う 33 流す 40 14 起きる 50 受ける 86 起きる 72 上る 50 いる 36 足りる(否定) 49 増える 33 取る(否定) 37 15 見る 41 続く 76 取る(否定) 68 流す 50 分かる(否定) 36 使う 48 いう 28 する 35 16 続く 39 いる 71 見つかる 66 する 42 使う 34 送る 45 降る 27 思う 35 17 崩れる 33 取り残す 70 分かる(否定) 66 示す 41 流す 30 見る 42 流す 27 いう 34 18 押し寄せる 31 起きる 65 超える 65 思う 36 上る 29 のぼる 39 訪れる 23 示す 34 19 観測する 31 見つかる 64 見える 53 足りる(否定) 36 見る 28 入る 39 合わせる 22 分かる(否定) 34 20 取り残す 31 上る 60 思う 51 いう 35 相次ぐ 28 死亡する 37 捜す 22 わかる 31 21 乗る 29 押し寄せる 59 みる 48 わかる 34 足りる(否定) 27 降る 35 入る 22 足りる(否定) 31 22 いう 26 上がる 57 押し寄せる 47 分かる(否定) 34 壊れる 24 急ぐ 32 崩す 22 開く 30 23 巻き込む 24 いう 56 行う 47 開く 33 する 23 合わせる 31 亡くなる 21 行う 29 24 転倒する 24 わかる 48 いう 45 行う 29 思う 23 届く 30 残る 19 取り残す 27 25 上る 22 当たる 41 使う 44 見える 28 のぼる 22 運ぶ 29 続ける 19 見える 25 26 さらう 21 救助する 40 当たる 43 取り残す 27 取る(否定) 20 聞く 29 不足する 19 わかる(否定) 23 27 まとめる 21 待つ 40 わかる(否定) 42 出る 27 届く(否定) 20 する 28 行う 18 届く 22 28 落ちる 21 行う 39 倒壊する 42 届く 25 話す 19 見つかる 28 足りる(否定) 18 しのぐ 20 29 つかる 20 離れる 38 入る 42 探す 24 あわせる 18 住む 28 相次ぐ 17 運ぶ 19 30 急ぐ 19 分かる(否定) 37 求める 40 まとめる 22 運ぶ 17 上る 28 呼びかける 16 孤立する 19 31 当たる 19 進める 40 当たる 22 確認する(否定) 17 来る 19 32 亡くなる 19 歩く 22

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33

東日本大震災テレビ報道の検証

□ 被災地・被災者の表現・描写被災者の状況は,主にアナウンサーやレ

ポーターによって伝えられ,被災者自身の発

言として伝えられることは多くなかった。そ

の中では,情報不足や家族との連絡がとれな

いこと,避難所の厳しい環境や物資不足等が

伝えられていた。

今回の震災の被害の甚大さを示す特徴的な

語彙として,「壊滅的」という形容詞がかな

り頻繁に使われていた。「がれき」という言

葉は,この段階では,まだそれほど頻出して

いなかった。

Ⅵ 課題と考察

被害状況の把握

発災からしばらくの間,「確認された死亡

者数」は実際の被害規模とは大きく乖離して

おり,発災後1週間を経過した時点でも,

3000人弱の開きが残っていた。

まちづくり計画研究所所長の渡辺実はス

ケール感が持てない中で推定数値を伝える

と,状況判断や対策を誤らせる恐れがある,

と指摘している18)。

しかし,確認された数値を伝えるばかりで

は,想定される被害規模との乖離が大きすぎ,

かえって災害の規模に対する判断を誤らせか

ねない。災害の規模が大きく,被害が大きく

なればなるほど,被害規模の把握は難しくな

る。今回の報道では,確認された被害者数以

外にも,ヘリコプターから観察された状況や,

連絡のとれない住民数の情報など,被害の大

きさを予測できる情報を合わせて伝える工夫

がなされていた。今後,通信手段の進展など

によって被災地周辺の情報の収集が可能にな

れば,より迅速な状況把握につながるかもし

れない。

震災から1年半が経った2012年9月,東日

本大震災の発生直後からテレビや新聞,イン

ターネットを通じて流れた大量の情報を集

積・分析し,次の災害に向けて適切な情報流

通施策の提言やサービスの開発に資するため

の「東日本大震災ビッグデータワークショッ

プ」という,企業横断的なプロジェクトが実

施された19)。これらのデータを活用するこ

とで,人々や車の動きの急激な変化や情報・

通信の断絶状況を把握したり,被災者自身や

被災地周辺から発信された情報を効率的に収

集し,公的機関による情報を補完していくこ

とも可能になると考えられる。

情報の空白地帯被災者や被災地の状況を伝える情報は日を

追って増え,NHK総合の場合,発災から1

週間後には,全放送時間の2割近くにも達し

ていた。ただし,伝えられた地域には偏りが

あり,被災者の様子が伝えられたケースの半

分以上が5つの市町村で占められていた。震

災後に行われたシンポジウムで,「ブランド

被災地」という言葉を耳にした。別のシンポ

ジウムでは,「金持ち被災地」という言葉も

使われていた。メディアで頻繁に伝えられる

ことによって,被災地として多くの人々に認

識され,義援金やボランティアなどの支援が

多く寄せられるようになる一方で,伝えられ

ることの少なかった地域には寄せられる支援

が少ないと指摘されていた20)。実際,三浦

(2012)は,地域ごとの報道出現回数と義援

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34│NHK放送文化研究所年報2013

金額,ボランティア数との相関を調べ,とく

に義援金額との間に高い相関が見られたこと

を報告している21)。今回の分析においても,

NHK総合1週間の音声情報における出現回

数の順位と,2011年3月時点でのボランティ

ア数(全国社会福祉協議会まとめ)の順位の

相関係数を算出してみた。しかし,この値は

0.272にとどまり,強い相関といえる関係性

は見いだせなかった。

とはいえ,1週間の報道の中で頻繁に伝え

られた地域がある一方で,被害の大きさにも

かかわらずほとんど伝えられなかった地域

があったことは検証された。被害が大きけれ

ば大きいほど,その状況を伝える手段が途絶

され,被災地であることの認識さえ得られな

い場合も生じる。また被害の大きさが認識さ

れても物理的にその場所に到達できないこ

とも少なくない。こういう状況を乗り越えて

伝えるためには,その場所が被災しているこ

とをいち早く認識する手段の模索や,その場

所からの情報が得られないという事実を伝

えて情報を求めるような方法もあってしか

るべきであろう。

先に紹介した「東日本大震災ビッグデータ

ワークショップ」では,参加したNHKのメ

ンバーによって,「情報の空白地帯」の発生

状況をできるだけ迅速に把握し,補完する情

報を探索するシステムの開発研究が行われて

いる22)。新しい技術によって,これまで不

可能とされてきたことのいくばくかが可能と

なったり,少なくとも補完的な情報を得るこ

とができるようになることを期待したい。

被災者・被災地の表現被災者や被災地を示す表現や形容詞の選択

については,テキストマイニングによる量的

な分析しか手がけられなかったため,詳細な

分析にはいたらなかった。アナウンサーやレ

ポーターの発言では「壊滅的」という語が早

い段階からかなり頻繁に用いられていた。そ

うとしか表現できないような惨状であったと

もいえるが,頻繁に用いられることで,常套

句化してしまう恐れもある。被災の当事者に

とってどう受け止められるかということも考

慮する必要がある表現といえよう。

「がれき」という表現については,量的には,

この時期,それほど多用されてはいなかった

が,分析対象にした時期以降の報道では,頻

繁に用いられた23)。こうした語彙の選択,

使い方については,出現頻度だけでなく,そ

れが使われた状況や前後の文脈も含めて検討

する必要がある。後述の「エモーショナルな

表現の問題」とも合わせて今後の検証課題で

ある。

小田が指摘していた「表層的エモーショナ

リズム」と見られる傾向があったかどうかに

ついては,内容分析やテキストマイニングと

いった量的分析では,把握することが難し

かった。いわゆる“絵になる”場所,光景が

多用されていたかについては,具体的な映像

内容を検証しなければならないし,「ステレ

オタイプ」「感傷的・情緒的な表現」も,定義

が難しく量的な分析には向かない。渡辺

(2011)が批判する「被災者の心を傷つけるよ

うなインタビューや,避難所にずかずか入っ

ていくような取材」24)についても同様であ

る。これらについては,実際の報道をつぶさ

に見ていく必要があり,膨大な作業となるの

で,具体的な番組やシーンをとらえた事例研

究的な方法でのアプローチをするしかないだ

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35

東日本大震災テレビ報道の検証

ろう。

ゼミ生とともに,発災から1ヶ月間の新聞

(朝日,毎日,読売,河北新報)の紙面分析

を行った早稲田大学の花田(花田+教育学部

花田ゼミ〈2012〉)は,その報告書のなかで全

国紙に見られる当事者性の欠如を指摘してい

る。全国紙は,「全国」というより「中央」の

視点に立って「地方」を見ているため,「匿名

性が高く,自分自身の足場をもたず,責任主

体がはっきりせず……当事者とならない」と

の批判である25)。被災者や被災地の表現や

取材姿勢についても,この「当事者性」が大

きく関わっていると考えられる。こうした視

点からの分析も試みてみたいところである。

震災報道の検証には,このようにまだ多く

の課題が残されている。一歩ずつではあるが,

検証作業を続けていきたいと考えている。

(はら ゆみこ)

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36│NHK放送文化研究所年報2013

東日本大震災報道分析マニュアル (2011.10.31版)

<説明・注意事項>(省略)

1 分析対象(省略)2 分析単位 1分毎に,毎分22秒の時点における画面の内容を

記録します。(「22秒」はランダムに抽出したポイン

トです。今回の分析対象は,連続する時間を扱うこ

とになるのですが,対象を秒単位で分割し,かつそ

れを集約すると仮定して,60分の1の等間隔で抽出

したことになります。)

3 担当者名 と担当者内の 通し番号 (省略)4 分析の起点(省略)5 サンプルID (省略)6 不明な場合の扱いについて(省略)7 チャンネル,放送日,時間帯について(省略)8 分類コード以下のそれぞれについては,報道内容を見ながらあ

てはまるコード番号を記入していってください。

8-1 基本画面 (基本画面の説明省略)

1 スタジオ:テレビ局のスタジオで収録された内

容が映し出されている。

2 VTR:VTRで過去に撮影された映像が映し出さ

れている。

3 中継:現地の映像がナマ中継で映し出されてい

る,ビルの屋上などのロボットカメラで撮って

いる映像(天カメ)を含む。

4 文字情報:主として文字情報が映し出されてい

る。文字の背景に映像が使われていても,文字

情報が主たる情報だと受け止められる場合を含

む。震度や津波警報を示した日本地図などの図

情報も含む。

5 模型,CG:スタジオセットの模型やイラスト,

CG動画などの映像

6 その他

8-2 画面の 登場人物

 画面に映っている人物の種類を特定し,以下の

コード番号を記入してください。スタジオの出演者

や記者会見をしている人,インタビューに答えてい

る人などテレビに出演している人であり,街頭で行

き交う人や避難所の被災者などテレビにたまたま

映っている人を特定する必要はありません。複数の

種類の人物が出ている場合は,主要な人物を3人ま

で記入してください。ここでいう「被災地」「被災者」

などの「被災」とは,被害の大小や地域にかかわらず,

画面の中で「被害を受けた地域,人として伝えられ

ている」場合を指します。画面に人物が登場してい

ない場合は0を記入してください。

10 アナウンサー,キャスター

20 レポーター,記者,解説委員

30 専門家,研究者

40 41~42以外の政治家,中央官庁の官僚

41 首相,官房長官

42 原子力安全保安院の職員   

50 自治体の首長,職員

60 気象庁の職員

70 警察,消防,自衛隊の関係者

80 被災者,被災地の人

90 帰宅困難者

100 タレント(専門家,研究者以外のコメンテー

ター)

110 その他

120 東京電力関係者

8-3  映像情報内容

 画面から伝えられている情報が,次のどれにあた

るかを判断し,コード番号を記入してください。ほ

とんどの場合,画面に複数の情報が出ていますが,

その中で中心となる情報を1つ選んでください。L

字型の文字スーパーや津波警報の出ている地域を示

す地図スーパーは中心となる情報としてはカウント

しません。「被害まとめ」とは,死傷者数や倒壊家屋

などの被害の件数をまとめたもので,「振り返り」と

は,地震発生からの経過を時間を追ってまとめたも

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東日本大震災テレビ報道の検証

のです。時間を追ってまとめたかどうかわからない

ときは,「13 地震の被害」や「23 津波の被害」な

どに内容ごとにコーディングしてください。

11 3月11日14時46分に発生した地震の揺れの様

子(スタジオの揺れ,揺れている最中の天カメ,

街頭など)

12 震度や震源の情報,地震のメカニズム

13 地震の被害(火災,停電を除く,火災は31,停

電は32にコードする)

14 緊急地震速報

15 余震(3月11日14時46分の地震以外の地震)の

揺れの様子

21 津波の様子(津波が押し寄せている最中,水が

流れている状態)

22 津波警報や到達時刻の情報,観測した津波の情

23 津波の被害(津波が引いた後の様子,水に浸っ

ている状態)

24 津波の解説,津波のメカニズム

31 火災の様子

32 停電の様子,停電の情報

41 交通情報(道路の不通,渋滞,鉄道の不通,航

空路線の運休など)

42 水道とガスの情報

43 電話や通信網の情報

44 病院や医療情報

45 被害まとめ,振り返り

46 その他の生活情報

51 帰宅困難者,帰宅状況,翌朝の通勤の様子

61 下記の621~66以外の原子力発電所,原子力施

設に関する情報

621 原子力発電所に関する政府の会見,発表

622 原子力発電所に関する保安院の会見,発表

623 原子力発電所に関する東京電力の会見,発表

63 原子力発電所・放射線等に関する解説

64 原子力発電所現地の様子

65 原子力発電所事故にともなう避難の呼び掛け,

行動の呼び掛け

66 原子力発電所関連の政府の動き,対応

71 避難の呼び掛け,行動の呼びかけ,防災のため

の情報

72 避難所,被災者の様子

73 被災者の要望,訴え

74 救援に関する情報

75 救出の様子,救出の情報

76 人物(スタジオ内のアナウンサーなど)

77 政府・自治体の対応

78 復旧・復興・支援に関する情報

80 何も起こっていない,何が起こっているかわか

らない

81 その他

82 天気予報

83 計画停電関連

90 CM

8-4 どこの映像か 

 地域・都道府県コード (総務省統計局,統計に用

いる標準地域コードを使用,省略)

 区域コード (同上,省略)

8-5  音声情報内容 (8-3と同じ,省略) 

 「22秒」時点がまったく無音の場合は,直後の音声

で判断してください。アナウンサーやレポーターの

読みだけでなく,会見やインタビューの場合も,そ

の発言についてそれぞれ内容を判断してください。

声がない場合も,波が押し寄せる音や何かが壊れる

音など,現地の状況がわかる場合「13 地震の被害」

や「23 津波の被害」などのように,あてはまるもの

にコーディングしてください。

8-6 どこの情報(音声)か (8-4と同じ,省略)

8-7  発話している人物 (8-2と同じ,省略)

8-8  BGMの有無 (省略)

8-9  特記事項 (省略)

(本マニュアルの作成にあたっては,日本大学文理

学部中瀬剛丸教授の協力を得た)

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38│NHK放送文化研究所年報2013

注:1)厚生労働省2012年9月6日報道発表資料

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei11/dl/16_hou.pdf

2)警察庁 東日本大震災について「被害情報と警察措置」(2012年9月5日)http://www.npa.go.jp/archive/keibi/biki/higaijokyo.pdf

3)NHKが毎年行っている調査によると,ラジオの週間接触者率は2010年6月は41.1%だったが,2011年6月には37.5%,2012年6月は36.5%と減少が続いており,今後の災害に備えてラジオをどう有効に活用していけるかが課題となっている。

4)井上裕之「大洗町はなぜ『避難せよ』と呼びかけたのか~東日本大震災で防災行政無線放送に使われた呼びかけ表現の事例報告~」『放送研究と調査』2011年9月号など。岩手県大槌町,宮城県気仙沼市,石巻市,塩釜市は,避難の呼びかけを命令口調に改めたことが報じられている。(http://www.47news.jp/CN/201208/CN2012082101001128.html)

5)田中孝宜・原由美子「東日本大震災 発生から24時間 テレビが伝えた情報の推移」『放送研究と調査』2011年12月号,田中孝宜・原由美子「東日本大震災 発生から72時間 テレビが伝えた情報の推移~在京3局の報道内容分析から」『放送研究と調査』2012年3月号

6)24時間分析の結果から,NHK総合とフジテレビの報道内容の違いが最も大きく,日本テレビがその中間的な内容であったため,この3局を選んだ。

7)テキストマイニング分析には,野村総合研究所のTrueTellerV.7.0を用いた。

8)内容分析は1分間に1時点を抽出してコーディングしているため,抽出時点以外のタイミングで言及している可能性がある。ここでの言及量の多寡や順位は,相対的な差を示している。 

09)注5参照10)発災(11日14時46分)から1週間ということで,

18日15時台までを分析対象期間とした。そのため,18日の集計は,15時台までを対象にしたものである。

11)関谷直也「『災害の社会心理』から考えるマスメディアの超えるべき課題」『Journalism』2012年4月号(p.48)

12)番組インタビューでの発言からhttp://www.nhk.or.jp/nhkvnet/sport/report-ringo-01.html

13)注11に同じ(p.49)14)例えば,NHKや東北大学,NTTグループなどは,

総務省の委託研究として「災害情報を迅速に伝達するための放送・通信連携基盤技術の研究開発」を進めており,この中で地域に特化した生活情報の提供を検討している。

15)こうした偏りが生じることについては,やむを得ない側面もある。被災地からの中継を行う場合,被害の大きな地域には,そもそも取材者や中継者が到達できない場合があり,さらに中継場所の確保も難しい。また,ようやく中継場所を確保し中継拠点とすると,そこが前線基地となるため,1日に何度も中継を行うことになり,容易に移動できないという事情もある。

16)とくに被災者の発言などは,同じ取材VTRが繰り返し放送される場合があるので,件数やランキングの解釈には注意が必要である。

17)放送用語委員会(東京)「『東日本大震災』の報道で注意した表現」『放送研究と調査』2011年10月号

18)渡辺実「災害報道で気をつけること」『放送レポート』230号,2011年5-6月,p.11

19)Twitterジャパン,グーグルが幹事社となり,両社のほか,朝日新聞,ゼンリン,本田技研工業,NHKなどがデータを提供。詳細については,https://sites.google.com/site/prj311/prを 参 照。また,このプロジェクトで行われた研究やその概要や成果については,村上(2013)で報告されている。

20)NHK放送文化研究所主催シンポジウム「メディアは福島にどう向き合うのか~対立と分断を生まないために~」(2012年4月20日)や,マスコミ倫理懇談会全国協議会第55回全国大会・分科会C「被災者から見た報道」(2011年9月29日)での発言など。

21)三浦伸也「311情報学の試み~ニュース報道のデータ分析から」『311情報学 メディアは何をどう伝えたか』pp52-54

22)注19参照23)神戸新聞取締役の服部孝司氏は,作家重松清の

発言を紹介しながら以下のように述べている。「重松さんは,『がれきの撤去』という言葉が新聞,テレビで多用されていることに『がれきなんて存在しない。人々が使っていた生活の道具であったり,思い出がこもった品物なんだ』と,メディアの想像力の欠如を非難した。」服部孝司「新聞に欠ける『被災地の視点』東京視線が怒りと失望を招く」『Journalism』2011年7月号

24)注18に同じ(p.11)

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東日本大震災テレビ報道の検証

25)花田達朗+教育学部花田ゼミ編著(2012)p.115

参考文献:・遠藤薫(2012)『メディアは大震災・原発事故をど

う語ったか~報道・ネット・ドキュメンタリーを検証する』東京電機大学出版局

・小田貞夫(1995)「あすへの道標を求めて~放送70年と『阪神大震災』~」『放送研究と調査』1995年3月号

・小田貞夫(1996)「災害情報の伝達と放送メディアの役割」『放送学研究』46号

・関谷直也「『災害の社会心理』から考えるマスメディアの超えるべき課題」『Journalism』2012年4月号

・高野明彦・吉見俊哉・三浦伸也(2012)『311情報学 メディアは何をどう伝えたか』岩波書店

・花田達朗+教育学部花田ゼミ編著(2012)『新聞は大震災を正しく伝えたか~学生たちの紙面分析』早稲田大学出版部

・平塚千尋(2012)『新版 災害情報とメディア』リベルタ出版

・廣井脩編著(2004)『災害情報と社会心理』北樹出版・水島宏明(2011)「『空白地帯』を自覚した震災・原

発報道を」『Journalism』2011年7月号・村上圭子(2013)「『震災ビッグデータ』をどう生か

すか?~災害情報の今後を展望する~」『放送研究と調査』2013年1月号

・渡辺実(2011)「災害報道で気をつけること」『放送レポート』230号

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