數學 延伸部分 單元二 香港考試及評核局 · 9. 2017-dse . 數學 延伸部分 單元二. 香港考試及評核局. 2017年香港中學文憑考試. 數學 延伸部分.
「健康寿命延伸都市・松本」の創造をめざして - Matsumoto · 2014-05-18 ·...
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5|総合型
総合型講座
「健康寿命延伸都市・松本」の創造をめざして
1 趣旨
松本市の将来の都市像である「健康寿命延伸都市・松本」の理念や総合計画の6つの健康づ
くり、5つの重点施策について学び、現状や課題を探る。
2 講座の目的
(1) 健康寿命や世界的な健康増進の潮流を学ぶ
(2) 「健康寿命延伸都市・松本」が総合政策であることを学ぶ
(3) 松本市が独自に掲げる 6つの健康づくりの現状と課題を探る
(4) 「健康寿命延伸都市・松本」の創造に向けた 5つの重点施策の現状と課題を探る
(5) 健康なコミュニティづくり、健康づくりの主体形成について考える
3 講座内容及び参加者数(全 7回 計 250人)
内容 講師など 参加者
1 市長講話ほか 松本市長 政策課など 150名
2 松本市が進める健康づくり 健康づくり課 16名
3 松本市の健康産業推進の取組み 健康産業・企業立地課 21名
総合型|6
4 松本城を中心としたまちづくり 城下町整備本部 11名
5 交流拠点都市の形成 政策課 16名
6 地域づくりの推進 地域づくり課 17名
7 学都松本と社会教育推進について 教育政策課 19名
4 成果
・市長から、公民館が「総合的な地域づくりの拠点として、地域のきずな、コミュニティづくりに
役割を果たしていく」ことへの期待が語られ、改めて、公民館の役割を再確認することができた。
・公民館が取り上げてこなかった地域課題等へ踏み込むため、企画段階から市長部局との連携を強
化したことで、市政課題の学習につなげることができた。
・学習を通じて、市長部局職員が公民館に寄せる期待が高まり、松本市の(重点)施策を学ぶ講座
から、公民館(職員)が市民、市長部局職員との意見交換ができた。
・公民館が市政課題と地域課題を結んだことで、公民館(職員)は地域のフロントランナーとして、
市政課題解決に向けた施策を、ともに創造していく視点が芽生えた。
・「健康寿命延伸都市・松本」の土台となる地域づくりと、学習を基盤とした地域づくりを進める公
民館の役割を確認し、市民主体で地域課題を解決していく、まちづくりの理念と仕組みが見えた。
・市長部局や公民館の取組みは縦割り型であったが、総合的な学習を通じて、個別課題が関連する
ことが見え、地域再生の手段として、改めて、地域と住民に、目を向ける必要性を確認した。
5 課題
・広範な市民、関係団体、企業等、市長部局職員とのさらなる多様な連携、参画、参加が望まれる。
・学習から具体的な課題解決の取組みには時間がかる。
・市長部局、市民、団体等が連携した地域課題解決の仕組みづくりには、声かけのみでなく、組織
的、制度的な面がほしい。
6 次年度の展開
(1) 基本的な考え方
・平成 26年 4月、「地域づくりセンター」が設置される中、地域課題の解決と特色あるまちづ
くりを進める。
・地域づくりの理念「お互い様の精神」で、地域と住民に、改めて目を向け、市政課題を公民
館での課題学習につなぎ、総合的な学習活動を展開する。
・総合計画(第 10次基本計画)策定に向けた市民会議委員の人材発掘、市民育成につなげる。
・庁内では、市政課題解決に向けた学習推進のために、公民館が市長部局と連携し、市政課題
と地域課題解決に向けた学習を推進する庁内調整会議の設置を検討する。
(2) 具体的な活動
・課題解決に向けた関係課との連携を図り、市政課題と地域課題を結び、テーマ型講座をつな
ぐ企画検討、開講式、学習会、報告会等の開催・教育委員長講話など
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第1回 開講式
日 時:平成 25年 10月 4日(金)午後 7時~9時
会 場:松本市中央公民館 ホール
参加者:150名
1 次第
(1) 主催者あいさつ 吉江 厚(松本市教育長)
(2) 市長講話 菅谷 昭(松本市長)
「健康寿命延伸都市・松本」の創造をめざして
(3) 松本市総合計画の説明 宮川 雅行(松本市政策課 課長)
(4) オリエンテーション 各講座代表者の趣旨説明
2 市長講話 「健康寿命延伸都市・松本」の創造をめざして
資料:次頁掲載
3 アンケート(一部抜粋)
・熱く語る市長の姿は、松本の将来に活きる。
・市民を鼓舞する市長の熱意、具体的な話が聞けたので良かった。
・市長の話を初めて聞いた。熱意が感じられ、地区のためにお役に立つことを考えたいと思う。
・日野原重明先生のことば「日本人にはそれぞれに潜在能力がありそれぞれに役割がある。」をお聴
きして、そのことを開花させるためには、環境を整えなければと思いました。
・学びなくして、地域づくりなしと思っています。学習しながら仲間づくり、共通の思いを育てた
いと実感しました。
・20年先を見据えた課題に対し、いくつもの講座を設けていることはすばらしい。切り口は様々で
すが、地域課題解決に向けて、実のあるものになってほしい。
総合型|8
「健康寿命延伸都市・松本」の創造をめざして
松本市長 菅谷 昭
市政運営の大前提<医療者としての自分に何ができるのか…> 基本理念:量から質への転換(命の質や人生の質を高める→寿命の質の向上) 基本方針:20年先、30年先を見据えたまちづくり(直近の課題への対応は当然) 基本姿勢:市民が主役、行政は黒子(縁の下の力持ち) 行政主導からの脱却;みんなで“いいまち”を創ろう!(職員や市民の意識改革) 市民が主体性を持って、積極的にまちづくりに参加して欲しい!
“いいまち”とは<山青く 水清くして 風光る> より多くの住民に、生きていることの幸せを感じさせる雰囲気が漂うまち
命を大切にするまち;老いも若きも命を大切にすることを意識する
医療者の市長としてのまちづくり:3K施策(健康づくり、危機管理、子育て支援)
これからのまちづくりは、成長より成熟をめざそう!
超少子高齢型人口減少時代に対応するまちづくり<都市戦略>
「健康寿命延伸都市」の創造(今や平均寿命の時代ではない!)
「健康寿命」とは:健康で、自立して暮らすことができ、明るく、元気に生活し、
実り豊かで、満足できる生涯の期間
健康寿命=[平均寿命]-[要介護等の期間]
フロントランナー:シナリオ無き道を走る!
― 時代を先取りする新たな都市モデル ―
人、生活、地域、環境、経済、教育・文化の6分野の健康づくり
松本から全国に、そして世界に向けて発信!
“ヘルスバレー構想”:健康・医療福祉産業の創出や誘致→雇用の創出や都市の活性化
5つのリーディングプロジェクト<具体的重要施策>
・城下町の再生:松本城南・西外堀復元と内環状北線整備
・健康・医療産業の創出・誘致および雇用の創出
・次世代交通政策による中心市街地のにぎわい創出
・地域住民によるいきいきとした地域づくり
・3ガク都・プロスポーツ等を活かした交流拠点都市の形成
「生き方」が問われる時代の到来
“何を目的に、いかに生きるか”(レーゾン・デートル;自らの存在理由)
視点;地域的、国家的、国際的(地球的)
自らの潜在能力を花開かせる努力
[加齢]→[自己変容]→[潜在能力の発現]→[感動・生きがい]
「生きがい」の仕組みづくりが、今まさに「行政」に求められている!
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第2回 「松本市が進める健康づくり」
日 時:平成 25年 10月 11日(金)午後 7時~8時 30分
会 場:松本市中央公民館 3-1会議室
参加者:16名
講 師:古畑 崇子(松本市健康づくり課 課長)
忠地 弥生(松本市健康づくり課 保健師)
浦畑 雅恵(松本市健康づくり課 保健師)
1 要旨
松本市健康づくり課がかかわる計画・特徴的な事業・保健師の活動などについて説明があり、意
見交換を行った。また途中、保健師によるストレッチ体操も行った。
2 内容
(1) 「松本市が進める健康づくり」講義など(古畑・忠地・浦畑)
ア 松本市健康づくり計画(スマイルライフ松本 21)
・第 2期「スマイルライフ松本 21」:平成 23年度~32年度の 10年間。
・国の「健康日本 21」県の「健康グレードアップながの 21」の実施計画の位置づけ。
・大きな目的:メタボ・ロコモの予防(健康寿命延伸のため)、心の健康も重点としている。
・赤ちゃんから高齢者までを対象、地域・企業・団体と連携し、事業展開。
イ 健康寿命延伸都市・松本の創造(市民歩こう運動など)
・市民歩こう運動:健康寿命延伸に向けて始めたもの。
・ウォーキングは簡易な運動。市民自ら実践する「運動習慣づくり」。
・「さあ歩こう 心も体も軽くなる」「ずく出せ 足出せ 歩き出せ」(市民公募のキャッチフレ
ーズ、平成 21年 6月に決定)。
・平成 23年度ウォーキング実績:実施事業数 93 延回数 193回 延人数 5,546人。
・この運動から、各地区でウォーキングマップが作成された。
史跡など地域資源を活かしながら、住民が協力してコース設定などが行われた。
マップを使ったウォーキングイベントが開催されている。
ウ 健康づくり課 6つの事業
若い時からの認知症予防対策事業
・「脳活ポイントプログラム」と呼ぶ事業で、認知症予防・脳の活性化のために実施。
・食事・運動・健康・仲間の 4つをキーワードに。
・市内の健康イベントなどへの参加でポイントシールを集め、応募すると景品が当たるもの。
年代別では、約 4割が若い年代(20~59歳)の応募。若年層の認知症への意識啓発に。
まつもとっ子元気アップ事業
・こどもの生活習慣改善・こどもの時期からの「望ましい生活習慣をつくる」のため実施。
・実施の背景:平成 21 年の学校検診で、児童・生徒の善玉コレステロール値低下や血糖
値異常。また肥満・やせがある現状。
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・平成 23年度からモデル的に、平成 25年度から全校実施。
・小中学校・保育園等の機関と連携し、血液検査・歩数計による運動量測定・生活実態アンケ
ートなど実施。
・栄養士による講義・調理実習、運動健康指導士等によるダンス等の運動なども実施。
身体活動維持向上事業
・ロコモ・メタボ予防のため、体力健診・体力づくりサポーター育成支援を今年度から開始
・高齢者対象に身近な場所で体力測定を実施。介護予防に対する意識啓発(介護予防事業やウ
ォーキング講座等の紹介)。
・サポーター育成:保健師・理学療法士が橋渡し役。虚弱高齢者を支えるための人材育成で、
身近な地域での体力づくりへつなげる。
・段階的に実施し、平成 29年度までに全地区実施へ。
・松本大学とピンピンキラキラ健康講座実施。
職場で健康講座
・働き盛り世代向けの生活習慣病を予防する事業。
・市の保健師、管理栄養士、健康運動指導士、歯科衛生士等が職場へ出向き、生活習慣のほか、
禁煙・がん検診・歯の健康・心の健康などの講座を実施。
食育推進事業
・今年度から第 2期の市食育推進計画「すこやか食プランまつもと」がスタート。
・子どもから高齢者、共通テーマ「1日 2 食は 3皿運動~1・2・3 でバランスごはん~」。
・個別栄養相談や乳幼児健診での栄養指導、小中学校への出前栄養講座や高齢者への口腔体操
の普及啓発等。
自殺予防対策事業
・市独自に自殺予防の相談窓口「いのちのきずな松本」を設置。
・平日 9時~17時 15分に、職員 2人体制(平成 22年 10月~)で電話相談・面接。
・保健師の継続的な相談。緊急時・必要時には関係機関との連携で迅速・きめ細かな対応。
・市では自殺者が年間 50名前後。相談者は年々増加し平成 24年度の延人数 1,410(前年度 243)。
エ ヘルスプロモーションシーズン(9月~11月)
・健康寿命を多角的に捉え、健康を支え育む社会環境の整備促進を効果的に進めるため。
・期間中は健康寿命に特化した様々なイベント等を実施。
オ スマートライフプロジェクト
・厚生労働省の「スマートライフプロジェクト」に松本市も参加。
・「適度な運動」「適切な食生活」「禁煙」の 3つの行動で、生活習慣の改善を呼びかける運動。
・「第1回健康寿命をのばそう!アワード」(H25.3)自治体部門 厚生労働大臣 優秀賞を受賞。
カ 地域における保健師の活動
・健康づくり部門に 50人保健師。35地区に担当保健師を配置。住民約 5,000人に 1人の割合。
・出張所や福祉ひろばでの健康相談や健康教室の開催、地域の各団体と連携・協力し健康づく
り活動などを行っている。
・また育児・健康の自宅訪問相談、医療機関などと情報交換・調整も行っている。
・健康づくりの拠点は市内 4カ所の保健センター。保健師のほか管理栄養士・歯科衛生士など。
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キ 健康づくり推進員(松本市では昭和 50年に組織)
・保健師活動を支え、地域で健康づくりのお手伝い。2年任期で市内 910名。市長からの委嘱。
・3つの活動方針。活動は、各種健診の受診率アップ、健康教室の開催など。
ク 松本市食生活改善推進員(「食改」)
・昭和 57年発足、現在約 370名。地域で食を通じた健康づくり活動をするボランティア。
・子どもへの郷土料理・おやつ作り、男性への健康な食事講習会など実施。
(2) 意見交換
保健師や健康づくり推進員の具体的な活動、自殺予防対策事業などについて質疑応答・意見
交換した。
3 アンケート(一部抜粋)
・健康の範囲がとても広いということを気づかされました。
・個々人にとって、それぞれの「気づき」があり、そこから健康をネタにし始めるのだと思います。
「気づき」の場が多くなるといいなと思いました。
第3回 「松本市の健康産業推進の取組み」
日 時:平成 25年 11月 5日(火)午後 7時~8時 30分
会 場:松本市中央公民館 3-1会議室
参加者:21名
講 師:柏澤 由紀一(松本市健康産業・企業立地課 課長)
1 要旨
重点施策の一つ「健康産業推進の取組み」をテーマに、松本市の産業の歴史・健康産業推進の取
組み、世界健康首都会議の講義を受け、意見交換を行った。
2 内容
(1) 「産業史から見た松本の姿」
ア 製紙業
製紙王国の長野県
・日本の近代化を切り開いたのは生糸:1875年~1930年輸出額の構成比で生糸がダントツ。
・日本の製糸業は、米の絹織物業の旺盛な需要により、明治 20年代に基礎を確立。日清・日露
戦争を契機に活況を呈する。
・明治 40年の生産高は、12年前(明治 28年)の 1.5倍以上に達した。
・長野県は器械製糸の生産高で圧倒的なシャアを占めていた。明治 37 年に全国の 35%で第 1
位 山梨県が第 2位で 8%(長野県史より)
製紙王国を支えた理由
・絶えず改善に取り組んだ勤勉な農業従事者であったこと
・気候・農地など自然環境の点で、養蚕の適地が県内に多かった
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・桑畑の面積は多くないが、よく手入れが行き届き、収穫量が多かったこと
・蚕の品種や飼育法の改良で、養蚕に加えて夏秋蚕の増産が可能であったこと
製糸家が開校・運営を支援した学校
・県内に 8つ。松本市は、松本商業学校(現 松商学園高等学校)と松本女子実業学校(後の
松本松南高等学校)で、いずれも今井五介・片倉組が関わった。
今井五介と片倉組
・今井五介は、初代片倉兼太郎の弟。
・今井五介の近代的経営の特徴は、米国流資本主義の吸収、科学的経営の精神と労務管理の手
法、技術開発への意欲など。電力インフラ整備(松本電灯)・大糸線敷設・日本銀行松本支店
誘致への貢献のほか、松本商議所の初代会頭として 34年間務めた。
衰退する製糸業
・関東大震災で原材繭を大量焼失→原料高で生糸価格が低迷→製糸工場の経営が著しく悪化
・長野県内では霜害により桑園面積の 8割が大被害を受ける。
・世界大恐慌により生糸相場が大暴落。米デュポン社がナイロンを発明(つまり製糸のオルタ
ネイティブの発明)→工場で生産開始。大東亜戦争の開戦で米国市場を失う。
・さらに国家総動員法により製糸工場を軍需工場化 など
イ 疎開企業
製糸工場を礎に飛躍する企業
・北澤製作所:精密工業の基礎を築く。北澤 4兄弟。北澤工業出身の 3羽カラス。
・1935年以降、県内に疎開企業からの技術移転が進む。
・1937年、長野県に「地方工業化委員会」が設立される。戦前でありながら、この時点で長野
県は重点分野を精密機械工業と位置付ける。
・1941年、諏訪地方で「工業誘致委員会」が発足。積極的な企業立地が行われた。
・戦争が激化し太平洋ベルト地帯が空襲に遭うと、疎開企業が続々と長野県内に。
・松本には、石川島芝浦タービン松本工場や富士電機製造松本工場など。
製紙業から精密工業への背景
・製紙業の衰退により遊休工場があり、転用操業が比較的容易に行えた。
・内陸山間地の気候は、沿岸部のような塩分がないので、金属がさびにくく、ほこりの心配も
少なく済んだ。
・航空機関連の部品は性質的に小さく軽量のため、内陸部への輸送コストの点で優れていた。
・製紙業を支えた人々は勤勉で、手先が器用であった。 など
時代を先取りした精密工業試験場
・県内企業が、製紙業から精密機械工業へ踏み出した中心的役割
・林虎雄(当時県知事):1955年に試験場の構想を打ち出す。
「世界一の機械と規模を持たせるため、土地抜きで 1億円精密工業試験場」
当時 100 億円超の県予算規模での 1 億円は、現在の 1 兆円予算から換算すると、100 億円
に相当する金額。しかも、当時の県政は財政再建団体に転落するという厳しい財政状況。
・充実した活動内容:産学官共同による技術開発・各種セミナーなど積極的に行う。
・座して利用者を待つだけでなく、電子工業巡回試験車を走らせて業者の便宜をはかった。
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ウ 新産業都市指定で、新しいステージへ
全国総合開発計画(一全総)の始動(1962年)
・基本コンセプト「拠点開発方式」:京浜・中京・阪神・北九州集中の工業拠点を全国に分散さ
せるもの。
・拠点開発推進のため、「新産業都市建設促進法」が成立(1962年)。
・新産業都市の指定:内陸部では松本・諏訪地域が唯一。全国 13地区。
・新産業都市計画:海に面した地域に重厚長大型の産業基盤を築いていく形で始まった。
・松本・諏訪地域(内陸部)が指定された理由
製糸業に由来するものづくりの基盤、精密工業中心とする機械工業の集積があったこと
軽薄短小、精密加工を中心とした工業集積が日本の 経済発展には不可欠という時代認識を
先取りしていた地域であったこと など
・新産業都市がもたらしたもの
「東洋のスイス」にふさわしい内陸開発拠点の形成をしたこと
盆地性からの脱皮を図るため、道路・鉄道・空路の交通網の拡充整備をしたこと など
・これからの地域飛躍の条件:
第二の「東洋のスイス」・「精密工業試験場」・「今井五介」
=方向性を示すビジョン・具現化する政策対応・推進する人材の情熱と覚悟
(2) 健康産業の推進
ア 課題の認識と取り組む経済課題
・超少子高齢型人口減少社会:既存市場の拡大を通じた成長は見込みにくい
・需要不足:長期化するデフレ経済からの脱却が望まれる
・中央政府・地方政府の財政破たん懸念:政策的自由度をいかに確保するかが問われる
イ 超少子高齢型人口減少社会と重点施策
・超少子高齢型人口減少化の進展で、20年後の人口構造の変化(3人に 1人が 65歳以上になり
生産年齢人口がどんどん減少する)が社会・地域にもたらす影響は計り知れない。
・重点施策「健康産業の推進」:超少子高齢で人口が減少していく中、健康・医療に力を入れる
べく、健康、医療産業の創出、誘致を図り、雇用の拡大すること。
ウ 健康寿命延伸都市・松本の基本コンセプト
・目標値:①要介護・寝たきりの人が少ない②孤立した市民が少ない③活動的な生活を送る人
の割合が高い
・健康の構成要素:食事・運動・社会参加・節制
・健康の構成要素を実現するシステム:いろんな健康を実現する健康(周辺)産業、社会的参
加を促すコミュニティ活動など
・健康を実現するインフラ:コミュニティ活動の場として公民館、お年寄りに交通手段を与え
るプラチナモビリティなど
エ 健康づくりとそれを支える産業
・持続可能な超高齢化社会の中で、生活の質の向上を図るには、産業力と健康基盤で支えるこ
とが大事。
・松本市域の地域特性:3つの大学
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・信大の医学部内「産学官連携推進本部」があり、長野県などとの一緒に「信州メディカル産
業振興会」を立ち上げてある。
・医療・介護・健康関連分野の集積を図っていく。
オ 松本地域健康産業推進協議会
・健康寿命延伸都市・松本の創造に向け、市民が健やかに暮らし、老いることができる松本ヘ
ルスバレーを産業面から支えるため、協議会をヘルスケアプラットフォームと位置づけ、医
療現場のニーズ調査や実用化に向けた商品開発などを通じて、松本地域に新しい健康産業を
創出していく。
・具体的事業は
① 健康産業フォーラム:2 回開催。国の動向や国内企業の先進事例、特徴のある地元企
業の事例の紹介
② 現場ニーズ研究会: 医療・介護現場のニーズと会員企業等のマッチングの実施。
③ 実証実験助成事業: 会員企業の提案に基づいて検討した製品・サービスの実証実験・
モニタリング調査に対して助成。
④ 世界健康首都会議: これまでの産業面に加え、健康基盤・健康増進の視点を入れて、
「健康寿命延伸都市・松本」構想を世界に向けて発信
カ 医療・介護周辺サービスへの取組み(右図参照)
・医療・介護周辺のサービスにはいろんな可能性があり、行政・医療機関・企業の連携次第で
いろんな製品開発ができる。
・右図は、行政エリア、産業エリア、そして連携エリアを示したもの。
・1のエリアは行政サービスの領域
保険制度内の医療・介護サービス=行政の責任におい
て行うエリア。
・3のエリアは健康産業の領域
企業が収益事業として独自の資金で提供するサー
ビスであり、イノベーションや規制改革により実現
される新たな生活スタイル
例:サービス付き高齢者住宅、パーソナルモビリ
ティ、健康住宅など
・2のエリア(1と 3の間の矢印で囲まれている)は医療・介護周辺サービスの領域
公的保険制度や行政サービスの対象外でありながら、行政機関と医療機関や民間事業者と
の連携で対応できるエリア 例:疫病予防や介護予防など
キ 今年度新規事業
・実証実験等への助成する事業。
・1つは市単独事業、2つ目は松本市地域健康産業推進協議会が県からも支出してもらうもの
・助成事業では、会員企業が松本地域をテストフィールドに実証実験・実用化検証等を実施。
・具体的には、デリカの「けんきゃくん」(電動アシスト四輪自転車)・松本信金の金融商品に
よる検診受診率向上や健康意識高揚の実証実験。
3 健康産業
2 医療・介護周辺サービス
1 行政サービス
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ク 松本地域産業の将来像を見据えた組織展望
・健康産業創出やヘルスバレー構想実現のための体制を構築するもの。
・信州メディカル産業振興会:長野県・信州大学・経営者協会が、信州メディカルシーズ育成
拠点として信大旭キャンパスに設置。
・信州地域技術メディカル展開センター:産学連携研究施設が今年 5月にオープン。信大医学
部と民間企業が一緒に医療機器を開発するもの。
・まつもと工業支援センター:ソフト開発センター内に設置。ワンストップでできる技術支援
により、いろんな健康産業をバックアップしていく。
(3) 世界健康首都会議
・世界健康首都宣言 7項目
・第 1回目は平成 23年 12月開催。基調講演ではステファン・ノレーンさん(スウェーデン王国
前駐日大使)からスウェーデンの事例:温室効果ガス抑制により経済成長を遂げた話を紹介。
一見不採算に思えるものにも、ビジネスチャンスを創出していけることがうかがえた。
・第 2回目は平成 24年 11月開催。基調講演は 2つ。アダムハグマンさんからは、市民ニーズを
いかに実現していくかといった話。宮坂勝之さんからは医療現場にある小さなニーズ(子供用
の注射針など)を実現していく話が聞かれた。
・今年の第 3回目は、これまでの産業の視点に健康づくりの視点を加え、健康寿命延伸都市・松
本の実現への取組みを世界へ発信していく予定。
(4) 質疑応答・意見交換
・大学との連携では、松本市外の学部との連携について質問及び意見交換
・職員の先進的な取組み(例えばエコ通勤など)に対する県内自治体からの反応について質問及
び意見交換 などがあった。
3 アンケート(一部抜粋)
・忘れていた松本の産業の先人を思い出させてくれた。
・高齢化社会がますます進んでいく中で、健康産業は伸びていく。雇用増進にも良いと思います。
・この講座のダイジェスト版を作り、市長まちかどトークの上映に加えてみたらどうでしょうか。
・他のテーマ型講座も含め、結びつきがあると感じております。一つの講座の中だけでなく、いろ
いろな講座の中で横断的に結ばれていくことが大切だと思う。
第4回 「松本城を中心としたまちづくり」
日 時:平成 25年 11月 14日(木)午後 7時~8時 30分
会 場:松本市中央公民館 3-1会議室
参加者:11名
講 師:上條 裕久(松本市 城下町整備本部 次長)
1 要旨
松本市の 5つの重点施策の 1つ「松本城を中心としたまちづくり」をテーマにして、「松本城南・
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西外堀復元と内環状北線の整備」等についての現状と課題を学び、意見交換を行った。
2 内容
(1) 「松本城を中心としたまちづくり」講義
ア 松本城のあゆみ
信濃国、筑摩郡
・460年頃、長野県は「科野(しなの)」と呼ばれた。
・大化の改新(646年 大化 2)により、科野が 10郡に。その 1つが「束間(つかま)郡」。
・713年(和銅 6)に好字を用いることになり、科野→信濃、束間→筑摩。
信濃国府
・8・9世紀、各地に国司が派遣。国司が政務するところを「国府」。
・信濃国府は、最初上田に配置された説がある。その後、筑摩郡へ移る。
・筑摩郡の国府は、「惣社説」が主流。これまで 5回の発掘調査でも不明。
信濃守護「小笠原貞宗」・井川の館
・鎌倉時代、地方の軍事指揮官や行政官として「守護」を設置。
・1335年(建武 2)に、小笠原貞宗が信濃守貞宗へ。
・小笠原氏が、現在の井川城を府中として、「井川の館」を築く。
・井川城跡は、現在発掘調査中。厚さ 1mの造成跡や礎石が確認されている。
山城と坂西氏の居館
・応仁の乱(1467年 応仁元)を契機に、平地から山へ築城するようになる。
・小笠原氏の城跡:林大城、林小城、桐原城、山家城、埴原城が県指定文化財。
・林大城の遺構:低い方から階段状に廓(くるわ)等があり、容易に主郭へ接近が不可。
・坂西氏の居館:小笠原氏の城将の館城。現在の松本城あたりに位置する。
武田信玄の侵攻
・1548年(天文 17)、武田信玄が小笠原長時を破る。
・1550年(天文 19)、武田氏が深志城を総普請。のちの松本城。
深志から松本へ
・1582年(天正 10)武田氏が織田信長に敗れ、再び深志城は小笠原氏のもとへ。
→松本の由来:「待つ(松)こと久しくして本懐を遂げた」・・諸説あり。
・1585年(天正 13)、小笠原貞慶が本格的に松本の城下町形成に着手。
・松本の城下町は約 140年かかり完成(小笠原氏~水野氏)。親町 3、枝町 10、24小路。
・城下町の特徴:道に丁字路・喰い違い・鍵の手、東側に寺を配置(寺町)など。
・1868年(慶応 4)政府の命令で、廃仏稀釈運動。松本:28寺→4寺へ。
・松本城のお堀:外側から「総掘」・「外堀」・「内堀」。明治 9~昭和 7で総掘の大部分と外堀の
半分が埋め立てられ、宅地化された。
・明治の大火:明治に 3回大火で城下町の大部分が焼失。
イ 松本城を中心としたまちづくり(城下町の再生)
まちづくりの基本的な考えと計画
・一番の基本となるのが、「基本構想 2020・第 9次基本計画」。
17|総合型
・基本計画を基に「都市計画マスタープラン」:まちづくりの基本的な方針。
・マスタープランのもとに、「道路交通」・「中心市街地」・「景観」の個別計画がある。
・現在取り組んでいるものは、「街なみ環境整備計画」と「歴史的風致維持向上計画」。
城下町の再生への取組み
・この取組みは、「松本のシンボル=松本城あっての松本」「市民共有の宝、風格を高め次代へ
継承するもの」という魅力を核に、まちの賑わいの創出・健康づくりの充実等につなげる。
・具体的な事業は、「松本城南・西外堀復元事業、内環状北線の整備」、「歩いてみたい城下町の
整備」、「街なみ修景事業」、「水めぐりの井戸整備事業」。
松本城南・西外堀復元事業
・エリア周辺住民のご理解をもとに、発掘調査し幕末維新期の姿をできる限り復元していく。
・常時、水面のあるお堀ものとすることで、松本城天守の眺望に配慮し、緑に囲まれた景観の
形成を目指している。
・道路の延長が 350m・幅 18~34m、面積 9,270㎡、対象家屋が 80戸。
内環状北線の整備
・人に優しく、賑わいと回遊性のある安全で安心な道づくりが目的。
・主に防災の観点から、松本城公園の避難空間確保・災害対策本部(市役所)の緊急車両道路
の確保・長野自動車道と国道 19号線からのアクセス確保が大きな方針。
・道路の延長が 280m・幅 31m、整備対象が 35戸。
5つのまちなみ整備事業と「歩いてみたい城下町づくり」
・「中町まちづくり事業」:中町まちづくり研究会が発足し、昭和 63年に「中町まちづくり基本
構想」を策定。
・「お城下町まちづくり事業」:上土・緑町・縄手からなるエリア
平成 5 年に「まちづくり推進協議会」を設立し、「大正ロマンのまちづくり」として現
存する大正時代の建物などを活かしたまちなみ整備に取り組んでいる。
・「お城周辺まちづくり事業」:松本城三の丸、上級武士の武家屋敷があったところ
平成 21年「まちづくり推進協議会」を設立、基本方針の策定で、道路整備を行っている。
・ほか「なわて通り整備事業」・「お城東まちづくり事業」・「中央東町づくり事業」。
まちなみ修景事業
・個人宅を街なみにあった外観にする事業。
・改修費への一部補助がある。平成 24年度までに 121戸が改修。
水めぐりの井戸整備事業
・3Kプラン(危機管理、子育て支援・健康づくり)のうち危機管理のため実施
・災害時の飲み水など生活用水確保のために井戸を整備。
・まちの回遊性を高める「水めぐり」も目的としている。
・平成 18年度~21年度は公共井戸 10カ所を整備。平成 22年度~26年度は個人所有の井戸を
整備している。
(2) 意見交換
城下町の回遊性やたまり場、そして松本城の世界遺産などについて質疑及び意見交換があった。
総合型|18
3 アンケート(一部抜粋)
・松本城中心のまちづくりもよいが、面をもっと広げてほしい。現在は城内がメイン。
・城下町風情のある安原地区、飯田町、小池町、宮村町の電柱の地下化を促進してほしい。
・中心市街地に住む人、観光で来た人など、色々な立場で思いや見方が違うと気づいた。
・世界遺産は抜きにできないのではないか。世界遺産で講座を実施してもらいたい。
第5回 「交流拠点都市の形成」
日 時:平成 25年 12月 16日(月)午後 7時~8時 30分
会 場:松本市中央公民館 3-1会議室
参加者:16名
講 師:宮川 雅行(松本市 政策課 課長)
1 要旨
松本市の 5つの重点施策の一つ「交流拠点都市の形成」をテーマにし、「3ガク都」(学・岳・楽
の都)と松本山雅FCを活かした都市形成などの現状と課題を学び、意見交換を行った。
2 内容
(1) 「交流拠点都市の形成」講義
ア なぜ交流拠点都市の形成か
・超少子高齢型人口減少社会による都市基盤の衰退。
予測されること:人口減少→空き家・空き店舗の増加、交通インフラの不採算、学校や保
育園の規模縮小など。
・超少子高齢型人口減少社会は、世界の他都市で前例があるわけでなく、この課題に対応する
ためには「量から質への転換」が必要。
→日本・世界のフロントランナーとして命や人生の質を高める地方都市の挑戦。
・20年・30年先を見据えて、交流人口の増加で人が集まるまちづくりを進める。
イ 交流拠点都市の形成の戦略的政策
・松本の魅力を一層ブラッシュアップ。時代に合った新たな魅力を発信。
・交流を広げるための 3つのステップ
①松本市に来てもらう ②滞在してもらう ③リピートしてもらう
・実現への具体的取組み:「城下町まつもとの再生」・「中心市街地のにぎわい創出」・「3ガク都
の発信」
ウ 具体的取組み
城下町まつもとの再生
・5つのリーディングプロジェクトの一つ「松本城を中心としたまちづくり」。
・南・西外堀復元事業による魅力創出。
・400 年以上現存のお城。国宝の城は 4 つ。私財を投げ打って保存した市民の力。まさに「市
民の誇り、心の拠り所」。
19|総合型
中心市街地のにぎわいの創出
・中心市街地のスプロール化(郊外への分散化)・人口減少により、まちのにぎわい創出は自
治体の喫緊の課題。
・松本の中心市街地はお城と密接なつながりがあり、まちのイメージをつくる重要な「顔」。
・観光客も市民も歩いてみたくなるまちをつくる。
・まちに人が集まる流れを作り、にぎわいができれば、新しい人が集まる循環。
・歩いてみたくなるまちへ:次世代交通政策の推進(社会実験など)・城下町湧水郡整備(井
戸で憩いのポイントづくり)。
「3ガク都」の発信(学都・岳都・楽都)
・イメージ戦略:松本最大の魅力(自然・文化)をアピール。
・学:重文「開智学校」・「旧制松本高等学校」、岳:上高地・美ヶ原・乗鞍など大自然の宝庫、
楽:サイトウ・キネン・フェスティバル に代表されるもの。
・3 つのガク都それぞれが、人の生きがいにつながるため、行政として一層ブラッシュアップ
を図り、市民レベルも含め発信・交流を推進。
エ 松本山雅を活用した事業
松本山雅FCを核としたまちづくり(主に支援事業)
・支援窓口の設置:政策課内に「プロスポーツ振興担当」。
・出資:2千万円の株式購入。
・練習場の確保:空港近くのサッカー場を優先予約。かりがねに練習場の整備。
・周知・広報活動:市広報・HP・観光パンフへの掲載。山雅ポスター市施設等へ掲示。
・松本市長が後援会名誉会長、健康増進の市民交流イベント など。
松本山雅を活用した交流促進事業
・トップセールス:市長・副市長のアウェー試合観戦。
・物産販売・パンフレット配布などで松本市のPR。
・シャトルバスの増便助成:松本駅とアルウィン間のシャトル便を 15 分間隔。増便の費用は
市の助成。渋滞緩和と市街地誘導で活性化がねらい。
オ 定住促進事業(平成 18年度から)
・団塊の世代、子育て世代、Iターン就職など各世代の交流人口の増加を図る。県外、特に首
都圏をはじめとする都会からの移住を図る。
・「3ガク都」「健康寿命延伸都市の創造」等、本市の魅力をベースに推進。
・主な実施内容:
①ワンストップ窓口(政策課内。庁内関係課 17課が連携で、移住希望者への情報提供)
②空き家オーナーと移住希望者とのコーディネート
③都市圏で移住に関するセミナー開催 など
・平成 18年度から 6年間の結果:92世帯 199人移住(政策課経由)。30~40代が多い。
・移住者からの声:改めて松本の魅力を見つめ直す機会。
カ これからの都市間交流の姿
基本的なスタンス・考え方
・大都市への集中でなく、「local to local」、地方と地方がつながる時代を見据える。
総合型|20
・地域自治体の連携を深め、地域分権の受け皿を整備。
・大災害時等の応援体制の整備。
・共通する文化・歴史をツールに、市民交流の活性化→地域の活性化。
具体的取組み
・金沢市、札幌市、鹿児島市と文化や観光部門で交流協定
・九州戦略:FDAの活用。
・田原市と「災害時相互応援に関する覚書」締結(平成 25年 11月)
・「3市長鼎談」:札幌市・鹿児島市・松本市(平成 25年 8月)
(2) 意見交換
まちが持つ魅力の「質」、定住を促進するための雇用等について質疑及び意見交換があった。
3 アンケート(一部抜粋)
・経済効果も必要。何より松本が楽しく住めるところにするため、住民や民間の力等を活用。
・今後何か考えてみよう、勉強してみようという気がわきました。身近な松本市を、観光客の視点
で見直してみようという気がします。
・松本には小さな路を入ったところに隠れた名店が多いように感じている。そういう店が駅からあ
がたの森まで続けば、往復歩いて健康になりそう。
第5回 「地域づくりの推進」
日 時:平成 26年 1月 21日(火)午後 7時~8時 30分
会 場:松本市中央公民館 3-1会議室
参加者:17名
講 師:矢久保 学(松本市地域づくり課 課長)
1 要旨
松本市の 5つの重点施策の一つ「地域づくり」をテーマにし、松本市の地域づくりのあゆみ、地
域づくりの必要性やシステムなどを学び、意見交換を行った。
2 内容
(1) 松本市の地域コミュニティと松本市の地域づくりのあゆみ
ア 松本市の地域コミュニティ
・松本市には 35地区、493町会、10,712隣組
・松本市における地区(小学校区、あるいは旧村のエリア)
行政が勝手に決めたエリアでなく、地域住民が同じ歴史と文化を共有するエリア
いろいろな地域課題を共有できるエリア
・松本市における町会:明治 4年当時の村や町が町会。コミュニティ機能としての町会を充実
・松本市のコミュニティ施設:24万人の都市規模で配置されているコミュニティ施設
支所・出張所 20 地区公民館 35 地区福祉ひろば 36 児童センター27 保育園 51 地区
21|総合型
体育館 24 地区運動広場 21
イ 松本市の地域づくり政策の現状
・平成 18年度に、地域づくり政策に着手
・平成 23年度に、地域づくり課新設
・平成 24年 3月、「松本市地域づくり実行計画」の策定
・現在、地域づくりセンター開設(平成 26.4~)に向け、地域づくりの条例などの作成
ウ 松本市の地域づくりのあゆみ(1970年代と 1990年代)
1970年代:コミュニティセンター構想から地域配置(22館構想)へ
・高度経済成長:農村青年が都市へ流出→地域の崩壊。
・旧自治省のコミュニティ政策:既存の自治会等とは別の新たな地域住民組織を志向した。
・松本市第 1次基本計画(1971年):初めての松本市の総合計画
当時 15の公民館を 8つのコミュニティセンターへ統合する計画。
→地域住民による反対運動:公民館は身近で、生活に根付いたもの
・22館構想と芝沢コミュニティセンター:
松本市第 3次基本計画(1981年):公民館 22館構想(15公民館を 22へ増やす構想)
芝沢コミュニティセンター(1981年):和田・新村公民館の統合
→住民要望で、新村公民館・福祉ひろば(1996年)和田公民館・福祉ひろば(1997年)
1990年代:福祉ひろば(福祉の公民館)
・介護の問題が深刻化:介護地獄(自分の人生を犠牲に介護しなければいけない状況)
・旧厚生省の社会福祉の構造改革:介護保険(2000年)。
・松本市長選(1992年):有賀市長の公約「各地区に福祉の拠点」
・29地区福祉拠点事業推進研究会(1994年):職員によるプロジェクト
各地区の福祉拠点のあり方が論点。
将来の高齢化進展を見据え、従来のサービス提供型の福祉から地域で共に支え合う福祉へ。
・福祉ひろば第 1号を開設(1995年)
・松本市福祉ビジョン懇話会(1996~1998年):市民と一緒に協議
(2) 健康寿命延伸都市・松本(松本市の市政運営など)
ア 市政運営の基本方針
・基本理念:量から質へ いのちの質・人生の質の向上
・基本姿勢:市民による市民の行政
・経営姿勢:「まちづくりの主役は市民、行政は縁の下の力持ち」「部局横断のネットワークで
品格あるまちに」「マンネリズムの打破」・・職員は横断的に、新しい発想で
イ 松本市の将来都市像と 6つの健康づくり
・健康寿命延伸都市・松本を将来の都市像
・健康とは 「身体的・精神的・社会的に最適な状態であり、単に病気あるいは虚弱でないこ
とではない」(1946年 WHO世界保健機関憲章前文)
・松本市の「6つの健康づくり」:
健康寿命延伸都市・松本の創造に向けて、人(心と体)の健康、さらに生活、地域、環境、
経済、教育・文化の健康づくりを進めるもの。WHOの定義(身体的・精神的、さらに社会
総合型|22
的健康)を置き換えたもの。
右図:6つの健康づくりを市民・産学・行政が協
働して進めていくイメージ。
観光に投資をして、観光だけ突出しても、必ずし
も暮らしやすいまちとはならない。
いいまちにするには、様々な分野が連携してバラ
ンスよく進めていくと、右のようなきれいな手まり
の形となる。
(3) 将来を見据えた地域づくりの必要性
ア なぜ地域づくりか
・超少子高齢型人口減少社会の進展で、地域で解決する課題が増大・複雑化
要援護者の見守り 災害時の助け合い 買い物弱者問題
・地域の厳しい状況:人間関係の希薄化 地域活動への無関心 町会への未加入 役員の担い
手不足
→地域づくりの必要性:絆社会への転換(身近な地域での助け合いの再認識)
イ 超少子高齢型人口減少社会の現実①―予測されている社会の状況:2030年を基準に
・高齢化率31.8% 約3人に1人が高齢者(2050年には高齢化率40.5%に増加)
・単身世帯が約4割(37.4%)に増加
・人口が1億1,662万人となり、人口減少が本格化・加速化する(2046年に1億人を切り、100年
後には5,000万人)
・年間死亡者160万人:40万人増。看取る場所は病院55%、在宅12%、介護施設6%、他が約30%
・東京圏を中心とする医療・介護ニーズの増加により地方の人材が大量に流出
ウ 超少子高齢型人口減少社会の現実②―予測されている将来の不安(課題)
「活力ある経済活動の維持・発展」、「介護、医療、年金等の社会保障費負担の増加」
「単身世帯の急増による孤立死への対応」、「病院での看取りが困難な人への対応」
「認知症の高齢者増加への対応」、「管理されない空き家の増加」
「車を運転できない交通弱者の増加」、「災害時における要援護者の避難とケア」
エ 将来の不安を乗り越えるためには
地域コミュニティの再構築
・お互い様の精神で共に支え合い、学び合い、安心して暮らせる持続可能な地域を考えていく
・まずは 2025年~2030年を目途に、地域づくりの新たな仕組みを構築
2025年:年間死亡者数が増加していく 2030年:人口減少が加速化する
地域力を高める:地域づくりの原点
・お互い様の精神による助け合いができる根っこを持った地域を少しずつ作っていく。
・住民自治力や地域連帯力をつける=ソーシャルキャピタルを高める。
→地域課題解決・生活の質の向上→健康寿命延伸都市・松本を創造していく。
(4) 松本市の地域づくりの推進
ア 地域づくりの定義と政策上の位置づけ
・定義:安心して、いきいきと暮らせる住みよい地域社会を構築するため、地域住民が主体と
23|総合型
なって地域の課題を解決していく活動や取組み(松本市地域づくり実行計画)
・政策上の位置づけ:第 9次基本計画 5つのリーディングプロジェクト
イ 松本市らしい地域づくり
3つの大きな特色
・市内 35地区を基本エリア
・町会等を核とする既存の自治の仕組みを最大限に活用し、町会と協働
・公民館・福祉ひろばの成果を活かした地域基盤(自治を連帯)の構築と人材育成
町会との協働
・なぜか:町会は1地域に1つの住民自治組織 町会は地域の決定権を有する 町会は準公共的
性格を持つ 町会への加入世帯は80.6% 町会を必要だと考える市民が7~8割
・町会運営には、誰もが参加でき民主的で開かれていることが必要。ワンマンな運営や、元から
いた人だけで勝手にやっていると、違和感がある・・「誰もが」「民主的」「オープン」が必
要 ※松本市町会連合会では、平成23年から町会長の研修を実施
・町会に代わる組織はない
町会の見えない安心ネットワーク:20人に1人の地域役員が気配り、目配りする見守り・
安心ネットワーク(町会長500人 隣組長10,000人 健康づくり推進員1,000人 民生児童委
員500人)
・町会への加入促進:町会加入促進のパンフレット作成で意識啓発。
松本市独自の地域づくりシステム
・基本的に3つ(地域システム 行政システム 地域づくりセンター)で構成し、大学・NPO・
企業とも連携しながら、地域課題解決などを行っていく。
・地域システム:住民が主体となって地域課題に取り組む仕組み(地域とか町会の組織)。核に
なるのが「緩やかな協議体」(みんなで話し合って決めていける協議体)。
⦿ 緩やかな協議体とは:地域システムの核
地域課題を解決するため、住民が自由に意見交換し、合意形成(地区の意思決定)を図
りながら、具体的な解決に向けて取り組んでいく組織
商工会、農協、学校、施設、NPO等の地区に関係した団体を横につなぐ、従来の町会
の枠を超えたネットワーク型組織
決められた委員等が地区の意思決定を行うのではなく、課題の大きさや内容によって意
思決定に参加する団体や個人が柔軟に入れ替わる仕組みが「緩やか」の意味であり最大の
特徴 (誰もが参加できる民主的な地域運営を進めていく仕組み)
・行政システム:関係課が課題解決チームを作って、住民主体の地域づくりを支援していくシス
テム。地域課題を解決するため、本庁から地域に出かけていく=考え方を地域中心にシフトす
るもの。
・地域づくりセンター
地域システムと行政システムを地域でつないでいくところ。支所・出張所、公民館、福祉ひ
ろばが、それぞれ独立しながら連携していく。
役割は、地域課題の把握・集約・把握・解決に向けた支援、緩やかな協議体(地域づくり協
議会等)の事務局 など。
総合型|24
(5) これからの地域課題とは何か:以下に例示
・医療を含む地域包括ケアシステムの構築
・独り暮らし高齢者の見守り・子どもの安全
・地区内へのコミュニティバスの運行
・空家・空地の再活用、維持管理
・特産品等のブランド化、販路の拡大
・史跡や歴史的建造物の保存・活用
・建物の高さを制限等による景観の保全
・遊休荒廃地や間伐材を活用した産業興し など
(6) 意見交換
「町会に関わる必要は感じているが、自分の町会が何をやっているのかわからない」、といっ
た意見のほか、自分の町会で抱える悩み・不安などを質疑応答しながら、意見交換を行った。
3 アンケート(一部抜粋)
・講師の話と資料から地域のしくみや働きが良く理解できました。社会全体の流れや動きを踏まえ
て話をされていたので、説得力があった。
・なぜ、隣組ができたのか、隣組ができて日本はどうなったのかという反省すべき歴史と、松本の
歴史との比較、今後のあり方は、決して過去の隣組のものとは同じ目的ではないのだという意識
付けが必要だと思いました。個人の尊重と公共のバランスが難しいのは、この背景もあるのでは
ないかと思いました。
・有意義な講座ですので、さらに切り口を変えて開講していただければと思います。テーマについ
ては公募してはいかがでしょうか
第7回 「学都松本と社会教育の推進」
日 時:平成 26年 1月 28日(火)午後 7時~8時 30分
会 場:松本市中央公民館 3-1会議室
参加者:19名
講 師:横内 悦夫(松本市教育政策課 課長) 清澤 秀幸(松本市教育政策課 課長補佐)
園原 祐一(松本市教育政策課 主査)
1 要旨
学都松本のあゆみ、教育振興基本計画などについて説明があり、意見交換を行った。
2 内容
(1) 「学都松本と社会教育の推進」講義
ア 学都松本のあゆみ
江戸時代からの教育熱
・一般庶民は寺小屋
25|総合型
松本藩内に約 600カ所。信州一の数の多さ。授業内容は、読み・書き・そろばんが主。
松本藩の文武奨励によって庶民にも「学び」が浸透。
・松本藩校・崇教館(そうきょうかん):松本藩が設置した武家教育の場
松本藩は信州で最も古い。授業内容は、漢学・算術・兵学・武術など。
廃寺を利用して学校をつくる
・全久院(戸田家の菩提寺):明治初期の廃仏稀釈で廃寺となる。
・明治 6年に全久院を仮校舎に第一番小学開智学校が開校。
・明治 9年に全久院跡地に新校舎を竣工。以来、約 90年間使用された。
工事費の 7割は松本の人々の寄付
・明治 9年竣工の開智学校は、新しい擬洋風校舎。設計施工は立石清重(地元の大工棟梁)。
・新築費用は、7割が市民の寄付。教育に力を入れる進取の精神の表れ。
・永山盛輝(当時の筑摩県権令):開校に尽力。国づくりに必要な人材育成のため教育普及。
近代教育制度の礎を築いた人物
・辻新次:上土町生まれ。藩校・崇教館出身。「教育社会の第一の元勲」と評される。
初代文部次官として帝国大学令・師範学校令など学校法令を立案。
・澤柳政太郎:天白町生まれ。開智学校→帝国大学→文部省。
第 3次小学校令の公布。個性重視の教育提唱で新しい教育を創造。
教育環境の充実
・松本中学校(明治 9.現:松本深志高校)、松本高等女学校(明治 34.松本蟻ヶ崎高校)、松本
女子師範学校(明治 6)などの開校。
・子守教育所:子守で学校にいけない子女 旧開智学校内。ほか落第生学級。
松本高等学校の誘致と開校
・誘致活動:明治 32年から 20年の歳月。大正 7年に設置が決定。
・市が敷地 2万坪、現金 10万円、工事費 10万円を寄付。
・大正 8年松本中学校東校舎に仮校舎(松本城二の丸)、翌 9年県(あがた)の地に誕生。
・校舎は大正時代の木造洋風建築で昭和 25 年~48 年まで信州大学の文理学部・人文学部校舎
として使用された。学校建築史上貴重な建造物として、平成 19年重要文化財に指定。
・今も生涯学習の場として活用。
市民の学びを支える 松本市立博物館
・前身は「明治三十七、八年戦役紀念館」。松本尋常高等小学校内に明治 39年開館。
・紀念館:日露戦争出征の同校卒業生が、大陸の貴重な品物を母校に寄付したことから開館。
・平成 12年度「松本まるごと博物館構想」が策定。
地道な市民の学びの場 公民館
・昭和 22年に松本市公会堂を転用して松本市公民館を設置(四柱神社境内)。
・35地区 35地区公民館と連絡調整館の中央公民館
まぼろしの市歌に謳われている 学都
・松本市歌(昭和 15年作成)の 3番に「宜しく学都と呼ぶべき此処に・・」とある。
イ 教育振興基本計画「学都松本をめざして」
まつもと市民生き生き活動
総合型|26
・いつの時代にあっても変わらない、今まで大切にされてきたことをもう一度見つめなおし、自
ら目標を定めて地道に取り組む活動。次の3つの視点で一人ひとりが活動を決めて取り組む。
「わたしは こころをみがき からだを使おう」「あなたに、 あいさつをしよう」
「このまちを きれいにしよう」
・平成19年6月市議会一般質問を受け、教育憲章のようなものではなく、日々の暮らしの中で地
道に実践できる活動の策定をめざし、庁内のワーキンググループや地区での懇談会を開催し、
平成21年8月に策定。
生涯学習基本構想(第2次基本構想)
・第2次生涯学習基本構想が平成15年度に策定された。
・関係団体へ聞き取り、市民委員と庁内委員によるプロジェクト委員が基本構想等を見直し。
・内容は、市民の生涯学習宣言や生涯学習の定義、学びの森づくりの原則等が記載。
教育委員会でめざす「学都松本」
・市制施行100周年を機に、新たな世紀の目標として掲げたもの。
・「学びの森づくり」を継承し、学都松本のめざすまちを考えた。
・学都松本のめざすまちは、「学び続けるまち」「共に学ぶまち」「次代に引き継ぐまち」。
・学都松本フォーラムの開催、社会教育委員会議の提言
・市長と教育委員長の対談(平成25年5月号の広報まつもと)以下抜粋。
○ ひとことで「学都松本」を表現するとしたら?
市長:学び人が、行き交うまち、松本
教育委員長:一人ひとりが人生の充実に向け、生涯にわたり学び続けるまち
○ 「学ぶ」とはどういうこと?
市長:毎日の生活の中で生きていることを自問自答すること
教育委員長:「学ぶことは生きること」 「よく学ぶことはよく生きること」
教育振興基本計画(平成24年3月策定)
・平成24年度~平成28年度の5年間が基本計画の期間。
・学都松本のめざす姿を大きな目標とし、5つの取組み指針と学都松本に求められている7つの力
を決め、教育に関する計画が立てられている。
・市総合計画の中では、6つの健康づくりのうち「教育・文化の健康」。
(2) 意見交換
まつもと市民生き生き活動についての質問や、それぞれが考える社会教育や生涯学習について
の考えを意見交換した。
3 アンケート(一部抜粋)
・さまざまな意見が活発に出て、大変良かったです。
・社会教育という言葉が理解されていない。参加者にはその旨の説明が必要かもしれません。
・学都松本推進協議会においても、議論が幅広く行われ、理念の輪が広がることを願います。広報
などで十分に周知をお願いします。