医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture -...

19
Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるIT(情報技術)革命」と 言っても、具体的にどのような事なのかをイメー ジできる方は決して多くはないと思います。そこ 2001.11.1 51585 ――――――――――――――――――――――――――― 1)〒629-0392 京都府船井郡日吉町 明治鍼灸大学 医療情報学 2)〒629-0392 京都府船井郡日吉町保野田 明治鍼灸大学 健康鍼灸医学教室 3)〒286-0044 千葉県成田市不動ヶ岡2026-1 4)〒305-0821 つくば市春日4-12-7 第50回全日本鍼灸学会学術大会 医療情報と鍼灸 ―鍼灸分野におけるIT革命のはじまり― 司会:梅田 雅宏 1(明治鍼灸大学医療情報学教室 講師) 演者:岡本 芳幸 2(明治鍼灸大学健康鍼灸医学 助手) 酒井 茂一 3(千葉地方会 学術部長) 津嘉山 洋 4(筑波技術短期大学附属診療所 助教授) Medical Information and Acupuncture ―The Beginning of IT Revolution in an Acupuncture Field― UMEDA Masahiro OKAMOTO Yoshiyuki SAKAI Shigekazu TSUKAYAMA Hiroshi 1.電子カルテは鍼灸にIT革命をもたらすか? 岡本 芳幸 明治鍼灸大学健康鍼灸医学 1. Will Acupuncture Benefit from Information Technology Using An Electronic Chart System? OKAMOTO Yoshiyuki Department of Health Remoting Acupuncture and Moxibustion Meiji University of Oriental Medicine セミナー

Transcript of 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture -...

Page 1: 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture - jsamjaclid.jsam.jp/dspace/bitstream/10592/17157/1/0785.pdf · 2009. 11. 16. · Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるit(情報技術)革命」と

Ⅰ.はじめに一口に「鍼灸におけるIT(情報技術)革命」と

言っても、具体的にどのような事なのかをイメージできる方は決して多くはないと思います。そこ

2001.11.1 (51) 585

―――――――――――――――――――――――――――1)〒629-0392 京都府船井郡日吉町 明治鍼灸大学 医療情報学

2)〒629-0392 京都府船井郡日吉町保野田 明治鍼灸大学 健康鍼灸医学教室

3)〒286-0044 千葉県成田市不動ヶ岡2026-1

4)〒305-0821 つくば市春日4-12-7

第50回全日本鍼灸学会学術大会

医療情報と鍼灸―鍼灸分野におけるIT革命のはじまり―

司会:梅田 雅宏1)(明治鍼灸大学医療情報学教室 講師)演者:岡本 芳幸2)(明治鍼灸大学健康鍼灸医学 助手)

酒井 茂一3)(千葉地方会 学術部長)津嘉山 洋4)(筑波技術短期大学附属診療所助教授)

Medical Information and Acupuncture―The Beginning of IT Revolution in an Acupuncture Field―

UMEDA Masahiro OKAMOTO Yoshiyuki SAKAI Shigekazu TSUKAYAMA Hiroshi

1.電子カルテは鍼灸にIT革命をもたらすか?

岡本 芳幸明治鍼灸大学健康鍼灸医学

1. Will Acupuncture Benefit from Information TechnologyUsing An Electronic Chart System?

OKAMOTO YoshiyukiDepartment of Health Remoting Acupuncture and Moxibustion

Meiji University of Oriental Medicine

セミナー

Page 2: 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture - jsamjaclid.jsam.jp/dspace/bitstream/10592/17157/1/0785.pdf · 2009. 11. 16. · Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるit(情報技術)革命」と

で、「IT」が鍼灸にどのような「革命」をもたらし得るのかを、電子カルテという側面からできるだけ平易な言葉でお話していきたいと思います。

Ⅱ.電子カルテとは?まず、電子カルテと聞いてどのようなものを想

像されるでしょうか?ただ単に、日常のカルテをワープロで文書化したもの、紙のカルテを画像として電子ファイルしたもの、専用の機械で入力する形式のものなど、様々ではないでしょうか。現在、医療機関で使用され始めた電子カルテは、ワープロ形式ではなくデータベースソフトウエアを核としてできています。データベースとは、複数の項目を定義したレコードを一単位として、何十万レコードという大量のデータを効率よく管理する事を目的に作られたソフトウエアの事です。

Ⅲ.電子カルテのメリットとデメリットでは、電子カルテを用いると、どのようなメリ

ットがあるのでしょうか。まず第1に、「年賀状ソフト」の住所録のように使う事ができるのです。つまり、一度入力すれば情報の保管や検索・再利用が非常に簡便になります。第2に、計算は自動的にやってくれるので会計処理の省力化が図れます。第3に、プリンターを使用すれば、悪筆でも見た目の美しい文書を作成する事ができます。一方デメリットとしては、第1に、コンピュー

タの導入・運用に多額の費用がかかることです。第2に、キーボード入力の手間があることです。

実際、電子カルテを先行して導入している病院では、この入力の煩雑さが大きな問題となっています。第3には、鍼灸師の法的なカルテ記載義務が明確でないことがあります。果たして、鍼灸で電子カルテを使用する意味が

あるのでしょうか?

Ⅳ.現状の鍼灸おける電子カルテ現在、医療情報の分野で開発されている電子カ

ルテの多くは「大病院での情報共有」を目指しています。そのような中、少人数の顧客を相手にする個人鍼灸院では、カルテを電子化するメリットに対して、コスト・手間の面でのデメリットが大きい事は容易に想像がつきます。つまり、個人鍼灸院で過去の患者データの検索や会計処理をするためだけに、電子カルテを使う必要性は少ないと言えます。

Ⅴ.将来の鍼灸おける電子カルテ将来の鍼灸に電子カルテは必要でしょうか?そ

の答えは、インターネットや電子メールが私たちの生活に浸透しつつある現状から考えて、明らかに「Yes」と言えます。では、電子カルテが真価を発揮する、将来の鍼

灸の姿とはどのようなものでしょう?キーワードは『ネットワーク』です。電子カルテは、鍼灸が医療のネットワークに参加したときに、大きな意味を持つのです(図1)。

586 (52) 岡本芳幸 全日本鍼灸学会雑誌51巻5号

図1

Page 3: 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture - jsamjaclid.jsam.jp/dspace/bitstream/10592/17157/1/0785.pdf · 2009. 11. 16. · Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるit(情報技術)革命」と

Ⅵ.ネットワーク化電子カルテのメリットネットワーク化された電子カルテには、以下の

ようなメリットが考えられます。まず、第1に、患者の履歴を参照できます。これによって、初診の患者でも既往歴や現病歴の推移を正確に知ることができます。第2に数千例~数万例を対象とした疫学調査や臨床研究が可能となります。これを押し進めれば、最適の治療法とは何か?を追求することも夢ではなくなります。第3に、鍼灸院間や医療施設との連携が容易になり情報交換や患者の紹介、地域医療への参加が可能となります。

Ⅶ.ネットワーク化電子カルテのデメリット一方、デメリットとしては、第1に、カルテ開

示など情報公開の必要性やセキュリティーについて問題があります。第2に、医療機関との連携における制度的壁があります。第3に、先ほども挙げた基本的な操作技能や機器の購入、他施設間との通信環境の問題があります。しかし、これらの問題が存在するとしても、ネットワーク化された電子カルテが提供する地域・広域医療の形成という大きなメリットに代えられるものはありません。

Ⅷ.鍼灸が地域・広域医療ネットワークに参加するための課題

この様に、大きなメリットのあるネットワーク化された電子カルテを実現するためには、鍼灸の電子カルテ作成において以下のような課題を解決する必要があります。・標準に基づく、情報交換規約の作成・正しいカルテ記録の普及・根拠に基づく治療の確立・治療機序の科学的根拠の解明・ 他分野との情報交換を行うための「標準用語」の準備と用語の定義これらの課題は、確かに一朝一夕に解決できる

ものではありません。しかし、それを解決したとき、電子カルテは鍼灸に、地域・広域医療ネットワークを形成する道具になるというIT革命をもたらすと考えます。

Ⅸ.まとめ電子カルテは、単にカルテの形を変えるだけで

なく、鍼灸がより開かれた医療へ変化するための道具でもあり、また我々が鍼灸そのものを見つめ直すきっかけなのかも知れません。つまり、電子カルテがもたらす鍼灸のIT革命は、必ず鍼灸医療における構造改革の発端と成り得ると言う事なのです。

2001.11.1 セミナー (53) 587

Ⅰ.インターネットの普及率インターネット協会が調査まとめた資料による

と、1995年から1999年にかけて日本国内のインターネット利用者数は急速に増え1999年12月で2,010

2.鍼灸医療情報は学業連携で生かされる

酒井 茂一東洋医療研究所

2. Acupuncture-and-Moxibustion Medical Information isEfficientry Employed by A Scientific-and-Operating Organization

SAKAI ShigekazuOriental medical research center

Page 4: 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture - jsamjaclid.jsam.jp/dspace/bitstream/10592/17157/1/0785.pdf · 2009. 11. 16. · Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるit(情報技術)革命」と

588 (54) 酒井茂一 全日本鍼灸学会雑誌51巻5号

万人に達した(図1)。その普及の背景には、利便性と政府が積極的に

すすめる「IT(Information Technorogy)革命」がある。つまり2000年には「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」が制定、2001年1月に高度情報通信ネットワーク社会推進本部(IT戦略本部)

が設置され、5年以内に世界最先端のIT国家となることを目指す「e-Japan戦略」及び「e-Japan重点計画」「e-Japan2002プログラム」などがある。総務省郵政事業庁(旧郵政省)平成12年版通信

白書には、高度情報通信社会における情報インフラを利用者はどのくらい重要と感じ期待しているのかを、現在及び5年後におけるインターネット及びモバイルに対する評価について、テレビ、固定電話等の情報通信メディアと比較し10段階評価のアンケートを実施した。その結果は、現在①インターネット②TV③新聞の順番が、5年後には①インターネット②携帯電話・PHS③TVとなるだろうと予測する結果が出た(図2)。

1980年代の深刻な不況を積極的な情報化投資や企業経営へのIT導入等で乗り切った米国を手本としてかどうかはわからないが、日本政府のIT戦略が前倒しして実施されている現状からすると、予測はもっと早まるだろうと思われる。また、世界のインターネット利用者数は、この

数年急激な増加を続けており、NUA社が公表している推計によれば、2000年2月で約2億7,550万人(前年同期比79.5%増)に達し、その内日本は、2,706万人(1999年末の推計値)となり、国(地

域)別のインターネット普及率を人口に対するインターネット利用者の割合でみると、10%を超えている25の国(地域)で我が国の普及率は21.4%、まだ世界第13位であるということも事実(図3)。

Ⅱ.業界の情報化の現状セミナーでは、インターネットをまだ体験され

ていない方にもわかるように、私が運営に携わっており、よく知っている範囲でひと通り鍼灸関連

図3 インターネットの普及率

図1 日本のインターネット人口

図2 情報通信メディアの重要度

Page 5: 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture - jsamjaclid.jsam.jp/dspace/bitstream/10592/17157/1/0785.pdf · 2009. 11. 16. · Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるit(情報技術)革命」と

のサイト(ホームページ)などを実際のWebブラウザを使ってお見せした。

【(社)全日本鍼灸学会】

近年アクセス数も増え内容も充実してきたことを報告。詳しい内容はHP(http://www.jsam.jp/)を参照(図4)。

【鍼灸臨床研究会HP】

当会は、学会研究部のインターネットを利用した臨床研究などを実験するにあたり設立されたワーキンググループで、多くの臨床家や鍼灸学校の学生、鍼灸に関連する技術者・研究者などで交流が行われている。詳しい内容はHP(http://www.acupuncture.jp/)

を参照(図5)。

【(社)日本鍼灸師会】

HPの管理運営はIT委員会が行い、本会・各部・各師会のホームページをサーバーをハウジングする

ことで実現している。このサイトは主に会員向けコンテンツで他に一般向け情報提供には別のドメインを利用、会員鍼灸院紹介サイトを計画している。詳しい内容はHP(http://www.harikyu.or.jp/)を参照(図6)。

【鍼灸ネット】

このサイトは、鍼灸関連の情報を関連する団体・企業・個人の鍼灸院などと連携して総合的に提供していこうとするもので、既にサブドメインを利用していくつかのサイトがHPを開設し、また準備段階にある。核になる部分はデータベースであり、Visual Basic 6.0で開発された電子カルテ(診療記録+レセプト)が無料でダウンロードできたり、全国の鍼灸院に関する詳しい情報をPostgreSQL+PHPプログラムによって登録・掲載・検索といったサービスを提供するものである。なお、レセプトの電子化は医師会のすすめる

Online Receipt Computer Advantage(進化型オンラインレセプトコンピュータシステム)の頭文字を採ったORCAプロジェクトと規模は大分違うが趣旨は同一とするもので、これを意識して作られている。詳しい内容はHP(http://www.hariq.net/)を参照

(図7)。

【UMIN:大学病院医療情報ネットワーク】

今後、(社)全日本鍼灸学会が検討し計画を進めていこうとしていることにUMINのシステムを利

2001.11.1 セミナー (55) 589

図6 日本鍼灸師会

図4 当会のホームページ

図5 鍼灸臨床研究会

Page 6: 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture - jsamjaclid.jsam.jp/dspace/bitstream/10592/17157/1/0785.pdf · 2009. 11. 16. · Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるit(情報技術)革命」と

用した臨床研究(RCT)・疫学調査・抄録の自動登録および閲覧用データベースなどがある。利用するにあたっては、先に会員を登録し電子メールアドレスの発行を受ける必要があり、これにより会員専用ページへアクセスするためのパスワードが得られる。詳しい内容はHP(http://www.umin.ac.jp/)を参

照(図8)。

なおUMINの行っている事業など詳しい内容に関する説明は、お招きした事務局長の木内先生に委ねた。

Ⅲ.さいごにインターネットの情報通信網は網の目のような

多面的な構造をしており、そこには一般の方からしたら学も業も無い。あるのはグローバルな視点での鍼灸に関する興味と関心に対する要求だけで、

それに対してどう受け止め、応えていくか?ということが今後の課題で重要なテーマになってくると思われる。目標を達成するには連携が必要であろうというのが自論である。

引用:インターネット白書'98、インプレス(http://lec-

nt.lec.handy.n-fukushi.ac.jp/tanken/info.htm)〒102-0075 東京都千代田区三番町20

株式会社インプレス 書籍編集統轄部『インターネット白書'98』係

総務省郵政事業庁(旧郵政省)平成12年版通信白書(http://www.joho.soumu.go.jp/policyreports/japanese/

papers/h12/1-index.html)

590 (56) 酒井茂一、津嘉山洋、他 全日本鍼灸学会雑誌51巻5号

図7 鍼灸ネット

図8 UMIN

3.Evidence-Based Acupuncture

津嘉山 洋   山下 仁筑波技術短期大学附属診療所

Evidence-Based Acupuncture

TUKAYAMA Hiroshi YAMASHITA HitoshiTsukuba College of Technology Clinic

Page 7: 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture - jsamjaclid.jsam.jp/dspace/bitstream/10592/17157/1/0785.pdf · 2009. 11. 16. · Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるit(情報技術)革命」と

Ⅰ.鍼灸の情報化1.既に情報化されている鍼灸

米国医学図書館の文献データベースであるMedline注i)を用いてacupuncture(鍼)という検索語で抽出される文献数は7740件あり、このうち出版形態がRandomized Controlled Trial(RCT:ランダム化比較試験)の文献数は既に379件に達しています(2001年8月31日現在)。また、Evidence-

based medicine (EBM)の代表的なデータベースの一つであるコクラン・ライブラリ1)の臨床試験データベース(Cochrane Controlled Trials Register:

CCTR)に登録されている鍼の論文は1252件、更にランダム化されたものに絞り込んでも1048件が抽出されます注ii)。この数字の一部には鍼の臨床

研究でないものや、同一の研究が何回も数えられている場合も含まれるため、MedlineやCCTRに収載されている鍼臨床のRCTの数を正確には反映していないかもしれませんが相当量のRCTが既に行われていることになります。この中には日本で行われたRCTは殆ど存在していません。また、過去に日本語で出版された鍼灸の臨床試験は殆どこの中に含まれていません。

Medline上のRCTの検討対象となった症状・疾患を表1に示します注iii)。様々な領域でRCTが実施されていることと、頭痛、嘔気や依存症のRCTが突出して多数出版されており関心の偏りがあることがわかります。各論文の筆者による結論については今回触れられませんが、その結果は一様では

2001.11.1 セミナー (57) 591

表1 鍼のランダム化比較試験の検討対象となった症状・疾患(Medline)

対象症状・疾患 件数 対象症状・疾患 件数 対象症状・疾患 件数

筋骨格 頸痛 6 精神/神経 脳卒中 9 産婦人 月経困難 1頸・腰痛 1 痴呆 2 更年期 2腰痛・下肢痛 6 てんかん 2 逆子 1顎筋筋膜痛 1 球麻痺 1 子宮頸管熟化 1肩関節腱板炎 1 末梢神経障害 2 妊娠時腰痛 1五十肩 1 顔面痙攣 1 小計 6テニス肘 1 うつ症状 4 泌尿/生殖 間質性膀胱炎 1膝蓋大腿痛 1 不安/うつ症状 1 男性性機能障害 1股関節炎 1 不眠 1 尿路結石 1変形性関節症 1 小計 23 下部尿路感染予防 1変形性膝・股関節症 1 依存症 煙草 10 小計 4変形性膝関節症 5 薬物 8 その他 嘔気(術後) 10慢性関節リウマチ 3 アルコール 2 嘔気(化学療法) 1fibromyalgia 1 喫煙 1 悪阻 1筋骨格系疼痛 1 小計 21 顎関節機能障害 3小計 33 呼吸 気管支喘息 7 ドライマウス 2

疼痛 頭痛 12 COPD 2 ドライアイ 1慢性痛 1 小計 9 レイノー症候群 1顔面痛 1 循環 狭心症 5 HIV陽性者の保健 1神経痛 1 拡張型心筋症 1 甲状腺機能亢進 1内臓痛 1 高血圧 1 環境病 1心窩部痛 1 小計 7 帯状疱疹 1小計 17 消化 過敏性腸症候群 1 乾癬 1

麻酔 鍼麻酔 9 術後回復 1 減量 1術後痛 10 慢性大腸炎 1 小計 25歯科麻酔 2 小計 3 総計 178術後排泄 1 耳鼻 耳鳴 4胃内視鏡鎮痛 1 難聴 1抜管後の声門痙攀 1 鼻炎(アレルギー性) 1小計 24 小計 6

Page 8: 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture - jsamjaclid.jsam.jp/dspace/bitstream/10592/17157/1/0785.pdf · 2009. 11. 16. · Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるit(情報技術)革命」と

ありません。また、比較の様式と出版年について表2に示し

ますが、①比較的早期の段階から偽治療と鍼を比較検討している論文が多いこと、②出版される論文数が年々増加していることがわかります注iv)。そこから、①西洋における鍼の臨床評価は「鍼にはプラシーボ効果を超える特異的効果が存在するか否か」という設問に答えようとして臨床試験が積み重ねられてきた歴史があること、②西洋において鍼に対する関心はごく一部の人々の関心から公共の関心へと広がってきたことをこの数字から読みとることが出来ます。これに対して日本においては偽治療と鍼を比較検討する研究は少なく2)、プラシーボ効果や非特異的効果を超えて鍼が特異的作用を有するかに対する関心の低さが特徴といえます。これは、既に伝統医学として社会的に一定の位置を占めており大きな社会的関心の対象となっていない状況を反映していると言えるでしょう。

2.英米における相補代替医療の評価

米国成人の相補代替医療(complementary and

alternative medicine: CAM)利用率は1990年の34%

から1997年の42%に、英国成人のCAM受診率は1993年の8.5%から1998年の10.6%に、独国の全般的なCAM普及率は1970年52%から1996年62%へとそれぞれ上昇しています3,4)。この様な近年のCAM

の普及とその社会的影響に対する懸念から、欧米においてはCAMに対する科学的評価が社会的な関心の対象となっています。米国では国立衛生研究所(National Institute of

Health: NIH)の一部局として1992年に代替医学室(Office of Alternative Medicine: OAM)が設置さ

れ、1998年に国立相補代替医学センター注v)

(National Center of Complementary and Alternative

Medicine: NCCAM)へと発展しました。このセンターは①研究の促進、②研究者の育成、そして③研究者・健康サービス供給者・国民一般の情報共有とパートナーシップの育成を目的としています。NCCAMはCAM研究に多額の研究資金を供給し、この結果米国のCAM研究及びCAM研究者の量・質の発展には特筆すべきものがあります。また、クリントン前大統領の指示によってホワイトハウス相補代替医療政策委員会注vi)(The White House

Commission on Complementary and Alternative

Medicine Policy)が2000年3月に設立され、2年間の期限で立法上、そして行政上の勧告を行うために、公聴会や文書による調査を行っています。英国では上院科学技術委員会の補完医学に関す

る報告注vii,5)が2000年に発表されました。この中でCAMの効果にプラシーボを越えるエビデンス(evidence)注viii)があるならば、国民がCAMとその便益にアクセスするべきであるとした上で、公共利益がCAMの規制の欠如によって守られていないこと、情報提供が不十分であることを指摘しています。また、それぞれの治療に応じ適切な方法で組織化されるべきであり、特に鍼とハーブは法的規制の対象とするべきで、CAM専門家のための訓練は標準化と認可が必要とされています。さらに、CAMの研究には通常医学に要求される同じ厳しさが必要とされると指摘し、公共投資を含め研究の促進が勧告されています。また、英国医師会の鍼レポートも2000年に出版されました6,7)。鍼の効果については背腰痛、嘔気・嘔吐、片頭痛及び歯痛においてコントロール介入(比較対照とした

592 (58) 津嘉山洋、他 全日本鍼灸学会雑誌51巻5号

表2 鍼のランダム化比較試験のタイプと出版年(Medline)

出版年比較の方法 1971- 1976- 1981- 1986- 1991- 1996-2000 総計偽(鍼)治療と比較 1 4 12 13 22 45 97他の治療方法と比較 1 5 10 14 30他の治療に鍼を追加 1 1 6 7 15無処置対照群と比較 1 1 4 4 10他の鍼の方法と比較 1 3 2 6不明 1 5 4 3 2 5 20総計 2 11 19 22 47 77 178

Page 9: 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture - jsamjaclid.jsam.jp/dspace/bitstream/10592/17157/1/0785.pdf · 2009. 11. 16. · Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるit(情報技術)革命」と

鍼以外の治療や無治療)よりも鍼の方がより効果があることを示唆するエビデンスがあり、鍼の安全性については鍼に関連する併発症の発生は「比較的低い」とし、経済性については鍼の費用と利益の両方に踏み込んだ質の高い研究が必要であるとしました。また、英国の保健医療システムへの鍼の統合及びCAM全般の研究と統制の推進を勧告しています。

3.社会の共有財産としての鍼灸情報

英米においては、この様に鍼を含むCAMに対する社会的関心が高まり、その評価の必要性と、そのための公共投資の必要性が認識され実施されていることがわかります。EBMを推進している英米では、医療情報が意志決定に必要な社会の共有財として認識され、CAMの情報化に対する投資や、そのために必要な人材育成の労も惜しまれていないように見えます。この情報化のための手法には、

EBMが適用されることは言うまでもありません。また、研究の国際交流も活発に行われており、「国際相補・代替・統合医学研究会議」が本年(2001

年)から毎年開催されるようになりました8)。この会議もEBMの立場からのCAMの評価を推進するものです。欧米におけるEBMに基づくCAM評価の実績は

「相補代替医学の卓上ガイド:エビデンスに基づくアプローチ(The desktop guide to Complementary

and Alternative Medicine)」9)という本に見ることが出来ます(写真1)。英国エクセター大学相補医学教室のErnst教授編集のこの本には、比較的普及しているCAM療法と薬草の64種類についてエビデンスに基づく情報が提供され、CAMが良く適応される38の健康状態に関するCAM療法のエビデンスが要約され、さらにCAM利用実態や法律、倫理、安全性、経済性などCAM全般における最近の話題が紹介されています。この様に、欧米においては医療上の意志決定に必要な情報が着々とエビデンスに基づいて積み上げられ、公共性の高い共有財産となっています。日本においてはどうかというと、2000年9月に

淡路島で開催されたWHO伝統医学国際シンポジウムにおける厚生省代表のスピーチからは、CAM

や伝統医学に対するポリシーを読みとることは困難でした。しかし、日本の伝統医学やCAMの利用者(潜在的な受益者を含む)の利益のためには、エビデンスに基づく情報が必要であり、これには利害関係に縛られない公的な研究資金の投入が必要であると考えられます。

Ⅱ.情報の要約1.意志決定に必要な情報

現今のエビデンスに基づくCAM(鍼を含む)研究は、社会的必要性を主題に研究の有用性を主張しながら、医学において主流であるEBMの方法に則って行われています。現代における医療情報は医師などの専門職が専有するものではなく、医療供給者(医療専門職を含む)、医療消費者、医療費支払者(私的・公的保険制度など)、医療政策担当者が共有し意志決定に用いられるものになってきています。研究によって生産されることが期

2001.11.1 セミナー (59) 593

写真1 The Desktop Guide to CAM

Page 10: 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture - jsamjaclid.jsam.jp/dspace/bitstream/10592/17157/1/0785.pdf · 2009. 11. 16. · Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるit(情報技術)革命」と

待される、意志決定に必要な情報とは、治療法、検査法、予防法などに対する、1)有効性2)安全性3)経済性の情報が挙げられます。さらに、医療制度に統合する際には実施可能性(ニーズ、供給態勢、品質のバラツキ等)の情報も重要になります。また、ヒトを対象とした臨床上のエビデンスが、ヒトの臨床上の判断材料となり得ます。動物から得られたメカニズムに関する生理学的なエビデンスが、ヒトを対象とした臨床に直接適用できるわけではありません。臨床疫学的な観点から見たエビデンスの確かさは、次の順番で高まるとされます。1)権威者の意見、経験や直感2)比較のない研究・症例報告・症例集積

3)比較のある研究・ ランダム化されていない研究(前向き研究、後ろ向き研究)

・ランダム化されている研究(RCT)4)システマティック・レビュー(systematic

review: SR)又はメタ・アナリシス

2.システマティック・レビュー

強い証明力を有するRCTといえども完全ではありません、偏りを含む可能性があり、複数のRCT

の結果が矛盾することもあります。また、多数の情報の中から必要な結論に至るのは容易ではありません。そこで、エビデンスの要約がシステマティック・レビュー(SR)によって行われます。通常、次のようなステップを踏んでSRは行われます。1)明解な仮説の形成2)仮説検証のため必要な情報収集

・どの様な情報を収集するか決定・解析対象の選択基準の明示

3)情報の質の評価4)量的な情報の要約(メタ・アナリシスは統計学的にデータを統合しますが、鍼のSRでは異質

性のために困難な場合があります。)5)仮説に基づいた結論

SRは情報要約の科学的手法なので、同じプロセスを踏めば結論は再現可能ということになります。そのために、結論を導く判断基準も明示されます。例えば、Ezzo10)やvan Tulder11)らがSRで用いている効果に関する基準は次のようなものです。レベル1)多数の高品質のRCTにおいて概ね一致する研究結果注ix)によってもたらされた:強いエビデンス

レベル2)一つの高品質のRCT及び一つ以上の低品質のRCTにおいて概ね一致する研究結果によってもたらされた:並のエビデンス

レベル3)一つの高品質のRCTまたは多数の低品質のRCTにおいて概ね一致する研究結果によってもたらされた:弱いエビデンス

レベル4)RCTが無いかただ一つの低品質のRCT、複数のRCTが有ってもその結果が矛盾していた場合:エビデンスがない

3.鍼RCTの品質評価

多くの鍼のSRで、鍼のRCTは質が低いという指摘が繰り返し行われています。鍼のSRで良く用いられるRCTの品質評価法にJadad Score12)があります。妥当性が検証されており、鍼の評価のためには若干の変更が加えられた以下のようなもの13)が用いられています。1)ランダム化したと記述されているか?(yes:

+1)2)ランダム化の仕組みが記述されている場合、適切であるか? (yes: +1/ no: -1)

3)患者はブラインドされているか? (yes: +1)4)評価者はブラインドされているか? (yes: +1)5)脱落や中止についての記述はあるか?(yes: +1)5項目(5点満点)の非常にシンプルなもので

多用されています。RCTにおける内部妥当性(比較可能性)についてはある程度評価可能と考えられますが、これだけで果たして鍼のRCTの品質を評価したことになるかという議論もあり14)、これ以外にも様々な品質評価法が試みられています10,

11, 15, 16)。

594 (60) 津嘉山洋、他 全日本鍼灸学会雑誌51巻5号

Page 11: 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture - jsamjaclid.jsam.jp/dspace/bitstream/10592/17157/1/0785.pdf · 2009. 11. 16. · Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるit(情報技術)革命」と

2001.11.1 セミナー (61) 595

著者

Patel

+:肯定的な結果,-:否定的な結果,±:どちらとも言えない

1989 慢性疼痛 14 + 利用可能なエビデンスは肯定的である、しかし、決定的な結論 結論は様々なバイアスの可能性があるために難しい。

Ernst E 1998 腰痛 12 + 偽鍼より優れているかについてのエビデンスは不十分であるが、 鍼は種々のコントロール介入よりは優れている。

Ernst E 1999 顎関節機能不全 3 + すべての研究が顎関節機能不全のために鍼が効果的だという点 で一致しているが、この仮説はより厳密な研究による確認を必 要とする。

Smith LA 2000 頸・腰痛(慢性) 13 ± 腰痛あるいは頸痛に対する鍼の鎮痛効果に関する納得のいくエ ビデンスはない。

Rosted P 2001 顎関節機能不全 3 + 推奨される経穴は頬車、下関、顴 、百会、風池、天柱、合谷 である。週一回で6回の治療が推奨される。

Ter Riet G 1990 依存症 5 - 鍼が依存症の治療として有効であるという主張は、確かな臨床 研究の結果には支持されない。

White AR 1999 禁煙 12 - 禁煙に対して鍼はプラシーボよりもまさってはいなかった。特 定の鍼の方式が肯定的な結果と関連づけられなかった。

White AR 1999 禁煙 20 - 鍼が禁煙においてプラシーボより有効であるという明確なエビ デンスはない。

Ernst E 1997 減量 4 - はり/指圧療法が食欲あるいは体重を減らす効果があることを 示すような明らかな結果は見いだされない。

Lee A 1999 嘔気(術後の予防) 19 + 鍼は一般に用いられた制吐薬と同等である。鍼は小児では利益 は観察されなかったが、成人の外科手術後の最初の6時間では プラシーボよりも有効である。

White AR 1999 頸痛 14 ± 鍼が頸痛の治療で有効であるという仮説はしっかりした臨床試 験に基づくビデンスに支持されていない。

Lautenschlager J 1997 炎症性リウマチ性 疾患

18 ± 鍼をこれらの病気の治療のために推奨することはできない。明ら かに、調べられた殆どの研究が十分な品質を示すのに失敗した。

Melchart D 1999 頭痛 22 + 既存のエビデンスは反復性頭痛の治療に対する鍼の価値を支持 する。しかしながら、エビデンスの質と量は充分には説得的で はない。

Ernst E 1998 歯痛(急性) 16 + 鍼は歯痛を緩和する事が出来る。将来の研究が最適な鍼テクニ ックと従来の鎮痛方法に対する相対的な有効性を明らかにする であろう。

Ezzo J 2001 変形性膝関節症 7 + 既存のエビデンスは変形性膝関節症の治療における鍼の役割を示 唆する。将来の研究が最適な方法を明らかにするととも、QOLを 評価し、他の方法と組み合わせられた鍼を評価するべきである。

Manias P 2000 頭痛 27 + 鍼を評価する臨床試験はしばしばいろいろな不備によって特徴 づけられる(頭痛に関するこれらの試験の幾つかも例外ではな い)、追加の臨床研究がその有効性を確証し、その適応を明確 にするために必要である。

Tulder MW van 1999 腰痛(急性・慢性) 11 - エビデンスは腰痛の治療のために鍼が効果的であることを示さ ないために、著者は腰痛患者のために鍼を正規の治療として推 奨しない。明らかにより多くの高品質のランダム化比較試験の 必要がある。

Ter Riet G 1990 慢性疼痛 51 - 慢性の痛みの治療での鍼の有効性は疑わしいままである。

Ernst E 1997 変形性関節症 13 ± 結果は大いに矛盾している。

Ezzo J 2000 慢性疼痛 51 ± 鍼が慢性痛に対して、無治療より効果的であるという限定され たエビデンスがあるが、プラシーボや偽鍼あるいは標準的な治 療より効果的であることには結論が出せない。しかし、我々は 将来の研究に参考になるであろう、研究の方法論とその結果の 間の重要な関係を見いだした。

年 対象 試験数 結果 著者による結論

骭謬

表3 鍼のシステマティック・レビュー

Page 12: 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture - jsamjaclid.jsam.jp/dspace/bitstream/10592/17157/1/0785.pdf · 2009. 11. 16. · Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるit(情報技術)革命」と

4.鍼のシステマティック・レビュー(SR)

現在、どのようなSRが鍼に対して行われているか見てみると、鍼の臨床効果に関して26件、安全性に関して4件、出版バイアスに関して1件が出版されています注X)。これらの概要を表3に示します。このリストは現存するSR全てを網羅しているわけではありませんが、EBMによってどのように鍼が評価されているかについての大まかな理解が得られるでしょう。まず、臨床効果に関するレビューを概観すると、慢性疼痛全般を対象に3件のレビューが行われ10,

15, 17)、それぞれの結論は、どちらかと言えば肯定的、否定的、保留と一致しませんが、何れもエビデンスは不十分で確かな結論は出せないと言うことは一致していました。腰痛を対象として3件のレビュー11, 13, 16)が行われていますが、筆者の結論は互いに一致していないものの、「RCTの質は低く、質の高い研究が必要」という点では一致していました。頸痛については2件のレビュー16,18)

があり、どちらとも言えないと言う結果でした。頭痛に対する2件のレビュー19,20)は肯定的な結論でしたが、さらに研究が必要という点で一致して

596 (62) 津嘉山洋、他 全日本鍼灸学会雑誌51巻5号

著者

Vickers A

+:肯定的な結果,-:否定的な結果,±:どちらとも言えない

1996 制吐作用 33 + 麻酔下で施された場合を除いて、内関穴刺激は効果的な制吐療 法であると思われる。

Park 2000 耳鳴 6 - 鍼は厳密なランダム化比較試験のエビデンスによっては耳鳴の ための治療としての有効性は明らかにされなかった。

Smith CA 2001 陣痛誘発 0 ± よくデザインされたランダム化比較試験が陣痛を誘発するため の鍼の役割を評価するために必要である。

Linde K 1998 慢性喘息 7 ± 鍼の喘息治療における価値について勧告をするのに十分なエビ デンスがない。さらに進んだ研究が必要がある。

Norheim AJ 1996 有害効果 研究は一定の状況の下で鍼の副作用を確認する。しかしながら,重大な副作用はまれである。鍼は一般に安全な治療であるとみ なすことができる。

Yamashita H 2001 有害事象 過誤による多くの重篤な症例がレビューにより見いだされた。 (医師を含めて)鍼施術者の研修システムが改善されるべきで あり、監督下にない自己治療は行われるべきではない。

Ernst E 2001 安全性 鍼に関連するマイナーな有害事象はかなりの率で生じるであろ うが,重篤な事象はまれである。鍼灸師の資質に責任がある人 たちはこれらの危険を減らす方法を検討するべきである。

Linde K 2001 システマティック・ レビュー

鍼に関する多数のシステマティック・レビューが存在する。良 く設計されたより大きな臨床試験(とそれに対する資金供給) が必要なことが,これらのレビューから明らかである。

Vickers A 1998 RCTの出版 バイアス

若干の国は異常に高い割合で肯定的な結果を出版する。出版バ イアスによる可能性が高い。システマティック・レビューを行 う研究者はこれらの国(日本も含まれる)からのデータをどの 様にあつかうべきか慎重に検討すべきである。

Ernst E 1997 有害反応 (致死的な)

重篤な有害事象がはり療法と関連づけられた。鍼師がそれらの 危険を如何に最小にすることが出来るかを実証すべきであり, 規制と監視機構は問題の程度をより明らかにすることができる であろう。さもなければ、鍼師の専門家内の問題が社会一般の ものになるであろう。

Park J 2001 脳卒中リハビリ テーション

9 ± 脳卒中リハビリテーションに鍼が効果的であることを示す説得 力のあるエビデンスは厳密なランダム化比較試験に基づいたも のがない。 さらに、良くデザインされた研究が必要とされる。

Ernst E 1996 脳卒中リハビリ テーション

6 + 鍼が脳卒中リハビリテーションの補助として有用であるという エビデンスは有望ではあるが、確信には至らない。さらに多く のもっと良い試験がこの非常に重要な問題をはっきりさせるた めに必要とされる。

年 対象 試験数 結果 著者による結論

Page 13: 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture - jsamjaclid.jsam.jp/dspace/bitstream/10592/17157/1/0785.pdf · 2009. 11. 16. · Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるit(情報技術)革命」と

いました。歯痛については肯定的な結論でした。変形性関節症全体21)についてはRCTの結果は互いに一致せず結論は保留されましたが、変形性膝関節症22)に関しては肯定的な結論でした。顎関節機能不全についての2件のレビュー23,24)は何れも肯定的な結論で一致していました。炎症性リウマチ性疾患25)については結論が出せませんでした。依存症26)と禁煙27,28)に対するレビューは否定的な結論でした。嘔気・嘔吐に関しての2件のレビュー29,30)はそろって肯定的でした。耳鳴31)

については否定的な結果であり、脳卒中リハビリテーションについての2件のレビュー32,33)は、一件は有望、他方は結論が出せないとしています。慢性喘息34)についても結論が出せませんでした。陣痛誘発35)については該当する試験が無く結論が出せませんでした。以上から、鍼の有効性に関しては、嘔気・嘔吐

については肯定的、頭痛、歯痛、顎関節機能不全、変形性膝関節症に関しては有望な結果といえますが、他は結論が出せないか否定的な結果でした。また、肯定的な傾向のレビューにあっても堅固な結論を導くには充分なエビデンスが無いという点ではほぼ一致しています。安全性に関するレビューを見ると、まずNorheim

(1996)36)は、Medline上の鍼の有害効果に関する78の報告(193症例)を抽出して、「報告された鍼の有害効果の多くは不適当な施術によるもので、重篤なものは存在するがまれで、鍼は比較的安全な治療である」と結論しました。これに対して、Ernst(1997)37)は、有害な合併症の56の報告を抽出し、2例の敗血症、2例の心タンポナーデ、1例の喘息発作による5名の致死例を含む、感染、臓器損傷、ペースメーカーの機能不全などの合併症を見いだし、発生率はわからないものの重篤な有害事象が鍼と関連し、これに対する対策が必要である、と結論しました。また、Yamashita(2001)38)は、日本語で出版された鍼の有害事象に関する89文献(128症例)を抽出し、過誤による多くの重篤な症例が見いだされ、鍼施術者の研修システムが改善されるべきであると結論しました。Ernst

(2001)39)は、鍼の有害事象の発生率を検討している9つの前向きの調査研究をレビューし、「マ

イナーな事象の発生はかなりの率で生じるけれども、重篤な事象はまれである。鍼による危険を減らす方法が検討されるべきである。」と結論しています。以上から、鍼の安全性に関しては、「まれに、重篤な有害事象が発生しているがそれは無知や過誤に基づくもので、教育や訓練によって防止されるべきであり、調査システムや規制も必要である。」という結論で一致していると考えられます。

Ⅲ.鍼のシステマティック・レビューから学ぶこと

1.SRの結論と臨床的意義

SRの結論を解釈するにあたっては注意が必要です。まず第一に、研究仮説が「鍼はプラシーボより効果的か?」と言うものであるとすれば、その結果が肯定的・否定的の何れであったとしても、臨床的な意義とは直接には結びつかない可能性があるということです。例えば頭痛において、鍼が偽鍼より効果的であ

ったという肯定的な結果が出たとしても、その効果が標準的な鎮痛薬より遙かに劣ったものであり、費用も多く必要だとした場合には、鍼を用いる臨床的な意義はかなり低いものになるかもしれません。また、禁煙や減量において偽鍼の効果を超えないという否定的な結果が出たとしても、鍼が無治療や他の治療に比べて明らかに有効であったとするならば、鍼を用いる臨床的意義はあると言うことになります。(この場合は「治療者は経穴を習うよりも効果的なプラシーボ治療を行う訓練を行うべきである」40)と言うことになるかもしれませんが。)先に述べましたように、欧米における鍼の臨床評価の焦点のひとつが「鍼の特異的効果」にあることに注意する必要があると考えられます。

2.研究の質(妥当性)

次に、研究の質の評価について注意が必要と考えられます。質の高いRCTでは、相互に比較するいくつかの群を作る際に、各々の群に偏り(バイアス)が生じないようにするために、ランダム割付や、被検者や評価者をブラインドするなどの工夫が行われます。これは、RCT内においてどれだ

2001.11.1 セミナー (63) 597

Page 14: 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture - jsamjaclid.jsam.jp/dspace/bitstream/10592/17157/1/0785.pdf · 2009. 11. 16. · Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるit(情報技術)革命」と

け正確に比較する事が出来るかと言う問題で、内部妥当性(比較可能性)と呼ばれます。SRにおいてRCTの質が低いという指摘が繰り返し行われていますが、最近の鍼のRCTでは内部妥当性に関しては次第に品質が向上しているようです。これに対して、試験の結果を現実に適用しようとしたときに、比較のために設定した条件が現実に即しているかどうかによって、解釈に限界が生じることになります。これは外部妥当性(一般化可能性)と呼ばれ、介入(治療)の質や、対象となった患者群の質、評価方法などにより影響されます。

3.鍼RCTの一般化可能性

慢性関節リウマチ(RA)を対象としたRCTを例に取ります41)。このRCTは、対象の選択基準が規定されており、独立したコントローラーの手になる妥当なランダム割付が行われ、プラシーボ鍼を対照群に用いて週一回で5回の治療が行われました。被験者、観察者、統計担当者をブラインドし、被検者と鍼灸師の会話を制限し、脱落症例の記載がされており、Jadad Scoreでも5点満点の高品質のRCTということになります。この内部妥当性の高いRCTは、鍼とプラシーボ鍼との間に効果の差を認めないという結果でした。さて、この結果を「一般的に鍼はRAの治療法としては無効である」というように解釈できるでしょうか。この研究の鍼治療の方式は、左右の太衝穴のみ

を用いて、同部に4分間置針し、その間に5秒間の手技が加えられるという極めて簡潔なものでした。こうした治療が一般的なものであれば、鍼のRA治療一般として解釈することが可能かもしれません。しかし、筆者らはこの方式を選択した理由に、簡便で、再現可能性も高く、不快感が少ないために、研究の方法上都合が良かったことと、以前の枯草熱(hay fever)と頭痛の研究で効果的であったことをあげており、今までRAに用いられたことはなかったとしています。そこで、この方式の一般化可能性は確認されていないために、筆者らも「このタイプの鍼治療はRA患者の治療に役立つとはみなせない。」と制限された結論を出しています。内部妥当性と一般化可能性は別のものであり、適切な治療法の選択や評価については依然

として解決しなければならない問題があることが理解されるでしょう。

Ⅳ.適切な介入(鍼治療法)とは1.SRから見た鍼治療の適切さ

鍼治療法や比較対照とする介入の質は、鍼のRCTの一般化可能性に影響する大きな因子ですが、未だに適切な方法に関する共通理解は得られていないようです42)。StuxはSRから得られた鍼の適切さについて整理して、Ezzo10)がRCTの結果と治療回数の間に関連を見いだしていること、Petel17)は個々の状況に対応して治療法を変化させた方が試験の成績がよいとしていること、Birch43)は鍼治療法に使用する経穴の数は一治療あたり6穴(出来れば10穴)、治療の回数は6回(出来れば10回)が適切であるとしたことを紹介しています。また、いくつかのSRで鍼治療の適切さについての評価が試みられています。1) 経験のある複数の鍼灸師が鍼治療方法の記述をVASで評価する13)。

2) 鍼治療法で“得気”が得られているかを評価基準とする44)。

3) 鍼灸師の品質の高さについて言及されているかを評価基準とする15)。これらの方法については議論もあり、決定的な

方法がないのが実状でしょう。RCTの一般化可能性、特に鍼の適切さの評価に関しては、鍼のSRは改善の余地がありそうです。

2.一般化可能性の高い鍼治療法

鍼治療方式の一般化可能性を高めるためにBRITS

(Birch relevant and irrelevant treatment selection)という方式が提案されています42)。これは、適切な鍼療法の設定には、1) 評価しようとする鍼治療の方式(流派など)による臨床テキスト(最低6冊)から、どの様な治療(経穴、刺激方法、治療頻度、回数など)が推奨されているか調査する。

2) 他の流派などの臨床テキストがどの様な経穴を推奨しているかを調査したほうがよい。さらに、一般化可能性を高めることが出来る。

3) パイロット研究で治療方式の適切さをチェッ

598 (64) 津嘉山洋、他 全日本鍼灸学会雑誌51巻5号

Page 15: 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture - jsamjaclid.jsam.jp/dspace/bitstream/10592/17157/1/0785.pdf · 2009. 11. 16. · Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるit(情報技術)革命」と

クして、フルサイズの研究に向けて調整する。というプロセスをたどるという方法です。この方法は、出版されている鍼の臨床テキスト

から一般化可能性を保証しようと言うアプローチです。鍼の教科書が現実の鍼治療を反映しているのかという疑問も生じるため、BRITSを用いながら、さらに現実の鍼灸師に対するアンケートなどで補足して研究用の鍼治療方式を決定しようという試みもあります。現実に行われている鍼治療の方式を抽出するというアプローチも可能でしょう。今後さらに検討が進められるでしょうが、鍼治療方法が良く記述されて再現が容易なことは、これらの議論の前提になるでしょう。

3.適切な対照群とは

従来の鍼の臨床研究方法に関する議論の多くは、「鍼にはプラシーボ効果を超える効果がある」という研究仮説に基づくもの、つまり鍼の特異的効果の確認を前提としています。そのために、鍼の臨床試験において効果を鍼と比較するための対照群として、微鍼(minimal acupuncture)20,45)や偽鍼46)、プラシーボ鍼47)などが推奨されています。しかし、既に述べましたように、この仮説に基づいた研究結果は現実の臨床に結びつかない可能性があります。研究目的が、「鍼治療を患者に選択することで如何なるメリットとデメリットがあるか」であるとするならば、標準的な治療との比較が現実的な選択肢になるでしょう48)。研究目的(「その臨床試験によって何を明らかにしたいのか」)に応じて、適切な対照群のタイプ49)を選択する必要があります。また、鍼の臨床研究における適切なプラシーボ

の使用についても、検討の余地が残されているようです。例えば、不適切な刺鍼部位をプラシーボとした場合に評価されるのは、ある刺鍼部位と別の刺鍼部位との効果の違いで、鍼一般の効果の有無を検討するには不適切かもしれません。不活性レーザーや不活性TENSは鍼と心理的に同等かどうか疑問が生じます。微鍼で用いられる刺鍼法は日本では本物の鍼治療と見なされる可能性があります。また、Streitbergerらがプラシーボ鍼をThe

Lancet誌に報告して以来、皮膚を通過しない偽鍼

により被検者をブラインドする方法が確立されたかのように見えますが、その研究報告の中で、刺入されているか否かについては鍼とプラシーボ鍼との間に差はないが、鈍い刺鍼感覚(彼らはこれを“得気”としています)については差を認めています47)。明らかに主観的体験として異なったものを、“得気である”と言うことによって、心理的差異を無視して良いものか疑問が生じます。錠剤の色の差によるプラシーボ効果の違いが議論されています50)が、“得気”の心理的効果は錠剤の色の差以上に深刻なものと考えられます。

4.介入に対する被検者の期待

様々な方法によって被検者のブラインドが試みられますが、見た目で区別のつかないプラシーボ錠と異なりブラインドの確実さは保証されてはいません。そこで、被検者のブラインドの信頼性が評価される必要が生じます。そこで、Vincent51)

はプラシーボの適切さを評価するための信憑性スケールの妥当性を確かめています。このスケールは、1)介入が訴えを軽減できると感じているか2)類似の愁訴で苦しむ友人に治療を勧めようと思うか

3)介入は合理的に見えるか4)介入が他の愁訴を軽減すると考えるかの4点を6段階で評価しています。妥当性が確

かめられているので良く用いられています。ShenのRCT52)ではより直截に

1)どの治療群に振り分けられたと思うか2)受けた鍼治療の質はどうか3)治療した施術者の印象はどうか4)施術者の親しみ易さはどうかに関して評価を行っています。施術者の質や、

態度についても評価しているのも特徴です。また、現実に良く用いられている鍼以外の治療

法を対照群に用いる場合は、被検者のブラインドが困難となります。この場合に、被検者がそれぞれの治療方法によせる期待度の違いが治療効果に反映することが報告されています53)。被検者をブラインドしないRCTでは、被検者の期待を評価することでRCTの品質は向上するでしょう。

2001.11.1 セミナー (65) 599

Page 16: 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture - jsamjaclid.jsam.jp/dspace/bitstream/10592/17157/1/0785.pdf · 2009. 11. 16. · Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるit(情報技術)革命」と

KalauokalaniのRCTでは、「割り付けられた介入がどの程度期待できると感じているか」という治療への期待、(介入に関わりなく)「1カ月後に訴えがどうなっていると考えているか」という被検者の楽観性について評価しています。

Ⅴ.Evidence-Based Acupuncture(エビデンスに基づく鍼灸)最近、鍼のSRのレビューをLindeら54)が行って

いますが、その中で「(鍼のSRに)含まれる試験は被検者、介入(治療法)、結果評価法に関して異質(同じようなものの集まりではなく、様々にばらついていること。そのために共通に評価することが困難)である。」と指摘しています。被検者、結果評価方法の異質性については、比較的早期に改善が期待されますが、介入(治療法)の異質性については、その多くが鍼灸自身に含まれる多様性55)に起因している可能性もあります。薬物の刺激量は服用量としてほぼ単一の変数と

して検討できますが、鍼施術に関わる変数は単純に考えても、①配穴、②刺鍼深度、③刺激方法、④刺激時間、⑤使用鍼と多岐にわたります。これらの因子は、流派によって、術者の個性や熟練度、時代や地域、患者の個体差によって異なってきます。こうした多様性は必然性を含んでいるものなのか、それとも単に混乱しているだけでとるに足らないばらつきでしかないものなのか、その答えを出すのは容易ではないでしょう。しかし、このような要因の中にこそ鍼灸師の存在の意義が問われてくるのかもしれません。また、EBMを鍼に適応することで鍼治療の持っているエッセンスが失われていくのではないか、という不安が有るかもしれません。しかし、既にエビデンスを基に鍼が語られ始めた現在、鍼治療における、「鍼の安全性・非侵襲性」、「患者の満足の質」、「有益な副作用としての体調の改善」、「鍼臨床における患者-治療者相互関係」、「身体を基盤に起きつつ心理的な側面も含む全体観」などを観念として語るのでは鍼専門家とそれを取り巻く一部の患者層以外には理解を得にくい状況となっています。公共的な共通理解を得るためにそれらの概念をエビデンスに基づく情報に乗せて提

供することが“鍼灸らしい鍼”を守ることに繋がるのではないでしょうか。鍼RCTに対する批判が、介入(施術)方法に向

けられることが在ると聞きますが、先に述べましたように英米においても鍼施術方法の適切さに対する検討が一部では進行しています。また、個々の状況に対応して治療を変化させた方が成績がよいと言うことですが、随証療法における証診断の妥当性(異なる術者間で一致するか否か)の検証が試みられたりもしています。日本においては、過去にこうした試みに先行する研究が行われていました。欧米のエビデンスに基づく鍼灸臨床研究のデータベースには日本の鍼灸の実際が充分には反映されていないのが実状です。従って、全世界規模の鍼灸臨床情報のデータベースに日本から寄与できる余地は充分に残されているでしょうし、日本からの寄与が期待されていると考えられます。エビデンス=RCTというイメージが在るかもしれませんが、 Evidence-Based Acupunctureあるいは鍼灸の情報革命は、英米流の鍼灸のRCTを行うことから始まるのではなく、鍼灸の実践の実態を情報化しうるものと捉えることから始まるのかもしれません。鍼灸の実践を如何に情報に結びつけるかという姿勢が問われているように感じます。

注釈注i)インターネットからPubMed(http://www.

ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/)を通じて利用可能です。

注ii)random, randomly, randomized, randomised,

randomization, randomisation, RCT およびacupuncture, electro-acupuncture, electro-

acupunctureの検索語で抽出しました。注iii)2000年末にPubMedで抽出した鍼のRCTか

ら、二重出版や鍼を対象とした臨床研究でないものを除くと178件となりました。これらの抄録からその対象症状・疾患を集計しました。

注iv )抄録からデザインについて判断したために20

件のRCTについては詳細がわかりません。注v)NCCAMのホームページはhttp://nccam.nih.gov/

です。

600 (66) 津嘉山洋、他 全日本鍼灸学会雑誌51巻5号

Page 17: 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture - jsamjaclid.jsam.jp/dspace/bitstream/10592/17157/1/0785.pdf · 2009. 11. 16. · Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるit(情報技術)革命」と

注vi)この委員会はオープンに調査を行っており、その状況はインターネットで知ることが出来ます。(http://www. whccamp.hhs.gov)

注vii)報告書の全文をインターネットで閲覧することが出来ます(http://www.parliament.the-

stationery-office.co.uk/pa/ld199900/ldselect/

ldsctech/123/12301.htm)。注viii)臨床データに基づいた科学的な証拠注ix)この場合、「概ね一致する研究結果」とは4

分の3以上の研究が同じ結果(肯定的あるいは否定的)であることを意味します。

注x)PubMedで、meta-analysisの出版形態あるいはsystematic reviewの検索語で抽出された鍼のシステマティック・レビューとコクラン・ライブラリに収載されている完了した鍼のシステマティック・レビューを合わせた数字(2001

年8月末に検索した)です。タイトルにacupunctureを含むものを対象としました。

文献1)The Cochran Library, issue 3, 2001. Oxford:

Update Software, ISSN 1464-780X.

2)七堂利幸.鍼灸の臨床評価(32) 日本に於ける鍼灸の臨床試験.医道の日本.1996;55(no

623):95-102.

3)Eisenberg D. Complementary and alternative

medicine use in the united states: Epidemiology

and trends 1990-2000. in: Ernst E, Pittler MH,

Stevinson C, White AR editors. The desktop

guide to complementary and alternative

medicine. London: Harcourt Publishers Limited

2001: 374-87.

4)Pittler HM. Complementary and alternative

medicine: a European perspective. in: Ernst E,

Pittler MH, Stevinson C, White AR editors. The

desktop guide to complementary and alternative

medicine. London: Harcourt Publishers Limited

2001: 388-94.

5)Mills SY. The House of Lords report on

complementary medicine: a summary.

Complement Ther Med 2001;9(1):34-9.

6)British Medical Association Board of Science and

Education. Acupuncture: efficacy, safety and

practice. Amsterdam: Harwood academic

publishers 2000.

7)津嘉山洋,小林聰,山下仁.英国医師会の鍼に関する報告書.全日本鍼灸学会雑誌2000;

50(3):525-32.8)山下仁,津嘉山洋.国際相補・代替・統合医

学研究会議(サンフランシスコ)参加報告.医道の日本2001;60(no 689):139-47.

9)Ernst E, Pittler MH, Stevinson C, White AR

editors. The desktop guide to complementary and

alternative medicine. London: Harcourt

Publishers Limited 2001.

10)Ezzo J, Berman B, Hadhazy VA, Jadad AR, Lao

L, Singh BB. Is acupuncture effective for the

treatment of chronic pain? A systematic review.

Pain 2000 Jun;86(3):217-25.

11)Tulder MWV, Cherkin DC, Berman B, et al. The

effectiveness of acupuncture in the management

of acute and chronic low back pain. A systematic

review within the framework of the Cochrane

Collaboration Back Review Group. Spine 1999;

24(11):1113-23.

12)Jadad AR. Blind assessment of the quality of trial

reports. Controlled Clin Trials 1996; 17: 1-12.

13)Ernst E, White AR. Acupuncture for back pain: a

meta-analysis of randomized controlled trials.

Arch Intern Med 1998 Nov 9;158(20):2235-41.

14)Birch S. Systematic reviews of acupuncture - are

there problems with these? Clinical Acupuncture

and Oriental Medicine 2001;2:17-22.

15)Ter Riet G, Kleijnen J, Knipschild P.

Acupuncture and chronic pain: a criteria-based

meta-analysis. J Clin Epidemiol 1990;43(11):

1191-9.

16)Smith LA, Oldman AD, McQuay HJ, Moore RA.

Teasing apart quality and validity in systematic

reviews: an example from acupuncture trials in

chronic neck and back pain. Pain 2000 May;86(1-

2):119-32.

17)Patel M, Gutzwiller F, Paccaud F, Marazzi A. A

meta-analysis of acupuncture for chronic pain.

2001.11.1 セミナー (67) 601

Page 18: 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture - jsamjaclid.jsam.jp/dspace/bitstream/10592/17157/1/0785.pdf · 2009. 11. 16. · Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるit(情報技術)革命」と

International Journal of Epidemiology 1989;18;

900-6.

18)White AR, Ernst E. A systematic review of

randomized controlled trials of acupuncture for

neck pain. Rheumatology (Oxford) 1999 Feb;

38(2):143-7.

19)Melchart D, Linde K, Fischer P, White A, Allais

G, Vickers A, Berman B. Acupuncture for

recurrent headaches: a systematic review of

randomized controlled trials. Cephalalgia 1999

Nov;19(9):779-86.

20)Manias P, Tagaris G, Karageorgiou K.

Acupuncture in Headache: A Critical Review.

Clin J Pain 2000;16:334-339.

21)Ernst E. Acupuncture as a symptomatic treatment

of osteoarthritis. A systematic review. Scand J

Rheumatol 1997;26(6):444-7.

22)Ezzo J, Hadhazy V, Birch S, Lao L, Kaplan G,

Hochberg M, Berman B. Acupuncture for

osteoarthritis of the knee: a systematic review.

Arthritis Rheum 2001 Apr;44(4):819-25.

23)Ernst E, White AR. Acupuncture as a treatment

for temporomandibular joint dysfunction: a

systematic review of randomized trials. Arch

Otolaryngol Head Neck Surg 1999 Mar;125(3):

269-72.

24)Rosted P. Practical recommendations for the use

of acupuncture in the treatment of

temporomandibular disorders based on the

outcome of published controlled studies. Oral Dis

2001 Mar;7(2):109-15.

25)Lautenschlager J. Acupuncture in treatment of

inflammatory rheumatic diseases. Z Rheumatol

1997 Jan-Feb;56(1):8-20.

26)Ter Riet G, Kleijnen J, Knipschild P. A meta-

analysis of studies into the effect of acupuncture

on addiction. Br J Gen Pract 1990 Sep;40(338):

379-82.

27)White AR, Resch KL, Ernst E. A meta-analysis

of acupuncture techniques for smoking cessation.

Tob Control 1999 Winter;8(4):393-7.

28)White AR, Rampes H, Ernst E. Acupuncture in

smoking cessation (Cochrane Review). In: The

Cochrane Library, Issue 4, 1998. Oxford: Update

Software.

29)Vickers AJ. Can acupuncture have specific

effects on health? A systematic review of

acupuncture antiemesis trials. J R Soc Med 1996

Jun;89(6):303-11.

30)Lee A, Done ML. The use of nonpharmacologic

techniques to prevent postoperative nausea and

vomiting: a meta-analysis. Anesth Analg 1999,

88:1362-1369.

31)Park J, White AR, Ernst E. Efficacy of

acupuncture as a treatment for tinnitus: a

systematic review. Arch Otolaryngol Head Neck

Surg 2000 Apr;126(4):489-92.

32)Ernst E, White AR. Acupuncture as an adjuvant

therapy in stroke rehabilitation? Wien Med

Wochenschr 1996;146(21-22):556-8.

33)Park J, Hopwood V, White AR, Ernst E.

Effectiveness of acupuncture for stroke: a

systematic review. J Neurol 2001 Jul;248(7):558-

63.

34)Linde K, Jobst K, Panton J. Acupuncture for

chronic asthma. In: The Cochrane Library, Issue

3, 2001. Oxford: Update Software.

35)Smith CA, Crowther CA. Acupuncture for

induction of labour. In: The Cochrane Library,

Issue 3, 2001. Oxford: Update Software.

36)Norheim AJ Adverse effects of acupuncture: A

study of the literature for the years 1981-1994. J

Altern Complement Med 1996;2(2):291-7.

37)Ernst E, White A. Life-threatening adverse

reactions after acupuncture? A systematic review.

Pain 1997 Jun;71(2):123-6.

38)Yamashita H, Tsukayama H, White AR, Tanno

Y, Sugishita C, Ernst E. Systematic review of

adverse events following acupuncture: the

Japanese literature. Complement Ther Med 2001

Jun;9(2):98-104.

39)Ernst E, White AR. Prospective studies of the

safety of acupuncture: a systematic review. Am J

Med 2001 Apr 15;110(6):481-85.

602 (68) 津嘉山洋、他 全日本鍼灸学会雑誌51巻5号

Page 19: 医療情報と鍼灸 Medical Information and Acupuncture - jsamjaclid.jsam.jp/dspace/bitstream/10592/17157/1/0785.pdf · 2009. 11. 16. · Ⅰ.はじめに 一口に「鍼灸におけるit(情報技術)革命」と

40)Ernst E, White AR. 結論.In: Ernst E, White AR

編著/山下仁, 津嘉山洋訳.鍼の科学的根拠.横須賀:医道の日本 2001.226.

41)David J, Townsend S, Sathanathan R, Kriss S,

Dore CJ. The effect of acupuncture on patients

with rheumatoid arthritis: a randomized, placebo-

controlled cross-over study. Rheumatology

(Oxford) 1999;38(9):864-9.

42) Stux G, Birch S. Proposed standards of

acupuncture treatment for clinical studies. In:

Stux G and Hammerschlag R editors. Clinical

Acupuncture Scientific Basis. Berlin : Springer

Verlag. 2001:171-185.

43)Birch. Issues to consider in determining an

adequate treatment in a clinical trial of

acupuncture. Compl Ther Med 1997:5:8-12.

44)He L, Zhou D, Wu B, Li. N Acupuncture for

Bell's palsy [protocol]. In: The Cochrane Library,

Issue 3, 2001. Oxford: Update Software. Date of

most recent substantive amendment : 12

November 2000

45)チャールズ・ビンセント. 鍼の臨床試験において対照として何を使うべきか?. 医道の日本 1995; 54 (no. 612):10-21.

46)Park J, White AR, Lee H, 山下仁, Ernst E. 新しく開発した偽鍼とその信頼性. 全日本鍼灸学会雑誌 2000;50;111-4.

47)Streitberger K, Kleinhenz J. Introducing a

placebo needle into acupuncture research. Lancet

1998;352-3.

48)Vickers A. Evidence-based medicine and

complementary medicine. ACP J Club 1999:

Mar-Apr, 130(2):A13-4.

49)Filshie J, Cummings M. 西洋医学的鍼治療. In:

Ernst E, White AR編著/山下仁, 津嘉山洋訳.鍼の科学的根拠.横須賀:医道の日本2001:53-94.

50)de Craen AJM, Roos PJ, de Vries AL, Kleijnen J.

Effect of colour of drugs: systematic review of

perceived effect of drugs and of their

effectiveness. BMJ 1996;313:1624-6.

51)Vincent C. Credibility assessment in trials of

acupuncture. Complementary Medical Research

1990;4(1):8-11.

52)Shen J, Wenger N, Glaspy J, Hays RD, Albert

PS, Choi C, Shekelle PG. Electroacupuncture for

control of myeloablative chemotherapy- induced

emesis. JAMA 2000;284:2755-61.

53)Kalauokalani D, Cherkin DC, Sherman KJ,

Koepsell TD, Deyo RA. Lessons from a trial of

acupuncture and massage for low back pain.

Spine 2001;26:1418-24.

54)Linde K, Vickers A, Hondras M, ter Riet G,

Thormahlen J, Berman B, Melchart D.

Systematic reviews of complementary therapies -

an annotated bibliography. Part 1: Acupuncture.

BMC Complement Altern Med 2001;1(1):3.

(http://www.biomedcentral.com/1472-6882/1/3)

55)Birch S, Kaptchuk T. 鍼の歴史,特質,および現今の臨床:東アジアの観点.In: Ernst E,

White AR編著/山下仁, 津嘉山洋訳.鍼の科学的根拠.横須賀:医道の日本.2001:25-51.

2001.11.1 セミナー (69) 603