日本国内唯一の研究教育機関として、 超臨界流体の可能性を...

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・・・ 主な 研究テーマ 化学工学専攻 超臨海溶媒工学研究センター 溶媒要素技術部 (猪股研究室) 超臨界 CO 2 洗浄技術(精密洗浄、フィルタ再生、ドライクリーニング) 天然物の抽出分離 高圧 CO 2 を用いたポリマー材料プロセシング バイオマスのカスケード利用技術 超臨界 CO 2 を用いた結晶製造 宮城県立仙台第一高等学校卒業。東北大学大学 院博士課程修了。「中学生の頃に、ちょうど四日 市などの公害が問題になっていました。公害を 作ったのは化学、でも公害を解決するのも化学で はないかと思い、この道を志しました」。研究室 のスローガンは『挨拶をする』『現象を五感を駆 使して観察する』そして『常に、なぜ?を自問する』。 工学研究科 超臨界溶媒工学研究センター 教授 工学博士 股  宏 HIROSHI INOMATA 体・液体・固体と並ぶもう一つの相状態に“超臨 界流体”があります。超臨界流体は一般に高温・ 高圧状態で形成され、気体と液体の中間的性質を示しま す。つまり、どちらでもないということですが、温度と 圧力の操作で極めて大きな変化を起こしたり、低粘性の ために微細構造への浸透性に優れているなどの特性を 持っています。 私たち超臨界センターは、日本国内唯一の超臨界流体 に関する研究教育施設として、数ある化学物質の中でも 比較的温和な条件で超臨界状態に達する二酸化炭素と、 豊富な資源量の水を有効利用して、これらを工学的に応 用するための基礎研究を行っています。 現在、超臨界流体の工学的応用のための技術開発が主 な研究課題となっていますが、これまでには超臨界 CO 2 を利用したドライクリーニングや天然成分の超臨界抽出、 超臨界 CO 2 を用いた有機反応および微粒子合成などを通じて、その有用性を実証しています。例えば 超臨界 CO 2 を使用したドライクリーニングでは、革などのデリケートな素材が使われた洋服やダウン ジャケットなど、今まで洗うのが難しかったものの洗浄を可能にしたり、また洗剤などの薬品も使わ ないことから、アレルギー疾患の患者さんに化学薬品フリーの洋服を提供することも実現しています。 超臨界ではプロセスが高圧、時に高温となるため、エネルギー効率やコスト削減などが大きな壁と なりますが、化学工学という学問を基に新たなプロセスを構築していくことの面白さがあり、今後は 環境調和型志向に伴う、食品分野での幅広い応用も考えられることから、社会的貢献度と意義の高い 研究と言うことができます。 日本国内唯一の研究教育機関として、 超臨界流体の可能性を追究しています。 1000 気圧まで耐える高圧容器

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  • 研 究 室 で は ・ ・ ・

    化 学 工 学 専 攻

    主 な 研 究 テ ー マ

    化学工学専攻 超臨海溶媒工学研究センター 溶媒要素技術部(猪股研究室)

    ●超臨界 CO2 洗浄技術(精密洗浄、フィルタ再生、ドライクリーニング) ●天然物の抽出分離 ●高圧 CO2 を用いたポリマー材料プロセシング ●バイオマスのカスケード利用技術 ●超臨界 CO2 を用いた結晶製造

    宮城県立仙台第一高等学校卒業。東北大学大学院博士課程修了。「中学生の頃に、ちょうど四日市などの公害が問題になっていました。公害を作ったのは化学、でも公害を解決するのも化学ではないかと思い、この道を志しました」。研究室のスローガンは『挨拶をする』『現象を五感を駆使して観察する』そして『常に、なぜ?を自問する』。

    工学研究科超臨界溶媒工学研究センター 教授工学博士

    猪股  宏HIROSHI INOMATA

    体・液体・固体と並ぶもう一つの相状態に“超臨

    界流体”があります。超臨界流体は一般に高温・

    高圧状態で形成され、気体と液体の中間的性質を示しま

    す。つまり、どちらでもないということですが、温度と

    圧力の操作で極めて大きな変化を起こしたり、低粘性の

    ために微細構造への浸透性に優れているなどの特性を

    持っています。

     私たち超臨界センターは、日本国内唯一の超臨界流体

    に関する研究教育施設として、数ある化学物質の中でも

    比較的温和な条件で超臨界状態に達する二酸化炭素と、

    豊富な資源量の水を有効利用して、これらを工学的に応

    用するための基礎研究を行っています。

     現在、超臨界流体の工学的応用のための技術開発が主

    な研究課題となっていますが、これまでには超臨界CO2を利用したドライクリーニングや天然成分の超臨界抽出、

    超臨界CO2を用いた有機反応および微粒子合成などを通じて、その有用性を実証しています。例えば

    超臨界CO2を使用したドライクリーニングでは、革などのデリケートな素材が使われた洋服やダウン

    ジャケットなど、今まで洗うのが難しかったものの洗浄を可能にしたり、また洗剤などの薬品も使わ

    ないことから、アレルギー疾患の患者さんに化学薬品フリーの洋服を提供することも実現しています。

     超臨界ではプロセスが高圧、時に高温となるため、エネルギー効率やコスト削減などが大きな壁と

    なりますが、化学工学という学問を基に新たなプロセスを構築していくことの面白さがあり、今後は

    環境調和型志向に伴う、食品分野での幅広い応用も考えられることから、社会的貢献度と意義の高い

    研究と言うことができます。

    日本国内唯一の研究教育機関として、 超臨界流体の可能性を追究しています。

    1000 気圧まで耐える高圧容器