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2017.11 金属資源レポート 11 中国の銅資源確保 調査部 担当審議役 北 良行 目次 はじめに 1.中国の非鉄金属政策 2.中国の銅地金 3.製錬所の分類 4.製錬所の鉱石手当て 5.代表的製錬会社の鉱石手当て概要 6.まとめ はじめに 中国は改革開放以来急速な経済成長を遂げ多種の 市場で世界に大きな影響を与える存在となった。金属 資源についても同様で、世界における中国の金属消費 の割合は2015年時点銅49.8%、アルミニウム53.8%、 ニッケル47.2%と卓越している。この中国による金属 市場における存在は、わが国の経済活動に大きな影響 をもたらしている。今回この現状の一部を把握するた め、中国の銅製錬所による海外での鉱石確保活動を中 心に銅資源の確保動向をまとめた。 1.中国の非鉄金属政策 中国の金属関連の直近の政策としては、第13次5カ 年計画に基づく非鉄金属工業発展計画(2016~2020 年)(表1)、 全 国 鉱 物 資 源 計 画(2016~2020年)が 発 表されている。前者よると、非鉄金属10鉱種 1 の見か け消費は年平均4.1%成長して2020年には6,800万tに なる。そのうち銅は3.3%の成長で精錬銅生産量(以 下銅地金)が980万 t、同じく消費量は1,350万 t に増加 すると記載されている。中国政府の予測値は計画値と みなすこともできるが、2016年時点の民間調査機関 の予測は概ね生産量で900万~950万t、消費量で 1,100万~1,150万tとなっており、この政府の目標は 比較的多目に見える(2017年に入り1,200万t を越える 予測も出ている)。CRUによると、2016年における中 国の銅地金消費量1,062万tに対して地金生産量は800 万t、国内銅鉱石生産量は158万tであり、現状では、 中国は消費量に対する自国内の銅地金生産、また銅地 金生産に対する原料(鉱石並びにスクラップ)の自国 内調達のいずれも不十分の状態であることが読み取れ る。 表1.非鉄金属10種の工業発展計画による予測値(2016~2020年) 品種 2015年の見かけ 消費量(万t) 「第12次5カ年 計画」年平均成長率 (%) 2020年 予測生産量 (万t) 2020年の見かけ 消費量(万t) 「第13次5カ年 計画」年平均成長率 (%) 非鉄金属10種 5560 10 6500 6800 4.1 主要品種 精製銅 1147 8.9 980 1350 3.3 一次アルミニウム 3107 14.4 4000 4000 5.2 437 0.8 465 450 0.6 亜鉛 671 3.5 710 730 1.7 マグネシウム 53.2 7.2 130 75 7.1 金(t ) 986 11.5 520 1200 4 注:銅・鉛・亜鉛の生産量や消費量データには一部再生金属を含む。 (出典:非鉄金属鉱業発展計画) 1 10鉱種とは Cu,Al,Pb,Zn,Ni,Sn,Sb,Hg,Mg,Ti

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レポート

中国の銅資源確保

2017.11 金属資源レポート 11

中国の銅資源確保調査部

担当審議役 北 良行

目次

はじめに1.中国の非鉄金属政策2.中国の銅地金3.製錬所の分類4.製錬所の鉱石手当て5.代表的製錬会社の鉱石手当て概要6.まとめ

はじめに

中国は改革開放以来急速な経済成長を遂げ多種の市場で世界に大きな影響を与える存在となった。金属資源についても同様で、世界における中国の金属消費の割合は2015年時点銅49.8%、アルミニウム53.8%、ニッケル47.2%と卓越している。この中国による金属市場における存在は、わが国の経済活動に大きな影響をもたらしている。今回この現状の一部を把握するため、中国の銅製錬所による海外での鉱石確保活動を中心に銅資源の確保動向をまとめた。

1.中国の非鉄金属政策

中国の金属関連の直近の政策としては、第13次5カ年計画に基づく非鉄金属工業発展計画(2016~2020年)(表1)、全国鉱物資源計画(2016~2020年)が発表されている。前者よると、非鉄金属10鉱種1の見かけ消費は年平均4.1%成長して2020年には6,800万tになる。そのうち銅は3.3%の成長で精錬銅生産量(以下銅地金)が980万t、同じく消費量は1,350万tに増加すると記載されている。中国政府の予測値は計画値とみなすこともできるが、2016年時点の民間調査機関の 予 測 は 概 ね 生 産 量 で900万~950万t、 消 費 量 で1,100万~1,150万tとなっており、この政府の目標は比較的多目に見える(2017年に入り1,200万tを越える予測も出ている)。CRUによると、2016年における中国の銅地金消費量1,062万tに対して地金生産量は800万t、国内銅鉱石生産量は158万tであり、現状では、中国は消費量に対する自国内の銅地金生産、また銅地金生産に対する原料(鉱石並びにスクラップ)の自国内調達のいずれも不十分の状態であることが読み取れる。

表1.非鉄金属10種の工業発展計画による予測値(2016~2020年)

品種 2015年の見かけ消費量(万t)

「第12次5カ年 計画」年平均成長率

(%)

2020年 予測生産量 (万t)

2020年の見かけ消費量(万t)

「第13次5カ年計画」年平均成長率

(%)

非鉄金属10種 5560 10 6500 6800 4.1

主要品種

精製銅 1147 8.9 980 1350 3.3

一次アルミニウム 3107 14.4 4000 4000 5.2

鉛 437 0.8 465 450 0.6

亜鉛 671 3.5 710 730 1.7

マグネシウム 53.2 7.2 130 75 7.1

金(t) 986 11.5 520 1200 4

注:銅・鉛・亜鉛の生産量や消費量データには一部再生金属を含む。

(出典:非鉄金属鉱業発展計画)

1 10鉱種とはCu,Al,Pb,Zn,Ni,Sn,Sb,Hg,Mg,Ti

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中国の銅資源確保

2017.11 金属資源レポート12

中国政府は前述目標を達成するため国内外での資源確保を推進し資源供給能力を引き上げる施策を実行している。

国内では、甘粛省、新疆ウイグル自治区、雲南省、青海省、内蒙古自治区などに銅・ニッケル等の重点地域を設定して資源確保量を増加させるための探査開発加速を奨励している。また国内鉱山を地域毎に統合し大規模開発と集約的利用を実現し「第13次5カ年計画」期に新たに銅鉱石800万tの埋蔵量を確保するとしている。

海外の活動ではこれまで積極的に進出しているアフリカ等に加え一帯一路の陸路にあたる中国・中央アジアで鉱業提携フォーラムを充実させることが謳われている。企業レベルでは合併・連合・再編を促し国際競争力を備えた一流の多国籍近代的鉱業グループを複数創設し、海外進出を加速させるとしている。政府はこの動きを促進させるために鉱業の「海外進出サービス保障メカニズム」を整備して、企業による株式取得や資本参加での多様な投資を奨励し、海外における鉱物資源開発の支援強化を行っている。

2.中国の地金生産

1)地理的分布

中国有色金属工業協会の中国非鉄金属年鑑で中国における銅地金生産(年鑑ではRefinedと記される)の公式データは省毎に公表されている。これによれば中国は2000年に137万tの銅地金を生産したがその当時20万t以上生産した省は安徽省しか存在しなかった。2010年には合計457万tの生産で、うち9省が20万t以上の生産量となり、2014年には3省が100万tを越える生産となった(表2)。2015年の銅地金生産は中国全体で796万tとなり、上位から江西省(132万t)、安徽省(131万t)、山東省(112万t)の順で、これらの3省で47%を占める。生産の伸びもこの3省が著しい。省毎の銅地金の生産量を図1に、地理的分布を図2に示す。図2には鉱石生産量と銅半製品(Semisと記される)生産量も合わせて表示した。

表2.中国の省別銅地金生産(単位:t)

2000 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

全国合計 1,371,132 3,779,295 4,109,536 4,573,493 5,196,900 5,823,533 6,838,752 7,958,582 7,963,565 8,436,274

安徽 230,110 527,989 539,159 572,610 618,529 605,849 1,211,366 1,309,891 1,310,773 1,293,550

山東 38,693 467,538 563,582 590,958 754,587 910,493 826,672 1,188,395 1,118,157 1,290,004

江西 194,225 778,548 816,175 936,131 975,156 1,163,723 1,202,456 1,306,362 1,320,193 1,280,075

甘粛 79,298 367,277 418,942 477,914 625,406 708,579 779,565 892,305 924,694 875,907

雲南 160,557 312,789 298,401 340,860 390,259 449,184 480,168 509,488 545,173 608,315

河南 32,065 35,546 33,210 41,688 112,757 158,010 171,154 229,134 275,192 481,382

湖北 75,211 270,977 271,565 317,219 352,034 368,173 502,465 523,023 505,235 435,830

浙江 42,980 297,571 227,272 279,413 311,492 293,661 262,167 298,790 364,041 374,843

福建 0 15,840 18,223 11,055 1,935 89,752 211,696 227,642 272,428 329,889

山西 ― 91,245 67,051 80,610 87,785 98,134 88,564 144,489 180,935 195,596

内蒙古 ― 146,002 210,774 209,453 176,305 187,825 245,436 276,819 173,978 172,878

江蘇 ― 171,870 220,994 259,218 324,165 331,589 296,862 301,083 132,483 125,669

遼寧 ― 74,127 73,068 84,385 115,837 61,565 55,176 18,697 87,760 107,234

広東 ― 60,758 49,375 71,479 36,913 96,780 125,409 128,913 90,070 96,481

(出典:中国有色金属工業協会データ(2016年は安泰科)よりJOGMEC作成)

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中国の銅資源確保

2017.11 金属資源レポート 13

図1.中国の銅地金生産推移(省)(出典:中国有色金属工業協会データ(2016年は安泰科)よりJOGMEC作成)

表3.中国省毎の主な銅製錬所

省 製錬所名

江西省 貴渓(江西銅業)

安徽省 金昌、金冠、金隆(以上銅陵)、蕪湖安徽

山東省 姻台鵬輝、東営方園、陽谷祥光、莱州方泰

甘粛省 金川、白銀

雲南省 雲南昆明、雲南錫

湖北省 大冶湖北

浙江省 浙江和鼎銅業(江西銅業 40%)、杭州富春江、蘭渓自立、寧波金田

広西省 広西悟州、広西南国、防城港(金川集団)

福建省 紫金鉱業

山西省 中条山有色金属

(出典:JOGMEC作成)

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1200

1400

(全

国合

計)

百万

(省

生産

量)

千t

全 国 合 計

安 徽

山 東

江 西

甘 粛

雲 南

河 南

湖 北

浙 江

福 建

山 西

内 蒙 古

江 蘇

遼 寧

広 東

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中国の銅資源確保

2017.11 金属資源レポート14

図2.中国の銅生産地理的分布(2015)(出典:中国有色金属工業協会データ(2016年は安泰科)よりJOGMEC作成)

これによると銅の生産は沿岸から中国中部で卓越することが分かる。これら沿岸部の3省の主な製錬所は、江西省:江西銅業有限公司(以下江西銅業)の貴渓製錬所、安徽省:銅陵有色金属集団公司(以下銅陵集団)の金昌製錬所・金冠製錬所・金隆製錬所、山東省:東営方園有色金属有限公司(以下東営方園)・陽谷祥光銅業有限公司(以下陽谷祥光)である。その他主な銅地金生産省の製錬所は表3のとおりである。中国政府の統計データはダブルカウントなど数値に問題が指摘されているが、ここでは発表値をそのまま使用する。

2)企業別生産量

各企業ホームページ情報を中心に集計した企業毎の銅地金生産量を表4に示す。生産量が最大の企業は銅陵集団(135万t)で、これを江西銅業(126万t)、金川集団股份有限公司(以下金川集団)、雲南銅業股分有限公司(以下雲南銅業)が追う。なお本表では安泰科発表データ(2015年796万t)を合計値に使い、

「その他」の生産は安泰科合計値から今回集計した10社小計値を差し引いた数値を記した。ちなみにCRUによる2015年銅地金生産推計値は734万tである。なお、参考値ではあるが民間調査会社の報告では今後2020年までに200万t程度の製錬能力増強並びに生産量増加が予測されている。

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中国の銅資源確保

2017.11 金属資源レポート 15

3.製錬所の分類

製錬所の形態を国有企業か民営企業か並びに内陸立地か沿岸立地か(内陸の省か沿岸の省か)という観点で整理した。

中国の製錬会社は多くが国有資産管理委員会に登録されるいわゆる公営企業である。このうち銅陵集団

(安徽省)、江西銅業(江西省)、金川集団(甘粛省)、中条山有色金属集団有限公司(以下中条山集団)(山西省)、白銀有色集団股份有限公司(以下白銀集団)(甘粛省)、紫金鉱業集団股份有限公司(以下紫金集団)

(福建省上杭県)は各省・県に主導権のある公営企業である。雲南銅業(雲南省と中国鋁業公司)、大冶有色金属集団控股有限公司(以下大冶集団)(湖北省と中国有色金属集団)は中央国有資産管理委員会管轄の企業からの投資があり中央政府の影響力が比較的強くなると推測される。陽谷祥光(山東)、浙江富冶集団有限公司(以下浙江富冶)(杭州)、東営方園(山東)は民間企業である。

製錬所の立地が内陸の省か沿岸の省かで整理すると(複数の製錬所を運営する公司もあるが)概ね次のとおりである。銅陵集団、江西銅業、金川集団(金川製錬所)、中条山集団、白銀集団、雲南銅業、大冶集団は内陸の省に立地する製錬所である。ちなみに銅陵集団(長江)、中条山集団(黄河)、大冶集団(長江)は( )内に記した大河に接している。紫金集団、金川集団(防城製錬所)、陽谷祥光、浙江富冶、東営方園は沿岸省に立地する製錬所である。主な民間企業で内陸省に立地する製錬所はない。

4.製錬所の鉱石手当て

1)鉱石の国内手当て

前述のとおり中国は製錬所に供給する鉱石を自国内で十分手当てできず大宗を海外に依存している。例えば2015年の中国国内の鉱石生産量は概ね150万tで、製錬に必要な鉱石460万t余り(民間調査会社の推計)の1/3にも満たない。1,100万t余りある消費と比較すれば鉱石自給率は10数%である。

鉱石調達ルートは製錬所の立地条件で異なるが各種民間調査会社のデータを整理・推計すると製錬所の鉱石手当てを以下のように類推できる。

沿岸省に製錬所を立地する民間企業は烟台鵬輝(山東省:ゼロ)、東営方園(山東省:ゼロ)、陽谷祥光

(山東省:1割弱)、莱州方泰(山東省:2割)金川防城港(広西省:ゼロ)と国内鉱山からの調達は極めて少ないかゼロである。ただし沿岸でも福建省にある紫金集団は自山鉱をもつため国内調達が合計で2割程度になる。(カッコ内は国内鉱山からの調達率)

2大企業である江西銅業と銅陵集団は中国東部に位置するが沿岸部に立地していない。江西銅業の貴渓製錬所は徳興鉱山などを稼行し国内鉱山からの供給が比較的多くある(4割)。一方、安徽省の銅陵集団の製錬所は自山鉱である冬瓜山鉱山、安慶鉱山ともに小規模で国内調達は金隆製錬所1割弱、金冠製錬所1割と低い。内陸の省にある甘粛省:金川製錬所(5割)、山西省:中条山集団(4割)、雲南省:雲南銅業(4割)、湖北省:大冶集団(4割)は比較的国内調達率が高い。

とは言うもののいずれの企業も国内手当は5割に至らず海外からの鉱石確保は中国製錬業全体の課題となっている。

表4.中国企業別銅地金生産(単位:千t)

企業名 英語名 2012 2013 2014 2015 増加量 増加構成比

2015構成比

銅陵集団 Tongling Nonferrous Metals Group 905 1,201 1,310 1,315 411 20% 17%

江西銅業 Jiangxi Copper 1,093 1,128 1,200 1,259 166 8% 16%

金川集団 Jinchuan 607 676 767 791 185 9% 10%

雲南銅業 Yunnan Copper Industry 451 415 521 537 86 4% 7%

大冶集団 China Daye Non-Ferrous Metals Mining Ltd 275 430 461 471 195 9% 6%

陽谷祥光 Xiangguang Copper 379 379 437 362 -16 -1% 5%

紫金集団 Zijin mining 112 208 235 264 152 7% 3%

東営方園 Dongying fangyuan nonferrous metal 221 220 221 221 0 0% 3%

中条山集団 Zhongtiaoshan Non-ferrous Metals Group 97 77 137 180 84 4% 2%

白銀集団 Baiyin nonferrous 150 103 126 133 -17 -1% 2%

その他 1,591 1,830 2,235 2,208 617 30% 28%

合計 5,879 6,667 7,649 7,964 2,084 100% 100%

(増加量は2012~2015年の比較)(出典:各種情報を基にJOGMEC作成)

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中国の銅資源確保

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2)国内銅鉱石生産とポテンシャル

中国国内の鉱石生産量の公式データも省毎に集計されている(表5)。中国有色金属工業協会によれば2000年に60万t余りであった国内鉱石生産量は2016年185万tに達している。2016年時点で生産量が多い省は内モンゴル(37万t)、江西省(25万t)、雲南省(24万t)、安徽省(20万t)で、これら上位4省を合計するとおよそ中国の60%の生産を占める。2000年以降の生産増が多いのもこれらの4省で、特に内モンゴルの増加が際立っている。この公式データも多くの問題が指摘されているがここでは発表のとおり記載した。

中国地質調査局発展研究中心によれば2010年時点の中国の銅資源ポテンシャルは資源量ベースで8,040万t、埋蔵量ベースで1,097万tである。鉱徴地は750か所リストされているが、このうち大型鉱床は49、中型102、残りの599は小型鉱床である(年採鉱量が100万t(大型)、30万t(中型)、それ以下が小型)。

資源量は西部に多く、埋蔵量は東部に多い。これは江西省、安徽省など開発が進む東部では調査も進み埋蔵量にカウントされる一方、チベット自治区、雲南省、内モンゴル自治区など後発の西部・遠隔地域では調査も進まず資源量のままになっているためと解釈できる。開発されている東部の鉱床は主にスカルンで、開発待ちの西部・遠隔地域ではポーフィリー型鉱床と推定される。中国の銅鉱石生産の地理的分布概念を図4に示す。

民間調査機関らによると2020年中国の銅鉱石生産量は174万~190万t程度になると予測される。全国鉱物資源計画(2016~2020年)によれば「第13次5カ年計画」期に、新たに国内で開発可能な埋蔵量を銅鉱800万t確保するとしている。この目標を達成しても国内産の鉱石供給は中国の需要をまかなうにはるかに少ない。このため中国は鉱石供給を将来にわたって海外に大きく依存して行くことになる。

表5.中国国内の鉱石生産量(金属量)(単位:t)

地区名称 2000 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

全国総計 592,596 930,838 961,453 1,155,845 1,267,238 1,602,274 1,681,254 1,741,276 1,667,141 1,850,672

内蒙古 10,605 73,248 99,041 170,535 176,420 278,605 279,263 289,352 320,652 377,249

江西 137,680 184,528 200,463 210,796 249,326 317,162 279,491 252,696 250,604 259,784

雲南 92,154 186,829 155,394 206,121 207,016 239,447 234,831 240,557 223,522 248,315

安徽 45,563 129,075 117,052 129,145 129,883 175,117 195,474 210,965 209,072 209,527

甘粛 75,805 61,351 68,268 87,194 105,478 123,200 130,905 172,807 145,819 154,028

新疆 3,829 55,419 57,736 73,547 93,455 86,188 94,313 94,991 96,880 122,457

山東 ― 7,599 10,265 9,278 7,737 9,297 5,166 5,850 4,976 73,531

四川 18,487 49,376 67,307 71,051 73,961 89,271 96,156 92,918 76,594 70,373

湖北 78,382 58,289 63,117 53,583 51,672 72,888 78,711 64,927 72,526 68,221

チベット ― 3,335 1,316 4,563 11,756 12,802 16,778 19,690 29,428 43,634

(出典:中国有色金属工業協会データ(2016年は安泰科)よりJOGMEC作成)

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中国の銅資源確保

2017.11 金属資源レポート 17

図3.中国国内の鉱石生産量推移(金属量)(出典:中国有色金属工業協会データ(2016年は安泰科)よりJOGMEC作成)

資源量は西部

100kt <

50kt <

埋蔵量は東部

中国国内の銅精鉱生産地

図4.中国の銅鉱石生産の地理的分布概念(金属量)(出典:Data Antaike etc.よりJOGMEC作成)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

2000

0

50

100

150

200

250

300

350

400

(全

国総

計)

千t

(各

省)

千t

全 国 総 計

内 蒙 古

江 西

雲 南

安 徽

甘 粛

新 疆

山 東

四 川

湖 北

チ ベ ッ ト

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中国の銅資源確保

2017.11 金属資源レポート18

3)海外からの鉱石等輸入

各精錬企業は鉱石不足分を海外から補っている。WTA(表6)によると中国の鉱石輸入量は2016年1,700万t(グロス)に達している。周辺アジア、南北米、豪州、アフリカが主な輸入元である。しかしながら、中国は海外での銅開発に関しては後発で、所謂非鉄メジャーが資源権益を独占しているため、十分な権益を有していない。このため中国は21世紀に入り積極的な権益取得に取り組み自主調達率の向上を目指している。

図5は民間調査企業等の情報を整理して中国が世界

にもつ権益獲得状況(精鉱並びにSxEwの銅の量)を集計したものである(中国が若干でも権益を所有する鉱業案件の権益量をすべて100%として積み上げた数字)。2016年ベースのデータで中国はコンゴ民主共和国(以下DRコンゴ)17件、ザンビア 7件、ペルー、豪州各 4件などおよそ60件の活動があり、2020年での生産可能量は合計288万tに達する予想となった。なお、この数字にはたとえば中国鋁業公司によるRio Tinto本社への出資を介して確保される間接的な権益分等は含まれない。今回の集計ではペルー100万t、DRコンゴ72万t、ザンビア18万tとなり、中国の活動域はこれら上位3か国で2/3を占める。

表6.中国の鉱石輸入国と輸入量推移China Import Statistics

Commodity: 2603, Copper Ores And ConcentratesAnnual Series: 2011 - 2016

Partner Country UnitQuantity

2011  2012  2013  2014  2015  2016 

World T 6,390,575 7,831,221 10,080,023 11,861,835 13,318,839 17,051,825

Chile T 1,428,380 1,884,398 2,788,759 2,942,110 3,745,940 4,744,769

Peru T 1,016,409 1,489,880 1,917,270 2,038,112 2,665,904 4,607,896

Mongolia T 509,476 535,755 566,292 1,352,802 1,418,173 1,498,215

Mexico T 460,828 588,671 562,441 777,033 647,952 994,533

Australia T 579,984 607,460 893,195 962,378 850,455 760,493

Iran T 49,893 94,954 30,837 27,754 231,968 504,799

Spain T 89,824 74,874 96,493 102,145 179,266 493,733

United States T 276,644 355,192 557,962 617,364 673,610 468,888

Canada T 292,866 366,451 478,573 506,230 437,997 459,988

Others 1,686,271 1,833,585 2,188,195 2,535,907 2,467,576 2,518,515

(出典:WTA)

図5.中国の世界における銅鉱山権益獲得状況(出典:JOGMEC作成)

1,000

724181.6

175

165

180

150

307

中国の銅鉱山権益確保状況(年産能力ベースkt)

Peru

DRC

Zambia

Chile

Australia

Laos

Myanma

Others

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2017.11 金属資源レポート 19

4)中国の進出形態

中国の海外における権益確保は、中国企業が開発から100%運営するもの、既存のプロジェクト権益を買収したもの、海外籍企業の買収などを介して実行されている。

中国企業が開発から100%運営する方法は特に発展途上国への開発援助に絡むものが多く、インフラ工事を伴った事業が際立つ。中国有色鉱業集団がザンビアで1998年から開発しているChambishi鉱山、中国輸出入銀行の融資で中国鉄建股份有限公司と中国水電建設集団がDRコンゴで実施するSICOMINESプロジェクトが知られる。

既存プロジェクト権益の買収例としては紫金集団によるIvanhoe社Kamoaプロジェクト、洛阳栾川钼

业集团股份有限公司(中国モリブデン)によるTenke Fungrme鉱山などがある。

海外企業買収では中国鋁業公司がPeru Copper社を買収しToromocho鉱山の開発を行った例や中国五鉱集団有限公司によるカナダのAnvil Mining社、豪州OZ Minerals社の買収(最終的にMinerals and Metals Group(MMG)を設立)、金川集団による南アフリカMetrex社の買収がある。

把握した情報から推測すると企業別に以下の特色があるように思われる。

江西銅業はカナダNorth Peru Miningの買収ほかアフガニスタンAynakプロジェクトやトルコNeskoを介し中央アジア方面に進出を試みている。銅陵集団はペルー、エクアドル方面での活動が知られる。中条山集団、雲南銅業、大冶集団並びに沿岸立地の民間製錬企業らによる目立った直接の海外活動は確認ができない。特に沿岸省に立地する民間製錬所は陽谷祥光のAtalaya Mining株式取得以外に目立った海外活動を確認できなかった。これらの企業は買鉱(と一部スクラップ)に強く依存すると推測する。なお銅陵集団は中国五鉱集団有限公司に、雲南銅業は中国鋁業公司に、大冶集団は有色金属鉱業集団に海外鉱石の手当てを依存するように見うけられる。金川集団は大規模な製錬所を沿岸と内陸に立地するため2側面の対応を求められる。沿岸の防城港はDRコンゴやザンビアでプロジェクト権益を確保している。一方、内陸の甘粛省金川製錬所は新疆、チベット、内モンゴルなど国内のほかモンゴル、カザフスタン等内陸国からの手当てに有利と思われる。一帯一路の西部陸路における、金川製錬所の役割が注目される。

表7に中国企業の海外進出状況をまとめた。

表7.中国企業の銅資源開発海外進出状況

Campany Asset State Capacity(kt)

Start up Counterpart(Chinese) Counterpart

CHINALCO Toromocho mine Peru 300 2014 CHINALCO Peru Copper Conc

Minmetals

Las Bambas Peru 450 2015Minmetals

(62.5%),Guoxin(22.5%),CITIC(15%)

Las Bambas Conc

EI Galenocopper mine Peru 150 2019 Minmetals/Jiangxi Copper Northern Peru Conc

Sepon Laos 90 2005 Minmetals MMG SxEw

Kinsevere, DRC 80 2007 Minmetals Anvil Mining Limited SxEw

Aynak mine Afghanistan Jiangxi Copper /MCC(25%) Conc

Golden Grove Australia 80 1990 Minmetals MMG Conc

Saindak Pakistan 13CMGC 100%; Government of Pakistan

(Optionor);Saindak

CNMC

Likasi DRC 10 2012 CNMC Huaxin Mining SxEw

Mabende DRC 20 2013 CNMC Huaxin Mining SxEw

Huachin SX-EW DRC 10 CNMC 62.5%; Huachin SPRL (Owner) 37.5% Huachin SX-EW

Mulyanshi Zambia 60 2011 CNMC Luanshya copper mine SxEw

Chambishi Zambia 62 2003 CNMC Chambishi Conc

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2017.11 金属資源レポート20

Campany Asset State Capacity(kt)

Start up Counterpart(Chinese) Counterpart

CNMCBaluba Zambia 30 2010 CNMC Luanshya copper mining Conc

Yandera PNG 40 2020 CNMC Marengo Conc

Jiangxi Coppe

EI Galenocopper mine Peru 150 2019 Minmetals/Jiangxi Copper Northern Peru Conc

Munella, Karma,Lakrosh Albania 8 2001 Jiangxi Copper(48%) Nesko Meta Conc

Aynak mine Afghanistan Jiangxi Copper /MCC(25%) Conc

Tongling

Rio Blanco Mine Peru 100 2019 Zijin45%, Tongling 35% Xiamen C & D 20% Monterrico Metals, PLC Conc

Mirador Ecuador 55 2018 CRCC-Tongguan Investment Co., Ltd. Corriente Resources Inc. Conc

Panantza Ecuador FSCRCC 30%of total 96.9%, Tongling 70% of total 96.9%

Zijin

Rio Blanco Mine Peru 100 2019 Zijin45%, Tongling 35% Xiamen C & D 20% Monterrico Metals, PLC Conc

Kolwezi copper DRC Zijin 51%

Kamoa DRC Zijin49.5%

CRCC

SicominesSarl DRC 125 2015CRCC (42%), Sinohydro

(25%), Zhejiang Huayou Cobalt (1%)

SicominesSarl Conc

Luishia DRC 33 2013 CRCC Luishia SxEw

MKM DRC 22 2006 CRCC、China Sinohydro, MKM SxEw

Letpadaung Myanma 100 2016 CRCC Monywa Mines SxEw

S&K Myanma 50 CRCC Monywa Mines, SxEw

Mirador Ecuador 55 2018 CRCC-Tongguan Investment Co., Ltd. Corriente Resources Inc. Conc

Panantza Ecuador  CRCC 30%of total 96.9%, Tongling 70% of total 96.9%

Jinchuan

Kinsenda DRC 20 2017 Jinchuan Metorex Conc

Ruashi DRC 45 2008 Jinchuan Metorex SxEw

Musonoi DRC 3   Jinchuan 75% Musonoi

Chibuluma Zambia 19 2001 Jinchuan Metorex Conc

Bahuerachi Mexico Jinchuan 100% Bahuerachi

Wanbao Komoya DRC 18 2016 Wanbao Mining Gecamines Conc

China Molybdenum

Tenke Fungurume DRC 200 2009 China Molybdenum Co. Ltd (CMOC)(56%)

Freeport-McMoRan DRC Holdings Ltd SxEw

Northparkes Australia 60 1993 China Molybdenum Co. Ltd (80%) Northparkes Conc

Guangdong Rising

Inca de Oro Chile 175 2010 Guangdong Rising Assets Management Panaust II Conc

KTL Laos Guangdong Rising Assets management Panaust III Conc

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Campany Asset State Capacity(kt)

Start up Counterpart(Chinese) Counterpart

Guangdong Rising Phu Kham Copper-Gold Laos 90 2010 Guangdong Rising Assets

Management Panaust I Conc

Hebei Iron and Steel Palabora Mining South Africa 80 2004

Hebei Iron and Steel Group

(74%),Empowerment Partners(26%)

Palabora Mining Conc

Pengxin Mining Shituru copper mine DRC 40 2012 Pengxin Mining

investment SMCO SxEw

CF Investments Boseto Botswana 36 2012 CF Investments (15%) Discovery Conc

China Sci-Tech Lady Annie Australia 25 2007 China Sci-Tech Holding Ltd (CST) (HK based), SxEw

China National Gold Soermi Congo 20 2016 China National Gold Group Corporation 65% Soermi SxEw

Jilin Jien Nickel Nunavik nickel-copper Canada 15 2012 Jilin Jien Nickel Jien Canada Mining Conc

Wanxiang Resources Hyesan Mine DPRK 15 Wanxiang Resources

Limited Company (51%) Hyesan-China Conc

Zhejiang Huayou PE 527 DRC 13 2017 Zhejiang Huayou Gecamines Conc

Perilya Cerro de Maimon dminican 10 2008Perilya

(Shenzhen ZhongjinLingnanNonfemet)

Globe Star Conc

Tibet Hima Kilembe Uganda 10 2015 Tibet Hima Kilembe Mine Limited Conc

Zhonghui Mining Ichimpemine in Kalulushi Zambia 10 2017 Zhonghui Mining Group SxEw

Nanjing Hanrui Cobalt Metal Mines SPRL DRC 5 2013 Nanjing Hanrui Cobalt

Co., Ltd. Metal Mines SPRL SxEw

SolartechInternational Nerguimine Mongolia 5 2017 SolartechInternational Holdings Company LkhShijirErdene LLC SxEw

China Copper Mines Fitula Zambia 0.6 2014 China Copper Mines Ltd Fitula SxEw

Chinese Jinduicheng Molybdenum

Wolverine copper mine Canada 2010 Chinese Jinduicheng

Molybdenum Group Yukon Zinc Conc

Macrolink Group Mwekera Zambia Macrolink Group Conc

Shanxi DonghuiOsborne+Kulthor+Starra276

Australia 2011 Shanxi Donghui Chinova resources Conc

XGC RioTinto mine Spain 2015 XGC (18%) EMED mining Conc

(出典:JOGMEC作成)

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2017.11 金属資源レポート22

5.代表的製錬会社の鉱石手当て概要

以下に中国の代表的製錬会社の鉱石手当て概要を記す。なお、ここでとりまとめた情報にはダブルカウントなど間違った数値や異なった鉱山名表記が含まれている可能性がある。

1) 銅陵有色金属集団公司(Tongling Nonferrous Metals Group)

国内調達:グループあわせて6万t程度、自山鉱は冬瓜山鉱山34千t、安慶鉱山9千t、銅山鉱山7千tで、冬瓜山鉱山の鉱石は全て金冠製錬所が処理している。

海外権益:ペルーのRio BlancoプロジェクトとエクアドルのMiradorプロジェクトの権益を持つ。Rio Blancoプロジェクトは厦門紫金銅冠投資発展有限公司(紫金集団と共同)を介して所有しているが、住民の反対で頓挫している。Miradorプロジェクトは中鉄建銅冠投資有限公司社を介して所有し銅プロジェクトは2018年に生産開始を計画。

ザンビアに銅冠鉱建有限公司を、DRコンゴに銅冠鉱建剛果有限公司をそれぞれ設立した。また、ペルーのToromocho鉱山(年間産出量60万t)の年産量の15%を5年間同社へ供給するとの契約を締結している。金昌製錬所はAntapaccay鉱山、金冠製錬所と金隆製錬所は海外のCerro Verde鉱山、Toromocho鉱山から鉱石購入実績がある。

同社が必要とする鉱石量に対して権益量はかなり少ない。

 2)江西銅業集団公司(Jiangxi Copper Co.,Ltd.)

国内調達:銅精鉱自給率は国内最高である。グループが所有する鉱山は徳興銅鉱山、永平鉱山、城門山鉱山、武山鉱山、東郷鉱山、銀山鉱山の6か所。民間調査会社データ等から類推すると貴渓製錬所は必要量のうち4割に当たる鉱石を国内鉱山から調達している。城門山鉱山二期拡張プロジェクトに46,799万元、徳興鉱山の採掘規模拡大国内における鉱山開発に258,000万元を投資するなど国内開発にも力を入れている。

海外権益:カナダ北ペルー銅業公司及びアフガニスタンAynakプロジェクト等で展開中である。またトルコNesko社の株式50%を取得している。Nesko社はアルバニアで銅鉱石の採掘、選鉱事業に従事し、年間60万t規模の銅鉱石生産能力を持つ。しかしながら、アフガニスタンAynakプロジェクト以外は必要量を満たす規模でなく、そのAynakプロジェクトは計画が頓挫している。

同社も必要量に対して権益量は不十分である。

3) 金 川 集 団 股 份 有 限 公 司(Jinchuan Group Co.,Ltd.)

金川集団は発祥である甘粛省とさらに広西省防城港に製錬所を持つ。金川鉱山はニッケル銅鉱床で、中国における初生のニッケル、コバルト、プラチナ類を産する唯一の大手製錬会社である。

国内調達:国内所有鉱山として白家咀鉱山(甘粛省)、雄村鉱山(チベット)があるが年次報告書によると銅精鉱の国内供給率は全体で1割弱にとどまる。内陸部の金川製錬所は国内鉱石4割あまりを使用している。

海 外 権 益:DRコ ン ゴKinsendaプ ロ ジェク ト、Ruashiプロジェクト、Musonoiプロジェクト、ザンビ アChibulumaプ ロ ジェク ト 並 び に メ キ シ コ のBahuerachiプロジェクトに権益をもつ。企業ホームページ情報では現在海外資源プロジェクトを積極的に進め、アフリカ、アメリカ、アジアで8件の鉱物資源プロジェクトを有し5,000人規模で展開中とある。この他、豪州のAllegiance Mining社の株式10.4%、Fox・Research社の株式11%、Canada Taylor Research社など に 投 資 す る と と も に、DRコ ン ゴ で 鉱 山3か 所

(SxEwを含む)、ザンビアで銅鉱山1か所とSxEwをそれぞれ保有している。しかし海外権益分は10万tに満たない。

沿岸にある防城港製錬所は全てが輸入鉱石で、ホームページでは輸入先はザンビア、DRコンゴ、米国、モンゴル、豪州等とある。

金川集団は大規模な製錬所を沿岸と内陸に所有するため2側面の対応が必要である。沿岸部の製錬所は他の企業と同様の対応すなわち海外鉱山からの鉱石手当てを進める。一方で、内陸の金川製錬所は新疆、チベット、内モンゴルという国内のほかモンゴル、カザフスタンなどの内陸国からの手当てに有利と思われる。一帯一路が推し進められる中、内陸の金川製錬所の役割か注目される。

4) 雲 南 銅 業 股 分 有 限 公 司(Yunnan Copper Co.,Ltd.)

雲南省昆明に2基のほか四川省涼山、内モンゴル赤峰に製錬所を所有する。

国内調達:雲南銅業が所有する国内鉱山は大紅山鉱山、羊拉鉱山、大平掌鉱山、金沙鉱山、拉拉鉱山、涼山鉱山で供給量は9万tあまり(年次報告書では自山鉱は5.6万t)。このほか国内鉱石手当は四川省、内モンゴル、新疆、青海省、チベット、広東など幅広い。

海外権益:ザンビア、豪州、ラオス、その他南アジ ア に 及 ぶ。 中 国 鋁 業 公 司 を 解 し て ペ ルーToromocho鉱山、チリHumitos鉱山に関係を持つ。

企業ホームページ情報によれば精銅鉱自給率は65%で、残り35%をペルー、チリ、米国、カナダ、モンゴル等から輸入している。

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2017.11 金属資源レポート 23

なお、雲南銅業は中国鋁業公司の傘下にあり中国鋁業公司はRioTintoの株式12%を所有する。これによ りRioTinto社 が 所 有 す る 権 益 の う ち の 一 部 でEscondida 鉱山15%、Grasberg 鉱山12%、La Granja鉱山30%、Kennecott Utah 鉱山25%の権益に関係することになった。

5) 大 冶 有 色 金 属 集 団 控 股 有 限 公 司(Daye Nonferrous Metals Group Co.,Ltd.)

湖北省の大冶に一精錬所を有する。国内調達:国内鉱山は湖北省に銅緑山鉱山、豊山

鉱山、銅山口鉱山、大冶鉱山などを稼行し新疆にも薩熱克鉱山など2鉱山を稼行する。2016年の銅精鉱自給率は全体の1割未満にとどまった。

企業ホームページ情報によると上記鉱山6か所以外にキルギスに鉱山を保有し,更にアフリカで活動している。しかし、大冶集団の鉱石確保に向けた海外での際立った活動は確認できず、海外での活動は中国有色鉱業集団が担当するものと思われる。

6) 紫金鉱業集団股份有限公司(Zijin Mining Group Co.,Ltd.)

金を含めると中国内最大級の金属資源保有企業になる。

国内調達:福建省紫金山、吉林省琿春曙光鉱山、ウイグル自治区阿舎勒鉱山、青海省徳尓尼鉱山等で5か所を保有しているが鉱石の自社国内手当は1割程度。民間調査会社のデータから推測すると国内手当は2割程度である。

海外権益等:ペルーのRio Blanco鉱山、DRコンゴのKolwezi鉱山、Kamoaプロジェクト権益を保有している。

その他金鉱山を中心に海外での資源開発を積極的に行っている。

7)浙江富冶集団有限公司(Fuye Group Co.,Ltd.)

1958年浙江省長江デルタ地域に銅製錬、電解精錬を一体化し設立された銅製錬企業である。鉱石調達は不明。

8) 東 営 方 園 有 色 金 属 有 限 公 司(Shandong Fangyuan Nonferrous Metals Group)

1998年にシンガポールの新加坡美金珠宝金饰商と中国・外国資本の合資会社として設立した山東省東営市にある沿岸製錬所。製錬量13万tに対し精錬量能力は50万tである。年間のカソード生産能力22万t/年。スクラップ使用量が多いと考えられる。

国内調達は見当らず、海外ではOyu Tolgoi鉱山、Antamina鉱山、Cerro Verde鉱山などからの購入実

績がある。海外での権益活動は不明。

9) 陽谷祥光銅業有限公司(Yanggu Xiangguang Copper Co.,Ltd.)

山東省陽谷にある刘学景他3名による共同出資私企業の製錬会社で、銅地金生産量は30~40万t。国内に銅鉱山を保有しない。2012年にはスペインのRio Tinto鉱山を運営するAtalaya Mining社の株式を取得し現在約21%の株式を保有、上流権益獲得にも事業を拡大している。

10) 中条山有色金属集団有限公司(Nonferrous Metal Group Co.,Ltd.)

製錬所は山西省箇所候馬、垣曲にある。国内調達:銅鉱峪鉱山の二期工程の進展に注力し

ている。企業ホームページではアジア最大規模の“環境保全型鉱山”であると謳っている。また銅精鉱の国内生産比率は約47%とある。

海外権益:鉱石の53%を米国、モンゴル、豪州、カナダ、アフリカ等の国や地域から輸入している。

11) 白銀有色集団股份有限公司(Baiyin Nonferrous Metals Group Co.,Ltd.)

甘粛省白銀市にある内陸製錬所。白銀製錬所は銅の他に鉛、亜鉛など複雑鉱の処理が行われている。国内に白銀鉱山を所有しているが小規模である。内陸にあるため、船舶による海外銅精鉱の輸入には不向きで国内チベット、内モンゴルやモンゴル等からの調達が主になる。

12) 中国有色鉱業集団公司(China Nonferrous Metal Mining(Group)Co.,Ltd.)

中国の国内有色金属産業で最も早期に海外進出を実施した企業で、ザンビア、モンゴル、ミャンマー、タイ、DRコンゴで鉱山プロジェクトを展開、海外業務は80以上の国や地域に及ぶ。

原料鉱石の国内手当は約1割で、残りをザンビア、DRコンゴ、モンゴル、豪州、カナダなどから輸入している。ザンビアではChambishi鉱山及びBaluba鉱山の開発・製錬業務を実施している。

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中国の銅資源確保

2017.11 金属資源レポート24

6.まとめ

中国の急速な経済成長は資源確保の面でも世界に大きな影響を与えることになった。中国は自らの資源確保に向けて、至近の国家計画である第13次5カ年計画で年平均3.3%の成長を想定し、中国の銅地金生産は2020年には980万t、同じく銅消費量は1,350万tに増加するとの目標を立てている。そしてこの目標を達成するため、国内外で資源供給能力引き上げを目指している。

この計画では、当該期に国内で新たに800万tの銅埋蔵量を確保することを謳い、特に西部に期待されている。しかし民間調査機関によると当該期の増産量は多くても50万tで2020年中国国内の銅鉱石生産は年174万~ 190万t程度にとどまると予測されている。

国内の銅地金生産は一部内陸部の生産があるが沿岸部から東部地域で比較的活発である。主な民間企業の活動は沿岸部に限られ、内陸部では国営企業が生産している。民間調査会社の調査では2020年までに製錬能力並びに生産量はともに200万t程度の増加が予測されている。これらの製錬所の鉱石調達ルートは基本的には立地条件で異なる。海外調達ルートは大洋州、南北アメリカ、アフリカなど沿岸部への海上輸送と、かつてのシルクロード、すなわち西部を中心とした内陸部への陸路の2ルートが軸となる。現状はいずれの企業も国内手当が不十分で、今後も海外からの鉱石確保が中国製錬業界全体の課題となる。

現在、世界の銅資源の大宗はいわゆる非鉄メジャーに独占され、中国企業は鉱石の多くを契約ベースもしくはスポット取引により調達せざるをえない状況にある。

このような中、中国政府はさまざまな援助・奨励を行い、中国企業は海外における鉱物資源開発の獲得に種々な参入形態で邁進している。2016年時点のデータでは中国はペルー、DRコンゴをはじめ権益を所持する海外プロジェクトから2020年に合計288万tの鉱石を調達できる見込みである。しかしこの量では中国全体で見た一次地金生産の「自山鉱比率」が50%を下回る。

今後中国は独自に新たな権益を確保するのか、ファームインや中小企業の買収で権益を確保するのか、非鉄メジャー本体に乗り込んでゆくのか、もしくは こ れ ま で ど お り のCSPT("China copper raw material joint negotiation group"(中国大手精錬企業が非鉄メジャー等とTC/RCを交渉する時、事前に中国内で協議するグループ))を軸として非鉄メジャーから鉱石を購入するのかその動きを注視したい。

(2017.10.20)