我が国の 農林水産業への気候変動の影響 (資料3) - maff.go.jp...現在...
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日本における平均気温の上昇予測
○IPCC AR4 で使われた複数の気候予測モデルによるA2(経済発展重視・地域主義)、A1B(経済発展重視・グローバル化・エネルギーバランス重視)、B1(持続的発展型・グローバル化) シナリオでの日本の平均気温の予測結果では、20 世紀末(1980~1999 年)から21世紀末(2090~2099 年)までにそれぞれ4.0℃、3.2℃、2.1℃上昇し、いずれのシナリオでも世界平均(3.4℃、2.8℃、1.8℃)を上回る。
我が国の農林水産業への気候変動の影響 (資料3)
文部科学省・経済産業省・気象庁・環境省 2013年9月27日報道発表資料をもとに作成
(参考)RCPシナリオとSRESシナリオの比較
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(収量) ○ 様々な収量モデル、温室効果ガス排出シナリオを用いた予測が行われているが、北海道では増収し、西南暖地では現状と変わらないか、減少するという点で、ほぼ一致した予測となっている。排出シナリオで計算された最近の予測では、日本全体で見た場合、3℃程度の上昇までは減少の可能性は低いと予測されている。
○ 気候変動がコメの収量・品質に与える影響評価
-7- 資料:(独)農業環境技術研究所
暖候期(5~10月)の平均気温の上昇に対するコメの地域別平均収量の変動予測 北海道・東北 関東・甲信越・北陸 東海・中部・近畿 中国・四国・九州
1 2 3 4 5 0 1 2 3 4 5 0 1 2 3 4 5 0 1 2 3 4 5 0
平均気温の上昇度(℃) 平均気温の上昇度(℃) 平均気温の上昇度(℃) 平均気温の上昇度(℃)
○温室効果ガス排出シナリオ、気候モデル及び経過年の違いにより広域コメ収量予測モデルによる推計結果をプロットしたもの。 ○平均気温の上昇度は、暖候期(5~10月)の平均気温の1981~2000年における平均値に対する上昇温度を示したもの。
資料:(独)農業環境技術研究所
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(品質) ○ 過去の1等米比率と気象条件からの経験式に、排出シナリオで計算された気候予測値から、将来の1等米比率を推定したものでは、何も適応策を講じない場合、2046-2065年には1990年代よりも28%減少、2081年代には41%減少すると予測された。ただし、品質低下には気象要因以外の様々な要因が関与することから、変動全体のメカニズムについての定量的知見は十分でない。
○ 気候変動がコメの収量・品質に与える影響評価
-7-
資料:(独)農業環境技術研究所
温室効果ガス排出の2シナリオ(SRES A1b, A2)条件で計算された気候予測値と過去の気象条件と一等米比率の関係に基づく経験式から予測された、2046-2065年および2081-2100年の一等米比率。1981-2000年の平均からの変化率として提示。図中のシンボルは、アンサンブル予測における最小値、25パーセンタイル、メジアン、75パーセンタイル、上限値を示す。
気候モデル名
一等米比率の変化
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○ 温暖化により、これまで適応策を講ずる必要性が低い地域でも、高温耐性品種の導入などを検討する必要性が高まる地域が拡大されると予測される(A1Bシナリオによる) 。 ○ ウンシュウミカンでは、2020年代には、本州の日本海沿岸部や関東平野の南部が適地になるなど、適地の拡大が予測される。一方で、2040年代には、沿岸部から内陸部に適地が広がるが、九州南部の沿岸部など、現在の産地のうち、一部では、品種で対応する場合は、高温耐性品種の導入を検討する必要がある。さらに、2060年代には、東北南部の沿岸部まで適地が拡大する一方で、現在の産地の多くは高温耐性品種の導入などを検討する必要性が高まると予測される。 ○ リンゴについては、2040年代には、北陸・北関東の平野部、西日本の山間部が適地よりも高温域となり、2060年代には、東北中部・南部の平野部、東日本の盆地などでは適地よりも高温域となるため、高温耐性品種の導入などを検討する必要性が高まると予測される。
○ 気候変動が果樹生産に与える影響
現在
2060年代
適地 (15-18℃(年平均気温))
より高温の地域
より低温の地域
寒害発生頻度が高い地域
2060年代
現在 現在
適地 (7-13℃(年平均気温))
より高温の地域
より低温の地域
リンゴ ウンシュウミカン
資料:(独)農研機構 果樹研究所
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○ 乳用牛、肉用牛、豚、鶏について、それぞれ夏季の高温の影響による飼料摂取量の減少等により、生産性が低下されると予測される。 ○ 例えば、豚、肉用鶏では、環境制御室内で行った試験の低下から増体量が低下することが明らかにされている。この試験結果に基づき、将来の生産性に及ぼす影響を予測した研究(毎年1%ずつ大気中CO2濃度が上昇するという前提で予測)では、豚では、2060 年になると北海道の一部および標高の高い山間部を除いた大半の地域で増体日量の低下が予測され、また、東北地方では現在はほとんど影響を受けていないが、2060 年には増体日量が5%~ 15%低下することが予測されている。また、肉用鶏においても、2020年、2040年、2060年と年代の経過とともに、影響が大きく
なることが予測され、特に九州、四国、中国、近畿などの西日本において産肉量が比較的大幅に低下する地域の拡大が示されている。
○ 気候変動が畜産に与える影響
現在 2060年代
(1971-2000年平均)
肥 育 豚
23.0℃
24.5℃
27.3℃
増体量低下割合(%)
15
5
0
ブロイラー
23.0℃
27.2℃
30.1℃
現在 2060年代
(1971-2000年平均)
増体量低下割合(%)
15
5
0
資料:(独)農研機構 畜産草地研究所 8月の平均気温
8月の平均気温
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○ 温暖化により、雑草の分布は拡大することが予測される。 ○ 例えば、現在本州で問題が顕在化している帰化アサガオ類のうち、現在の平年値では本州までしか分布可能域でないマルバアメリカアサガオが北海道まで分布拡大すると予測されている。 ○ 大豆栽培での防除について、現在の除草剤防除体系を想定し、排出シナリオを用いて2046-55年の平均防除可能日数を予測したところ、特に東北地域以北でも短縮し、防除が困難になる地域が増えると予測されている。
○ 雑草の分布拡大
2050年予測 (2046-2055年平均)
防除可能日数(d) 6.0≦d 5.0≦d
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○ イネの出穂期とカメムシ成虫ピークの時期が近づくことによるカメムシ侵入量増加の可能性が示されるなど、温暖化に伴い、病害虫の分布拡大、発生量の増加が予測され、適切な防除の必要性が高まると考えられる。
○ 病害虫発生の変動
-7- 農水省資料より作図
ミナミアオカメムシの分布拡大
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○林業分野においても、将来の地球温暖化による病害虫の被害拡大が予測されている。
北海道におけるトドマツオオアブラムシの影響を予測。温暖化した場合、危険地帯※が大幅に拡大。 ※4月から8月までの5℃以上の月平均気温の積算温度が45月度以上の地域
現状 被害危険地帯18%
3℃昇温 被害危険地帯91%
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資料:(独)森林総合研究所
安全地帯
危険地帯
安全地帯
危険地帯
○ 林業における病害虫発生の変動
コナラなどに被害を与えるカツラマルカイガラムシの潜在分布域を、温度データ等から温暖化のシナリオに沿って予測(排出シナリオはA1Bを使用)。温暖化した場合、高標高地において被害が拡大と推定。
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○ 森林分布の変化
○ 現在のブナ林の分布状況と気候、地形、土壌などの関係から、ブナ林の分布に適した条件を求め、将来の気候条件下での変化を予測。気温の上昇によって、全国におけるブナ林の分布面積が減少すると予測。
資料:農林水産研究開発 レポートNO.23 (2007)
※気温が現在より4.9℃上昇した場合(C)、2.9℃上昇した場合(D)のいずれのシナリオでも、2081~2100年のブナの分布確率は減少
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○ 水産分野においては、温暖化により、海面が温まると栄養塩が減少し、エサが減少する等の影響が現れると予測 されている。 ○ マイワシでは、日本南岸で産卵し、夏にエサの多い北の海に回遊して成長するが、温暖化後は、より北に回遊する ことでエサ不足を補填すると予測。 ○ サンマは、マイワシよりさらに北に回遊して成長するが、産卵回遊の時期が遅れるとともに、より、北の海域で産卵すると予測されている。また、3つの気候予測シナリオを用いて、成長モデルから体重を予測した結果、体重が73%の確率で減少することが予測されている。
混合域
現在 2050年
数値モデルで計算した数値モデルで計算したサンマのサンマの回遊回遊と産卵場と産卵場
親潮域
黒潮域産 卵
産卵
産卵
餌大
餌小
混合域
現在 2050年
数値モデルで計算した数値モデルで計算したサンマのサンマの回遊回遊と産卵場と産卵場
親潮域
黒潮域産 卵
産卵
産卵
餌大
餌小
現在 温暖化後
マイワシ相対密度
低 高 マイワシはより北に回遊
サンマについても、北に回遊して生長するが、体重は減少する可能性が高いと予測 資料:(独)水産総合研究センター
○ 気候変動が水産に与える影響評価
A2シナリオ A1Bシナリオ B1シナリオ
気候モデル1 1-2年目に体重減少 1-2年目に体重減少 1-2年目に体重減少
気候モデル2 1-2年目に体重減少 1-2年目に体重減少
気候モデル3 1-2年目に体重減少 1-2年目に体重減少 2年目だけ体重減少
気候モデル4 2年目だけ体重減少 1-2年目に体重減少 2年目だけ体重減少
気候モデル5 2年目だけ体重減少 1-2年目に体重減少 変化なし
気候モデル6 変化なし 1-2年目に体重減少
気候モデル7 1-2年目に体重減少 2年目だけ体重減少 2年目だけ体重減少
気候モデル8 2年目だけ体重減少 変化なし
気候モデル9 2年目だけ体重減少 2年目だけ体重減少 変化なし
気候モデル10 変化なし 2年目だけ体重減少 2年目だけ体重減少
気候モデル11 2年目だけ体重減少 変化なし 2年目だけ体重減少
気候モデル12 変化なし 変化なし 変化なし
サンマの体重変化予測の結果
サンマの体重変化予測の結果
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○ 農業用水及び農業用施設について、 A1B シナリオに基づく定量的な影響予測を行った結果、流域毎にその程度は異なるものの、日本の水田農地では、21世紀末においては、冬季の積雪深の減少、融雪時期の早まりによる代かき用
水量や水利権水量の確保が困難になる年が発生すること、灌漑期中期や末期の利用可能水量の最大値と最小値の幅が増大することが予測されている。
○ また、温暖化による海面上昇及び台風の勢力増大に伴う、高潮の被害が増加することや、降水量の変化により、農地の湛水被害が増加することが予測されている。A1Bシナリオでは、10年確率の豪雨量が50mm増大し現在の30年に一度の豪雨規模になると予測され、その結果、21世紀末には、湛水位と継続時間の増大が予測されている。
○ 気候変動が農業用水・土地資源に与える影響
用水充足率が低下した灌漑地区数(出穂期)
0.0
0.0 - 0.1
0.1 - 0.2
0.2 - 0.3
0.3 -
0.0
0.0 - 0.1
0.1 - 0.2
0.2 - 0.3
0.3 -
用水充足率※1が低下した
灌漑地区数※2(代かき期)
※1 用水充足率:供給された水量/必要水量 ※2 図は,流域の全灌漑地区数に対する充足率
が低下した地区数の割合を表す
2046-2065 2046-2065
水田水における影響評価例(全国)
将来(2081-2100)における水田の湛水(30㎝以上)時間の増加予測例
増加時間(hr)
10-20
0-10
30-40
(%)
20-30
0
10-20
0-10
30-40
(%)
20-30
0
資料:(独)農研機構 農村工学研究所