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First issue Results, reports and refinements for life science researchers Issue 1,1999 71-1618-01 製品のご注文は左記の代理店まで 製品お問い合わせバイオダイレクトライン 電話番号:(03)5331-9336 FAX番号:(03)5331-9370 取扱代理店 GE imagination at work

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First issueResults, reports and refinements for life science researchers

Issue 1,1999

71-1618-01

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Life Science News 1, 1999 Amersham Pharmacia Biotech

A m e r s h a m P h a r m a c i a B i o t e c h

核酸を用いたアレイテクノロジーの利用による実験の流れを図1に示します。基本的には従来のブロッティングを利用したハイブリダイゼーション法を応用した手法ですが(4)、プローブやサンプルにどのような材料を用いるかによって得られるデータの持つ意味合いが変化します。プローブをアレイ状に直径1 mm未満のスポットとして作成したものがマイクロアレイ材料と呼ばれています。また、プローブをアレイ状にスポットする材料として同じ材質のものを用いたマイクロアレイは "チップ" と呼ばれています。プローブがDNAで構成されているものを特に"DNAチップ"と呼びます。 "チップ" という言葉は半導体チップを連想させますが、GeneChipはまさに半導体と同様の工程を経て製造されています(5, 6)。これに対して、ガラススライドのような材料に

プローブアレイを配置したものは、正確には"チップ様"アレイと呼ぶべきかも知れません。このように、世界で唯一商品化された、正確な意味でのDNAチップがAffymetrix社GeneChipシステムのコアテクノロジーなのです。

GeneChipでは、プローブを数十 µmの矩形毎に高密度に光化学反応を利用して合成しています(5, 6)。この矩形をプローブセルと呼び、各プローブセルには数百万個にもおよぶ同一の塩基配列のプローブが固定されています。DNAプローブは塩基配列情報をもとにDNAプローブを光化学反応に

より合成していますので、目的に応じて様々なプローブセルをチップ上に自由に配置することが可能です。このプローブセルをどのように配置するかは、ちょうどタイルを限られた面積の中に並べることを考えるのと同様なため、"タイリングストラテジー"と呼ばれています。

Affymetrix社ではすでに5年以上のチップ製作の経験に基づいて、遺伝子発現量や塩基配列の解析などの目的に応じた独特のタイリングストラテジーを採用しています。遺伝子発現解析をするためのタイリングストラテジーは

"パーフェクトマッチ・ミスマッチタイリング"(図2)と呼ばれています。これはハイブリダイゼーション実験により得られた信号から、プローブとサンプルの非特異的な結合によって発生する擬陽性信号を除外するために、完全に一致した塩基配列を持つ真のプローブ(パーフェクトマッチ)と1塩基だけ塩基配列の異なるプローブ(ミスマッチ)をペアにして配列することにより、信号を数値処理して真の信号量を正確に測定する方法です。実際には、25塩基から成るパーフェクトマッチプローブとその中央の13番目の塩基をホモメリックミスマッチ(G塩基に対してC塩基、T塩基に対してA塩基)で置き換えたミスマッチプローブをペアにして用いています。

Affymetrix社では、HIVウイルスのプロテアーゼおよび逆転写酵素、p53やCYP450遺伝子の塩基配列の解析のためのGeneChipを提供していますが、ハイブリダイゼーション実験は一般的に多くの擬陽性を伴うことから、塩基配列を解析するためにはさらに複雑なタイリングストラテジーが必要になります。基本的には、解析の対象部位の塩基にG,A,T,Cの4種類と、必要に応じてその部位を欠損させたプローブの計4~5種類のプローブセルを使用します。これをコドン単位に、連続する3つの塩基について用意したものを"ブロックタイリング"(図3)と呼びます。この1つのブロックだけでは、まだ偽信号を読み取ってしまう可能性があります。そこで、sense鎖とantisense鎖の両方を解析し、偽信号を除去します。さらに、解析の対象部位の塩基の位置を約20塩基長のプローブの中で、様々に変化させたタイルを用意しています。この解析では、変異が存在していればプローブ上の位置に依存しない陽性信号が測定できるはずで、塩基をより正確に読み取る目的に利用しています。この解析対象の塩基の位置を様々に変化させたタイル群を"オールタネイティブタイリング"と呼んでいます。以上のようなタイリングストラテジーは通常のcDNAを並べただけのマイクロアレイでは不可能であり、光リソグラフィーによって正確な合成が可能なGeneChipならではのテク

マイクロアレイテクノロジーの核酸分析への応用がポストゲノムテクノロジーとして注目を集めています。現在、ゲノム関連分野の研究者は様々なアレイテクノロジーを利用する事が可能です。例えば、フィルター上に多種のcDNAをアレイ上にスポットしたもの、スライドガラス上にcDNAや合成DNAをスポットして利用するもの、そして、GeneChipなどがあります。GeneChipシステムは、マイクロアレイテクノロジーの1種で、世界で唯一規格標準化された、広く一般に購入可能なDNAチップ "GeneChip" を利用する優れたシステムです。GeneChipシステムは多種のGeneChipを使い分けることにより単なる遺伝子発現の検出に留まらず、定量あるいは検出した信号から塩基配列情報を直接・間接的に解析することができるので (1-3)、様々な目的に利用することが可能です。

Technologies of GeneChip® system

Specific Hybridization

� Cross Hybridization

Perfect Match�

Mismatch

Perfect Match�

Mismatch

図2:パーフェクトマッチ・ミスマッチタイリング

図1:マイクロアレイ利用実験の概略

チップ用�基材調製�

プローブ用�核酸調製�

チップ作成�

サンプル調製�

ラべリング�

ハイブリダイゼーション実験�

信号検出�

データ解析�

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ノロジーといえます。さらに、チップ上の数千の遺伝子の発現量を正確に定量するために、チップ上にコントロール遺伝子用のプローブを様々に配置しています。コントロール遺伝子由来のcRNAの一定量をサンプル中に混合することにより、サンプル中の遺伝子の定量を実現しています。同時に、実験操作過程の精度をチェックすることもできます。加えて、ハウスキーピング遺伝子のGAPDHやアクチンなどのプローブを利用した測定結果を合わせて利用することにより、複数の実験結果の比較解析が可能になります。

ハイブリダイゼーション法によらず、核酸のような生体物質のサンプル調製自体の再現性(収量や純度、含有される分子種の構成比など)の低さが、マイクロアレイテクノロジーの定量性の議論を本質的に困難なものにしています。そこで、定量性を議論する際には、サンプルの調製法やサンプルの品質を分けて評価する必要があります。まず、ハイブリダイゼーション実験によってサンプルとプローブが結合して信号(蛍光)を発すると想定してみます。ハイブリダイゼーション実験における定量は、サンプルを測定する場合の最大の信号と最小の信号が測定でき、信号がサンプルの量に応じて変化することを利用する技術です。GeneChipの場合、プローブセル1個(すなわち、1つのタイル上に固定された1種類の塩基配列)あたり107個を超えるプローブを作成し、1つのチップは数万個のプローブセルで構成されますので、合計約1012個におよぶプローブをハイブリダイゼーション実験で利用しています。GeneChipの場合、mRNAサンプル量として0.2~1 µgが推奨されていますので、十分量のプローブが用意されている計算になり、最大の信号は十二分に測定できる系と考えられます。一方、最小の信号については、感度の高い共焦点レーザー光検出を用いて、数十ピコモル程度のサンプルに混合した数フェムトモルのコントロール遺伝子を測定できますので、サンプル中の数万分の一分子の検出が可能であり、細胞あたり1分子の遺伝子の検出を実現しています(3)。

さらに、この定量性の再現性や実際に応用した際の感度などが、一般的な機器分析の議論の対象となっていますが(7)、GeneChipによる定量の再現性についてはすでに定評が得られています(8)。また、最近では、遺伝子発現の定量実験において、マイクロアレイによって従来のRT-PCR法と同様の定量結果が得られること、従来不可能であった多面的な遺伝子発現が正確に把握できること、および今まで困難であった1時間未満の時間変化を追従できることが立証されてきています(9)。現在、GeneChipとしてプローブセルの矩形が一辺50 µmと一辺24 µmの高密度チップ(図4)をご用意しています。この高密度チップは1つのチップ上に約8,500の遺伝子が配置されており、これを用いると、数千~数万の遺伝子について生理現象の変化に起因する一時的な発現パターンの変化量を簡便に捉えられることができます(9)。これにより、例えば従来法によるスクリーニングで除外された医薬品のリードが多面的に解釈され、全く新しい効能を持つ医薬品として復活する可能性が生まれるかもしれません。

1. Fodor, S.P.A. et al., Science 251, 767-773 (1993)2. Pease, A.C. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 91, 5022-5026

(1994)3. Pirrung, M.C. and Fallon, L., J.Org.Chem. 63, 214-

246 (1998)4. Southern, E.M. et al., Genomics 13, 1008-1017 (1992)5. Kreiner, T., American Laboratory 28, 39-43 (1996)6. Lipshutz, R.J. et al., Nature Genetics Supplement 21,

20-24 (1999)7. 穂積 啓一郎, 「機器分析通論」(廣川書店)(1980)8. Wodicka, L. et al., Nature Biotechnology 15, 1359-

1367 (1997)9. Iyer, V.R. et al., Science 283, 83-87 (1999)

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製品の開発は随時進んでおりますので、製品の種類、価格などの詳細についてはお問い合わせください。

Wildtype�レファレンスシーケンス�

相補的センスプローブセット:�プローブセルに含まれる�各プローブタイプ�

エクソン7,コドン248

T G G G C G G C A T G A A C C G G A G G C C C A T C5’� 3’�

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C G G CA / GG

1塩基欠損�

置換部位�

Wildtypeターゲット�ハイブリダイゼーション�イメージ�

Wildtypeターゲットコドン��

変異ターゲット�ハイブリダイゼーション�イメージ�

変異ターゲットコドン�

塩基読取G : wildtype 塩基読取A/G :� mutantとwildtypeの混在�

図3:ブロックタイリング

図4:高密度アレイチップ

GeneChip Fluidics Station 400(自動ハイブリダイゼーション装置)

(左)HP GeneArrayTM

Scanner (GeneChip専用読み取りスキャナー)(右)GeneChipWorkstation System(GeneChipデータ解析システム)

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一般的なFluorImagerのアプリケーションとしては、蛍光ディファレンシャルディスプレイ(F-DD法)の様なパターン解析が注目されています。しかし、FluorImagerを用いた蛍光検出法の大きな特徴として、高感度検出かつ高い定量性を示すことが挙げられます。また、多様な解析ツールを持つ解析ソフトウェアImageQuantTMを用いた画像解析をもとに定量化を行うため、アガロースやアクリルアミドゲル以外にもマイクロタイタープレート(MTP)や、メンブレン、TLCプレートなどの様々なサンプル形状の定量化を容易に行うことができます。ここでは、FluorImagerを用いた mRNAの発現量測定、dsDNAの定量およびウエスタンブロッティング法による定量の3つの定量解析法をご紹介します。

細胞内mRNAの発現レベルを定量するノーザンブロット法などの従来法は、作業が煩雑であるだけでなく、細胞内mRNAの相対量しか決定できないため、再現性に欠けるという問題点がありました。これを克服するため、内部スタンダードを基準としたRT-PCRによるmRNAの定量法が開発されました(2)。この方法ではmRNAの発現レベルを細胞1個当たりのコピー数、あるいはトータルRNA 1 µg当たりの分子数として定量でき高い再現性が得られるようになりました。また、PCR産物測定に蛍光検出法を採用することにより格段に簡便化されています。

.RT-PCR mRNA定量化システムの最も特徴的な点は、

RT-PCR用の合成内部スタンダードが組み込まれたプラスミドOQ-1を使用することです。プラスミドOQ-1には、22種類のガン遺伝子と3種類のコントロ-ル遺伝子に対応する15bpのPCRプライマーサイトブロックが挿入されています。このDNAインサート部位はSP6ポリメラーゼ読み取り開始部とポリAコード部との間に位置するため、RNA転写産物にはポリAが付加されます。また、DNAインサートの各ガン遺伝子プライマー部位の配列は調整されているため、PCR産物が細胞内mRNA由来か、またはスタンダードRNA由来かを長さで区別することができます。

RT-PCRのステップは、まず最初に出発材料のトータルRNAを合成スタンダードRNAと混合してcDNAを増幅します。次に特定のmRNAを増幅するために、得られたcDNAを用いて対象となるガン遺伝子に特異的なプライマーでPCR反応を行います。PCR増幅後に高感度インタカレーター試薬(VistraGreenなど)を含むゲルを用いて電気泳動を行い、細胞内mRNAとスタンダードRNA由来のPCR産物を分離します。最終的にFluorImagerを用いて蛍光を検出します。従来の放射性検出法では、フィルムあるいはストレージフォスフォスクリーンに露光する前に、DNAをナイロンメンブレンに転写する必要がありました。しかし、高感度インタカレーター試薬とFluorImagerを用いる蛍光検出法に切りかえることで、操作手順が格段に簡略化されました(図2)。また、32P標識プライマーによるPCR定量法と比較した場合でも、ほぼ同等の検出限界値が得られています(3)。ここでは2種類のヘルパーT細胞株D10およびHDKを出発材料として高感度インタカレーター試薬を用い、代表的な3種類のガン遺伝子c-myc (成長因子)、 lck (プロテインキナーゼ )、p53 (ガン抑制遺伝子 )のmRNA発現レベルをFluorImagerで解析した例を示します(図3)。解析にはImageQuantソフトウェアを用いて、ガン遺伝子mRNAの相対的な発現量を算出しました。次に、合成内部スタンダードRNAを基準として細胞内mRNAの絶対量を決定しました。

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生体分子の検出法としては、RI、蛍光、色素を用いた標識による検出が一般化されていますが、現在、安全性および環境面からも非放射性検出法に切りかえる方向にあり、中でも高感度かつ定量性を示す蛍光を用いた検出法の開発が注目をあびています。今回は、蛍光イメージアナライザーFluorImagerを用いた様々なサンプルにおける定量解析法をご紹介します。

Quantitative analysis of biomolecules withFluorImagerTM

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図1:FluorImager

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.合成スタンダードRNA、高感度インタカレーター試薬、

FluorImagerを使用し、ガン遺伝子 mRNAの発現レベルを再現性良く迅速に決定することができました。D10細胞、HDK細胞に発現されるガン遺伝子のc-myc, lck, p53のmRNA量を比較した結果、c-myc遺伝子とp53遺伝子の発現レベルはどちらの細胞でもほぼ同等でしたが、lck遺伝子はHDK細胞の方がD10細胞よりも7倍も発現されており(図4)、ヘルパーT細胞のタイプの違いが発現に関係している可能性が示唆されました。この方法には、他のmRNA定量法と比較して、次のような利点があります。1) 内部スタンダードRNAを使用しているため、細胞1個当たりのコピー数あるいはトータルRNA 1 µg当たりの分子数としてmRNAの絶対量を決定できます。したがって、実験間あるいは研究室間の比較が容易で、チューブ間の増幅効率を補正できるばかりでなく、測定エラーの発見も可能です。

2) 蛍光検出法を採用しているため、放射性検出法に匹敵する高い感度が得られます。

一般的なDNA定量法として260 nmの吸光度を測定する方法があります。しかし、この方法は定量範囲が狭く、RNAやタンパク質などの夾雑物の存在が大きく定量結果に影響するなどの問題点があります。また、測定には通常の分光光度計を用いるため多サンプル処理にも適していません。しかし、近年、double-stranded DNA (dsDNA)に特異的にインタカレートする蛍光試薬PicoGreen®*1 を用いることで多サンプルの正確な定量が可能になりました。このプロトコールは、ハイスループット・キャピラリーDNAシークエンサーMegaBACE1000におけるシークエンス反応用DNAテンプレート量の測定に至適化されています。また、ほぼ同様のプロトコールは、ダイレクト・サイクルシークエンスにおけるPCR産物の定量などにも応用されています(4)。.PicoGreenを用いたDNA定量法は、dsDNAを特異的に測定できますので、DNAシークエンスにおけるテンプレート量測定に適しています。また、96 well MTPおよび、96well用マイクロディスペンサーを用いることでハイスループット化を実現しています。このプロトコールではdsDNA量を最終的に4~100 ng/µlの範囲内で定量できます。

. dsDNA ( ~ ng/ml)透明・平底のMTPを使用します。まず、MTPのA2-10,

B2-10のウェルにTE バッファー(10 mM Tris-HCl, 1 mMEDTA, pH 7.5)を50 µlずつ加えます。TEバッファーに溶解した2 µg/mlのdsDNA溶液をA1, B1に各50 µlずつ加え、A2,B2には各100 µlずつdsDNA溶液を加え混合した後、A2, B2からA3, B3へ100 µlずつ移します。同様の操作をA9, B9まで行い、A9, B9からは100 µlずつ除きます。次に、PicoGreen溶液(1:200 in TE)をA1-10, B1-10に50 µlずつ加え混合します。.マイクロディスペンサーなどを用いて透明・平底のMTP各wellにTEバッファーを49 µlずつ分注します。各ウェルにサンプルdsDNA溶液を1 µlずつ分注した後、PicoGreen溶液(1:200 in TE)を50 µlずつ加え混合します。.FluorImagerの検出条件は488 nm, 530DF30, PMT 500 V,200 µmで測定しました。検出したイメージはImageQuantおよびMicrosoft Excel* 2を用いて解析しました。ImageQuantで数値化を行う際、各ウェルの中央値を比較することでより高い再現性が得られます。.40~1000 ng/mlの範囲で作成した検量線(図5)からサンプルDNA量を決定しました。サンプルは100倍希釈しているため、最終的にDNAテンプレート量を4~100 ng/µlの範囲で決定できました。

Non-RIウエスタンブロッティングの高感度検出法としてケミルミネッセンス法が一般的に用いられています。しかし、ケミルミネッセンス法では検出時にX線フィルムを用いるため、10倍程度の定量性しか得られません。FluorImager

p53 1ck c-myc p53 1ck c-myc

25000�

20000�

15000�

10000�

5000�

0mRNA Expression�

(copies/cell)

D10(TH2) HDK(TH1)

図3:ガン遺伝子のmRNA発現量を示すゲルの蛍光イメージ合成スタンダードRNAをコントロ-ルとして加えた細胞のトータルRNAをテンプレートとしてRT-PCR反応を行い、2種類のT細胞株D10とHDKに発現される3種類のガン遺伝子(c-myc, lck, p53) mRNAを増幅しました。それぞれの細胞内mRNAを正確に分析するため、RT-PCR反応を2回ずつ行いました。電気泳動には高感度インタカレーターを用いて作成したゲルを用いて蛍光検出を行いました。

図4:2種類のT細胞株におけるガン遺伝子発現量2種類のT細胞株に発現されるc-myc遺伝子、lck遺伝子、p53遺伝子のmRNA量を比較しました。細胞内mRNAの絶対量を決定するため、それぞれのPCR反応の際に加えられた内部スタンダードにより標準化を行いました。

c-m

yc

lck

p53

c-m

yc

lck

p53

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yc

lck

p53

c-m

yc

lck

p53

D10 HDK D10 HDK放射性検出法�

細胞内トータルRNAと合成スタンダードRNAを�調製します。�

�32P標識PCRプライマーを調製します。�

�テンプレートを加えて逆転写を行い、�

PCR増幅を行います。��

アガロースゲル電気泳動を用いて�PCR産物を分離します。�

�32P標識PCR産物をナイロンメンブレンに�

転写します*。��

メンブレンをフィルムあるいは�ストレージフォスフォスクリーンに露光します。�

�スキャナーあるいはPhosphorimagerを用いて、�

結果を数値化します。��

所用時間: 5~7日�

*露光段階でのバンド拡散を防止するために行います。�

細胞内トータルRNAと�合成スタンダードRNAを調製します。�

���

テンプレートを加えて逆転写を行い、�PCR増幅を行います。�

�高感度インタカレーター試薬を含む�

アガロースゲルあるいは�ポリアクリルアミドゲルを用いて、�PCR産物を電気泳動します。�

�����

FluorImagerを用いてゲルをスキャンし、�結果を数値化します。�

�所用時間:2日�

蛍光検出法��

図2:ガン遺伝子mRNA定量のためのRI検出法と蛍光検出法の比較

では蛍光酵素増感法であるケミフローレッセンス法を用いることで10~100倍範囲での定量が可能になります。.ケミフローレッセンス用試薬キット Vistra ECF Western

blotting kit の検出原理を図6に示します。このシステムでは抗原を1次抗体と反応させた後、フルオレセイン標識2次抗体で検出を行います。十分なシグナルが得られる場合には、この段階でFluorImagerを用いて検出可能です。さらに微量タンパク質を検出する場合には、アルカリフォスファターゼ標識抗フルオレセイン3次抗体とケミフローレッセント基質(AttoPhosTM*3)を用いて蛍光シグナルを増幅します。FluorImagerは蛍光化してメンブレン上に蓄積したAttoPhosをスキャニングによって直接検出します。

ケミフローレッセンス法の検出限界と定量性を確かめるため、チューブリンの検出を行った例を図7に示します。精製チューブリンを12 %アクリルアミドゲルで電気泳動後、PVDFメンブレンに転写しウエスタンブロットを行いました。検出にはアルカリフォスファターゼ標識2次抗体とVistraECF substrate (AttoPhos)を用いました。.レーン1-12の精製チューブリンの添加量は、それぞれ400,300, 200, 100, 50, 25, 12.5, 6.25, 3.12, 1.6, 0.8, 0.4 ngで、lane 11のバンドまで検出できました(図7a)。これは一般的なケミルミネッセンス法を用いた場合とほぼ同等の検出感度に相当します。また、各バンドの蛍光シグナルをImageQuantを用いて定量したところ0.8-100 ngの範囲で定量性が認められました(図7b)

蛍光標識による生体分子の検出(BioMolecular Detection)には、高感度で高い定量性を持つFluorImager を用いた解析が、強力なツールとなるでしょう。FluorImagerを用いた定量解析では、蛍光イメージとして直接データが得られるため、様々な形状のサンプルからの迅速で再現性の高い定量結果が可能になります。

1. Product News No.8, Molecular Dynamics Japan2. Scheuermann, RH., et al., Meth. In Enzymo 218, 446-

473 (1993)3. Application Note No. 53, Molecular Dynamics Japan

(1992)4. Chadwick, RB. et al., BioTechniques 20, 676 (1996)5. Product News No.15, Molecular Dynamics Japan

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FluorImager** 1セット お問い合わせ ¥12,000,000~Vistra Green 500µl RPN5786 ¥21,000Vistra ECF Western blotting kit for 2500cm2 membrane RPN5780 ¥68,000Vistra ECF Western blotting kit reagent pack for mouse antibody for 2500cm2 membrane RPN5781 ¥43,000Vistra ECF Western blotting kit reagent pack for rabbit antibody for 2500cm2 membrane RPN5783 ¥43,000Vistra ECF substrate sufficient for 2500cm2 membrane RPN5785 ¥20,000Hybond-P, (PVDF) membrane 20x20cm, 10 sheets RPN2020F ¥19,000

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** 蛍光スキャナー本体、コンピュータセット、プリンタを含みます。

図6:Vistra ECF Western blotting kitの検出原理

Tubulin (ng)

Volu

me

x107 (

rfu)

0 25 50 75 100 1250

1

2

3

4

0.5

00 2 4 6 8

0.4

0.3

0.2

0.1

*1 Pico GreenはMolecular Probes, Inc.の登録商標です。*2 Microsoft Excelは米国マイクロソフト社の登録商標です。*3AttoPhosはJBL Scientific Inc.の登録商標です。

PCR (polymerase chain reaction) is covered by U.S. Patents Nos. 4,683,195 and 4,683,202 owned by Hoffmann-La Roche Inc.Use of the PCR process requires a license.Nothing in this catalog should be construed as an authorization or implicit license to practice PCR under any patents held by Hoffmann-La Roshe Inc.

図7a:チューブリンを用いたケミフローレッセンス法の検出感度

図7 b:ImageQuantを用いた蛍光シグナルの定量性

図5:マイクロプレート(MTP)を用いたdsDNA定量dsDNAの定量を目的として、既知濃度のdsDNA (39~1000 ng/ml)(a)をスタンダードとして未知サンプルの濃度(b、c)を算出することができます。

a)

b)

c)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13

1 ng

Excitation

Substrate

Alkaline phosphatase

3rd antibody

Fluorescein

2nd antibody

1st antibody

Target protein

Fluorescence550~570 nm

Fluorescent product

Phosphate group

Fluorescence 510~530 nm

Solid support

D

N

A

S

E

Q

U

E

N

C

I

N

G

DNAオートシークエンサーは塩基配列解析の一般的な手法として定着しています。従来のチェーンターミネーション法(1)に加えて、耐熱性DNAポリメラーゼを利用したサイクルシークエンシング法(2, 3)が開発され、強固な二次構造をもつ配列の解析や二本鎖DNA塩基配列解析も容易になりました。しかしながら、サイクルシークエンシング法は1サイクル6~8分の反応を20~30サイクル繰り返すために反応時間が長く、誤ったヌクレオチドの取り込みによるフルストップ現象など、酵素活性そのものに起因する問題も指摘されています。

Thermo Sequenase IIは従来の耐熱性DNAポリメラーゼで問題とされた多くの点を改良した酵素です。中でも顕著な点は、ヌクレオチド類似体(dITPや標識ddNTP)の取り込み能が飛躍的に向上した上、取り込み率のばらつきが少なく、均一なピークパターンが得られることです。また、高い塩濃度下においてもシークエンス反応を行うことができます。ここでは、Thermo Sequenase II 酵素によるシークエンス反応の特徴とハイスループットDNAシークエンサーMegaBACETMによる塩基配列解析例をご紹介します。

シークエンシング反応にdITPを使用すると、塩基配列の偏りによるコンプレッションが解消されて精度の高い配列解析が可能になります。Thermo Sequenase IIはdITPもdGTPと同様に取り込むことができるため、GC含量の高いテンプ

レートでも正確なDNA塩基配列解析を行うことができます(図1)。また、ピーク高の減衰により解析が難しかったホモポリマー直後の配列解析でも高いパフォーマンスを発揮します(図2)。

ジデオキシヌクレオチドの取り込み性能が向上したことにより、伸長反応に要する時間が従来の1/4に短縮されました。従って、従来の酵素では約2時間(20サイクル反応)かかっていたサイクルシークエンシング反応の所要時間が半分の約1時間になります。

Thermo Sequenase IIでは、異なるジデオキシヌクレオチド間の取り込み効率のばらつきが小さくなりました。そのため、ダイプライマー法に匹敵する均一なピークパターンでより長いDNA配列の解析が可能になります。図3は、均一なピークパターンを利用して遺伝子中のヘテロな点突然変異を検出した例を示しています。

従来の酵素は、塩に対する感受性が高く、サンプル中に50 mM程度の塩が存在するだけで反応が著しく阻害されます。Thermo Sequenase IIは耐塩性を向上させることにより、200 mMの塩存在下でもシークエンシング反応を行うことが

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Thermo Sequenase IIは、サイクルシークエンシング反応によるDNA塩基配列解析のために開発された新しい耐熱性DNAポリメラーゼです。従来の耐熱性DNAポリメラーゼと比べて、GC含量の高いサンプルやホモポリマー直後の配列解析能に優れています。ダイプライマー法に匹敵する均一なピークパターンで、より長いDNA配列の解析が可能になるばかりでなく、伸長反応に要する時間も大幅に短縮されました。また、困難だった高塩濃度のサンプル解析も可能で、幅広いサンプル調製法に対応します。

A novel DNA polymerase for DNA sequencing : Thermo SequenaseTM II

図1:高GC含量サンプルの解析GC含量65%以上のプラスミドサンプルをキット添付のプロトコールに従いシークエンシングしました。

図2:ホモポリマーを含むサンプルの解析イヌcDNAクローンをキット添付のプロトコールに従いシークエンシングしました。

図3:ヘテロ突然変異を含むサンプルの解析例

CAAGTCATTATTATATTTTTAACCCTTTATTAATTCCCTAAATGCTCTAAACTGTAGATATCCAGAAGAATGGTGTTAAATTTACCAACAGGTTTGG

ACTGTAGATATCCAGAAGAATGGTGTTAAATTTACCAACAGGTTTGGCAAGTC TTATTATATTTTTAACCCTTTATTAATTCCCTAAATGCTCTAANN

ACTGTAGATATCCAGAAGAATGGTGTTAAATTTACCAACAGGTTTGCAAGTCGTTATTATATTTTTAACCCTTTATTAATTCCCTAAATGCTCTAA

a) A homozygote

b) A/G heterozygote

c) G homozygote

96℃ 1分間

96℃ 30秒間50℃ 15秒間60℃ 1分間

サーマルサイクル反応条件

20~30サイクル

できます。そのため、DNAサンプルの調製条件に依存せず、様々なDNAをテンプレートとして用いることができます。100 mMのKClを含むサンプルを用いて、他のダイターミネーターキットと比較した結果を図4に示します。

Thermo Sequenase IIを用いて実際のサンプル解析を行なった例を図5に示します。解析にはマルチキャピラリーDNAシークエンサーMegaBACE(図6)を用いました。この例ではプラスミド自動分離装置にて調製した二本鎖プラスミドDNAをテンプレートに用いていますが、プライマー直後から600 bp以上まで均一なピークパターンをもつシークエンスデータが得られています。

ヒトをはじめとする各種ゲノムの塩基配列解析が盛んに行われ、多サンプル処理を行える塩基配列決定法が求められています。今後は、決定された塩基配列を基にして、疾病関連遺伝子などの突然変異を一塩基レベルで正確に比較解析する研究がますます広まっていくことと考えられます。Thermo Sequenase IIは、サンプルの塩基配列の偏りや反応液中の塩濃度などに左右されず、従来と比べてより迅速で正確な塩基配列解析を可能にしました。このように、ThermoSequenase IIは最先端の研究ニーズにマッチした、次世代のDNA塩基配列解析用耐熱性DNAポリメラーゼです。

1. Sanger, F.et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 74, 5463-5467 (1977)

2. Carothers, AM. et al., Biotechniques 7, 494-6, 498-499(1989)

3. Lee, JS., DNA CellBiol. 10, 67-73(1991)

ORDERING INFORMATION

Thermo Sequenase II dye terminator cycle sequencing kit 100回分 US80975 ¥76,000(ABI Model373、ABI PRISMTM377/310オートシークエンサー用) 1,000回分 US80970 ¥620,000

5,000回分 US80980 ¥2,700,000Thermo Sequenase II dye terminator sequencing kit (MegaBACE) 500回分 US79695 お問い合わせ(MegaBACE用) 10,000回分 US79690 お問い合わせ

製品名 包装 コード番号 価格

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図4:反応液中の塩濃度の影響(左)Thermo Sequenase II dye terminator cycle sequencing kitを用い、100mM KCl存在下でpUC18をシークエンシングしました。(右)A社terminator sequencing kitを用い、100mM KCl存在下でpUC18をシークエンシングしました。

図5:Thermo Sequenase IIを用いた解析例pUC18にクローニングされた二本鎖DNAサンプルをテンプレートとしてサイクルシークエンシング反応を行い、マルチキャピラリーDNAシークエンサーMegaBACEにて解析を行いました。 図6:マルチキャピラリーDNAシークエンサーMegaBACE

使用上の注意*ABI373/377/310 すべてのシークエンサーにおいてデータの解析ができます。ただし、シークエンサーのフィルターセットをAに設定する必要があります。シークエンサー上におけるmobility fileおよびmatrix file等の設定につきまして、パーキンエルマー社dRhodamineおよびBigDyeTMの設定では解析できませんのでご注意ください。弊社既存のThermo Sequenase Dye Terminator (US79765/US79865/US79965/US79565/US80765/US80865) をお使いになっている方は、シークエンサーの設定は今まで通りに行ってください。尚、詳細については弊社までお問い合わせください。

ABI PRISM and BigDye are trademarks of Applied Biosystems, Inc. a Division of the Perkin-Elmer Corporation.pGEM is trademark of Promega Corporation and is registered with the U.S. Patent and Trademark Office by Promega Corporation, Madison,WI,USA

NOTICE TO PURCHASER ; LIMITED LICENSEThese kits are sold pursuant to Authorization from PE Applied Biosystems under one or more of the following US Patents : 4,849,513; 5,015,733; 5,118,800; 5,118,802; 5,151,507; 5,171,534; 5,332,666; 5,242,796;5,306,618; 5,366,860; 4,855,225 and corresponding foreign patents and patent applications. Further information on purchasing licenses to perform DNA sequence and fragment analysis may be obtained by contactingthe Director of Licensing at PE Applied Biosystems, 850 Lincoln Centre Drive, Foster City, California 94404 AMERSHAM IS LICENSED AS A VENDER FOR AUTHORIZED SEQUENCING AND FRAGMENTANALYSIS INSTRUMENTS.NOTICE TO PURCHASE ABOUT LIMITED LICENSEThe purchase of these kit (reagent)s include a limited non-exclusive sublicense under certain patents* to use the kit (reagent) to perform one or more patented DNA sequencing methods in those patents solely for use withThermo Sequenase DNA polymerase purchaced from Amersham for research activities. No other license is granted expressly, impliedly or by estoppel. For information concerning availability of additional licenses topractice the patented methodologies, contact Amersham Life Science, Inc., Director, Business Development, 2636 S.Clearbrook Dr., Arlington Heights, IL 60005.*US Patent number 4,962,020; 5,173,411; 5,409,811; 5,498,523. Patent Pending.

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色々な種類の哺乳類系細胞や組織はアラキドン酸を酸化してプロスタグランジンのような生理活性物質を産生します。PGE2は腎臓で産生されるアラキドン酸主代謝物で、バソプレシンで刺激された浸透性の流れを制御することにおいて重要な役割を担っています。精漿中PGE2の免疫抑制効果は生殖において重要な役割を果すことが知られています。また、PGE2はマクロファージでも産生されており隣接の細胞に影響をおよぼしています。このようなPGE2の作用は多くの研究のテーマになっています。しかしながら血漿中PGE2の測定は測定前に反応液から抽出試薬を除くステップなどの面倒なサンプル前処理工程を伴います。基礎研究用に開発されたBiotrak PGE2 EIAシステムは新しいリシス試薬を採用することにより、培養細胞や血漿サンプルからのPGE2抽出を簡単にかつ迅速にしました。また、測定前に抽出試薬の除去を行う必要がありません。従って

このPGE2 EIA システムを用いると測定時間は大幅に短縮され、細胞内・分泌そして総PGE2を正確に測定することができます(図1)。アッセイは非標識PGE2と一定量のペルオキシダーゼ標識

PGE2の競合反応に基づいていますので、添加する非標識PGE2の濃度は、抗体に結合するペルオキシダーゼ標識PGE2の量に逆比例します。抗体と結合したペルオキシダーゼ標識PGE2はマイクロタイタープレートのウェルに固相化された第二抗体と反応します。結合しなかったPGE2を洗浄により全て除いた後、Tetramethylbenzidine(TMB)と過酸化水素を加えて固相抗体に結合したペルオキシダーゼ標識PGE2を発色させ、OD450 nmの吸光度として定量します。この工程を図2に示します。

PGE2 EIAシステムは以下の5種類のプロトコールで使用することができます。

EIA尿・細胞培養上清をサンプルとする場合は抽出操作の必要はありません。また、組織サンプルの場合は従来の前処理法により室温下で測定可能で、測定範囲は2.5~320 pg/wellになります。

EIA従来法のアッセイを2~8 ℃で行うことで、測定可能範囲は1~32 pg/wellに向上します。

培養した細胞からの抽出液中のPGE2を2.5~320 pg/wellの範囲で測定できます。細胞をリシス試薬で溶解し、その一部をアッセイ用プレートに移して測定します。

BiotrakTM Prostaglandin E2 Enzyme Immunoassay(EIA)システムは、細胞培養および血漿サンプル中のProstaglandinE2(PGE2)を効率良くかつ正確に定量するために開発されたキットです。新しいリシス試薬*(可溶化試薬)を使用することにより面倒なサンプル抽出工程を省くことができ、5種類のプロトコールで細胞内、分泌そして総PGE2を測定することができます。ダイレクト細胞内測定法は分泌PGE2測定法に比べて細胞応答を10倍高感度にモニターすることができます。また、細胞応答により合成されたPGE2を直接測定しますので、細胞に刺激を与えた化合物の影響を正確にモニターすることができます。

New direct EIA for quick and simple measurementof intracellular, secreted and total cellular PGE2

J. K. Horton, A. S. Williams, Z. Smith-Phillips and R. C. Martin Amersham Pharmacia Biotech UK Ltd., Cardiff Laboratories, Forest Farm, Whitchurch, Cardiff, UK

D

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G

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1000010000

7500

5000

2500

PG

E2

(pg/

ml)

intracellular0

supernatant total

well

solid phase assay reagent standard orunknown

substrate

Goatanti-mouseAb

Mouseanti-PGE2Ab

PGE2-peroxidase

PGE2

TMB

Stop reaction,measure OD

Incubate 1 hr Incubate 30 min

+

図1:A23187で刺激した3T3細胞が産成するPGE2の測定3T3細胞を100 mM のA23187で5分間刺激し、細胞内・培養上清・総PGE2をBiotrak PGE2 EIA システムにより測定しました。細胞内のPGE2レベルは細胞上清の57%で、全PGE2の35%に相当しました。 図2:Biotrak PGE2EIA システムの測定原理

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PGE細胞内と上清中のPGE2量を合計した値で測定範囲は2.5~32 pg/wellになります。この方法では培養上清を除去する必要がありません。

リシス試薬を血漿サンプルに加え、その一部を用いてPGE2をダイレクトに測定する方法です。面倒な抽出工程が除かれ2.5~320 pg/wellの範囲でPGE2を測定できます。リシス試薬を利用することで他の方法に比べPGE2の回収率は2倍高められます。

リシス試薬1を培養細胞あるいは血漿サンプルに加え、5分間インキュベーションすることで、細胞膜は加水分解されます。血漿サンプルの場合、リシス試薬1はPGE2を可溶性レセプターあるいは阻害結合タンパクより解離させる働きをします。抗体とペルオキシダーゼ標識PGE2の複合体は、リシス試薬2を加えた時点で再構成されます。リシス試薬2はリシス試薬1の主成分を隔離しPGE2を確実に測定できるような働きをします。リシス試薬の混合によって生じる複合体や界面活性剤は抗原抗体反応を阻害しません。

細胞内PGE2の測定は分泌したPGE2を測定するよりも多くの利点があります。細胞内法は実際の細胞応答を測定することになり、細胞反応における薬物、刺激、アゴニスト、阻害剤の影響を正確にモニターすることができます。分泌PGE2の測定だけでは、これらの化合物の影響を過小に測定することになります(図3)。細胞内測定法ではPGE2を経時的に測定することが可能ですが、分泌PGE2の測定では経時的変化をみることはできません。さらに、細胞内測定法は分泌PGE2測定法に比べて細胞応答を10倍高感度にモニターすることができます(図4)。

PGE2の正確な測定は免疫応答、炎症、疾病やその他の生理的現象の研究に非常に重要です。Biotrak PGE2 EIAシステムは、抽出試薬を除去することなしにPGE2を正確に測定できる効率の良い方法です。

Biotrak EIAシステムには、細胞の刺激応答を測定する系として、ここでご紹介したPGE2 EIAシステムのほか、細胞内情報伝達物質(Cyclic AMP/GMP)の測定系も取りそろえております。これらの系を用いることにより、細胞応答を分子レベルから細胞レベルに至る幅広い視点で研究することが可能になります。

ORDERING INFORMATION

Prostaglandin E2EIA システム* 96 wells RPN222 ¥68,000Cyclic AMP EIA システム 96 wells RPN225 ¥37,100Cyclic GMP EIA システム 96 wells RPN226 ¥37,000

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図3:A23187刺激3T3細胞のPGE2産生に対するインドメタシンの影響A23187で細胞を5分間刺激後、PGE2産生阻害剤であるインドメタシンを加えると、細胞内PGE2レベルが培養上清レベルより早く下がることがわかります。

図4:A23187刺激3T3細胞のPGE2産生刺激時間を5分間に固定し、A23187濃度を変えた時のPGE2の変化をBiotrakPGE2 EIA システムで測定しました。

StimulatorA23187

InhibitorIndomethacin

2000

1000

05 10 15 30 60 120

Time (min)

intracellular supernatant

PG

E2

(pg)

PG

E2

(pg/

ml)

6000

4000

2000

00.1 100.00.2 0.5 1.0 5.0 10.0 50.0

intracellular

supernatant

A23187 (µM)

*特許出願中

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一次元目の等電点電気泳動 (IEF) に固定化pH勾配 ( IPG )を用いた二次元電気泳動 (2-D PAGE)は、従来の両性担体キャリアアンフォライトを用いた2-D PAGE と比較して高分離能で再現性に優れた結果が得られます(1-3)。IPG-IEF は、タンパク質の保持能力が大きいため微量分取も可能です(4)。そのため、シークエンス分析やマススペクトロメトリーによるスポットの同定にも用いることができます(5, 6)。塩基性タンパク質の場合、一般的に 両性担体を用いた非平衡化pH 勾配ゲル法(non-equilibrium pH gradient : NEPHGE)が用いられていましたが、再現性に乏しいなどの欠点がありました。しかし、IPGを用いることによって pH 12まで平衡化条件で分離することができるようになりました(7, 8)。これらの特徴は、プレキャストゲルのIPGストリップを用いることによってデータベースの標準化に必須の条件である再現性の高い 2-D PAGE の結果を得ることができます。異なる研究室で得られた結果を研究室を越えて比較することも可能になります。近年まで2-D PAGE は、数多くのステップを含むために繁雑な解析手法の 1 つでした。IPGphor等電点電気泳動装置はIPG-IEF を行うための専用装置で、一次元目の等電点電気泳動に必要ないくつかのステップと時間を削減して簡単に行うことができます(9)。IPGphor 等電点電気泳動装置 は、温度コントロールと8000 V、1.5 mA出力、プログラム可能なパワーサプライを含んだ統合型等電点電気泳動システムです。IPG ストリップをストリップホルダーにセットするだけでストリップの膨潤から、サンプル添加、一次元目泳動までを自動的に行うことができます。ここでは、マウス肝臓タンパク質を用いて異なるpH 勾配を持つ2-D PAGEパターンの比較しました。また、IPGストリップ pH 4-12 を用いて塩基性リボソームタンパク質を分離した例についても紹介します。

等電点電気泳動装置としてIPGphor等電点電気泳動装置、二次元目展開のためにMultiphorTMII水平型電気泳動装置、

またはHoeferTMDALT マルチプルスラブ型電気泳動ユニットを用いました。 EPS 3500XL パワーサプライ、MultiTemp III恒温循環装置、また、電気泳動関連試薬(Immobiline II, Pharmalyte (両性担体) pH 3-10、IPG バッファー、アクリルアミド、ビスアクリルアミド、過硫酸アンモニウム、TEMED、ウレア、CHAPS)はアマシャムファルマシアバイオテク社製品を用いました。

IPGストリップは、アマシャムファルマシアバイオテク社製Immobiline DryStrip pH 4-7 L, 3-10 L, 3-10 NL を用いました。IPGストリップpH4-9および水平型、縦型電気泳動SDSゲルは、文献に従って作製しました(1, 10, 11)。IPGストリップpH 4 -12 は、参考文献 8 にしたがって作製しました。

マウス肝臓タンパク質は、凍結したマウス肝臓を液体窒素存在下で破砕し、9M ウレアあるいは、7M ウレア + 2Mチオウレア , 2 % CHAPS, 0.8 % Pharmalyte pH 3-10, 10mM DTT の含んだサンプル溶解液で可溶化しました。IPGストリップを膨潤する前に、抽出液 (タンパク量 約10mg/ml)を、8 M ウレア, 0.5 % CHAPS, 20 mM DTT,0.5 % (v /v) IPG バッファーを含んだ膨潤バッファーで、微量分取の時は、1 : 1に、分析には1 : 19 に希釈しました。リボソームタンパク質 (pI 10.5~11.5(14)) は、HeLa細胞

(J. J. Madjar氏提供) のリボソームから分離しました。

サンプルを含んだ膨潤液 350 µlをストリップフォルダーに添加し、その上に18 cm IPG ストリップを設置しました。高分子量タンパク質の浸透を改善するために、膨潤中に、低電流 (20~50 V) を流しました。少なくとも6 時間以上膨潤した後、プログラムされたパラメータ(表1) に従って一次元目のIEF 泳動を行いました。IEF後、すぐに使用しないIPGストリップは、プラスチックシートの間にはさんで、-78 ℃で数ヶ月保存しました。二次元目の SDS-PAGE は、参考文献 (1, 10, 11) に従って作成しました。

マウス肝臓タンパク質を異なるpH勾配を用いた 2-DPAGE によって分離しました。(図1)。2-D パターンを比較すると、pH10 まで球状のシャープなスポットが得られていることがわかります。それらの解像度は、選んだpH 勾配により変わります。IPGストリップpH4-7 Lを用いた2-Dパターンは、ゲル全体を通して分離の良いタンパク質のスポットを示しています。IPG 4-9では、ほとんどのマウス肝臓タン

IPGphor等電点電気泳動装置は、固定化 pH 勾配等電点電気泳動 (IPG-IEF)を用いて二次元電気泳動のための等電点電気泳動をよりシンプルにしかも迅速に行うことができます。この報告では、等電点電気泳動にIPGストリップ pH 4-7, 3-10L(linear), 3-10 NL (non-linear) を用いてマウス肝臓タンパク質の二次元電気泳動を行い、パターンを比較しました。また、リボソームタンパク質の分離をIPGストリップpH 4-12 で展開しました。IPGphor等電点電気泳動装置を用いて、IPG ストリップの膨潤時にサンプルを添加する場合、低電流を通電しながら膨潤を行うとサンプル浸透効率が改善されることがわかりました。

2-D electrophoresis with immobilized pH gradients using IPGphorTM isoelectric focusing system

A. Görg, G. Boguth, C. Obermaier, A. Hader and W. Weiss Technical University of Munich, Dept. of Food Technology, D-85350 Freising-Weihenstephan, Germany

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A m e r s h a m P h a r m a c i a B i o t e c h

パク質のスポットが存在しています。IPG 3-10 LとIPG3-10 NLを比較するとIPG 3-10 NLのpH勾配が pH 5からpH 7の間で緩やかなために塩基性側にスポットが集中しています。膨潤時にサンプルを添加すると、作業ステップは最小限になりますが(12, 13)、高分子タンパク質が完全にゲルへ浸透したことを確認する必要があります。最高の結果を得るためには、膨潤時に添加するサンプルの溶液量は、IPGストリップを膨潤するために必要な溶液量と同量であること、IPGストリップのゲル組成がT = 4%, C = 3% を越えな

いことが必要です。また、IPGストリップの膨潤中に、低電流をかけることにより、高分子タンパク質のゲルへの浸透が改善されました(図2)。

塩基性タンパク質は、膨潤時でのサンプル添加や狭いpH勾配を持つ塩基性IPGストリップを用いて良好な分離を得るのは困難でした。しかしながら pH 4-12 のIPGストリップを用いて、膨潤時に低電流を流しながらサンプル添加をすることによってpI 10.5 ~11.5の等電点を持つ塩基性リボソームタンパク質を高解像度で分離することができました(図3)。

IPGphor等電点電気泳動装置は、2-D PAGE の一次元目のIPG-IEFを簡便にし、性能を最大限に発揮させます。また、膨潤時のサンプル添加は、IPGストリップの膨潤とサンプル添加を1 ステップにすることで一元目の泳動を簡便にします。しかしながら高分子タンパク質の場合、IPGストリップへの浸透が不十分である結果が観察されました。この

図1:異なるpH 勾配のIPG ストリップを用いたマウス肝臓タンパク質の2D-PAGE一致するタンパク質のスポットをA, B, C, Dとラベルしました。一次元目は、18 cm のIPG ストリップを用いIPGphor等電点電気泳動装置で泳動をしました。二次元目のSDS - PAGE (T = 13%) は、Hoefer- DALT マルチプルスラブ電気泳動装置で泳動し、ゲルは銀染色により検出しました。

表1:18 cm IPG ストリップを用いたIPGphor等電点電気泳動装置の泳動条件

温度 20℃電流値 0.05mA / IPGストリップサンプル量 350 µl膨潤条件 30 V で10~12 hr泳動条件 IPG 4-7の場合 IPG3-10 L, 3-10 NL, 4-12の場合

200 V ,1 hr 200 V, 1 hr500 V ,1 hr 500 V, 1 hr500~8,000 V, 0.5 hr 500~8,000 V, 0.5 hr8,000V, 3 hr 8,000 V, 2 hr

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制約は、膨潤中に低電流を流すことによって改善することができました。また、2-D PAGE の解像度は、サンプルに合わせてIPG ストリップの選択をすることによって、ある程度まで至適化することができました。

1. Görg, A.et al., Electrophoresis 9, 531-546 (1988).2. Corbett, J.et al., Electrophoresis 15, 1205-1211

(1994).3. Blomberg, A.et al., Electrophoresis 16, 1935-1945

(1995).4. Bjellqvist, B.et al., Electrophoresis 14, 1375-1378

(1993).5. Hanash, S.M.et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88, 5709-

5713 (1991).6. Wilm, M.et al., Nature 379, 466-469 (1996).7. Görg,A. et al., Electrophoresis 18, 328-337 (1997).8. Görg, A. et al., Electrophoresis 19, 1516-1519 (1998).9. Islam, R.et al., Science Tools,Amersham Pharmacia

Biotech, 3,14-15 (1998).10.Görg, A. and Weiss,W., in cell Biology. A Laboratory

Handbook (Celis, J., ed.) Vol.4, Academic Press NewYork, pgs. 386-397.

11.Görg, A.et al., Electrophoresis 16, 1079-1086 (1995).

12.Rabilloud, T.et al., Electrophoresis 15, 1552-1558(1994).

13.Sanchez, J. C.et al., Electrophoresis 18, 324-327(1997).

14.Madjar J.J. et al., Mol. Gen. Genet. 171, 121-134(1979).

ORDERING INFORMATION

IPGphor等電点電気泳動装置※1 1 unit 80-6414-02 ¥1,350,000ストリップフォルダー※2 18 cm 6本 80-6416-68 ¥240,000Immobiline DryStrip pH4-7 L ,18 cm※3 12本 17-1233-01 ¥13,300Multiphor II電気泳動装置 1unit 18-1018-06 ¥330,000Immobiline DryStrip pH3-10 L ,18 cm※3 12本 17-1234-01 ¥13,300Immobiline DryStrip pH3-10 NL ,18 cm※3 12本 17-1235-01 ¥13,300Hoefer-DALTマルチプルスラブ型電気泳動ユニット 1 unit 80-6068-79 ¥720,000

製品名 包装 コード番号 価格

※1 ストリップフォルダーは含みません。別途ご購入ください。※27cm, 11cm, 13cmの長さのストリップホルダーや1本入りもございます。※3 その他7cm, 11cm, 13cmの長さやpH6-11 Lもご用意しています。詳細は、バイオダイレクトラインまでお問い合わせください。

図2:膨潤と同時にサンプル添加を行う際のマウス肝臓高分子タンパク質のIPGストリップへの移行に与える低電流通電効果A. 膨潤の間、通電しない場合B. 膨潤の間、低電流で通電した場合一次元目は、18 cmのIPG ストリップ pH4-9を用いIPGphor等電点電気泳動装置で泳動をしました( 分離長18 cm)。二次元目のSDS - PAGE (T=12 %)は、Multiphor II 水平型電気泳動装置で泳動し、銀染色で検出しました。

図 3 :HeLa 細胞の塩基性リボソームタンパク質( pI= 10.5~11.5 ) の2-DPAGE一次元目は、18 cmのIPG ストリップ pH 4 - 12を用いIPGphor等電点電気泳動装置で泳動をしました(分離長 18 cm)。二次元目のSDS-PAGE ( T=13 %)は、Multiphor II 水平型電気泳動装置で泳動し、銀染色で検出しました。

kDa

94

IPGpor等電点電気泳動装置とストリップフォルダー

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大腸菌で外来遺伝子を発現させる際には、組換えタンパク質を菌体内またはペリプラズム間隙へ分泌、蓄積するように設計することができます。分泌発現の場合には、タンパク質の可溶化、高次構造形成やシステインの酸化などの点で有利ですが、菌体内の発現の方がタンパク質の発現量が高いことが知られています(1)。しかしながら、菌体内に発現、蓄積された組換えタンパク質は、しばしば、封入体といわれる生物学的活性がないミスフォールドタンパク質の凝集体になることがあります(2-5)。封入体は高密度の凝集体ですので、遠心操作によって可溶性の大腸菌タンパク質や菌体破砕物から安易に分離することができます(4-6)。ミスフォールド組換えタンパク質の再生操作は、従来、透析や中性付近のバッファーによる穏やかな希釈操作などにより行われてきました。また、ゲルろ過、イオン交換、疎水性相互作用クロマトグラフィーによっても再生が促進されることが示されています(9-11)。組換えタンパク質にヒスチジンタグ(His-tag)を付加すると、アフィニティークロマトグラフィー(Ni2+などの2価金属を付加したキレーティングカラム)による効果的な精製を行うことができ、同じカラム内で再生操作を行う手法の開発も可能になります。固定化された2価金属イオンとヒスチジンの結合は高濃度のカオトロピック試薬(ウレアや塩酸グアニジン)の存在下でも起こります。カオトロピック試薬と還元剤によって封入体His-tagタンパク質は可溶化されて、アフィニティーマトリックスに直接結合します。このとき、目的のタンパク質は夾雑タンパク質から分離されます。その後、バッファーを非変性バッファーに徐々に換えることによって再生操作を行うことができます。このように、目的の組換えタンパク質をカラムから溶出する前にすべての操作を完了することが可能になります(12)。一般的なプロトコールを図1に示します。

His-tag組換えタンパク質を発現している大腸菌(100 ml培養液)を4 mlの20 mM Tris-HCl, pH8.0に懸濁しました。菌体を氷冷しながら超音波によって破砕し、4℃で10分間遠

心分離を行いました。封入体を含む沈殿物を冷却した3 mlの2 Mウレア, 20 mM Tris*1-HCl, 0.5 M NaCl, 2 % TritonXTM*1-100, pH8.0に懸濁し、さらに超音波処理、遠心分離を行いました。続いて同様の操作により2回目の洗浄を行いました。この段階で、沈殿物はウレアを除いたバッファーで一度洗浄し、凍結保存することができます。

沈殿物を5mlの結合バッファー(20 mM Tris-HCl, 0.5M NaCl, 5 mM イミダゾール, 6 M 塩酸グアニジン, 1 mM2-メルカプトエタノール, pH8.0)に懸濁し、室温で30~60分間攪拌しました。 4℃で15分間遠心分離を行った後に、残在する不溶物を0.22 µmまたは0.45 µmフィルターで除きました。還元に最適な2-メルカプトエタノールの濃度 (0~5mM)は、それぞれのタンパク質について実験的に決める必要があります。

HiTrapTM Chelating 1 mlカラムは5 mlの蒸留水で洗浄し、0.5 mlの0.1M 硫酸ニッケル溶液を添加した後、5 mlの蒸留水で洗浄しました。続いて、5~10 mlの結合バッファーを送液してカラムを平衡化しました。

ヒスチジンタグを持つ組換えタンパク質の精製と再生(refold-ing)の方法をご紹介します。大腸菌の菌体内に封入体として発現された産生物を可溶化し、アフィニティークロマトグラフィーによる精製とカラム内での簡単で効果的な再生操作により、活性のあるタンパク質を得ることができました。このプロトコールはいくつかのヒスチジンタグ組換えタンパク質の精製に応用され、成功例が報告されています。

Rapid and efficient purification and refolding of a (His)6-tagged recombinant protein produced in E. colias inclusion bodies

P

R

O

T

E

I

N

P

U

R

I

F

I

C

A

T

I

O

N

大腸菌培養液�

菌体ペースト�

菌体破砕�

遠心分離(5~10,000×g)

沈殿�

洗浄・遠心分離�

封入体の分離�

可溶化�

HiTrap Chelating(Ni2+)�カラムによる精製・再生�

図1:大腸菌で封入体として産生されたHis-tag組換えタンパク質の抽出、可溶化、再生手法の一般的スキーム

Life Science News 1, 1999 Amersham Pharmacia Biotech

A m e r s h a m P h a r m a c i a B i o t e c h

サンプル添加後にカラムを10 mlの結合バッファーで洗浄しました。続いて10 mlの洗浄バッファー(20 mM Tris-HCl, 0.5M NaCl, 20 mM イミダゾール, 6M ウレア, 1mM2-メルカプトエタノール, pH8.0)でカラムを洗浄しました。

カラムに結合したタンパク質の再生操作は6 Mから0 Mのウレアのリニアグラジエントにより行いました。開始バッファーは上述の洗浄バッファーで、終了はウレアを含まない洗浄バッファー(再生バッファー)を使用しました。グラジエント容量は30 ml、流速は0.1~1.0 ml/minで行い、グラジエント終了後は10 mlの再生バッファーを送液しました。最高の再生率を得るには、それぞれのタンパク質についてグラジエント、流速を予備実験によって決定する必要があります。

再生操作後の組換えタンパク質はイミダゾールのリニアグラジエント(グラジエント容量10~20 ml)により溶出しました。(溶出バッファー:20 mM Tris-HCl, 0.5 M NaCl,500 mM イミダゾール, 1 mM 2-メルカプトエタノール,pH8.0)(図2)溶出されたタンパク質を含む画分を集め、HiTrap DesaltingまたはPD-10カラムによるゲルろ過クロマトグラフィーでイミダゾールを除去しました。このようにし

て精製されたHis-tag組換えタンパク質は本来の高次構造に再生されているので、生物学的活性の分析に用いることができます。

カラムの洗浄は、5 mlの6 M 塩酸グアニジン, 20 mMTris-HCl, 0.5 M NaCl, 50 mM EDTA, pH8.0で洗浄後、10 mlの蒸留水を送液して行いました。続いて10 mlの20 %エタノールを送液するとカラムを4℃で保存することができます。

HiTrap Chelatingカラムから溶出した再生後のHis-tag組換えタンパク質の純度をSuperdex® 75 HR 10/30を用いたゲルろ過クロマトグラフィーとSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により確認しました(図3、図4)。クロマトグラフィーの結果から、精製タンパク質はメインピークとして認められ、わずかに高分子量凝集体も存在することがわかりました。

1.0

0.75

0.5

0.25

010 20 30 40 50 60 65 ml

A280

0

1

2

3

4

6

5

250

500

サンプル添加、�塩酸グアニジン洗浄、�ウレア洗浄は�シリンジを用いた�マニュアル操作�

溶出開始�

fr. 38

fr. 42

fr. 46

fr. 49

fr. 40

再生操作開始�

ウレア�(M)�

イミダゾール(mM)�

1.0

0.75

0.5

0.25

0

5 10 15 20 ml

A280

カラム: Superdex 75 HR 10/30サンプル: 0.2ml (HiTrap Chelatingカラムから溶出した

His-tag組換えタンパク質の画分)バッファー: 0.15M NaCl流速: 0.5ml/min画分サイズ: 1mlシステム: FPLCシステム

カラム: ニッケル添加したHiTrap Chelating 1mlサンプル: N末端に(His)6-tagを持つ大腸菌発現組換えタンパク質流速: 0.1~1ml/min (サンプル添加と再生)

1ml/min (洗浄と溶出)結合バッファー: 20mM Tris-HCl, 0.5M NaCl, 5mM イミダゾール,

6 M 塩酸グアニジン, 1 mM 2-メルカプトエタノール,pH8.0

洗浄バッファー: 20mM Tris-HCl, 0.5M NaCl, 20mM イミダゾール, 6M ウレア, 1mM 2-メルカプトエタノール,pH8.0

再生バッファー: 20mM Tris-HCl, 0.5M NaCl, 20mM イミダゾール, 1mM 2-メルカプトエタノール,pH8.0

再生グラジエント:30 ml溶出バッファー: 20mM Tris-HCl, 0.5M NaCl, 500mM イミダゾール,

1mM 2-メルカプトエタノール,pH8.0溶出グラジエント:10 ml画分サイズ: 3ml (サンプル添加、洗浄と再生)

1ml (溶出)システム: FPLCTMシステム

図3:ゲルろ過クロマトグラフィーによる凝集体と純度の確認図2:HiTrap Chelating (Ni2+添加)カラムによる精製と再生

Life Science News 1, 1999 Amersham Pharmacia Biotech

大腸菌から封入体として産生されたHis-tag組換えタンパク質を遠心操作により分離し、変性剤による可溶化後にHiTrap Chelatingカラムで精製、続いて、同じカラム内で効果的に再生操作を行うことができました。ここではHiTrap Chelating 1mlカラムを使用しましたが、タンパク質の発現量あるいは処理量によってスケールアップすることもできます。10 mg以上の組換えタンパク質の場合は、HiTrap Chelating 5 mlカラムの使用をお薦めします。更なるスケールアップにはChelating SepharoseTM Fast Flowを使用することもできます。ここでご紹介した精製方法はFPLCシステムを用いて行われていますが、ÄKTAFPLC®をご利用いただくと、至適流速条件の検討を自動化することができます。

1. Marston, F.A.O., Biochem J. 240, 1-12 (1986) 2. Williams, D.C, et al., Science 215, 687-689 (1982) 3. Harris, T.J.R., In: Williamson, R.(Ed.) Genetic

Engineering. Vol.4, Academic Press, London, 127-185(1983)

4. Marston, F.A.O. et al., Bio/Technology 2, 800-804(1984)

5. Lowe, P.E. et al., Protein Purification:Micro to Macro,Alan, R. Liss, Inc., 429-442 (1987)

6. Kelley, R.F. et al., Genetic Engineering 12, 1-19 (1990) 7. Mitraki, A. et al., Bio/Technology 7, 690-697 (1989) 8. Knuth, M.W. et al., Protein Purification: Micro to

Macro, Alan, R, Liss, Inc., 279-305 (1987) 9. Werner, M.H. et al., FEBS Letter 345, 125-130 (1994)10.Hoess, A. et al., Bio/Technology 6 ,1214-1217 (1988) 11.Application Note, code No. 18-1112-33, Amersham

Pharmacia Biotech12.Colangeli, R. et al., J of Chromatography B, 714, 223-

235 (1998)

*1Tris とTritonX-100はUnion Carbide Chemicals and Plastic Co.の登録商標です。

ORDERING INFORMATION

HiTrap Chelating 5×1ml 17-0408-01 ¥9,900HiTrap Chelating 1×5ml 17-0409-01 ¥8,900Chelating Sepharose FF 50ml 17-0575-01 ¥36,000HisTrap 1キット 17-1880-01 ¥15,000HiTrap Desalting 5×5ml 17-1408-01 ¥25,200PD-10 30本 17-0851-01 ¥26,500Superdex 75 HR 10/30 1.0×30 cm 17-1047-01 ¥190,000ÄKTAFPLC* 18-1129-78 ¥5,500,000 ¥4,800,000

製品名 包装/カラムサイズ コード番号 価格 キャンペーン価格

A m e r s h a m P h a r m a c i a B i o t e c h

図4:SDS-電気泳動による純度の確認

ゲル: PhastGelTM Gradient 10-15サンプル前処理:15% SDS, 30% 2-メルカプトエタノール,

10mM Tris-HCl, 1mM EDTA で5倍に希釈サンプル量: 1 µl分子量マーカー:Low Molecular Weight Calibraion Kit (LMW)染色: クマシー染色泳動システム: Phast SystemTM

レーン1: LMWレーン2: HiTrap Chelating 1 ml

に添加したサンプルレーン3-6: 塩酸グアニジンによる

洗浄(フラクション1-4)

レーン7-8: ウレアによる洗浄(フラクション1-2)

レーン1: LMWレーン2: フラクション38レーン3: フラクション39レーン4: フラクション40レーン5: フラクション41レーン6: フラクション42レーン7: フラクション46レーン8: フラクション49

* スタンダードシステムにはポンプP-920、UV・電気伝導度・pHモニターUPC-900、フラクションコレクター、コンピュータ、カラープリンタ、UNICORNソフトウエアが含まれます。ÄKTAFPLC用のカラムセットやオプションに関する詳細はバイオダイレクトラインまでお問い合わせください。

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3020.114.4

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モニターUPC-900UV、イオン強度(コンダクティビティー)、pHをオートスケールで測定することが可能

ゲートラック開いて使用することもでき、カラム、バルブ、その他のアクセサリーを装着することが可能

ポンプP-920ツインシリンダー式ポンプならではの安定した送液を実現

タンパク質精製の新しいスタンダードÄKTAFPLC

FPLCで培われたタンパク質精製分取のノウハウをÄKTAFPLCに集積しました。コンピュータ制御により多彩なスカウティングとオートメンション化が可能です。

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