Infotech2016 5 minority
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犯罪予知システム
プリコグ(予知能力保持者)が予知する“犯罪者氏名”と,そのイメージを解析することによって得た犯罪現場特定により,犯罪予防局は“未来殺人犯”を逮捕できる。プリコグは考え(内面)ではなく,行動(外面)を予知するというが……
“犯罪をなくしましょう”
犯罪が減る/なくなることは社会にとって無条件で「善」とされる。それこそ誰しもが求める「安心・安全な社会」である,と。客観的数値・記録・履歴を蓄積し,データに基づき,将来に生ずる危険がある犯罪と犯罪者とを特定することが,プロファイリングの目的防犯カメラも犯罪撲滅のための「手段」として利用される
防犯カメラの両義性(パラドックス)
街の隅々にまで設置された防犯カメラに人々が無意識に期待するのは「そもそも何も起こらないようにする」という“抑止効果”である。その意識が防犯カメラの設置を後押しするしかし,現実には犯人の確認・足取り捜査の補助のために「監視カメラ」として用いられる。事件捜査では解像度・設置台数がネックになることも多く,増設の圧力が常にかかる
論点①未来の犯罪パラドックスプリコグ(犯罪予知システム)が予見するのは「可能性として将来に起こること」。犯罪予防局の監視は未来(完了した未来)に向けられる。犯罪を「すでに完了した未来」の出来事にするために犯罪に対処するのが完璧な予防。プリコグが予知した望ましくない事態は,来たるべき実際の未来において「起こらなかったこと」にすべきなのに,“犯人”が拘束されている。被害者はゼロでも犯罪はなくなっていない
犯人はジョン・アンダートン
このシステムの鍵であり,謎なのはプリコグの出自である。プリコグ(アガサ)だけには“過去の”殺人現場のイメージが残っていた。ジョンがそのイメージを辿ると,手掛かりは意図的に消されていた。「過去を掘り起こすと,泥をかぶるぜ」そして,プリコグはジョンを犯人とする計画殺人事件を予知する(罠に嵌められる)
リベラル個人主義
絶対的な運命/宿命(神/DNA/プリコグ)を想定しながら,なおかつ「個人の主体的選択」の重要さが問われるのがアメリカのリベラル個人主義「絶対的な存在を前にしても,人間はけっして無力ではなく,運命に抗い,将来を自分の手で選び取ることができるし,社会はそれを保障しなければならない」
本人認証の拡張利用
虹彩走査による生体認証システム(バイオメトリクス)が国家・警察など権力の支配の道具として導入・活用されているだけでなく,ビジネス(デジタルサイネージ)や消費などに直結する。「広告が語りかけてくる」のだ監視を通した透明性(transparency)へのあくなき志向。死角をなくすとともに,社会の構成者にもベネフィットを与える
マイノリティ・リポートの真義
3人のプリコグは時として異なる予知をすることがある。予知に関して意見の一致が見られないケースがあるのだだが,それは「少数意見」とされ,記録は破棄されるという(現実の裁判では少数意見も記録されるが)。ただ,記憶そのものはプリコグの中に保管されている可能性を開発者は示唆する
論点② YOU CAN CHOOSE
主人公が岐路に立ったとき「よく考えて」「自分の意思で変わる」と周りは語る「個人の選択」は監視社会に対するアンチテーゼであるだが,プリコグらによって未来が完璧に予知された社会では,将来起こるだろう出来事に対する選択の余地などもはや存在しないのでは?
逃げる,攻める
ジョンはスラム街で眼球交換手術をする。スパイダーに追跡されるが,新たな眼球(他人に“なりすまし”)で逃げ切る元の眼球による認証で犯罪予防局と聖域に侵入したジョンは,アガサ(プリコグ)を連れ出して逃亡を続けるハッカーのルーフェスの元を訪れる
逃亡の果てに
ジョンはアガサを連れて,別居中の妻・ララの元に身を寄せる。ララはラマーを信用していたので,ジョンたちのことを伝えてしまうジョンとアガサは犯罪予防局に逮捕され,ジョンは収容所送りにただ,ララもラマーの言動に不審を抱き,ジョンの眼球を用いて収容所に入った晴れて全米予防局局長に就任したラマーは,祝賀パーティーを迎える
論点③それで少数意見とは?
少数意見(マイノリティ・リポート)はむろん,プリコグであるアガサのイメージだったと想定されるが,それはなぜ「マイノリティー」にならざるをえなかったのだろう?システム自体の欠陥はなかったのか? 人為的ミス,不正,ヒューマニティがあったから,システムが瓦解したせざるをえなかったのか?