Illuminea October 2010 Japanese

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言語に関する膨大な宝の山 これまでの OXFORD OPEN インタビュー: アメリカ図書館協会会長 学術出版の将来:図書館ビジネスはこれまで通りで大丈夫か? 今月の記事: 2010 10 大学図書館および情報コミュニティにOUPが配信するニュースと特集記事

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Japanese translation of the October issue of Illuminea, Oxford University Press’ quarterly librarian newsletter

Transcript of Illuminea October 2010 Japanese

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言語に関する膨大な宝の山

これまでの OXFORD OPEN インタビュー: アメリカ図書館協会会長学術出版の将来: 図書館ビジネスはこれまで通りで大丈夫か?

今月の記事:

2010年 10月

 大学図書館および情報コミュニティにOUPが配信するニュースと特集記事

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| EDITORIAL

回の Illuminea は、OUPや他の出版社が過去にいくつか成し遂げてきたことや掲げてきたイニシアチブについて見る、だけではなく、そしてその先は?という質問に答えるべく、未来の姿をも見ていきたいと思います。

これまでOUPのオープンアクセス(OA)というイニシアチブ、Oxford Openに5年間携わってきた、法律関係ジャーナルのパブリッシャー、Rhodri Jackson氏はOUPでのOAの取り組みに加えて業界全体でのOA全般について述べます。そして今回は、多くの人が待ち望んだオンライン版オックスフォード英語辞書のリニューアルについて特集しました。すでに多くに利用され、愛されてきたオンラインテキストをいかに新しい機能を加えながら再編していくか、OEDの編集長、John Simpson氏が語ります。アメリカ図書館協会(ALA)の会長、Roberta Stevens氏はこの号のインタビュー

で遠い将来を見つめ、図書館がどの方角に向かって進んでいるのか、そしてそれをサポートするALAの努力について話します。ユタ大学、マリオット図書館代表の Rick Anderson氏は彼のエッセイにて学術出版における図書館のポジションに疑問を抱き、異なる反応を出版社の Kent Anderson氏と図書館員のTony Ferguson氏より引き出します。 最後に、OUPの公文書保管人、Martin Maw氏が様々な時代と文化を越えてきた

印刷と出版から、彼の考察するところのデジタル出版を語るなかで、過去と現在を引き合わせます。

「私は、OEDオンラインで言葉を調べるプロセスを、一つの旅の終点ではなく、旅の始まり、として欲しいのです」と述べるのは OXFORD ENGLISH

DICTIONARYの編集長、掲載記事:「OED: 言語の膨大な宝の山」にて

CONTENTS

これまでの Oxford Open : OUPのオープンアクセスへのイニシアチブを検証する Rhodri Jackson、OUP、パブリッシャー

Oxford English Dictionary: 言語の膨大な宝の山John Simpson、OED、編集長

ニュース

インタビュー: Roberta Stevens、 アメリカ図書館協会、会長

学術出版の将来: 図書館ビジネスはこれまで通りで大丈夫か?Rick Anderson、Kent Anderson、Tony Ferguson

ディレクトリ 参加学会一覧とOUP連絡先

書籍を越えて: デジタルの未来とパラレルプロセスDr Martin Maw、公文書保管人、OUP

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4&5

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8&9

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編集: Lizzie Shannon-Little編集チーム: Damian Bird, Alison Bowker, Claire Dowbekin, Richard Gedye, Amanda Hirko, Patricia Hudson, Margaret Love, Colin Meddings, Cath Mundell, and Aviva Weinstein.デザイン: Sequel Group Ltd (www.sequelgroup.co.uk)

Illumineaへの皆さまの貴重なご意見・ご感想を  お待ちしています。 今後の号へのご提案またはご寄稿などについては、[email protected] まで、メールにてご連絡ください。

表紙イメージ及びエディトリアルイメージはオックスフォード大学出版局のセクレタリーより、その代表に許可を得たものです。

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COMMENT |

これまでのOXFORD OPEN: OUPのオープンアクセスへのイニシアチブを検証する

者がオープンアクセス(OA)で論文を出版することが出来るOUPのビジネスモデル、オックスフォー

ド・オープンは今年、2010年7月で開始より丸5年を迎えました。開始時の2005年より、オックスフォードオープンは、フルオープンアクセスの6タイトルを含め、ハイブリットモデル(著者がオープンアクセスで出版するかどうかを選択できるモデル)は90タイトル以上にまで大きく広がりました。これらは全て、著者が料金を負担することによってユーザーが無料にて論文にアクセスできる 「ゴールドOA」と呼ばれるもので、これに対し、 「グリーンOA」は、広く定義すると、誰もが無料にてアクセスできるアーカイブに著者が論文をデポジットすることを指します。OUPでも、出版時から一定の期間を過ぎた論文については著者が論文をリポジトリにデポジットすることを認めることで「グリーンOA」を間接的にサポートしています。このグリーンOAについては一部その性質から、従来の学術出版ビジネスモデルを脅かすことも可能性としてあり、それゆえ、OUPは様々な出版モデルを取り入れることに積極的であるものの、我々のビジネスパートナーである多数の学会や協会との業務上の責任も考え、グリーンOAには慎重に対応してきました。この記事では、我々OUPが主に経験し、実績を得てきたゴールドOAについて主に述べていきたいと思います。最近のOUPのプレスリリースで、オックスフォ

ード・オープンのハイブリッドモデルでOA出版された論文についてまとめた記事が発表されました。OUPのハイブリッドモデルを取り入れたジャーナルで出版された論文のうち2009年は5.9%がOAで出版され、2008年の6.7%よりも若干数値が低くなっています。プレスリリースの見解では、 「著者は選択肢を与えられた場合、その大多数はまだ自分の論文をオープンアクセスモデルで出版しようとはしない」でした。この見解はグリーンOAの支持者達を大いに刺激し、彼らは、OUP

が述べているオープンアクセスは暗に、著者が料金を支払うタイプにのみ触れていると指摘し

著 ました。その支持者達の指摘は正しいと言えますが、OUPのオックスフォード・オープンのアクセスモデルで出版された論文数を数えるのがたやすいのに対して、グリーンOAを数値化するのは非常に難しいことであるのも確かなのです。

OAを採用する論文は、これまで常にライフサイエンス系ジャーナルが最も多く、その次に差をつけられて医学系ジャーナルとなっています。このデータをそれぞれ分野別レベルで検証し、そこから何か結論づけることは非常に難しいのですが、データからひとつ言えることは、著者が料金を支払うOAモデルは、より高額の研究費を受けられる分野で多く採用されているということです。オープンアクセス料金は論文の出版費用をまかなう必要があり、ゆえにその額は通常、研究費を受けていない個人の著者が支払える額を超えていることが多いのです。この、研究費の少なさとOAが義務ではないことが、OUP

の人文科学系、社会科学系、そして法律系のジャーナルでのOA出版論文の少なさの理由の一部と言えます。オープンアクセスモデルは、モデルと

して比較的新しいがために、出版社によって異なるモデルが使われる、という結果を生みました。もし補助金の有無が著者のOA採用のカギだと考えると、今後OAの補助金制度はよりスタンダード化、確立されていくことでしょう。現在のところ、研究機関や資金援助を行う組織はそれぞれ著者のために独自にオープンアクセス用の補助金制度を作りつつあり、その補助金の支払先について、指定をするようになってきています。私達は、このような研究機関や資金援助組織がオープンアクセスモデルに

ついて経験を積み、近いうちに補助金の使い道や普及の条件なども指示するようになると予想しています。OA料金については、業界においてすでに少しずつ統合されてきていますが、出版モデルについては、いつ、そして、どのような形で統合されていくのでしょうか。オープンアクセスは、独自にOA出版

のための組織を持ち、OAで出版しているジャーナルのディレクトリを持ち、またOAに関する用語(グリーンOA、ゴールドOA、OA エヴァンジェリズム、OA義務など)も多数あります。ですが、オープンアクセスで最も驚くべきことは、オープンアクセスがいかに出版社や出版業界に衝撃を与えることに成功したか、です。特に、出版業界全体からみれば、商業的なオープンアクセスのインパクトは相対的にまだ小さいにも関わらず、これだけ話題となったのには驚くべきものがあります。私は、このような意見を述べることでオープンアクセスというモデルを軽んじるつもりは毛頭ありませんが、もし、このような意見を述べてもOAを軽んじているなどという批判を受けないようになれば、それはオープンアクセスが成熟期に入った証拠なのではないかと思います。今後数年で、私達はオープンアクセス業界の発展と金融危機がもたらすオープンアクセスへの補助金の真の影響を知ることが出来ると思います。OUPの目的の一つは学術協会とのパートナーシップであり、このオープンアクセスの発展にこれまで通り積極的に取り組んでいくことは間違いありません。

オープンアクセスモデルは、モデルとして比較的新しいがために、出版社によって異なるモデルが使われる、という結果を生みました。

Rhodri Jackson、パブリッシャー、法律関連ジャーナル

原文は2010年8月20日のUKSG Serials e-Newsに掲載されたRhodri Jackson氏のオリジナル記事です。URLはこちら: http://www.ringgold.com/UKSG/si_pd.cfm?AC=0394&Pid=10&Zid=5591&issueno=227

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xford English Dictionary (OED) 、オックスフォード英語辞典、を知っている方ならば誰もが、それが英語という言語の歴史と発展を記した膨大な情報の宝の山だということをご

存じだと思います。2010年のOEDウェブサイトのリニューアルのカギとなったのは、その膨大な情報を解き放つことにありました。

OED Onlineはオックスフォード大学出版局の最も古いオンライン版レファレンステキストです。2000年3月のデビューは画期的なことであり、ユーザー(ではなくて、読者)に豊富な情報源への、より新しく直接的なアクセス方法を提供しました。それ以来ずっと、OED Onlineは素晴らしい成功を収めてきました。それというのも、読者が(それともやはり「ユーザー」と呼ぶべきか?)やっと、OEDが1884年から続く言語の記録簿のようなものではなく、柔軟性に富んだダイナミックな辞書として変化を遂げたと感じることが出来たからです。

しかし時は流れるもので、OUPは、2000年に画期的であったものでも2010年の今、包括的な見直しを行うことが必要だと決断しました。これまで多くの人に使われ、愛されてきたテキストのリニューアルをまとめるのは容易なことではありません。新しい特徴が、既存のテキストの良さやを見劣りさせる恐れもあります。このような事態を避けるため、OUPではOEDの編集者や

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O

言語の膨大な宝の山

| FEATURE

John Simpson、 Oxford English Dictionary編集長

ウェブ構築スペシャリスト、プロジェクトマネージャ他、多数の人を呼び集め、既存のウェブサイトの検証と2010

年版をどのようにしたらよいか、アイディアを出すように求めました。広範囲に渡るディスカッションの

後、私達は辞書の新しいモデルを考え出しました。OEDの最も重要な部分は、そのコンテンツにあります。意味や語源、文献で使われたもの(引用)です。これらは元来極めて重要なコンテンツです。ですが、新しいモデルのテキストは、編集者が随時更新を行うデータベースを元としています。よって、新しいモデルには、ここ10年ほどの間に見直されて新たに加えられたエントリーが含まれるだけではなく、微細な

文字や編集ルールであるがためにこれまでデータベース上では修正されつつもオンラインでは出版されることのなかった点も数多く反映されることになります。このような修正がされることのウェブサイトにとっての利点は、スタンダード化が進むことによって検索の成功率が高くなることにあります。従来より、辞書というものは内向き

なものとして捉えられてきました。読者は必要なときに辞書を頼って欲しい情報を得ると、また辞書から離れた生活に戻っていました。私達は、そうではなくて、辞書にも外へ向かう部分を持ってほしいと思ったのです。読者を、ある一つの言葉からより広い言語の世界、そしてそれ以上へと導くものであってほ

私は、OEDオンラインで言葉を調べるプロセスを、一つの旅の終点ではなく、旅の始まり、として欲しいのです。

ス誰 左上より時計回りに: 1880年代初期のJames

Murray氏による単語 affi rmを記したもの、 OED Onlineでのmetamorphosis の項目、 1896年以前の辞書の、引用を記した紙片、OED Onlineのこれまでの出来事を記した年表

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しいと思ったのです。今回の新しいバージョンにおいては、一つ一つの辞書のエントリーは旅の終点ではなく、始まりなのです。 

機能の向上

向上させたかった機能のリストのうち、まず私たちがトップにあげたのが、2009年に書籍として出版されたHistorical Thesaurus of the OED とのオンライン上でのリンクでした。このリンクによって、ユーザーたちは、例えば「pencil」という単語の意味を調べた後に、画面に表示されるリンクより歴代のpencilの関連語義(例として、greff、 pointel、 style や gad な

ど他にも100以上の語義)を確認することが出来るのです。他にも、あるテーマで検索した場合(例えば「religion」(宗教))、ユーザーはすぐさま、このサブカテゴリに属するOEDのエントリーや単語の意味など全てにアクセスすることが可能なのです。また、検索をするときに、複数のル

ートの選択肢があります。類義語へのリンクをやめて、ユーザーは地理のリンクをたどることも可能です。この場合は、言葉がそれぞれ、使われる地域別にリストアップされています。 (インド: 695、オーストラリアとニュージーランド: 3,987)または、スラングを調べるリンクを選択することも

できますし、スラング&オーストラリアというリンクを見ることも可能です。これらの検索能力の一部は、辞書

の内部データベースに付随された追加のタグによって可能となっています。この能力が顕著なのが語源を調べるときです。リニューアル前のオンライン辞書では、「イタリア語」を語源とする英単語を検索した場合、イタリア語について何かしらの記述を含む全てのOEDの語源エントリーのリストが検索結果として表示されていました。しかし新バージョンでは、本来の語源が直接的にイタリア語である英単語のみが検索結果として表示されるようになりました。リンクは時 、々OEDを越えて外部へ

と飛びます。今後はこのような外部へのリンクも更に増えていくことと思います。例えば「dog」についてのOED

のエントリーから、今後(購読されていることが前提ですが)トロント大学の古英語辞書や、ミシガン大学の中世英語辞書の同じ「dog」エントリーへもリンクから飛ぶことができ、その言葉の持つ意味をより深く知ることが出来ます。その他に加わったリンクとして

は、OEDのエントリーで引用文として用いられているテキストや著者名から、Oxford Dictionary of National

Biography(オックスフォード・英国人名事典)に掲載されている、その著者自身の情報(情報があれば、ですが -そして大抵の場合、掲載されていることが多い)に飛ぶことが出来るものです。このような機能によって、OUPのも

うひとつの中心となる英語辞書、Oxford Dictionaries Online

(ODO)、現代英語の辞書であり、言語レファレンスサービスにも単語をリンク出来るチャンスが出来ました。これによって、OEDユーザーは、もう少し規模の小さい現代用語辞書が同じ単語をどう扱っているのか確認することが出来、また逆にODOのユーザーも彼らの辞書の単語から、OEDの歴史的(そして現代の)世界を垣間見ることが出来るのです。もちろん、これらオンライン辞書の

出現で、プリント版の辞書がなくなってしまうわけではありません。我々は、第3版のOEDを印刷すべきかどうか、OEDの更新が終了するまでは決定する必要はなく、また、OUPは今

のところ、辞書の印刷を辞める計画はありません。ここまでの話から、OEDという言

語のネットワークにとてもたくさんの新しいリンク(研究のチャンス)が張られているという印象をお持ちになったと思います。サイトリニューアルに際して、もうひとつの大きな改善は、以前は言葉でしか表すことができなかった、OEDデータのビジュアル化とグラフィック表現が新たに加わったことです。OEDに332ものポリネシアン語源の言葉があることを知るのは良いことかもしれませんが、それをクリックして、年表グラフで見ることが出来れば、より意味のあるものになるかもしれません。ポリネシアン言語の言葉は、1750年以前には全くなく、突然1830年と1840年にピークを迎えていることが、データを見ればわかります。これらの言葉にもう一度戻って検証することで、なぜこのようなデータの構造になっているのか、理由がわかると思います。このようなデータは、グラフで見るほうが意味が見出しやすいと言えるでしょう。私は、この新しいOEDのウェブサイ

トのデザインも新しくなっていることもお知らせしたほうが良かったのでしょうが-他にもたくさん、お伝えすべきことがありましたので割愛させていただきました。編集者として、OEDオンラインのウェブサイト再構築には非常に苦しい編集リサーチ、そして分析の仕事が伴いましたが、それらが新しく、フレキシブルでまたダイナミックなデザインや機能となったことを嬉しく思っています。

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読者を、ある一つの

言葉からより広い

言語の世界、そして

それ以上へと導く

ものであってほしい

と思ったのです。

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オックスフォード大学出版は、Social

Explorer とパートナー提携を行い、 socialexplorer.com をグローバルに配信することになりました。 Social

Explorer は2003年に発表されたウェブサイトで、最も情報量豊かで、かつ使いやすい人口統計、をミッションとしてかかげ、スタートしました。現在では

インターネットで見ることができる世界中のどの人口統計のサイトよりも多く使われており、2010年にはアメリカ図書館協会及び協会の一部署であるレファレンス&ユーザーサービス協会(RUSA)から2010 Outstanding

Reference Source賞に選ばれています。

Social Explorerは膨大でかつ成長しつづけるデータとわかりやすいビジュアルインターフェースを融合させ、人口統計や統計リサーチ、社会トレンドの分析結果を誰にでも使いやすく明瞭なリソースに作り上げています。ウェブサイトは、米国コミュニティ調査(ACS)を含む、歴代の米国センサス(国勢調査)全てからの結果、加えて米国宗教団体の会員データの数百、数

千を超えるレポートや、それ以上もある統計マップの情報を提供しています。ウェブサイトは常に新しいデータや機能の更新がなされ、更に、今後米国以外の国のデータも掲載する計画が進められています。

Social Explorerは社会学を学ぶ学生、教員、研究員など幅広い層に有意義なリソースです。このウェブサイトはOUPより全世界に向けて配信され、年間契約で各図書館に提供されます。

オックスフォード大学出版局が毎年開催する図書館諮問委員会(Library

Advisory Group、LAG)は、例年と異なり各国から新しい図書館委員メンバーを招いて行われ、非常に国際的な会となりました。13名もの著名な図書館員がこの5月、オックスフォードまで足を運んでくださいました。その中には遠く中国、日本、インドやオーストラリアから会に参加した図書館もおられ、また、北アメリカや欧州からの例年の参加者もいらっしゃいました。

OUPの新CEOである Nigel

Portwood氏がまず、会議の初めに挨拶を行い、自己紹介に始まり、更に学術図書館や出版社を取り巻く変化や新しい挑戦の数々について話しました。このうち、変化のひとつとして取り上げたのは、OUPのアカデミック及び学術ジャーナル部門のディレクターであった Martin Richardson氏の退職についてでした。その後、すぐにOUPのリサーチディ

レクターである Richard Gedye氏とディスカッションに入りました。ディスカッション内容は、学術出版が直面する競争の激しい市場についての問題です。ディスカッションは金銭的な面から、更に、最近の新しい技術、例えば新しい論文のフォーマットやビジネスモデルについてまで話し合いがされました。このうち、新しいビジネスモデル

については、OUPのヘッド・オブ・オンラインセールス、Chris Bennett氏のe-booksに関するセッションの際にも議論の中心として取り上げられました。インターネット上で出版される電子レファレンスや学術コンテンツが更に増え続けることを考えると、市場へのルートは現時点でも将来でも、新しいセールスモデルを念頭におかなければならないことは明白です。今回の集まりでは、遠方より集まっ

てくださった各国のゲストの意見を聞き、新しい知識を得ること、また、国際マーケットについてのディスカッションの基盤となるアイディアを得ることも目的の一つでした。特に世界的な経済危機がもたらした、政府からの教育分野への資金援助のインパクトの大きさが問題とされました。全体的な意見としては、この資金援助の件は欧州では状況が悪く見通しが暗い、米国でも寄付金の収入が下がったことによって多くの機関に影響が出ているとのことでした。ただし、アジアの一部では状況が異なるようです。メンバーの一人、 Infl ibnet コンソーシア代表の Dr

Jagdish Arora氏が現在も続けられているインド政府の教育投資について、その全体像を話してくださいました。また、これと似たようなケースとして、中国の北京大学図書館を代表するQiang Zhu氏が中国政府の高等教育

に対する手厚い投資について話してくださいました。オープンアクセスに対する権限についての様々な提案についても議論されましたが、米国のエール大学代表の Ann Okerson氏は、現在提案されている米国の法律案の可能性について話してくださいました。午後の会議は技術的な面について

の議論が中心となりました。リバプール大学の Terry Bucknell氏とハダースフィールド大学の Graham Stone氏による次世代図書館検索システムと発見ツールのデモンストレーションが行われたのです。メンバーのディスカッションは、これらが図書館と出版社両方に及ぼすインパクトについて議論されました。特に、出版社が、それら新しい技術をサポートするために知っていなければならないことについてなどが話されました。システムベンダーに対していかにタイムリーにメタデータを提供していくか、ということについては今回の会で学ぶことができた重要な知識の一つでした。これまで以上に、このようなざっくば

らん、かつ深い図書館員たちとの議論はOUPの今後の出版戦略に多いに貴重な財産となることでしょう。

オックスフォード大学出版局の120万ものオンラインジャーナル論文が、先月、無事、Highwire2.0プラットフォームへ移動した。このプラットフォームの移動によっ

て、OUPはよりユーザーフレンドリーでダイナミックなインタフェースで論文を提供することが出来るようになり、次々に変化を求められるオンライン出版に対応するとともに出版業界でのOUPのポジションを強化することに成功しました。新しく設計し直されたオックスフォード・ジャーナルのウェブサイトは、これまでに定評のあるウェブ出版基準に沿ってデザインされたものであり、更にHighwire

Pressのウェブ技術、H2Oによって強化されています。大部分の変化はユーザーにとって

は見えないところでの技術的な部分の変化です。新しいプラットフォームへの更新によって、論文の表示の仕方が変わったり、より読みやすいレイアウトに変わったり、画像の表示方法が改善されたり、異なるデバイスでも読みやすいようにフレキシブルなページレイアウトがされたり、より操作しやすい工夫がされています。また、調べによると60%以上のユーザーが検索エンジンから論文そのものにアクセスするということを考慮して、論文それぞれのページに背景情報、文脈を掲載することによって、どのページも実質的にはホームページのようにすることが可能となりました。今年1月から2月にかけて20のジャ

ーナルサイトがパイロット版として新しいプラットフォームに移動され、以降、223ジャーナルが8月から9月の間に移動されました。今回のプロジェクトでは、OUPの全ジャーナルを無事、新しいプラットフォームへ移動させることが出来ました。今年以降も、更にデザインや機能の追加を行っていく予定です。

ジャーナルコンテンツ、新しいプラットフォームへの移動、成功する

オックスフォード大学出版局、 を世に出す

詳細はこちらのURLから:www.oup.com/online

オックスフォード大学出版局の図書館諮問委員会(LAG)の国際化

| NEWS

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INTERVIEW |

Roberta Stevens氏の過去36年間の図書館員としての経歴は、アメリカ図書館協会の現会長として適任であることを示しています。Illumineaは、図書館コミュニティが直面している様々な変化について、Stevens氏の意見を伺いました。

コンテンツが溢れ、情報過多になっている昨今、図書館が考え、焦点を合わせなければならないスキルとはどういうものだと考えますか。 図書館員のプロフェッションの基盤となるものは、これまでとなんら変わらず、人類の記録を保存すること、知識へのアクセスを確保すること、知識の自由、そして我々のデモクラシーの存続のための、知識ある市民を重視することに他なりません。21世紀の図書館員たちは、従来のスキルに加えて新しい技術も取り入れ、フレキシブルであり、変化を先取りすることができ、そして新たなニーズに対応するためにこれまでの方法を捨てる勇気を持つことだと言えます。

図書館員たちは、どのようにして、印刷物からデジタルコンテンツへの移行へ対応していっているのでしょうか。特にデジタル情報の保存についてはどうでしょうか。研究に要するデジタル化したデータベースを提供することは、ここ何年もの間、図書館の基本サービスの一つでしたし、図書館員は早くもe-booksのサービス提供に向けて動き出しています。しかし、電子版コンテンツの読者にとってスタンダード化されたフォーマットがないことは、図書館の電子版コンテンツのダウンロードをより難しくしています。しかし、これ以上に大変なのはデジタル情報の保存です。多くの図書館でコ

ンテンツをデジタル化していますが、これらのデータをどう知らしめ、アクセスしてもらうか、についてはまだほとんど検討されていません。更に心配なのは、これらのうちいくつかのデジタルコンテンツの短命さにあります。Internet Archive、Portico、そして アメリカ議会図書館のデジタル保存プログラム(NDIIPP)も例外ではなく、非常に多くのデジタル情報が失われていっているのです。どの組織でも、全てのデジタルコンテンツを保存することは不可能であり、また、わずか一部のデータしか永久保存されていないのが実情です。

経済危機の影響を、図書館コミュニティはどのように対処しているのですか。また、ALAはどのような対応策を考えていますか。図書館は、年 あ々がる費用、逆に減る一方の資金援助、常に求めらるサービスの向上と増え続けるユーザーとその使用量という、完全に嵐のような状況に立ち向かっています。加えて、図書館はこれまでに投資した設備やスタッフ、購入した書籍や雑誌などのコレクション、それからデータベースに対し、費用対効果(ROI)を出すように求められています。ALAでは、図書館の様々な問題解決のためのスキルの向上を何よりも優先させることにしました。協会の戦略プランでも、このことは大きな目標の一つです。この目標には次の目的が含まれています。 1)図書館がもたらすインパクトの大きさを証明する評価や報告書へのサポート、2)図書館の資金調達を助けるための草の根運動の動員及び存続活動、3)図書館にとって有利な法律を守るためのコラボレーション活動。

図書館内部で起こる変化、そして図書館を取り巻くコミュニティの意見の変化などについていくために、どのようなことをされているのでしょうか。会長として、私はALAでも最も表に出ることの多い人間です。その私には、多くの協会会員たち、政府関係の方 、々図書館員や図書館ユーザ達がついていて、彼らは私に様々

な意見、そして助言をしてくださいます。彼らは私にとって、異なる図書館コミュニティで何が起こっているのかを知るための 重要な情報源であるのです。それに加えて、ALA自体が持つ情報も、私はフルに活用しています。ALAが提供する、ウェブ上で行われるセミナー、ウェビナーや eラーニングコースは過去2年間で飛躍的にその数を増やしており、このようなオンラインシステム上で学ぶことが快適なことであり、またこのようなプロフェッショナルな知識を得ることが発達し、楽で安価になってきています。

図書館が、ユーザーである読者や研究者の新しい要望に対応していく中、貴方はALAの会長として、在職期間中、どのような変化が起こり、またそれに対しどう対応していくと思いますか。私が会長として決意したイニシアチブのうちいくつかは、図書館の問題解決を図るための戦略をサポートしていて、また、今後新たな資金源を開拓していくことの必要性に対応しています。私の就任時の会では、私は「Our Authors, Our

Advocates(私達の著者は私達の主唱者)」というプログラムをローンチしました。著者というのは、そもそも図書館の味方なのですが、それだけではなく、彼らは独立した個々の著名人であるのです。その時の会で夜、スピーカーとなった4名の著者は、著者のコミュニティがいかにALAのパートナーとなり、図書館のために主唱者となれるか、が明らかになった良い例でした。二つ目のイニシアチブは、ソーシャルネットワークを使い、子供や青年を巻き込んだ、「なぜ私には図書館が必要なのか」というビデオを作成することであり、また三つ目のイニシアチブは図書館が資金源を確保するための様 な々オプションを作り上げることです。これらのタスク、そして遂行のためのチームに、私はALAの新しいメンバーや、これまであまり意見を出す機会のなかったメンバーを抜擢しました。私は、ALAで新しいジェネレーションのリーダーを育てることに力を注ぎたいと考えています。

図書館は、年々あがる費用、逆に減る一方の資金援助、常に求めらるサービスの向上と増え続けるユーザーとその使用量という、完全に嵐のような状況に立ち向かっています。

インタビュー

アメリカ図書館協会(ALA)会長

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在の予算の環境では、ほとんどの研究図書館は数年前よりもかなり限られた範

囲での書籍、学術ジャーナル、そしてデータベースの購入を余儀なくされています。この状況が近い将来のうちに改善すると考えている図書館員は少ないと思われます。同時に、他の図書館サービスの利用は増え続ける一方なのに対し、貸出部数そのものは大多数の図書館で減っているのです。このような状況が重なることで、図書館は、これまで以上に大規模の思惑買いを正当化することが難しくなっています。というのも、貸出部数が減少している今、購入した資料が無駄になってしまう恐れが非常に高く、そのため最近ではこのような図書館のニーズに合わせた様々な購入モデルが提案されてきているからです。これらのモデルは図書館が必要なものだけ、または必要と感じたときにのみ購入できるようなものとなっています。

この新しい現実は、従来のような図書館側の思惑買いに主に頼りビジネスを展開してきた学術出版社にとって脅威と感じられているでしょう。学術出版社にとって、ある程度、(a) オーガニックな成長を望むこと(社の目標達成のため、もしくは株主たちを満足させるため)、(b) 図書館セールスが成長目標の大きな手段となっているところ、では、かなりゆゆしい問題となっていることでしょう。もし私が学術出版社であり、今後ど

のように問題を対処していったらよいのかオプションを考えたとしたら、この4つと言えると思います。1. フラットな成長率で良しとする、または若干利益が下がっていくくらいでも良しとする(おそらく長期的にみると生き延びていけない戦略でしょう)

2. 図書館のマーケットで今後も活発な成長を期待し、探していく(これもおそらく長い目で見るとあまりよろしくない戦略でしょう)

3. 図書館を経由しない、新たな道を探る。このアプローチには様々な形があり、うち、いくつかはこのようなものであると考えます。a. マーケティングとコンテンツの販売を、直接、教授団や学生たち、研究員たちに行う

b. マーケティングとセールスを、大学事務局を通じて直接キャンパスごとに行う

c. 別のセールスモデルに広げていく

d. 学術情報市場そのものから完全に撤退し、代わりに何か他の出版ビジネスの可能性にかけてみる

4. 従来の出版業以外に、何か別の情報サービスを提供していく

上記の4つのオプションのうち、図書館にとってもっとも注目すべきは3つのオプションです。図書館のパトロンともいうべきユーザーたちは、以前のような形で図書館に頼ってはいません。図書館はこれまで以上に、勉強を

する場所として人気ではありますが、従来のサービスである、レファレンスや図書の貸出部数自体は減少しているのです-あるところでは、この減少度合いが極端なところもあります。今のところ、図書館はユーザーにとってブローカー的役割でその重要さを保っています。ユーザーたちは、自分たち個人個人では購入できない資料を、図書館に頼ってアクセスすることが出来ているのです。このブローカー的役割は、個人のアクセス費が現在のまま高値であるか、もしくはユーザーが各出版社とそれぞれ交渉する手間がかかり続ける間は、重要であり続けるでしょう。しかし、もし出版社がユーザー個人

向けの、リーズナブルな価格で手間がかからない、個人アクセスのビジネスモデルを開発したら、どうなるでしょうか。このようなビジネスモデルの開発には、かなりの努力と多少のリスクが伴うことは確かですが、彼らが従来のビジネスモデルにしがみついているほうが(もしくは左記以外のオプションを考えるほうが)リスクが高いと言えるでしょう。これらを考えると、図書館員たちは、今後出版社が学術情報の流通の在り方を根本的に変えてしまう、新たなマーケティング&セールスモデルを作りだすことを真剣に検討しておくことをお勧めします。新しいビジネスモデルの世界は、従来通りにビジネスを行いたいと考える図書館にとって、非常に不親切なものとなることが予想されるからです。

| FEATURE

学術出版の将来: 図書館ビジネスはこれまで通りで大丈夫か?

...図書館はこれまで以上に、勉強をする場所として人気ではありますが、従来のサービスである、レファレンスや図書の貸出部数自体は減少しているのです-あるところでは、この減少度合いが極端なところもあります。

Rick Anderson氏の、EDUCAUSE Review, vol 45, no 5 (July/August 2010)に掲載されたオリジナル記事の要約版です。オリジナル記事はこちらから読むことが可能です。 http://www.educause.edu/EDUCAUSE+Review/EDUCAUSEReviewMagazineVolume45/IfIWereaScholarlyPublisher/209335

下記は Rick Anderson, 米国ユタ大学、マリオット図書館の学術リソース&コレクションのアソシエイトディレクターが、図書館予算が減少している状況の中、図書館が取るべき道にどのような選択肢があるのか、コメントしたものです。 次の右頁には、Anderson氏のコメントに対する、出版社と図書館員の意見を掲載しています。

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INSIGHT |

Rick Anderson氏のエッセイはタイムリーなものであり、重要な観察結果を記しています。現在、我々が直面しているマクロ経済で経験している苦労は、予算全体のシステムに隠されていた「余分」をさらしているのです。この余分、は経済がまだ色 と々不足の状態にあったときに、意図的に加えられたものです。何と言っても、情報が不足している状況のなかでは、ちょっと多めに情報を持っているほうが、少なめに持っているよりもリスクが少なかったからです。

しかし、今回、我々がもし「余分」をカットすることになった場合、この余分は永遠に戻ってこないのではないか、ということが密かに疑われるのです。情報という空間では、経済の循環以外に何か別の力が働いているようです、タイムリーに必要な情報とか、無料の情報への期待とか、 コンテンツのみではなくて、情報サービスに支払いたいという意向とか。出版社はこれまで、ある程度はこ

の「余分」がシステムにあることに依存してきました。余分な印刷物、余分な購入、余分な契約更新。これらの余分は、機関相手のビジネスでは利益が大きかったため、わざわざ個人ユーザーとのCRMビジネスを考えなくても充分補えるものでした。 しかし、図書館の予算の伸びが停滞し、また減少しだした今、出版社はこれまでのようなビジネスには弱みがある、ということを感じとるようになってきました。中には、真剣に、個人向

けセールスに戻るほうが購読の継続につながる、そのほうが広告主にとっても良い結果を示すことが出来るのではと考え始めています。ですが、これらはつまるところ、

従来からある商品のためのちょっとした戦術でしかありません。多くの出版社が望んでいるのは、「従来の出版とは異なる、なにか新しい情報サービス」を作り出すことなのです。このアプローチは、出版社の基本

的な特性、戦略、投資、パートナーシップ、そして顧客に疑問を投げかけ、損なうものになります。ですが、この何でも余る時代-誰でもが容易に出版することが出来、どのようなコンテンツでもすぐに一般化し、専門性もなくなってきている今-コンテンツを生産する者よりも、そのコンテンツの生産者をサポートするサービスのほうが重視されてきているのも確かなのです。

Kent Anderson、CEO/パブリッシャー、The Journal of Bone & Joint Surgery

出版社はこれまで、ある

程度はこの「余分」がシ

ステムにあることに依存

してきました。

出版社の反応

Rick Anderson氏の記事は、大学側の図書館への減少する支援と、それが図書館員や出版社にとってもたらす結果のレビューとしてタイムリーなものです。そこで質問は、これは本当にそうなのだろうか?ということです。本当に図書館予算は元に戻らないのでしょうか。過去40年に渡る図書館コレクションの構築を経験してきたなかで、私は頻繁に「ピーターと狼」の嘘つきピーター役のように、図書館の終焉は見えていると宣言し、常に、それをひっくり返されてきました。大学はいつもなんらかの方法で、常に上がり続ける料金に対応する購買パワーをもたらす十分な資金を探し出してきたのです。

提案された4つのオプションのうち、Rickは、図書館員が最も恐れなければならないのは出版社が個人読者や大学側に直接、情報を売ることだとしました。確かに、私たちが今いる世の中は過去に比べると根本的に異なることを認めますが、それでも出版社、特に学術ジャーナルを出版しているところについては、まだ 図書館との関わりをあきらめたわけではないと思っています。私は一度、ある大学出版社に、学術ジャーナルを出版しないことを批判したことがあります。彼は、彼自身もジャーナルを出版したいと思っていることを言いました。なぜなら、ジャーナルというのは書籍と異なり、まだ納品していない、そして書かれていない情報にまでも料金を払うことを図書館が

約束してくれるからだ、ということです。ジャーナルの出版は、率直にお金になるということです。

現存する学術コミュニケーションシステムは、不合理かもしれないが、機能するのです。機能するのは教育機関にとって評価が重要だからです。その大学の評価というのは教授たちに反映されるものであり、出版社にとっての評価は質の高いリサーチに反映されるものであり、図書館にとっての評価というのは蔵書コレクションの質、設備、サービスに反映されるものなのです。このどれか一つでも失われると、システム全体が壊され、存続が危うくなるのです。私は、リサーチの仕方や、出版の方法、 図書館の意義がこの先かわろうとも、三者全員がそれぞれの役割をこの先何年も何年も果たし続けていくであろうと、楽観的に考えているのです。

Tony Ferguson、図書館員、香港大学

図書館員の反応

現存する学術コミュニ 

ケーションシステムは、

不合理かもしれないが、

機能するのです。

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| DIRECTORY

アジア

Innovate and Motivate2010年10月25日 香港担当:Liu Liping、シ ャ゙ーナル部門[email protected]

NTU Library e-Resource Fair 20102010年10月27~28日 シンカ ボ゚ー ル担当:Kaushik Ghosh、シ ャ゙ーナル部門[email protected]

CONCERT2010年11月10~11日 台北(台湾)担当:Liu Liping、シ ャ゙ーナル部門[email protected]

The 12th Library Fair & Forum2010年11月24~26日 横浜(日本)担当:Kazunori Oike、シ ャ゙ーナル部門[email protected]

SIS Conference2010年11月24~26日 カルカッタ(インド)担当:Swastika Chatterjee、シ ャ゙ーナル部門[email protected]

International Conference on Digital Library Management2011年1月11~13日 カルカッタ(インド)担当:Swastika Chatterjee、シ ャ゙ーナル部門[email protected]

オセアニア

LIANZA2010年11月14~17日 タ ニ゙ー テ ィ゙ン(ニュージー ランド) 担当:Marika Whitfi eld、オンライン部門marika.whitfi [email protected]

欧州

Frankfurt Book Fair 2010年10月6~10日 フランクフルト(ドイツ)担当:Wolfgang Steinmetz、シ ャ゙ーナル部門[email protected] 担当:Katharina Baier、オンライン部門[email protected]

JISC RSC YH Annual Learning Resources Conference2010年10月14日 シェフィールド(英国)担当:Jennifer Brothwell、オンライン部門 [email protected]

Internet Librarian International 20102010年10月14~15日 ロンド ン(英国)担当:Hannah Dernie、シ ャ゙ーナル部門 [email protected]

Working In A Digital Age: The Tenth Anniversary E-books Conference 2010年10月21日 エテ ィ゙ンバ ラ(英国)担当:Jennifer Brothwell、オンライン部門 [email protected]

Public Library Authority Conference2010年10月20~22日 リ スー(゙英国)担当:Ged Welford、オンライン部門[email protected]

Hellenic Conference Of Academic Libraries 2010年11月3~5日 アネテ(キ リ゙シャ)担当:Victoria Lopez、シ ャ゙ーナル部門[email protected]担当:Helen Edgington、オンライン部門 [email protected]

Asamblea Rebiun 2010年11月3~5日 ラス・パ ルマス(スペイン)担当:Annaig Gautier、オンライン部門[email protected]

Pharma-Bio-Med 2010 2010年11月7~10日 セヒ リ゙ヤ(スペイン) 担当:Hannah Dernie、シ ャ゙ーナル部門[email protected]

London Online 2010年11月30日~12月2日 ロンド ン(英国) 担当:Wolfgang Steinmetz、シ ャ゙ーナル部門[email protected] 担当:オンライン部門[email protected]

北アメリカ

Virginia Library Association2010年10月21~22日 ポー ツマス、ウ ァ゙ーシ ニ゙ア担当:Jenifer Maloney、シ ャ゙ーナル部門[email protected]担当:Colleen Bussey、ライフ ラ゙リーセールス部門[email protected]

Pennsylvania Library Association2010年10月24~27日 ランカスター、ペ ンシルバ ニア担当:Belinda Hayes、シ ャ゙ーナル部門[email protected]担当:Susan Goodgion、ライフ ラ゙リーセールス部門[email protected]

Internet Librarian Conference2010年10月25~27日 モンテレー、カリフォルニア担当:Taylor Stang、レファレンス&オンラインマーケティング部門[email protected]

Charleston Conference Vendor Day2010年11月3~6日 チャールストン、サウスカロライナ担当:Francesca Martin、シ ャ゙ーナル部門[email protected]担当:Deb Farinella、ライフ ラ゙リーセールス部門[email protected]

ALA Midwinter2011年1月7~11日 サンテ ィ゙エコ 、゙カリフォルニア担当:Jenifer Maloney、シ ャ゙ーナル部門[email protected]担当:Rebecca Seger、レファレンス&オンラインマーケティンク &゙セールス部門[email protected]担当:Deb Farinella、ライフ ラ゙リーセールス部門[email protected]

南アメリカ

XVI SNBU / II SIBDB Biennial Conference2010年10月17~22日 リオテ ジ ャ゙ネイロ、フ ラ゙シ ル゙担当:Greg Goss、シ ャ゙ーナル部門[email protected]

学会・会議当出版局が2010年10月~2011年1月までに参加出席する主要な学会・会議一覧です。一覧に掲載されている学会・会議に出席される場合は、ぜひ当局ブースにお越しください。なお、当日詳細な打ち合わせをご希望の場合、学会・会議出席担当者まで事前にメールにてお申し込みください。

打ち合わせのご予約、その他のお問い合わせは学会・会議出席担当者までメールにてご連絡ください。

London Onlineへご参加ですか? OUPの様々な商品一連のご紹介を予定しています。この中には、Oxford Bibliographies Online、Taruskinの Oxford History of Western Music、Oxford Medical Handbooks Online Phase 2、リニューアルされた Oxford English Dictionary、そして2011年に新規参加するジャーナルの数 を々ご紹介いたします。

フリートライアルのお申込みでくじ引きに参加できます。たくさんの賞品をご用意してます。

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ジャーナル連絡先OUPは、図書館(単独または複数施設)やコンソーシアムがパッケージ(オックスフォードジャーナルコレクション)として、または図書館利用者のニーズに合わせて選択的にカスタマイズしてご利用いただける、230 誌以上の学術ジャーナルを出版しています。過去にさかのぼるバックファイルも、Oxford Journals Archive からご利用いただけます。

販売

製品情報、無料体験版のリクエストおよび見積は、[email protected]までメールをお送りください。販売担当者に個別に連絡するには、www.oxfordjournals.org/for_librarians/quote.html サイトよりご連絡ください。

マーケティング

図書館利用者への販促に関する宣伝用資料 およびお問い合わせは、[email protected] までメールでお問い合せください。

カスタマーサービス

オンラインアクセスや印刷物についてのお問い合わせ、技術的なサポート、また、支払・請求書についてのお問い合わせを含む、カスタマーサービス宛てのお問い合わせは、当出版局のサポートチームにご連絡ください。

アメリカ大陸[email protected]+1 800 852 7323(米国・カナダからのフリーダイヤル番号)

日本・韓国[email protected]+81 3 5444 5858

その他の地域コンソーシアムのお客様[email protected]+44 (0)1865 354949

コンソーシアム以外のお客様[email protected]+44 (0)1865 353907

オンラインプロダクツ 連絡先オックスフォード大学出版局では、多くのオンラインプロダクツを提供しています。当局の評価の高いものには、Oxford English Dictionary、Oxford Dictionary of National Biography、Oxford Reference Online、Oxford Bibliographies Online および Oxford Scholarship Online などがあります。

販売

製品情報、体験版のリクエスト、および見積は、メールで営業チームへお問い合わせください。

全世界(アメリカ大陸以外)[email protected] +44 (0) 1865 353705

アメリカ大陸[email protected]+1 800 624 0153

マーケティング

図書館利用者への販促に関する宣伝用資料 およびお問い合わせは、下記メールアドレスへ お問い合せください。

全世界(アメリカ大陸以外)[email protected]

アメリカ大陸[email protected]

オンラインサポート

オンラインアクセスへのお問い合わせ、技術的なサポート、また、支払・請求書についてのカスタマーサービスへのお問い合わせは、下記メールアドレスへお問い合わせください。

全世界(アメリカ大陸以外)[email protected]+44 (0) 1865 353705

アメリカ大陸[email protected]+1 800 334 4249 (ext 6484)

トレーニング

オンライン製品のご利用方法に関するトレーニングのご希望は、オンライン製品スペシャリストにお問い合わせください。

全世界(アメリカ大陸以外)Mark [email protected]

アメリカ大陸Taylor [email protected]

オックスフォード大学出版局の主要連絡先オックスフォード大学出版局の、出版物・サービスに関するご質問やお問い合わせは下記連絡先へメールまたはお電話にてご連絡ください。

DIRECTORY |

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| INSIGHT

Dr Martin Maw、 公文書保管人、 OUP

ジタル技術は時として、ややこしくもあります。出版社はドアがいくつもある家

の鍵束を手にしつつ、どの鍵がどのドアに合うものなのかわからないという状態です。そして、もしドアが開いたとしても、そのドアの向こうには空っぽの棚があるだけなのか、もしくは想像したこともないような宝の山に出会えるのか、まったく見当もつかないのです。ヨーロッパで印刷技術が発明された15世紀以降、初めて出版業界が印刷業の新たな可能性に対して考えを覆したのです。もしかしたら、デジタル出版という

のはプロセスであると考えるのが一番良いのかもしれません。収集、選別、その後、従来の書籍とはまた別の方法で物を作り出すことに他なりません。印刷された書籍に慣れ親しみ育ってきた多くの人々は、この考え方に馴染めず、むしろ脅威に感じるかもしれません。ですが、英語の読み方だって、時代に合わせて進化を遂げてきたものなのです。はるか昔、読み書きができるギリシャやエジプトの知識人たちにとって、ブストロフェドン(boustrophedon)-文章を端で折り返す書き方、左から右に書くと、次の行はまるで畑を耕す牛のように右から左へ引き返す、「牛耕式」と言われる書き方が普通でした。また同じように、中世の僧侶であれば、句読点もなにもないラテン語の塊を見たとしても、青ざめたりすることはありませんでした。今日、当たり前のこととして受け入れられている句読点も、7世紀に入って聖書の模写が行われるようになってから使われだし、その800年後にベネチアの商業印刷の父、マヌティウスにより一般的になったものなのです。ですから、新しい技術が、現在のテキストをより改善し、その読み方を変えることも容易に想像できることです。一昔前の人々は情報にアクセスする

ことについて、偏見が少なかったようです。 1520年にオックスフォード大学では Compotus Manualis ad

Usum Oxoniensum(「学生のための手計算ガイド」)というパンフレットを数学のプロジェクトに取り入れました。大学の専門用語でわかりにくくなっていましたが、指を曲げたり、両手のひらや関節を使う運動を開発することで全ての西暦を表すことができるというもので、現在も使われている指のバイナリーや韓国のチセンボップと類似しているものです。

出版方法の変化はリテラシーを向上させられる

このようなツールは知識人にとって必要なものであることが証明されていて、似たようなツールに関する書籍をエリザベス時代の数学の魔術師、 John Deeの図書で見つけることができます。ルネッサンス時代の学者ならば、このような技術は書物から学ぶこと同様に自然なこととみなされ、「記憶の宮殿(memory palace)」という、書籍全巻を記憶し自在に取り出せる、素晴らしい記憶方式の簡易版と考えたでしょう。また、このような能力があることで、印刷された文字を過小評価したわけではなく、むしろ、ツールは、印刷物がないときに、言葉が伝える意味を連想させることが出来たのです。このようなツールと並行と考えられ

るのが手話です。欧州の学者たちは、17世紀、様々な記号やその意味について、問い始めました。きっかけとなったのは中国の漢字が西洋に伝わったときでした。学者によっては、それまで親しんでいたインド・ヨーロッパの文字とは全く異なる漢字を、実物からヒントを得た絵文字と間違うケースも出てきました。捉え方は間違っていたものの、この考え方はやがて記号

についての哲学的な意味について考えるまでに発展し、英国では聴覚障害者のための最初の掌アルファベットを組み立てることにつながりました。オックスフォードでは、この考えをGeorge

Dalgarnoの著書、Deaf Man’s Tutor

(1680) によって一般的なものに広めました。 Dalgarnoは、アルファベットを掌に配置させることで、聴覚障害者たちとのスピーディーなコミュニケーションに成功しました。書籍を読むことについてはまた全く違う手法を使いましたが、この掌 アルファベット方式はそれと同等の役割を持ったのです。これらの経験を通し

て2010年の現在にも言えることは、出版の方法が変わるからといって、必ずしもリテラシーを貶めるものではない、ということです。むしろ、リテラシーを高める変化なのかもしれません。マヌティウスの印刷技術は手書きの書籍文化を壊しはしましたが、代わりに学問を国際的に広め、多くの人が読み書きできるようになりました。1515年、マヌティウスの葬式では、多くのヒューマニストたちが敬意を表し、彼の棺を彼の印刷した本で埋め尽くしました。今日、携帯パソコンなどの新しい技術を発明したパイオニアが、その後、印刷

の父マヌティウスのように敬意を表してもらうことになるかもしれません。

書籍を越えて: デジタルの未来とパラレルプロセス OUP公文書保管人の視点