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1 サイトトップ】>【コンサルタント試験】>【問題解説】>【安全2017 10 29 最終改訂:2019 01 13 第45回(2017 年度)労働安全コンサルタント試験 (産業安全一般)の解説と正答 柳川行雄 内容 1 はじめに ....................................................... 3 2 解説と試験協会発表正答 ......................................... 4 (1)問 1(試験協会発表正答 3)難易度1 ..................... 4 (2)問 2(試験協会発表正答 4)難易度1 .................... 10 (3)問 3(試験協会発表正答 3)難易度2 .................... 12 (4)問 4(試験協会発表正答 1)難易度5 .................... 13 (5)問 5(試験協会発表正答 1)難易度4 .................... 14 (6)問 6(試験協会発表正答 4)難易度3 .................... 15 (7)問 7(試験協会発表正答 4)難易度4 .................... 16 (8)問 8(試験協会発表正答 5)難易度2 .................... 18 (9)問 9(試験協会発表正答 3)難易度2 .................... 19 (10)問10(試験協会発表正答 2)難易度5 .................... 22 (11)問11(試験協会発表正答 3)難易度1 .................... 23 (12)問12(試験協会発表正答 1)難易度1 .................... 24 (13)問13(試験協会発表正答 3)難易度1 .................... 25 (14)問14(試験協会発表正答 3)難易度4 .................... 27 (15)問15(試験協会発表正答 2)難易度3 .................... 28 (16)問16(試験協会発表正答 3)難易度5 .................... 30 (17)問17(試験協会発表正答 5)難易度5 .................... 33

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【サイトトップ】>【コンサルタント試験】>【問題解説】>【安全】

2017 年 10 月 29 日 最終改訂:2019 年 01 月 13 日

第45回(2017 年度)労働安全コンサルタント試験

(産業安全一般)の解説と正答

柳川行雄

内容 1 はじめに ....................................................... 3 2 解説と試験協会発表正答 ......................................... 4 (1)問 1(試験協会発表正答 3)難易度1 ..................... 4 (2)問 2(試験協会発表正答 4)難易度1 .................... 10 (3)問 3(試験協会発表正答 3)難易度2 .................... 12 (4)問 4(試験協会発表正答 1)難易度5 .................... 13 (5)問 5(試験協会発表正答 1)難易度4 .................... 14 (6)問 6(試験協会発表正答 4)難易度3 .................... 15 (7)問 7(試験協会発表正答 4)難易度4 .................... 16 (8)問 8(試験協会発表正答 5)難易度2 .................... 18 (9)問 9(試験協会発表正答 3)難易度2 .................... 19 (10)問10(試験協会発表正答 2)難易度5 .................... 22 (11)問11(試験協会発表正答 3)難易度1 .................... 23 (12)問12(試験協会発表正答 1)難易度1 .................... 24 (13)問13(試験協会発表正答 3)難易度1 .................... 25 (14)問14(試験協会発表正答 3)難易度4 .................... 27 (15)問15(試験協会発表正答 2)難易度3 .................... 28 (16)問16(試験協会発表正答 3)難易度5 .................... 30 (17)問17(試験協会発表正答 5)難易度5 .................... 33

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(18)問18(試験協会発表正答 3)難易度3 .................... 35 (19)問19(試験協会発表正答 5)難易度2 .................... 36 (20)問20(試験協会発表正答 1)難易度4 .................... 37 (21)問21(試験協会発表正答 4)難易度2 .................... 38 (22)問22(試験協会発表正答 3)難易度2 .................... 39 (23)問23(試験協会発表正答 4)難易度4 .................... 41 (24)問24(試験協会発表正答 5)難易度1 .................... 42 (25)問25(試験協会発表正答 4)難易度5 .................... 43 (26)問26(試験協会発表正答 5)難易度3 .................... 47 (27)問27(試験協会発表正答 4)難易度5 .................... 48 (28)問28(試験協会発表正答 4)難易度3 .................... 49 (29)問29(試験協会発表正答 4)難易度3 .................... 51 (30)問30(試験協会発表正答 2)難易度4 .................... 52

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1 はじめに このサイトは産業保健(労働衛生)を対象としている。しかし、いささか私事

で恐縮だが、昨年、労働衛生コンサルタント試験に合格し、今年は安全コンサル

タント試験に挑戦してみたのである。 そこで思ったのだが、安全と衛生は独立したものというわけではなく、多くの

問題は産業保健の分野の読者にとっても参考になるようである。また、当サイト

の読者の方で安全コンサルタント試験を受験しようと考えておられる方もおら

れると思う。そこで、産業安全一般の問題について簡単な解説を行ってみた。 実を言えば、本稿執筆の経緯は、以下のようなものである。試験の実施後、試

験協会が正答を公表するまでに時間がかかったので、ある掲示板で何が正答か

について議論をしていた。 その結果、かなりの問について正答の予測がついたので、他の方のご意見も参

考に、私なりの正答予測を作成したのが、本稿の最初である。その後、試験協会

が正答公表を公表したので、それまで「正答予測」としていたものを「試験協会

発表正答」と修正した。なお、正答の予測と公表された正答では、問 25 の結論

が異なっていた。 予測が外れたことについて、お詫びしたい。とりわけ、これで合格と不合格が

変わってしまったという方には申し訳なく思っている。 また、私の主観によって難易度を付した。5段階で示し、数値が大きくなるほ

ど難しいという意味である。難易度1と2を確実に正答すれば足切りの 40%に

達し、さらに難易度3をすべて正答すれば合格ラインに達する。難易度4と5を

さらに正答すれば、法令や記述の試験が楽になることになるだろう。ただ、何が

難しいかは、それぞれの専門によっても異なると思うので、あくまでも参考にと

どめて欲しい。 安全コンサルタント試験の産業安全一般は、誰でも正答に達することができ

そうな問題と、誰にも解けそうにないような問題がかなりある。合否を分けるの

は残りの問題ということになるが、その数はあまり多くない。その意味で、その

ような問題を確実に正答できるようにしておく必要がある。

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2 解説と試験協会発表正答

(1)問 1(試験協会発表正答 3)難易度1 問1安全管理などに関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。 (1)安全とは、許容不可能なリスクがないことをいい、危害を引き起こすお

それがあると思われるハザードから守られている状態をいう。 (2)労働災害が発生した場合においては、法令に基づいて被災者に支払われ

る労災保険による補償費と、これ以外の損失及び費用を比較すると、一般

に後者の方が大きい。 (3)ライン型の安全管理は、スタッフ型に比べて、指示、改善策などが速や

かに徹底されにくい傾向がある。 (4)ライン型の安全管理は、スタッフ型に比べて、日常の業務に追われて安

全知識や安全情報を自ら身に付けることが難しく、それぞれのラインの

管理・監督者の安全指導能力により格差が生じやすい。 (5)ラインの安全管理者は、ラインにおける安全管理業務について責任を持

つため、自己の管理範囲内の職場の安全に関する問題点について知って

いなければならない。 (1)「安全」という用語について、厚生労働省の公式な定義があるわけでは

ないが、ISO/IEC(2014)“Guide 51, Safety aspects --Guidelines for their inclusion in standards”によると安全とは「許容できないリスクが

ないこと」とされている。従って、適切でないとはいえない。 (2)本問は、選択肢の(3)が明らかに不適切なので、他の選択肢を深く考

えた受験生はあまりいないと思う。本肢は、問題の趣旨や意味があいまい

であることから、受験時にはできる限り早く“捨て肢”と割り切るべき肢

だろう。一応、私なりの解説を次に付したが、受験対策としては、読み飛

ばしていただいて構わない。

【労災補償給付とその他の費用の比較について】 1 初めに 本肢は、労働災害が発生した場合の労災保険による補償費とそれ以

外の損失及び費用の大小を問うものである。当初、この選択肢を見た

とき、労災保険による補償と全損害の比較についての問題だと思い込

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んだ。まさか、補償給付とその他の損失・費用の比較ができるとは思

えなかったからだ。 しかし、このような出題がされている以上、何か根拠となるデータ

が存在しているのであろう。おそらく、労働政策研究・研修機構が独

自に行った調査研究か、厚労科研で行われたか、厚生労働省の委託事

業で行われたのであろう。しかし、かなり調べてみたが、そのような

調査研究のデータは見つからなかった。 ただ、このような調査研究が行われたとすれば、その方法は下記の

いずれかによったとしか思えない。しかし、本肢は「労働災害」につ

いて尋ねており、訴訟となった労働災害に限定して尋ねているのでは

ない。であれば、②は考えにくい。また、③についてはこのような事

項について合理的な推計ができるとも思えない。おそらく①によった

のではなかろうかと思われる。 ① 事業者に対する質問票又は面接による調査

② 裁判例の分析

③ 理論的な推計

2 労災補償給付とその他の費用の推計の試み しかし、個人で、事業者に対する調査を行うことは現実には不可能

である。そこで、あえて③による推計をしてみよう。 (1)前提条件 まず、本肢は前提条件が必ずしも明確ではない。①本肢にいう労

働災害には、労災補償が行われない救急箱災害は含まれるのだろう

か。②労災補償給付がされない損失及び費用の範囲はどこまでなの

だろうか。③さらには「一般的に」という言葉の意味をどう理解す

るべきだろうか。本問にこたえるには、これらについて出題者の意

図を“推理”しなければならない。 ア 考慮する労働災害の範囲 まず、本問にいう労働災害の範囲が問題となる。なぜ、これが

問題となるかといえば、次のような理由である。 法律上の定義では、いわゆる“救急箱災害”も労働災害に含ま

れる。しかし、救急箱災害には労災補償給付は行われないので、

出題者の意図としては本問の対象外としているのではないかと考

えられるのである。また、通常、労働災害といえば、統計では休

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業4日以上のものを指すので、出題者が無意識のうちにそれに限

っていたのではないか、さらには、損害と費用が公的にかつ金額

まで算定されているのは、訴訟で判決が出たもののみだろうか

ら、訴訟で確定判決が出たもの、さらにいうなら原告勝訴となっ

たものに限っているのではないかとも思われるのである。 しかし、本肢はたんに“労働災害”としており、とくに限定は

していない。そこで、救急箱災害を含むものと考えよう。 イ 費用と損害の範囲 次に、費用と損害の範囲がどこまでかであるが、常識的には災

害と相当因果関係のある損害および費用ということになろう。し

かし、それを算定するのは極めて困難な面もある。具体的に説明

しよう。 (ア)会社側に発生する費用・損害 会社側に発生する費用・損害としては以下のようなものが考

えられる。 ① 発生時の被災者の救護、医療機関への搬送、関係方面への

連絡等の人件費等 ② 災害の原因や事実関係の調査の費用 ③ 関係機関への報告等の事務作業の費用 ④ 災害直後の生産の一時的な停止による損害および生産ライ

ンを再稼働するための費用 ⑤ 事故処理、本人不在等による生産の停滞のための費用 ⑥ 本人の休業中に他の労働者が代替するための費用 ⑦ 社会的な制裁(入札からの排除、報道等による社会的信頼

の失墜等)による損害 ⑧ 訴訟になった場合の訴訟の費用 (イ)本人側に発生する費用・損害 また、本人側の損害としては、以下のものが考えられる。 そして、労災給付されない最も重要なものは、③の本人及び

関係者の精神的苦痛による損害である。しかし、これは訴訟等

になって債権として確定すれば顕在化するが、数からいえばそ

のようなケースはごく一部であろう。その場合に、実際に精神

的苦痛は存在しているのだから損害が発生していると考えるの

か、債権として確定していないから発生していないと考えるの

かが問題となるのである。

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ただ、苦痛を受けているという事実は存在しているので、損

害は発生しているわけであり、問題文も特に限定していないの

で本問にいう「損害」に含まれると考えよう。だが、発生して

いるとした場合に、今度は、どのように金銭に換算するのかが

問題となる。 ① 医療機関での治療の費用(療養費) ② 入院のための付き添い、自宅療養中の介護の費用 ③ 休業による賃金の損害 ④ 本人の精神的損害、家族の精神的損害 ⑤ 障害が残った場合の介護の費用 ⑥ 障害が残った場合の労働能力の低下の損害 ⑦ 死亡の場合のその後の賃金損失 ⑧ 死亡の場合の葬祭料 ウ 「一般的に」の意味 本問にいう「一般的に」とは何を意味するのであろうか。常識

的には2つのいずれかだと考えられる。これについても出題者の

意図を“推理”する必要がある。 ① 損失を重み付けした加重平均で、労災補償給付とその他の費

用・損害の大きさを比較するという趣旨 ② すべての被災者のうち補償費給付よりもその他の費用・損害

が高い者の方が「一般的」だという意味 これについては、出題者の意図は、おそらく後者の意味だった

のであろう。損失を重み付けした加重平均と考えると、得られる

数値はひとつだけである。そうなると、「一般的に」という言葉

は意味をなさない。そこで、ここは②の意味だとしよう。 (2)労災補償給付される範囲 ア 会社側の損害への給付はない 労災補償給付される範囲であるが、まず、会社側の損害・費用

に対する補償が行われないことは当然である。 イ 本人の損害への給付は一部のみ 次に本人の損害であるが、これは次のようになる。これらのう

ち、年金の額を“補償給付”として賠償額から控除すべきかどう

かは、民事賠償訴訟では問題となっており、控除しないとするの

が通例である。しかし、問題では特に限定されていないので考慮

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すると考えよう。 ① 医療費 原則として全額 ② 入院のための付き添い 条件に合致すれば給付 ③ 休業による賃金 休業4日目から平均賃金の8割 ※ 休業補償給付は平均賃金の6割であるが、さらに2割

の特別支給金が支給される。民事訴訟では、賠償の額を

考える場合に、特別支給金は控除しないが、これも補償

としての位置づけであるから8割と考えよう。 ④ 本人や関係者の精神的損害 補償されない ⑤ 障害が残った場合の介護の費用 上限付きで給付 ⑥ 障害が残った場合の労働能力の低下の損害 年金及び一時

金の形で一定額を給付 ⑦ 死亡の場合のその後の賃金損失 遺族年金または一時金の

形で一定額を支給 ⑧ 死亡の場合の葬祭料 一定額を給付 (3)労災保険の補償給付とその他の費用・損失の比較 では、以上の条件と前提の下で、労災保険の補償給付とその他の

費用・損失について、場合を分けて比較を試みよう。 ア 救急箱災害 救急箱災害については、労災補償が行われないので、その他の

費用・損害場合の方が大きいことは当然であろう。 また、その数は把握しようもないが、ハインリヒの法則を考え

れば、新規に療養を受ける者の数よりも圧倒的に多いと考えるべ

きであろう。 イ 不休災害及び休業3日以内の災害 不休災害及び休業3日以内の災害で障害が残らない場合はどう

であろうか。このような場合、民事賠償の訴訟になることはまず

ないであろうから、精神的損害の大きさは分からない。ただ、休

業補償給付が行われないのであるから、常識的に考えて費用・損

害の方が大きいのではなかろうか。 本人の休業による賃金(不休災害の場合でも半日程度の休業が

行われた可能性はあろう)、上司等の病院への同行、(行われると

して)災害の調査や労基署への報告に要する費用を考えれば、補

償給される療養補償給付(治療代)を上回ると考えるのが自然で

あろう。

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なお、この被災者数は、行政としては把握していると思われる

が、公表されていないため不明である。しかし、やはりハインリ

ヒの法則からも、かなりの数であろうと思われる。 ウ 休業4日以上の災害(障害が残らない場合) 休業4日以上の災害で障害が残らない場合はどうであろうか。

この場合は、療養補償給付は 100%行われ、休業補償給付は平均

賃金の 80%であることを考えれば、労災補償給付の方が大きいか

もしれない。しかし、会社側のコストの大きさも分からないし、

精神的損害の額に相場などがあるわけではない。不明というべき

であろう。 エ 障害が残る災害及び死亡災害 障害が残った場合や、死亡の場合はどうであろうか。この場合

は精神的損害の金額が高額になるだろうから、その他の費用・損

害の方が大きいと思われる。しかし、このような重篤な災害につ

いては、労災補償給付も充実しており、療養補償(医療費)の額

もかなりの高額になるであろうから、その他の費用・損害の方が

大きいという明確な証拠はないというべきではなかろうか。 オ 結論 このように考えると、ハインリヒの法則によれば、救急箱災害

の件数と休業3日までの被災者の、全被災者に占める割合は、ほ

とんどだと言ってよいであろうから、ほとんどの被災者は労災補

償給付よりも実際の損害・費用の方が大きくなると考えられ、本

肢は正しいのではなかろうか。 だが、以上のような推計による結論は、常識的には本問の趣旨

とは異なっているであろう。やはり、出題者の保有している根拠

となるデータを探し出さない限り、出題意図は不明というしかな

い。 いずれにせよ、出題意図や問題文の意味を“推理”しなければ

ならないこのような問題は、“捨て問”と、早めに切り捨てるこ

とが、合格のためには必要であろう。 (3)ライン型とは、本来業務についてのトップから生産現場までの指揮系統

の中にいる管理職や職長などの職員に安全管理を行わせるものである。一

方、スタッフ型とは、本来業務とは独立した総務部門などの専門的な職員

に安全管理を行わせるものである。 そのため、ライン型はスタッフ型に比べて、指示、改善策などが速やか

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に徹底されやすいという利点がある。従って、本肢は適切ではなく、正答

となる。 (4)ライン型は、本来業務に携わる職員によって安全管理が行われるため、

日常の業務に追われて安全知識や安全情報を自ら身に付けることが難し

く、それぞれのラインの管理・監督者の安全指導能力により格差が生じや

すい。従って、本肢は正しい。 (5)これは当然のことを言っている。ラインの安全管理者が自己の管理範囲

内の職場の安全に関する問題点について知っていなければ、安全管理が成

功するはずがない。従って本肢は正しい。 この問題は、(2)がやや問題の意味が不明なものの、(3)が明らかに誤って

いるのでそれほど難しくはない。ラインとは本来の業務に関する指揮系統の流

れであるから、総務部など専門の部署に置かれるスタッフよりも、指示などは速

やかに徹底しやすい。 ライン型とスタッフ型の意味・特徴や、メリット・デメリットは、毎年、必ず

出題されているので、確実に理解しておきたい。

(2)問 2(試験協会発表正答 4)難易度1 問2「企業の自主的安全活動」や「自主対応型の安全管理」に関する次の記述

のうち、適切でないものはどれか。 (1)日本では、企業の自主的な安全活動を促進することなどを目的として、

労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針が示されている。 (2)日本の職場で実施されているツールボックス・ミーティング、4Sなど

の安全活動は、QC 活動など職場の労働者全員による活動の一環として発

展したもので、我が国の企業文化と結び付いている。 (3)労働災害が減少しない実態を踏まえてまとめられた英国の「ローベンス

報告」では、急速に進展する技術に即応できる安全管理を徹底するため、

法律では一般原則のみを定め、具体的・詳細な規定は自主的な実践コード

やガイダンスに委ねることが適当と提言している。 (4)小集団活動は、労働者が自主的、自発的に実施することが基本であり、

管理監督者の関与は好ましくない。 (5)危険予知活動は、工学的対策等によりリスク低減措置を講じてもなお残

る残留リスクや人間の行動に起因するリスクに対して有効な活動であ

る。

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(1)安衛法第 24 条の4は「厚生労働大臣は、事業場における安全衛生の水準

の向上を図ることを目的として事業者が一連の過程を定めて行う次に掲げ

る自主的活動を促進するため必要な指針を公表することができる」とし、こ

れに基づいて「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」が公表さ

れている。また労働災害防止団体が独自に労働安全衛生マネジメントシス

テムガイドラインを公表している。従って本肢は正しい。 (2)価値判断の問題ではあるが、我が国の労働安全衛生の分野において、ほぼ

正しいと考えられている。従って本肢は正しいとしてよいであろう。 なお、現在 ISO において、労働安全衛生マネジメントシステムの国際規

格(ISO45001)の作成作業が進められており、我が国でもこれに対応して

JIS45001 の作成作業が進んでいるが、これらにはわが国独自の安全活動が

含まれていないため、JIS45001 に上乗せされる規格としてわが国独自の安

全活動等を含んだ JIS の規定(JISαと仮称されている)の策定作業が進ん

でいる。 (3)1972 年にローベンス卿を中心とする委員会が提出したローベンス報告

は19章からなる長大な報告書である。報告書は、余りにも法律が多過ぎ

ること、法律の多くが本質的に不備であることなどの理由から「法律・監

督中心から自主対応への移行及び行政機関の統一」を提言している。従っ

て本肢は正しい。 なお、ローベンス報告を受けて英国では労働安全衛生法(Health and

Safety at Work etc. Act)が策定された。 (4)自主的な活動であっても、それを効果的に進めてゆくためには管理監督者

が適切に関与することが必要である。従って本肢は適切ではない。 (5)職場の安全管理の基本は、本質安全化や工学的対策によるリスクの低減で

あることはいうまでもない。しかしながら、どのような職場であってもリス

クは残ってしまうものである。そのため、労働者の危険に対する感性を高め

て、安全な行動をとれるようにする必要がある。厚生労働省の職場のあんぜ

んサイトには、危険予知訓練とは「作業や職場にひそむ危険性や有害性等の

危険要因を発見し解決する能力を高める手法」とされている。従って本肢は

正しい。 本問は、(4)が明らかに適切ではなく、他の選択肢について検討するまでも

ない。常識問題といってよいだろう。ケアレスミス以外に誤答した受験生はいな

かったのではなかろうか。

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(3)問 3(試験協会発表正答 3)難易度2 問3 ヒヤリハット活動に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。 (1)ヒヤリハット活動は、作業中にヒヤリとしたりハッとしたことなどを報

告させ、それを危険有害情報として活用する取組である。 (2)ヒヤリハット活動をうまく機能させるためには、何を目指すのか、報告・

提案をどういうルートで処理するかなどについて仕組みを明確にする必

要がある。 (3)ヒヤリハット活動では、詳細かつ多数の報告件数を集めることを主眼と

し、集められた報告については中長期的に対策を進めていく。 (4)ヒヤリハット報告があまり出ない場合は、「ひょっとしたらこんな事故

が起こるかもしれない」という想定も報告の対象とする。 (5)ヒヤリハット報告で、設備、環境、手順などの管理に係る課題が発見さ

れた場合は、管理者レベルでの協同作業が必要となることが多い。 (1)厚生労働省の職場のあんぜんサイトには「仕事をしていて、もう少しで怪

我をするところだったということがあります。このヒヤっとした、あるいは

ハッとしたことを取り上げ、災害防止に結びつけることが目的で始まった

のが、ヒヤリハット活動です。仕事にかかわる危険有害要因を把握する方法

の1つとして、効果的です」とある。従って本肢は正しい。 (2)正しい。ヒヤリハット活動に限らず、どのような活動であっても、目標を

どのように定めるのか、手続きをどうするのかを定めるべきことは当然の

ことであろう。 (3)これは、やや迷うかもしれない。しかし、ヒヤリハット報告は労働者から

提出を受けるものであり、「詳細」な報告を求めることは現実的とはいえな

いだろう。また、提出の件数についても、あまりに少なければ問題だが、件

数主義に走って数さえ出せばよいという風潮になると、かえって弊害が出

るものである。また、緊急性のある報告については、中長期的ではなく短期

に解決すべきものもあろう。従って本肢は誤っている。 (4)正しい。最近では想定ヒヤリハットを対象にしている企業も多い。 (5)本問で、迷う可能性のある唯一の選択肢がこれであろう。しかし、管理面

の課題があれば、管理職のレベルでの共同作業が必要になることは当然で

あろう。確かに、「多い」かどうかは主観の問題であって、やや曖昧な表現

ではあるが、「適切でない」とまでは言えない。従って本肢は正しい。

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(4)問 4(試験協会発表正答 1)難易度5 問4 金属材料の損傷などに関する次の記述のうち、適切でないものはどれ

か。 (1)ステンレス鋼など、明瞭な降伏現象を示さない材料では、一般に、2%

の塑性変形を生じる応力を降伏点に代えて用いる。 (2)疲労限度は、繰り返し応力に対する材料強度の指標として重要である。 (3)高温下で、一定温度に保持された金属において、一定荷重を加えたとき

に時間とともにひずみが増加する現象をクリープという。 (4)オーステナイト系ステンレス鋼は、マルテンサイト系ステンレス鋼やフ

ェライト系ステンレス鋼と比べて、一般に耐食性が高い。 (5)普通鋳鉄は、破面が灰色を呈することから一般にねずみ鋳鉄と呼ばれ、

圧縮には強いが引張には弱い。 (1)ステンレス鋼は「明瞭な降伏現象を示さない」とはいえない。また、降伏

点を示さない材料では、0.2%の残留歪が残る状態を“破壊”とすることが

一般的なので、2%とあるのも間違いである。出題者は誤りを2か所に入れ

ておいたらしい。なお、降伏点を示さない金属の例としてはアルミニウムが

ある。 (2)疲労限度(耐久限度)とは、疲労破壊を起こさない(と考えられる)応力

の値のことを言う。機械設計において、繰り返し荷重を受ける部分の検討を

行う際には重要な指標である。従って、本肢は正しい。 なお、疲労限度の存在する材料は限られており、ほとんどの材料では疲労

破壊があり得ることに注意する必要がある。 (3)正しい。本肢はクリープ現象の定義である。通常の応力による変形は時間

によって変形量は増加しないが、クリープ現象では時間とともに変形量が

増加する。 (4)オーステナイト系ステンレス鋼は、マルテンサイト系ステンレス鋼やフェ

ライト系ステンレス鋼と比べて、“一般に”耐食性が高い。従って本肢は「適

切でない」とはいえない。 (5)ねずみ鋳鉄の呼び名は破面が灰色であることに由来している。これは、片

状の黒鉛(グラファイト)を含むため引っ張り強さが小さく展延性にも乏し

い。その一方で、切削加工性がよいにもかかわらず耐摩耗性が優れていると

いう特性を有する。また、引っ張り強さは 150~350MPa 程度なのに対し圧

縮強さは 500~1100MPa 程度である。従って、本肢は正しい。

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(5)問 5(試験協会発表正答 1)難易度4 問5 金属の接合方法に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。 (1)ろう付けは、ろうを「ぬれ」によって母材になじませて接合する方法で、

継手としては、一般に重ね継手ではなく、突合せ継手が使用される。 (2)軟鋼とオーステナイト系ステンレス鋼の突合せ溶接では、溶加材中のク

ロムとニッケルが希釈されることを見込んで、それらの合金元素を母材

ステンレス鋼より多く含む溶加材を用いる。 (3)溶接金属と母材との境界部をボンド部といい、溶接時に急冷されるた

め、硬く、かつ、もろくなる。 (4)鋼の炭素当量は、鋼を溶接したときの熱影響部の最高硬さを予測し、溶

接割れを防止するための予熱又は後熱処理の必要性を判断する指標とな

る。 (5)摩擦撹拌接合は、棒状の接合用工具を高速で回転させながら母材と接触

させ、その際に発生する摩擦熱によって母材接合部を融点よりやや低い

温度まで加熱し、接合用工具の回転及び移動によって母材を互いに流動

させ、温度低下時に接合状態とするものである。 (1)前半の「ろう付けは、ろうを「ぬれ」によって母材になじませて接合する

方法」としているところは正しい。このため、ろう付けでは、母材がほとん

ど溶けないので寸法精度がよいという特性がある。しかし、後半の「一般に

重ね継手ではなく、突合せ継手が使用される」としているところは適切では

ない。ろう付けには重ね継手も普通に用いられている。従って本肢は誤って

いる。 (2)溶接では、溶着金属を母材に溶け込ませるので、溶接材の合金成分が母材

の合金成分より多ければ、溶着金属の合金成分は母材により薄められる。こ

れが“希釈”である。 本肢のような異種金属の溶接では、通常は双方の母材とは異なる組成の

溶接材を用いるので、溶接によって生じる溶接金属は両母材と溶接材が混

合した組成となる。軟鋼とオーステナイト系ステンレス鋼を溶接すると、ス

テンレス側のクロムやニッケルが鋳鉄によって希釈されるため、溶接材に

はステンレスよりもクロムやニッケルが多く含むものを用いる。従って、本

肢は正しい。 (3)JIS Z 3001 によれば、ボンド部とは「溶融部(溶接金属)と母材との境

15

界の部分。境界付近を併せて呼ぶこともある。固相溶接、ろう接のように溶

接金属がない場合には、母材間の境界又は溶加材と母材の境界をいう」とさ

れている。従って、前段は正しい。そして、ボンド部は熱履歴によって、脆

性が低下することがある。従って後段も正しく、本肢は正しい。 (4)鋼を溶接する場合に、各母材の各成分元素による脆性への影響を、炭素の

量に換算して最高硬さを推定する方法がある。各元素による影響をそれぞ

れ炭素量に換算した値の合計が炭素当量(Ceq)である。JIS,WES には次

式による換算方法が規格化されている。 Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/4(%) 従って、本肢は正しい。 (5)正しい。摩擦撹拌接合は本肢の通りの溶接方法である。

(6)問 6(試験協会発表正答 4)難易度3 問6 システムが要素a、b及びcによって下図の信頼性ブロック線図に示

すように直列系及び並列系として構成され、要素a、b及びcが等しい不

信頼性F(1から信頼度を引いた確率値)をもつとき、システムの不信頼

度Fs を示す等式について、適切なものは(1)~(5)のうちどれか。

ただし、1>F>0、また要素の故障は独立に起こり、修理は行わないも

のとする。

(1)直列系では、Fs=1-3(1-F)+2(1-F)2

(2)直列系では、Fs=1-3(1-F)+3(1-F)2-2(1-F)3

(3)並列系では、Fs=1-3(1-F)+3(1-F)2

(4)並列系では、Fs=1-3(1-F)+3(1-F)2-2(1-F)3

(5)並列系では、Fs=1-(1-F)3

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不信頼度をF、信頼度をRとすると、本問の直列系では、 Rs=R3、Fs=1-(1-F)3 となり、並列系では Rs=1-(1-R)3、Fs=F3 となる。すなわち、直列系と並列系では、FとRは対称になるのである。 ところが、選択肢の中にはFs=F3がない。しかし、計算してみると(4)の

右辺がF3となるので、これが正解である。問題の(4)は不信頼度に関する公

式を知らない受験生が、信頼度についての公式から容易に導き出せるようにと

の配慮からこの形にしたのかもしれない。 信頼度に関する問題は毎年出題されているので、以上の公式は確実に記憶し

ておくとよい。なお、今年は、不信頼度を信頼度と思い込んで誤答したという受

験生が多かったようである。問題文は確実に理解するようにしたい。

(7)問 7(試験協会発表正答 4)難易度4 問7 クレーン、移動式クレーン及び玉掛け用具に関する次の記述のうち、適

切でないものはどれか。 (1)天井クレーンでの荷振れ防止運転をするとき、一般に、追いノッチ運転

を行う方が、インチング運転を行うよりも電動機への負荷が小さい。 (2)ホイールクレーンの後方安定度は、アウトリガーを設置しないで荷をつ

らず、主ジブ長さを最小、かつ、主ジブ角度を最大にした状態において評

価する。 (3)つりクランプは、使用荷重について上限及び下限が設定されており、ま

た、ぜい性材料、高硬度材料及び低硬度材料のつり荷に対しては使っては

ならない。 (4)繊維スリングを用いた玉掛け作業において目通しつりをする場合は、で

きるだけ浅絞りになるようにする。 (5)チェーンスリングは、ワイヤロープと比べて耐熱性に優れているが、一

度高温状態で使用した後は、その温度に応じて使用荷重を減じて使用す

る。 (1)追いノッチもインチングも、天井クレーンの荷振れを防ぐための方法であ

る。 追いノッチは、次のように行う。天井クレーンを動かすときには、荷の動

きが慣性で遅れるので、動かし始めた直後に一旦停止し、荷が動き出してク

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レーンの直下にきたタイミングでクレーンを動かすようにする。また、停止

時には停止すべき場所の手前でクレーンをいったん止め、荷が慣性で前方

に触れたタイミングで、荷が振れた位置までクレーンを動かして止める方

法である。 インチングは、クレーンを動かしたり止めたりを細かく繰り返して荷振

れを防止する方法である。モータは起動するときに大きなトルクを必要と

するため大電流が流れ、停止時にはブレーキによる摩擦熱が発生する。イン

チングでは、これを繰り返すので高熱が発生し、モータへの負担が大きくな

る。 なお、クレーンの運転業務に関する技能講習でも、不必要なインチングは

しないように指導している(実技試験では減点の対象になる)。 従って、本肢は正しい。 (2)移動式クレーン構造規格第 13 条第3項に、「後方安定度は、移動式クレ

ーンが次の状態にあるものとして計算するものとする」とし、以下の状態が

示されている。そして、「主ジブ長さを最小、かつ、主ジブ角度を最大にし

た状態」にすると、主ジブの重心が最も後方にくるので、移動式クレーンの

後方安定に関しては最も不利な状態である。従って、本肢は正しい。 なお、本肢は同項第4号の但し書きに触れていないので、やや微妙ではあ

る(誤りとする余地もあろう)が、(4)が明らかに誤っているので本肢は

正しいと考える。

【移動式クレーン構造規格】 (後方安定度) 第十三条 (1及び2略) 3 前二項に規定する後方安定度は、移動式クレーンが次の状態にあるも

のとして計算するものとする。 一 後方安定度に影響がある質量は、移動式クレーンの後方安定に関

し最も不利となる状態にあること。 二 荷をつっていない状態にあること。 三 水平かつ堅固な面の上にあること。 四 アウトリガーを有する移動式クレーンにあっては、当該アウトリ

ガーを使用しない状態にあること。ただし、自動的にアウトリガーの

張出幅を検出して、後方安定度を確保することができるよう旋回角度

又はジブの傾斜角を制限する安全装置を備えている移動式クレーン

にあっては、当該アウトリガーを使用した状態とすることができる。 五 拡幅式のクローラを有するクローラクレーンにあっては、(以下

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略) (3)つりクランプは、荷が重すぎても軽すぎても荷が外れるおそれがある。ま

た、荷が極端に硬いとクランプが滑りやすく、一方、脆性が弱い荷では荷の

表面が破壊されて荷が落下する危険がある。従って本肢は正しい。 なお、つりクランプの作業については、日本クレーン協会から「玉掛け用

クランプの作業マニュアル」(JCAS9061-95)が公表されている。 (4)繊維スリングは、浅絞りにした方がスリングに力はかからないが、すべり

やすいため荷が外れるおそれがあるので、一般には深絞りをする。玉掛の技

能講習でも、そのように指導している。従って本肢は正しい。 なお、ワイヤロープでシャックルを用いて、単体の荷の玉掛けをする場合

は、ワイヤロープが変形することがあるので、ワイヤロープのメーカーはあ

だ巻きにして浅絞りとすることを推奨している。もっとも、円柱形の荷をつ

るときに、同一方向にワイヤロープを巻いてシャックルを用いて2点づり

をする場合は、つっているときに深絞りになってしまうので、最初から深絞

りにした方がよい。 (5)チェーンスリングの場合は、高温で使用すると焼き戻しが行われたように

なるので、その後は使用荷重を減じて用いる。従って本肢は正しい。 この設問は、クレーンや玉掛の業務にかかわっていないと難しかったのでは

ないかと思う。なお、これらはいずれもクレーン協会の WEB サイトで解説され

ている。クレーンの問題は、毎年出題されるので、安全コンサルタント試験を受

験するときは、クレーン協会のWEBサイトに目を通しておいた方がよさそう

だ。

(8)問 8(試験協会発表正答 5)難易度2 問8 ロールボックスパレット(カゴ車)の取扱いに関する次のイ~ホの記述

について、適切でないもののみの組合せは(1)~(5)のうちどれか。 イ 足を荷物の落下などから防護するため、安全靴やプロティクティ

ブスニーカーを着用して作業した。 ロ ロールボックスパレットの転倒を防止するため、荷を積むときに、

重いものを下に積んだ。 ハ ロールボックスパレットが倒れそうになったときに、転倒する方

向から支えた。

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ニ ロールボックスパレットを押して移動した。 ホ 積荷が底面より若干大きくサイドバーを掛けられないので、サイ

ドバーを掛けないで移動した。 (1)イ ハ (2)イ ニ (3)ロ ニ (4)ロ ホ (5)ハ ホ

イ 厚生労働省の「ロールボックスパレット使用時の労働災害防止マニュア

ル」によれば、作業靴は安全靴かプロティクティブスニーカーを着用するこ

ととされている。製造業の工場の感覚では、プロティクティブスニーカーで

よいとしているところはやや気になるが、商業や陸上貨物運送業のロール

ボックスパレット(カゴ車)の取扱いの作業であれば安全靴を使用しなくて

も問題はないであろう。従って正しいといってよい。 ロ 同マニュアルによれば、安全のため、重いものは下部に、軽いものは上部

に積載することとされている。重心を下の方にすると安定性がよくなるか

らである。従って正しい。 ハ 荷が倒れそうになったときは逃げるべきで、作業者が支えるようなこと

は避けるべきだろうし、まして転倒する方向から支えるようなことをすれ

ば危険である。前出のマニュアルにも「倒れる方向には絶対に入らないよう

に」とされている。従って誤っている。 ニ 前出のマニュアルには、ロールボックスパレットの異動の方法として「押

し」「引き」「横押し」の3通りが記載されている。従って正しい。 なお、台車については押すものであって引くものではないので、引いて移

動してはならない。このため、迷うかもしれないが、ニが分からなくても組

合せ問題なので正答に達することはできる。 ホ サイドバーを掛けずに移動するようなことはしてはいけない。従って誤

っている。 以上のことからハとホが適切ではなく、(5)が正答となる。

(9)問 9(試験協会発表正答 3)難易度2 問9 ヒューマンエラーの対策などに関する次の記述のうち、適切でないも

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のはどれか。 (1)ヒューマンエラーの発生確率を下げる対策として、計器表示方法をデジ

タル表示からアナログ表示にして、連続的な変化の傾向と程度を一目で

分かるようにすることがある。 (2)ヒューマンエラーの発生確率を下げる対策として、照明、空調等の作業

環境の改善、作業方法の改善などにより作業をやりやすくすることがあ

る。 (3)機器やシステムの一部に故障が起きても、安全側に作動し、システム全

体に影響が出ないようなシステム設計をフール・プルーフといい、それを

システム設計に導入することが、ヒューマンエラーによる事故低減につ

ながる。 (4)使用する機器に複数のデザイン方式が混在するとヒューマンエラーが

生じやすいので、デザイン方式を標準化することはヒューマンエラーを

防止するために重要である。 (5)人間の意識レベルを、フェーズ0(無意識)、フェーズⅠ(意識ぼけ)、フ

ェーズⅡ(普通)、フェーズⅢ(積極的活動)及びフェーズⅣ(過緊張)の5段

階に分けているモデルでは、人間が最もエラーを起こしにくいのはフェ

ーズⅢのときである。 (1)計器のデジタルとアナログのメリット、デメリットを挙げるとき、デジタ

ルは正確に読み取れるが「連続的な変化の傾向と程度」を感覚的に理解する

には適していない。これは、村田厚生「ヒューマンエラーの科学 失敗とう

まく付き合う方法」(日刊工業新聞社)の次表に分かりやすくまとめられて

いる。これによると、デジタル計器とアナログ計器では以下のような特性が

あるとされている。これによると「連続的な変化の傾向と程度」を読み取る

にはアナログ表示の方がよいことが分かる。従って正しい。

特 徴 アナログ表示 デジタル表示 読みやすさ △ ◎

変化の検出しやすさ ◎ ×

調節しやすさ ◎ △

村田厚生「ヒューマンエラーの科学 失敗とうまく付き合う方法」(日刊工業新聞社)

(2)照明、空調等の作業環境の改善、作業方法の改善などにより作業をやりや

すくすることにより、ヒューマンエラーは減少することができるとされて

いる。従って正しい。

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(3)本肢はフェールセーフについての記述である。フール・プルーフに関する

ものではない。従って誤っている。 以下の表をざっと理解しておくとよい。 [参考]

フェールセーフ 故障が安全側に起きるようにすること。 例:安全装置故障時に、起動できないようにする。信号

の故障(固定)時には、赤に固定する(青にしない)。

フェールソフト 事故の際に、より被害の少ない方を破壊すること。 例:自動車のボンネットを弱くし、衝突時に乗員を守る。

フェールオーバー ※

システムに冗長性を持たせて、部分的な故障が影響を及

ぼさないようにすること。 例:多重化(航空機の燃料計。電力供給網。HDD の RAID)

フールプルーフ 人間の誤判断、誤操作等が悪影響を発生させないように

すること。 例:航空機の自動操縦(誤操作では失速しない(はず)。)

※ 多重化による信頼性向上をフォールトトレランスと呼び、フェール

オーバーと区別する考え方もある。 (4)一般には、複数のデザインが混在しているとヒューマンエラーの原因と

なる。例えば、バルブなどでもどちらに回せば開くかを統一しておく方が

誤りは少なくなる。電車の信号のデザインなども各社で統一することが望

ましい。従って本肢は適切といえる。 しかしながら、同じようなスイッチがあると、逆に誤操作の原因になるこ

ともある。航空機では、ギア(着陸装置)とフラップ(翼の揚力を上げるた

めの装置)のスイッチが、同じ形で同じ場所にあったため、誤操作をする例

があった。そこで、フラップスイッチは翼の形、ギアスイッチはタイヤの形

にしている。デザインをあえて変更した例である。 (5)正しい、人間の緊張のレベルは高すぎても低すぎてもエラーを起こしや

すいとされており、意識レベルを5段階に分ける本肢のモデルでは、フェ

ーズⅢのときが最もエラーを起こしにくいとされている。 本問は(3)以外の問が、常識で考えて正しいと判る。また、(3)もよく知

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られていることなので、ほとんどの受験生が正答に達したのではなかろうか。

(10)問10(試験協会発表正答 2)難易度5 問 10 機械の誤操作による危害を防止するため、手動操作の制御機器として

の押し釦に関する次の文中の A ~ D に入る色として、適切なも

のの組合せは(1)~(5)のどれか。 「機械の起動(オン)ボタンの色は、 A が最も良く、 A を用いて

はならない。また、停止(オフ)ボタンの色は、 C が最も良く、 D を

用いてはならない。」 A B C D (1)黒 白 緑 赤 (2)白 赤 黒 緑 (3)赤 緑 白 黒 (4)白 赤 緑 黒 (5)赤 黒 白 緑

これは、JIS B 9960-1:2008 に関する問題である。押し釦の色について、次

のように規定されている。従って正答は(2)となる。 起動(オン)用アクチュエータの色は,白,灰,黒,又は緑が望ましく,白

が一番よい。赤を起動に用いてはならない。 非常停止及び非常スイッチングオフ用アクチュエータには,赤を用いなけ

ればならない。 停止(オフ)用アクチュエータの色は,黒,灰,白が望ましく,黒が一番よ

い。緑を停止に用いてはならない。赤は停止に用いてもよいが,非常用操作機

器の近くでは用いないことを推奨する。 ただ、現場では“起動”スイッチには黒、“停止”は非常であると通常の停止

であるとを問わず赤、“戻し”には黄が使われていることが多く、機械の専門家

以外には難しかったかもしれない。 なお、IEC60204-1 にも同様な規定があり、日本機械工業連合会のサイトにあ

る岡田氏のパワポ資料でも同様に解説されている。このパワポ資料は分かりや

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すく、参考になると思う。受験の前に目を通しておかれるとよいと思う。

(11)問11(試験協会発表正答 3)難易度1 問 11 安全点検などに関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。 (1)職場巡視は、労働災害の原因となる機械設備などの不安全状態を防止す

るための物的な改善のみならず、労働者の作業方法などの不安全行動を

防止するための人的な改善においても有効である。 (2)機械設備は使用時間の経過とともに腐食・摩耗などの損耗を起こすこと

から、安全点検を行う時期は、点検の対象、作業内容、安全面からみた緊

要度などに応じ、あらかじめ設定しておく。 (3)安全点検は、生産性向上の見地から、機械設備などの故障を排除するこ

とを目的として行われる。 (4)安全点検の実施に当たって、一つの設備で不安全な状態が発見された場

合には、他の同種の設備にも同様の状態がないかをチェックする。 (5)安全点検の結果について、整理・検討し、事故・災害の可能性及び発生

した場合の被害の程度、損失などを勘案し、緊急性のあるものから措置を

行う。 (1)職場巡視の目的のひとつには、本肢に示された事項がある。なお、2011 年

3月の厚生労働省のパンフレット「製造事業者向け 安全衛生管理のポイン

ト」にも、安全管理者の業務内容の一つとして、「作業場所を巡視し、設備、

作業場所・方法に危険がある場合の措置の実施」が挙げられている。従って

本肢は正しい。 (2)機械設備の点検は、法的に定められていることを確実に実施することはも

ちろん、自主的な安全点検を行う時期は、点検の対象、作業内容、安全面か

ら、みた緊要度などに応じ、あらかじめ設定しておくべきである。従って本

肢は正しい。 (3)安全点検の直接の目的は、安全の観点によるべきであろう。間接的に、生

産性向上に寄与するにしても、生産性向上の見地から行われるとすること

は適切とはいえない。本肢は誤っていると言えよう。 (4)一つの設備で不安全な状態が発見された場合、他の同種の設備にも同様

の状態がある可能性があるので、それらをチェックする必要がある。本肢

は正しい。 (5)本肢の指摘は、リスクアセスメントの考え方である。不適切とは言えな

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い。本肢は正しい。 本問は、労働安全の基本的な考え方を問うものである。おそらく、ケアレスミ

スの場合を除き、誤答した受験生はいないのではなかろうか。

(12)問12(試験協会発表正答 1)難易度1 問 12 職場における安全衛生教育に関する次の記述のうち、適切でないもの

はどれか。 (1)事業場単位で労働災害が以前と比べ少なくなっていることから、労働災

害事例を含めない教材づくりが望ましい。 (2)OJT は、職場で実践的な教育を実施することから、新規採用者に有効

であるのみならず、機械設備の変更、作業手順の変更などがあった場合に

も有効である。 (3)集合教育では、特定の階層や部門に必要な共通知識や技能について教え

られるが、受講者の理解度が異なることがあることから、教育効果を確認

し、フォローアップのための教育を実施することが有効である。 (4)厚生労働省では、労働安全衛生法に基づく雇入れ時教育、職長等教育、

危険有害業務従事者に対する教育などの法定の教育のみならず、経営ト

ップなどに対する法定外の教育についても体系化し、安全衛生教育等推

進要綱として示している。 (5)教育効果は、職場巡視や職場の管理監督者との対話などによっても把握

できる。 (1)労働災害事例は、受講者に対して教育の内容について現実のものとして理

解させるためにも含めるべきである。従って本肢は適切でない。 (2)OJT は「職場で実践的な教育を実施する」としていることは正しい。ま

た、新規採用者に対する教育や、機械設備の変更、作業手順の変更などがあ

った場合の教育は、適切に行えば OJT でも Off-JT でも有効であろう。従

って適切ではないとは言えない。 本問も(1)が明らかに適切ではないので、他の肢についてはあまり検討

した受験者はいなかったのではないかと思う。(2)はやや出題意図が不明

であるが、適切でないとまでは言えないであろう。 (3)本肢で言われていることは、集合教育であろうとなかろうと、教育一般に

ついて当てはまることである。その意味では特に誤ってはいない。従って、

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不適切とは言えない。 なお、本肢について、集合教育と個別教育(あるいは OJT)とのメリッ

ト・デメリットはなんだったかなどと考えても意味はない。「特定の階層や

部門に必要な共通知識や技能について教えるためには、集合教育が適して

いる」というのであればともかく、本肢の文章は教育一般について誤りにな

るわけがない。「特定の階層や部門に必要な共通知識や技能」を伝えるため

に“適していない教育”はあるかもしれないが、教えることができない教育

などあるわけがなかろう。 また、「受講者の理解度が異なることがあることから、教育効果を確認し、

フォローアップのための教育を実施することが有効」というのも、どのよう

な教育についても当てはまる。 (4)安全衛生教育等推進要綱においては、教育等の対象者を「作業者、安全衛

生に係る管理者、経営トップ等、安全衛生専門家、技術者等とし、それぞれ

次に掲げるものとする」とし、経営トップ等としては事業者の他、総括安全

衛生管理者などを列挙している。従って、正しい。 なお、安全衛生教育等推進要綱は、最近では平成 28 年 10 月 12 日基発

1012 第 1 号「安全衛生教育及び研修の推進について」によって最新版が示

されている。 (5)これも誤っているわけがない。適切に行えばできるであろうし、適切に行

えばできないというだけのことである。 本問は(2)(3)及び(5)の選択肢が、出題意図の把握しにくい設問であ

った。いずれも、教育者や調査者に必要な知識と能力があり、適切に行えばでき

るが、そうでなければできないというだけのことである。(1)が明らかに適切

ではないので、出題者のサービス問題(?)かもしれない。

(13)問13(試験協会発表正答 3)難易度1 問 13 非定常作業に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。 (1)生産設備の保守やトラブル処理を実施するため、生産設備を臨時に、一

時的に又は一定期間停止して行われる作業は、非定常作業に分類される。 (2)非定常作業における作業手順書が守られない場合には、関係の生産設

備、作業環境などを含めて改善策を検討する。 (3)あらかじめ定めた非定常作業の手順に従い実施していく中で、当初定め

た作業手順と異なる状況が発生した場合には、作業者の判断で作業手順

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を見直し、作業を続ける。 (4)製造業で一の場所で複数の関係請負人が非定常作業を実施する場合に

は、関係者と調整の上、作成した作業計画に基づいて進捗状況を確認する

とともに、ツールボックス・ミーティングを行い、日々の作業内容につい

て徹底する。 (5)定期点検などの非定常作業においては、通常行う作業と同様に潜在的な

危険有害要因があることから、リスクアセスメントを実施し、対策を決定

する。 (1)厚生労働省の職場のあんぜんサイトにある安全衛生キーワードによる

と、「非定常作業」とは「保守作業、トラブル対処など、通常の作業と異

なる作業をい」うとされている。日常、頻繁に行われるような保守作業ま

で非定常作業と呼ぶかどうかは異論があるかもしれないが、本肢は適切で

ないとまでは言えないだろう。 (2)非定常作業に限らず、作業手順書が守られない場合には、たんにそれを

守るように徹底するだけでなく、なぜそれが守られないかを考えなければ

ならない。それは、仕事のしやすさ、ミスの起こしやすさなどを、設備や

環境の人間工学的な観点からの見直す必要がある。従って、本肢は適切で

はないとは言えない。 (3)当初定めた状況と異なる状況が発生した場合には、作業者は自己判断で

対処するのではなく、責任者に相談して指示を仰ぐべきである。従って本

肢は適切ではない。 (4)一の場所で複数の関係請負人が非定常作業を実施する場合には、関係者

間の調整が必要となる。日常的な調整を図るためには、作業計画に基づい

て進捗状況を確認することも必要であろうし、ツールボックス・ミーティ

ング等の方法により、日々の作業内容について徹底することも重要であろ

う。本肢も適切ではないとは言えない。 (5)厚生労働省が公表している「危険性又は有害性等の調査等に関する指

針」においては、情報の入手について「非定常作業に係る資料等も含め

る」とされているなど、非定常作業においてもリスクアセスメントを実施

することとされていると考えられる。従って、本肢も適切ではないとは言

えない。

27

(14)問14(試験協会発表正答 3)難易度4 問 14 図1のように均質で長さ方向に一様な断面を有する長さLの単純梁

が、梁の中央に力Pを受けるときに梁に生じる曲げたわみについて、梁の

材質が同じで、断面形状・寸法が2に示す2種類AとBの場合の最大たわ

みをそれぞれδA、δBとするとき、その比(δA/δB)は、(1)~(5)

のうちどれか。 ただし、梁のたわみは梁の中央で最大となり、梁の自重を無視するとき

の最大たわみδは、次式で表されるものとする。

δ= PL3 E:梁材の縦弾性係数 48EI I:梁断面の中立軸に関する断面二次モーメント

(1)1/3

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(2)1/6 (3)1/9 (4)1/12 (5)1/15

δ=PL3/48EI であり、断面Aの梁でも断面Bの梁でもP、L、Eは同じであるから、結局のと

ころδの比は、1/Iだけの比になる。 一方、断面が長方形の梁の幅をb、高さをhとすると、 I=bh3/12 である(これは覚えておく必要があるが、長方形の場合は、梁の断面係数(Z)

がbh2/6となり、Zにh/2を乗ずればIになると覚えておいてもよい)か

ら、 断面Aの場合 I=a×(3a)3/12=27a4/12 断面Bの場合 I=3a×a3/12=3a4/12 なので、δの比は1:9となる。 従って正答は(3)になる。

(15)問15(試験協会発表正答 2)難易度3 問 15 機械設備に関する各種試験方法についての次の記述のうち、適切でな

いものはどれか。 (1)圧力容器の水圧試験において、寒冷時では、ぜい性破壊を起こさないよ

うに、必要な場合には温水を用いる。 (2)溶接部の外観試験は、ビード形状やアークストライク跡の確認には有効

であるが、アンダーカットやオーバーラップの確認はできない。 (3)磁粉探傷試験は、一般には、その表面欠陥検出性能が浸透探傷試験より

優れているが、オーステナイト系ステンレス鋼及びアルミニウム合金な

どには適用できない。 (4)溶接部の磁粉探傷試験において、磁粉模様が疑似模様であるのか、欠陥

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に起因する模様であるのか確認する必要がある場合に、表面が荒れた状

態のときは、磁粉除去後、更に磁粉模様の現れた箇所を軽くグラインダー

がけして再試験を行う。 (5)オーステナイト系ステンレス鋼溶接部の超音波探傷試験では、粗大な柱

状晶組織により散乱した超音波が林状エコーとなり、S/N 比の低下が生

じる。 (1)確かに極端な寒冷地で0度に近い冷水を入れると脆性破壊を起こす可能

性がないとは言えないので温水を使うことが多い。従って、適切でないとは

言えない。 (2)溶接部のアンダーカットとは溶接部に溶接金属がみぞとなっているもの

で、オーバーラップとは溶接部の溶接金属が切り欠きになっているもので

ある。これらは、いずれも外観検査で確認ができる。従って、本肢は適切で

はない。 なお、アークストライクとは「母材の上に、瞬間的にアークを飛ばし直ち

に切ること。又は、それによって起こる欠陥」のことで、ビードとは溶接に

よって金属が溶融した部分のことである。従って、アークストライクもビー

ド形状も外観検査によって確認できることは言うまでもない。 (3)磁粉探傷試験とは、強磁性体の試験体を磁界内に置き、着色した磁粉や蛍

光磁粉の混入した検査液をかけると、試験片の欠陥の周囲で粉体が磁界に

沿った模様を描くので、その模様を観察することによって、試験体の欠陥を

見つけようとする、欠陥の試験方法である。 一方、浸透探傷試験とは、カラーチェックとも呼ばれ、試験体に赤色など

の浸透液を塗布し、一定時間後に表面の浸透液をふき取るとクラックなど

の内部にしみ込んだ浸透液のみが残ることになる。ここに白色などの現像

液を塗布すると、浸透液が現象液にしみ込んで赤色の液体が、白色の現像液

に赤色のシミとなって表れるので、クラックなどの傷を見つけることがで

きるというものである。 一般に、磁粉探傷試験は、浸透探傷試験よりも欠陥の検出能力は優れてお

り、また表面付近に発生した欠陥も判別できる。しかし、本質的に非磁性体

の試験体には使えない。従ってオーステナイト系ステンレス鋼及びアルミ

ニウム合金など非磁性体には使用できない。従って、本肢は正しい。 (4)磁粉探傷試験における疑似模様は、欠陥以外の理由で試験体の表面に磁束

が漏れることによって生じる。その原因としては、電極付近に生じるものを

別とすれば、断面形状の急変、表面の凹凸、結晶粒界の組織変化、溶接ボン

ド部における溶接材と母材の透磁率の差などによって生じる。磁粉が疑似

30

模様なのか欠陥によるものかを見極めるには、断面の急変や表面の凹凸を

観察したり、軽くグラインダーがけをして再試験したりする方法などがあ

る。従って、本肢は正しい。 (5)オーステナイト系ステンレス鋼を溶接すると、凝固する際に結晶粒が一定

方向に成長して、粗大な柱状晶組織となる。このため超音波の減衰率が大き

くなり、さらに柱状晶組織で散乱した超音波がエコーとなるため SN 比が

悪くなる。従って、本肢は正しい。

(16)問16(試験協会発表正答 3)難易度5 問 16 保護具などに関する各種試験方法についての次の記述のうち、適切で

ないものはどれか。 (1)保護帽の衝撃試験においては、衝撃を受ける装置の基礎は、剛性が高い

ことが必要である。 (2)保護帽の衝撃試験は、温度によってプラスチックの物理特性が大きく変

化するので、保護帽を高温状態又は低温状態に一定時間おいた後に行う。 (3)製造時の安全帯については、U字つり状態でのみ使用する構造のものを

除いて、胴ベルトの耐衝撃性能を検査するため、引張試験を行う。 (4)経年使用した電気用ゴム手袋では、絶縁性能を検査するため、電圧をか

ける耐電圧試験を行う。 (5)製造時の安全ネットについては、網糸の強度を検査するため、網糸の試

験片に対して等速引張試験を行って引張強さを調べる。 (1)保護帽について“衝撃試験”という用語はあまり用いられない。本肢にい

う衝撃試験とは衝撃吸収試験のことだと思われる。そうだとすれば、JIS T 8131:2015 には、「ヘルメットを人頭模型に装着し、人頭模型へ伝達され

る衝撃力及びその時間経過を測定する」とされており、衝撃吸収試験の「装

置の基礎は、打撃の影響に耐えられるもので、一体となった十分に大きなも

のでなければならない」とされている。はっきりしないが、不適切とまでは

言えないのではないかと思われる。 (2)保護帽の規格(昭和 50 年9月8日労働省告示第 66 号:最終改定平成 12

年 12 月 25 日労働省告示 120 号)の第8条に「衝撃吸収性能等」の規定が

あり、第1項に「保護帽は、次の表の上欄に掲げる区分に応じ、同表の中欄

に定める試験方法による試験を行つた場合に、それぞれ同表の下欄に定め

る性能を有するものでなければならない」とされ、表中の試験方法欄に次の

31

規定がある。 従って、本肢は正しい 【物体の飛来又は落下による危険を防止するための保護帽】 一 保護帽について、高温処理、低温処理又は浸せき処理(以下この表におい

て「高温処理等」という。)をした後、それぞれ、当該保護帽のヘッドバン

ドが人頭模型に密着しない状態で装着し、(以下略) 【墜落による危険を防止するための保護帽】 一 保護帽について、高温処理等をした後、それぞれ、(以下略)

(3)「安全帯」は JIS 及び構造規格が改正され、「墜落制止用器具」と名称が変

更されてU字つり状態で使用する構造のものは除かれている。 このコンサルタント試験が行われた当時の JIS T 8165:2012 は、「8.3 衝

撃吸収性試験及び関連性能」として落下試験を行うものとしている。また、

安全帯の規格(昭和 50 年9月8日労働省告示第 67 号:最終改定平成 14 年

2月 25 日厚生労働省告示第 38 号)第7条(耐衝撃性等)に規定されてい

るのも、「引張試験」ではなく「落下試験」である。 すなわち胴ベルトの耐衝撃性能を検査するために行うのは落下試験であ

って、引張試験ではない。従って、本肢は誤りとなる。 なお、JIS T 8165:2012 は、「8.1.2 ベルトの強さ試験」については「試

験片の全幅をチャック又はその他の方法でつかみ,標点間距離を

200±20mm として引張試験機によって力を加える」とする。 【安全帯の規格】 (耐衝撃性等) 第七条 安全帯(U字つり状態でのみ使用する構造の安全帯を除く。次項及び

第3項において同じ。)は、落下試験(安全帯を取付設備等に取り付けた状

態と同様の状態にし、かつ、質量が 85kg のトルソー(胴ベルト型安全帯の

落下試験にあっては、トルソー又は砂のう。以下この項において同じ。)に

安全帯を装着して、当該トルソーを当該安全帯のランヤードの最大の長さ

に相当する距離から自由落下させる試験をいう。以下この条において同

じ。)を行った場合にトルソーを保持するもので、かつ、グリップ、フック

又はカラビナに掛かる衝撃荷重が 8.0kN 以下のものでなければならない。 なお、やや曖昧な表現ではあるが、本肢の文頭の「製造時の」を製造時に

32

すべて安全帯の胴ベルトの検査を行うという意味だと解すれば、安全帯に

ついて全数の耐衝撃試験を行うわけがないので、これによっても誤りだと

いうことになる。耐衝撃試験を行えば、使い物にならなくなるからだ。しか

し、2016 年の安全コンサルタント試験の問 16 の(3)は「製造時の安全帯

のベルトについて、引張試験を行い、強度を調べる」となっており、正しい

肢であるとされている。従って、そういうことではないようだ。 (4)安衛則第 351 条は「事業者は、第 348 条第1項各号に掲げる絶縁用保護

具等(同項第5号に掲げるものにあっては、交流で 300V を超える低圧の充

電電路に対して用いられるものに限る。以下この条において同じ。)につい

ては、6月以内ごとに1回、定期に、その絶縁性能について自主検査を行わ

なければならない。ただし、6月を超える期間使用しない絶縁用保護具等の

当該使用しない期間においては、この限りでない」とされている。そして、

「安衛則第 348 条第1項各号に掲げる絶縁用保護具等」には絶縁用保護具

が含まれている(同 348 条第1項第1号/同 341 条第1項第1号)。 この絶縁性能の試験は、昭和 50 年7月 21 日基発第 415 号「労働安全衛

生規則等の一部を改正する省令の施行について」の記の1の七に「本条の絶

縁性能についての定期自主検査を行う場合の耐電圧試験は、絶縁用保護具

等の規格(昭和 47 年労働省告示第 144 号)に定める方法によること」とあ

る。 そして、絶縁用保護具の規格(昭和 47 年 12 月4日労働省告示第 144 号:

改定昭和 50 年3月 29 日労働省告示第 33 号)の耐電圧試験は、電圧をかけ

る耐電圧試験が定められている。 従って、本肢は正しい。しかし、上記の昭和 50 年通達は、厚生労働省の

サイトには公表されておらず、電気分野以外の受験生は、かなり迷ったので

はないかと思う。 (5)墜落による危険を防止するためのネットの構造等の安全基準に関する技

術上の指針(昭 51.8.6 技術上の指針公示第 8 号)の3-1(1)には、

「網糸は、試験用糸から切り取った試験片の両端を引張試験機のチャック

でつかむ方法又はこれに類似した方法で等速引張試験を行った場合におい

て、その引張強さが、次の表の左欄に掲げる網目の種類に応じ、それぞれ

同表の右欄に定める値以上であること」とされている。従って本肢は正し

い。

33

(17)問17(試験協会発表正答 5)難易度5 問 17 厚生労働省の「プレス機械の安全装置管理指針」に示された光線式安

全装置の適正な使用に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。 (1)側面や後面の安全囲いの設置状態を確認する。 (2)プレス機械を起動させ、光線を光軸ごとに遮断したとき、スライドが停

止することを確認し、連続遮光幅については、遮光棒を使用して作動状態

を確認する。 (3)作業内容、作業姿勢等により最上光軸の上又は最下光軸の下から身体の

一部が危険限界に入らないように投光器、受光器を調整する。 (4)スライドの開き行程の作動中に光線を遮断してもスライドが急停止し

ない機能を使用する場合には、スライドの閉じ行程の作動中には安全装

置が有効に作動し、開き行程のときのみ無効であることを確認する。 (5)材料を手で保持するときなどに、光線による検出を部分的に無効とする

ブランキングを行う場合、キースイッチを使用し、必要最小限の部分に対

して行い、銘板に表示されているストローク長さに応じた追加距離を加

算した安全距離を確保する。 「プレス機械の安全装置管理指針」(平成 27 年 9 月 30 日基発 0930 第 11 号)

の「第4 安全装置の適正な使用」の「3 光線式(制御機能付き光線式を含

む。)」は次のように定められている。 【プレス機械の安全装置管理指針】 第4 安全装置の適正な使用 3 光線式(制御機能付き光線式を含む。) (1)プレス機械の最大停止時間に応じて安全距離を確保する。(平成 23

年度以降の検定合格品の場合は、連続遮光幅に応じた追加距離を加算

する。)。 (2)プレス機械を起動させ、光線を光軸ごとに遮断したとき、スライド

が停止することを確認する。また、連続遮光幅については、遮光棒を

使用して作動状態を確認する。 (3)有効・無効の切替えスイッチの状態を確認する。 (4)スライドの開き行程の作動中に光線を遮断してもスライドが急停止

しない機能を使用する場合には、スライドの閉じ行程の作動中には安

全装置が有効に作動し、開き行程のときのみ無効であることを確認す

34

る。 (5)作業内容、作業姿勢等により最上光軸の上又は最下光軸の下から身

体の一部が危険限界に入らないように投光器、受光器を調整する。 (6)チェック回路の作動状況を確認する。 (7)チェックボタンのある場合は、チェック回路の作動状態を確認す

る。 (8)ブランキングを行う場合、キースイッチを使用し、必要最小限の部

分に対して行うこと。また、銘板に指定されている連続遮光幅に応じ

た追加距離を確保すること。 (9)制御機能付き光線式の場合、セットアップタイマーが 30 秒で作動

し PSDI モードがオフになること。 (10)制御機能付き光線式の場合、設定された遮光回数(1ブレイク、2

ブレイク)によりプレスが起動することを確認する。 (11)側面や後面の安全囲いの設置状態を確認する。

(1)上記(11)により正しい。 (2)上記(2)により正しい。 (3)上記(5)により正しい。 (4)上記(4)により正しい。 (5)上記(8)にブランキングに関する記述があるが、「名盤に表示されてい

るストローク長さに応じた追加距離を加算した安全距離を確保する」が誤

りで、正しくは「銘板に指定されている連続遮光幅に応じた追加距離を確保

する」である。また、ストローク長さは、上死点から下死点までの距離(上

型の移動する距離)のことであり、これが長いか短いかは、安全距離とは無

関係である。従って誤っている。 なお、連続遮光幅とは、平成 23 年 2 月 18 日基発 0218 第3号「動力プ

レス機械構造規格の一部を改正する件及びプレス機械又はシャーの安全装

置構造規格の一部を改正する件の適用について」によれば、「検出機構の検

出能力を表すものであり、例えば、連続遮光幅を 30 ミリメートルとした場

合は、30 ミリメートル以下の円柱形状の試験片を検出面内にどのような角

度で入れても検出機構が検出できるものであること」とされ、「安全距離に

ついては、連続遮光幅に応じて必要な追加距離を加算しなければならない

こと」とされている。

35

(18)問18(試験協会発表正答 3)難易度3 問 18 保護具に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。 (1)突起物を踏むような危険性のある作業では、耐踏抜き性のある安全靴を

使用する。 (2)段差のある床を昇降する作業では、かかと部に衝撃エネルギー吸収性の

ある安全靴を使用する。 (3)有機溶剤を取り扱う作業現場で使用する保護帽としては、PC 樹脂(ポ

リカーボネート)製のものを選定する。 (4)粉体を取り扱う作業で使用する保護めがねとしては、ゴグル形のものを

選定する。 (5)天然ゴム製のゴム手袋は、柔軟性や耐摩耗性があり、引き裂きに強く、

寒冷地において硬くなりにくい。 (1)本肢は出題意図が分かりにくいが、「突起物を踏むような危険性のある作

業では、耐踏抜き性のある安全靴を使用する」ことそれ自体が不適切なはず

はないだろう。本肢は適切ではないとは言えない。 なお、耐踏抜き性のある安全靴を使用していたとしても、突起物がある恐

れのある場所へ飛び降りるようなことはするべきではない。 (2)日本安全靴工業会は「安全靴のまめ知識」において、「長時間の立作業又

は歩行作業がある場合」は「かかと部の衝撃エネルギー吸収性は疲労防止に

も有効である」としている。従って、本肢は適切ではないとは言えない。 なお、JIS T 8101:2006 は、「かかと部の衝撃エネルギー吸収性 かかと

部の衝撃エネルギー吸収性ある安全靴では,9.6 によって試験したとき,吸

収エネルギーは 20 J 以上でなければならない」としている。 (3)保護帽の材質には、熱硬化性樹脂製の FRP、熱可塑性樹脂製の ABS、PC、

PE の4つがあるが、PC 樹脂製(ポリカーボネイト)のものは耐有機溶剤

性がない。これらについて、日本ヘルメット工業会の「保護帽の取り扱いマ

ニュアル」に分かりやすい一覧表になった資料がある。この中で、PC 樹脂

製保護帽の耐有機溶剤性は「×~△」となっている。従って、本肢は適切で

はない。

36

(一社)日本ヘルメット工業会「保護帽の取扱いマニュアル」(2012 年6月)より

材質 耐燃・

耐熱性 耐候性

耐電圧

性能 耐溶剤

薬品性 備 考

熱硬

化性 FRP 樹脂製 ◎ ◎ × ○~◎

耐候性、耐熱性には優れるが電

気用帽子としては使用できない

熱可

塑性

ABS 樹脂製 △~〇 △~〇 ○~◎ ×~△ 耐電圧性能には優れるが、高熱

環境での使用には不向き

PC 樹脂製 ○~◎ ○~◎ ◎ ×~△ 耐候性は ABS よりも優れてい

るが、溶剤、薬品等には不向き

PE 樹脂製 ×~△ 〇 ○~◎ ○~◎ 有機系の薬品を使用する環境に

は最適

◎=特に優れている ○=優れている △やや劣る ×=劣る (4)粉体を扱う場合は保護メガネにはゴーグル型のものを使用する。これは、

粉体塗装などであっても同様である(厚生労働省「化学物質による健康障害

のリスクアセスメント:工業塗装編」)。従って、本肢は正しい。 (5)天然ゴムは柔軟性や耐摩耗性があり、引き裂きに強く、寒冷地において硬

くなりにくい(脆化温度-50~-70℃)。従って、本肢は適切ではないとは

言えない。

(19)問19(試験協会発表正答 5)難易度2 問 19 最小着火エネルギーに関する次の記述のうち、誤っているものはどれ

か。 (1)一般的に、可燃性粉じんの最小着火エネルギーは、可燃性のガスや蒸気

の場合と比べて大きい。 (2)最小着火エネルギーは、混合物の組成によって変化する。 (3)最小着火エネルギーの単位は、J(ジュール)で示される。 (4)一般的に、水素の最小着火エネルギーは、エタンの最小着火エネルギー

よりも小さい。 (5)温度が高いほど最小着火エネルギーは、大きくなる。

37

(1)ガスや蒸気が個々の分子として期中に存在しているのに対し、粉じんは

個体の塊であるから、一般的にということであれば、最小着火エネルギー

は粉じんの方が大きくなるといえる。従って本肢は正しい。 (2)可燃性ガスの最小着火エネルギーはガスの濃度により変化し、化学量論

組成付近で最小となり、それより高濃度でも低濃度でも増加する。従って

本肢は正しい。 (3)正しい。エネルギーを J(ジュール)以外のどのような単位で表すとい

うのであろうか(Nm で表せないこともないだろうが・・・)。 (4)水素・空気混合気の最小着火エネルギーは、0.011~0.019mJ との報告

があり、一方のエタンは 0.25mJ、メタンは 0.28mJ である。水素やアセ

チレン(0.019mJ)、エチレン(0.096mJ)の最小着火エネルギーは極め

て小さいと覚えておけばよい。 (5)温度が高ければその物質の持つエネルギーも大きいので、他の条件が同じ

であればより少ないエネルギーで着火するようになるのは当然である。従

って誤りである。 なお、他の問が「適切でないものはどれか」となっているにも関わらず、この

問だけは「誤っているものはどれか」となっているが、特に深い意味はないよう

に思える。

(20)問20(試験協会発表正答 1)難易度4 問 20 危険物の爆発・発火のおそれに関する次の記述のうち、適切でないも

のはどれか。 (1)二硫化炭素は、水と混合すると爆発するおそれがある。 (2)ニトログリコールは、加熱すると爆発するおそれがある。 (3)ナトリウムは、水と接触すると発火するおそれがある。 (4)過酸化ベンゾイルは、点火源があると爆発するおそれがある。 (5)塩素酸ナトリウムは、可燃性物質と混合すると発火するおそれがある。

(1)二硫化炭素は乙4類の危険物で、引火性があるが、水と混合して爆発す

るようなことはない。むしろ引火しにくくするために、水に溶けにくい性

質を利用して、上部を水で覆って貯蔵したりする。なお、火災の際には大

量の水をかけて消火する。従って本肢は誤っている。 (2)ニトログリコールは、ダイナマイトやプラスチック爆弾に添付される爆

38

発性の物質である。単体ではきわめて扱いにくく、加熱したり、衝撃や振

動を加えたりすると燃焼・爆発することがある。従って本肢は正しい。 (3)ナトリウムは水と反応して激しく爆発するため、通常は石油に入れて保

管する。従って本肢は正しい。 なお、安衛法第 57 条の表示義務は、原則として金属については除外さ

れているが、ナトリウムなど爆発の恐れがある金属は除外されていないこ

とも覚えておく必要がある。 (4)過酸化ベンゾイルは摩擦や衝撃で分解して爆発することがある。また、

加熱すると発火する。1990 年5月に東京都の化学工場で過酸化ベンゾイ

ルが発火したことによる爆発事故があったが、着火源は静電気であるとみ

られている。従って本肢は正しい。 (5)塩素酸ナトリウムそのものは不燃性であるが、支燃性がある。従って本

肢は正しい。

(21)問21(試験協会発表正答 4)難易度2 問 21 人体への通過電流の電流値と次のイ~ホに示す通過電流による人体へ

の影響との組合せについて、適切なものは(1)~(5)のうちどれか。 イ 人体に悪影響を及ぼさない最大の許容電流値であり、相応の痛み

を感じる。 ロ ピリッと感じるが、人体に危険性はない。 ハ 心臓の律動異常の発生、痛み、気絶、人体構造損傷などの可能性が

ある。 ニ 心室細動の発生や心肺停止に至り、極めて危険な状態になる。 ホ 持続して筋肉の収縮が起こり、握った電線を離すことができなく

なる。 0.5~1mA 5mA 10~20mA 50mA 100mA (1) イ ロ ホ ハ ニ (2) イ ロ ホ ニ ハ (3) ロ イ ハ ホ ニ (4) ロ イ ホ ハ ニ (5) ロ イ ホ ニ ハ

問題文には書かれていないが、商用周波数を前提にした問題のようだ。直流だ

39

と、イの状態となる電流値はもっと高い。また、国際電気標準会議の人体反応曲

線図の数値などとも微妙に異なっている。 しかし、細かい数値を気にする必要はない。たんに、イからホの記述を人体へ

の影響の小さい順に並べていけばよいだけのことである。 ニとハで迷うかもしれないが、ニは心室細動や心肺停止など「死亡」の恐れの

強い状況に至ると書かれており、ハはそれ以前の状況なので、ニの方が重篤であ

る。

(22)問22(試験協会発表正答 3)難易度2 問 22 建設工事に使用される設備や施工方法に関する次の記述のうち、安全

上、適切でないものはどれか。 (1)中層の鉄筋コンクリート造建築物の地上部分の解体工事において、圧砕

機を地上に据えてビル全体を解体する方法では、通常、上階から下階に向

かって解体するが、建築物全体としては、先に中央部分を解体し、外周部

分については控え壁を同時に残す等の方法により、自立安定性を確保し

ながら最後に解体する。 (2)手すり先行工法では、建設工事において、足場の組立ての作業を行うに

当たり、労働者が足場の作業床に乗る前に、作業床の端となる箇所に適切

な手すりを先行して設置する。 (3)鉄骨造建築物の建方工事に安全ネットを使用する場合、作業箇所からネ

ットまでの高さやネット下方のあきに関係なく墜落阻止効果が得られる

ようにするため、その取付けに際しては、緊張器等を用いて強く張ること

によりネットの垂れをできるだけ小さくする。 (4)小規模の溝掘削作業において採用されている土止め先行工法の一つで

ある建込み方式軽量鋼矢板工法は、掘削深さが比較的浅く、自立性の高い

地山に適している。 (5)支柱式足場の壁つなぎは、できるだけ足場の支柱と水平材の交点付近に

設けるのが効果的であり、枠組足場では建枠の横架材付近の脚柱に、単管

足場では布との交差部付近の建地に設ける。 (1)建築物の解体工事においては、騒音、粉塵、落下物対策等を考慮し、建築

物の外壁を最後に残し、内側から解体する工法が一般に推奨、実施されてい

る。本肢のような、中層の鉄筋コンクリート造建築物の地上部分の解体工事

において、圧砕機を地上に置いて解体を行う場合には、基本的な流れは次の

40

ようになろう。従って、本肢は適切ではないとは言えない。 ① 屋根部圧砕解体 ② 中抜き解体(外壁を残した中央部の解体) ③ 上階の外壁解体 ④ 下階の外壁解体 なお、国土交通省の「建築物の解体工事における外壁の崩落等による事故

防止対策について」によれば「都市部における中高層建築物は、外周部が外

側に張 り出していて重心が外側にかかっているケースや、構造的に自立し

ないカーテンウォール等が用いられるケースが多いことから、建築物の内

側から解体する場合は、残された外周部が外側に崩落しないよう、その構造

的な安定に十分考慮する必要がある」とされている。そのため、やや解答に

迷う選択肢である。 (2)「手すり先行工法等に関するガイドライン」(平成 21 年4月 24 日基発第

0424001 号)によれば、手すり先行工法とは「建設工事において、足場の組

立て等の作業を行うに当たり、労働者が足場の作業床に乗る前に、・・・(中

略)・・・当該作業床の端となる箇所に適切な手すりを先行して設置し、か

つ、最上層の作業床を取りはずすときは、当該作業床の端の手すりを残置し

て行う工法をいう」とされている。 従って、本肢は適切ではないとは言えない。 (3)「緊張器」は親綱などを張るときに用いるものである。安全ネットを強く

張ると、かえって危ないので緩く垂らすように張る。従って、本肢は適切で

はない。 なお、「墜落による危険を防止するためのネットの構造等の安全基準に関

する技術上の指針」に、ネットの垂れは一定の値以下とすることが定められ

ているため、本肢は正しいのではないかと誤解された受験生もおられたよ

うだ。しかし、指針は「強く張る」ことまでは求めていない。垂れを一定

の値以下とするのは、あまりゆるいと落下体が地面にあたる場合があ

るからである。 (4)建込み方式軽量鋼矢板工法とは、「掘削した地山が自立することを前提と

した工法であり、その手順は、一定の深さまで掘削機械により溝掘削を行い、

軽量鋼矢板を建て込んだ後、所定の深さまで押し込み、地上から専用の治具

を使用して最上段の腹おこし及び切りばりを設置して土止め支保工を組み

立てる方式である。2 段目以降の腹おこし及び切りばりの設置は、専用の作

業台を使用して行う」工法である(平成 15 年 12 月 17 日基発第 1217001号「土止め先行工法に関するガイドライン」)。

そのため本肢にいうような、掘削深さが比較的浅く、自立性の高い地山に

41

おいて行われる。従って本肢は正しい。 (5)足場の壁つなぎについては、安衛則第 570 条第1項第5号に間隔(ピッ

チ)のみが定められているが、この間隔内で本肢のように取り付けるのが普

通である。本肢は適切でないとは言えない。

(23)問23(試験協会発表正答 4)難易度4 問 23 厚生労働省の「機械の包括的な安全基準に関する指針」に関する次の

記述のうち、適切なものはどれか。 (1)機械の高温の部分への接触による危害が生ずるおそれのあるときに、当

該高温の部分にガードを設けることは、本質的安全設計方策である。 (2)機械の内部、側面、上部等の適切な場所に警報装置を設置するのは、付

加保護方策である。 (3)自動監視とは、装置に自己診断機能を持たせ、装置の故障や異常を自動

的に操作者に知らせ、操作者が機械を停止させるものである。 (4)誤操作による危害を防止するためのイネーブル装置は、連続的に操作す

るとき、機械が機能することを許可するための補足的な手動操作装置で

ある。 (5)ホールド・ツゥ・ラン制御装置とは、手動制御器を作動させて危険な機

械機能の起動開始指令を出し、改めて、別の手動制御器で解除操作をしな

い限り、維持する制御装置である。 (1)機械の包括的な安全基準に関する指針の第1の「3 用語の定義」によれ

ば、本質的安全設計方策とは、「ガード又は保護装置(機械に取り付けるこ

とにより、単独で、又はガードと組み合わせて使用する光線式安全装置、両

手操作制御装置等のリスクの低減のための装置をいう。)を使用しないで、

機械の設計又は運転特性を変更することによる保護方策をいう」とされて

いる。従って本肢は適切とは言えない。 本来、「本質的安全化」とは、危険性又は有害性そのものを減じる(又は

なくす)ことをいうのであり、危険な箇所を覆う(ガードする)ことは本質

安全化とは言わない。 (2)同指針の「3 用語の定義」によれば、付加保護方策とは「労働災害に至

る緊急事態からの回避等のために行う保護方策(本質的安全設計方策、安全

防護及び使用上の情報以外のものに限る。)をいう」とされている。警報装

置の設置は「使用上の情報」に位置付けられている。従って本肢は適切とは

42

言えない。 (3)JIS B 9700:2013 によれば、自動監視は「保護方策によって実行される

単独又は複数の安全機能を実行するコンポーネント若しくは要素の能力が

低下し又は工程条件が危険源を発生する側に変化した場合に、その安全機

能が確実に実行されることを意図している」とされ、「安全機能が次に動作

要求される前に不具合(障害)を検出するために、自動監視は不具合(障害)

を直ちに検出するか、又は周期的にチェックを行う。いずれの場合も、保護

方策を直ちに開始するか、又は特定の事象(例えば、機械サイクルの開始時

点)まで遅らせる」とある。基本的に、保全作業等を危険区域の外から行え

るようにすることをいい、たんに機械を停止させるためのものではない。従

って適切とは言えない。 (4)ISO12100 によれば、イネーブル装置とは、「連続的に操作するとき、機

械が機能することを許可するための補足的な手動操作装置」とされている。

従って本肢は正しい。 非常停止スイッチは、スイッチを押さなければ機械設備は停止しない。こ

れに対し、イネーブルスイッチは、作業者が緊急事態に驚いてスイッチを離

すか強く握りしめると機械設備が停止するようになっている。 (5)のホールド・ツゥ・ランは、人手で操作したときだけ作動し、離すと動作が

停止する機能であり、改めて、別の手動制御器で解除操作をしなくても、手

を離しさえすれば停止する。従って適切とは言えない なお、ほとんどの問が「適切でないものはどれか」となっているのに、この問

いは「適切なものはどれか」となっているため、ミスをしないように注意するべ

き問題といえよう。 また、イネーブル装置やホールド・ツゥ・ランは、過去問でもよく問われている

ので、確実に理解しておくようにしたい。

(24)問24(試験協会発表正答 5)難易度1 問 24 粉じんによる火災及び爆発並びにその防止に関する次の記述のうち、

適切でないものはどれか。 (1)作業場所を定期的に清掃して粉じんの堆積を防止する。 (2)可燃性金属粉じんは、防爆型掃除機により吸引して除く。 (3)照明灯は防爆性能を有するものを用いる。 (4)空気中に浮遊している可燃性粉じんが静電気火花などで着火すると、爆

43

発することがある。 (5)可燃性の粉じんの粒径は、粉じん爆発の起こりやすさに無関係である。

(1)あまりにも当然のことを言っているので、なにかひっかけがあるのではな

いかと考えた受験生もいたようだ。しかしながら、定期的に清掃をすること

自体には問題はないだろう。本肢は正しい。しかし、不安であれば、試験時

には△マークでも記しておき、あとで見直すようにすればよい。 (2)金属粉じんは、アルミニウムなどであれば防爆型掃除機により吸引して除

くことに問題はない。しかし、マグネシウム粉じんについてはこの方法では

問題がある。本肢は、正誤が不明確なので、試験時には、△マークでも記し

ておき、あとで見直すようにする。 (3)これも、あまりにも当然のことを言っている。しかし、とくにひっかけが

あるとも思えない。 (4)これも、あまりにも当然のことを言っている。当然、正しい。 (5)これは明らかに誤りであろう。粉じんの粒径と爆発の起こりやすさが無関

係なはずはない。ここまできて、(1)から(3)は、引っ掛けではないと

判る仕組みになっている。(2)はやや疑問があるが、(5)があまりにも明

白なので(2)は正しいということのようだ。

(25)問25(試験協会発表正答 4)難易度5 問 25 右のページの図(下図=引用者)は、人が停止中の機械の危険域に侵

入した場合に、機械の不意な作動を防止する防護装置の機能不全によっ

て危害が発生するET(Event Tree)図である。このETA(Event Tree Analysis)に関する以下の文中の A ~ C に入る語句又は数値と

して、適切なものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。 ただし、次の①~⑤の前提条件を考慮すること。 ① 正常な防護装置は人を瞬時に検出して機械を不作動状態にし、この

状態は手動による解除まで維持される。 ② 人が危険域に侵入しようとする事象の発生率は 10-4[1/時間]で、

侵入した場合には、平均 0.2[時間]とどまる。 ③ 防護装置の危険側故障率は 10-6[1/時間]で、危険側故障状態は修

復されるまでに平均 1,000[時間]継続する。そのため、危険側故障状

態の確率は約 10-3となる。 ④ 機械は自動的に平均 1.5 分間の停止及び作動を繰り返し、人は機械の

44

作動中においては、危険域に侵入しようとしても、実際には危険域に侵

入しない。そのため、人が危険域に存在する確率は 10-5となる。 ⑤ 図中のλは、上記②の人が危険域に侵入しようとする事象の発生率

又は上記③の防護装置の危険側故障率を意味する。また、図中のQは、

上記④の人が危険域に存在する確率又は上記③の危険側故障状態の確

率を意味する。さらに、危害の発生率[1/時間]は、λ×Q×0.5 とな

る。 危害は、起事象である「 A 」が真(Yes)、条件1である「 B 」が

真(Yes)、そして条件2である「機械の作動(停止状態であった機械が人の

侵入後に不意に作動する。)」が真(Yes)となることにより起こり、この危

害の発生率はおおよそ C [1/時間]と推定される。

A B C (1)防護装置の危険側故障 人の危険域侵入状態 10-5~10-6 (2)人の危険域侵入 防護装置の危険側故障状態 10-6~10-7 (3)防護装置の危険側故障 人の危険域侵入状態 10-6~10-7 (4)人の危険域侵入 防護装置の危険側故障状態 10-7~10-8 (5)防護装置の危険側故障 人の危険域侵入状態 10-8~10-9

本問は、試験協会によると正答は(4)であるとされている。その理由を調べ

てみたが、明確な根拠は見つからなかった。だが、次のような理由で(4)が正

答となるのではないかと思う。

45

1 起事象が何か まず、起事象(A)が何かであるが、起事象を「防護装置の危険側故障」で

あるとする選択肢の(1)、(3)及び(5)では、図の条件1(Q)が「人の

危険域侵入状態」となっている。しかし、侵入した「状態」となるのは、条件

④(=図の条件2)と合わせてのことであって、条件1を「人の危険域侵入状

態」とすることは誤りであるということらしい。 2 危害の確率 そこで、起事象を「人の危険域侵入」と仮定すると、次のようになる。 (1)人の危険域侵入(λ) 人の危険域侵入(λ)は条件②から 10-4[1/時間]となる。なお、ここで

考慮すべきは、人が危険域へ侵入しようとする回数が1時間当たりどれだ

けかということであり、1回あたりの危険域にとどまる時間は考慮する必

要はない。それを考慮して、λを 0.2[時間]×10-4[1/時間]とすると λは

人が危険域へとどまっている確率(時間の割合)となってしまう。 (2)図の条件1(Q)

図の条件1(Q)は、正答によれば「防護装置の危険側故障状態」とされ

ている。従って、条件③から 10-3となる。ただし、これは厳密には「防護装

置の危険側故障状態となっている確率」であろう。 (3)図の条件2

図の条件2は、条件④に該当する。すなわち機械が作動しているのは 0.5の確率(割合)で、そのときには人は実際には危険域に侵入しないわけであ

る。これも確率であるから無名数である。 (4)最終的な危害の確率

最後に条件⑤から危害の発生率は λ×Q×0.5 となる。 従って、危害の発生率は 10-4[1/時間]×10-3×0.5=5×10-8[1/時間]と

なる。そして、誤差を考慮してC=10-7~10-8となる。 3 この問題のポイント:コンサルト試験にはめったにないひっかけ問題であ

ること この問題のポイントは、図の条件2に「機械の作動」と記されており、これ

が条件④のことだと気づくかどうかだけであろう。 (1)図の条件2の曖昧性 しかし、条件2を独立した危害発生の条件(人が危険域に侵入しても機械

が作動しなければ2回に1回の割で危害を受けない)と考える余地はある

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のではなかろうか。その場合は、起事象(λ)又は条件1(Q)に「人の危

険域侵入状態」が入るはずだということになる。 このように考えた受験生は、私を含めて多かったようである。 (2)問題文中の誤答への誘導(ひっかけ) この問題は、コンサルタント試験としはめずらしく「ひっかけ」問題なの

である。しかも次のように、2か所にひっかけるためのワナが仕掛けてある

ので、注意しなければならない。 ア 条件②に「侵入した場合には、平均 0.2[時間]とどまる」とあり、不

要な条件が記されていること。 イ 条件⑤に、「さらに、危害の発生率[1/時間]は、λ×Q×0.5 となる」と

ことさらに、「さらに」という言葉を使ってあり、いかにもこの 0.5 が条

件④とは別な新しい条件であるかのように装われていること。 (3)ひっかけられた場合の回答 ここに私はひっかかってしまい、次のように考えたのである。 ア 起事象λ 起事象λは、防護装置危険側故障であり、条件の③から 10-3となる。 イ 条件①(Q)

条件①(Q)は人の危険域侵入状態であり、 (ア)人が危険域に侵入しようとする発生率は、条件②で 10-4とされてお

り、さらに④から2回に1回は機械が作動しているので実際には侵入

しないから 10-4×1/2=5×10-5となる。 (イ)機械が故障していることを前提としての確率であるが、人が実際に

危険域に侵入している状態となるのは、1回につき 0.2[時間]であ

るから、0.2×5×10-5=10-5となる。そして、なぜかこれは条件④に

結論が書かれている。 ウ 図の条件2 さらに、人が危険域に侵入していたとしても、事故の発生率は条件⑤

(=図の条件2)で確率 0.5 とされている。この場合は、0.5 は無名数

ではなく 0.5[回/時間]すなわち、1時間に 0.5 回の確率で危害が発生

するということを意味する。 エ 結論 従って、危害の発生率はλ×Q×0.5=0.5×10-8となる。 ここで誤差を考慮して危害を受ける確率(C)は 10-8~10-9になる。 3 評論 ただ、自分が間違えたからというのではないが、図中の条件2が条件④のこ

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とだと気づくかどうかというだけのことで、気づかないようにするためのワ

ナを仕掛けておくというこの種の問題が、コンサルタント試験の問題として

ふさわしいのかという気がしないでもない。 【お詫び】 冒頭の繰り返しになるが、試験協会の正答公表があるまでの数日間、この資料

をご覧になった方には、本問の正答予測を5と誤っていたことを心よりお詫び

する。

(26)問26(試験協会発表正答 5)難易度3 問 26 厚生労働省が公表している平成 24~28 年の業種別死傷災害年千人率

(休業4日以上)に基づく次の表のA~E欄に該当する産業として、適切

なものの組合せは(1)~(5)のどれか。 業種別死傷災害年千人率(休業4日以上)の推移

年/産業 全産業 A B C D E 平成 24 年 2.3 2.0 3.0 5.0 8.4 31.6 平成 25 年 2.3 1.9 2.8 5.0 8.3 28.7 平成 26 年 2.3 1.9 2.9 5.0 8.4 26.9 平成 27 年 2.2 1.9 2.8 4.6 8.2 27.0 平成 28 年 2.2 1.9 2.7 4.5 8.2 31.2

資料出所:労働者死傷病報告及び総務省労働力調査 注:年千人率とは、労働者 1,000 人当たり1年間に発生する死傷者数

を示すもので、次式で表される。

年千人率= 1年間の死傷者数

×1,000 1年間の平均労働者数注

A B C D E (1)製造業 商業 陸上貨物運送業 建設業 林業 (2)商業 製造業 林業 建設業 陸上貨物運送業 (3)商業 建設業 製造業 陸上貨物運送業 林業 (4)製造業 商業 建設業 林業 陸上貨物運送業

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(5)商業 製造業 建設業 陸上貨物運送業 林業 年千人率については、商業は全産業よりも低いこと、林業が突出して多いこと、

製造業、建設業、陸上貨物運送業の3業種ではこの順に並んでいることを知って

いれば正答に達することはできる。正答は(5)である。 商業の災害件数が多いことと、年千人率が多いことを混同してはならない。こ

のことは覚えておいた方がよい。

(27)問27(試験協会発表正答 4)難易度5 問 27 労働衛生管理に関する次の措置のうち、作業管理に該当しないものは

どれか。 (1)特定化学物質の取扱いに関する作業規程の作成 (2)振動障害予防のためのチェーンソー作業の作業時間の管理 (3)有害物質への個人ばく露濃度の測定 (4)有害物質を取り扱う設備の密閉化 (5)有機溶剤を取り扱う業務における呼吸用保護具の使用

本問は、本年の労働衛生コンサルタント試験も、最初の問として用いられてい

たものである。 (1)作業規定は作業の方法等を定めるものであり、作業規定の作成は作業管

理に該当する (2)作業時間の管理は作業管理に該当する。 (3)個人ばく露濃度の測定は作業管理に該当する。なお、作業管理にのみ該

当するというわけではないことに留意すること。確かに、通常は「作業環

境測定」の結果は作業環境管理に用いられ、「個人ばく露濃度の測定」の

結果は作業管理に用いられると考えられている。しかし、このような考え

方は、厳密には正しくない。 作業環境測定のみならず、個人ばく露測定についても、その結果は作業環

境管理にも作業管理にも用いることができるのである。すなわち、「個人ば

く露濃度測定」は「作業管理の手段としても.用いられる」というだけのこと

であり、「個人ばく露濃度測定」そのものは作業管理には該当しないという

見方もできるのである。 日本産業衛生学会の化学物質の個人ばく露測定のガイドラインにも、個

49

人ばく露濃度測定を「必要以上に作業管理と固定的に結びつけること」は適

切ではないと明記されている。

【化学物質の個人ばく露測定のガイドラインから】 時折,「個人ばく露測定を行った場合は作業管理を行う」と言われるこ

とがあるが,このような考え方は誤りである.個人ばく露測定の場合であ

っても優先順は作業環境管理,次いで作業管理で変わらない.(補足資料

20 参照) 【補足資料 20】 「作業環境測定を行った場合は作業環境管理を行う」という概念があ

り,更にこれとの対比で,「個人ばく露測定を行った場合は作業管理を行

う」と言われることが時折ある.個人ばく露測定と作業管理を必要以上に

固定的に結び付けるこのような考え方は適切でない. (4)有害物質を取り扱う設備の密閉化は「作業環境管理」に該当し、作業管理

には該当しない。従って、本肢が正答となる。 (5)呼吸用保護具の使用は作業管理に該当する。

(28)問28(試験協会発表正答 4)難易度3 問 28 労働安全衛生マネジメントシステムの運用に関する次の記述のうち、

適切でないものはどれか。 (1)日常的な点検とは、安全衛生計画が着実に実施されているかどうか、安

全衛生目標は着実に達成されつつあるかどうかなどについて、安全衛生

計画などの実施項目の担当部門が、自らの部門の点検を行うことである。 (2)安全衛生目標は、一定期間における達成すべき到達点を明らかにするも

のであり、到達の度合いを客観的に評価できるように、できるだけ数値で

設定する。 (3)計画-実施-評価-改善というサイクルを回すために、日常的な点検、

システム監査及び事業者による全般的な見直しという3つの評価・改善

を行う。 (4)事業場外部の者によるシステム監査は、事業場内部の者によるシステム

監査に比べて、監査テーマを特定して、実態を詳しく調査し、評価するこ

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とができる。 (5)安全衛生計画及びこれを実施する手順、システム監査を実施する手順等

を明確化する場合には、文章による記述、表、フローチャート、定型書式

などにより、誰が、いつ、何を、どのようにするのかということを明確に

する。 (1)平成 18 年3月 17 日基発第 0317007 号「労働安全衛生マネジメントシ

ステムに関する指針の改正について」によれば、日常的な点検とは、「安

全衛生計画が着実に実施、運用されているかどうか、安全衛生目標は着実

に達成されつつあるかどうか等について点検を行うこと」であるとされて

いる。この通達や指針には、日常点検の実施主体や点検の対象については

何も記されていないが、「安全衛生計画などの実施項目の担当部門が、自

らの部門の点検を行うこと」は当然であろう。本肢は適切でないとは言え

ない。 (2)安全衛生目標が、一定期間における達成すべき到達点を明らかにするも

のであることは当然である。また、前記通達には「目標は達成の度合いを

客観的に評価できるよう、可能な限り数値で設定することが望ましいこ

と」とされている。本肢は適切でないとは言えない。 (3)前記通達の「労働安全衛生マネジメントシステムの概要(流れ図)」に

は、「日常的な点検、改善等」「労働災害発生原因の調査等」「システム監

査の実施/改善」という3つの(C、A)が記されており、さらに C の表

記はないが「事業者によるシステムの見直し」が記されている。問題文は

このうちの3つを抽出したものである。また中災防の「JISHA 方式適格

OSHMS 基準の解説」にも「PDCA の CA のステップである「日常的な点

検、改善」、「システム監査」及び「OSHMS の見直し」が有効に機能する

ことによって、安全衛生水準の向上に確実に結びつく」との表現があり、

本肢は適切でないとは言えない。 (4)事業場外部の者によるシステム監査は、事業場内部の者によるシステム

監査に比べて、監査テーマを特定することはできるかもしれない。しかし

ながら、外部の機関では、実態を詳しく調査し、評価することができると

はいえない。その意味で、やや疑問はあるものの、本肢は適切とは言えな

い。また、他の選択肢が明らかに適切であることからも、本肢が正答であ

ると判る。 (5)前記通達には、手順とは「いつ、誰が、何を、どのようにするか等につ

いて定めるものである」とされている。「文章による記述、表、フローチ

ャート、定型書式などにより」とは書かれていないが、不適切とは言えな

51

い。

(29)問29(試験協会発表正答 4)難易度3 問 29 厚生労働省の「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に基づき、

事業者がリスクアセスメントに際して行うべき事項に関する次の記述の

うち、適切なものはどれか。 (1)工学的対策には、立ち入り禁止措置及び警報の適用が含まれる。 (2)リスクの見積もりに当たっては、明らかに軽微な負傷又は疾病しかもた

らさないと予想される作業等についても必ず調査等の対象としなければ

ならない。 (3)リスクの見積もりに当たっては、過去に実際に発生した負傷又は疾病の

重篤度で見積もるべきである。 (4)リスクの見積もりにおいて、機械の安全装置の信頼性および維持能力に

関して考慮すべき事項には、必要に応じて、安全装置の機能の故障頻度・

故障対策及びメンテナンスが含まれる。 (5)リスク低減措置の検討及び実施の優先順位としては、マニュアルの整備

等の管理的対策よりも個人用保護具の使用の措置を優先させる。 (1)の立ち入り禁止措置及び警報の適用は、管理的対策であって、工学的対策

ではない。従って誤りである。 (2)危険性又は有害性等の調査等に関する指針の6(2)に「明らかに軽微な

負傷又は疾病しかもたらさないと予想されるものについては、調査等の対

象から除外して差し支えない」とされている。従って誤りである。 もっとも、実務においては、何をもって「明らか」と判断するのかは難し

いだろう。 (3)疾病の重篤度は、実際に発生し得るもっとも重篤な災害で見積もる必要が

ある。過去に発生した災害はたまたま軽微な災害となった可能性があるか

らだ。従ってので誤りである。 (4)平成 18 年3月 10 日基発第 0310001 号「危険性又は有害性等の調査等に

関する指針について」の記の9の(4)に本問の(4)と同趣旨の記述がある。

従って、本肢は正しい。 (5)本肢は「マニュアルの整備等の管理的対策」と「個人用保護具の使用の措

置」の優先順位が逆となっている。危険性又は有害性等の調査等に関する指

針では、管理的対策を、個人用保護具の使用の措置よりも優先させるとされ

52

ている。これには異論もあるようだが、適切だとすることはできない。 なお、ほとんどの問が「適切でないものはどれか」となっているのに、この問

いも「適切なものはどれか」となっているため、ミスをしないように注意するべ

き問題といえよう。

(30)問30(試験協会発表正答 2)難易度4 問 30 厚生労働省の「交通労働災害防止のためのガイドライン」に関する次

の記述のうち、適切でないものはどれか。 (1)深夜業を含む業務に従事する運転者に対しては、雇入れ時及び6か月以

内ごとに1回、定期に健康診断を行う。 (2)道路上における自動車及び原動機付き自転車による交通労働災害の防

止のみを対象としている。 (3)新規雇入れ運転者に対する雇入時教育においては、必要に応じて、安全

運転の知識及び経験が豊富な運転者等が添乗することにより、実地に指

導を行う。 (4)運転業務従事者に乗務を開始させる前の点呼については、運行上対面で

できない場合には電話で行っても差し支えない。 (5)荷主及び運送業の元請事業者は、荷積み・荷卸し作業の遅延により到着

時間の遅延が見込まれる場合には、実際に荷を運搬する事業者と協働し

て、到着時間の再設定などを行う。 (1)安衛則第 45 条は「第 13 条第1項第3号に掲げる業務に常時従事する労

働者に対し、当該業務への配置替えの際及び6月以内ごとに1回、定期に、

第44条第1項各号に掲げる項目について医師による健康診断を行わなけれ

ばならない。この場合において、同項第4号の項目については、1年以内ご

とに1回、定期に、行えば足りるものとする」とされている。そして、安衛

則第 13 条第1項第3号に掲げる業務には「深夜業を含む業務」が含まれて

いる。 本肢に「常時性」についての言及がないため、迷った受験生もいたようだ

が(2)が誤っているので、こちらは正しいということのようだ。従って、

本肢は正しい。 (2)「交通労働災害防止のためのガイドライン」は、道路上及び事業場構内に

おける自動車及び原動機付き自転車の交通事故による労働災害を対象とし

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ている。道路上に限っているとしているところが誤りである。 「自動車及び原動機付き自転車」にとらわれて、道路上とされているとこ

ろに気付かないと正答できない。 (3)同ガイドライン「第4 教育の実施等」の1の「(1)雇入れ時等の教育」

には「雇入時教育及び作業内容変更時教育において、次に掲げる事項を含む

教育を行うとともに、必要に応じて、安全運転の知 識及び経験が豊富な運

転者等が添乗することにより、実地に指導を行うこと」とされている。従っ

て本肢は正しい。 (4)同ガイドラインの「第3 適正な労働時間等の管理及び走行管理等」の3

の「(1)点呼等の実施」には、「点呼は対面によるものとするが、運行上や

むを得ない場合は電話その他の 方法で実施して差し支えないこと」とされ

ている。従って本肢は正しい。 そもそも、運転業務従事者が事業場内にいないことはあり得ることであ

り、電話等で行わなければ点呼などできないであろう。 (5)同ガイドライン「第6 荷主・元請事業者による配慮等」の4には「到着

時間の遅延が見込まれる場合、荷主・元請事業者は改善基準告示等を遵守し

た安全運行が確保されるよう到着時間の再設定、ルート変更等を行うこと」

とされている。従って本肢は正しい。

この資料は「実務家のための産業保健のサイト」に掲示されています。よろしけ

ればサイトの方にもご訪問ください。