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CPA平成 27 年第Ⅰ回-短答式試験-監査論 ― 1 ― CPA 公認会計士講座 <無断転載を禁ず> H27年第Ⅰ回 監査論【講評】 短答式試験,おつかれさまでした。 今回の短答式試験から,監査論だけで1時間という形式で実施されました。問題数は, 予想通り 18 問でした。また,1肢4行以上の肢がほとんどで,最近の出題傾向と比較して 文章量(ボリューム)が増えているという特徴がありました。そして,最近の出題傾向ど おり,最初の数問が非常に難しかったと思います。 まず,問題1のアの肢については,語尾の「可能性がある」という文言がかなり気にな ります。おそらく,出題者は,立証責任を果たしたケースと,果たせていないケースを考 えているのではないかと思いますが,普通に読んだ場合には,誤りと判断したくなる肢に なっております。受験生の実力を反映させる試験にするために,もう少し,出題趣旨のは っきりした問題を出題してほしいと思っています。 また,問題2のアの肢について,「内閣総理大臣の認可は不要」という点が誤りの肢に なっていますが,本当にこの文言を入れて,誤りの肢にする必要があったのか,疑問が生 じます出題者がどのような知識を有した公認会計士を輩出したいと思って出題したのか, 出題した趣旨や想いに疑問を感じますなお,東京CPA会計学院では,短答式模擬試験第3回の問題5のイの肢で,当該規定 を正しい肢として出題していました。その結果,「内閣総理大臣の認可は不要」という論点 は知らないが,それ以外の文章が正しいので,正しい肢と判断してしまった受講生が多か ったのではないかと思います。つまり,当該規定をある程度知っている受験生の方が,ま ったく知らない受験生よりも間違えてしまうという問題であるところに非常に疑問を感 じます。 さらに,問題3と問題5については,厳密に読むと,誤りの肢が3個あり,解なしとな ってしまいます。問題3については,監査論の典型的な論点である「重要性」の記述が漏 れている肢と,「財務諸表の監査証明では,財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準 を遵守する必要がない」という肢で,比較衡量することが求められます。つまり,どっち の方がより強い誤りかを判断する必要がありますが,この判断は解釈論の話になってしま います。また,問題5については,他の肢から正しい肢と判断しなければならないエの肢 で,監査理論上も監査実務上も矛盾が生じています。確かに,監査基準や監査基準委員会 報告書では,「監査契約の締結時に職業的懐疑心の保持が求められる」とは明記されており ません。しかし,「監査契約の締結時には職業的懐疑心の保持は求められない」ことは監査 理論上も監査実務上も間違いであると理解しています。この肢の出題者にも,どのような 知識を有した公認会計士を輩出したいと思って出題したのか,出題した趣旨や想いに疑問 を感じます。監査契約の締結時,つまり,経営者の誠実性を検討する際に,職業的懐疑心 を保持しない公認会計士を輩出したいという想いを込めて出題したのかと思うと,本当に 疑問を感じます。この問題も,職業的懐疑心をしっかりイメージしている受験生の方が間 違えてしまうという問題であるといえます。

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CPA平成 27年第Ⅰ回-短答式試験-監査論

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H27年第Ⅰ回 監査論【講評】

短答式試験,おつかれさまでした。

今回の短答式試験から,監査論だけで1時間という形式で実施されました。問題数は,

予想通り 18 問でした。また,1肢4行以上の肢がほとんどで,最近の出題傾向と比較して

文章量(ボリューム)が増えているという特徴がありました。そして,最近の出題傾向ど

おり,最初の数問が非常に難しかったと思います。

まず,問題1のアの肢については,語尾の「可能性がある」という文言がかなり気にな

ります。おそらく,出題者は,立証責任を果たしたケースと,果たせていないケースを考

えているのではないかと思いますが,普通に読んだ場合には,誤りと判断したくなる肢に

なっております。受験生の実力を反映させる試験にするために,もう少し,出題趣旨のは

っきりした問題を出題してほしいと思っています。

また,問題2のアの肢について,「内閣総理大臣の認可は不要」という点が誤りの肢に

なっていますが,本当にこの文言を入れて,誤りの肢にする必要があったのか,疑問が生

じます。出題者がどのような知識を有した公認会計士を輩出したいと思って出題したのか,

出題した趣旨や想いに疑問を感じます。

なお,東京CPA会計学院では,短答式模擬試験第3回の問題5のイの肢で,当該規定

を正しい肢として出題していました。その結果,「内閣総理大臣の認可は不要」という論点

は知らないが,それ以外の文章が正しいので,正しい肢と判断してしまった受講生が多か

ったのではないかと思います。つまり,当該規定をある程度知っている受験生の方が,ま

ったく知らない受験生よりも間違えてしまうという問題であるところに非常に疑問を感

じます。

さらに,問題3と問題5については,厳密に読むと,誤りの肢が3個あり,解なしとな

ってしまいます。問題3については,監査論の典型的な論点である「重要性」の記述が漏

れている肢と,「財務諸表の監査証明では,財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準

を遵守する必要がない」という肢で,比較衡量することが求められます。つまり,どっち

の方がより強い誤りかを判断する必要がありますが,この判断は解釈論の話になってしま

います。また,問題5については,他の肢から正しい肢と判断しなければならないエの肢

で,監査理論上も監査実務上も矛盾が生じています。確かに,監査基準や監査基準委員会

報告書では,「監査契約の締結時に職業的懐疑心の保持が求められる」とは明記されており

ません。しかし,「監査契約の締結時には職業的懐疑心の保持は求められない」ことは監査

理論上も監査実務上も間違いであると理解しています。この肢の出題者にも,どのような

知識を有した公認会計士を輩出したいと思って出題したのか,出題した趣旨や想いに疑問

を感じます。監査契約の締結時,つまり,経営者の誠実性を検討する際に,職業的懐疑心

を保持しない公認会計士を輩出したいという想いを込めて出題したのかと思うと,本当に

疑問を感じます。この問題も,職業的懐疑心をしっかりイメージしている受験生の方が間

違えてしまうという問題であるといえます。

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このような試験であったことを踏まえると,前回の5月の試験より,少し難しくなった

といえますし,残念ながら,今回の試験は,受験生皆さまの実力が反映される試験ではな

かったと思います。

このように,今回の問題については,色々と思うことがありますが,今更何を書いても

変わりません。私が今回の問題をみて一番危惧していることは,多くの受験生が監査論を

嫌いになってしまわないかということです。監査論は,公認会計士試験合格後,多くの方

がメインの仕事とする財務諸表監査の理論を学習する科目です。自分の仕事(その背景に

ある理論)を好きになれないことは,とても不幸なことだと思っています。次回以降は,

監査論を好きになる受験生が増えるような問題が出題されることを,一公認会計士として,

一教育者として,切に願っています。

その一方で,受験生の皆さま。私は,13 年間,この業界で講師をしておりますが,監査

論については,今回ほど実力が反映されない試験はありませんでした。この傾向は続かな

いと思います。そのため,受験生の皆さまにおかれましては,監査論を嫌いにならずに,

監査論という学問をもっともっと根幹から理解する,イメージするように,学習してほし

いと思います。

今回の監査論については,ここ数年の短答式試験の傾向どおり,幅広く様々な論点から

出題されております。具体的には,監査実施論から5問,監査報告論から2問,監査総論,

公認会計士法,金融商品取引法,会社法,監査主体論,内部統制監査,四半期レビュー,

監査人の交代,継続企業の前提,不正リスク対応基準から1問ずつ出題されております。

なお,この数年,毎回出題されていた監査の品質管理からの問題がなかったことには,少

し驚きました。

今回の短答式試験の難易度は,正答したい問題であるA問題が 12 問,正答が可能な問題

であるB問題が3問,C問題が3問でした。

なお,今回の試験の合格ボーダーは,A問題については 12 問中 10 問,B問題について

は3問中1問~2問,正答していただきたいので,60 点程度になると思っています。

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平成 27 年第Ⅰ回公認会計士試験

短答式本試験

監査論・解答解説

正解 1 (難易度:B)

ア.○ 監査人は,不正によるか誤謬によるかを問わず,全体としての財務諸表に重要な

虚偽表示がないことについて合理的な保証を得る責任があるが,監査には固有の限

界が存在するため,一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して適切に監査

計画を策定し適切に監査を実施しても,重要な虚偽表示が発見されないという回避

できないリスクがある。そのため,監査人が財務諸表の重要な虚偽の表示を発見で

きなかったとしても,独立性を保持し,適切な水準の正当な注意を払い,職業的懐

疑心を保持して監査を実施したことを監査人が自ら立証できれば,監査人の責任を

果たしたということができる。その一方で,監査人が立証できなければ,仮に,独

立性を保持し,適切な水準の正当な注意を払い,職業的懐疑心を保持して監査を実

施していたとしても,責任を負うことになる。そのため,責任を問われない「可能

性がある」という語尾であっても,正しい記述であると判断できる(監査基準委員

会報告書 200「財務諸表監査における総括的な目的」A50 項,A51 項)。

イ.○ (監査基準委員会報告書 200「財務諸表監査における総括的な目的」A1 項)

ウ.× 監査人は,不正によるか誤謬によるかを問わず,全体としての財務諸表に重要な

虚偽表示がないことについて合理的な保証を得る責任がある。つまり,監査人は,

財務諸表に重要な虚偽表示をもたらす不正がないことについて「合理的な保証」を

得る責任がある。そのため,監査人は,財務諸表に重要な虚偽表示をもたらす不正

の発見に対して責任を負うわけではないし,監査人が無限定適正意見を表明した場

合であっても,不正の発見に対して責任を果たしたことを意味するわけでもない(監

査基準委員会報告書 240「財務諸表監査における不正」5項)。

エ.× 監査意見は,継続企業の前提に重要な疑義があるかどうかの検討を経た上で,表

明されるものであるが,企業の将来の存続可能性を保証するものではない(監査基

準委員会報告書 200「財務諸表監査における総括的な目的」A1項)。

正解 4 (難易度:C)

ア.× 公認会計士は,登録抹消の処分を受けたのち,所定の期間を経過した後であれば,

再登録をすることはできる。しかし,再登録するための要件として,内閣総理大臣

の認可を受けることまでは求められていない(公認会計士法第4条6号)。

問題 1

問題 2

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イ.○ 公認会計士が会社の役員に就職した後に,当該会社が就職制限会社に該当する会

社と合併することとなったときは,当該合併を知らなかったこと,内閣総理大臣の

承認を得ることなど,一定の条件を満たす場合に限り,やむを得ない事情があると

認められ,就職制限に抵触しないものとして扱われる(公認会計士法第 28 条の2,

公認会計士法施行規則第 13 条第2項第1号)。

ウ.○ (公認会計士法第 34 条の 13 第4項,公認会計士法施行規則第 28 条)

エ.× 公認会計士法上の大会社等に係る監査を共同で実施しなければならない公認会計

士において,共同契約していた監査法人が解散した場合は,やむを得ない事情があ

るものとして扱われる(公認会計士法第 24 条の4,公認会計士法施行規則第 11 条

第4号)。

正解 2 (難易度:C)

ア.○ 公認会計士は,金融商品取引法の財務書類の監査において,財務計算に関する書

類の適正性の確保に影響を及ぼすおそれのある法令違反等事実について,まず経営

者等の特定発行者に書面で通知する。その上で,所定の期間を経過したにもかかわ

らず,特定発行者が適切な措置を取らない場合には,当該法令違反等事実が,特定

発行者の財務計算に関する書類の適正性の確保に「重大な」影響を及ぼすおそれが

ある場合で,公認会計士が当該重大な影響を防止するために必要があると認めると

きは,内閣総理大臣に意見を申し出ることが求められている。ここで,本肢では,

影響の重要性についての扱いが記述されていないため,素直に読むと,影響が重大

でなくても内閣総理大臣に意見を申し出なければならないと読めるので,誤りであ

る(金融商品取引法第 193 条の3第1項第2項)。

その一方で,出題者が単に「重大な」と書くべきところを失念したと考えれば,

本肢は正しいと読むこともできなくはない。

そのため,アの肢とエの肢の比較衡量によって正誤判断する必要があるが,エの

肢の方がより誤っているといえるので,アの肢を正しいと判断する。

イ.× いわゆる「挙証責任の転換」は金融商品取引法において規定されている(金融商

品取引法第 21 条第1項第3号,第2項第2号)。

ウ.○ (金融商品取引法第 24 条の5第4項,財務諸表等の監査証明に関する内閣府令第

1項 参考)

問題 3

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エ.× 財務諸表等の監査証明に関する内閣府令において,一般に公正妥当と認められる

監査に関する基準に該当するものが5つ列挙されており,そこには,財務報告に係

る内部統制の評価及び監査の基準は含まれていないため,本肢は誤りである(財務

諸表等の監査証明に関する内閣府令第3条第3項)。また,内閣府令を根拠にするの

であれば,監査における不正リスク対応基準について,条文の但し書きにあるよう

に,適用されない場合がある点に言及していないことについても若干の違和感を覚

える。さらに,日本公認会計士協会が公表している監査実務指針についても触れて

いないことも誤りの根拠として考えられる。

その一方で,財務諸表等の監査証明に関する内閣府令をベースに,上場会社に対

する監査を前提として肢を作成したと考えると,内部統制監査は一体監査として行

われるため,財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準は含まれていても問題

ないし,不正リスク対応基準も適用されない場合に言及する必要もない。このよう

に考えると,本肢は正しいと読むこともできなくはない。

そのため,アの肢とエの肢の比較衡量によって正誤判断する必要があるが,エの

肢の方がより誤っているといえる。

正解 3 (難易度:B)

ア.○ 委員会設置会社を除く取締役会設置会社は監査役を置かなければならないが,公

開会社でない会計参与設置会社については,この規制は除外される(会社法第 327

条第2項)。

イ.× 監査役が会計監査人を解任する場合,監査役が2人以上いる場合には,監査役の

全員の同意によって行わなければならない(会社法 340 条第2項)。

ウ.× 会計監査人は,その職務を行うため必要があるときは,会計監査人設置会社の子

会社に対して会計に関する報告を求め,又は会計監査人設置会社若しくはその子会

社の業務及び財産の状況の調査をすることができるが,いずれの場合であろうと監

査役等の承認を得る必要はない(会社法 396 条第3項)。

エ.○ 計算書類が法令または定款に適合するかどうかについて,会計監査人が監査委員

会または監査委員と意見を異にするときは,会計監査人は定時株主総会に出席して

意見を述べることが「できる」とされており,意見を述べなければならない訳では

ない。ただし,定時株主総会において会計監査人の出席を求める決議があれば,会

計監査人は,定時株主総会に出席して意見を述べなければならない(会社法第 398

条)。

問題 4

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正解 5 (難易度:A)

ア.× 不正リスク対応基準が設定されても,職業的懐疑心の考え方は,これまでの監査

基準で採られている,監査を行うに際し,経営者が誠実であるとも不誠実であると

も想定しないという中立的な観点を変更するものではない(「監査における不正リス

ク対応基準の設定について」二4(2))。

イ.○ 監査人は,四半期レビューにおいても,年度の財務諸表の監査におけると同様に

職業的専門家としての正当な注意を払い,特に,四半期財務諸表が一般に公正妥当

と認められる四半期財務諸表の作成基準に準拠して作成されていない事項が,すべ

ての重要な点において存在するかもしれないとの職業的懐疑心をもって四半期レビ

ューを計画し,実施しなければならない(「四半期レビュー基準の設定について」二

1)。

ウ.× 監査人が,過去の経験に基づいて,経営者,取締役等及び監査役等は信頼が置け

る,又は誠実であると認識していたとしても,それによって職業的懐疑心を保持す

る必要性が軽減されるわけではない(監査基準委員会報告書 200「財務諸表監査に

おける総括的な目的」A21 項)。

エ.○ 職業的懐疑心は,監査計画の策定から,その実施,監査証拠の評価,意見の形成

に至るまで,つまり,監査の過程を通じて保持することが求められている。また,

監査実務指針における注意を払うべき場合の例示においても,監査契約の締結時に

ついては言及されていない。そのため,おそらく,出題者は,監査基準の改訂前文,

または監査実務指針の文言をベースに問題を作成したと考えられる。しかし,職業

的懐疑心は,監査の全過程を通じて保持することが求められるものである。つまり,

監査人は,監査契約の締結時に経営者の誠実性を検討することが求められるが,懐

疑心を保持せずに経営者の誠実性を検討しても,まったく意味のない行為といわざ

るを得ない。このように,正しい理解・イメージをしている受験生ほど,誤ってい

る肢が3個となり,混乱を招く問題であるといえる。なお,本肢については,誤っ

ている肢であるが,他の肢が明らかに誤っているため,出題者の意図を考えて○肢

としている(「監査基準の改訂について(平成 14 年)」三 2(3),監査基準委員会報

告書 200「財務諸表監査における総括的な目的」A17 項~A19 項)。

正解 2 (難易度:C)

ア.○ 内部統制評価基準に基づき,本来,経営者が評価範囲に含めるべきであると監査

人が判断する内部統制について経営者が評価を実施していない場合,当該領域につ

いて,監査人は監査対象がそもそも存在せず,必要な監査手続を実施できないこと

になるため,監査人は,経営者が評価対象としなかった範囲の与える影響に応じて,

基本的には,監査範囲の制約に係る除外事項を付した限定付適正意見又は意見不表

明を検討することになる(監査・保証実務委員会報告第 82 号「財務報告に係る内部

統制の監査に関する実務上の取扱い」261 項)。

問題 5

問題 6

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イ.× 監査人は,事業規模が小規模で,比較的簡素な構造を有している組織等において

は,経営者が直接行った日常的モニタリングの結果や監査役が直接行った内部統制

の検証結果(例えば,棚卸の立会などの往査の結果をまとめた報告書等)を内部統

制の実施状況の検証として利用するなど,効率的な運用状況の検討が可能な場合が

ある(監査・保証実務委員会報告第 82 号「財務報告に係る内部統制の監査に関する

実務上の取扱い」159 項)。

ウ.○ 内部監査人等の客観性と能力が確保されており,内部監査人等による評価作業の

品質が監査証拠として利用できる水準であることを確認できた場合は,それらを利

用することができる。

ただし,内部統制監査において監査人が意見を表明するに当たって,監査人は自

ら,十分かつ適切な監査証拠を入手し,それに基づいて意見表明することとされて

いることから,内部監査人等の作業を自己の検証そのものに代えて利用することは

できない(監査・保証実務委員会報告第 82 号「財務報告に係る内部統制の監査に関

する実務上の取扱い」236 項,238 項)。

エ.× 経営者及び監査人は,ともに,いわゆるトップダウン型のリスク・アプローチに

基づく内部統制の評価又は監査をそれぞれ実施することが求められている。これは,

一体監査を実施するに当たっての評価手続との関係性で説明されているような印象

を受けなくもないが,必ずしも,財務諸表監査のリスク・アプローチ手法の変化が

背景にあるわけではない(監査・保証実務委員会報告第 82 号「財務報告に係る内部

統制の監査に関する実務上の取扱い」116~117 項)。

正解 5 (難易度:A)

ア.× 監査人は,四半期財務諸表と総勘定元帳,連結精算表等との突合を行い両者が一

致又は調整後一致することにより,四半期財務諸表が,年度の財務諸表の作成の基

礎となる会計記録に基づいて作成されているか否かを確かめる必要がある。しかし,

四半期レビューは,財務諸表の適正性について意見を表明するものではないので,

当該会計記録の適正性について,証拠を入手することは求められていない(監査・

保証実務委員会報告第 83 号「四半期レビューに関する実務指針」32 項)。

イ.○ (監査・保証実務委員会報告第 83 号「四半期レビューに関する実務指針」31 項)

ウ.× 四半期レビューにおいては,実証手続は求められていないので,実証手続として

分析的手続を行うこともありえない(監査・保証実務委員会報告第 83 号「四半期レ

ビューに関する実務指針」31 項)。

エ.○ 四半期レビューにおける重要性の基準値を年度の財務諸表の監査に係る重要性の

基準値よりも小さくする場合もあり得るが,少なくとも,年度の財務諸表の監査に

係る重要性の基準値を上限とすべきである(監査・保証実務委員会報告第 83 号「四

半期レビューに関する実務指針」20 項)。

問題 7

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正解 1 (難易度:A)

ア.○ 前任監査人は,監査意見に影響を及ぼした,又は監査意見に影響を及ぼす可能性

のある財務諸表における重要な虚偽表示に関わる情報又は状況を把握していた場合

には,監査人予定者及び監査人に,それらを伝達しなければならない(監査基準委

員会報告書 900「監査人の交代」14 項,A7項)。

イ.○ (監査基準委員会報告書 900「監査人の交代」11 項)

ウ.× 監査人交代の理由が,事実を十分に反映したものになっておらず,前任監査人と

会社との間に監査業務の契約の締結の可否に関する判断に影響を与える可能性のあ

る意見の相違があることを示唆するような場合,監査人予定者は,当該業務の契約

を締結することが適当か否かの判断をするに当たって,前任監査人と直接意見を交

換し,事実又は状況を確認した上で慎重に判断することになる。しかし,このよう

な場合であっても,回答を必ず書面で入手しなければならないわけではない(監査

基準委員会報告書 900「監査人の交代」9項(3),A6項)。

エ.× 前任監査人は,監査人予定者及び監査人が監査契約の締結の可否を判断する又は

監査を実施する上で有用な情報を提供するため,適時に十分な引継を行わなければ

ならないため,既に監査契約を締結した監査人であることを理由として,監査調書

の閲覧を拒否することはできない(監査基準委員会報告書 900「監査人の交代」15

項)。

正解 6 (難易度:B)

ア.× 公認会計士は,保証業務リスクを合理的保証業務又は限定的保証業務に求められ

る水準に抑えるため,固有リスク及び統制リスクを個別に又は結合して評価するこ

とにより,発見リスクの水準を決定し,それに基づいて,証拠を収集する手続の選

択,実施の時期及び範囲を決定する。その際,公認会計士が固有リスク及び統制リ

スクを検討する程度は,保証業務リスクの程度により異なる(「財務情報等に係る保

証業務の概念的枠組みに関する意見書」七 5)。

イ.× 保証の対象が,主題それ自体であっても,当該保証業務の報告形式として,必ず

しも消極的形式を採用しなければならないわけではない(「財務情報等に係る保証業

務の概念的枠組みに関する意見書」二 2(1),(2))。

ウ.○ 主題の性格は,業務実施者が主題情報に係る保証を得る際の正確性及び入手可能

な証拠の説得力に影響するため,保証報告書には,かかる主題の性格を記載する必

要がある(「財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書」五 3)。

エ.○ 合意された手続は,実施される手続が主題に責任を負う者又は限られた利用者と

の間の合意によって特定されるため,業務実施者が自らの判断により証拠を入手し

ないこと,及び,手続の結果のみが報告され,結論が報告されないことから,保証

業務の定義を満たさない(「財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見

書」二 4(1)①)。

問題 8

問題 9

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正解 1 (難易度:A)

ア.○ 空欄Aに入る用語は「実在性」である。ここで,有価証券の実在性を立証するた

めには,株券や債券といった文書を実際に閲覧する手続が有効である(監査基準委

員会報告書 500「監査証拠」A14 項,A16 項)。

イ.○ 空欄Bに入る用語は「権利と義務」である。ここで,登記簿謄本や契約書は不動

産に関する権利の帰属も表しているため,本肢は正しい。

ウ.× 空欄Cに入る用語は「評価」である。ここで,得意先に対する売掛金残高の確認

は,売掛金の実在性を確かめるために実施される手続であり,回収可能性を含む売

掛金の評価の妥当性を立証するための監査証拠を入手することはできない(監査基

準委員会報告書 330「評価したリスクに対応する監査人の手続」A48 項)。

エ.× 空欄Dに入る用語は「期間配分」である。ここで,期末日後の時点において実施

される,当期の売上に対応する債権の回収に関連した記録の閲覧では,当該売上の

発生及び売上債権の実在性を立証することはできるが,当該売上の期間配分の適切

性を立証するための監査証拠を入手することはできない(監査基準委員会報告書

500「監査証拠」A28 項)。

正解 1 (難易度:A)

ア.○ 監査チームの主要メンバー以外のメンバーに討議の結論のすべてを伝達すること

は実務的ではない場合もあるので,本肢は正しい(監査基準委員会報告書315「企業

及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評価」9項,A15項)。

イ.○ 例えば経営者が不正な財務報告を行おうとしている場合など,従業員に対して質

問を実施することが適切な場合があるため,監査人は,不正又は誤謬による重要な

虚偽表示リスクを識別するための有用な情報を持っていると判断した従業員に対し

ても質問を実施することが求められている(監査基準委員会報告書 315「企業及び

企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評価」5項(1))。

ウ.× アナリストや格付機関の報告書のような外部情報は,監査人に有益な情報を提供

することがあるが,監査人は当該報告書を必ず入手しなければならないわけではな

い。また,当該報告書を入手する場合には,アナリストや格付機関から直接入手し

なければならないわけでもない(監査基準委員会報告書 315「企業及び企業環境の

理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評価」A36 項)。

エ.× デザインが有効でない内部統制について業務への適用状況を検討することは,監

査上意義がないといえる。なぜなら,当該検討の結果,仮に当該内部統制が業務に

適用されていると評価されても,デザインが有効でなければ,内部統制が有効であ

ると暫定的に評価することはできないからである。したがって,デザインが有効で

ないと評価された内部統制については,業務への適用の検討は行わない(監査基準

委員会報告書 315「企業及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別

と評価」A62 項)。

問題10

問題11

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正解 2 (難易度:A)

ア.○ (監査基準委員会報告書 501「特定項目の監査証拠」9項,A22項)

イ.× 以下の全ての要件を満たした場合には,監査人は単独の実証手続として消極的確

認を利用することができるため,本肢は誤りである。

⑴ 監査人が,重要な虚偽表示リスクを低いと評価し,アサーションに関連する

内部統制の運用状況の有効性に関して十分かつ適切な監査証拠を入手したこと。

⑵ 消極的確認の対象となる項目の母集団は,多数の少額で同種な勘定残高,取

引又は条件から構成されていること。

⑶ 確認差異の割合が非常に低く予想されていること。

⑷ 消極的確認の相手先が確認依頼を無視するであろう状況や条件の存在を監査

人が認識していないこと。

(監査基準委員会報告書 505「確認」14 項)

ウ.○ (監査基準委員会報告書 330「評価したリスクに対応する監査人の手続」17 項,

A41 項)

エ.× サンプルの抽出方法は監査人の判断によって決定されるが,母集団から抽出され

るサンプル数自体は,統計的サンプリング又は非統計的サンプリングの選択を決定

付ける判断基準とはならない(監査基準委員会報告書 530「監査サンプリング」A

9項)。

正解 4 (難易度:A)

ア.× 監査人は,監査役等と会う際に経営者が同席しない方が有効なコミュニケーショ

ンであると判断するため,本肢は誤りである(監査基準委員会報告書 260「監査役

等とのコミュニケーション」A7項)。

イ.○ (監査基準委員会報告書 260「監査役等とのコミュニケーション」18 項,A22 項)

ウ.○ 監査役等とのコミュニケーションが十分でなく,その状況が解消できない場合,

監査人は,重要な監査手続を実施できなかったことによる監査範囲の制約に関する

除外事項を付す場合がある(監査基準委員会報告書 260「監査役等とのコミュニケ

ーション」A43 項)。

エ.× 監査人は,監査役等とのコミュニケーション事項に,財務諸表監査は経営者又は

監査役等の責任を代替するものではないことを必ず含めなければならない(監査基

準委員会報告書 260「監査役等とのコミュニケーション」12 項(2))。

正解 5 (難易度:A)

ア.× 経営者から信頼性のある経営者確認書を入手したとしても,特定のアサーション

に関して監査人が入手する他の監査証拠の種類又は範囲には影響を及ぼさない(監

査基準委員会報告書 580「経営者確認書」4項)。

問題13

問題14

問題12

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イ.○ 必ずしも全ての被監査会社が「最高経営責任者」や「最高財務責任者」といった

名称を用いているわけではないため,経営者確認書の要請先の役職名は限定されて

いない(監査基準委員会報告書 580「経営者確認書」A2項)。

ウ.× 監査人が経営者確認書への記載を要請した事項に経営者が変更を加えている場合

であっても,そのことが,要請した事項について,確認が得られなかったことを必

ずしも意味するわけではない(監査基準委員会報告書 580「経営者確認書」A23 項)。

エ.○ (監査基準委員会報告書 580「経営者確認書」A14 項)

正解 4 (難易度:A)

ア.× 財務諸表監査には,監査手続の限界,時間的・資源的制約などといった固有の限

界が存在するため,監査人は,財務諸表の適正性について絶対的な保証を得ること

はできない。したがって,無限定適正意見を表明する場合であっても,あくまで合

理的な保証水準の意見を表明するため,財務諸表に重要な虚偽表示が「存在しない」

旨の意見を表明することはない(監査基準委員会報告書 200「財務諸表監査におけ

る総括的な目的」5項)。

イ.○ (「監査基準」第四 報告基準 一 2)

ウ.○ (「監査基準」第四 報告基準 一 5)

エ.× 監査人は,監査意見の表明に当たっては,監査リスクを合理的に低い水準に抑え

た上で,自己の意見を形成するに足る基礎を得なければならない。よって,重要な

監査手続を実施できなかったことにより,自己の意見を形成するに足る基礎を得ら

れなかった場合には,意見を表明することはできない。以上より,本問の場合,限

定付適正意見を表明することができない(「監査基準」第四 報告基準 一 4)。

正解 3 (難易度:A)

ア.○ (監査基準委員会報告書 570「継続企業」A27 項)

イ.× 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象又は状況に対し,経営者が対応し

た結果,継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められない場合には,経営者

が財務諸表にその旨を注記することは求められていないため,本肢は誤りである。

ウ.× 同上。

エ.○ (監査基準委員会報告書 570「継続企業」18 項)

問題16

問題15

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正解 2 (難易度:A)

連結財務諸表に対する監査報告書の「監査人の責任」区分は,以下のとおりである。

監査人の責任

当監査法人の責任は,当監査法人が実施した監査に基づいて,独立の立場から連結財務

諸表に対する意見を表明することにある。当監査法人は,我が国において一般に公正妥当

と認められる(オ.監査の基準)に準拠して監査を行った。(オ.監査の基準)は,当監

査法人に連結財務諸表に重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得るため

に,(イ.監査計画)を策定し,これに基づき監査を実施することを求めている。

監査においては,連結財務諸表の金額及び開示について(ウ.監査証拠)を入手するた

めの手続が実施される。(エ.監査手続)は,当監査法人の判断により,不正又は誤謬に

よる連結財務諸表の重要な虚偽表示のリスクの評価に基づいて選択及び適用される。財務

諸表監査の目的は,(カ.内部統制)の有効性について(ア.意見表明)するためのもの

ではないが,当監査法人は,リスク評価の実施に際して,状況に応じた適切な(エ.監査

手続)を立案するために,連結財務諸表の作成と適正な表示に関連する(カ.内部統制)

を検討する。また,監査には,経営者が採用した会計方針及びその適用方法並びに経営者

によって行われた見積りの評価も含め全体としての連結財務諸表の表示を検討することが

含まれる。

当監査法人は,(ア.意見表明)の基礎となる十分かつ適切な(ウ.監査証拠)を入手

したと判断している。

したがって,空欄に1回だけ記入される用語は,イ.の「監査計画」である(監査・保証

実務委員会実務指針第 85 号「監査報告書の文例」文例1)。

正解 2 (難易度:A)

ア.○ (「監査における不正リスク対応基準の設定について」二 3(1))

イ.× 前段の文章は正しいが,不正リスク対応基準は重要な虚偽の表示とは関係のない

不正は対象としていないため,誤りである(「監査における不正リスク対応基準の設

定について」二 2(1))。

ウ.○ (「監査における不正リスク対応基準」第二 6)

エ.× たしかに,企業会計審議会監査部会の審議においては,「循環取引」のように被監

査企業と取引先企業の通謀が疑われる場合等に,監査人として採用することが考え

られる監査手続として,「取引先企業の監査人との連携」が議論された。しかしなが

ら,「取引先企業の監査人との連携」は,被監査企業と取引先企業の通謀が疑われる

場合の一つの監査手続であると考えられるものの,解決すべき論点が多いことから,

監査における不正リスク対応基準には含められていない(「監査における不正リスク

対応基準の設定について」一 2)。

問題17

問題18