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第4章 ケアラーズカフェの立ち上げモデル実践 1.はじめに〜ケアラーズカフェ設置の経緯〜… ……………………………………………………… 60 2.ケアラーズカフェ立ち上げモデル実践事業の概要… ……………………………………………… 60 3.ケアラーズカフェのモデル事業報告(3地域) (吉田義人・志村照子・森川恵子) ……………… 60 4.ケアラーズカフェアンケートの配付と調査方法… ………………………………………………… 68 5.ケアラーズカフェアンケートの結果 (松澤明美) ………………………………………………… 69 6.結果の考察… …………………………………………………………………………………………… 75 7.今回のアンケート調査の限界と今後の課題… ……………………………………………………… 76 8.おわりに… ……………………………………………………………………………………………… 76

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第4章ケアラーズカフェの立ち上げモデル実践

1.はじめに〜ケアラーズカフェ設置の経緯〜… ……………………………………………………… 602.ケアラーズカフェ立ち上げモデル実践事業の概要… ……………………………………………… 603.ケアラーズカフェのモデル事業報告(3地域)(吉田義人・志村照子・森川恵子)… ……………… 604.ケアラーズカフェアンケートの配付と調査方法… ………………………………………………… 685.ケアラーズカフェアンケートの結果(松澤明美)… ………………………………………………… 696.結果の考察… …………………………………………………………………………………………… 757.今回のアンケート調査の限界と今後の課題… ……………………………………………………… 768.おわりに… ……………………………………………………………………………………………… 76

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 以下に、各地域からの「事業ふりかえり報告」をまとめたものを2部に分けて記載する。

 ケアラーズカフェは文字通り、「ケアラーのために街に設置されたカフェ」である。 特定非営利活動法人介護者サポートネットワークセンター・アラジン(以下、アラジン)がケアラー(家族などの無償の介護者)連盟(現・日本ケアラー連盟)と共に行った2010年度のケアラー実態調査によると、ケアラーのうち孤立感を抱える人の割合が20.4%であった。アラジンでは、2007年より地域でケアラーが孤立しないために、

「介護者の会」を社会資源と位置づけ、その立ち上げやネットワーク化を推進する事業を実施してきた。しかしながらこうした自助グループの集まりは、ほとんどの地域では月1回(せいぜい2回)の定例会を開催するのが精一杯な現状である。月1回の集いに焦点を合わせ、出かけていける人はごく一部にすぎず、ケアラーのストレスや葛藤は

日常的に起こることである。そこで、ケアラーが日常、行きたいときに行ける場こそが必要であるとの認識に至り、アラジンでは2012年4月、東京都杉並区阿佐谷でケアラーズカフェの第1号モデルを立ち上げた。 栗山町では、前述のケアラー実態調査によりケラアーの実態が明らかになり、町ぐるみで「介護者支援を」という気運が高まってきていた。また、さいたま市では「介護者サロン」を実施したケアラーサポーター達が、ケアラーと地域で向き合い支援するという実践を少しずつ積み重ねてきていた。 このような背景に裏づけられ、地域でケアラーを支援するツールの1つとして「ケアラーズカフェの立ち上げモデル実践事業」をこの3地域で実施する運びとなった。

第4章 ケアラーズカフェ立ち上げモデル実践

1.はじめに〜ケアラーズカフェ設置の経緯〜

3.ケアラーズカフェのモデル事業報告(3地域)

 本事業の手順は、下記の通りである。 

 地域ごとにケアラーズカフェモデル事業を振り返る報告シート(事業の実際・成果と課題)を作成する。

2)ケアラーズカフェのモデル事業報告シートの作成

 北海道栗山町、埼玉県さいたま市、東京都杉並区の3地域にて、「ケアラーズカフェ」を立ち上げ、モデル事業を実施する。

1)ケアラーズカフェのモデル事業の実施

 各地域で、介護者あるいは介護経験者に「ケアラーズカフェ」についての質問紙調査(「ケアラーズカフェアンケート」)を実施する。

3)ケラアーズカフェアンケートの配布と実施

2.ケアラーズカフェ立ち上げモデル実践事業の概要

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(1)その1 事業の実態①立ち上げの背景と動機②ケアラーズカフェの実態③ケアラーズカフェの状況と対応

(2)その2 事業の評価①ケアラーズカフェモデル事業の成果②ケアラーズカフェモデル事業の課題③ケアラーズカフェモデル事業の今後

(1)その1 事業の実態

1)北海道栗山町(栗山町社会福祉協議会)

 栗山町では、2010年11月にアラジンの委託を受けて、ケアラー実態調査を全世帯を対象に実施をした。その結果全世帯の実に約15%がケアラー世帯であることがわかり、その対策が急務であると判断した。ケアラーからは

「自分の健康が心配だ」「自分の時間が取れない」「ゆっくりご飯が食べたい」「地域と疎遠になっている」などの叫びにも似た声が寄せられた。そこで、栗山町社会福祉協議会(以下、栗山町社協)では日本ケアラー連盟の協力を仰ぎ、地域とケアラーを少しでもつなぐ必要があると考え、2012年4月に「ケアラー手帳」を作成しケアラー世帯に配付、行政、介護保険事業所、民生委員、町内会、栗山町社協などが連携してケアラーのサポート事業をスタートさせた。

 特に、栗山町社協では新たなマンパワーとして「在宅サポーター」を採用し、日常的にケアラー世帯を訪問してニーズの把握などを行い関係機関につなげている。近年、全国的に介護の不安からくる虐待や孤立死などが相次いで発生しており、このケアラー手帳がケアラーと地域との接着剤になることが期待される。 しかし、本町のように住宅が点在する地域では個 の々世帯へのサポートが日常的には困難であることから、ケアラーが気軽に立ち寄れる場づくりが今後求められると考え、このたび「まちなかケアラーズカフェ」のモデル実証を実施しようと考えた。ケアラーもボランティアも互いが足を運び交流することで、次代に向けたインフォーマルサービスの新しいかたちが見えてくると考えるものである。

①立ち上げの背景と動機

●オープン日:2012年10月30日●場所:町役場前で人通りの多い立地条件のよい「いき

いき交流プラザ」を借用することができた。●開催日:月~土曜日 9:00 ~ 17:00●スタッフ体制:常勤スタッフ2名(介護福祉士)。勤務は

1日交代。ボランティア協力1名(ボランティア連絡協議会および老人クラブ連合会に協力依頼)

●PRの方法:チラシ作成配布。社協だより、町広報などで広く町民へ周知をした。さらに栗山町社協の在宅サ

ポーターや介護保険事業者(ケアマネジャー)などがケアラー世帯を訪問し、ケアラーズカフェの活用について積極的にPRを実施した。

●実施日数・利用人数:・延べ日数:94日・延べ利用人数:2,536名(男性1,097名、女性1,439名)・1日あたりの平均利用者数:27名

●お茶、コーヒー、ケーキ、たいやきなどを提供

②ケアラーズカフェの実態

・小さな町であり、当初よりケアラーのみを対象にした場 合に多く利用が期待できないことから、すべての町民を

③ケアラーズカフェの状況と対応A:ケアラーの様子について気づいたこと

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対象に事業をスタートした。ケアラーについては火曜日を「笑顔の日」として受け皿をつくり、地域包括支援センター、保健師、傾聴ボランティアなどを配置してケアラーの相談などに対応することにした。

・ケアラー自身から話をしてくることが少ないことから、スタッフが積極的に話かけると抱えている悩みなどについて話をしてくれ、帰りには来たときとは違うさわやかな表情が見受けられた。

・まだまだ本町では、ケアラーであることを知られたくない人が多いこともあり、ケアラーズカフェという雰囲気を感じてもらうだけでも心の癒しになっているように感じた。

・ケアラーズカフェで開催している「いきいき講座」に参加したことで、短い時間であるが介護のことを忘れることができたとの声が多く聞かれ、生涯学習の重要性を痛感した(今後教育委員会社会教育との連携が必要)。

・ケアラーがケアラーズカフェに来ることだけでも相当の決断をしてのことであるから、上手に聴き手にまわることで心を開いてもらい癒しにつなげる。

・ケアラーは自らサービスを求めることがないことため、会話のなかから潜在的なニーズを把握し、関係機関に情

報提供していく。・スタッフ自身の生活経験や家族の話をすることで、ケア

ラーの心を開く可能性があることから、できるだけ身近な話題での会話に心がける。

B:ケアラーへの対応で心がけたこと

2)埼玉県さいたま市(さいたまNPOセンター、ほっと・おおみや)

 さいたま市では、 26カ所の地域包括支援センターで「介護者サロン」が開かれており、市としても介護者支援の取り組みに力を入れはじめている。 また、2009度に特定非営利活動法人さいたまNPOセンターとさいたま市の協働事業として「認知症サポーターフォローアップセミナー」が開かれ、そのセミナーを受講した人達がさいたま市の各地でボランティアとして活動をはじめている。 今回ケアラーズカフェのモデル事業を日本ケアラー連盟から委託されたさいたまNPOセンターがその運営を

託した「ほっと・おおみや」は、このセミナーを受講した主に大宮区の人達を中心にしてつくられたボランティア団体である。「ほっと・おおみや」では、これまで月に1回介護者サロンを開催してきており、そうした経験からモデル事業としてのケアラーズカフェの運営の打診があった。ケアラーズカフェは介護者サロンとはまた違ったかたちのもので、それを経験でき、いろいろ学べるよい機会になるのではないか、そしてそこを拠点として地域とのつながりももてるようになるのではないかということで引き受けることになった。

①立ち上げの背景と動機

●オープン日:2012年10月31日●場所:大宮駅からできるだけ近く、人通りの多いところ

を探す。駅近くに物件をもつオーナーを紹介され借りられることになった。

●開催日:水曜日10:00 ~ 15:00、金曜日10:00 ~17:00

●スタッフ体制:・担当は「ほっと・おおみや」の会員と、月に1回ずつ、ボ

ランティアをお願いする。・1日2時間ないし3時間ごとの交代制で2人ずつ担当

する。●PRの方法:

・チラシ配布(市・区役所、公民館、地域包括支援センター、病院など)

・訪問(地域包括支援センター、病院、社会福祉協議会など)

・区民ふれあいフェアでのパネル展示、大宮区市民活動ネットワークへの呼びかけ

・タウン誌、新聞への掲載●実施日数・利用人数:・延べ日数:35日・延べ利用人数:243名(男性38名、女性205名)

内訳:20代3名、30代9名、40代22名、50代75名、60代101名、70代26名、80代以上7名

②ケアラーズカフェの実態

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・1日あたりの平均利用者数:7名 ●お茶とお菓子を提供

・お茶を飲んで、ゆっくり寛ぐだけという人はいない。皆、誰かに話を聴いてほしいという思いで来ている。

・毎日大変な思いをしている人が多く、話の内容は重い。・「何でも話せる場がほしかった」「家族には話せないこと

も話せる」「もっと前からほしかった」「初めて自分の本

音を話せる場を見つけられた」「ずっと続けてほしい」などの声。

・来たときと帰るときで表情が変わる。明るくなる。・相談事などは後で調べ、情報をお知らせした。

A:ケアラーの様子について気づいたこと

・笑顔で迎え、できるだけ明るい雰囲気づくりを心がける。

・守秘義務を守る。・充分時間をかけ、話をじっくり聴く。その人に寄り添った

聴き方をし、気持ちを理解する。

・同情ではなく、共感するという立場をとる。・来た方には必ず何らかの声かけをする。・教えていただける人には住所を聞き、その方に必要な

情報があったときにお知らせする。・マスコミ、宗教関係者に気をつける。

B:ケアラーへの対応で心がけたこと

3)東京都杉並区(アラジン)

 前述したように、阿佐ヶ谷のケアラーズカフェは2012年4月にオープンをした。 アラジンでは、2001年から地域で孤立しがちなケアラーを支えるしくみづくりとして、ケアフレンド(ケアラーを訪問して話しを聴くボランティア)・オアシス(ケアラーのための電話相談)や自治体と協働した介護者の会づくり

(2005 ~ 2012年:杉並区・港区・練馬区・目黒区・豊島区等)など、様 な々ケアラーへの直接的なサービスを試行してきた。近年、ケアラーのなかに若い世代(特に30~ 40代中心としたシングル層)が目立つようになり、その多くが孤立感を抱いていると感じた。

 そこで数年前から娘(介護者)サロンや息子(介護者)サロンを開催するようになった。そのなかで語られるのは、介護がはじまるまで、あるいははじまってからも有益な情報をなかなか得る機会がない、同世代のケアラーと出会うことが少ないといった実情だった。また既存の介護者の会では、世代の違いなどにより、悩みや課題が異なるということもよく聞かれた。そこで若い人でもふらっと好きなときに立ち寄り、情報や仲間が得られる拠点=ケアラーズカフェを創ろうと考えたのである。店舗は、ケアマネジャーからの地域情報をきっかけに、元ケアラーのオーナーから好意的に借りることができた。

①立ち上げの背景と動機

●オープン日:2012年4月13日●場所:阿佐谷北口商店街、駅より徒歩2分、地域の総

合病院の真向かいという好条件の物件の紹介があり、賃貸契約を結ぶ。店主は元ケアラー(6坪)

●開催日:火~土曜日 11:30 ~ 17:00、ランチ&喫茶、木・金バータイムあり

●スタッフ体制:シェフ1名、アラジンスタッフ1名、ボランティア(厨房およびホール各1名)

●PRの方法:チラシ作成配布。テレビや雑誌などメディ

アによる広報。口コミ。ケアマネ連絡会など●実施日数・利用人数・延べ日数:94日(調査期間中)・延べ利用人数:1,442名(男性466名、女性976名)

内訳:20代~ 40代303名、50代345名、60代483名、70代227名、80代以上73名、不明11名

・1日あたりの平均利用者数:15名●定食、コーヒー、ケーキなどを提供

②ケアラーズカフェの実態

③ケアラーズカフェの状況と対応

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・来店時には表情が曇っているケアラーが、日頃の思いを話し、ケアラーズカフェを出るときには表情が晴れやかなっていることが多い。

・「こんな場所を望んでいた」「(誰にも話せなかった)話ができてよかった」「(自分と)同じケアラーの仲間がいることを知った」「もっと早く知りたかった」等の声が寄

せられる。・ケアラーズカフェの前で立ち止まっている方へ声をかけ

ることにより、ケアラーとわかることも多くある。・「こんな場所があると知り励みになる」「中で話しがした

いが、それ以上に今は眠りたい」等、今はゆっくりできないが、いつかはとの声も多く聞く。

③ケアラーズカフェの状況と対応A:ケアラーの様子について気づいたこと

・安心し寛げる場となるよう、笑顔でさりげない声かけを努めた。

・ケアラーが被介護者と共に安心して足を運べるよう、被介護者の話し相手となることや声をかけながら、車椅子や杖歩行の方への介助を行った。

・介護がはじまったばかりなどで何の情報ももっていな

いケアラーに対しては、地域包括支援センターやインフォーマルなサービスなど適宜情報提供を行った。

・孤立しがちだったり、同じようなケアラーと知り合いたいと願っている、あるいはつながったほうがよいだろうと思われるケアラーには、地域の介護者の会などの情報提供も合わせて行った。

B:ケアラーへの対応で心がけたこと

(2)その2 事業の評価

1)北海道栗山町(栗山町社会福祉協議会)

①ケアラーズカフェモデル事業の成果

・従来より、ケアラーにはリフレッシュしたくとも気軽に行く場所がなかったことから、ケアラーズカフェができたことで自分の意思で足を運ぶことができるようになった。

・「ケアラーズカフェ」としたことでケアラーにとっては自分たちのためのものができたとの認識が広がり、今後の活用が大いに期待できる。

・ケアラーズカフェで開催する「いきいき講座」や介護などに関する図書の整備により、ケアラーが気軽にリフレッ

シュや学習ができ、大きな癒しの場となっている。・ケアラーが被介護者と一緒に足を運ぶこともあることか

ら、地域ケアの新しい場として今後の可能性が期待できる。

・土曜日などは、町外にいる家族が被介護者と訪れ、スタッフとの交流の中からケアラーとしての認識を深めるきっかけとなっている。

A:ケアラーにとって

・小さな町では特定の層にターゲットを絞った対策は受け入れられないことから、多世代を対象とした「まちなかケアラーズカフェ」という新しい発想の場づくりにより、ケアラーはもとより1人暮らし高齢者やボランティア、子どもたちなどの交流が自然なかたちで進んでいる。今後この関係が発展し相互に支え合うことが期待できる。

・2010年度のケアラー実態調査ではケアラーになると地域(町内会や老人クラブなど)と疎遠になるという結果

が出ていたが、ケアラーズカフェにはケアラーやボランティア、民生委員などが互いに足を運び交流を図ることから、地域の新しいインフォーマルサービスの拠点として活用が期待できる。

・個人情報保護条例制定後、個 の々世帯へのボランティア活動には多くの制限が生じていたが、ケアラーズカフェができたことで多くのボランティアが参加するようになり、ここでの交流が広がり、今後各ケアラー世帯でのボランティア受け入れへの展開が期待できる。

B:地域にとって

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・栗山町社協が運営していることから、多くの方から気軽に設備や運営に対して提言が寄せられ、なかには自ら改善を実践する方まで現れ、私どもが目指す町民が主体的に運営する施設になることが期待できる。

・ケアラーや高齢者の生の声が日常的に把握できることから、今後の地域福祉の対策に向けて多くの示唆をもらうことにつながっている。

C:スタッフ(団体)にとって

②ケアラーズカフェ事業の課題

・ケアラーのなかにはケアラーズカフェに行きたいが「家を空けられない」「1人で行くのは……」「交通の手段がない」等の声が多く聞かれた。特に交通手段の確保については、今後移送サービス等の充実が必要である。

・女性の利用者に対し男性が少ないことから、男性が利用しやすい事業の企画をしていく必要がある(息子サロン、男の介護教室など)。

A:利用者

・ケアラーズカフェスタッフ以外に各ボランティア団体や老人クラブ連合会などが積極的に協力・参加してくれており、新しい活動の場としてケアラーズカフェが認知されつつある。今後は各町内会との連携をどのように図

るかが重要になってくると考える。・現在ケアラーズカフェでは設備の関係から食事などは

出していないが、利用者からは昼食時に軽食などを希望する意見が多くある。今後検討が必要である。

B:運営(経営)

・ケアラーズカフェが1カ所であることから、他の地域より設置の要望が出ており、今後どのようにして地域展開するかが大きな課題である。

・各介護保険事業者や地域包括支援センターのケアマ

ネジャーと連携を取り、要介護者の支援だけでなくケアラーの心と体の状態を心配し、ケアラーズカフェの活用につなげる働きかけが必要である。

C:周知・地域との連携など

・ケアラーズカフェは、子どもから高齢者の多世代が楽しめる場づくりを目指しているが、20代、30代の来館が少ない。そこで、現在は保健師と連携し、乳幼児健診

時にケアラーズカフェ活用のPRを積極的に実施している。

D:その他(運営についての苦労)

・多くのマスコミに取り上げられたことから、北海道内の各地から視察が多く訪れた。ケアラーズカフェの事業

化を検討したいとの声が多く聞かれ、今後道内各地で展開が期待できる。

E:その他

・ケアラーズカフェの開設以来、ケアラーを中心に予想を越える多くの利用者があり、町内外から高い評価を得ている。特に行政からは地域福祉のインフォーマルサービスとして高い評価を得ることができた。

・このことから、私どもでは2013年度以降もケアラーズカフェを継続するとともに、現在のケアラーズカフェを

拠点として、町内全域に町民が主体で運営するプチカフェの設置をしていく。下駄履きで行ける身近なところにケアラーやボランティアが集まり、日常的に支え合うことが新しい次代の地域福祉の充実に大きな役割を果たすものと確信をしている。

③ケアラーズカフェモデル事業の今後

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2)埼玉県さいたま市(さいたまNPOセンター、ほっと・おおみや)

①ケアラーズカフェモデル事業の成果

・充分話をできる場ができ、心が癒された。・気持ちをわかってくれる人がいることを知り、日頃の思

いを打ち明けられた。

・家を離れてゆっくり寛げた。・知りたい情報が得られた。・同じ立場の人との情報交換ができた。

A:ケアラーにとって

・ケアラー支援の場としてこうしたところが必要だというこ とを理解してもらえた。B:地域にとって

・より深くケアラーの実態がわかった。・スタッフ自身の研修の場になった。

・地域の様 な々人や団体とのつながりができた。C:スタッフ(団体)にとって

②ケアラーズカフェ事業の課題

・来たいが時間的な都合がなかなかつかない。・自分の都合のよい曜日、時間に開いていない。・必要としている人にこうした場の存在が伝わらない。

・ケアラーズカフェに来ることで家族への罪悪感を感じる。

A:利用者

・週 に2日だけの開催で来られる人が限られる。・時間も遅くまで開いていれば来られるという人もいる(数は少ないが)。

・スタッフは2 ~ 3時間ごとの交代制をとったが、話の途中ではなかなか切れないこともある。

・場所が狭いため多くの人の対応が難しい。離れた場所で話すということができない。

・ミニ講座を何回か開いたが、楽しみにしてきている人もいるが、話をしたいという人がゆっくり話せないということがあった。講座の内容、場所的な問題がある。

B:運営(経営)

・「もっと続けてほしい」という利用者の声があり、2013年4月から場所を変えて続けることになった。週に2回、10:00 ~ 13:00という設定で、限られた時間でしか開けない。できればさらに増やし、時間も延長し、都合のよいときにいつでも来られる場にしたいと思うが、予算等の問題があり、条件が限られてしまう。行政の公的な

援助があるとよい。・「ケアラーズカフェ だん・だん」を多くの人に知ってもら

い、ここが発信基地となり、地域にこうした場がさらに広がっていくとよいと思っている。

・介護者の実態を知ってもらうことも大切で、我 も々さらにいろいろな場で訴えていく必要がある。

③ケアラーズカフェモデル事業の今後

3)東京都杉並区(アラジン)

①ケアラーズカフェモデル事業の成果

・常設のケアラーズカフェの運営により、ケアラーの都合で立ち寄ることができる場ができた。

・介護、ケアの話をする場ができた。

・これまで出会うことのなかった同じ立場のケアラーとの出会いにより、仲間ができた。

・介護に役立つ講座やストレス解消になる講座の開催に

A:ケアラーにとって

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より、ケアラーが気軽に学びや癒しの時間をもつことができた。

・被介護者の話し相手になることにより、介護者が被介護者と共に安心して足を運べる場となった。

・ケアラー以外の来店者に、ケアラーの存在を知っていただき、介護についての情報が得られる場として周知できた。

・1人暮らし高齢者、ケアラー、子どもたちが自然に交流し、相互に支え合う関係づくりが生まれた。

B:地域にとって

②ケアラーズカフェ事業の課題

・いつでも、ケアラーの都合に合わせて好きなときに来られるように火~土曜日にオープンしてきたが、「来たいが来られない」という人はまだまだ多い。また地元のケアラーに伝わりきれていないと思われる。本当にこうした場が必要なケアラーに知らせる工夫が必要である。ケアラーがケアラーズカフェに来るためには、介護が必

要な人を預ける手立てが必要だが、現状ではデイサービスなどの既存のフォーマルサービスしかない。今後は地域で見守る、生活支援を行うなどインフォーマルなサービスを創設する必要があるのではないかと思われる。

A:利用者

・今年度は補助金等により何とか経営できたが、人件費や家賃などの支出はケアラーズカフェでの収入では補

えず、他の収益事業などを推進することが急務となっている。

B:運営(経営)

・自治体の窓口でもケアラーズカフェのチラシを置いてもらうことができているが、さらに地域へ細やかに伝える仕組みが必要である。特に直に家庭へ訪問してケア

ラーと接しているケアマネジャーや町会長、民生委員や見守りの活動員などとの組織と連携する必要があろう。

C:周知・地域との連携など

・今回のケアラーズカフェのモデル事業は広くマスコミなどにより取り上げられ、全国に知られることとなった。その結果全国各地から「ノウハウを知りたい」「地元で立

ち上げたい」という個人や団体が見学に来られ、波及のきざしがみられる。

D:その他

・事業型として立ち上げたケアラーズカフェだが、第1号モデルとして、その必要性を知らしめるにはあまりある実践であった。

・今後は、飲食の事業は調理側に一任し、ケアラーズカフェのソフト面(ケアの内容)をより浮き立たせるために

運営のかたちは変わるが実践は続けていくことになった。ほぼ1年かかったが、地域にも溶け込んだ感がある。

・地域でこのような場が多く存在できる仕組みについて、さらに試行事業を行っていきたい。

③ケアラーズカフェモデル事業の今後

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 調査対象は、3地域のケアラーズカフェを利用したケアラーのうち協力を得られたケアラー(北海道栗山町15名、埼玉県さいたま市30名、東京都杉並区19名、計

64名)。今回はケアラーズカフェを利用するケアラーの実態に即し、高齢者を介護するケアラーがほとんどであった。

 ケアラーカフェに関するアンケート調査についてまとめる。

4.ケアラーズカフェアンケートの配付と調査方法

 調査方法は、無記名自記式質問用紙による。ケアラーズカフェの状況に応じて、ケアラーズカフェスタッフからアンケート協力を依頼し、合意を得たケアラーに調査票

を配付した。またスタッフによっては、聞き取りの方法を取った場合もあった。

 2012年10月~ 2013年3月

 ケアラーズカフェの評価にあたっては次の6つの評価指標を設定した。

(1)調査対象者

(2)調査方法

(3)調査時期

(4)調査内容

1 ケアラーズカフェを利用したケラアーがケアラーズカフェにどのようなよさを感じているのか2 ケアラーズカフェの利用により、ケアラー自身が生活に変化や効果があったと感じたかどうか。あった場

合、どのような効果を感じているか3 スタッフ等とのコミュニケ―ンができたか4 講座やサロンにケアラーが参加しているかどうか5 ケアラーズカフェの社会的な価値をケアラーがどのように感じているか6 ケアラーズカフェへの要望は何か

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 これらを踏まえて、下記の内容で調査票を作成した(資料編参照)。

・ケアラーズカフェを知った経緯について・ケアラーの基本属性(性別・年代)・職業の有無・要介護者の属性(性別・年代)・続柄・要介護度・障がいの有無・介護期間・サポートの有無・介護で困難なことは何か・ケアラーズカフェに来るときに要介護者はどうしているか・ケアラーズカフェの印象と場所・開催日時について・スタッフや介護者との交流について・ケアラーズカフェを利用した効果について・ケアラーズカフェの利用による生活の変化について・ケアラーズカフェへの要望(講座や催し・集い)・ケアラーズカフェの意義や役割について・多くの人が来るための工夫について・その他

 質問紙調査法において収集したデータについては単純集計のうえ記述する。また自由記述欄については内容

をよく読み項目内容ごとにまとめて記載する。

(5)分析方法

 アンケート調査に協力いただいたケアラーの数は、64名(栗山町15名、埼玉30名、東京19名)であった。

*栗山町は、高齢者などからのアンケートが多かったが、今回はケアラーの調査票のみを有効にした。

5.ケアラーズカフェアンケートの結果(1)調査対象者の基本属性

 全体としては、ケアラーの年代は60代が最も多く(31.3%)、ついで70代(20.3%)、50代(18.8%)となっているが、東京は40代(36.8%)が最も多い割合となっている(図1)。性別については、女性75.0%、男性17.2%で、やはり圧倒的に女性ケアラーが多くなっている。

仕事の有無については、現在何らかの仕事をしている利用者の割合は、14.4%と少ない。かつて「していた」利用者の割合は、栗山26.7%、埼玉40.0%、東京42.1%であった。

1)ケアラーの属性

 年齢は80代以上が最も多く(36名)、ついで70代(16名)となっている。病気や障がいについては、要介護度別に大きく4つに分類をした。低介護群(要介護1 ~ 2)が最も多く(25.0%)、ついで重介護群(要介護4 ~ 5)が多

くなっていた(20.3%)。地域別にみると東京は低介護群が多く(52.6%)、埼玉は重介護群が多い(33.3%)。無回答も多かった(43.8%) 障害認定については、回答数が極端に少ないが身体

2)被介護者(ケアを必要な人)について

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障害(1 ~ 3級)の方が17.2%。精神障害(1 ~ 3級)の方が3.1%おられた。また認知症の有無については、全体では「あり」が45.3%。埼玉と東京では半数以上が

認知症の人を介護していた。「なし」は20.3%、無回答も34.4%あった。

図1 あなたについて教えてください(年齢)

 介護経験年数については、40.6%が5年未満であった。地域別にみると栗山と東京は10年未満が多い(東京は100%、栗山は合計で67%)。それに対し、埼玉は10年未満が約半数いるが、10 ~ 20年が20.0%(20年以上も6.7%)で、比較的介護経験の長い人が利用する傾向にあった。 家族や地域の協力があるかについては、「よくある」と

「ときどきある」を合計すると、栗山は家族66.7%、地域33.3%と高く、ついで埼玉が家族53.6%、地域53.3%であった。それに対し、東京では「ほとんどない」「まったくない」の合計が、家族68.4%、地域58.9%と対照的であった。またケアラーズカフェに来る間、被介護者は、栗山、東京では半数以上が「家にいる」のに対し、埼玉では「デイサービス等を利用する」が36.7%と少し多かった。

3)介護環境について

 ケアラーズカフェの印象や雰囲気については、どの地域も7割以上の利用者が「とてもよい」と答えている。「まあまあ」を足すと栗山100%、埼玉90.6%、東京89.5%と、ほとんどの利用者が印象がよいと回答している。 ケアラーズカフェを知った経緯については、栗山では、栗山町社協、新聞、広報が多く、埼玉では友人からが多かった。 スタッフやボランティアと話しができたかという質問については、どの地域も90%以上の利用者が「できた」と回

答している。ケアラーと交流できたかについては、埼玉、東京では60%以上の利用者が「できた」と回答しているが、栗山では「できなかった」という利用者が40.0%見受けられた。 ケアラーズカフェの効果については、「ほっとひと息できた」「楽しかった」「情報が入手できた」という回答が多く、次に「リフレッシュできた」「いろいろ学べた」と続いている。地域別にみると栗山は「楽しかった」が最も多く、埼玉は「ほっとひと息つけた」という回答が目立った(図2)。

4)ケアラーズカフェについて

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 ケアラーズカフェでの講座に参加できたかについては、埼玉・東京では約40%が参加している。栗山は26.7%であった。役に立った情報はあったかの質問に関しては東

京が68.4%、埼玉は53.3%、栗山は20.0%の利用者が「ある」と回答していた。

図2 ケアラーズカフェを利用した効果について(複数回答)

 ケアラーズカフェを利用する時間帯については、栗山は喫茶タイム(66.7%)、埼玉は喫茶タイム(56.7%)、東京はお昼タイム(52.3%)が多かった。利用する頻度としては、栗山が週1回以上の頻回リピーター群が60.0%と多く、ついで東京は月1 ~ 3回以上のリピーター群が42.1%、埼玉はリピーター群36.7%、2回までの体験群が33.3%だった。

 「利用するようになって生活に変化があったか」の問いに対しては、埼玉、東京では75%以上の利用者が「かなりあった」または「少しあった」と回答している(図3)。ケアラーの集いに参加するかとの問いに対しては、埼玉、東京で60%以上が「はい」と回答している。栗山では53%以上の利用者が「はい」と回答しているが、26.7%の利用者は「いいえ」と回答している。

5)生活の変化について

 自由記述をカテゴリーに分類し、まとめたものを記載する(表1‐3)。

6)自由記述のまとめ

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図3 ケアラーズカフェを利用するようになって生活に変化はあったか

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1.孤立化を防止する

・孤立せず、人とのかかわりができ、引っぱり出し表現できるようになり、安心感が得られること(埼玉)/・孤独感を感じやすいケアラーにとって、自分1人ではないと思える場所。同じ悩みをもった人が集える空間(東京)/・孤立しがちなケアラーが、社会とつながることができる。自分の存在感を得ることができる(東京)/・社会とのかかわりがもてる(栗山)・社会から孤立しがちの家族にとってはとてもありがたい。今後、少子高齢化が進むと思われるのでますます大事な存在になるだろう(東京)

2.ネットワークの構築

・地域の高齢者達が支え合い生活するシステムつくりの中心になってほしい(埼玉)/・友達づくり(埼玉)/・お友達をつくる役割の場所になることを望みます(栗山)/・急速に高齢化が進むこの地で、こうしたケアラーズカフェができることは大きな意味があると考えます。ケアラーの出会いの場として、息長く続いていくことを願います(埼玉)/老々介護が進むなかにあって、公的介護の充実と共に、すき間をうめていく大切な仕事(埼玉)/・地域との中継点として大切な場所となるようになればと思う(栗山)

3.他者との交流

・同じような話ができるのはうれしいと思います(埼玉)/・人との交流やかかわりあいたい(栗山)/・人との交流、おつきあい(栗山)/・色々な人との会話ができる(栗山)/・コミュニケーションに役立つと思います(埼玉)/・懐かしい人の顔を見ることができ、懐かしさがわいてきました(栗山)/・幅広い年齢層の方々の交流の場になっていけばいいと思う(栗山)/・家から出ていろいろな人とお話ができて、明るい毎日を過ごすことができたらすばらしいと思います(栗山)

4 .シェルター ・昔のように近所づきあいや親戚づきあいが希薄になっている今こそ、必要な場所だと思う。私の場合、1人で抱えこんで心療内科にかかったり、命の電話に電話したりした。かけこみ寺のような存在。救われます(埼玉)/・広まれば、自分がいざ突然介護者になったときに息ぬきできる場所、逃げこめる場所がわかる(埼玉)

5.リラックス・気分転換

・介護者が集う、ホッとできる場所(東京)/・ひと息つける場所(埼玉)/・精神的やすらぎ(埼玉)/・介護者にとっては「ほっと、ひと息」できる時間帯ですし、お互いに助け合って孤独死など防げる連携プレイのできる社会…(埼玉)/・お年寄りの息抜きの場としてよいのではないか(栗山)/・とてもゆったりする(東京)/・介護者がリフレッシュできる場所

(東京)・思いを共感できるので、安心感が生まれます。その安心感の中心的拠点としての役割(東京)

6.相談 ・相談場所(東京)7.情報入手・

交換・情報を得る(埼玉)/・新しい情報がわかる(埼玉)/・情報ソースになると思う(自宅介護、グループホーム、医療、ケアラー活動etc.)(埼玉)/・情報交換の場(スタッフや娘サロンの人達と)(東京)/・ケアラーの寄り合い場所、情報交換

(東京)/・話しができたり、アイデアを聞く場としてよいところでしょう(東京)/・介護についての現状を知ることができる場所(東京)

8.発信基地 ・介護のことに関しての情報発信基地(東京)/・介護者の心の声を拾って伝える(広める)(東京)/・情報発信の場・役割(東京)

9.共助の心が育つ

・みんなで助け合う心が育っていく(栗山)

10.その他 ・市内と言わず、市外からも大変関心がもたれている(埼玉)/・地域に近いところにあるといいと思う(埼玉)/・栗山町の地域の皆さんによく利用してると思います(栗山)/・まだまだ自宅で介護をしている人が居ますが、このケアラーズカフェに出て来ることが難しい。町内の人達に知らせてあげたい。気になっている友達もおります(栗山)/・特に高齢者にはよいと思う(栗山)/・病院との連携がとれたらよいと思う(東京/・来るきっかけがなかったけど老人会、新聞で知って来ました。明るくてオープンな雰囲気でいいです。ケーキもおいしいですよ!!(栗山)/・自宅から出かけて、地域の人達と交わることは必要なことと思います。精神的なゆとりや時間がまだ気薄なのではないでしょうか。各単位の活動にも決まった人の参加が目立ったりしています(栗山)/・友達同士で来たが、1人では?(栗山)/・介護をしている人間の閉塞感をとり除き、風穴を空けることにより、自宅介護の推進につながり高齢化社会を根底から支える役割を担うことになると思います(埼玉)/・気軽に来られる場所であること(栗山)

表1 ケアラーズカフェの地域や社会にとっての役割とは

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栗山 1.広報活動の充実 ・もっとPRしていったらよいと思います。/・広告を出したり広報によく出してみることだと思います。/・町内会組織を通じてピーアールすべきと思う/・宣伝にもっと力を入れたらいいと思う。本の読み聞かせなどを開けば、若いお母さんや子ども連れが増えるのでは?/・声がけする。行った人が誘う。

2.ケアラーズカフェ環境の工夫

・1人で来ても、さみしくなく楽しくなるような工夫をしてほしい(一緒に来る友達がいない)。・明るい雰囲気。口伝え。/・町内会役員会の場所として使いたいが、時間が早く閉まるので開館時間の工夫をしてはと思います。/・ケアラーの方は外へ出歩ける状況ではないのではないか? ケアラーがケアラーズカフェに要介護者を連れて来られる環境であれば来る人も増えるのではないかと思う。

3.アクセスの工夫 ・ケアラーズカフェに来たくても町から離れた地域の人は車(足)がなく来られないと言う人も多い。送迎があれば利用する人も増えるのではないか。

4.イベント・講座の充実 気軽に参加できるよう工夫があれば(イベント、講座など充実性)。/・来られる方の目的に合ったものがケアラーズカフェで取り組めたらいいですネ。

5.その他 ・無料券を配り、さらに定着をはかったら?埼玉 1.広報活動の充実 ・広報に載せたり、働きかけ、講座を専門的な方や経験者の方にしてもらう。地域・包括・行政ネット、

サイト。/・公民館など一室を開放し、「公民館だより」で知らせていただきたい。・病院や、地域包括支援センター、老人ホームなどに広報することが大切です。また、ショッパーやリビングなどにも特集を組んで載せたほうがいいのでは。/・宣伝/・友人の誘い。新聞、公報チラシをまく。/・地域に密着した、宣伝が必要では。/・市報やぽけっとに載せてもらえないのか。/・私自身、市内10カ所の介護サロンに出かけたときより広い視野での介護の悩み解決に役立つので、当人に働きかけている。/・まだまだ家に閉じこもっていて、外部に家族の病を出したがらない人が近辺にいますので、お誘いして出かけられるように動きます。

2.ケアラーズカフェ環境の工夫

・気楽に立ち寄れる雰囲気。/・部屋が狭いのでもう少し余裕のある場所がと思う。/・駐車場や駐輪場、部屋の広さ、ピアノや音響設備。

3.アクセスの工夫 ・自分たちだけではチラシがあやしい団体に思われたりするので、市の高齢課や病院、社協、地域包括の協力と、PRがあったほうがいい。・行政とのタイアップ企画。

4.イベント・講座の充実 ・企業との協働。5.その他 ・現状と課題(トラブル、悩み)、今後の悩み(家族、医療状況、経済的なこと、対応、対策は難しい)な

ど、守秘事項もあろうが、特定関係(?)で個別フォローか(?)。成功例でなくてもよいと思う。/・ボランティアの方が色々聞いてくれるので安心しました。/・皆が話しできる。地域の人達が集えるとよいと思う。近所の交流がなくなってきているので気になっている。

東京 1.広報活動の充実 ・宣伝?でしょうか…。駅の中に、はり紙。/・メディア広告。/・メディア(テレビ)の影響力は大きいので、もっともっとマスコミに取り上げてもらえるようにしてください。/・介護者はゆっくり外出する時間やお茶する時間がない場合が多いようなので(自分は親が要介護度4で、ヘルプ時間は1日2時間)、買い物などで外出時間はほとんどなくなります。自宅にポスティング等あれば情報を見ることは増えそうです。/・ケアマネが介護者に伝える。・区役所、地域包括支援センターなどにチラシを置いてはいかがでしょうか?

2.ケアラーズカフェ環境の工夫

・友達を誘いやすい環境。/・①気にならない程度のBGM、②外から中があまり見えないほうがよいかもしれません(適度に)、③ケアラーだけでなく、特に1人暮らしのお年寄りが寄り合えるとよいのでは?

3.アクセスの工夫 ・口コミも必要だと思うし、区役所、市役所からの広報活動が必要。家族が「介護者の会がないか」問い合わせるのではなく(私自身が地域包括支援センターに問い合わせした)、役所やデイサービス

(ケアマネジャー)からこういう場所があると伝えてほしい。/・行政の協力。/4.イベント・講座の充実 ・企業の福利厚生として利用してもらうよう、企業に働きかける。カミングアウトできない働く介護者

は多いと思うので、カミングアウトする前に会社を辞めない知恵をここで培ってほしいから。5.その他 ・病院には必ずケアラーが行き、そこには必ず悩みをもった人がいるはず、そこを考えてみては?

表2 ケアラーカフェにもっと多くの人に来ていただくには

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1.ケアラーズカフェに救われた

・両親の介護は連続したなかで、ケアラーズカフェにどれだけ救われたかしれません。逃げる場所があること、話しを聴いてくださる人がいることで本当に救われました。

2.ケアラーズカフェスタッフについて

・聴き上手なケアラーズカフェスタッフがケアラーズカフェ運営を左右すると思います。・ケアラーズカフェスタッフには、経験の豊かな方、アドバイス、提案が前向きな方がよいと思います。/・職員の対応が、笑顔で大変好感がもたてます。/・いつも落ち着いた気分にさせていただきありがとうございます。/・何でも聞いてくれるのが心強い。/・声かけ方法が自然。

3.来にくい人への対応 ・介護で外出ができずケアラーズカフェにも通えない人に、ハガキなどで「今は無理でもいつでもいらしてください」のひと言があれば心の拠り所となるだろう。/・心理療法士との交流や市役所の心の相談窓口との連携ができればいい。/・地域包括とは違う経験者としての意見、アドバイスなどを聞きたい。

4.ケアラーズカフェの役割と期待

・自分の居場所があり、安心な場所が近くにあるという思いが、介護される側への思いやりにつながるのではないか。ケアラーも社会の一員であるという自信と、エネルギーの源になると思う。/・ケアラーズカフェは、ケアラーにとって、絶対に必要な場所。/・介護だけでなく家族関係に問題をかかえている方もいろいろいらっしゃるようなので、そういったことをいろいろ話せる場だといいと思います。/・日本各地にこのようなケアラーズカフェが増えることを願っています。/・1人でも多くの方々がケアラーズカフェの存在を知って、ちょっとでもホッとできる時間ができるとよいと思っています。/・心の荷物を少し仮置きさせてもらえそうな所だと思ったし、知ったときはうれしかった。

5.要望や提案 ・気軽に立ち寄ることができ、ケアラーだけでなく、一般の方 と々も交流できる憩いの場所であってほしい。・独身の若いケアラーは深刻なケースが多いので、利用できるか考えてほしい。・手作りのクッキーやケーキを作業所等から取り寄せ、互いに助け合えるといいと思います。

6.その他 ・介護職を目指す私にとって皆様から聞ける体験談は、どの学校の授業よりも宝物です。

表3 その他ケアラーズカフェに対して思うところ

 今回、モデル事業を実施した3つの地域の「ケアラーズカフェ」は、それぞれ母体組織、立ち上げの背景、開設時期、開催の日時、そしてケアラーズカフェの性格が異なるものであった。またアンケートの配付方法にも若干の違

いがあった。 そのような実態や背景を踏まえながら、調査結果の考察をする。

6.結果の考察

 利用者の傾向は、高齢の方(70代)で、配偶者を介護する女性が多かった。 他の地域と比較をすると、介護に関して家族の協力は得られているようだ。ケアラーズカフェの印象や雰囲気、スタッフの対応に関しては100%好評であり、安心して交流ができたり、ほっとリラックスできる憩いの場や居場所になっている。スペースが広いこともあり、子どもたちや高齢者も楽しく過ごせる「コミュニティカフェ」の要素が強い。元行政の建物で栗山町社協が運営を担っているとい

うことで、地域の人達への安心感信頼感と告知の効果は大きい。ケアラー同士が交流する機会や役立つ情報の提供は他に比べ少なかったようではあるが、ケアラーズカフェができたことで地域のケアラーの実情への理解や啓発が進み、「なかなかここへ来られない介護者に知らせてあげよう」など地域のたすけあいの機運が高まってきている。地域福祉の拠点としても住民から期待が寄せられている。

1)北海道栗山町(栗山町社会福祉協議会)

 週2回の開催にもかかわらず、介護者サロンを経験したスタッフたちの細やかなケアラーへの対応により、

「ほっと安心できた」「ケアラーの駆け込み寺のよう」という評価が高い。時間をかけてじっくりとケアラーに寄り添い、傾聴してくれるのが特徴である。場所が狭いのも功を

奏しているのかもしれない。ケアラーとスタッフの関係性の密度が濃い。 60代女性のケアラーが多く、他地域に比べると重介護

(要介護4 ~ 5)のケアラーが多い傾向にあった。今回は、どの地域も比較的介護年数も短く(5年未満)、介護

2)埼玉県さいたま市(ほっと・おおみや)

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度も低いケアラーの利用が多かった。 また、「介護度の重さ」と「生活の変化」あるいは「介護の経験年数の長短」と「生活の変化」との因果関係は特にみられなかったが、「介護者との交流の有無」と「生活の変化」では、「交流ができた」と回答した人(20名)のうち5名が「(変化が)かなりあった」、13名が「少しあった」

と回答した(無回答2名)。ケアラー同士のつながりが、その後いかに生活が変化したという認識をケアラーにもたらすかを表していると思われる。ケアラーズカフェの中でも意識的にケアラー同士のつながりの場をつくる必要があろう。

 「ケアラーズ」とは名乗っているが、一見ごく普通のレストラン&喫茶であり、平日はほとんどオープンしている常設ケアラーズカフェである。オープンも早く2012年4月からはじめていた。駅前で病院の向かいということもありケアラーの立ち寄りやすい環境となっている。 なかには、ケアラーの生活に欠かせない一部となって

いるケースもあり、ケアラーの地域生活に変化をもたらした事例を生んでいる。他に類を見ない発信基地ともなっている。様々なインフォーマル情報やケアに役立つ講座を頻繁に開催しており、若い介護者同士の交流も盛んになっている。40代のケアラーが多い。ケアラーズカフェのモデルとしての大きな役割を担っている。

3)東京都杉並区(アラジン)

 前述したように、今回のアンケート調査は、それぞれのケアラーズカフェの形態や母体組織、地域性がまったく異なる条件下での調査であり、調査の説明や方法も統一できず、調査票の母数が少ないうえ、設問ごとの無回答も多かったため、調査としての妥当性、信憑性には欠けるものであったかもしれない。 しかしながら、今回の当事者を対象としたアンケート調査の実施により、「ケアラーズカフェ」のような場がケアラーの生活にとって欠かせない大事なものであること、すなわちどの地域にもニーズがあることは明らかになったといえるだろう。また「ケアラーズカフェ」に最も必要な要素として、何よりもスタッフがじっくりとケアラーと向き合い、ケアラーに寄り添い、話をじっくりと聴くことの大切さ、有

益な情報を提供できることの必要性が明らかになった。埼玉のケアラーズカフェスタッフたちは介護者サロンで実践を積み重ねてきたメンバーであり、東京のケアラーズカフェスタッフはアラジンの事業経験のあるケアラー当事者でもある。そうしたサポート人材への研修など質の担保は欠かせない。 また、こうした場に来にくいケアラーへのアプローチや働きかけが地域の人達によってなされていくことで、地域の支えあいの芽が育ち、地域力、地域介護力を増していくことになることだろう。 また、今後の課題として、事業の継続や効果的な広報のためにも、行政や企業との連携の視点をもつことが挙がっている。

7.今回のアンケート調査の限界と今後の課題

 今回、ケアラーズカフェを立ち上げた地域での社会的効果や影響は予想以上のものがあり、その他の地域からも「ケアラーズカフェを立ち上げたい」という声が寄せられている。ケアやケアラーという存在とその暮らしが日常的に街の風景に溶け込みながら、ケアラーが情報収集をしたり、ほっと安心できたりする場のニーズは、今後ますます多くなっていくと思われる。その地域に応じた様々な取り組みが主体的に実施されることが必要だが、ハード面だけではなく、今回少し明らかになったケアラーへのケアの内容(ソフト面)についてさらに構築する必要がある。

 また今回の調査研究事業では、ケアラーズカフェが基軸となり、ケアラー手帳のモデル頒布やケアラーアセスメントの実施をスムーズに行うことができた。ケアラーを支援する仕組みは様々なメニューの連動が重要だと思われるが、そのなかでもケアラーズカフェは、ケアラーが地域で孤立せずに主人公として過ごせる、まずは閉じこもらないでいるためのエントランスになるのかもしれない。 今後は、より早い時期、あるいは介護の予備期にこうした場へアクセルできるようにするための何らかの仕組みづくりが急務であると思う。

8.おわりに