FMO計算に基づくマルチスケールシミュレーション 手法の開...

27
FMO計算に基づくマルチスケールシミュレーション 手法の開発と先導的応用 1 ○奥脇 弘次 1 , 土居 英男 1 , 望月 祐志 1,2 (1.立教大理, 2.東大生研) 本研究開発はポスト「京」:FS2020プロジェクト 重点課題6の支援を受けています 5回材料系ワークショップ 2018213日 秋葉原 UDX NEXT-1

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FMO計算に基づくマルチスケールシミュレーション手法の開発と先導的応用

1

○奥脇 弘次1, 土居 英男1, 望月 祐志1,2

(1.立教大理, 2.東大生研)

本研究開発はポスト「京」:FS2020プロジェクト 重点課題6の支援を受けています

第5回材料系ワークショップ2018年2月13日 秋葉原 UDX NEXT-1

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背景 分子シミュレーションによる材料設計

2018/2/2

◆メソ領域の構造予測・粗視化シミュレーションが有効⇒粗視化粒子間のパラメータに課題

フラグメント分子軌道(FMO)法:電子レベルの相互作用からパラメータ算定ミクロ⇔メソを繋ぐマルチスケールシミュレーション手法の確立

◆材料開発:構造制御が必須・メソ領域(10-1000 nm単位)の構造⇒物性に大きな影響

近年:用途に応じて機能を最適化した材料の開発要求 高

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2018/2/2

3

◆FMO法:分子をフラグメントに分割して行う全電子計算

(モノマー単位、アミノ酸残基単位など )

I

I

JI

IJ EEE '

𝐸′𝐼:[モノマーのエネルギ-] – [周囲のフラグメントとの静電相互作用]

IJE :IFIE

・フラグメント間の相互作用を直接評価⇒パラメータ算定に有効

I

If

JI

IJ ENEE )2(Nf: モノマーの個数EI: モノマーのエネルギーEIJ: ダイマーのエネルギー

◆フラグメント間相互作用エネルギー(IFIE)

フラグメント分子軌道(FMO)法

3FMO 原著論文: Kitaura et al., Chem. Phys. Lett. 313 (1999) 701

使用プログラム:ABINIT-MP(自主開発FMO計算コード)[1]

(フラグメント単体)

(フラグメントペア)

[1] S. Tanaka et al., Phys. Chem. Chem. Phys., 16 (2014) 10310.

・分割したフラグメントの並列計算⇒計算コスト減

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ABINIT-MPによるFMO計算事例

2018/2/24

生体分子系(タンパク質、DNA)を中心に主に創薬分野で活用近年、ものづくり分野への展開

(2004) (2008) (2013) (2015)

◇ABINIT-MP:研究グループ自主開発FMO計算コード[1]

⇒粗視化シミュレーションパラメータ算定への活用

[1] S. Tanaka et al., Phys. Chem. Chem. Phys., 16 (2014) 10310.

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・Metropolis Monte Carlo法: とり得る配置の決定

χ=ZΔ𝐸12/𝑅𝑇{(𝒁𝟏𝟐𝑬𝟏𝟐+𝒁𝟐𝟏𝑬𝟐𝟏) − 𝒁𝟏𝟏𝑬𝟏𝟏 + 𝒁𝟐𝟐𝑬𝟐𝟐 }/𝟐

混合系 単一系

⇒平均相互作用(𝑬𝒊𝒋)①二粒子間網羅的配置の分子計算

[1] C. F. Fan et al., Macromolecules,25 (1992) 3667.

・数千配置の相互作用計算

③パラメータ化(混合系、単一系の差)

⇒分極、電荷移動の大きい系:描写の限界

[従来法] ・古典力場計算・計算モデル、評価法が不完全 FMO法を用いて算定法を改良

粒子間相互作用パラメータ(χ) : 分子計算からの推算

𝛘 : 粒子間の親和性を示した値(Flory-Huggins理論)

⇒混合による粒子間の相互作用変化から算出[1]

②凝集体相互作用の見積り

𝒁𝒊𝒋𝑬𝒊𝒋 (𝒁𝒊𝒋:配位数)

(J. Phys. Chem. B, 122 (2018) 338)

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パラメータ算定 ワークフロー

◆異方性の指標(S )の導入:・特定の配向で強い相互作用を示す系:平均相互作用を過大評価・MC法採用配置の配向の偏りから相互作用をスケーリング

◆配置生成からパラメータ算出処理までの自動化

構造リスト

配向リストMetropolis MC

配向情報の取得 平均相互作用 (𝐸)異方性の指標 (𝑆)

𝝌 =𝑍∆𝐸𝑆

𝑅𝑇配位数(𝑍)

相互作用エネルギー計算

配置生成

配位数算定 パラメータ化

ワークフローを汎用システムとして整備[1] (公開予定)FMO-based Chi parameter Evaluation Workflow System(FCEWS)

[1] K. Okuwaki et al., J. Comp. Chem. Jpn. (2018), in press.

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2018/2/27

Hexane -Nitrobenzene

Diisobutyl ketone -Polyisobutylene

Polyisoprene –Polystyrene

Tcr(K)

Mw 𝜒𝑐 exptl. FMO

22700 0.57 292 328

285000 0.52 319 346

6000000 0.50 329 354

Tcr(K)

𝜒𝑐 exptl. FMO

2.0 293 286

Mw Tcr(K)

pip ps 𝜒𝑐 exptl. FMO

1000 1000 0.34 243 255

2000 2700 ※0.15 329 420

2700 2100 0.15 408 420

2700 2700 0.12 448 489

実験値を10%程度の誤差で再現

テスト計算:相転移臨界温度(Tcr)の算出◇臨界点でのχパラメータ(理論値)

𝜒𝑐(理論値)=𝜒FMO(計算値)となる温度:Tcr(計算値) ⇒ 実験値と比較

χ𝑐 =

(1𝑛𝑎+1𝑛𝑏)2

2

𝑛𝑎 , 𝑛𝑏=各成分の重合度

重合度:ポリマー分子量(Mw)/セグメント分子量(溶媒の場合:1として計算)

※理論値が実験値と非対応

K. Okuwaki et. al., J. Phys. Chem. B, 122 (2018) 338.

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8

◇散逸粒子動力学 (DPD) [1]

・近距離の相互作用のみを考慮・ポリマー:粗視化ビーズをバネで繋いだ形で表現

𝑓𝑖 =

𝑗≠𝑖

(𝐹𝑖𝑗C +𝐹𝑖𝑗

D +𝐹𝑖𝑗R)𝐹𝑖𝑗C : conservative force (repulsion)

𝐹𝑖𝑗D : dissipative force

𝐹𝑖𝑗R : random force

[1] R.D. Groot and P.B. Warren, J. Chem. Phys. 107 (1997) 4423.

粒子 𝑖 に働く力:

粗視化:分子集団を一つの粒子と近似⇒大規模なシミュレーションが可能

粗視化シミュレーションへの連携

⇒非結合粒子間相互作用にχ値を適用( χ⇒aij)[1]

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脂質膜への展開

9

◆脂質膜:両親媒性分子⇒自己組織化

A B C

D E F

W

水を含めた7成分間、21ペアのパラメータ算定

・溶媒効果[1] (Poisson-Boltzmann)を取り入れた二分子モデル計算・計算レベル:FMO2-MP2-PB/6-31G†、各ペア2000配座

非経験的なパラメータ算定:事例なし

分子内を小分子に分割

POPC:頭部にコリンを有する代表的なリン脂質

[1] H. Watanabe et al., Chem. Phys. Lett. 500 (2010) 116.

F E D

D A

B C

A A

A B

B

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経験的パラメータなしで構造の再現[1]

脂質膜のパラメータ算定:結果、DPDシミュレーション

2018/2/210

◇各成分間のχ(300K) A B

C D

E F

脂質13%:ベシクル 脂質20%:膜

・親水部(E,F,W)同士:親和性大・疎水部(A,B,C)同士:親和性大・親水部-疎水部:親和性小

傾向を再現

B C D E F W

A -0.18 -0.23 1.39 4.75 4.76 12.08

B -0.61 0.71 5.46 5.81 12.66

C 1.18 4.81 5.74 10.56

D 1.99 -4.00 9.73

E 2.55 -6.64

F 6.00

親水部(E,F)

疎水部(A,B,C,D)

◇DPDシミュレーション[cognac, 約80000粒子(1辺21.3nm)]

[1]Doi et al., Chem. Phys. Lett. 684 (2017) 427.

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物理量の検証:膜面積の算出

11

22.95

22.97

22.99

23.01

23.03

23.05

23.07

17 17.2 17.4 17.6 17.8 18

圧力

体積分率 (%)

Px Py Pz

体積分率17.7 %で一致⇒膜面積 69.4 ( Å2 )

◆二重膜構造に対し、各軸方向での圧力を算出⇒x, y, z方向の圧力が等しいときの体積分率から膜面積を計算

Z

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膜面積:先行研究との比較

12

[1] N. Kučerka et al., J. Membr. Biol. 208 (2006) 193.[2] N. Kučerka et al., Biochim. Biophys. Acta - Biomembr. 1808 (2011) 2761.[3] C. J. Dickson et al., J. Chem. Theory Comput. 10 (2011) 865.

膜の種類 温度 手法 結果 (Å2 )

POPC

303K Diffuse X-ray scattering 68.3 [1]

293K neutron and X-ray scattering

62.7[2]

303K neutron and X-ray scattering

64.3 [2]

303K MD 65.4 [3]

300 K DPD(This work) 69.4

先行研究と良好な一致

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物理量の検証:膜厚の算出

13

疎水基の膜厚 2.8 (nm), 実測[1] (H-NMR) 2.58 (nm)

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

1.20

7.00 9.00 11.00 13.00 15.00

密度

Z (nm)

疎水基 エステル アンモニウム リン酸 水

[1] F. a Nezil and M. Bloom, Biophys. J. 61 (1992) 1176

物理量の良好な一致

◆膜に垂直な方向(Z方向)の各成分の密度を算出→疎水基の密度0.5以上の部分を計測

Z

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シリカ基盤上への膜の吸着のシミュレーション[1]

ナノバイオデバイスの構造再現の端緒

膜が水に邪魔されて吸着しない問題点

シリカ

膜分子

界面水

バルク水

[2] S. Mornet, O. Lambert, E. Duguet, A. Brisson, Nano Lett., 2005, DOI:10.1021/nl048153y.シリカと相互作用の強い水(界面水)と

相互作用の弱い水(バルク水)を定義

界面水なし 界面水あり(赤)

黄:疎水基 青:親水基 灰:シリカ 赤:界面水

[1] H. DOI et al., J. Comput. Chem. Japan 16 (2017) 28.

表面,バルクを考慮した「性質の異なる水」を扱うことで吸着

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高分子電解質膜(Nafion, SPEEK) Percolation 解析

15

◇Nafion [1]:燃料電池に一般的に使用・テフロン骨格, 側鎖に親水基

◇SPEEK [2]:代替品として期待・芳香族炭化水素, 主鎖に親水基

[1] Yamamoto et al., Polymer J. 6 (2003) 519.

[2] P. V. Komarov et al., Chem. Phys. Lett. 487 (2010) 291.

高分子電解質膜:水クラスタが連結, プロトン伝導⇒燃料電池に使用

Percolation(浸透)現象臨界濃度を超えるとクラスタが連結

水和モデルの𝝌算定

𝝌を用いたDPDシミュレーション水クラスタの連結の評価

水分子の連結(密度分布)

クラスタの連結:プロトン伝導に直結膜の機能を評価する有効指標

A

B C

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◇パラメータ算定・分子内をセグメント分割(右図)・水分子を含めた4成分間の𝝌値算定

(水の扱い:複数配向を考慮)

<計算条件>各ペア計算配座数:2000セグメント構造最適化:B97D/6-31G†計算レベル:FMO2-MP2/6-31G†

◇DPDシミュレーション :モデリング

高分子電解質膜(Nafion、SPEEK) モデル設定

・約80000粒子(1辺21.3nm)・Δt=0.05, 10000step(約75ns)

2

(Equivalent Weight (EW) の異なる3構造)

Nafion

SPEEK

Nafion SPEEK

A

A

B

B

C

C

A B C(親水部)

(a)

(b)

(c)

Nafion117

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0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

0 5 10 15 20

Pair

dis

trib

uti

on

r

C-W

A-W

B-W

17

Nafion:DPD結果の構造解析

・主鎖同士、水粒子同士が集合・水とスルホン酸が集合

◇各部位間の動径分布関数(Nafion(b) 水20%)

A

B

C

W

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

0 5 10 15 20

A-A

W-W

⇒水ドメインをスルホン酸が囲む形のミクロ相分離

5

(構造) (水の密度分布)

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3

3.5

4

4.5

5

5.5

6

6.5

0 10 20 30 40

clu

ste

r si

ze(n

m)

water content(vol%)

Nafion(a)

Nafion(b)

Nafion(c)

4

4.5

5

5.5

6

6.5

7

7.5

0 10 20 30 40

clu

sete

r sp

ace

(nm

)

water content(vol%)

0

1

2

3

4

0 2 4 6 8 10 12

Pai

r D

istr

ibu

tio

n

距離r(nm)

物理量の検証: Nafionのクラスターサイズ、距離の算出

1st peak

実験値 size:4nm, space:5nm妥当な一致

Size:g(r)が1になる点 3.3-5.3nmSpace:1st, 2ndピーク間の距離 4.4-6.3nm

[2] W. Y. Hsu and T. D. Gierke, J. Memb. Sci. 13 (1983) 307.

size

2nd peak

Cluster size

Cluster space

水粒子間の動径分布(構造(b),水20%)

(先行研究[1,2]から決定)

5space

5 5 5

(a) (b) (c)

[1] T. D. Gierke et al., J. Polym. Sci. Polym. Phys. Ed. 19 (1981) 1687.

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Nafion, PEEK 構造比較(水密度分布)

2018/2/219

10 vol% 20 vol% 30 vol%

SPEEK:クラスターの連結が少ない

Nafion

SPEEK

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2018/2/220

水粒子の拡散係数の検証

FMO-DPDシミュレーション 実験データ(Nafion)

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

10 20 30Dif

fusi

on

Co

effi

cien

t

Water Content (vol%)

Nafion (a)

Nafion (b)

Nafion (c)

SPEEK

(×1

06𝑐𝑚

2/𝑆

)

Nafion: 10 vol% – 30 vol% ⇒ λ (number of H2O/SO3H) = 2.5 – 10 に相当

実験値: 0.8 × 10−6 -4.5 × 10−6 cm2/s計算値: 0.6 × 10−6 -3.2 × 10−6 cm2/s 妥当な一致

SPEEK:水増加による増加が少ない⇒クラスタの連結度が低いことを示唆

◇MSD(Mean Square Displacement)から算出

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Nafion, PEEK: 水粒子のPercolation評価

・クラスタの連結:隣接水粒子の距離で判定(水の動径分布第一配位圏)

・連結率=平均クラスタサイズ/全粒子数 で評価

水含有率による水クラスタ連結率の変化

[2] X. Wu et al., J. Polym. Sci. Part B Polym. Phys. 49 (2011) 1437.

cf.実測値[2](conductivity)Nafion 10%PEEK 30%

5

5

5

◆水粒子の平均連結率の算定

・37ns~75ns, 0.75nsごとの平均構造を評価、平均(水粒子10-30%:2%刻み)

・Nafion:EWが大きい=電導度低[1]・Nafion > PEEK[2]分子構造の違いによる差:定性的に再現

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

10 15 20 25 30

Wat

er

con

ne

ctiv

ity

Water content (Vol%)

Nafion(a)

Nafion(b)

Nafion(c)

SPEEK

[1] J. J. Fontanella et al., Macromolecules 29 (1996) 4944.

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22

新DPDコードCAMUSの開発

2018/2/2

◇開発の意図生体膜やタンパク質の解析: 大規模(100nm単位)のシミュレーションが必要・ コンパクト, シンプルで速いDPD専用のコード、Fortranで記述・ 局所的で指向性のある1-3, 1-5相互作用を含めてタンパク質の扱いを

◇特徴・ DPDにとってコストの高い近接情報リストの構築を回避

⇒100万粒子を容易に(ノード内スレッド並列(OpenMPベース))・ 入力データの高速作成、フィラー構造への対応・ ドメイン分割による大規模化へ拡張(OpenMP/MPI混成並列)

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23

0.00

100.00

200.00

300.00

400.00

500.00

600.00

700.00

1 2 4 8 12 16

tim

e/s

tep(

ms)

スレッド数

camus

cognac0.0

100.0

200.0

300.0

400.0

500.0

600.0

700.0

1 2 4 8 12 16

加速

効率

(%

スレッド数

camus

cognac

0.0

20.0

40.0

60.0

80.0

100.0

120.0

1 2 4 8 12 16

並列

化効

率(%

スレッド数

camus

cognac

CAMUSとCOGNACの速度比較 (Intel Xeon)

Intel Xeon E5-2640 (2.50GHz,6core) ×2

・ 2倍以上はCAMUSの方が速い・ その分だけ効率は早めにドロップ・ DPD専用に開発したメリット

(近接リストの計算をしない)・ 並列効率は1ノード並列では及第

(詳細を別途チェック済み)

10万粒子でのテスト (ステップあたり ms)

2018/2/2

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S Water

S 50 55

Water 50

𝑎𝑖𝑗

1-2 harmonic bond :𝐶 = 160, 𝑟𝑒 = 0.6

1-3 harmonic bond : 𝐶 = 80, 𝑟𝑒 = 1.2

1-3 Morse bond [1]: 𝐾𝑀 = 12, 𝛼 = 8, 𝑟𝑒 = 0.9

1-5 Morse bond [1]: 𝐾𝑀 = 12, 𝛼 = 8, 𝑟𝑒 = 0.6

結合ポテンシャル

A. Vishnyakov, D.S. Talaga, A. V Neimark, DPD Simulation of Protein Conformations: From α-Helices to β-Structures, J. Phys. Chem. Lett. 3 (2012) 3081–3087. doi:10.1021/jz301277b.

Harmonic bond :

𝐅𝑖𝑗𝐻 = 𝐶(𝑟𝑒 − 𝑟𝑖𝑗)𝐧𝑖𝑗

Morse bond :

𝐅𝑖𝑗𝑀 = 2𝐾𝑀𝑒

−𝛼|𝑟𝑖𝑗−𝑟𝑒| 𝑒−𝛼|𝑟𝑖𝑗−𝑟𝑒| − 1 𝐧𝑖𝑗

距離の取り扱いに絶対値を導入(大きいtime stepを保つため)

CAMUSによるα-ヘリックス形成 #1

2018/2/2

[1] A. Vishnyakov et al., J. Phys. Chem. Lett. 3 (2012) 3081.

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初期構造 シミュレーション後 拡大図

赤:ポリペプチドモデル青:水モデル(4分子)

CAMUSによるα-ヘリックス形成 #2

セルサイズ: 20 (14.2 nm)全粒子数: 24000ステップ数 : 10,000計算時間: 10分 @ 8コア

・ 1-5相互作用が効いてヘリックス構造形成・ DPDでは計算時間は極く短時間で済む・ FMO計算によるχパラメータ調製が進行中

2018/2/2

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ゴム-フィラーコンポジット系への展開の試み

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・ポリイソプレン・ポリスチレン・グラフェンシート(ピレン)・Si9クラスター・アルキルアミン

ポリマー-フィラー間のパラメータ算定

・ポリマー中でのフィラーの分散の評価・分散剤(アルキルアミン)の鎖長依存性の検証

◇タイヤゴムSiフィラーの分散が機能の向上に重要

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まとめ、今後の展望

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FMO法によるパラメータ算定の有用性非経験的に多種の物質の性能予測が可能

◆ FMO計算によるχパラメータ算定・ 非経験的にχ値を算定することが可能、FMO-DPDのワークフローを確立・ 汎用システムとして公開予定(内製)、名称はFCEWS

(計算工学ナビ: http://www.cenav.org/)・ MD計算を連携させた多体構造サンプリングも検証中

◆ 実証応用計算・ 脂質膜/ベシクル系・ 電解質膜系、イオン化状態も検証・ 「水の使い分け」が有効・ゴム/フィラーコンポジット系でも試行中