FLS - UMIN · はfls線維の形成は認められない(fig....

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δ ConnectiveTissue Vo l . 10 No.3 131-135 特別講演 1(会頭講演〉 FLS線維の形成とその意義 金沢大病理学 梶川欽一郎 Formationof FLSFibersandTheirSignificance KinichiroKajika wa DepartmentofPathology KanazawaUniversity Electronmicroscopicobservation r vealed that theskinofne'>' born rats contained O IyafewFLSbers butwhenitwas cultured for 1to8days FLS bεrs increas d innumberwithtimeofcultureperiod. Anincreaseof collagenaseactivityduringculture wasdemonstratedbydissolutionof reconstituted collagengel after incubationwith the cultur d skinexplants. Whencollag naseactivitywasinhibited by additionof EDT A totheculturemedium noFLSfiberswerefound and instead alargenumberofnormal collag n fiberswerepresentthroughoutthedermis. When theskincultured inEDTA containing mediumwasincubated withbacterialcollagenasefor20min normalcollagen fibersdisappearedandnumerousFLSberswereproducedagain Thenewborn rat skin contained a large member of reticulin bersw hich were difinedelectronmicrosopicallyas thincollagen fibrils associated withglycoproteins. In- cubation with collagenase resulted in a complete disappearance of reticulin bersand formationofFLSfibers. Ontheotherhand thεdermisof adultratswaslargelycomposed ofthickcollagenbundles which failed toproduceFLSfibersaftercollagenasetreatment Electonmicroscopyofvariouskindsoftissues ofadultratsaftercollagenasetr at- mentrevealedthatFLSbers were formedmostly inthetissu swheretheexistanceof type III collagen has been reported From localization of FLS bers formed it was supposedthatroblasts smoothmusclecellsandrelatedcellselaboratedtypeIII collagen These f 1 ndingslead usanassumptionthatglycoprotein. associatedfibers (i. e. reticulin fibers)which are probably composedof typeIIIcollagen are susceptible to collagenas andformFLS f 1 bersbyinteractionofdegradation products FLS (FibrousLongSpacing) 線維は invitroでコラーゲン溶液i こムコ多糖や糖タンパクを加え ることによって形成されることが知られている 1 2) Inv it: りでは様々な生理的又は病的結合組織に 見出されているが,その形成機序や意義については未解決である c

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。δ

Connective Tissue

Vol. 10, No.3 131-135

特 別 講 演 1(会頭講演〉

FLS線維の形成とその意義

金沢大病理学

梶川欽一郎

Formation of FLS Fibers and Their Significance

Kinichiro Kajika wa

Department of Pathology, Kanazawa University

Electron microscopic observation r巳vealedthat the skin of ne'>'ァbornrats contained

O口Iya few FLS五bers,but when it was cultured for 1 to 8 days, FLS五bεrsincreas巴d

in number with time of culture period. An increase of collagenase activity during culture

, was demonstrated by dissolution of reconstituted collagen gel after incubation with the

cultur巴dskin explants. When collag巴naseactivity was inhibited by addition of EDT A

to the culture medium, no FLS fibers were found, and, instead, a large number of normal

collag巴nfibers were present throughout the dermis. When the skin cultured in EDTA

containing medium was incubated with bacterial collagenase for 20 min, normal collagen

fibers disappeared and numerous FLS品berswere produced again

The newborn rat skin contained a large member of reticulin五bersw hich were

difined electronmicrosopically as thin collagen fibrils associated with glycoproteins. In-

cubation with collagenase resulted in a complete disappearance of reticulin 五bers and

formation of FLS fibers. On the other hand, thεdermis of adult rats was largely composed

of thick collagen bundles, which failed to produce FLS fibers after collagenase treatment

Electon microscopy of various kinds of tissues of adult rats after collagenase tr巴at-

ment revealed that FLS五berswere formed mostly in the tissu巴swhere the existance of

type III collagen has been reported‘ From localization of FLS五bers formed it was

supposed that仙 roblasts,smooth muscle cells and related cells elaborated type III collagen

These f1ndings lead us an assumption that glycoprotein. associated fibers (i. e. reticulin

fibers) which are probably composed of type III collagen, are susceptible to collagenas邑

and form FLS f1bers by interaction of degradation products

FLS (Fibrous Long Spacing)線維は invitroでコラーゲン溶液iこムコ多糖や糖タンパクを加え

ることによって形成されることが知られている 1,2) In vit:りでは様々な生理的又は病的結合組織に

見出されているが,その形成機序や意義については未解決である c

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FLS線維はその横紋パターンからいくつかの種類に分けられるが, ここで取り上げるタイプの

FLS線維は,正常周期のコラーゲン線維に比べて線維の幅が広く, 時々シート状の横造をとり,

1, 000~1, 200 A の周期で対称性に並ぶ太い横紋があり ,線維事bに平行に走る微細フィラメントが

識別されるという特徴をもつものである。ルテニウムレッド (RR)標本では正常周期のコラーゲン

線維と異なって,横紋が RRに濃染する。我々はこのタイプの FLS線維が培養皮膚に増加する

ことを見出したことに端を発して, FLS線維の形成にはコラゲナーゼ活性の上昇と , ある特定の

コラーゲン,おそらく typeIIIコラーゲンで構成される細線維が重要な因子となっているとい う

見解に到達した。この研究は教室の多くの協同研究者によって行なわれたものであるが,ここでは

総括的にその成績を述べたいと思う。

r. FLS線維形成に対するコラゲナーゼの役割:“コラゲナーゼ効果"

生後 1日自のラット皮膚を電顕的に観察すると,毛包や毛細血管3の周囲に少数の FLS線維が認

められるが, これを TC199 と 10% ウシ胎児血清を加えたメジウムで 1~8 日間培養すると,培

養日数と共に FLS線維が次第に増加する。培養 3日目では毛包周囲の幼若結合組織細胞の聞に多

数の FLS線維が出現し, 5日目 ではさらに真皮の深層まで正常周期のコラーゲン線維に混じて FLS

線維が認められるようになる (Fig.1)。培養4日目の皮膚をコラーゲンケcルに incubateするとゲ

ルの溶解がおこるので,培養皮膚にはコラゲナーゼ活性が上昇していることが示される c

Fig. 1. Newborn rat skin c.ultured for 5

days, showing numerous FLS自bersin the

intercellular space. X 9, 000

Fig. 2. Newborn rat skin cultured in the

culture medium containing EDTA. Int巴ト

cellular space is filled with normal collagen

抗bers. No FLS品berscan be seen. X 6,600

一方,コラゲナーゼ活性を阻止する目的で 0.02%EDTAを加えたメジ ウムで培養した場合に

は,培養皮膚に FLS線維は認められず, 細胞聞は細い正常周期の コラーゲン線維で満 たされる

(Fig. 2)。このような培養皮膚を緩衝液て、充分洗糠した後, 細菌性 コラゲナーゼ (Sigmatype III)

に 20分間 incubateと寸る と nativetypeのコラー ゲン線維は消失し, 再び FLS線維の形成が

認められた。さらに,生後 1日目 のラット皮膚及び培養 3日目の皮腐をそれそ'h細菌性 コラゲナー

ゼに 20分間 incubateして,電顕的に観察すると,いずれの;場合にもコラゲナーゼ、処理前に比べて

多数の FLS線維が認められた (Fig.3)。

これらの成績から, (1)培養皮庖'における FLS線維の増加は, 培養中におこるコラゲナーゼ

活性の上昇と密接な関係があること, (2) コラゲナーゼによって正常周期のコラーゲン線維が

FLS線維に転化することが結論される。上述のように znvztroでコラゲナーゼを作用させるこ

とによって,結合組織に FLS線維が形成される現象を,仮に u コラゲナーゼ効果"と l乎ぶことに

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Fig. 3. Newborn rat skin incubated with

bacterial collagenase for 20 min, showing

FLS fIbers in the intercellular space

X7,500

Fig. 4. Adult rat skin incubated with bacterial

collagenase . for 20 min. There is break-

down of collagen fibers, but no FLS fiber

formation. X 52,5000

する。

II. 種々の結合組織における代コラゲナーゼ効果レチクリンと typeIIIコラーゲン

生後 1日自のラット皮膚を細菌性コラゲナーゼに 20分間 incubateすると,前述のように真皮内

にびまん性に多数の FLS線維が形成される。これに対して,生後 1年目のラット皮膚を同様にコ

ラゲナーゼで処理すると, FLS線維は毛包, 血管及び末梢神経の周囲に限局性に認められるにす

ぎない。真皮コラーゲン線維の大部分は縦方向に開裂しつつ次第に細線維に分解されるが,そこに

は FLS線維の形成は認められない (Fig.4)。すなわち,幼若動物の真皮コラーゲン線維はコラゲ

ナーゼによって容易に FLS線維をつくるのに対して,老令動物の真皮コラーゲン線維はコラゲナ

ーゼで分解されるが FLS線維をつくらないのである。このような差異は何に原因するのであろう

カミ。

この問題を解明するため,生後 1日自のラット真皮と生後 l年 目のラット真皮の RR染色標本

を比較した。生後 l日目の真皮では多量の酸性ムコ多糖の中に細いコラーゲン線維からなる小さな

線維束が散在し,個々の線mliは多量の RR陽|生物質で包まれている (Fig.5)。 これに対して,生

Fig. 5. Newborn rat skin stained with n.:.thト

nillm red, showing thin collagen associated

with a larg巴 amollntof ruthenium red-

positive materials. x36,750

Fig. 6 Adult rat skin stained with ruthenium

red, showing closely packed thick collagen

surrcunded by the thin layer of ruthenium

red-positive materials. X 27,000

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後 1年目の真皮では,このような細線維は毛包,血管及び末梢神経の周囲に少量存在するが,真皮

の大部分は大きな線維束で占められ,線維束を構成する個々の線維は太く, 密集し少量の RR

陽性物質で境されている (Fig, 6)。線維表面を包む RR陽性物質はヒアルロニダーゼ、やコンドロ

イチナーゼABCに対して抵抗を示し, トリプシンによって消化されることから, 一種の糖タンパ

グであると思われる 3)。

多量の糖タンパグと結合した細いコラーゲン線維から構成される線維束は,光顕的に定義される

レチクリン線維(好銀線維〉にほぼ対応する。レチグリンの本態については議論があるが,アミノ

酸組成の類似性やコラゲナーゼによって消化されることから, コラーゲンと共通の性質をもっ線維

であると考えられ,その好銀性はレチクリンに含まれる多量の含水炭素に基因するものとされてい

るぺ 上述η電顕的に認められる糖タンパクと結合した細いコラーゲン線維の形態学的特徴はレチ

グリンのこのような化学的性状をよく説明することができるでのある。

以上の所見から,幼若動物皮膚では老令動物皮膚より代コラゲナーゼ効果"が顕著に現かれるの

は、前者;こ多量の糖タンパクと結合した細いコラーゲン線維(光顕的:こはレチクリン線維〉が豊富

であることに基因すると結論される。

一方,生化学的に幼若動物皮膚では typeIII コラーゲンが多く含まれ,成熟動物皮膚では tyアpe

I コラーゲンが増加することが知られている j)。そこで代コラゲナーゼ効果"と typeIIIコラーゲ

ンとの間に密接な関係があるものと推定されるのである。この推定を確かめるため, ラヅトの様々

な組織;こ対する代コラゲナーゼ効果"と‘これまでに報告されたその組織に含まれるコラーゲンの

type との関係を調べた。その結果は Table1に示す通りである。この表で明らかなように,一般

に typeIII コラーゲンが比較的多く含まれるとされる組織ではげコラゲナーゼ効果"が顕著であ

るのに対しう typ巴 Iコラーゲンが優位である前象牙質, type II コラーゲンのみを含む関節軟骨‘

及び typeIV コラーゲンを含む腎糸球体基底膜では“コラゲナーゼ効果"は認められなかった。

しかし,代コラゲナーゼ効果"が陰性であることは,そこに含まれるコラーゲンが本質的に FLS線

維を形成する能力がないと解釈することはできない。 FLS線維が形成されるためには, コラーゲ

ン分子と糖タンパグが適当な割合で存在することが必要であると思われるからである。 TypeIII

コラーゲン以外のコラーゲンは生体では FLS線維をつくるに適当な量の糖タンパクと結合してい

ないためかも知れなレ。 TypeIII コラーゲンを含む組織でもそてコラゲナーゼ効果"に差があるの

は,コラーゲンと,それに結合する糖タンパグの量的差異?とよ之可能性がある。 L、す'*1.にしても‘

Table 1. FLS Fcrmation in Tissues after Collagenase Treatment

Tissue FLS T:yr:e cf Collagen Mo¥ecu¥e

Myometrium ++ III (1 )6)

Aortic media ++ III (1)" Aortic va¥ ,'e ++ III (1 )8)

Synovium ++ III (1 )9)

Skin (ycung) +十 阻(1 )" SHn (adu¥t) 十 E 1" Lung 十 匝 1 18)

Liver (Disse space) 十 1II(1)1!)

Small intestine + 皿(1 )" Kidney (medulla) 十 1 (1II)5)

Kidney (g¥omeru¥us) rvS)

Articu¥ar carti¥age nS)

Predentin 1 (1II)叫

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-135一

上述の成績から,生体では typeIII コラーゲンで構成される線維はコラゲナーゼの侵襲によっ

て, FLS線維をつくりやすい状態にあるということができるであろう。

以上のように, type III コラーゲンは形態学的にはレチグリン線維を形成し, コラゲナーゼに

よって容易に FLS線維を形成すると考えられるのであるが, レチグリン線維からどのような過程

で FLS線維が形成されるかについては,まだよく分っていない。電顕的には, レチグリン線維は

コラゲナーゼ、の作用をうけると速やかに微細フィラメントに分解され,その中に様々な量の RR陽

性の粒子と IDlcro仙 rilが認められる。微細フィラメントと粒子は, ある部分では網状の凝集を示

し,ある部分ではこれらの構成分が規則的な配列をとることによって,シート状又は線維状の横紋

パターンを示すことが観察される。この過程中に, レチグリン線維と FLS線維との聞に形態学的

移行が認められないので, レチグリン線維が直接 FLS線維に転化するのではなく,おそらく,分

解されたコラーゲン分子が遊離した糖タンパクとの相互作用によって FLS線維に再凝集されるも

のと推定される。しかし,コラゲナーゼ、はコラーゲン分子を特異的に切断するので,このような切

断されたコラーゲン分子の断片が果して FLS線維に凝集することが可能かどうか,又,本研究で

用いられた細菌性コラゲナーゼに含まれる非特異的タンパグ分解酵素が FLS線維の形成にどのよ

うな影響を与えるのか、等についてうなお検討すべき問題が残されている。

III. Type IIIコラーゲンの合成細胞

Typ巴 IIIコラーゲンと代コラゲナーゼ効果"が密接な関係にあることを手掛りとして, 上述の

様々な組織について typeIII コラーゲンの合成細胞について若干の考察を加えた L、。代コラゲナ

ーゼ効果"が顕著にみられる幼若動物真皮では, FLS線維は真皮の未分化な線維芽細胞の周辺に

認められることから,これらの未分化線維芽細胞が typeIII コラーゲンを供給していることは明

らかである。成熟動物真皮では u コラゲナーゼ効果"が毛包,血管,末梢神経周囲に限局性に認め

られることから,これらの組織の周辺に typeIII コラーゲンの合成能をもった細胞が残存してい

るものと思われる。一方,子宮筋層や大動脈中膜では平滑筋細胞に接して FLS線維が形成される

ことは平滑筋細胞が typeIII コラーゲンの合成細胞であることを示唆している。Il市の末梢部では

FLS線維はしばしば胞隔細胞の周辺に限局性に認められる。胞隔細胞は平滑筋細胞と類似の細胞

に変化することが報告されている 13)。又,滑液膜で、は線維芽細胞様の滑液膜細胞の周辺に FLS線

維が認められ,この細胞は平滑筋細胞と類似の形態学的特徴をもつことが岡田3) によって報告され

ている。さらに,成熟動物皮膚ばかりでなく,その他の多くの組織で FLS線維が毛細血管の周細

胞に密接して存在することが観察されるが,この細胞も平滑筋細胞と近縁の細胞であると考えられ

ている。これらの所見を総合すると,幼若動物では未分化な線維芽細胞,成熟動物では少なくとも平

滑筋細胞とその近縁細胞が有力な typeIII コラーゲ ν合成細胞として働くものと考えられる。し

かしこれは他の結合組織細胞の typeIII コラーゲン合成能を否定するものではない。例えば,

小腸粘膜固有層や腎髄質の間質細胞,肝の伊東細胞,弁膜の結合組織細胞, リンパ節の細網細胞等

も代コラゲナーゼ、効果"からみて, type IIIコラーゲンの合成能を保持しているものと思われるが,

これらの細胞の性格については今後の検討が必要である。

IV. まとめ

線維芽細胞,平滑筋細胞又はその近縁細胞から分泌された typeIII コラーゲンは糖タンパクと

共にレチグリン線維(好銀線維〉をつくり,ここにコラゲナーゼが作用すると,線維が分解され,

その分解産物,おそらくコラーゲン分子と遊離した糖タンパクとの相互作用によって FLS線維が

形成されるものと考えられる。勿論,細胞から分泌された typeIII及び他の typeのコラーゲン

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分子が直接糖タンパクとの相互作用によって FLS線維を形成する可能性もあるが,このような

FLS線維の形成機序については今後の検討にまたなければならない。

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別刷請求先・(干 920)金沢市宝町 13ー 1

金沢大学医学部病理学第一講座

梶川欽一郎

Reprint requests to:

Dr. K. Kajikawa

Department of Pathology, School of Medicine,

Kanazawa University, Takara-machi, 13-1, Kanazawa 920, Japan