国内スノーリゾートにおけるインバウンド対応の考察 〜増加 ... ·...

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第1回スノーリソート地域の活性化推進会議 資料 〜世界に誇れるスノーリゾートを目指して〜 北海道大学観光学高等研究センター 遠藤 国内スノーリゾートにおけるインバウンド対応の考察 〜増加する外国人スキー観光客とスキースクールの対応を中心に 1

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第1回スノーリソート地域の活性化推進会議 資料〜世界に誇れるスノーリゾートを目指して〜

北海道大学観光学高等研究センター

遠藤 正

国内スノーリゾートにおけるインバウンド対応の考察〜増加する外国人スキー観光客とスキースクールの対応を中心に

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スノーリゾート地域の活性化に向けた検討会議最終報告概要のレビュー(前年度)

○日本人のスノースホーツ人口はピーク時の1,800万人(1998年)から、740万人(2015年)と、4割程度にまて減少。

○国内のスキー場は、現在は約500箇所程度。索道(リフト等)の設置基数は、平成5年頃の約3000基から2351基と減少(H26年)したか、現在も多数あり。

○日本のスキー場の特徴として雪質か優れ、外国人にも人気。また、首都圏なとからは特に、交通アクセスの優れたスキー場か数多く存在する。

○一方、索道等の施設の安全管理、コースの安全管理は重要たか、特に施設の老朽化対応等、安全管理投資の負担感か大きい。

○スキー場経営は、地域の基幹産業・雇用の場てあり、地域への影響か大きい。地域の稼く力を向上し、観光地として経営を進めていくための体制構築か必要。

○訪日外国人旅行者数か2016年に2,404万人。4年連続て過去最高を更新。また、2018年平昌冬季五輪、2022年北京冬季五輪により、今後アシア諸国においてスキー人口の増加と我か国のスキー場への来訪増加か期待される。しかし、我か国のスノーリソートての外国人客のニースへの対応は十分といえない状況。外国人誘客への対応か重要。

○国内からのスキー客の増加のためには、特に生涯通してのリヒートか期待される若者層や、余暇時間か多い高齢者層(特に若いときのスキー経験者)を主なターケットとして、参加人口拡大への取組か重要。◯「明日の日本を支える観光ヒション」なと、観光に関する国全体の計画を踏まえて取組を推進する必要。

出所:http://www.mlit.go.jp/common/001183567.pdf2

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スノーリゾート地域における訪日観光客のトレンドの一例

ニセコ地域のトレンド(倶知安町統計より)から

・第1期:オーストラリアを中心とした冬季の観光客・第2期:アジア圏の訪日観光客の台頭、それに続くオーストラリアの観光客

スノーリゾート地域の活性化のカギの1つは「アジア」からの観光客へのアプローチ

H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28

オーストラリア 89,503 83,665 91,854 99,665 69,469 127,986 143,904 120,074 152,227 97,966

アジア 22,820 32,325 56,823 62,262 43,000 75,660 97,956 121,851 173,472 176,962

その他 31,234 23,093 18,969 25,204 16,527 24,699 32,068 50,061 65,450 79,375

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50,000

100,000

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200,000

250,000

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450,000泊

外国人宿泊延数の推移(北海道倶知安町:ニセコエリア)

出所:倶知安町 観光入込客数・外国人宿泊数状況 平成29年度版 3

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外国人スキー観光客への受け入れ対応について〜セグメントの必要性(マクロ的な視点で)

個別スキー場には当てはまらない場合もあるが、上記の2つの顧客層で当面は進展と推測 すなわち、「中・上級者の外国人スキー観光客」と「未経験・初級者の外国人スキー観光客」を意識し、顧客に応じた「スノーリゾートのサービスの進化」が国際的なリゾートになるために肝要

従来の一般的な捉え方

外国人スキー観光客 単一のセグメント

ニセコ地域の動向を踏まえ顧客のセグメントが重要

中・上級者の外国人スキー観光客

(オーストラリアや欧米を想定)

未経験・初級者の外国人スキー観光客(主にアジア圏を想定)

外国人スキー観光客

今後の捉え方の一例(スキー観光客の特徴を考慮)

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中・上級者の外国人スキー観光客

未経験・初級者の外国人スキー観光客

顧客ニーズなど

・(初級者と比べ)レッスン時間は長め・上達や様々なコースを満喫したい・長期滞在の傾向

・短時間でスキーの体験を最優先・楽しくスキーを経験したい・雪遊びなども重要

将来の可能性

・「新たなスキーデスティネーション」探しとして、全国各地へのスキー場への来訪が期待できる層

・スキーの面白さ、楽しさを伝えることができれば、リピートが期待できる

(=新規顧客の創出)

セグメント(技術レベル)に基づく、スキーレッスン等へのニーズと将来の可能性

外国人スキー観光客への受け入れ対応について〜セグメントの必要性(マクロ的な視点で)

中・上級者の外国人スキー観光客

(オーストラリアや欧米を想定)

未経験・初級者の外国人スキー観光客(主にアジア圏を想定)

外国人スキー観光客

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外国人スキー観光客への受け入れ対応について〜スキースクール等でのインストラクター確保

注)上記は筆者が便宜的に分類したものであり、個別事情等により他の分類も可能。 *1:北海道での留学生スキー指導者育成など

外国人スキー観光客対応のためのインストラクターの確保について

<外国人採用型>外国人スキーインストラクターの「採用」

<委託型>外国人スキーインストラクターを有する会社への「委託」等

<日本人採用型>外国語能力を有する日本人インストラクターの「採用」、「発掘」

<ハイブリッド型>日本人インストラクター、通訳、通信機器を組み合わせた「ハイブリッド型」

スキー指導の現場では、スキー未経験者であるアジアからのスキー観光客にもスキーレッスンのニーズがあり、国際的なスノーリゾートとなるためにその対応が「急務」

一方、人材不足は共通した課題であり、「採用」、「何らかの対応策」、「育成」の3つの切り口で中長期な戦略が肝要

<育成型>日本人の外国語能力の育成、スキーのできる外国人等の育成*1

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スキースクールの対応事例紹介「ガーラ湯沢スキー場」=ハイブリッド型

株式会社ガーラ湯沢(JR東日本グループ)GALA湯沢スキー場 本社:新潟県南魚沼郡湯沢町大字湯沢字茅平1039-2営業開始 2009年(平成11年)12月11日

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10,000

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30,000

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50,000

60,000

2015 2016 2017

外国人来場者数

世界で唯一の新幹線直結スキー場

アジアからの観光客が「日帰り」で気軽にスキー体験できるスノーリゾート

中国語スキーレッスンは昨シーズン2,500人を超える生徒が受講

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スキースクールの対応事例紹介「ガーラ湯沢スキー場」=ハイブリッド型

・多言語でスキーレッスンを行うための通訳システム。・2016-17シーズンより中国語スキーレッスンで運用。・インストラクターの脇に通訳スタッフを配置し、同時通訳した内容を無線端末から発信。・各受講者が装着しているスピーカーヘルメットにリアルタイムでインストラクターの指導を伝えレッスンを行う。・2017-18シーズンはタイ語にも対応を予定。・複数名に同時に同じ音声を提供。・イヤホン等と異なるため耳を覆わなく、外部音声は通常通りであり安全。・参考動画:https://youtu.be/3Q5FbEotIe8

出所 ガーラ湯沢提供資料8

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スキースクールの対応事例紹介「ルスツリゾートスキー場」=採用型

ルスツリゾートスキー場(加森観光株式会社):北海道虻田郡留寿都村字泉川13全37コース、総滑走距離42Km、2015年より併設ホテルが「ウェスティンルスツリゾート」へ

海外観光客は主に、オーストラリア、台湾、韓国、香港、シンガポール、マレーシア、中国等

出所:ルスツリゾート関係者へのヒアリングおよび後志振興局資料

ピーク時に対応するインストラクター数(全90名程度)のうち日本人対外国人の比率は『1:2』 → 「外国人ニーズ対応のため今後も増加見込み」(関係者)

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世界に誇れるスノーリゾートを目指して

①アジアナンバー1のスノーリゾートを実現するための、人材の「確保」と「育成」を・短期的には人材の「確保」が当面の課題となるが、将来へ向けスノーリゾートで活躍できる人材育成を推進する必要がある。・なお、現状を鑑み、支援や制度等、その促進の仕掛けや仕組みの創設に期待。

③日本らしさを失わないスノーリソートの推進を・観光の「磁力」と表現されるように、日本らしい文化や風景は外国人スキーヤーを魅了するための源泉。「世界に誇れるスノーリゾート」を目指し、TPOに応じた対応も適宜検討の必要がある(日本らしい風景や文化等の維持)。

②スノーリゾートの個性や魅力を磨き、新規顧客の創出を・既存のインバウンドスキーヤーのリピートに加え、特に今後爆発的に伸びる可能性のあるアジアのスキー初級者に適切に対応することで、スノーリゾートにおける新たな顧客創出が期待出来る。・日本のスキー界が長い年月をかけ構築してきた指導法や検定制度など、スキー指導のノウハウの活用・応用により、スノーリゾートのさらなる魅力向上が期待できる。

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