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インターネット放送のための同報性と導入容易性を両立する JFD ステムの構築と評価 森村 吉貴 上原哲太郎 †† 書会 ††† 美濃 導彦 †† Construction and Evaluation of a JFD System Equipped with Both High Distri- bution Capacity and Low Initial Cost for Internet Broadcasting Yoshitaka MORIMURA , Tetsutaro UEHARA †† , Shuhui HOU ††† , and Michihiko MINOH †† あらまし インターネット上のライブ映像配信,即ちインターネット放送は数万人のユーザに同時に同じ映像 を配信できる同報性と,専門知識や機材がなくとも映像配信を開始できる導入容易性におけるメリットを持つ. 筆者らは放送された映像が不正に再配信された場合にそれを追跡可能とする技術が今後重要となると考え,そ のようなシステムの実現を目標とする.追跡性の実現に有効な技術に,配信者が映像を暗号化し,視聴者がそ れを復号する際に個々人の ID が映像に強制的に電子透かしとして挿入される JFD(Joint Fingerprinting and Decryption) がある.しかし既存の提案は導入容易性,同報性を共に満たすシステム構成を提示しておらず,ま た実環境において利用する計算資源や帯域資源と透かし映像の画質の検証が十分でなかった.筆者らは,導入容 易性に優れた公開鍵 JFD 法を採用し,透かしを埋め込む周波数係数の選択及び構成の工夫により数万人程度の 同報性を実現するシステムを提示した.また,システムを実装評価し,計算と帯域資源に対する数値評価結果, 及び画質に対する PSNR による客観評価結果が目的に十分適うことを示した. キーワード ライブ映像配信,コンテンツ保護,CGM, 電子透かし,電子指紋,JFD 1. まえがき 今世紀に入り,YouTube に代表されるインターネッ ト上の映像配信は,広く一般に利用されるようになっ た.近年では,録画された映像の配信のみならず,ラ イブ映像の配信サービスの人気が急速に高まっており, 誰もが気軽に様々な映像の生放送を行える手段として 利用されるようになっている.このようなインターネッ ト上のライブ映像配信を,本論文ではインターネット 放送と呼ぶ. インターネット放送は,専用の機材や知識が無くと 京都大学物質‐細胞統合システム拠点,京都市 iCeMS, Kyoto University, Yoshidaushinomiyachou, Sakyo- ku, Kyoto-shi, Kyoto, 606-8501, Japan †† 京都大学学術情報メディアセンター,京都市 ACCMS, Kyoto University, Yoshidanihonmatsuchou, Sakyo- ku, Kyoto-shi, Kyoto, 60L6-8501, Japan ††† 北京科技大学数学力学系,北京 Dept. of Mathmatics and Mecanics, University of Science and Technology Beijing, 30 Xueyuan Road, Haidian District, Beijing 100083, P. R. China も市販の PC とインターネット環境があれば映像の発 信が容易に開始できる導入容易性と,専用のインフラ 設備を持たなくとも多数の同時視聴者に対して映像 の発信が可能な同報性を持つ.実際にライブ映像配信 サービスの Ustream やニコニコ生放送では,誰もが 容易に数十人から数万人の同時視聴者に向けた映像発 信を行える. インターネット放送が普及期に入った今,著作権や 肖像権を適切に扱うために映像の流通を管理すること は重要な課題である.例えば,講演会で事前の参加申 し込みや少額決済の参加料振込みを行った人に限定し て映像を配信したい,あるいは意図せず不適切な映像 を放送してしまった場合に,配信された映像の録画が 不特定多数に流出や拡散するのを防ぎたいという要求 がある.そのような要求に応えるため,視聴者を限定 し映像流出時にはその追跡が行えるインターネット放 送が提案されている [1] [2]このような仕組みは正規の視聴者のみに視聴を許す ために配信時に映像を暗号化し,更に各視聴者の映像 電子情報通信学会論文誌 X Vol. Jxx–X No. xx pp. 1–13 xxxx xx 1

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論 文

インターネット放送のための同報性と導入容易性を両立する JFDシステムの構築と評価

森村 吉貴† 上原哲太郎†† 侯 書会††† 美濃 導彦††

Construction and Evaluation of a JFD System Equipped with Both High Distri-

bution Capacity and Low Initial Cost for Internet Broadcasting

Yoshitaka MORIMURA†, Tetsutaro UEHARA††, Shuhui HOU†††, and MichihikoMINOH††

あらまし インターネット上のライブ映像配信,即ちインターネット放送は数万人のユーザに同時に同じ映像を配信できる同報性と,専門知識や機材がなくとも映像配信を開始できる導入容易性におけるメリットを持つ.筆者らは放送された映像が不正に再配信された場合にそれを追跡可能とする技術が今後重要となると考え,そのようなシステムの実現を目標とする.追跡性の実現に有効な技術に,配信者が映像を暗号化し,視聴者がそれを復号する際に個々人の ID が映像に強制的に電子透かしとして挿入される JFD(Joint Fingerprinting and

Decryption) がある.しかし既存の提案は導入容易性,同報性を共に満たすシステム構成を提示しておらず,また実環境において利用する計算資源や帯域資源と透かし映像の画質の検証が十分でなかった.筆者らは,導入容易性に優れた公開鍵 JFD 法を採用し,透かしを埋め込む周波数係数の選択及び構成の工夫により数万人程度の同報性を実現するシステムを提示した.また,システムを実装評価し,計算と帯域資源に対する数値評価結果,及び画質に対する PSNR による客観評価結果が目的に十分適うことを示した.キーワード ライブ映像配信,コンテンツ保護,CGM, 電子透かし,電子指紋,JFD

1. ま え が き

今世紀に入り,YouTubeに代表されるインターネット上の映像配信は,広く一般に利用されるようになった.近年では,録画された映像の配信のみならず,ライブ映像の配信サービスの人気が急速に高まっており,誰もが気軽に様々な映像の生放送を行える手段として利用されるようになっている.このようなインターネット上のライブ映像配信を,本論文ではインターネット放送と呼ぶ.インターネット放送は,専用の機材や知識が無くと

†京都大学物質‐細胞統合システム拠点,京都市iCeMS, Kyoto University, Yoshidaushinomiyachou, Sakyo-

ku, Kyoto-shi, Kyoto, 606-8501, Japan††京都大学学術情報メディアセンター,京都市

ACCMS, Kyoto University, Yoshidanihonmatsuchou, Sakyo-

ku, Kyoto-shi, Kyoto, 60L6-8501, Japan†††北京科技大学数学力学系,北京

Dept. of Mathmatics and Mecanics, University of Science

and Technology Beijing, 30 Xueyuan Road, Haidian District,

Beijing 100083, P. R. China

も市販の PCとインターネット環境があれば映像の発信が容易に開始できる導入容易性と,専用のインフラ設備を持たなくとも多数の同時視聴者に対して映像の発信が可能な同報性を持つ.実際にライブ映像配信サービスの Ustream やニコニコ生放送では,誰もが容易に数十人から数万人の同時視聴者に向けた映像発信を行える.インターネット放送が普及期に入った今,著作権や肖像権を適切に扱うために映像の流通を管理することは重要な課題である.例えば,講演会で事前の参加申し込みや少額決済の参加料振込みを行った人に限定して映像を配信したい,あるいは意図せず不適切な映像を放送してしまった場合に,配信された映像の録画が不特定多数に流出や拡散するのを防ぎたいという要求がある.そのような要求に応えるため,視聴者を限定し映像流出時にはその追跡が行えるインターネット放送が提案されている [1] [2].このような仕組みは正規の視聴者のみに視聴を許すために配信時に映像を暗号化し,更に各視聴者の映像

電子情報通信学会論文誌 X Vol. Jxx–X No. xx pp. 1–13 xxxx 年 xx 月 1

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電子情報通信学会論文誌 xxxx/xx Vol. Jxx–X No. xx

にそれぞれ異なる ID を電子透かしの形で埋め込む.これにより,配信者が意図しない形で視聴者に映像を流出や拡散されても,それをした視聴者に警告や摘発,あるいは視聴許可の無効化などの措置を行える.視聴者の IDを映像に挿入する電子透かしは,一般に電子指紋と呼ばれる.電子指紋の挿入には,視聴者が受けとった映像を復号する際に復号映像に視聴者各自の IDを強制的に挿入する JFD(Joint Fingerprinting and Decryption)

という技術が有効である [3].しかし,これまでの JFD

提案はインターネット放送の本来の利点である同報性と導入容易性の両立が不十分であった.また,これまで JFDに関する提案は要素技術的理論の提案に留まっており,実映像・実計算機を対象とする実装によりシステムの実運用可能性を実証したものはかつてない.本研究では,JFDに基づくインターネット放送システムを提案及び実装し,それが (a)同報性と導入容易性を両立し,かつ (b) 消費する帯域資源と計算資源,および処理適用後の画質の点で実運用可能なことを示す.本論文の構成は以下の通りである.2章では JFDに基づくインターネット放送の枠組みを示し,そこで求められる導入容易性と同報性の条件を考察する.3章では,導入容易性に優れた公開鍵方式の JFD 法を元にした手法を提案する.この手法は映像の周波数係数を暗号文として構成する際の工夫により,従来の公開鍵 JFD 法が持つ埋め込み容量の少なさを克服している.これにより,(a) 同報性と導入容易性の両立が可能となる.4章では,実計算機上で実映像を対象とするシステム稼働実験を行う.実験結果により,(b) 消費帯域が一般的なブロードバンドの回線能力内に十分収まること,配信側及び受信側のスループットが実時間処理に十分であること,および処理適用後の映像の客観評価指標 (PSNR)が一般的な許容範囲に収まることから,実装したシステムが実運用可能であることを示す.

2. 追跡性を備えるインターネット放送システム

2. 1 電子指紋により追跡性を備えるインターネット放送環境

本研究で想定する追跡性をもつインターネット放送環境について述べる.まず,インターネット上には,映像の配信を希望する配信者と,視聴を希望する多数

のユーザ (視聴者)が存在しているものとする.配信者およびユーザは,事前知識がなくともWeb カメラとPCもしくはモバイル端末,及び専用ソフトウェアを使って容易に配信を開始できる.これが導入容易性における本研究の目標である.また,これまでのインターネット放送の例から本研究は数万人規模を同報性の目標とする.映像を配信者から多数のユーザに同報的に配信する手段には IP

マルチキャスト,Akamai(注1)などのコンテンツデリバリーネットワーク, SHOUTcast(注2)などの P2Pネットワークがある.配信者は同時配信の実現に際しこれらのどの手段を用いても良いものとする.配信される映像に流出追跡性をもたらす枠組は以下の通りである.配信者は視聴を希望するユーザについて,視聴契約や参加登録を通じて配信の許可/不許可を管理する.映像に許可されたユーザのみ復号できるような暗号化を施すことで,インターネットのようなオープンなネットワークでも視聴管理を行うことができる.この際に配信者が持つ暗号化用の鍵をサーバ鍵,ユーザが持つ復号用の鍵をユーザ鍵と呼ぶ.ここで想定する暗号化は,暗号化映像を完全に不可視とする必要はなく,部分的に情報を秘匿することで暗号化後の映像の視覚的価値が著しく減じていれば良いものとする.視聴管理が行われている場合,配信される映像にユーザの IDを含む電子透かし,すなわち電子指紋を挿入することで流出時の追跡が可能となる.一般に電子透かしの形で埋め込むユーザ IDを電子指紋と呼ぶ.映像に電子指紋を埋め込むタイミングはサーバ鍵による暗号化の直前もしくはユーザ鍵による復号直後である.映像に埋め込まれた電子指紋は追跡機関によって検出される.追跡機関は PKI認証局のように高い信頼性を備えるものが複数存在するものとする.映像の流出や拡散が疑われる場合には,追跡機関は各ユーザのID 情報と配信者が発信したオリジナル映像を受けとり,疑わしいネットワーク上のコンテンツを自動収集するクローラを稼働する.クローラが流出映像を発見した場合,追跡機関はそれとオリジナル映像を比較して IDを抽出し,それが示すユーザに警告や摘発,視

(注1):Akamai Technologies, “Akamai Global Streaming,”

http://www.akamai.co.jp/enja/html/

technology/products/streaming.html

(注2):NULLSOFT, “Free Internet Radio SHOUTcast,”

http://www.shoutcast.com/

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論文/インターネット放送のための同報性と導入容易性を両立する JFD システムの構築と評価

Authorized User

A

A

Encrypted Stream

Large-scaleSimultaneousDistribution

EncryptionEncryptedStream

AnonymousNetwork

Redistribution Undesirable forOriginal distributer

� Extract ion of ID from Recoded and Redistributed Video �Matching ID to User ID Database

User C is Redistributing

illegally !

Live Video Distribution

Decryption(Fingerprinting)

Decryptedand

FingerprintedVideo

unwatchable

Tracing agency

Video Distributer

Server Key

B

B

C

C C

C

RecordedVideo

Non-Authorized User

Copy ofRecorded Video

Decryption(Fingerprinting)

Decryption(Fingerprinting)

Note) There are two ways for fingerprinting, which are distributer-side and user-side. This figure shows user-side fingerprinting.

User IDDatabase

図 1 追跡性を備えるインターネット放送環境の想定Fig. 1 Internet broadcasting environment with tracability

聴許可無効化などの処置を行う.ここで述べたインターネット放送環境の想定を図 1

に示す.

2. 2 電子指紋挿入の既存手法の問題点

電子指紋を映像に挿入する場合,同報性と導入容易性の維持に留意する必要がある.挿入の際,その透かしの埋め込み容量が十分でなければ数万人を識別するIDが表現できず同報性が損われる.また IDに関する情報は指紋を埋め込む側で秘密裏に保存する必要があるが,これを故意又は過失による流出から守るために配信者やユーザに高度な知識や専用のハードウェアを要求することは導入容易性に反する.追跡性を満たすインターネット放送システムの構築にあたっては,上記の観点から既存手法を検討する必要がある.映像へ電子指紋を挿入する手法はこれまで数多く提案されている [1] [3].これらの手法は配信者側で指紋の挿入処理を行う手法,ユーザ側で指紋の挿入処理を行う手法,配信者及びユーザの双方で指紋挿入に関する処理を行う手法に分類される.配信者側で指紋の挿入処理を行う手法は,配信者が映像を配信する時点でユーザごとに異なる IDを電子

指紋として挿入し映像を配信する.しかしこの場合,ユーザごとに異なる映像ストリームを準備する必要があり,計算コスト,帯域コストがユーザ数に比例する.数万人のユーザであればコストも数万倍になるため,これは同報性の点で適さない.一方,ユーザ側で指紋の挿入処理を行う手法は,配信者は複数のユーザに対して同一のストリームを配信し,ユーザ側は受け取った映像に対し自らの IDを電子指紋として挿入する.この場合,ユーザに指紋挿入手続をキャンセルさせない必要がある.映像の復号にブラックボックス化された専用のハードウェアを用いることでユーザに手続を強制することもできるが,これは導入容易性の点で適さない.そのようなハードウェアを用いずともユーザに指紋挿入手続を強制する手法として,Joint Fingerprinting and Decryption(JFD)

が近年盛んに研究されている [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] .JFDは, 配信者側で指紋挿入の前処理となる暗号化を施し,各ユーザごとに異なる復号鍵で復号させる.この時,各ユーザ鍵のそれぞれ異なる部分を僅かに不完全とすることで,ユーザごとの復号結果に微小な差異を与えることができる.この差異を映像に埋め込ま

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電子情報通信学会論文誌 xxxx/xx Vol. Jxx–X No. xx

れた電子透かしとみなし,個々の差異がユーザ IDと紐付くようユーザ鍵の構成を工夫することで電子指紋が実現される.このように JFD では復号と電子指紋挿入が不可分に統合されているため,ユーザは指紋挿入手続きを原理的にキャンセルできない.

JFD には秘密鍵 JFD [3] [4] [5] [6] [7] [8] と公開鍵JFD [9]が存在する.秘密鍵 JFDは共通鍵暗号方式を基礎とするため,配信者は暗号化に用いるサーバ鍵を厳重に秘匿しておく必要があった.公開鍵 JFDは,基礎となる暗号方式に公開鍵暗号を採用することで,配信者がサーバ鍵を秘匿する必要性をなくした JFD 方式である.配信者が高度な知識や専用のハードウェアを用いて鍵を管理する必要が無い点で,公開鍵 JFD

は秘密鍵 JFD と比べ導入容易性に優れていると言える.但し,従来の公開鍵 JFD の提案は,数万人規模の同報性を満たすことが証明されていなかった.筆者らは次章で既存の公開鍵 JFD が十分な電子指紋の埋め込み容量を持たず,従って数万人の同報性を持たないことを明らかにした上で,これを解決する方法を提案する.これにより,導入容易性と同報性を両立するJFDの実現が可能となる.また,秘密鍵 JFDと公開鍵 JFDのいずれも既存の提案は要素技術の理論的提案に留まっており,実装によりシステムの実運用可能性を実証したものはかつてない.従って,実計算機や実映像を対象とするシステムを実装することで消費する帯域資源と計算資源,および JFD 処理適用後の画質を検証し,実運用の可能性を示すことが求められる.

3. 同報性と導入容易性を満たす JFDシステム

3. 1 公開鍵 JFDの概要筆者らは Houらの,公開鍵 JFD手法 [9]を基本的な方式として採用し,その指紋の埋め込み容量に関する問題を解決することで,同報性及び導入容易性を満たす JFDを提案する.ここではまず,文献 [9]により提案された公開鍵 JFDの概要を示す.電子指紋挿入は,配信する映像から取りだしたフレーム画像を対象とし,その画像が縦横 8 画素のブロックに分割され各々離散コサイン変換 (DCT)されていることを前提とする.これは,MPEG-4やH.264

など現在インターネットで主流である映像圧縮符号化方式が DCT を利用していること,DCT 結果の周波数係数の視覚的な特性が良く知られているため電子透

Block Divisionand DCT

Encryptionc = PK M

Plaintext MServer Key for block 1

PK

Ciphertext cBlock 1Block 1Block 1Block 11 2 3 4 5 6

Middle-FrequencyCoefficientExtraction

11111111

図 2 中周波係数の暗号化Fig. 2 Encryption of middle-frequency coefficient

かしなどの処理が行い易いことによる.公開鍵 JFD

では,配信側システムは対象とする画像の周波数係数のうち中周波係数を複数個取り出し,これに暗号化を施す (図 2).画像表現に比較的重要な役割を果す中周波係数を取り出して全て暗号化することで,映像は全体的にモザイク状の映像となり視覚的な価値が著しく損われる.この操作により,復号のためのユーザ鍵がないシステムは映像を受信しても視覚的な価値を持つ映像を再生できない.一方,視聴許可により復号のためのユーザ鍵を持つシステムは中周波係数映像を含めて映像を復号,視聴できる.JFDでは,あらかじめ各ユーザに鍵を配布する際に,完全な鍵から一部の情報を抜いておく.配布されたユーザ鍵を用いて映像を復号すると,中周波係数のうちいくつかが復号に失敗する.復号に失敗する係数は中周波数全体からすればごく一部であるのでその視覚的な影響は小さい.上記のような中周波係数の暗号化の具体的な方法を次に述べる.あるブロック xにビット深度 eの中周波係数が I 個あるとする.このとき,それぞれの中周波係数を文字mi とし,それを I 個並べたものを平文M

とする.配信時にM はそのブロックに対応するサーバ鍵 PKx により暗号文 cに暗号化される.一方受信された映像中の cはブロックに対応するユーザ鍵 CKx

により M に復号される.このとき,サーバ鍵 PKx

は I 個の要素鍵の配列 pkx[i] を持ち,またユーザ鍵CKx は I 個の要素鍵の配列 ckx[i]を持ち,それぞれ各文字の暗号化と復号に関わるものとする.この時,あるユーザに渡す ckx[i]のうちいくつかを元と異なるもの (ダミー鍵 ikx)に置き換えたとき,対応する文字が表す係数は復号に失敗する (図 3).このように,ある一つの暗号化データに対し異なる多数のユーザ鍵で復号を行える性質を持つ暗号化技術

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論文/インターネット放送のための同報性と導入容易性を両立する JFD システムの構築と評価

Plaintext M

PK=( pk1, pk2, pk3,…, pkI )

m1

m2

m3

mI

pk1

pk2

pk3

pkI

En

cryptio

n

Ciphertext c

( ck1, ik , ck3,…, ik )

ck1

ik

ck3

ik

Server Key for Block x

m1

#

m3

#

Decryp

tion

A Certain User Keyfor Block x

Decrypted and Fingerprinted Message M#

(bit depth efor each character)

Cip

hertext

ik: Dummy Key for Block x

ck:Element Key for Block x

DecryptionFailure

DecryptionFailure

x x x x x x x x x

x

x

x

x

x

x

x

x

x

x

図 3 ブロック内暗号化Fig. 3 Encryption within a block

は放送型暗号と呼ばれる.放送型暗号には多数の提案があり,文献 [9] では笠原らが提案した並列処理が可能で高速性に優れる公開鍵方式の HP暗号 [10]を,放送型暗号性を持つよう独自に修正して用いている.以降はこれを修正 HP暗号と呼ぶ.

3. 2 修正HP暗号の具体的な構成法修正 HP暗号は具体的に以下の手順によって構成される.鍵生成暗号化されるメッセージM の各文字mi は ebitの大きさを持つものとする.このとき,i = 1, 2, . . . , I に対し di は以下を満たす素数とする.

di = 2e + δi (1)

ここで,δi は 1 <= δi <= 2e の正の数であり,かつ以下を満たすものとする.

2Ie < d1d2 · · · dI < 2Ie+1 (2)

次に.Di = d1d2 . . . dI/di とする. また,vi はgcd(di, vi) = 1 を満たすランダムな整数とする (ただし 0 < vi < di).また,i = 1, 2, . . . , I と j = 1, 0

に対し,αji をランダムな tbitの正の数とする.ここで,vji を以下のように定める.

vji = αjidi + vi (3)

更に,Vi, V ji を以下のように定める.

Vi = Divi (4)

V ji = Divji (5)

今,s = (s1, s2, . . . , sI)を I 次元二値ベクトルとする.メッセージM = (m1, m2, . . . , mI)に対し,中間メッセージ Lは sを用いて以下に定義される.

L = m1V s11 + m2V s22 + · · · + mIV sII (6)

ここで,P はどのようなm及び sに対してもL < P となるような大きい素数とする.ωはZ∗

p からランダムに選んだ要素とする.ただし,Z∗

P = {1, 2, . . . , P −1}はP を法とする整数の乗法群である.今,i = 1, 2, . . . , I

と j = 0, 1に対する公開鍵ベクトル pk の各要素を以下に与える.

kji = ωV ji(mod P ) (7)

まとめると,生成される鍵は以下のようになる.秘密鍵:di, Vi, P, ω

公開鍵:pk = (k01, k11, k02, k12, . . . , k0I , k1I)

暗号化鍵生成の項で述べたように,M は各要素mi の大きさが ebit のベクトルであるとする.暗号化では,まずI 次元ベクトル s = (s1, s2, . . . , sI)をランダムに生成し,公開鍵 pk から暗号化に用いるベクトル pks を選択する.pks は以下のようになる.

pks = (ks11, ks22, . . . , ksII) (8)

暗号文 cは次のように計算される.

c = ks11m1 + ks22m2 + · · · + ksIImI (9)

このとき,sは暗号化時にランダムに決定されるため,復号側では公開鍵のうち各 iに対する k0i, k1i からどちらを実際に用いたか知ることができない.また,暗号文からは用いた ksii を推測することは計算量的に困難であり,これが HP暗号の安全性の向上に貢献する.復号中間メッセージ Lは

L = ω−1c(mod P ) (10)

によって与えられる.今,任意の i, j について

V ji = Vi(mod di) (11)

の関係が成立するため,平文mは以下により得られる.

mi = MV −1i (mod di) (12)

以上が,修正 HP暗号により平文を暗号化し,完全に復号する手順である.ここで,復号時にいくつかの文字の復号を失敗させるため,ダミー鍵を準備する.今,⊗ = gcd(vs11, vs22, . . . vsII)とする.これは,vsii の

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電子情報通信学会論文誌 xxxx/xx Vol. Jxx–X No. xx

最大公約数を意味する.⊕ = D = d1d2 · · · dI とする.今,秘密鍵のある iについて (di, Vi)を (⊕,⊗)に置き変えると,その i においては,全てのM に対し0 = MV −1

i (mod di) となる.従って,指紋の検出時には復号された結果が暗号化前のメッセージと異なり0となるかどうかにより復号の成功及び失敗を判定できる.以上より,公開鍵 JFD の構成に修正 HP 暗号を用いることが可能である.公開鍵 JFD は,各ユーザにnbit の電子指紋を表現するためにフレーム画像中のnブロックを組で用いる.nブロック中の x番目のブロックは,ユーザの電子指紋中の x 番目の bit をその復号結果によって表現する.これを実現するため,ブロック xに対しサーバ鍵 PKx として pkx,ユーザ鍵 CKx として dx

i , V xi , P x, ωx を生成する.このとき

3. 1節の pk[i]は ksiiに,ckx[i]は dxi , V x

i に相当する.また,ダミー鍵 ikx は dx

i , V xi から求まる⊕x,⊗x に相

当する.ここで,電子指紋の xbit目が 0であるユーザには完全な CKx が配布される一方で,1であるユーザには一部がダミー鍵で置き換えられた CKx が配布される.公 開 鍵 JFD で は n 個 の ブ ロック で nbit

の 電 子 指 紋 を 表 現 す る た め ,サ ー バ 鍵 系列 (PK1, . . . , PKx, . . . , PKn) と ユ ー ザ 鍵 系 列(CK1, . . . , CKx, . . . , CKn) が生成される.配信者はフレーム画像中のブロックを n 個ずつに分け,(PK1, . . . , PKx, . . . , PKn)を反復的に用いて暗号化する.ユーザは (CK1, . . . , CKx, . . . , CKn)から一部をダミー鍵に置き換えられたユーザ鍵系列を受けとり,それを用いて復号する.(CK1, . . . , CKx, . . . , CKn)

のうちどの要素がダミー鍵に置き換えられたかはユーザごとに異なるため,復号失敗するブロックのパターンもユーザごとに異なる.従って,暗号化前の映像と復号映像を比較することで,ユーザに割当てられた電子指紋を抽出できる.なお,電子指紋には二進数で表現した IDをそのまま利用することもできるが,冗長性を持つ符号化を選択してもよい.特に,電子指紋は複数人の映像を平均化することで透かしを無効化する結託攻撃に弱いため,その対策として結託攻撃耐性を持つ符号化 [11]を利用することができる.ID の符号化には多様な方法が考えられるが,以降の考察及び実装では簡単のため冗長性を持たない二進数 ID を用いるものとする.

3. 3 従来の公開鍵 JFD法の指紋埋め込み容量についての問題点

ここまでに述べた従来の公開鍵 JFD 法を用いる場合,同報性において解決すべき課題が存在する.3. 2

節で述べた 0,1の埋め込みプロトコルでは,メッセージM 中の文字 mi に 0が存在する場合,検出時に復号前の文字が元々0であったのか復号失敗により 0になったのかを判別できない.従って,中周波係数 mi

に 0 を含むブロックからは指紋が検出できないことになる.文献 [9] では,各ブロックから取り出す中周波係数は全て非 0であることを仮定している.しかし,実際にはブロック中の周波係数が全て非 0であることは少なく,これは指紋の埋め込みに用いることの可能なブロックが少ないことを意味する.電子指紋は各ブロックが示す 0,1 の値を要素とする二進数符号で表されるため,埋め込みに利用可能なブロックの数は識別可能なユーザ数を規定する.ここで,ある画像フレーム中の埋め込み利用可能なブロック数をその画像の指紋埋め込み容量 (単位:bit)と定義する.指紋埋め込み容量は同報性に影響するため,想定する同時視聴者数に対し十分大きいことが望ましい.これを評価するため,複数の評価用映像に対し従来手法 [9]の埋め込み容量を調べる予備実験を行った.評価用映像には,映像処理の評価用途に広く利用されている container, flower garden, football, foreman,

hall monitor, mobile, news, silent(図 4)(注3)と,個人による放送を想定したウェブカメラ (Logicool Qcam

Pro 9000)撮影のカメラ映像 webcamを利用した (図5).映像の選定の際には,映像中の画像の鮮明さや動きの大きさなどの特徴が多様となるよう留意した.評価用映像の特徴が多様であることを定量的に示すため,ITU-T勧告 P.910 [12]で規定された SI(空間的知覚情報), TI(時間的知覚情報)の各映像への適用結果を図 6

に示す.これらの映像の大きさはいずれも CIF サイズ (横

352縦 288画素) である.映像圧縮にはMPEG-4 Vi-

sual 符号化を用い,圧縮後のビットレートが 1Mbps

となるように量子化パラメータを調整した.量子化後の中周波数係数に対する埋め込み容量を調べたところ,表 1のようになった.

(注3):全て http://www.cipr.rpi.edu/resource/sequences/より入手した

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論文/インターネット放送のための同報性と導入容易性を両立する JFD システムの構築と評価

図 4 評価用映像例 (上段左より container,flower garden, football, foreman.下段左より hall monitor,mobile,news,silent)

Fig. 4 Example of test videos (From left to right, container, flower garden, foot-

ball and foreman in the upper row. Hall monitor, mobile, news and silent

in the lower row.)

図 5 評価用映像例 (webcam)

Fig. 5 Example of test video (webcam)

container

flower_gardenfootball

foreman

hall_monitor

mobilenews

silent

webcam

0

10

20

30

40

50

60

50 75 100 125 150 175 200

TI

SI

図 6 ITU-T 勧告 P.910 基準による各評価用映像の SI,

TI 値Fig. 6 SI and TI value of test video with the metrix

of ITU-T Recommendation P.910

本研究で想定するユーザは数万人程度である.そこで,指紋埋め込み容量は,少なくとも 16bit以上あることを目安とする.これは,16bitあれば 216 = 65536

パターンの ID を表現可能であり,また 1Byte=8bit

表 1 各評価映像における従来手法の平均指紋埋め込み容量 (bit)

Table 1 Average fingerprint content of the conven-

tional method for each test video(bit)

video capacity(bit)

container 34.4

flower garden 1.4

football 0.4

foreman 0.8

hall monitor 31.1

mobile 1.0

news 47.0

silent 10.3

webcam 4.2

average 14.5

の倍数であるため計算機上で扱いやすいためである.表に示されるように,実映像 (1Mbps)を対象とした埋め込みにおいて,既存手法の指紋容量の平均は 16bit

を下回っており,かつ約半分の映像の容量は 5bitにも満たない.そこで本研究は,埋め込み容量の改善を主眼として公開鍵 JFD手法の改良を行う.

3. 4 係数パックによる埋め込み容量の改善既存の公開鍵 JFD ではあるブロックから生成されるメッセージに一つでも 0が入っていれば埋め込みを行えない.ブロックの埋め込み対象の中周波係数 I 個に対し,それぞれの係数が確率 p で非 0 である場合,埋め込み可能な確率は pI となる.従って,中周波係数mi に 0 を含むブロックからは指紋が検出できないことになる.よって,例えば全体を通じて 70% の係数が非 0であっても,I = 10, p = 0.7のときこの確率

7

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電子情報通信学会論文誌 xxxx/xx Vol. Jxx–X No. xx

は 2.8%となり効率が悪い.この問題を解決するためには,各文字ができるだけ非 0になるようメッセージを再構成することが考えられる.本研究は,複数の周波数係数を合成した文字でメッセージを構成することによりこれを達成する.ここで言う係数の合成とは以下のような操作である.今,C1 から Cn までの係数を合成したいものとする.各係数は元々ebitの長さを持つため,i番目の係数はe × (iー 1)bit分の左シフト操作を加えた上で他の係数と足し合わせれば,元の情報を失うことなく合成することが可能であると考えられる.xbit分の左シフト操作は対象に 2x を掛けることに相当するため,このような操作は以下の式で表現できる.

C1+2eC2+. . .+2e(n−1)Cn =

n∑i=1

2e(i−1)Ci (13)

上述の係数の合成は次のような効果を持つ.各々ebit で表現される各周波数係数 Ci がそれぞれ確率 p

で非 0であると仮定した場合,係数を n個ならべて合成した係数 (式 13)が非 0である確率は 1 − (1 − p)n

であり,この確率は一般的に n が大きいほど p より大きくなる.したがって,個々の係数を文字とするより合成した係数を文字としてメッセージを構築した方が各メッセージが埋め込み可能な確率は増加する.式13 のように複数の係数を合成する操作を本稿では係数パックと呼ぶことにする.しかし,同ブロック中の係数をパックすると,ある文字が復号失敗により 0となった場合に,そのブロックの中で欠損する係数が占める割合が大きくなり,指紋挿入字の画質の劣化程度が大きくなる.そこで,本研究では,ブロックをまたいで周波数係数を係数パックする手法を提案する.この手法は,n 個の近接ブロックから同じ周波数に対応する係数をパックし,それらのブロックをまとめてメッセージとみなす (図 7).これは画像全体から見て,同ブロック中の係数をパックする場合と比べ復号に失敗する係数の割合を減らすものではないが,復号に失敗する係数を持つブロックと持たないブロックの間の画質の偏りを減らす効果を持つ.なお埋め込み容量に関しては,n個のブロックの係数をパックする場合に 1フレームあたりのメッセージ数は 1

nに減少するため,無条件に埋め込み容量が増加

するわけではない.各ブロックのそれぞれの係数が非 0

である確率が等しく pであるという仮定を置くと,埋

1

2

3

4

5

6

7

8

1

2

3

4

5

6

7

8

1

2

3

4

5

6

7

8

1

2

3

4

5

6

7

8

1 1 1 1

2 2 2 2

3 3 3 3

4 4 4 4

5 5 5 5

6 6 6 6

7 7 7 7

8 8 8 8

m1

m2

m3

m4

m5

m6

m7

m8

MessageM

Block 1 Block 2 Block 3 Block 4

12 3

4 56 7 8

12 3

4 56 7 8

12 3

4 56 7 8

12 3

4 56 7 8

merge

図 7 複数ブロックからの周波数係数パックFig. 7 Frequency coefficient packing of multi-block

0

10

20

30

40

50

60

0 2 4 6 8 10 12 14 16

freq

uenc

y di

strib

utio

n of

non

-zer

o co

eff n

um (

%)

non-zero coeff num

0.5Mbps1Mbps

1.5Mbps2Mbps

図 8 0.5Mbps,1Mbps,1.5Mbps,2Mbps の映像を対象とした各ブロックにおける非ゼロ係数の数の頻度分布 (係数パック無し)

Fig. 8 Frequency distribution of non-zero coefficeint

with 0.5Mbps, 1Mbps, 1.5Mbps and 2Mbps

video for each block (without coefficient pack-

ing)

め込み容量が増加する条件は (1− (1− p)n)I < pI ∗n

となり,p, nに依存することが示される.実際の映像は各々の係数が非 0 である確率は一定でないためこの式をそのまま適用することはできないため,例としてテスト用映像”flower garden” のブロック内の中周波係数 16個中の,非 0係数の数の頻度分布を示す(図 8).テスト用映像はMPEG-4 Visual方式で圧縮符号化し,圧縮後のビットレートが 0.5Mbps, 1Mbps,

1.5Mbps, 2Mbpsになるよう量子化スケールを調整した映像を用いた.また,4ブロックをパックして 1メッセージとした場合のメッセージ内の非 0係数の数の頻度分布を図 9に示す.図 8と図 9の横軸は映像中の 1

メッセージあたりの非ゼロ係数の個数であり,縦軸は映像中の全メッセージに対してそれらの個数がどのよ

8

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論文/インターネット放送のための同報性と導入容易性を両立する JFD システムの構築と評価

0

10

20

30

40

50

60

0 2 4 6 8 10 12 14 16

freq

uenc

y di

strib

utio

n of

non

-zer

o co

eff n

um (

%)

non-zero coeff num

0.5Mbps1Mbps

1.5Mbps2Mbps

図 9 0.5Mbps,1Mbps,1.5Mbps,2Mbps の映像を対象とした各ブロックにおける非ゼロ係数の数の頻度分布 (係数パック有り)

Fig. 9 Frequency distribution of non-zero coefficient

and with 0.5Mbps, 1Mbps, 1.5Mbps, and

2Mbps video for each block (with coefficient

packing)

うに分布するかの割合を示す.図で示される実験の結果,いずれのビットレートにおいてもパックした場合の方が非 0係数の数が増加することが確認され,係数パックを行うことにより電子指紋の埋め込み容量が改善することが予想される.複数種類の実映像に対する最終的な容量改善の結果は,4章で他の実験結果とあわせて示す.

4. 実験による提案システムの同報性及び利用する計算資源,帯域資源と映像の画質の妥当性の確認

4. 1 実 験 環 境前節までに提案した手法をソフトウェア的に構築し,実映像を対象とする実験を行った.公開鍵 JFDはオープンソースソフトウェアである ffmpegに変更を加え,MPEG-4 Visual符号化処理を行うモジュールに修正HP暗号方式の暗号化処理及び復号と電子指紋統合処理を追加することで実装した.MPEG-4 Visual符号化の際には,フレームレートを 30fps,GOP 構成は15 フレーム単位で IPPPPPPPPPPPPPP(ただし I

はイントラピクチャ,Pは順方向予測ピクチャ)に固定した.ここで Bピクチャ(双方向予測ピクチャ)を用いていない理由は,実装上の容易さのためである.本研究で用いる指紋はフレーム毎に独立して埋め込むため,フレーム間の符号化順序の影響を受けない.よって,原理的には Bピクチャを含むGOP構成にも適応可能である.また,量子化パラメータは 1つの映像に対し

表 2 各評価映像における係数パック時の平均指紋埋め込み容量 (bit)

Table 2 Average fingerprint content of the proposed

method for each test video(bit)

video capacity(bit)

1-pack 2-pack 4-pack

container 34.4 95.2 94.6

flower garden 1.4 31.5 95.5

football 0.4 8.4 19.7

foreman 0.8 12.4 33.1

hall monitor 31.1 68.5 76.8

mobile 1.0 19.7 73.9

news 47.0 89.7 100.0

silent 10.3 71.8 143.8

webcam 4.2 20.3 29.5

min 0.4 8.4 19.7

average 14.5 46.8 74.1

max 47.0 95.2 143.8

1

2

4

8

16

32

64

128

256

200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000

finge

rprin

t con

tent

(bit)

bitrate(bps)

1 block pack(avg)2 block pack(avg)4 block pack(avg)

図 10 圧縮符号化後のビットレートの変化に対する各映像の指紋容量の平均値

Fig. 10 Average fingerprinting content of test videos

for compression coding bitrate

て固定で与えた.この量子化パラメータは,対象となる映像を通じた平均ビットレートが目標値となるものを事前に求めた.暗号化に用いる係数の範囲やパックする係数の数はサーバ側で決定し,MPEG-4 規格のVOL(VisualObjectLayer)Header中の User Data領域に埋め込むことでユーザ側に通知する.サーバマシン及びユーザマシンは共に CPUに Intel Core i7-940

2.93GHz,メモリ 3GBを搭載する DELL社製の PC

を用いた.実験映像には 3. 4 節で用いた CIF サイズの 9映像を用いた.

4. 2 実験結果と評価前章で述べた係数パックによる指紋埋め込み容量の向上に伴う同報性を確認する実験と,利用する計算資源,帯域資源と,映像の画質の妥当性の確認を行うための実験を行った.まず,電子指紋の埋め込み容量に関して,3章で提

9

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電子情報通信学会論文誌 xxxx/xx Vol. Jxx–X No. xx

1

2

4

8

16

32

64

128

256

200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000

finge

rprin

t con

tent

(bit)

bitrate(bps)

1 block pack(min)2 block pack(min)4 block pack(min)

図 11 圧縮符号化後のビットレートの変化に対する各映像の指紋容量の最小値

Fig. 11 Minimum fingerprinting content of test

videos for compression coding bitrate

案した手法の適用によりどの程度埋め込み容量が増加するか評価する.1Mbps に圧縮符号化した各評価用映像に対して,1,2,4ブロックを係数パックした結果の容量を表 2に示す.表のように,パッキングするブロック数を大きくした場合有意に容量が大きくなることが確認される.いずれの評価用映像も 4ブロックのパッキングにより 16bit以上の容量を達成し,更に冗長性に利用できる bit の余裕もあるため,数万人に対する同報性は実現できている.また,圧縮符号化後のビットレートの変化に対し,本研究が埋め込み容量の点でどの程度まで適用可能かを調べる実験を行った.図 10 は圧縮符号化後のビットレートの変化に対する各映像の埋め込み容量の平均値の推移を示し,図 11

は同様の変化に対する各映像の埋め込み容量の最小値の推移を示す.両図においてビットレートが大きいほど容量が多くなるのは,圧縮率が下がるほど量子化による値の丸め込みが少なくなりブロック内の非 0係数が増加するためである.図 10に示されるように,係数パックを行わない場合,16bit の容量を達成するためには平均的に 0.9Mbps 程度のビットレートが必要となる.一方 4ブロックの係数パックを行った場合,平均的は 0.2Mbps程度から 16bitの容量が達成できる.また,図 11 のように,サンプル映像中最小の容量においても 16bitを達成する条件は,係数パックを行わない場合で 2Mbps 以上,4 ブロックで係数パックを行った場合で 0.9Mbps 程度である.以上より,本手法は係数パックにより数万人に対し十分な埋め込み容量を達成できるが,それを安定的に実現させるためには圧縮符号化後のビットレートを 1Mbps以上とすることが望ましいと言える.

表 3 各評価映像における係数パック時の暗号化後ビットレートの増加割合 (%)

Table 3 Increasing ratio of bitrate for encrypted test

videos with coefficient packing(%)

video 1Mbps 2Mbps

1pack 2pack 4pack 1pack 2pack 4pack

container 242 170 138 166 130 116

f garden 209 154 126 158 128 114

football 226 168 134 169 133 115

foreman 231 170 135 163 130 115

h monitor 216 162 134 183 143 123

mobile 223 164 130 164 131 115

news 223 161 135 185 140 123

silent 220 156 128 173 133 117

webcam 232 166 134 175 136 119

note) f garden=flower garden, h monitor=hall monitor

次に,構築したシステムを対象として実時間性を評価した.エンコードと暗号化のスループットは 147fps,デコードと復号,電子指紋挿入処理は 423fps であった.標準的な映像が 30fpsであることを考えると,計算コストはライブ配信に対して十分許容範囲であるといえる.また,実際の動画配信システムを稼動させて30fps による配信を行ったところ,映像の送信側,受信側ともに処理に遅れが生じず,再生時のフレーム落ちがないことを確認した.また,1Mbps, 2Mbps に圧縮符号化した映像に対する暗号化後のビットレートを表 3に示す.表のように,各映像に対し係数パックするブロック数を大きくした方が暗号化後のビットレートは小さくなる傾向にある.この理由を以下にのべる.修正 HP 暗号では,3. 2節の式 (1)に示されるように長さ e + 1bitの素数di を I 個必要とする.本実装では e+1bitの素数を生成するために,GMP(Multiple Precision Arithmetic

Library)を用いて e+1bitの乱数を生成した後,その乱数より大きくかつそれまでに生成した素数と異なるような素数を I 個生成する手順をとっている.eが小さい場合は十分な数の素数がとれず収束しないため,本実装では e = 16bitを採用した.一方,対象となる中周波係数の値は 4bitを越えることは少ないため,nブロックの係数の周波数パックを行うために各係数の下位 16/nbitを用いて暗号化を行うものとしている.暗号化された係数はエントロピー符号化による圧縮効果が得られないため,パックするブロック数が多い方が暗号化後の総 bit数が少ないことによりビットレートが少なくなる.表に示されるように,最も利用帯域が小さくなる 4ブロックのパッキング結果では,どの映像でもビットレートのオーバーヘッドは 40%以下に抑

10

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論文/インターネット放送のための同報性と導入容易性を両立する JFD システムの構築と評価

図 12 圧縮符号化後映像例 (flower garden)

Fig. 12 Example of compression-coded video

(flower garden)

図 13 暗号化映像例 (flower garden)

Fig. 13 Example of encrypted video (flower garden)

図 14 復号と電子指紋挿入後映像例 (flower garden)

Fig. 14 Example of decrypted and fingerprinted

video (flower garden)

えられている.これはユーザ数に対して定数オーダーのオーバーヘッドであり,数万人の視聴者がいる場合でも同様である.今回映像符号化に使用したMPEG-4

Visual において CIF サイズの映像は 2Mbps あれば十分に高い画質が表現できると考えられる [13]. その1.4倍の 2.8Mbpsは平均的な有線ブロードバンドインターネット接続速度 [14]の範囲内に十分に収まることから,係数パックを行う提案手法は想定する同報性を満たしているといえる.最後に,映像の画質に関する評価を行った.一般的

図 15 圧縮符号化後映像例 (football)

Fig. 15 Example of compression-coded video

(football)

図 16 暗号化映像例 (football)

Fig. 16 Example of encrypted video (football)

図 17 復号と電子指紋挿入後映像例 (football)

Fig. 17 Example of decrypted and fingerprinted

video (football)

に,JFDに期待される性質は,暗号化された状態の映像が圧縮符号化後の映像 (図 12,15)と著しく異なり視覚的価値が損われている (図 13,16)こと,及び復号と指紋挿入後の映像が圧縮符号化後映像に近く視覚的価値が保たれている (図 14,17)ことである. この二つはトレードオフの関係にあり,暗号化に利用する係数を高周波寄りから選択することで暗号化映像の視覚的価値と復号と指紋挿入後の視覚的価値は同時に高くなる.各評価映像において,利用する係数を低周波から高周波まで変化させた場合の,圧縮符号化後の映

11

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電子情報通信学会論文誌 xxxx/xx Vol. Jxx–X No. xx

表 4 各評価映像において,利用する係数を低周波から高周波まで変化させた場合の,圧縮符号化後の映像に対する暗号化後の PSNR と復号と指紋挿入後のPSNR(db) (太字は PNSR が 35db 以上の場合)

Table 4 PSNR of encrypted video and decrypted

video against compression-coded video for

each test video when changing chosen coef-

ficient from low frequency to high frequency

(db) (bold face is the case when PSNR is

more than 35db)

(1Mbps) (2Mbps)

  selected encrypted/ encrypted/

video coefficient fingerprinted fingerprinted

container 2-17 19.6/33.1 19.3/32.8

3-18 20.9/35.0 20.5/34.7

4-19 22.3/39.0 21.9/38.7

flower garden 2-17 20.6/34.6 19.7/33.7

3-18 22.1/36.4 21.2/35.5

4-19 23.2/38.2 22.2/37.1

football 2-17 27.3/41.4 27.1/42.9

3-18 29.1/42.2 28.5/43.6

4-19 31.8/47.3 32.7/48.1

foreman 2-17 24.6/38.0 24.3/37.7

3-18 26.5/41.1 26.0/40.7

4-19 27.6/45.2 27.1/44.7

hall monitor 2-17 19.9/34.5 19.7/34.3

3-18 20.9/36.2 20.7/36.0

4-19 22.0/39.2 21.7/39.2

mobile 2-17 20.0/33.7 19.4/33.2

3-18 22.1/36.2 21.3/35.4

4-19 23.4/38.2 22.6/37.3

news 2-17 20.8/33.7 20.7/33.6

3-18 22.5/39.2 22.4/39.1

4-19 22.9/41.0 22.8/40.7

silent 2-17 24.2/38.4 24.0/38.3

3-18 25.5/39.7 25.3/39.4

4-19 26.8/39.7 26.6/39.6

webcam 2-17 24.8/37.8 24.6/37.3

3-18 29.8/42.8 29.5/42.3

4-19 32.0/44.3 31.6/44.0

像に対する暗号化後の PSNR と復号と指紋挿入後のPSNR(db)を表 4に示す.表は符号化後のビットレートが 1Mbps の映像と

2Mbpsの映像に対する実験結果を示しているが,それぞれの PSNRの差は 5%以内に留まり,ビットレートが暗号化及び復号と指紋挿入処理の画質に及ぼす影響は少ないことがわかった.また,表は映像によって同じ条件でも PSNR が異なること,および係数選択の結果が PSNRに影響することを示している.従って,係数選択を映像適応的に行うことは有効である.一般的にデジタル画像処理適用時の画質劣化の許容下限は35db程度であるといわれており [15] [16],実験結果は適応的な係数選択を行うことで復号と指紋挿入処理後の画質がその基準を達成できることを示している.同

様に,本研究では暗号化映像の PSNR が 30db 以下であることを視覚的価値が著しく損なわれていると考え,これを許容上限とする.これは,画像処理によりPSNRが 30db以下となった映像は明確に粗悪な品質であると考えらえる [15] [17]ためである.表は,適切な係数選択により暗号化映像を 30db以下とすることができることを示す.映像適応的に係数選択を行う場合,1passのレートコントロールアルゴリズムと同じように,直前に暗号化されたフレーム画像の暗号化処理後の PSNR を参考に現在処理中の画像の係数選択を修正する方法が考えられる.暗号化処理後の PSNR の算出に計算コストが発生するが,サーバの処理能力に余力がある場合にはリアルタイム処理可能である.

5. む す び

筆者らは,追跡性を持つインターネット放送における導入容易性,同報性の必要な条件を考察した上で,条件を満すように JFD 技術を選択及び改良して実システムを構築し,それを実験評価することで計算資源と帯域資源,映像の画質がインターネット放送にとって十分であることを示した.構築するシステムに公開鍵 JFD 法を採用することで,配信者を厳重な鍵管理から開放する導入容易性を満たした上で,公開鍵 JFD

法の電子指紋の埋め込み容量が少ないという弱点を埋め込み対象となる映像の周波数係数の選択と構成の工夫により克服し数万人程度の同報性を実現した.また,実験では,実映像を対象とするシステム稼動実験を行い,配信側システムと受信側システムのスループットが実時間処理をするのに十分であること,ネットワーク配信時の帯域利用が圧縮符号化後の映像に対し 1.4

倍以内に収まること,また電子指紋挿入による映像の画質の劣化がパラメータ調整により一定の範囲に抑えられることを示した.今後の課題として,ユーザ鍵の効率的な配布方法の検討やクローラシステムにおける流出映像の高精度な検出方式の設計があげられる.

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formation Technology and Innovation Foundation,

http://www.itif.org/files/BroadbandRankings.pdf,

Apr. 2007

[15] B. Reckwerdt, “Quantitative Picture Quality Assess-

ment Tools,” vvideoclarity, http://www.videoclairty

.com/ WPUnderstandingJNDDMOSPSNR.html, 参照 Feb.18, 2011

[16] 佐藤亮, 小野晋太郎, 永塚遼, 川崎洋, 池内克史, “車載全方位ビデオ映像を用いたイメージベースレンダリングによるドライビングシミュレータの提案”, 信学技報 PRMU

109(88), pp1–6, Jun. 2009

[17] P. Raibroycharoen, M.M. Ghandi, E.V. Jones, M.

Ghanbari, “Performance analysis of H.264/AVC

video transmission with unequal error protected

turbo codes,” IEEE Vehicular Technology Confer-

ence, pp.1580-1584, vol.3, Stockholm, May 2005

(平成 xx 年 xx 月 xx 日受付)

森村 吉貴 (正員)

平 16 京大・工・情報卒.平 21 同大大学院情報学研究科博士後期課程研究指導認定退学.平 22 同大物質‐細胞統合システム拠点特定拠点助教.ライブ映像配信とマルチメディアセキュリティ関係の研究に従事.IEEE,情報処理学会各会員.

侯 書会平 10 北京科学技術大学講師.平 21 京大大学院情報学研究科博士後期課程修了.電子透かし,電子指紋,暗号関係の研究に従事.

上原哲太郎 (正員)

平 2 京大・工・情報工学卒.平 7 同大大学院博士課程研究指導認定退学.同年工学研究科助手,平 8 和歌山大・システム工・講師,平 15 京大大学院工学研究科附属情報センター助教授,平 18 同大学術情報メディアセンター助教授,平 19 同准教

授.システム管理,情報セキュリティ関係の研究に従事.京都大学博士 (工学).IEEE,電気学会,情報処理学会,日本ソフトウェア科学会,情報ネットワーク法学会,CIEC 各会員.

美濃 導彦 (正員:フェロー)

昭 53 京大・工・情報工学卒.昭 58 同大大学院博士課程了.同年工学部助手,昭62-63 マサチューセッツ州立大学客員研究員,平元京都大学工学部附属高度情報開発実験施設助教授,平 7 同教授,平 9 京都大学総合情報メディアセンター教授,平 14

京都大学学術情報メディアセンター教授.画像処理,人工知能,知的コミュニケーション関係の研究に従事.工博.IEEE,ACM,情報処理学会, 画像電子学会,日本ロボット学会各会員.

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Page 14: インターネット放送のための同報性と導入容易性を両立する シ … · 論 文 インターネット放送のための同報性と導入容易性を両立するJFDシ

Abstract Recent advances in internet broadcasting have made easy distribution of video possible, ac-

commodating tens of thousands of simultaneous viewers yet requiring no large investment in equipment nor

special expertise. However, the protection of creators’ rights has also become an issue. One solution is to

employ a JFD (Joint Fingerprinting and Decryption) system, tracing the illegal redistribution of video via

noncancelable digital watermarking. We propose an easy-to-use JFD public-key encryption scheme with

high watermark availability that maintains low cost and high capacity. We also verify computation costs

and system bandwidth, and evaluate image quality using a PSNR metric.

Key words Live Video Distribution, Content Protection, CGM, Digital Watermark, Digital Finger-

print, JFD