ポリエステルー平織ガラスクロス積層板の引張強度についてポリエステルー平織ガラスクロス積層板の引張強度について...

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u.D,C.る21.315.る19 ポリエステルー平織ガラスクロス積層板の引張強度について OntheTensileStrengthofPolyester~PlainWeave Glass Cloth Laminates 真色男* ポリエステル・ガラス積層板は強度特性が優秀で着目すべき材料である0日立製作所では早くよりポ リエステル・ガラス積層板に関心をよせ,研究を進めてきた0すでに商品として製品化されているが・ 本報ではその研究の一部の,ガラスクロスの種煩とポリエステル樹脂の種板を変えたときの積層板の強 度に関してのべた。 8種類の平織ガラスクロと,4種類のポリエステル樹脂をえらんでガラス積層板を作り・引張り強度 を試験した結果,両者ともに強度に影響をおよぼすことが判明した0その原因として下記の3項目が確 認され,積層板設計上の知見をうることができたD (1)強度の大きな樹脂を結合剤とした積層板の強度ほ大きい傾向を示した0 (2)ガラス織維表面処理剤の効果は平織ガラスクロス積層板の引張強度に関しても十分に認められ た。なお煮沸射ヒによる強度低下率に関しては・無アルカリガラスクロスと含アルカリガラスクロ スとの間に特別な差はなかった。 (3)用いたガラス基材の強度の序列と・積層板の強度の序列は必ずしも一致しなかった。その原因 としてクロスヤーンの屈曲角度が大きな影響を及ばしていることがわかった0 〔Ⅰ〕緒 ガラス繊維はプラスチックスに用いられる補強材料中 でもつとも強度の大きなものである。したがってこのよ うに強力なガラスを基材とした積層晶は軽量,高強度 で,加うるに結合剤の選択によって耐熱性,電気絶縁 性光透過性などの色々な点ですぐれた特性を示す〇近 時ガラス積層板の建築材料あるいは電気絶縁材料分野へ の目覚しい進出は,以上のような長所によるものであ る。結合剤として使用される樹附こは目的に応じて・シ リコーン,メラミン,フェノール・エポキシまたはポリ エステル樹脂などがあげられる。なかでも低圧で積層可 能なポリエステル樹脂の出現が大型品の製造を容易に し,ガラス積層品の応用範囲を拡大した。 ポリエステル・ガラス積層品に使用されるガラス補強 材の形状にほ,ロービング状,マット状・クロス状など いろいろあるが,高強度を要求される製品には一般にク ロス状のものが剛、られる。織機からでてきたまゝの織 物は,加工工程における減磨作用と集束作用をもたせる 目的でサイジング(デキストリン・水素添加植物軌非 イオン性乳化剤,ゼラチン・ポリビニールアルコールな ど)を施してある。クロスに施されたこれらのサイジン グ剤を除去しないで用いるときは・積層板 造時の樹脂 含浸を困難にし,かつ硬化された積層品において繊維と 樹脂の接着を妨げるため,良好な性質をもった横 板が えられない。そこでサイジング剤を除去して使用するこ とが行われている。もつともよい除去法は加熱による方 日立製作所日立絶縁物工場 法である。加熱によってサイジング剤を除去されたクロ スは樹脂によってよくウェットされるが,硬化したポリ エステル樹脂が裸のガラスにはよく接着しないから・積 層板の吸湿強度が低いといわれている。そこでガラスと ポリエステル樹脂の接着を強固にする目的で,種々の表 面処理が行われている(1)(2)(3)(4)。 日立製作所では夙にポリエステル・ガラス積層板の長 所に着目して研究を進めてきたが,本報でほその一部分 として,表面処理剤のことなった含アルカリ平織クロス ならびにヒートクリーニソグした無アルカリ平織クロス など8種 らび,結合剤のポリエステル樹脂をかえて つくった鎗層板の引張強度匿およぼす影響の有無を検定 し,積層板設計上の知見をうる目的でその原因をしらべ た結果を報告する。 〔ⅠⅠ〕実 (り 積層板につし、て (i)供試ガラスクロス 策1表に示したような表面処理剤のことなった国産A 社製含アルカリ平織クロスと,表面処理をしない国産B 無アルカリ平絞クロスをえらんで実験に供した。ガ ラスクロスほ下記のような方法で試験し,結果を弟1表 に示した。 襟度:幅10m皿の問の糸数を肉眼でかぞえ,経緯と もに3箇所の平均値をとった。 引張強度:幅25mm,長さ200皿mの試験片( 片の幅は30m∬lにとり,あとから25m皿に規整した) をとり, 片の両端には引張りのさいの織維のズレ止め

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Page 1: ポリエステルー平織ガラスクロス積層板の引張強度についてポリエステルー平織ガラスクロス積層板の引張強度について 時 間(加) 第2図

u.D,C.る21.315.る19

ポリエステルー平織ガラスクロス積層板の引張強度について

OntheTensileStrengthofPolyester~PlainWeave

Glass Cloth Laminates

宮 入 真色男*

内 容 梗 概

ポリエステル・ガラス積層板は強度特性が優秀で着目すべき材料である0日立製作所では早くよりポ

リエステル・ガラス積層板に関心をよせ,研究を進めてきた0すでに商品として製品化されているが・

本報ではその研究の一部の,ガラスクロスの種煩とポリエステル樹脂の種板を変えたときの積層板の強

度に関してのべた。

8種類の平織ガラスクロと,4種類のポリエステル樹脂をえらんでガラス積層板を作り・引張り強度

を試験した結果,両者ともに強度に影響をおよぼすことが判明した0その原因として下記の3項目が確

認され,積層板設計上の知見をうることができたD

(1)強度の大きな樹脂を結合剤とした積層板の強度ほ大きい傾向を示した0

(2)ガラス織維表面処理剤の効果は平織ガラスクロス積層板の引張強度に関しても十分に認められ

た。なお煮沸射ヒによる強度低下率に関しては・無アルカリガラスクロスと含アルカリガラスクロ

スとの間に特別な差はなかった。

(3)用いたガラス基材の強度の序列と・積層板の強度の序列は必ずしも一致しなかった。その原因

としてクロスヤーンの屈曲角度が大きな影響を及ばしていることがわかった0

〔Ⅰ〕緒 言

ガラス繊維はプラスチックスに用いられる補強材料中

でもつとも強度の大きなものである。したがってこのよ

うに強力なガラスを基材とした積層晶は軽量,高強度

で,加うるに結合剤の選択によって耐熱性,電気絶縁

性光透過性などの色々な点ですぐれた特性を示す〇近

時ガラス積層板の建築材料あるいは電気絶縁材料分野へ

の目覚しい進出は,以上のような長所によるものであ

る。結合剤として使用される樹附こは目的に応じて・シ

リコーン,メラミン,フェノール・エポキシまたはポリ

エステル樹脂などがあげられる。なかでも低圧で積層可

能なポリエステル樹脂の出現が大型品の製造を容易に

し,ガラス積層品の応用範囲を拡大した。

ポリエステル・ガラス積層品に使用されるガラス補強

材の形状にほ,ロービング状,マット状・クロス状など

いろいろあるが,高強度を要求される製品には一般にク

ロス状のものが剛、られる。織機からでてきたまゝの織

物は,加工工程における減磨作用と集束作用をもたせる

目的でサイジング(デキストリン・水素添加植物軌非

イオン性乳化剤,ゼラチン・ポリビニールアルコールな

ど)を施してある。クロスに施されたこれらのサイジン

グ剤を除去しないで用いるときは・積層板 造時の樹脂

含浸を困難にし,かつ硬化された積層品において繊維と

樹脂の接着を妨げるため,良好な性質をもった横 板が

えられない。そこでサイジング剤を除去して使用するこ

とが行われている。もつともよい除去法は加熱による方

日立製作所日立絶縁物工場

法である。加熱によってサイジング剤を除去されたクロ

スは樹脂によってよくウェットされるが,硬化したポリ

エステル樹脂が裸のガラスにはよく接着しないから・積

層板の吸湿強度が低いといわれている。そこでガラスと

ポリエステル樹脂の接着を強固にする目的で,種々の表

面処理が行われている(1)(2)(3)(4)。

日立製作所では夙にポリエステル・ガラス積層板の長

所に着目して研究を進めてきたが,本報でほその一部分

として,表面処理剤のことなった含アルカリ平織クロス

ならびにヒートクリーニソグした無アルカリ平織クロス

など8種 え らび,結合剤のポリエステル樹脂をかえて

つくった鎗層板の引張強度匿およぼす影響の有無を検定

し,積層板設計上の知見をうる目的でその原因をしらべ

た結果を報告する。

〔ⅠⅠ〕実 験 方 法

(り 積層板につし、て

(i)供試ガラスクロス

策1表に示したような表面処理剤のことなった国産A

社製含アルカリ平織クロスと,表面処理をしない国産B

社 無アルカリ平絞クロスをえらんで実験に供した。ガ

ラスクロスほ下記のような方法で試験し,結果を弟1表

に示した。

襟度:幅10m皿の問の糸数を肉眼でかぞえ,経緯と

もに3箇所の平均値をとった。

引張強度:幅25mm,長さ200皿mの試験片( 験

片の幅は30m∬lにとり,あとから25m皿に規整した)

をとり, 片の両端には引張りのさいの織維のズレ止め

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1430 昭和31年11月 日 立 評 第38巻 第11号

のた捌こ柔軟性の涯青系コン㌧ペウンド処理を施した。シ

ョッパー式振子塑引張り試験機を用い,適当な紙を介し

てつかみ・つかみの間隔を150皿mとして毎分200mm

の速度で引張り,

た。

緯各5本の切断荷重の平均値をとつ

厚さ:ラチェットつき,心棒の径6.5mmのマイクロ

メータを用い,幅の方向の一端から約40mm内側を50mm

おきに長さ3皿の間を50箇所測定して平均値をとった。

(ii)供 ポリエステル樹脂

結合用樹脂には日立ポリエステルワニスPS-31(積

層成型用),PS-32(積層成型用),PS-51(積層,技

塾用),PS-52(成型用)を使用した。供試樹脂硬化物

の強度特性を弟2表に示した。

(iii)積層板の製造法

ガラスクロスを250(経)×215(緯)mmに裁断し,1200c

の空気浴中で2時間乾燥後,デシケ一夕中にて放冷し積

層板の製造に供した。一方各ワニスにそれぞれ外割り1

%の過酸化ペソゾイルを触媒として 加し,ときどき撹

拝しながら40分間放置して完全に溶解して塗込み用ワニ

スを調製した。

まず硬質クロムメッキ板上にワニスを流してクロスを

のせ,ワニスを浸透させて「ひたひた」な状態としてよ

く気泡を浮上させる。さらに中心部にワニスを流し,ガ

ラスクロスをおいて,ワニスを周辺に向ってひろげなが

ら上記の操作を所要枚数のクロスについて繰返した。本

実験ではクロスの経あるいは緒方向をそろえ,弟4表に

示された枚数のクロスを積層した。積層を完了した手積

供 試 樹 脂 の 性 質Characteristics ofPolyesterResins

備考:弾性率は破壊点における値を示す。

ク・ルヨン

第1国 手 培

クッション

仁一

ロロ

Fig・1・HandLay-upArticle

セロファン紙

品を第l図のようにまとめ,挟み金を用いないでプレス

した。

プレス作業は,プレスの熱板をあらかじめ808cにし

ておき・弟2図に示したような方式で操作した。積層板

に加わる圧力は3・2kg/cm2であった。

積層板製造の順序に関しては,繰返しのある二元配置

法によって実験結果を検定する目的のもとに,要困をガ

ラスクロスの種類および樹脂の種類とし仁製造の順序は

くじ引で決めて無作為化した。

(2)強度試験そのほか

強度(常態

験):ASTM,刀638Ⅶ5271に準じ

片を弟3図のように仕上げ,アムスラー型試験機で

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ポリエステルー平織ガラスクロス積層板の引張強度について

時 間(加)

第2図 プ レ ス 操 作 緑 園

Fig.2.Press Operation Diagram

("豊)

仁出斡£口胃」潤誕

第3図 引 張 試 験 片

Fig.3・Test Piece forTensileTesting

6mm/minの速度で引張った。

引張強度(煮沸劣化試験):100COで2時間煮沸後た

だちに試験を行った。試験片ははじめ15×152mmのサ

イズに切り出し,煮沸後弟3図の形に仕上げた。

樹脂分:10×10m皿の試片1箇をニッケル相場中で・

最初はブソゼソバーナの弱 で試料を燃焼してから灼熱

し,2回実験の減量率の平均を樹脂分とした。

〔ⅠⅠⅠ〕実験結果とその葛察

(り 積層時の圧縮率

商品としての積層板の厚さは所定の公差内に規定され

なければならない。ポリエステル・ガラス積層板ほ結合

剤であるポリエステル樹脂が液体で,しかも100%硬化

する特性をもっており,接触 で成型できるものである

から,厚さを出すための挟み金を介在させることによつ

て規定厚さをうることが可能である。本実験ではこのよ

うな挟み金を介在させることなく,一定圧力で加圧した

場合に,積層されたクロスがなじみ合ってどの程度の厚

さの積層板ができるかを検討した。もちろんこうした場

試番 ガラス基材

1431

積 層 板 の 試 験 結 果

Test Results of GlassLaminates

ワニス

の踵頸

117

118

119

120

121

122

123

124

125

126

127

128

129

130

131

132

133

134

135

136

137

138

139

140

141

142

143

144

145

146

147

148

cc-230H

cc-230HVX

cc-230HVT

cc-230HVG

cc-210HVX

M-48

M-10

M-02

cc-230H

cc-230HVX

cc-230BVT

cc-230HVG

cc-210HVX

M-48

M-10

M-02

cc・230H

cc-230HVX

cc・230IlVT

cc-230IiVG

cc-230HVX

\ト1ヽ

M-10

M-02

cc-230H

cc-230HVX

cc-230HVT

cc-230HVG

cc-210HVX

M-48

M-10

M-02

PS-31

PS-31

PS-31

PS-31

PS-31

PS-31

PS-31

PS・31

PS-32

PS-32

PS-32

PS-32

PS-32

PS-32

PS-32

PS-32

PS-51

PS・51

PS-51

PS-51

PS-51

PS-51

PS-51

PS-51

PS-52

PS-52

PS-52

pS-52

PS-52

PS-52

PS-52

PS-52

常態試(kg/mmり

劣化試(kg/mmり

15.

5

3

6.

1

1

17.6

8.6

1:;.リ

12.1

13.0

15.1

13.7

22.0

20.2

14.0

13.8】

13.0

16.3:

13.6

17.4

13.

4.6.

1

1

.381

9.0

12.9

11.7

12.0

13・2と

15.2】20.5

21.8

13.8

11.9

9.3

12.9

10.8

18.7

14.4■ 13.8

20.0!20.6

川■牒.

積層板

の平均厚-:-・‥

壬…:…;壬::喜12.3111.1

1;二;■■1;:≡12.3 14.5

12.4115.2

7・7l7・612.4 11.5

壬::;弓1…二…13.1!11.2

12.9 12.6

9.0

14.2.15.5

512.

2.19

備考= 引張り強度ならびに樹脂分は試片2本の平均値を示す0

第 4 表 積層板の圧縮率と

Table4.Compressive■Rate

Strength of Laminate

算出引張強度

and Calculated

合には用いられたクロスについて最高のガラス含量と強

度が期待されるからである。各積層板の厚さは舞3表に

示されたような値であったが,これをクロス毎に平均し

て製品厚さ(か)とし,計算厚さ(ガラスクロスの厚さ

dx積層板数乃)と比較して(1)式で圧縮率(C)を計

算した。

c=(ト£)×100%(1)

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1432 昭和31年11月 日 立

圧縮率は弟4表のようになる。表から3.2kg/cm2の圧力

で平絨ガラスクロスを積層加圧したときには,クロスの

加成厚さよりも約二十数パーセントないし三十数パーセ

ント薄い積層板ができることがわかる。もつと厚い積層

板についてはどのようになるかは不明であるが,圧腰率

はさらに大きな値となるであろう。ガラスクロス積層板

を製作する場合には,このような圧縮率を考慮してクロ

スの積層板数を算出し,さらに挟み金を併用すれば規定

厚さの積層板を精度よく作ることができ,かつ使用クロ

ス国有の強度特性も最高度に発揮できるであろう。

(2)有意差検定結果ならびに強度差に関する莞察

強度試験の結果を平均して弟3表に示したが,積層板

の強度はガラスクロスの種煩および樹脂の種類によって

変化すると考えられる。要因としてこの二つをとり,繰

返しのある二元配置法で突放を行い,1%の危険率で検

定した結果を第5表に示した。すなわちガラスクロスお

よび樹脂の桂斯こより,引張強度は変化しているという

結果がえられた。樹脂の桂煩を要因とした場合の強度の

母平均を推定した一例は弟4図,弟5図のようになる。

囲でほ横軸に樹脂の種類をとり,縦軸に引張強度をとつ

た。作業性を度外視すれば,結合用樹脂としてほPS-

52がもつともよく,ついでPS-32,PS,51,PS-31の

順である。しかしPS-31を除いては大きな差は認めら

(叫怠)セ霹勝一W

クタータJ 月ダー〟■ ノ昭一∫2 A,-〟

樹 脂

第4図 常態における強度と樹脂との関係(経)Fig・4・Relation betweenLaminateStrength

and KindsofResins at Dry State(Warp)

第38巻 第11号

第 5 表 検 定 結Table5.Statistical Consideration

Test Results

備考:◎は影響大

れず,上記の序列は煮沸劣イヒ試験においても変っていな

い。緯方向においても同様な結果がえられ,弟2表の樹

脂単独の強度とあわせ考えるとき,樹脂強度の序列に関

係していることがうかがわれる。

つぎにガラス基材の種類を要因とした場合の強度の母

平均を推定してみると,その一例は売る図,弟7図のよ

うになる。上述の樹脂の種類を要因とした場合に比して,

ガラスクロスの種類によって大きな強度 を生じ その

上煮沸劣イヒによって強度の序列も変ってし)る。積層板の

引張強度の絶対値の大部分は,補強材として使用したガ

ラスの荷重方向に向いた繊維が負担しているものとみな

してよい。したがって製品強度に差を生ずる原因はガラ

ス基材そのものの強度に支配されると考えられる。弟l

表に示されたごとく基材の強さには大きな差がみられ,

基材強度から積層板強度が推定できれば好都合であろ

う。そこでこの基材強度と製品強度問の関連を調べるた

めに,第3表に示された強度

(~巨星)

喝紺修一廿

験結果を各ガラスクロス

ク∂・-〟 用-〝 用-1詑 翔一古2

樹 脂

第5図 煮沸後の強度と樹脂との関係(経)Fig・5・Relation between Laminate Strength

and Kinds ofResinsafter Boiling(Warp)

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ポリエステルー平織ガラスクロス積層板の引張強度について1433

〃▼+‥〃

ミきふこ

山竺群鰭一町

▲〃U

αし2ガ鵬好 ∬一劇=掴7 αⅦ机仇貯α一刀汐α■-イ〟

〝 〟〆r 〟〃 〟作 〟〟

ガラスクロス

第6図 常態における強度とガラスクロスとの関

係(経)Fig.6.Relation between Laminate Strength

and Kinds of Glass Cloths at Dry State

(Warp)

毎に平均した値を用いて,(2)式によって製品強度と計

算強度との比を求めた。

積層板強襲__朗(100」C)計算強度

~

ただしPは 層板強度,

dはガラスクロスの厚さ,

4 5

Cは加圧成型 の圧縮率(%),

5はクロスの強度(kg/25mm

幅)である。

計算された値は弟る表のようにばらついていて,基材

強度からだけでは製品強度を一義的に簡単に推定できな

いことを示している。そこでさらに荷重方向にならんだ

ヤーンの屈曲性を考慮してみた。平織ガラスクロスの断

面を拡大すると弟8図のようになる。弟l表に示したよ

うに経緯ともに番手のひとしいヤーンであるから,ヤー

ンの半径をγ,クロスの厚さをd,打込み密度をⅣ(本

/cm),屈曲角度を♂とすれば,γ=dノ4であらわされる

sinβ=一4葦訂(4一√ト3Ⅳ2d2)……(3)弟l表に示したⅣとdの値を使用してβを算出し弟

9図,弟】0図に示した。図は横軸にガラスクロスの種類

をとり,それをクロス強度の大きな順に配列し,縦軸に

強度ならびに屈曲角をとったものである。従来積層板の

強度は簡単な(4)式の関係であらわされると考えられて

きた。

クA=jもAグ+みAγ………………………(4)

積層板の平均強度,A:積層板の断面積

ガラメ繊維の単位面積当り強度

αl一之卿〝-2ガαし召彩αし2形相〟一機7〟-β〟「βク

〟 〟〃■ 〟川 〝〝 〟〝

ガラスクロス

(~覧畏)

華懲悪一W

‥、・

=▼

..、

第7図 煮沸後の強度とガラスクロスとの関係(経)Fig.7.Relation between Laminate Strength

and Kinds of Glass Clothes after Boiling

(Warp)

第 6 表 製 品 強 度/計 算 強 度

Table6.Ratio of Observed Strength and

Calculated Strength

l

u

■〆

/

l

、b-

♂♂

ツ口 ロ

第8図 平 織 ガ ラ スク ロ ス 断 面 図

Fig.8.Section of Plain WeavedGlassCloth

且:ポリエステルの単位面積当り強度

Aダ:ガラス舷維のA断面積中に占める両横

Ar:ポリエステルのA断面積中に占める両横

が(5),(4)式では不十分なことが図からわかる。すなわ

ちガラス強度と積層板強度の序列が一致しておらず,経

緯ともに屈曲角伊の大きさと積層板強度が逆の関係にあ

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1434 昭和31年11月

(箋怠「)

閻讃群蒜

α切〟-〃α一朗=帆㍑α一法財α-2ガ別邸〟「ガ

〟/〟 〟拙 〟rr 〟膵 〟

バラスクロス

(嘩)慧竺胡嘩

第9図 強 度 と 屈 曲 角 と の 比 較Fig・9・Comparison of Tensile Strength and

Bending Angle(Warp)

(~年長)

噂鮮嶋小石

〟「〝αしプ労相α」冴α増野〟ゼ2∬「名好〟-粛

附 〟押 〝作■ 〟〝 〟

ナすラスクロス

(噂)℃曙萄嘩

第10図 強 度 と 屈 曲 角 と の 比 較Fig・10・Comparison

of Tensile Strength andBending Angle(Weft)

る。織物は縦横に舷椎が配列されていて,引張り方向に

対して横方向の繊維は強度的に寄与しないであろう。強

度を分担する引張り方向の繊維は屈曲しているから,破

壊するまでにまず織椎がのび切って,しかるのち切断す

るものと考えてよいであろう。その場合樹脂が硬くて脆

いものは,織維がのび切るまえに樹脂内に亀裂を発生

し,樹脂の強度に関する寄与と応力の均等分布作用がな

くなるであろう。なお屈曲の大きな織物ほど製品内部の

繊維方向が一様でなく,荷重を加えたとき全繊維が一様

第38巻 第11号

に緊張しないで,のび切ったものから順次に破断する確

が大となって,強度が小さくでるものと考えられる。

したがって同一番手のヤーンで打込み密度のひとしい織

物を使用した場合を仮定すると,経緯糸交互に交錯した

平織よりも2本おきに交錯した綾織,さらに7本おきに

織られた 子織という順に,上述のような屈曲機会の減

少する織り方になるにつれて引張強度を増すであろう。

また平織クロスの場合でも打込み密度のひとしいとき

ほ・厚さの薄くなるほどβは小さくなるから,厚さの厚

いクロスを少く積層するよりは薄いクロスを多数積層し

たカが強度は大となる。M-10,M-02の場合がそれに

相当しており,これらは従来の経験的事実と一致してい

る。林氏(6)は糸が織られている時の重なり部を考え,簡

単な材料力学的な計算で強度低下に関する考察を行って

いるが,同一厚みでも打込み密度の変化によってどのよ

うに強度が変化するかという間遠については言及されて

いない。

煮掛こよる強度低下率は弟9図,弟】0図および弟7表

からわかるように一様でなく,サイジング除去後の繊維

表面処理効果を認めることができる。 束剤を加熱

したまゝのクロス,CCⅦ230ヒートクリーニソグ,M-48

M-10,M-02にみられるように,含アルカリ,無アル

カリ品を問わず,煮沸によってはぼ30%の強度低下がみ

られる。表面処理剤のうちではビニルトリクロロシラン

処理がもつとも強度低下 GS¶1,ボラン処

理の順とみなされる。2時間の煮沸劣化の結果ほ,室温

で30日間浸水された試料にほぼ相当するといわれている

が(7),本実験結果からほ含アルカリ品が無アルカリ品に

比して,劣化特性が悪いという事実は認められなかつ

た。なお第る図,弟7図の煮沸劣化試験による強度序列

の変化は,上述のような表面処理剤による低下

に起因している。

〔ⅠⅤ〕結

の大小

4種類の日立ポリエステル樹脂と,表面処理方法をか

えた含アルカリ平繊ガラスクロス,あるいほ無アルカリ

平織ガラスクロスなど8種類をえらんで積層板をつく

り,これら樹脂の種類あるいはクロスの種類が積層板の

第 7 真 横層板の煮沸劣化による強度低下率Table7.Depression of Strength of Laminate

afterl∋oiling

Page 7: ポリエステルー平織ガラスクロス積層板の引張強度についてポリエステルー平織ガラスクロス積層板の引張強度について 時 間(加) 第2図

ポリエステルー平織ガラスク

引張強度におよほす影響を検定した。さらに強度の平均

値を比較考察して,有意差を生じた原因としてつぎのよ

うな結論をえた。

(1)結合剤としてはPS¶52がもつともよく,つい

でPSL32,PS-51,PS一一31の版となり,これははぼ

樹脂単独の強度の順に一致しているが,後三者について

は大差は認められない。

(2)ガラス繊維表面処理剤の効果ほ平織ガラスクロ

ス積層板の引張強度に関しても十分に諦められた。すな

わち煮沸劣化試験の結果は,無処理のヒートクリーニン

グ晶は,含アルカリ,無アルカリ品ともに約30%の強

度低下があり,ビニルトリクロロシラン処理ほ約4%,

GS-1処理品は約6%,ボラン処理品ほd~10%であ

った。

(3).用いられたガラスクロス基材の強度の序列と,

積層板の強度の序列は必ずしも一致しなかった。その原

因としては製織されたガラスヤーンの屈曲角度が大きな

ロス積層板の引張強度について 1435

影響をおよぼしていることがわかった。高い引張り強度

を要求する場合にはヤーンの屈曲角度の小さなクロス,

たとえば平絞クロスでほ薄手あるいは打込み密度の少い

ものをえらぴ,そのほか綾織り,朱子織,一方向織など

をえらぷことによって強度向上が計られることを推論し

た。

終りに御指導を賜った日立製作所日月,鶴田両博士を

はじめ日立絶縁物工場の関係者,および実験に協力され

た山内衛君に厚く御礼申し上げる。

参 考 文 献

関野:化学と工業 714-24(1954)L.P.Biefeld,T.E.Phillips:Ind.Eng.Chem.:

45 No.6,1281¶86(1953)

(3)J.Bjorksten,L.L.Yaeger:Modern Plastics,

124(July,1952)

C.E.Bacon,Ibid126(July.1952)

たとえば東海特殊ガラスKK カタログ:ポリエ

ステル補強用硝子織維 P.8

(6)林:強化プラスチックスINo.117(1955)

日 立製作所社員社外講演一覧

(第88頁より続く) (昭和31年8月受付分)

話浜月日

11.10~11

11.10/し11

11.10′-11

11.上旬

11.上旬

11.上旬

10.28

臥 30へノ31

8.25

11.上旬

11.上旬

11.上旬

11.上旬

11.上旬

11.上旬

10.11~12

11.5~ 6

8.9へ一11

9.12

電気通信 学

電気通信 学

気通信 学

気通信 学

電 気 学

電気学 会

′ゝ~ヱ:三

会∠ゝ7:く

東海部

照明学会関西支部

工 業 技 術 院

日本原子力産業会議

気通信学

全会全

学学学

信信信

通過通

気気気

電電電

信通気電

日電 化本

学レし

イ気

全会全

学学協

茨城県電力協会

日本事務能率協会

演 題 所 属l 講 演 者

低速塑,アナログ計算機の試作概要

三磁極電子レンズとその特性

チタン酸,バリウムの導電率について

進行波管6W86の諸特性

高速型リアクタシミュレータ

ゲルマニウム,ダイオードの諸特性および測定法

蛍光灯の演色性の評価について

吸光光度法によるチタニウム中微量マンガン定量法

r線液面計の試作

Ge-diode の正孔蓄積効果と伝導度変調にする→実験

離散的保留時間に対する待合せの分布について

広帯域整合導波管型サー・ミスタマウント

反射型クライストロソ2K44の試作について

真空管委員会寿命小委員会における寿命試験中間報 告

ピアス型集束電子銃の検討

高分子の二次転移点と分子凝集熱

水素電極反応の研究

揚排水ポンプについて

常備量および貯蔵量の適正化

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

木本

杜社

青沼

角相

武正俊右

浦木倉

村畑木井野

野本

永 田

島 田

宇佐美

竹 本

草河及岡神家

野合川

津長

博芳周

正吉

猛正

雄直郎門武一男作章実

夫人

嚢夫三

鱗次郎

俊修害

充平

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日 立製作所社員社外寄稿一覧

(昭和31年8月受付分)

ステンレス鋼熔接の間額点

口H 学属金本

議学術協

書錮械誓学

気熱機炭溶接

央本部本

電中日東日熔

RH

学学

械械機機

本木

株械工

丸機日

日産産労東東東

聞新業工刊

協協械械機機

業業

災業業業

産産産

京京京

協協協

協全全全

安安安

会院全会全会全会会

社会社

社会会全会会会

日本冷凍機製造協会

日本科学技術連盟

日本勤労者教育協 会

日 本 伸 銅 協 会

準ド

ム基ソ

働モ

ー労ヤ

重イ

オ三ダ

学理物用応

社局社会

電気学会東海支部

J.Electrochem Soc

電 気 通 信 学

日 刊工業新 聞 社

紙コソデソサー研究会

朝 日 新 聞 社

工 業 資 料 社

港湾荷役機械化協会

通商産業省重工業局

日 本 冷 凍 協 会

日 刊 工業 新 聞 社

高合金工具鋼の熱処理に関する研究 1報

サイクロンファーネスボイラーとはどんなものか

サイクロソファーネスについて

日立電気式調速機

交流巻上機の運転方式について

ボイラの趨勢(抄録)英文グナート法による残留応力測定上の一,二の注意

客電車鋼体の強度解析について

工学講座(荷役機械)の内,機械設計スキプホイストの索道

機械設計便覧「リベット」

工学講座(荷役機械)の内電気野分最近における工具管理の新傾向

トランスファーマシ∵/

バランス型圧縮機

ロータリーコソプレツサーについて

下請工場の安全管理について

横フライスにおける送りハンドルの改善

梯子作業用足場および道具架の改善

シヤークラッチ安全装置

鉄およぴほかの金属に対する境界潤滑油と しての

F12

生産管理と品質管理

標準化の組織と教育

米国における伸銅工業 0.mE.C第79回技術視察団報告第三黄銅の精錬熔解および鋳造

弛角測定用クリノメータ

稔千切作業の安全化

資材管理在庫の問題(1)高分子物質の超音扱者速の温度および吸湿による変化

ゲルマニウムダイオードの諸掛性および測定法On the relationbetwentheHydrogen over-Pot-ientialand theElectromic of CothodeMaterials

国産ゲルマニウム,=ダイオード特性表国産トランジ

スタ特性表金属の接着技術

誘電体と水

学会余滴

色収差補償磁界型電子顕微鏡について

大阪湾多奈川埠頭と石炭陸揚機について

電気集塵装置

空調用冷凍機の機種撰定について

最近の送風機

日 立工場

場場場場場場場場場

工工工工工工工工工

立立立立立立戸戸有

日日日日日日笠笠亀

場場場

工工工

有有崎

亀亀川

工工工工

崎崎崎戸

亀戸工

場場場場場場

亀戸工場

栃木工場

場場線

工工電

塚原立

戸茂日

日 立電線

桑名工場

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

中央研究所

本 社

本 社

本 社

本 社

小波根河河紛大昔渡飯平

平原八奥花鮎宮寺小大谷青緒

野辺木原原沢島原辺島莱

木平岡択下下川田中木方

林城本

小官粟

堀大島前

伴及

口矢田田

野川

村崎野桐木引本島本

福黒伴片鈴締宋音山

誠誠秀昭三

保政研正

芳保隆宏京

季精暢

二潔正二

二束二次寛弘平

平次司元浩弘一信雄俊久夫一

八苦夫

二三男

美充

勉 郎

重 彦

正 莫

信二郎

正初 雄馬佑