次世代シークエンサーで測定を行う DNAの断片化を 評価する ......Human Control...

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次世代シークエンサーで測定を行うDNA の断片化を 評価する TaqMan ® Assay アプリケーションノート Ion Torrent™ イントロダクション 近年、次世代シークエンサーである Ion Torrent™ PGM システムを活用し、が ん遺伝子の網羅的な変異を解析する Ion AmpliSeq™ Cancer Hot Spot Panel v2 注目されている。この解析では Formalin Fixed Paraffin Embedded (FFPE) サンプルから抽出した DNA を対象と している。しかし、ホルマリン固定に よって高度に断片化された DNA サン プルは PCR 増 幅 が 不 良 と な り、 解 析 が上手くいかないケースがある。そし DNA の断片化を評価する方法とし てアガロースゲル電気泳動などがある が、サンプル DNA として 50ng 程度必 要である。したがって、Laser Capture Microdissection (LCM) で取得した微量 サンプルから得た DNA ではその断片化 を評価することが難しい。また、断片化 された DNA は吸光度でその濃度を測定 しても、正しく定量することが難しいと いう問題点がある。そこで、これらの問 題を解決するために、リアルタイム PCR を用いて、微量 DNA の断片化の評価と、 定量ができる実験系を構築した。 反応を行った。反応は 20 μ L の反応系 で行い、1 μ L DNA サンプル溶液を加 えて測定した。 3. 測定サンプル 実験系の評価には長期間精製 DNA 4で保存し、断片化が起きているサンプル を用いた。これらのサンプルはアガロー スゲル電気泳動できる量があったので、 0.5% のアガロース電気泳動で断片化を 評価した。また、FFPE 由来の微量 DNA サ ン プ ル と し て、 厚 さ 5μm Human Prostate FFPE 切片より Arcturus XT レーザーキャプチャーマイクロダイセク ションシステムを用いて 4mm 2 程度の面 積を回収したものを使用した。LCM 取得したサンプルは Picopure ® DNA Extraction Kit にて DNA を回収した。 4. データ解析 検量線を利用してサンプルを Short Assay Long Assay 各々で絶対定量 した。また、Human Control DNA をリ ファレンスとし、それぞれのサンプル間で Long Assay / Short Assay の比を比較 する相対定量を行った。 大滝真作 * 、草野順子 * 2 、渡邊学 * 2 、林義治 * 2 、白神博 * * ライフテクノロジーズジャパン株式会社フィールドアプリケーションサイエンティスト、 * 2 ライフテクノロジーズジャパン株式会社サイエンティフィックアフェアーズ) 1 断片化を評価する TaqMan ® Assay のコンセプト 断片化した DNA をテンプレートにした場合、256bp の増幅が悪くなる。87bp の増幅と 256bp の増幅を比較 することにより、サンプル DNA の断片化を評価することができる。 方法 1. 評価方法のコンセプト RNase P を増幅する 2 種類の TaqMan ® Assay を用意した。一つは TaqMan ® RNase P Detection Kit に付属する TaqMan ® Assay でアンプリコンサイズ 87bp(Short Assay) であった。それに 加えて RNase P に対して 256bp を増幅 する TaqMan ® Assay を設計した (Long Assay)。断片化された DNA Short Assay と比較して Long Assay の増幅が 悪くなるため、両者の増幅を確認するこ とにより、DNA 断片化の具合を判断する ことができる(図1)。 2. リアルタイム PCR の反応条件 DNA を定量するために検量線を作成し た。検量線用のサンプルとして TaqMan ® RNase P Detection Kit に付属している Human Control DNA (10ng /μ L) を使用 し、4 倍希釈で 5 点の検量線を作成した。 測定には StepOnePlus ™ Realtime PCR System を用いた。また、反応に TaqMan ® Gene Expression Master Mix を用い Standard Mode 45 サイクル

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  • 次世代シークエンサーで測定を行うDNAの断片化を評価する TaqMan® Assay

    アプリケーションノートIon Torrent™

    イントロダクション近 年、次世代シークエンサーである Ion Torrent™ PGMシステムを活用し、がん遺伝子の網羅的な変異を解析する Ion AmpliSeq™ Cancer Hot Spot Panel v2 注目されている。この解析では Formalin Fixed Paraf f in Embedded (FFPE)サンプルから抽出した DNA を対象としている。しかし、ホルマリン固定によって高度に断片化された DNAサンプルは PCR 増幅が不良となり、解析が上手くいかないケースがある。そして DNA の断片化を評価する方法としてアガロースゲル電気泳動などがあるが、サンプル DNA として 50ng 程度必要である。したがって、Laser Capture Microdissection (LCM) で取得した微量サンプルから得た DNA ではその断片化を評価することが難しい。また、断片化された DNA は吸光度でその濃度を測定しても、正しく定量することが難しいという問題点がある。そこで、これらの問題を解決するために、リアルタイム PCRを用いて、微量 DNA の断片化の評価と、定量ができる実験系を構築した。

    反応を行った。反応は 20μ Lの反応系で行い、1μ Lの DNAサンプル溶液を加えて測定した。

    3. 測定サンプル実験系の評価には長期間精製 DNAを 4℃で保存し、断片化が起きているサンプルを用いた。これらのサンプルはアガロースゲル電気泳動できる量があったので、0.5% のアガロース電気泳動で断片化を評価した。また、FFPE由来の微量 DNA サンプルとして、厚さ 5μm の Human Prostate FFPE切片より ArcturusXT ™ レーザーキャプチャーマイクロダイセクションシステムを用いて 4mm2 程度の面積を回収したものを使用した。LCM で取得したサンプルは Picopure® DNA Extraction Kit にて DNAを回収した。

    4. データ解析検 量 線を利用してサンプルを Short Assayと Long Assay 各々で絶対定量した。また、Human Control DNAをリファレンスとし、それぞれのサンプル間でLong Assay / Short Assay の比を比較する相対定量を行った。

    大滝真作 *1、草野順子 *2、渡邊学 *2、林義治 *2、白神博 *1(*1 ライフテクノロジーズジャパン株式会社フィールドアプリケーションサイエンティスト、 *2ライフテクノロジーズジャパン株式会社サイエンティフィックアフェアーズ)

    図 1 断片化を評価するTaqMan® Assayのコンセプト断片化した DNAをテンプレートにした場合、256bpの増幅が悪くなる。87bpの増幅と 256bpの増幅を比較することにより、サンプル DNAの断片化を評価することができる。

    方法1. 評価方法のコンセプトRNase Pを増幅する 2 種類の TaqMan® Assay を 用 意した。一つは TaqMan® RNase P Detection Kit に 付 属 す るTaqMan® Assayでアンプリコンサイズは 87bp (Short Assay)であった。それに加えて RNase Pに対して 256bpを増幅する TaqMan® Assayを設計した (Long Assay)。断片化された DNA は Short Assayと比較して Long Assay の増幅が悪くなるため、両者の増幅を確認することにより、DNA 断片化の具合を判断することができる(図1)。

    2. リアルタイム PCR の反応条件DNAを定量するために検量線を作成した。検量線用のサンプルとして TaqMan® RNase P Detection Kit に付属している Human Control DNA (10ng /μL)を使用し、4倍希釈で 5 点の検量線を作成した。

    測 定には StepOnePlus ™ Realtime PCR System を用いた。また、反応には TaqMan® Gene Expression Master Mixを用い Standard Modeで 45サイクル

  • Human Control DNAをリファレンスサンプルとして用い、各サンプル間の Long Assay/Short Assay の 相 対値 を 計算し、グラフを作成した(図 4)。Human Control DNAを 1.0とした場合に、断片化が進んでいない No. 5 は 0.93 という値が得られた。DNAの一部が断片化していた No.15サンプルでは 0.52という値が得られた。そして、高度に断片化が進んでいた No.35では 0.004という値が得られた。この方法で DNA の評価を行うことにより、DNA の断片化を定量的に評価することが可能となった。

    結果1. 4℃にて長期保存し、断片化したDNA の評価DNA を 4℃で長期保存し、断片化したDNA を電気泳動で評価した。No.5 のDNA は断片化を受けておらず、No.15 のサンプルは部分的に断片化を受けていた(図 2)。そして No.35 の DNA は高度に断片化を受けており、電気泳動写真でスメアが確認された(図 2)。

    電気泳動で断片化を受けていたサンプルについて Long Assayと Short Assayを用いて評価を行った。断片化を受けてい ない Human Control DNA と No. 5

    では Long Assayと Short Assayでその増幅に大きな差は見られなかった(図 3)。 サンプルの一部に断片化が見られた No.15 では Long Assay の増幅に若干遅れが見られ、DNA が高度に断片化していた No.35では Long Assay の増幅に大きな遅れが見られた(図 3)。これは DNAの断片化が高度に進むと、アンプリコンサイズの大きなLong Assayが増幅しにくくなるためであると考えられる。

    次に、Long Assayと Short Assay の検出量で比の算出を行った。検量線によって求められた絶対値で、Long Assay / Short Assay の計算を行った。次に、

    図 3 Long Assayと Short Assayの増幅電気泳動で断片化が確認されたDNA程、Long Assay の増幅が悪い。

    図 2 4℃で長期保存を行った DNAの電気泳動結果Contol, No.5, No35 のサンプルは 50ng そしてNo.15のサンプルは 35ngのDNAを電気泳動した。

    図 4 Human Control DNAをリファレンスとした Long Assay の相対値複数の断片化度合いが異なる DNAサンプルで Long Assayと Short Assay の測定を行った。そしてLong Assay の絶対量を Short Assay の絶対量で割り、そしてその値を Control DNAで得られた値で再度割り算を行い、相対値を算出した。断片化が進んでいるサンプルはその相対値が少なかった。

  • 図 6 LCM サンプルの Long Assay と Short Assay の増幅A: コントロール DNAと LCM由来サンプル DNAの増幅曲線の違い B: Control DNAを基準とした場合の Long Assay 相対値

    A B

    図 5 LCM で回収した Human Prostate 切片A: LCM で回収したキャップ上のサンプル。 B: サンプル回収後の切片

    A B

    2. LCMで取得したサンプルより抽出した DNAの評価ArcturusXT ™ レーザーキャプチャーマイクロダイセクションシステムを用いて、厚さ 5μmの Hman Prostate FFPE切片より、直径 500μm の円を 20 個回収した(図 5)得られた面積は約 4mm2 程度であった。このサンプルから Picopure® DN A E x tr ac t ion K i t (K IT010 3)を 用いて DNAサンプルを回収した。そしてその DNAサンプルを Short AssayとLong Assayで評価した。

    その結果、LCMで得られたサンプルはLong Assayの増幅が悪く、Short Assayと Long Assay の 増 幅 の間 隔(dCT値)が control DNAの場合(dCT=2.4)と比較して広く、7.2 サイクルであった(図 6A)。 Control Human DNA を基準にした場合に、断片化の相対値は 0.016であった(図 6B)。この結果より、LCMで取得されたサンプル由来の DNA は断片化が進

    んでいることが分かった。そして検量線を用いた定量値は Short Assayで定量した場合に 0.145ng /μLであり、Long Assayでは 0.004ng /μLでありった。したがって LCMサンプルは非常に微量であることが分かった。

    考察RNase Pに設計した 256bp (Long Assay) と 87bp (Shor t Assay) の TaqMan® Assay の増幅を比較することにより、 リアルタイム PCR を用いて微量 DNAの断片化を評価する実験系を構築した。これまで DNA の断片化を評価する方法としては電気泳動が一般的であったが、50ng 程度の DNA が必要となる。リアルタイム PCR を用いれば、LCM で取得した 1ng 以下の微量な DNAであっても定量が可能であり、加えて Long Assayと Short Assay の比を見ることによって断片化の度合いを見ることができた。そして、電気泳動では DNA の断片化を見

    ることができても、数値的に断片化を評価することは難しかったが、本実験系を活用することにより DNA の断片化を定量的に評価することができた。

    Ion A mpl iSeq™ Cancer Hot spot Panel v2 で断片化を評価した DNA の測定を行った。リアルタイム PCR で測定した相対値が 0.2 以上のサンプルでは結果が得られたが、相対値が 0.1以下の場合は通常プロトコルで解析が難しいケースがあった(data not shown)。

    次世代シークエンサーの実験は比較的実験コストが高価で実験プロセスが煩雑である。今回確立したリアルタイム PCRによる評価系を活用することにより、事前にサンプルのクオリティを評価することができれば、実験時間と実験コストのロスを最小限にすることができると期待される。

  • 製品名 製品番号 反応回数

    TaqMan® RNase P Detection Kit 4316831 100反応

    TaqMan® Gene Expression Master Mix 4369016 500反応 (20uL)

    Picopure® DNA Extraction Kit KIT0103 30回 (50uL)

    TaqMan® MGB 遺伝子発現検出キット 4324034 1000反応以上 (20uL)

    Ordering informationLong Assayは TaqMan® MGB遺伝子発現検出キットのカスタム合成品として注文をすることが可能です。その際に、Long Assayは Fragmented DNA QC Assayという名前で Primer 及び TaqMan® MGB Probe の 20Xプレミックスでのご注文となります。 尚、Primer及びTaqMan® MGB Probeの配列は非公開とさせていただきますのでご了承ください。そして注文には発送先などのユーザー登録等が必要になります。

    Long Assayの注文等のお問い合わせに関しては、詳細は弊社 Webサイトもしくは下記まで連絡ください。 メールアドレス: [email protected] 電 話 番 号: 03-6832-6980 (音声ガイダンス:①番プッシュ後、④番 (アプライドバイオシステムズ オリゴ・ウエブ受注品 ))

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    研究用にのみ使用できます。診断目的およびその手続き上での使用は出来ません。記載の社名および製品名は、弊社または各社の商標または登録商標です。販売条件はこちらをご覧ください。 www.lifetechnologies.com/TCThe trademarks mentioned herein are the property of Life Technologies Corporation or their respective owners.TaqMan is a registered trademark of Roche Molecular Systems, Inc. Used under permission and license.© 2013, Life Technologies Japan Ltd. All rights reserved. Printed in Japan. ION070-A1302IH

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