ムーブ南畿2016年Vol...ムーブ南畿2016年Vol.37 南畿 特集 鳥獣被害対策の推進...

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南畿 ムーブ南畿2016Vol.37 特集 鳥獣被害対策の推進 津風呂ダム(津風呂湖)

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南畿 ムーブ南畿2016年Vol.37

特集 鳥獣被害対策の推進

津風呂ダム(津風呂湖)

はじめに

近年、中山間地域に限らず、シカ、イノシシ、サル等の野生鳥獣による農林水産業への被害

が深刻化・広域化しています。

当事務所管内においても、柿の産地で有名な「五条吉野地区(奈良県)」ではイノシシによ

る被害が問題となっており、甘柿は熟す前から食害にあうとともに、柿の実を食べるときに樹

木の枝を折るなどの被害も続出しています。また、昨年末に「みなべ・田辺の梅システム」と

して世界農業遺産に認定された「南紀用水地区(和歌山県)」ではシカによる被害が問題と

なっています。梅はサルも食べないので鳥獣被害は無いと思われがちですが、シカによる若枝

の食害が増加しています。

これはほんの一例ですが、 近は都市近郊地域まで被害が拡がっていることから、今回は鳥獣

被害対策について特集しましたので、ご参考となれば幸いです。

写真:津風呂ダム湖岸の桜 津風呂ダムの昭和46年の完成によりできたダム湖は津風呂湖と呼ばれ、周囲では春は桜、また秋は紅葉が楽しめます。 津風呂ダムの湖面には、海に面していない奈良県内で初めて就航した湖上遊覧船や、貸しボート等の施設があり、ヘラブナやワカサギ等の釣りも楽しめ、また、「県立吉野川・津風呂自然公園」に指定されている津風呂ダム周辺には遊歩道、広場や吊り橋もあり、レジャー観光が楽しめます。

はじめに

特集1 鳥獣被害対策の推進 --------- 1

特集2 農業水利施設の管理

五條吉野土地改良区 -------------- 4

農政情報

ディスカバー農山漁村(むら)の宝 ------- 5

農林水産分野におけるTPP対策 -------- 6

事務所トピックス

大迫ダム取水設備のワイヤーロープの更新 ---- 7

広域基盤整備計画調査「紀の川地域」 ------ 8

トピックス

奈良県が取り組む水田を活用した貯留対策 ---- 9

- 目 次 -

-1-

野生鳥獣による農作物被害は、年々深刻化しており、農作物の被害金額は、近年、200億

円程度に及び、その7割がシカ、イノシシ、サルによるものです。野生鳥獣による農作物被

害は、営農意欲の減退、耕作放棄地の増加、森林の生物多様性の損失等をもたらし、被害金

額として数字に表れる以上に農山漁村にとって深刻な影響をもたらしています。

野生鳥獣による被害が深刻化してきた要因としては、野生鳥獣の生息域の拡大、狩猟によ

る捕獲圧の低下、耕作放棄地の増加、過疎化・高齢化等に伴う人間活動の低下等が考えられ

ています。

このような中、農林水産省では、環境省と連携し、「シカ、イノシシの生息頭数を10年後

までに半減(平成35年度までに約210万頭)」という目標を設定し、侵入防止柵の設置や

追い払い活動等の被害防止対策に加え、捕獲目標の達成に向けて、鳥獣被害防止特措法に基

づく市町村等の捕獲活動の強化を図ります。捕獲活動に必要な従事者の育成・確保に向け、

鳥獣被害対策実施隊を設置する市町村数を1,000市町村に増加させることや射撃場の整備を

支援するなど、捕獲目標の達成に向けた事業の展開を後押ししています。

さらに、増加する捕獲個体の適切な処理を推進し、また、地域資源として有効活用する観

点から、地域における捕獲鳥獣の食肉処理加工施設の整備、商品開発、販売・流通経路の確

立等の取組を支援するほか、捕獲鳥獣の食肉利活用のためのマニュアル作成や研修を実施し

ています。

埋設・焼却処理 食 肉 処 理 加 工 食 肉 販 売

○ 埋設処理(資材・役務)

○ 焼却施設の整備

○ 民間施設等での焼却処分

(鳥獣被害防止総合対策交付金)

○ 鳥獣被害防止特措法に基づく

被害防止計画の取組に対して、

市町村が処分に要した経費の

8割を手当

特別交付税措置

○ 食肉処理加工施設の整備

○ 食肉利活用衛生管理マニュアルの作成

○ 食肉利用のための研修の実施

(鳥獣被害防止総合対策交付金)

○ 新商品開発、販路拡大等

○ 加工・販売施設の整備

(6次産業化ネットワーク活動

交付金等)

引用:農林水産省広報誌「aff(あふ)」2015年12月号 ※ 環境省「統計手法による全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定等について」より作成されたもの

捕獲鳥獣の食肉利活用等に関する国の支援

-2-

奈良県・和歌山県における野生鳥獣による農作物被害金額は、平成26年度、奈良県2.1億

円、和歌山県3.2億円となっており、奈良県ではイノシシ、シカ、サル、和歌山県ではイノ

シシ、サル、シカの順に被害金額が大きく、これらによる被害金額は両県とも8割を占めて

います。

資料:近畿農政局調べ

野生鳥獣による農作物被害金額(奈良県) 野生鳥獣による農作物被害金額(和歌山県)

五條市では、農作物に被害を及ぼす野生鳥獣への対策として、侵入防止柵の設置や捕獲檻の

配置を進めており、これらにより年間数百頭のシカやイノシシが捕獲されています。

五條市では、シカやイノシシの命を活かし、また地域の特産

物とするため、ジビエ(野生鳥獣の食肉)として活用しようと、

平成27年10月に食肉処理加工施設「ジビエール五條」の運営

を開始しました。

「ジビエール五條」は、市が直営で管理・運営を行っており、

市が管理する捕獲檻で捕獲してから1時間以内に処理できる

個体のみをジビエの対象とするなど徹底した衛生管理のもと

で質の高い精肉を行っています。運営を始めた10月から本年

1月までにシカやイノシシ136頭が搬入され、ジビエに加工さ

れています。

精肉されたジビエは、市内のレストランのほか、奈良コープ

(生協)や道の駅「吉野路大塔」で販売されており、現在は在

庫切れが心配になるほどの好評を得ています。

同市農林政策課によると、「食肉処理加工は技術が必要な仕

事であり、人材の確保で苦労した」と話されており、現在は4

名の職員を雇用していますが、需要が増えつつある状況の中で

後継者の育成が課題となっています。

また、同課では「これから暖かくなり、春・夏の需要がどう

なるか心配」とも話されており、年間を通じて捕獲されるシカ

やイノシシの有効活用に向けて、牛肉や豚肉等とは違うジビエ

の良さをPRする方法が検討されています。

~ 奈良県五條市の鳥獣被害対策の取組の紹介 ~

五條市食肉処理加工施設「ジビエール五條」

-3-

平成28年1月、奈良県橿原市で開催された「国営五条吉野地区営農推進講演会」において、

鳥獣被害対策についての講演がありましたので、その内容について紹介します。

~ イノシシによる被害を防ぐには電線は低く低く張る ~

イノシシだけを対象にするのであれば、ダンポール(2.1m)を半分に切って、1m程度の高さの支柱で良い。電線の高さは、20cmと40cmに針金を水平に張る。イノシシは低いところにあるものを鼻先で触るので、電線は低いところに設置する。高いところにあれば、イノシシはそのままくぐってしまう。頭や背中の体毛が触れても、感電まではしないので、電線の下をくぐるようになる。地面は平らではないので、支柱毎に20cmで固定しても、場所によっては地表から25cm、30cmと離れてしまうところもある。そのようなところでは、支柱を追加で設置し、地面に沿うように電線の高さを20cmにする。電線は低く低く張るように心がけることが重要。

山梨県総合農業技術センターが開発した低コスト多獣種対応型侵入防止柵「獣塀くんライト」の特徴や効果を紹介し、奈良県の果樹園で特に問題となっているイノシシによる被害を防ぐための電気柵の設置方法や留意点等、これまで自ら実践した観察や実験を通じて得た具体的な鳥獣被害対策技術についてアドバイスを頂きました。

~ 多獣種の侵入を防止する簡易柵「獣塀くんライト」 ~

絶縁性の農業用支柱(ダンポール)を2.5m間隔で地面に差し込み、それに直接電線を固定することで、簡易な電気柵を作ることが可能。絶縁性の支柱を使用していることで碍子(ガイシ)を使わなくて良いのが 大の特徴。碍子の代わりにホームセンター等で安く購入できる結束バンドで固定し、電線にはステンレス製の針金(0.9mm程度)を使用する。

これに、防鳥用の網(30~45mm目、安いタイプの網で可能)を畑側に張ることで「面」で防ぐことが可能。網があることで、獣には邪魔になり、網を破ろうとすると電線に触れることになる。電線に触れることを誘発するために網を張っているだけで、丈夫な網で侵入を防ぐ必要はない。網があるかないかで効果が全然違う。

イノシシ、カラス等から果樹を守るためには

- 山梨県総合農業技術センター環境部 主任研究員 本田 剛 氏 -

~ 電気柵は冬も電気を通すか、支柱ごと倒しておく ~

感電を経験したイノシシは、次から柵を怖がるようになる。専門的には「忌避効果」で、これが電気柵の特徴。冬の時期に電気を通さずに、イノシシが電線に触れて電気が流れていないことを経験すると、イノシシは安心して柵を跳び越えることを覚えてしまう。そうなったら、春になって電気を通しても、イノシシが上を跳び越えることを覚えてしまっており、効果がなくなってしまう。冬の時期にも電気を通すか、地面から引き抜いて支柱ごと倒しておくことが必要。

~ カラスの防鳥糸は、ピカピカ光っていないつや消し黒が有効 ~

低コストで実用的な鳥害防止対策として、防鳥用の糸に着目。市販の防鳥糸はピカピカ光る光沢をつけて「見やすい」ように工夫されているが、光沢をなくしたつや消し黒の防鳥糸を使う方が、カラスには見えにくく、防鳥糸にぶつかり、それを避けるために防鳥糸が張ってある畑を嫌うようになる。カラスは黒い糸に慣れないため、効果が持続する。

電気柵を設置する際の主な注意点 ・感電により人に危険を及ぼすおそれのないように、電気柵用電源装置を使用して下さい。 ・人が見やすいように、適切な位置や間隔、見やすい文字で危険である旨の表示をして下さい。

獣塀くんライト

防鳥糸(つや消し黒)

本田 剛 氏

今回は、日本有数の柿産地である奈良県五條市、下市町において国営総合農地開発事業五条

吉野地区で造成した農業水利施設を管理している五條吉野土地改良区の西出洋平主任の日常

業務に密着しました。

(西出洋平さんの一日)

8:15 出勤

17:15 退庁 (かんがい期間中は、夕方から深夜(16:00~24:00)まで各ほ場でかん水が行われており、時間外でも漏水事故等が発生した場合、早急な復旧が必要となるため、いつでも対応出来るよう心得ています。)

- 施設の維持管理で課題と感じていること -

13:00 所内で事務作業 (庶務・会計事務処理のほか、農業基盤整備促進事業等の単独工事の準備を行います。)

8:30 揚水機場等の巡回 (揚水機場にある自動通報装置から送られてくる異常状況の有無を確認し、幹支線水路や13箇所の揚水機場の不具合を確認します。)

- 五條吉野土地改良区のお仕事について -

- 土地改良区の日常業務で気を付けていること -

五條吉野土地改良区

西出洋平 主任

---プロフィール---

五條市の柿農家に生まれ育った西出さんは、専門学校卒業後、五條吉野土地改良区に奉職。 施設の管理・維持から総務事務まで土地改良区の作業全てを経験し、プロフェッショナルになれるよう日々頑張っています。

五條市、下市町の約1,600haの樹園地

にかんがい用水を補給するために造成さ

れた施設の維持管理を行っています。

具体的には、一の木ダムから送られて

くる用水を末端の各ほ場まで送水するた

めの揚水機場や送水管の操作・管理・点

検を行っています。

また、耕作放棄地発生の未然防止とし

て造成農地の流動化の調整や事務手続き

のお手伝いや、多面的機能支払交付金の

活動組織の構成員となり会計事務を担っ

ています。

ポンプの送水状況やファームポンドの貯水状況、送水管の漏水に

気を付けています。特に、かんがい期は長期の断水が出来ないた

め、日々の監視や組合員からの漏水等の連絡に対し、早急な対応が

出来るように体制を整えています。

管水路の漏水に対しては、土地改良区内に管水路復旧用の交換部

品を常備し、施工業者に直ぐに復旧して

もらえるようにしており、その日の内に

対処できるようにしています。

また、大雨や災害時には職員一同、造

成団地の巡回点検を行い、土砂崩れ等が

あった場合には各関係機関と連携し対応

しています。

ダムの水管理施設や揚水機場は設置後20年近くが経過しており、

施設の老朽化が課題となっています。特に、ダムの水管理施設は

メーカーにおいても故障時の補修部品の在庫がなく、ダムの維持管

理や樹園地への送水に大きな支障が出て

しまうことが想定されるため、早急な更

新が課題となっています。

適切な時期に適切な更新工事が出来る

よう、関係機関とさらに連携を深め、役

員・総代・組合員が一丸となって取り組

んでいきたいです。

12:00 昼休み

-4-

-5-

「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」選定地区の紹介

内閣官房及び農林水産省では、「強い農林水産業」、「美しく活力ある農山漁村」の実現に

向けて、農山漁村の有するポテンシャルを引き出すことにより地域の活性化、所得向上に取り

組んでいる優良事例を「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」として選定し、全国へ発信する

こととしています。

第2回選定においては、全国で27地区、うち当事務所管内から2地区が「ディスカバー農山

漁村(むら)の宝」に選定されました。全国の選定地区の概要はこちらをご覧下さい。

( http://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/pdf/27_discover.pdf )

有田みかんの6次産業化による地域活性化 株式会社 早和果樹園

(和歌山県有田市)

農業法人 株式会社 秋津野

(和歌山県田辺市) 都市と農村の交流施設 秋津野ガルデン

(廃校舎を活用した施設で日本型グリーン・ツーリズムの推進)

●高品質の有田みかん生産に取り組むほか、みかんジュース、ジャム、ポン酢など有田みかんに特化した商品開発を推進。生産にはICT農業システムを導入し栽培技術の「見える化」を進め、農作業の効率化を推進。

●各種商談会や百貨店等での販売や海外への輸出など、販売促進と消費者のニーズを把握。消費者との交流事業も実施。

●農作業や加工などシニア女性の活躍の場である子会社を設立。

概 要

●地元のみかん農家約250戸と契約し、高付加価値の加工品の販売により、加工原料みかんを市価よりも高く買取り。また、売上げも1.5倍に増加(H25-26)。

●常時50人を雇用するとともに、さらに臨時で50人雇用するなど中山間地域における雇用の創出。

●交流事業により、有田みかんファンの定着が促進。

成 果

●地域住民489名が出資し、廃校を活用したグリーン・ツーリズムを実施する法人を設立。

●木造校舎を利用して、農家レストランや宿泊事業のほか、農業体験、みかんのオーナー制度、市民農園などの交流事業を展開。

概 要

●農家レストランをはじめとした交流事業による年間交流人口は約6万人。法人運営により、35名の雇用が創出。

●和歌山大学の調査研究によると、田辺市周辺に年間10億円の経済効果。

●地域資源である旧小学校の木造校舎を残したことが489名の出資を呼び込み、10年先を考える地域づくりを活性化。

成 果

-6-

農林水産分野におけるTPP対策について

平成27年10月5日の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の大筋合意を踏まえ、11月25

日、TPP総合対策本部において「総合的なTPP関連政策大綱」が決定されました。

TPPは、世界のGDPの約4割(3,100兆円)という、かつてない規模の経済圏をカバーした

経済連携で、これにより、人口8億人という巨大市場が創出されることになります。

「政策大綱」では、TPPの効果を真に我が国の経済再生、地方創生に直結させるために必要

な政策、及びTPPの影響に関する国民の不安を払拭する政策の目標を明らかにしています。

農林水産分野については、「平成32年の農林水産物・食品の輸出額1兆円目標の前倒し達成」

を目指し、成長産業化に取り組む生産者がその力を 大限に発揮し、攻めの農林水産業への転

換を図るための体質強化対策を集中的に実施します。また、重要品目を中心に、経営安定・安

定供給へ備えた措置の充実を図ります。さらに、農林水産業の成長産業化を一層進めるために

必要な戦略については、平成28年秋を目途に政策の具体的内容を詰めることとしています。

農業農村整備においては、体質強化を図る観点から、担い手への農地の集積・集約化、農産

物の高付加価値化、生産コスト削減など競争力向上に必要な生産基盤整備を推進します。

農林水産分野におけるTPP対策

攻めの農林水産業への転換に向けた農業農村整備

1 攻めの農林水産業への転換(体質強化対策)

○次世代を担う経営感覚に優れた担い手の育成

○国際競争力のある産地イノベーションの促進

○畜産・酪農収益力強化総合プロジェクトの推進

○高品質な我が国農林水産物の輸出等需要フロン

ティアの開拓

○合板・製材の国際競争力の強化

○持続可能な収益性の高い操業体制への転換

○消費者との連携強化、規制改革・税制改正

2 経営安定・安定供給のための備え

(重要5品目関連) ○米(政府備蓄米の運営見直し)

○麦(経営所得安定対策の着実な実施)

○牛肉・豚肉、乳製品

(畜産・酪農の経営安定充実)

○甘味資源作物(加糖調製品を調整金の対象)

担い手の米の生産コストを大幅に削減するため、農地の大区画化や排水対策、水管理の省力化・合理化のための整備を推進

○大型機械の導入が可能な大区画のほ場を整備

○水管理の省力化・合理化を可能とするパイプライン化、地下かんがいを整備

農地中間管理事業の重点実施区域等に おける農地の更なる大区画化・汎用化

高収益作物を中心とした営農体系への転換により、体質強化を図るため、水田の畑地化・汎用化、畑地・樹園地の高機能化を推進

○パイプライン化、スプリンクラー整備による水田の畑地化

○大区画化等による機械化・省力化、かんがい排水施設の整備による高品質化の推進

水田の畑地化 畑地・樹園地の高機能化

米の生産コスト(円/60kg)の低減

※ 平均経営規模15ha程度以上かつ1ha程度以上の大区画で実施した地区(H22~24年度完了地区)を対象

畑地化によるたまねぎ生産

スプリンクラー整備によるかん水

給水栓

樹園地の高機能化による高品質化

整備前

整備後

スプリンクラー

【畑地化のイメージ】

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大迫ダム取水設備のワイヤーロープは、昭和48年に供用を開始して以来、計画的に更新

整備を行っています。大迫ダム管理所では、本年度、十津川紀の川直轄管理事業の一環と

して、経年劣化が進行しているワイヤーロープについて、取替えを行いました。

大迫ダム取水設備は、取水塔、スクリーン、ゲート及び下流側の放流設備を組み合わせて

構成され、ゲート(底部取水ゲートを除く)操作はワイヤーロープによる巻上(ウインチ)

方式により行っています。

遮断ゲート

補助(保安)ゲート

底部取水ゲート ※

表面取水ゲート

取水設備(全景)

ゲート

名称 表面取水ゲート 遮断ゲート 補助(保安)ゲート

門数 1門 1門 1門

竣工年 昭和48年3月

形 式 多段式(3段)鋼製

ローラゲート

鋼製ローラゲート

(バルブ付)

鋼製ローラゲート

(フラップゲート付)

寸 法 B5.0m ×

H20.5m(垂直高)

B4.3m ×

H4.3m

B5.0m ×

H4.35m

巻上

方式

ワイヤ-ロープ

ウインチ式

ワイヤ-ロープ

ウインチ式

ワイヤ-ロープ

ウインチ式

ドラム清掃

旧ワイヤーロープ撤去

※ 底部取水ゲートは平成26年度に国営第二十津川紀の川農業水利事業で整備されました。

【大迫ダム取水設備のゲートの概要】

大迫ダム取水設備のワイヤーロープ更新工事は、①準備、②古

いワイヤーロープの巻取・撤去、③ドラム等清掃、④新しいワイ

ヤーロープの設置(グリス塗布)、⑤試運転・調整の順に作業を

行いました。

交換作業完了

旧ワイヤーロープ撤去

新ワイヤーロープ設置

-8-

広域基盤整備計画調査は、国営事業地区を含む大規模な優良農業地帯を対象に、中長期的な

施設の更新整備計画や施設利用上の課題等を解決していくための方向性をまとめる広域基盤

整備計画を作成するものです。

紀の川水系の大和平野や紀伊平野を含む「紀の川地域」を対象にしており、平成13年度に作

成した1回目の計画では、現在実施中の第二十津川紀の川地区や大和紀伊平野地区につながり

ました。今回が2回目の計画作りとなります。

実施中の第二十津川紀の川地区等で、地域内の多くの農業水利施設は改修が行われています

が、改修対象外となった施設や、耐用年数の短い水管理施設や電気設備等で老朽化の進行が懸

念されます。それらの施設を対象にした健全性を評価する機能診断調査や様々な課題把握のた

めの調査を行って、平成28年度内を目標に計画を作成する予定です。計画の内容は、関係県、

市町村、土地改良区に参加していただく広域基盤確立推進協議会での意見を踏まえ作り上げて

いきますので、関係機関のご協力をお願いします。

広域基盤整備計画調査「紀の川地域」の対象範囲

目視調査 (大和平野地区西部幹線水路)

コンクリート強度試験 (紀伊平野地区紀の川用水路)

更新時期が近づく水管理施設 (大迫ダム管理所)

奈良県が取り組む水田を活用した貯留対策(水田貯留)を紹介します。

近畿農政局南近畿土地改良調査管理事務所

〒638‐0821 奈良県吉野郡大淀町下渕388‐1

TEL 0747(52)2791 FAX 0747(52)2794

大迫ダム管理所 〒639‐3603 吉野郡川上村北和田 TEL 0746(54)0800 FAX 0746(54)0306

津風呂ダム管理所

〒639‐3102 吉野郡吉野町河原屋 TEL 0746(32)2335 FAX 0746(32)0836

南畿 第37号 平成28年3月

農業・農村は、食料を生産する以外にも、国土の保全、水源のかん養、生物多様性の保全

等、その生産活動を通じて様々な機能を有しています。

奈良県では、水田の多面的機能維持発揮のためには営農の継続が必要となることから、営農

条件の整備を進めるとともに、水田が有する水を貯める機能に着目し、水田の排水口に簡易な

流出調整板を設置しながら営農を行う「水田貯留」に取り組んでいます。これにより、大雨が

降った時に雨水を水田に一時的に貯留し、水田からゆっくりと流すことで河川や水路の水位上

昇を抑制し、大和平野流域の浸水被害の軽減が期待されています。

水田の排水ますに、5cm程度の小さな孔の

空いた流出調整板を設置し、水路への排水量

を抑制します。

平成27年度は奈良県内11市町村で「水田貯留」に取り組みました。

水田貯留は農家個々の取組ですが、大字・集落単位で取り組む方が大

きな貯留効果が見込めるため、奈良県では、より多くの地域で水田貯

留に取り組めるよう、更なる普及に向けて取り組んでいます。

浸水被害が発生 浸水被害が軽減・解消

実施した場合 実施しない場合

【水田貯留による効果イメージ】

水田貯留 未実施 水田貯留 実施

排水路 排水路

調整板を設置すると、排水量を減らすことができ、これまで以上に水田に水を貯めることができます。

調整板を設置していない状態では、水田の水が排水口全体から排水されます。