トマト 「桃 - TAKIIトマト部会の成り立ち トマト栽培は、昭和...

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40 49 18 12 ha 5 2ha 10 6 ha 0 35ha 10 ↑高糖度トマトを果実のような甘さから「フルーツトマト」として出荷贈答品としても喜ばれる。 ↑肥 よく な土壌で、水分をなるべく抑えることで糖度が 高くなる。 ↑「桃太郎ピース」の絞り栽培。 JA農業列島 産地ルポ JA高知春野 JA高知春野 高知市 高知県 徳島県 愛媛県 よど がわ の美しい水と温暖な気候 JA高知春野の所在地である、高知市春野町 は高知県のほぼ中央に位置し、北に鷲尾山県立 自然公園、南に太平洋、その間を清流仁淀川が 悠々と流れ、その川が運んできた豊かな土砂で 作られた弘岡平野が広がっています。 気候は温暖多雨で、日照量も全国トップクラ スを誇り、農作物の生産にとても適した土地で す。江戸中期に野中兼山により作られた用水路 が町中を網目のように走り、大正時代にはすぐ れた農業経営が称えられ「土佐のデンマーク」と 呼ばれるほどの、ハウス園芸栽培地帯です。 また、管内は高知県屈指のキュウリ産地でも あり、ほかにもトマト・新ショウガ・花き類・ メロンなどを栽培しています。 地域概況 トマト 高知県 JA高知春野 2016 タキイ最前線 秋種特集号 15

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  • トマト部会の成り立ち

     

    トマト栽培は、昭和40年代にキュウ

    リの後作として1月に定植し、6月ま

    で栽培されていました。促成トマトと

    しては昭和49年より行われ、高糖度ト

    マト栽培は平成元年よりスタートしま

    した。そのころに諸木農協トマト部会

    として、高糖度トマトを果実のような

    甘さから「フルーツトマト」として出

    荷しました。

     JA高知春野は平成3年4月に町内

    9農協が合併し、現在トマト部会は部

    会員数18名、栽培面積12

    haです。

     

    作型は、すべての生産者が促成栽培

    となります。その中でも、高糖度トマ

    ト栽培面積は5・2ha、生産者10名、

    大玉トマト栽培面積6・8ha、ミニト

    マト栽培面積0・35ha、生産者2名

    (大玉トマト栽培者にて)となります。

    大玉トマトは周年栽培となり、高糖度

    トマト栽培は、8月~9月上旬の定植、

    10月中旬~6月中旬まで出荷します。

     

    出荷体系は、個選・個販となります。

    ↑高糖度トマトを果実のような甘さから「フルーツトマト」として出荷。贈答品としても喜ばれる。

    ↑肥ひ

    沃よく

    な土壌で、水分をなるべく抑えることで糖度が高くなる。

    ↑「桃太郎ピース」の絞り栽培。

    JA高知春野の

    フルーツトマト栽培で

    「桃もも太た郎ろうピース」の良食味を引き出す

    農業列島産地ルポ

    JA高知春野JA高知春野

    ・高知市

    高知県

    徳島県

    愛媛県

    仁に

    淀よど

    川がわ

    の美しい水と温暖な気候 JA高知春野の所在地である、高知市春野町は高知県のほぼ中央に位置し、北に鷲尾山県立自然公園、南に太平洋、その間を清流仁淀川が悠々と流れ、その川が運んできた豊かな土砂で作られた弘岡平野が広がっています。 気候は温暖多雨で、日照量も全国トップクラスを誇り、農作物の生産にとても適した土地です。江戸中期に野中兼山により作られた用水路が町中を網目のように走り、大正時代にはすぐれた農業経営が称えられ「土佐のデンマーク」と呼ばれるほどの、ハウス園芸栽培地帯です。 また、管内は高知県屈指のキュウリ産地でもあり、ほかにもトマト・新ショウガ・花き類・メロンなどを栽培しています。

    地域概況

    トマト高知県JA高知春野

    JA高知春野 

    経済部 

    営農渉外課指導係  

    山やま﨑さき 

    久ひさ充みつ

    2016 タキイ最前線 秋種特集号 15

  • 主に高知県内市場3社が出荷先ですが、

    少量はJA出荷による高知県外出荷も

    行っています。

    黄化葉巻病

    (TYLCV)の被害

     

    当地区の黄化葉巻病(TYLCV)

    の被害は、平成10年ごろより重大な問

    題となりました。春野町施設園芸生産

    者が主体となって、キュウリの黄化え

    そ病対策で「春野町黄化えそ病対策協

    議会」を立ち上げ、トマト黄化葉巻病

    も同時に対策を講じることになりまし

    た。媒介虫であるコナジラミ類の対策

    として9月にハウス周辺の防除と栽培

    終了後のハウス蒸し込み処理を1週間

    以上行っています。

     

    また、促成トマトも0・04㎜の防

    虫ネットを展張し、被害を抑えられた

    年度もありましたが、平成24年ごろに

    コナジラミ大発生により、生産者によ

    っては40aすべてが枯れてしまう状況

    となりました。このことから、さらに

    黄化葉巻病耐病性品種が望まれること

    となりました。

    「桃太郎ピース」の導入経緯

     

    黄化葉巻病(TYLCV)の被害か

    ら、IPM技術(病害虫・雑草の発生

    を抑える技術)だけではコナジラミ被

    害を抑えきれないと判断し、10名の生

    産者が「桃太郎ピース」の導入を決め

    ました。

     「桃太郎ピース」(大玉トマト)は実生

    栽培が多数です。生産者からは、やは

    り、黄化葉巻病耐病性により発病して

    も枯れることなく、栽培が継続できる

    よさが喜ばれています。また、秀品率

    の高さ・草勢の強さ・栽培の容易さな

    どがあげられます。しかし、現在の問

    題点は耐病性品種による病害虫防除の

    減少から、かび病などの発生が見られ

    ることです。このことから、予防的殺

    菌剤防除など栽培管理が改めて見直さ

    れることとなりました。

    日照量・気候を生かした

    フルーツトマト栽培

     

    フルーツトマトは、肥沃な土壌で水

    分を抑えることにより、糖度が高くな

    ります。栽培品種は「CシーFエフ桃太郎ファ

    イト」が中心となりますが、それ以外

    の品種も栽培しています。

     

    数名の高糖度トマト生産者は、平成

    5年以降より仕立て本数変更・放任栽

    培から吊つり下げ栽培・防根透水シート

    などの資材を、フルーツトマトの年内

    早期収穫を目指す栽培方法へと変化さ

    せました。

     

    フルーツトマト栽培は、放任栽培・

    吊り下げ栽培・土耕栽培・シート隔離

    栽培と実生・接ぎ木の各栽培形態で行

    われていますが、11月中下旬までは草

    勢を強くする栽培を行っています。草

    勢を強くすることで、12月以降の水分

    量の減少や、午後の換気などによる草

    勢低下からなる病気に対応した栽培管

    理を行っています。

    「トマトの村」の

    「ミネラルトマト」

     

    高知県春野町の「株式会社トマトの

    村」は、栽培面積3・2ha、「桃太郎ピ

    ース」をロックウール栽培(ロックウ

    ールという、岩石から作られた繊維を

    固めて土の代わりに使用する栽培方法)

    で行っています。栽培管理の一環とし

    て、麦ばく飯はん石せき・にがり・室戸海洋深層水

    を使用しています。これらのミネラル

    成分を吸収していることから「ミネラ

    ルトマト」として、市場出荷・JA直

    販所・良心市・COOP生協にて出荷

    販売を行い、トマト料理レシピを作成

    し消費宣伝にも力を入れています。

    ↑室戸海洋深層水のミネラルをたっぷり含んだ「ミネラルトマト」。

    ↑左から、JA高知春野の橋本さん、「トマトの村」野村専務、外国人研修生、「トマトの村」野村社長。

    ↑ロックウール栽培で育てた「桃太郎ピース」。↑一つひとつ収穫したトマトを選別する。

    ↑ハウスの隣で「ミネラルトマト」を販売。トマトを使ったレシピも紹介。

    16 2016 タキイ最前線 秋種特集号