新型コロナウイルス これからのリスク マネジメントのあり方 … · RB...

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新型コロナウイルス これからのリスク マネジメントのあり方 はどうあるべきか 2020526日時点版、東京 ROLAND BERGER COVID-19 STUDY(サマリー版)

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新型コロナウイルスこれからのリスクマネジメントのあり方はどうあるべきか

2020年5月26日時点版、東京

ROLAND BERGER

COVID-19 STUDY(サマリー版)

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A. エグゼクティブ・サマリー 3

B. 協調型リスクマネジメントの必要性 6

C. 協調型リスクマネジメントの実行に向けて 22

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A. エグゼクティブ・サマリー

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4RB COVID-19 STUDY_Risk Management_Summary.pptxRB COVID-19 STUDY_Risk Management_Summary.pptx

エグゼクティブ・サマリー(1/2)

新型コロナウイルス(以下COVID-19)の感染拡大を発端にした危機的事象を背景に、企業間での連携を基にした“協調型リスクマネジメント”へと進化させ、産業としての競争力を向上

> COVID-19の流行は、足許で世界経済に深刻な打撃を与えており、近年の日本でも大規模な地震、台風・集中豪雨による水害や土砂災害等、様々な危機的事象に直面している

> また、サプライチェーンのグローバル化により海外での危機が日本企業に与えるダメージも増大し、危機的事象の発生が企業経営に影響を及ぼす頻度と深刻度が増大

> 今後のリスクマネジメントのあり方として、多様な危機的事象に対応すると共に、競合をも含む企業間での連携を基にした“協調型リスクマネジメント”へと進化させる必要

– 危機的事象の発生に対し、各社の取るべき対応策にそれほど大きな差は無く、多発化・深刻化する危機的事象に柔軟かつ広範に対応するためには、一社単独のリスクマネジメントでは限界が存在

– 調達先や納品先も含めたサプライチェーンのレジリエンスを高めるためには、共通の取引先を有する競合他社とも連携を図ることが有効であり、IoTやAIといったデジタル技術の進化も連携の容易性を向上

> “協調型リスクマネジメント”を実現するにあたっての要諦は、「業界内連合の創成」、「ニューノーマルの定着」、「デジタル技術の活用」の3つである

– 業界内連合の創成:各企業が個々に作成していた「BCP(事業継続計画)/BCM(事業継続管理)」を業界内の企業連合として一本化し、共同体制で対応できる仕組みを構築

- “協調型”に必要な機能・役割分担を定義し、加えて政府機関や業界団体をも巻き込んだ連合を形成

- また、企業連合は「自動車業界」や「製薬業界」といった、調達先や納品先が共通する業界単位が妥当

– ニューノーマルの定着:危機対応を通常の日常業務に組み込むことで、対応力を高めるとともに、日常業務の高度化も実現しようとする取り組み

- 一定の非効率は許容しつつ、定常時にテレワーク等の危機対応時の業務を段階的に導入

- 実践・運用を通じて明確になる非効率を更なるBPRによって継続的に改善し定常時の効率性を担保

A

B

協調型リスクマネジメントの必要性

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エグゼクティブ・サマリー(2/2)

協調型リスクマネジメントの実現に向けて

“協調型リスクマネジメント”の実現に向けては、段階的に取り組みをスモールスタートで拡大させる戦略的アプローチにより企業間の意識改革を促していく必要

> 自社・競合の垣根を超えた協調に際し、日本企業は予てより強い自前主義、企業間で牽制し合う構造、ボトムアップ型の意思決定スタイル等の課題が存在

> 協調が不得手な日本企業が“協調型リスクマネジメント”を実現するには、まず小規模の有志のみで組織を迅速に組成し、協調範囲はスモールスタートで段階的に拡大することが重要

– まずは業界内連合の礎となる “受け皿”を構築することで、協調意識向上と他社の巻き込みを実現

- 効果性の高い取り組みを実現しつつ、なるべく連合への参入障壁を低くすることが重要

- 政府機関や業界団体が幹事となり、企業間の位置関係をなるべくフラットにすることも必要

– 実行難易度が低く、効果の高い施策から始め、協調範囲を段階的に拡大

- サプライチェーンの各機能及びヒト・モノ・情報の資源別に協調する範囲・業務を定義

- 調達先の情報・データの共有等、足許で実行可能な施策から段階的に拡大していくことが必要

> 最後に、“協調型リスクマネジメント”への移行には、トップの強いリーダーシップや高いコミットメントによるチェンジマネジメントも同時に必要

協調型リスクマネジメントの必要性

(続き)

– デジタル技術の活用:コミュニケーションのデジタル化、クラウドの活用等、ヒト・モノ・情報/データ連携のためのデジタル技術の有効活用

- 業界内連合での情報・データ連携におけるコミュニケーション・管理を徹底的にデジタル化

- 「情報・データ」は、IoTの活用・クラウドの拡大により危機的事象が発生したときの堅牢性を担保

> COVID-19の流行により広く多くの企業が打撃を受けたからこそ、Post COVID-19 に向けては“協調型リスクマネジメント”を導入する好機であり、業界全体として新たなリスクマネジメントの仕組みを構築することができれば、危機的事象への対応力のみならず、産業としての競争力をも高めることが可能

C

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B. 協調型リスクマネジメントの必要性

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7RB COVID-19 STUDY_Risk Management_Summary.pptxRB COVID-19 STUDY_Risk Management_Summary.pptx

近年、危機的事象は多発化。Post COVID-19を見据えるに地震対策を中心とした従来型のリスクマネジメントを見直すべき状況にある

日本企業におけるリスクマネジメントの現状

Source: Roland Berger

あらゆる危機的事象に備えたリスクマネジメントの見直しが必要

危機的事象の多発・被害の増加 近年のリスクマネジメント拡充傾向

危機的事象の多発

危機事象発生による被害額増加

大規模地震の発生を受けてリスクマネジメントが拡充

ただし、日本企業の場合は地震対策が主眼

1

2

3

4

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8RB COVID-19 STUDY_Risk Management_Summary.pptxRB COVID-19 STUDY_Risk Management_Summary.pptx

日本では、昨今毎年のように大規模地震をはじめとする危機的事象に直面している

日本における2010年以降の主な危機的事象

地震 その他危機的事象

> 東日本大震災(最大震度7) > 平成23年7月新潟・福島豪雨(五十嵐川決壊)2011年

> 平成26年8月豪雨(広島土砂災害)> 御嶽山噴火(死者58人)

2014年

> 平成27年9月関東・東北豪雨(鬼怒川決壊)2015年

> 平成24年7月九州北部豪雨(矢部川決壊)2012年

> 熊本地震(最大震度7)

> 大分県中部地震(最大深度6弱)

2016年 > 平成28年台風第7, 11, 9, 10号の大雨・暴風(死者25名、住宅倒壊、農作物大被害)

2017年 > 平成29年7月九州北部豪雨(死者40名)

> 大阪北部地震(最大震度6弱)

> 北海道胆振東部地震(最大震度7)

2018年 > 平成30年7月豪雨(死者263名)

2019年 > 令和元年8月の前線に伴う大雨(九州観測史上1位)> 令和元年房総半島台風(関東での観測史上最強)> 令和元年東日本台風(死者86名)

2020年 > COVID-19によるパンデミック

Source:気象庁, 警察庁, Website

1 危機的事象の多発

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9RB COVID-19 STUDY_Risk Management_Summary.pptxRB COVID-19 STUDY_Risk Management_Summary.pptx

9 17 879

1,137

185

497

180

2,228

240

12

20

24

17

28

24

36

47

1986-’901971-’75 1981-’85 1996-’00

25

1976-’80 1991-’95 2011-’152001-’05 2006-’10

20

2016-’18

リスクマネジメントの拡充にも関わらず、日本企業の自然災害による被害額は増大傾向にある

自然災害による被害額の推移(国内)

2011年被害額[億ドル]

発生件数[件]

Source: ルーバン・カトリック大学疫学研究所災害データベース

東北大震災を受けたリスクマネジメントの拡充

2008年

日本版SOX法によるリスク管理体制整備2006年

会社法施行による危機管理体制の整備

2 被害額増加

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10RB COVID-19 STUDY_Risk Management_Summary.pptxRB COVID-19 STUDY_Risk Management_Summary.pptx

地震被害を経験するたびにリスクマネジメントへの関心が高まり、BCP(事業継続計画)の策定率が向上してきた

日本の大企業1)のBCP策定状況推移

Source: 内閣府「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」

1) 資本金10億円以上、かつ常用雇用者数101人以上の企業

19%28%

46%54%

60% 64%16%

31%

27%20%

15%17%

29%

17%

21% 15% 16%12%

36%25%

6% 12% 8% 6%

201520092007 2011 2013 2017

100%

策定済

策定中

策定予定なし

策定予定

2011年

東北大震災を受けたリスクマネジメントの拡充

2016年

熊本地震を受けたリスクマネジメントの拡充

3 リスクマネジメントの拡充

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11RB COVID-19 STUDY_Risk Management_Summary.pptxRB COVID-19 STUDY_Risk Management_Summary.pptx

ただし、日本企業が想定しているリスクというものは地震が中心で、感染症によるパンデミックを想定する企業の割合は全体で半数以下

92

59

49

48

42

38

31

30

27

19

16

14

12

11

地震

火災・爆発

洪水

新型インフルエンザ等の感染症

電力・水道インフラ途絶

津波

テロ・紛争

通信インフラ途絶

取引先倒産

情報システムの停止

物流網断絶

環境リスク

ミサイル攻撃

経営幹部喪失

Source: 内閣府_企業の事業継続及び防災に関する実態調査(平成30年6月)

1) n=1,814(総務省「経済センサス‐基礎調査」データベースに掲載されている大企業、中小企業を含む調査対象全社)

日本企業1)が想定しているリスク [%]

4 地震対策中心のリスクマネジメント

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12RB COVID-19 STUDY_Risk Management_Summary.pptxRB COVID-19 STUDY_Risk Management_Summary.pptx

危機的事象はそれぞれ特性が異なり、危機の多様化に合わせて柔軟かつ広範なリスクマネジメントの構築が必要

対象とすべき危機的事象の特性比較(例)

Source: Roland Berger

危機のタイプ毎に、リスクマネジメントが前提とすべき危機の特性は異なる

危機特性項目

発生時期予測可否

危機影響のピーク

危機の一次的影響範囲

ハードの物理的損傷

人命への直接的影響有無

数日前から予測可能

発生時

地域

発生時~拡大後

個社~グローバル

無無

予測不可

無無

予測不可

予測不可

発生時

地域

個社

予測不可

発生時

気象災害 地震 火災 パンデミック サイバー攻撃

感染拡大後

グローバル

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その危機的事象は、近年の多発化に加えて、戦略・オペレーション上の分業体制に伴って深刻化が大きく進んでいるように見受けられる

危機的事象を取り巻くこれまでの変化

近年の変化で、危機のレベルが、個社でリスクマネジメントできる範囲を超えてきている

企業活動に大きな影響を与える危機のタイプが多様化

> 従来想定されなかった規模・範囲でのパンデミック発生

> 想定外の規模での大停電発生 等

1危機の多様化

企業活動に大きな影響を与える危機の頻度が上昇

> 気候変動の影響で、大水害をもたらす台風・豪雨の頻発化

> 連続した豪雨による土砂崩れの多発等

2危機の頻度上昇

SCの機能分業が進み、周辺企業の危機が自社に伝播

> 各企業の得意分野特化による経済性追求で水平分業化

> 結果、周辺企業の危機が自社に影響

3機能分業によるリスク要因増大

オペレーション地域が多様化し、世界各地の危機が自社に影響

> 主に人件費削減を目的に、オペレーションの地域が分散

> 結果、より広範囲の危機が自社に影響

4地域分業によるリスク範囲拡大

外部リスク環境の変化 戦略オペレーション上の課題・脅威

Source: Roland Berger

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多発化・深刻化する危機的事象に対して、個社でのリスクマネジメント対応には限界があり、企業間での協調を通じた解決を目指すべき

危機の変化 リスクマネジメントへの影響・課題

> 危機の知見が限られ、独自の潜在リスク分析が不十分

> パンデミックは、各社が独自に復旧すると再流行リスクに及ぶ

解決の方向性

危機の多様化

危機の頻度上昇

1

2機能分業による危機要因増大3地域分業による危機範囲拡大4

危機の変化への対応

> 自社に閉じた対策では、頻度上昇で経済的許容値を超過

> 危機時の社内外の状況確認・調整工数が累積で増大

企業間での知見共有を通じた危機対応力の底上げ

企業間での共同対応を通じた危機時対応の全体最適化

> サプライチェーン機能の上下流の対応が不十分だと、自社の危機インパクトは依然大

> 地域間で強調したリスクマネジメント、コミュニケーションにおいて物理的距離が阻害

企業間での協調

企業間でのデータ・情報連携を通じて危機に備える業務効率化

Source: Roland Berger

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競合を含む業界全体の“協調型リスクマネジメント”を実現することで、危機的事象への対応力向上のみならず、産業の競争力向上を企図

協調型リスクマネジメントによる従来課題の解決

Source: Roland Berger

競合

顧客調達先 自社

競合

協調型リスクマネジメントのコンセプト

競合を含む業界全体で協調して、危機の備えや対応を強化> 危機は各社平等に発生するかつ、対応方法に大きな差分はないことから、リスクマネジメントを協調領域として認識

> 知見共有等の危機への備えや、危機発生時の業界全体で足並みを揃えた対応を通じて、産業全体の対応力強化

協調型リスクマネジメントによるメリット

協調型による対応力強化で、危機のダメージ・影響を低減> 自社単独では不可であった広範囲の対応の実現> 自社単独での対応よりも効果の高い施策の実行

> 業界内で知見を互いに補完することで、潜在リスク把握力を向上

> SC全体の対応力の底上げを通じて、自社への危機インパクトも低減

危機対応力の底上げ

> SC協調や自社での部門間協調を通じて状況確認・調整工数を削減

> 危機時の限られた工数で効果的な打ち手実現に貢献し、危機影響低減

危機に備えた業務効率化

> リスクの全体管理・対処を通じて全体最適としての対策を実行

> 業界全体で足並みを揃えた対応を執ることで、感染症等の再流行を防止

危機時対応の全体最適化

方向性 メリット

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また、業界全体での連携は技術面・心理面から困難であったが、近年のデジタル技術進化と先進分野での協調実績が、協調化を後押し

先進分野での協調実績デジタル技術の進化

デジタル技術の進化で実現のハードルが下がった中、先進分野での協調実績が協調化を後押し

業界全体での協調の追い風要因

デジタルインフラ普及に伴い、アプリケーション開発技術も高まり、デジタル関連システムの品質向上とコスト削減

> IoT、通信技術、クラウドシステムやAI技術の進歩を通じて、情報の収集と分析、処理能力が飛躍的に向上

> デジタルインフラの普及に伴い、アプリケーション開発技術も進み、データ連携を始めとする業務支援システム開発の品質・スピード向上とコスト削減を実現

自動車業界では、EVや自動運転等の先進分野で業界標準を構築することで、開発投資と製品コストを効率化

> EVや自動運転等の業界構造を大きく変えるような先進

分野への投資は非常に高額で、各社による個別での開発は非効率

> 業界全体でコンソーシアムを組み、業界標準を構築することで、開発や部材コストの削減による効率化を図る

Source: Roland Berger

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協調型リスクマネジメントの実現に向けては、「業界内連合の構築」、「ニューノーマルの定着」、「デジタル技術の活用」の3つが必要

目指す姿

実現可能となった背景

従来型RMでの対応が限界に近いことによる、業界協調に対する企業の心理的ハードルの低下

近年の危機多様化、多発化を受けた、企業内での危機意識の高まり

近年のデジタル技術の進化と、デジタルインフラ導入に対するコストの低下

協調型リスクマネジメントの要諦

実現手段

ニューノーマルの定着

デジタル技術の活用

危機時

定常時

C

B

自社部門間での協調

SC間での協調

競合間での協調

A 業界内連合の構造

競合

サプライヤー

自社 顧客

A B C業界内連合の構築 ニューノーマルの定着 デジタル技術の活用

RMを協調領域と捉え、業界全体で危機対応を強調して実行

定常時に危機時対応を組み込むニューノーマルを実現

最新の技術を活用することで、データ連携等の協調を支援

> 連合の必要機能を定義

> 参加企業の役割分担明確化

> 連合内に利害関係の無いコントロールタワーの設置

> 定常時における危機対応の段階的導入

> 実践・運用を踏まえた継続的BPR

> コミュニケーションのデジタル化

> 危機耐性向上のため、ハードウェアからの脱却

Source: Roland Berger

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業界内連合の持続的発展のため、協調型に必要な機能の定義、企業間での明確な役割分担と公平性の担保が重要

業界内連合構築の要諦

多様化・頻発化する危機に対する業界対応力が向上

必要機能の定義

協調型リスクマネジメント実現のための業界内連合に必要な機能を定義

> 潜在リスク把握力と危機対応力向上のため、競合を含む各社が保有する、業界特有の知見を連合内で共有

> 危機時の共同対応ガイドラインを、競合も含む業界全体で構築 等

役割分担の明確化

必要機能の具現化に向けた明確な役割分担と、貢献への還元の仕組みを構築

> 早期実現が望まれる共同対応ガイドラインの策定等、必要機能の具現化に向け明確に役割分担

> 運営コストの負担も合わせて明確化

> 負担ばかりが増加しないよう、貢献度に応じた還元の仕組みを検討

コントロールタワーの設置

利害関係の無い第三者による連合のコントロールタワーを設置

> 参加企業と利害関係のない政府機関や業界団体が連合の情報共有・対応を統括

> 危機時の公平な意思決定をサポートする役割も担当

A 業界内連合の構築

A1 A2 A3

Source: Roland Berger

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危機対応力強化のため、定常時も危機対応を実践する中で課題を洗い出し、その改善・効率化を続けることでニューノーマルを定着

ニューノーマル定着の要諦

定常時における危機対応の導入

一定の非効率は許容しつつ、定常時の危機時対応を段階的に導入

> COVID-19パンデミック後の定常時でも、積極的に危機時対応を導入

– 会議のオンライン化、承認電子化等のリモートワーク環境の整備

– VRを利用した工場の遠隔オペレーション

– 物流インフラ危機に備えた輸送モードの多様化

– オンラインの営業ツール拡充 等

> 当初は、非効率な業務プロセスとなるが、将来の改善のため許容し、実践を通じて非効率となっている課題を洗い出す

実践を踏まえた継続的BPR

実践を通じて見えた非効率の原因に対処し、危機対応を継続的に改善

> 実践を通じて洗い出された課題に対処することで、危機時対応の改善を図り、非効率性を改善

> 最終的には、定常時の業務効率に近い、もしくは当初よりも効率的な業務プロセス実現を企図

B ニューノーマルの定着

B1 B2

危機対応を通常の日常業務に組み込むことで、対応力を高めるとともに、日常業務の高度化も実現

Source: Roland Berger

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情報・データ連携や災害に強いデジタル技術の活用で、業界内連合やニューノーマルの定着をサポートし、危機へのレジリエンスを向上

デジタル技術活用の要諦

従来のアナログが基本となっていた情報・データのコミュニケーション・管理のデジタル化

> サプライヤーや顧客との在庫システム連携

> IoTを活用したタイムリーな物流の見える化 等

コミュニケーションのデジタル化 ハードウェアからの脱却

危機に強いクラウドの活用を推進することで、地震や火災時にハードが損傷した場合も回復可能な体制を構築

C デジタル技術の活用

C1 C2

デジタル技術の有効活用による危機のレジリエンスを向上

企業間のデータ連携

在庫生産計画

/在庫在庫

地震!

サプライヤー 自社 顧客

火災!

自社/本社PC 自社モバイル 外部

豪雨!

Source: Roland Berger

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業界全体として新たなリスクマネジメントの仕組みを構築することで、危機的事象への対応力向上のみならず、産業の競争力向上を企図

協調型リスクマネジメントの必要性(まとめ)

危機的事象の多発化・深刻化

> 外部リスク環境の変化

– 危機の多様化

– 危機の頻度上昇

> 戦略・オペレーション上の課題・脅威

– サプライチェーン上の機能分業によるリスク要因の増大

– オペレーションの地域分業によるリスク範囲の拡大

i

協調型リスクマネジメントの成立・実行に向けては、想定される課題・ハードルも存在(詳細後述)

リスクマネジメントの協調化とその要諦

> 協調型リスクマネジメントへの進化の必要性

– 危機対応自体は各社大きな差が無く、多発化・深刻化する危機的事象に柔軟かつ広範に対応するには一社単独では限界が存在

– 調達先や納品先も含めたサプライチェーンのレジリエンス向上には、共通の取引先を有する競合他社との連携が有効

– 昨今のデジタル技術の進化や先進分野での協調実績は、他社との連携によるリスクマネジメントの技術的・心理的ハードルを低下

> 協調型リスクマネジメント実現のための要諦

– 「業界内連合の創成」:BCP/BCMを業界内で一本化し、共同での推進体制を構築

– 「ニューノーマルの定着」:危機対応を日常業務に組み込むことによる、対応力向上及び日常業務の高度化

– 「デジタル技術の活用」:業界内連合・他社との連携強化のためのクラウド・IoT等のデジタル技術の有効活用

ii

Source: Roland Berger

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C. 協調型リスクマネジメントの実行に向けて

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23RB COVID-19 STUDY_Risk Management_Summary.pptxRB COVID-19 STUDY_Risk Management_Summary.pptx

協調型リスクマネジメントの実現に向けて、他社との協調を不得手とする日本企業ならではの特性を克服することが求められる

協調が不得手

強い自前主義

企業間で牽制し合う構造

ボトムアップ型の意思決定

協調型実現に向けた日本企業固有の課題

I 強い自前主義

> 競争力の源泉として、自社内でのBCP/BCMの検討・運用に強く拘る傾向

> 競争・協調領域の基準が企業間で異なる

I

企業間で牽制し合う構造

> 協調時に自社の利害に強く拘るため、情報開示や他社への支援には消極的

> 誰かが先陣を切るまで互いに牽制し合う

II

ボトムアップ型の意思決定

> 現場からの提案に基づきトップが意思決定するため、部分最適に陥る可能性

> 協調時も自社のリスクを顧みず、業界全体のメリットを追求する意思決定は困難

III

III

II

Source: Roland Berger

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協調が不得手な日本企業が協調型を実現するには、まず小規模での組織を迅速に構築し、協調範囲を段階的に拡大することが重要

日本企業固有の課題への解決策

まずは“受け皿”を構築することで、協調意識向上と他社の巻き込みを実現

> 合意の数社で、まずはモメンタムを優先して協調の“受け皿”となる連合を迅速に構築

> “受け皿”を作ることで、各社の協調に対する意識が高まる他、取組に魅力を感じた他社が段階的に加入

1 迅速な小規模連合の創成

実行難易度が低く、効果の高い施策から始め、協調範囲を段階的に拡大

> 足許で実行可能な、効果大の施策から着実に実行し、実績を積み上げ

> 実績積み上げを通じ、協調に関する各社の意思決定や調整がスムーズ化し、長期的な優先施策が実行可能

2 協調範囲の段階的拡大

迅速な連合創成を通じて協調への意識を高めつつ、施策の積み重ねを通じて協調実行性を高めることで、日本企業固有の課題である“強い自前主義”、“牽制し合う構造”、“遅い意思決定”に対応

Source: Roland Berger

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連合への参加企業を段階的に増やしていくには、効果性の高い取り組みはもちろん、参入障壁を下げることと、組織の公平性が重要

a

c b

効果の高い取り組み

組織の公平性

低い参入障壁

企業数の増加

a 効果性の高い取り組み

企業単独での取り組みよりも、高い効果を生む、若しくは少ない必要投資での効果が見込まれる取り組みを実施

b 低い参入障壁

協調を通じた取り組みによる成果の確証がない中でも企業の参画を促すため、参入障壁となる会員費や要求責務等を抑制

c 組織の公平性

業界団体や第三者企業を主催者とすることで、一企業の利害が優先されることのない公平性を確保

連合への企業数増加の必要要件

1 小規模連合の創成

Source: Roland Berger

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企画管理

統括情報

> 全社戦略

> ITシステム

> BCP/BCM等

企画人員

> 全社管理

> 部門管理

NA

開発 調達

原材料情報

> 調達先の稼働状況

> 原料在庫・不足予測

生産

稼働情報

> 生産量

> 生産予定

物流

配送情報

> 起用業者

> 出荷予定

販売

製品顧客情報

> 製品在庫

> 販売顧客

> 需要予測

調達人員

> 原料調達

> 加工調達

工場作業員

> 設備担当

> 生産担当

配送人員

> 手配担当

> 運送担当

営業人員

> 営業企画

> 顧客管理

原材料

> 原料

> 加工材料

生産設備

> 自社設備

> 設備部品

> 委託先設備

物流アセット

> 倉庫

> トラック

製品

> 主製品

> アフターパーツ

協調対象外

協調範囲は、サプライチェーンの各機能及びヒト・モノ・情報の資源別に協調する範囲・業務を定義・特定し、優先順位を検討

協調対象範囲の全体像

情報

ヒト

モノ

協調範囲(資源種別)

2 協調範囲の段階的拡大

Source: Roland Berger

例示的

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協調範囲は、実行難易度が低いものから徐々に実行し、実行力が高まった後に、より効果・難易度の高い施策へと拡大していくべき

協調範囲の段階的拡大アプローチ

2 協調範囲の段階的拡大

Source: Roland Berger

協調範囲(資源種別)

RM知見の共有> ベストプラクティス集

> 関連勉強会 等

調達情報の共有> 原材料在庫情報

> 不足部品予測 等

生産情報の共有> 足許の稼働情報

> 製品欠品予測 等

知見共有のための人材派遣> 地震からの復旧アドバイス 等

調達支援のための人材融通> 原材料相互供給のため調達人材起用等

生産支援のための工員融通

> 代替生産のため工場人材融通 等

13 Point Text: Level 0

> Level 1

原材料の相互供給

> 協調企業の調達支援のため、原材料を融通 等

製品代替生産・物流

> 自社設備を使用して代替生産・代替供給

> 自社トラック融通 等

NA

危機の備え・復旧に関わる情報共有

外部資源に関わる相互支援(調達等)

内部資源に関わる相互支援(生産等)

実行難易度:低 高

情報

ヒト

モノ

STEP 2 STEP 3STEP 1

段階的拡大の考え方

まずは企業間で協調することを優先し、段階的に協調範囲を拡大

> 協調が不得手な日本企業は、最初から大掛かりな協調は困難

> 足許で実行可能な施策から取り組み、協調経験と実績の積上げを優先

> 一定の協調が行われた後、難易度高だが効果大の施策に取り組む

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協調型リスクマネジメントへの移行には、トップの強いリーダーシップや高いコミットメントによるチェンジマネジメントも同時に必要

取り組み推進の要諦

BCPのような、クリティカルではあるものの、現場が緊急性を感じにくい取り組みの推進には、トップのリーダーシップ・コミットメントによる支援と、行動の明確化・動機付けが重要

企業事例

半導体製造装置メーカーのディスコは、トップの強いコミットメントを起点に、様々な仕掛けでBCP活動を浸透・促進

> BCM認証を日本で最初に取得し、従業員教育を徹底するなど、高いコミットメントを示す

要諦 具体的取組

トップのコミットメント

取組に対する安心感を醸成

具体的行動への落とし込み

何が課題で何をすべきか個人レベルで明確化

組織的施策による動機付け

動機付けを通じて、取組を浸透・促進

危機感を活用した動機づけ

危機感を活かし、自発的取組を促進

Key point

危機感を活かすという点では、東北大震災後にBCP整備が進んだように、COVID-19危機後の今こそ変革の好機

トップのコミットメント

具体的行動への落とし込み

組織的施策による動機づけ

危機感を活用した動機づけ

Source: リスク対策.com, Roland Berger

> 部署別に災害発生のシュミレーション訓練を実施し、各担当が安全確保や事業継続のため何をすべきか理解促進

> BCP活動を賞与にも連動した部署別のポイント制で管理

> 机の整理や新たな防災取組を表彰

> 「会社が被災した日」がテーマの小説コンテストを実施するなど、リアルな危機感も活かして、取組を促進

チェンジマネジメントの必要性

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連絡先

株式会社ローランド・ベルガー

パートナー

貝瀬 斉

[email protected]

パートナー

小野塚 征志

[email protected]

執筆メンバー

貝瀬 斉

小野塚 征志

呉 昌志

高増 哲郎

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