サステナビリティ・マネジメント -...

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サステナビリティ・マネジメント 日立は、サステナビリティを事業戦略の中核に組み入れた「サステナブル経営」を実践しており、 年度を最終年度とする「 中期経営計画」においても、社会イノベーション事業のグローバ ルリーダーとして持続可能な世界を実現することを目標に掲げました。その実現に向け「 期経営計画」では、「 社会価値」「 環境価値」「 経済価値」という つの価値を同時に向上させ、人々の の向上、顧客企業の価値の向上を図るため、「 「エネルギー」 「 インダストリー 」 「モ ビリティ」「ライフ」の つの事業領域を定めました。また、サイバーフィジカルシステムとしてデジ タルイノベ ー ションを加速するソリュー ション を提供し、デジタルとリアルの空間を連携さ せ、世界中のパートナーとの協創のもと社会イノベーション事業を拡大していきます。 日立は、「 中期経営計画」に取り組み、サステナビリティと事業の融合をさらに進めていく ことで、 に示された社会課題の解決に貢献していきます。 中期経営計画」とサステナビリティ 社会イノベーション事業▶ 中期経営計画▶ つのソリューションによる つの価値向上 セクターの社会・環境価値の向上に貢献するソリューション セクター エネルギー モビリティ インダストリー ライフ インドにおいて決済サービスを 億人超に拡大するこ とで、同国の経済発展に貢献 創出する社会・環境価値 世界の の変電所をマネジメントし、約 億人に 安定したエネルギーを提供 年間延べ 億人の人々に安全・安心かつ快適な環 境に配慮した鉄道サービスを提供 上下水道システムの提供により、 日に延べ 万人 に安全・安心な水環境を提供 血液検査などの体外診断を年間 億検査実施し、 人々の 向上に貢献 貢献する

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  • サステナビリティ・マネジメント

    Contents Management SocialIntroduction Environment Governance Assurance Hitachi Sustainability Report 2020 09

    日立は、サステナビリティを事業戦略の中核に組み入れた「サステナブル経営」を実践しており、2021年度を最終年度とする「2021中期経営計画」においても、社会イノベーション事業のグローバルリーダーとして持続可能な世界を実現することを目標に掲げました。その実現に向け「2021中期経営計画」では、「社会価値」「環境価値」「経済価値」という3つの価値を同時に向上させ、人々のQuality of Lifeの向上、顧客企業の価値の向上を図るため、「 IT」「エネルギー」「インダストリー」「モ

    ビリティ」「ライフ」の5つの事業領域を定めました。また、サイバーフィジカルシステムとしてデジタルイノベーションを加速するソリューションLumadaを提供し、デジタルとリアルの空間を連携させ、世界中のパートナーとの協創のもと社会イノベーション事業を拡大していきます。日立は、「2021中期経営計画」に取り組み、サステナビリティと事業の融合をさらに進めていく

    ことで、Society 5.0 やSDGsに示された社会課題の解決に貢献していきます。

    「2021中期経営計画」とサステナビリティ

    社会イノベーション事業▶https://social-innovation.hitachi/ja-jp/

    2021中期経営計画▶http://www.hitachi.co.jp/IR/corporate/strategy/index.html

    ■ 5つのソリューションによる3つの価値向上 ■ 5セクターの社会・環境価値の向上に貢献するソリューション

    IT

    セクター

    エネルギー

    モビリティ

    インダストリー

    ライフ

    インドにおいて決済サービスを4億人超に拡大することで、同国の経済発展に貢献

    創出する社会・環境価値

    世界の25%の変電所をマネジメントし、約18億人に安定したエネルギーを提供

    年間延べ185億人の人々に安全・安心かつ快適な環境に配慮した鉄道サービスを提供

    上下水道システムの提供により、1日に延べ7,000万人に安全・安心な水環境を提供

    血液検査などの体外診断を年間200億検査実施し、人々のQoL向上に貢献

    貢献するSDGs

    http://www.hitachi.co.jp/IR/corporate/strategy/index.html

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    日立製作所は、執行役社長兼CEO東原敏昭をはじめとする経営会議のメンバーに加え、各ビジネスユニット(BU)のCEOをメンバーとする「サステナビリティ戦略会議」において、サステナビリティに関する重要な方針や施策について審議・決定するとともに、進捗や成果を共有し、さらなる改善や新たな取り組みにつなげています。同会議のもとに設置された各BUのサステナビリティ戦略推進担当者(事業推進部門長クラス)か

    らなる「サステナビリティ推進委員会」は、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視した長期的な企業戦略を策定して、SDGsの目標達成への貢献も含めたサステナビリティに関する具体的な施策を推進します。

    CSR施策の検討・審議については、BUやグループ会社のCSR・社会貢献担当者をメンバーとする「CSR責任者会議」を定期的に開催しています。また米州、欧州、中国、東南アジア、インド、オーストラリアの各地域統括会社のCSR担当者とは、グローバルCSRミーティングや海外地域別CSR連絡会を定期的に開催しています。環境長期目標達成の具体的施策の審議・実行については、上述のサステナビリティ推進委員会と

    各BUやグループ会社の環境推進担当者をメンバーとする「エコマネジメント委員会」が連携して推進しています。日本国外の地域統括会社の環境施策担当者とは、グローバル環境ミーティングや海外地域別環境連絡会を定期的に開催して方向性を共有しながら環境施策を推進しています。また、サステナビリティ推進本部は、地域統括会社とも協力し、地域ごとにステークホルダーとの

    ダイアログを定期的に実施しています。これらのダイアログを通じて、世界の社会課題をより早く広く深く把握し、経営課題として取り入れるとともに、日立がグローバル社会の中で社会的責任を果たせているかを確認し、継続的な改善を通じて、サステナブルな経営と社会の実現に努めています。なお、指名委員会等設置会社である日立では、監査委員会が年1回、サステナビリティ関連業務

    について業務監査を行っており、サステナビリティに関する重要事項についても担当執行役から報告しています。

    ステークホルダーダイアログ▶103-3102-46102-32102-31102-26102-21 102-34102-33102-30102-27102-20102-19

    サステナビリティ戦略会議

    サステナビリティ推進委員会

    事務局

    海外拠点担当

    エコマネジメント委員会

    ● 議長:執行役社長兼CEO● メンバー:経営会議メンバー、ビジネスユニット(BU)のCEO、本社部門長● 内容:経営・事業責任レベルでサステナビリティ戦略を議論・決定

    ● メンバー:BU・主要グループ会社の事業推進部門長クラス

    ● 内容:サステナビリティ戦略の具体的施策の審議・実行

    サステナビリティ推進本部

    ● メンバー:BU・主要グループ会社の環境推進部門長クラス

    ● 内容:サステナビリティ戦略における、環境長期目標達成の具体的施策の審議・実行

    ■ サステナビリティ戦略推進体制

    サステナビリティ戦略推進体制

    ビジネスユニットA

    ビジネスユニットC

    グループ会社B

    ビジネスユニットB

    グループ会社A

    グループ会社C

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    サステナビリティ戦略会議の開催 日立は、「サステナビリティ戦略会議」を年2回開催し、サステナビリティに関する重要な方針や施

    策について審議・決定するとともに、進捗や成果を共有し、さらなる改善や新たな取り組みにつなげています。

    2019年度は、4月および12月にサステナビリティ戦略会議を開催しました。4月の会議では、5月の「2021中期経営計画」発表に向けて、社会価値・環境価値・経済価値を重視する経営を進めることを確認し、各事業が創出する社会価値・環境価値について定量的・定性的な評価に加え、環境価値の拡大に向けた取り組みについて具体的に審議しました。また、12月の会議では、社会価値・環境価値・経済価値を具現化するために、社会・環境インパク

    トの見える化・評価手法および、気候変動への対応を含む環境にかかわる重要な方針や施策について審議・決定しました。

    ESGに関する重要 KPIの設定 日立はサステナビリティの推進にあたり、ESGに関する重要課題についてKPIを設定し、その達成

    に向けた活動を推進しています。2020年5月には、2030年度までに自社の事業所(ファクトリー・オフィス)におけるカーボン

    ニュートラルをめざすことを新たに表明しました。

    ESG説明会の開催 日立は、2019年9月に初めてESG説明会を開催し、日立の環境戦略、人財戦略、ガバナンスに関

    する取り組みを機関投資家・アナリストおよびメディアに対して説明しました。説明会冒頭では、執行役社長兼CEO東原敏昭が、2021中期経営計画で掲げる社会価値・環境価値・経済価値の3つの価値向上について説明し、全社の方向性を示しました。環境戦略および人財戦略についてはそれぞれの管掌役員が、ガバナンスについては社外取締役が説明を行いました。

    2021年度

    2021年度

    2021年度

    2021年度

    2021年度

    2020年度

    2020年度

    2020年度

    2021年度

    2021年度

    20%超削減

    20%超削減

    37,000人

    350人

    3,000人

    10%

    10%

    800人(2012年度比2倍)

    26%超改善

    12%超改善

    2030年度

    2030年度

    2050年度

    2050年度

    50%

    100%削減(カーボンニュートラル)

    50%

    50%

    2050年度

    2050年度

    80%

    (100%削減を継続 )

    製品・サービス CO2排出量原単位削減率 [2010年度比 ]

    デジタル人財の人数

    AIトップクラス人財

    データサイエンティスト

    役員層における外国人比率

    役員層における女性比率

    日本国内の女性管理職数

    水使用量原単位改善率(日立グループ内)[2010年度比 ]

    事業所(ファクトリー・オフィス)CO2排出量総量削減率[2010年度比 ]

    廃棄物有価物発生量原単位改善率(日立グループ内)[2010年度比 ]

    KPI

    19% P.25

    30,000人 P.81

    306人 P.72

    約1,000人 P.81

    8.8% P.84

    5.0% P.84

    700人 P.84

    26% P.25

    17% P.25

    14% P.25

    2019年度の実績 目標値

    参照ページ

    環境

    社会

    ■ ESGの重要課題に関するKPI 「事業活動で貢献する目標」における社会インパクト特定▶

    ESG説明会▶https://www.hitachi.co.jp/IR/library/presentation/webcast/190924.html

    https://www.hitachi.co.jp/IR/library/presentation/webcast/190924.html

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    SDGsへの貢献

    SDGsと社会イノベーション事業 考え方

    102-11

    SDGsはグローバルな社会・環境課題を解決することで持続可能な社会を実現し、人々のQuality of Lifeの向上をめざすものです。日立がこれまで推進してきた社会イノベーション事業は、まさにSDGsの達成に貢献するものであり、日立の持続的成長の源泉であると考えています。このため、日立は社会イノベーション事業における革新的なソリューションや製品の提供を通じて、新

    たな社会・環境・経済価値を創出することを経営戦略に据えるとともに、日立の事業が社会・環境にもたらすネガティブインパクトを低減し、社会・環境の変化による事業へのリスクを把握し、それに対する強靭性の向上に努めます。

    日立の SDGs優先課題 方針

    日立は、執行役社長兼CEO 東原敏昭を議長とする「サステナビリティ戦略会議」において、SDGsの17目標とそれぞれにかかわる事業が及ぼすリスクと機会について検討しました。その後、日立が主要な事業を通じてSDGsの達成に特に大きく貢献できる目標を5つ、企業活動全体を通じて貢献する目標として6つ特定しました。後者の企業活動全体で貢献すべき6つの目標は日立のすべての事業・経営戦略に関係しており、企業としてのサステナビリティに影響を与えるものであると考えます。しかしながら、多岐にわたる事業分野をもつ日立は、上記に特定した11の目標以外にも、SDGs

    の達成に幅広く貢献できると考えています。また、日立はSDGsのそれぞれの目標は相互にかかわっていると理解しており、SDGsの17の目標すべての達成に向けて、直接的、間接的に貢献していきます。

    日立は責任ある企業活動と社会イノベーション事業を通じて、 社会が直面する課題に率先して応え、SDGsの達成に貢献します。

    日立はSDGsのすべての目標の達成に対して

    直接的もしくは間接的に貢献

    企業活動全体で貢献する目標

    事業戦略で貢献する目標

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    2020年度~ 2019年度 2018年度 2017年度

    Phase4

    社会課題起点での事業創生の追求

    SDGs達成へのロードマップ 目標 活動・実績

    SDGsが示す持続可能な社会の実現は、日立の持続的成長にもつながります。日立は直接的なお客さまである企業や消費者だけでなく、広くその先にある社会に対しても価値を提供していると考えています。それが、社会イノベーション事業の本質であり、日立が提供する製品もサービスもすべて社会のサステナビリティと密接にかかわっています。日立は、SDGs達成への取り組みを通じて、サステナビリティのリーダー企業となることをめざしています。

    2019年度は、「2021中期経営計画」で掲げた目標の中でもSDGsとかかわりの深い社会価値・環境価値の創出をお客さまや社会により具体的に訴求できるよう、事業による社会・環境インパクトを評価する仕組みづくりの検討を始めました。「2021中期経営計画」で示された主要事業を例に、日立全体で活用できる社会価値・環境価値のインパクトを評価するメソドロジーを開発し、インパクト評価の仕組みの確立を進めています。このメソドロジー構築にあたっては、日立グループのコーポレート部門からワーキンググループを組織し、議論を積み重ね、方針を決定しました。さらにインパクト評価に先進的に取り組んでいる欧州などのステークホルダーと意見交換を行いつつ、各ビジネスユニット(BU)、グループ会社とも議論を重ねて、ガイドラインを作成しました。各BUは、事業の社会価値・環境価値のインパクトについて、このガイドラインをベースに評価

    を進め、2020年度の事業計画を検討しました。今後、新規事業の検討、既存事業のインパクト評価にも適用できるように、改訂を進める予定です。このメソドロジーを用いて日立の事業がもたらす正と負の社会・環境インパクトを把握し、よ

    りサステナブルな事業をお客さまに提案することを通じて、「2021中期経営計画」で示した3つの価値を具現化していきます。

    2019年度の取り組み

    各BU・主要グループ会社、コーポレート関連部署、グローバル各拠点(地域戦略)と連携しながら進める

    経営者サステナビリティメッセージ、シンポジウム、ワークショップ、ニュースレターなどで理解を深める

    主に各BU・主要グループ会社の事業企画部門と連携し「事業機会」「リスク」の両面でかかわりを整理

    「持続可能な社会」の実現が「日立の持続的成長」を実現するものであり、SDGs・サステナビリティの実現(社会課題の解決)に、当社の次のビジネス・成長の源泉があるとの考えを「2021中期経営計画」の事業戦略に反映

    社会価値・環境価値・経済価値を重視した経営を推進

    「2021中期経営計画」における重点領域5セクターの事業が創出する非財務価値のインパクトを評価するための仕組みを検討

    新規事業の検討、既存事業のインパクト評価への適用拡大

    サステナビリティ醸成に向け営業部門との協力体制の構築を推進

    Phase3

    社会課題起点での新たな事業の可能性追求

    Phase3

    経営戦略へのサステナビリティ視点の反映

    Phase1、2

    サステナビリティ・SDGsの理解、主要事業とSDGsのかかわりを整理

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    「事業活動で貢献する目標」における社会インパクト特定

    活動・実績

    102-47 103-1

    日立は、2019年度に「2021 中期経営計画」が示す社会価値・環境価値・経済価値を具現化するため、各BU、主要グループ会社に対して、社会・環境インパクトの見える化を推進しました。具体的には、各BUおよびグループ会社における主要事業を選択した上で、あらかじめ用意した

    「社会・環境インパクトの項目一覧」から関連する項目を選択し、ポジティブおよびネガティブのインパクトの整理を行いました。さらに特定したインパクトに関連するステークホルダーを特定し、ロジックモデルにまとめました。これにより、日立もしくはお客さまがどのようなインパクトを社会に与えているのかを見える化し、

    ポジティブなインパクトを伸ばし、ネガティブなインパクトを最小化する活動を進めることが可能になります。

    2020年度は、このロジックモデルで見える化したインパクトの定性・定量の評価の適用を拡大し、社会価値・環境価値の具現化を進めていきます。

    達成に貢献するSDGs

    To Society社会へのインパクト

    To Customers顧客の顧客などステークホルダーへのインパクト

    To Business直接顧客へのインパクト

    主要事業名称

    インドなど新興国における非現金決済サービス

    事業概要

    ● インド:ATM・POS決済サービス。大手国営銀行SBIとのJV設立によるアクワイアリング事業およびデータ連携事業

    1.4 2030年までに、貧困層および脆弱層をはじめ、すべての男性および女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地およびその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、 天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する

    新興国における非現金決済サービスの提供● アジア新興国における非現金決済サービスを提供インド:ATMおよびPOSを介した決済サービスを提供。ATM41,000台、CRM16,000台、POS110万台を介した決済サービス提供により、人口13億人の経済発展に貢献

    多様な金融サービスインフラの拡大による国民のQuality of Lifeの向上● キャッシュレス拡大を通じて新興国で社会問題である窃盗・ひったくり・強盗など犯罪を抑止

    ● 決済インフラを拡大し日常的な決済取引を電子化することを通じて、効率的かつスピーディな経済活動を促進。国民の日常生活の改善を通じてQuality of Lifeを向上

    決済とデータの融合による新たな事業創生● 決済による金流と商取引による商流におけるデータ融合により、個人から銀行を結ぶバリューチェーンのデータ分析を通じて新たな事業を創生。サービスの付加価値として既存事業を強化

    創出する価値

    ■ 社会インパクト特定の例(インドなど新興国における非現金決済サービス)

    <インパクトを創出する事業>