サウジアラビア経済概況第2 四半期 195,822 252,617 151,819 100,798 第3 四半期...

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1 サウジアラビア経済概況 一般財団法人 中東協力センター 1. 11 月の経済概況(2021 年 1 月 18 日 更新) (1)生産動向 (サウジアラビア総合統計庁が月次で公表してきた鉱工業生産指数(IPI:Industrial Production Index)は 2020 年 7 月以降の統計が公表されていないため、今回の経済概況報 告では割愛する。) (2)物価動向と消費関連指標 12 月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比+5.3%の上昇であり、7 月以降ほぼ 同水準(104)で推移している。この要因としては、付加価値税(VAT)が 7 月よ り 5%から 15%へ変更されたことが挙げられる。食料品・飲料品(+12.7%)及び 交通(+6.9%)分野における上昇が総合指数の上昇の主な要因となっている。 【図 2】 12 月の卸売物価指数(WPI)は、前年同月比+5.2%の上昇となった。原因として、 農産物及び漁業生産物(+14.8%)の価格上昇と7月の VAT の上昇が挙げられる。 一方で、石油製品価格が前年同月比▲20.1%と大幅に下落した。【図3】 11 月の消費動向を POS 決済データ(金額ベース)で見ると、前年同月比では+ 24.5%という大幅な増加が続いており、11 月は前月比でも+1.8%の増加となった。 【図 4】 分野別に見ると、構成比の大きい飲料・食料(53.7 億リヤル)は前年同月比+57. 7%増、レストラン&カフェ(44.3 億リヤル)が+55.6%増等となっているほか、通 信(3億リヤル)は構成比は小さいものの+94.9%と 2倍近い伸びとなった。他方、 ホテル、教育等は前年同月比減少となっている。

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サウジアラビア経済概況

一般財団法人 中東協力センター

1. 11月の経済概況(2021年 1月 18日 更新)

(1)生産動向

(サウジアラビア総合統計庁が月次で公表してきた鉱工業生産指数(IPI:Industrial

Production Index)は 2020 年 7月以降の統計が公表されていないため、今回の経済概況報

告では割愛する。)

(2)物価動向と消費関連指標

① 12月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比+5.3%の上昇であり、7月以降ほぼ

同水準(104)で推移している。この要因としては、付加価値税(VAT)が 7 月よ

り 5%から 15%へ変更されたことが挙げられる。食料品・飲料品(+12.7%)及び

交通(+6.9%)分野における上昇が総合指数の上昇の主な要因となっている。

【図 2】

② 12月の卸売物価指数(WPI)は、前年同月比+5.2%の上昇となった。原因として、

農産物及び漁業生産物(+14.8%)の価格上昇と7月の VAT の上昇が挙げられる。

一方で、石油製品価格が前年同月比▲20.1%と大幅に下落した。【図 3】

③ 11 月の消費動向を POS 決済データ(金額ベース)で見ると、前年同月比では+

24.5%という大幅な増加が続いており、11 月は前月比でも+1.8%の増加となった。

【図 4】

分野別に見ると、構成比の大きい飲料・食料(53.7 億リヤル)は前年同月比+57.

7%増、レストラン&カフェ(44.3 億リヤル)が+55.6%増等となっているほか、通

信(3億リヤル)は構成比は小さいものの+94.9%と 2倍近い伸びとなった。他方、

ホテル、教育等は前年同月比減少となっている。

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(2018 年=100)

(2014 年=100)

【図2】消費者物価指数(CPI)推移

出典: サウジアラビア総合統計庁

【図3】卸売物価指数(WPI)推移

出典:サウジアラビア総合統計庁

94

96

98

100

102

104

106

1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月

2018年 2019年 2020年

110

112

114

116

118

120

122

124

126

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130

1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月

2018年 2019年 2020年

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(単位:1,000SAR*)

(単位:%)

【図 4】POS(Point of Sales)月次売上データ(金額ベース)推移

出典:サウジアラビア通貨庁

*本報告書ではサウジアラビア通貨庁(SAMA)が公表する統計を引用しており、通貨に関しても、

サウジアラビア通貨(サウジリヤル:SAR)をそのまま引用している。なお、サウジアラビア政府は

自国通貨をドルに連動(ペッグ)させる為替相場管理制度を採用しており、公式為替レートは

1USD=3.75SAR となっている。

(3)金融関連指標の動き

① 銀行間金利は 2019 年より低下傾向が継続している。米国が量的緩和からの正常化

を模索していた 2018 年までは、ドル・ペッグ制を取るサウジアラビアも政策金利

を上げざるを得ない環境にあったが、2019 年に入ってからのアメリカ合衆国連邦

準備銀行(FED)の方向転換と、昨年来の新型コロナウイルス感染症蔓延下での

「超」金融緩和によって、サウジアラビアも緩和的な金融環境にある。【表 3】

② サウジアラビアの外貨準備高は、2020 年 3、4月にかけて相当減少しているが、こ

れは主として、公共投資基金(Public Investment Fund)による今後の投資計画の

ため、総額 1,500 億 SARを準備資産から PIF に移し替えるという決定を反映した

ものであり、4 月以降は 1 兆 6300 億リヤルの水準(11 月は暫定で 1兆 6684 億リ

ヤル)を維持している。【表 4】

【表 3】銀行間取引金利(3M SAIBOR)

2019 年 2020 年

1 月 2.9709 2.2710

2 月 2.9403 2.1397

3 月 2.8917 1.3019

4 月 2.8576 1.2281

0

5,000,000

10,000,000

15,000,000

20,000,000

25,000,000

30,000,000

35,000,000

40,000,000

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

2019年 2020年

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5 月 2.8507 1.1293

6 月 2.7564 1.0264

7 月 2.6802 0.9557

8 月 2.4790 0.9106

9 月 2.3822 0.8817

10月 2.3053 0.8560

11月 2.2303 0.8378

12月 2.2375

出典:サウジアラビア通貨庁

※「銀行間取引金利(Interbank Offered Rates)」は、各国の金融市場において銀行同士が日々、短期

資金(1 週間~12 か月)を融通し合うコール市場の基準金利で、ローン・債券・デリバティブなど多

くの金融商品の参照金利や、中央銀行の金利政策における公開市場操作の指標ともなる。旧 LIBOR

(ロンドン)、FF 金利(米国)、TIBOR(東京)、EURIBOR(欧州)が代表的で、サウジアラビアで

は SAIBOR(セイボー)となる。

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(単位:100 万 SAR)

【表 4】月次外貨準備高

2019 年 5 月 1,898,016

6 月 1,884,772

7 月 1,846,015

8 月 1,863,129

9 月 1,835,775

10月 1,792,847

11月 1,834,327

12月 1,830,919

2020 年 1 月 1,839,602

2 月 1,822,759

3 月 1,733,373

4 月 1,638,811

5 月 1,641,657

6 月 1,634,270

7 月 1,635,810

8 月 1,655,526

9 月 1,633,987

10月 1,630,191

11月 1,668,401*

出典:サウジアラビア通貨庁 *暫定値

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2. 2020年第 3四半期(7月~9月)のサウジアラビア経済

① 第 3 四半期の名目 GDP は前年同期比▲10.4%のマイナス成長となったが、第 2 四

半期の▲23.8%に比べれば大幅に改善した。特に原油・天然ガスでは、前四半期の前

年同期比▲60.5%から同▲30.6%に変化した。また、前四半期ではほとんどの分野で

付加価値の減少が見られたが、今回は農業・林業・漁業や建設業、不動産の分野でプ

ラス成長が記録された。【表 5】

② 実質ベースでは、第 3四半期の GDPは前年同期比+1.8%を記録した。【表 5】

③ 支出ベースで名目 GDP 構成要素の動きを見ると、政府および民間の最終支出は前

年同期比で増加しているが、他の項目は減少しているため、全体としては約▲10%強

の前年同期比減少となった。【表 6】

④ 貿易収支(物品及びサービス)の名目 GDPへの寄与度に関しては、新型コロナウイ

ルス感染拡大が始まる前の 2019 年第 2 四半期からマイナスの寄与度を示していた

が、2020 年第 2四半期の寄与度は大幅に下がり▲13.86%となった。第 3 四半期はそ

れより大幅に改善したものの、依然として▲4.4%と名目 GDP を引き下げる要因と

なっている。【表 7】

【表 5】名目GDP のセクター別付加価値額と変化率

セクター別 名目 GDP

(100 万 SAR)

名目成長率(%) 実質成長率(%)

1. 農業・林業・漁業 17,144 2.6 11.5

2. 鉱業・採石業 145,622 -30.1 -3.4

a)原油・天然ガス 142,081 -30.6 -3.5

b)その他 3,541 1.2 3.7

3. 工業 81,768 -10.4 0.8

a)石油精製 18,260 -24.7 -5.4

b)その他 63,508 -5.3 3.2

4. 電気・ガス・水 18,449 -1.6 2.1

5. 建設業 44,645 5.6 5.6

6. 卸売・小売業・レストラン・ホテル 72,390 -5.7 19.7

7. 輸送・保管・通信 41,454 -6.9 8.7

8. 金融・保険・不動産・サービス業 90,794 0.3 0.6

a)不動産 51,306 1.5 0.7

b)その他 39,489 -1.2 0.4

9. コミュニティー・社会サービス 15,738 -4.3 11.5

10. 帰属銀行手数料 6,336 6.3 0.3

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(寄与度を除く単位:100万 SAR)

小計 521,668 -13.0 2.0

政府サービス 140,598 0.1 0.5

輸入関税を除く合計 662,267 -10.5 1.8

輸入関税 5,831 9.6 3.3

国内総生産(GDP) 668,098 -10.4 1.8

出典:サウジアラビア総合統計庁

【表 6】支出ベースの名目 GDP(国内総支出)の内訳 (単位:100 万 SAR)

支 出 項 目 金 額 金額(前年 Q3)

1. 政府最終消費支出 179,780 173,464

2. 民間最終消費支出 295,709 291,597

3. 在庫変動 25,984 65,258

4. 総資本形成 140,587 156,173

5. 商品・サービス輸出 167,009 262,079

a)商品輸出 161,837 235,887

b)サービス輸出 5,172 26,192

6. 商品・サービス輸入 140,972 203,201

a)商品輸入 117,194 145,451

b)サービス輸入 23,778 57,750

国内総生産(支出ベース) 668,098 745,369

出典:サウジアラビア総合統計庁

【表 7】対名目 GDP貿易収支(物品&サービス)寄与度

暦年 四半期別 輸出 輸入 貿易収支 名目

GDP

前年同期比

寄与度(%)

2018 年 第 1四半期 262,206 192,911 69,295 699,191 -

第 2四半期 299,490 195,438 104,052 738,851 -

第 3四半期 312,014 186,197 125,817 745,062 -

第 4四半期 307,203 211,413 95,790 766,354 -

2019 年 第 1四半期 270,641 195,115 75,527 718,543 0.89

第 2四半期 274,617 209,659 64,958 740,032 -5.29

第 3四半期 262,079 203,201 58,878 745,369 -8.98

第 4四半期 264,638 213,053 51,584 769,681 -5.77

2020 年 第 1四半期 216,103 169,760 46,343 695,570 -4.06

第 2四半期 121,357 158,991 -37,634 564,211 -13.86

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第 3四半期 167,009 140,972 -26,037 668,098 -4.40

出典:サウジアラビア総合統計庁

※2018 年第 1 四半期~2019 年第 4 四半期の数値に関しては、2020 年 10 月発表の数値に更新。

(注)寄与度の計算は以下の通り。

寄与度(%) =各構成要素データの増減(今回値ー前回値)

全体データの前回値× 100

【表 8】四半期別石油輸出額および物品貿易収支の推移

暦年 四半期 石油輸出額

物品貿易

輸出 輸入 貿易収支

2019 年 第 1 四半期 192,026 249,362 129,818 119,544

第 2 四半期 195,822 252,617 151,819 100,798

第 3 四半期 180,005 235,874 145,451 90,422

第 4 四半期 186,154 243,434 144,900 98,535

2020 年 第 1 四半期 149,950 197,844 124,099 73,745

第 2 四半期 74,775 117,112 117,140 -28

第 3 四半期 108,440 161,831 117,194 44,637

出典:サウジアラビア総合統計庁

※2019 年第 2 四半期~第 4 四半期に関しては、2020 年 10 月公表の数値に更新。

(単位:100 万 SAR)

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3. 2021年国家予算の発表(2020年 12月 15日)

サウジアラビア財務省は以下の通り 2021 年の予算を発表した。【表 1】歳入は 8,490 億リヤ

ル(約 23兆 7,720 億円、1 リヤル=約 28 円)、歳出は 9,900 億リヤルとなっており,前年に

続く赤字編成となった。前年比はそれぞれ 1.9%増、2.9%減となっている。財政赤字は 1,410

億リヤルを計上し、対 GDP 比 5%以下の 4.9%となっている。公的債務は 9,370 億リヤル

で対 GDP 比 32.7%に拡大する見込みであり、2022-23 年度も同水準の数値を計上してい

る。

【表 1】2021 年予算概要(サウジ財務省発表)

セクター別支出額【表 2】の内訳では、教育分野で 1,860 億リヤル(全体の 19%)、医療・

社会開発分野と軍事関連で 1,750 億リヤル(18%)が際立っているが、サウジ若年層への教

育・雇用機会の拡大を念頭に入れた伝統的な支出配分となっている。軍事関連支出に関して

は、セキュリティー等のコストを加えれば2,760億リヤルとなり全体で27%を占めている。

また、同支出は 2020 年度と同水準となっている(2019 年は 30%)。教育分野では The

National Academy of Artificial Intelligence 、 Academy of Administrative Leadership

Development、及び Academy of Public Health の 3教育機関の新規設立が予定されている。

また、医療・社会開発分野では、4 か所の新規病院、高齢者施設の建設に加え、各種文化教

育関連のプログラムが計画されている。

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【表 2】セクター別支出額

また、実質GDP 成長率については、2020 年についてマイナス 3.7%という推計値を示して

いるほか、2021 年から 2023 年までの予想値をそれぞれ、3.2%、3.4%、3.5%としている。

【表 3】サウジアラビアの中期経済見通し

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4. セクター別トピック(2021年 1月 12日 更新)

(1)石油分野

① サウジアラビア産原油調整金推移

OPEC プラス減産合意破綻後の本年 3 月以降、アラムコは前例のない規模で調整金を

引下げると同時に、生産能力の上限に迫る増産を行い、主要市場で“価格戦争”を開始し

た。

6-7 月の調整金は OPEC プラスの減産継続合意を受け、一部油種を除いて大幅な値上

げとなり、8 月も地中海向けを除き$0.1~1.0 の値上げとなった。9-10 月は生産制限緩

和合意や燃料需要の低迷な

どにより、米国向けを除き 2

か月連続の値下がり、11 月

以降も上値の重い状況が継

続した。

2021年 1月積みの調整金は

市場により対応が分かれ

た。比較的堅調なアジア向

けでは全油種で$0.4~$0.8

の値上げとなった。全油種

が指標原油価格を上回るの

は 9 月以来 4 か月ぶりであ

る。一方、米国向けは全油種

で 2 か月連続の値下げとな

った。北西欧州向けは軽質油が$0.2 値上げされたものの、重質油は$0.9 の値下げ、地

中海向けは軽質油で据え置き、重質油は北西欧州向け同様$0.9 の値下げとなり、欧州

向けは全油種で指標原油価格を下回る状況が続いている。

アジア向けの 2 月積み原油は、市場での精製マージンの改善を背景に、アラブライト

(AL)で$0.7 値上げされ、指標原油に対し$1.0 の割り増しとなった。

② サウジアラビア石油関連ニューストピックス

原油価格:第4四半期のブレント原油価格は$40 をわずかに超える水準で始まり、10月

下旬から 11月初旬にかけて一旦$40 を割り込んだが、後半にかけて持ち直し、12月の

平均油価は前月比+15%の$50.21 となった。

2020 年の平均油価は、3月中旬以降の歴史的な価格急落により、2005 年以降で最低と

なる$43.05 だった。

Official Selling Price=Dubai/Oman 月平均+調整金

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足元の油価は、2021 年 1月 5日に行われたOPECプラスの閣僚会合後にサウジアラビ

アが2-3月に 100 万 B/D の自主減産を行うと発表したこともあり、WTI は 10 か月

ぶりに$50 を超え、ブレントは$55近い水準で推移している。

原油生産量:サウジアラビアの第 4 四半期の原油生産量は、OPEC プラスの生産割当

量である 8,990 千 B/D を若干下回る 8,975 千 B/D(前年同期比 9.6%減)となった。

2020 年は減産合意破綻後の 4 月に生産能力に迫る 12,007 千 B/D の生産を記録した

が、その後は OPEC プラスの合意に基づく減産に加え、自主減産により生産を抑制し

たため、年間では前年比 6%の減少となる 9,218 千 B/D となった。

出所:JodiOil, OPEC Monthly Oil Market Report (Jan)

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第 13回OPECプラス閣僚会合:1月 5日、OPEC プラスはオンラインで閣僚級会合を

開催し、2-3月の協調減産について合意した。今回の合意では、2、3月の原油生産に

つきロシアに各月 65千 B/D、同様にカザフスタンに 10千 B/Dの増産を認め、他の参

加国は 1 月の生産量を据え置くことになった。これにより、OPEC プラスの減産量は

現在の 7,200 千 B/D から 75千 B/D ずつ縮小し、3月には 7,050 千 B/D となる。

(千 B/D)

基準

生産量

1 月 2 月 3 月

調整量 生産量 調整量 生産量 調整量 生産量

OPEC 10 26,683 -4,564 22,119 -4,564 22,119 -4,564 22,119

サウジ 11,000 -1,881 9,119 -1,881 9,119 -1,881 9,119

Non-OPEC 17,170 -2,636 14,534 -2,561 14,609 -2,486 14,684

ロシア 11,000 -1,881 9,119 -1,816 9,184 -1,751 9,249

カザフ 1,709 -292 1,417 -282 1,427 -272 1,437

OPEC+ 43,853 -7,200 36,653 -7,125 36,728 -7,050 36,803

出所: https://www.opec.org/opec_web/en/press_room/6310.htm

12 月の会合で議論されていた 1 月以降の毎月 500 千 B/D の減産縮小が 75 千 B/D に

留まったことに加え、サウジアラビアが毎月 1,000 千 B/D の自主的な減産を表明した

ことから、足元の油価はブレントで$55近辺まで値上がりしている。

昨年 4 月、OPEC プラスは 5~6 月に 9,700 千 B/D、7~12 月は 7,700 千 B/D の減産

を行うことで合意し、2021 年 1 月の減産量については、12 月に行われた閣僚級会合

で、7,200 千 B/D とすることに決定していた。

サウジアラビアが 1 月の生産割当量を据え置き、2,3 月に 1,000 千 B/D の自主減産を

行った場合、同国の第 1 四半期の生産量は前期比 6%減の 8,450 千 B/D 程度となる見

込みである。

新油田の発見:12 月 27 日、サウジのエネルギー大臣はサウジアラムコが 4つの油ガス

田を発見したと発表した。

ダハランの北西に位置する Al-Reesh 油田の出油試験では最大 4,452B/D のアラブエク

ストラライト原油と 3.2mscfd の天然ガスの産出を記録した。また、北部国境州のラフ

ァハの北西にある Al-Ajramiyah 油田では 3,850B/D の産油を記録した。2つの非在来

型のガス田はガワール油田の南西で発見され、試験の結果 Al-Minahhaz では 18mscfd

のガスと 98B/Dのコンデンセート、Al-Sahbaa では 32mscfd のガスの生産が確認され

た。

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エネルギー大臣によれば、このうち特に注目されるのは既存の油ガスインフラが充実

しているダハラン近郊に位置し、開発が容易な Al-Reesh 油田である。生産される原油

も高品質の軽質油で、埋蔵量の推定は行われていないが、資源コンサルタントのウッド

マッケンジーは「大きなものになる可能性がある」と評価している。

今回の発見により、2020 年にサウジアラビアで発見された油ガス田は6つになった。

イラク国境に近い北部国境州では 8 月にも Abraq Al-Tuloul 油ガス田が発見されてお

り、今後の開発による地域経済への貢献が期待されている。

(2)水分野

① 主要プロジェクトの状況

現在入札が進行している IWPの状況は表 1の通りであるが、1月 3 日時点で Rabigh 4のア

ドバイザリー入札の進捗状況に関する報道はない。

【表 1】現在進行中の新規 IWPの状況

更新日 プロジェクト名 造 水 量

(m3/日)

COD

(年) 状況

12/16 Jubail 3B 570,000 2023

11/1、入札締切、評価中。

Aqualia, Engie, Utico, Veolia

の4チームが応札。2021 年 1

月に優先入札者が指名される

見込み

1/3 Ras Mohaisen 300,000 2022

11/5、関心表明提出締切、44

社が提出。

Acciona, ACWA Power,

Engie, Marafiq, Metito, Utico,

Saur, Veolia等

6/17 Rabigh 4 600,000 2022 アドバイザリーの入札実施中

締切 6/21 へ延長

出典:Global Water Intelligence

② サウジアラビア水関連ニューストピックス

中東・北アフリカ及びサウジアラビアの水関連市場動向

Saudi NWC appoints team for first cluster contract

サウジアラビア NWC は同国の上下水運用の民営化事業につき、最初のクラスターの

契約を発表した。北西部地域の事業規模約$5,300 万、7 年契約の事業は、Saur,

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Miahona, Manila Water のチームへと委託されることとなる。

出典:GWI(2020 年 12月 1日)

New Saudi water managers look for concession models

前述上下水運用民営化事業に関する GWI のコラム。

今回のマネジメント及び O&M を含む契約の次に段階として、コンセッション契約が

想定されている。NWC は今回の上下水道民営化事業の契約者がコンセッションの入札

において有利になるとの表明は行っていないが、マネジメント及び O&M 契約の期間

である 7 年間の内、3 年が経過した後に、コンセッションへの移行が始まるとのこと。

最初の入札となった北西部クラスターを受注した Saur によると、入札では技術やデ

ジタル化に対する評価が重視された。北西部クラスターの次に入札が行われるのはリ

ヤドを含む地域とみられ、2021 年より手続きが動きだすものとみられている。

将来のコンセッションへの移行に関する課題として、上下水網の整備にかかる費用

をどのように捻出・回収するかという点が挙げられる。特に下水道普及率は 2019 年時

点で 56%に留まり多大な投資が必要な状況である。同国政府は 2016 年に上下水道料

金の改革計画を発表したが、依然として必要な変化はなされていない。

一方で、近年の民間部門への期待は資金の調達ではなく、事業運営の改善に比重が置

かれている。したがって、老朽化した水道網等に関する情報収集や上下水道網整備にか

かるコストの試算等も民間事業者にとっての大きな課題になる。

出典:GWI(2020 年 12月 24 日)

【コメント】

上下水道民営化事業の第一弾の落札者が決定され、遂に事業が動き始めた。同国では、

2007 年にもリヤド、ジェッダ、メディナ及びターイフで同様の取り組みが行われたが、

今回はサウジアラビア全土での事業となる。水道料金の改定については、隣国オマーン

が水道料金に対する補助金の撤廃に向け動き始めた。

New technologies underpin Saudi water privatisation

サウジアラビア SWCC 総裁及び Water Transmission & Technologies Company

(WTTCO)の会長であるAbdullah Al Abdlkareem氏に対するMEEDのインタビュー記

事。同氏は、サウジ市場・経済は国際的な投資家からの高い信頼性を有しており、将来

に渡り高い関心を維持するだろうと述べた。Ras Al Khair や Yanbu を始めとする既存

の海水淡水化設備の民営化及びWTTCOによる送水事業においても民間部門とのパー

トナーシップを深める考えを示した。合わせて、SWCCのWater Technology Research

Institute による Zero Liquid Discharge(ZLD)システムや高圧ポンプの効率などに関

する技術開発を例示し、SWCC が造水コスト削減のための技術開発についても推進し

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ていくと述べた。ZLD システムに関しては、初の商業ユニットが 2021 年中旬に

Shuaibah 4 にて設置・稼働となる予定である。

Ras Al Khair及び Yanbu以外にも、2023 年までに 5 つの蒸発法海水淡水化プラント

の RO 膜技術への置き換えを行う計画を立てており、民間部門から造水量拡大及び造

水コスト低減の方策提案を求めていく考えである。

最後に同氏は、SWCC のすべての海水淡水化プラントは ISO14001 を準拠し、安全

運転や既存の環境規制を準拠しており、今後も環境への配慮・保護が最重要であると述

べた。

出典:MEED(2020 年 11 月 22 日)

【コメント】

2020 年 5 月に就任した新総裁のもと、SWCC が民営化に向けた活発な動きを見せてい

る。WTTCO の設立により送水部門に関しても民間部門との協業の動きが加速してい

くものとみられている。

なお、12 月に SWCC は WTTCO の新規株式公開を行うことを発表した。既存蒸発

法海水淡水化プラントに関しては、RO 膜法への置き換えを進めている一方で、置き換

え事業にかかる資金調達や、置き換え後の設備を民間へ売却する場合の資産評価等に

関して、今後の動きが注目される。

PIF increases Acwa Power stake

サウジアラビアの Public Investment Fund(PIF)はAcwa Powerの持ち株比率を 33.36%

から 50%へと引き上げた。

PIF によれば今回の投資はサウジアラビアにおける再エネ部門の開発に対する支援

と、Acwa Power の地域及び世界的なリーダーとなるための成長及び持続的な投資リタ

ーンの享受が目的とのこと。

出典:MEED(2020 年 11 月 21 日)

【コメント】

Acwa Power は PIF の太陽光発電事業の多くに関与しており、以前より PIF との強い

関係を持っている。MEED の別の記事にて指摘されているように、Acwa Power は 2021

年前半に株式公開を行うものとみられており、今回の PIF による持ち株率引き上げも

株式公開に向けた動きの一つであるとみられる。

上水関連プロジェクト動向

SWCC to receive bids for Ras Al-Khair plant privatization in Q2 2021: report

サウジアラビア SWCC の民営化部門長は Ras Al Khair プラント(造水量:約 102 万

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m3/D、発電量:2,650MW)民営化の入札を 2021 年第 2四半期に行う見通しを示した。

SWCC は本件に関して、既に資格承認審査を完了しており、7 つのチームが入札参加

資格を有していると見られている。

出典:Aragram(2020 年 12月 27日)

【コメント】

その後、入札参加資格を有する企業が以下の通り発表された。

Acwa Power, Asian Strategic Consortium, China Power International Holding/Ajlan &

Bros Energy Company, Engie, JERA, 丸紅, NTPC

なお、Asian Strategic Consortium の構成企業は明らかにされていない。

Firm confirms $384m Saudi water contract award

サウジアラビア Shuqaiq 1 海水淡水化プラント(造水量:400,000m3/D)の EPC 契

約(事業費:$384 百万)を Accionaと Al-Rashid Trading & Contracting Company が

落札した。Acciona にとって本件が同国で 5 つ目の海水淡水化プラントとなり、2023

年の完成予定。

出典:MEED(2020 年 12 月 21 日)

Saudi Arabia awards desalination contracts

サウジアラビア SWCC は Shuaiba 5(造水量: 600,000m3/D) EPC の契約を発表し

た。Shuaibah 5 は Advanced Water Technologyと Rawafid のチームが落札した。Yanbu

1 EPC(造水量: 250,000m3/D)については落札者の発表は未だ行われていない。

出典:MEED(2020 年 12 月 14 日)

【コメント】

Acciona は上記プロジェクトの他にもサウジアラビアにて、Al Khobar 1(造水量:

210,000m3/D)等を受注している。Al Khobar 1 では、機械学習等を活用したデジタル

ツインによる遠隔監視・制御が可能であり、作業員の人数を削減することに成功してい

る。

Sadara Signs MoU with SWCC to Supply Brine to Sadara Facilities

サウジアラビア Sadara Chemical Company は SWCC と、Sadara のプラントへの濃縮

塩水の供給に関する MoU を締結した。Sadara CEO は SWCC 本社で行われた調印式

にて、本 MoUにより、現在使用している天然固形塩による廃棄物の削減と、塩の輸送

にかかるコストや時間の削減に期待を示した。

出典:Sadara ホームページ(2020 年 11月 22日)

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【コメント】

SWCC は、2020 年 6 月には SABIC 傘下の Petrokemya と濃縮塩水の供給に関する

MoU を締結しており、海水淡水化プラントから排出される濃縮塩水の有効活用に関わ

る取り組みが進められている。

Yanbu 4 poised to reach financial close

サウジアラビア SWPCと Yanbu 4 IWP (造水量:450,000m3/D)の契約者である Engie,

Mowah, Nesma のチームは、11月末のファイナンシャルクローズに向け順調に進んで

いる。当初、5 月とみられていたファイナンシャルクローズは、事業範囲の軽微な変更

により遅れていたとみられる。MEED によれば、新たにパイプラインが事業範囲に加

わり、合計事業コストを約$8.5億へと押し上げた模様。

出典:MEED(2020 年 11 月 18 日)

【コメント】

1 月 3日現在、本件のファイナンシャルクローズが行われたとの報道は出ていない。

Saudi Arabia receives water project interest

サウジアラビア Ras Mohaisen IWP(造水量: 300,000m3/D)につき、デベロッパーは、

11月 5 日に関心表明を提出した。本案件の顧客である SWPC は本プラントの供用開始

を 2022 年に定めている。MEED によれば、ファイナンシャルアドバイザーに KPMG,

法務アドバイザーに Eversheds Sutherland がアポイントされている模様。

出典:MEED(2020 年 11 月 9日)

下水関連プロジェクト動向

Project Tracker-Taif ISTP

サウジアラビア Taif ISTP(処理量:270,000m3/D)は、11 月 5 日にファイナンシャル

クローズを迎えたと見られている。本案件は Cobra/Tawzeaのチームが受注していた。

出典:GWI(2020 年 11月 6日)

【コメント】

本案件の入札では、2019 年 11 月に Cobra/Tawzea のチームが最低入札価格にて落札

していたが、約 1年を経て漸くファイナンシャルクローズを迎えた。

ギガプロジェクト関連

Saudi NWC in deal to supply treated water to Qiddiya

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サウジアラビア NWC はQiddiya Investment Company と、3年間の飲料水及び上水の

供給に関する契約を締結した。NWC は 20,000m3/D の飲料水と 70,000m3/D の上水

を Qiddiya へ供給する。

出典:Trade Arabia(2020 年 12 月 19日)

【コメント】

NWCが Qiddiya に対する飲料水及び上水の供給を行うこととなったが、この発表以前

より入札手続きが行われている、複合ユーティリティインフラ事業については、契約締

結に至っていない。

ACWA Power uses renewable energy for first full-service utility contract

サウジアラビア Acwa Power は The Red Sea Development Company と 25 年間のユー

ティリティサービスに関する契約を締結した。

Acwa Power はパートナーである Energy Chinaや、Standard Chartered、Silk Road Fund

等の国内外の金融機関からの融資を受け、造水量30,000m3/Dの海水淡水化プラント、

処理量 18,000m3/D の下水処理場、処理規模 30t/D の廃棄物処理プラントなどを建設

する。2030 年を期限とした事業の第二段階では各設備の拡張が計画されている。また、

全ての電力は再生可能エネルギーによって賄われる。

出典:GWI(2020 年 11月 19 日)

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5. ビジネス環境トピック(2021年 1月 17日 更新)

① 新型コロナウイルス感染状況(2021年 1月 17日時点)

サウジアラビア保健省発表の感染状況は以下の通り。

【表 1】サウジアラビア新型コロナウイルス感染者数概要

人数(人) 前日比(1月 12日)

新規感染者数 176 36

新規回復者数 146 -13

累計感染者数 364,929 176

(内、回復者数) 356,687 146

(内、死亡者数) 6,323 5

患者数 1,919 25

検査数 39,774 -3,481

出典:サウジアラビア保健省

主要都市の感染者数は以下の通り。

【表 2】サウジアラビア主要都市感染者数

リヤド ジェッダ ダンマン メッカ メディナ

累計感染者数 60,813 35,063 20,042 35,133 22,693

(内、回復者数) 59,440 33,736 19,763 34,112 22,475

(内、死亡者数) 1,161 1,217 210 922 164

患者数 212 110 69 99 54

出典:サウジアラビア保健省

湾岸協力会議(GCC)加盟諸国では、使用を認可していた米国ファイザーとドイ

ツのビオンテックが共同開発した新型コロナウイルスワクチンの接種が開始され

た。12 月 17 日のサウジアラビアでの接種開始の後、アラブ首長国連邦(UAE)ド

バイ(23日)、カタール(23日)、オマーン(27日)、クウェート(27 日)でそれ

ぞれ開催された。サウジでは 1 月 9 日時点で 137,862 件の接種が行われている。

また、サルマン国王は 1 月8日、次世代型産業都市「NEOM」でファイザーなど

が開発した新型コロナウイルスのワクチンを接種したと報じられている。

② サウジアラビア国民に対する出入国規制の解除(1 月 8日)

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サウジアラビア内務省は 2021年 1月に見込んでいたサウジアラビア国民に対する出入国規

制を 2021 年 3 月 31 日から完全に解除すると発表した。具体的には以下の通り。なお、サ

ウジでは現状でも外国人居住者や出張者等の出入国は認められているが、日本からの渡航

については「変異種が確認された国」に該当するため、サウジ入国後 7日間の自宅隔離と 6

日目の PCR 検査が必要となっている。

1)サウジ国民の出入国の許可

2)国際線の運航制限の完全解除

3)陸海空の国境の完全開放

*上記の措置は関係機関が定めた COVID-19 感染防止策に従って行われる。

③ サウダイゼーションの動き(技術職・IT職・経理会計職でのサウダイゼーション)

別紙参照

④ 第 41回 GCC首脳会議の開催(2021 年 1 月 5 日 於アル=ウラー)

1 月 5日、GCC 加盟国の最高理事会である第 41回 GCC首脳会議が主催国サウジアラ

ビア北西部の都市アル=ウラーで開催された。GCC 加盟 6カ国から、バーレーンのサ

ルマン・ビン・ハマド首相兼皇太子、オマーンのファハド・ビン・マフムード副首相、

アラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド・ビン・ラーシド・アル=マクトゥーム副大統

領兼首相・ドバイ首長、クウェートのナワーフ・アル=サバーハ首長、カタールのタミ

ム・アル=サーニ首長が出席し「アル=ウラー声明」に署名した。また、サウジアラビ

アは開会に先駆けてカタールとの国境を再開し、サミット閉会後の記者会見では、ファ

イサル外相が、アラブ 4カ国は 2017 年から約 3年半断交していたカタールと和解に合

意した旨を明らかにした。

⑤ 第 5回日・サウジ・ビジョン 2030 閣僚級会合の開催(オンライン)

12 月 15 日、経済産業省とサウジアラビア投資省は、両大臣他関係閣僚の出席のもと、

第 5 回日・サウジ・ビジョン 2030 閣僚会合をオンラインで開催した。「日・サウジ・

ビジョン 2030」は、両国の成長戦略に貢献する多岐に亘るプロジェクトで構成されて

おり、経済・文化面を始め幅広い分野での協力事業が進展している。第 5回会合を通じ

て両国は今後の具体的なアクションを「日・サウジ・ビジョン 2030~バージョン 2020

~」に取りまとめ、以下の経済産業省のホームページ上で公表している。

https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201216001/20201216001-1.pdf

⑥ 第 4回日・サウジ・ビジネスフォーラムの開催(オンライン)

12月 16日、サウジ投資省、日・サウジ・ビジョンオフィス、経済産業省、中東協力セ

ンター、ジェトロの共催で、第 4回「日・サウジ・ビジョン 2030 ビジネスフォーラム」

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がオンライン形式で開催された(両国要人ら約 580 人が参加)。当該フォーラムは「日・

サウジ・ビジョン 2030」の枠組みで、日・サウジ・ビジョン 2030 閣僚級会合の併催イ

ベントとして位置付けられている。今回の主要テーマは、観光とイノベーション分野

(スタートアップ)であり、両分野でのビジネス協力や投資の可能性について議論がな

された。フォーラムでは 14 件の協力覚書(MOU)の紹介や 2020 年に開設されたサウ

ジ投資省東京事務所の紹介があった。冒頭挨拶では、ハーリド・アル・ファーレフ投資

相と梶山弘志経済産業相がビデオメッセージで両国間のパートナーシップの重要性を

強調した。

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1

2021 年 1 月

サウジ労働環境に係る動き

サウジでは民間企業での労働力の自国民化を促進すべく 2000 年代はじめより企業の従業員

の一定割合をサウジ人化する政策(サウダイゼーション)を掲げ(第 7 次五か年計画)、

2008 年には第 5 版となるサウダイゼーション・ガイドブック(2001 年初版)を公表し

た。その後、サウダイゼーションの促進プログラムとしてサウジ労働省からニターカートプ

ログラム(サウジ人従業員の割合を 4 段階に分け評価し、ビザ取得・ライセンス更新等にイ

ンセンティブ・ペナルティを付与するシステム)が 2011 年に発表、2013 年に施行され現

在に至っている。その後も様々な分野でのサウダイゼーションが進んでいるが、今回は一定

条件の下、各種技術職分野や IT 分野、経理・会計分野でのサウダイゼーションが義務化さ

れた。また、外国人労働者のスポンサーシップ、サウジ人労働者の最低賃金引上げに係る動

きも見られた。

1.技術職従業員の自国民比率 20%の義務化について

2020 年 8 月、サウジアラビアの人的資源・社会開発省(MHRSD)は、民間企業の技術職サ

ウジ人比率を 20%以上とすることを義務付ける省令1を発表した。

施行は 2021 年 1 月 14 日2からで、MHRSD が指定する技術職(各種土木技術、電気、工業

機械、化学、鉱業、保健専門職等)で 5 名以上を雇用する民間事業体が対象となる。サウジ

人技術者が比率計算に算入されるためには、給与が 7 千リヤル以上で、Saudi Council of

Engineer(SCE)の職業認定を受けている必要がある。MHRSD が省令と同時に公表した説明

文書3の要点は以下の通り:

(1)制度概要

① 達成すべき自国民比率(指定比率)

事業体における指定技術職従業員の 20%を自国民とする。

② 適用対象・施行日

本制度は指定された技術職の従業員を 5 人以上雇用し、MHRSD に登録された全て

の民間事業体に、2021 年 1 月 14 日から適用される。

③ 職業認定の必要性

技術職従業員は、The Practice of Engineering Professions Regulating Law4お

よび同執行規則に基づき、SCE から職業認定を取得しなければならない。取得して

いない従業員は自国民比率の計算に算入できない。

④ 最低給与

1 1442 年 1 月 1 日(2020 年 8 月 20 日)付 大臣決定 686 号 2 1442 年 6 月 1 日 3 出所:https://hrsd.gov.sa (الدليل الإجرائي لقرار توطين المهن المهندسية) 4 https://www.saudieng.sa/English/AboutSCE/Pages/PPE.aspx

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サウジ社会保険庁(GOSI)登録の月額給与が SAR7,000 を下回る場合、当該従業

員は技術職自国民比率の計算に算入できない。

(2)支援プログラム

サウジ人技術職の雇用を促進するため、以下の項目を含む支援策が提供される予定。

適切な人材の募集・求人支援

訓練と必要な資格の取得支援

サウジ人技術者のリクルートと定着支援

制度上利用可能な自国人化支援プログラムの優先利用

(3)ペナルティ

事業体が指定比率に準拠していない場合、技術職に関わる全ての電子手続き(ビザの発

給、転籍、職種変更5、労働許可)が停止される。また、2019 年 6 月 1 日付 MHRSD 省

令 178743 号6で定められたペナルティが適用される。また、従業員を労働許可証に記載

された職名と異なる規制対象の技術職で働かせた場合、省令 178743 号で定められた罰

金7が科される。

(4)留意事項

ニターカート制度との関係

対象となる技術職の自国民化はニターカート制度と並行して適用され、対象企業の

ニターカート上のランクは技術職の自国民比率の計算に影響しない。従って、ニター

カートのランクが最上級のプラチナであっても、技術職の自国民比率を順守してい

ない場合、本制度で定められた罰則が科せられる。

実質的に技術職に従事する従業員にも適用

本制度は、登録上の技術者だけではなく、職名の如何に関わらず実質的に技術職とし

て勤務している従業員にも適用される。

自国民比率(指定比率)の見直しについて

本制度の目的は、失業率の改善や国民に相応しい就業の機会を提供することであり、

MHRSD は、目的の実現のために、技術系の卒業生や求職者の人数、労働市場の状況

等に基づき、自国民比率を定期的に見直す。

2.通信・IT職の自国民化について

2020 年 10 月 5 日、サウジ MHRSD は、民間企業の通信・TI 職のサウジ人比率を 25%以

上とすることを義務付ける省令8を発表した。

5 他の職種からの変更は不可。他の職種への変更は変更される職種による。 6 https://www.uqn.gov.sa/lang/ar/pdf/viewer/1564691692568818100 7 SAR10,000 8 1442 年 2 月 18 日(2020 年 10 月 5 日)付 大臣決定 28889 号

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施行は 9 か月の猶予期間の後、2021 年 6 月 27 日9からで、MHRSD が指定する以下通信・

IT 職種グループで、小企業10を除く、指定職種グループ毎に 5 名以上を雇用する民間事業体

が対象となる。なお、サウジ人職員が比率計算に算入されるためには、通信・IT 技師やプロ

グラマ等の場合、給与が 7 千リヤル以上、通信・TI 関連の技能職の場合、5 千リヤル以上で

ある必要がある。MHRSD が公表した説明資料11の要点は以下のとおり:

(1)制度概要

① 対象職種グループと達成すべき自国民比率(指定比率)

職種グループ 指定比率

・通信技術・IT 技師: 25%

・アプリ開発・プログラマ・アナリスト(技師): 25%

・テクニカルサポート・通信技能者: 25%

自国民比率とは、同一事業体における指定職種グループ全従業員数に対するサウジ

人の同一指定職種グループ従業員数の割合。

② 適用対象・施行日

本制度は、小企業を除き、指定された通信・IT 職の従業員を 5 人以上雇用する民間

事業体に、2021 年 6 月 27 日から適用される。なお、過去の決定で関連職種が対象

となっている場合や、今後、労働市場の変化に伴って異なった比率が定められる場

合は、どちらか高い方の自国民比率が適用される。

③ 最低給与規定

サウジ社会保険庁(GOSI)登録の月額給与が規定給与額を下回る場合、当該従業員

は技術職自国民比率の計算に算入できない。

職種グループ 規程給与額

・通信技術・IT 技師: SAR7,000

・アプリ開発・プログラマ・アナリスト(技師): SAR7,000

・テクニカルサポート・通信技能者: SAR5,000

*なお、通信情報技術省によれば、通信・IT 部門でのサウダイゼーションの割合は

53%に上昇(12 月 1 日付)。

(2)支援プログラム

対象となるサウジ人の雇用・資格取得を促進するため、以下の支援策が提供される。

通信・情報技術省の”Future Skills” initiative12による就職支援、訓練、Digital Skill

Framework 人材開発基金の13HRDF プログラムによる就業支援

9 1442 年 11 月 17 日 10 従業員が 49 人以下又は収入が 4 千万 SAR 以下の企業 11 出所:https://hrsd.gov.sa/ar/policies (الدليل الإجرائي لقرار توطين مهن الاتصالات وتقنية المعلومات) 12 https://www.mcit.gov.sa/en/futureskills/227229 13 https://www.hrdf.org.sa/

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4

(3)ペナルティ

施行時に事業体が指定比率を達成していない場合、対象職種に関わる全ての電子手続き(ビ

ザの発給、転籍、職種変更14、労働許可)が停止される。また、2019 年 6 月 1 日付 MHRSD

省令 178743 号15で定められた罰則が適用される。また、従業員を労働許可証に記載された

職名と異なる規制対象の職種で働かせた場合、省令 178743 号で定められた罰金16が科され

る。

3.経理関係職の自国民化について

12 月 23 日、サウジアラビアの人的資源・社会開発省(MHRSD)は、民間企業の経理関係

職のサウジ人比率を 30%以上とすることを義務付ける省令17を発表した。

施行は 6 か月の猶予期間の後、2021 年 6 月 11 日18からが予定されており、MHRSD が指定

する経理関係職(下記(2)参照)で、5 名以上を雇用する民間事業体が対象となる。

また、サウジ人職員が比率計算に算入されるためには、学歴が Bachelor の場合、給与が 6 千

リヤル以上、Diploma の場合、4.5 千リヤル以上である必要がある。

なお、MHRSD が指定する経理関連職19の従事者については、2019 年 8 月 31 日から、Saudi

Organization for Certified Public Accountants (SOCPA)への登録が義務付けられており、

外国人の場合は登録をしない限り、滞在許可(イカーマ)/労働許可の新規取得や更新ができ

ない20。MHRSD が省令と同時に公表した説明資料21の要点は以下のとおり:

(1)制度概要

① 達成すべき自国民比率(指定比率)

経理関連の指定職種従業員数の 30%。

② 適用対象・施行日

本制度は、指定された経理関連職種で従業員を 5 人以上雇用する全ての民間事業体

に、2021 年 6 月 11 日から適用される。なお、過去の決定で関連職種が対象となっ

ている場合や、今後、労働市場の変化に伴って異なった比率が定められる場合は、ど

ちらか高い方の自国民比率が適用される。

③ SOCPA への登録

経理関連職員は SOCPA の職業認定を受ける必要があり、認定を受けていない場合

は、比率計算に算入することができない。

④ 最低給与規定サウジ社会保険庁(GOSI)に登録する月額給与が規定給与額を下回る

場合、当該サウジ人従業員は自国民比率の計算に算入できない。

14 他の職種からの変更は不可。他の職種への変更は変更される職種による。 15 https://www.uqn.gov.sa/lang/ar/pdf/viewer/1564691692568818100 16 SAR10,000 17 1442 年 5 月 8 日(2020 年 12 月 23 日)付 大臣決定 86972 号 18 1442 年 11 月 1 日 19 後掲第 2 項の対象職種のうち Bookkeeping Clerk を除く 19 職種 20 Require professional registration of expatriate accountants 21 出所: https://hrsd.gov.sa/ar/policies/ (الدليل الإجرائي لقرار توطين المهن المحاسبية)

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学歴 規程給与額

・Bachelor およびこれと同等: SAR6,000

・Diploma およびこれと同等: SAR4,500

(2)対象職種

対象となる経理関連職種は以下のとおり:

Director, Financial and Accounting Affairs Manager, Accounts and Budget Director, Financial Reports Department Director, Zakat & Taxes Department Director, Internal Auditing Department Director, G.A of Reviewing Chief of Internal Auditing Programs Controller, Financial Internal Auditor Senior Financial Auditor Accountant, General Accountant, Costs Auditor, Accounts Accounts Technician General Accounts Auditing Technician Cost Accounting Technician Financial Auditing Supervisor Cost Clerk Finance Clerk Bookkeeping Clerk (3)MHRSD の資料に記載された自国民比率の計算例

A 社:従業員数:60 名

技能職 事務職 経理職 清掃員 受付 計

23 5 22 5 5 60

経理職の内訳

Accountant, General

Accountant, Costs

Auditor, Accounts

Controller, Financial

サウジ人 1 0 1 0 2

非サウジ人 5 6 4 5 20

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指定比率の適用

サウジ人経理職:2 人

非サウジ人経理職:20 人

経理職計:22 人

全経理職員数(22 人)X 指定比率(30%)=6.6*人 ⇒ 7人

*比率計算の際、0.49 以下は切り捨て、0.5 以上は切り上げ

A 社は、経理職員 22 名のうち、7 名を自国民化して指定比率を達成する必

要がある。現在 2 名のサウジ人がいることから、5 名の外国人を自国民化し

なければならない。

(4)支援プログラム

サウジ人経理職の雇用を促進するため、以下の項目を含む支援策が提供される予定。

適切な人材の募集・求人支援

訓練と必要な資格の取得支援

サウジ人経理職員のリクルートと定着支援

制度上利用可能な自国人化支援プログラムの優先利用

(5)ペナルティ

猶予期間終了時に事業体が指定比率を達成していない場合、対象職種に関わる全ての電子手

続き(ビザの発給、転籍、職種変更22、労働許可)が停止される。また、2019 年 6 月 1 日付

MHRSD 省令 178743 号23で定められた罰則が適用される。また、従業員を労働許可証に記

載された職名と異なる規制対象の職種で働かせた場合、省令 178743 号で定められた罰金24

が科される。

(6)留意事項

ニターカート制度との関係

対象となる経理関連職の自国民化はニターカート制度と並行して適用され、対象企業のニタ

ーカート上のランクは経理職の自国民比率の計算に影響しない。従って、ニターカートのラ

ンクが最上級のプラチナであっても、経理職の自国民比率を順守していない場合、本制度で

定められた罰則が科せられる。

実質的に経理職に従事する従業員にも適用

本制度は、登録上の経理職だけではなく、職名の如何に関わらず実質的に経理職として勤務

している従業員にも適用される。

自国民比率(指定比率)の見直しについて

本制度の目的は、失業率の改善や国民に相応しい就業の機会を提供することであり、MHRSD

は、目的の実現のために、会計関連の卒業生や求職者の人数、労働市場の状況等に基づき、

自国民比率を定期的に見直す。

4.スポンサーシップ廃止の動きについて

22 他の職種からの変更は不可。他の職種への変更は変更される職種による。 23 https://www.uqn.gov.sa/lang/ar/pdf/viewer/1564691692568818100 24 SAR10,000 登録上の職種と実際の職種の不一致は、いずれの職種であれ、罰則の対象となる。

Page 29: サウジアラビア経済概況第2 四半期 195,822 252,617 151,819 100,798 第3 四半期 180,005 235,874 145,451 90,422 第4 四半期 186,154 243,434 144,900 98,535 2020 年

7

10 月 27 日付サウジガゼット紙は「Saudi Arabia set to abolish sponsorship system」

という記事を配信した。記事によれば、現状では外国人労働者は出入国や最終出国、転職等

にスポンサーの承認が必要であるが(カファーラ・システム)、新たに雇用契約を締結するこ

とによりこうした制限が解除される見通しで、今後予定されている Special Privilege

Residency Permit の導入後に完全撤廃される予定。

また、この記事に関連し、11 月 4 日付で人的資源・社会開発省(MHRSD)から「MHRSD

launches labor reforms for private sector workers」と題した政策 Labor Reform

Initiative (LRI) を発表した。政策の目的は、スポンサーが外国人労働者の就労状況に強い

影響力を持っている状況を改善し労働市場の流動性を高め、安く抑えられている外国人の給

与を上げ、相対的にサウジ人の労働市場での競争力を高めることが指摘されている。政策の

施行は 2021 年 3 月 14 日を予定している。

具体的には労働契約の終了時に雇用主(スポンサー)の同意なしに転職が可能となり、申請

すれば雇用主の同意なしに再入国ビザが使えるようになる見込み。施行は 2021 年 3 月 14

日に予定されている。本施行は、日系企業のナショナルスタッフだけではなく、日本人駐在

員の雇用契約にも影響する可能性もあり、今後どのような対応が具体的に必要になるのかを

注視する必要がある。

5.サウジ人最低賃金の引上げ

11 月 24 日付アラブニュースで、サウジアラビアのアハマド・アル=ラージヒー労働・社会

発展相が、ニターカート・プログラムに登録した国民の最低賃金を 3,000 リヤル(800 ドル)

から 4,000 リヤルに引き上げる決定を発表。賃金が 3,000 リヤル以上 4,000 リヤル未満の

サウジアラビア人雇用者は企業のサウダイゼーションを計算する際、0.5 ポイントにしかカ

ウントされない。賃金が 3,000 リヤル未満の労働者はカウントされない仕組み。また、2020

年 5 月に導入された民間部門での雇用促進を推奨する「Flexible Work System」に係るパ

ートタイム雇用のサウジ人に関しては、一人当たり 0.5 人としてカウントされ、フレキシブ

ルワーク雇用のサウジ人に関しては、(一か月で)168 時間以上の労働で社会保険を支払って

いる場合のみ 1/3 人分のポイントとしてカウントされる仕組みとなっている。