ビム...
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BIM
なんだ、BIMってそういうことか!
- 福井くんと学ぶ -
ビ ム
マンガ風BIM解説 その1
-概要編-
-第1章-
BIMって?
BIMって?• ここは、県内のとある建築設計事務所。民間の住宅や公共施設の意匠設計を主な業務としてい
る。会社規模はそれほど大きくない。
• 入社7年目若手社員の福井くんが、部長に呼ばれました。
部長、お呼びでしょうか?忙しいところ、すまないね。実は君に頼みがあるんだ。
何でしょう? 君は、『BIM』という言葉を聞いたことがあるかね?
はい。 BIMはBuilding Information Modeling、コンピューターの中で仮想の建物を実際と同じように作って、プロジェクトのライフサイクル全般でその仮想建物を活用していこうっていう建築手法のことですよね。概念としてなんとなくは分かりますが、僕らの業務にはあまり関係ないような…
福井くん部長
BIMって??
え?!僕がですか?
今はまだそうかもしれないね。ただ、将来のことを考えると、うちもそろそろ検討すべき時期に来ているんじゃないかと思ってね。そこで、君にBIMについて調べてもらいたいんだ。
そう。福井くんに頼みたいんだ。うちの業務を分かってるし、若いから新しい知識を取り入れる柔軟性があるだろう?
じゃ、よろしく頼んだよ。
わ、わかりました。
…とは言ったものの、書籍やインターネットで調べるだけじゃ、結局のところ、よくわからないような気がするな…
そうだ!大手の設計事務所に勤める具路部(ぐろうぶ)先輩なら何か知ってるかもしれない。相談してみよう!
BIMって???• ここは、県内のとある焼き鳥屋。
• 福井くんが具路部先輩に相談しています。
先輩、お疲れ様です!今日はお呼び立てしてすみません。
やあ、福井。久しぶりだな。今日はどうした?
さっそくなんですけど、先輩の勤める設計事務所って、BIM導入されてます?
BIMは使ってるよ。『GLOOBE』っていうシステムだけど。それがどうかしたのかい?
今、BIMについて調べてて…。概念的なものは自分でもなんとなく知ってはいるんですけど、『ライフサイクル全般で活用』とかって言われても、普段そんな大掛かりな業務を請け負ってるわけじゃないんで、どうもいまひとつピンとこないんですよね。
具路部先輩(ぐろうぶ)
BIMは手法それはな、福井。あくまでもBIMは手法なんだ。基本設計だけでもBIMの一部だし、Webや雑誌で取り上げられているような大規模な事例もBIMの一部なんだ。
これまでの建築手法とは何が違うんですか?
これまでの手法だと、プロジェクトのライフサイクルを通して、設計図書や建物管理台帳などの「ペーパー」を活用してきただろう?活用する対象が、これまでの「ペーパー」か、BIMの「3次元建物モデル」か、そこが違うだけなんだよ。
大規模なBIMばかり注目されてますけど、規模が小さくても設計の一部でもBIMの手法は取り入れられるんですね。
3次元建物モデルって?3次元建物モデルって何ですか?
ひと言で言うと、コンピューターの中に建てる仮想建物の事だね。3次元形状に建築情報を持っているという点で、CGとは違う、3Dの建物なんだ。
なるほど、仮想建物か…
-BIMの概念-建物モデルを活用する事がBIM
BIM ワンポイント解説①
ペーパーや2次元CADデータの図面ではなく、建物モデルを活用する事がBIMの基本です。
ペーパーや2次元CADデータの図面の山 3次元建物モデル
BIMになると
BIMワンポイント解説
Webや雑誌で、びっくりするようなBIMの事例が紹介されていますが、それは建物モデルを活用した建築プロセスの一部、BIMの一部です。極論を言えば、施主との合意形成に建物モデルを活用することも、BIMの一部です。難しく考えずに、やりやすいところ(建築プロセス)から、BIMを始める事が大切です。
建物モデルの活用って?3次元建物モデルをどうやって活用するんですか?
建物モデルがあれば、そこから自由に切り出して、各種の図面が作成できるね。建築情報を持ってるから、概算数量表がすぐ出せる。分かりやすいところで言うと、CGパースなんかも作成できるね。
え?!図面が後からできるんですか? そうさ。設計成果物としての図面は建物モデルで設計した結果なんだ。
BIMで設計?
図面を描かずに設計できるんですか?
操作画面は、平面・立面・断面・展開という表示にできるから、違和感なく設計できるよ。つまり、操作は2次元なんだけど、データは3次元なんだ。建物全体を総合的に設計できるのさ。
BIMで設計??
直接図面を描くほうが早くないですか?
一つの建物モデルを、平面や立面・断面として表示しながら設計を進めるんだ。図面を一枚一枚描く場合は、平面を描いて、別に立面・断面を描くだろう?一般図と詳細図も別に描くよね?そういった図面を別々に描く手間がなくなるから、建物モデルが断然早いと思うね。
BIMで設計???
設計変更があったらどうなるんですか?
設計変更も同じだよ。たとえば、平面で変更した箇所は、断面にも展開にも連動しているから、二度手間・三度手間はないし、変更漏れもないんだ。
そっかぁ。。今まで、『図面を描くこと』が設計者としての僕の仕事だと思ってたけど、図面は良い建物を設計するための手段のひとつにすぎなかったんだよなぁ…
なぁ、福井。そもそも、図面だと建物の断片的な設計しかできないだろ?3次元で確認しながら、建物を総合的に設計した方が、設計者としての能力をフルに発揮できると思わないか?
-BIMで設計-図面は建物の断片。BIMで総合的な設計を。
BIM ワンポイント解説②
たとえば、矩計図は、建物の全てのセクションを図面化しません。平面図は、高さ方向が見えないので、別に展開図を描きます。つまり、建物を断片的に設計していると言えます。
BIMワンポイント解説
BIMでは、一つの建物を平面・立面・断面・展開で表示しながら設計します。つまり、建物全体を総合的に設計する事になりますので、基本的に設計の積み残しが発生せず、完成度の高い設計ができます。
BIMで設計
平面図・矩計図などで断片的に設計 3次元建物モデルで総合的に設計
• おや?入口のあたりが騒がしくなりました。大人数のお客様のようです。
• 地場の工務店に勤める秋戸(あきと)先輩の登場です。
3D建築CADはBIM??
おぉ、そうみたいだな!会社の飲み会かな?おーい!秋戸!
あれ? 先輩!あそこにいるのって秋戸先輩じゃないですか?
おお、具路部!それに福井じゃないか。偶然だな。
今、具路部先輩にBIMのこといろいろ聞いてて…秋戸先輩は工務店の設計部にお勤めですよね?BIMって導入されてます?
秋戸先輩(あきと)
うーん・・・あれはBIMかな?3D建築CADシステム『ARCHITREND ZERO』を使ってるよ。
3D建築CADはBIM??確かに、『3D建築CADシステム』も、コンピューターの中に仮想建物を建てるっていう点では、広い意味でBIMだね。
うちみたいに、木造戸建て住宅専業でやってる工務店や設計事務所には、 3D建築CADシステム『ARCHITREND ZERO』はぴったりのシステムなんだ。自分のところだけで、一つのシステムだけで、業務が完結できるからな。いわゆるBIMって言うと、もっとカバーできる業務の範囲が広いシステムのことを言うんじゃないか?
広い意味…ちょっと違うってことですか?
これは後から話そうと思ってたんだが、いわゆるBIMは、建設工程から施設管理まで建物のライフサイクル全体をカバーするんだ。つまり、設備や構造設計事務所とか、様々な企業がからんでくることになる。そういう意味では、 『3D建築CADシステム』ってだけじゃ、BIMとはちょっと違うかもな。
そうなんですね。
3D建築CADはBIM???
ありがとな、秋戸。また今度一緒に飲もうぜ。
おい、もういいかな?会社のやつら待ってるから。
なるほど。
あ、すみません、先輩!ずいぶんお引き止めしてしまって。ありがとうございました。
• 秋戸先輩は仲間のところに去って行きました。
2人とも、またな!
-第2章-
BIMのメリット?
たとえば、この空間を把握するには、どんな図面が必要になる?
BIMのメリット① 可視化1
だんだん分かってきましたけど、BIMのメリットって、具体的にどんなものがあるんでしょう?
メリットはいろいろあるけど、ここでは3つだけ挙げておくな。まずは、設計の可視化(見える化)だね。
BIMのメリット① 可視化2
え~っと、平面・矩計・展開・構造伏図・設備図…すみません。図面を全部見ても、ここまで具体的には把握できません。
そうだろ?設計のプロの福井でも図面だけでは具体的なイメージをつくれないんだから、具体的なイメージが欲しい施主には伝わらない。それが、建物モデルだと具体的に可視化できるのさ。
つまり、施主とイメージの食い違いが無くなるという事ですね。
施主だけに限らないぞ。構造設計などの外注も含めて、チーム内でもイメージの食い違いがない。だから、設計ミスも設計変更も大幅に削減できるのさ。
施主・設計者・施工者の間でイメージが共有できて、コミュニケーションや理解がスムーズに進みそうです。
BIMのメリット② 概算数量の把握
確かに。
BIMなら、建物モデルで入力したものはすべて数量として表れるから、概算数量表がすぐに出る。数量に単価をかければおおよその工事金額をつかむことだってできるのさ。
次のメリットとしては、概算数量の把握だね。2次元でどれだけ多くの図面を描いたところで、躯体や仕上の数量が正確に分かるってことはないよな?
すごく助かりますね。
設計変更があったとしても、建物モデルを変更すれば数量が変わるから、金額の増減もリアルタイムに把握できるな。
建物モデルから平面図・立面図・断面図などの各種図面が作成できるってことと、設計変更した場合は関係図面にすべて連動するから、図面間の食い違いや変更漏れがないってことですよね?
BIMのメリット③ 整合性の確保1
3つ目は、建物モデルの活用で話した事と重複するけど、設計図書の整合性だ。
そうですね。
そうだな。図面に限らず、建具表・仕上表などのリスト類でも同じことが言える。
BIMのメリット③ 整合性の確保2
生産性を上げて、設計の質のほうをもっと高めていきたいですよね。
今まで、品質確保のため、図面をチェックするためだけにどれだけ時間を取られてた?本来の設計業務に集中できるから、生産性が断然アップするぞ。
-BIMのメリット-可視化・概算数量の把握・整合性の確保
BIM ワンポイント解説③BIM
ワンポイント解説
BIMのメリットにはさまざまなものがありますが、ここでは代表的な3つを紹介しました。
各種シミュレーション
干渉チェック フロントローディング
可視化 概算数量の把握 整合性の確保
その他のメリットについては、キーワードのみご紹介します。
IPD(インテグレーテッド・プロジェクト・デリバリー)
ウォークスルー
スピードアップ
図書類
建物モデルを育てる-1
BIMって、図面が最後にできるんですよね。設計完了するまで図面はできないって事ですか?
図面は建物モデルで設計した結果と言っただけで、最後とは言ってないだろ。建物モデルの進捗状況に応じて、好きなタイミングで図面を切り出せばいいのさ。つまり、基本計画段階の建物モデルでも、カラー平面図やカラー立面図を作成できるのさ。
基本計画段階の建物モデルですか??
基本計画段階なら、全体的なデザインや空間バランスなど、全体の構成はまとめてあるよね。でも、その段階では、壁の厚さや仕上の下地構成のような詳細な仕様は決めてないだろ?そういう建物モデルでもいいんだ。
建物モデルを育てる-2
決まってない事は決めずに、建物モデルを作れるんですか?
そうさ。設計の進捗状況に応じて、決める事を決めて行けば、だんだん詳細な建物モデルに育っていくんだ。図面で言えば、一般図から詳細図に育てるイメージだね。
-建物モデルを育てる-プロセスの進捗に応じた建物モデルと図面
BIM ワンポイント解説④
BIMでは、従来の設計プロセスと同じで、決まっていない事は決めずに建物モデルを作っていきます。基本計画段階では、仕上が『クロス張り』とだけ決まっていれば、仕上の情報はそれだけでいいのです。下地構成が決まったら、その段階で情報を付加してやればいいんです。
BIMワンポイント解説
この様な情報は、後から簡単に付加できるので、決まっていないものは無理に決めない事です。設計の進捗に応じて建物モデルができあがり、その状態を反映した図面がその都度取り出せます。逆に言うと、取り出した図面を見れば、設計全体の進捗も分かるという事になります。
クロス張り クロス張り+空気層・ボード クロス張り+空気層・ボード+断熱材
基本 詳細
-第3章-
データ連携。そしてFMへ
構造・設備との協業?僕ら意匠設計がBIMを始めたら、構造設計事務所や設備設計事務所はどうなるんですかね?
相手先が2D-CADなら、DXFやJWWに出力して図面データを渡せるから、今までと変わりなく協業できる。相手先がBIMに対応したシステムを使えば、BIMで設計協業ができるから、さらに効果がアップするね。例えば、ダクトと構造の干渉などの問題点を、現場に入る前に簡単にチェックできるって便利だと思わないか?
外注先の構造設計事務所や設備設計事務所に、同じBIMソフトを使わせるのは無理だと思いますけど・・・
それぞれの専用設計ソフトとデータ連携で協業するから、同じBIMソフトを使う必要はないんだ。
構造・設備との協業??
データ連携を図にするとこんなカンジだね。さまざまなシステムがあるから、ここではその一部だけ紹介するね。BIM総合システムとして『GLOOBE』を取り上げてるけど、他に海外製のシステムもあるんだ。協業先がどんなシステムを使っていたとしても、それが『IFC』や『STB』などに対応しているシステムであれば連携できるから、協業が可能になるね。
STB
IFCやSTBとは?
『IFC』や『STB』って、なんですか?
BIMデータを受け渡す中間フォーマットのことさ。2D-CADの『DXF』のようなもの、と思えばいいね。『IFC』は、BIMデータの国際規格で、buildingSMARTと言う国際組織が定めているんだ。『STB』はbuildingSMARTJapanが定めた構造計算データの中間フォーマットになるね。
18
IFCやSTBとは??
何故、構造データだけフォーマットが違うんですか?
断面リストを使って構造設計をするのは、日本だけなんだ。『IFC』は国際規格だから、断面リストのデータについては規定がないんだね。『IFC』だけでは連携しづらいから、 『STB』を日本固有のルールとして、buildingSMART Japanがフォーマットを定めたんだ。
…となると、積算のルールも日本固有ですよね?『IFC』だけでは対応できないってことですか? そう。積算も『IFC』だけでは不十分だね。
だからさ、福井。これからBIMを導入するって話なら、BIM建築プロセスを総合的にカバーするようなデータ連携が可能なシステムを選択するほうが安心だぞ。
BIM建築プロセスを図にするとこんなカンジかな。
IFCやSTBとは???
つまり、建築プロセスを通して、図面ではなく、建物モデルを受け渡していくんですね?積算や施工までは分かりますけど…、この『FM』は建物管理の事ですよね?僕らの業務と関係あるのかな?
FMとは?
FMは経営用語で、ファシリティーマネジメント(建物の運営管理)の略称だね。
建物の運営管理は、発注者の業務ですよね?
建築とどんな関係が?
建物のライフサイクルコスト(LCC)全体からみれば、建設コストは、氷山の一角だと言われているんだ。経営者(発注者)達は、LCCを削減したいから、設計時点でLCCを把握したいのさ。
FMとは??建物のLCC…そこにBIMがどう絡むんですか?
ちょっと想像してごらんよ。2次元の、例えばペーパー上のデータしかない場合に、FM用のデータベースを作成するのに、どれだけの労力とコストがかかると思う?
BIMは仮想の建物モデル。もともと建築情報の集合体(データベース)じゃないか。
図面や見積書の膨大な資料から・・・
入力してはチェックを繰り返し・・・
ようやく完成するデータベース
例えば、工場を設計するとしよう。工場の建物モデルのデータから、FM用のシステムにデータ連携して工場全体のLCCが把握できれば、この工場から出荷する製品に対する適正価格を決める際の重要な決定要因になると思わないか?この工場の社長(発注者)にとってそれは、大きなメリットだぞ。うちの事務所は、いずれ、工事金額だけじゃなく、LCCの提示もやっていくつもりなんだ。競争力アップになるからね。
FMとは???
BIMだと、建物モデルデータから、LCCを算出するシステムにデータ連携ができるんだ。
連携
へー!BIMとFMの活用で、新しいビジネスモデルまで見据えてるんですね。
-第4章-
BIM導入にあたって
BIM対応の準備1
2次元CADは、デジタルドラフターのようなものなので、図面出力以外ではほとんど活用できないね。それに対して、建物モデルは、建築情報データベースになっているから、建築プロセスのあらゆる業務に活用可能なんだよ。だから、設計者・施工者・発注者のみんなに大きなメリットがあるんだ。
発注者の経営管理データを提供できるとは…2次元設計とは、予想以上にできる世界が違いますね。
しかし、いきなりそんな業務改革。うちにはできないんじゃないかな…
最初にも言ったけど、BIMは建物モデルを活用する建築手法。重要なのは、建物モデルを作る、つまり、建物モデルで設計する事に慣れることなんだ。
それが、本格的なBIM時代到来への準備になるぞ。
BIM対応の準備2
建築プロセスの中で、自分が携わる業務範囲のBIM化を目指して、ステップアップする事が大切だぞ。例えば、まずは基本計画までBIM化する、次に基本設計まではBIM化する、そして実施設計・データ連携までBIM化する、…というように少しずつできる範囲を広げてBIMのスキルを高めていくんだ。
なるほど!だから基本設計だけでもBIMの一部なのか。
それと、社内で一人だけ『BIM、BIM』って言っててもBIM化は進まないと思うぞ。福井が推進役になるなら、社内のワーキングや啓蒙活動を実施して、知識を共有していくことも重要だと思うぞ。
BIM対応の準備3
いやなに。BIMに取り組む仲間が増えるってことは、俺にとっても嬉しいからな。また何かあったら、相談しろよ。
具路部先輩、今日はありがとうございました。とっても参考になりました。
はい!
終わり• 後日、事務所でPCに向かう福井くん。なんだか楽しそうです。
~♬
福井くん、どうしたの?ずいぶんご機嫌じゃない。
これから、部長にBIMのプレゼンをするんです。いろいろ調べてると、BIMを使わないことがすごくもったいないって分かったんですよ。
坂井先輩
さっそくBIMシステム『GLOOBE』の体験版を試してるんですけど、これがまた簡単で楽しいんですよ~♪
その意気なら部長も認めてくれるかもね。
はい!BIMが導入されるよう頑張ってプレゼンしてきます!