ECC8 へツ ドフ芽ヲ・ノ - 07)ECC88-6DJ8-headphone-amp... · ecc88／6dj8の州毘小振りの9ピンmt ...
ル ニ ヲ テ 含 腺 其 ハ ム ヲ ノ 半 皮 見 主 流 膚 タ...
1
Transcript of ル ニ ヲ テ 含 腺 其 ハ ム ヲ ノ 半 皮 見 主 流 膚 タ...
1
岡
山
醫
學
會
雜
誌
第
四
百
六
號
大正十二年十一月三十日發行
原
著
卵
集皮様嚢腫
病理知
見補
遺
岡山啓科大學産婦人科教室
(主任 安藤教授)
齋
藤
治
目
次
一、
緒
論
二、
検
査材料竝檢
査方法
三、
實驗例
1.
肉
眼的所見
2.
組織的檢
査
3.
脂肪定量的檢
査
四、
線
括的觀察
1.
内容觀察
2.
溶
融點
3.
酸
數
4.
鹸
化數
5.
沃度數
6.
組織
的檢
査
7.
脂肪染色法
ニヨル觀察
五、
内容
ノ變化
ト其
ノ原因
1.
分泌組織
ト内容
2.
腫瘍莖
捻轉
ト内容
3.
内容
ト他種卵巣嚢
腫ノ合併
4.
脂肪球皮様嚢腫
ノ成立
ニ就
キテ
六、
結
論圭要文獻
挿圖説明
齋藤-卵巣皮様嚢腫病理知見補遺
七八七
2
第
一
緒
論
卵
巣
皮
樣嚢
腫
ハ通
常
三
胚葉
組織
成生
物
ヲ有
シ
(Triphyllome)、
稀
ニ二胚葉組
織
(Biphyllome)
ヨリナ
ル
モノナ
リ
ト
ハ
W
ilｍs, Pfannenstiel, Kroemer
ニョリテ唱
道
セラ
レ、Askanazy
其他
多數
ノ研究
者
ニョリテ確
證
セラ
レン所
ナ
リ、
而
シテ
皮
樣
嚢
腫錐
體
又
ハ嚢
腫壁
ノ肉
眼
的及
ビ顯微
鏡
的檢索
ノ結
果
ハ斯
ル
一個
ノ小卵
巣
腫瘍
内
ニ於
テ上記
三胚葉
成
生物
ヲ證
明
シ
今
日迄
ニ已
ニ發
見
セラ
レタ
ル組
織成
分
ハ殆
ド人體組
織
ノ全部
ヲ網羅
ス、
只生殖腺
ノ發
見
セラ
レタ
ル
モノナ
シ、Sieveking
ハ胎生時生殖腺
ヲ見
タリト云
フモ確實ナラズ、而
シテ多數
ノ場合殆ド常
ニ見
ルハ旺盛ナ
ル發育
ヲ示
ス皮脂腺、毛根、皮
下脂肪組織
ヲ含
ム皮膚組織
ニシテ頭皮
ニ相當
スベキ
モノナリ、齒牙
ハ約半數
ニ於
テ認
ムト云フ、
一方嚢腫内
ニ瀦溜
スル
内容
ハ體温
ニテ
ハ半流動性
ノ濃厚粥汁様外觀
ヲ呈
シ、室温
ニ放置
スルトキ
ハ黄色「バター」状
ニ凝固
シ通常脱落毛髪
ヲ混
ズト稱
セラ
ル、其
ノ主要成分
ハ皮脂腺分泌物タル皮脂
ニシテ
(Gebhard. u. a.)之
ニ剥脱上皮細胞、脂肪球、細胞破壊物、
時
二「ヒ
ヨ
レステリ
ン」結
晶
ヲ混ズ
ルモノアリ
ト云
フ。
飜
ツテ日常
吾人
ノ手
術
時
摘
出
セル卵
巣
皮樣
嚢
腫
ヲ見
ル
ニ其
ノ錐體
ノ肉
眼
上種
々ナ
ル形
態
ヲ呈
セ
ルガ如
ク、内
容
モ亦
多
種
多
様
ニシテ其
ノ色
調
ニ於
テ、粘
稠度
ニ於
テ、
混濁
ノ度
ニ於
テ殆
ド千差
萬
様
ト云
フモ過
言
ニアラ
ズ、從來
唱
ヘラ
レシ如
ク唯
皮
脂腺
分泌
物
ノミ
ヨリ成
ル
モノナ
リ
ト
セバ、假
令
何所
ノ身體
部分
ニ屬
ス
ル皮
脂腺
ナ
リ
ト
モ其
ノ分
泌物
ノ百
種
百樣
ヲ
呈
ヌ
ル所以
ヲ理解
シ得
ズ、然
ル
ニ從來該腫瘍
ノ組織的檢索乃至發生
ニ關
シク
ハ先人多大ノ努カ
ノ拂
ハレシト雖
モ、内容
殊
ニ内容
ト共
ノ分泌組織
トノ關係
ニ至リテ
ハ等閑
ニ附
セラ
レシモノノ如
シ、只
Haffter
ハ乳汁樣内容
ヲ有
スル皮樣嚢腫
錐體
ニ於
テ乳腺實質
ヲ證明
シ得
タリト云
ヒ、
Askanazy
ハ腺性内胚葉組織
モ亦分泌機能
ヲ有
スルモノナラソト云
フ
ニ過
ギズ、他方皮様嚢腫
ハ他種
ノ卵巣嚢腫
ト合併
シ、兩種嚢腫間中隔
ノ穿孔、破壞
シテ内容
ノ混合
スル場合
アリ、最
モ多數
ニ合併
スルハ多房性假性「ムチ
ン」性嚢腫
ニシテ、單房性奨液性嚢腫
ト合併
スル
ハ甚
ダ稀有ナ
リト云
フ、而
シテ之等嚢腫
間中隔
ハ増加
スル皮様嚢腫内容及ビ其
ノ中
ニ常存
スル毛髪尖端ノ破壞作用
ニヨリテ兩内容
.彼是相通ズ
ル
ニ至
ルモノナ
リト云
フ。
(Kromer)更
ニ内容
ニ變化ヲ來
スモノハ莖捻轉ナリ、莖捻轉ガ急激且高度
ニ發來
スルカ、又
ハ緩慢且輕度
ニ
齋藤-卵巣皮樣嚢腫病理知見補遺
七八八
3
來
ルカ
ニヨリ
テ或
ハ腫
瘍壁
及
ビ内腔
ニ出
血
ヲ來
シ、
叉
ハ浮腫
次デ内
腔
ニ滲
出液
ヲ析
出
スベシト云
フ。
分
泌組
織
ニヨリ内容
モ變
化
ス
ルモ
ノナ
リキ
ャ否
ヤ、
他種卵巣嚢腫ノ自解、又
ハ莖捻轉
ニョリ内容
ハ果
シテ變
化
ス
ル
モ
ノナ
リ
ャ、
如何
ニ變
化
スル
モノナ
リ
ャ等文獻
ニテ知
ル吾人
ノ内容
ニ關
スル知見
ハ甚ダ少
シ。依
リテ予
ハ昨年末以來、
一
方内容
ノ化學的檢査
ヲ、他方嚢腫錐體及ビ壁
ノ組織檢査殊
ニ分泌可能臟器
ヲ顧慮
シテ檢査
シ、
一二興味
アル事實
ニ到着
セ
シヲ以
テ茲
ニ報告
セ
ント
ス。
第二
檢
査
材
料
竝檢
査
方
法
先ヅ皮樣嚢腫内容中
ノ脂肪
ノ溶融點、酸數、鹸
化數、沃度數
ニヨリテ内容
ノ差異
ヲ化學的
ニ定メ、化學的差異
ニョル
内容
ノ肉眼的差異
ヲ確認
シ、更
ニ組織的檢査
ニョリテ正常組織
ニ於ケ
ル知見
ヲ以
テ分泌可能性組織
ヲ求
メ、次
ニ脂肪染
色
ニョリテ嚢腫腔
ニ分泌
スル脂肪腺
ヲ定メ、斯
クテ内容
ノ化學的差異
ヲ先ヅ分泌腺
ニ求
メ、尚
ホ内容
ニ變化
ヲ來
ス動
機
即チ莖捻轉、他種卵巣嚢腫内容ノ混
入
ノ結
果
ヲ化學
的
ニ定
メ
ント
ス
ルヲ以
テ目的
ト
セリ。
斯クテ予
ハ昨年末以來當大學産婦人科教室
ニテ手術時
ニ得
タル皮樣嚢腫
ノ九例
ニ就
キテ摘
出後
數
日間「フオ
ル
モー
ル」
中
ニ浸
シ、嚢
腫
壁
ノ固
定
ス
ルヲ待
チテ切
開
シ、
一、内容
ノ處置
凝固
セル内容
ヲ肉眼的
ニ硬度、色調、夾雜物
ヲ檢
シ、次デ其儘顯微鏡的檢査ヲ行
ヒ、
溶融
點
ヲ定
ム。
残
部
ハ之
ヲ共
口瓶
中
ニ採
リテ過剰
ノ「ヱー
テ
ル」ヲ注
ギ、
ヨク振蘯
シ、二十四時間放置
シ其
ノ間屡
々振蘯
ス、斯
クテ之
ヲ濾過紙
ニテ濾渦
シ、濾液
ヲ再ビ濾過
シ、磁器皿
ニ受
ケラ室温
ニ放置
スルトキ
ハ、「ヱー
テ
ル」ハ蒸發
シテ黄
色
乃
至黄
白
色光輝
アル脂肪物
ヲ器
底
ニ止
ム、全
ク水分
ヲ除
去
スル爲數
日間除濕器
ニ納
メ、平等粘稠
ナル脂肪層
トナ
ルヲ待
ツ、然
レ
共本物質
ハ尚
「ヱーテル」不溶性
ニシテ水
ニ可溶性物質
ヲ含
ミ居
ランモ計
リ難
キ
ヲ以
テ、再
ビ過
剰
ノ
「ヱー
テ
ル」ヲ注ギ
テ振蘯
シ、二十
四時間放置後之
ヲ濾過
シ、濾液
ヲ蒸發皿
ニ採
リテ室温
ニテ蒸發
スルコト前囘
ノ如ク
ス、斯
クテ器底
ニ凝
齋藤-卵巣皮樣嚢腫病理知見補遺
七八九
4
固
セル純「ヱー
テ
ル」可
溶
性物質
ニッ
キテ檢
査
ス
ル
コト次
ノ如
シ。
1.
溶融
點
約
三〇
〇立
方糎
ヲ客
ル
、「ベッ
ヘルグ
ラ
ス」内
ニ水
ヲ盛
リテ銅網
上
ニ置キ、次デ上記ノ如
ク處置
セル凝固脂肪塊
ノ少量
ヲ分
離
針
ヲ以
テ細
キ「ス
ピ
ッッグラ
ス」ノ基
底
ヨリ稍上部
ニ置
キ、細
キ護謨輪
ヲ以
テ檢
温器
ニ結
ビ付
ケ、「スタ
チー
フ」ニ
ヨリ
テ「ベッ
ヘル」内
ノ水
ノ中
央部
ニ懸
垂
シ、硝
子棒
ニテ水
ヲ攪拌
シツ
、徐
々
ニ加熱
シ、硝子管内脂肪
ノ液化
シ初メ
タル
トキ
ニ得
タ
ル度
盛
ヲ溶
融
點
ト
セリ。
2.
酸
數
一・○
瓦
ノ脂肪
ヲ精
密
ニ秤量
シ、
二〇
立方
糎
ノ「ヱー
テ
ルー
ア
ル
コホー
ル」(二・一)ニ溶
解
シ
、「フ
エ
ノ
ー
ル
フ
タ
レ
ィ
ンー
ア
ル
コホー
ル」溶
液
ヲ數
滴
加
へ、
十分
一定規苛性加里酒精液
ニテ滴定
ス、次デ次式
ニナ酸數
ヲ求
ム。
即チ千瓦
ノ脂肪中
ニ存
スル酸
ヲ中和
スル
ニ要
スル苛性加里ノ瓦數
ニシテ脂肪中
ノ遊離脂肪酸
ノ量
ヲ示
スナ
リ。
3.
鹸
化
數
一・○瓦
ノ凝
固物
ヲ秤
量
シ、「コルベ
ン」ニ容
レ、五分
一苛性
加
里酒
精溶液
二
五・立方糎
ヲ加
へ、重煎湯
ニテ弱
ク沸
騰
セシ
ム
ル
コト三十分
間
、數
滴
ノ「フ
エノー
ルフタ
レイ
ン」液
ヲ加
へ、
五分
一定
規鹽酸
液
ニテ滴定
ス、
次式
ニテ鹸
化
數
ヲ定
ム。
V
=
(25.-
消
費鹽酸液量)
×
0.0
1122
×
1000/
1
脂肪竝
ニ遊離脂肪酸ヲ石鹸
トナス
ニ要
スル苛性加里ノ瓦數ナ
リ。
4.
沃
度
數
○
・五
瓦
ノ脂肪
ヲ二○
立方糎
ノ「ク
ロロホ
ルム」ニ溶解
シ、
二五
・立方糎
ノ沃
素液
ヲ加
へ、暗
所
ニ放
置
スル
コト四
時
間、
二○竓ノ沃度加里液
ヲ加
へ、
一五〇竓
ノ蒸餾水ヲ以
テ稀釋
シ、定價
セル次亞硫酸曹達液
ヲ加
ヘテ稀釋液
ヲ黄
色
ニ至ラ
シ
メ、澱粉液ヲ加
へ、更
二次亞硫酸曹達液
ニテ滴定
シ、次式
ニテ沃度數ヲ求
ム。
齋藤-卵巣皮樣嚢腫病理知見補遺
七九〇
5
J
ハ沃度數
V
ハ○・二瓦
ノ沃素
ニ相當
スル次亞硫酸曹
達
ノ竓數
V1ハ使用
シタル沃素液量
ニ相當
スル次亜硫酸曹達
ノ竓數
V2
ハ滴定
スルニ要
シタル次亞硫酸曹達
ノ竓數
沃度數
ハ百瓦
ノ脂肪
ガ攝取
スル沃素
ノ瓦數
ニシテ脂肪中
ノ不飽和脂肪酸
ノ量
ニ相當
ス。
本試驗
ニ於テ沃素液及ビ次亞硫酸曹達液
ハ試驗直後
ニ定價
スルコト勿論ナ
リ。
上記四種
ノ試瞼
ニ於
テ内容中
ノ脂肪
比較
スル
コトト
セリ
(化
學
的試驗
ニ就
キ
テ
ハ凡
テ
隈川-須藤氏醫化學實習
ニ從
フ、試驗藥
ノ製造亦然
リ)。
二、組織的檢査
「フオ
ル
モー
ル」ニ固
定
セ
ル嚢
腫
錐體
ノ過
大ナ
ルモノ
ハ所
々
ヨリ、然
ラザ
ル
モノ
ハ全
錐體
ヲ連
續
的
ニ切
除
片
トシ、
尚
ホ
嚢腫壁ノ種
々異
レル部位
ヨリ切除片ヲ作
リ、
一
ハ「ツ
エ
ロ
イ
ヂ
ン
」封
固
、「
ヘ
マ
ト
キ
シ
リ
ンー
ヱ
オ
ヂ
ン」染
色
、ワ
ンギ
ー
ソ
ン
氏染色
ヲ行
ヒ、
他
ハ凍
結標本
トシ第三
「ズダン」、
「
ニー
ルブ
ラ
ウ
ズ
ル
フ
ア
ー
ト
」、
「オ
ス
ミ
ウ
ム」酸
、
フ
イ
シ
ヱ
ル氏
法
、
スミ
ス氏
法
ニヨリ分
泌
組
織
ヲ檢
出
シ、
次デ脂
肪
ノ關係
ヲ見
ント
セリ。
第三
實
驗
例
第
一
例
西○
キ○、
二十四歳、
一囘
經産
婦、左側皮樣嚢
腫。
1.
肉
眼
的
所見
。
鷲
卵大
ニシテ球形、外面
ハ平滑
ニシテ壁
ハ錐體
ノ附近
及ビ卵巣間膜部
ハ肥
厚
ス
ルモ爾餘
ノ部
ハ非常
ニ菲薄
ナリ、内面
ハ肥厚
セ
ル部
か平滑
ナ
ルモ菲薄
部
ハ粗
〓
ニシテ脱
落毛髪癒着
ス。
錐體
ハ示指頭
大
ニシテ著明
ニ突出
ス、其
ノ尖端
ニ三本
ノ乳齒
發生
シ、
二本
ハ門齒、
一本
ハ犬齒
二シテ齒根部
ハ大半溶融侵蝕
セラ
レ、易
ク脆落
ス、
其
ノ
直
下
ニ二本
ノ大
ナル永久齒
アリテ骨質
ヨリナ
ル齒槽突
起内
ニ堅
ク占坐
シ、
周
圍
ハ全
ク軟部組織
ニテ被
ハル、門齒
及
ビ臼齒
ナリ、即
チ齒牙交
代期
ニァ
ルナ
齋藤-卵巣皮樣嚢腫病理知見補遺
七九
一
6
リ、錐體表面
ハ黒色-
麻色
ノ長短
種
々ナ
ル多數
ノ毛髪
チ發生
スル表
皮
ニテ被
ハレ、錐體基定部
ハ不正形
ノ小骨片
ヨリナ
ル。
内容
ハ鮮
黄色
、黄色「バター」様
ニシテ粘着力
強
シ、少許
ノ米粒
大
ノ白色混
濁
セ
ル凝固物
及ビ脱落
毛髪
チ混ズ
ル毛透
明
ノ度強
シ。鏡檢
スルニ美麗
ナ
ル鮮
黄色部
ハ殆ド有形物質
テ含
マズ、白色凝固物
ハ股落細胞塊
ニシテ巳
ニ核
ヲ
有
セズ
、所
々
ニ少
許
ノ脂
肪
滴
チ有
ス
ルノ
ミ。
本
腫瘍
ハ肉眼
上全
ク
ラ房
自リナリ中隔遺
残物
ト覺
シキ何物
モナ
シ、
只卵巣
聞膜
附着
部
ニ沿
ヒ多數
ノ小嚢腫變性
ヲ起
セ
ル卵巣
實質
テ有
スルノミ。
2.
組織的檢
査。
組織
的構造
ハ甚ダ單純
ナリ、錐體基
定部
ニ存
スル不正形骨片
ヲ被
フ
モノ
ハ
皮膚組織
ナリ、表面
ハ表皮層
ニ
ハ被
ハレ、乳頭
ハ内腔
ニ向
ツテ強
ク剣状
ニ突
出
シ、
其
ノ角
質
層
ハ多
ク剥
脱
ス、顆
粒
層
、
マル
ビ
ギ
ー氏
層
及
ビ基
定
層
ヨ
リ
ナ
ル、基
定層細胞
内
ニ
ハ色素顆粒
チ見
メ、皮
下結締織部
ノ殆
ド全部チ占
ム
ルモ
ノ
ハ腺
體
ノ比較的小
ニシテ相互密
在
スル皮
脂腺
ナリ、腺
上皮
ハ股子形
ニシテ
全
ク腺腔
ナク腺體中央部及
ビ排泄管
ニ近
キ上皮
ハ甚ダ大
ニシテ核
ハ中央
ニ占
坐
シ、原形質
ハ「ソ
エロイ
ヂ
ン」切片
ニテ
ハ殆ド「ヱナヂ
ン」ニ若染
セズ、
一般
ニ大
ナ
ル排泄管
テ有
シ表皮細胞
ハ深
ク侵入
シテ直接腺
上皮下接
スルアリ、又
反封
ニ腺上皮
ノ高
ク膨隆
シテ表皮面迄達
スルア
リ、
一般
ニ噴
火口状
ニ開口部
ノ階
凹
スル毛ノ多
シ、又表皮
下
ニ大小
ノ粉瘤
チ見
ル、其
ノ他毛根及
ビ少數
ノ
立毛筋及
ビ腺體
ト小骨片間
ニ脂肪組織及
ビ血管
チ見
ルノミニシテ汗腺
モナク
皮脂腺以外
ニ分泌可能性組織
ト思
シキ
モノナ
シ。
嚢腫壁
ハ單層
ノ扁
平上皮
ニテ被
ハレ、胞
體甚
ダ小
ニシテ密
在竝立
スルアリ
又細胞
ノ粗隔
スルアリ、嚢腫壁中
ニ
ハ全
ク腺性組織
ヲ見ズ、毛髪ヲ附着
セ
シ部
ハ上皮
全ク剥落
シ結締織
モ亦暗褐黄色
色素ヲト
リテ膨
大
シ肉芽組織
ノ如
シ。
脂肪染色
ノ結
果ヲ表解
セバ次
ノ如
シ。
皮脂腺
ハ甚
ダ多量
ノ中性脂肪
ヲ含
ミ、大小種
々ナ
ル滴
状
ヲナ
シテ細胞核
ヲ
取
リ圍
ミ胞
體ヲ充満
ス、腺
體中央
部及
ビ排泄管
ノモノ
ハ殊
ニ胞
體大
ニシテ脂
肪
ニ富
ミ、少
許
ノ脂肪酸
及ビ「ヒヨレステリン」物質ヲ含
ミ盛
ニ内腔
ニ向
ツテ
排泄
シツツ
アリ、内容
ハ甚ダ多
量
ノ脂
肪
ヲ含
ミ中性脂
肪
ヲ主
ト
スルモ又脂肪
酸及
ビ「ヒヨレステリン」物質
ヲ有
シ、脂
肪酸
ハ皮脂腺
上皮
内
ノモノ
ニ比
シ著
シク多
シ、内容
ハ表皮
上層
ニ侵
入
シ又嚢
腫壁
ニテ上皮脱落部
ニ
ハ好
ンデ組
織
中
ニ侵入
スルモノ
、如
シ。
3.
内
容
檢
査
。
齋藤-卵巣皮樣嚢腫病理知見補遺
七九二
7
イ
溶融
點
内容
ノ儘
三三度八分
純
脂
肪 二四度六分
ロ 酸
數
○
・八四
一五
ハ 鹸
化
數
一四
一・九
三
三
ニ 沃度數
九五
・五八
一
4.
考
按
。
本
例
ハ未
ダ甚ダ小ナ
ル鷲卵大皮様嚢
腫
ニシテ移動性
ニシテ癒着
ナク、又莖
捻轉
ヲ見
ズ、錐體
ハ肉
眼的
ニ交
代期齒
牙發生
アリテ組織的
ニハ只單純
ナ
ル有
毛皮
膚
組織
ノ
ミ
ヨ
リ
ナ
リ、
分
泌
粗
織
ト
シ
テ
ハ異
常
ナ
ル發育
ヲ
ナ
シ、
旺盛
ナ
ル
分泌状態
ヲ目
撃
シ得
ル皮脂腺
ノミ、他
ニ分泌可能性組織
ト認
ムべキモノナ
シ,
嚢腫壁又大部分
ハ單層扁平
上皮
ヨリ被
ハル、而
シテ肉
眼的
及
ビ組織的
ニ他種
卵
巣嚢腫
ノ穿
孔、破壞
ト覺
シキモ
ノ全
クナ
シ、依之觀
是
ニ本例
ニ於
ケ
ル内容
ハ全
ク皮脂腺分泌物
ノ瀦溜
セシモノナ
ルベ
シ、而
シテ内容
ノ性状
ヲ見
ルニ美
麗
ナ
ル黄
色
ヲ呈
シ甚
ダ粘稠、夏季
ハ室温
ニ於
テ已
ニ液状
ヲナ
シ透明、恰
モ「オ
レーフ」油
ヲ見
ルニ異ラズ、只僅
ノ夾雜物
ト
シテ脱落上皮團塊
ノ白色斑
ト
シテ
混
ズ
ルノ
ミ、
凝
固
セ
パ黄
色
「バ
タ
ー」様
ト
ナ
リ
、
肉
眼
的
ニ巳
ニ單
純
ナ
ルヲ思
ハ
シ
ム
ルナ
リ、
融
點
低
ク
シ
テ
ニ
四度
六分
、酸
數○
・八
四
一五
、鹸
化
數
一四
一・九
三
三、沃度數
九五・五八
ニシテ酸數
ノ少
キ
ニ沃度數
ノ多キ
ハ脂
肪酸
ハ多量
ノ不
飽和脂酸即
チ油酸類
ヲ含有
スル
ニヨルモノナ
ルベシ、從
テ融
點
ノ低キ
コト
モ
了
解
シ得
ラ
ル
、ト同時
ニ中性脂肪
モ油酸「ヱステ
ル」ヲ多量
ニ含有
スルモノナ
ル
ベ
シ
。
正常皮脂腺
分泌物
モ亦上記
ノ化學的集
成
ヲ有
スルモ
ノナリキ否ヤ
ハ甚ダ興
床
アル
コトナリト雖
モ、皮脂
ノ定性
分析
ニ就
キテ
ハ三四
ノ文獻
ヲ見
ルモ予
ガ
方
法
ニヨル定量
分析
ハ之
ヲ比較
スベキモノナキチ遺憾
ト
ス、サ
レド又必ズ
シ
モ
一致
ス
ルヲ要
セザ
ルベシ、何
トナ
レバ皮様嚢腫内容
ハ巳
ニ病的腫瘍組織
ノ
分泌物
ナ
ルヲ以
テナリ、寧
口多數
ノ同
一ナ
ル病的腫瘍組織分泌物
ヲ其
ノ分泌
組
織
ト共
ニ比較
ス
ル
コト
ニ意義
ヲ有
ス
ルモ
ノ
ナ
リ
ト思
惟
ス。
第
二
例
木○
ツ○
、四十八歳
、未産婦、子宮筋腫
ニ合併
セル左
側皮様嚢腫。
1.
肉
眼的
所見
。
鷲
大、卵
圓形
ニシテ表面
ハ平
滑、莖捻轉
ナ
シ、錐體
ハ腫瘍莖
ノ對側
ニアリ
テ大豆大
ニシテ桑實状
ヲ呈
シ多數
ノ小突起
ヲ出
ス、硬度
ハ一様
ニ強靱、嚢腫
壁
ヨリ
「ポ
リープ」状
ニ突出
ス、毛髪
ハ鳶色
ニシテ長サ約七・仙
米
ノ太キ毛髪
ハ基
定部
ヨリ簇生
ス、壁
ヨリ
モ亦短
キモノ散在性
ニ發生
ス、單房
ニシテ肉眼
上中隔
ト覺
シキモノナシ、壁内面
ノ錐體附近
ノ約
半面
ハ白色泥状物
ニテ被
ハ
ル
、モ他半部
ハ多少粗〓
一シテ汚穢褐色
ナリ、錐體
ニ
ハ肉眼上齒
牙ナク又
一
定
ノ器
臟
ト覺
シキ
モ
ノナ
シ。
内容
ハ黄
色
ニシテ僅
ニ白色平等
二混濁
シ美
麗
ナリ、恰
モ卵黄
ノ如
ク之
ニ多
少
ノ脱落
毛髪
ヲ混
ズ
ルノミ、凝固物
ヲ認
メズ、粘
〓ニシテ流動性
ニ富
ム、鏡
檢
スルニ無造構物質中
ニ脱落細胞片、大小脂
肪滴
ヲ見
ルノミ。
2.
組織的構造。
錐體
ハ全
ク表皮
ニテ被
ハレ共
ノ造構前例
ト同
ジ、皮脂
腺
ハ錐體尖端
ノ部
ハ
特
ニヨク發育
シ深
ク底部
ニ侵入
ス、腺體
ハ一般
ニ小ナ
ルモ相互隣接密
在
ス、
サ
レド錐體周縁部
ノモ
ノ
ハ表層
ニ位
シ發育
不良
ナリ、汗腺
ハ少數
ナルモ皮脂
腺底部
ニ存
シ單層
ノ低
キ圓柱上
皮
ニテ被
ハレ多
ク
ハ腺
腔ヲ有
ス、表皮層
迄排
泄管
ヲ迫
及
シ得
ルナリ、毛根
亦多
シ、皮下脂肪組織
ハ少
シ。
齋藤-卵巣皮樣嚢腫病理知見補遺
七九三
8
壁
ハ多
ク
ハ錐體表
面ヲ被
ヒシ表皮
層
ノ延長
シ菲
簿トナリ、表皮
下ノ結締織
ハ核
ニ乏
シ、壁中
ニモ皮脂腺
ノ細
長ク、壁
ニ沿
ヒ彎曲
セ
ルモノヲ少數認
ム、
少數
ノ毛根
モ存
スルモ汗腺
ハナ
シ、
上皮
剥脱部
ハ前例
ノ如
シ。
脂肪染
色、各種脂肪染色
ニヨル結果
ハ第
一例
ト同
ジ、
分泌
組織
ト
シテ皮脂
腺
以外
ニ汗腺
アリ、汗腺
ハ腺
上皮間
ニ時
ニ脂肪小滴
ヲ見
ルコトアリ、又腺腔
ノ稍
大ナ
ルモノ
ハ其
ノ中
ニ少許
ノ分
泌物
ヲ有
シ、分
泌物中
ニ脂肪
小滴
ヲ散見
スルアリ、「オスミウム」酸
ニテ最
モ明瞭、第
三「ズ
ダ
ン」ニテ
ハ寧
口暗
褐黄色
ニシ
テ著
色
弱
シ、其
他「ニ
ー
ルプ
ラ
ウ
ズ
ルフ
ア
ト」、
フ
イ
シ
ヱ
ル氏
法
、
スミ
ス
氏
法
ニテ
ハ陽
性
反應
ヲ
得ズ
、
其
ノ含
有
量
ノ甚
ダ微
少
ニ
シテ、
著
染
力
弱
ク又
ハ
複
雜
ナ
ル操
作
法
ニテ
ハ中途
脱
出
ス
ル
モノ
ナ
ラ
ンカ
。
3.
内容檢
査。
イ 溶融點 内容
ノ儘
三
二度八分
脂
肪
二三度
ロ 酸
數
○
・九五〇八
ハ 鹸
化數
一四四・九三三
ニ 沃
度数
一○
○・二八七
4.
考
按
。
本例
モ鷲
卵大
ノ小
ナ
ル皮
様嚢
腫
ニシテ、莖捻
轉
ナク癒
着
ナシ、又組織的
及
ビ肉眼的
ニ他種卵巣嚢腫
ノ合併
セ
シモノ
ニモアラズ、
只第
一例ト異
ル
ハ齒
牙
發生及
ビ骨質
ヲ全然有
セズ
シテ分泌組織
ト
シテ
ハ皮脂
腺
ニ加
フ
ルニ少數
ノ汗
腺
ヲ有
スルノヨ、而
シテ兩腺
共
ニ分泌機能
アリテ内腔
ニ向
ツテ排泄
シツ
、ア
リ、故
ニ本例
ノ内容
ハ之
ヲ皮脂腺
及
ビ少
数
ノ汗腺分泌
物
ノ混
合物ト認
ムルコ
ト
ヲ得、而
シテ其
ノ内容
ヲ見
ルニ亦第
一例
ト酷似
シ、其色調、粘稠度
ハ同
一
ナ
ルモ多少平等
ニ白色混濁
セ
ルノ
ミ、又化學的構造
モ殆ド同
一ニシテ油酸
及
ピ其
ノ「ヱス
テ
ル」ニ富
メ
ルモ
ノ
ナ
ルベ
シ、
脂
肪染色
ニテ汗腺
ハ殆
ド脂肪
ヲ有
セズ
、
故
ニ内
容
ノ脂
肪
ニ
ハ影
響
セザ
ル
モ
ノ
、如
シ。
第
三
例
山○
ク○、二十九歳、ニ同經産婦、兩側卵巣
皮樣嚢
腫。
其
一、右側皮樣嚢腫。
1.
肉
眼的
所
見
。
鷲卵大
ニシテ卵圓形、其
ノ小
ナル
一極
ハ約雀卵大
ノ漿液性
内容
ヲ有
スル嚢
腫
ヨリナ
リ他極
ハ即
チ固有皮様嚢腫ナリ、兩内容
ニ
ハ全
ク交
通ナ
シ、腫瘍
ハ
一般
ニ表面平滑
ナリ、錐體
ハ莖
ノ反對
側
ニアリテ壁
ヨリ漸
次高
マルモ著
明
ナ
ラズ約小指頭大
ナリ、
コノ錐體基定部
ニ
一個
ノ粘稠透明
ナ
ル内容
ヲ有
スル
一
嚢腫
アリ
テ錐體
ノ
一部
ヲナ
スモ固有腫瘍腔
トノ間
ニハ全ク交通
ナシ、錐
體
ハ
全面白色被物
ニテ包
マレ基
定部
ニノミ軟
骨様硬度
ノ部
アリ、特
ニ注
目
スべキ
ハ毛髪
ナリ、美麗
ナ
ル銀白色
ニシテ長
キモノモ約六仙米
ニ達
スルノミ、錐
體
及
ビ壁
ヨリ發毛
シ又
内容
中
ニ多
數脱落
混在
ス、
凡テ同
一色
ニシテ
一ノ混色
ナ
シ。内
容
ハ美麗
ナ
ル帶
白黄
色
ニシテ半透
明、少許
ノ白色斑紋状凝固物
ヲ混ズ、
コノ凝固物
ハ鏡檢
スルニ脱落
上皮塊
ニシテ爾餘
ノ部
ハ少數
ノ剥脱上皮ト大小
種
々ナ
ル脂肪滴
トヲ有
スル光輝
ア
ル無造構物質
ナリ。
2.
組織
的檢
査。
表面
ハ凹凸甚
シキ表皮層
ニテ被
ハル、皮下結締織
ヲ占
ムル皮脂
腺
ノ數
ハ多
カラズ、サ
レド腺體
ハ大
ニシテ分泌機能
ヲ明視
シ得、特
ニ注目
スベキ
ハ汗腺
ノ甚
シキ發育
ナリ、即
チ皮脂腺間
及
ビ皮脂腺底
ニ亙
リ集團状
ニ存
ス、腺
體
ハ
齋藤-卵巣皮樣嚢腫病理知見補遺
七九四
9
單層
ノ低キ圓柱
上皮
ニテ被
ハレ腺腔
ハ大
ニシテ多數
ノ表層
ニ向
フ排泄管
ヲ認
ム、此外肉
眼的
ニ彼
ノ粘
液樣透明物質
ニテ充サ
レシ錐體基
定部
ノ小腔
ハ實
ニ
氣管
及ビ食
道
ニシテ層重氈
毛上皮
ニテ被
ハレ氈毛
ハ甚
ダ著明
ナリ、
上皮細胞
間
ニ杯状細
胞ヲ見
ズ、内壁
ハ多少
凹凸
シ上皮
下
ニ
ハ多數
ノ小粘液腺
γリテ腺
上皮
ハ透
明
ニシテ上皮
ハ高
ク核
ハ基定部
ニ羅列
シ原形質
ハ殊
ニ腺腔
ニ向
フ方
ハ透
明
ノ度
強
シ即
チ分泌作用
ヲ營
ミソ
ヽア
ルナリ、而
シテ其
ノ腺腔
ハ凡
テ排
泄管
ヲ氣管腔
ニ開
ク、薄
キ粘膜下組織
ニ次
テ四個
ノ小軟
骨
ハ輪状
ニ氣管
ヲ園
ム、
凡テ軟骨膜
ヲ有
シ其
ノ彎曲
ハ常人
ト異
リ外面凸隆
シ内面亦輕
キ凹面
ヲ氣
道
ニ向ク、膜様
部
ノミ
ハ輪
状滑平筋纎維束
ヲ見
ル、此
ノ膜
樣部
ニ隣接
シテ大
ナ
ル腔
洞ヲ有
シ
一部
ハ低
キ層重氈毛圓柱
上皮、
一部
ハ層重磚状
上皮
ヨリナリ
多數
ノ皺壁
ヲ有
スル食道
アリテ少數
ノ粘液腺
ヲ有
ス、粘膜
下組織
ニ次
デ稍
厚
キ輪状滑平筋
纎維
ア
ルモ縦
走筋纎
維ヲ認メ得ズ、其
ノ外壁
ハ多少
ノ脂肪
組織
ヲ界
シテ皮膚
ニ接
ス、即
チ食道
及ビ氣管
ハ粘
液腺
分泌
物
ニテ充サ
レ肉
眼上小
嚢腫状
ヲ呈
セシナリ、然
レドモ肉
眼的
ニ然リ
シ如
ク組織的
ニモ固有嚢腫腔ト
交通
セズ
シテ各
々獨立
セル腔洞
ヲ形成
セルナリ。
次
ニ特
有ナ
ル銀白色毛髪
ノ毛根
ニ就
テ觀察
セザ
ルベカラズ、正常毛髪
ニ於
ケ
ル色
調
ハ毛髪
ノ皮
質細
胞中
ニ有
スル色素穎粒
ニ基
ク、
而
シテ彼
ノ老人性
白
髪
ハ此
ノ色素顆粒
ノ減少乃至稍失
ト竝
ニ皮質
細胞間
ニ空泡
ノ潜
入
スルコト多
キ
ニ因リテ起
ル、斯
クテ色素顆粒
ノミ消失
シテ空氣胞
ノ侵
入
スル
コト少
ケレ
バ其
ノ毛髪
ハ灰色
ヲ呈
シ、同時
ニ空氣胞
モ多數侵入
スルトキ
ハ光輝
ア
ル銀
白
色
ヲ呈
ス、皮樣嚢
腫内
ノ白髪
モ亦然
ルヤ否ヤ、予
ハ興味
ヲ以
テ點檢
スルコト
ヲ得
タリ、本
例
ニ於
テ
ハ毛根
ノ爾餘
ノ部
ニ於
テ
ハ他
ノ錐體
毛髪
ニ比
シ些
ノ變
状
ヲ認
メザ
リキ
．然
ルニ皮
質内顆粒
ハ全
ク稍失
シ、
且皮
質細
胞核
モ殆ド消失
シテ認
メ難キ
モノ多
シ即
チ空
氣小胞
ノタメ該細胞
ノ著
シク疎隔
セラ
レタルモ
ノナ
ルベ
シ、正常毛根
ニテ
ハ著
明
ノ色素塊
トシテ見得
ル毛根端
ニ極
ク少數
ノ
褐色
々素顆粒
ヲ見
ル
ゴトア
ルノミ、色素顆粒
ハ存
セザ
ルモ皮質細胞核
ハ常
ノ
如
ク存
スル部
ハ稍多
數
ニ認
メヲ
ル、故
ニ嚢腫内白髪
モ其
ノ成因
ハ同
一ナル
ベ
シ、即
チ皮質層
ノ色素消失
ト空氣胞潜
入
ニヨル,
只空胞
侵入
ハ如何
ナ
ル徑路
ヲ辿
ルモノナリヤ、嚢腫
内ニテ
ハ全
ク空氣
ニ接
スコトナ
シ、是
レ正常
毛髪
ニ
於
ケ
ル空氣胞
潜入徑路
ヲ研究
スル好資料
タリ。
壁
ハ一般
ニ薄
キ表
皮層
ニテ被
ハレ、殊
二錐體
ニ近キ部
ニハ少數
ノ皮脂腺
ヲ
見
ルモ遠隔部
ニハナシ、上皮剥脆部
ハ他例
ニ於
ケルト同
ジ。
肉眼的
ニ腫瘍
ノ
一極
ニ存
セシ透
明漿液性内容
ヲ有
セシ小嚢腫
ハ數層
ノ濾
泡
上皮
ヲ有
セ
ル濾泡嚢腫
ナリキ。
脂肪染
色。
斎藤-卵巣皮樣嚢腫病理知見補遺
七九五
10
3.
化學的檢査
。
イ 溶融點
内容
ノ儘
三五度
脂
肪 二五度
ロ 酸
數
Ｏ
・九
五〇
八
ハ 鹸
化數
一四六・九八四
ニ 沃度數
九
五・六九四
4.
考
按
本例ヲ按
ズ
ルニ注
目
スベキ
ハ汗腺
ノ著
シキ發育
ニシテ著
明
ノ分泌機能
ヲ有
ス、皮脂
腺亦發育
セ
ルモ特
ニ著
シカラズ、其他氣管及
ビ食道
アリテ各
々固有
ノ粘
液腺
即
チ氣管腺
及
ビ食
道腺
ニヨリ著
明ノ粘
液分泌
アリ
テ各
腔ヲ充満
スル
モ直接固有嚢腫腔
卜相交
通セズ、即
チ錐體内分泌可能
性腺管
ニテ
モ内腔ト直
接
ノ交
通ナキ
モノ
ハ假令該腺腔
ノ分泌物
ニヨリテ充満
ヤラ
ル
、ト
モ
一定度迄
ハ固
有
腔
ト關
係
ナ
ク徐
々
ニ分
泌物
ノ瀦
溜
シ得
ル
モ
ノナ
リ
、
シカ
モ夫
ガ
一定
ノ
大
サ
ニ達
シ内容
ノ緊満
スルトキ
ハ組
織
ノ
一部
ハ非薄
トナリ固有腔
ニ自解混入
ス
ベキ
コト
ハ第
五例
ニヨリ
明
ナ
リ
、
故
ニ本
例
ニ於
ク
リ嚢
腫
固
有
腔
内
容
ハ皮
脂
腺
及ビ汗腺
ノ分泌瀦溜液
ナリ、内容
ノ肉
眼的
及
ビ化學的檢
査
ニ於
テモ前
二例
ニ甚ダ酷似
シ、肉眼的
ニハ第
一例
ト殆ド差
異
ナキ程
ナリ、而
シテ本例
ニ於
テ
モ汗腺
ハ假令異常
ノ發育
ヲナ
スト
モ内容
ノ肉眼的變
化及
ビ脂
肪
ニ影
響
ヲ及
ポ
ス程有力
ナラザ
ル毛
ノナ
ル
コトヲ確
證
シ得
タルナリ、
同時
ニ予
ハ皮脂腺
及ビ
汗腺分泌液
ニヨル皮
樣嚢腫
ノ肉
眼的所見
及化學的集
成ヲ以上三例
ニヨリ略確
定
シ得
タリ、而
シテ以下數例
ノ異
常皮
樣嚢腫判
定
ノ基準
トナ
シ得
タ
ルナリ。
尚本
例
ニ於
ケル銀
日色
毛髪
ハ毛根皮質部
ノ色素顆粒消失
ト空氣泡形成
ニヨ
ルモノ
ニシテ彼
ノ頭髪
ニ於
クル白髪
發生ト異
ル所
ナキ
ヲ確
メ得
タリ、Blandin
ガ七
十五歳
ノ老
婦人
ノ皮樣嚢
腫中三米
ノ毛髪
ヲ見、其
ノ遊離
端
ハ麻
色
ニシテ
中部
ハ暗色
ヲ發
生部
ハ白色
ヲ呈
シ恰
モ腫瘍保持者
ノ年齡
ニ相當
シ
テ白髪
トナ
レルガ如
ク又腫瘍自身
ノ年齡
ヲ示
スモノ
ヽ如
ク思惟
セヲ
ルヽ毛、本患
者
ノ如
ク二十五歳
ノ婦
人
ニシテ頭髪
ハ帶褐
黒色
ニシテ何等腫瘍保持者
ノ年齡
及
ビ頭
髪
ニ關係
スル處
ナ
ク、又他側皮樣嚢腫
ハ全
ク白髪
ヲ混ズ
ル
コト
ナク、且白色
發生嚢腫
ハ一本
ノ混色
ナク脱落
毛髪
ニ至
ル迄白毛
ヨリナ
レルヲ以
テ腫瘍
發生
ノ常初
ヨリ白髪
ヲ生ゼ
シモノナ
ルコトヲ知
ルナリ、是
レ白髪
ハ腫瘍
保持者
ノ
高
年
ヲ示
スモノニアラズ
、又腫瘍年齡
ノ高
キヲ示
スモノ
ニモアヲズト云
ヘル
Askanazy
ノ言
ヲ有力
ニ證明
スルモノナリ、況
ンヤ
Black. W. G.ノ如理ク七年
半
ノ
一少女
ノ右側皮樣
嚢腫
ニ白髪發
生チ報
ゼシニ於
テオヤ。
其
二、左
側皮樣嚢腫。
手拳大
ニシテ二個
ノ腫瘍
ヨリナ
ル小
ナルモ
ノ
ハ固
有皮樣嚢腫
ニシテ大
ニシ
テ皮
樣嚢
腫ヲ包
ムが如
クナ
レルハ薄
キ假性「ムチ
ン」性卵巣嚢腫
ナリ、外壁
ハ
一般
ニ平滑
ナルモ只腫瘍莖
ヲ有
スル部
ハ豌豆
大ノ小嚢胞
ヲ多數
ニ有
シテ膨
隆
ス、錐體
ヲ有
スル嚢腫内容
ハ一般
ニ透
明ナ
レ多少
帶黄色
流動性液體
ニテ充サ
レ其
ノ中
ニ種
々ノ大サ
ノ凝固物浮遊
ス、多
ク
ハ粟粒
大ナリ、色調
ハ種
々ニシ
テ黄色、帯黄白色、白色、汚穢褐色
ヲ呈
シ又粘液樣光輝
アルモ
ノアリ、即
チ
内容
ハ泥状
ヲナサズ
シテ透明液體中
ニ粉粒状
ニ浮遊
スルナリ、毛髪
ハ黒褐色
ニシテ長
サ
一○仙米以上
ニ及
プモノアリ脱落
シテ内容中
ニ混在
ス、錐體
ハ拇
指頭大
ニシテ中隔
上
ニ著明
ニ突隆
シ厚キ白色被物
ヲ蒙
ル、
白色被物
ハ錐
體
ノ
周圍約三分
一ニ及
ビ爾餘
ノ部
ハ平滑内面ヲ有
ス、錐體
ヨリ薄
キ黒斑ア
ル菲膜
ヲ生ジ腫癌壁
ニ橋状
ニ附着
ス。
錐體及
ビ壁
ノ織組的檢査
ニ於
テ特異
ナル點
ヲ發見
シ得
ズ、分泌
組織
ト
シテ
ハ皮脂腺
アルノミ、汗腺
ハ全
クナ
シ。
齋藤-卵巣皮様嚢腫病理知見補遣
七九六
11
第
二房
ハ内面全
ク平滑
ニシテ中隔
ニ於
テ錐體占
坐部
ノ背
面
ニ帽針頭
大
ノ小
孔
アリ
テ第
一房錐體基定部
ノ裂
缺
ニ題ジ、兩房内容
ハコノ小孔
ニヨリテ交通
ス、從ツ
テ第
二房
ハ第
一房卜全然同
一ノ内容
ヲ有
シ脱落毛髪
ヲ亦混ズ
、檢
鏡
スルニ壁
ハ高
キ圓柱
上皮
ニテ被
ハレ固定標本
ニテ多數
ノ皺襞
ヲ生
ジ腺
樣外觀
ヲ呈
スル部
アリ、氈
毛ナ
シ、細胞核
ハ基定部
ニアリテ圓柱
上皮間
ニ杯状細胞
ヲ有
ス、細胞核
ハ杯状
ニ基定部
ニ壓迫
セヲ
レ原形質端
ハ著
色
シ難
シ。
内容
ヲ鏡檢
スルニ脂肪滴
ニ乏
シキ無造構物質
ヨリナリ又黄褐色色素
顆粒ヲ
有
ス。
本例
ハ上記
ノ如
ク内容
ハ液體
中
ニ浮動
セ
ル少許
ノ凝固物
ニシテ「ヱーテ
ル」
浸
出脂肪
モ其
ノ量少
ク
シテ化學的檢査
ヲ行
ヒ得ザ
リシヲ遺憾
ト
ス、只本腫瘍
ヲ特
ニ略述
スル所以
ハ他側
ノ腫瘍内
毛髪
ノ銀白毛
ナリ
シニ同時
ニ存在
セ
シ
一
例
ノ黒
褐
色
ナ
リ
シ
コト
ヽ、
尚
ホ假
性
「ム
チ
ン」性
嚢
腫
ノ合
併
自
解
ニ
ヨリ
、皮
樣
嚢
腫粥
ノ粟
粒大紛粒状
ヲ呈
セシ點
ニアリ。
第
四
例
重○
ヒ○
、五十三歳、八同經産婦
、右卵巣皮樣嚢腫。
1.
肉
眼的
所見
腫
瘍
ハ手拳大
ニシテ球形、外表
ハ結締織
性索状物
ニヨリテ粗
ナリ、是
レ腫
瘍莖
ハ三囘左側莖
捻轉
ヲ起
シ周圍器臟
ト癒
着
セシ
ニヨル、單房
ニシデ中隔遺
残物
ナ
シ、毛髪
ハ漆黒色
ニシテ丸
ク、細
ク、短
ク、少
シ、大部
分
ハ内容
中
ニ
剥脱
混在
ス、錐
體周圍
壁
ハ白
色被物
ヲ有
シ毛髪
ヲ疎生
セ
ツムルモ他半部
ハ内
面粗
〓
ニシテ多
數
ノ小
ナル汚穢褐色斑點
ヲ有
ス、錐體
ハ小指頭
大
ニシテ周圍
ヨリ多少
高
マレル隆起
ヲ呈
スルノ
ミ、硬度
ハ一樣
ニ強靱
、
一部
ニ軟骨樣硬度
ノ部
アリ、錐體
ノ
一端
ハ漸
次低
クナリテ山脈状
二延長
シ壁
中
ニ消失
不明トナ
ル、錐體
ニ
ハ毛髪
ノ發生ナ
シ。
内容
ハ白色蝋樣
ニツテ少許
ノ白
色凝固物アリ、而
シテ
一般
ニ暗色
ヲ帶ブ、
鏡檢
スルニ同大
ノ上皮細胞樣光輝
アル物
質
ヨリナリ其
ノ間
ニ大小種
々ナ
ル脂
肪滴
ヲ有
スルノミ。
2.
組織
的
檢
査。
錐體
ノ構造
ハ前
三例
ト殆
ド異
ンル所
ナ
シ、分泌可能組織ト
シテ
ハ皮
脂腺
及
ヨク發育
セ
ル汗腺
ヲ有
セ
ルノミ
ニシテ共
ニ内腔
ニ向
ツ
テ排泄管
ヲ有
ス、只錐
體内
ニ毛根
ヲ有
セズ
、一個
ノ軟
骨片
ヲ有
ス、壁
ハ一部
ノミ薄
キ表皮層
ニテ被
ハ
レ其
ノ基定層細胞
ニハ黄褐色
々素顆粒
ヲ有
ス、少數
ノ皮脂腺、
汗腺
及
ビ毛根
ヲ有
ス、壁
ノ大部
ハ表皮
剥脱
シ圓柱状ー
多稜
形
ノ上皮
樣外觀
ヲ呈
シ核
ハ圓
形
又
ハ卵圓形
ニテ大小
不同
ニシテ「ヘマトキ
シリン」ニ無
造構
ニ染
色
スル細
胞
ノ
不規則
ニ團塊
チ作
リ其
ノ原形質
ハ黄色
ヲ呈
ス、或
ハ汚穢黄色
ヲ呈
スル結締織
ノ直接
内腔
ニ面
スルアリ、斯
ル部
ノ壁
ハ核
ニ乏
シキ結締織
ヨリナリ瘢痕樣
ヲ
呈
ス。
脂肪
染色
第
三例
ニ同
ジ
3.
化
學的試驗
イ 溶融點
内容 三七度二分
脂肪 三三度五分
ロ 酸
數
一・五六
二四
ハ 鹸
化數
一八
一・七
六四
ニ 沃度數
九五
・六
九四
齋藤-卵巣皮樣嚢腫病理知見補遣
七九七
21
4.
考
按
本例
ヲ按
ズ
ルニ分泌組織
ト
シテ
ハ皮脂腺及
ビ汗腺
ニシテ尚
ホ廣
キ剥離面
ヲ
有
スル壁滲
出液
モ疑
フ
ベシ、而
シテ皮
脂腺
ハ著
明
ノ發育
ヲ
ナシ明
ニ内容分泌、
排
泄
ノ状ヲ證
セラ
ル、中性脂肪
ヲ主ト
シ之
ニ脂
肪酸
及
ビ僅
ニ
「と
ヨレステリ
ソ」物質
ヲ混ズ、汗腺
ハ脂
肪
ハ殆
ド云
フ
ニ足ラザ
ルモ尚
ホ分泌機能
アリテ内
腔
ニ向
フ排泄管
ヲ有
ス、壁
ヨリ
ノ滲
出液
ニ關
シテ
ハ直接
組織的
ニ證明
シ得ズ、
而
シテ嚢腫
ハ肉眼的
ニモ組織
的
ニモ他種
卵巣
嚢腫ヲ合併
セズ、故
ニ組織
的
ニ
ハ從來
ノ知見
ヲ以
テセ
バ本
内容
ハ皮
脂腺
及
ビ汗腺
ノ分泌瀦溜
液ト見
做
〓ベキ
ナリ、然
ルニ化學的檢査
成績
ヲ見
ルニ多少趣
ヲ異
ニス、今
分泌組織
ヲ同
ウ
ス
ル第三例
ト比較
スルニ次
ノ如
シ。
上記對照表
ノ示
スガ如
ク沃度數即
チ不飽
和脂酸
ハ囘
一ニシテ而
モ融
點高
シ
是
レ融
點高
キ飽和脂肪酸属
ヲ含
ムコト多キ
ニヨル、又鹸化數
ハ稍多
クシテ酸
數高
シ、而
シテ沃度數
ノ比較的
少
キ
コトヲ對比
セバ必ズ
う中性脂肪
ノ多
クシ
テ且飽
和脂
肪酸
ノ多
キナ
リ、然
ルニ分泌組織
ハ共
ニ皮
脂腺
及
ビ良
ク發育
セル
汗腺
ニシテ組繊的檢査竝
ニ脂肪染色
ニ於
テ何等
差異
ヲ認
メズ、勿論脂肪酸
染
色法
タ
ル「ニー
ルプヲウズ
ルフアート」及
ビフイ
シヱル氏法
ニテ認メ得
ル程
ノ
差異
ナ
シ、怖
ラク固有腔
内
ニ分泌瀦溜
後斯
ル差異ヲ生
ジタルモノナ
ルベシ、
而
シテ肉
眼上及
ビ組
織的
ニ認
メ得
ル
ハ壁
ノ大半
ニ亙
ル上皮
脱落
ナリ、斯
ル大
部
分
ノ上皮
剥離
ハ疑
モナ
ク三囘
轉
ニ及
ブ莖捻轉及
ビ其
ノ結果
トシテ來
リシ周
園
器臓
トノ癒着
ナ
ルベシト
ハ直
ニ首肯
シ得
ル推論
ナリ、即
チ莖
捻轉
ニヨリ腫
瘍
壁
ノ血
行障害
ヲ起
シ、周園器臓
ト癒着
シ、内被
上皮
ノ剥脱
スルコト
ハ巳
ニ
衆
知
ノ事實
タリ、斯
ル剥離面
ヨリ浮腫
ノ結果滲出液
ヲ漏
ラ
シ、
爲
ニ内
容中
ノ
油酸類ナヲザ
ル遊
離脂肪酸
ト中性脂肪
ノ増量
ヲ來
スニ非
ルヤ、莖捻
轉
ナル現
象
ガ皮様
嚢腫内
ニ斯
ル變
化ヲ起
スモ
ノナリヤ否
ヤ、只
一例
ヲ以
テ
ハ速断
シ難
キ所
ナルモ本例
ニ於
ケル組織的檢
査、脂肪染色
及ビ化學的檢査成績
ヲ綜合観
察
スルトキ
ハ斯
ク推定
シ得
ラ
ル、ナ
リ、以下數例
ニ於
テ更
ニ考察
セ
ン。
第
五
例
岡○
マ○
ノ、
二十五歳
、
一囘經産婦、右
卵巣皮様嚢腫
、左莖捻轉
三百
六十
度。
I.
肉
眼的所見
。
初生兒頭大、壁外面
ハ平滑
ニシテ癒
着ナ
シ、内容
ハ純白
色美
ニシテ多少
ノ
脱落毛髪以外夾雜物
ナシ、粘稠性弱
シ。
錐體
ハ小兒手拳大
ニシテ青
白色、平滑ナ
ル表面
ヨリナリ大部分
ニ於
テ毛髪
ノ發生
ナシ、只基
底部
ニ近キ
一局
部
ニ長キ毛髪簇生
ス、硬度
一般
ニ軟
ニシテ
半球
状
ニ突
隆
ス、之ヲ切断
スルニ錐
體内
ハ多數
ノ小房
ニ分
タレ小豆大
ヨリ拇
指頭
大
ニ達
スル小
房
ハ不規則
ニ相互隣接
シ特異
ナ
ル
ハ各房
ハ各
々異
レル内容
ヲ有
ス、即
チ固有
嚢腫腔
卜同
一外観
ヲ呈
シ多數
ノ短キ毛髪
ヲ混
ズ
ルア
〓、粘
稠性
少ク
シテ白色
粉粒状
ヲ呈
スルアリ、鮮黄色「バタ-」状
ニシテ粘
稠、
毛髪
ヲ混セザ
ルアリ、透
明ナ
ル粘
液塊
ヨリナ
ルアリ、斯
ル獨立セ
ル小房内
ニ細
ク
短キ黒褐色
毛髪
ノ内腔
ニ向
ヒ發生
シ、恰
モ
一房
ガ
一個
ノ皮樣嚢腫
ヲ形成
セル
ガ如
キ觀
ヲ呈
スルモ
ノア
ルモ錐體ト覺
シキ
モノナ
シ、房
ノ大ナ
ルニ個
ハ錐體
齋藤
－卵巣皮樣嚢腫病理知見補遺
七九八
31
表
面
ニ小破裂孔ヲ有
シ固
有腔
ト内容交
通
ス、基
定部
ノミ
ハ軟骨様硬度
アリ。
壁
又
一般
ニ平滑
ニシテ
一小部
ニ黄謁
色
々素
ノ沈着
セ
ルト毛髪
ノ獨立性
ニ壁
ヨリ密
生セ
ル部
ア
ルノミ。
内容
ヲ鏡檢
スルニ固有腔
ハ多數
ノ脱落細胞
アリ、錐體内粉粒状内容
ハ脂肪
モ少
ク無
造構物質
ヨリナリ、黄色「バタ-」状内容
ハ多數
ノ大小脂肪滴
ヲ有
ス。
2.
組織的檢査
錐體
ノ表
面
ハ薄
キ表皮
層
ニテ被
ハレ其
ノ基定層
ハ甚ダ不規則
ニシテ基定層
及
ビ其
ノ直
下ノ乳頭部結締織
ニ
ハ多量
ノ黄褐色
々素
ヲ有
ス、又表面
ニテ表皮
ニ隣接
シテ重層圓柱
上皮
層
ニテ被
ハル
ヽ部
アリ、表
皮下
ノ皮
脂腺
ハ其
ノ數
ハ
少キ
モ良
ク發育
シ
一個
ノ皮
脂腺
ニシテ腺
體
ノ分
岐胞状
トナ
リ甚ダ大ナリ、内
腔
ニ向
ツテ著
明
ノ分泌アリ、汗腺
モ少數
ニ存
シ表
層
ニ向ツ
テ排泄管
ノ走
行
ス
軟骨
及ビ毛根
アリ、錐
體深部
ノ構造
ハ甚ダ奇
ニシテ無數
ノ小房
ヨリナリ或
ハ
薄
キ表皮層
ニテ被
ハレ皮脂腺
及ビ毛根
ヲ有
スルア
リ、層重圓柱
上皮
ニテ被
ハ
レ胞體
ノ高
キアリ低
キアリ、又氈毛ヒ皮
層
ニテ包
マル、アリ、各
々分泌物
ニ
テ充
満
シ球
形
ヲ呈
ス、
房
ノ大
ニシ
テ表
面
ニ近
キ
モ
ノ
ハ巳
ニ肉
眼的
ニ然
リ
シ如
ク特
別
ノ管腔
ア
ルニアラズ
シデ全
グ組織
ノ伸展
破壊
ニヨリ固有嚢腫腔
二交
通
ス、之等大小種
々ナ
ル腺腔
間
ハ核
ニ乏
シキ結締織
ヨリナ
ル、又脂肪
組織
モ散
在
ス、サ
レド相互間
ニ
ハ全
ク交
通ナ
シ、只錐
體基定部
ニ近
キ大房
ニアリテ
ハ
房間隔
膜
ハ甚
ダ非薄
トナリ根跡状
ヲナ
スモ
ノアリ、
上記
ノ如
キ所見
ニシテ是
等腺
腔
が正常身體
ノ何
レノ組織
ニ相當
スベキモノナ
ルヤ全
ク推定
シ得
ズ、只
結締
織内
ニ低
キ單層圓柱
上皮
ニテ被
ル
ヽ粘膜皺壁
ノ簇生
シテ組織
間
ニ
一小管
腺
ヲ作
リ恰
モ輸卵管粘膜
ニ比
スベヰ
モノア
ルモ確
定
シ得
ズ、各
房
ハ只分泌能
力
ア
ル腺上皮
ニテ被
ハル
ヽ小腺腔
ノ集合體
ト見
ルノ外ナ
シ。
壁内面
ハ全
ク上皮
ヲ有
セズ、結締織壁
ノ内腔
ニ露
崩
ス
ルノ
ミ、只有毛壁及
ビ其
ノ周園
ハ薄
キ表皮層
ニテ被
ハレ僅
ノ皮
脂腺
ヲ有
ス。
脂肪
染色
第三「ズダ
ン」、「ニー
ルブヲウズ
ルフアート」染色
ニテ
ハ内容、角質屠、皮
脂腺、脂肪組織着色
ノ状
ハ前
例ト異
ラズ、各種上皮
ニテ被
ハル
ヽ腔
洞内及ビ
上皮
ニハ全
ク脂肪
ナ
シ、只皮層組織
ニテ被
ハル
ヽモノ
ハ染色
ノ關係錐
體表面
ニ於
ク
ルモノト同
ジ、又氈
毛上皮層
ヲ有
スルモノ
ニアリテ
ハ氷結標本
ニ於テ
明
ニ杯状細胞
ヲ有
シ粘液分泌
アリ、嚢腫壁
ハ他例
ニ於
ケルト同
ジ。
「オスミウム」酸染色
ニテ
ハ第
三「ズ
ダ
ン」着
色部
ニ
ハ凡
テ著明
ニ表
ハル、小
房間結締織
ニ
ハ上皮基定部
ニ沿
ヒ黒色脂肪滴
ヲ見
ルヲ常
トス。
フイ
シヱル氏法ヽ
スミ
ス氏法
ハ共
ニ不明
ナリ。
3,
化學的檢
査
イ
溶融點
内容 三五度三分
脂肪
三
一度四分
ロ 酸
數
二・二四四
ハ 鹸化數
一九
二・九八四
ニ 沃度數
七
一・六
一六
4.
考按
要之本腫瘍
ハ數個
ノ皮樣嚢
腫又
ハ他種卵巣嚢腫
ノ合併
セ
シモノニアヲズ、
錐
體
ハ甚ダ特
異
ニシテ巨
大、加
之其
ノ大半
ハ分泌
液
ニヨリ充満
セヲ
ル
ヽ腺腔
ヨリナ
リ、腺
腔
ハ個
々獨立
セル腔洞
ト内容
ヲ有
シ只其ハノ大
ニシテ表
面
ニ近
ク
存
スルモノ
、ミ壁
ノ破壊
ニヨリテ皮
様嚢腫
固有腔
ニ通
ズ、故
ニ固有腔内容
ハ
錐體表面ノ皮脂腺、汗腺及ビ被蓋圓桂上皮分泌物以外錐體四小房分泌物モ混
齋藤-卵巣皮様嚢腫病理知見補遺
七九九
41
入
セ
ルナリ、
且縦令
癒着
ハナ
クト
モニ囘轉
ニ亙
ル莖捻轉ト壁
内面
上皮
ノ完全
剥脱
ヨリ嚢腫壁
ヨリ
ノ直接
滲出現象
モ認メザ
ル
ベカ
ヲズ、飜
ツテ内容
テ見
ル
ニ第
一-第
三例
ノ如
キ皮
脂腺及
ビ汗腺
ノ單純
ナ
ル分泌瀦溜液ト大
ニ趣
ヲ異
ニ
シ純白色平等混
濁
ニシテ内容
ハ甚ダ
ヨク融
和混合
セリ、而
シテ全
ク黄
色ヲ帯
ビズ
、化學的檢
査成績
ヲ前例
ニ比
スルニ次
ノ如
シ。
上表
ノ如
ク稍類似
セリ、即
チ遊離
脂肪酸
ハ一層多
ク
シテ不飽
和脂肪酸
ハ稍
少
シ、故
ニ遊
離脂肪
酸
ノ増量
ハ飽和脂肪酸
ノ増
量
ニヨルナ
リ、他方組織的檢
査
ニ於
テ錐
體内腔洞内容液
ハ全ク脂肪質
ヲ含
マザ
ルヲ以
テ小房
ノ自解混
入ガ
脂肪酸
ノ増量
ヲ來
セ
シモ
ノト
ハ理解
シ得ズ
、寧
ロ莖捻
轉
ニヨル壁滲
出液
混入
又
ハ捻轉自己
ノタメ潴溜内容
ニ變化
ヲ起
スモノナリト信
ズ
ルヲ至當
ト
ス、斯
クテ第四例及
ビ第
五例
ニヨリ莖捻轉
ナ
ル現象
ガ遊離脂肪酸殊
ニ飽
和脂
肪酸及
ビ
中性
脂
肪
ノ増
量
ヲ來
ス
コト
ハ確
實
ニ
シテ他
ニ原
因
テ求
メ得
サ
ルナ
リ。
第
六
例
久○キ○、三十五歳、六囘經産婦、右卵巣皮樣嚢腫
I.
肉
眼的
所見
腫瘍
ハ卵
圓形
ニシテ鴛
卵大、外壁
ハ平滑
ナルモ二個所
ニ於
テ環状
ニ輕
ク絞
約
セヲ
レ多
少肥厚
ス、切開
スルニ絞約部
ニ沿
ヒ内面
二個所
二中隔遺残
アリ、
斯
ル小嚢
腫
ニテモ已
ニ中隔
ハ破壞
セラ
ルヽナリ、錐體
ハ示指頭大
ニシテ周圍
ヨリ著
明
ニ膨滿
シ肉
眼上
一定
ノ器臓
ヲ偲
バシムルモノナ
シ、錐
體
ノ尖端
ハ黒
色
斑點状色素
ヲ有
スル菲膜
ニテ被
ハレ三分
シテ三房壁
ニ附着
ス、
三個
ノ壁
ハ
内面モ同
一ニ平滑
ニシテ鳥嶼状
ニ黄褐色
々業
ヲ有
ス、毛髪
ハ錐
體
ノ白色
被物
部
ヨリ生ジ短
ク細
ク
シテ黒色
-灰黒色
ヲ呈
ス、基定部
ニ
一個
ノ骨片
アリ、卵
巣實質
ハ著
明
ニシテ小嚢
腫ヲ多數
ニ形成
ス。
内容
ハ汚穢暗灰白色
ニシテ白色
又
ハ黄
褐色ノ小凝固物
ヲ多數
ニ混在
ス、
又
多量
ノ粘液様光輝
ヲ呈
スル部
アリ、鏡檢
スルニ無造構物質中
ニ少許
ノ脱落
細
胞
ト大小多數
ノ脂肪滴
ヲ見
ルノミ、白色塊
ハ主
トシテ脱落細胞塊
ニシテ、黄
褐色部
ハ脱落細胞
ノ汚穢黄色
ニ著
色セ
ルナリ。
2.
組織的檢査。
錐體表面
ヲ作
ルモノ
ハ皮
膚組織
ナリ、皮
脂腺
ハ腺體
小
ニシテ且其
ノ數
モ多
カヲズ、汗腺
ハ發育
ヨク内腔
ニ向
ヒ排泄
管走行
ス、其
ノ他多數
ノ立
毛筋ア
リ
多數
ノ皮
下脂肪組織
下
ニ軟骨
アサ、錐體基定部
ニハ細
長キ内腔
ヲ有
シ内面
ハ
高キ單層圓柱
上皮
ニテ被
ハレ多少
ノ皺襞即
チ腺樣
陷凹部
アリテ粘膜層
ハ厚
ク
「ヘマトキ
シリ
ン」ニ良
ク着染
スル小細胞
ヨリナ
リ其
ノ周園
ハ縦走横走
種
々
ル走行ヲト
レル大ナ
ル滑平筋繊
維
ヨリナ
ル厚キ筋層
アリ、其状小
兒期
子宮
ニ
髣
髴
タ
リ、
固
有
腔
ト
ハ全
ク連
絡
ナ
シ。
嚢腫壁
ヨリ
ハ甚ダ多數
ノ切片
ニツキテ合併
セ
ル他種嚢
腫ノ如何ナ
ルモノナ
ルセ
ヲ檢
索
セシト雖
モ巳
ニ内被上皮
ハ脱落
シテ直接結締織
ヲ露
出
シ其
ノ性状
ヲ詳
ニセズ、只錐體附近
ノミ
ハ不正重層扁
平上皮
ニテ被
ハル、腺組織
ナ
シ。
脂肪染色。
子宮樣組織
上皮
ニ
ハ全
ク脂肪類
ナシ、
上皮下粘膜組織
甲
ニ中性脂肪
小滴
ヲ
僅
ニ點在
スルノミ、其他
ノ組織
ハ既
述
ノモノト同ジ。
齋藤-卵巣皮樣嚢腫病理知見補遺
八○○
51
3.
化
學的檢
査
イ 溶融
點
内容
一〇〇度
ニテ溶融
ヲ認メ得ズ
脂肪 三〇度五分
ロ 酸
數
八
・四
一五
ハ 鹸
化數
三〇入・九五
ニ 沃度數
九三・七
一
二
4.
考按
本例
ハ錐體内組織ト
シテ子宮
様組織
アリテ多少
ノ分泌機能
アルモ未ダ固有
腔
トノ交通
ハ全
クナシ、故
ニ分泌組織
トシテ
ハ皮脂腺及
ビ汗腺
ノミナリ、莖
捻轉
ナ
シ、内壁
上皮
ハ殆
ド完
全
ニ剥脱
スルモ莖
捻轉ナク從ツ
テ血行障害即
チ
鬱血
ノ起
ラザ
ル以上如何程
迄滲出液
ノ漏
出
テ來
シ得
ルモノナ
リヤ疑
問ナリ、
然
ルニ肉眼的
ニ然
ル如
ク本腫瘍
ハ三個
ノ嚢腫
ノ破壞
融合セ
シモノ
ニシテ内
一
個
ハ皮樣嚢腫
、他
ノニ房
ハ其
ノ種類ヲ詳
ニセズ、内容
ヨリ觀察
スルトキ
ハ内
容
ハ未
ダ混合融和
スルコト少ク光輝
ア
ル多數
ノ粘液樣小塊
ヲ有
ス、怖
ラク假
性
「ムチ
ン」性嚢腫
ナ
ルベシ、其
ノ化學的集成
ハ甚ア特異
ニシテ遊離
脂肪酸
ハ
入・四
一五
ノ大量
ヲ示
シ、然
ルニ不飽
和脂肪酸
略同ジ.故
ニ脂肪酸
ノ増量
ハ油
酸類以外
ノ飽
和脂肪酸
ノ増加
ニヨルナリ、又
一力鹸
化數
モ異常
ノ高
キヲ示
ス
ヲ以テ此ノ鹸
化數
ノ増
加
ハ中性脂肪
及ビ遊離
脂肪酸
ノ増量
ニアリ、予
ハ斯
グ
見來
ルトキ
ハ酸
度殊
ニ飽和脂酸
ト中性脂肪
ノ異
常
ノ増加
ハ他種卵巣嚢腫
(恐
ラク假性
「ムチ
ン」性嚢腫)
ノ自解
ニヨル内容混
合
ノ結
果ト見
做
スベキ
モノナ
ヲ
ント思
惟
ス。
第
七
例
藥
○
タ○
ノ、
二十
一歳、未産婦。
I.
肉
眼的所見
小兒頭
大ノ卵圓
形腫瘍
ニシテ大
ナル
一極
ハ固有
ノ錐體
ヲ有
スル皮樣嚢腫、
他極
ハ錐體ナキ小
ナ
ル嚢腫
ナリ、即
チ
ニ房
ヨリ成
リテ兩者
ノ境界
ハ輕
ク絞約
セ
ヲレ此部
ニ中隔
アリ、壁外面
ハ平滑ナ
ルモ腫瘍莖
ハ三百
六十度即チ
ニ囘轉
セリ。
内容
ハ甚ダ稀有
ナル脂肪球皮様嚢腫
ニシヲ灰
白黄
色
ノ粟粒
大
ヨリ雀卵大
ニ
達
スル無
數ノ球状物
ニテ充
タサ
ル、小豆大以上
ニテ予
ノ計算
セシモノ
ニテモ
七百
個ヲ超
ユ、球形又
ハ多
少壓迫
サ
レタ
ル弾
丸状
ヲ呈
ス、尚
ホ此外
ニ少量
ノ
球状
ヲナサザ
ル粘
土様
硬度ノ脂肪塊
アリ、其
ノ色
調
ハ球形成
ヲナセルモノト
同
一ナリ、脂肪球
間
ニ
ハ少量
ノ水様透明
ノ液
ヲ容
ル。胸肪
球
ハ之
ヲ切
断
スル
モ層
ヲナサズ、又肉眼上
ニモ鏡檢上
ニモ中心核
ト覺
シキモ
ノナ
シ只時
ニ毛髪
ヲ混
ズ
ルアリ、無造構
ニシテ少許
ノ光輝
アル脂肪滴
及
ビ細胞片
ヲ有
ス、
又黄
褐
色
々素
ヲ混ズ
ルモノアリ。
小嚢腫
ハ全ク球形
ニシテ内面平滑
、灰白色半透明
ノ壁
ヨリナ
ル、只所
々ニ
暗褐色點状斑痕
アルノミ、内容
ハ上記
ノ如
シ、毛髪
ナ混
ズ
ルモ直接嚢
腫壁
ヨ
リ發
生セ
ルモ
ノニアラズ。
嚢腫壁
ノ
一側
ニ沿
ヒ中隔
ニ示指
ヲ挿
入
シ得
ル約
四仙
米長
ノ丸
キ管腔
アリテ
固有皮様嚢腫腔
ト通ズ。
固
有嚢腫
ハ中隔
ノ中央
ニ直接約
四仙米
ノ鈍
四角錐體
ヲ有
シ其
ノ長ザ約
六仙
米
、尖端
ハ圓柱形
ニテ橋状
ニ對側
ノ嚢腫壁
ニ附着
ス、錐體
ハ基定
ヨリ約三分
二迄
ハ黒色
-黒褐色
ノ長
ク又短
キ毛髪密生
シ長キ
モノ
ハ二充仙
米
ニ達
ス、硬
度
一面
ニ硬
ク骨様
ニシテ
一本
ノ歯牙突出
ス、圓柱状部
ハ平滑
ニシテ發毛ナ
ク
次
第
ニ細
クナ
リテ壁
ニ了
ル、此
ノ附着部
ヨリ約
三仙米離
レテ大豆大
ノ獨立
セ
齋藤-卵巣皮様嚢腫病理知見補遺
八○
一
61
ル結節
アリ。
錐體基
定部周園
ノ中隔
ハ白色被物
ヲ有
シ兩嚢腫交通管内
ニ迄
及プモ其
ノ他
ノ内壁
ハ甚
ダ粗
〓
ニシテ所
々
ニ廣キ暗
褐色斑
ヲ有
ス。
2.
組
織
的
檢
査
。
錐胎中毛髪
發生部
ハ各
切片略
同
一ニシテ表面
ハ厚
キ表皮層
ニテ被
ハレ其
ノ
下
ニ良ク發育
セ
ル皮
脂腺
、少數
ノ汗腺、毛根
、立毛筋ヲ有
セル皮
下結締
織竝
ニ脂肪組織
ノ所見
ハ前数例
ト大同小異
ノミ、只皮脂腺
ハ本例
ニテ特
ニ良
ク發
育
シ盛
ニ分泌
、排泄機能
ヲ營
ミソ
ヽア
リ、基
定部
ハ不正
ノ骨片
ヨリナル、斯
レ基
定部
ヨリ錐
體
ハ柱状
ヲナ
ス、周園
ハ上
記皮
膚組織
ヨリ成
ルモ其
ノ脂肪組
織
ヨリ輪
状
ニ圍繞
セラ
ル
ヽ中央
ニ透明
ナル内容
ヲ充
ス小腸
γリ、内面
ハ小皮
縁
チ有
スル
一層
ノ高
キ圓柱
上皮
ニテ被
ハレ、著
明
ノ絨
毛形成
アリ、腸
腺即チ
可
-ベルキ
ユン氏腺
モ良
ク發育
シ杯状細
胞アリ、數個
ノ淋
巴濾泡
モ亦存
ス、
粘
膜下組織
モ良
ク發育
シテ其
ノ構造正常
ノモノト全
ク異ラズ、只縦走-輪状
筋繊維
ハ走行
不規則
ニシテ又所
々斷續
ス、斯
ル小腸
ニ接
シテ別
ニ管腔
γリテ
其
ノ構
造小腸
ト同
一ナ
ルモ具粘
膜下層
ニ複胞状
管状腺
ナルプル
ンネ
ル氏腺
ヲ
多數
ニ有
スル十
二支腸
アリ、而
シテ小腸、十二支腸腔
ハ「ヱオヂ
ン」淡染
ノ無
造
構物質即
チ分泌
物ア
リテ少許
ノ淋巴球
ヲ混ズ、尚
ホ小腸
ト多少
ハナ
レテ耳
下腺
アリ、腺胞小
ニシテ腸腔極
メテ狭
ク又全
ク認
メ難
キモノサ
ヘアリ、骰子
形又
ハ圓錐
形腺細胞
ヨリ
ナリ、
一層
ノ短圓柱細胞
ニテ作
ラ
ルヽ多數
ノ排泄管
存
ス、斯
ル腺
群
ハ核
ニ乏
シキ結締
織
ニテ圍
マル、橋状物
ノ尖端
ニ近ク幽
門部
アサ、腔
ハ稍大ナ
ルモ表面
ハ高
キ單層圓柱
上皮
ヨリナリ、胃
小高
ハ深カヲズ
又少
シ即チ内容
ノ瀦溜
ニヨリ伸展
セラ
レタルノ状
ニアリ、分岐管状腺
モ亦表
面
上皮
卜同
一ニシテ核
ハ基
定部
ニ羅
列
シ、原形質
ハ
「ヱナヂ
」
ニ染
マリ難
シ
。錐體尖端
ノ附著部
ヨリ離
レテ獨立性
ニ存
セ
シ小結節
ハ即
チ甲状腺
ナリ、結
節
ノ表面
ハ層重氈毛上皮
ニテ被
ハル然
ル
ニ結
節
ニ續
ク嚢
腫壁
ハ單層
ノ骰子形
細胞
ヨリナリ全
ク特別
ノモノナリ、結節内
ハ甚ダ機能亢進
セ
ル甲状腺
ニシテ
腺腔
ハ多
ク
ハ大、内腔
ハ「ヱオヂ
ン」淡染
ノ無造構物質
ニテ充サ
レ、腺細胞
ハ
凡テ骰子形-扁平
ニシテ薄
キ固有膜
ヲ有
シ腺體
ハ相互密在
シテ腺間結締織
殆
ドナ
シ、血管
ノミ腺問
ヲ走
ルモノ多
シ、斯
ル甲状腺
ノ周
圍
ニ
ハ多少
ノ脂肪
組
織
アリ。
皮様嚢腫壁
ハ大部分
ハ上皮
剥脱
シテ結締織壁
ヲ内面
二露
出
ス、
一部
ノミ
一
-
三層
ノ扁平上皮
ニテ被
ハル壓迫伸展
ノ状
ニアリ、第
二嚢腫壁
ハ殊
ニ其
ノ嚢
腫
ノ種類探索
上多數
ノ切片
ニソキ
テ檢
セ
シト雖
モ上皮
ハ完
全
ニ脱落
シ其
ノ種
類
ヲ詳
ニセズ、中隔
モ第
一嚢腫
ニ向
フ面
ハ薄キ表皮層
ニテ被
ハル
ヽ毛第
二嚢
腫
ニ面
スル毛
ノハ全
ク上皮
ヲ見ズ。
脂肪染色。
内容、皮脂腺、汗腺
、脂肪組織、皮下結締織
ニ於
ケル脂肪
分布
ノ状態
及ビ
染色反應
ハ前數
例ト全然同
一ナリ、又幽門部、十二支腸
、小腸
、耳下腺、甲
状腺
ニ於
ケル上皮
細胞
及ビ上皮細胞間
ニハ全ク脂肪
ヲ有
セズ只是等諸腺
ノ粘
膜下組織
中
ニハ中性
脂肪
及
ビ僅カ
ノ脂肪酸
ヲ有
ス
ルチ常
トス。
3.内容檢査
イ
溶
點
内容
一〇〇度
ニテ溶融
セズ
脂肪 二八度五分
ロ 酸
數
八
・四
一五
ハ 鹸
化數
一五七・○
八
二 沃度數
四五
・一一六
二
斎藤-卵巣皮様嚢腫病理知見補遺
八○二
17
4.
考
按
。
稀有
ナ
ル脂
肪球皮様嚢腫
タ
ル本例
ニ於
テ内容
ニ影響
テ及ボ
ス原因ト
シデ認
ムべキ
ハI.腫瘍内分泌組織、
2.腫瘍莖捻轉、
3.他種嚢腫
ノ合併
ナリ、前
數例
ニ於
テ得
タ
ル知見チ基
礎
トシ本例ノ檢
査成績
チ考察
セ
バ、
I.
腫瘍
中
ニテ分泌現象
チ證明
シ得
ル
ハ先ヅ錐
體表面
ノ大
半
チ占
ムル皮脂
腺
ナリ、皮脂腺
ハ皮
下結締織
内
ニ汎
ク分布
發育
シ多
量
ノ中性脂肪
ト脂肪酸
ノ
少量
チ細
胞體
内
ニ含有
シ、大
ナ
ル排泄管
ニヨリテ盛
ニ内腔
ニ向
ヒ排泄
シツ
、
ア
リ、機能亢
進
ノ結
果排泄管
ノ閉
鎖
シテ多數
ノ粉瘤
形成
アリ、腺體及
ビ粉瘤
内脂肪
ニ於
テ
ハ染色反應
ニ於
テ
ハ特
ニ脂肪酸
ノ増量
チ目撃
シ得ズ、汗腺
ハ存
ス
ルモ發育
不良
ナリ、次
ニ幽
門部
、十二支腸
、小腸
ハ其
ノ上皮
及ビ内腔分泌
物
ニ全
ク脂肪
チ見ズ、
サ
レド杯状細胞
チ有
シ又内腔
ニ透明液體
チ有
シテ
「ヱ
オ
ヂ
ン」淡染
ノ無造構物質
チ有
ス即
チ分泌機能
アリ、耳下腺
ハ元來蛋白腺
ナ
ルテ以
テ脂肪染色上全
ク陰性
ナリ、
サ
レド
一般
ニ腺體
ハ小
ニシテ腺腔及
ビ排
泄管
腔
モ甚ダ小
ニシテ現在分泌機能
チ發揮
シツ
、アルモノナ
リヤ否ヤ直接證
明
シ得
ザ
レド
モ細胞
ノ大サ、排
列、腺體集合
ノ状、排泄管チ有
スルコか及
ビ
「ヘマトキ
シリン-
ヱオヂ
ン」
ニ依
ル著染力
ハ正常耳下腺
ト同
一ニシテ
加之
細胞
ノ萎縮變性
ノ状
チ呈セズ怖
ラ
グ緩徐
ナリト雖
モ分泌作用
チ有
スルモノナ
ルベシ、
サ
レド幽
門部、十二支腸、小腸、耳下腺各
々分泌作用
チ有
スル毛盲
管
ニ絡
り、肉
眼的
ニモ組織
的
ニモ固有嚢腫腔
へノ開口部
チ發見
シ得ズ、故
ニ
上記諸腺
中内容
分泌
ニ關
興
スル
ハ皮脂腺
及
ビ汗腺
ノミナリ、該
ニ腺
ハ前記數
例
ニ於
テモ常
ニ存
セ
シ所
ニシテ且腺内脂肪
ノ染色所見
モ異ラズ
、故
ニ脂肪球
形成
ハ分泌組織
ニ起因
セザ
ル
コト
六確
實
ナリ、Thorn
ハ汗腺
ノ分泌過多
チ以
テ脂肪球形成
ノ原因
トセ
シモ其
ノ根據
ナキ
コト明ナリ。
2.
莖捻轉
ガ腫瘍
ノ浮腫
チ起
シ、内面上皮
チ脱落
セ
シメ内容
ノ遊離脂肪酸
殊
ニ胞和脂肪酸
ト中性脂肪
ノ増量
チ來
ス
ヨト
ハ巳
ニ第
四例及
ビ第
五例
ニテ證
セリ、本例
ニ於
テモ莖
ハニ同轉
シ、内腔上皮
ハ廣汎
ニ亙リ剥落
ス、而
シデ遊
離脂肪酸
ハ八
・四
一五
ニテ異常
ニ多
ク之
ニ反
シ不飽和脂肪酸
ハ約半數ナリ、
斯
ル遊離脂肪酸
ノ増加
ハ到底莖捻轉
ノミチ以テ
シテ
ハ理解
シ難キ所
ナ
リ。
3.
肉眼的
ニ明ナ
ル如
ク本内容
ハ他
種卵巣嚢腫
ノ合併
シ中隔穿孔
ニヨリ
テ
兩内容
ノ混合
セシモノナリ、其
ノ嚢腫
上皮
ノ發見
セヲ
レザ
ルチ以
テ、又内容
ハ良
ク融和混合セ
ルチ以
テ如何
ナ
ル種類
ノ卵集嚢腫
ナ
ルヤ
ハ不明
ナリ、而
シ
テ内容
所見
ハ最
モ第
六例
ニ近似
ス、比較
セバ次
ノ如
シ。
兩
者共内容
其
ノ儘
ニテ
ハ一〇〇度
ニテ溶融
セズ、然
ルニ其
ノ脂肪
ノミ
ニテ
ハ三〇
・五-
二八・五
ニテ溶融
スルチ以
テ見
レバ、内容其
ノ儘
ニテモ溶融
セザ
ル
ニ
ハアラザ
ルモ内容
中
ニ多
數
ノ脂肪
以外
ノ物質
チ含
ミ、脂肪含
有量
ノ比較
的僅少
ニシテ其
ノ溶融
チ肉
眼的
ニ認
メ得
ザ
ル
ニ依
ルナラ
ン、遊離脂酸
ハ異常
ニ多量
ニテ偶
然
ニモ兩者八
・四
一五
チ示
ス
ニ沃度数
ハ前者
ハ酒常
ノ如
キ
モ後
者
ハ約
半量
ナリ、且前者
ハ鹸
化數三〇
八・九五
ノ多量
ナ
ルモ後
者
ハ一五
七・○
八ナリ、鹸
化數
ハ既
述
ノ如
ク中性
脂肪
ト脂肪酸
ノ量
チ代表
スルモノナ
レパ酸
數
ノ等
シクシテ鹸化數
ニ斯
ル差異
チ來
セシ
ハ明カ
ニ本例
ノ有
スル中性脂肪
量
(鹸
化
シ得
ベキ)ノ甚
ダ少量
ナ
ルチ説明
スルモノナリ、
然
レド
モ脂肪染色
ノ結
齋藤-卵巣皮檬嚢腫病理知見補遺
八〇三
18
果
ハ、皮
脂腺體
ニテ
ハ中性脂肪
ノ減
少
ト脂肪
酸
ノ増量チ
「ニーウプラウズ
ル
フ
アート」、フイ
シヱル氏法
ニテ證
シ得
ズ、或
ハ脂
肋染色
ハ斯
ル化學的差異
チ
現
ハス程
精密
ナラザ
ルニ依
ラ
ンモ寧
口既述
ノ如
キ皮脂腺
分泌
物モ瀦溜後
ニ斯
ル變
化
チ起
セ
シモノト
モ見做
スチ得
ベシ、
況
ンヤ已
ニ莖捻
轉殊
ニ他種
嚢腫内
容
ノ混入
ニヨリ遊離脂肪酸
ノ激量
チ知
ルニ於
テオヤ。
次
ニ斯
ル化學的變化
ガ脂肪
球形成
ニ如何
ニ關興
スルモ
ノナ
ルカ
ニ就
キテ
ハ
後
述
スベ
シ。
第
八
例
武
○
ツ○、
六ハ十
九歳
、五十
七歳
以來閉經
、四同經産婦、右
側卵巣皮
樣嚢腫。
I.
肉眼的所見。
大
人頭大皮樣嚢腫
ニシテ球形
、表
面滑澤
ニシテ癒着
ナク、又莖捻轉
ナ
シ、
内容
ハ乳汁樣
ニシテ梢
々黄色
ニ富
ム、色調平等
ニシテ僅
ノ脱落
毛髪
チ混ズ、
鏡
檢
スルニ無造
構物質
中
ニ多數
ノ脱落細胞及
ピ光輝
ア
ル大小種
々ノ脂肪滴
チ
有
ス脱落
細胞
ノ尚核
チ有
シ、原形質中
ニ多數
ノ脂肪滴
チ含有
スルモノチ散見
ス。錐
體
ハ直裡約
一〇仙米
ノ圓盤状
チナシ嚢腫壁
ヨリ徐
々
ニ肥厚
シ中央部最高
ニシテ三仙
米厚徑
ニ及
プ、從
ツテ壁
トノ境界
ハ明
ナラズ
、錐體面
ハ帶黄白色
ニシテ甚ダ不規
則
ナル粟粒大乃至豌豆大
ノ半球状膨隆物
チ出
シ其
ノ間所
々
ニ
短
キ絨
毛様突起
ノ浮動
ス、硬度
ハ一樣
ニ粘土樣軟、切斷面
ハ淡黄白色
ニシテ
白
色
ノ紋輪
ニヨリテ縦横
ニ匹劃
セラ
ル、短
キ麻色毛髪
ノ點
々疎生
スルノミ、
嚢腫壁
ハ帶黄白色
ノ内容ト同
一物質
ニテ被
ハレ只
一部分
ノミ滑澤
ナ
ル面
チ現
ハ
ス。
要之錐體
ハ基ダ大
ニシテ殆ド毛髪
ナク肉
眼的
ニ
一定
ノ器臓
ト認
ム
ベキ
モノ
ナク已
ニ肉眼的
ニ前述諸例
ニ比
シ錐體
ノ甚ダ異
レルチ知
ルナリ。
2.
組
織
的
所
見
。
表面
ヲ被
フモノ
ハ表皮組織
ナリ、其
ノ構造
ハ既述
ノモノト同ジ、只角質層
ハ多
ク剥離
スルモ尚
ホ強
ク陷
凹セ
ル部
ニアリ
テ
ハ恰
モ表皮癌
ニ見
ル癌球
ノ如
キ像
チナス、皮下結締織
ハ甚ダ少
ク表皮
トヨ呼錐體
基定部迄
ノ大部
分チ占
ム
ルモ
ノ
ハ大小種
々ナ
ル大サ
ノ胞状腺
組織
ナリ、小ナ
ル腺體
ヽ只圓形細
胞
ニテ
充滴
シ腺腔
チ見ズ、梢大
ナ
ルモノ
ハ腺體周圍
ハ小
ナル圓形細胞
ノミナ
ルモ中
央部
ノモノ
ハ大
ニテ原形質
内
ニ多數
ノ小脂肪滴
チ含
ム、更
ニ大ナ
ゥ腺體
ハ中
央部
ハ廣
ク無造構
ニテ「ヱオヂ
ン」ニ淡染
シ「ヘマトキ
シリ
ン」濃染
ノ少數顆粒
チ見
ルノミ、腺體
チ界
スルモノ
ハ微
ノ腺間結締織
ニテ腺體
ハ相互隣接密
在
ス、
即
チ此
ノ腺
組織
ハ殆
ド休止状
ニァ
ル乳腺實質
ニシテ正常
ノ無機
能時乳腺
ニ比
シ著
シク發育
シ、又機能時乳腺
ノ如
ク廣
キ腺腔
チ有
セズ又初乳球及
ビ乳汁小
滴
ニ比
スベキ
モノナ
シ、只大
ナ
ル腺體
ハ中央部
泥脂肪
變性
ニ昭リツ
、ア
ルナ
リ、時
ニ毛根
チ見
ルコト
アリ、集
合管
ト
シテ認
ムベキ
モノナ
シシ又肉
眼的
ニ
モ組織的
ニモ乳頭
ト覺
シキ
モ
ノナシ、或
ハ本錐體
ハ甚
ダ大
ニシテ連績的切片
チ造
リ得ザ
リ
シモ
一因
ナ
ルベシ、
錐體
周園
ノ嚢腫壁
ハ錐體表面表皮
ノ蓮績
シ
テ源
クナリ、更
ニ遠隔
部
ハ數層
ノ小
ナ
ル骰千形細胞
ニテ被
ハル、肉眼上平滑
ナリ
シ部
ハ上皮
剥脱
シテ核
ニ乏
シキ平行
セル結締織纎維
ヨリナル
壁
ノ露出
ス。脂
肪染
色。
内容、表皮
、皮
下結締織
、脂肪
組織
ノ脂肪染色所見
ハ前例ト異ラズ、乳腺
實質
ノ固有腺上皮
ハ全ク陰性
ニシテ脂肪變性
ニ陷
レル無造構部
ハ大
ナル中性
齋藤-卵巣皮檬嚢腫病理知見補遺
八〇四
19
脂肪滴
ト小ナ
ル脂肪
酸チ混ズ
ル中性脂肪滴
ノ瀰
蔓性
ニ存
シ、其
ノ周圍
ノ腺上
皮
ハ多少
ノ脂肪滴
チ有
ス、腺體
ノ中等度
ナルモノ
ハ中央
部腺
上皮
ハ膨
大
シテ
「ニ-ルプラウズ
ルプア-ト」ニテ紫色
チ呈
スル小滴
チ原形質
中
ニ充満
ス、腺
間結締織
ハ中性脂肪
、脂肪酸
チ種
々ノ割合
ニ混ズ
ル多量
ノ脂肪
チ舎
ム。
3. 化學的檢
査
イ 溶融點
内容 三二度二分
脂肪 二六度
ロ
酸
數
一・-二
二
ハ 鹸
化數
二
二
三
・二
七一八
ニ
沃
度
数
七
一・三
九
五
4.
考
按
。
大ナ
ル錐體全部
ハ休止時乳腺組織
ヨリナ
リ之
チ表皮
層
ニテ被
フ
ノミ、他
ニ
皮脂腺
及
ビ汗腺
チ有
セズ、又嚢腫壁
中
ニモ分泌
可能性組
織チ見
ズ、故
ニ本腫
瘍
中
ニテ分泌
能カ
アル
ハ乳腺實質
ノミナリ、然
ルニ乳腺
ハ目下分泌機能
チ有
セズ
、寧
ロ脂肪
變性
ニ陷
リツ
、アリ、サ
レド腺體
ハ思春期前
ニ於
クルモノ
、
如
ク結締織
間
ニ上皮索状
ト
シテ存
スルモノ
ニアラズ、腺胞
ハ異常
ニ大
ニシデ
結締織
ハ僅
ニ隔壁
ト
シテ存
スルノミ、腺
胞
ハ寧
口正常授時乳腺
ノ大サ
ト發育
チ有
ス、本腫瘍
乳腺
ガ曾
テ乳汁
分泌
チ營
ミシヤ否ヤチ確
定
シ得ザ
ルモ乳腺以
外本嚢
腫
ニ分泌可能組織
チ有
セズ莖捻
穂ナ
ク又他種嚢
腫
ノ合
併
セシモノ
ニモ
第四
総
括
的
觀
察
予
ノ觀察
セシ
バ腫瘍
ノ大
サ鵞卵大
ヨリ大人頭大
ニ達
スル八例九個
ノ卵巣皮樣嚢
腫
ニシテ内八嚢
腫
ハ所定
ノ順序
ヲ以
ク
檢索
セシモ
一個
ハ只對照例トセシ
ニ止
ル、右側卵巣
ニ發生
セシモノ六個、左側卵巣
ニ生ぜ
シモノ三個
ニシテ莖捻轉
ヲ惹
非ズ、而
モ多
量
ノ乳汁様
外觀
ノ内容チ有
シ、乳腺
ハ良
ク發育
シ且
一部脂肪變
性
ニ陷
リツ
、アルチ以テ腺
實質
モ曾
テ分泌
シツ
、アリシモ後休止
シ漸次退
行
變性
ニ陷
リシ
、ア
ルモ
ノト推定
シ得
ルナリ、之
レ正常乳房
ニ於デ
モ授
乳中止
後
ハ腺胞
ハ漸
次脂肪變性
チ現
ハシ邊
行萎縮
スル毛ノナ
ンパナリ。
故
ニ本例
ハ休止
時乳腺
ニシテ其
ノ内容
ハ乳汁
チ主
トシ之
ニ多少
ノ脱落細胞
ノ混
ジタルモノナ
リ、從ツテ本例
ノ内容
ハ前記七例
ノ化學
的試驗
成績
ト比較
スべキ毛ノ
ニアラズ、寧
口正常
乳汁
ト對照
スベキモ
ノナリ、予
ハ予
ト同様ナ
ル操作方法
(越幾斯製法
)ニヨル入乳
ノ化學的檢査成績
チ僅
ニEngelニ求
メ得
タリ、氏
ハ入乳脂肪
、融
點三〇度-三四度
ニシテ油酸
ハ約半數
チ占
メ沃
度數
ハ平均四五・○ナリト云フ、
酸
數、鹸
化數
ニ於
テ
ハ知
ル由
ナ
シ、
多少
ノ差違
アリ、サ
レド酸數、鹸
化數
ノ不明
ナ
ルチ以
テ様密
ニ比較考慮
スルノ要
ナカ
ル
ベシ、假令多少
ノ差違
ハ存
スルトモ正常
乳腺
ト腫
瘍内乳腺
ナ
ルチ以
テ共
ノ分
泌物集成
ノ全
然
一致
セズ
トモ寧
口異
ト
スル
ニ足
ラザ
ルナリ。
最
後
ニ本例
ニ於
テ興味深
キ
ハ腫瘍保持者
ハ六十
九歳
ノ老齢
ニテ五十七歳以
來閉經ナリ、腫瘍内乳腺
ガ果
シテ何時
分泌機
能アリ
シモノナリヤ、從
ツテ腫
瘍
ノ増大ガ當時著
明ナリ
シヤ等興味
ア
ル問題
ハ予
ノ眼前
ニ提供
セラ
ル
、モ解
決
ノ鍵
ハ遽キ彼方
ニ存
スルナリ。
齋藤-卵巣皮様嚢腫病理知見補遺
八○五
20
起
セシモノ三例、他種卵巣嚢
腫
ヲ合併
セシモノ三例ナ
リ、以下個
々
ニ就
キク總括的觀察
ヲ試
ミン。
一、
内容
ニ就
イテ
ノ觀察
室
温
ニ於
ナ凝
固
セル内
容
ニ就
テ觀
ル
ニ其
色
調、粘
稠度
、
混濁度
,夾
雜
物
ニ於
テ實
ニ千差
萬様
、
一ト
シテ同
一ト見做
ス
ベキ
モ
ノナ
シ、
只是
等
ヲ彼
此相
比較
ス
ルト
キ
ハ其
ノ間多
少
ノ類
似點
ノ存
シ略
群属
ニ医
別
シ得
ルモ
ノアリ。
第
一例-第三例
一ハ酷似
シ爾
他
ノ内容
ヨリ全然異
ル、即
チ美麗ナ
ル黄色
ヲ呈シ只之
ニ白色凝固片
ノ混入
ノ多少
ノ差
ノ
ミ、只第
二例
ハ夫ガ李等
ニ溶融
セラ
レタ
ルナ
リ、黄色「バタ-」樣色調
ト硬度
ヲ有
シ、夏季室温
ニテ已
ニ溶融
シテ黄色透
明油状
トナリ「オ
レ-
フ」油樣外觀
アリ、第四例、第五例又類似
シ共
ニ白色
ニシテ全ク黄色
ヲ帶
ビズ、只第四例ガ多少暗
色
アル
ニ反
シ第五例
ハ美麗ナル純自色
ヲナ
シ、全内容
ハ良
ク融和混合
シナ肉眼上混色
ナシ、共
ニ泥状
ニシテ粘稠度強
カ
ラズ、第六、第七、第八例
ハ各自特異
ニシテ類似
セル所
ヲ見ズ、第六
例
ハ汚穢粘液中
ニ脂肪塊
ヲ混
ゼ
ル如
ク融和
セズ
シ
齋藤-卵巣皮樣嚢腫病理知見補遺
八〇六
21
テ個
々ノ色調ヲ呈
ス、第
七例
ハ脂肪球
ニシテ第八例
ハ乳汁
ヲ瓶中
ニテ數
日經
シモノ
、如
ク基定部
ニ帶黄不透明液
ヲ上層
ニ脂肪塊俘ゾ如
シ。
鏡檢所見
ハ比較的單純ナリ、無造構物質中
ニ大小ノ脂肪滴
ト脱落細胞
ト黄褐色
々素
ヲ有
スルモノトアリ、第三例
二及
ビ第七例
ニハ殊
ニ脂肪滴少ク、又内容中白色
斑點
ハ脱落上皮塊ナリ。
黄色
々素
ハ之ガ脱落細胞
ニ含有
セラル
、アリ、又色素
ノミ無造構
ニ存
スルアリ。
二、
溶
融
點
内容
ヲ其
ノ儘何等
ノ庭置ヲ施
スコトナ
クシテ融點
ヲ檢
スル
ニ體温又
ハ體温以下
ニテ溶融
ス、是
レ内容ガ腹腔内
ニテ粥
状
ヲナ
ス所以
アリ、只第六例、第七例
ハ共
ニ攝氏
一○○度
ニテモ溶融
セズ、然
ル
ニ其
ノ「ヱ-テル」越幾斯
ハ甲
ハ三〇度
五分、乙
ハ二八度五分
ニテ明
ニ溶融
スルコトヲ以
テ見
レバ内容中
ニ含有
セラル
、純脂肪類
ハ融點
ニ於
テ大差ナキ
モ剥脱
細胞塊又
ハ脂肪以外ノ物質
ノ多量
ニシテ爲
ニ溶融
ヲ肉
眼的
ニ認メ難
キ
ニヨルナリ、第六例
ハ肉眼的
ニ已
ニ多量
ノ乾天様
物質
ヲ有
シ、第
七例
ハ脂肪球ヲ形成
セルモノナ
リ。
反之「ヱーテ
ル」越幾斯
ハ最低
二十三度、最高
三十三度五分
ニシテ凡テ體温
ヨリ遙
ニ低温
ニテ溶融
ス、且其間
ノ差異
モ
一○度
ナリ、各脂肪簇混台ノ度
ニヨリテ來
リシナリ、而
シテ卒均
二七度六分ナ
リ。且内容
ノ類似
セシ第
一例
-第三例
ハ融點亦近似
シ低温
ニラ平均
二四度
二分
ニテ溶融
ス、更
ニ相似
タル第四例、第五例
ハ最
モ高
クシテ平均三二度五分
ナ
リ、
第
六
例-第
八
例
ハ其
ノ中
位
ニア
リ、肉
眼的
ニ似
タ
ルモノガ亦溶
融
點
モ近似
セ
ルナ
リ。
齋藤-卵巣皮様嚢腫病運知見補遺
八〇七
22
三、
酸
數
内
容
ノ「ヱー
テ
ル」越
幾
斯
ノ酸
數
ハ即
チ内
容中
ニ含
ム遊
離
脂肪酸
ヲ中
和
スル
ニ要
ス
ル苛性
加里
ノ瓦數
ナ
リ、而
シテ酸
數
ハI
ハ○
・八
四
一五
ニシ
テII
、III
ハ共
ニ○
・九
五○
八
ニシテ三者何
レモ
一・以
下
ニシテ近似
ス、然
ル
ニIV、V
ハ酸
數高
ク
シ
テ二
・○
ヲ上
下
ス、更
ニIV
、VII
ハ異常
ニ遊
離
脂酸多
ク共
ニ八
・四
一五
ナ
リ、VIII
ハ
一・一ニニナ
ルモ
巳
ニ組
織
所見
ニテ記
セ
シ如
ク全然
別
個
ノ
モノ
ニ屍
ス。
斯
ク酸
數
ヨリ見
ク
ル内
容
ハ其
ノ間可
成
ノ差
異
ア
ル如
クナ
ル
モ溶
融點
、肉
眼
所見
ノ示
ス群属
ハ此
ノ場合
ニモ認
メ
ラ
ル
ヽ
ナ
リ。
四、
鹸化
數
中
性脂
肪
及
ビ脂
肪酵
ヲ鹸
化
ス
ル
ニ要
スル苛
性
加
里
ノ量
ハ又種
々ナ
リ、
ナ
レドI、II、
III
ハ平
均
一四
四・二八
三
ニシテ三
例略同
數
ヲ有
ス、然
ル
ニIV、V
ハ著
シク増
量
シテ平均
一八
七
・三七
四
ニテ之亦
近似
セリ、更
ニVI
ハ激
増
シラ
三〇
八
・九
五
ナ
リ
シ
ニ溶
融
點
、酸
数
ヲ同
ウ
セ
シVII
ハ少
ク
シテ
一五七
・○八
ナ
リ、是
レ兩者
ノ注
目
スべキ特
異點
ナ
リト
ス。即
チ此
ノ兩
者
ハ遊
離脂
肪酸
ハ同
量
ナ
ル
モ中
性脂肪
量
ハ格
段
ノ差
異
アリ、今
中性
脂肪
ヲ鹸
化
數
ト酸
數
ニテ表
現
スル「ヱーテ
ル」數
ニラ中
性脂
肪量
ヲ比較
スルトキ
ハ
VI
三
○
○・五三
五
VII
三四
八
・六
六
五
ニシテ甲
ハ乙
ノ倍
量
以上
ヲ含
ムナ
リ、
而
シタVII
バI、
II、
III
ノ「ヱー
テ
ル」數
ト略同樣
ナ
ルモ興味
ア
ル處ナ
リ。
五、
沃
度
數
脂
肪中
ノ不
飽和
脂肪
酸
即
チ主
ト
シテ油酸
量
ハ各例略
近似
ス、I
、II
、III
ハ平均
九
七
・
一八
七ナ
ル
ニVIl
ハ約半
數
ニシラ
四
五
・一
一六
二ナ
リ、即
チVII
ハ酸
數
異常
ニ高
ク
シテ沃
度數
非常
ニ少
シ、
故
ニ遊
離脂酸
培量
ハ飽和
脂酸
増量
ニヨ
ルナ
リ、
之
レ亦注目ヲ要
ス
又VI
ハ酸
數同様
ニ高
ク
シテ沃度數
ハ略
平均數
ニ近キヲ以
テ是
レ亦飽
和脂酸
ノ増量
ニヨル酸
度
ノ上騰
ト思
ハル、
サ
レドVII
ハVI
ニ比
シ更
二飽和脂酸
ニ富
メ
ル
コト
ハ自
ラ明
ナ
リ。
齋藤
-卵巣皮
様嚢腫病理知見補遺
八○八
23
六、
組
織
檢
査
成
績
皮樣嚢
腫錐體
ハ予
ガ九個
ノ檢査例
ニ於
テ凡テ表皮層
ニテ被
ハル、只V
ニ於
テ
一部圓柱上皮
ヲ見
シノミ、而
シテ表皮層
ハ通常皮層
ニ於
ケルガ如ク免質層、顆粒層、
マルビギ-氏層及ビ基定層
ヨリ成
リ透明層
ハ認メ難
シ、基定層
ニハ黄褐色
色
ヲ
ム
モ
ノ
ト
然
ラ
ザ
ル
モ
ノ
ト
ア
リ
。
皮下結締織中常
ニ見
ル分泌腺
ハ皮脂線
ニシラ多ク
ハ異常
ノ發育
ヲ示
シ皮下結締織
ノ大部
ヲ占
ム、毎常熾ナ
ル分泌機能
ヲ有
シ大ナ
ル排
泄管
ニ
ヨリ
テ直接
内
腔
ニ分
泌
シ
ツ
ヽア
ル状
ヲ目撃
シ得
ルナ
リ、
又排泄管
ノ閉鎖
シテ表皮
ニ近キ粉瘤形成
モ常
ニ見
ル所
ナリ、分泌物
ハ殆
ド中性脂肪
ヨリナリ脂肪
ハ原形質中
ニ顆粒状ヲナシ核ヲ圍続
シテ數個ノ脂肪滴
ノ胞體
ヲ
充隔
ス、
細胞
ハ腺
體中
央
部
ニ至
ル
ニ從
ヒ大
トナ
リ脂
肪滴
モ大
トナ
ル、腺體壁
ニ竝立
スル最外層腺
上皮
ハ殆ド脂肪
ヲ含
マ
ズ
シテ小ナ
リ、
腺中
央
ヨリ排
泄
管
ヲ充
ス
モノ
ニハ多
少
ノ脂肪
酸
ア
ルモ其量
タ
ルヤ甚
ダ少
シ、少
量
ノ「ヒ
ヨレヌテ
リ
ン」物
質
ヲ含
ムヲ脂
肪酸
及
ビ
「ヒ
ヨ
レステリ
ン」物質
ハ脂肪染色法ヲ以
テシテ
ハ到底其
ノ多寡
ヲ定メ得
ズ、尚
ホ皮脂腺
ハ錐體
ノ
ミナラズ微少ナ
リト雖
モ錐體附近
ノ嚢腫壁中
ニモ存
シ分泌作用
アリ、只第八例
ニテ
ハ嚢腫壁
ハ勿論錐體内
ニモ全
ク皮脂
腺
ヲ有
セズ。
汗腺
ハ常存
ス
ルモノ
ニアラズ、
其
ノ發育甚ダ佳良
ニテ
著明
ノ迂曲
セル腺
體
ト
表皮
面
ニ向
フ
排
泄管
ノ存
セル
モノア
リ
(III
、
VII
)又
僅
少
ニ
シ
テ
辛
ジ
テ
發
見
シ得
ラ
ル
、
モ
ノ
ア
リ
、
共
ニ皮脂腺體ノ基底
ニ近ク又
ハ基定部
ト皮下脂肪組織間
ニ存
シ
其
ノ微細構造
ハ正常
ノモノト同ジ、上皮間及
ビ腺腔内
ニテ「オ
ス
シウ
ム」酸
ニテ僅
ニ認
メ得
ベキ小脂肪
滴
ヲ見
ル
コトア
ル
モ又認識
シ難
キ
モノアリ、即チ汗腺
ハ錐體内
ニラ比較的
屡々見
ル分泌腺
ナ
ルモ其
ノ數及ビ分泌ノ状
ハ到底旺盛
ナ
ル皮脂
腺
ニ比
ス
べ
ク
モ
ア
ラ
ズ
。
尚
ホ分泌腺以外
ノ組織
トシテ
ハ毛根、立毛筋、皮下脂肪組織、血
管
ナ
リ、
是等
ハ予
ガ研究
ニ關係
ス
ル
コト少
キ
ヲ以
テ
記サズ、
只毛根
ハ亦正常毛管
ト構造異
ラズ
シテ皮質細胞間
ニハ多數
ノ黄
褐色顆粒
ヲ有
スルモ錐體内銀白色毛髪
ニテ
ハ此
部色素顆粒
ハ全ク消
失
シ且細胞間
ニ室
氣潜
入
スル
モ
ノナ
ル
コト
ヲ
確
メ
得
タ
リ
(III
)。
齋藤-卵巣皮様嚢腫病理知見補遣
八○九
24
此外
不
正骨
片
ヲ有
ス
ルア
リ(I
、
VII
)、
軟骨
組
織
ア
リ(III
、VI
、
V、IV
)、
齒牙
發
生
三
例(I、
VII
)ニ見
タ
ルノ
ミナ
ル
モ
一例
ハ(I
)興味
ア
ル交
代期
齒
牙ナ
リ
キ。
又皮
脂腺
、
汗腺
ヲ全
ク缺
ギ大
ナ
ル休
止
時乳腺
實質
ヨリナ
レル錐體
ア
リ(VIII
)。
爾
餘
ノ組織成分殊
ニ分泌組織
ヲ顧慮
シテノ組織檢査
ニ於テ認メ得
ル所
ハ甚ダ不規則ナリ、先ヅ氣管及
ビ食道ヲ有
スル
モノアリ(II
)、管
腔大
ニシテ共
ニ固有
ノ粘液腺
ヲ有
シ管腔
ニ向
ヒ分泌
ス、サ
レド兩管腔
ハ共
ニ嚢腫固有腔
ニ通
ゼズ、從
ツテ固有腔内容
ハ氣管
及ビ食道分泌物
ノ混入
セズ、又幽門部、十
二支腸、小腸
及ビ耳下腺
ノ消化器系臓器
ヲ有
シ殊
ニ其
ノ發育
良好
ニシテ正常器臓
ト異
ラザ
ルモノアリ、各
々所屬分泌腺
ヨリノ分
泌液
ニヨリテ管腔
ヲ充
スモ是亦排泄ロヲ有
セ
ズ、從
ツテ固有嚢腫腔内容
ニ影響
スル所ナ
シ(VII)機能亢進
セル甲状腺
ヲ嚢腫壁上
ニ濁立性
ニ有
スルアリ(VII
)、又子宮様
組織
ヲ有
シ内腔
ノ甚
ダ廣
ク分泌液
ニテ擴
大セラ
ルヽアリ(VI)、上記
プ如キ組織
ハ各々分泌能力
ヲ有
スルモ分泌瀦溜液
ハ
小嚢腫
形
ヲナ
シ個
々濁
立
セ
ル小管
腔
ヲナ
スナ
リ、然
ル
ニ斯
ク
ノ如
キ管
腔
モ盆
々瀦
溜分
泌液
ノ増
加
ス
ルトキ
ハ管
壁
ハ次第
ニ菲
薄
卜ナ
リ途
ニ内容
ノ緊
張
歴迫
ニヨリ
テ相互
間
腔
ノ中隔
壁
消失
シ内容
ノ相通
ズ
ル
コトアリ、從
ツ
テ又錐體
表
面
ヲ破
綻
シテ錐
體内管
腔内
容
ノ嚢
腫
固
有腔
ト交
通
ス
ル
コト
ア
ル
ハ第
五例
ニヨリテ明ナ
リ、斯
ル場合
ハ勿
論固
有腔内容
ニ影響
ヲ及
ボ
スベキナ
リ。
皮樣嚢腫壁
ハ通常單層
又
ハ數層
ノ骰子形ー扁平上皮
ニテ被
ハル、斯
ル際
モ勿論或
ハ毛髪尖端
ノ破壞作用
ニヨリ或
ハ不
明
ノ原因
ニヨリテ點状
ニ又
ハ斑絞上
ニ上皮剥脱
シ黄褐色
々素
ヲ附着
スルヲ常
トス、莖捻轉及
ビ他種嚢腫
ノ皮樣嚢腫内破
壞
ニヨリテ
ハ内腔上皮
ハ殆ド完全
ニ剥離
ス、斯
ル際
ハ他種嚢腫内腔上皮
モ亦殆ド完全剥脱
ニ陷
ルモノナ
ルコトヲ知
レリ
他種嚢腫合併
ノ場合
ノ上皮剥脱
ガ皮樣嚢腫内容
ノ上皮面
ヲ摩擦
スル
ニヨルカ或
ハ同時
ニ流入
スル毛髪
ノ刺戟
ニヨルモノ
ナ
ルカ
ハ不明ナ
リ。
要之皮様嚢腫内容
ハ通常
ノ場合
ハ殆ド全部皮脂腺分泌物
ヨリナ
ルモノナリ即
チ皮脂嚢
ト見做
スぺキモノナ
リ、汗腺
モ
分
泌
スルモ其ノ量
タルヤ微
々タルナリ、殊
ニ内容中
ノ脂肪
ハ即
チ皮脂
ノ有
スル脂肪
ト見做
スコトヲ得
ルナ
リ、サ
レド斯
齋藤-卵巣皮様嚢腫病理知見補遺
八
一〇
25
ル皮脂
モ腫瘍内分泌組織以外
ノ動機即
チ莖捻轉及ビ他種卵巣嚢腫
ノ自解
ニヨリテ變化
スルモノナ
リ、乳汁内容
ヲ有
スル
ハ稀有
ニ属
スベキモノナリ。
第五
内
容 ノ
變
化
卜
其
ノ
原
因
症例及ビ個
々ノ所見
ニ對
スル總
括的觀察
ヲ述
ベタリ、予
ハ更
ニ進
ンヂ通常皮樣嚢腫
ト稱
スルモノ
ハ如何ナ
ル内容
ヲ有
シ、如何ナ
ル組織
ヨリ分
泌
セラ
ル
ヽモノナ
リャ、又莖捻轉及ビ他種卵巣嚢腫
ノ合併
ハ内容
ニ如何ナ
ル變化
ヲ及ボ
スモ
ノ
ナ
リヤヲ述
べ、最後
ニ脂肪球皮様嚢腫
ニ於
ケル球形成
ニッキテ卑見
ヲ述
ベントス。
一、
卵巣皮様嚢腫内容
嚢腫腔
ニ向
ツテ旺盛ナ
ル分泌機能
γル皮脂腺以外腫瘍内
ニ分泌組織
ヲ有
セズ、且莖捻轉、癒着及ビ他種卵集嚢腫
ヲ合
併
セザ
ル第
一例皮様嚢腫内容
ハ即
チ皮脂
ノ瀦溜
ニョリテ成
ルモノナリト見做
スコトヲ得
ベシ、更
ニ皮脂腺
ニ加
フル
ニ汗
腺
ヲ以
テ
セル第
二例、第三例
ニ於
テ汗腺
ハ分泌機能
アルモ微
々タ
ルノミ、到底皮脂腺
ノ夫
ニ比
スベクモアラズ、而
シテ
此
ノ三者
ノ内容
ヲ比較
スルトキ
ハ吾人
ハ通常
ノ皮様嚢腫内容
ニ對
スル基本的觀念ヲ確定
シ得
べキナ
リ、表示
セバ次
ノ如
シ
。
齋藤-卵巣皮様嚢腫病理知見補遺
八
一一
26
上記
ノ如
ク三者
ハ甚
ダ酷似
シ諸種
ノ檢査
ニ於
テ殆ド差異ナキ程ナ
リ、肉眼的所見
ハ鮮黄色
ニシテ黄色
メター｣状ナ
リ、
只之
ニ脱落上皮
ヲ白色斑
點トシテ見
ルカ又
ハ禰蔓性
ニ散在
スルカノ差異
アルノミ、故
ニ吾人
ハ摘出皮樣嚢腫
ニ於
テ黄色
「バター」状内容
ヲ見
ルトキ
ハ直
ニ皮脂塊ナ
リト斷定
スルモ誤
リナ
キナリ、融點内容
ノ儘
ニテ三五度
九分
、脂肪
ノミナ
ル
トキ
ハ二四度
二分
ニシテ溶ケ始メ、酸數○・九
一四四、
鹸化數
一四四・九八
四、「ヱーテ
ル
」數
一四三
・三六八九、沃度數
九
七・一八七ナリ、分泌組織
ハ上述
ノ如ク皮脂腺ニ
シテ汗腺
ハ殆ド影響チ
キ
コトモ明ナリ
、又組
織的肉眼的
ニ然リ
シ如
ク交
通ナ
キ氣管、食道分泌液
ノ影響ナ
キコ
ト
ハ化學的
ニモ立證
シ得
ラ
ル、ナリ
。
文
獻
ヲ求
ム
ル
ニ予
ハ僅
ニ
一例
ヲ見
タ
ルノミ、
帥
チ
R. Benda
ハ皮樣
嚢腫
ニ時
ニ見
ル卵巣
間膜
ノ脂肪
浸
潤
ヲ檢
セ
ント
シ
テ嚢
腫
内容
ト間
膜部
脂
肪
ヲ各
々「ヱー
テ
ル」越
幾斯
ト
シテ比較
ス
ル
ニ當
リ嚢腫
内容
ノ脂肪
ハ溶
融點
三〇度
九
分、鹸
化
數
一
五
六
・八
、沃
度
數
六五
・七
九
ヲ得
タリ、予
ノ檢
査
ト可成
ノ差
異
ア
ル
モ氏
ノ成績
ハ特殊
ナ
ル皮
様嚢
腫
ニシテ又斯
ル脂肪
浸潤
(又
ハ吸収
)ハ皮
様
嚢腫
自
身
ノ高
年性
變化
ト見做
サ
ル
ヽ
(Pfannenstiel-kromer, Gentili, Steinert)
モノナ
ルヲ以
テ敢
テ異
ト
ス
ル
ニ足
ラザ
ルナ
リ。
最
後
ニ銀
白色
毛髪
發
生及
ビ更
代
期歯
牙發
生
ハ内
容
ニ何等
ノ影響
ヲ及
ボ
サザ
ルモノ
ヽ如
シ。
二、
腫瘍莖捻轉
ト内容
皮樣嚢腫莖捻轉
ガ若
シ急激
ニ起
ル卜キ
ハ莖中
ノ靜脉管
ハ易
ク壓迫閉鎖
セラル
、ニ反
シ動脉管
ハ尚
ホ血行
ヲ持績
シ,爲
ニ甚
シキ鬱血
ヲ起
シテ壁
及ビ内容中
ニ出血
ス、反之捻轉ガ徐
々
ニ行
ハル
ヽトキ
ハ出血
ヲ起
ス
コトナ
クシテ浮腫状
ヲ呈
ス、
何
レ
ニテ
モ其
ノ結果
ハ表面上皮及ビ内面上皮
ハ大部分
ニ亙
リテ剥離
シ、表面
ハ周圍臓器
ト癒着
シ、内面
ヨリ
ハ浮腫
ノ結
果滲出液
ヲ内腔
ニ滲出
スベシ、斯
ル捻轉
ノ緩徐
ニ行
ハレタル場合、内容
ハ如何
ニ變化
スルモノナ
リヤ、第四例
ハ六直角
ニ亙
ル莖捻轉
ヲ有
シ、周圍器臓
ト廣
ク癒着
セリ、第五例亦四直角廻轉
ヲ營
ムモ癒着
ナシ、今此
ノ兩者
ヲ前記
ノ通常皮様
嚢腫
ト比較
セバ次ノ如
シ。
齋藤-卵巣皮樣嚢腫病理知見補遺
八一二
27
内容
ノ肉
眼
的所
見
ニ於
テ已
ニ第
一簇
卜甚
シキ差
違
アリ、
即
チIV、
V共全
ク黄
色
ヲ帶
ビズ
シテ平等
ニ白色
ニシテIV
ハ只
多
少暗色
ヲ帯
ベ
ルノ
ミ、兩者
ハ甚
ダ酷
似
セリ、溶
融
亦共
ニ三
〇度
以上
ニ及
ブ、酸
數亦
高
ク
シテ沃度
數
ハ第
一簇
ニ近似
ス
ルカ又
ハ少
シ、是
レ遊
離脂
肪酸
ノ増
加
ハ即
チ飽和
脂肪酸
ノ増
量
ニ基
ク
モノナ
リ、更
ニ著明
ナ
ル
ハ中性
脂
肪
ノ増量
ナ
リ、
然
ル
ニ第
四例
ノ如
キ
ハ分泌腺
トシ
テ
ハ第
一簇
ニ於
ケ
ルガ如
ク
ニ皮脂
腺及
ビ汗腺
ノミ
ヨリナ
リ他
種卵
巣
嚢
腫
ヲ合併
ス
ル
コ
ト
モナ
キ
ヲ以
テ其
ノ内
容
ノ差違
ハ全
ク莖
捻
轉
ニ歸
スべキナ
リ、只斯
ク内容
ニ變
化
ヲ來
ス
モ
ノガ捻轉
ノ結
果
ト
シテ來
ル嚢
腫
壁
ノ滲
出液
ニヨルモ
ノナ
リャ、
又
ハ只單
ニ莖
捻轉
ナ
ル現象
ニヨリテ分
泌腺
ニ影響
ヲ及
ボ
スモノナ
リ
ヤ
ハ判定
シ難
シ、
内
腔
上皮
ノ殆
ド完
全剥
離
ヲ起
セ
ルヲ以
テ見
レバ寧
口滲出液
ニヨル變
化
卜見
ルヲ至當
トセ
ンカ。
次
ニ第
五
例
ハ前
例
ノ如
キ皮
脂腺
、
汗腺
ヲ有
ス
ル以
外
、錐體
内小房
ノ
一部
ハ錐
體
表面
ノ破
綻
ニヨリ
テ内腔
ニ排
出
シツ
、
ア
リ、
サ
レド
小房
ノ破
綻
タ
ルヤ數
個
ニ止
リ且脂肪
染色
上
小房
ハ夫
ガ皮
脂腺
ア
ル皮層
組織
ニテ圍続
セラ
ル
、モ
ノ以
外
ハ全
ク脂
肪
ヲ含
有
セザ
ルヲ以
テ見
レバ、
斯
ル内
容
ノ變
化
ハ明
ニ存
スル四
直角
ニ亙
ル莖
捻
轉
ト、其
ノ結
果
ト
シテ來
リ
シ内
腔上
皮
ノ完全
脱落
ニヨル滲
出
液
ノ結
果ナ
ルベ
シ。
予
ハ此
ノ第
二簇
ト第
一簇
ヲ比較
スルコト
ニヨリ出血
ヲ起サザ
ル程度
ノ莖捻轉
ニアリテ
ハ内容
ハ平等白色、煉白粉樣
ニ
シテ、遊離脂
肪酸殊ニ
飽和脂
肪酸
ノ多少
ノ増量
ヲ來
スモノナ
リ、又中性脂肪
ハ可成リ増
量
スルモ不飽和脂
肪酸
ハ變化
ナ
齋藤-卵巣皮様嚢腫病理知見補遺
八
一三
28
キカ又
ハ多少減少
ス、從
ツテ脂肪
ノ融點
ル上騰
ス、斯
ル變化
ハ怖
ラク嚢腫壁
ヨリノ滲出液
ニヨルモノナ
ルベシ。
三、
他種卵巣嚢腫
ノ合併
セル場合
皮様嚢腫
ハ屡
々他種
ノ卵巣嚢腫
卜合併
ス、其
ノ多
ク
ハ假性「ムチ
ン」性嚢腫
ニシテ漿液性嚢腫
卜合併
スル
ハ甚
ダ稀有ナ
リ卜云
フ(Kroomer)、然
ラバ他種嚢腫
ト合併
シ其
ノ中隔
ノ究孔破裂
シテ兩内容
ノ交通
セシ場合
ハ如何
ニ變化
スルモノナ
リヤ、勿論兩嚢腫
ノ大小ノ比率
モ影響
スルナラ
ンモ第六例
ハ約同大
ノ三個
ノ嚢腫
ヨリナ
リ内
一個
ノミ皮樣嚢腫ナ
リ、第
七例
ハ皮樣嚢腫
ヨリ稍大ナ
ル他種嚢腫
ノ合併
セシモノナリ、且第七例
ハ四直角
ニ及プ莖捻轉ヲ併發
セリ、今此
ノ兩例及
ビ第
一、第
二簇
ヲ比較
セバ次
ノ如
シ。
著 難 腫 ラVII明 キ ノVI VI
ハ分泌組織
ハ第
一及ビ第
二簇
卜異ラザ
ル
ニ係
ラズ内容
ノ肉眼所見
ニ於
テプ已
ニ異種内容
ノ混入ヲ知
リ得
ルナリ、而
シ
ハ莖捻轉、癒着
ヲ有
セズ、分泌組織
ヲ同ウ
スルヲ以
テ本例
ノ内容
ノ檢査所見
ヲ第
一、第
二簇
卜比
スル卜キ
ハ他種嚢
併、破壊
セシ場合
ノ變化
ハ自
ラ明ナリ、先ヅ融點
ハ脂肪以外
ノ夾雜物
ノ多
クシテ爲
ニ含有
スル脂肪
ノ溶融
ハ認メ
ニ至
ル、次
ニ顯著ナ
ルハ沃度數
ハ殆
ド同價
アル
ニ酸數
ノ甚
シク高キ
コ卜ナ
リ、帥
チ遊離脂酸
ノ増加
ハ飽和脂肪酸
ノ
ノ増加
ニヨリテ來
リシナリ、尚
ホ鹸化數及ビ「ヱーテ
ル」數
ハ異常
ニ高ク
シラ中性脂肪
ハ第
一簇
ノ倍量以上
ヲ含
ム。
ハ融點、遊離脂肪酸
ハ殆ド里
ナ
ルモ著
明ナ
ルハ油酸等不飽和脂肪酸
ノ約半量ナ
ルコ卜ナリ、未
グ斯
ル者
モ見ズ、
齋藤-卵巣皮様嚢腫病理知見補遺
八一四
29
不飽和脂肪酸
ノ過少
ニシテ酸數
ノIV卜同價ナ
ル
ハVIIガ尚
ホ
一層不飽和脂酸以外
ノ脂肪酸
ニ富
メルコ,ヲ物語
ルモノナ
リ
又注目
スベキ
ハ中性脂肪
ノ比較的減少
ニシテ第
一簇
卜略同ヅ。
斯
ク比較觀察
スルトキ
ハ吾人
ハ他種卵巣
嚢腫
ノ合併破壊ニ
ヨル特有點
卜シテ
一、脂肪以外
ノ物質
ノ激増、二、遊離脂
肪酸就
中飽和脂酸
ノ増量
、三、鹸化數從
ツテ中性脂肪
ハ甚
シキ増量
ヲ擧
ゲザ
ルべカラズ。
次
ニ脂肪球成立
ニ關
シテ
ハ内容中脂肪
ノ定量的檢査
ヨリ、
一、不飽和脂酸
ノ絶對的減少
卜、
二、中性脂肪ノ比較的減
少卜ハ
看過シ
得ザル
事
實ナ
リ
ト
ス。
四
、
脂
肪
球皮樣
嚢腫
ノ成
立
ニ就
テ
脂肪
球皮
様嚢
腫
ハ比
較
的
稀有
ナ
ル卵巣腫
瘍
ニシテ、
其
ノ脂肪
球形
成
ニ關
シテ
モ從
來種
々ナ
ル説
ノ唱
へラ
レ未
ダ歸
一ス
ルニ至
ラズ、予
ノ文獻
上蒐
メ得
タ
ル二十
數
例
ニ就
キ
テ今
注目
ス
ベキ點
ヲ抜
萃
セ
バ次
ノ如
シ。
一、
Rokitansky，1833.莖
捻轉
ヲ起
シ周
圍器臓
卜癒
着
ス、内
容
ハ豌
豆大
ノ脂肪
球
多數、
尚
ホ七十
二個
ノ胡桃
大
ノ
モノア
リテ褐色
毛髪
ヲ内
ニ有
ス、脂
肪
ハ之
ニ求
心性
ニ集
ル。
二、
同
氏
1844.莖
捻
轉
アリラ嚢
腫
壁
ハ結締
織性索
條
ニヨリテ癒
着
ス。
三、Routh in London.脂
肪及
ビ「ヒ
ヨ
レステリ
ン」結
晶
ハ求
心性
ニ層
ヲナ
ス。
四、
Fenger in Chikago.
五
、
M
unde, 1877.軟
キ
榛
實
大
ノ黄
色
塊
ニ
シ
テ
各
個
ニ毛
髪
ヲ
有
ス。
六
、
Billroth, 1879.多
房
性
卵
巣
嚢
腫
ヲ
合
併
ス、
角
化
上
皮
ヨ
リ
ナ
ル
。
七
、
Neville, W
. C. and Kidd, 1880.三
歳
ノ
少
女
、
強
ク
癒
着
セ
リ
、
毛
髪
、
血
液
成
分
、
｢ヒ
ヨ
レ
ス
テ
リ
ン
｣結
晶
ヲ
有
ス
。
八
、
E. Frankel, 1884.多
房
性
嚢
腫
ヲ
合
併
シ
、
球
ハ角
化
上
皮
、
無
造
構
脂
肪
、
毛
髪
ヨ
リ
ナ
ル
硬
キ
脂
肪
球
ヲ
作
ル。
九
、
Hoffmann
(Strassmann
ノ
記
載
)
1o898.莖
捻
轉
、
鶏
卵
大
ノ
脂
肪
球
ト
少
量
ノ
内
容
液
ヲ
有
ス。
十
、
Gebhard, 1899,
二
例
、
多
房
性
嚢
腫
ヲ
合
併
ス
、
碗
豆
大
-
鳩
卵
大
-
鶏
卵
大
ニ
シ
テ
「ヒ
ヨ
レ
ス
テ
リ
ン」結
晶
ヲ中
心
核
ト
シ
齋藤-卵巣皮様嚢腫病理知見補遺
八
一五
30
無
造構
脂肪
ガ求
心性
ニ層
ヲナ
ス、内容
液
ア
リ。
十
一、Opitz, 1900.強
キ腸管
卜
ノ癒着
ア
リ、腸
管
ニ穿
孔
シ肛門
ヨリ脂肪
球
ヲ漏
ラ
セシ
ニヨリ診
定
セリ。
十
二、Askanazy, 1905.莖
捻轉
ア
リ、
球
ハ碗
豆
大
ニシテ脱落
表
皮細胞
ノ層
重
シ、
少量
ノ脂
肪
ア
リ、内
容液
體
ヲ有
ス。
十
三、Pfannenstiel-Kromor, 1908.三
例、凡
テ莖
捻轉
ア
リ、碗
豆
大-
櫻實
大
ノ球
ナ
リ、
個
々ノ記述
ナ
シ。
十
四、
Thorn.莖
捻
轉
ア
リ。
十
五、
Santi.米
粒
大
ノ
モノ多
數集
ル。
十
六、Bonney.四
千以
上
ノ碗
豆大
ノ
モノ
ヨリ成
ル、層
ヲナ
ス。
十
七、
Knauor, 1899
表皮細
胞
ノ層
ヲ成
ス。
十
八、
Latzko, 1910.
一部
癒着
ア
ルモ莖
捻
轉
ハ確
實
ニ存
セズ、内容
液
ナ
シ、碗
豆
大
-小胡
桃大
ナ
リ。
十
九、Ptonz, 1912．二囘
ノ莖
捻轉
アリ、
櫻實
大。
二十
、J. W
. Mc Means, 1914.莖
捻轉
卜強
キ癒
着
ア
リ、
通
常
ノ皮
様嚢
腫
ニ比
シテ毛髪
ノ過
少、
大
ナ
ル脂
肪
滴
、多
數
ノ
脱落
細胞
及
ビ炎
症
性細
胞
ノ發
現
ヲ擧
ゲ
タ
リ。
二十
一、
Schroder, 1919.二年前
ニ捻轉
症状
アリ
テ強
キ癒
着
アリ、
又假
性「ムチ
ン」性嚢
腫
ヲ合併
ス。
以
上
ノ如
ク
二十
四例
ヲ蒐
メ得
タ
リ。
而
シテ
一八
三三
年
Rokitansky
ノ最
初
ノ報告
以來
本腫
瘍
脂
肪
球形成
ニ就
キテ
ハ實
ニ區
別
タ
ル議
論
ノ存
スル所
ナ
リ、
先
ッ
Rokitansky
ハ莖
捻
轉
ニヨリ癒
着
ヲ起
シ、
共
ノ滲
出液
ニヨリテ從
家
ノ内容
ハ乳
劑
トナ
ル、之
ニ腫瘍
保持
者
ノ體
動
ニ
ヨリテ7乳
劑
モ動
揺
シ、之
ニ毛髪
ガ核心
卜ナ
リテ球形
成
ヲ營
ム
モノナ
リ卜、
Knauer
ハ球
ハ脱落
角
化上
皮
塊
ニシテ脂
肪
ハ
之
ガ接合
質
タ
ル
モノナ
リ
ト
セリ。
又
Thorn
ハ分
泌組織
ノ方面
ヨリ腫
瘍内
汗
腺
ノ分
泌
過
多
ニヨル
モノナ
リ
卜
ス、Gohhard
ハ「ヒ
ヨレステ
リ
ン」結晶
ガ球形成
ノ核
心
タ
ル
モノ
ニシテ其
ヲ成立
ニ就
イ
テ
ハ内
容
ノ變
化
ニ重
キ
ヲ置
ケリ、而
シテ内
容
ハ
一種
ノ牛
酪
生成
ヲ起
シ、
體動
ハ之
ヲ補助
ス
ル
モノナ
リ
卜
セリ、且
内容
液
ハ通常
ノ卵
巣嚢
腫
ノ破壞
ニヨリラ當該嚢
腫
内容
齋藤-卵巣皮様嚢腫病理知見補遺
八
一六
31
ノ混
入
セ
シモノナ
リ
ト
ス、更
ニ
Olshansen
ハ莖
捻轉
ヲ重
大視
シ、捻
轉
ニヨリテ嚢
腫内
ニ漿
液性
滲出液
及
ビ血液
浸
入
ヲ起
シ内容
ハ分
離
ス
ル
ニ至
ルモ
Rokitansky
ノ如
ク捻轉
時
ノ廻轉
運動
ニヨル
モノト
ハ考
へ難
シトセ
リ、
サ
レド氏
ハ後
ニ微細
ナ
ル乳
劑
トナ
リシ者
ガ體
動
ニヨリテ相
集
リテ球
ヲ爲
シ、
而
モ球
ハ同
時
ニ存
ス
ル内容
液
ニヨリテ相
互
ニ接
着
ス
ル
コト
ヲ妨
ゲ
ラ
ル
、モノナ
リト、
更
ニ氏
ハ脂
肪
ノ易
ク凝
固
ス
ル
コトガ必要
ニテ通常
ノ皮様
嚢
腫内容
ハ體
温
ニテ半
流動
ナ
ル
ニ脂
肪球
ハ明
ニ體
温
ニテ球状
ヲ保
テリ
ト、
然
ル
ニ
Latzko
ハ氏
ノ例
ニテ
ハ全
ク捻轉
セズ又内容
液
ヲ有
セザ
ルヲ以
テ
Rokitansky,
Olshansen
ノ如
ク液
體
中
ニテ脂肪
塊
ハ動搖
シ、
摩
滅
シテ平
滑球状
ヲ呈
ス
ル
モノ
ト
ハ考
へ得
ザ
ル所
ニシテ寧
ロ内
容
ノ物理
的化
學的
機轉
ニヨリ
テ
流動
性内容
ハ直接
固形
球状
トナ
ル
ベキ
モノ
ナリ
トセ
リ。
斯
ク
ノ如
ク
シテ遂
ニ
Friedlander
ハ其
ノ
成
因
ヲ
二ト
シ脂
肪
球以
外
内容
液
體
ヲ有
スルモノ
ハ
Rokitansky, Olshansen
ノ如
ク説明
ス
ベキ
モ、
液體
ナ
ク又癒
着ナ
キ
モ
ノ
ニアリ
テ
ハ皮様嚢
腫
内容
ヲナ
ス脂肪
ノ融
點
高
キ
ニヨル
モノ
ニシテ之
レ脱落
表皮細
胞
混入
ノ多
キ
ニヨル、斯
ル際
ノ球
形
成
ハ其
ノ原發
部
位
ハ嚢
腫壁
ノ性
状
ニヨ
ルモノナ
リトナ
へ云
フ
ニ至
レリ。
他
方
球
形成
ノ眞
因
ヲ内容
ノ化
學的
研究
乃
至實驗
的方
面
ヨリ證
明
セント
ス
ルモノア
リ、Kobert
ハ
Sg
walbe指導
ノ下
ニ
内
容
ヲ檢
シ二八一
三
〇度
ノ溶融
點
ヲ有
シ、「バ
ル
ミチ
ン」酸及
ビ「シテア
リ
ン」酸
「ヱステ
ル」ヲ主
ト
シ、
之
ニ
「ヒ
ヨ
レステ
リ
ン」
及
ビ少
量
ノ蛋
白
質
ヲ有
スト
セリ、
更
ニ
Schwalbe
ハ球
形成
ヲ脱落
細胞
ト脂
肪
ト
ノ親密
ナ
ル器械
的接
合
ニヨル
モノ
ナ
リ
ト
シ、之
ヲ證明
ス
ル爲
ニ通
常
ノ皮様嚢
腫
内容
ニ粉砕
乾燥
セ
ル「バ
ン」ヲ混
ジ
テ
一丸
ト
シ孵
卵器
中
ニ収
メ數
日後
ニ檢
セ
シ
ニ完
全
ニ球
形
ハ保
タ
レ、
只
少量
ノ脂
肪
ノミ液
状
ヲ呈
セシト、
次
デ
Dietrich
ハ其
ノ門下
ト共
ニ系
統的
ニ精
査
シ、
先
ヅ
Dietrich
ハ種
々ノ試
藥
ヲ以
テ顯微
鏡下
ニ檢
シテ脂
肪酸
ハ
一部
ハ亞爾
加
里又
ハ石鹸
ト
シテ存
シ、
一部
ハ細
胞成
分
ト
シテ存
スルヲ見
タリ、
尚
ホ内
容中
ニ
ハ甚
ダ複
雑
ナ
ル化學
的機
轉
ノ行
ハレシ
コト
ノ豫
想
ヲ得
タ
リ、
依
リテ其
ノ分
析
ヲ
Beckstrom
ニ囑
シ内
容中
「ヱー
テ
ル」可
溶性分
三
分
二、
不溶成
分三
分
一ニシテ脂
肪
ハ融
點
三十
七度
、完
全
ニ溶融
スル
ニハ四十
八度
上
昇
セシ
ム
ルヲ要
シ、
多
量
ノ「ヒ
ヨレステ
リ
ンし及
ビ有機
燐結
合體
ヲ有
セリ、且
鹸化
スル際
ハ低級
脂肪
酸
及
ビ不飽和
脂酸
ヲ
主
ト
シテ行
ハレ、
不溶
性
分
ト
シテ
ハ少量
ノ蛋
白質以
外
ニ多量
ノ「バル
ミシ
ン｣酸
及
ビ「シテ
ア
リ
ン｣酸
ノ「カ
ルシウ
ム」鹽
即
齋藤-卵集皮様嚢腫病理知見補遺
八
一七
32
チ石灰
石鹸
卜少量
ノ脂
肪
酸
ノ「ア
ン
モン
」鹽
ヲ有
ス
ル
コト
ヲ證
セリ。
次デ
Plenz
ハ
Dietrich
指
導
ノ下
ニ實驗
的
ニ脂肪
球
形成
ヲ企
テ、「ラ
ノリ
ン」、
豚脂
又
ハ通常
ノ皮
様嚢
腫内容
ニ脱落
表皮
細胞
ニ模
シテ細
粉
セ
ル鋸
屑
ヲ混
シ、之
ニ生理
的食
鹽
水
又
ハ血
清
ヲ混
ジ
テ「コ
ルべ
ン」ニ入
レ體
温
ニ保
チ、體
動
ニ做
ッ
テ振蘯
セ
ルモ
一個
ノ球
ヲ
モ作
ラズ
シテ脂
肪類
ハ最
後
迄
表
面
ニ厚
キ層
ヲ作
レ
リ、
依
リ
テ更
ニ「ラ
ノリ
ン」、脉
脂及
ビ石灰
石鹸
ヲ等
量
ニ容
レ、
或
ハ鋸
屑
ヲ混
ジ
又
ハ全
ク混
入
セズ
シテ
同
様
ニ處置
セ
ル
ニ少時
ノ後
人
工的
ニ脂肪
球
ヲ作
リ得
タリ、故
ニ球形成
ハ細
胞成
分
ニ非
ズ
シテ石灰
石鹸
ガ
一定
ノ要
約
ヲナ
ス
モノ
ニシテ、
球成
立
ノ第
一要約
ハ實
ニ内
容
ノ性状
ニア
リ卜觀
破
セリ、斯
ク
テ氏
ハ脂
肪球
皮様嚢
腫
形成
ニ三要件
ヲ必
須
ノ
モ
ノ
卜
セ
リ
。
一、
漿液
ノ皮
樣嚢
腫
内
ニ浸
入
ス
ルヲ必
要
卜
シ、之
ハ或
ハ莖
捻
轉
ニヨリ、或
ハ卵
巣嚢
腫
ノ破壞
ニヨル
コト
ア
ル
ベシ。
二、
脂肪
ノ
一部
ハ鹸
化
セラ
レザ
ルべカ
ラ
ズ。
三
、液
體
中
ニ浮
遊
ス
ル脂
肪
ニ器
械
的刺戟
(動
搖
)ノ及
ビ
テ球
形成
ヲ營
ム。
斯
ク
DDietrich, Beckrtrom, Plenz
ニヨリテ從
來
甲論
乙駁
セシ興味
ア
ル本
問
題
モ甚
ダ進
捗
セシナ
リ。
飜
ツ
テ予
ノ蒐集
セ
シ二十
四
例
ニ予
ノ
一例
ヲ加
へ、其
中記載
ノ明
ナラザ
ル
Routh
, Penger, Munde, Santi，Bom
ey, Knauer
ノ例
ヲ除
ク十
九
例
ニ於
テ
、
1.
莖捻轉
ヲ起
セシモノ
十
二例
2.
卵巣嚢腫
ヲ合併
セシモノ
六
例
3.
捻轉
ノ有無
不明ナ
ルモ癒看ヲ起
セシモノ
二
例
4.
癒着
ア
ルモ捻轉ナ
キモノ
一
例
(莖捻轉
ニ条
ヌル
ニ嚢腫合併
ヲ以テ
セシ予
ノ例
ハ二重計算
セリ
Schroderノ例亦然
リ)。
即
チ脂肪球皮様嚢腫
ハ莖捻轉ヲ件
フ場合最
モ多ク、他種卵巣嚢腫
ノ合併、破壞
セシ場合之
ニ次グ、癒着
セルモ莖捻轉
ノ有無不明ナ
ルコ卜
ハ屡
々廣
ク且張キ卵巣腫瘍癒着
ノ場合
ニ吾人
ノ遭遇
スル所
ニシテ多
ク
ハ莖捻轉
ノ結果來
ルモ
ノナル
齋藤-卵巣皮樣嚢腫病理知見補遺
八一八
33
モ又
Latzko
ノ例
ノ如
キ
アリ、
斯
ク觀
來
ルトキ
ハ莖
捻轉
ヲ以
テ原因
乃
至誘
因
ノ主要
ナ
ル
モノト認
メ得
ル
モ從來
ノ如
ク全
然是
ノ
ミヲ以
テ説
明
シ得
ザ
ル
ハ明ナ
リ、
然
レ共
未
ダ遊
離
セル單純
皮樣嚢
腫
ニ見
ズ、
必ズ内容
ニ影響
ヲ及
ボ
ス
ベキ莖
捻轉
或
ハ癒
着
ニョル滲出液
又
ハ他種
嚢腫
ノ混
入
ヲ證
シ得
ル所
ナ
リ、而
シテ單
純ナ
ル遊
離性
皮樣嚢
腫
、莖
捻轉、癒
着
ヲ起
セ
ル
モノ及
ビ他種
嚢腫
破壌
ニョル内
容中
ノ脂肪
ノ變
化
ニ就
イテ調査
セ
シ予
ハ脂
肪
球皮樣嚢
腫内容
中
ノ脂
肪
ガ絶對
的不
飽和
脂
肪
酸
減
少
ト、
比較
的中
性脂
肪減
少
ノ事實
ヲ證
シ以
テ通
常
ノ皮様嚢
腫
、莖
捻轉
及
ビ癒
着、
他球嚢
腫
ノ破壞
セ
ル場合
ト
ノ差
違
ノ存
ス
ル所
ヲ明
ニセ
リ、今
Plenzノ實
驗
ト予
ノ成
績
トヲ比較
考察
ス
ルトキ
ハ全
ク方
面
ヲ異
ニセ
ル研
究
ヨリ
シテ偶然
一
致
セ
ル到達點
ニ至
レ
ルナ
リ、Beckstrom
ハ内
容
ノ「ヱー
テ
ル」不溶成分
中
ニ「バル
ミチ
ン」酸
及
ビ「シテ
アリ
ン」酸「カ
ル
シウ
ム」
ノ多
量
ニ存
ス
ル
コト
ヲ證
セリ、之
レ予
ノ「エー
テ
ル」可
溶
性脂
肪
ヲ以
テノ檢査成
績
ニョ
レバ中
性脂
肪
ノ鹸
化
作用
ニョ
リテ脂
肪酸
ト「グリ
セ
リ
ン」ニ分解
シ、其
ノ脂
肪酸
ノ「カ
ルシウ
ム」ト結合
シテ「ヱ-
テ
ル」不溶
性
ノ石灰
石鹸
ヲ形
成
セ
シ
モ
ノ
ニ外
ナ
ラ
ズ、從
ッテ
「ヱー
テ
ル」可溶
性中
性脂
肪
ハ斯
ル鹸
化
作用
ニ使用
セラ
ル
、爲
ニ莖
捻轉
又
ハ他
種嚢
腫
ノ自解
ニョリ
増加
ス
ベカ
リ
シ、
又
ハ
一時
増加
セ
シ中性
脂
肪
ノ比較
的
減少
ヲ來
セシナ
リ、
又不
飽和脂
酸
ノ絶對
的減量
モ已
ニ内
容
中
ニ存
セ
シ不
飽和
脂酸
ノ「カ
ル
シウ
ム」ト
ノ直接
鹸
化作用
ニ使用
セラ
レテ減
少
セ
シ
モノナ
リ、
從
ツテ減
少
セ
シ中
性
脂肪
及
ビ不飽
和
脂
酸
ハ凡
テ之
レ石灰
石鹸
ト化
シ、以
テ脂
肪球
形成
ノ必
須要約
ヲ作
リ
シ
モノナ
ルベシ。
元來「カ
ル
シウ
ム」ハ全身
至
ル所
ニ存
ス、
莖
捻
轉、癒
着
ニヨ
ル滲
出液
及
ビ他
種嚢
腫内
容
ノ混
入
ニ際
シ殊
ニ「カ
ルシゥ
ム」ノ多量
ニ固
有皮様
嚢
腫内
ニ侵
入
ス
ル
モノナ
リャ否
ヤ
ニ就
イ
テ
ハ直接
證明
ス
ベキ事
實ナ
シ、然
レ共
一方斯
ル石灰
石鹸
ノ多量
ト、
他方
中性
脂肪
及
ビ不
飽和
脂
肪酸
ノ減
少
ヲ證
明
セル上
ハ斯
ル鹸
化作
用
ハ固
有皮様
嚢
腫腔
ニテ行
ハレシ
モノナ
ル
コト
ハ否
定
スベカ
ラズ。
石灰
石
鹸
ノ増
加
ガ如
何
ニシテ球
形成
ヲ營
ムヤ
ニ就
イ
テ
ハ臆
測
ニ止
ル、
Plenz
ハ石灰
石鹸
ハ
一ッノ接合
劑
タ
ル
モノ
ニシ
テ體
温
ニテ流
動
性
ナ
リ
シ内容
脂
肪
ヲ移動
セ
シメ
ザ
ル樣
接合
スル
モノナ
リト云
フ、從
來
球形成
ニ對
シ或
ハ毛
髪
或
ハ
「ヒ
ョ
レステ
リ
ン」
結
晶或
ハ股落
上皮
ノ中
心核
ト
シテ構
成
セラ
ル
、モノナ
リト云
ヒシ
モ、是
等
ハ原
因
的關係
ヲ有
ス
ルモ
ノ
ニア
ラズ
シテ只球
形成
ノ補
助
的
作用
ヲ營
ム
ニ止
ル
コト
ハ充分
了解
シ得
ル處ナ
リ。
齋藤-卵巣皮様嚢腫病理知見補遺
八一九
34
脂肪球ガ脱落上皮、毛髪及ビ石灰石鹸
ヨリナ
ル塊
ニシテ脂肪
ハ只此間
ニ介在
スルノミナ
ルヲ以テ内容
ヲ
一〇〇度
ニ熱
スルモ溶融
ヲ認メ難
キナ
ルベシ。
上記ノ如ク
シテ脂肪球成立
ニ關
スル
Plenzノ實驗
ハ予
ノ内容脂肪
ノ系統的研究
ニヨリテ其
ノ化學的根據
ヲ得
タリト云
フべク、又予
ノ檢査成績
ハ氏
ノ實驗
ニヨリテ脂肪球成立
ヲ事實
ニ證明
セシモノナリト謂
ッベシ。
斯
クテ脂肪球皮様嚢腫
ノ成立
ハ
Beckstrom
ノ「ヱーテ
ル」不溶性成分
ノ研究、Plenzノ實驗的研究及ビ予
ノ統計的觀察
竝
ニ「ヱーテル」可溶性脂肪
ノ定量的檢査
ヨリ、脂肪球
ハ皮様嚢腫ノ莖捻轉、他種嚢腫
ノ破壊又
ハ癒着
ニョリ腫瘍組織
ノ
分泌液以外
ノ異種液體
ノ混入
ニョリテ固有腔脂肪中、
不飽和脂肪酸
ノ絶對的減少、中性脂肪
ノ比較的減少
ヲ來
シ、之等
脂肪
及ビ脂肪酸
ハ「カ
ルシウ
ム」ト結合
シテ石灰石鹸
(Kalkseife)ヲ作
リ、以
テ球形成
ノ根元
ヲナ
スモノナ
ルベシ。
結
論
一、通常卵集皮様嚢腫内容
ハ旺盛
ナ
ル皮脂腺
ノ分泌瀦溜液ナリ、汗腺
モ屡
々存
スルモ内容
ニ影響
ヲ及ボス程有力ナ
ルモ
ノ
ニアラズ、肉眼的
ニハ美麗ナ
ル黄色「バター」状
ヲ呈
ス。
二、屡
々皮脂
腺
、
汗腺
以
外
ノ分
泌腺
ヲ有
ス、
サ
レド直接
固有
腔
ニ排
泄
セズ、時
ニ分
泌
ノ緊滿
ニョリ腺
壁組
織
ノ破壊
ニ依
リ混入
ス
ル
コトア
リ。
三、
内腔
ニ出
血
ヲ起
サザ
ル程度
ノ莖
捻轉
ニアリテ
モ、内
容
ニ變
化
ヲ起
ス、黄
色
ヲ帯
ビ
ズ、白色
「ク
リー
ム」様
ニシテ、
脂
肪
ハ遊
離脂
肪
酸、
中
性脂
肪
ノ増量
ヲ來
ス。
四、合併
セシ他種卵集嚢腫
ノ破壊
セシトキ
ハ兩嚢腫内容
ハ全
ク融和
セズ、混色
ヲ呈
ス、脂肪
ハ遊離脂肪酸及ビ中性
脂肪
激
増
ス。
五、脂肪球皮様嚢腫
ハ皮様嚢腫
ノ莖捻轉、他種嚢腫
ノ破壊
又
ハ周圍臟器
トノ癒着
ニョリ異種液體
ノ混入
シ、不飽和脂肪
酸
ノ絶對的減少ト、中性脂肪ノ比較的減少
ヲ來
ス、恐
ラク之等中性脂肪及ビ脂肪酸
ハ「カ
ルシウ
ム」トノ鹸化
ニ使
用
齋藤-卵巣皮様嚢腫病理知見補遺
八二〇
35
セラ
レ、石灰石鹸
ノ増量
トナ
リ、此
ノ石灰石鹸
ガ小團塊ヲナ
シテ所謂脂肪球ヲ形成
スル
ニ至
ルモノナ
ルベシ。
六、稀
ニ分泌組織
ハ乳腺實質
ヨリナ
リ、内容
ノ乳汁
ヨリナ
ルモノアリ。
稿
ヲ脱
スルニ當
リ終始御懇篤ナ
ル御指導
ト、校閲
ノ煩
ヲ辱ウ
シタ
ル恩師安藤博士
ニ滿腔
ノ謝意
ヲ表
シ、且殆
ド各
標本
ニ就
キ點檢、指導
ヲ賜
リシ解剖學教室上坂博士
ニ衷心ノ謝意
ヲ表
ス。
Literatur.
1) Askanazy; Die Dermoidcyste der Eierstockem, ihregeschichte, ihre Bau und ihre Entstehmig. Vert'sches Handbuch d. Gyn. Bd. 4, H. I, 1908.
2) Black, W. G. Dermoidcyste of ovary in a child aged 71/2 years. Ref. Die Dermoide und Teratome des Eierstocks im Kinderalter. (Seyfarth.)
1916. 3) R. Benda; Beitrag zur Frage der Genese der intraligamentaren Fettinhltration bei Dermoidcyste des ovars. Zeitschr. f. Gyn, Bd. 85, S.
225, 1922. 4) Bohnund Appel; Tasohen buch d.mikroskopischen Technik. S. 147, 1919. 5) Engel; Handbuch d. Milchkunde. 1909.
6) H. Freundlich; zahne in Demoidcysten deS Orariums Mang. Diss. Berlin, 1920.
7) Friedlauder; Uber die geuese der Butterkugeln in
Dermoidcysten. Centr. f. Gyn. 44 Jahrg. S. 1195, 1920.
8)
G
ebhard
; Pathologische Anatomie der weiblichen sexualorgane. S. 369, 1899.
9)
H
op
pe-Seyle; H
andbuch d. Biochcaure. 1912.
10)
川
村
麟
也
;
人
體
及
動
物
體
内
ニ
於
ケ
ル脂
肪
類
ノ
鑑
別
ニ就
イ
テ
.
日本
病
理
學
會
雜
誌
,第
一
卷
.
11)
K
nauer; Ein Fall von Derm
oidcystedes Eierstocks. W
ien. Klin. W
och. 1896.
12) K
rom
er
; Veit'sches H
andbuch
d. Gyn. Bd. 4, H.1.
13)
隈
川
一
須
藤
;
醫
化
學
實
習
.
14)
K
rom
er; Uber die H
istogenese der Dem
oidcystome und Teratome des Eierstockes. Arch. f. Gyn. Bd. 78, S.
137, 1906.
15) L
atzko; Dermoidcyste m
it Fettkugeluihalt. Gyn. Rundschau. 4
Jahrg. S. 456, 1910.
16) W
. Lum
m
ert; Beitrage zur
kenngiss der tierischen Fett. Mang. Diss. 1898.
17) W. McMeans; Fatty comretions in ovariandermoids. The American Journal of obst. Vol.
70, 19I4.
18) Munde; Uber Dermoidcyste des Ovariums. Centr. f Gyn. S. 64, 1888.
19) Neville and Kidd; Dermoidcyste remored
from a little girl, age two years and eleven months. Ref. Die Dermoideund Teratome des Einerstocks im kindesgter (Seyfarth).
20) Opitz; De
monstration d. Kugeldermoid. Zeitschr. f. Geb. u. Gyn. Bd. 42, S. 188, 1900.
21)
Plenz
; zur Entstehung von Dermoidkuge
M
onatschr. f. Gyn.
Bd, 36, 1912
.
22) Strassm
ann
; Uber Embryoma orarii. A
rch, f. Gyn. S. 611, 1900.
23)
鈴
木
文
太
郎
;
人
體
系
統
解
剖
學
.
第
三
卷
,上
篇
.
24) L
. Szym
onow
icy
; Lehrbuch der H
istologie der M
ikroskopischen Anatomie. 1921, 4. Auflage.
25)
Schrolder; Gallenste in e
in
einen
Dermoid.
(zur Frage der K
ugelbildung in Dermoidgeschwulsten)
Centr. f. Gyn. 43. Jahrg. S. 190, 1919.
26)
Schm
orl; Pathologische histolo
gische Mikroskopische Technik. 1920.
27) Schottlaender; Beitrag zur Lehre von der Dermoidcysten des Eierstockes. Arch. f. Gyn. Bd. 78, S.
137, 1906.
齋藤-卵巣皮様嚢腫病理知見補遺
八二一
36
挿
圖
説
明
第
一圖
九個
ノ卵巣皮様
嚢腫内容
ヲ其
ノ儘
「スヒツツグヲ
ス」ニ容
レテ比較
ス
、
I II
III
(I)
ハ通常皮
様嚢
腫内容
、IV V
ハ莖捻
轉
テ起
セ
シモノ、
III
(2)
VI
ハ他
種嚢
腫
ノ合併
セシモノ、VII
ハ脂肪
球皮様嚢
腫、VIII
ハ乳
汁
ヨリ
ナ
ル内
容
。
第二圖 第三例(I) (2)
、
右
ハ銀
白
色
毛
髪
ヨリ成
リ、
I
ハ氣
管
ノ切
斷
面
、
II
ハ
小濾泡性嚢腫。
左
ハ漆黒色毛髪
ヲ有
スル左側卵巣皮様嚢腫
ニテ、I
ハ固有皮様嚢
腫腔、II
ハ他種嚢腫腔。
第三圖
第五例、
大
ナ
ル錐體表面
ニ二個
ノ小裂孔
アリ
(II)
錐體内小房ト交
通
ス、
中央
ハ切
開
創
ナ
リ。
第四圖
第
一例、旺盛
チ
ル皮脂腺
ノ發育及
ビ内腔
ニ分
泌
セル状
ヲ示
ス、
I
ハ皮脂腺體、II
ハ皮下脂肪組織、
III
ハ皮脂腺開
口部
ナリ。
第
五圖
第
一例皮脂腺
及ビ皮下脂肪組織
ノ第三「ズ
ダ
ン」染色
、
I
ハ皮脂腺
II
ハ皮
下脂肪組織。
第
六圖
第七例脂肪球皮様嚢腫、I
ハ固有皮
様嚢腫
、II
ハ他種卵巣嚢
腫、
III
ハ其
ノ中隔
、IIII
ハ脂
肪球
。
第
七圖
第
七例錐體
内小腸
ノ
一部。
第
八圖
第七
例錐體
内耳
下腺
ノ
一部。
第
九圖
第七例嚢腫壁
ニ孤立
セシ甲状腺
ノ
一部。
第
十圖
第
八例錐體
内乳腺實質
ノ
一部。
齋藤-卵巣皮様嚢腫病理知見補遺
八二二
I
II
1 III
2 III
IV
V
VI
VII
VIII
第二圖
第三
圖
第四圖
第五圖第八圖
第六圖
第七圖
第
九
圖
第
十
圖
![どヲうきびま通信網かゐでく利用タケヒタ 技術づょ …どヲうきびま通信網かゐでく利用タケヒタ 技術づょどむしぜ （WEB接続編[1]） －WEBtoFAX－](https://static.fdocument.pub/doc/165x107/5fcffb485c047c61c713880d/feccf-e-feccf.jpg)
