国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)における 医療機...

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厚生労働科学研究費補助金 地球規模保健課題推進研究事業 国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)における 医療機器の各種国際規格の策定に関する研究 平成 24 年度 総括・分担研究報告書 研究代表者 蓜島由二 平成 25(2013)年 4 月

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厚生労働科学研究費補助金

地球規模保健課題推進研究事業

国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)における

医療機器の各種国際規格の策定に関する研究

平成 24 年度 総括・分担研究報告書

研究代表者 蓜島由二

平成 25(2013)年 4 月

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平成 24 年度 厚生労働科学研究費補助金

地球規模保健課題推進研究事業

国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)における

医療機器の各種国際規格の策定に関する研究

目 次 Ⅰ.総括研究報告書

国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)における医療機器

の各種国際規格の策定に関する研究(蓜島由二) 1

Ⅱ.分担研究報告書

(1)医療機器に係る工学的見地からの具体的事例に関する研究(小野哲章) ##

(2)ISO/TC194/WG9 ラウンドロビンテスト支援研究(松岡厚子) ##

(3)医療波形情報の ISO 化活動に関する支援(横井英人) ##

Ⅲ.政策的提言及び関連資料

(1)政策的提言(ISO/IEC 医療機器規格策定戦略研究班) ##

(2)関連資料

・資料 1:国際標準化に係る基本戦略 –国際標準化に係る経済産業省の取組- ##

・資料 2:経済産業省における国際標準化への取組について ##

・資料 3:医療機器分野における国際標準化に必要な諸因子 ##

・資料 4:医療機器に関連する医療情報規格への取り組み ##

・資料 5:歯科用 CAD/CAM マシンで作製する修復物の精度に関する新しい

評価方法の策定に関する国際標準化活動 ##

・資料 6:諸外国における標準化政策について ##

・資料 7:予算申請手続様式事例(経済産業省書式) ##

Ⅳ.資料編

(1)第一回会議議事録 ##

(2)第二回会議議事録 ##

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研究協力者一覧

池野谷崇臣 日本医療機器学会 犬飼香織 テルモ株式会社 岩崎清隆 早稲田大学先端生命医科学センター 岩橋四郎 日本光学工業協会 浦富恵輔 日本医療器材工業会 大熊一夫 日本歯科大学新潟生命歯学部歯科理工学講座 小倉英夫 日本歯科大学新潟生命歯学部歯科理工学講座 加藤英夫 日本臨床検査標準協議会 香取輝美 財団法人 食品薬品安全センター秦野研究所 鹿糠実香 テルモ株式会社 神谷正己 日本画像医療システム工業会 合田忠弘 九州大学大学院総合理工学研究院融合創造理工学部門 電気理工学講座 駒木秀明 日本ファインセラミックス協会 斎藤健一 日本ゴム工業会コンドーム協議会 坂口圭介 テルモ株式会社 新藤智子 財団法人 食品薬品安全センター秦野研究所 鈴木数広 日本医療器材工業会 曽根原誠 電子情報技術産業協会 竹下道孝 日本ゴム工業会 竹ノ内美香 テルモ株式 竹花一哉 関西医科大学内科学第二講座 内藤正章 日本光電工業株式会社 内藤正義 日本医療機器産業連合会 中山雅晴 東北大学病院 循環器内科 野田 穆 日本歯科商工協会

野間貴久 香川大学医学部循環器・腎臓・脳卒中内科

橋本 隆 日本歯科材料器械研究協議会

平井正明 MFER委員会/日本光電工業株式会社

廣瀬志弘 独立行政法人 産業技術総合研究所 ヒューマンライフテクノロジー研究部門

福井千恵 国立医薬品食品衛生研究所 三村智憲 株式会社日立ハイテクノロジース 宮田文隆 日本歯科器械工業協同組合 村松寛昭 日本歯科材料工業協同組合 室田知美 テルモ株式会社 山影康次 財団法人 食品薬品安全センター秦野研究所 山口典久 株式会社ニデック 山下克巳 日本医療機器工業会 山本佳子 日本歯科材料器械研究協議会

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Ⅰ.総括研究報告書

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総括研究報告書

平成24年度厚生科学研究費補助金(地球規模保健課題推進)研究事業

国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)における医療機器の各種国際規格の

策定に関する研究(H23-地球規模-指定-003)

研究代表者 蓜島 由二 国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部

研究分担者 小野 哲章 滋慶医療科学大学院大学医療管理学研究科

医療安全管理専攻

松岡 厚子 国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部

横井 英人 香川大学医学部附属病院 医療情報部

研究要旨

A.研究目的

近年、国際市場の拡大に伴い、医療機

器に関する各国の法規制を整合化する動

きが活発化している。GHTFではグローバ

ルな整合作業が進められており、その他、

ISOやIECでは医療機器の性能や試験法等、

有効性と安全性に関する各種規格・基準

の国際整合化が行われている。医療機器

については、品質維持の観点から国内法

規への適合が求められると共に、主に通

商上の観点から国際規格への適合も要求

される。すなわち、我が国の優れた製品

を世界的に流通させるためには、日本の

国内法規における要求事項を反映した国

際規格を作成し、運用することが最適と

言える。また、日本は医療機器開発にお

いて先進的な技術力を持つことから、国

際的な優位性を確立することが可能な状

況にある。例えば、製品や材料の性能評

価等に関する技術については、差別化に

国際基準である ISO/IEC基準に原案を提案するには、いくつかの道があるが、平成

24年度は昨年度に引き続き、(1)発信すべき医療機器・技術・手法の新規提案、(2)現

行のISO/IEC規格改良のためのデータ収集と次期改正への提案について検討した。

(1)については、昨年度に提案した「歯科用CAD/CAMマシンで作製する修復物の精度

に関する新しい評価方法」に次ぐ新たな規格「Accuracy of machined indirect

restorations – Test methods and marking」を国際標準化するケーススタディのほか、

「医療波形情報のISO化活動に関する支援」としてMFERを用いて再構築した18誘導

心電図を用いた後壁梗塞の診断能及び「溶血性試験用陽性対照材料の開発と性能評価」

に関するケーススタディを実施した。(2)については、ISO/TC194/WG9が担当する医用

材料の血液適合性評価のための試験法である ISO 10993-4の改訂作業に伴う溶血性試

験/ラウンドロビンテストの支援を行った。

また、医療機器関係業界との連携のもと、2年間に渡って収集した知見に基づき、国

際的に提案できる基準の選別や原案策定過程への提案を含めて、国家的にサポートす

る体制の構築、国際標準化に関する戦略的な考え方や提案可能な具体的な基準等につ

いて取りまとめた「医療機器規格・基準の国際標準化戦略に係る政策的提言」を作成

した。

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よる高付加価値化を狙い、新たな市場を

開拓していくことが重要である。このた

め、研究開発段階から標準化を視野に入

れたプロジェクトを推進すると共に、国

際標準策定に必要なデータ取得、ラウン

ドロビンテスト等を産業界と一体となり

推進することが必要である。

このような背景の中、現在までに国内

の医療機器の評価手法、必要な基準の策

定、国際的な整合等に関する研究や活動

は行われて来ているが、日本発の良質な

医療機器を障壁なく国際的に進出させる

環境を整備する戦略的な研究は実施され

ていない。そこで本研究では、医療機器

関係業界と連携を図りつつ、国際的に提

案できる基準の選別や原案策定過程への

提案を含めて、国家的にサポートする体

制の構築について検討し、国際標準化に

関する戦略的な考え方や提案可能な具体

的な基準等について取りまとめ、政策的

な提言を行うことを目指して、関連する

調査・研究を実施した(図1)。

図1.本研究の概要

平成24年度の本研究では、昨年度に引

き続き、医療情報分野、試験法分野及び

歯科分野に関する 3つのケーススタディ

を実施したと共に、ISO/TC194における将

来の標準化を視野に入れて新たなケース

スタディを立ち上げ、溶血性試験用陽性

対照材料の開発に向けて基礎データを収

集した。

また、これらのケーススタディを通し

て得られた知見のほか、昨年度に実施し

た国際的に提案できる JIS及びその他の

基準等のヒヤリング調査、並びにISO/IEC

国内審議団体の活動状況、成果及び国際

整合を行う上で重要となる事項・要望等

をアンケート形式により調査した結果を

踏まえ、医療機器関係業界との連携のも

と、国際標準化活動を国家的にサポート

する体制の構築、国際標準化に関する戦

略的な考え方や提案可能な具体的な基準

等について取りまとめた「医療機器規

格・基準の国際標準化戦略に係る政策的

提言」を作成した。

B.研究方法

(1)ケーススタディ

発信すべき医療機器・技術・手法の新

規提案及び現行の ISO/IEC規格改良のた

めのデータ収集と次期改正への提案を行

うため、平成24年度に実施した以下のケ

ーススタディの研究方法については該当

する分担研究報告書を参照して頂きたい。

1-1.小野・蓜島班

・歯科用CAD/CAMマシンで作製する修復

物の精度に関する新しい評価方法」及

び本規格に次ぐ新たな規格「Accuracy

of machined indirect restorations – Test methods and marking」の提案

・溶血性試験用陽性対照材料の開発と性

能評価

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1-2:松岡班

・ISO/TC194/WG9ラウンドロビンテスト

支援研究

1-3:横井班

・医療波形情報のISO化活動に関する支

(2)政策的提言の作成

ISO/IEC国内審議団体の代表者(6団

体:総計 5名)のほか、電気通信分野の

国際標準化に精通した専門家 1名を研究

協力者として招聘し、研究分担者、厚生

労働省医薬食品局審査管理課医療機器審

査管理室及び医薬品医療機器総合機構

(PMDA)の担当官を交えて政策的提言の

内容構成等について討議した。

C.研究結果

(1)ケーススタディ

本研究の目標の 1つは、我が国の新技

術及び新機器に関する規格を世界へ発信

することにある。新技術・新機器の種類

と国際的な規格化に至る過程は多種多様

であることから、その発信方法の検討に

は、幾つかの事例を実際に提示すること

が有益である。そこで本研究では、以下

に示したケーススタディを実施した。

1-1.小野・蓜島班(歯科分野・試験法分

野)

平成23度から実施している歯科用CAD/

CAMマシンで作製する修復物の精度に関

する新しい評価方法の提案に関するケー

ススタディでは、ISO/TC106/SC9/WG1への

提案規格である「ISO/FDIS 12836:

Dentistry ̶ Digitizing devices for CAD/

CAM systems for indirect dental resto-

rations ̶ Test methods to assess the

accuracy」が平成24年8月に実施された

投票において承認され、本年10月1日に

ISO規格として発行された。平成 24年度

は、本規格に次ぐ新たな規格として、

「Accuracy of machined indirect resto-

rations – Test methods and marking」

に関する検証データを収集し、本年10月

に開催された ISO/TC106/SC9総会におい

て新規提案に向けた概要説明を行い、平

成 25年 1月に本新規規格に関する WDを

ISO事務局に提出した。

また、今年度は将来の標準化を視野に

入れて新たなケーススタディを立ち上げ、

溶血性試験用陽性対照材料の開発に向け

て基礎データを収集した結果、Genapol

X-080含有ヒートプレスPVCシートが良好

な陽性対照材料として利用できることを

見出した。また、本事業において別グル

ープ(松岡班)が実施しているケースス

タディである「ISO/ TC194/WG9溶血性試

験ラウンドロビンテスト支援研究」に寄

与するため、本研究において開発した陽

性対照材料を試料として提供し、その性

能を詳細に確認した。

歯科分野の新規提案規格及び新たに立

ち上げた溶血性試験用陽性対照材料の開

発に関する検証試験結果の詳細は本報告

書に添付した小野・蓜島班の分担研究報

告書を参照して頂きたい。

1-2.松岡班(試験法分野)

ISO/TC194/WG9(医療機器の生物学的評

価 - 血液適合性 WG)は、担当文書 ISO

10993-4:2002 及び Amd 1:2006の改正に

向け、溶血性試験に関する多施設国際共

同検証試験(ラウンドロビンテスト)の

実施を計画した。今年度、本研究班から

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参加の 2機関が、WG9 Convenor Dr.

Michael Wolfのとりまとめる溶血性試験

プロトコルの最終化作業に参画し、サン

プル選定と文書校正を完了させた(文書

発行2012年11月19日)。プロトコルは、

医療機器の溶血性試験で国際的に広く用

いられているASTM法、NIH法、MHLW法(薬

食機発0301第20号 1))の3法で構成され

ている。またラウンドロビンテストの実

施は、第一段階の Pilot Runと第二段階

のActualに分けて行うこととなった。上

記2機関により今年度末までにPilot Run

の第一回目の試験が実施される運びとな

っている。

また、本研究班で試験精度管理の目的で

開発中の陽性対照材料(Genapol X-080含

有 PVCシート)を、前述のラウンドロビ

ンテストのプロトコルにて性能評価を実

施し、ラウンドロビンテスト用サンプル

の1つとして提供することを目的として、

その基本性能を詳細に評価した。Genapol

X-080含有量依存的に溶血性が認められ、

精度管理目的の陽性対照材料の候補とし

て、その基本性能が確認された。

1-3.横井班(医療情報分野)

医療機器の標準規格の中で、特に医療

情報に関して日本から提案されているも

のは必ずしも多くない。医療波形に関す

る規格であるMFERは、2007年に発行され

た ISO規格(TS)で、日本から提案されて

規格化されたものであるが、ISとしての

審議に際して、その臨床的有用性につい

ての研究文献が少ないとの指摘を受けて

いる。これを受けて、本研究班では同規

格を用いた臨床研究を立案し、実施した。

症例数が十分でないなどで、有意な知見

とは言い切れないが、12誘導心電図から

本規格を通して波形処理し、導出した 18

誘導心電図が、後下壁の心筋虚血の診断

の一助になる可能性が示唆された。

(2)政策的提言及び関連資料の作成

昨年度実施したアンケート調査に御協

力頂いた ISO/IEC国内審議団体に本研究

班への参画を依頼した結果、日本歯科材

料器械研究協議会(橋本氏:同事務局)、

ISO/TC172/SC7(山口氏:同SC7分化委員

会会長/株式会社ニデック)、ISO/TC150/

SC7/WG3(廣瀬氏:同WG3主査/産業技術

総合研究所)、ISO/TC212/WG3(三村氏:

同 WG3主査/株式会社日立ハイテクノロ

ジーズ)、ISO/TC210及びISO/TC62(内藤

氏:両TC国内委員会副委員長/日本光電

工業株式会社)の賛同を得ることができ

た。また、電気通信分野の国際標準化に

精通した合田氏(九州大学大学院総合理

工学研究院融合創造理工学部門 電気理

工学講座 特任教授)の参画を得ることも

できた。

これらの研究協力者を交えて討議した

結果、本研究班の最終目標である「医療

機器規格・基準の国際標準化戦略に係る

政策的提言」は以下に示した構成とする

ことが決定された。

◎政策的提言項目

1.はじめに

2.国際標準化に係る基本的戦略

3.医療機器分野における国際標準化

に必要な諸因子

4.国際標準として提案した又は提案

可能な日本独自の規格等

5.各国政府の支援状況

6.日本政府が行うべき財政的支援と

その条件

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1項において、本提言は厚生労働省、国

立医薬品食品衛生研究所、PMDA、大学等

の研究者、学会及び産業界等、医療機器

開発に携わる全ての機関及び組織を対象

とすることを明記した。国際標準化につ

いては、経済産業省において様々な取組

が行われている。厚生労働省において医

療機器分野の国際標準化を推進するため

には、経済産業省との連携を更に強化す

ることが基本的戦略になると思われため、

2項では、経済産業省が実践している、1)

事業戦略と国際標準化、2)協調領域と協

争領域の線引き、3)国際標準提案制度の

在り方、4)人材育成・普及啓発に係る取

組、5)我が国における国際標準の基本戦

略について概説した。3項は、平成 23年

度に実施した ISO/IEC国内審議団体への

アンケート調査結果に基づき、国際標準

化を成功させるために必要な各種項目

(国に対する要望を含む)のほか、各項

目の現状と課題並びに対策・提言等の具

体例を取りまとめた。4項には、平成 23

年度に実施した関連団体へのヒヤリング

調査結果に基づき、国際標準として提案

した又は提案可能な日本独自の規格等を

記載した。また、本研究で実施したケー

ススタディを通して得られた知見も 4項

に取りまとめた。5項では、医療機器分野

の ISO/IEC活動に対する各国政府の支援

状況について記述した。また、スマート

グリッドや電気通信分野等、国家プロジ

ェクトとして活動する比較的大きなTCは

国からの直接的な援助を受けている事例

が多いため、米国、EU及び韓国における

国家的な支援体制の内容を紹介し、日本

に残された検討課題についても概説した。

6項は、5項とも関連する項目であり、医

療機器分野の国際標準化事業を日本政府

として財政的に支援する必要性のほか、

同支援を行うための条件等について取り

まとめた。

各項目の詳細は本報告書に添付した

「医療機器規格・基準の国際標準化戦略

に係る政策的提言」及びその関連資料(資

料1-7)を参照して頂きたい。

D.考 察

我が国の医療機器に関する基準として

は JISがあるが、我が国の医療機器行政

では許認可のための技術基準として JIS

が使われることが多く、他の分野以上に

同規格の重要性は高い。JIS原案は、最近

では医療機器業界が関連する ISO/IEC等

の国際規格を翻訳して作成する場合が多

い。一方、我が国の医療機器には品質や

性能等の優れた製品が多く存在するが、

これらの製品の規格を ISO/IEC等に積極

的に導入し、日本発の良質な医療機器(ソ

フトウエアを含む)を障壁なく国際的に

進出させる環境を整備することが、我が

国の患者の利益、医療機器産業振興及び

国家戦略として重要な課題となっている。

2年間に渡る調査・研究を通して、我が

国の医療機器・技術・手法(ソフトウエ

アも含む)に関する国際規格化の取り組

みは、先進各国と比較して立ち遅れてい

る状況であることが明らかとなった。こ

のような調査の重要性を認識すると同時

に、幾つかのケーススタディを実際に実

施し、クリアすべき問題点を個々に明ら

かにして行く努力が必要であることも見

出すことができ、本研究の重要性を再認

識した。

本研究の最終目標である「医療機器規

格・基準の国際標準化戦略に係る政策的

提言」を産官学連携のもとに事業期間内

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に作成することができたことは大きな成

果と言える。本提言は国のみではなく、

医療機器開発に携わる全ての機関・組

織・企業等に向けられたものであり、医

療機器分野の国際標準化活動の更なる推

進を目指し、今後、実施可能な項目から

順次実行して行くことが重要である。

E.結 論

国際標準化を成功させるための要因を

調査するため、4つのケーススタディを実

施した。また、医療機器関係業界との連

携のもと、2年間に渡って収集した知見に

基づき、国際的に提案できる基準の選別

や原案策定過程への提案を含めて、国家

的にサポートする体制の構築、国際標準

化に関する戦略的な考え方や提案可能な

具体的な基準等について取りまとめた

「医療機器規格・基準の国際標準化戦略に

係る政策的提言」を作成した。

F.健康危険情報

特になし。

G.研究発表

1)蓜島由二,福井千恵,柚場俊康,松岡

厚子.溶血性試験用陽性対照材料の開

発と性能評価.日本バイオマテリアル

学会シンポジウム2012(2012年11月,

仙台).

2) Kazama M, Ohkuma K, Ogura H. The new

method to fabricate ceramic crown

copings from full-sintered zirconia

using Nd-YVO4 nsec laser.日中歯科医

学会2012(2012年4月,成都).

3)風間未来,大熊一夫,小倉英夫.Nd-YVO4

レーザーを用いたジルコニアコーピン

グの新しい加工法 ―照射条件と加工

精度―.第60回日本歯科理工学会学術

講演会(2012年10月,福岡).

参考資料

特になし。

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Ⅱ.分担研究報告書

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分担研究報告書

平成 24 年度厚生科学研究費補助金(地球規模保健課題推進)研究事業

国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)における医療機器の各種国際規格の

策定に関する研究(H23-地球規模-指定-003)

分担研究課題名

医療機器に係る工学的見地からの具体的事例に関する研究

研究代表者 蓜島 由二 国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部

研究分担者 小野 哲章 滋慶医療科学大学院大学 医療管理学研究科

医療安全管理専攻

研究協力者 小倉 英夫 日本歯科大学新潟生命歯学部歯科理工学講座

大熊 一夫 日本歯科大学新潟生命歯学部歯科理工学講座

研究要旨

本研究では、国際標準化活動に対する国家的なサポート体制を構築し、標準化に関する戦

略的な考え方や提案可能な具体的な基準等について取りまとめ、政策的な提言を行うことを

目的としている。その一環として平成 24 年度は、発信すべき医療機器・技術・手法の新

規提案を行うため、2つのケーススタディを実施した。

昨年度から実施している歯科用CAD/CAMマシンで作製する修復物の精度に関する新し

い評価方法の提案に関するケーススタディでは、ISO/TC106/SC9/WG1 への提案規格であ

る「ISO/FDIS 12836:Dentistry — Digitizing devices for CAD/CAM systems for indirect

dental restorations — Test methods to assess the accuracy」が平成 24 年 8 月に

実施された投票において承認され、本年 10 月 1 日に ISO 規格として発行された。本年

度は、本規格に次ぐ新たな規格として、「Accuracy of machined indirect restorations

– Test methods and marking」に関する検証データを収集し、本年 10 月に開催された

ISO/TC106/SC9 総会において新規提案に向けた概要説明を行い、平成 25 年 1月に本新規

規格に関する WD を ISO 事務局に提出した。また、今年度は将来の標準化を視野に入れ

て新たなケーススタディを立ち上げ、溶血性試験用陽性対照材料の開発に向けて基礎デ

ータを収集した結果、Genapol X-080 含有ヒートプレス PVC シートが良好な陽性対照材

料として利用できることを見出した。また、本事業において別グループ(松岡班)が実

施しているケーススタディである「ISO/ TC194/WG9 溶血性試験ラウンドロビンテスト支

援研究」に寄与するため、本研究において開発した陽性対照材料を試料として提供し、

その性能を詳細に確認した。

A.研究目的

本研究では、医療機器関係業界と連携を

図りつつ、国際標準化に関する戦略的な考

え方や提案可能な具体的な基準等に関す

る知見を収集することを目的として、関連

する調査・研究を実施した。その一環とし

て、昨年度は発信すべき医療機器・技術・

手法の新規提案について検討するため、国

際標準化に関する実例として、「歯科用

CAD/CAM マシンで作製する修復物の精度に

関する新しい評価方法」に関する規格を国

際標準化するケーススタディを立ち上げ、

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規格のベースとなるデータを取得する検

証実験を行った。また、平成 23 年 9 月に

開催された ISO/TC106 総会(フェニックス

会議)において、歯科用 CAD/CAM システム

について討議する新 SC の設立を日本が提

案し、満場一致で承認された。同時に新

SC は Convener(日本歯科大/小倉英夫教

授)及び幹事国ともに日本が担当すること

に決定された。提案規格である「ISO/FDIS

12836:Dentistry — Digitizing devices

for CAD/CAM systems for indirect dental

restorations — Test methods to assess

the accuracy」は同 SC に設立された WG1

において協議され、平成 24 年 8 月に実施

された投票において、賛成 12 カ国、反対

2 カ国の結果をもって、本年 10 月 1 日に

ISO 規格として発行された。平成 24 年度

は、本規格に次ぐ新たな規格を作成するた

め、「Accuracy of machined indirect res-

torations – Test methods and marking」に関する検証データを取得したと共に、平

成24年 10月に開催されたISO/TC106総会

(パリ会議)において NWIP に向けた概要説

明を行った。

本ケーススタディのほか、平成 24 年度

は新たなケーススタディを立ち上げた。

厚生労働省医療機器審査管理室長通知/

平成 24 年 3 月 1 日付け薬食機発 0301 第

20 号「医療機器の製造販売承認申請等に

必要な生物学的安全性評価の基本的考え

方について」の別添において、細胞毒性

試験及び埋植試験については、試験精度

を確認するために対照材料を用いること

とされている。一方、溶血性試験につい

ては対照材料が指定されていない。そこ

で本研究では、ISO/TC194 における将来の

標準化を視野に入れ、基礎データを収集

するために溶血毒として知られている各

種化合物のサーベイ試験において選定さ

れた化学物質を含有するポリ塩化ビニル

(PVC)シートを調製し、抽出法及び直接

法による溶血性試験を行い、陽性対照材

料としての性能を評価した。また、本事

業において別グループ(松岡班)が実施

しているケーススタディである「ISO/

TC194/WG9 溶血性試験ラウンドロビンテ

スト支援研究」に寄与するため、本研究

において開発した陽性対照材料を試料と

して提供した。

B.研究方法

(1)ケーススタディ 1「Accuracy of ma-

chined indirect restorations – Test methods and marking」

1-1.検証実験

1-1-1.歯科用修復物の種類

CAM マシンで作製した精度評価用の歯

科用修復物を以下に示した。

Ⅰ級インレー:小さなう蝕で咬合面だけ

に限局した修復物であり、この典型的な

形態と寸法を決定し、金型を作製した(図

1)。

Ⅱ級インレー:小さなう蝕で咬合面と近

心や遠心に伸びた修復物であり、この典

型的な形態と寸法を決定し、金型を作製

した(図 2)。

クラウン:大きなう蝕で冠のように被せ

る修復物であり、CAD/CAM のデジタイザー

の精度分野で ISO/TC106 で新規提案され

ている形態と寸法を参考にして、金型を

作製した(図 3)。

ブリッジ:歯を 1-2 本失った場合、前後

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の歯をシリンダー状に切削して、全体を

連結して歯牙欠損を補う修復物であり、

クラウンと同様、CAD/CAM のデジタイザー

の精度分野で ISO/TC106 で新規提案され

ている形態と寸法を参考にして、金型を

作製した(図 4)。

1-1-2.CAM による修復物の作製

通常、三次元データは同データを ISO

として規定し、このデータに基づいて作

製された修復物の精度を計測する。しか

し、各修復物の三次元データは各メーカ

ーが独自に準備するため、同一修復物に

おいて必ずしも同じとは限らないことか

ら、メーカー毎に CAM データを修正して、

精確な修復物を作製した。

CAD/CAM で使用できる材料は、ワックス、

セラミックス及び金属等、様々な種類が

存在する。また、ブロックの形態も角柱

や円板等があり、修復物の種類に応じて

寸法も異なる。そこで、修復物の作製い

ついては、ブロックの形態や寸法を ISO

で規定することなく、メーカーに全て任

せた。 1-1-3.修復物の精度の測定と評価

従来、修復物の精度は高価な三次元測

定装置を用いて測定していた。しかし、

この方法では、どこの国でも簡単に精度

を測定することは不可能である。そこで、

CAM マシンで作製した修復物を対応する

金型に装着し、金型の基準面と比較して、

突出又は沈下した変位量として精度の測

定を行った。金型には角度(テーパー)

が付与されているため、CAM マシンで作製

された修復物の拡大又は縮小率を小数点

以下第一位までの精度(%)で評価した。

1-2.ISO/TC106/SC9 への新規提案

平成 24 年 10 月に開催された ISO/TC

106/SC9総会及びISO/TC106/SC9/WG1会議

に出席し、本規格の新規提案に向けた事

前説明を行った。

(2)ケーススタディ 2「溶血性試験用陽性

対照材料の開発と性能評価」

2-1.サーベイ試験

ジフェニルジスルフィド及び Genapol

X-080 をはじめとした 23 種類の化学物質

(表 1)を候補として選択し、極性に応じ

て PBS 又は DMSO に 50mM の濃度で溶解し

た。ウサギ脱線維血 1ml を遠心分離し、

得られた赤血球画分を PBS で 3 回洗浄後、

同容量の PBS に懸濁させて血液試料とし

た。PBS 2ml に被験物質(終濃度 50 又は

500μM)及び血液 40μl を添加し、37℃で

インキュベートした。1、2 及び 4 時間後

に試験混液 0.5ml を採取し、遠心分離し

た後、遠心上清の 413nm における吸光度

を測定して溶血性を評価した。

2-2.可塑化 PVC の調製

ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)

30g に PVC パウダー50g をスパーテルで撹

拌しながら緩やかに加え、均一な状態に

なるまで混和した。混和物を室温から

徐々に 100℃まで加熱した後、スパーテル

で十分に混和した。再度、混和物を 100℃

で 3 分間加熱し、混和する操作を 3 回繰

り返した後、放冷して可塑化 PVC を調製

した。

2-3.化学物資含有 PVC シートの調製と性

能評価

化学物質含有 PVC シートはヒートプレ

ス法(180℃)又はキャスト法(THF)に

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より作製した。可塑化 PVC への各化合物

の混合比は 100 パーツの PVC に対して、

0.01、0.1、1 及び 10 パーツとした。化学

物質含有 PVC シート(表裏総計 12cm2)を

裁断後、PBS 2ml を添加してオートクレー

ブ抽出(121℃/15 分)を行った。同抽出

液 1ml に血液 20μl を添加し、上記と同様

の溶血試験を実施した。また、PBS 2ml と

血液 40μl の混液に裁断した PVC シート

(表裏総計 12cm2)を添加し、直接法によ

る溶血性も評価した。ジフェニルジスル

フィドは親水性に劣るため、PBS の代替溶

媒として 10% DMSO を使用した実験も行っ

た。

2-4.松岡班との連携

本研究において作製した Genapol X-080

含有ヒートプレス PVC シートを陽性対照

材料として提供し、ASTM 法、NIH 法及び

我が国の「医療機器の生物学的安全性試

験法ガイダンス/血液適合性試験」等の

各種公定法に準拠した試験を実施した

(松岡班分担研究報告書参照)。

C.研究結果

(1) ケーススタディ 1「Accuracy of ma-

chined indirect restorations – Test methods and marking」

1-1.金型を使用した精度測定

1-1-1.Ⅰ級インレー

CAM マシンで作製したⅠ級インレーが

金型より大きくなった場合、金型にイン

レーを装着すると、図 5 右側に示したよ

うに、インレーは基準線(Baseline)よ

り突出した(+A)。この金型には 6°のテ

ーパーが付与されているため、小数点以

下第一位までの精度で拡大率を測定する

ことが可能であった。また、Ⅰ級インレ

ーが金型より小さくなった場合、インレ

ーを装着すると、図 5 左側に示したよう

に、インレーは Baseline より沈下(-A)

したため、同様に収縮率を測定すること

ができた。

1-1-2.Ⅱ級インレー

CAM マシンで作製したⅡ級インレーが

金型より大きくなった場合、金型にイン

レーを装着すると、図 6に示したように、

インレーは Baseline より突出した

(+A,+B)。この金型には 8°のテーパーが

付与されているため、小数点以下第一位

までの精度で拡大率を測定することが可

能であった。また、Ⅱ級インレーが金型

より小さくなった場合、インレーを装着

すると、図 7 左側に示したように、イン

レーは窩底で接し、Baseline より沈下し

ない。窩底を取り除くことにより、イン

レーは基準線より沈下(図 7右側:-A,-B)

するため、収縮率を測定することが可能

であった。

1-1-3.クラウン

CAM マシンで作製したクラウンが金型

より小さくなった場合、金型にインレー

を装着すると、図 8右側に示したように、

クラウンは Baseline より突出した(+A)。

この金型には 16°のテーパーが付与され

ているため、小数点以下第一位までの精

度で収縮率を測定することが可能であっ

た。また、クラウンが金型より大きくな

った場合、金型にクラウンを装着すると、

図 9 左側に示したように、クラウンは

Baseline に接するため、沈下しない。図

9中央に示したように、この金型はショル

ダー部を取り外すことができる構造に設

計してあり、ショルダー部を除去するこ

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とにより、クラウンは基準線より沈下(図

9右側:+A)するため、拡大率を測定でき

た。

1-1-4.ブリッジ

CAM マシンで作製したブリッジが金型

より小さくなった場合、金型にブリッジ

を装着すると、図 10 に示したように、ク

ラウンは Baseline より突出した(+A)。

この金型には 16°のテーパーが付与され

ているため、小数点以下第一位までの精

度で収縮率を測定することが可能であっ

た。また、ブリッジが金型より大きくな

った場合、ブリッジを装着すると、図 11

左側に示したように、ブリッジは

Baseline に接するため、基準線より沈下

しない。ショルダー部を取り除くことに

より、クラウンは基準線より沈下(図 11

右側:-A,-A7)するため、拡大率を測定

できた。

1-2.ISO/TC106/SC9 への新規提案

2012 年 10 月 4 日に開催された ISO/TC

106/SC9/WG1 (CAD/CAM systems)会議にお

いて、歯科用修復物の精度の評価方法に

関する規格の新規提案に向けた事前説明

を行った。その際の討議結果を踏まえて

WD を作成し、平成 25 年 1 月に ISO 事務局

に提出した(別添資料)。

他国からも以下の規格に関する事前説

明が行われた。

・Test methods for CAD/CAM produced re-

storations(ドイツ)

・Technical file for CAD/CAM produced

restorations(ドイツ)

・Composite cements for CAD/CAM resto-

rations and machinable zirconia

ceramics(米国)

・Interoperability of CAD/CAM systems

(韓国)

これらの事前説明は急遽実施されたこ

とから、歯科業界における CAD/CAM への

関心が高いことが分かった。2013 年に開

催される ISO/TC106 ソウル会議において、

今回提出した WDが討議される予定である。

(2) ケーススタディ 2「溶血性試験用陽性

対照材料の開発と性能評価」

2-1.陽性対照材料の開発

試験対象化学物質(23 種類)の溶血性

を評価した結果、図 12 に示したように、

ジフェニルジスルフィドと Genapol X-080

はそれぞれ 500及び 50μMの濃度で顕著な

溶血性を示したが、その他 21 種類の化合

物の溶血率は 4 時間インキュベーション

時でも 大 30%程度であった。ジフェニル

ジスルフィドの溶血性は 60-90μM の濃度

範囲で用量依存的に増加し、90μM で 4 時

間インキュベートした時の溶血率は 81%

に達した(図 13a)。Genapol X-080 は 25μMから溶血性を示し、40μM 以上で完全溶血

したため(図 13b)、ジフェニルジスルフ

ィド及び Genapol X-080 を陽性対照材料

用化学物質として選定した。

図 14 に示したように、0.01 及び 0.1 パ

ーツの Genapol X-080 を添加したヒート

プレス PVC シートは溶血性を示さなかっ

たが、1パーツ含有シートは 4時間インキ

ュベーション時に弱溶血を示した(溶血

率:抽出法 37%、直接法 27%)。また、10

パーツ添加シートは強溶血を示し、抽出

法及び直接法ともに 1 時間インキュベー

ションにより完全溶血した(図 14)。

ジフェニルジスルフィドの溶血能は、

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乾燥条件下 200℃で 15 分間加熱しても保

持されていたが、ジフェニルジスルフィ

ド含有ヒートプレス PVC シートは 10 パー

ツ添加時でも、PBS を用いた抽出法及び直

接法ともに顕著な溶血性を示さなかった。

2-2.各種公定法による性能評価

Genapol X-080 含有ヒートプレス PVC シ

ートは、ASTM 法、NIH 法及び我が国の試

験法においても用量依存的な溶血性を示

し、精度管理を目的とした陽性対照材料

としての基本性能を有することが確認さ

れた(松岡班分担研究報告書参照)。

D.考 察

(1)ケーススタディ 1

測定の精度を向上させるために、各種

歯科用修復物を一定の圧力、一定の方向

で金型に圧接することは重要なことであ

る。そこで本研究において実施したケー

ススタディ 1では、図 15 に示したように、

各金型に修復物を装着させるための治具

を考案した。 WD から IS 化する過程において、再度、

三次元測定装置を用いて精度を測定する

必要性があることを国際会議において討

議する予定である。これは、三次元測定

装置が大変高価であると共に、歯科用修

復物のような小さな精度を評価するため

に使用されていない状況にも拘わらず、

別の工業会から歯科分野に参入するメー

カーが同装置による精度評価を要請する

可能性があることに由来する。いずれに

しても、同規格の国際標準化においては

金型を用いた精度測定方法の優位性を示

すことになる。

図 16 に示したⅡ級インレーやクラウン

の線角(矢印部分)は、バイトを用いた

CAM マシンにより切削することが不可能

な部位である。この線角部の処理につい

ては、1)金型の当該部を初めから丸めて

おく方法、2)切削データで修正しておく

方法等を提示する必要性があると思われ

る。

(2)ケーススタディ 2

非イオン性界面活性剤である Genapol

X-080 は膜毒性を示す化学物質であり、臨

界ミセル濃度を境として顕著な溶血性を

示す。Genapol X-080 含有ヒートプレス

PVC シートは、抽出法及び直接法ともに用

量依存的な溶血活性を示し、1パーツ添加

時に弱溶血性、10 パーツ添加時に強溶血

性を呈することが確認されたことから、

有益な陽性対照材料として使用できる可

能性が示唆された。

本研究では、溶血性試験系として簡易

測定法を適用した。松岡班が行っている

「ISO/ TC194/WG9 溶血性試験ラウンドロビ

ンテスト支援研究」に寄与すると共に、

Genapol X-080 含有ヒートプレス PVC シー

血の性能を更に詳細に評価するため、松

岡班において各種公定法を用いた試験を

実施した結果、Genapol X-080 含有ヒート

プレス PVC シートは、いずれの試験法に

おいても良好な性能を示したことから、

陽性対照材料として利用できることが明

らかとなった。今後、陽性対照材料から

の化学物質の溶出挙動、ヒト及び動物血

液間における感度の相違、赤血球の形態

観察等を実施することにより、将来、新

規規格として提案するための検証データ

を収集する。

ジフェニルジスルフィドはヘモグロビ

ン酸化を伴う溶血毒であり、その溶血能

は乾燥条件下 200℃で 15 分間加熱しても

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保持されていたが、ヒートプレス法によ

り作製した PVC シートは溶血性を示さな

かった。本結果から、可塑化 PVC との加

熱成形時にジフェニルジスルフィドが分

解若しくは PVC(又は DEHP)と縮合する

可能性が示唆されたため、加熱処理を伴

わないキャスト法によりジフェニルジス

ルフィド含有 PVC シートを再調製した。

また、ジフェニルジスルフィドは親水性

に劣るため、PBS の代替溶媒として 10%

DMSO を使用して溶血性試験を行ったが、

ジフェニルジスルフィドの添加量と各キ

ャストシートが示す溶血率との間には明

瞭な用量依存性が認められなかった。本

結果から、ジフェニルジスルフィド含有

PVC シートは溶血性試験用陽性対照材料

として利用できないことが判明した。ジ

フェニルジスルフィド含有 PVC シートが

理論的な溶血性を示さない理由は不明で

あるが、ジフェニルジスルフィドは反応

性に富むスルフィド結合を有する化学物

質であるため、基材である可塑化 PVC と

相互作用する可能性を否定できない。ジ

フェニルジスルフィド自体は用量依存的

に顕著な溶血性を示すため、添加化学物

質として有用であるが、ジフェニルジス

ルフィド含有陽性対照材料の作製につい

ては、今後、可塑化 PVC 以外の基材を利

用する必要があると思われる。

E.結 論

歯科分野に関するケーススタディ 1 で

は、新規規格「Accuracy of machined in-

direct restorations – Test methods and marking」の提案に向けた事前説明を

ISO/TC106/SC9/WG1 会議において行い、平

成 25 年 1 月に同規格に関する WD を ISO

事務局に提案・提出した。

溶血性試験用陽性対照材料の開発と性

能評価に関するケーススタディ 2 では、

Genapol X-080 含有ヒートプレス PVC シー

トが陽性対照材料として利用できること

が明らかになった。

F.健康危険情報

特になし。

G.研究発表

1)蓜島由二,福井千恵,柚場俊康,松岡

厚子.溶血性試験用陽性対照材料の開

発と性能評価.日本バイオマテリアル

学会シンポジウム 2012(2012 年 11 月,

仙台).

2) Kazama M, Ohkuma K, Ogura H. The new

method to fabricate ceramic crown

copings from full-sintered zirconia

using Nd-YVO4 nsec laser.日中歯科医

学会 2012(2012 年 4 月,成都).

3)風間未来,大熊一夫,小倉英夫.Nd-YVO4

レーザーを用いたジルコニアコーピン

グの新しい加工法 ―照射条件と加工

精度―.第 60 回日本歯科理工学会学術

講演会(2012 年 10 月,福岡).

参照資料:特になし

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金型切断面

図1. Ⅰ級インレーの金型と寸法

図2. Ⅱ級インレーの金型と寸法

金型側方図 (切断)

近心図

上方図

金型 側方図 (切断)

図3. クラウンの金型と寸法

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図4. ブリッジの金型と寸法

金型

上方図 (切断)

上方図

切断面

図5. Ⅰ級インレーの精度の測定方法

切断面

図6. Ⅱ級インレーの精度の測定方法(大きい場合)

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図8. クラウンの精度の測定方法(小さい場合)

図7. Ⅱ級インレーの精度の測定方法(小さい場合)

切断面

図9. クラウンの精度の測定方法(大きい場合)

Metal die

切断面

切断面 金型の構造(切断)

切断面

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図10. ブリッジの精度の測定方法(小さい場合) 図11. ブリッジの精度の測定方法(大きい場合)

切断面 切断面

0

20

40

60

80

100

120

1 2 3 4

処理時間(hr)

溶血

率(%)

-control PBS

-control DMSO

#1 TPP 50uM

#2 乳酸 5uM

#3 オルシノール 50uM

#4 酢酸鉛 50uM

#5 塩素酸ナトリウム50uM

0

20

40

60

80

100

120

1 2 3 4

処理時間(hr)

溶血

率(%)

-control DMSO

#1 TPP 500uM

#6 ジフェニルジスルフィド500uM

#7 ジメチルグリオキシム500uM

#8 フェナゾピリジン塩酸塩500uM

#8 フェナゾピリジン塩酸塩50uM

#9 5-アミノサリチル酸500uM

0

20

40

60

80

100

120

1 2 3 4

処理時間(hr)

溶血

率(%)

-control DMSO

#15 サリチルアゾスルファサラジン 500uM

#16 ニトロベンゼン 500uM

#17 レソルシノール 500uM

#19 ピクリン酸 500uM

#20 ジネブ標準品 500uM

#21 d-ペニシラミン塩酸塩500uM

0

20

40

60

80

100

120

1 2 3 4

処理時間(hr)

溶血

率(%)

-control DMSO

#18 Genapol X-080 50ug/ml

#22 1-ナフチルアミン500uM

#23 p-アミノサリチル酸ナトリウム塩 500uM

0

20

40

60

80

100

120

1 2 3 4

処理時間(hr)

溶血

率(%)

-control DMSO

#10 4-ニトロアニリン500uM

#11 o- アミノフェノール500uM

#12 アニリン 500uM

#13 p-アミノジフェニルアミン 500uM

#14 2-ニトロフェニルヒドラジン塩酸塩 500uM

図12. 試験対象化学物質23種類の溶血性試験結果

切断面

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0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

1 2 3 4

処理時間(hr)

溶血

率(%)

control

100uM

90uM

80uM

70uM

60uM

50uM

0

20

40

60

80

100

120

1 2 3 4

処理時間(hr)

溶血

率(%)

control

50ug/ml

40ug/ml

30ug/ml

25ug/ml

20ug/ml

10ug/ml

1ug/ml

0.1ug/ml

図13. ジフェニルジスルフィド

(a) 及びGenapol

X-080 (b) の溶血性試験結果

(a)

(b)

0

20

40

60

80

100

120

Control 0.01P 0.1P 1P 10P

溶血

率(%)

1H

2H

4H

直接法

弱溶血 強溶血

0

20

40

60

80

100

120

Control 0.01P 0.1P 1P 10P

溶血

率(%)

1H

2H

4H

オートクレーブ抽出液

弱溶血 強溶血

図14. Genapol

X-080含有ヒートプレスPVCシートの溶血性試験結果

Ⅱ級インレー用Ⅰ級インレー用

クラウン用 ブリッジ用 クラウンⅡ級インレー

図15. 歯科用修復物の圧接方法 図16. 線角部の対処方法

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番号

1 リン酸トリフェニル リン酸トリフェニル

2 乳酸 乳酸

3 オルシノール オルシノール

4 Lead 酢酸鉛

5 Chlorate 塩素酸ナトリウム

6 ジフェニルジスルフィド類 ジフェニルジスルフィド

7 オキシム類 ジメチルグリオキシム

8 Phenazopyridine フェナゾピリジン塩酸塩 

9 5-アミノサリチル酸 5-アミノサリチル酸

10 ニトロアニリン類 4-ニトロアニリン

11 o-,p-アミノフェノール類 o-アミノフェノール

12 アニリン類 アニリン

13 N-フェニルーp-フェニレンジアミン類 p-アミノジフェニルアミン

14 ニトロ化合物 2-ニトロフェニルヒドラジン塩酸塩

15 Salicylazosulphapyridine サリチルアゾスルファサラジン

16 ニトロベンゼン類 ニトロベンゼン

17 Resourcin レソルシノール

18 エチレングリコールアルキルエーテル類 Genapol X-080

19 2,4,6-トリニトロフェノール類 2,4,6-トリニトロフェニル

20 Zinc ethylene bisdithiocarbonate ジネブ標準品

21 d-Penicillamine d-ペニシラミン塩酸塩

22 二環芳香族アミン類 1-ナフチルアミン

23 p-Aminosalicylic acid p-アミノサリチル酸ナトリウム塩 

化合物名試薬群

表1. 試験対象化学物質一覧

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別添資料

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WORKING DRAFT ISO/WD nnn-n

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Contents Page

Foreword.......................................................................................................................................................3 Introduction ..................................................................................................................................................4 1 Scope................................................................................................................................................5 2 Normative references.......................................................................................................................5 3 Terms and definitions ......................................................................................................................5 4 Requirementserms...........................................................................................................................5 5 Test methods....................................................................................................................................1 5.1 Target restorations...........................................................................................................................1 5.2 Apparatus .........................................................................................................................................1 5.3 Preparation of 3-D data....................................................................................................................1 5.4 Machining of restorations................................................................................................................3 5.5 Evaluation of accuracy ....................................................................................................................3 5.5.1 General .............................................................................................................................................3 5.5.2 Class I inlay ....................................................................................................................................3 5.5.2 Class II inlay ...................................................................................................................................4 5.5.4 Full crown.........................................................................................................................................5 5.5.5 Bridge ...............................................................................................................................................6

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Foreword

ISO (the International Organization for Standardization) is a worldwide federation of national standards bodies (ISO member bodies). The work of preparing International Standards is normally carried out through ISO technical committees. Each member body interested in a subject for which a technical committee has been established has the right to be represented on that committee. International organizations, governmental and non-governmental, in liaison with ISO, also take part in the work. ISO collaborates closely with the International Electrotechnical Commission (IEC) on all matters of electrotechnical standardization.

International Standards are drafted in accordance with the rules given in the ISO/IEC Directives, Part 2.

The main task of technical committees is to prepare International Standards. Draft International Standards adopted by the technical committees are circulated to the member bodies for voting. Publication as an International Standard requires approval by at least 75 % of the member bodies casting a vote.

Attention is drawn to the possibility that some of the elements of this document may be the subject of patent rights. ISO shall not be held responsible for identifying any or all such patent rights.

ISO-n was prepared by Technical Committee ISO/TC 106, Dentistry, Subcommittee SC 9, Dental CAD/CAD systems.

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Introduction

Dental CAD/CAM systems have been successfully used for the fabrication of indirect dental restorations such as inlays, crowns and bridges. The accuracy of these restorations is one of the most important keys for their clinical success. The proposed document provides standardized test methods to evaluate the accuracy of machined indirect using dental CAD/CAM systems as well as the evaluated accuracy for these restorations as marking information.

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Dentistry — CAD/CAM systems – Accuracy of machined indirect restorations – Test methods and marking

1 Scope

This standard specifies test methods to evaluate machined indirect dental restorations such as inlays, full crowns and bridges using dental CAD/CAM systems and marking of the evaluated accuracy based on the results from the test methods.

2 Normative references

The following referenced documents are indispensable for the application of this document. For dated references, only the edition cited applies. For undated references, the latest edition of the referenced document (including any amendments) applies.

ISO 1942, Dentistry — Vocabulary

ISO12836, Dentistry -- Digitizing devices for CAD/CAM systems for indirect dental restorations -- Test methods for assessing accuracy

3 Terms and definitions

For the purposes of this document, the terms and definitions given in ISO 1942 and the following apply.

4 Requirements

The accuracy of target restoration(s) shall be evaluated using the test methods, clause 5 in this standard and shall be described both in marking and instruction for use.

5 Test methods

5.1 Target restorations

Four types of restorations, 1) Class I inlay, 2) Class II inlay, 3) full crown, and 4) four-unit bridge are the target of this standard. Choose the type(s) following the applicable restoration(s) cited by the manufacturer. If any of the four restorations is not cited applicable by the manufacturer, this restoration is eliminated from the target. In other words, the fabrication of the restoration(s) and the accuracy evaluation are carried out only for the applicable restoration(s) cited by the manufacturer.

5.2 Apparatus Four types of metal dies given in Fig. 1-4 (Class I inlay, Class II inlay, full crown and four-unit bridge dies) are used both for the preparation of three-dimensional (3-D) data and the evaluation of the accuracy of machined restorations. As shown in Fig. 1-4, these dies have a removable structure for the evaluation of accuracy. These dies shall be prepared for the applicable restoration(s) cited by the manufacturer. 5.3 Preparation of 3-D data To fabricate the target restorations, 3-D data for each of the restorations shall be prepared. The 3-D data are not necessarily identical to the dimensions of the dies and the data can be modified to produce accurate restorations (the data conversion is involved). The modified data may be supplied by the manufacturer.

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Fig. 1-a Class I inlay die, Fig. 1-b Class I inlay die, Fig. 1-c Class I inlay die, Cross section Upper view Removable structure

Fig. 2-a Class II inlay die, Fig. 2-b Class II inlay die, Fig. 2-c Class II inlay die,

Upper view Cross section Proximal view

: Fig. 2-d Class II inlay die, Removable structure

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Fig. 3-a Full crown die, Fig. 3-b Full crown die, Fig. 3-c Full crown die, Cross section Upper view Removable structure

Note: For a full crown die either left part or right part of the bridge die (Fig. 4) can be used. Fig. 3 shows the left part of the bridge die

Fig. 4-a Bridge die (cross section) Fig. 4-b Bridge die (upper view) Note: The removal structure of the bridge die is the same as that of the full crown die (Fig. 3-c). The

shapes and dimensions of the full crown and bridge dies are identical to those specified by ISO 12836.

5.4 Machining of restorations The prepared 3-D data are input into the machining device and a target restoration is machined following the manufacturer’s instruction. The material specimen (blank) shall be used following the manufacturer's instruction. Fabricate six restorations for each of the target restorations. 5. 5 Evaluation of accuracy 5. 5. 1 General The accuracy of the machined restorations is expressed by the discrepancy between the margin of a restoration and baseline (cavity margin for inlays and abutment shoulder for crown and bridge). The measurement is carried out using a dial gauge or 3-D measuring microscope at the accuracy of 1/200 mm or higher. The measured value shall be expressed in mm to two decimal places. 5. 5. 2 Class I inlay Place the machined inlay in the cavity of a metal die and apply a load of 50 N for 30 sec on the center of the inlay. Remove the load and examine where the margin of the inlay is located. When the inlay margin is located higher than the baseline (cavity margin), measure the discrepancy between the inlay margin and the baseline (Fig. 5-a). The measured value is expressed with plus sign. When the inlay margin is located at the same level of the baseline or beneath the baseline, remove the cavity base of the die and place the inlay in the die cavity. Apply a load of 50 N and remove it after 30 sec. Measure the discrepancy between the inlay margin and the baseline same as above (Fig. 5-b). The measured value is expressed with minus sign. If the inlay margin is still located at the same level of the baseline, the discrepancy is 0, 00 mm. For both cases (measurements with and without removable part), the measurement shall be carried out at four points (Fig. 5-b) for each of the six fabricated inlays and the four measured data of one inlay are averaged to represent the

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discrepancy of that inlay. Calculate the average of the six representative discrepancy values and the standard deviation to express the accuracy of the machined inlay. Describe the average discrepancy and standard deviation (SD) in the marking and the instruction for use as follows; Accuracy of class I inlay: +A±SD mm, or -A±SD mm

Fig. 5-a Discrepancy measurement Fig. 5-b Discrepancy measurement Fig. 5-c Measurement points with removable part without removable part indicated by thick arrows 5.5.3 Class II inlay Place the machined inlay in the cavity of a metal die and apply a load of 50 N for 30 sec at the middle of the occlusal surface of the inlay. Remove the load and examine where the margin of the inlay is located. When the occlusal margin of the inlay is located higher than the occlusal baseline (occlusal margin of the die cavity), measure the discrepancy between the inlay margin and the baseline (Fig. 6-a). Similarly, when the proximal margin of the inlay extrudes from the proximal baseline (proximal margin of the die cavity), measure the discrepancy between the inlay margin and baseline (Fig. 6-b) The measured values for both occlusal and proximal discrepancies are expressed with plus sign. When the occlusal and proximal margins of the inlay are located at the same level of the baseline or beneath the baseline, remove the cavity base and place the inlay in the die cavity. Apply a load of 50 N and remove it after 30 sec. Measure the discrepancies between the occlusal inlay margin and the occlusal baseline and between the occlusal inlay margin and the proximal the baseline (Fig. 6-c). The measured values are expressed with minus sign. If the inlay margin is still located at the same level of the baseline, the discrepancy is 0, 00 mm. For both cases (measurements with and without removable part), the measurement shall be carried out at three points for the occlusal discrepancy (Fig. 6-d) and at four points for the the proximal discrepancy (Fig. 6-e). The measured discrepancy data of one inlay are averaged to represent the discrepancy of that inlay. Calculate the average of the six representative discrepancy values and the standard deviation to express the accuracy of the machined inlay. Describe the average discrepancies and standard deviation (SD) in the marking and the instruction for use as follows; Accuracy of class II inlay: 1. Occlusal accuracy +A±SD mm, or -A±SD mm 2. Proximal accuracy +B±SD mm, or -B±SD mm

Fig. 6-a Occlusal discrepancy Fig. 6-b Proximal discrepancy Fig. 6-c Occlusal & proximal discrepancy measurement measurement measurements With removable part With removable part Without removable part

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Fig. 6-d Measurement points Fig. 6-e Measurement points for occlusal discrepancy for proximal discrepancy 5. 5. 4 Full crown Place the machined crown on the abutment of a metal die and apply a load of 50 N for 30 sec on the center of the occlusal surface of a crown. Remove the load and examine where the margin of the crown is located. When the crown margin is located higher than the baseline (abutment shoulder), measure the discrepancy between the crown margin and the baseline which is an abutment shoulder (Fig. 7-a). The measured value is expressed with plus sign. When the crown margin attaches the baseline, remove the head part and shoulder ring. Place the crown on the abutment without two removal parts. Apply a load of 50 N and remove it after 30 sec. Measure the discrepancy between the crown margin and the second baseline which is 10 mm lower from the original baseline (Fig. 7-b). Subtract 10 mm from the measured value and obtain the discrepancy between the crown margin and the original baseline. The obtained discrepancy value is expressed with minus sign. For both cases (measurements with and without removable parts), the measurement shall be carried out at four points (Fig. 7-c) for each of the six fabricated crowns and the four measured data of one crown are averaged to represent the discrepancy of that crown. Calculate the average of the six representative discrepancy values and the standard deviation to express the accuracy of the machined crown. Describe the average discrepancy and standard deviation (SD) in the marking and the instruction for use as follows; Accuracy of full crown: +A±SD mm, or -A±SD mm

Fig. 7-a Discrepancy measurement Fig. 7-b Discrepancy measurement Fig. 7-c Measurement points of crown of crown (intersection points of crown With removable parts Without removable parts margin and two orthogonal

lines at optional diametral

5. 5. 5 Four-unit bridge Remove the two abutment parts from the bridge die and measure the discrepancies of two single crowns individually using the same procedure described in 5. 5. 4. Fix the removed abutments to the bridge die and place the machined bridge on the bridge die. Apply a load of 50 N on each of the two crowns at the center of the occlusal surface for 30 sec. Remove the load and examine if the crown margin attaches the baseline (abutment shoulder).

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When the crown margin is located higher than the baseline, measure the discrepancy between the crown margin and the baseline (Fig. 8-a). The measured value is expressed with plus sign. When the crown margin attaches the baseline, remove the head parts and shoulder rings of two abutments. Place the crown on the abutment without two removal parts. Apply a load of 50 N on each of two crowns and remove it after 30 sec. Measure the discrepancy between the crown margin and the second baseline which is 10 mm lower from the original baseline (Fig. 8-b, described as D). Subtract 10 mm from the measured value (D) and obtain the discrepancy between the crown margin and the original baseline. The obtained discrepancy value is expressed with minus sign. For both cases (measurements with and without removable parts), the measurement shall be carried out at four points for each of two crowns (Fig. 7-c) of one bridge, and obtain the average of the eight measured values in total to represent the discrepancy of that bridge. After this measurement is carried out for six bridges, calculate the average of the six representative discrepancy values and the standard deviation to express the accuracy of the machined crown. Describe the average discrepancy and standard deviation (SD) in the marking and the instruction for use as follows; Accuracy of crown 1: +A±SD mm, or -A±SD mm Accuracy of crown 2: +B±SD mm, or -B±SD mm Accuracy of whole bridge: +C±SD mm, or -C±SD mm

Fig. 8-a Discrepancy measurement Fig. 8-b Discrepancy measurement of whole bridge of whole bridge With removable parts Without removable parts

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分担研究報告書

平成24年度厚生科学研究費補助金(地球規模保健課題推進)研究事業

国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)における医療機器の各種国際規格の

策定に関する研究(H23-地球規模-指定-003)

分担研究課題名

ISO/TC 194/WG 9ラウンドロビンテスト支援研究

研究分担者 松岡 厚子 国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部長

研究協力者 新藤 智子 財団法人 食品薬品安全センター秦野研究所

坂口 圭介 テルモ株式会社 研究開発本部

谷川 隆洋 テルモ株式会社 研究開発本部

犬飼 香織 テルモ株式会社 研究開発本部

竹ノ内美香 テルモ株式会社 研究開発本部

研究要旨

A. 研究目的 血液に接触する医療機器には安全性上

の不具合を生じないよう、ISO 10993-4

で規定される血液適合性評価が求められ

ているが、具体的で標準化された試験法

が明記されていない点が大きな課題とな

っている。ISO/TC 194:医療機器の生物

学的評価 技術委員会では、WG 9が主体と

なって発行文書 ISO 10993-4(2002年に

発行された本体及び2006年に発行された

Amendmentで構成)の改正作業が始まって

いる。血液適合性評価の中に赤血球に及

ぼす影響を評価する試験法として確立さ

れた「溶血性試験」がある。国際的には、

米国で規格化されたASTM法、NIH法、及

び日本のMHLW法(薬食機発0301第20号

ISO/TC 194/WG 9(医療機器の生物学的評価 - 血液適合性WG)は、担当文書ISO 10993-4:2002

及びAmd 1:2006の改正に向け、溶血性試験に関する多施設国際共同検証試験(ラウンドロビ

ンテスト)の実施を計画した。今年度、本研究班から参加の2機関が、WG 9 Convenor Dr. Michael

Wolfのとりまとめる溶血性試験プロトコルの最終化作業に参画し、サンプル選定と文書校正

を完了させた(文書発行2012年11月19日)。プロトコルは、医療機器の溶血性試験で国際的

に広く用いられているASTM法、NIH法、MHLW法(薬食機発0301第20号 1))の3法で構成さ

れている。またラウンドロビンテストの実施は、第一段階の Pilot Runと第二段階の Actual

に分けて行うこととなった。上記2機関により今年度末までにPilot Runの第一回目の試験が

実施される運びとなっている。

また本研究班で試験精度管理の目的で開発中の陽性対照材料(Genapol X-080含有PVCシー

ト)を、前述のラウンドロビンテストのプロトコルにて性能評価を実施し、ラウンドロビンテ

スト用サンプルの 1つとして提供することを目的として、その基本性能を詳細に評価した。

Genapol X-080含有量依存的に溶血性が認められ、精度管理目的の陽性対照材料の候補として、

その基本性能が確認された。

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1))が国際的に広く用いられている(表1)。

WG 9ではISO 10993-4への記載のため、

この 3法を比較検討するためのラウンド

ロビンテストの実施が決まった(図 1)。

ラウンドロビンテスト参加者は日中米欧

の12試験機関で構成されている(表2)。

ラウンドロビンテストのプロトコルの

最終化と試験検体の決定は、参加する試

験機関の意見の一致に時間を要し難航し

ていたが、電話会議を重ね、2012年 11

月19日完了した。またラウンドロビンテ

ストの実施は、第一段階の Pilot Runと

第二段階のActualに分けて行うこととな

った(図1)。Pilot Runの試験概要を図2

に示す。陰性対照材料(非溶血)として

ポリエチレンを用いるほか、さまざまな

溶血程度を有するゴム材料を 5種類試験

して、第二段階(Actual)のラウンドロ

ビンテストで用いる検体を選択する目的

も含まれている。

B. 研究方法

1. 試験材料

ラウンドロビンテストの試験検体は図

2に示す6種類(Polyethylene, Nitrile

glove, Latex glove #12, EPDM Rubber #3,

EPM Rubber #4, Buna rubber(Aero Rubber

Co.製))が提供されることになっている。

さらに、本研究では試験精度管理の目的

で開発中の陽性対照材料(Genapol X-080

含有 PVCシート)を用い、溶血性能を評

価した。各試験法のインキュベーション

時間は、プロトコルに従い、ASTM法(直

接接触及び抽出液法):3時間、NIH法(直

接接触法):1時間、MHLW法(抽出液法):

4時間で実施した。

2. 実験方法

試験方法は2012年11月19日付ラウン

ドロビンテストのテストプロトコルに従

った。

ただし、Genapol X-080含有PVCシートに

ついてはウサギ血液での実施とし、間接

接触法における抽出条件は表面積あたり

6 cm2/mLの抽出溶媒量、121 ± 2℃、1 ±

0.1時間とした。

3. 倫理面への配慮

動物血液の採取については、所属機関

(財団法人ヒューマンサイエンス振興財

団の動物実験実施施設認証認定番号

12-005(秦野研)及び12-030(テルモ))

の規定する動物実験指針に従い、動物に

対する苦痛が最小となるよう務めた。又、

動物実験倫理委員会の承認を得た(承認

番号:1120331A(秦野研)及び120163(テ

ルモ))。

C. 研究結果

陽性対照材料の溶血性試験結果を図 3

及び表3-6に示す。Genapol X-080 10 phr

シートはすべての試験法で溶血率がほぼ

100%の高い溶血性を示した。またGenapol

X-080 0.1 phr及び0.01 phrシートはす

べての試験法で陰性であった。一方、

Genapol X-080 1 phrシートはASTM直接

接触法で20%程度の溶血率を示したが、そ

の他の試験では陰性であった。

し、精度管理目的の陽性対照材料の候補

としての基本性能が確認され、ラウンド

ロビンテスト用サンプルになりうると考

えられた。また本材料における溶血性の

検出は、ASTM直接接触法が最も感度良く

確認できた。

D. 考察

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赤血球の溶血現象には、(1)浸透圧変化、

(2)レオロジー作用、(3)生化学的要因の3

つの作用が関与しており、医療機器の臨

床使用においては、単独あるいはこれら

が複合的に作用して不具合としての溶血

が生じると考えられる。ラウンドロビン

テストで取り上げられた溶血性試験は、

医用材料の有する潜在的な毒性として主

に(3)の作用による赤血球膜が破壊され

る現象の有無とその程度を確認する試験

法である。(3)の作用の中には、界面活性

作用による膜破壊や高/低 pH等による膜

たんぱく質の変性作用などが例として挙

げられる。

本研究班の開発した陽性対照材料は、

非イオン界面活性剤である Genapol

X-080が抽出液やインキュベーション中

の試験液に溶出することで、赤血球膜の

リン脂質 2分子膜を破壊する作用を有す

ることが溶血性の機序と考えられる。研

究結果から、本陽性対照材料における溶

血性の閾値は、ASTM直接法で0.1 phrと

1 phrの間の用量、その他の試験では1 phr

と10 phrの間の用量に、それぞれあると

考えられる。材料中の Genapol X-080量

の精密なチューニングはこれからの作業

となるが、本実験結果から、本材料のコ

ンセプトは証明され、溶血試験法陽性対

照材料としての有用性が確認できたと判

断できる。

E. 結論

ISO/TC 194/WG 9(血液適合性)で企画

された RRTへの、国内 2機関の参加への

支援を継続した。平成25年3月中旬に試

験材料を配布するとの情報が、オーガナ

イザーよりよせられたが、当該研究班の

報告には間に合わないため、本研究班で

試験精度管理の目的で開発中の陽性対照

材料を用いて、ウサギ血でその基本性能

を評価した。その結果 Genapol X-080含

有量依存的に溶血性が認められ、陽性対

照材料候補としての基本性能が確認でき

た。

得られたデータは、平成25年4月開催

予定の ISO/TC 194/WG 9パヴィア会議で

報告する。

F. 研究発表

なし。

G. 参考

1) 平成24年 3月 1日付け厚生労働省

医薬食品局審査管理課 医療機器審査管

理室長通知 薬食機発0301第20号「医

療機器の製造販売承認申請等に必要な生

物学的安全性評価の基本的考え方につい

て」

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ASTM NIH MHLW

試験に用いる血液の種類クエン酸血

(ヒト or ウサギ)

シュウ酸血

(ウサギ)

脱繊維血

(ウサギ)

血液濃度の調整 10 mg Hb/mL

採取した血液と生理食塩液を混合し、吸光度A545が0.9~1.00になるよう調節

希釈なし

血液

接触

比率

抽出液法抽出液7 mL(媒体:PBS)と1 mLの濃度調整血液を混合

抽出液10 mL(媒体:生理食塩液)と0.2 mLの濃度調整血液を混合*Pilot Runでは実施計画

なし

抽出液10 mL(媒体:生理食塩液)と0.2 mLの血液を混合

直接接触法

7 mLのPBSと1 mLの濃度調整血液を混合し、60 cm2分の被験物質を添加

10 mLの生理食塩液と0.2 mLの濃度調整血液を混合し、5 gの被験物質を添加

インキュベーション時間・振盪条件3時間

振盪(60 rpm)

1時間±5分

振盪なし

1、2、及び4時間

*ラウンドロビンテストでは4時間に固定

振盪なし

表1. 溶血性試験3法の実験条件比較

RoleName(affiliation)

Facility

Principal Investigator Michael F. WolfMedtronic Inc. - USA

Medtronic Inc.Minneapolis, MN 55432, USA

Study Biostatistician Dr. Sebastian Hoffmannseh consulting + services - Germany

seh consulting + servicesGermany

Study-Coordinator Michelle Lee, B.S., RM(NRCM), ASQ CQANelson Laboratories - USA

Nelson LaboratoriesSLC, UT 84123, USA

1. Co-Investigator Keisuke Sakaguchi (and/or Takahiro Tanigawa)TERUMO Corporation, Japan

TERUMO CorporationJapan

2. Co-Investigator Tomoko ShindoHatano Research Institute - Japan

Hatano Research InstituteJapan

3. Co-Investigator Hou LiShandon Quality Inspection Center – China

Shandong Quality Inspection Center forMedical Devices, China

4. Co-Investigator Anita Y. Sawyer, MS MTASCPBecton Dickenson Corp. – USA

BD Biological Sciences, Corporate PreClinicalDevelopment and Toxicology, NJ 07417, USA

5. Co-Investigator Melissa Cadaret (and/or Joe Carraway)(NAMSA

NAMSANorthwood, OH 43619 , USA

6. Co-Investigator Michelle Lee, B.S., RM(NRCM), ASQ CQA(Nelson Laboratories, USA)

Nelson LaboratoriesSLC, UT 84123, USA

7. Co-Investigator Lisa Olson and/or Bev LundellWuXiAppTec – USA

WuXiAppTecMN 55120, USA

8. Co-Investigator Andrew WalshMedtronic Inc. - USA

Medtronic Inc.Minneapolis, MN 55432, USA

9. Co-Investigator Kathy Laffan (and/or Christine Eoff)Medtronic Inc. - USA

Medtronic CardioVascularCA 95403, USA

10. Co-Investigator Ron Brown (FDA – USA FDAMD 20993, USA

11. Co-Investigator Jean Pierre Boutrand, Catherine Tremolieres, Gaëlle ClermontNAMSA – France

NAMSAFrance

12. Co-Investigator Ed Reverdy, Boston Scientific(tentative)

Boston Scientific CorporationMA 01760, USA

表2.ラウンドロビンテスト参加者リスト

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スケジュール

●Pilot Runラウンドロビンテスト(2013年1~3月)各試験施設へのサンプル配布:12月末-1月初め

(Nelson研究所 Michelle Lee氏が発送担当)試験期間: サンプル到着後8週間データ統計処理: 3月初め

●ISO/TC194 Pavia会議(2013年4月)中間報告

●Actualラウンドロビンテスト(2013年5~11月)Pilot Run終了6ヶ月後に完了

Pilot Run概要

• 試験参加施設数: 12• サンプル

※ サンプル測定順は、ランダム化が指定されている

• 試験法: ASTM(抽出液法)、ASTM(直接接触法)、NIH(直接接触法)、MHLW(抽出液法)

Sample ID Material

a Polyethylene i

b Nitrile glove ii

c Latex glove #12 iii

d EPDM Rubber #3iii

e EPM Rubber #4 iii

f Buna rubber (Aero Rubber Co.)

図1.ラウンドロビンテスト計画 図2.Pilot Runの試験概要

0

20

40

60

80

100

0.01 phr 0.1 phr 1 phr 10 phr

Genapol X-080含有PVCシートの溶血性能

ラウンドロビンテストプロトコルによる検討

ASTM-間接接触法 ASTM-直接接触法 NIH-直接接触法 MHLW-間接接触法

図3. GenapolX-080含有PVCシート 溶血試験結果

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表3. ASTM-直接接触法におけるGenapol X-080含有PVCシートの溶血率

個別値 平均値

Genapol0.01phr1 0.012 0.7

2 0.008 0.3

Genapol0.1phr 1 0.006 0.2

2 0.006 0.2

Genapol1 phr 1 0.240 20.0

2 0.266 22.2

Genapol10phr 1 1.082 91.5

2 1.102 93.2

総ヘモグロビン濃度(平均値):9.456 mg/mL

無処置対照液上清反応液のヘモグロビン濃度(平均値):0.004 mg/mL

インキュベーション時間:3時間

物質 n反応液の

ヘモグロビン濃度

溶血率(%)溶血性の程度

0.2

21.1

92.4

非溶血性

(low)

非溶血性

(low)

溶血性

(high)

溶血性

(high)

0.5

表4. ASTM-間接接触法におけるGenapol X-080含有PVCシートの溶血性能

個別値 平均値

Genapol0.01phr1 0.004 0.0

2 0.004 0.0

Genapol0.1phr 1 0.002 -0.2

2 0.004 0.0

Genapol1 phr 1 0.002 -0.2

2 0.002 -0.2

Genapol10phr 1 1.108 93.7

2 1.124 95.1

総ヘモグロビン濃度(平均値):9.456 mg/mL

無処置対照液上清反応液のヘモグロビン濃度(平均値):0.004 mg/mL

インキュベーション時間:3時間

物質 n反応液の

ヘモグロビン濃度

溶血率(%)溶血性の程度

-0.1

-0.2

94.4

非溶血性

(low)

非溶血性

(low)

非溶血性

(low)

溶血性

(high)

0.0

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表5.NIH-直接接触法におけるGenapol X-080含有PVCシートの溶血性能

個別値 平均値

Genapol0.01phr1 0.138 4.5

2 0.092 -1.4

Genapol0.1phr1 0.046 -7.3

2 0.118 1.9

Genapol1 phr 1 0.121 2.3

2 0.104 0.1

Genapol10phr 1 0.967 109.9

2 0.972 110.6

陽性対照液の吸光度(平均値) 0.889

陰性対照液上清の吸光度(平均値) 0.103

インキュベーション時間:1時間

物質 n 上清の吸光度溶血率(%)

溶血性の程度

-2.7

1.2

110.3

非溶血性

(low)

非溶血性

(low)

非溶血性

(low)

溶血性

(high)

1.6

表6.MHLW-間接接触法におけるGenapol X-080含有PVCシートの溶血性能

個別値 平均値

Genapol0.01phr1 0.001 0.5

2 0.002 1.0

Genapol0.1phr1 0.001 0.5

2 0.003 1.6

Genapol1 phr1 0.002 1.0

2 0.002 1.0

Genapol10phr1 0.189 97.9

2 0.196 101.6

陽性対照液の吸光度(平均値) 0.193

陰性対照液上清の吸光度(平均値) 0.000

インキュベーション時間:4時間

物質 n 反応液の吸光度溶血率(%)

溶血性の程度

1.1

1.0

99.8

非溶血性

非溶血性

非溶血性

溶血性

0.8

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分担研究報告書

平成24年度厚生科学研究費補助金(地球規模保健課題推進)研究事業

国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)における医療機器の各種国際規格の

策定に関する研究(H23-地球規模-指定-003)

分担研究課題名

医療波形情報のISO化活動に関する支援

研究分担者 横井英人 香川大学医学部附属病院 医療情報部

研究協力者 竹花一哉 関西医科大学 内科学第二講座

野間貴久 香川大学医学部 循環器・腎臓・脳卒中内科

中山雅晴 東北大学病院 循環器内科

平井正明 MFER委員会

研究要旨

A. 研究目的 本研究の目的は、本邦から医療機器に

関する国際規格の提案が多く生まれるよ

うにするための方策を検討することであ

る。この目的に基づいて、分担研究者は

その専門領域である医療機器分野におけ

る情報の標準規格について特に薬事的な

観点を中心に検討を行った。その結果、

2007年にISO/TSとして発行された日本

発の医療波形情報の国際規格であるMe-

dical waveform Format Encoding Rules

(MFER)に注目し、本規格に関するその後

のISO活動に対しての必要と思われる支

援について行った。

今回、我々がその有用性の検証と共に、

ISOにおけるIS化をサポートしようとし

ている、医療波形情報の標準規格Medical

waveform Format Encoding Rules (MFER)

は、日本が提案した医療機器に関するISO

規格(TS)であるが、国際的な普及は十分

でない。

波形情報の標準化は、特に心電図に於

いて、QT延長症候群の検討に大きな効果

があると考えられる。QT延長症候群の検

討に際しての心電図解析には繊細な作業

が必要とされる。微細な解析方法の違い

が結果に大きな影響を及ぼす可能性があ

るため、再現性のある作業工程の実現が

医療機器の標準規格の中で、特に医療情報に関して日本から提案されているものは必ずしも

多くない。医療波形に関する規格であるMFERは、2007年に発行されたISO規格(TS)で、日本

から提案されて規格化されたものであるが、ISとしての審議に際して、その臨床的有用性に

ついての研究文献が少ないとの指摘を受けている。これを受けて、本研究班では同規格を用い

た臨床研究を立案し、実施した。症例数が十分でないなどで、有意な知見とは言い切れないが、

12誘導心電図から本規格を通して波形処理し、導出した18誘導心電図が、後下壁の心筋虚血

の診断の一助になる可能性が示唆された。

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必要である。前述したMFERを用いれば、

現在はメーカー毎に違う形式のデータを

統一的に処理することが可能になり、繊

細な波形分析を必要に応じて再現性に優

れた形で処理することが容易となる。こ

のような解析作業の定型化と簡便化によ

り、治験での心電図解析などでこれまで

同一形式の心電計を各診療機関に配布す

るなどの出費を余儀なくされていた状況

を改善できる可能性がある。

上記のように、波形の標準化は重要な

意義を持つが、これまで提示された規格

は、一長一短があり十分に普及しなかっ

た。そこで新たな波形規格についての検

討の場としてISO/TC215/WG7が設定され、

その結果、日本から提案されたMFERが

ISO/TSとして2007年9月18日にISO/TS

11073-92001:2007として(Part1の部分

が)発行された。現在、同規格は、ISと

して投票を受ける工程に乗っている他、

その他の付帯情報に関する規格の審議を

受けている。

・Part 1 IS22077-1 Base standard (上

記のTSについての簡単なリバイス予

定)

・Part 2 TS22077-2 12ECG付帯情報 (現

在、英文案が回覧中)

・Part 3 TS22077-3 Long term ECG付帯

情報 (英文案が回覧中)

(Part 3の内容)

脳波、ストレスECG、SCP-ECG、スト

リーミング、SEP、ABRに関する細則を

設定。

MFERに関するこれまでの審議の中で、

臨床上の有用性を論じた文献が少ないこ

とを指摘されていたことを受け、本研究

班では、有用性を示す研究を行うことで、

本邦発の国際規格を後押しし、同時にそ

の過程で必要になる要件を検討すること

とした。

B. 研究方法 1. 平成23年度に、MFERを用いて標準的

に出力された心電図波形から18誘導心電

図の波形情報を擬似的に生成し、その有

用性を臨床的に評価するという研究の骨

子を決定した。

18誘導心電図とは、通常の12誘導心電

図では主に左の前側胸部にて6ヶ所計測

するのみの単極誘導波形に、右の前胸部

や左の背部に単極誘導を追加して行う心

電図である。

今回我々は、12誘導心電図の波形情報

から、18誘導心電図に相当する波形情報

を擬似的に生成する技術の開発を受け、3

大学病院(4施設)に於いて心電図のMFER

出力を行い、出力された波形情報につい

て、18誘導心電図を擬似的に生成し、そ

の波形を評価する研究デザインを作成、

実施した。

(1)関西医科大学病院(2施設)

MFERを用いて再構築した18誘導心電図

を用いた後壁梗塞の診断能:附属病院2

施設の後ろ向き検討

研究協力:関西医科大学

内科学第二講座

医療情報部

【背景】 12誘導心電図を用いた後壁梗

塞を診断は、V1誘導のR/S比を用いて行

うものの、軸偏位を有する症例も多く特

異性に乏しい。12誘導心電図をMFER保存

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することによりretrospectiveに再構築

した18誘導心電図より、左側背部誘導

(V7-9誘導)の評価が可能である。

【目的】 安静心筋SPECT検査により診

断した後壁梗塞の左側背部誘導による診

断能を評価すること

【方法】 当院で加療を行った心筋梗塞

患者のうち、過去3年間に安静心筋血流

SPECT検査を行った約150例について、

①サーバにMFER保存されている安静12

誘導心電図からretrospectiveに18誘

導心電図を再構築し、SPECT上の後壁心

筋障害の診断能を評価する。

②SPECTによる心筋障害の程度と範囲を

定量し、診断能に及ぼす影響を評価す

る。

③本学附属滝井病院での過去2年間のデ

ータ(該当症例100-150症例程度)を

附属枚方病院に転送し再構築を行い、

同様に後壁梗塞の評価を行い、MFERデ

ータを転送しても再構築が可能である

ことを実証する。

(補足説明)

心内膜下梗塞の場合には、冠動脈造影、

UCG検査では残存心筋viabilityの評価

ができないことから正確な評価はできな

い。そこで、今回は核医学検査を用いて

心筋viabilityの定量を行い、診断能を

評価することとした。

本学の附属3病院のうち、心臓救急を

行い、核医学検査を行っている滝井病

院・枚方病院のうち、滝井病院でMFER保

存された心電図を研究協力者の所属する

枚方病院に転送し、18誘導の再構築を枚

方病院内で行い、同様の評価を行っても2

病院間の診断能比較することにより、遠

隔診断が可能であることを実証できる。

(2)香川大学医学部附属病院

虚血・梗塞部位の診断に対するMFERを用

いて再構築した18誘導心電図の有用性:

当院における後ろ向き検討

研究協力:香川大学医学部附属病院

循環器・腎臓・脳卒中内科

医療情報部

【背景】12誘導心電図を用いた後壁梗

塞・虚血の診断はV1誘導のR/S比等を用

いて行うものの、軸偏位を有する症例も

多く特異性に乏しい。12誘導心電図を

MFER保存することによりretrospective

に再構築した18誘導心電図より、左側背

部誘導(V7-9誘導)と右側胸部誘導

(V3R-5R誘導)での評価が可能である。

【目的】当院で運動心筋血流SPECT検査

により診断した虚血性心疾患の各部位に

おける導出左側背部誘導、導出右側胸部

誘導による特徴的な所見を検討すること。

【方法】当院で加療を行った心筋梗塞・

虚血患者のうち、過去5年間に運動負荷

心筋血流SPECT検査を行った約166例に

ついて

①後壁梗塞群、後壁虚血群、後下壁梗塞

群、後下壁虚血群、(下壁梗塞群、下壁

虚血群、前壁梗塞群、前壁虚血群)の各

群洞調律の症例について検討する。

②サーバにMFER保存されている安静12

誘導心電図からretrospectiveに18誘

導心電図を再構築し、SPECT上の心筋障

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害の診断と比較し評価する。

(3)東北大学病院

冠動脈攣縮誘発試験による18誘導心電図

の有用性に関する研究

研究協力:東北大学病院

循環器内科

【背景】冠攣縮性狭心症は安静時胸痛を

主症状とするが、時に突然死も見られ、

その診断と加療が重要な疾患である。ま

た、欧米人に比べ日本人でその疾病率が

高いことが知られている。診断は主に心

臓カテーテル検査を必要とし、アセチル

コリンまたはエルゴノビンの投与により

冠動脈の閉塞や高度狭窄が誘発されるこ

と、および胸痛か心電図変化かの少なく

とも一方が認められることではじめて確

定する。このとき、一般的に回旋枝病変

は12誘導心電図上変化を認めにくいこと

に注意が必要となる。そこで本研究では、

MFER標準化心電図により18誘導を抽出、

回旋枝領域である後壁や側壁のST変化の

感度を上げ、冠攣縮誘発試験における診

断的有用性を評価する。

【方法】

冠攣縮性狭心症と診断するためにアセチ

ルコリンもしくはエルゴノビン負荷投与

を伴う冠動脈造影を施行した連続50症例

に対し、通常の12誘導心電図とMFER標

準化心電図により抽出した18誘導心電図

とを用いた場合の心電図変化の有無を比

較する。

(倫理面への配慮)

これら3つの研究は、レトロスペクテ

ィブ研究若しくは、通常の検査・治療の

過程で記録される情報の再解析により発

生する情報による比較研究であり、直接

患者に介入をする研究ではない。各施設

はそれぞれの倫理委員会の承認を受ける

か倫理指針に準拠することとする。個人

情報は各施設内で匿名化した上で研究し、

外部へはその集計・分析結果や匿名化し

た医療波形情報以外を公開することをし

ない。

C. 研究結果 3つのプロトコルはどれもレトロスペ

クティブ若しくは通常の検査・治療の過

程で記録される情報の再解析により発生

する情報による比較研究であった。

香川大学と東北大学ではMFERでのデー

タ処理環境の構築を行った。

香川大学では、中央検査部門にある生

理検査室の心電計と、主に循環器疾患領

域の病棟に配備されている心電計が、そ

れぞれ別のメーカーの製品であったため、

これまで共通的な環境で両者のデータを

参照比較することができなかった。今般、

病棟側にMFER変換ツールを装備した

各施設の分析結果

(1)関西医科大学病院

同大学の二病院の心電図波形情報は

MFERデータとして相互運用が可能であり、

臨床的な可用性が確保されている。また

MFER形式での統一運用により、標準12

誘導から18誘導への変換は139症例、無

事終了した。現在はその効果について論

文化をしているところである。

(2)香川大学医学部附属病院

【結果】今回解析したのは洞調律の後壁

虚血群(5名)、後壁梗塞群(1名)、後下壁

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虚血群(6名)、後下壁梗塞群(8名)の4群

についてである(表1)。年齢は69±11(平

均±標準偏差)で、男性18名、女性2名

の20名について検討した。後壁虚血群は

標準12誘導心電図での診断はできなかっ

たが、1例で導出18誘導心電図固有の誘

導である導出左側背部誘導(syn-V7-9)で

のみST低下を認めた。また同誘導では3

例で陰性または平坦T波異常を認めた。

後壁梗塞群は標準12誘導心電図では下壁

梗塞を疑う所見のみであったが、胸部誘

導から導出左側背部誘導(V5,V6,syn-V7,

syn-V8,syn-V9)で陰性T波を認めた。後

下壁虚血は標準12誘導心電図では診断で

きなかったが、導出左側背部誘導で異常Q

波、ST低下、平坦T波を各1例ずつ認め

た。後下壁梗塞は標準12誘導心電図で下

壁梗塞を疑う症例が5例、後下癖梗塞を

疑う症例が1例あった。いずれの症例で

も導出左側背部誘導で異常Q波と陰性T

波を認め、また同誘導でST低下を認めた

症例は全て12誘導心電図では所見を認め

なかった。

【考察】後壁に関連する心筋障害は、標

準12誘導心電図に反映されないことが多

いが、18誘導心電図の左側背部誘導は後

壁の心筋障害部分に近い部位の電極と考

えることができる。しかし12誘導心電図

で後壁、後下壁の心筋障害が示唆される

所見がある場合でも、導出18誘導心電図

固有の誘導では必ずしも変化を認めない

症例もあり、感度の高い誘導とは言えな

い印象である。一方で標準12誘導心電図

では所見を認めない症例でも18誘導心電

図で有意なST変化や異常Q波を呈した症

例もあることより、一概に有用ではない

誘導であるとは言い切れない。今後更に

心電図上の他の項目や他の部位の心筋障

害でも、標準12誘導では反映しきれない

部位の心筋障害と導出18誘導心電図の関

係について検討する予定である。

(3)東北大学病院

【結果】対象期間は平成24年4月19日

から9月10日。男性27名、女性23名。

年齢65 + 11 (平均 + 標準偏差)。陽性

37例(74%)。術前および術中において認

められた左脚ブロック1例、右脚ブロッ

ク1例、心室不整脈頻発1例、発作性上

室性頻拍の4例を除く症例で12誘導と18

誘導とを比較可能であった。陽性37例中

4例において、18誘導のうちの12誘導に

ない6誘導(V3R, V4R, V5R, V7, V8, V9)

にのみ、より大きな変化を示した(V3R,

4RでのST上昇:2例、V7,8,9でのST低

下:2例)。一方、陰性13例中3例にお

いて18誘導特異的な誘導で心電図変化が

確認できた(V3R,4RでのST上昇:1例、

V7,8でのST低下:2例)。また、陽性例

にも関わらず、うち12例は、18誘導に特

異的な6誘導において有意な心電図変化

が認められなかった。

【考察】12誘導と比較した18誘導による

利点は、その特異的な誘導であるV3,4R

という右室側、もしくは前壁を反映した

情報、V7-9という側壁から後壁を反映し

た情報に由来するものと推測できる。12

誘導を用いた結果で陽性例であるにもか

かわらず、18誘導特異的誘導で変化を認

めない症例が少なからず存在した結果か

らは、必ずしも感度の高い誘導とは言え

ないようである。しかしながら、一方で、

陰性例で有意なST変化を示した症例も存

在することから、12誘導ではカバーでき

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ない領域の情報を取得し、アセチルコリ

ン負荷試験における検査の偽陰性率を減

少させる効果を示唆するものと期待でき

た。今後は、誘発された冠攣縮の部位と

心電図変化との関係を解析し、また症例

数を増やし統計学的解析を行う予定であ

る。

D. 考察 (1)臨床データについて

複数の大学で、後壁・下壁の虚血等に

於いて臨床的な有用性が得られる可能性

についての示唆的な知見を得るに至った。

症例数が少ないことから統計的な裏付け

は得られていないが、今後、症例数を追

加することで確たる結果が出ることが期

待される。

(2)医療情報分野における標準規格の重

要性

ソフトウェア分野の規格は、一般的な

画像を例に取ると、静止画・動画ともに、

表現規格は様々あるものの、それらの多

くは互いのコンバートが比較的容易に行

える。このことが情報の標準化を阻害し

ている一つの要因であると思われる。

しかし、通常の波形情報は、ノイズを

除去するためのフィルターなどの処理が

なされており、解析結果に重大な違いを

生じることがあり得る。そのためには、

処理前の元波形情報をMFER出力し、これ

に対して統一して、ノイズ除去処理等を

行う必要がある。今回、香川大学では2

社の心電計のデータを抽出したが、一方

の心電計は病棟で緊急時に使うのみであ

ったため、その比率には大きな隔たりが

あり、残念ながら元波形情報からの統一

的な情報処理のメリットを明らかにする

ことができなかった。しかし今後はその

ような解析をすることでMFERに限らない

標準規格の有用性を議論できると考えら

れた。

(3)治験における心電計配布の不合理

近年、血液や尿などの検体検査は精度

管理の容易さから、外注業者による中央

検査が一般的となっているが、放射線検

査や心電図などの患者身体への直接的な

検査は通常、各医療機関で実施される。

心電計は機器の精度や波形処理能力が計

測結果に直接関与してくるため、治験毎

に心電計を貸与して計測を行う実施体制

をとることが多い。

このことは、大学病院など、複数の治験

が平行して行われている施設では、複数

の心電計がプロトコル毎に運び込まれ、

その業務圧迫は看過できない物となって

いる。そのような実施体制の場合、同じ

型の心電計が運び込まれても、依頼者か

ら提供された方を使用しなくてはならな

いなど、現実的に合理性が低い運用も発

生する。

前述したように、MFERで規定された出力

方式で、波形処理をする前の元波形情報

を収集することができれば、統一的な解

析結果が担保されるため、残る問題は各

心電計の精度管理のみとなる。ここが一

定の基準をクリアすることで、運用可能

となれば、相当に治験のコストを削減で

きる。

香川大学瀬戸内圏研究センターでは、

MFERを用いた臨床試験対応のためのWeb

でのデータ収集システム及び、その際に

必要となるMFERデータからの症例の個人

情報削除用ツールを開発中である。(図1)

前述した、治験でのMFER活用でも必要な

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インフラ及びツールであり、近い将来、

何らかの臨床研究や臨床試験で同システ

ムが使用されることとなるであろう。

(4)MFERに関する研究期間内の動向

本研究期間におけるMFERに関する動向

を下記に記す。MFER関連規格は概ね想定

どおりの進捗の元、ISOにおける審議が進

んでいると思われる。

・2012年3月 ISO/TC215 バンクーバー

会議

TS規格を改定しIS化に向けた作業の

承認を受けた。新名称「ISO/IS 22077-1

Health informatics - Medical waveform

format -Part 1:Encoding rules」、「22077-

2.標準12誘導心電図規格」「22077-3.長

時間心電図規格」をNWIPとして作業を開

始する承認を受ける。

・2012年6月:2規格案のTS化に向けた

作業を開始

「22077-2.標準12誘導心電図規格」及び

「22077-3.長時間心電図規格」のTS化に

向けた原案作成作業を行う。ePHDS委員会

WG4-1にて検討(1回目6/15、2回目7/13、

3回目8/30、集中作業9/7)

・2012年9月 ISO/TC215ウィーン会議

IS化の作業状態を確認し、作業を継続

することが確認された。「22077-2.標準12

誘導心電図規格」及び「22077-3 長時間

心電図規格」の作業状況を報告し、Form 4

(審査提案書)とドラフト案とともに事

務局へ提出した。

・2012年11月

第32回医療情報学連合大会(第13回

日本医療情報学会学術大会)にて、MFER

を利用した以下の学術発表が行われた。

①「標準規格MFERの普及促進を目的とし

た長時間心電図MFERビューワの開発

(第一報)」藤瀬 大助(会津大学)

②「MFER準拠心電図データベースからの

QT間隔延長傾向の早期検出」山口 泉

(東京大学大学院医学系研究科)

・2013年2月

「ISO/DIS 22077-1 Health informatics -

Medical waveform format - Part 1:Enco-

ding rules」が受け付けられてDIS投票

ステージとなった。4月26日投票開始、

7月27日投票締切の予定。

E. 結論 残念ながら、本研究班における研究が

直接的にISOの審議過程に影響を及ぼす

結果を得ることはできなかった。しかし、

標準化技術を用いることを前提とした臨

床研究デザインの議論を行い、そのプロ

トタイプを作れたことには意義があった

と考える。

また、本プロジェクトにより、同規格

に関するステークホルダーと彼らの関係

性が明確となり、連携する基盤ができつ

つあることも効果の一つと言えるであろ

う。

F. 健康危険情報 特になし。

G. 研究発表 特になし。

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参考資料

特になし。

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症例数 年齢

標準12誘導心電図 導出18誘導心電図

導出左側背部誘導

異常 ST ST T波 異常 ST ST T波

Q波 上昇 低下 異常 Q波 上昇 低下 異常

後壁虚血 5症例 65±14 2症例 なし なし 3症例 なし なし 1症例 3症例

後壁梗塞 1症例 63 全症例 なし なし 全症例 全症例 なし なし 全症例

後下壁6症例 68±9 1症例 なし なし 全症例 1症例 なし 1症例 1症例

虚血

後下壁8症例 73±7 4症例 なし なし 全症例 3症例 なし 3症例 6症例

梗塞

表1 香川大学 中間結果

図1 Web調査票及びMFERデータ収集

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Ⅲ.政策的提言

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平成 23,24 年度厚生科学研究費補助金(地球規模保健課題推進)研究事業

国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)における医療機器の各種国際規格の

策定に関する研究(H23-地球規模-指定-003)

医療機器規格・基準の国際標準化戦略に係る政策的提言

研究代表者

平成 23 年度 小野 哲章 滋慶医療科学大学院大学医療管理学研究科医療安全管理専攻

平成 24 年度 蓜島 由二 国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部

研究分担者

平成 23 年度 蓜島 由二 国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部

松岡 厚子 国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部

横井 英人 香川大学医学部附属病院 医療情報部

平成 24 年度 小野 哲章 滋慶医療科学大学院大学医療管理学研究科医療安全管理専攻

松岡 厚子 国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部

横井 英人 香川大学医学部附属病院 医療情報部

研究協力者

池野谷崇臣 日本医療機器学会

犬飼香織 テルモ株式会社

岩崎清隆 早稲田大学先端生命医科学

センター

岩橋四郎 日本光学工業協会

浦富恵輔 日本医療器材工業会

大熊一夫 日本歯科大学新潟生命歯学部歯科

理工学講座

小倉英夫 日本歯科大学新潟生命歯学部歯科

理工学講座

加藤英夫 日本臨床検査標準協議会

香取輝美 食品薬品安全センター秦野研究所

鹿糠実香 テルモ株式会社

神谷正己 日本画像医療システム工業会

合田忠弘 九州大学大学院総合理工学研究院

融合創造理工学部門 電気理工学講

駒木秀明 日本ファインセラミックス協会

斎藤健一 日本ゴム工業会コンドーム協議会

坂口圭介 テルモ株式会社

新藤智子 財団法人 食品薬品安全センター

秦野研究所

鈴木数広 日本医療器材工業会

曽根原誠 電子情報技術産業協会

竹下道孝 日本ゴム工業会

竹ノ内美香 テルモ株式会社

竹花一哉 関西医科大学内科学第二講座

内藤正章 日本光電工業株式会社

内藤正義 日本医療機器産業連合会

中山雅晴 東北大学病院 循環器内科

野田 穆 日本歯科商工協会

野間貴久 香川大学医学部循環器・腎臓・

脳卒中内科

橋本 隆 日本歯科材料器械研究協議会

平井正明 日本光電工業株式会社

廣瀬志弘 産業技術総合研究所 ヒューマン

ライフテクノロジー研究部門

福井千恵 国立医薬品食品衛生研究所

三村智憲 株式会社日立ハイテクノロジース

宮田文隆 日本歯科器械工業協同組合

村松寛昭 日本歯科材料工業協同組合

室田知美 テルモ株式会社

山影康次 食品薬品安全センター秦野研究所

山口典久 株式会社ニデック

山下克巳 日本医療機器工業会

山本佳子 日本歯科材料器械研究協議会

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医療機器規格・基準の国際標準化戦略に係る政策的提言

1.はじめに

近年、国際市場の拡大に伴い、医療機器に関する各国の法規制を整合化する動きが活発化して

いる。GHTF ではグローバルな整合作業が進められており、その他、ISO や IEC では医療機器の性

能や試験法等、有効性と安全性に関する各種規格・基準の国際整合化が行われている。医療機器

については、品質維持の観点から国内法規への適合が求められると共に、主に通商上の観点から

国際規格への適合も要求される。すなわち、我が国の優れた製品を世界的に流通させるためには、

日本の国内法規における要求事項を反映した国際規格を作成し、運用することが最適と言える。

また、日本は医療機器開発において先進的な技術力を持つことから、国際的な優位性を確立する

ことが可能な状況にある。例えば、製品や材料の性能評価等に関する技術については、差別化に

よる高付加価値化を狙い、新たな市場を開拓していくことが重要である。このため、研究開発段

階から標準化を視野に入れたプロジェクトを推進すると共に、国際標準策定に必要なデータ取得、

ラウンドロビンテスト等を産業界と一体となり推進することが必要である。

このような背景の中、現在までに国内の医療機器の評価手法、必要な基準の策定、国際的な整

合等に関する研究や活動は行われて来ているが、日本発の良質な医療機器を障壁なく国際的に進

出させる環境を整備する戦略的な研究は厚生労働省において実施されていない。本研究では、医

療機器関係業界と連携を図りつつ、国際的に提案できる基準の選別や原案策定過程への提案を含

めて、国家的にサポートする体制の構築について検討し、国際標準化に関する戦略的な考え方や

提案可能な具体的な基準等について取りまとめた。本研究において得られた知見に基づき、厚生

労働省、国立医薬品食品衛生研究所、医薬品医療機器総合機構、医療機器開発に携わる研究者、

学会及び産業界等として国際標準化を推進するために必要と思われる政策を以下に提言する。

2.国際標準化に係る基本戦略

国際標準化については、資料 1 及び資料 2 に示したとおり、経済産業省において様々な取組が

行われている。経済産業省が実施している施策の概要は以下のとおりであり、厚生労働省におい

て医療機器分野の国際標準化を推進するためには、経済産業省との連携を更に強化することが基

本的戦略になると思われる。

・国際標準化への対応状況調査

・戦略的な国際標準化の推進

・スマートグリッド分野における国際標準化(国際標準化の推進方策事例)

・アジア諸国との連携

・普及啓発・人材育成に係る取組

・現行の国際標準提案制度の課題調査

各項目の詳細説明は資料 1 及び資料 2 に委ねるが、国際標準化を推進する上で最も重要と思わ

れる基本戦略を以下に概説する。

(1)事業戦略と国際標準化

第一に認識すべき事項は、近年、世界経済のグローバル化が急速に進み、経済活動を妨げる国

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境の壁が低くなり市場が世界単一化して行く中で、製品の性能が優秀でも国際標準から乖離した

仕様では市場に受け入れられなくなってきていることである。このことは世界貿易機構(WTO)が、

貿易障害協定(TBT 協定)で加盟国に対して非関税障壁をなくす目的で国際規格に準拠した製品

造りを要求していることでも明らかである。この観点より、グローバル化した世界市場において

は「規格を制するものが市場を制する」といっても過言ではない。しかし、日本企業の国際標準

化に関する認識は高いとは言えない。この原因は、従来の日本の物作りの基本方針である「良い

物を適正な価格で市場に送り出し、市場を制する」事で製品を標準化するというデファクト標準

重視の姿勢が世界の動向に合わなくなってきていると言える。米国でも従来のデファクト標準重

視の方針からデジュール標準重視に大きく舵を切っていると思われる。

(2)協調領域と協争領域の線引き

標準化は製品の差別化を困難にし、コスト競争に陥る危険性を持っている。従って、標準化で

市場を大きくしながら収益を確保するためには、事業戦略を明確にした上で、作りたい標準を自

ら提案し、不都合な標準は作らせないという積極的な取り組みが必要である。また、標準化とは、

製品仕様の決定にあたって、何を競争領域とし、何処を協調領域とするかの線引きであるとも言

える。このため、グローバル市場においては線引きでイニシアティブを取ったものが市場競争で

優位に立つ可能性を持つ。しかし、線引きを誤れば、技術を固定化してその後の技術開発の妨げ

になるし、さらには市場に受け入れられない標準になる。標準化とビジネスは密接に結び付いて

おり、競争領域においては如何にして市場競争を勝ち抜くかという開発戦略と直結している。ま

た、開発戦略の立案に当たっても、技術開発を優先するのか、商品開発を優先するのかなどを市

場のフェーズ(揺籃期、成長時、成熟期)や市場ニーズを見極める必要があり、事業戦略、開発

戦略及び標準化戦略は一体となって進めるべきものである。

(3)国際標準提案制度の在り方

国際標準化の推進にあたって基本的で且つ重要な事項は標準の階層における国家標準の有無で

あるが、同種の企業が多数存在する日本においては国家標準の形成がコンセンサス型となるため

に時間がかかりすぎる現状がある。この対応策として経済産業省では、従来制度に加えて国内コ

ンセンサス形成に時間をかけず、他国に出遅れない新たな国際標準提案プロセスとして「トップ

スタンダード制度」を導入した。この制度化では、国際標準に積極的に取り組む企業は必ずしも

国内調整を経由せずに JISC の審査を経るだけで特定の技術等について直接国際標準化の提案を

行うほか、横断的分野における提案で適切な検討の場がない場合には新しい TC/SC/PC の設置を提

案できる。本制度の導入により、国際標準提案までの時間の短縮できると共に、先進的且つ競争

力を持つ内容がそのまま国際標準化提案として提案可能となり、国際標準化の戦略的活用の推進

できるものと思われる。

(4)人材育成・普及啓発に係る取組

日本においては国際標準化の重要性に対する認識が低く、標準化を旧来の公共的意義として認

識している傾向が強い。また、標準化を知的財産権の一環としての競争力強化ツールとして利用

する認識も低いことから、諸外国と対等に渡り合うためには企業経営者等、組織のトップの意識

改革が必要である。2005 年以降、経済産業省では「事業戦略と標準化シンポジウム」や「標準化

と品質管理全国大会・地区大会」等を全国各地で開催し、国際標準化の重要性に係る啓発活動を

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行っている。また、経済産業省は国際標準化活動に積極的に貢献すると共に顕著な功績を治めた

個人又は組織を表彰するシステムを構築しており、工業標準化事業表彰(内閣総理大臣表彰)及

び国際標準化貢献者及び奨励者表彰(産業技術環境局長表彰)が平成 19 年度から、工業標準化事

業表彰(経済産業大臣表彰)が昭和 28 年度から実施されている。国際標準化専門家の育成につい

ては、国際標準化入門研修、国際標準作成件研修、国際標準化リーダーシップ研修、団体・国際

標準作成研修、団体・国際標準リーダーシップ研修及び企業・団体への訪問研修等が実施されて

いる。その他、次世代を担う若者に対する標準化教育を推進するため、2006 年度から大学・専門

学校のほか、小学校、中学校、高等学校を対象とした教育活動を行っている。

(5)我が国における国際標準の基本戦略

日本の国際標準化に関する基本的アプローチとしては、「我が国企業は産業力の発揮に向け、事

業戦略と国際標準化を一体的に取り組む」体制を構築し、国の策定した下記の 4 項目の「戦略的

国際標準化に向けての 4 つの挑戦」を着実に実行し、技術で勝ってビジネスで負けない様な日本

の再生への努力を実施する事にある。

・戦略重点分野の特定

分野を特定しない → スマートグリッド等重点分野を戦略的に特定

・システム思考の導入

個々の要素技術の標準化 → 全体システムの視点に立った標準化

・標準化を経営の柱とする

標準獲得の目的化 → 弱み強み分析に基づくオープン・クローズ戦略

・認識力を活用した新市場創出

標準ありきの認証 → 標準が存在しない新分野で認証力を通じた新市場創出

3.医療機器分野における国際標準化に必要な諸因子

平成 23 年度に実施した ISO/IEC 国内審議団体へのアンケート調査の結果から、個別製品の国際

標準化を国家事業として推進するためには、国際標準化に係る方向性、戦略及び産官学の役割分

担等を明確に示すことが必要であり、製品開発分野、国内環境分野、国際活動分野及び公的予算

分野において、表 1 に掲げた施策を実行することが現時点で国際標準化活動に携わる産官学関係

者の共通した意見であることが明らかになった。一方、ISO/TC194 等が担当する試験法に関する

国際規格は多くの医療機器を対象とした分野横断的な規格である。この場合は提案国に拘わらず、

日本の要望を盛り込んだ質の高い規格を作成することが重要であり、日本発に拘る必要はないと

思われる。この基本概念は試験法の国際規格に限らず、個別製品の規格についても同様であると

言える。

国際標準化は我が国の製品や技術を障壁なく海外へ輸出する上で企業戦略として有益であるが、

標準化活動は企業内で評価の対象とならない実態があるため、その重要性を国として啓蒙するこ

とが必須である。世界的にデファクト標準からデジュール標準に移行している状況下、国際標準

化に対する企業経営陣の認識を高めることにより、標準化活動が正当に評価される環境が整備さ

れ、企業内における人材育成や資金的な問題も改善されると思われる。

従来から欧州諸国は ISO 活動に注力していたが、最近では米国、中国、韓国等の関連諸国も行

政担当官を含めて積極的に参画しているため、我が国の規制当局担当者も国家戦略として恒常的

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に国際会議に出席することが望まれる。

米国・FDA/ANSI、ドイツ・DIN、フランス・AFNOR、英国・BSI 等、主要国は国内/国際規格に関

与する国家機関を持っていると共に、基礎データの収集や保持も行っていると思われる。日本に

は JISC/JSA があるが、諸外国の関連機関と比較して実質的に対等の機能を果たしているか定かで

はないため、医療機器分野の国際標準化を戦略的に進める組織として国立医薬品食品研究所又は

その他の規制担当当局に国際標準化担当部署を設置する必要があると思われる。国際標準化担当

部署においては、国際幹事及びコンビーナ等を積極的に引き受けると共に、他国の規格等の情報

収集及び整理整頓・解析、事故・ヒヤリハット事例の情報収集、医療行政への標準化の反映やガ

イドラインへの標準化のフィードバック、審議団体への財政的支援等を行うことが望まれる。

国際標準化を成功させるためには、国際会議に長期に渡り積極的に参加することが大前提とな

るが、表 1 に掲げた各項目中、1)科学的根拠に基づいた質の高い規格提案と丁寧な説明、2)事前

説明、意見交換、協力依頼、良好な信頼関係の構築等、ロビー活動も含めた関係諸国との連携、

3)人材育成が最も基本的且つ重要な因子となる。国際的シェアの高い製品については標準化作業

の主導権を握ることが容易となるため、医療イノベーション 5 か年戦略の一環として、公的予算

処置を含めて高品質・高機能製品の開発を促進することも重要である。表 1 に掲げたその他の項

目は国際標準化を成功させる上で補助的な役割を担う。各項目の現状と課題並びに対策・提言等

の具体例については資料 3を参照して頂きたい。また、アンケート調査結果の生データは平成 23

年度総括・分担研究報告書に掲載されている。

4. 国際標準として提案した又は提案可能な日本独自の規格等

(1)日本医療器材工業会

日本医療器材工業会(医器工)が現在までに作成した JIS リストを表 2 に示した。医器工が作

成した日本独自の JIS は品目毎に作成しているため、品目が異なっても同じ内容の規格が多い。

一方、諸外国(欧米)は医療機器の構成部位毎に関係する ISO 規格を引用して製品の仕様や評価

を行っているため、製品全体としての規格を必要としていない。しかし、針、カテーテル、チュ

ーブ等は製品の目的や仕様をまとめた方が理解し易いため、要求事項を整理して 1 つの規格にし

た方が良いと思われる。

国際規格の作成にあたっては、国際的シェアの高い製品を選択することが一手段となる。内視

鏡はオリンパスが大きなシェアを占めており、日本発の規格を国際標準化し易い環境にある。血

液透析器の国際規格は存在するが、性能に関する規格はない。現在、血液透析器は機能クラスに

応じて 5 段階に分類されており、クラス毎に適用と保険点数が異なるため、性能規格を作成する

ことは新しい概念となる。

(2) 日本歯科商工協会

1)歯科の国際標準化活動の経緯

我が国の歯科器材の歴史は、先ず外国製品の輸入から始まり、国産化は第二次世界大戦前後か

らである。そのため、先ず輸入品に合わせて規格が制定され、国産化に伴って順次改正・制定さ

れた。後発の国産歯科製品を輸出するためには国際標準への適合が必要となったため、歯科業界

は、ISO 規格と 1962 年に設立された ISO/TC106(歯科)の情報把握を目的として、1966 年に開催

された TC106 国際会議に初めてオブザーバとして参加し、1980 年に投票権のある Pメンバーとな

った。1983 年、1995 年及び 2009 年には、我が国において国際会議を開催した。現在、2 つの分

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科委員会:SC7(オーラル製品)及び SC9(歯科 CAD/CAM システム)の幹事国・国際幹事を日本が

務めている。

2)歯科 ISO 規格と JIS の現況

ISO 規格は、適用範囲の観点からは製品規格、ホリゾンタル規格及び品質システム規格に大別

される。ISO/TC106(歯科)において協議される規格は、ほとんどが個別製品を対象とする製品規格

であり、全ての製品に共通して適用される規格(通則)は数少ない。

日本歯科商工協会が現在までに作成した JIS、及び対応する ISO規格のリストを表 3に示した。

3) 製品規格について

日本からの提案による歯科 ISO 規格とその状況は次のとおり。

① 歯科材料

・制定済:ホルダ一体形デンタルフロス、JIS なし、SC7/WG6: 座長/日本

提案理由:JIS 及び ISO 規格ともに存在しなかった。日本製品が高品質である。

・制定済:義歯床安定用糊材(JIS T 6525)、SC7/WG9: 座長/日本

提案理由:ISO 規格がなかった。日本品優勢化のため、JIS に基づき ISO 規格化した。

・作業中:マグネティックアタッチメント、JIS 予定、SC2/WG22: 座長/日本

提案理由:JIS 及び ISO 規格ともに存在しない。日本製品が市場で先行している。

・作業中:歯科用レジンセメント(JIS T 6611)、SC1/WG15:座長/日本

提案理由:接着レジン技術は日本が開発し、約 30 年経過。日本製品が高品質である。

② 歯科器械

・提案協議中:根管長測定器(JIS T 5751)、SC4:幹事国/ドイツ

提案理由:JIS があり、ISO 規格が存在しない。日本製品が高品質である。

・提案協議中:歯科用多目的超音波治療器(JIS T 5750)、 SC4:幹事国ドイツ

提案理由:JIS があり、ISO 規格が存在しない。日本製品が高品質である。

4) ホリゾンタル規格について

① 医療機器の安全性に関しては通則として、医療材料全般が対象の ISO 10993-1(ISO/TC194

作成)、及び歯科材料が対象の ISO 7405(ISO/TC106 作成)、並びに医療用電気機器全般が対

象の IEC 60601-1 が既に制定され、歯科分野では個別製品の規格にこれらの通則を引用して

いることから、安全性に関する通則は新たに制定する必要はない。

② なお、我が国では、認証基準等において引用される「歯科材料の製造販売承認申請等に必要

な物理的・化学的及び生物学的試験の基本的考え方について(平成 19 年 8 月 31 日付け薬食

機発第 0831002 号)」によって、個別製品ごとに詳細な試験項目のガイドラインを示してい

るが、この詳細さに相当する ISO 規格等は存在しない。詳細ガイドラインであるため、提案

予定はない。

(3)発信すべき医療機器・技術・手法の新規提案

本事業では、国際標準化作業を円滑に進めるための因子を明らかにすることを目的として、医

療情報分野、試験法分野及び歯科分野への規格提案に関する 3 つのケーススタディを実施した。

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各ケーススタディにおいて得られた成果や厚生労働省への提言の概要は以下のとおりである。な

お、各ケーススタディの詳細は資料 4-6 を参照して頂きたい。

A)医療情報分野:医療波形情報の ISO 化活動に関する支援(資料 4)

我が国は、医療情報システムに関して、国際的に見て高い先進性を持っている。レセプト計算

用のコンピュータが 1970 年代から導入され、その元データとなる処方オーダ等も早い時期から普

及し、大学病院を始め、多くの大病院は電子カルテに移行し、医療における多くのデータが統合

的に保存されるようになった。

この状況をより良い方向に進めるためには、本邦においての医療情報に関する標準化を積極的

に進めるべきである。情報システムのデータ構造は、医療機器本体等のハードウェアに比べると、

具体的な構造がわかりにくく、またコンバータ等をソフトウェア的に準備・実装することで、構

造の相違が解決してしまうことが多い。また、そのような作業が表面に出ることが少ないため、

必要性が実感され難い。

今回、ISO 規格として TS から IS への変更を目した MFER (Medical waveform Format Encoding

Rule) は心電図、脳波及び呼吸波形等の医用波形を相互利用するための標準規約であり、2007 年

に ISO/TS11073-92001 として採用されたものである。放射線画像は DICOM 規格で標準が普及した

のに比べ、その普及が十分でない。また、心電波形の標準化は、QT 延長症候群等、医薬品の副作

用の検討の上で非常に重要である。しかし、臨床的な有用性を見いだす文献が少ないことが IS へ

の提案に際して指摘されている。そこで、本研究班においてケーススタディを立ち上げ、複数の

大学病院での MFER 運用経験を元にその有用性を文献化するべく、臨床研究を行った。提言作成時

点では文献発表まで至ってはいないが、運用経験の蓄積により、今後の標準規格文書作成に必要

な知見が得られつつある。

医療情報の標準化が、明確に「低コスト化・高品質・可用性の向上(システム設定の簡便化)」

につながることを証明し易い分野として薬事、特に治験のデータ管理が挙げられる。通常の医療

業務と作業が区別されているため、通常は明確に評価されないコストや品質の評価が可能となる

からである。現在、増えている国際共同治験等で、日本の治験の質やコストについて利点がある

ことを証明することを今後目指して行きたい。

B)試験法分野:ラウンドロビンテストへの参画を通した ISO 活動

ISO/TC194(医療機器の生物学的評価)では、製品規格ではなく、医療機器の生物学的安全性評

価のための試験法及び医用材料からの溶出物、分解生成物、及び滅菌残留物の定性・定量的試験

法に関する国際規格を作成している。医療機器全般に共通した ISO とも言える。

医療機器の薬事申請のために GLP 下の生物学的安全性試験の実施が求められているが、試験法

によっては国際的に整備されているとは言いがたいものもある。どこの国で申請する場合も、機

器の種類に応じた当該試験のいくつかの実施が求められることから、試験法の標準化は、世界共

通の関心事である。ただ、各国とも生物学的安全性試験はその国の局方収載試験法を基本として

おり、各国独自の試験法が既に存在している。この現実から、ISO では特定の 1 試験法のみとい

うよりは適切な複数の試験法を掲載し、そのうちどの試験法で実施しても各国の規制当局は審査

するという流れが適切と考える。

その適切な試験法の選択を行うために、TC194 では参加国が試験法検証のための国際共同研究

(ラウンドロビンテスト)を実施することがある。これまでに細胞毒性試験 (WG5)、現在は、血

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液適合性試験(WG9、溶血性)についてラウンドロビンテストが進行中である。

ケーススタディとした溶血性ラウンドロビンテストでは、日本からの 2 機関、ドイツ、中国、

米国、フランスから計 12 機関が、6サンプル、4種の試験法、ヒト及びウサギ血液を用いて 2013

年 1 月から 3月に試験を実施している。2013 年 4 月にイタリア(パビア)で開催される ISO/TC194

総会で中間報告が行われる予定となっている。

ラウンドロビンテストへの参加は、常に各国とコンタクトを取る必要があり、自然と討議し易

い環境が整うことから、国際標準化作業を円滑に進めるための有効な手法と考えられるが、加え

て下記のメリット、デメリットがある。

•メリット

自国の試験法を提案でき、結果によっては、自国の試験法を国際標準とできる。自国の試験法

の妥当性が外国にも科学的データを根拠に認めてもらえる。

•デメリット

当該試験の進行は、取り纏めるコンビーナの力量によるところが大きい。試験試料の準備、試

験手法の共通化等の試験実施前の準備のほか、試験実施後の参加機関からのデータの取りまとめ、

論文等による公表までである。自国だけが期日どおりにデータを提出しても、全体の成果として

は、最後の参加国がデータを提出するまで待たざるを得ない。それ故、全体としての成果が得ら

れるまでの時間が予測し難い。

TC194 では、2013 年 1 月に日本人エキスパートが WG3(動物福祉)のコンビーナとして承認さ

れ、ISO 中央事務局に登録された。これまでの、長年にわたる日本からの丁寧な対応が功を奏し

たものと考える。

医療機器の ISO/IEC 活動への参画については、厚生労働省からも機会あるごとに、企業団体及

び企業の役員クラスの方への、この活動の意義、重要性を啓蒙して頂けるよう、強く提言したい。

ISO/IEC 活動を個人業績としても認める方向で指導してもらいたい。ISO/IEC 活動が維持されてい

ることで、各企業も直接的又は間接的に恩恵が得られていることを啓蒙して頂きたい。

C)歯科分野:歯科用 CAD/CAM マシンで作製する修復物の精度に関する新しい評価方法(資料 5)

歯科分野のケーススタディである「歯科用 CAD/CAM マシンで作製する修復物の精度に関する新

しい評価方法」の策定に関する国際標準化活動では特に大きな成果が得られ、2011 年 9 月に開催

された ISO/TC106 総会(フェニックス会議)において、同システムについて討議する新 SC の設立

を日本が提案し、満場一致で承認された。同時に新 SC は ISO/TC106/SC9 として活動し、SC9/WG1(歯

科用 CAD/CAM システム)は Convener(日本歯科大/小倉英夫教授)及び幹事国ともに日本が担当

することに決定された。目標であった ISO/FDIS 12836「Dentistry — Digitizing devices for

CAD/CAM systems for indirect dental restorations — Test methods to assess the accuracy」

は平成 24 年 8 月に実施された投票において承認された。また、歯科用 CAD/CAM マシンで作製する

修復物の精度に関する新しい評価方法に次ぐ新たな規格「Test method to evaluate the accuracy

of machined dental restorations」を平成 24 年 10 月に開催された ISO/TC106 総会(パリ会議)

において提案し、標準化作業を開始することが採択された。

近年、歯科用 CAD/CAM システムは世界的に需要が拡大していると共に、設備自体が広範囲の技

術を必要とする。今後、同システムは歯科領域にとって重要な分野となるため、ドイツを初めと

したヨーロッパ諸国と米国が主導権争いを展開していた。関連団体へのヒヤリング及びアンケー

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ト調査の結果からも明確になったように、国際規格の新規提案に必要な要因の 1 つとして、ロビ

ー活動が挙げられる。日本は中立国の立場として長年に渡って国際会議に参加し、2010 年度及び

2011 年度の ISO/TC106 総会時以前から関係諸国と友好関係を築いて来た。今回のケーススタディ

では本成果が実る形となり、科学的根拠に基づいた質の高い規格提案と丁寧な説明を行った日本

がドイツ及び米国の間に入る中立国として、ISO/TC106/SC9/WG1 の Convener と幹事国を獲得でき

たものと考えられる。

5.各国政府の支援状況

製品規格に直結する TC の場合、医療機器分野においても事実上の標準を勝ち取ることが企業活

動の存亡に係わるため、企業自体が人材及び資金を積極的に投資するものと思われる。一方、試

験法に関する技術委員会である ISO/TC194 は企業的なメリットを獲得し難い TC であり、国内及び

海外ともに諸外国への薬事申請を円滑化することを目的として、専門家としてボランティア的に

活動している。国内委員会の活動費は関連企業が所属する団体が負担しており、各専門家は各自

が所属する研究機関、大学又は団体の予算を利用して国際会議に出席している。この実態は国内

及び海外ともに同様であり、国からの直接的な資金的援助は受けていない。ISO/TC212 も国内及

び海外ともに ISO/TC194 と同様の形態で活動している。歯科分野や電気分野をはじめとした幾つ

かの ISO 及び IEC 国内審議団体は経済産業省から若干の資金的補助を受けて活動している事例も

あるが、医療機器分野における多くの TC は国内外ともに ISO/TC194 と同じ形態により活動してい

るものと思われる。

一方、スマートグリッドや電子通信分野等、国家プロジェクトとして活動する比較的大きな TC

は国からの直接的な援助を受けている事例が多い。総務省が所管する情報通信審議会情報通信政

策部会である「通信・放送の融合・連携環境における標準化政策に関する検討委員会」の第 16 回

会議(2010 年 11 月 19 日開催)において株式会社三菱総合研究所が提出した調査結果「諸外国に

おける標準化政策について」を資料 6 に示した。米国では、民間の標準化団体による標準が重視

され、国防省等が政府調達基準として民間標準の利用を促進している。研究開発に関係する調達

は約 550 億ドル(2007 年調達総額:4,600 億ドル)であり、NIST(National Institute of Standards

and Technology)により策定さる連邦政府調達基準に従って調達される。また、米国はライセン

シングや CRADA(共同研究開発契約)を通じて政府開発技術の民間への移転が活発に行われてい

る。欧州は統一規格による欧州単一市場の枠組みにより、早くから標準化活動に対して EU が欧州

標準化機構を通して直接的な支援を実施している。また、近年では ICT 分野の技術標準の在り方

の変化に伴い、ICT 標準に対する政策の見直しが行われている。欧州標準化機構による標準がな

い分野ではフォーラムやコンソーシアムの ICT 標準の利用促進を図り、サービスやアプリケーシ

ョンの政府調達における基準策定等が検討されている。韓国は政府として標準化政策を強力に主

導しており、韓国情報通信技術協会が毎年更新している ICT 標準化ロードマップには、国内外の

市場分析、技術開発と標準化のステップの分析、対象分野の標準化団体、標準化のスケジュール

等が詳細に示されている。国際標準化の推進に係る専門家への活動支援も実施されており、その

役割等に応じて会議参加費(旅費等の実費、食費、日当、会議登録費等)、情報活動費を支給して

いる。その他、IT-Korea 未来戦略や海外進出支援戦略等が策定・実施され、その中で重点分野が

定められている。このような世界情勢の中、1)フォーラムやコンソーシアム等によるデファクト

標準への対応、2)政府調達における標準化を意識した支援、3)評価政策における重点分野の絞り

込み等が我が国の課題となっている。

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6.日本政府が行うべき財政的支援とその条件

表 1 に示した公的予算分野においては、国からの資金的援助について様々な要望が産業界から

寄せられている。医療機器分野の各 TC は小規模であり、現状として国から直接的な支援を受けて

いる事例は国内外ともに極めて少ないと思われるが、医療機器分野の国際標準化を国家戦略とし

て推進し、諸外国と対等以上に渡り合える環境を整備するためには、企業努力に加えて、厚生労

働省としても何らかの支援を行う必要があると思われる。上述した電子通信分野等、国家プロジ

ェクトとして活動する TC に対する諸外国の国家的支援を参考として、今後、厚生労働省として医

療機器分野の国際標準化を促進するための施策を積極的且つ迅速に検討することが重要である。

厚生労働省として財政支援を実施するにあたっては、国際標準化事業実施団体の信頼性を確認

の上、申請テーマの重要性、及び当該団体への財政支援の必要性による優先順位付けを行うこと

によって、財政支援の効率を高めるよう配慮する必要がある。また、現時点では経済的に弱い、

又は国際標準化業務の経験が少ない中小企業(団体)並びに先進医療機器を開発したベンチャー

企業の場合には、優先順位を上げて対応することが望まれる。特に、中小企業の場合には、実務

に携わる社員に経営者がバックアップを行うよう啓蒙する必要がある。一方、厚生労働省におけ

る支援業務を円滑に実施するためには、国際標準化支援事業の経験が長い経済産業省の事例を参

考にして、医療機器に適した、より有効でスピーディーな支援ができる業務実施手順を構築する

べきである。

なお、参考資料として、経済産業省所管の国際標準化事業で現在用いられている予算申請手続

様式事例を資料 7に示す。

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表1. アンケート調査結果の総括 (国家事業としての方向性、戦略及び産官学役割分担)

対象分野 具体的施策

・知識、語学力及び論理的展開能力に長けた人材の育成・PMDA規格・審査担当官の国際会議への積極的参加・アジア諸国及びその他の関係諸国との連携(共同提案、協力依頼、意見交換、事前説明、良好な信頼関係の構築、アジア圏の共同 市場化等)・科学的根拠に基づいた質の高い規格提案と丁寧な説明・十分な事前調査(規格化の要求度、類似規格の存在の有無、各国の意見等)・国際会議への積極的参加・コンビーナの取得・国際会議の誘致

国際活動分野

・製品開発に係る研究費補助・標準化活動に係る各種経費(検証実験、国内・海外旅費、会議費等)の補助・審査期間の大幅な短縮と迅速な支給・予算の複数年度化・海外旅費の柔軟化(国際会議前後に開催国及び周辺国在住の委員を訪問)

公的予算分野

・国際市場を占有できる高品質・高機能製品開発の促進・医療機器開発に係る時間の短縮(環境・法的整備)・開発者の意識改革(標準化を見据えた開発)

製品開発分野

・JISをはじめとした質の高い各種規格・基準及びガイドライン作成の促進(経済産業省と厚生労働省の更なる連携)・知的財産化の促進と国家的援助(主に海外特許)・国内ラウンドロビンテストの環境整備(公的機関又は学会が主管)・窓口又は共通事務局の設立及び同窓口による情報収集及び情報配信(データベース化を含む)・厚生労働省又はPMDAに担当部門を設立(会議参加を含む)・国による、国際標準化の重要性を周知するための啓蒙活動(主に企業向け)・十分な国内TC体制の確立(産官学連携強化)

国内環境分野

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表2. 医療器材工業会JISリスト(110412)

JIS番号 JIS名称 JIS制定日 対比ISO

T0601-2-16 医用電気機器-第2-16部:人工じん(腎)臓装置の安全に関する個別要求事項 20081125 IEC60601-2-16

T0601-2-39 医用電気機器―第2-39部:自動腹膜かん(灌)流用装置の安全に関する個別要求事項 20061125 IEC60601-2039

T1704 人工心肺用熱交換器 20080825 ISO7199:1996, Cardiovascular implants and artificial organs -- Blood-gas exchangers (oxygenators)

T3209 滅菌済み注射針 20050325 ISO 7864:1993,Sterile hypodermic needles for single use

T3210 滅菌済み注射筒 20050325 ISO 7886-1:1993,Sterile hypodermic syringes for single use-Part 1: Syringes for manual use及びCor.1:1995

T3211 滅菌済み輸液セット 20050325

ISO 8536-4:2004,Infusion equipment for medical use Part 4:Infusion sets for single use,gravity feedISO 8536-5:2004,Infusion equipment for medical use Part 5:Burette type infusion setsISO 8536-8:2004,Infusion equipment for medical use Part 8:Infusion sets with prssure infusion equipmentISO 8536-9:2004,Infusion equipment for medical use Part 9:Fluid lines for use with prssure infusionequipmentISO 8536-10:2004,Infusion equipment for medical use Part 10:Accessories for use with prssure infusionT3212 滅菌済み輸血セット 20050325 ISO 1135-4:2004,Transfusion equipment for medical use-Part 4:Transfusion sets for single use

T3213 栄養用チューブ及びカテーテル 20050325T3214 ぼうこう(膀胱)留置用カテーテル 20050325T3215 体内留置排液用チューブ及びカテーテル 20050325T3216 じんろう(腎瘻)又はぼうこうろう(膀胱瘻)カテーテル 20050325

T3217 血液成分分離バッグ 20050325ISO 3826-1:2003,Plastics collapsible containers for human blood and blood components-Part 1: Conventionalcontainers

T3218 中心静脈用カテーテル 20050325 ISO 10555-3:1996,Sterile,single-use intravascular catheters―Part 3: Central venous catheters

T3219 滅菌済み輸液フィルタ 20050325 ISO 8536-11:2004,Infusion equipment for medical use-Part 11: Infusion filters for use with pressure infusion

T3220 滅菌済み採血用針 20050325T3221 単回使用ポート用針 20050325T3222 滅菌済み翼付針 20050325T3223 末しょう(梢)血管用滅菌済み留置針 20050325 ISO 10555-5:1996,Sterile, single-use intravascular catheters-Part 5: Over-needle peripheral catheters及び

T3224 滅菌済みシリンジフィルタ 20050325T3225 滅菌済輸血フィルタ 20050325

T3226-1 医療用ペン形注入器 第1部:ペン形注入器ー要求事項及びその試験方法 20050325ISO 11608-1:2000,Pen-injectors for medical use-Part 1: Pen-injectors-Requirements and test methods

T3226-2 医療用ペン形注入器 第2部:注射針ー要求事項及びその試験方法 20050325 ISO 11608-2:2000,Pen-injectors for medical use-Part 2: Needles-Requirements and test methods

T3228 生体組織採取用生検針 20050325T3229 腹腔及び臓器用穿刺針 20050325T3230 人工肺 20080825 ISO 7199:1996,Cardiovascular implants and artificial organs ‒ Blood-gas exchanger(oxygenators)

T3231 人工心肺回路用貯血槽 20050325 ISO 15674:2001,Cardiovascular implants and artificial organs-Hard-shell cardiotomy/venous reservoir

T3232 人工心肺回路用血液フィルタ 20050325 ISO15675:2001, Cardiovascular implants and artificial organs -- Cardiopulmonary bypass systems -- Arterial

T3233 真空採血管 20050325 ISO 6710:1995,Single-use containers for venous blood specimen collection

T3234 内視鏡固定用バルーン 20050325T3235 内視鏡用せん(穿)針針 20050325T3236 胃・食道静脈りゆう(瘤)圧迫止血用チューブ 20050325T3237 胃・食道静脈りゅう(瘤)結さつ(紮)用治療器具 20050325T3238 吸引し(嘴)管 20050325T3239 胃食道ドレナージ用カテーテル 20050325T3240 下部消化管用カテーテル 及びチューブ 20050325T3241 内視鏡用オーバチューブ 20050325T3242 非血管用ガイドワイヤ 20050325T3243 胆道用チューブ及びカテーテル 20050325T3244 尿路結石・異物除去用カテーテル 20050325T3245 配偶子・はい(胚)移植用チューブ及びカテーテル 20050325T3246 造影用カテーテル(非血管用) 20050325T3247 尿管用カテーテル及びイントロデユーサーキット並びに尿道拡張用バルーンカテーテル 20050325

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表2. 医療器材工業会JISリスト(110412)

JIS番号 JIS名称 JIS制定日 対比ISO

T3248 透析用血液回路 20050325 SO 8638:2004,Cardiovascular implants and artificial organs-Extracorporeal blood circuit for haemodialysers,

T3249 血液透析用留置針 20050325 ISO 10555-5:1996,Sterile, single-use intravascular catheters-Part 5: Over-needle peripheral catheters及び

T3250 血液透析器、血液透析濾過器、血液濾過器及び血液濃縮器 20050325ISO 8637:2004,Cardiovascular implants and artificial organs-Haemodialysers, haemodiafilters, haemofiltersand haemoconcentrators

T3252 血管造影用活栓,チューブ及び附属品 20070125T3253 インスリン皮下投与用注射筒 20061101 ISO 8537:2007,Sterile single-use syringes, with or without needle, for insulinT3254 血液ガス検体採取用注射筒 20070125T3256 インスリンポンプ用輸液セット 20070225T3257 単回使用自動ランセット 20070125T3258 硬膜外麻酔用カテーテル 20061101T3259 オブチュレータ 20070125 ISO 14972:1998,Sterile obturators for single use with over-needle peripheral intravascular catheters

T3260 カテーテル拡張器 20070125 ISO 11070:1998,Sterile,single-use intravascular catheter introducers

T3261 滅菌済みカテーテルイントロデューサ 20070125 ISO 11070:1998,Sterile,single-use intravascular catheter introducers

T3262 イントロデューサ針 20070125 ISO 11070:1998,Sterile,single-use intravascular catheter introducers

T3263 血管カテーテル用Y-コネクタ 20070225T3264 経腸栄養延長チューブ 20070225T3265 滅菌済み延長チューブ 20070225T3267 血管用ガイドワイヤ 20070225 ISO 11070:1998,Sterile,single-use intravascular catheter introducers

T3269 胆すい(膵)臓管用ステント及びドレナージカテーテル 20070125T3270 長期使用尿管用チューブステント 20070125T3304 硬膜外針 20061101T3305 造影剤注入用針 20070225T3306 神経ブロック針 20061101T3307 滅菌済み胆管造影用針 20070125T3308 せき(脊)髄くも膜下麻酔針 20061101T3320 滅菌済み活栓 20081125T3321 誘導針 20081125T3322 滅菌済み硬膜外麻酔用フィルタ 20081125T3323 圧トランスデューサ 20081125T3324 単回使用静脈ライン用マノメータセット 20081125T3351 圧力モニタリング用チューブセット 20070125T6130 歯科用注射針 20070125 ISO7885:2000, Dentistry -- Sterile injection needles for single use

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表3. 日本歯科商工協会JISリスト(110803)

JIS番号 JIS名称 JIS制定日 対比ISO 対応最新ISO規格番号 対応最新ISO規格名称

T5109:1979 歯科用電気エンジン 19790512

T5201:1992 歯科用バー 19920604

T5204:2001 歯科用回転器具―歯科用マンドレール 20010525 ISO 13295:1994(MOD) ISO 13295:2007 Dentistry -- Mandrels for rotary instruments

T5205:2000 歯科用クレンザ 20001018 ISO 3630-1:1992(MOD) ISO 3630-1:2008 Dentistry -- Root-canal instruments -- Part 1: General requirements and test methods

T5206:2000 歯科用ブローチ 20001018 ISO 3630-1:1992(MOD) ISO 3630-1:2008 Dentistry -- Root-canal instruments -- Part 1: General requirements and test methods

T5208:2000 歯科用ピーソリーマ 20001018 ISO/DIS 3630-2:1998(MOD) ISO 3630-2:2000 Dental root-canal instruments -- Part 2: Enlargers

T5209:1985 歯科用カーボランダムホイール 19851022

T5210:2000 歯科用回転器具―技工用アブレーシブ研削器具 20001018 ISO/DIS 7786:1998(MOD) ISO 7786:2001 Dental rotary instruments -- Laboratory abrasive instruments

T5211:1993 歯科用根管Kファイル 19930215 ISO 3630:1984(NEQ) ISO 3630-1:2008 Dentistry -- Root-canal instruments -- Part 1: General requirements and test methods

T5212:1993 歯科用根管Hファイル 19930215 ISO 3630:1984(NEQ) ISO 3630-1:2008 Dentistry -- Root-canal instruments -- Part 1: General requirements and test methods

T5213:1995 歯科用根管ら旋状充てん(填)器 19950831 ISO 3630:1992(NEQ) ISO 3630-1:2008 Dentistry -- Root-canal instruments -- Part 1: General requirements and test methods

T5214:1995 歯科用根管ラスプ 19950831 ISO 3630:1992(NEQ) ISO 3630-1:2008 Dentistry -- Root-canal instruments -- Part 1: General requirements and test methods

T5215:1995 歯科用根管口拡大G形ドリル 19950831 ISO 3630-2:1986(NEQ) ISO 3630-2:2000 Dental root-canal instruments -- Part 2: Enlargers

T5216:1998 歯科用根管リーマ 19980330 ISO 3630-1:1992(NEQ) ISO 3630-1:2008 Dentistry -- Root-canal instruments -- Part 1: General requirements and test methods

T5217-1:2009歯科用根管器具―第1部:ファイル、リーマ、歯科用クレンザ、ラスプ、ペーストキャリア及び歯科用ブローチ

20090825 ISO 3630-1:1992(MOD) ISO 3630-1:2008 Dentistry -- Root-canal instruments -- Part 1: General requirements and test methods

T5217-2:2009 歯科用根管器具―第2部:エンラージャ 20090825 ISO 3630-2:2000(MOD) ISO 3630-2:2000 Dental root-canal instruments -- Part 2: Enlargers

T5301:1993 歯科用ラバーダムクランプ 19930215

T5302:1993 歯科印象用トレー 19930215

T5401:2010 歯科用ピンセット ― 一般的要求事項 20100225 ISO 15098-1:1999(MOD) ISO 15098-1:1999 Dental tweezers - Part 1 : General requirements

T5402:2000 歯科用エキスプローラ 20000414 ISO 7492:1997(MOD) ISO 7492:1997 Dental explorers

T5404:2005 歯科用エキスカベータ 20050325ISO 13397-1:1995(MOD)ISO 13397-4:1997(MOD)

ISO 13397-1:1995ISO 13397-4:1997

Periodontal curettes, dental scalers and excavators -- Part 1: General requirementsPeriodontal curettes, dental scalers and excavators -- Part 4: Dental excavators -- Discoid-type

T5406:2000 歯科用スケーラ 20000414ISO 13397-1:1995(MOD)ISO 13397-3:1997(MOD)

ISO 13397-1:1995ISO 13397-3:1996

Periodontal curettes, dental scalers and excavators -- Part 1: General requirementsPeriodontal curettes, dental scalers and excavators -- Part 3: Dental scalers -- H-type

T5407:2010 歯科用エレベータ―一般的要求事項 20100225 ISO 15087-1:1999(MOD) ISO 15087-1:1999 Dental elevators-Part1:General requirements

T5408:1989 歯科用骨やすり 19891025

T5409:1994 歯科用ブローチホルダ 19940217

T5410:2010 抜歯かん子-一般的要求事項 20100225 ISO 9173-1:2006(MOD) ISO 9173-1:2006 Dentistry - Extraction Forceps - Part 1 : General requirements and test methods

T5413:1988 歯科用鋭ひ(匙) 19881104

T5415:1988 歯科用点薬針 19881104

T5416:1993 歯科用根管スプレッダ 19930215

T5417:1993 歯科用根管プラガ 19930215

T5418:1993 歯周ポケットプローブ 19930215

T5419:1995 歯科用根管フィンガープラガ 19950831

T5420:2000 歯周用キュレット:Grタイプ 20000414ISO 13397-1:1995(MOD)ISO 13397-2:1997(MOD)

ISO 13397-1:1995ISO 13397-2:2005

Periodontal curettes, dental scalers and excavators -- Part 1: General requirementsDentistry -- Periodontal curettes, dental scalers and excavators -- Part 2: Periodontal curettes of Gr-type

T5501:1993 歯科用回転器具―番号表示法 19930215ISO 6360-1:1985(NEQ)ISO 6360-2:1986(NEQ)

ISO 6360-1:2004/Cor 1:2007ISO 6360-2:2004

Dentistry -- Number coding system for rotary instruments -- Part 1: General characteristicsDentistry -- Number coding system for rotary instruments -- Part 2: Shapes

T5502:2001 歯科用回転器具―試験方法 20010525 ISO/DIS 8325:1997(MOD) ISO 8325:2004 Dentistry -- Test methods for rotary instruments

T5503:2001 歯科用回転器具―寸法及び呼び 20010525 ISO 2157:1992(IDT) ISO 2157:1992 Dental rotary instruments -- Nominal diameters and designation code number

T5504-1:2001 歯科用回転器具―軸―第1部:金属製 20010525 ISO 1797-1:1992(MOD) ISO 1797-1:1992/Amd 1:1997 Dental rotary instruments -- Shanks -- Part 1: Shanks made of metals

T5504-2:2001 歯科用回転器具―軸―第2部:プラスチック製 20010525 ISO 1797-2:1992(MOD) ISO 1797-2:1992 Dental rotary instruments -- Shanks -- Part 2: Shanks made of plastics

T5505-1:2001歯科用回転器具―ダイヤモンド研削器具―第1部:ポイント―寸法,要求事項,表示及び包装

20010525 ISO 7711-1:1997(MOD) ISO 7711-1:1997 Dental rotary instruments -- Diamond instruments -- Part 1: Dimensions, requirements, marking and packaging

T5505-2:2001 歯科用回転器具―ダイヤモンド研削器具―第2部:ディスク 20010525 ISO 7711-2:1992(MOD) ISO 7711-2:1992 Dental rotary instruments -- Diamond instruments -- Part 2: Discs

T5505-3:2001歯科用回転器具―ダイヤモンド研削器具―第3部:粒度,呼び及びカラーコード

20010525 ISO 7711-3:1992(IDT) ISO 7711-3:2004 Dentistry -- Diamond rotary instruments -- Part 3: Grit sizes, designation and colour code

T5506-1:2001 歯科用回転器具―カッタ―第1部:技工用スチール切削器具 20010525 ISO 7787-1:1984(MOD) ISO 7787-1:1984 Dental rotary instruments -- Cutters -- Part 1: Steel laboratory cutters

T5506-2:2001 歯科用回転器具―カッタ―第2部:技工用カーバイド切削器具 20010525 ISO/DIS 7787-2:1998(MOD) ISO 7787-2:2000 Dental rotary instruments -- Cutters -- Part 2: Carbide laboratory cutters

※日本発の国際規格:黄色のマーキング, ※日本独自のJIS:ISO規格の記載がないもの

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表3. 日本歯科商工協会JISリスト(110803)

JIS番号 JIS名称 JIS制定日 対比ISO 対応最新ISO規格番号 対応最新ISO規格名称

※日本発の国際規格:黄色のマーキング, ※日本独自のJIS:ISO規格の記載がないもの

T5506-3:2001歯科用回転器具―カッタ―第3部:技工用カーバイド切削器具―ミリング装置用

20010525 ISO 7787-3:1991(MOD) ISO 7787-3:1991 Dental rotary instruments -- Cutters -- Part 3: Carbide laboratory cutters for milling machines

T5506-4:2005歯科用回転器具―カッタ―第4部:技工用カーバイド切削器具―ミニチュア

20050325 ISO 7787-4:2002(MOD) ISO 7787-4:2002 Dental rotary instruments -- Cutters -- Part 4: Miniature carbide laboratory cutters

T5507:1998 歯科用器械―図記号 19980330 ISO 9687:1993(NEQ) ISO 9680:2007 Dentistry -- Operating lights

T5601:1993 歯科術者用いす 19930215 ISO 7493:1985(NEQ) ISO 7493:2006 Dentistry -- Operator's stool

T5602:2005 歯科患者用いす 20050325 ISO 6875:1995(MOD) ISO 6875:1995 Dental patient chair

T5701:2005 歯科用ユニット―一般的要求事項及び試験方法 20050325 ISO 7494:1996(MOD)ISO 7494-1:2004ISO 7494-2:2003

Dentistry -- Dental units -- Part 1: General requirements and test methodsDentistry -- Dental units -- Part 2: Water and air supply

T5702:2009 歯科用ユニット―水及びエアーの供給 20090825 ISO 7494-2:2003(IDT) ISO 7494-2:2003 Dentistry -- Dental units -- Part 2: Water and air supply

T5750:2009 歯科用多目的超音波治療器及びチップ 20090825

T5751:2010 歯科用根管長測定器 20100225

T5801:2005 歯科器械―吸引システム 20050325 ISO 10637:1999(MOD) ISO 10637:1999 Dental equipment -- High- and medium-volume suction systems

T5901:2005 歯科用ハンドピースの寸法 20050325

T5902:1979 歯科用スピットン 19790110

T5903:2001 歯科手用器具―再使用可能な歯科用ミラー 20010525 ISO 9873:1998(MOD) ISO 9873:1998/Cor 1:2000 Dental hand instruments -- Reusable mirrors and handles

T5904:1993 歯科用ハンドピースのカップリング寸法 19930215 ISO 3964:1982(NEQ) ISO 3964:1982 Dental handpieces -- Coupling dimensions

T5905:2010 歯科用ハンドピース―ホースコネクタ―形状及び寸法 20100225 ISO 9168:1991(MOD) ISO 9168:1991 Dental handpieces -- Hose connectors

T5906:2001 歯科用ハンドピース―第1部:高速エアタービンハンドピース 20010525 ISO 7785-1:1997(MOD) ISO 7785-1:1997 Dental handpieces -- Part 1: High-speed air turbine handpieces

T5907:2011 歯科用ハンドピース―ストレート及びギアードアングルハンドピース 20110729 ISO 7785-2:1995(MOD) ISO 7785-2:1995 Dental handpieces -- Part 2: Straight and geared angle handpieces

T5908:2005 歯科用ハンドピース―歯科用エアモータ 20050325 ISO 13294:1997(MOD) ISO 13294:1997 Dental handpieces -- Dental air-motors

T5909:2005 歯科用ハンドピース―歯科用低電圧モータ(マイクロモータ) 20050325 ISO 11498:1997(MOD) ISO 11498:1997 Dental handpieces -- Dental low-voltage electrical motors

T5910:2005 歯科用ハンドピース―エアスケーラ及びスケーラチップ 20050325 ISO 15606:1999(MOD) ISO 15606:1999 Dental handpieces -- Air-powered scalers and scaler tips

T5911:2005 歯科用ハンドピース―電動スケーラ及びスケーラチップ 20050325 ISO/FDIS 22374:2004(MOD) ISO 22374:2005 Dentistry -- Dental handpieces -- Electrical-powered scalers and scaler tips

T6001:2005歯科用医療機器の生体適合性の前臨床評価―歯科材料の試験方法

20050325 ISO 7405:1997(IDT) ISO 7405:1997Dentistry -- Preclinical evaluation of biocompatibility of medical devices used in dentistry -- Test methods fordental materials

T6002:2005 歯科用金属材料の腐食試験方法 20050325 ISO 10271:2001(MOD) ISO 10271:2001/Cor 1:2005 Dental metallic materials -- Corrosion test methods

T6003:2005 歯科材料の色調安定性試験方法 20050325 ISO 7491:2000(MOD) ISO 7491:2000 Dental materials -- Determination of colour stability

T6101:2005 歯科用ニッケルクロム合金線 20050325

T6102:2005 歯科用ニッケルクロム合金板 20050325

T6103:2005 歯科用ステンレス鋼線 20050325

T6104:2005 歯科用コバルトクロム合金線 20050325

T6105:2011 歯科非鋳造用金銀パラジウム合金 20110729

T6106:2011 歯科鋳造用金銀パラジウム合金 20110729

T6107:2011 歯科用金銀パラジウム合金ろう 20110729

T6108:2005 歯科鋳造用銀合金 20050325

T6109:2001 歯科アマルガム用合金 20010801 ISO 1559:1995(MOD) (改訂)ISO 24234:2004 Dentistry -- Mercury and alloys for dental amalgam

T6110:1984 歯科用易溶合金 19840227

T6111:2011 歯科用銀ろう 20110729 ISO 9333:1990(MOD) ISO 9333:2006 Dentistry -- Brazing materials

T6112:1995 歯科用水銀 19951115 ISO 1560:1985(MOD) ISO 24234:2004 Dentistry -- Mercury and alloys for dental amalgam

T6113:2011 歯科鋳造用14カラット金合金 20110729

T6114:2011 歯科鋳造用14カラット金合金用プラスメタル 20110729

T6115:1998 歯科鋳造用コバルトクロム合金 19980330 ISO 6871-1:1994(MOD) ISO 22674:2006 Dentistry -- Metallic materials for fixed and removable restorations and appliancesT6116:2000/Amd 1:2005

歯科鋳造用金合金 20000414 ISO 1562:1993(MOD) ISO 22674:2006 Dentistry -- Metallic materials for fixed and removable restorations and appliances

T6117:2011 歯科用金ろう 20110729 ISO 9333:1990(NEQ) ISO 9333:2006 Dentistry -- Brazing materials

T6118:2005 歯科メタルセラミック修復用貴金属材料 20050325 ISO 9693:1999(MOD) ISO 22674:2006 Dentistry -- Metallic materials for fixed and removable restorations and appliances

T6119:2009 歯科用ろう(鑞)材の試験方法 20090825 ISO 9333:2006(MOD) ISO 9333:2006 Dentistry -- Brazing materials

T6120:2001 歯科メタルセラミック修復物の試験方法 20010525 ISO 9693:1999(MOD) ISO 9693:1999/Amd 1:2005 Metal-ceramic dental restorative systems

T6121:2005 歯科メタルセラミック修復用金属材料 20050325 ISO 9693:1999(MOD) ISO 22674:2006 Dentistry -- Metallic materials for fixed and removable restorations and appliances

T6122:2005 貴金属含有量が25%以上75%未満の歯科鋳造用合金 20050325 ISO 8891:1998(MOD) ISO 22674:2006 Dentistry -- Metallic materials for fixed and removable restorations and appliances

T6123:2005 固定式歯科修復物用非貴金属材料 20050325 ISO 16744:2003(MOD) ISO 22674:2006 Dentistry -- Metallic materials for fixed and removable restorations and appliances

T6124:2005 歯科非鋳造用金合金 20050325

T6125:2005 歯科非鋳造用低カラット金合金 20050325

T6126:2008 歯科鋳造用金合金用プラスメタル 20080625

T6127:2008 歯科用水銀及びアマルガム用合金 20081125 ISO 24234:2004(MOD) ISO 24234:2004 Dentistry -- Mercury and alloys for dental amalgam

T6501:2005 義歯床用アクリル系レジン 20050325 ISO 1567:1999(MOD) ISO 20795-1:2008 Dentistry-Base polymers-Part 1: Denture base polymers

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表3. 日本歯科商工協会JISリスト(110803)

JIS番号 JIS名称 JIS制定日 対比ISO 対応最新ISO規格番号 対応最新ISO規格名称

※日本発の国際規格:黄色のマーキング, ※日本独自のJIS:ISO規格の記載がないもの

T6502:2005 歯科用パラフィンワックス 20050325 ISO 12163:1999(MOD) ISO 15854:2005 Dentistry -- Casting and baseplate waxesT6503:1995/Amd 1:2005

歯科インレー鋳造用ワックス 19951115 ISO 1561:1975(MOD) ISO 15854:2005 Dentistry -- Casting and baseplate waxes

T6504:1995/Amd 1:2005

歯科用インプレッションコンパウンド 19951115

T6505:2005 歯科用アルギン酸塩印象材 20050325 ISO 1563:1990(MOD) ISO 1563:1990(MOD) Dental alginate impression material

T6506:2005 レジン歯 20050325 ISO 3336:1993(MOD) ISO 22112:2005 Dentistry -- Artificial teeth for dental prosthesesT6507:1994/Amd 1:2005

歯科用テンポラリーストッピング 19940217

T6508:1993 歯冠用加熱重合レジン 19930215

T6509:1993 歯冠用常温重合レジン 19930215

T6510:1985 歯科用ベースプレート 19851022

T6511:2005 義歯床用陶歯 20050325 ISO 4824:1993(MOD) ISO 22112:2005 Dentistry -- Artificial teeth for dental prostheses

T6512:2005 歯科用寒天印象材 20050325 ISO 1564:1995(MOD) ISO 1564:1995 Dental aqueous impression materials based on agar

T6513:2005 歯科用ゴム質弾性印象材 20050325 ISO 4823:2000(MOD)ISO 4823:2000/Amd1:2007/Cor 1:2004

Dentistry -- Elastomeric impression materials

T6514:2005 歯科充てん(填)用コンポジットレジン 20050325 ISO 4049:2000(MOD) ISO 4049:2009 Dentistry-Polymer-based restorative materials

T6515:2011 歯科用根管充てん(填)ポイント 20110729 ISO 6877:1995(MOD) ISO 6877:2006 Dentistry -- Root-canal obturating points

T6516:2005 歯科メタルセラミック修復用陶材 20050325 ISO 9693:1999(MOD) ISO 9693:1999/Amd 1:2005 Metal-ceramic dental restorative systems

T6517:2011 歯冠用硬質レジン 20110729 ISO 10477:1992(MOD) ISO 10477:2004 Dentistry -- Polymer-based crown and bridge materials

T6518:2011 アクリル系歯冠用レジン 20110729 ISO 10477:2004(MOD) ISO 10477:2004 Dentistry -- Polymer-based crown and bridge materialsT6519:2000/Amd 1:2005

義歯床用短期弾性裏装材 20000414 ISO 10139-1:1991(MOD) SO 10139-1:1991(MOD) Dentistry -- Resilient lining materials for removable dentures -- Part 1:Short-term materials

T6520:2000/Amd 1:2005

義歯床用長期弾性裏装材 20001018 ISO 10139-2:1999(MOD) ISO 10139-2:2009 Dentistry -- Soft lining materials for removable dentures -- Part 2: Materials for long-term use

T6521:2005 義歯床用硬質裏装材 20050325

T6522:2005 歯科用根管充てん(填)シーラ 20050325 ISO 6876:2001(MOD) ISO 6876:2001 Dental root canal sealing materials

T6523:2005 歯科用高分子系支台築造材料 20050325 ISO 4049:2000(MOD) ISO 4049:2009 Dentistry-Polymer-based restorative materials

T6524:2005 高分子系歯科小か(窩)裂溝封鎖材 20050325 ISO/DIS 6874:2004(MOD) ISO 6874:2005 Dentistry -- Polymer-based pit and fissure sealants

T6525-1:2005 義歯床安定用こ(糊)材-第1部:粘着型義歯床安定用こ(糊)材 20050325 ISO 10873:2010(MOD) Denture Adhesives

T6525-2:2005 義歯床安定用こ(糊)材-第2部:密着型義歯床安定用こ(糊)材 20050325 ISO 10873:2010(MOD) Denture Adhesives

T6530:2009 歯列矯正用ワイヤ 20090625 ISO 15841:2006(MOD) ISO 15841:2006 Dentistry -- Wires for use in orthodontics

T6601:2005 歯科鋳造用石こう(膏)系埋没材 20050325 ISO 7490:2000(MOD) ISO 15912:2006 Dentistry -- Casting investments and refractory die materials

T6602:1993 歯科用りん酸亜鉛セメント 19930215 ISO 1566:1978(NEQ) ISO 9917-1:2007 Dentistry -- Water-based cements -- Part 1: Powder/liquid acid-base cements

T6603:1994 歯科用けい酸塩セメント 19940217 ISO 9917:1991(MOD) ISO 9917-1:2007 Dentistry -- Water-based cements -- Part 1: Powder/liquid acid-base cements

T6604:2005 歯科用焼石こう(膏) 20050325 ISO 6873:1998(MOD) ISO 6873:1998 Dental gypsum products

T6605:2005 歯科用硬質石こう(膏) 20050325 ISO 6873:1998(MOD) ISO 6873:1998 Dental gypsum products

T6606:1990 歯科用ポリカルボキシレートセメント 19900220 ISO 4104:1984(NEQ) ISO 9917-1:2007 Dentistry -- Water-based cements -- Part 1: Powder/liquid acid-base cements

T6607:1993 歯科用グラスポリアルケノートセメント 19930215 ISO 7489:1986(NEQ) ISO 9917-1:2007 Dentistry -- Water-based cements -- Part 1: Powder/liquid acid-base cements

T6608:2001 歯科鋳造用りん酸塩系埋没材 20010525 ISO 9694:1996(MOD) ISO 15912:2006 Dentistry -- Casting investments and refractory die materials

T6609-1:2005歯科用ウォーターベースセメント-第1部:粉液型酸-塩基性セメント

20050325 ISO 9917-1:2003(MOD) ISO 9917-1:2007 Dentistry -- Water-based cements -- Part 1: Powder/liquid acid-base cements

T6609-2:2005 歯科用ウォーターベースセメント-第2部:レジン添加型セメント 20050325 ISO 9917-2:1998(MOD) ISO 9917-2:2010 Dentistry-Water-based cements-Part2:Resin-modified cements

T6610:2005歯科用酸化亜鉛ユージノールセメント及び酸化亜鉛非ユージノールセメント

20050325 ISO/FDIS 3107:2004(MOD) ISO 3107:2011 Dentistry -- Zinc oxide/eugenol cements and zinc oxide/non-eugenol cements

T6611:2009 歯科用レジンセメント 20090625 ISO 4049:2000 (MOD) ISO 4049:2009 Dentistry-Polymer-based restorative materials

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政策的提言関連資料

資料1

国際標準化に係る基本戦略

‒ 国際標準化に係る経済産業省の取組 -

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国際標準化に係る基本戦略

- 国際標準化に係る経済産業省の取組 -

1.標準の種類と階層

標準とは「自由に放置すれば多様化、複雑化、無秩序化する事柄を少数化、単純化、秩序化する

ための取り決めである」と定義でき、標準化とは「標準を作るための行動」と定義できる。即ち、

標準とは客観的な決め事であり、強制的なものと任意的なものがあるが、一般的には任意的なもの

を標準と呼ぶ。さらに、公的機関が決めた標準を規格と言う。

標準化の意義は、製品の互換性やインターフェイスの整合性、生産性の向上、製品品質の確保及

び正確な情報伝達・相互理解の促進である。しかし、近年において標準化は、研究開発による技術

の普及、安心・安全の確保、環境保護、企業の競争力の強化や競争環境の整備及び貿易促進にまで

その機能を拡大してきている。特に現代においては、品質を保証するための標準化が主流となって

きている。

標準には、図1に示すように国際標準(国際レベル、地域レベル)、国家標準、業界標準及び社内

標準がある。国際レベルの国際標準とは、国際標準化機構(ISO)、国際電気標準会議(IEC)や国際

電気通信連合(ITU)があり、地域レベルの国際標準としては欧州標準化委員会(CEN)、欧州電気標

準委員会(CENELEC)や欧州電気通信標準化機構(ETSI)などである。標準を策定する機関は、国際

レベル、地域レベルや国家レベルとその適用範囲に応じた機関が対応するが、民間レベルのフォー

ラムも重要な地位を占めている。日本の場合では、国家規格としては工業製品の標準化促進を目的

として制定された工業標準化法に基づくJIS(日本工業規格:Japanese Industrial Standards)が

あり、業界標準としては例えば日本電機工業会が作成した電機品に対する規格である JEM(日本電

機工業会規格:Standards of the Japan Electrical Manufactures’ Association)がある。

図1,標準の階層

代表的な国際標準化機関としては前述のように3機関があるが、ISO及び IECと ITUとには大き

な違いがある。それは、ISOやIECは民間の国際標準化機関であるが、ITUは国連機関である点であ

る。また、ISOやIECには下記の特徴がある。

・会員資格は各国から1機関のみである。

・民間機関がメンバーとなっている国には、米国、英国、独国や仏国などがある。

・政府機関がメンバーの国は、日本、中国、韓国などがある。

地域レベル

ISO,IEC,ITU

国家標準

社内標準

業界標準

国際標準 国際レベル

EN,・・・

JIS, UL, BS, ・・・

SEMI, JEITA, ・・・

国家レベル

団体レベル

社内レベル

出所 : 国際化時代の社内標準、日本規格協、1996

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・日本からは、事務局を経済産業省に置く日本工業標準調査会(JISC:Japanese Industrial

Standards Committee)が加盟している。

2.事業戦略と国際標準化

近年、世界経済のグローバル化が急速に進み、経済活動を妨げる国境の壁が低くなり市場が世界

単一化してゆく中で、製品の性能が優秀でも国際標準から乖離した仕様では市場に受け入れられな

くなってきている。この事は世界貿易機構(WTO)が、貿易障害協定(TBT協定)で加盟国に対して

非関税障壁をなくす目的で国際規格に準拠した製品造りを要求していることでも明らかである。こ

の観点より、グローバル化した世界市場においては「規格を制するものが市場を制する」といって

も過言ではない。しかし、我が国企業の国際標準化に関する認識は高いとは言えない。この原因は、

従来の日本の物作りの基本方針である「良い物を適正な価格で市場に送り出し、市場を制する」事

で製品を標準化するというデファクト標準重視の姿勢が世界の動向に合わなくなってきていると言

える。米国でも従来のデファクト標準重視の方針からデジュール標準重視に大きく舵を切っている

と思われる。この結果を纏めると下記となる。

・国際標準化活動への参画は、欧州諸国の企業に比較して極めて低調である。この事は我が国企業

における標準担当者数(図2)を見ても明らかである。ただし、最近では我が国企業でも経営層

の意識改革が進み、標準化担当部門を設置する企業が増えているのも事実である。

・韓国、中国の企業がグローバル市場でシェアを急速に拡大するとともに、図3に示すように国際

標準化活動への取り組みを急速に強化している。図3から見ると米国も同様の方針に転換してい

る。

図2. わが国企業における標準担当者数 図 3. 国際標準提案件数

3.国際標準化の推進に当たっての諸課題 ① 協調領域と競争領域の線引き

標準化は製品の差別化を困難にし、コスト競争に陥る危険性を持っている。従って、標準化で市

場を大きくしながら収益を確保するためには、事業戦略を明確にした上で、作りたい標準を自ら提

国名国際標準 提案件数

韓国 20→ 25中国 11→ 23

アメリカ 8 → 18日本 22→ 16

(IEC事務局長講演資料より)

(2008.10 - 2009.9) → (2009.10 - 2010.9)

IEC への国際標準提案件数 我が国企業における標準担当者数 (人/社)

(出展:H19年度知的財産活動調査に基づく)

0.63全体0.32建設0.35食品

0.32繊維1.48医薬

0.90化学0.67石油0.43鉄鋼

0.49金属

0.70 機械1.22 電気0.88 輸送

0.73 業務0.61 其他

0.42 情報0.16 卸売0.17 其他

1.53 教育

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案し、不都合な標準は作らせないという積極的な取り組みが必要である。また、標準化とは、製品

仕様の決定にあたって、何を競争領域とし、何処を協調領域とするかの線引きであるとも言える。

このため、グローバル市場においては線引きでイニシアティブを取ったものが市場競争で優位に立

つ可能性を持つ。しかし、線引きを誤れば、技術を固定化してその後の技術開発の妨げになるし、

さらには市場に受け入れられない標準になる。

国際標準化とビジネスの関連における成功事例としては、デジタルカメラの電子ファイル様式や

2次元コードがある。前者は、当初日本と米国が異なった標準を提案していたが、その後日本方式

は家庭用、米国方式は業務用という棲み分けで2001年に国際標準化して、その後の家庭用デジタル

カメラの爆発的な普及に貢献した事例であり、後者は、日本企業が開発した 2次元コードを無償で

公開する事で 2次元コードの普及を図り、当該企業はコードの読み取り装置で莫大な利益を上げた

事例である。失敗事例としては、銀行のキャッシュカードがある。これは、日本が先行していた表

面磁気ストライブ方式が世界では賛同を得られずに、国際標準としては裏面磁気ストライブ方式が

採用されたために日本のキャッシュカードが国際的に孤立した事例である。

上記の様に、標準化とビジネスは密接に結び付いており、競争領域においては如何にして市場競

争を勝ち抜くかという開発戦略と直結している。また、開発戦略の立案に当たっても、技術開発を

優先するのか、商品開発を優先するのかなどを市場のフェーズ(揺籃期、成長時、成熟期)や市場

ニーズを見極める必要があり、図 4に示すように事業戦略、開発戦略及び標準化戦略は一体となっ

て進めるべきものである。一番大切なことは「標準化に失敗すれば、技術で勝っても市場で負ける

時代が到来している」事を認識し、その対応策を検討することである。

図4.事業戦略と標準化戦略

② 国際標準化の推進方策(戦略と戦術の連携)

IECの組織構成を例にして国際標準化の推進方策を述べる。電気関連製品の国際標準の作成を担

当するIECの組織構成(階層構造)は、最上位に最高意思決定機関の総会(CO : Council)があり、

その下に実質的な意志決定機関である標準管理評議会(SMB : Standardization Management Board )

があり、作成すべき規格の決定や作成された規格の実質的な承認を担当する。ここに技術諮問委員

会(Technical Advisory Committee)や戦略グループ(SG : Strategic Group )が所属している。

→標準化に失敗すれば、技術で勝っても市場で負ける時代の到来

研究開発戦略(開発戦略)

事業戦略(製品化戦略)

(設備投資/販売戦略など)

標準化戦略 知的財産戦略

■標準戦略 ─ 知的財産戦略 ─ 経営戦略の一体的推進

(「標準化」は技術だけの問題ではない)

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前者は送配電分野といった事業横断的分野の標準策定に関して意見具申する恒久的な組織で、SGは

スマートグリッドといった独定分野の標準策定に関して意見具申する時限的な組織である。SMBの

下に、実際の標準作成部隊である専門委員会(TC : Technical Committee )、分科委員会(SC :

Subcommittee )、作業グループ(WG : Working Group)やプロジェクトチーム(PT : Project Team )

を配している。組織的には図5に示すピラミッド型組織をしている。SMB以上の組織では、市場動

向や技術動向を勘案して如何なる標準の策定が必要かを検討・決定する政策面(戦略が必要)を担

当し、TC以下の組織は、具体的な標準の内容を検討する技術面(戦術が必要)を担当する。この為

に国際標準の策定に当たっては、SMB以上に対しては、将来の市場動向や技術動向及び各国の状況

を見捨てた戦略的な動きによる標準化項目の策定の図り、TC以下の組織では、技術面での標準化内

容を吟味する両面作戦(良い戦略の基づく良い戦術の立案)が重要である。この観点からは、技術

面を担当するTC以下では、日本もそれなりの貢献はしているので、今後日本としてはSGなどの戦

略面を担当する部署を強化する必要がある。そして国際標準の場で成功を収めるには、政略的活動

と戦術的活動の連携が重要である。

図5.IECの組織図(ピラミッド型組織)

③ 国の支援体制

国際標準化の推進にあたって基本的でかつ重要な事項は図 1に示した標準の階層において国家標

準の有無であるが、同種の企業が多数存在する日本においては国家標準の形成がコンセンサス型と

なる為に時間がかかりすぎる現状がある。結果として下記の事態が発生する。

・やる気のある企業の技術がそのまま国家標準として提案されにくく、個別企業の利益につなが

る国家標準提案が出にくくなる。結果として、標準化への取り組み意欲が減退する。

・海外に比較して国家標準の提案にスピード感がなく、コンセンサス形成の過程で新進気鋭の技

術を使った国家標準提案が陳腐化し国際競争力の低下を招く恐れがある。

・標準として採用される技術は業界の総意で決まる為に先端技術を採用する事が困難で、結果と

して競争領域が広く残され、研究開発への重複投資を招く恐れがある。

この対応策として経済産業省では、従来制度に加えて国内コンセンサス形成に時間をかけず、他

国に出遅れない新たな国際標準提案プロセスとして「トップスタンダード制度」を導入した。この

制度化では、国際標準に積極的に取り組む企業は必ずしも国内調整を経由せずにJISCの審査を経る

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だけで特定の技術等について直接国際標準化の提案を行うほか、横断的分野における提案で適切な

検討の場がない場合には新しいTC/SC/PCの設置を提案できる。この結果、下記の効果が期待できる。

・国際標準提案までの時間の短縮が出来る。

・先進的且つ競争力を持つ内容がそのまま国際標準化提案として提案可能となり、国際標準化の

戦略的活用の推進が可能となる。

スマートグリッドのような大規模な社会インフラシステムの構築に必要な標準は、デファクト標

準ではなく、デジュール標準が適していると思われる。デファクト標準は、企業対企業の市場での

優劣競争であるが、デジュール標準は国家対国家の標準争いである。実際、国際標準の検討の場に

参加している諸外国は国もしくは国に相当する機関が参加している。この観点からも、上述のトッ

プスタンダード制度で、標準化に積極的な企業を支援するとともに、国内標準作りのためのフォー

ラムなどの「場の形成」と国内及び国際標準作りへの「資金的支援」などへの国としての支援体制

の強化が求められている。実際、スマートグリッドに関してはJISCの国際専門委員会の下にスマー

トグリッド国際標準化分科会が設置され、2012年初頭より活動を開始している。

4.我が国における国際標準の基本戦略

日本の国際標準化に関する基本的アプローチとしては、「我が国企業は産業力の発揮に向け、事業

戦略と国際標準化を一体的に取り組む」体制を構築し、国の策定した下記の 4項目の「戦略的国際

標準化に向けての 4つの挑戦」を着実に実行し、技術で勝って、ビジネスで負けない様な日本の再

生への努力を実施する事にある。

・戦略重点分野の特定

分野を特定しない → スマートグリッド等重点分野を戦略的に特定

・システム思考の導入

個々の要素技術の標準化 → 全体システムの視点に立った標準化

・標準化を経営の柱とする

標準獲得の目的化 → 弱み強み分析に基づくオープン・クローズ戦略

・認識力を活用した新市場創出

標準ありきの認証 → 標準が存在しない新分野で認証力を通じた新市場創出

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政策的提言関連資料

資料2

経済産業省における国際標準化への取組について

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政策的提言関連資料

資料3

医療機器分野における国際標準化に必要な諸因子

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医療機器分野における国際標準化に必要な諸因子

平成 23 年度に実施した関連団体へのヒヤリング及びアンケート調査の結果から、個別製品の国際

標準化を国家事業として推進するためには、国際標準化に係る方向性、戦略及び産官学の役割分担

等を明確に示すことが必要であり、製品開発分野、国内環境分野、国際活動分野及び公的予算分野

において、表 1 に掲げた施策を実行することが現時点で国際標準化活動に携わる産官学関係者の共

通した意見であることが明らかになった。本資料では、各項目の現状と課題並びに対策・提言等の

具体例について取りまとめた。

1.製品開発分野

2012年 6月 6日に医療イノベーション会議から出された「医療イノベーション5か年戦略」では、

平成 19 年度から実施されてきた「革新的医薬品・医療機器創出のための 5 か年戦略」に引き続き、

革新的医薬品・医療機器を世界に先駆けて開発し、世界へ打って出ていく施策の必要性が求められ

ている。世界的に医療機器開発の環境は、厳しい局面を迎えており、グローバルな企業間競争に勝

ち残るためには、よりイノベーティブな医療機器が患者に迅速に提供されることが重要である。

医療機器産業は急成長しており、世界的競争が激化しているが、日本では医療機器は年々輸入が

拡大しており、2010 年では 0.6 兆円の貿易赤字となっており、日本のモノづくりの力が生かされて

いない(図 1)。これを改善するためには、医療機器のイノベーションの推進の取り組みが不可欠で

あり、戦略的に進めなければならない。

1-1.国際市場を占有できる高品質・高機能製品開発の促進

日本の医療関連分野を成長産業として位置づけ、これを発展させるために革新的な医薬品・医療

機器(再生医療製品を含む)の研究、開発、実用化に係る施策を国として一体的に推進することは

重要である。診断・予防・治療等に対する新たなサービスや制度の構築を目指す、出口戦略を持っ

たイノベーション推進が不可欠である。

医療イノベーションへの期待は国内にとどまらず、世界規模のニーズでもある。これは我が国に

おけるイノベーションの成果を世界へ発信することが期待されていると共に、医療が我が国の経済

の新たなけん引役となる大きな可能性を持っていることに由来する。

ジェトロの資料(米国医療機器産業の活性化に向けた政府支援策と企業の事例;2012 年 3 月)

を参考として米国について考察する。米国医療機器産業(企業数は約 7000 社)では、主に中小企

業(従業員 20 名以下の会社が全体の 62%)がイノベーションを実現する役割を担い、大企業は中小

企業から獲得した新技術で具体的な商品に仕上げて臨床試験を行い、承認を得て世界規模の販売網

で市場展開をしている。活発な産学連携の中にあって、エンドユーザーである医師自身が医療機器

開発に深く関与(1990-1996 年の医療機器関連特許のうち、20%は医師の貢献による)しているが、

日本もこのような工夫が求められている。加えて、米国政府が研究開発助成や税制優遇、輸出支援、

承認取得の迅速化等を行なうが、医療機器開発が盛んなマサチューセッツやミネソタ、カリフォル

ニア等の州政府も科学研究支援、企業支援、人材育成、設備投資支援等を行っている。米国は世界

大の市場を抱え、多額の予算と人的資源、競争力を生み出す開発環境で世界をリードしているの

である。

GDP に占める医療費の割合は、現在 8%から 15%であるが、2050 年には 20%から 36%(米国:36.1%, ド

イツ:25.9%, 日本:21.9%)と大幅な増加が予測されている。OECD(経済協力開発機構)でのデータにお

いても、医療費の総額は 1.9%の増加を示しており、米国を除けば、2010 年では GDP 比約 9%となっ

ている。欧州 5か国の 2005 年から 2009 年までの CAGR(年平均成長率)の伸びは、ドイツ 2%、フラン

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ス 4%、英国 7%、イタリア 3%、スペイン 10%であったが、2010-2011 年では大きく落ち込んでいる。

欧州における 2004 年から 2011 年の医療機器の価格を見ても、平均として MRI-5%、CT-5%、IV ポ

ンプ-8%、モニタ-5%、ペースメーカ-8%、ステント-34%と下落している。また、1995 年から 2010

年にかけての研究開発投資は 8%から 7%へとダウンしている。このようなことから、欧州では医療技

術の真の価値を創成するための施策として、医療の変化に対するイノベーション、コストベースの

イノベーション、価値を生み出すイノベーション等を真剣に考えている。

このように世界的な医療技術のイノベーションの競争の中で、日本は国際市場を占有できる高品

質・高機能製品開発を医療イノベーション 5か年戦略ベースにおいて強力に進めていく必要がある。

1-2.医療機器開発に係る時間の短縮(環境・法的整備)

医療技術のイノベーション及び医療機器開発に対する規制の影響を考える必要がある。アメリカ

における従業員 500 人以上の企業は 324 社、100-499 人の企業は 373 社、20-99 人は 1,002 社、20

人未満は 3,377 社であり、従業員 100 人以上で全ての従業員の 72%を占めている。また、機器の開

発プロセスを分析した場合、全ての事業行為の約半分は規制の要求に対する影響を受けている。2011

年、FDA の 510k に対する調査(351 社の回答)では、新製品への投資において規制の要求は重要か?

という質問に対して、その解答は① も重要:18%、②重要な 3 つのファクタにうちの 1 つ:55%、

③重要である:16%であり、規制の影響が大きいことがわかる。また、EU 及び米国に対する規制シ

ステムに対する質問では、下表のような回答が示されている。

質問 EU FDA

より予想可能な規制システムか? 64% 8%

初に相談、アプローチする規制当局は? 80% 4%

審査期間(臨床データ要求なし) 2.7 ヶ月 5.9 ヶ月

審査期間(臨床データを要求) 4.8 ヶ月 13.2 ヶ月

規制システムは、開発及び市場アクセスの重要な要素であり、投資判断にも影響を与えている。

2011 年の PWC による Medical Technology Innovation Scorecard によると、イノベーションを推進

するには、5 つの重要な柱(財政的なインセンティブ、イノベーション・リソース、規制フレーム

ワーク、患者の要求、投資コミュニティ)があり、いかに規制がイノベーションに対してサポーテ

ィブかどうかが重要な因子の 1つとなる。

医療イノベーション 5 か年戦略(図 2)では、基礎研究から実用化に至るプロセスにおける技術

の融合として、①医工連携による橋渡し支援を整備、②医工連携の医療機器開発支援、③臨床試験

の拠点整備のほか、医療現場のニーズに基づく改良・改善として、④医療機器の特性を踏まえた規

制のあり方の検討、承認審査として、⑤迅速に審査できる体制整備、保険適用として、⑥イノベー

ションの適切な評価等が挙げられている。また、新たな産業として期待されている再生医療分野に

おいても、図 3 に示すとおり、①長期間を要する基礎研究への支援、②再生医療の特性を踏まえた

規制のあり方の検討、③迅速審査できる体制整備、④インフラ等の国際標準化の取得、⑤再生医療

関連産業の振興等の主な施策が挙げられており、開発期間の短縮、より早い患者への供給のために

は、これらの施策を確実に実行して行く必要がある。医療機器の多くは短期間で改善・改良される

と共に、そのリスク・ベネフィットバランスは使用者である医師の手技によるバイアスが入る点な

どについて、医薬品と大きく異なる特性を持つ。平成 25 年度の改正を目指す薬事法では、医療機器

の特性を踏まえた制度を創設するため、医療機器に関する条項を医薬品と切り離して別立てとする

方向で協議されている。また、同改正案では新たに再生医療製品の定義を置くことも検討されてい

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る。医療機器の開発や許認可等に要する時間は、平成 17 年度の薬事法改正や平成 19 年度から開始

された「革新的医薬品・医療機器創出のための 5 か年戦略」等の成果の 1 つとして短縮されて来た

が、今回の薬事法改正により、イノベーションを更に推進できる規制体系となることが期待される。

1-3.開発者の意識改革(標準化を見据えた開発)

医療機器を開発するにあたって、将来、標準化することをあらかじめ考えて取り組むことが大切

である。図 4 に示したとおり、品質マネジメントにおける製品実現の設計開発では、設計へのイン

プット-設計プロセス-設計のアウトプットが重要な点である。通常、設計へのインプットにおい

て必要な基準・標準が利用される。設計・開発者は必要とされる基準・標準を選択して設計しなけ

ればならない。基準・標準は国際標準を含み State-of-the-Art( 新の技術)のものでなければなら

ない。しかし、イノベーティブな機器、新しい機器の設計開発においては、設計・開発者はこの

State-of-the-Art の基準・標準を認識できなかったり、知り得なかったりすることがある。また、

State-of-the-Art の基準・標準が存在していない場合が多いことも考えられる。この場合、設計・

開発者がこれを作り出さなければならない。これが特許となり、将来、国際標準として公開するか

又は公開せずにブラックボックスとする判断が企業戦略となる。このように企業又は設計・開発者

は将来の標準化を視野に入れて行動しなければならない。特に設計・開発者には設計へのインプッ

トになるべき基準・標準(国際標準を含み)を知らしめる教育が大切である。また、設計・開発者

は文書化された基準・標準(国際標準を含む)には古い規格が存在し、State-of-the-Art ではない

ことがあることを十分認識しておかなければならない。

2.国内環境分野

2-1.JIS をはじめとした質の高い各種規格・基準及びガイドライン作成の促進(経済産業省と厚生

労働省の更なる連携)

医療分野の国際規格は、ISO:846, IEC:191、合計 1037 件である。一方、医療分野の JIS は 459

件であり、国際規格に対応しているものは 276 件である。JIS は国際規格をベースに作成されてい

るものが 30%弱であり、決して国際性が高いといえないのが現状である。また、これらの JIS のう

ち、約半数が薬事法、計量法等で使われていることが特徴である。

JIS 規格は、それぞれの業界が担当して作られているが、国際規格が発行されてからその JIS が

発行されるまでには大変長い時間を要している。例えば、JEITA のデータによると 5年から 10 年の

遅れが見受けられる。このように JIS 化における課題としては、①国際規格が JIS 化されていない、

②JIS 化に時間を要し、タイムリーではないことが挙げられる。これらの問題は明らかに日本の企

業の国際競争力を失わせることになり、輸出拡大の大きなブレーキになると思われる。

医療イノベーション 5か年戦略によると医療機器に関する国際標準化の推進等に関して次のよう

に言及している。

(1)日本発の医療材料や診断・治療装置の規格化及び評価方法等の標準化に加え、それらに用いる

主要部材に関する信頼性や耐久性等の基準設定を国が主導して一体的に進める等、戦略的に国

際標準化を進める。

(2)今後、世界的な成長が期待され、我が国が優れた技術を有する分野(特定戦略分野)の1つと

して先端医療機器を対象に、国際競争力強化のため国際標準の獲得を推進する。

(3)国内の QMS 基準(医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準)と ISO13485

との一層の整合性を図るとともに、製品群毎の調査方法の導入等、QMS 調査の効率化と質の向

上を図る。

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また、審査基準の明確化の項では、「(2)世界に通用する革新的医薬品・医療機器の開発に資する

よう、レギュラトリーサイエンス研究の成果を活用し、国際的に整合性のとれた革新的医薬品・医

療機器の審査のガイドラインを整備する。また、審査の国際的ハーモナイゼーションを推進すると

共に、日米欧等の審査当局が審査や相談、GCP 実地調査等に関する協議に向けた意見交換を引き続

き実施する。特に医療機器について、日米欧等の審査当局間における HBD(Harmonization by doing)

等を通じて、日米欧等との同時開発を推進する。」とされている。さらに医療機器の特性を踏まえ

た規制のあり方の検討の項における②登録認証機関が行う認証基準については、「 新の国際的な

基準とも整合性が図られるよう、JIS 規格だけでなく、国際的な基準を採用し、認証制度の合理化

を進める」としている。これらの考えに基づき国際標準化を進め、国際規格を積極的に使っていか

なければならない。国際標準化の促進のためには、医療機器の国際標準のセクレタリを担当できる

組織(例:米国・AAMI 等)を設立して、積極的に TC のセクレタリを取得し、日本主導で標準化を

進めることが重要である。また、場合によっては英文の国際規格を規制に利用して行く。

2-2.知的財産化の促進と国家的援助(主に海外特許)

1995 年に WTO/TBT 協定が成立し、任意規格/強制規格ともに国内規格を国際規格に適合すること

が求められるようになった。さらに 1996 年に WTO 政府調達協定が成立して、政府調達は国際規格に

適合することが義務化されたことにより、国際標準化の重要性は益々高まっている。

標準化戦略と知財戦略は企業における有力な事業戦略であるにも関わらず、各々独立した手段で

あると考えられてきた。標準化は技術を普及させる手段としてとらえられる一方、知的財産権の活

用は技術の独占によって自社の競争力を高める手段としてとらえられており、外見上、両者は目的

を異にするものであるからである。

しかしながら、近年、特許技術が標準に必須の要素として含まれる例が増えてきた。また、欧米

を中心として、標準の必須特許 1(以降「規格特許」)に関する数々の知財係争が起こったことか

ら、標準と特許はもはや独立した手段ではなく、両者を組み合わせた戦略が有力なビジネスツール

になると考えられるようになってきた。標準化戦略と知財マネジメントを連携し、知財戦略・標準

化戦略と研究開発戦略・事業戦略を一体として考えることは、企業利益を獲得するための一手段と

して重要となっている(図 5,6)。

標準化に関する政策を考えるためには、企業が所持する知的財産をどのように取り扱うかに関す

る意思決定問題を考える必要がある。企業が知的財産を取り扱う場合、基本的には知的財産を①公

開するか、②権利化するか、③秘匿するかという 3つの選択肢が存在する。以下では、それぞれの

効果を簡単に確認した後、標準化を踏まえた上での企業の知的財産マネジメント戦略について考察

する。

(1)知的財産の公開

企業は学会発表や特許出願情報の公開、インターネット掲載等の様々な方法を通じて知的財産を

公開する事が可能である。これにより、技術進歩を促し、産業全体の発展に大きく寄与する事がで

きる。また、知的財産を所有する企業にとっても、公開を通じて他社が有する類似の知的財産の権

利化を防ぐ等のメリットを享受する事ができる。その一方、知的財産の公開に伴い、他社の模倣を

促進し、市場への参入を促すことにより、公開企業の利潤を損なう可能性も存在している。

(2)知的財産の権利化

知的財産は政府等の公的機関等に出願し、認められれば知的財産権として保護を受ける事が可能

である。特許権や商標権の取得がこれにあたる。権利化を行う事で、自社の知的財産を他社に利用

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させない事が可能になり、ライセンス収入の獲得や他社の市場参入をコントロール可能になるよう

なメリットを得る事ができる。しかし、権利化を行うにあたっては、公的機関の要求水準(特許権

の場合の新規性等)を満たす必要があることに加え、既定の保護期間を超えた場合、権利化を行っ

た知的財産権は一般に供される事になる。更に様々な形のコスト(申請費用、知的財産権の管理費

用等)の存在といったデメリットも存在している。

(3)知的財産の秘匿

ノウハウや権利化に見合わないものや権利化しても権利侵害を見つけるのが困難な知的財産は秘

匿されることが多い。企業は秘匿する事で模倣を阻止し、知的財産を独占する事が可能になる。営

業秘密を利用する事により他社が不正にその秘密を取得することは防ぐことができるが、他社が独

自にその知的財産を開発し、権利化した場合に関しては、これを防ぐことができない。また、営業

秘密を利用する際には、その知的財産に関する情報を秘密にするための正当な処置をとっている事

が必要になるため、情報の管理費用も考慮する必要がある。これらの知的財産マネジメントの効果

を図 7に取りまとめた。

2-3.国内ラウンドロビンテストの環境整備

① 現状の課題

・提案の説得力を出すのは国際的実績か信用に足りるデータのどちらかである。新しい分野でこ

れらを先導するのは企業よりも大学等研究機関であり、大学等研究機関がバックデータを示せる

環境つくりが必要である。

・規格会議の前後に開催国及び周辺国の出席委員の元を訪問することは連携を組む相手を探すな

どをする上で重要であるが、標準化関連の国予算での出張ではスケジュールが組み難い。

・標準化活動に積極的に参加できる若手の育成(産官学を問わず)が必要である。

・アカデミアの意識改革を促し、標準化活動を強化するための研究費が獲得できる仕組み作りが

必要である。

② 提言

・医療機器関係の国際標準化活動において、目的を達成するためにどのような戦略を取るのかに

ついての問題意識を産官学(特に産官)で共有し、それぞれの役割分担を明確にすると共に、そ

れらを世間一般に周知する。

・関連学会がラウンドロビンテストを認定し、学会が国内審議団体資格を取得することを促す施

策を進める。

・科研費等の研究予算枠創設(標準化枠)による更なる研究費フローを促す仕組みを作る。その

際、論文のみならず、必ず標準化活動の実績も重要視する採択ルールを設け、機関内ラウンドロ

ビンテスト、標準案の Scope を規定する研究、複数機関で同実験を行いデータ共有する等の機関

間ラウンドロビンテスト等を推奨する。

2-4.窓口又は共通事務局の設立及び同窓口による情報収集及び情報配信

① 現状の課題

・ISO/TC212 内の臨床検査に関する統一した窓口が厚生労働省内に存在しない。また、オブザーバ

に指名されている国の係官が委員会に出席することは殆どなく、ISO 活動を理解してもらうこと

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は極めて困難である。

・眼鏡業界は卸売りや製造部門は医療器具製造販売の登録を受けて事業を展開しているが、小売

店は完成品眼鏡が雑貨扱いなので雑貨品販売の業種に分類され業界全体での国際規格への足並

みが揃わない現状にある。

・医療システム自体は各国に独自の体制があり、厚労省としても関心を示し難い。

② 提言

・関連学会・協会と連携し、我が国独自の規格を作成する体制を構築する。標準化のためのデー

タベース構築にあたり、他国の規格等の情報収集・整頓・整理・解析や事故・ヒヤリハット事例

の情報収集と解析を行う窓口等を設立する。

・現在、ISO/IEC は全て経済産業省が主管しているが、10 数個ある医療機器関連の全ての TC は厚

生労働省(国衛研)が主管するべきと考える。

・同一産業界内部での国際規格化への横の連携を強化する。業界団体のイニシアティブを強化す

る。

2-5.厚生労働省又は PMDA に担当部門を設立

① 現状の課題

・医療機器分野の国際標準化を戦略的に進める組織が必要であるが、経済産業省の環境生活標準

化推進室では、医療関係専門家が少なく、戦略性・迅速性に欠ける。また、標準化された後、医

療行政へのフィードバックが自由にできない。

・厚生労働省側の国際標準化の戦略的核となる組織が曖昧であるため、日本全体としての方向性

がわかり難い。

・米国 FDA と対等に渡り合えるような日本側の組織が必要である。

・医療機器の中には、海外からの輸入品が殆どであるものがあり、ISO/IEC 総会に民間から出席す

る人材がいない。しかし、このような製品は国民の健康上重要であるため、日本の審査機関(PMDA

等)から国際標準の総会に出席すべきである。

・医療機器分野の標準化は ISO での審議以外に各国との継続的な打ち合わせや説明が不可欠であ

る。

② 提言

・厚生労働省の国際標準化の取り組みは諸外国に比べてきわめて不十分であり、医療機器分野の

国際標準化を戦略的に進める組織として PMDA と国立医薬品食品研究所に国際標準化担当部署

を設置する。

・PMDA は医療行政への標準化の反映やガイドラインへの標準化のフィードバック、審議団体への

財政的支援を、国立医薬品食品研究所は日本の医療技術・医療機器の国際競争力強化の面での役

割を経済産業省と協力して果たす。

・国立医薬品食品研究所の国際標準化担当部署は、国際幹事、コンビーナ等を積極的に引き受け

るとともに、その成果を個人の業績に反映するシステムを構築する。

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・PMDA と国立医薬品食品研究所の国際標準化担当部署は国内審議団体との緊密な連携のもとに国

際戦略を立案実行する。

・経済産業省の医療機器標準化担当者と PMDA・国立医薬品食品研究所の国際標準化担当者の人的

交流を行う。

・経済産業省と厚生労働省は、医療行政への標準化の反映やガイドライン事業等で、より一層の

緊密な連携を行う。

2-6.国による国際標準化の重要性を周知するための啓蒙活動

① 現状の課題

・医療機器分野の国際標準化を担当する人の業績が企業内や大学で正当に評価されない。

・標準化担当者はボランティアで参加しているため、所属団体の業務の合間に作業せざるを得ず、

十分な時間が取れない場合が多い。また、海外専門家を説き伏せるために多大な努力が必要とな

る。

・国際標準化の重要性を周知する機会が十分でない。

② 提言

・経済産業省が実施したように、厚生労働省も 100 者訪問を実施し、国際標準化の重要性を企業

に理解してもらう努力をする。

・その際、医療機器関係の国際標準化戦略を厚生労働省で策定し、企業や大学に国の方針として

伝える。

・企業や大学の人事評価制度に国際標準への貢献度と成果を加え、医療機器分野の国際標準化を

担当する人の業績が企業内や大学で正当に評価されるようにする。

・大学のカリキュラムに標準化に関する講座を設け、若い世代に標準化の重要性を理解させる。

・経済産業省は規格協会の組織を BSI、AFNOR、ON、DIN 等のような建物に集約し、経営者層を含

めた国際標準化の啓蒙活動(講議、講演等)及び各 TC の情報収集及び情報交換・配信を集中的

に行う。

2-7.十分な国内 TC 体制の確立

① 現状の課題

・国際標準を戦略的に進めるための全体像、実現するためのロードマップが無い。従って、関連

する規格を継続的且つ連続的に十分に提案出来ていない。領域を網羅的にカバーする規格体系と

なっていない

・提案テーマの審議、各国専門家への PR や内容説明が十分に出来ておらず、提案から規格成立ま

で時間がかかる。

・提案テーマの内容について国際的に通用する内容に練上げるための産業界、大学、研究機関及

び審議団体の連携が不十分である。

・ISO 総会や SC、WG で各国と討議しつつ、我が国の意見を適確に反映する規格とするためには、

各国専門家と張合える人材が必要であるが、未だ少数である。総会以外の場でも意見交換が出来

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るハードウェア(場所、機材)、ソフトウェア(各国専門家を知る人材、派遣する資金)が不足

している。

② 提言

・国際標準の全体像、実現するためのロードマップ、規格体系案を策定する。

・審議団体を中心とした提案テーマの練上げに関して、国際規格提案するために産業界、政府、

大学や研究機関の連携を強化する。特に、他国に先行して提案するために、先行する企業や研究

機関の協力と標準化への理解が必要である。企業側へは先取標準化の理解を得ると共に、積極的

関与を求める。企業側の人事評価制度へ標準化への貢献の反映を求める。

・大学に対しては研究者の協力が不可欠であるが、大学の研究者の評価は論文中心であり、国際

標準化に協力しても評価対象とならない。このため、大学の研究者の評価制度に標準化を加える

必要がある。

・ISO 審議で各国専門家と渡り合える人材を確保する。特に、現在活躍している資質のある人材に

継続的に活躍させる仕組を作ることが必要である。中でも、有能な企業の方に定年後も継続的に

協力を得る仕組が必要である。また、将来を担う、中堅又は若手の人材確保と継続的派遣、育成、

評価制度への反映が必要である。

・国の国際標準化への積極的関与を PR するため、ISO 総会への厚生労働省及び経済産業省の出席

が必須である。

・各国専門家と ISO 総会以外で意見交換できる会議場と会議設備の確保が必要である。

3.国際活動分野

国際規格策定における国際活動分野といっても国内規格である JIS との関係は切り離すことがで

きない。WTO/TBT 協定以降、加盟国は国際規格をその基礎として用いなければならない。医療機器

においては国内の承認/認証基準とも深い関係があり、輸出に関しては輸出先国の薬事法に基づく承

認に影響し、ISO 及び IEC の国際規格策定のための国際会議や活動に参画していない各国への波及

もある。

日本発又は日本の主張を国際規格に取り入れて行くことは中・長期的にも「ものづくり国家・日

本」の重要な課題である。 近の JIS は国際基準の制改定によって、その内容を JIS へ反映させて

いるケースが多いが、その作業のためのタイムラグも生じている。国際基準が先なのか、JIS が先

なのか、グローバル経済の中における JIS のあり方、利用のしかたを含め、新たな切り口から国と

してのフレームワークの再構築が必要である。

国際活動を活性化するためには「2.国内環境分野」にも言及されている「厚生労働省又は PMDA 内

に担当部門を設立」する等の国内環境の充実及び仕組み作りが欠かせない。医療機器の国際規格策

定には医療機器であるがため産官学の連携構築も不可欠である。

国際活動分野においては関係工業会等に依存しているケースが多い。専門性を持つ企業が加盟す

る工業会等に依頼されることは当然であるが、日本発又は日本の主張を積極的に国際規格へ反映さ

せるために、国としてそれを総括し、積極的に支援する体制を構築することが求められる。これら

が日本発の国際規格作りにつながり、既に国際規格となっている規格に対し、どのように又は何を

日本の主張として盛り込むのかという具体的な活動を可能とする。

デリゲーション・リーダー、エキスパート(以下、デリゲーション・リーダー、エキスパートほ

か国際規格策定業務にかかわる人材を含め「エキスパート」と表現する)を抱える企業・経営者に

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国際標準化活動の理解がなければ、満足できる結論を得ることは不可能である。重要な要素として、

エキスパートの企業・経営者における評価が挙げられる。国際規格策定業務には多くの時間と費用

がかかる。企業・経営者におけるエキスパートの評価が適切に行われない場合、エキスパートのモ

チベーションにつながらず、意欲的な活動を期待できない。企業・経営者に国際規格策定業務の重

要性を理解させるのは「ものづくり国家・日本」という国の役割である。

以下、各項目に関して具体的な提言を記載する。

3-1.知識、語学力及び論理的展開能力に長けた人材の育成

① 提案施策の必要性

日本発又は日本の主張を取り入れた国際規格を成立させるためには、それに取組むことができる

人材の育成とその継続/継承が不可欠である。適切な人材の育成ができなければ、エキスパートとし

ての活躍やコンビーナやプロジェクトグループリーダーを担当することができず、日本発の規格策

定は難しい。また、コンビーナやプロジェクトグループリーダーを担当せずとも日本の主張を明確

に提案することも難しくなる。国際規格策定においては策定時のみでなく、その後の見直しにおい

ても日本の主張を継続すべきであり、引継ぎを含め継続した人材育成の仕組みが求められる。

エキスパートに求められる要素として下記に掲げる項目は不可欠なものとなる。

・当該国際規格に関する広範な知識

・国際会議及びその前後で実施するロビー活動等で使用される語学力

・日本発又は日本の主張が理論的にも現実的にもリーズナブルであり、各国エキスパートが納得

できる論理的展開能力と規格の構成を作成できる能力

・長期継続して国際規格策定に関与できる人材

・日本発又は日本の主張を取り入れさせるというモチベーション

② 配慮すべき事項

・エキスパートを抱える企業の規模

・人材育成に掛かる費用及び時間

・長期的に継続関与できる人材の発掘。国際規格策定には非常に多くの工数を必要とする。企業・

経営者の理解がないと企業からのエキスパートが長期に渡る活動ができない。

・企業の本業でない業務に長期に渡って携わるエキスパートの企業内ポジション及び待遇・評価

③ 具体的施策案

国として「ものづくり国家・日本」をどのように将来的に渡り継続的に発展させるかについての

1 つの施策として、具体的に国際規格化を推進するための国際規格化に関与する企業、団体、エキ

スパートをサポートする仕組みを明確にする。

(ア) 当該国際規格に関する広範な知識

・医療機器には多くの製品カテゴリーがある。エキスパートに対する広範で深い技術的研究会の

開催。

・日本として行政及び業界の方針を明確にするための研究会の開催。

・国際規格策定にかかわる手順、仕組みの研修会。

(イ) 国際会議及びその前後で実施するロビー活動等で使用される語学力

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・英語・英会話力の向上。

・国際規格には専門用語を多く必要とする。そのための研究会開催。

・実際の国際会議や前後におけるロビー活動、また中間時における他国のエキスパートとのミー

ティングへの参加。

(ウ)日本発又は日本の主張が理論的にも現実的にもリーズナブルであり、各国エキスパートが納得

できる論理的展開能力と規格の構成を作成できる能力

・論理的展開能力開発のための研究会、研修会の開催。

・印象に残り、理解のしやすいプレゼンテーションのための研究会開催。

・規格化すべき内容と規格化すべきでない内容を理解し、規格構成が出来るようになるための研

究会開催。

(エ)長期継続して国際規格策定に関与できる人材

・現在、エキスパートを抱える企業、団体等への行政からの依頼。

(オ)国際規格策定に関与するエキスパートの評価、モチベーションの維持・向上

・現在、エキスパートを抱える企業、団体等への行政からの依頼。

・エキスパート表彰や特別功労賞等の設定。

④ 現状及び補足説明

・国際規格は PWI(Preliminary work item)、NP(New work item proposal)として提案されたドラ

フトに対し、各国のエキスパートによって、その内容が審議され、それぞれの段階に応じて投

票が実施され決定されて行く。規格のドラフトの内容を審議する場は基本的に国際会議である。

開催間隔は各 TC/SC/WG によって違いがあるが、国際会議と国際会議の間にインターリム会議と

称して、大小さまざまなグループが会議を開催するケースも多い。 近では e-mail を利用した

エキスパート間のやりとりもある。使用言語は基本的に英語である。

・国際規格は PWI、NP として提案されるケースが多いため「受け」や「待ち」が多い。日本から

PWI、NP を提案するとなると、何を提案するのかの吟味と主担当のエキスパートのリーダーシ

ップ力や語学力、知識力が必要。

・国際会議の場で他国のエキスパートが納得する技術的な背景及び現実の市場状況を専門的な立

場から積極的に発言することが求められる。

・その為には「知識」、「語学力」、「論理的展開」を身に付けたエキスパートを育成することが不

可欠である。

・多くの場合、国内審議団体として当該専門性を持つ工業会等団体に依存しているのが実情であ

る。

・各審議団体においては国際会議で審議される規格に応じてエキスパートを選出し、国際会議に

望むが、技術的背景を持つエキスパートは技術的能力が主であり、往々にして英語を苦手とし

ている人材が多い。

・技術的な専門性を持つエキスパートも特定の医療機器のみの知識は持っているが、関連医療機

器の専門知識を持っているケースは少ない。

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・工業会等における委員は、所属する企業から選任された委員によって構成されるが、本業とし

て英語を駆使することは少なく、英語に対する語学力向上は自己研鑽に頼る場合が多い。企業

によっては社員のレベルアップとして語学能力向上に力を入れるところもあるが 近の景気状

況から余裕のない企業も多く、また中小企業においては難しさがある。

・国際会議の場で英語を母国語又は流暢に使用する他国のエキスパートと対等に意見を交わし、

論理的な展開を行う事を期待することは難しいのが現状である。発言しても言葉足らずとなり、

使用すべき単語が思い出せず、或いは知らないために説得力を持ったコミュニケーションが出

来ず、ためらいや躊躇が出ることも多い。そのため、どうしても「待ち」の姿勢や「支障がな

ければ良い」との判断を取らざるを得ず、日本の主張を他国のエキスパートに納得させるまで

に至っていないケースが多い。

・国際規格化等に関与する委員は企業から選任されるが、選任される委員の多くは現役で 先端

技術の研究・開発を行っている人材ではなく、その背景を持っていた或いは程度技術的な内容

を理解できる社員が選任される場合が多い。すなわち、第一線の技術者でないケースがある。

・委員として選任されても国際活動への深い関与を敬遠し、本業への影響を軽減するよう暗に動

いているケースもある。国際規格策定業務は企業内で主業務として認知・評価されておらず、

出来れば早く交代したいと考えている委員が多いのが実情である。これは現役技術者であろう

と、現役でない技術者であっても同様である。

・国内委員会において技術的な専門性を持っていても語学力がないからとエキスパートを断るケ

ースもある。

・企業内における国際規格策定業務に対する理解不足からか、国際会議のための海外出張の稟議

申請に抵抗を感じているエキスパートも存在する。

・ワーキンググループ(WG)及びプロジェクトグループ(PG)においては参加できるエキスパートの

人数を制限しているグループもある。この背景には欧米の積極的な国のエキスパートが多数参

加し、国際会議において少数エキスパート参加国を暗に威圧し、多人数参加国の意見が主体と

なって決定された経緯もある。

・1 ヶ国における参加エキスパートが制限されている会議においても多種にわたる内容の国際規

格が審議されることもあり、参加エキスパートが全ての案件に専門性を持っていることが難し

いケースもある。従って、エキスパートによっては十分な専門性を持っていない規格の審議に

おいて、日本の主張を強く発言することが出来ないケースがある。

・日本の国内委員を長期間に渡り担当していたとしても、国際会議・活動に携わるエキスパート

としては数回の国際会議又は数年の担当期間を過ぎると交代するケースが多い。任期を定め、3

年毎に交代するルールを持つ国内委員会・グループもある。それに対し欧米のエキスパートは

10 年以上にわたり同一の会議に参加し、当該規格の技術的内容の詳細に関する専門性を持って

いなくても規格策定の歴史や情報の継続を含め熟知しており、その国としての主張を強く発言

している。

・日本のエキスパートも長期にわたり国際規格に携わることができる環境が必要である。

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・日本のエキスパートは企業からの選出が主体である。日本発又は日本の主張を取り入れられた

国際規格でなくとも、国際規格によって要求事項が決まり、それに適合するように設計すれば

良いという姿勢もある。

・エキスパートの業務を「やらされ感」と感じているエキスパートも存在する。

3-2.PMDA 規格・審査担当官の国際会議への積極的参加

① 提案の必要性

WTO/TBT 協定において「強制規格を必要とする場合において、関連する国際規格が存在するとき

又はその仕上がりが目前であるときは、当該国際規格又はその関連部分を強制規格の基礎として用

いる。(第 2.4 条)」とある。現状において、国際規格策定業務の多くは工業会等団体に依存してい

るケースが多く、PMDA 規格・審査担当官が常に 新の国際規格作成進捗状況を掌握し活用すること

は難しい状況である。我が国の医療機器の技術レベル、安全性、品質、有効性に関しては世界的に

もトップレベルである。WTO/TBT 協定に基づき、行政が企業と協業して医療機器の国際規格策定を

進めることは「ものづくり国家・日本」の中・長期戦略に必要不可欠である。治験、認証/承認に関

係の深い国際規格策定においては PMDA 規格・審査担当官の国際基準活動への積極的な参加が望まれ

る。これは国内承認/認証基準及び日本の医療機器を海外へ輸出する場合にも深く関係がある。

② 配慮すべき要素

・国際会議における各国エキスパート参加人数に制限がある WG、PG がある。ISO/TC172/SC7 にお

いて WG への参加は各国 5名、PG は各国 2名までとのエキスパート制限がある。

・PG(IEC は PT)は基本的に 1つの国際規格策定を担当する。PG での審議は医療機器の技術上の

限界を含めた討議が必要であり、どうしてもその医療機器を開発・設計している企業からの参

加が望まれる。(Vertical Standard:個別規格の場合)

・WG においては 1つの規格のみでなく、複数の規格を審議しており、これも内容が医療機器の技

術的限界を含んだ審議となるため企業からそれぞれのエキスパートを選出することが望まれる。

・Horizontal Standard(共通規格)の審議においては複数の医療機器に影響を及ぼすため、PMDA

規格・審査担当官と企業との協業が望まれる。

・生物学的安全性のような分野の審議においては PMDA 規格・審査担当官と企業との協業が望ま

れる。

・審査制度に関する検討が必要な国際規格の審議においては行政として PMDA 規格・審査担当官の

参画が必要となる。

・それぞれの国際規格策定において、その内容に応じ PMDA 規格・審査担当官と企業からのエキ

スパートとの業務分担を明確にし、日本発又は日本の主張をどのように展開するかを協議した

上で参画することが望まれる。

・国際基準策定において、国際会議への参加のみが国際規格策定への参画ではないが、行政と企

業との考え方の相違が存在する場合は事前の協議が不可欠である。

・PMDA 規格・審査担当官の国際会議出席に関しては少なくとも当該国際規格の成立、初回の SR

(Systematic Review)まで同一人物の参加・関与が望まれる。国際規格策定業務は継続性が大

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切であり、米国・FDA/ANSI、英国・BSI においては同一のエキスパートが1つの国際規格の成

立までではなく同一 WG、PG に 10 年以上にわたり参加しているケースがある。

③ 具体的施策案

・PMDA 内に国際規格策定をサポートする部署又はグループを設置する。国内審議団体において

PMDA のサポートを必要とする国際規格の策定又は改定等が発生したと認識した場合は PMDA の

当該部署又はグループと協議を行い、日本の主張をどのように展開していくか、PMDA 規格・審

査担当官の国際会議出席を含め決定、進められる仕組みを作る。

・PMDA 内の国際規格策定をサポートする部署又はグループは国内審議団体からの申請・協議以外

に日本発又は日本の主張を取り込むべき対象と認識したものに対し、国内審議団体と協議を行

い、日本の主張をどのように展開していくか、PMDA 規格・審査担当官の国際会議出席を含め決

定、進められる仕組みを作る。

・医療機関、医師、大学等への協力を依頼できる仕組みを構築し、必要に応じ産官学の協業を可

能とする。

・上記枠組みの中で、日本発の国際規格の素案を作成して行く仕組みを作る。

④ 現状及び補足説明

・アメリカにおいては業界団体が定期的な会合を持ち、ANSI の枠組みの中で業界規格の素案を作

り、ISO 国際会議においても規格素案として多くの支持を得ているという背景がある。

・日本のエキスパートは業界主体であり、世界でも先端的なメーカーに所属する人材がエキスパ

ートとなっているため、その分野での発言は尊重されるが、欧米のように規格の構成や流れを

導くというところには至っていない。

・国際規格の内容によって、行政・PMDA 規格・審査担当官の参加を求めたいケースがある。しか

し、そのようなケースは当初からでなく作成途中からエキスパートが感じる場合が多く、行政

に相談し難い状況がある。また、そのルートも明確でない。

・往々に行政と企業との考え方に相違があり、日本発又は日本の主張を一本化する場所がない。

場合によっては相互平行線となる。

・企業のエキスパートから以下のような様々な意見がある。

a) 行政、医師、大学からのエキスパートに対し「気を使わなければならない、やりづらい」

と敬遠の考え

b) 日常的なコミュニケーションがしっかり取れて情報・意見交換ができれば賛成という考え

c) スペシャリストの育成ができ、行政と太いパイプを構築できるとの考え

d) 当初から「行政と企業の考えは違うものだ」との考え

e)「治験に関与する部分」、「承認・認証に関係のある部分」のみ行政に参加してもらいたい

との考え

・国際規格が成立すると基本的に JIS 化を行うが、JIS 化のために多くの労力、時間、経費が掛

かる。

・国内認証/承認に国際規格が引用されている部分、JIS が引用されている部分がある。JIS 化に

時間が掛かっており、国際規格と国内規格・規制の関係性をどう定めるかを含め、国内認証/

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承認をスムースにするために行政による理解、PMDA 規格・審査担当官による国際規格策定活動

への参加を希望する意見もある。

・他にもあると思われるが、ISO/TC172/SC7/WG9(Contact lenses)において、米国・FDA は「2005

年に ISO の全面受入れ」を宣言し、引用基準は ANSI から ISO に変更されている。従って、FDA

審査官も積極的に参加・関与している。一方、米国企業と FDA の意見は必ずしも一致していな

いとの意見もある。

3-3.アジア諸国及びその他の関係諸国との連携(共同提案、協力依頼、意見交換、事前説明、良好

な信頼関係の構築、アジア圏の共同市場化等)

① 提案施策の必要性

国際規格は作成の各段階において各国との審議、投票を経て決定される。従って審議の段階にお

いて関係諸国との連携は非常に重要な要素となる。また、日本発又は日本の主張を作成段階で取り

込むためには少なくとも照会段階(ISO では DIS、IEC では CDV)までに含める必要がある。

日本発の場合は、予備段階(NWI)において、各国が理解、納得できるかがポイントとなる。他国

発において日本の主張を取り入れるためには作成段階(WD)、委員会段階(CD)の各段階において如

何に各国が理解、納得して賛同を得られるように連携していくかがポイントとなる。その為に各国

エキスパート間での意見交換が不可欠である。日本の主張が明確である場合は国際会議前に事前説

明や協力依頼などのロビー活動が大切な要素となる。また、医療機器の場合、それを開発・設計・

製造をしている企業を持つ主な国はドイツ、アメリカ、日本であり、場合によっては共同提案を視

野に入れた意見交換も重要である。その他の重要な要素として、米国・FDA、英国・BSI 等の国家機

関のエキスパートとの良好な関係を構築することが挙げられる。彼らは安全性と有効性、機能を主

体として判断する場合が多い。技術的な背景のみでなく、ポイントをそこに置いた説明と意見交換

が求められる。

近年、国際会議の場に中国、韓国の国家機関のエキスパートが多数出席して持論を展開するケー

スがある。欧米諸国もアジア圏を意識しており、日本も SFDA、KFDA を意識し両国エキスパートと事

前に意見交換を行い、連携を持つことによって日本の意向を主張する必要がある。日本発又は日本

の主張を実現させるための連携として重要なことは実際の国際会議の場のみでない事である。国際

会議前に該当ドラフトの内容に日本の主張を反映させるためには、国際会議をリードするプロジェ

クトグループリーダーや WG のコンビーナと事前に日本の主張が適切である事を理解してもらう事

である。場合によっては、国際会議の前後にプロジェクトグループリーダーや WG のコンビーナを訪

問し、日本の主張を理解してもらう必要がある。プロジェクトグループリーダーや WG のコンビーナ

が理解すれば、ドラフトへ容易に取り込むことが可能となる。

② 配慮すべき要素

・国際会議以外における事前の意見交換や協力依頼に伴う海外出張に関わる工数、旅費等出張経

費に対する理解は一般企業において殆ど得られない。

・関係諸国との連携は、国際会議と違い、その時のみに留まらず複数回の交流が必要となる場合

がある。

・国際規格化のみで日本の医療機器が海外に障壁なく展開できるわけではない。各国薬事法対応

が重要なポイントとなる。 近では中国において独自の展開を行っているケースもある。前述

の PMDA 内の国際規格策定をサポートする部署又はグループにおいて、各企業及び他の情報源か

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ら各国薬事法の対応状況を収集し、必要に応じ WTO/TBT 協定に従っているかどうかを判断し外

交ルートを通じた活動も必要になる可能性がある。

③ 具体的施策案

・企業経営陣の意識改革とも関連するが、国際規格策定活動に対する企業経営陣の意識改革を大々

的に展開する。

・連携のための費用、特に海外出張に関わる諸費用を柔軟且つ複雑な手続きなしに拠出できる仕

組みの構築。

④ 現状及び補足説明

・改定規格において欧米勢と協同作業で実施している国際規格がある。

・ある WG の国際会議では技術的な討論が軽視される傾向があり、プロジェクトリーダー、オピニ

オンリーダーが製造実務に詳しくないため、事前にプロジェクトリーダーにデータと日本の主

張を連絡し、国際会議へ臨んだ時点で日本の主張が認められた事例がある。

・眼鏡レンズ業界においては米国のみ眼鏡事業構造が異なっている。プロジェクトリーダーが米

国人ということもあり、米国の独自規格を誇示する傾向がある。米国では特定の団体が ANSI

の枠組みの中で業界規格を作成しているため、日本との連携が難しいケースもある。

・開発・設計・製造までを手がける企業が多い欧州・米国・日本との連携は強いが、中国政府機

関は独自路線が目立つ。アジア圏の薬事規制の連携がない限り共同提案のような連携は難しい。

・技術力の高い日本製品ではクリアできる国際規格に対する日本の主張の場合、中国等の製品で

はクリアできないケースがあり、アジア諸国や他の関係諸国と連携できない場合がある。この

場合、同等レベルの製品を製造している国との協力関係構築が重要となる。

・国際会議に参加してこない Pメンバー国は投票において、殆ど「Yes」で投票を行う状況である。

日本として国際規格に盛り込みたくない事項、国際規格にすべきでない規格において、連携が

難しい場合がある。

・アジア諸国との連携といっても ISO/TC172/SC7 の P メンバー国は日本、中国、韓国の 3カ国の

みである。中国との連携は技術水準によって難しい場合がある。

3-4.科学的根拠に基づいた質の高い規格提案と丁寧な説明

① 提案施策の必要性

日本発又は日本の主張に対して理解を得るためには科学的根拠に基づいた質の高い規格提案を欠

かすことはできない。それを基に論理的展開を図り、各国エキスパートの理解と納得を得ることに

なる。その科学的根拠に基づくデータを取得し、試験方法を確立するためには膨大な時間とコスト

がかかる場合がある。これを現在のように企業及び企業主体のエキスパートで実施して行くことは

困難であり、日本発又は日本の主張を具体的に行うためには国家的なサポートが不可欠となる。ま

た、対象が医療機器であることから医療機関、医師の協力も必要となる場合がある。各種論文も重

要であり、産官学の協業が重要な要素となる一面を持つ。

国際会議に参加するエキスパートは全ての技術分野に長けている訳ではない。国によっては技術

的背景を殆ど持ち合わせていないエキスパートも存在する。各国エキスパートが納得する論理的展

開を行うためには科学的根拠に基づき、理解し易いプレゼンテーションも求められる。

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② 配慮すべき要素

・科学的根拠に基づくデータの取得や、試験方法を明確にする段階において、場合によっては企

業の開発/設計機密を表に出す事になる可能性がある。その扱いについて何らかの配慮や取決め

が必要となる。

・日本に基礎データがなく、それを研究している機関も存在しない場合の扱い。

・審議団体の規模、企業規模。

③ 具体的施策案

・科学的根拠に基づくデータ取得、及び試験方法の確立のための諸費用を柔軟且つ複雑な手続き

なしに拠出できる仕組みの構築。

・国の機関、大学等の試験研究機関の利用。

・PMDA 内の国際規格策定をサポートする部署又はグループにおける、必要なデータ取得及び試験

方法を確立できる機関の選定。

・各種文献検索や情報収集を容易にする仕組みの構築。

・産官学連携及び医療機関、医師との連携構築。

④ 現状及び補足説明

・米国・FDA/ANSI、ドイツ・DIN、フランス・AFNOR、英国・BSI 等、主要国は国内/国際規格に関

与する国家機関を持っており、知名度も高い。また、基礎データの収集や保持も行っていると

思われる。日本には JISC/JSA があるが知名度は殆どない可能性がある。

・欧州は元々の眼鏡産業発祥の地であり、眼鏡学等の研究機関や学識経験者も豊富で隠然たる力

を持っている。

・国際規格として定めるべき部分と定められたくない部分がある。精度や分解能、誤差等の課題

もある。

・ラウンドロビンテストが他国エキスパートから提案され、採択された場合、同テストを実施す

る必要があるが、時間と経費が掛かる。

・近年は裏付けのない提案は受け入れられず、共同実験の重要性が高まっているため、丁寧な説

明や科学的根拠は不可欠である。そのため、関係国への事前説明・協力依頼を欠くことはでき

ない。

・日本におけるデジュール標準提案を展開するには理論武装の強化が不可欠であるが、欧米に比

べて弱い。

・理論構築と検証による数値の提出は重要であり、日本が有利な情況を作ることも大切である一

方、責任ある提案を行うことが必要である。科学的な根拠を確立するために、人材育成は重要

な因子であり、大学・研究機関との連携も考えるべきである。

・例として眼科領域における人眼のライトハザードの問題が挙げられる。人眼における波長、放

射強度、照射時間に対する角膜、水晶体、眼底における影響のデータが日本にない。

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3-5.十分な事前調査(規格化の要求度、類似規格の存在の有無、各国の意見等)

「3-6.国際会議への参加」、「3-7.幹事国、コンビーナの取得」及び「3-8.国際鍵の誘致」のいずれ

にも関連するが、十分な事前調査が必要となる。アンケートでは、各規格の委員会等で把握してい

る情報に大きな差が見られる。各国のキーパーソンとの関係、技術的な背景、技術の優劣等も含め

て承知している場合と、殆ど把握していない場合がある。総合的な情報を継続的に学会、業界団体

に提供することが必要である。また、研究者及び企業からも情報を発信・提供できる共通の場が必

要である。

① 総合的な情報収集/解析の体制確立

規格等の情報を調査、集約するシンクタンク等を創設する。国の研究機関等に規格等を調査、解

析、データベース化する機関を創設する。人的及び市場/技術的な側面を調査する。

(ア) 業界/大学等の人の関係、情報収集

該当技術に係る各国の企業、大学、キーパーソン及び担当者等のデータベースを作成し、人脈を

開拓する。主要国の担当者で各委員会のキーパーソン等をマップ化する。

(イ) 技術/市場の解析

市場の解析/業界の現状、将来性について調査解析する。成長が予測される分野を先行する。潜在

的な市場の発見、その市場、規則にとって必要な規則の検討、リストアップを行う。市場調査及び

今後の状況把握も幾つかの観点から多面的な解析を行う。

・装置(サイズ、機能、使い勝手等)

・材料(薬品、金属、高分子材料等)

・アプリケーション(ソフトを含めた)

・運営(教育を含む)

・消耗品

・試験/評価方法

(ウ) 情報の解析/価値

各解析ついて点数解析、日本/諸外国の技術レベル、得意/不得意解析を実施する。また、標準化

の価値を明確にする。

・日本の業界のメリットと世界的な観点の価値(日本の業界の利益と世界的な人間の利益は必ずし

も一致しないため)

・標準化参加者の業績評価

② 人材交流

国内外の人材交流を促進する基金等を整備する。

・キーパーソンの日本への招待(学会、国際展示会等の場を利用したキーパーソンとの接触。研

究機関への招待)

・日本関係者の国際会議への定期的な派遣

③ 情報の公開/活用/周知徹底

解析結果に基づいて、シンクタンクから学会、各業界団体への紹介を行う。定期的な公開、議論

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する場を設ける。業界団体、企業等に該当規格の重要性、積極的な参加について、行政機関から定

期的に周知する。重要性が低下する、優先順位が変わった場合にも、その旨、周知する。幹事国、

コンビーナの交替等も戦略的な議論が必要である。

3-6.国際会議への積極的参加

アンケート等の結果から推測した結果、積極的に国際会議に参加できない理由は大き 3 種類のケ

ースが推定される。

・国際会議自体の情報がないために参加しない。

・明確なメリットが期待できない場合、企業では参加費用の認可が下りない。研究機関等の場合

は参加費用の確保が困難である。

・人脈、国際会議の経験が乏しいために参加を躊躇する。

「3-5.十分な事前調査」で示したように、日本としての方向性を明確にすると共に、標準化のメリ

ット/デメリットを明確にする必要がある。サポート、紹介等を推進することが重要である。

① 参加結果の情報集約

国際会議参加者は、シンクタンク、行政機関に審議内容報告し、情報の更新を図ることも重要で

ある。

② 参加結果の評価

客観的に判断する。国家的な利益がないと判断されたものは戦略的に参加しない。

・規格の会議で到達すべき目的、目標を明確にする

・人脈の紹介、開拓

3-7.幹事国、コンビーナの取得

アンケート調査結果からは、参加の糸口が大学における研究者のつながり、企業における長年の

海外活動で築いた国際機関とのつながりがある等の人的な関係で参加するケースのほか、該当する

製品のシェア等が高く、日本を無視することができない等の 2 つのケースが見られた。人的なつな

がりでは、大学、産業界の人のつながりが確保できない。学会、産業界両方に広範な人脈を持つ人

材が存在しないと接点がない等の課題が挙げられる。人脈を開拓するには相応の時間がかかるが、

該当業種の国際市場のシェアが高い場合、人的な関係、該当分野の技術的な蓄積の豊富さ等から、

幹事国等を獲得するチャンスは比較的大きいと思われる。

① 人脈の開拓

該当技術に関する各国の企業、大学、キーパーソン、担当者等のデータベースを作成する。主要

国のキーパーソンとなる担当者等を各委員会等でマップ化する。

② 人材交流

国内外の人材交流を促進する基金等を整備する。

・キーパーソンの日本への招待(学会、国際展示会等の場を利用したキーパーソンとの接触。研

究機関への招待)

・日本関係者の国際会議への定期的な派遣

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③ 情報の周知徹底

業界団体、企業等に該当規格の重要性、積極的な参加について、行政機関から定期的に周知する。

重要性が低下する、優先順位が変わった場合にも、その旨、周知する。幹事国、コンビーナの交替

等も戦略的な議論が必要である。

3-8.国際会議の誘致

国際会議の誘致に関しては、アンケート調査では、設問 8/その他の項目で IEC/TC62 SC62BC か

らの 1 件のみ記載があった。アンケート全体を通して、予算の確保の困難さの記載が多く、国際会

議の誘致提案までに至らないのが実情と思われる。2013 年度の ISO/TC212 国際会議はアジア地区で

開催される予定であるが、平成 24 年 8 月に開催された同国際会議において、韓国から積極的な誘致

が提案された。 終的にはコンビーナ及びその他の主要国の判断でシンガポール開催となったが、

韓国は政府として誘致に関するサポート体制が構築されている。日本委員も事前に誘致提案を検討

したが、作業量及び費用等の問題から提案に至らなかった。

① 会議開催場所

海外からのアクセスが比較的便利な都心に会議場を確保する。筑波国際会議場では海外エキスパ

ートにとって場所的に不便である。国際展示場のような広い場所ばかりでなく、10 数人から、100

人程度で国際会議を開催できる場所が必要である。

② 会議施設費用

都心のホテルでは価格的に開催が困難である。都心で開催する場合、指定された国際会議に限り、

開催費を補助するシステムを構築する。

③ 宿泊場所

所得水準の低い国の研究者でも宿泊が可能な価格の宿泊施設を提供する。例えば、ドイツのベル

リン DIN で国際会議を行う場合、周辺の DIN 指定ホテルに会議参加者は割安な価格で宿泊できる。

海外の会議参加者は、国際会議指定のホテルでは、比較的安価に宿泊できるようにホテル側と契約、

協定する等の仕組みを整備する。

④ 懇親会等の場所

適切な価格で会議後の懇親会が開催できることも重要な要素である。

4.公的予算分野

資料 1「3.③ 国の支援体制」を踏まえて、公的予算分野では次の 5つの施策を提言する。

・製品開発に係る研究費補助

・標準化活動に係る各種経費の補助

・審査期間の大幅な短縮と迅速な支給

・予算の複数年度化

・海外旅費の柔軟化

なお、施策を実施するにあたっては、対象とするプロジェクトの内容及び参加機関(者)によっ

て、きめ細かい配慮を行い得る制度設計とすることが望ましい。特に、参加機関として企業が含ま

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れる場合、その規模(例えば、大企業、中小企業、ベンチャー企業のいずれか)によって公費助成

の必要度が異なることに配慮が必要となる。また、大学、学会等の公的機関が参加している場合に

は、公的機関に特有の制約事項が個別に存在している可能性があることに注意が必要となる。

4-1.製品開発に係る研究費補助

「1.製品開発分野」について、製品開発に係る研究費補助を行うことによって、その製品開発を

推進することを提言する。研究費補助を行うにあたっては、次のことに配慮することが望ましい(別

表/①参照)

① 製品開発のプロジェクトには、通常、開発者側と使用者側の機関が参加している。公費助成の対

象となるプロジェクトの製品開発の種類がシーズ型(開発者側発)であるか、ニーズ型(使用者

側発)であるかによって、研究費補助をプロジェクト参加機関のいずれに多く配分すべきかが異

なる。

② 研究費補助の対象とする参加機関が企業の場合、その規模によって、公費助成の必要度に高低が

ある。中小企業やベンチャー企業の場合には必要度が高い。

③ 使用者側の参加機関は公的機関であることが多いが、使用者側発(ニーズ型)の製品開発の場合

には、当該公的機関の自費予算の一部投入が可能であることが多い。

4-2.標準化活動に係る各種経費(検証実験、国内・海外旅費、会議費等)の補助

「2.国内環境分野」及び「3.国際活動分野」について、標準化活動に係る国内外における各種経費

を補助することによって、その活動を推進することを提言する。各種経費補助を行うにあたっては、

次のことに配慮することが望ましい(別表/②参照)

① 検証実験

JIS 又は国際規格の提案を行う前の段階では、要求事項のうち、規格値を規定する、及びその試

験方法を定めるために予備実験が必要となる。また、その規格の審議の途中段階で、国内又は国際

的試験によって多数の試験機関による試験手順の妥当性確認及び規格値確認のための検証試験が必

要となることが多い。

この場合、JIS 作成においては、国内の既存装置で実施可能であることが多いが、国際規格の場

合には、外国提案の場合には試験装置を新たに作製又は購入する必要があることがあり、費用が発

生する。我が国の主張を国際規格に反映させるためには、エビデンスに基づく説明が重要なので、

検証試験への参加は必須と考えられている。

② 国内・海外旅費

面談会議のための旅費について、JIS の場合は通常、日帰りの国内旅費であって、一人当たりの

経費は比較的低額であるが、生産者・使用者・中立者を複数ずつ招集する会議を必要とすることか

ら、総額経費として相応の高額経費がかかる。国際規格の場合は、日本代表者とその支援者との少

数で済ませる場合が多いものの、国際航空運賃が高額である上に、現地宿泊費が数日間から一週間

かかるため、これもかなりの高額経費となる。

国際標準化機構(ISO)では、IT 化によって、面談会議を極力低減するようシステム整備を行っ

ているが、国際規格の場合で我が国と他国との意見が対立した場合には、数の原理に基づく投票に

掛けられる前に説得し、打開・妥協を図るための面談会議による活動が必要である。従って、特に

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他国責任者(エキスパート)と直接、討議及び妥協交渉ができる専門家の出席が必要となる。

補助の対象とする参加機関が企業の場合、その規模によって、公費助成の必要度に高低がある。

中小企業やベンチャー企業の場合には必要度が高い。また、大学、学会等の公的機関(政府関係機

関を除く)の場合には、国際会議出席がその機関本来の業務でない限り、公費助成が必要である。

③ 会議費

国内小会議の会議費としては、主に会場費が挙げられるが、自己設備(会場、事務機器:PC、プ

ロジェクタ、スクリーン等)を持たない場合を除き、経費助成の必要度は低いと考えられる。一方、

複数の SC/WG を含む TC 単位で開催する国際会議(会議数・参加者数ともに大規模になる場合)の開

催費(会場費、運営費等)について、公費助成が必要である。

④ その他の経費

例えば、通信費については、近年の IT 化の普及によって、低額化が著しく、請求手続きにかかる

労力を考えると、公費助成の必要はないと考えられる。また、資料費については、紙資料の配付を

作成費削減及び省資源の観点から廃止し、電子的配信に置き換えることによって、公費助成の必要

はなくなると考えられる。

4-3.審査期間の大幅な短縮と迅速な支給(別表/③参照)

① 経費補助の審査期間の大幅な短縮

契約締結日以後にしか発注できない等の制約がある場合、活動が開始できないため、実質活動期

間が数ヶ月失われてしまう。特にプロジェクト参加機関において、投入できる要員数・設備数が少

ない場合には、活動の適切なスケジュールでの遂行が阻害されるほか、国際的な活動の場合、達成

期限までに完了せず、完了した時には期限切れのために役に立たない事態が発生する恐れがある。

国際的活動で我が国の主張を通していくためには、早期の開始・完了が重要であるため、プロジェ

クトの案画・申請後、迅速な審査・契約締結が必要である。

そのためには、審査そのものばかりでなく、実績のある活動団体については、申請事務手続きの

簡略化、事務代行機関による過度の事前確認の是正、本省への進達標準事務処理期間の短縮等の改

善を行うことが望ましい。

② 迅速な支給

プロジェクト参加機関に自己資金がない、余裕がない又は自前公的資金は流用できない等の制約

がある場合には、迅速な支給が必要である。プロジェクト参加機関に一時立替払いさせる方式では

なく、現在既に一部で行われている「納品元請求書直送による助成元代行機関直接支払い」方式を

実績のある活動団体については、一般化することが望ましい。

4-4.予算の複数年度化(別表/④参照)

現在の単年度予算方式では、前述の契約締結日以後にしか発注できない等の制約に加えて、年度

末決算期日が早いため、1年の約 1/3 の実質活動期間が失われている。予算の複数年度化によって、

年度末決算期日に余裕ができ、かつ、年度初めの契約更新手続き期間中の活動中断がなくなるので、

活動を継続して進捗させることができる。また、活動の成果を現在よりも約4か月も早く提出でき

ることから、国際的な活動の場合、達成期限までに完了せず、完了した時には期限切れのために役

に立たないなどという事態の発生がなくなると期待される。この方式を少なくとも、実績のある活

動団体について、速やかに導入することが望ましい。

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4-5.海外旅費の柔軟化(国際会議前後に開催国及び周辺国在住の委員を訪問)(別表/⑤参照)

① 国際会議前後に開催国及び周辺国在住の他国委員を訪問等

国際規格の場合に我が国と他国との意見が対立した場合には、数の原理に基づく投票に掛けられ

る前に説得し、打開・妥協を図るために面談会議による活動が必要であることは「4-2.②国内・海

外旅費」の項で既に述べたが、意見が対立した他国の委員(エキスパート)と国際会議開催の前後

(会議の場ではなく、特にその前)に、個別に訪問して協議することは、双方の説明による背景の

理解によって意見調整できる可能性が高いと考えられる。しかし現在までは、海外旅費の助成範囲

制限が厳格に運用されてきたため、また、出張者の自己規制もあって、実行された例は稀である。

日本発の国際規格を制定させて我が国の産業育成を推進するためには、国際会議に直接関係する

事案について開催国及び周辺国在住の他国委員を訪問して協議する場合、その追加移動旅費及び宿

泊費を海外旅費の助成対象とすることを提言する。

② 上記①以外(「抱き合わせ業務」)での取扱いの柔軟化について

「2.国際活動分野」の冒頭において、「知識、語学力及び論理的展開能力に長けた人材の育成」

について提言している。このためには、国際会議要員としての貢献が今後期待される、実務活動を

活発に行っている世代の専門家を国際会議に出席させて実地に訓練することが も有効と考えられ

る。

その専門家が企業に所属している場合と、大学・学会・その他の公的機関に所属している場合と

で、その専門家の事情は異なるものの、社業・大学業務・公的機関業務との「抱き合わせ」ででも、

国際会議に出席させての実地訓練を実施し易いようにするため、海外旅費の助成対象範囲を拡大し

て、柔軟に運用することを提言する。

これによって、企業に所属している専門家にとっては、勤務地を離れることで企業側に支障が出

やすいので出席に抵抗があったものが、国際会議の前後の日時を国外企業・機関との社業に使える

ので、国際会議に出席し易くなる。また、大学、学会及びその他の公的機関に所属している専門家

にとっては、自己裁量権限がない場合が多いので出席に抵抗感があったが、国際会議前後の日時を

国外との共同研究等の活動に使えるので、国際会議に出席し易くなる。

4-6.その他の支援

本項で掲げた支援項目のほか、2 及び 3 項に記述した国内・国際ラウンドロビンテスト、専門家

の人材育成、国際会議の招致等、国際標準化を推進するために必要と思われる一連の施策について

も助成対象とすることが望ましい。

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図1.医療イノベーション推進に係る現状と課題

図2.医療イノベーション5か年戦略の主な施策(医療機器)

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図3.医療イノベーション5か年戦略の主な施策(再生医療)

図4.品質マネジメントにおける製品実現の設計開発

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図5.世界各国の特許出願(出典:特許庁)

図6.国際標準化のステージアップ戦略

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図7.知的財産マネジメントの効果

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別表 研究費・経費等の公的補助における助成対象機関ごとの必要度解析 表中の記号の意味: 【必要度】 ×:特に低い、 △:低い、○: 普通、 ◎:特に高い、―:該当しない。

① 製品開発に係る研究費補助

② 標準化活動に係る各種経費(検証実験、国内・海外旅費、会議費等)の補助

参加企業の規模 公的機関等 標準化活動に係る

各種経費の補助 大企業 中小企業 ベンチャー 大学・学会・その他の公的機関

検証実験 ×

自己設備あり

自己設備なし

自己設備・資金な

一部自己設備あり

国内外旅費 △

一部自費予算投入

自費予算なし?

自費予算なし?

自前公費は流用できない。

×

自己設備あり

一部自己設備あ

自己設備なし

×

自己設備あり

会議費 a) 小会議

b) 国際会

議総会 ―

該当しない

該当しない

該当しない

数百人規模になることがある。

「等」の例:通信費 ×

IT により、極低額

×

IT により、極低額

×

IT、により極低額

自前公費は流用できない。

③ (経費補助の)審査期間の大幅な短縮と迅速な支給

参加企業の規模 公的機関等 経費補助審査期間の 大幅な短縮と 迅速な支給 大企業 中小企業 ベンチャー 大学・学会・その他の公的機関

自己資金はある

審査期間の

大幅短縮 契約締結日による制限があると、活動が開始できない。 特に、投入できる要員数・設備数が少ない場合には重要。

迅速な支給 ×

自 己資 金で立 替

え可能

自己資金に余裕

がない

自己資金がない

自前公費は流用できない。

④ 予算の複数年度化

参加企業の規模 公的機関等 予算の

複数年度化 大企業 中小企業 ベンチャー 大学・学会・その他の公的機関

自己資金はある。

自己資金に余裕

がない。

自己資金がない。

自前公費は流用できない。

メリット

年度末決算期日に余裕ができ、かつ、年度初めの契約更新手続き期間中の活動中断がなくなるので、

結果報告が早くなる。

デメリット ×

特にない

×

特にない

×

特にない

年度末・年度初めの学校等行事に時間を回せない

⑤ 海外旅費の柔軟化(国際会議前後に開催国及び周辺国在住の委員を訪問,等)

参加企業の規模 公的機関等 海外旅費の柔軟化

大企業 中小企業 ベンチャー 大学・学会・その他の公的機関

◎ ◎ ◎ ◎ 国際会議前後に

開催国及び周辺国在住の委員を訪問

国際会議の事前・事後根回しが必要な場合、実施しやすくなる。

国際会議の前後の日時を国外企業・機関との社業に使える

ので、国際会議に出席しやすくなる。

国際会議前後の日時を国外との共同研究等の活動

に使えるので、国際会議に出席しやすくなる。

特に、国際会議要員としての貢献が期待される、実務活動を活発に行っている世代の専門家の場合に重要な要因で

ある。 上記以外

この世代の専門家の場合、勤務地を離れることで企業側に

支障が出やすいので、出席に抵抗がある。

この世代の専門家の場合、自己裁量権限がない場

合が多いので、出席に抵抗がある。

参加企業の規模 公的機関等 製品開発に係る研

究費補助 大企業 中小企業 ベンチャー 大学・学会・その他の公的機関

シーズ型

(開発者側発)

×

自費で賄える

一部自費予算投

入可能?

自費予算なし?

自前公費は流用できない。

ニーズ型

(使用者側発)

×

自費で賄える

一部自費予算投

入可能?

自費予算なし?

自費予算の一部投入可能?

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政策的提言関連資料

資料4

医療機器に関連する医療情報規格への取り組み

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医療機器に関連する医療情報規格への取り組み

(1)背景

我が国は、医療情報システムに関して、国際的に見て高い先進性を持っている。レセプト計算用

のコンピュータが 1970 年代から導入され、その元データとなる処方オーダ等も早い時期から普及し

だした。その多くは医師等の現場担当者による発生源入力であったので、その後、これらのシステ

ムは電子カルテに発展し、医療における多くのデータが統合的に保存されるようになった。しかし、

概ね黎明期を通り抜けたと思われるこの分野は、未だシステムベンダーの群雄割拠の様相を呈し、

標準化に関する議論がなかなか前に進まず、システム間でのデータ交換に多くの労力が割かれてい

る。

(2)医療情報の標準化が進まない理由

医療情報規格の多くは、患者情報の保存・通信に際してのデータの形式に関するものである。い

わゆる OSI 参照モデルの第 6・7層であるプレゼンテーション層・アプリケーション層に大きく依存・

関連する。

データ形式の標準化は異なる種類のシステムの共存時に、その相互運用性を確保する効果がある。

具体的に言えば、複数のメーカーの医療機器があるときに、それらから発生するデータを統一的に

扱う等の効果が期待できる。OSI の第 6・7 層であれば、それぞれのデータの表現・運用の理念が根

本的に違ったり、粒度が全く違ったりしない限り、変換ソフトウェアによって相互運用性を確保す

ることができる可能性はある。しかし、そこには相互のデータ形式を分析し、変換する作業が発生

し、コストの上昇やシステムの品質低下の危険性が生じる。ソフトウェアの品質確保については、

医療機器分野において近年、その重要性が鑑みられており、IEC62304 をはじめとした品質確保・安

全確保の方策を採用する方向となっている。同規格をスムーズに満たすためにも、システムの標準

化による品質確保は重要である。

しかし、現在でも一社又は関連する会社によるシステムの囲い込みの手法を用いて、顧客の流動

化を防ぐ例は後を絶たない。一方、医療従事者は、標準化・規格化をすればシステムの再利用性が

上がり、通常それにより品質の向上が期待できることを理解していないことが多い。従って、相当

数の医療機関が情報連携を行うために、個別のコンバータ(データ変換システム)開発にコストを

費やすか、逆にその部分のコストを見込まなかったために低品質のシステム納入を許すこととなっ

ている。

(3)医療情報の標準化推進のための方策

医療は、データの共有化による患者へのメリットが大きいことから、標準規格の普及が望まれる

ものの、今後の市場規模の拡大がさほど期待できない。また、作成したシステムの他業種への流用

がほとんどできず、顧客の流動化によるシェアの低下のデメリットの方が、相互接続性の向上によ

るマーケット拡大のメリットよりも目立ってしまい、特に高いシェアを持つベンダーにとって標準

化のメリットが見いだされにくい。

従って、市場動向の中でメリットを議論するだけでなく、行政の立場から、強制的に定型化を進

めるという観点も平行して持つべきであろうと考える。現時点でも厚生労働省が推奨する標準規格

やマスター(項目コード集)等が存在するが、行政手続きにおいて義務化されていないとなかなか

普及しない。

行政的に定型化を進めると、自然とデータの質が向上することの典型例が、レセプトの電算化で

ある。導入当初こそ混乱が生じたが、現在、多くの病院がレセプトのデータを元に他の病院とのベ

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ンチマーク比較を行う等、標準化のメリットを享受している。

(4)日本から発信する国際規格のケーススタディ

a)日本が提案した国際規格の背景

電子データを大量に扱う放射線領域では医療画像に関する標準規格 DICOM (Digital Imaging and

Communication in Medicine) が大きな成功を収めているが、波形情報に関するデータの標準化は未

だ進んでいない。これを前に進めるべく、日本から提案した MFER (Medical waveform Format Encoding

Rule)は心電図、脳波、呼吸波形等の医用波形を相互利用するための標準規約であり、2007 年に

ISO/TS11073-92001 として採用された。しかし、実装案件は DICOM に比べると遙かに少なく、ISO の

WG メンバーからは臨床的な有用性がフィードバックされるような文献が見当たらないとの指摘を受

けている。現在、ISO において MFER を IS 化するための作業が続けられているが、前述のような指摘

に対しての対応が求められている状況にある。本ケーススタディでは、そのような要求に応えるた

めに、積極的に有用性を主張できるようなエビデンス作りを行うことを目的として臨床研究を行う

と共に、その過程で得られる MFER の運用面での経験を更なる国際規格策定のためのノウハウとして

蓄積することを目指した。

現回、検討対象とした現時点で現、医薬品の循環器系への影響を推し量る現現重要な心電図の現

時現隔を正確に大量に収集するために非常に有効な規格である。この分野は欧米諸国における標準

化作業が現時点で行われていないため、日本が先鞭を付け、十分な運用経験を持って世界をリード

することには大きな意義がある。

b)臨床研究で明らかにする標準フォーマットの有用性

在、・・可用性について検証を行うため、設で臨床研究を行っている。具体的には・・保存された

通常の導波形情報を元に、右前胸部や背側で単極誘導を計測したものに相当する波形(導波形)を

数理的に導出ることを試みている。在までに以下に示した症例の収集作業が完了し、・・有用性につ

いてはずれも肯定的な評価を受けている。

西医科大学:後壁の心筋梗塞症例で核医学検査を施行している・・例

北大学:心臓カテーテル検査を受けた患者の冠攣縮性狭心症・・・インターベンション 10

川大学:虚血・梗塞・健常全てを併せて・と程度

院の・・ついては従来の心電図記録を・・通換することにより・導に全て変換でき、・・通常の

1212誘導で解析にも有用であると評価されている。

・通常の 12 誘導では所見が認められないのに 18 誘導でのみ所見が認められるケースが少ないな

がらもあり、診断的価値を持つことが示唆される。

一方、18 誘導については、電位が全体的に低めで ST 変化を判断することが困難な例が多く、通常

より拡大して用いる必要があるということが問題点として指摘されている。しかし、MFER は、現在

多く使用されている画像フォーマットを用いた波形表現と違い、元波形を電位データとして持ち得

るので、拡大に際しての正確性が期待できる。従って、このような解析の有用性が見いだされれば、

更に元波形保存の方法として、統一性、つまり標準化が求められることになる。本ケーススタディ

は多分に狭い分野の規格についての検討であるが、日本から提案された医療機器の ISO 規格という

重要なアイテムへの関与が行え、有用な経験を関係者が共有できている。

(5)特に標準化が有用且つ焦眉の急である薬事分野

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情報システムが発達した現在、治験のデータも病院で発生した時点から電子的に処理される EDC

(Electronic Data Capture)が一般的になっている。日本では多くの医療機関で電子カルテ等のシス

テムが使用されており、ここでのデータ表現方法が標準化できれば、EDC を介して治験を行うときに

も、低廉なコストで高品質な情報収集が可能となる。

電子カルテは紙での運用に比較して、情報の共有性、保存性、検索性が飛躍的に向上し、そのメ

リットは一定の運用コストをかけるに値すると考えられているが、それを評価することは簡単では

ない。仮に入力端末から依頼者側のデータベースへは電子的につながっていても、電子カルテから

入力端末へは電子的な連携はほとんどなされておらず、手入力により転記が行われている。この品

質を担保するためのデータマネジメント業務とモニタリング業務に多大なコストがかかっている。

治験に関する医療情報標準化は、このコストと品質の問題をリーズナブルな状況に近づけることが

できる可能性が非常に高い。

このような方向で標準化を進めることは、日本の医薬品・医療機器業界の衰退を抑止し、質の高

い医療を提供し続ける一助となる。

(6)総括

医療情報に関する標準化は更に積極的に進めるべきである。特に治験・薬事については、より積

極的に進めるべきである。

情報システムのデータ構造・内容は、医療機器本体等のハードウェアに比べると、具体的な状態

がわかり難いと共に、コンバータ(データ変換システム)等をソフトウェア的に準備・実装するこ

とで構造の相違が解決してしまうことが多い。また、そのような作業が表面に出ることが少ないた

め、必要性が実感され難い。医療機器本体でも、アダプタ等を用いて違う規格の製品を運用するこ

とが可能な場合もあり得るが、かえって運用が煩雑になることがあるので、本体側の標準化のメリ

ットはわかり易い。しかし、情報システムの標準化については上記のような理由により、行政、医

療機器業界及び医療界の全てにおいて、その重要性・緊急性への認識が乏しいように思われる。対

照的に米国 FDA、HHS は、情報の標準化を国策として前面に出し、ISO をはじめとする国際標準の場

に積極的に介入している状況にある。

厚生労働省でもいくつかの医療情報の標準規格の採用を推奨し、一定のプロモーション活動を行

っているが、十分に現場での運用まで踏み込んで準備をしたとは言えないものが多く、採用につい

てユーザーのモチベーションが高いとは言えない。

この 2 年間、厚生労働省として研究班を組織し、医療機器の国際標準規格策定への働きかけにつ

いて積極的な検討をしてきた。これは重要な試みであり、経済産業省やその他の所管官庁と連携し

て、今後とも提言本文にあるような、継続的な支援や強力な標準化推進施策の実施が望まれる。ま

た、本資料にあるような医療情報の特徴も鑑み、より一層標準化を進める施策の実現を期待したい。

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政策的提言関連資料

資料5

歯科用CAD/CAMマシンで作製する修復物の精度に関する新しい

評価方法の策定に関する国際標準化活動

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歯科用 CAD/CAM マシンで作製する修復物の精度に関する新しい評価方法の

策定に関する国際標準化活動

(1)歯科用 CAD/CAM マシンで作製する修復物の精度に関する新しい評価方法

2010 年に開催された ISO/TC106 総会(リオデジャネイロ会議)におけるロビー活動の一環として、

ドイツ及び米国の代表者と歯科用 CAD/CAM システムの必要性について協議した背景のもと、2011 年

9 月に開催された ISO/TC106 総会(フェニックス会議)において、同システムについて討議する新

SC の設立を日本が提案し、満場一致で承認された。同時に新 SC は ISO/TC106/SC9 として活動し、

SC9/WG1(歯科用 CAD/CAM システム)は Convener(日本歯科大/小倉英夫教授)及び幹事国ともに日本

が担当することに決定された。

フェニックス会議において、SC9/WG1 では、測定精度を確認する際、CAD 用モデルとしてインレー

型、ブリッジ型及び球体型モデルの全てを利用するか、これら 3 者中の 2 つのモデルを使用するか

討議された。今回、新たに提案した規格を策定するためには、第一段階として CAM 用モデルをデザ

インする必要があるため、上記 CAD 用モデルを参考として、1級インレー、2級インレー、クラウン

及びブリッジ(3 又は 4 ユニット)の CAM 用モデルをコンピュータ上でデザインした。これらの 5

種類の CAM 用モデル中、2級インレーの精度を測定する方法を確立することが最も難易度が高いと思

われることから、関連する予備試験を行った。2級インレー窩洞を形成した金型を工業用シリコーン

ゴムで印象採得し、硬化後、超硬石膏を注入して模型を作製した。CAD/CAM(Cadim,アドバンス社)

を用いて窩洞形状を三次元計測した後。得られたインレー三次元データから切削データを作製した。

同データに基づいてセラミックブロックを切削し、インレーを完成させた。インレーを石膏模型に

装着し、マイクロ CT(SMX-100CT)を用いて切断面の写真を撮影した後、セラミックと石膏の間隙を

測定することにより、高い精度が得られる窩洞の形成方法と CAD/CAM 設定の相関性について検討し

た。

これらの検証実験において得られた知見に基づいて、ISO/FDIS 12836「Dentistry — Digitizing

devices for CAD/CAM systems for indirect dental restorations — Test methods to assess the

accuracy」に対する日本のコメントが取りまとめられた。本規格は平成 24 年 8 月に実施された投票

において、賛成 10 カ国、反対 2カ国、棄権 3カ国の結果をもって承認された。これにより、本ケー

ススタディの目標は達成されたが、反対票を投じた国の意見を踏まえて、今後、改訂作業を開始す

る予定である。

近年、歯科用 CAD/CAM システムは世界的に需要が拡大していると共に、設備自体が広範囲の技術

を必要とする。今後、同システムは歯科領域にとって重要な分野となるため、ドイツを初めとした

ヨーロッパ諸国と米国が主導権争いを展開していた。関連団体へのヒヤリング及びアンケート調査

の結果からも明確になったように、国際規格の新規提案に必要な要因の 1 つとして、ロビー活動が

挙げられる。日本は中立国の立場として長年に渡って国際会議に参加し、2010 年度及び 2011 年度の

ISO/TC106 総会時以前から関係諸国と友好関係を築いて来た。今回のケーススタディでは本成果が実

る形となり、科学的根拠に基づいた質の高い規格提案と丁寧な説明を行った日本がドイツ及び米国

の間に入る中立国として、ISO/TC106/SC9/WG1 の Convener と幹事国を獲得できたものと考えられる。

CAD 用モデルは、ISO/TC106/WG11 において 3 年前から協議を行っていたが、殆ど進展することな

く、現在に至っていた。しかし、インレー、ブリッジ(4ユニット)及び球体の形態や寸法について

は充分推敲された内容であったことから、同CAD用モデルに基づいてCAM用モデルをデザインした。

現在、日本メーカーが使用している CAD/CAM マシンの精度は±20 μm 以上であり、本研究で用いた

マイクロ CT の測定限界も±20 μm であった。この三次元測定装置は安価な普及品ではないと共に、

三次元データの取り扱いも難しいことが予想されるが、精度測定には同装置を用いることが有用で

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あると思われる。

(2)機械加工された歯科用修復物の精度を評価するための試験方法の新規提案

歯科用 CAD/CAM マシンで作製する修復物の精度に関する新しい評価方法に次ぐ新たな規格

「Accuracy of machined indirect restorations – Test methods and marking」に関する検証デー

タを収集し、平成 24 年 10 月に開催された ISO/TC106/SC9 総会において新規提案に向けた概要説明

を行い、平成 25 年 1 月に本新規規格に関する WD を ISO 事務局に提出した。本提案は、歯科用修復

物の作製に関わる CAM マシンの精度評価に限定し、材料の種類によるばらつきを含まない。また、

本提案は評価法を規定することを目的としていることから、精度の要求事項(規格値)は特段設け

ない。本提案におけるクラウンに関する金型は上記の ISO 12836:2012 において規定された金型と共

通性を持たせる。日本としては、作製物の実測は困難であるため、作製物の適合性評価として、金

型とマージンとの差異により評価する方法を確立することを目指す。ブリッジの評価はクラウン部

の適合性とブリッジとしての適合性から評価する。作製した 2 級インレー及びクラウンの線角にお

いて、CAM マシンでは直角の形状の加工はできないため、金型の線角を丸めることを提案した。今後、

本新規規格に関する WD を ISO/TC106/SC9 に正式に提案し、標準化を目指す。

(3)成功要因の詳細解析

3-1.ISO/TC106 における活動経緯

ISO/TC106 は歯科材料・機械・用語の国際規格の作成を目指し、1967 年に発足した。日本は 1973

年から参加するようになった。初期の ISO 規格は国内規格を作成するための基礎資料として考えら

れ、日本からの参加者も少なかった。会議出席者の主目的は規格原案、会議資料及び技術情報の収

集であった。小倉英夫教授(日本歯科大学)は 1987 年の会議から参加するようになったが、その当

時でさえも出席することにのみ意味がある状態が続いていた。

ISO/TC106 の活動は、EU が EU 圏内の統一規格として ISO を採用するに至った 1991 年に転機を迎

えた。これは、EU への輸出品は総て ISO 規格に適合するよう要求されたことに由来する。また、1995

年に WTO は「加盟国はそれぞれの国家規格(日本では主に JIS)を ISO 等の国際規格に原則として適

合させる」ことで合意し、自由貿易の基準として ISO 規格が用いられることになった。これにより

ISO 規格の作成作業が活性化され、同時に規格作成における各国間の国際的競争が始まった。

現在、ISO/TC106 では多くの国が加盟国となり、規格作成作業が進められている。規格原案は提案

国主導で作成されるため、各 SC の国際議長(Convener)の獲得は重要事項となる。日本の場合、歯

ブラシ、義歯床安定剤及びデンタルフロス等について新規提案を行い、日本主導のもとに規格作成

作業が終了した。これは、1995~2010 年にかけて小倉教授が SC 7(オーラルケア用品)の国際議長

を務め、ISO/TC106 のメンバーから高い信頼を獲得したことに由来する賜物である。

2010 年の ISO/TC106 総会(リオデジャネイロ)において、小倉教授が会議の休憩時間或いはアメ

リカ代表団との懇親会におけるロビー活動として、歯科用 CAD/CAM 規格の必要性を説明した。翌年

2011 年の同総会(フェニックス)では、歯科用 CAD/CAM の業務範囲に関する暫定会議において新 SC

を設立することが満場一致で承認された。同時に新 SC は SC9 として活動し、幹事国は日本が担当す

ることが確認され、TC106 議長は新 SC の国際議長として小倉教授を推薦し、これも満場一致で承認

された。

2012 年に開催された ISO/TC106 総会(パリ)から SC9 の活動が本格的に開始され、アメリカ、韓

国、ドイツ等をはじめとした各国が積極的に発言するなど、歯科用 CAD/CAM に対する各国の関心の

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高さが窺えた。

3-2.基本的戦略

ISO において新規規格を提案し、その成案を目指すためには、座長及び国際議長の獲得が大きな要

因となることは明白である。そこで具体例として、小倉教授の SC7/WG 1: Manual Toothbrushes(手

用歯ブラシ)の座長(1995~2005 年)、SC7 Oral care products (オーラルケア用品)の国際議長

(1995~2010 年)獲得の経緯について、以下に記載する。

当初は Toothbrushes で「歯ブラシ植毛部位のかたさ」の規格策定のみであった。この規格は非常

に熱心なドイツ、フランスの主導で 1987 年に策定された。そして 5年毎に規格の見直しを行う事に

なっていたが、幹事国(当初フランス、イギリス)が辞任したために、この期間会議が開かれなか

った。しかし、オーラルケア用品の見直しが必要なり、1995 年に ISO/TC106 総会が京都において開

催されたことを契機として、小倉教授が SC7 の国際議長と SC7/WG1 の座長に就任し、SC7 の活動が再

開し、現在に至っている。昨年度、パリで開催された第 48 回 ISO/TC106 総会においては、WG1:Manual

Toothbrushes(手動歯ブラシ)、WG2:Powered oral hygiene devices(電動口腔衛生用具)、WG3:Oral

rinses(オーラルリンス)、WG4:Dentifrices(歯磨剤)、WG7:Dental bleaching products(歯科用

漂白用品)、WG8:Fluoride varnishes(フッ化物バーニッシュ)、Ad-hoc:Fluoride analysis に関し

て協議する WG が増え、日本のオーラルケア用品の発展に ISO/TC106 が大きく貢献した。

また、日本歯科材料器械研究協議会はISO/TC106に関する業務を目的として1977年に設立された。

この会の運営は、歯科企業及び歯科関連団体からの賛助会費、(社)日本歯科医師会、日本歯科商工

協会及び日本歯科企業協議会からの補助金、並びに経済産業省からの補助金により賄われている。

特に日本歯科商工協会は、1995年に小倉教授がSC7の国際議長に就任した際に、日本全国の歯ブラシ

メーカーが一致団結し、設立されたものである。この日本歯科材料器械研究協議会は成長・発展し、

1980年にはTC106のPメンバー国となり、1983年には大磯、1995年には京都、2009年には大阪で総会

を開催するに至り、大きな役割を果たした。いずれの総会も成功裏に終了し、日本は世界各国から

の信頼を獲得した。 さらに、2011 年からは SC7/WG1 及び WG2 の座長並びに SC7 (オーラルケア用品)の国際議長はそ

れぞれ高橋英和(日本医科歯科大学)及び中嶌 裕 (明海大学)に交代したが、未だに SC7 の幹事

国及び国際議長の座を守っている。この過大な任務を快く引受けてくれた理由は、日本歯科理工学

会で築いてきた信頼関係からと考えられる。すなわち、ISO/TC106 における成功の裏には、国内にお

ける日常的な活動も重要である。SC7 (オーラルケア用品)の幹事を板野守秀(花王)に引き受け

て頂く際には、小倉教授と経済産業省の担当官が花王の代表取締に ISOTC106 への協力要請を直接行

った。このように、ISO/TC106 国内委員会は後継者の育成にも大変熱心であった。

3-3.得られた成果

日本主導で発行に至った ISO 規格は以下のとおりである。

・ISO 28158:2010, Dentistry-Integrated dental floss and handles(2010 年 7 月 1 日発行)

・ISO 10873:2010, Dentistry-Denture adhesives(2010 年 9 月 15 日発行)

・ISO 20126:2011, Dentistry-Manual toothbrushes-General requirements and test methods

(Ed. 2)(2011 年 19 月 15 日発行)

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・ISO 13017:2012, Dentistry-Magnetic attachments(2012 年 7 月 15 日発行)

このように数も多く、分野も多技に渡っている。特に今回、三次元測定装置を用いることなく、

CAD/CAM で作製した修復物の精度を如何なる国でも簡単に評価できる規格である「Accuracy of

machined indirect restorations – Test methods and marking」に関する WD を作成し、今年開催

される第 49 回 ISO/TC106 総会(韓国)において、ISO メンバーと討議する予定である。

3-4.成功要因

CAD/CAM システムに関する新規提案の討議は、数年前から CAD(すなわちスキャナー)の分野で始

まった。しかし、近年進展がみられず、昨年 ISO メンバーから解散の要望が出され、パリの ISO/TC106

総会において解体された。この原因は、座長の交渉能力、説得能力及びロビー活動の不足に由来す

る。これらの失敗事例から、新規提案を作成するための重要な要素を学ぶことが多い。

世界的な流れを把握するほか、アイデアも新規提案には重要である。1985 年にスイス・チューリ

ッヒ大学とドイツ・シーメンス社が共同で開発して世に送り出した CEREC システムが世界初の歯科

用 CAD/CAM に相当すると考えられている。一方、日本国内では、通産省/NEDO(新エネルギー・産

業技術総合開発機構)傘下のプロジェクトとして「次世代オーラルデバイスエンジニアリングシス

テム」の開発が 1997 年から実施され、(株)ジーシーから発売された GN-I システムに結実している。

近年、ジルコニアセラミックスの開発・普及に伴い、コンピュータの性能が向上して、歯科医業に

おいて CAD/CAM システムの利用は不可欠なものとなりつつある。小倉教授は、16 年前から歯科用

CAD/CAM の使用状況が世界的に拡大していると共に、設備自体が広範囲の領域を包含している点にお

いて、CAD/CAM システムが日本経済にとってプラスとなることを把握し、国内 CAD/CAD 協議会を立ち

上げた。これは、世界的な動向を上手く把握した典型例である。

通常、修復物の精度を測定・評価する場合、三次元測定装置を用いることが一般化している。し

かし、このような高価な測定装置を多くの国で、簡単に測定装置として用いることは不可能である。

また、標準点の決定方法等、沢山の問題を抱えていることも事実である。そこで、1級インレー、2

級インレー、クラウン及びブリッジの金型を作製し、作製した修復物を金型に適合させて、修復物

の精度を測定し、評価する方法を考案した。簡単に測定・評価する方法論に関するアイデアの独創

性は、ISOメンバーを納得させるための重要な要素であり、且つ十分な内容であった。

3-5.結論

国益を生む新規規格を提案する重要性は多くの人間が理解しているが、実際に新規規格を作成・

提案し、正式な規格として発行するまでに要する苦労と時間を理解している人間は少ない。すなわ

ち、1)可能な限り多く、長期に渡って会議に出席し、2)他国(特に米国とドイツ)とのロビー活動

による交流から信頼を勝ち取り、3)新規提案に独創性の高いアイデアが盛り込まれていることが重

要である。また、SCの国際議長、WGの議長を獲得していればさらに新規提案の完成の確立は高くな

る。

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政策的提言関連資料

資料6

諸外国における標準化政策について

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政策的提言関連資料

資料7

予算申請手続様式事例(経済産業省書式)

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【様式事例1】(初回)申請書

平成22年度標準化ニーズ調査票

【提出者】

団体名 日本歯科材料器械研究協議会

担当者(所属) 事務局

担当者(氏名) 山本 桂子

住所 〒111-0056 東京都台東区小島 2-16-14 日本歯科器械会館1階

電話 03-3851-8701

E-Mail [email protected]

テーマ名 接着性を有する歯科用レジン系セメントの国際規格の作成

1. 事業概要

①事業の概要

歯科治療で接着技術は重要であり、日本企業の製品は世界で広く使用されている。しかし、これら材

料は親水性機能性モノマーを有するために現存のISO規格の要求事項に適合しない製品が多く存在

する。そこで、これら材料の品質を保証するための要求事項を規定する国際規格を作成する。

②本事業によって実現したい国際規格提案(又はJIS)

○件数:

・新規提案= 1件

・改正提案= 0件

○主な内容: 接着性を有する歯科用レジン系セメントの国際規格の作成

③予定事業期間

○平成22年度~平成24年度

2. 国際標準化の必要性

①国際標準化の必要性・緊急性

歯科治療において接着材料の出現により、患者の負担が少なく、かつ信頼性の優れた治療が可能と

なってきた。接着性材料として歯科用レジン系セメントの役割は重要である。従来、これらの材料はIS

O4049(ポリマー系修復材料)に含まれると考えられていたが、2009年10月に発行されたISO40

49:2009の作成過程で、この規格の要求事項に適合しない製品があることが明らかとなり、この規

格の適用範囲には接着性を有する歯科用レジン系セメントを含まないことが明記された。2009年10

月に開催されたISO/TC106国際年次会議において、日本から「接着性を有する歯科用レジン系セ

メント」に関する国際規格作成の新規提案を行うことが承認された。接着性を有する歯科用レジン系

セメントは国際的に広く使用されており、日本製品はこれらの中で大きなシェアを占めている。しかし

ながら、これらの製品に対応する国際規格が存在しないことにより、海外における新製品の販売で障

害となっており、緊急に国際規格を作成する必要性がある。

②国際標準化アクションプラン(H21年4月改訂)における位置付け等

○国際標準化重点テーマ・重点TC/SC等: 対象・対象外・その他(具体的に)

○提案先TC/SC等: TC106/SC1

○日本の地位: P-member

○国内審議団体: 日本歯科材料器械研究協議会

○幹事国: カナダ

○議長国: イギリス

1-①≪国際標準開発≫

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3.国際標準化した場合の社会的効果、経済的効果

歯科治療において接着材料の出現により、患者の負担が少なく、かつ信頼性の優れた治療が可能と

接着性材料として接着性を有する歯科用レジン系セメントの役割は重要であり、国際的に広く使用さ

れ、日本製品は大きなシェアを占めている。接着性を有する歯科用レジン系セメントの国際規格が存

在しないことは、海外における新製品の販売で障害となっており、国際規格が作成されることで日本

製品が広く使用されることになる。さらに、接着性を有する歯科用レジン系セメントの信頼性向上によ

り、再修復処理が減少し、医療費の削減に役立つ。

4.国の事業として実施する必要性

歯科用レジン系セメントは歯冠修復において極めて重要なものであり、特に陶材等の審美的修復で

良好な予後を得るには欠かせないものである。そのため、安全性や有効性について高度な専門知識

を有する専門家を招いて中立的な場で国際規格を作成することが望ましく、それを国の委託事業とし

て実施することが望ましい。

5.事業実施体制

「歯科用レジンセメント」に関する高度な専門知識を有する大学研究者

JIS T 6611(歯科用レジンセメント)作成団体(日本歯科材料工業協同組合)加盟企業代表者

使用者として日本歯科医師会代表者

中立的な立場として関係各省代表者

(財)日本規格協会代表者

6.事業計画

○平成22年度

作業原案(WD)を付して新業務項目提案を行う。

○平成23年度

委員会原案(CD)を作成する。規格要求値を決めるためのインターラボラトリーテストを実施する。

○平成24年度

国際規格案(DIS)を作成する。

7.事業に要する概算経費

①事業総額(3年間): 2,400(千円)

○平成22年度:800(千円)

○平成23年度:800(千円)

○平成24年度:800(千円)

②平成22年度経費の内訳

「委員会経費」200(千円)、「海外旅費」600(千円)

8.その他

①提案テーマに関連する国及び関連機関における研究開発

○事業名・テーマ名等:

○実施期間: 平成 年度~平成 年度

②提案テーマを所管する経済産業省の原課担当

○局・課室名:産業技術環境局環境生活標準化推進室

○担当者名:小倉 悟

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『規格別要約票』

テーマ名 接着性を有する歯科用レジン系セメントの国際規格の作成

予定事業期間 平成22年度~平成24年度 国際標準開発 新規

既存国際規格 無 IS番号 規格の

一致性 MOD

国際規格名称 歯科用レジン系セメント

既存JIS 有 JIS番号 JIS T 6611 JIS開発

JIS名称 歯科用レジンセメント

国際提案先 ISO/TC106/SC1 重点TC/SC等 TC106

日本の地位 Pメンバー 国内審議団体 日本歯科材料器械研究協議会

幹事国 カナダ 議長国 イギリス

共同開発

(提案)国

事業概要

歯科治療で接着技術は重要であり、日本企業の製品は世界で広く使用されている。しか

し、これら材料は親水性機能性モノマーを有するために、現存のISO規格の要求事項に

適合しない製品が多く存在する。そこで、これら材料の品質を保証するための要求事項を

規定する国際規格を作成する。

波及効果

歯科治療においては接着材料の出現により、患者の負担が少なく、かつ信頼性の優れ

た治療が可能となってきた。接着性材料として歯科用レジン系セメントの役割は重要であ

り、国際的に広く使用され、日本製品は大きなシェアを占めている。接着性を有する歯科

用レジン系セメントの国際規格が存在しないことは、海外における新製品の販売で障害

となっており、国際規格が作成されることで日本製品が広く使用されることになる。さら

に、接着性を有する歯科用レジン系セメントの信頼性向上により、再修復処理が減少し、

医療費の削減に役立つ。

≪平成22年度≫目標:20.10

■実施内容: 作業文書を作成し、新業務項目提案を行う。

≪平成23年度≫目標: 30.20

■実施内容:委員会原案(CD)を作成、CD投票を行う。 事業計画

≪平成24年度≫目標: 40.20

■実施内容:国際規格案(DIS)を作成し、DIS投票を行う。

備 考

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国際標準開発(継続)

【様式事例2】(継続)年度申請書

平成23年度標準化テーマ調査票

◆団体名: 日本歯科材料器械研究協議会

◆担当者:所属 事務局 氏名 山本 桂子

◆住 所:〒111-0056 東京都台東区小島 2-16-14 日本歯科器械会館1階

◆電 話:03-3851-8701 ◆E-Mail: [email protected]

1.テーマ名等

①テーマ名: 接着性を有する歯科用レジン系セメントの国際規格の作成

②予定事業期間:平成22年度~平成24年度≪テーマ数:1≫

③国際標準開発(原案作成・提案)の種別: 原案作成(1件)・改正提案(0件)・その他(なし)

2.事業概要

①標準化の内容・必要性: 歯科治療で接着技術は重要であり、日本企業の製品は世界で広く使用さ

れている。しかし、「接着性を有する歯科用レジン系セメント」は接着性成分として親水性機能性モノ

マーを有するため、現存の ISO 4049 の要求事項に適合しておらず、2009 年 10 月の第 4 版発行の

際に「適用範囲外」と明記された。したがって、現在、「接着性を有する歯科用レジン系セメント」に関

する ISO 規格が存在しないことから、海外市場への参入に大きな障害となっている。海外での市場

確保のために、国際標準を作成することが急務である。

②アジ太標準化研修: 無

有の場合(対象国名: )、(対象テーマ名: )

3.事業計画

①全体事業計画:

1)平成22年度

作業原案(WD)を付して新業務項目提案(NWIP)を行った結果、新業務項目として採択された(作

業期間を4年間に設定)。新作業部会(WG15)の設置及び日本からコンビナーを擁立し、新業務項

目提案投票時の各国コメントへの対応処置を検討する。

2)平成23年度

年次国際会議において、WD の修正要否・対応処置を審議し、委員会原案(CD)を作成して、各国

投票に付す。なお、規格要求値の設定及び試験方法の適切性確認のために、必要であれば国際

共同試験を実施する。

3)平成24年度

年次国際会議において、CD の修正要否・対応処置を審議し、国際規格案 (DIS)を作成して、各

国投票に付す。年度内に間に合えば、DISの投票結果及び各国コメントに基づいて、最終国際規

格案(FDIS) を作成し、各国投票に付す。

②平成23年度計画:

1) 国際会議前の準備作業

・ WD に記載の試験方法による国内外製品についての既存データの再収集・解析を行う。

・ 規格要求値のコンビナーからの提案値を策定するために、必要な場合は国内予備試験を実施する。

2) 国際会議(平成 23 年 9 月、於アメリカ)

・ 新作業部会(WG15)会議を日本から選任されたコンビナーが招集し、審議をリードする。

・ WD の修正の要否及び対応処置を審議する。

3)国際会議後の作業

・ 委員会原案(CD)作成に必要な場合、規格要求値の設定及び試験方法の適切性の確認のため

に、国内外の製品及び試験機関の参加を募って、国際共同試験を行う。

・ その結果に基づいて、CDを作成し、SC1 事務局へ提出する。

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国際標準開発(継続)

4.標準化の実現性

1)平成 22 年 10 月 15 日締切りの新業務項目提案の各国投票結果は、賛成 15、反対 2、棄権 3、プ

ロジェクトに参加 12 で採択された。今後、新作業部会(WG15)が設立される。日本からコンビナー

を擁立し、日本主導で審議を進め、ISO 規格を発行できる見込みである。

2) 平成 24 年度末で委託事業は終了するが、下記事項は、国内審議団体内の国内委員会で対応。

①最終国際規格案(FDIS) の作成、 ②FDISが承認後に、コンビナーが行う最終確認作業。

3) 国内における利害調整については、SC1 国内委員会に利害関係者代表の参加を求めることに

よって、問題が発生する前に協議できるように配慮している。

5.国際標準化における日本の位置付け等

①提案先TC/SC等: TC106/SC1

②日本の地位: P-member

③国内審議団体: 日本歯科材料器械研究協議会

④幹事国: カナダ

⑤議長国: イギリス

6.国の委託事業として実施する必要性(該当項目をチェック) ■多岐の産業界にまたがり、あるいは、関係企業が多数であるため、個別企業に対する利益・メリットがきわめ

て小さい。(想定される産業界等: 歯科材料製造業界、歯科用品販売業界及び歯科用品輸入業界。これら

の業界では、取扱品目分野が分化していることから、個別企業の規模が小さい場合が多い。)

□関係企業の多くが中小企業であるため、産業界でリーダーシップをとる者がおらず、また負担も困難。

□その他(必要性: )

7.国際標準化した場合の社会的効果、経済的効果

1) 社会的効果等: 歯科治療において接着性材料の出現により、患者の負担が少なく、かつ信頼性

の優れた治療が可能となってきた。接着性のない材料の場合に比べて再修復処理が減少し、医療

費の削減にも役立つ。なかでも、接着性を有する歯科用レジン系セメントの役割は重要であり、国

際的に広く使用され、特に日本で開発された製品は、発売当初は大きなシェアを占めていた。

2) 国際競争状態: しかしながら、治療に広く使われるようになるにしたがって、治療手順数が少な

く、かつ、治療時間が短い製品が求められるようになったため、日本では接着性成分をレジン系セ

メント中に配合することによって治療手順数を減らしても高い接着効果をもつ製品が開発され、外

国企業もこれに追従してきているため、国際競争が激化している。

3) 国際標準化の経済効果: この間、先進国・地域の薬事規制方式は、認知された規格・基準への

適合を主要件とするもの(EU が先行し、次いで日本が導入した規格適合審査の方式)に転換され、

現在、韓国、中国等の規制当局も追随しつつある。ところが、歯科用レジンセメントに適用される唯

一の国際規格 ISO 4049:2009 では接着性をもつものを適用範囲外としているため、除外された製

品に適用できる国際規格は存在しない。接着性成分を含む製品に ISO 4049 の接着性以外の項目

を準用すると規格値外れとなる項目があるため、外国薬事認可取得のための有効性の立証に多

大の時間と経費がかり、海外での日本製品販売開始までの大きな障害となっている。日本独自に

2009 年に制定した JIS T 6611 に基づいて国際規格を制定することによって、外国薬事認可取得ま

での時間と経費が大幅に低減でき、早期に海外市場を開拓できるので、日本製品が外国品よりも

広く使用されるようになる。

8.事業に要する概算経費(平成23年度:1,210)【単位:千円】

●平成24年度:1,443 ●合計(3年間): 3,453

【平成23年度経費の内訳】 ■人件費: ■委員会経費:230 ■雇上費: ■消耗品費:100 ■国内旅費:

■海外旅費:720 ■通信運搬費: ■外注費: ■報告書作成費:

■その他(具体的に): ■一般管理費:105 ■消費税:55

9.その他

①提案テーマの基礎研究開発:自主事業

●事業名・テーマ名等(平成 年度~平成 年度):

②提案テーマを担当する経済産業省基準認証ユニット担当

●局・課室名: 産業技術環境局環境生活標準化推進室 ●担当者名: 中村 啓子

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国際標準開発(継続)

『規格別要約票』

◆団体名: 日本歯科材料器械研究協議会

テーマ名 接着性を有する歯科用レジン系セメントの国際規格の作成

予定事業期間 平成23年度~平成24年度 国際標準開発 新規

既存国際規格 無 IS番号 ― 規格の

一致性 ―

国際規格名称 歯科 ― 接着性成分を含有するポリマー系ルーティング材料

既存JIS 有 JIS番号 JIS T 6611 JIS開発 ―

JIS名称 歯科用レジンセメント

国際提案先 ISO/TC106/SC1

日本の地位 Pメンバー、コンビナー(予定) 国内審議団体 日本歯科材料器械研究協議会

幹事国 カナダ 議長国 イギリス

事業概要

歯科治療で接着技術は重要であり、日本企業の製品は世界で広く使用されている。しか

し、「接着性を有する歯科用レジン系セメント」は接着性成分として親水性機能性モノマー

を有するため、現存の ISO 4049 の要求事項に適合しておらず、2009 年 10 月の第 4 版

発行の際に「適用範囲外」と明記された。したがって、現在、「接着性を有する歯科用レジ

ン系セメント」に関する ISO 規格が存在しないことから、海外市場への参入に大きな障害

となっている。海外での市場確保のために、国際標準を作成することが急務である。

波及効果

1) 歯科用レジンセメントに適用される唯一の国際規格 ISO 4049:2009 は接着性をもつ

製品を適用範囲外としている。2009 年に制定した JIS T6611 に基づいて国際規格を

制定することによって、外国薬事認可取得までの時間と経費が大幅に低減でき、早

期に海外市場を開拓できるので、日本製品がより広く使用されるようになる。

2) 歯科治療において接着性材料の出現により、患者の負担が少なく、かつ信頼性の高

い治療が可能となってきた。接着性のない材料の場合に比べて再修復処理が減少

し、医療費の削減にも役立つ。

≪平成22年度≫目標:20.20

■実施内容:作業原案(WD)を付して新業務項目提案(NWIP)を行った結果、新業務項

目として採択された(作業期間を4年間に設定)。新作業部会(WG15)の設置及び日本

からコンビナーを擁立し、新業務項目提案投票時の各国コメントへの対応処置を検討

する。

≪平成23年度≫目標: 30.20

■実施内容:年次国際会議において、WD の修正要否・対応処置を審議し、委員会原

案(CD)を作成して、各国投票に付す。なお、規格要求値の設定及び試験方法の適切

性確認のために、必要であれば国際共同試験を実施する。

事業計画

≪平成24年度≫目標: 50.20

■実施内容: 年次国際会議において、CD の修正要否・対応処置を審議し、国際規格

案 (DIS)を作成して、各国投票に付す。年度内に間に合えば、DISの投票結果及び各

国コメントに基づいて、最終国際規格案(FDIS) を作成し、各国投票に付す。

備 考 ISO/TC106/SC1によって採択された新業務項目提案に付した作業原案の規格名称:

Dentistry ― Polymer-based luting materials containing adhesive components

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【様式事例3】(年度)成果報告書概要

平成22年度社会環境整備・産業競争力強化型規格開発事業

(個別産業技術分野に関する標準化)

「テーマ名:接着性を有する歯科用レジン系セメントに関する国際標準開発」

成果報告書概要 委託先名:日本歯科材料器械研究協議会

1.調査研究の目的

歯科治療で接着技術は重要であり、日本企業の製品は世界で広く使用されている。し

かし、これら材料は親水性機能性モノマーを有するために、歯科用セメントのISO

規格の要求事項に適合しない製品が多く適用範囲から除外されている。そこで、これ

ら材料の品質を保証するための要求事項を規定する「接着性を有する歯科用レジン系

セメント」の国際標準案を作成する。 2.国際標準提案に向けた調査研究スケジュール

スキーム A:国際標準開発

分野/題目 接着性を有する歯科用レジン系セメントに関する国際標準開発

国際規格番号 AWI 16506 JIS 番号 JIS T 6611 規格の一致性 MOD TC/SC/WG TC106/SC1/WG15 日本の地位 コンビーナ

事業開始年度 平成 22 年度

概 要

平成 22 年 9 月の SC1 国際会議までに投票結果が出るように、6 月初旬に SC1 事務

局へ作業原案を添付して新業務項目提案書を提出したが、7 月 20 日に投票が開始さ

れた。10 月 15 日に投票が締め切られ、本提案は承認された。投票時の各国コメントに

対する対応について、国内委員会で検討を行った。

成功要因

SC1 事務局の対応の遅れにより、国際会議での審議に間に合わなかったが、本提案の

プロジェクトリーダと SC1 議長との永年にわたる信頼関係もあり、我が国の要望通り、新

WG の設置及びコンビーナを日本から擁立することが快諾された。今後は、我が国主導

で国際標準開発作業を進めることができる。

課題 SC1 の主要メンバーである米国及び英国が、本提案に反対投票を行った。エキスパー

トの推薦を含めて、本プロジェクトへの協力を要請していく。

本年度開始時 -

本年度の目標 20.20 (別紙参照) 本年度終了時 10.99 (別紙参照)

進捗状況 投票時の各国コメントに対する対応を国内委員会で検討した。また、インターラボラトリ

テスト実施に先駆けて、国内での予備試験を実施した。

終了予定年度 平成 24 年度

今後の展開 作業原案の修正案を日本から提案し、国際会議でコンセンサスを得て、CD 段階へ進

める。

備考

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(別紙)

ISO/IEC 進捗状況基準値表

ISO/IEC Directives(Supplement (2008 年第 3版) [和文])より

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【様式事例4】(年度)成果報告書

経済産業省委託 平成22年度社会環境整備・産業競争力強化型規格開発事業

(個別産業技術分野に関する標準化: 接着性を有する歯科用レジン系セメントに関する国際標準開発)

接着性を有する歯科用レジン系セメントに関する国際標準開発に関する調査研究 成果報告書

平成23年3月

日本歯科材料器械研究協議会

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目 次

ページ

まえがき........................................................................................................................................................ 3

1 調査研究受託団体の概要 ....................................................................................................................... 3

1.1 我が国の ISO/TC 106 - Dentistry(歯科技術専門委員会)における地位 ..................................... 3

1.2 調査研究受託団体の ISO/TC 106 における地位、及び我が国における位置づけ............................ 3

2 本年度実施し成果報告する事業.............................................................................................................. 3

2.1 事業の名称 ....................................................................................................................................... 3

2.2 実施計画 ........................................................................................................................................... 3

3 接着性を有する歯科用レジン系セメントに適用する ISO 規格作成作業の進捗状況 ............................. 3

4 今後の検討課題と調査研究の進め方 ...................................................................................................... 4

資料1 実施計画書 .................................................................................................................................... 5

資料 2 新業務項目提案書に添付した作業原案.......................................................................................... 5

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まえがき

この報告書では、平成 22 年度の受託事業「接着性を有する歯科用レジン系セメント」に関する国

際標準開発に関する調査研究」についての成果を報告する。

1 調査研究受託団体の概要

1.1 我が国のISO/TC 106 - Dentistry(歯科技術専門委員会)における地位

我が国は ISO/TC 106 の P メンバー国(投票権を有する国)であり、その傘下に設置されている

下記の 8 分科委員会(Sub-Committee, SC)全てに P メンバーとして参加している。

SC 1 Filling and restorative materials(充塡・修復材料);

SC 2 Prosthodontic materials(補綴材料);

我が国は、この内の SC 7 の幹事国を務めている。

1.2 調査研究受託団体のISO/TC 106 における地位、及び我が国における位置づけ

受託団体である日本歯科材料器械研究協議会は、ISOにおいては ISO/TC 106 の加盟団体(member body)であり、SC 7 にあっては、その幹事業務を担っている。また、ISO/TC 106 に係る業務全般

にわたっての我が国における審議団体である。

2 本年度実施し成果報告する事業

2.1 事業の名称

平成 22 年度社会環境整備・産業競争力強化型規格開発事業(個別産業技術分野に関する標準化)「接着性を有する歯科用レジン系セメントに関する国際標準開発に関する調査研究」

2.2 実施計画

当該調査研究は、実施計画書(資料 1)に従って実施した。実施計画書の一部を末尾に転記する。

3 接着性を有する歯科用レジン系セメントに適用するISO規格作成作業の進捗状況

本年度における当該調査研究の進捗状況を次のとおり、時系列的に報告する。

(1)平成 22 年 5 月 28 日、第一回国内委員会を開催し、新業務項目提案書に添付する作業原案

(Working Draft)を作成した。

(2)平成 22 年 6 月上旬、SC 1(充塡修復材料)事務局に対して ISO 規格「接着性成分を有する

歯科用レジン系セメント」の新業務項目提案書を提出した。これに添えて、作業原案(資料 2参照)も提出した。

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なお、新業務項目提案書の提出時期を 6 月上旬とした理由は、各国の投票結果が平成 22 年

9 月開催の 2010 年度年次国際会議よりも前に出ることを目標としたからである。

(3)しかし、投票開始が 7 月 20 日にずれ込んだため、規定の3か月後とされた投票期限は 10 月

15 日となった。したがって、9 月に開催された国際会議では、本提案について TC106/SC1 に

おいての審議は行われなかった。

(4)10 月下旬になって公開された投票結果は、賛成 15 か国、反対 2 か国(米国、英国)及び棄権

3 か国であり、また、5か国以上が要件のエキスパート派遣国数が 12 か国であったことから、

本提案は公式に承認された。次いで、SC 1 事務局は、新たに WG 15 を設置して本提案の規格

開発作業を行う意向を示した。

(5)12 月 8 日、第二回国内委員会を開催し、今里 聡教授(大阪大学歯学部)を WG 15 のコンビ

ーナとして SC1 に推薦することを決定した。また、投票と同時に提出された各国のコメント

への対応について、検討を開始した。さらに、必須と予想される国際共同試験(インターラボ

ラトリテスト)に先だって、WD 検討の基になるデータを採るため、我が国で国内予備試験を

行うこととした。

(6)平成 23 年 1 月 18 日、第三回国内委員会を開催し、各国コメントへの対応案の検討を継続し、

受諾するもの、受諾できないことを説明するもの、又は WG15 会議にて審議するものとに整

理した。また、国内予備試験の試験対象とする製品の選定及び試験条件を決定した。

(7)現在、鶴見大学/歯科理工学講座と保存修復学講座とが協同で国内予備試験を実施中である。

4 今後の検討課題と調査研究の進め方

(1)「接着性を有する歯科用レジン系セメント」の ISO 規格作成は、新業務項目提案の結果に

も表れているとおり、各国とも関心が高いテーマである。ただし、SC 1 の主要国である米

国及び英国が反対投票を行い、エキスパートを推薦していないことは、この ISO 規格の利

用国数・範囲が狭くなる可能性を秘めているため、WG15 会議への参加を呼び掛ける予定

である。

(2)今回、WG コンビーナとして推薦する委員は、当該歯科材料分野の権威者であり、科学・

技術的には申し分ない人材である。ただし、 ISO 規格策定活動の経験期間は短い。

さらに今回は、TC106 の主要 SC である SC 1 傘下の WG コンビーナ職を我が国が初めて

擁立することでもあり、SC 1 事務局との連携強化、ベテラン委員・国内審議団体による

WG コンビーナ支援体制強化等によって、日本主導の実を挙げたいと考える。

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資料1 実施計画書

平成22年度社会環境整備・産業競争力強化型規格開発事業(個別産業技術分野に関する標準化)実施計画書

1.全体の事業目的

歯科治療で接着技術は重要であり、日本企業の製品は世界で広く使用されている。しかし、こ

れら材料は親水性機能性モノマーを有するために、歯科用セメントのISO規格の要求事項に適

合しない製品が多く適用範囲から除外されている。そこで、これら材料の品質を保証するための

要求事項を規定する「接着性を有する歯科用レジン系セメント」の国際標準案を作成する。

初年度で新業務項目提案を行って作業文書の検討を行い、2年目で委員会段階へ、3年目で照

会段階まで進める。

2.本年度の事業目的

本年度は 1年目で、作業原案(WD)を作成して新業務項目提案を行い、作業部会内で作業原案

の検討を行う。

3.事業の内容及び実施方法

① 国内委員会を開催して、作業原案及び新業務項目提案書の作成を行う。

② 作業原案を作成し、ISO/TC 106/ SC 1 へ新業務項目提案書を提出する。

③ 新業務項目提案締切り後の 9-10 月にブラジルで開催される国際会議に出席し、新 WG の設置

及びそのコンビーナ職獲得を目指す。日本からは SC 1 会議には約 15 名が出席予定。

④ 国際会議後に国内委員会を開催して、作業原案の修正を行う。

⑤ 報告書の作成

(以下略)

資料 2 新業務項目提案書に添付した作業原案「接着性成分を含有する歯科用レジン系セメント」

(省略)

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この調査研究は、株式会社三菱総合研究所からの委託で実施したものの成果である。

本件についてのお問い合わせ先

(内容等)

〒111-0056 東京都台東区小島 2-16-14 TEL:03-3851-8701 日本歯科材料器械研究協議会 事務局

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Ⅳ.資料編

ISO/IEC医療機器規格策定戦略研究班

会議議事録

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平成24年度 第1回ISO/IEC医療機器規格策定戦略研究班会議

議事録

日 時:平成24年7月12日(木曜日) 14:00~17:00

場 所:(独)医薬品医療機器総合機構 (PMDA) 14階第28会議室

出席者:小野哲章(滋慶医療科学大学院大学)、松岡厚子(国立医薬品食品衛生研究所)、

蓜島由二(国立医薬品食品衛生研究所)、大熊一夫(日本歯科大学)、

横井英人(香川大学)、合田忠弘(九州大学)、廣瀬志弘(産業技術総合研究所)、山口典久

(ニデック)、内藤正章(日本光電)、三村智徳(日立ハイテクノロジーズ)、橋本 隆(日

本歯科材料機械研究議会)、東 健太郎(厚労省医療機器審査管理室)、津田 亮(厚労省医

療機器審査管理室)、滝 久司(厚労省医療機器審査管理室)、

池田 潔(PMDA)、川村 智一(PMDA)、菅 渉子(香川大学) (順不同、敬称略)

【配布資料】

1-1.平成24年度研究報告書

1-2.医療機器に係る工学的見地から具体的事例に関する研究

1-3.歯科用CAD/CAMマシンで作成する修復物の精度に関する新しい評価方法について

1-4.国際標準化/国家及び企業戦略としての重要性

【議事概要】

1. はじめに(小野:資料1-1)

1)自己紹介

2)概要説明

① 資料1-1に基づき平成23年度研究内容説明。

② 本年度は前年度調査した内容をどのような形にまとめるか検討する。

③ 企業の協力を得て実施する。

④ 研究代表者を蓜島に変更する。

⑤ 日本は世界最高水準の技術力を有しているが、日本発の国際規格は決して多くなく、医療機

器分野は特に少ない。本研究班は、国際標準化を推進させるための施策等を策定するための

戦略会議である。

2. 進捗状況及び今年度の活動計画

1) 小野・蓜島班

a) 進捗状況(蓜島)

資料1-2に基づき、スライド発表。

① 発信すべき医療機器・技術・手法の新規提案として、CAD/CAMに関するケーススタディのほ

か、「溶血試験用陽性対象材料の開発に関する研究」に係るケーススタディを開始する。

Genapol含有PVCシートの調製は完了済みである。今後、ジフェニルジスルフィド含有シー

トの調製が終わり次第、複数の血液(ヒト、ウサギ)及び試験法(ASTM法、NIH法、日本ガ

イドライン法)を用いて試験を行う。

② 国家戦略としての政策提言の構築では、平成23年度に実施したアンケート調査結果から抽

出した有用なヒントと問題点を具体的に検討する。

③ アンケート結果の総括として、業界から寄せられた意見及び要望等は製品開発分野、国内環

境分野、国際活動分野、公的予算分野に大別され、重要な部分が説明された。

中でも、企業に向けた「国際標準化の重要性を周知する国による啓蒙活動」が重要とされた。

④ 自ら国際標準を取りに行く覚悟と戦略が企業に求められている。

⑤ 国内企業の規格担当者は少人数であると共に、様子見が多い。

b) ケーススタディ進捗状況(大熊)

資料1-3に基づき、研究内容の説明。

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① ISO/TC106総会(2011フェニックス会議)参加時の状況説明。歯科用CAD/CAMを取り扱う

TC106/SC9が新設され、幹事国及びセクレタリともに日本が取得した。

② フェニックス会議では、Annex A,B,Cに記載された測定対象金属製モデルのどれを採択する

か検討した。A及びBの2種にしたいが、アメリカが反対している。

③ 1級インレー、2級インレー及びブリッジを想定した金属製モデルの説明。

④ 本年度は8月に国内委員会を開催し、作製した金属製モデルについて討議する。

⑤ パナソニック、ノリタケデンタルサプライ及びジーシーにおいて試料を作製した後、その精

度を測定する。

⑥ SC 9総会(9/30-10/6:フランス)において、試験方法について各国と協議し、ラウンドロ

ビンテスト(国際共同試験)の準備を行う。

2) 松岡班進捗状況(松岡)

① 昨年度の分担研究内容説明。

② ISO 10993-4は2002年に発行されてから改訂されていない。

③ 従来、FDAはISO/TC 194/WG 9に積極的には参加していなかったが、今回の10993-4の改訂

作業にはFDAも参画している。

④ 日本企業も積極的に参加することが大切である。本来、ラウンドロビンテストはボランタリ

なものだが、小野班として経済的支援をした。

⑤ ラウンドロビンテストの結果は、直近のISO/TC 194総会(サンディエゴ)において協議さ

れる予定であったが、共通の標準材料の準備が遅れているため、報告には到っていない。

⑥ そのため、ほかの材料で溶血性試験を実施した結果、米国ASTM法、米国NIH法、日本のガ

イドライン法の3法ともに、大きな相違はなかった。

⑦ 日本の試験プロトコルを紹介すると共に、標準材料の提案も行っていく。

⑧ 今年度はラウンドロビンテストの実施が目標となる。

3) 横井班進捗状況(横井)

① 昨年度の研究内容及びMFERの有用性に関する説明。

② MFERは国際的には広まっていない。

③ ユースケース(使用例)数が不十分なため、臨床評価を行っていく。

④ 横断的にデータを見られるようにする。

⑤ 現在、データを取り込み、解析中である。

⑥ 心電図では、QT延長症候群等で薬の副作用等を鋭敏に示す指標となるため、波形解析標準化

は重要である。

⑥ 薬事規制の観点では、技術的な規格は作成されていない。

4) 昨年度のまとめ(小野)

① 日本発の医療機器規格を国際標準に採用させるためには、素材発掘、人材育成、経済的支援

等が必要である。

② すでに動いている提案規格があれば提示してもらい、国際標準化に必須の因子を把握したい。

③ 昨年度実施したアンケート調査の結果を見直すと共に、業界からの提案を考慮して今後の方

向性を決定する。

3. 特別講演「国際標準化/国家及び企業戦略としての重要性」(合田)

a) 講演

資料1-4に基づき、スライド発表。

① 品質のみで売れる時代は終わり、国際標準化を狙った戦術が必要な時代が到来している(デ

ファクト標準からデジュール標準への移行)。

② 近年では、製品開発に先駈けて国際標準を作成する事例も存在する。

③ 国際標準化にあたっては、標準化する項目と、しない項目の線引きを行うことが重要となる。

④ 企業を対象としてアンケート調査を行い、標準化を積極的に推進する意向のある企業には必

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要な支援を行う。

⑤ 海外の規格立案速度の速さに対応するため、合議制に代わり、トップスタンダード制度を導

入し、政策的判断によりJISCを介して国際標準を提案する。

⑥ 民間に全て任せるのではなく、資金援助や議論の場の設置等、国の関与を強くすることが重

要である。

⑦ 国際標準化に関わる国の人員は、日本(経産省)では2人だが、韓国では数百人、中国でも

30人程度配備されている。

b) 質疑応答

① 標準化しないものは特許で勝負するということか?(蓜島)

→ はい。ビジネスを考えた時に、何を標準化するかの選択が重要。

② 標準化することで価格競争に負ける事例があるのか?(蓜島)

→ 全てをオープンにするので、海外企業の参入が容易になり、価格競争となるケース が

ある。

③ 企業側が標準化に必要な情報を開示したくない場合の手段は?(横井)

→ アンケート調査を行って、関連事項の内、日本の技術で勝負できる事項は標準化しない

と決めている。電力の世界では成功したが、このような手法によって決定することは一般

的に難しいと思われる。

4.総合討論

1) 廣瀬(産業技術総合研究所)

① 再生医療分野では、先ず、用語の統一から始める必要がある。

② 最先端技術であるため、企業が参入し難い状況である。

③ 国際規格作りに対応するグループの設立が必要と思われる。

2) 山口(ニデック)

① 眼鏡及びコンタクトレンズ業界の場合、最新技術等は、販売直後の利益を追求するため標準化

の専門者を配置しない。標準化の重要性は理解しているが、他社に任せているのが現状である。

将来的に標準化が重要なことは理解しているが、企業として余裕がない。

② 企業における標準化作業の担当者は最先端で製品開発に関与している人材ではない。

③ 現時点においては、標準化は企業にとっての要求事項ではないと認識されている。

④ 他企業に参入されてしまうため、最先端の内容を開示したくない。

⑤ 標準化を戦略的として推進するためには、仕組み作りが重要である。

3) 内藤(日本光電)

① 技術革新に伴う安全性規格であるため、IEC/TC62シリーズは規制力が強い。

② 国際規格化には保守的な企業が多く、他社任せ。

③ 戦略的な考え方が欠けていた。

④ ビジネスに直結する内容については、企業側も積極的に参加して来る。

⑤ 議長の任期延長等は業績又は活動実績を考慮して決定するシステムが必要と思われる。

4) 三村(日立ハイテクノロジーズ)

① 国家戦略として、遺伝子検査の国際規格化ついて準備している。

② 体外診断の検体検査薬は日本のシェアが高いことから、標準化にあたっては韓国も参入した

い意向を持っている。今年8月にドイツで会議が開催される。

③ 標準化のために情報を公開して、他企業に参入されても困るため、戦略を考える必要がある。

5) 大熊(日本歯科大学)

① 歯科分野では昔から企業が国際標準化に参画しているが、近年、日本が幹事国を取得できる

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ようになり、参画企業が増えている。

② 国際標準が必ず必要となったので、企業が積極的に関わっている。

③ 合議制を取っているため、各企業が協力している。

6) 橋本(日本歯科材料機械研究議会)

① 企業が本音を言えるシステムを作ることが重要である。

② ISO規格の要求値レベルを上げて、国内メーカーが対応できない場合には、そのメーカーを支

援できないか。 協同組合等で助け合う必要がある。

④ 国際標準化への参画企業が少ないときは、ベンチャー企業に積極的に動いていただくなどが

できれば、トップスタンダード制度導入の価値がある。

7) 合田(九州大学)

① 電力分野の場合、積極的に動けたのには、国の協力が大きかった。

② 国際標準化作業への日本としての関与方法、期限、議論の場等をある程度決定していたこと

が勝因である。

③ 対応できない企業が存在する規格を作っても良いのかという議題は残る。

5. 今後について

1) 昨年度実施したアンケート調査及びケーススタディから得られた知見を基礎として、国家戦略

として国際標準化を推進するための施策・戦略をまとめた政策提言の素案を作成する。

2) 研究者側が素案を作成するより、寧ろ業界の意見を反映させた内容に仕上げる必要があるため、

素案作りについては業界の協力を得る。

3) 企業経営陣の理解がなければ、企業内で標準化に携わることは難しいので、対策が必要。

4) 政策提言の素案が完成次第、メール会議により意見を収集すると共に、必要に応じて班会議を

開催する。

以上

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平成24年度 第2回ISO/IEC医療機器規格策定戦略研究班会議

議事録

日 時:平成24年12月14日(金曜日) 10:00~12:00

場 所:(独)医薬品医療機器総合機構 (PMDA) 3階第32会議室

出席者:小野哲章(滋慶医療科学大学院大学)、蓜島由二(国立医薬品食品衛生研究所)、横井英人

(香川大学)、三村智徳(日立ハイテクノロジーズ)、橋本 隆(日本歯科材料機械研究議会)、

東 健太郎(厚労省医療機器審査管理室)、津田 亮(厚労省医療機器審査管理室)、滝 久司

(厚労省医療機器審査管理室)、池田 潔(PMDA)、川村智一(PMDA)、菅 渉子(香川大学)

(順不同、敬称略)

【配布資料】

1-1.小野・蓜島班資料

2-1.政策的提言(資料1~7 ※資料5は未到着)

【議事概要】

1.進捗状況及び今年度の活動計画

1) 横井班進捗状況(資料4)

① MFERで保存された通常の12誘導波形情報を元に、右前胸部や背側で単極誘導を測定したものに波形(18誘導)を数理的に導出している。

② 臨床家を動かすことができ、現在では関西医科大学、東北大学、香川大学で多くのデータを集めている。

③ 論文化はできていないが、報告書には載せることができる。

質疑応答

① 臨床データがあればISOになるのか? →データだけでは難しい。有用性が必要になるので、そのバックアップができた。

② DICOMを利用しているメーカーは反対しないのか? →日本業界での普及率が低いので学会単位での後押しが必要。

③ 資料4(6)項の冒頭の記述は適切ではないのでは? また、国民皆保険について論じる必要はないと思われる。

→電子化は特に遅れている。指摘事項を踏まえて、適切に修正する。

④ 資料4(7)項にある行政・業界の上層部とはどこを指しているのか? FDAはどこにメリットを感じているのか分かるように記載した方が良いのではないか?

→資料4(3)で述べている。日本の企業はメリットを感じていない。内容を修正し、どこにメ

リットがあるか記載する。

⑤ MFERに変換しても質は変わらないのか? →規格自体は変わらない。各社の違いが誤差になるため規格化が必要である。

2) 小野・蓜島班進捗状況(資料1-1)

a)ケーススタディ3:歯科分野

① ISO12836は欧州と米国の対立で進まなかったため、日本が仲介する形として新しい規格を提

案し、IS化に成功した。

② 技術的問題点や編集上の問題点が指摘されたため、この問題提起に対しSC9議長(日本:小

倉教授)が改正案を提出することを推奨した。

③ SC9のWGは今後NWIPに合わせて設置されることになった。

b)ケーススタディ4:溶血性試験用陽性材料の開発

① 溶血性試験については対照材料が指定されていないため、標準化を視野に入れて、溶血性試験用陽性対象材料の開発を進めている。

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② サーベイ試験において、23種の候補化学物質の溶血性を評価した。 ③ Genapol X-080及びジフェニルジスルフィド含有PVCシートを陽性対照材料として試作し、そ

の性能を評価した結果、Genapol X-080含有シートは対照材料として利用できることが判明し

たが、ジフェニルジスルフィドについては調製法を変えて更に検討すること必要がある。

④ 松岡班の進行状況次第となるが、今後、各種公定法による性能評価を行うと共に、ISO/ TC194/WG9における溶血性試験/国際ラウンドロビンテスト用の標準材料として提供すること

を視野に入れている。

質疑応答

ケーススタディ3及び4に対する質疑は特になし。関連事項として、歯科分野に対する質疑が

あった。

① 競争力がなくても規格を作ればリードできるということか?

→幹事国になったので日本に良い形で規格の考えを通すことができる。

② 他の業界でもこのような形にもっていきたい。なにかノウハウのようなものはあるか?

→正確なデータに基づいた規格案を提示することにより、信頼を得ていった。研究レベルのバッ

クアップ体制が必要であり、産学共同が重要である。

3) 松岡班進捗状況

① 国際ラウンドロビンテスト用標準材料の準備は完了したようである。

② 国際ラウンドロビンテスト自体は開始されていない状況と思われる。

3.総合討論:政策的提言のまとめ方について(資料2-1)

① 医療機器に関する殆どのTCでは、国際会議への出席にあたり、国内外ともに国からの支援

はない。企業は業界団体、研究者は自身が獲得した研究費から捻出している。

② 三菱総研に外国政府の支援状況をまとめた資料を頂いた(資料7)。

③ 国策として標準化を推進するためには、国から何かしらの支援が必要と思われる。

策定的提言内容についての質疑応答

① 厚生労働省だけに読み取れるが、他の分野にターゲットを広げた方が良いのでは? →そうしなければ意味がない。現行では厚労省への返答として仕上げているが、指摘のとおり

に修正する。

② 民間団体もこのような取り組みをしてはどうか? →民間が取り組むための国によるバックアップ体制を検討し、政策提言として配信する会議で

あると認識している。

→基本的な旗振りは国が行い、民官学からの要望を踏まえて方針を決め、この取り組みに関し

ての提言を頂きたい。

→業界で勝っているところは良いが、負けて困っている所をサポートしていくことが必要であ

る。患者側が安価な輸入品を納得して利用しているなら良いが、日本の負けている産業でも

製品の質は勝っているものがある。それをどうサポートするかの取り組みが必要である。

③ 日本にどのようなケーススタディがあるのか参考資料がほしい。負けている時、勝っている時などの参考書的な部分が沢山あると勉強になる。

→そういった内容はアンケートでも多くあった。去年のデータを参考にしてもらえれば手に入

る資料もある。

④ 新しく国際規格に関わる担当者にも分かり易い内容として欲しい(例:メーカー独自のものを作る等)。

→医療機器の国際規格は安全基準であり、性能基準ではない。安全基準は担保だが、性能は競

争である。メーカー独自で発展するのは難しい。材料や情報は性能に結びつくが医療機器の

場合、IECは性能要求規格ではなく基本性能であり、基本安全のみとなる。

⑤ 歯科分野は強かったから今の状態に持って行けたのか? →当初、歯科分野は弱かったため、JISのISO化を目指して活動した。安全規格はISO、IECに

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合わせている。強ければ囲い込みができるが、弱いからこそできたやり方である。一方、活

動には多額の資金が必要であった。10年ほど前から専門家も交えて話をし、経営者にも必要

性が伝わり後押ししてくれるようになった。

⑥ 複雑な医療機器のアラーム規格がIEC化されたが、このようなものは安全基準の副通則ながら全ME機器に影響するものであるから、我が国の主張を入れるべきであった。JISにはもと

もと簡易で実用的な「警報通則」があったが、IECにキチンと提案しなかったのでIEC原案

が賛成多数で採用された。

⑦ ISO、IECに性能基準を設けると日本の進歩が阻害されるのではないか? →歯科分野の場合、性能基準がメインであり、安全性は世界標準に沿うようにしている。

→性能基準の策定には反対する。決められてしまうと海外でも製造できてしまうためISOに

はしたくない。

⑧ 除細動器のJISが国際規格になったため、日本で作製するメーカーが少なくなってきている。企業は失敗したくない。性能を売り出すのは良いが、海外メーカーがついてくることができ

ないようであれば、性能基準を作成しても良いが、それをそのまま医療機器業界に持ってく

るのは難しい。

政策提言のまとめ方についての質疑応答

① 「2.国際標準化に係る基本戦略」に(6)項を新しく作り安全基準と性能基準について書き込むか?

→試験法としては良いかも知れないが、現実的な案ではない。

→JISにおいて数値を設定する場合、国内で製品を提供している全てのメーカーが基準に合致

するよう、最低と最高の値を利用している。性能を国際基準にするのは難しい。

→業界も受け入れない。試験方法等で日本の技術を輸出できないか?

→試験法の場合も性能基準の提案は難しい。各国に都合の良い方法が全て含まれている。

② ディファクトスタンダードで機器を販売しているため、日本の強いところを推し進め、牛耳ってしまうのという内容が良いのではないか?

③ 販売し易くするにはどうすればよいのか? →試験方法などが無いもの、受け入れてよいか基準の無いもの、国際規格で空白になっている

もの等について、臨床的にも対応でき、技術でも対応できるかで判断する。

④ 臨床レベルで推したいものもあるが、足をひっぱられるのでは? →粗悪品を作る所があるため、そうできないように規格を上げる。3分の2の承認を得られれば

上げることができる(橋本)

⑤ (6)項は付け加えず原案通りとする。「3.医療機器分野における国際標準化に必要な因子」は資料3を参照することにより、把握できるようになっている。

⑥ 「4.国際基準として提案した又は提案可能な日本独自の規格等」に変更する。 ⑦ 「(3)A.ソフトウェア分野」を「医療情報分野」に変更する。本項目は、資料4と合わせて先の議論に従って修正する。

⑧ (3)C)歯科分野に成功理由を付け足す。 ⑨ (2)の「PMDA/審査マネジネント部」という標記は適切ではないのでは?

→「PMDA/審査マネジメント部」を「規制担当当局」に変更する。また、「衛研に窓口を作る」

ことを具体的提言として盛り込み、両者を「3.医療機器分野における国際標準化に必要な諸

因子」に移動する。

⑩ 国の支援形態については、経産省からの支援内容を参考にしてはどうか? 会社自体の評価も必要になってくると思われる。

→複数の企業に団体で取り組んでもらう。企業からエキスパートを出して頂く場合は承諾書を

もらう。

→企業においては、標準化活動への理解が足りず、エキスパートがボランティアと活動してい

るのが現状である。十分に戦略が練られている場合はエキスパートに支援をしたらどうか?

薬事ではこれによって予算を出すことができる。この内容を(3)A)に取り入れても良いか?

→国際規格でこのような提案もある、ということを書いてもらって構わない。日本の治験が効

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率化し、国際的な競争力強化に繋がるので関係がある。

→MFERと薬事は別資料にするか、或いはMFERと薬事の2項作るのか? 発信すべき提案とし

て資料を作成し、どのようにまとめるかは別途相談する。

5. 今後について

① 本年度は最終年度なので総括・分担研究報告書と総合研究報告書が必要。 ② 2月末までに原稿提出。 ③ 必要に応じて次回会議開催。

以上