国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)における...

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厚生労働科学研究費補助金 地球規模保健課題推進研究事業 国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)における 医療機器の各種国際規格の策定に関する研究 平成 24 年度 総括・分担研究報告書 研究代表者 蓜島由二 平成 25(2013)年 4 月

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  • 厚生労働科学研究費補助金

    地球規模保健課題推進研究事業

    国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)における

    医療機器の各種国際規格の策定に関する研究

    平成 24 年度 総括・分担研究報告書

    研究代表者 蓜島由二

    平成 25(2013)年 4 月

  • 平成 24 年度 厚生労働科学研究費補助金

    地球規模保健課題推進研究事業

    国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)における

    医療機器の各種国際規格の策定に関する研究

    目 次 Ⅰ.総括研究報告書

    国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)における医療機器

    の各種国際規格の策定に関する研究(蓜島由二) 1

    Ⅱ.分担研究報告書

    (1)医療機器に係る工学的見地からの具体的事例に関する研究(小野哲章) ##

    (2)ISO/TC194/WG9 ラウンドロビンテスト支援研究(松岡厚子) ##

    (3)医療波形情報の ISO 化活動に関する支援(横井英人) ##

    Ⅲ.政策的提言及び関連資料

    (1)政策的提言(ISO/IEC 医療機器規格策定戦略研究班) ##

    (2)関連資料

    ・資料 1:国際標準化に係る基本戦略 –国際標準化に係る経済産業省の取組- ##

    ・資料 2:経済産業省における国際標準化への取組について ##

    ・資料 3:医療機器分野における国際標準化に必要な諸因子 ##

    ・資料 4:医療機器に関連する医療情報規格への取り組み ##

    ・資料 5:歯科用 CAD/CAM マシンで作製する修復物の精度に関する新しい

    評価方法の策定に関する国際標準化活動 ##

    ・資料 6:諸外国における標準化政策について ##

    ・資料 7:予算申請手続様式事例(経済産業省書式) ##

    Ⅳ.資料編

    (1)第一回会議議事録 ##

    (2)第二回会議議事録 ##

  • 研究協力者一覧

    池野谷崇臣 日本医療機器学会 犬飼香織 テルモ株式会社 岩崎清隆 早稲田大学先端生命医科学センター 岩橋四郎 日本光学工業協会 浦富恵輔 日本医療器材工業会 大熊一夫 日本歯科大学新潟生命歯学部歯科理工学講座 小倉英夫 日本歯科大学新潟生命歯学部歯科理工学講座 加藤英夫 日本臨床検査標準協議会 香取輝美 財団法人 食品薬品安全センター秦野研究所 鹿糠実香 テルモ株式会社 神谷正己 日本画像医療システム工業会 合田忠弘 九州大学大学院総合理工学研究院融合創造理工学部門 電気理工学講座 駒木秀明 日本ファインセラミックス協会 斎藤健一 日本ゴム工業会コンドーム協議会 坂口圭介 テルモ株式会社 新藤智子 財団法人 食品薬品安全センター秦野研究所 鈴木数広 日本医療器材工業会 曽根原誠 電子情報技術産業協会 竹下道孝 日本ゴム工業会 竹ノ内美香 テルモ株式 竹花一哉 関西医科大学内科学第二講座 内藤正章 日本光電工業株式会社 内藤正義 日本医療機器産業連合会 中山雅晴 東北大学病院 循環器内科 野田 穆 日本歯科商工協会 野間貴久 香川大学医学部循環器・腎臓・脳卒中内科

    橋本 隆 日本歯科材料器械研究協議会

    平井正明 MFER委員会/日本光電工業株式会社

    廣瀬志弘 独立行政法人 産業技術総合研究所 ヒューマンライフテクノロジー研究部門

    福井千恵 国立医薬品食品衛生研究所 三村智憲 株式会社日立ハイテクノロジース 宮田文隆 日本歯科器械工業協同組合 村松寛昭 日本歯科材料工業協同組合 室田知美 テルモ株式会社 山影康次 財団法人 食品薬品安全センター秦野研究所 山口典久 株式会社ニデック 山下克巳 日本医療機器工業会 山本佳子 日本歯科材料器械研究協議会

  • Ⅰ.総括研究報告書

  • 総括研究報告書

    平成24年度厚生科学研究費補助金(地球規模保健課題推進)研究事業

    国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)における医療機器の各種国際規格の

    策定に関する研究(H23-地球規模-指定-003)

    研究代表者 蓜島 由二 国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部

    研究分担者 小野 哲章 滋慶医療科学大学院大学医療管理学研究科

    医療安全管理専攻

    松岡 厚子 国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部

    横井 英人 香川大学医学部附属病院 医療情報部

    研究要旨

    A.研究目的

    近年、国際市場の拡大に伴い、医療機

    器に関する各国の法規制を整合化する動

    きが活発化している。GHTFではグローバ

    ルな整合作業が進められており、その他、

    ISOやIECでは医療機器の性能や試験法等、

    有効性と安全性に関する各種規格・基準

    の国際整合化が行われている。医療機器

    については、品質維持の観点から国内法

    規への適合が求められると共に、主に通

    商上の観点から国際規格への適合も要求

    される。すなわち、我が国の優れた製品

    を世界的に流通させるためには、日本の

    国内法規における要求事項を反映した国

    際規格を作成し、運用することが最適と

    言える。また、日本は医療機器開発にお

    いて先進的な技術力を持つことから、国

    際的な優位性を確立することが可能な状

    況にある。例えば、製品や材料の性能評

    価等に関する技術については、差別化に

    国際基準である ISO/IEC基準に原案を提案するには、いくつかの道があるが、平成

    24年度は昨年度に引き続き、(1)発信すべき医療機器・技術・手法の新規提案、(2)現

    行のISO/IEC規格改良のためのデータ収集と次期改正への提案について検討した。

    (1)については、昨年度に提案した「歯科用CAD/CAMマシンで作製する修復物の精度

    に関する新しい評価方法」に次ぐ新たな規格「Accuracy of machined indirect

    restorations – Test methods and marking」を国際標準化するケーススタディのほか、「医療波形情報のISO化活動に関する支援」としてMFERを用いて再構築した18誘導

    心電図を用いた後壁梗塞の診断能及び「溶血性試験用陽性対照材料の開発と性能評価」

    に関するケーススタディを実施した。(2)については、ISO/TC194/WG9が担当する医用

    材料の血液適合性評価のための試験法である ISO 10993-4の改訂作業に伴う溶血性試

    験/ラウンドロビンテストの支援を行った。

    また、医療機器関係業界との連携のもと、2年間に渡って収集した知見に基づき、国

    際的に提案できる基準の選別や原案策定過程への提案を含めて、国家的にサポートす

    る体制の構築、国際標準化に関する戦略的な考え方や提案可能な具体的な基準等につ

    いて取りまとめた「医療機器規格・基準の国際標準化戦略に係る政策的提言」を作成

    した。

  • よる高付加価値化を狙い、新たな市場を

    開拓していくことが重要である。このた

    め、研究開発段階から標準化を視野に入

    れたプロジェクトを推進すると共に、国

    際標準策定に必要なデータ取得、ラウン

    ドロビンテスト等を産業界と一体となり

    推進することが必要である。

    このような背景の中、現在までに国内

    の医療機器の評価手法、必要な基準の策

    定、国際的な整合等に関する研究や活動

    は行われて来ているが、日本発の良質な

    医療機器を障壁なく国際的に進出させる

    環境を整備する戦略的な研究は実施され

    ていない。そこで本研究では、医療機器

    関係業界と連携を図りつつ、国際的に提

    案できる基準の選別や原案策定過程への

    提案を含めて、国家的にサポートする体

    制の構築について検討し、国際標準化に

    関する戦略的な考え方や提案可能な具体

    的な基準等について取りまとめ、政策的

    な提言を行うことを目指して、関連する

    調査・研究を実施した(図1)。

    図1.本研究の概要

    平成24年度の本研究では、昨年度に引

    き続き、医療情報分野、試験法分野及び

    歯科分野に関する 3つのケーススタディ

    を実施したと共に、ISO/TC194における将

    来の標準化を視野に入れて新たなケース

    スタディを立ち上げ、溶血性試験用陽性

    対照材料の開発に向けて基礎データを収

    集した。

    また、これらのケーススタディを通し

    て得られた知見のほか、昨年度に実施し

    た国際的に提案できる JIS及びその他の

    基準等のヒヤリング調査、並びにISO/IEC

    国内審議団体の活動状況、成果及び国際

    整合を行う上で重要となる事項・要望等

    をアンケート形式により調査した結果を

    踏まえ、医療機器関係業界との連携のも

    と、国際標準化活動を国家的にサポート

    する体制の構築、国際標準化に関する戦

    略的な考え方や提案可能な具体的な基準

    等について取りまとめた「医療機器規

    格・基準の国際標準化戦略に係る政策的

    提言」を作成した。

    B.研究方法

    (1)ケーススタディ

    発信すべき医療機器・技術・手法の新

    規提案及び現行の ISO/IEC規格改良のた

    めのデータ収集と次期改正への提案を行

    うため、平成24年度に実施した以下のケ

    ーススタディの研究方法については該当

    する分担研究報告書を参照して頂きたい。

    1-1.小野・蓜島班

    ・歯科用CAD/CAMマシンで作製する修復

    物の精度に関する新しい評価方法」及

    び本規格に次ぐ新たな規格「Accuracy

    of machined indirect restorations – Test methods and marking」の提案

    ・溶血性試験用陽性対照材料の開発と性

    能評価

  • 1-2:松岡班

    ・ISO/TC194/WG9ラウンドロビンテスト

    支援研究

    1-3:横井班

    ・医療波形情報のISO化活動に関する支

    (2)政策的提言の作成

    ISO/IEC国内審議団体の代表者(6団

    体:総計 5名)のほか、電気通信分野の

    国際標準化に精通した専門家 1名を研究

    協力者として招聘し、研究分担者、厚生

    労働省医薬食品局審査管理課医療機器審

    査管理室及び医薬品医療機器総合機構

    (PMDA)の担当官を交えて政策的提言の

    内容構成等について討議した。

    C.研究結果

    (1)ケーススタディ

    本研究の目標の 1つは、我が国の新技

    術及び新機器に関する規格を世界へ発信

    することにある。新技術・新機器の種類

    と国際的な規格化に至る過程は多種多様

    であることから、その発信方法の検討に

    は、幾つかの事例を実際に提示すること

    が有益である。そこで本研究では、以下

    に示したケーススタディを実施した。

    1-1.小野・蓜島班(歯科分野・試験法分

    野)

    平成23度から実施している歯科用CAD/

    CAMマシンで作製する修復物の精度に関

    する新しい評価方法の提案に関するケー

    ススタディでは、ISO/TC106/SC9/WG1への

    提案規格である「ISO/FDIS 12836:

    Dentistry ̶ Digitizing devices for CAD/

    CAM systems for indirect dental resto-

    rations ̶ Test methods to assess the

    accuracy」が平成24年8月に実施された

    投票において承認され、本年10月1日に

    ISO規格として発行された。平成 24年度

    は、本規格に次ぐ新たな規格として、

    「Accuracy of machined indirect resto-

    rations – Test methods and marking」に関する検証データを収集し、本年10月

    に開催された ISO/TC106/SC9総会におい

    て新規提案に向けた概要説明を行い、平

    成 25年 1月に本新規規格に関する WDを

    ISO事務局に提出した。

    また、今年度は将来の標準化を視野に

    入れて新たなケーススタディを立ち上げ、

    溶血性試験用陽性対照材料の開発に向け

    て基礎データを収集した結果、Genapol

    X-080含有ヒートプレスPVCシートが良好

    な陽性対照材料として利用できることを

    見出した。また、本事業において別グル

    ープ(松岡班)が実施しているケースス

    タディである「ISO/ TC194/WG9溶血性試

    験ラウンドロビンテスト支援研究」に寄

    与するため、本研究において開発した陽

    性対照材料を試料として提供し、その性

    能を詳細に確認した。

    歯科分野の新規提案規格及び新たに立

    ち上げた溶血性試験用陽性対照材料の開

    発に関する検証試験結果の詳細は本報告

    書に添付した小野・蓜島班の分担研究報

    告書を参照して頂きたい。

    1-2.松岡班(試験法分野)

    ISO/TC194/WG9(医療機器の生物学的評

    価 - 血液適合性 WG)は、担当文書 ISO

    10993-4:2002 及び Amd 1:2006の改正に

    向け、溶血性試験に関する多施設国際共

    同検証試験(ラウンドロビンテスト)の

    実施を計画した。今年度、本研究班から

  • 参加の 2機関が、WG9 Convenor Dr.

    Michael Wolfのとりまとめる溶血性試験

    プロトコルの最終化作業に参画し、サン

    プル選定と文書校正を完了させた(文書

    発行2012年11月19日)。プロトコルは、

    医療機器の溶血性試験で国際的に広く用

    いられているASTM法、NIH法、MHLW法(薬

    食機発0301第20号 1))の3法で構成され

    ている。またラウンドロビンテストの実

    施は、第一段階の Pilot Runと第二段階

    のActualに分けて行うこととなった。上

    記2機関により今年度末までにPilot Run

    の第一回目の試験が実施される運びとな

    っている。

    また、本研究班で試験精度管理の目的で

    開発中の陽性対照材料(Genapol X-080含

    有 PVCシート)を、前述のラウンドロビ

    ンテストのプロトコルにて性能評価を実

    施し、ラウンドロビンテスト用サンプル

    の1つとして提供することを目的として、

    その基本性能を詳細に評価した。Genapol

    X-080含有量依存的に溶血性が認められ、

    精度管理目的の陽性対照材料の候補とし

    て、その基本性能が確認された。

    1-3.横井班(医療情報分野)

    医療機器の標準規格の中で、特に医療

    情報に関して日本から提案されているも

    のは必ずしも多くない。医療波形に関す

    る規格であるMFERは、2007年に発行され

    た ISO規格(TS)で、日本から提案されて

    規格化されたものであるが、ISとしての

    審議に際して、その臨床的有用性につい

    ての研究文献が少ないとの指摘を受けて

    いる。これを受けて、本研究班では同規

    格を用いた臨床研究を立案し、実施した。

    症例数が十分でないなどで、有意な知見

    とは言い切れないが、12誘導心電図から

    本規格を通して波形処理し、導出した 18

    誘導心電図が、後下壁の心筋虚血の診断

    の一助になる可能性が示唆された。

    (2)政策的提言及び関連資料の作成

    昨年度実施したアンケート調査に御協

    力頂いた ISO/IEC国内審議団体に本研究

    班への参画を依頼した結果、日本歯科材

    料器械研究協議会(橋本氏:同事務局)、

    ISO/TC172/SC7(山口氏:同SC7分化委員

    会会長/株式会社ニデック)、ISO/TC150/

    SC7/WG3(廣瀬氏:同WG3主査/産業技術

    総合研究所)、ISO/TC212/WG3(三村氏:

    同 WG3主査/株式会社日立ハイテクノロ

    ジーズ)、ISO/TC210及びISO/TC62(内藤

    氏:両TC国内委員会副委員長/日本光電

    工業株式会社)の賛同を得ることができ

    た。また、電気通信分野の国際標準化に

    精通した合田氏(九州大学大学院総合理

    工学研究院融合創造理工学部門 電気理

    工学講座 特任教授)の参画を得ることも

    できた。

    これらの研究協力者を交えて討議した

    結果、本研究班の最終目標である「医療

    機器規格・基準の国際標準化戦略に係る

    政策的提言」は以下に示した構成とする

    ことが決定された。

    ◎政策的提言項目

    1.はじめに

    2.国際標準化に係る基本的戦略

    3.医療機器分野における国際標準化

    に必要な諸因子

    4.国際標準として提案した又は提案

    可能な日本独自の規格等

    5.各国政府の支援状況

    6.日本政府が行うべき財政的支援と

    その条件

  • 1項において、本提言は厚生労働省、国

    立医薬品食品衛生研究所、PMDA、大学等

    の研究者、学会及び産業界等、医療機器

    開発に携わる全ての機関及び組織を対象

    とすることを明記した。国際標準化につ

    いては、経済産業省において様々な取組

    が行われている。厚生労働省において医

    療機器分野の国際標準化を推進するため

    には、経済産業省との連携を更に強化す

    ることが基本的戦略になると思われため、

    2項では、経済産業省が実践している、1)

    事業戦略と国際標準化、2)協調領域と協

    争領域の線引き、3)国際標準提案制度の

    在り方、4)人材育成・普及啓発に係る取

    組、5)我が国における国際標準の基本戦

    略について概説した。3項は、平成 23年

    度に実施した ISO/IEC国内審議団体への

    アンケート調査結果に基づき、国際標準

    化を成功させるために必要な各種項目

    (国に対する要望を含む)のほか、各項

    目の現状と課題並びに対策・提言等の具

    体例を取りまとめた。4項には、平成 23

    年度に実施した関連団体へのヒヤリング

    調査結果に基づき、国際標準として提案

    した又は提案可能な日本独自の規格等を

    記載した。また、本研究で実施したケー

    ススタディを通して得られた知見も 4項

    に取りまとめた。5項では、医療機器分野

    の ISO/IEC活動に対する各国政府の支援

    状況について記述した。また、スマート

    グリッドや電気通信分野等、国家プロジ

    ェクトとして活動する比較的大きなTCは

    国からの直接的な援助を受けている事例

    が多いため、米国、EU及び韓国における

    国家的な支援体制の内容を紹介し、日本

    に残された検討課題についても概説した。

    6項は、5項とも関連する項目であり、医

    療機器分野の国際標準化事業を日本政府

    として財政的に支援する必要性のほか、

    同支援を行うための条件等について取り

    まとめた。

    各項目の詳細は本報告書に添付した

    「医療機器規格・基準の国際標準化戦略

    に係る政策的提言」及びその関連資料(資

    料1-7)を参照して頂きたい。

    D.考 察

    我が国の医療機器に関する基準として

    は JISがあるが、我が国の医療機器行政

    では許認可のための技術基準として JIS

    が使われることが多く、他の分野以上に

    同規格の重要性は高い。JIS原案は、最近

    では医療機器業界が関連する ISO/IEC等

    の国際規格を翻訳して作成する場合が多

    い。一方、我が国の医療機器には品質や

    性能等の優れた製品が多く存在するが、

    これらの製品の規格を ISO/IEC等に積極

    的に導入し、日本発の良質な医療機器(ソ

    フトウエアを含む)を障壁なく国際的に

    進出させる環境を整備することが、我が

    国の患者の利益、医療機器産業振興及び

    国家戦略として重要な課題となっている。

    2年間に渡る調査・研究を通して、我が

    国の医療機器・技術・手法(ソフトウエ

    アも含む)に関する国際規格化の取り組

    みは、先進各国と比較して立ち遅れてい

    る状況であることが明らかとなった。こ

    のような調査の重要性を認識すると同時

    に、幾つかのケーススタディを実際に実

    施し、クリアすべき問題点を個々に明ら

    かにして行く努力が必要であることも見

    出すことができ、本研究の重要性を再認

    識した。

    本研究の最終目標である「医療機器規

    格・基準の国際標準化戦略に係る政策的

    提言」を産官学連携のもとに事業期間内

  • に作成することができたことは大きな成

    果と言える。本提言は国のみではなく、

    医療機器開発に携わる全ての機関・組

    織・企業等に向けられたものであり、医

    療機器分野の国際標準化活動の更なる推

    進を目指し、今後、実施可能な項目から

    順次実行して行くことが重要である。

    E.結 論

    国際標準化を成功させるための要因を

    調査するため、4つのケーススタディを実

    施した。また、医療機器関係業界との連

    携のもと、2年間に渡って収集した知見に

    基づき、国際的に提案できる基準の選別

    や原案策定過程への提案を含めて、国家

    的にサポートする体制の構築、国際標準

    化に関する戦略的な考え方や提案可能な

    具体的な基準等について取りまとめた

    「医療機器規格・基準の国際標準化戦略に

    係る政策的提言」を作成した。

    F.健康危険情報

    特になし。

    G.研究発表

    1)蓜島由二,福井千恵,柚場俊康,松岡

    厚子.溶血性試験用陽性対照材料の開

    発と性能評価.日本バイオマテリアル

    学会シンポジウム2012(2012年11月,

    仙台).

    2) Kazama M, Ohkuma K, Ogura H. The new

    method to fabricate ceramic crown

    copings from full-sintered zirconia

    using Nd-YVO4 nsec laser.日中歯科医

    学会2012(2012年4月,成都).

    3)風間未来,大熊一夫,小倉英夫.Nd-YVO4

    レーザーを用いたジルコニアコーピン

    グの新しい加工法 ―照射条件と加工

    精度―.第60回日本歯科理工学会学術

    講演会(2012年10月,福岡).

    参考資料

    特になし。

  • Ⅱ.分担研究報告書

  • 分担研究報告書

    平成 24 年度厚生科学研究費補助金(地球規模保健課題推進)研究事業

    国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)における医療機器の各種国際規格の

    策定に関する研究(H23-地球規模-指定-003)

    分担研究課題名

    医療機器に係る工学的見地からの具体的事例に関する研究

    研究代表者 蓜島 由二 国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部

    研究分担者 小野 哲章 滋慶医療科学大学院大学 医療管理学研究科

    医療安全管理専攻

    研究協力者 小倉 英夫 日本歯科大学新潟生命歯学部歯科理工学講座

    大熊 一夫 日本歯科大学新潟生命歯学部歯科理工学講座

    研究要旨

    本研究では、国際標準化活動に対する国家的なサポート体制を構築し、標準化に関する戦

    略的な考え方や提案可能な具体的な基準等について取りまとめ、政策的な提言を行うことを

    目的としている。その一環として平成 24 年度は、発信すべき医療機器・技術・手法の新

    規提案を行うため、2つのケーススタディを実施した。

    昨年度から実施している歯科用CAD/CAMマシンで作製する修復物の精度に関する新し

    い評価方法の提案に関するケーススタディでは、ISO/TC106/SC9/WG1 への提案規格であ

    る「ISO/FDIS 12836:Dentistry — Digitizing devices for CAD/CAM systems for indirect

    dental restorations — Test methods to assess the accuracy」が平成 24 年 8 月に

    実施された投票において承認され、本年 10 月 1 日に ISO 規格として発行された。本年

    度は、本規格に次ぐ新たな規格として、「Accuracy of machined indirect restorations

    – Test methods and marking」に関する検証データを収集し、本年 10 月に開催されたISO/TC106/SC9 総会において新規提案に向けた概要説明を行い、平成 25 年 1月に本新規

    規格に関する WD を ISO 事務局に提出した。また、今年度は将来の標準化を視野に入れ

    て新たなケーススタディを立ち上げ、溶血性試験用陽性対照材料の開発に向けて基礎デ

    ータを収集した結果、Genapol X-080 含有ヒートプレス PVC シートが良好な陽性対照材

    料として利用できることを見出した。また、本事業において別グループ(松岡班)が実

    施しているケーススタディである「ISO/ TC194/WG9 溶血性試験ラウンドロビンテスト支

    援研究」に寄与するため、本研究において開発した陽性対照材料を試料として提供し、

    その性能を詳細に確認した。

    A.研究目的

    本研究では、医療機器関係業界と連携を

    図りつつ、国際標準化に関する戦略的な考

    え方や提案可能な具体的な基準等に関す

    る知見を収集することを目的として、関連

    する調査・研究を実施した。その一環とし

    て、昨年度は発信すべき医療機器・技術・

    手法の新規提案について検討するため、国

    際標準化に関する実例として、「歯科用

    CAD/CAM マシンで作製する修復物の精度に

    関する新しい評価方法」に関する規格を国

    際標準化するケーススタディを立ち上げ、

  • 規格のベースとなるデータを取得する検

    証実験を行った。また、平成 23 年 9 月に

    開催された ISO/TC106 総会(フェニックス

    会議)において、歯科用 CAD/CAM システム

    について討議する新 SC の設立を日本が提

    案し、満場一致で承認された。同時に新

    SC は Convener(日本歯科大/小倉英夫教

    授)及び幹事国ともに日本が担当すること

    に決定された。提案規格である「ISO/FDIS

    12836:Dentistry — Digitizing devices

    for CAD/CAM systems for indirect dental

    restorations — Test methods to assess

    the accuracy」は同 SC に設立された WG1

    において協議され、平成 24 年 8 月に実施

    された投票において、賛成 12 カ国、反対

    2 カ国の結果をもって、本年 10 月 1 日に

    ISO 規格として発行された。平成 24 年度

    は、本規格に次ぐ新たな規格を作成するた

    め、「Accuracy of machined indirect res-

    torations – Test methods and marking」に関する検証データを取得したと共に、平

    成24年 10月に開催されたISO/TC106総会

    (パリ会議)において NWIP に向けた概要説

    明を行った。

    本ケーススタディのほか、平成 24 年度

    は新たなケーススタディを立ち上げた。

    厚生労働省医療機器審査管理室長通知/

    平成 24 年 3 月 1 日付け薬食機発 0301 第

    20 号「医療機器の製造販売承認申請等に

    必要な生物学的安全性評価の基本的考え

    方について」の別添において、細胞毒性

    試験及び埋植試験については、試験精度

    を確認するために対照材料を用いること

    とされている。一方、溶血性試験につい

    ては対照材料が指定されていない。そこ

    で本研究では、ISO/TC194 における将来の

    標準化を視野に入れ、基礎データを収集

    するために溶血毒として知られている各

    種化合物のサーベイ試験において選定さ

    れた化学物質を含有するポリ塩化ビニル

    (PVC)シートを調製し、抽出法及び直接

    法による溶血性試験を行い、陽性対照材

    料としての性能を評価した。また、本事

    業において別グループ(松岡班)が実施

    しているケーススタディである「ISO/

    TC194/WG9 溶血性試験ラウンドロビンテ

    スト支援研究」に寄与するため、本研究

    において開発した陽性対照材料を試料と

    して提供した。

    B.研究方法

    (1)ケーススタディ 1「Accuracy of ma-

    chined indirect restorations – Test methods and marking」

    1-1.検証実験

    1-1-1.歯科用修復物の種類

    CAM マシンで作製した精度評価用の歯

    科用修復物を以下に示した。

    Ⅰ級インレー:小さなう蝕で咬合面だけ

    に限局した修復物であり、この典型的な

    形態と寸法を決定し、金型を作製した(図

    1)。

    Ⅱ級インレー:小さなう蝕で咬合面と近

    心や遠心に伸びた修復物であり、この典

    型的な形態と寸法を決定し、金型を作製

    した(図 2)。

    クラウン:大きなう蝕で冠のように被せ

    る修復物であり、CAD/CAM のデジタイザー

    の精度分野で ISO/TC106 で新規提案され

    ている形態と寸法を参考にして、金型を

    作製した(図 3)。

    ブリッジ:歯を 1-2 本失った場合、前後

  • の歯をシリンダー状に切削して、全体を

    連結して歯牙欠損を補う修復物であり、

    クラウンと同様、CAD/CAM のデジタイザー

    の精度分野で ISO/TC106 で新規提案され

    ている形態と寸法を参考にして、金型を

    作製した(図 4)。

    1-1-2.CAM による修復物の作製

    通常、三次元データは同データを ISO

    として規定し、このデータに基づいて作

    製された修復物の精度を計測する。しか

    し、各修復物の三次元データは各メーカ

    ーが独自に準備するため、同一修復物に

    おいて必ずしも同じとは限らないことか

    ら、メーカー毎に CAM データを修正して、

    精確な修復物を作製した。

    CAD/CAM で使用できる材料は、ワックス、

    セラミックス及び金属等、様々な種類が

    存在する。また、ブロックの形態も角柱

    や円板等があり、修復物の種類に応じて

    寸法も異なる。そこで、修復物の作製い

    ついては、ブロックの形態や寸法を ISO

    で規定することなく、メーカーに全て任

    せた。 1-1-3.修復物の精度の測定と評価

    従来、修復物の精度は高価な三次元測

    定装置を用いて測定していた。しかし、

    この方法では、どこの国でも簡単に精度

    を測定することは不可能である。そこで、

    CAM マシンで作製した修復物を対応する

    金型に装着し、金型の基準面と比較して、

    突出又は沈下した変位量として精度の測

    定を行った。金型には角度(テーパー)

    が付与されているため、CAM マシンで作製

    された修復物の拡大又は縮小率を小数点

    以下第一位までの精度(%)で評価した。

    1-2.ISO/TC106/SC9 への新規提案

    平成 24 年 10 月に開催された ISO/TC

    106/SC9総会及びISO/TC106/SC9/WG1会議

    に出席し、本規格の新規提案に向けた事

    前説明を行った。

    (2)ケーススタディ 2「溶血性試験用陽性

    対照材料の開発と性能評価」

    2-1.サーベイ試験

    ジフェニルジスルフィド及び Genapol

    X-080 をはじめとした 23 種類の化学物質

    (表 1)を候補として選択し、極性に応じ

    て PBS 又は DMSO に 50mM の濃度で溶解し

    た。ウサギ脱線維血 1ml を遠心分離し、

    得られた赤血球画分を PBS で 3 回洗浄後、

    同容量の PBS に懸濁させて血液試料とし

    た。PBS 2ml に被験物質(終濃度 50 又は

    500μM)及び血液 40μl を添加し、37℃でインキュベートした。1、2 及び 4 時間後

    に試験混液 0.5ml を採取し、遠心分離し

    た後、遠心上清の 413nm における吸光度

    を測定して溶血性を評価した。

    2-2.可塑化 PVC の調製

    ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)

    30g に PVC パウダー50g をスパーテルで撹

    拌しながら緩やかに加え、均一な状態に

    なるまで混和した。混和物を室温から

    徐々に 100℃まで加熱した後、スパーテル

    で十分に混和した。再度、混和物を 100℃

    で 3 分間加熱し、混和する操作を 3 回繰

    り返した後、放冷して可塑化 PVC を調製

    した。

    2-3.化学物資含有 PVC シートの調製と性

    能評価

    化学物質含有 PVC シートはヒートプレ

    ス法(180℃)又はキャスト法(THF)に

  • より作製した。可塑化 PVC への各化合物

    の混合比は 100 パーツの PVC に対して、

    0.01、0.1、1 及び 10 パーツとした。化学

    物質含有 PVC シート(表裏総計 12cm2)を

    裁断後、PBS 2ml を添加してオートクレー

    ブ抽出(121℃/15 分)を行った。同抽出

    液 1ml に血液 20μl を添加し、上記と同様の溶血試験を実施した。また、PBS 2ml と

    血液 40μl の混液に裁断した PVC シート(表裏総計 12cm2)を添加し、直接法によ

    る溶血性も評価した。ジフェニルジスル

    フィドは親水性に劣るため、PBS の代替溶

    媒として 10% DMSO を使用した実験も行っ

    た。

    2-4.松岡班との連携

    本研究において作製した Genapol X-080

    含有ヒートプレス PVC シートを陽性対照

    材料として提供し、ASTM 法、NIH 法及び

    我が国の「医療機器の生物学的安全性試

    験法ガイダンス/血液適合性試験」等の

    各種公定法に準拠した試験を実施した

    (松岡班分担研究報告書参照)。

    C.研究結果

    (1) ケーススタディ 1「Accuracy of ma-

    chined indirect restorations – Test methods and marking」

    1-1.金型を使用した精度測定

    1-1-1.Ⅰ級インレー

    CAM マシンで作製したⅠ級インレーが

    金型より大きくなった場合、金型にイン

    レーを装着すると、図 5 右側に示したよ

    うに、インレーは基準線(Baseline)よ

    り突出した(+A)。この金型には 6°のテ

    ーパーが付与されているため、小数点以

    下第一位までの精度で拡大率を測定する

    ことが可能であった。また、Ⅰ級インレ

    ーが金型より小さくなった場合、インレ

    ーを装着すると、図 5 左側に示したよう

    に、インレーは Baseline より沈下(-A)

    したため、同様に収縮率を測定すること

    ができた。

    1-1-2.Ⅱ級インレー

    CAM マシンで作製したⅡ級インレーが

    金型より大きくなった場合、金型にイン

    レーを装着すると、図 6に示したように、

    インレーは Baseline より突出した

    (+A,+B)。この金型には 8°のテーパーが

    付与されているため、小数点以下第一位

    までの精度で拡大率を測定することが可

    能であった。また、Ⅱ級インレーが金型

    より小さくなった場合、インレーを装着

    すると、図 7 左側に示したように、イン

    レーは窩底で接し、Baseline より沈下し

    ない。窩底を取り除くことにより、イン

    レーは基準線より沈下(図 7右側:-A,-B)

    するため、収縮率を測定することが可能

    であった。

    1-1-3.クラウン

    CAM マシンで作製したクラウンが金型

    より小さくなった場合、金型にインレー

    を装着すると、図 8右側に示したように、

    クラウンは Baseline より突出した(+A)。

    この金型には 16°のテーパーが付与され

    ているため、小数点以下第一位までの精

    度で収縮率を測定することが可能であっ

    た。また、クラウンが金型より大きくな

    った場合、金型にクラウンを装着すると、

    図 9 左側に示したように、クラウンは

    Baseline に接するため、沈下しない。図

    9中央に示したように、この金型はショル

    ダー部を取り外すことができる構造に設

    計してあり、ショルダー部を除去するこ

  • とにより、クラウンは基準線より沈下(図

    9右側:+A)するため、拡大率を測定でき

    た。

    1-1-4.ブリッジ

    CAM マシンで作製したブリッジが金型

    より小さくなった場合、金型にブリッジ

    を装着すると、図 10 に示したように、ク

    ラウンは Baseline より突出した(+A)。

    この金型には 16°のテーパーが付与され

    ているため、小数点以下第一位までの精

    度で収縮率を測定することが可能であっ

    た。また、ブリッジが金型より大きくな

    った場合、ブリッジを装着すると、図 11

    左側に示したように、ブリッジは

    Baseline に接するため、基準線より沈下

    しない。ショルダー部を取り除くことに

    より、クラウンは基準線より沈下(図 11

    右側:-A,-A7)するため、拡大率を測定

    できた。

    1-2.ISO/TC106/SC9 への新規提案

    2012 年 10 月 4 日に開催された ISO/TC

    106/SC9/WG1 (CAD/CAM systems)会議にお

    いて、歯科用修復物の精度の評価方法に

    関する規格の新規提案に向けた事前説明

    を行った。その際の討議結果を踏まえて

    WD を作成し、平成 25 年 1 月に ISO 事務局

    に提出した(別添資料)。

    他国からも以下の規格に関する事前説

    明が行われた。

    ・Test methods for CAD/CAM produced re-

    storations(ドイツ)

    ・Technical file for CAD/CAM produced

    restorations(ドイツ)

    ・Composite cements for CAD/CAM resto-

    rations and machinable zirconia

    ceramics(米国)

    ・Interoperability of CAD/CAM systems

    (韓国)

    これらの事前説明は急遽実施されたこ

    とから、歯科業界における CAD/CAM への

    関心が高いことが分かった。2013 年に開

    催される ISO/TC106 ソウル会議において、

    今回提出した WDが討議される予定である。

    (2) ケーススタディ 2「溶血性試験用陽性

    対照材料の開発と性能評価」

    2-1.陽性対照材料の開発

    試験対象化学物質(23 種類)の溶血性

    を評価した結果、図 12 に示したように、

    ジフェニルジスルフィドと Genapol X-080

    はそれぞれ 500及び 50μMの濃度で顕著な溶血性を示したが、その他 21 種類の化合

    物の溶血率は 4 時間インキュベーション

    時でも最大 30%程度であった。ジフェニル

    ジスルフィドの溶血性は 60-90μM の濃度範囲で用量依存的に増加し、90μM で 4 時間インキュベートした時の溶血率は 81%

    に達した(図 13a)。Genapol X-080 は 25μMから溶血性を示し、40μM 以上で完全溶血したため(図 13b)、ジフェニルジスルフ

    ィド及び Genapol X-080 を陽性対照材料

    用化学物質として選定した。

    図 14 に示したように、0.01 及び 0.1 パ

    ーツの Genapol X-080 を添加したヒート

    プレス PVC シートは溶血性を示さなかっ

    たが、1パーツ含有シートは 4時間インキ

    ュベーション時に弱溶血を示した(溶血

    率:抽出法 37%、直接法 27%)。また、10

    パーツ添加シートは強溶血を示し、抽出

    法及び直接法ともに 1 時間インキュベー

    ションにより完全溶血した(図 14)。

    ジフェニルジスルフィドの溶血能は、

  • 乾燥条件下 200℃で 15 分間加熱しても保

    持されていたが、ジフェニルジスルフィ

    ド含有ヒートプレス PVC シートは 10 パー

    ツ添加時でも、PBS を用いた抽出法及び直

    接法ともに顕著な溶血性を示さなかった。

    2-2.各種公定法による性能評価

    Genapol X-080 含有ヒートプレス PVC シ

    ートは、ASTM 法、NIH 法及び我が国の試

    験法においても用量依存的な溶血性を示

    し、精度管理を目的とした陽性対照材料

    としての基本性能を有することが確認さ

    れた(松岡班分担研究報告書参照)。

    D.考 察

    (1)ケーススタディ 1

    測定の精度を向上させるために、各種

    歯科用修復物を一定の圧力、一定の方向

    で金型に圧接することは重要なことであ

    る。そこで本研究において実施したケー

    ススタディ 1では、図 15 に示したように、

    各金型に修復物を装着させるための治具

    を考案した。 WD から IS 化する過程において、再度、

    三次元測定装置を用いて精度を測定する

    必要性があることを国際会議において討

    議する予定である。これは、三次元測定

    装置が大変高価であると共に、歯科用修

    復物のような小さな精度を評価するため

    に使用されていない状況にも拘わらず、

    別の工業会から歯科分野に参入するメー

    カーが同装置による精度評価を要請する

    可能性があることに由来する。いずれに

    しても、同規格の国際標準化においては

    金型を用いた精度測定方法の優位性を示

    すことになる。

    図 16 に示したⅡ級インレーやクラウン

    の線角(矢印部分)は、バイトを用いた

    CAM マシンにより切削することが不可能

    な部位である。この線角部の処理につい

    ては、1)金型の当該部を初めから丸めて

    おく方法、2)切削データで修正しておく

    方法等を提示する必要性があると思われ

    る。

    (2)ケーススタディ 2

    非イオン性界面活性剤である Genapol

    X-080 は膜毒性を示す化学物質であり、臨

    界ミセル濃度を境として顕著な溶血性を

    示す。Genapol X-080 含有ヒートプレス

    PVC シートは、抽出法及び直接法ともに用

    量依存的な溶血活性を示し、1パーツ添加

    時に弱溶血性、10 パーツ添加時に強溶血

    性を呈することが確認されたことから、

    有益な陽性対照材料として使用できる可

    能性が示唆された。

    本研究では、溶血性試験系として簡易

    測定法を適用した。松岡班が行っている

    「ISO/ TC194/WG9 溶血性試験ラウンドロビ

    ンテスト支援研究」に寄与すると共に、

    Genapol X-080 含有ヒートプレス PVC シー

    血の性能を更に詳細に評価するため、松

    岡班において各種公定法を用いた試験を

    実施した結果、Genapol X-080 含有ヒート

    プレス PVC シートは、いずれの試験法に

    おいても良好な性能を示したことから、

    陽性対照材料として利用できることが明

    らかとなった。今後、陽性対照材料から

    の化学物質の溶出挙動、ヒト及び動物血

    液間における感度の相違、赤血球の形態

    観察等を実施することにより、将来、新

    規規格として提案するための検証データ

    を収集する。

    ジフェニルジスルフィドはヘモグロビ

    ン酸化を伴う溶血毒であり、その溶血能

    は乾燥条件下 200℃で 15 分間加熱しても

  • 保持されていたが、ヒートプレス法によ

    り作製した PVC シートは溶血性を示さな

    かった。本結果から、可塑化 PVC との加

    熱成形時にジフェニルジスルフィドが分

    解若しくは PVC(又は DEHP)と縮合する

    可能性が示唆されたため、加熱処理を伴

    わないキャスト法によりジフェニルジス

    ルフィド含有 PVC シートを再調製した。

    また、ジフェニルジスルフィドは親水性

    に劣るため、PBS の代替溶媒として 10%

    DMSO を使用して溶血性試験を行ったが、

    ジフェニルジスルフィドの添加量と各キ

    ャストシートが示す溶血率との間には明

    瞭な用量依存性が認められなかった。本

    結果から、ジフェニルジスルフィド含有

    PVC シートは溶血性試験用陽性対照材料

    として利用できないことが判明した。ジ

    フェニルジスルフィド含有 PVC シートが

    理論的な溶血性を示さない理由は不明で

    あるが、ジフェニルジスルフィドは反応

    性に富むスルフィド結合を有する化学物

    質であるため、基材である可塑化 PVC と

    相互作用する可能性を否定できない。ジ

    フェニルジスルフィド自体は用量依存的

    に顕著な溶血性を示すため、添加化学物

    質として有用であるが、ジフェニルジス

    ルフィド含有陽性対照材料の作製につい

    ては、今後、可塑化 PVC 以外の基材を利

    用する必要があると思われる。

    E.結 論

    歯科分野に関するケーススタディ 1 で

    は、新規規格「Accuracy of machined in-

    direct restorations – Test methods and marking」の提案に向けた事前説明を

    ISO/TC106/SC9/WG1 会議において行い、平

    成 25 年 1 月に同規格に関する WD を ISO

    事務局に提案・提出した。

    溶血性試験用陽性対照材料の開発と性

    能評価に関するケーススタディ 2 では、

    Genapol X-080 含有ヒートプレス PVC シー

    トが陽性対照材料として利用できること

    が明らかになった。

    F.健康危険情報

    特になし。

    G.研究発表

    1)蓜島由二,福井千恵,柚場俊康,松岡

    厚子.溶血性試験用陽性対照材料の開

    発と性能評価.日本バイオマテリアル

    学会シンポジウム 2012(2012 年 11 月,

    仙台).

    2) Kazama M, Ohkuma K, Ogura H. The new

    method to fabricate ceramic crown

    copings from full-sintered zirconia

    using Nd-YVO4 nsec laser.日中歯科医

    学会 2012(2012 年 4 月,成都).

    3)風間未来,大熊一夫,小倉英夫.Nd-YVO4

    レーザーを用いたジルコニアコーピン

    グの新しい加工法 ―照射条件と加工

    精度―.第 60 回日本歯科理工学会学術

    講演会(2012 年 10 月,福岡).

    参照資料:特になし

  • 金型切断面

    図1. Ⅰ級インレーの金型と寸法

    図2. Ⅱ級インレーの金型と寸法

    金型側方図 (切断)

    近心図

    上方図

    金型 側方図 (切断)

    図3. クラウンの金型と寸法

  • 図4. ブリッジの金型と寸法

    金型

    上方図 (切断)

    上方図

    切断面

    図5. Ⅰ級インレーの精度の測定方法

    切断面

    図6. Ⅱ級インレーの精度の測定方法(大きい場合)

  • 図8. クラウンの精度の測定方法(小さい場合)

    図7. Ⅱ級インレーの精度の測定方法(小さい場合)

    切断面

    図9. クラウンの精度の測定方法(大きい場合)

    Metal die

    切断面

    切断面 金型の構造(切断)

    切断面

  • 図10. ブリッジの精度の測定方法(小さい場合) 図11. ブリッジの精度の測定方法(大きい場合)

    切断面 切断面

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    1 2 3 4

    処理時間(hr)

    溶血

    率(%)

    -control PBS

    -control DMSO

    #1 TPP 50uM

    #2 乳酸 5uM

    #3 オルシノール 50uM

    #4 酢酸鉛 50uM

    #5 塩素酸ナトリウム50uM

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    1 2 3 4

    処理時間(hr)

    溶血

    率(%)

    -control DMSO

    #1 TPP 500uM

    #6 ジフェニルジスルフィド500uM

    #7 ジメチルグリオキシム500uM

    #8 フェナゾピリジン塩酸塩500uM

    #8 フェナゾピリジン塩酸塩50uM

    #9 5-アミノサリチル酸500uM

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    1 2 3 4

    処理時間(hr)

    溶血

    率(%)

    -control DMSO

    #15 サリチルアゾスルファサラジン 500uM

    #16 ニトロベンゼン 500uM

    #17 レソルシノール 500uM

    #19 ピクリン酸 500uM

    #20 ジネブ標準品 500uM

    #21 d-ペニシラミン塩酸塩500uM

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    1 2 3 4

    処理時間(hr)

    溶血

    率(%)

    -control DMSO

    #18 Genapol X-080 50ug/ml

    #22 1-ナフチルアミン500uM

    #23 p-アミノサリチル酸ナトリウム塩 500uM

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    1 2 3 4

    処理時間(hr)

    溶血

    率(%)

    -control DMSO

    #10 4-ニトロアニリン500uM

    #11 o- アミノフェノール500uM

    #12 アニリン 500uM

    #13 p-アミノジフェニルアミン 500uM

    #14 2-ニトロフェニルヒドラジン塩酸塩 500uM

    図12. 試験対象化学物質23種類の溶血性試験結果

    切断面

  • 0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    1 2 3 4

    処理時間(hr)

    溶血

    率(%)

    control

    100uM

    90uM

    80uM

    70uM

    60uM

    50uM

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    1 2 3 4

    処理時間(hr)

    溶血

    率(%)

    control

    50ug/ml

    40ug/ml

    30ug/ml

    25ug/ml

    20ug/ml

    10ug/ml

    1ug/ml

    0.1ug/ml

    図13. ジフェニルジスルフィド

    (a) 及びGenapol

    X-080 (b) の溶血性試験結果

    (a)

    (b)

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    Control 0.01P 0.1P 1P 10P

    溶血

    率(%)

    1H

    2H

    4H

    直接法

    弱溶血 強溶血

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    Control 0.01P 0.1P 1P 10P

    溶血

    率(%)

    1H

    2H

    4H

    オートクレーブ抽出液

    弱溶血 強溶血

    図14. Genapol

    X-080含有ヒートプレスPVCシートの溶血性試験結果

    Ⅱ級インレー用Ⅰ級インレー用

    クラウン用 ブリッジ用 クラウンⅡ級インレー

    図15. 歯科用修復物の圧接方法 図16. 線角部の対処方法

  • 番号

    1 リン酸トリフェニル リン酸トリフェニル

    2 乳酸 乳酸

    3 オルシノール オルシノール

    4 Lead 酢酸鉛

    5 Chlorate 塩素酸ナトリウム

    6 ジフェニルジスルフィド類 ジフェニルジスルフィド

    7 オキシム類 ジメチルグリオキシム

    8 Phenazopyridine フェナゾピリジン塩酸塩 

    9 5-アミノサリチル酸 5-アミノサリチル酸

    10 ニトロアニリン類 4-ニトロアニリン

    11 o-,p-アミノフェノール類 o-アミノフェノール

    12 アニリン類 アニリン

    13 N-フェニルーp-フェニレンジアミン類 p-アミノジフェニルアミン

    14 ニトロ化合物 2-ニトロフェニルヒドラジン塩酸塩

    15 Salicylazosulphapyridine サリチルアゾスルファサラジン

    16 ニトロベンゼン類 ニトロベンゼン

    17 Resourcin レソルシノール

    18 エチレングリコールアルキルエーテル類 Genapol X-080

    19 2,4,6-トリニトロフェノール類 2,4,6-トリニトロフェニル

    20 Zinc ethylene bisdithiocarbonate ジネブ標準品

    21 d-Penicillamine d-ペニシラミン塩酸塩

    22 二環芳香族アミン類 1-ナフチルアミン

    23 p-Aminosalicylic acid p-アミノサリチル酸ナトリウム塩 

    化合物名試薬群

    表1. 試験対象化学物質一覧

  • Reference number of working document: ISO/TC 106/SC 9 N n Date: yyyy-mm-dd

    Reference number of document: ISO/WD nnn-n

    Committee identification: ISO/TC 106/SC 9/WG X

    Secretariat: JISC

    Dentistry — CAD/CAM systems – Accuracy of machined indirect restorations – Test methods and marking

    Warning

    This document is not an ISO International Standard. It is distributed for review and comment. It is subject to change without notice and may not be referred to as an International Standard.

    Recipients of this draft are invited to submit, with their comments, notification of any relevant patent rights of which they are aware and to provide supporting documentation.

    別添資料

  • WORKING DRAFT ISO/WD nnn-n

    Copyright notice

    This ISO document is a working draft or committee draft and is copyright-protected by ISO. While the reproduction of working drafts or committee drafts in any form for use by participants in the ISO standards development process is permitted without prior permission from ISO, neither this document nor any extract from it may be reproduced, stored or transmitted in any form for any other purpose without prior written permission from ISO.

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    Violators may be prosecuted.

  • Contents Page

    Foreword.......................................................................................................................................................3 Introduction ..................................................................................................................................................4 1 Scope................................................................................................................................................5 2 Normative references.......................................................................................................................5 3 Terms and definitions ......................................................................................................................5 4 Requirementserms...........................................................................................................................5 5 Test methods....................................................................................................................................1 5.1 Target restorations...........................................................................................................................1 5.2 Apparatus .........................................................................................................................................1 5.3 Preparation of 3-D data....................................................................................................................1 5.4 Machining of restorations................................................................................................................3 5.5 Evaluation of accuracy ....................................................................................................................3 5.5.1 General .............................................................................................................................................3 5.5.2 Class I inlay ....................................................................................................................................3 5.5.2 Class II inlay ...................................................................................................................................4 5.5.4 Full crown.........................................................................................................................................5 5.5.5 Bridge ...............................................................................................................................................6

  • Foreword

    ISO (the International Organization for Standardization) is a worldwide federation of national standards bodies (ISO member bodies). The work of preparing International Standards is normally carried out through ISO technical committees. Each member body interested in a subject for which a technical committee has been established has the right to be represented on that committee. International organizations, governmental and non-governmental, in liaison with ISO, also take part in the work. ISO collaborates closely with the International Electrotechnical Commission (IEC) on all matters of electrotechnical standardization.

    International Standards are drafted in accordance with the rules given in the ISO/IEC Directives, Part 2.

    The main task of technical committees is to prepare International Standards. Draft International Standards adopted by the technical committees are circulated to the member bodies for voting. Publication as an International Standard requires approval by at least 75 % of the member bodies casting a vote.

    Attention is drawn to the possibility that some of the elements of this document may be the subject of patent rights. ISO shall not be held responsible for identifying any or all such patent rights.

    ISO-n was prepared by Technical Committee ISO/TC 106, Dentistry, Subcommittee SC 9, Dental CAD/CAD systems.

  • Introduction

    Dental CAD/CAM systems have been successfully used for the fabrication of indirect dental restorations such as inlays, crowns and bridges. The accuracy of these restorations is one of the most important keys for their clinical success. The proposed document provides standardized test methods to evaluate the accuracy of machined indirect using dental CAD/CAM systems as well as the evaluated accuracy for these restorations as marking information.

  • Dentistry — CAD/CAM systems – Accuracy of machined indirect restorations – Test methods and marking

    1 Scope

    This standard specifies test methods to evaluate machined indirect dental restorations such as inlays, full crowns and bridges using dental CAD/CAM systems and marking of the evaluated accuracy based on the results from the test methods.

    2 Normative references

    The following referenced documents are indispensable for the application of this document. For dated references, only the edition cited applies. For undated references, the latest edition of the referenced document (including any amendments) applies.

    ISO 1942, Dentistry — Vocabulary

    ISO12836, Dentistry -- Digitizing devices for CAD/CAM systems for indirect dental restorations -- Test methods for assessing accuracy

    3 Terms and definitions

    For the purposes of this document, the terms and definitions given in ISO 1942 and the following apply.

    4 Requirements

    The accuracy of target restoration(s) shall be evaluated using the test methods, clause 5 in this standard and shall be described both in marking and instruction for use.

    5 Test methods

    5.1 Target restorations

    Four types of restorations, 1) Class I inlay, 2) Class II inlay, 3) full crown, and 4) four-unit bridge are the target of this standard. Choose the type(s) following the applicable restoration(s) cited by the manufacturer. If any of the four restorations is not cited applicable by the manufacturer, this restoration is eliminated from the target. In other words, the fabrication of the restoration(s) and the accuracy evaluation are carried out only for the applicable restoration(s) cited by the manufacturer.

    5.2 Apparatus Four types of metal dies given in Fig. 1-4 (Class I inlay, Class II inlay, full crown and four-unit bridge dies) are used both for the preparation of three-dimensional (3-D) data and the evaluation of the accuracy of machined restorations. As shown in Fig. 1-4, these dies have a removable structure for the evaluation of accuracy. These dies shall be prepared for the applicable restoration(s) cited by the manufacturer. 5.3 Preparation of 3-D data To fabricate the target restorations, 3-D data for each of the restorations shall be prepared. The 3-D data are not necessarily identical to the dimensions of the dies and the data can be modified to produce accurate restorations (the data conversion is involved). The modified data may be supplied by the manufacturer.

  • Fig. 1-a Class I inlay die, Fig. 1-b Class I inlay die, Fig. 1-c Class I inlay die, Cross section Upper view Removable structure

    Fig. 2-a Class II inlay die, Fig. 2-b Class II inlay die, Fig. 2-c Class II inlay die,

    Upper view Cross section Proximal view

    : Fig. 2-d Class II inlay die, Removable structure

  • Fig. 3-a Full crown die, Fig. 3-b Full crown die, Fig. 3-c Full crown die, Cross section Upper view Removable structure

    Note: For a full crown die either left part or right part of the bridge die (Fig. 4) can be used. Fig. 3 shows the left part of the bridge die

    Fig. 4-a Bridge die (cross section) Fig. 4-b Bridge die (upper view) Note: The removal structure of the bridge die is the same as that of the full crown die (Fig. 3-c). The

    shapes and dimensions of the full crown and bridge dies are identical to those specified by ISO 12836.

    5.4 Machining of restorations The prepared 3-D data are input into the machining device and a target restoration is machined following the manufacturer’s instruction. The material specimen (blank) shall be used following the manufacturer's instruction. Fabricate six restorations for each of the target restorations. 5. 5 Evaluation of accuracy 5. 5. 1 General The accuracy of the machined restorations is expressed by the discrepancy between the margin of a restoration and baseline (cavity margin for inlays and abutment shoulder for crown and bridge). The measurement is carried out using a dial gauge or 3-D measuring microscope at the accuracy of 1/200 mm or higher. The measured value shall be expressed in mm to two decimal places. 5. 5. 2 Class I inlay Place the machined inlay in the cavity of a metal die and apply a load of 50 N for 30 sec on the center of the inlay. Remove the load and examine where the margin of the inlay is located. When the inlay margin is located higher than the baseline (cavity margin), measure the discrepancy between the inlay margin and the baseline (Fig. 5-a). The measured value is expressed with plus sign. When the inlay margin is located at the same level of the baseline or beneath the baseline, remove the cavity base of the die and place the inlay in the die cavity. Apply a load of 50 N and remove it after 30 sec. Measure the discrepancy between the inlay margin and the baseline same as above (Fig. 5-b). The measured value is expressed with minus sign. If the inlay margin is still located at the same level of the baseline, the discrepancy is 0, 00 mm. For both cases (measurements with and without removable part), the measurement shall be carried out at four points (Fig. 5-b) for each of the six fabricated inlays and the four measured data of one inlay are averaged to represent the

  • discrepancy of that inlay. Calculate the average of the six representative discrepancy values and the standard deviation to express the accuracy of the machined inlay. Describe the average discrepancy and standard deviation (SD) in the marking and the instruction for use as follows; Accuracy of class I inlay: +A±SD mm, or -A±SD mm

    Fig. 5-a Discrepancy measurement Fig. 5-b Discrepancy measurement Fig. 5-c Measurement points with removable part without removable part indicated by thick arrows 5.5.3 Class II inlay Place the machined inlay in the cavity of a metal die and apply a load of 50 N for 30 sec at the middle of the occlusal surface of the inlay. Remove the load and examine where the margin of the inlay is located. When the occlusal margin of the inlay is located higher than the occlusal baseline (occlusal margin of the die cavity), measure the discrepancy between the inlay margin and the baseline (Fig. 6-a). Similarly, when the proximal margin of the inlay extrudes from the proximal baseline (proximal margin of the die cavity), measure the discrepancy between the inlay margin and baseline (Fig. 6-b) The measured values for both occlusal and proximal discrepancies are expressed with plus sign. When the occlusal and proximal margins of the inlay are located at the same level of the baseline or beneath the baseline, remove the cavity base and place the inlay in the die cavity. Apply a load of 50 N and remove it after 30 sec. Measure the discrepancies between the occlusal inlay margin and the occlusal baseline and between the occlusal inlay margin and the proximal the baseline (Fig. 6-c). The measured values are expressed with minus sign. If the inlay margin is still located at the same level of the baseline, the discrepancy is 0, 00 mm. For both cases (measurements with and without removable part), the measurement shall be carried out at three points for the occlusal discrepancy (Fig. 6-d) and at four points for the the proximal discrepancy (Fig. 6-e). The measured discrepancy data of one inlay are averaged to represent the discrepancy of that inlay. Calculate the average of the six representative discrepancy values and the standard deviation to express the accuracy of the machined inlay. Describe the average discrepancies and standard deviation (SD) in the marking and the instruction for use as follows; Accuracy of class II inlay: 1. Occlusal accuracy +A±SD mm, or -A±SD mm 2. Proximal accuracy +B±SD mm, or -B±SD mm

    Fig. 6-a Occlusal discrepancy Fig. 6-b Proximal discrepancy Fig. 6-c Occlusal & proximal discrepancy measurement measurement measurements With removable part With removable part Without removable part

  • Fig. 6-d Measurement points Fig. 6-e Measurement points for occlusal discrepancy for proximal discrepancy 5. 5. 4 Full crown Place the machined crown on the abutment of a metal die and apply a load of 50 N for 30 sec on the center of the occlusal surface of a crown. Remove the load and examine where the margin of the crown is located. When the crown margin is located higher than the baseline (abutment shoulder), measure the discrepancy between the crown margin and the baseline which is an abutment shoulder (Fig. 7-a). The measured value is expressed with plus sign. When the crown margin attaches the baseline, remove the head part and shoulder ring. Place the crown on the abutment without two removal parts. Apply a load of 50 N and remove it after 30 sec. Measure the discrepancy between the crown margin and the second baseline which is 10 mm lower from the original baseline (Fig. 7-b). Subtract 10 mm from the measured value and obtain the discrepancy between the crown margin and the original baseline. The obtained discrepancy value is expressed with minus sign. For both cases (measurements with and without removable parts), the measurement shall be carried out at four points (Fig. 7-c) for each of the six fabricated crowns and the four measured data of one crown are averaged to represent the discrepancy of that crown. Calculate the average of the six representative discrepancy values and the standard deviation to express the accuracy of the machined crown. Describe the average discrepancy and standard deviation (SD) in the marking and the instruction for use as follows; Accuracy of full crown: +A±SD mm, or -A±SD mm

    Fig. 7-a Discrepancy measurement Fig. 7-b Discrepancy measurement Fig. 7-c Measurement points of crown of crown (intersection points of crown With removable parts Without removable parts margin and two orthogonal

    lines at optional diametral

    5. 5. 5 Four-unit bridge Remove the two abutment parts from the bridge die and measure the discrepancies of two single crowns individually using the same procedure described in 5. 5. 4. Fix the removed abutments to the bridge die and place the machined bridge on the bridge die. Apply a load of 50 N on each of the two crowns at the center of the occlusal surface for 30 sec. Remove the load and examine if the crown margin attaches the baseline (abutment shoulder).

  • When the crown margin is located higher than the baseline, measure the discrepancy between the crown margin and the baseline (Fig. 8-a). The measured value is expressed with plus sign. When the crown margin attaches the baseline, remove the head parts and shoulder rings of two abutments. Place the crown on the abutment without two removal parts. Apply a load of 50 N on each of two crowns and remove it after 30 sec. Measure the discrepancy between the crown margin and the second baseline which is 10 mm lower from the original baseline (Fig. 8-b, described as D). Subtract 10 mm from the measured value (D) and obtain the discrepancy between the crown margin and the original baseline. The obtained discrepancy value is expressed with minus sign. For both cases (measurements with and without removable parts), the measurement shall be carried out at four points for each of two crowns (Fig. 7-c) of one bridge, and obtain the average of the eight measured values in total to represent the discrepancy of that bridge. After this measurement is carried out for six bridges, calculate the average of the six representative discrepancy values and the standard deviation to express the accuracy of the machined crown. Describe the average discrepancy and standard deviation (SD) in the marking and the instruction for use as follows; Accuracy of crown 1: +A±SD mm, or -A±SD mm Accuracy of crown 2: +B±SD mm, or -B±SD mm Accuracy of whole bridge: +C±SD mm, or -C±SD mm

    Fig. 8-a Discrepancy measurement Fig. 8-b Discrepancy measurement of whole bridge of whole bridge With removable parts Without removable parts

  • 分担研究報告書

    平成24年度厚生科学研究費補助金(地球規模保健課題推進)研究事業

    国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)における医療機器の各種国際規格の

    策定に関する研究(H23-地球規模-指定-003)

    分担研究課題名

    ISO/TC 194/WG 9ラウンドロビンテスト支援研究

    研究分担者 松岡 厚子 国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部長

    研究協力者 新藤 智子 財団法人 食品薬品安全センター秦野研究所

    坂口 圭介 テルモ株式会社 研究開発本部

    谷川 隆洋 テルモ株式会社 研究開発本部

    犬飼 香織 テルモ株式会社 研究開発本部

    竹ノ内美香 テルモ株式会社 研究開発本部

    研究要旨

    A. 研究目的 血液に接触する医療機器には安全性上

    の不具合を生じないよう、ISO 10993-4

    で規定される血液適合性評価が求められ

    ているが、具体的で標準化された試験法

    が明記されていない点が大きな課題とな

    っている。ISO/TC 194:医療機器の生物

    学的評価 技術委員会では、WG 9が主体と

    なって発行文書 ISO 10993-4(2002年に

    発行された本体及び2006年に発行された

    Amendmentで構成)の改正作業が始まって

    いる。血液適合性評価の中に赤血球に及

    ぼす影響を評価する試験法として確立さ

    れた「溶血性試験」がある。国際的には、

    米国で規格化されたASTM法、NIH法、及

    び日本のMHLW法(薬食機発0301第20号

    ISO/TC 194/WG 9(医療機器の生物学的評価 - 血液適合性WG)は、担当文書ISO 10993-4:2002

    及びAmd 1:2006の改正に向け、溶血性試験に関する多施設国際共同検証試験(ラウンドロビ

    ンテスト)の実施を計画した。今年度、本研究班から参加の2機関が、WG 9 Convenor Dr. Michael

    Wolfのとりまとめる溶血性試験プロトコルの最終化作業に参画し、サンプル選定と文書校正

    を完了させた(文書発行2012年11月19日)。プロトコルは、医療機器の溶血性試験で国際的

    に広く用いられているASTM法、NIH法、MHLW法(薬食機発0301第20号 1))の3法で構成さ

    れている。またラウンドロビンテストの実施は、第一段階の Pilot Runと第二段階の Actual

    に分けて行うこととなった。上記2機関により今年度末までにPilot Runの第一回目の試験が

    実施される運びとなっている。

    また本研究班で試験精度管理の目的で開発中の陽性対照材料(Genapol X-080含有PVCシー

    ト)を、前述のラウンドロビンテストのプロトコルにて性能評価を実施し、ラウンドロビンテ

    スト用サンプルの 1つとして提供することを目的として、その基本性能を詳細に評価した。

    Genapol X-080含有量依存的に溶血性が認められ、精度管理目的の陽性対照材料の候補として、

    その基本性能が確認された。

  • 1))が国際的に広く用いられている(表1)。

    WG 9ではISO 10993-4への記載のため、

    この 3法を比較検討するためのラウンド

    ロビンテストの実施が決まった(図 1)。

    ラウンドロビンテスト参加者は日中米欧

    の12試験機関で構成されている(表2)。

    ラウンドロビンテストのプロトコルの

    最終化と試験検体の決定は、参加する試

    験機関の意見の一致に時間を要し難航し

    ていたが、電話会議を重ね、2012年 11

    月19日完了した。またラウンドロビンテ

    ストの実施は、第一段階の Pilot Runと

    第二段階のActualに分けて行うこととな

    った(図1)。Pilot Runの試験概要を図2

    に示す。陰性対照材料(非溶血)として

    ポリエチレンを用いるほか、さまざまな

    溶血程度を有するゴム材料を 5種類試験

    して、第二段階(Actual)のラウンドロ

    ビンテストで用いる検体を選択する目的

    も含まれている。

    B. 研究方法

    1. 試験材料

    ラウンドロビンテストの試験検体は図

    2に示す6種類(Polyethylene, Nitrile

    glove, Latex glove #12, EPDM Rubber #3,

    EPM Rubber #4, Buna rubber(Aero Rubber

    Co.製))が提供されることになっている。

    さらに、本研究では試験精度管理の目的

    で開発中の陽性対照材料(Genapol X-080

    含有 PVCシート)を用い、溶血性能を評

    価した。各試験法のインキュベーション

    時間は、プロトコルに従い、ASTM法(直

    接接触及び抽出液法):3時間、NIH法(直

    接接触法):1時間、MHLW法(抽出液法):

    4時間で実施した。

    2. 実験方法

    試験方法は2012年11月19日付ラウン

    ドロビンテストのテストプロトコルに従

    った。

    ただし、Genapol X-080含有PVCシートに

    ついてはウサギ血液での実施とし、間接

    接触法における抽出条件は表面積あたり

    6 cm2/mLの抽出溶媒量、121 ± 2℃、1 ±

    0.1時間とした。

    3. 倫理面への配慮

    動物血液の採取については、所属機関

    (財団法人ヒューマンサイエンス振興財

    団の動物実験実施施設認証認定番号

    12-005(秦野研)及び12-030(テルモ))

    の規定する動物実験指針に従い、動物に

    対する苦痛が最小となるよう務めた。又、

    動物実験倫理委員会の承認を得た(承認

    番号:1120331A(秦野研)及び120163(テ

    ルモ))。

    C. 研究結果

    陽性対照材料の溶血性試験結果を図 3

    及び表3-6に示す。Genapol X-080 10 phr

    シートはすべての試験法で溶血率がほぼ

    100%の高い溶血性を示した。またGenapol

    X-080 0.1 phr及び0.01 phrシートはす

    べての試験法で陰性であった。一方、

    Genapol X-080 1 phrシートはASTM直接

    接触法で20%程度の溶血率を示したが、そ

    の他の試験では陰性であった。

    し、精度管理目的の陽性対照材料の候補

    としての基本性能が確認され、ラウンド

    ロビンテスト用サンプルになりうると考

    えられた。また本材料における溶血性の

    検出は、ASTM直接接触法が最も感度良く

    確認できた。

    D. 考察

  • 赤血球の溶血現象には、(1)浸透圧変化、

    (2)レオロジー作用、(3)生化学的要因の3

    つの作用が関与しており、医療機器の臨

    床使用においては、単独あるいはこれら

    が複合的に作用して不具合としての溶血

    が生じると考えられる。ラウンドロビン

    テストで取り上げられた溶血性試験は、

    医用材料の有する潜在的な毒性として主

    に(3)の作用による赤血球膜が破壊され

    る現象の有無とその程度を確認する試験

    法である。(3)の作用の中には、界面活性

    作用による膜破壊や高/低 pH等による膜

    たんぱく質の変性作用などが例として挙

    げられる。

    本研究班の開発した陽性対照材料は、

    非イオン界面活性剤である Genapol

    X-080が抽出液やインキュベーション中

    の試験液に溶出することで、赤血球膜の

    リン脂質 2分子膜を破壊する作用を有す

    ることが溶血性の機序と考えられる。研

    究結果から、本陽性対照材料における溶

    血性の閾値は、ASTM直接法で0.1 phrと

    1 phrの間の用量、その他の試験では1 phr

    と10 phrの間の用量に、それぞれあると

    考えられる。材料中の Genapol X-080量

    の精密なチューニングはこれからの作業

    となるが、本実験結果から、本材料のコ

    ンセプトは証明され、溶血試験法陽性対

    照材料としての有用性が確認できたと判

    断できる。

    E. 結論

    ISO/TC 194/WG 9(血液適合性)で企画

    された RRTへの、国内 2機関の参加への

    支援を継続した。平成25年3月中旬に試

    験材料を配布するとの情報が、オーガナ

    イザーよりよせられたが、当該研究班の

    報告には間に合わないため、本研究班で

    試験精度管理の目的で開発中の陽性対照

    材料を用いて、ウサギ血でその基本性能

    を評価した。その結果 Genapol X-080含

    有量依存的に溶血性が認められ、陽性対

    照材料候補としての基本性能が確認でき

    た。

    得られたデータは、平成25年4月開催

    予定の ISO/TC 194/WG 9パヴィア会議で

    報告する。

    F. 研究発表

    なし。

    G. 参考

    1) 平成24年 3月 1日付け厚生労働省

    医薬食品局審査管理課 医療機器審査管

    理室長通知 薬食機発0301第20号「医

    療機器の製造販売承認申請等に必要な生

    物学的安全性評価の基本的考え方につい

    て」

  • ASTM NIH MHLW

    試験に用いる血液の種類クエン酸血

    (ヒト or ウサギ)

    シュウ酸血

    (ウサギ)

    脱繊維血

    (ウサギ)

    血液濃度の調整 10 mg Hb/mL

    採取した血液と生理食塩液を混合し、吸光度A545が0.9~1.00になるよう調節

    希釈なし

    血液

    接触

    比率

    抽出液法抽出液7 mL(媒体:PBS)と1 mLの濃度調整血液を混合

    抽出液10 mL(媒体:生理食塩液)と0.2 mLの濃度調整血液を混合*Pilot Runでは実施計画

    なし

    抽出液10 mL(媒体:生理食塩液)と0.2 mLの血液を混合

    直接接触法

    7 mLのPBSと1 mLの濃度調整血液を混合し、60 cm2分の被験物質を添加

    10 mLの生理食塩液と0.2 mLの濃度調整血液を混合し、5 gの被験物質を添加

    インキュベーション時間・振盪条件3時間

    振盪(60 rpm)

    1時間±5分

    振盪なし

    1、2、及び4時間

    *ラウンドロビンテストでは4時間に固定

    振盪なし

    表1. 溶血性試験3法の実験条件比較

    RoleName(affiliation)

    Facility

    Principal Investigator Michael F. WolfMedtronic Inc. - USA

    Medtronic Inc.Minneapolis, MN 55432, USA

    Study Biostatistician Dr. Sebastian Hoffmannseh consulting + services - Germany

    seh consultin