学会抄録generalisata, pathergic granulomatosis などの鑑別...

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昭和郎年5月20日 学会抄録 東京地方会第378回例会 座長:横山 砧教授 (昭和34年7月IIP,於慶大) 糖尿病の一皮膚症状,特に著明な末梢神経炎を呈した 症例について 石原勝(東京逓信) 安田利顕(関東逓信):糖尿病性壊疸の場合には知覚 異常は認められないものか.認められるとしたら,本例 レは糖尿病性壊疸とはいえないか.糖尿病性壊疸は必ずし も進行性でたく,本例の如く境界明確な潰瘍であること .が多い. 鈴木 滋(都立大久保)=機械的圧迫や火傷等がな べ,神経炎や神経麻疹だけで潰瘍が発生するか,又所謂 神経性潰瘍で其の名の通りのものが存在するか御意見を 伺いたい. 皮膚筋炎の異常例 肥田野信,西山茂夫,植村 隆, 石川英一,中内洋一(東大) 15才女子.4才頃から躯幹,ついで四肢に落屑を来し 魚鱗癖と診断されていたが,11才の時前蒋に結節を生じ 皮膚細網症を疑われた.!2才頃から下腿が紅く腫脹して 運動障碍を来し,14才の夏入院.躯幹に批糠様,前鱒と 下腿に大葉性落屑,筋は腫脹ついで硬化拘縮.組織:不 全角化,真皮乃至皮下にリンパ球,組織球浸潤,巨細胞. 筋は線維部消失,間質に同様の細胞浸潤著明.筋電図で low amplitudeの傾向.その他検査で白血球増多,ガソ `″’グロブリン増加,血中と尿中クレアチソ増加.クレア チニソ低下,抗ストレプトリジン高値.一応皮膚筋炎の 異常例としておきたい. 骨,軟骨及び耳下腺の萎縮を主徴とする特異な1症例 冰野信行(関東逓信) 約5年前から徐々に耳介,鼻の変形(軟骨の萎縮,痩 痕組織による置換),化骨障害(上顎抜歯後,肋軟骨),耳 下腺の萎縮(腺実質細胞の萎縮, Lipomatose,線条部上 皮の萎縮)をみとめ,その他,皮膚,血管,肺の弾力性 低下の傾向をみた.尚,血清7-グロブリソの中等度増 加, A/G比の低下, N.P.N.の多少の増加を認めた.梅 毒血清反応陰性.マファルゾール,サリバパロチソ,チ ョコラデーカル,コソドロイチソ硫酸により臨床検査成 績の改善,上顎骨の再生をみた.減唾液腺症, Osteo- 557 genesis imperfecta, Osteoirialacia, Osteitis fibrosa generalisata, pathergic granulomatosis などの鑑別 にっいてのべた,本症は一種の物質代謝障害性疾患と考 えたい.高瀬吉雄(東医大):高岡・伊藤らの上皮小体摘 出実験の成績が,演者のデータ,とくに化骨抑制, Ca, クレアチこソ変動,血清蛋白値とよく一致すると.思う. 但しこの場合は唾液腺は肥大するとあったように記憶し ている.本例は唾液腺のみならず,上皮小休との関連で 考案すぺきでないか,上皮小体の検査成績は如何.安田 利顕:骨,軟骨病変と共に耳下腺の萎縮かおり,S-パロ チンで軽快してきたことは,これらの症状の中に耳下腺 の病変の関与していることを考えさせる.その際,この 唾液腺変性に際してみられる症状が認められたことは演 者の述べた通りである. Elasteidose cutanee nodulaiie i kystes et k CO- m^dons (Pavre et Racouchot)の1例 山本忠治 郎,森岡貞雄(日大) 抗ヒスタミン剤の中毒症例 高瀬吉雄,廻神輝家(東 医大) 高瀬吉雄:近来抗ヒスタ1ソ剤の長期投与例が増加し っtゝあるが,我々の例は2例とも数力月抗ヒスタミソ剤 の連用後に注射部位の潰瘍化を示したものであり,0’ Leary のい5遅発性副作用に属するか,未だ潰瘍例の 報告はない.各位り御経験例を御教示願いたい. 細網症の1剖検例 小沢利治(信大),横内恭次(信太 病理) 13才女.1年来左大腿ぽ始まる.全身皮膚に超鳩卵大 までの大小種々な腫瘤,硬結.色素斑が散在,軽度の落 屑あり.更に全身リンパ腺及び肝腫脹を生じ全身状態が 悪化,死亡した.諸検査成績:骨髄,末梢血共細網細胞 の増加とリンパ球0減少.死亡直前まで白血球増多な し.更に血小板,7-グロブリン及びフィブリノーゲンの 減少あり.治療では副腎皮質ホルモンとX線が有効であ った,剖検所見:皮膚,リンパ節,肝,牌,副腎,腎, 卵巣等殆ど全身に単一な細網細胞の増殖を認め,所々に

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昭和郎年5月20日

学会抄録

東京地方会第378回例会

 座長:横山 砧教授

(昭和34年7月IIP,於慶大)

 糖尿病の一皮膚症状,特に著明な末梢神経炎を呈した

症例について 石原勝(東京逓信)

 安田利顕(関東逓信):糖尿病性壊疸の場合には知覚

異常は認められないものか.認められるとしたら,本例

レは糖尿病性壊疸とはいえないか.糖尿病性壊疸は必ずし

も進行性でたく,本例の如く境界明確な潰瘍であること

.が多い.

 鈴木 滋(都立大久保)=機械的圧迫や火傷等がな

べ,神経炎や神経麻疹だけで潰瘍が発生するか,又所謂

神経性潰瘍で其の名の通りのものが存在するか御意見を

伺いたい.

 皮膚筋炎の異常例 肥田野信,西山茂夫,植村 隆,

石川英一,中内洋一(東大)

 15才女子.4才頃から躯幹,ついで四肢に落屑を来し

魚鱗癖と診断されていたが,11才の時前蒋に結節を生じ

皮膚細網症を疑われた.!2才頃から下腿が紅く腫脹して

運動障碍を来し,14才の夏入院.躯幹に批糠様,前鱒と

下腿に大葉性落屑,筋は腫脹ついで硬化拘縮.組織:不

全角化,真皮乃至皮下にリンパ球,組織球浸潤,巨細胞.

筋は線維部消失,間質に同様の細胞浸潤著明.筋電図で

low amplitudeの傾向.その他検査で白血球増多,ガソ

`″’グロブリン増加,血中と尿中クレアチソ増加.クレア

チニソ低下,抗ストレプトリジン高値.一応皮膚筋炎の

異常例としておきたい.

 骨,軟骨及び耳下腺の萎縮を主徴とする特異な1症例

冰野信行(関東逓信)

 約5年前から徐々に耳介,鼻の変形(軟骨の萎縮,痩

痕組織による置換),化骨障害(上顎抜歯後,肋軟骨),耳

下腺の萎縮(腺実質細胞の萎縮, Lipomatose,線条部上

皮の萎縮)をみとめ,その他,皮膚,血管,肺の弾力性

低下の傾向をみた.尚,血清7-グロブリソの中等度増

加, A/G比の低下, N.P.N.の多少の増加を認めた.梅

毒血清反応陰性.マファルゾール,サリバパロチソ,チ

ョコラデーカル,コソドロイチソ硫酸により臨床検査成

績の改善,上顎骨の再生をみた.減唾液腺症, Osteo-

557

genesis imperfecta, Osteoirialacia, Osteitis fibrosa

generalisata, pathergic granulomatosis などの鑑別

にっいてのべた,本症は一種の物質代謝障害性疾患と考

えたい.高瀬吉雄(東医大):高岡・伊藤らの上皮小体摘

出実験の成績が,演者のデータ,とくに化骨抑制, Ca,

クレアチこソ変動,血清蛋白値とよく一致すると.思う.

但しこの場合は唾液腺は肥大するとあったように記憶し

ている.本例は唾液腺のみならず,上皮小休との関連で

考案すぺきでないか,上皮小体の検査成績は如何.安田

利顕:骨,軟骨病変と共に耳下腺の萎縮かおり,S-パロ

チンで軽快してきたことは,これらの症状の中に耳下腺

の病変の関与していることを考えさせる.その際,この

唾液腺変性に際してみられる症状が認められたことは演

者の述べた通りである.

 Elasteidose cutanee nodulaiie i kystes et k CO-

m^dons (Pavre et Racouchot)の1例 山本忠治

郎,森岡貞雄(日大)

 抗ヒスタミン剤の中毒症例 高瀬吉雄,廻神輝家(東

医大)

 高瀬吉雄:近来抗ヒスタ1ソ剤の長期投与例が増加し

っtゝあるが,我々の例は2例とも数力月抗ヒスタミソ剤

の連用後に注射部位の潰瘍化を示したものであり,0’

Leary のい5遅発性副作用に属するか,未だ潰瘍例の

報告はない.各位り御経験例を御教示願いたい.

 細網症の1剖検例 小沢利治(信大),横内恭次(信太

病理)

 13才女.1年来左大腿ぽ始まる.全身皮膚に超鳩卵大

までの大小種々な腫瘤,硬結.色素斑が散在,軽度の落

屑あり.更に全身リンパ腺及び肝腫脹を生じ全身状態が

悪化,死亡した.諸検査成績:骨髄,末梢血共細網細胞

の増加とリンパ球0減少.死亡直前まで白血球増多な

し.更に血小板,7-グロブリン及びフィブリノーゲンの

減少あり.治療では副腎皮質ホルモンとX線が有効であ

った,剖検所見:皮膚,リンパ節,肝,牌,副腎,腎,

卵巣等殆ど全身に単一な細網細胞の増殖を認め,所々に

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嗜銀線維の形成が見られ,皮膚,粘膜に出血素因を認め

た.亜白血病性細網症と診断したい.

 北村包彦(東医大):狭義の皮膚細網症にして,乳頭

下層血管周囲の細網細胞増殖から出発するもの,臨床的

にも紅斑浸潤性皮疹を最初の現われとするものi力いる

ものの,存在は確かで,それを認めてよいと思う.力い

るものから更に腫瘍を生ずるが,但しその腫瘍も単一性

の細網細胞増殖から起る点で菌状息肉症とは異る.

 小堀辰治(東京逓信);細網症と細網肉腫との鑑別点

は如何.

 Multiple skin necrosesの1例 横山 似(慶大),

三浦俊夫,中西淳朗(東京電力)

 Ingramの報告例と全く一致し,散在性の壊死性丘疹

状の小結節を有する34才家婦の1例を経験した.我々

は壊疸性丘疹状結核疹又はPityriasis lichenoides et

vario】iformis acuta (Mucha-Habermann)を疑った

か,組織学的にフイブリノイド変性を有する allergic

arteriolitisを認め,本症と診断した.我々はこの病名を

allergic arteriolitis のー特異的臨床像と考えている.

 慢性エリテマトーデスのResochin療法,特にその遠

隔成績について 亀井義明(慶大)

 1ヵ月以上治療し,正確に経過を観察し得た31例(男

10例,女21例)中,全治7例,著効9例,有効12例,梢

梢有効3例,無効及び増悪無しの成績を得た,全治7例

中4例は平均2年・5ヵ月再発なく経過し,3例は再発

した.その中1例は再度のResochin治療によく反応

し,皮疹は再び消失した.発疹型別にみると,乾燥型は

22例中著効以上11例,溶出型は8例中著効以上4例で,

差異はなかった.副作用は7例に認めた.尚,内服,筋

注,局注の外に,錠剤に水を加えてよく担り,外用とし

て用いた.これは補助療法として役立つと思う.

 石原 勝(東京逓信`):①今日の慢性円板状型の治療

剤としてクロロキンはその有効性,投与簡便な点,最も

優れているか,抗マラリヤ剤無効の症例にゲルマニソ療

法が著効を示す場合かおる.②慢性エリテマトーデスと

雖もかなりの高率に軽度乍ら蛋白尿,白血球減少その他

の全身系統的障碍を思わせる所見がある故に,また一見

健常な皮膚に亀皮疹発生の素地か認められる故に,これ

らを正常化せしめうるクロロキソ内服投与療法が理想的

であり,実施上疼痛その他の難点ある局所注射療法は作

用機序探究の上には興味深いが,臨床的意義は少いと考

える.

 Griseofulvin経口投与による白癖の治療(第1報)

 村田 貢,岸 清一(国立東一)

 Glasco社製品Grisovin成人1日量1 g経口投与に

より白癖を治療した.外用薬の併用は禁じた.頑癖は投

与後早くて翌日から,遅くも4,5日でヽ藤津感が消失

日本皮膚科学会雑誌 第71巻 第5号

し,21 3週で治癒に至る.汗庖状白癖では頑癖よりや

や遅れ,4週間以上を要する.爪白癖8例は現在引統ぎ

治療中であるが3ヵ月以上数ヵ月を要すると思われる.

しかし投与後2,3週で爪母が再生し,健康部が出現し

て来た2例を経験した.副作用は頭痛,食慾不振を訴え

たものか各2例あるが,それにより投薬を中止tたもO

はない.

 汎発性狸紅色菌症について.附,グリセオフルビンの

治療効果福代良一,西山茂夫,高橋 久,石川英一,

添田周吾,寺山 勇(東大)

 安田利顕:(D癈禅の速やかに消失する理由は.②投麦

により発疹した1例を経験した.村田 貢:① 爪甲白

癖は今まで治癒困難であったかGriseofulvin服用によ

って容易とたった.②作用機序は現在まで詳細は不明.

 桂皮酸エステルに関する研究(その2), n-ブチルメル

カプタンの附加 増田良之助,松室三郎,富岡庸次(寿

化学),安田利顕(関東逓信)

 先に,桂皮酸エステルとその関連不飽和化合物が,実

験動物に対して可逆的脱毛作用を有し,また試験管内試

験に於てSHイヒ合物を不活性化することを報告した.今

回は桂皮酸エステルが表皮中のSH代謝に及ぼす効果

のモデル実験として,桂皮酸エステルに対するn-ブチ

ルメルカプタソのラジカル附加反応の実験を行った.桂

皮酸エステルとn-ブチルメルカプタソをシクロヘキサ

ソ中に溶解し, 3,600Aの紫外線を照射した.①桂皮酸

エチルーn-ブチルタルカプタソ附加物を得た.②桂皮

酸コレステリルーブチルjルカプタソ附加物として4種

の附加物を得た.③後者のm・ p.78°Cのものは他の方法

で合成した附加物と同一であることを確認した.

 色素細胞の分裂像 加藤平太(東京逓信)

 目皮会誌, 70, 852,昭35参照.

 久木田淳(東大):①表皮細胞の分裂時に於ける原形

質は今示されたスライドによると非常に明るいが,これ

と澄明細胞との鑑別如何.②Bellinghamの所謂ame-

boidないしamitoticの分裂が見られたか.③我々は

多数の標本につき各種の方法で実験を行っているが未だ.

タラノサイトの分裂像を認めたことがない.これは技術

の差によるものか.高瀬吉雄(東医大):突起のある紐

胞がメラノサイトであるというが,その区別は.

 網膜色素上皮の色素の研究 宮木正光(東大丿

 日皮会誌, 69, 1667,昭34参照.

 “魚の眼”の組織学的研究 藤田恵一,石原和之,山

田 清(自衛隊中央)

 演者等が最近切除した足跳の限局性角質増殖症は,皮

角TL例,肝眠腫4例,魚の限8例の計13例であって,所得

魚の眼が最も多く,その8例総てにPlantarwarzenの継

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昭和36年5月20日

織像を認めた.J即ち,何れも境界鮮明な病巣であって,

顛粒層から帥状層に亘って多数の空胞細胞あり,その細

胞中に認められる封人体は好酸性であって,尋常性疵贅

の空胞細胞に認められる封人体とは染色性も形態も異な

る.病巣部では一般にケラトヒアリソ穎粒を欠くが,密

な角質を形成している部位等に相当して封人体とケラト

tアリソ穎粒とが共存する場合も認められる. Unnaの

上皮線維染色により空胞細胞にも細胞間橋を認めるもの

が少くない.電子顕微鏡による観察では,正常足礁皮膚

に於ては基底層から角質層表層に至るまで表皮細胞の形

態か徐々に変化する像を認めるのみで,光学顕微鏡で染

色標本に認める如き表皮各層に対応する明確な境界は認

め得なかった.病変部に於ては基底層には異常なく,空

胞細胞は核が膨化し,細胞質も線維構造を失って変性と

忌われる像を示し,その中に電子線密な,大きさ及び形

態共に甚だ不規則な構造物を認めるが,形態学的に組織

,内に於けるvirusと確認するに至らなかった.現在魚の

頴の診断名として鶏眼(併砥腫の一型)なる名称の混用

されることがあるが,これは演者等の経験からも適当で

穴く. Plantarwarzen の訳語C例えば掌跡沈贅)を用

うるのが妥当であろ5.

           患者供覧

 診断例(関東労災)

 57才女.現病歴:昨年10月末左下腿脛骨稜に腫脹を生

U,蜂高織炎と診断されて治療を受けやゝ軽快,本年3

月より再び硬結,腫脹発現.結核性疾患の既往歴なし.

現症:上記部に5×工3Cmの硬結あり,境界比較的鮮明,

中心に色素沈着,辺縁に調漫性潮紅あり.圧痛軽度.組

織:表皮ほゞ正常.真皮に毛細血管増殖,周囲に好酸球

を伴5細胞浸潤.皮下脂肪組織に大小の嚢胞巣銕,周囲

,に血管増生,好酸球及び組織球性細胞浸潤.水野信行:

stasis dermatitis と考える.古谷達孝:静脈瘤か.安

西 喬:試験切除に際して乾酪様物質琳漏出した.横山

雄:血管の変化を重視するか,脂肪組織の嚢腫を重視す

るかにより診断が異なる.前者ならnodular vascu]itis

之考える.

 Erythrokeratosis follicularis(関東労災)

 38才男.発病1年前.現症:両側耳前,下顎,耳後部

に粟粒大丘疹集族,丘疹開に暗紅色潮紅あり,丘疹を残

して網状となり,又融合して禰漫性となる.潮紅は硝子

圧により消槌し,一部に色素沈着あり.組織s表皮やゝ

萎縮性,基底層にメラニソ頴粒増多,毛孔性角質増殖.

真皮上層の膠原線維断裂してHE染色で暗紫青色,弾力

線維膨化,断裂.

559

 診断例(順天大)

 19才男.現病歴;約5年前に指関節背面皮膚が厚くな

り,その後約1年間で現在の状態となった.自覚症な

し,現症z左右の第IV指を除く全指の中関節背面,左右

第T指の指関節背面,および左右の第II指の指掌関節背

面に,栂指頭大乃至鳩卵大,境界明瞭,扁平に隆起した

紅斑あり,辺縁部に色素沈着を見る.表面粗槌,少量の

鱗屑を附し,浸潤著明,組織:角質増殖,一部に不全角

化.顛粒層増殖.表皮肥厚.真皮上層に血管周囲性小円

形細胞浸潤.宮崎寛明:乾癖としては特有の鱗屑なく,

顕粒層が厚ト.knuckle pad 又は肝巨鐘と思われる.

横山 砧:併訳か.鈴木滋:角化高度で毛孔性紅色枇糠

疹と思兄

 癒疹状皮膚炎(都立大久保)

 21才女.現病歴:1ヵ月前左頬に,数日後右頬に各1

個紅色小丘疹出現,以後増多.父に喘,1,あり.現症:両

頬ほゞ対側性に小水庖,小丘疹,廉爛,痴皮より成る鶏卵

大発疹あり,潮紅,浮腫,浸潤を伴5.癈律あり.水庖

は辺縁にあり,遠心性拡大の徴が見られる.初診時は中

心に亀水庖が存在した.水庖の被膜厚く,一見丘疹状.

組織:真皮上層に浮腫強く,所々に表皮下水庖あり.膠

原線維は膨化,変性,一部消失,血管拡張と溢血を見

る.深部にまで好中球,淋巴球,組織球よりj成る細胞浸

潤を認めるが,好酸球は少数,検査;末梢血に好酸球増

多なし.ヨードカリ反応陽性.北村包彦:顔面にのみヨ

ードカリ反応陽性の由,臨床的には如何か.鈴木 滋:

最初は尋常性狼康を疑った.好酸球浸潤は少ない,水野

信行:多形診出性紅斑の巨大型と愚う.

 庖疹状皮膚炎(都立大久保)

 19才男.現病歴:発病約15年前,以後消長を反復.全

身症状なし.現症:頚,躯幹,上鱒,大腿の殆ど全面に

紅斑,水庖,痴皮,色素沈着等より成る局面が多発,扁

豆乃至鷲卵大,孤立又は融合,環状乃至連圏状.又遠心

性拡大と中心治癒,色素沈着を示す.水庖は粟粒乃至扁

豆大,被膜は薄い.組織:真皮に血管拡張と管囲浸潤,

乳頭の浮腫.鱗屑,痴皮が表皮表面に附着,不全角化,

表皮肥厚あり,検査:末梢血好酸球百分率10%,白血球

増多.ヨードカリ・反応陽性.治療:イソテレニソ10回注

射でやゝ軽快.

 線状扁平苔癖(日大)

 37才女.現病歴=2ヵ月前,右大腿にはじまる.慢性

湿疹として加療,一時軽快するも再発.現症:両側項,

側頚に粟粒大,光沢ある紅色丘疹が播種状に散在,又右

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大腿外側上半,同前下半,左大腿に小豆大乃至鶏卵大,

淡褐色色素沈着を伴う苔癖化皮疹あり,軽度の粗糠様落

屑,境界やゝ鮮明.座禅軽度.

 Papillomatose confluente et reticul^e (Gouge-

rot) (日大)

 30才女.約1年前より両下眼瞼に褐色斑を生じ,次い

で項部,下腿前面に及ぶ.漸次拡大,自覚症なし.現症

:境界明劃な色素沈着が項,側頚,欧高前縁にあり,

項,側頚に高度.又軽度隆起した乳頭状増殖を認める.

検査:Thorn試験好酸球減少率87%.胃液酸度低下.

BSP 30分7.5%.植物神経機能正常.

 脂腺腫(日大)

 19才女.約5年来胸部の皮疹,漸次増多,癈輝かし.

現症:右乳房上部,手掌大の範囲に粟粒大,常色乃至淡

紅色丘疹が散在,表面光沢あり,や同

福代良一:扁平母斑と思う.但し紅色丘疹を伴った例の

経験はたい.北村包彦:結合組織母斑としたい.開葉性

の要素かおるのではないか.横山 砧:脂腺の変化か認

められず,脂腺腫ではない.いずれにせよ母斑.

 萎縮性脱毛症兼色素性尊麻疹(日大)

 28才男.現病歴:約1年半前,後頭部の脱毛に気付く,

又その頃腰緊帯部に癈禅性皮疹出現,漸次腹;前胸,背,

両大腿に及ぶ.現症:上記部に多数の色素斑あり,半米

粒大紅色丘疹が混在し,掻けば隆起する.後頭部の脱毛

は不整形,半手掌大,軽度陥凹,光沢あり,易脱毛性な

し.組織:脱毛部:表皮萎縮,表皮突起消失.乳頭乃至

乳頭下層にはHE染色で好塩基性変性著明,弾力線維断

裂.腰部:・乳頭乃至乳頭下層の血管周囲に楕円形,大形

細胞及び小円形細胞浸潤と浮腫あり,表皮基底層にタラ

ニソ増加.西脇宗一:色素性幕麻疹は疑わしい.炎症後

色素沈着と思う.組織は如何.佐藤和三:→ルイジソブ

ルーでjタクロマジーを示す細胞は認められない.西脇

宗一:とすれば臨床的,組織学的に色素性尊麻疹ではな

いと思‰横山 砧:色素性募麻疹にあのような小色素

斑があり得るか.三浦 修z肥詐細胞が認められぬか

ら,この診断は固執しない.

 スポロトリコーシス(東京逓信)

 34才男.発病は約1年前,左上肢の主として伸側に数

個の潰瘍排列し,一部は表面隆起して痴皮に蔽われる

が,大部分出血性肉芽面を呈する.スポロトリキソ反応

陽性.病巣よりSporotrichum schenckiの培養に成功.

組織学的にはリン球,類上皮細胞,形質細胞よりなる

細胞浸潤を呈し,多数のMikroabscessが認められ,`そ

日本皮膚科学会雑誌 第71巻 第5争

の中央に星芒形を証明し得た.

 Keratosis pilaris 及びErythrokeratosis fol-

licularis Kitamura (東京逓信)

 24才女.背部,肩部に毛嚢角化が認められ,同時に顔

面頬部,特に下顎部に潮紅を伴った毛嚢性小丘疹を見

る.組織学的にも著明だ毛嚢角化か認められる.北村包

彦:Erythrokeratosis follicularisは男に多く,必ず

しも毛孔性苔意を伴わぬ.安田利顕z女にも見る.毛孔

性苔癖に属すものか.北村包彦=本症は毛細血管拡張あ

り,又頬に出現する.毛孔性苔廊とは区別してよい.小

堀辰治:母斑性のものか.北村包彦:母斑性というか,

遺伝的なものと考える.水野信行こ男女といこ見る.必

ずしも毛孔性苔癖を伴なわぬ.

 一種の脱毛症(東京逓信)

 40才男.発病は約8ヵ月前.現症=右耳前上部の有髪

部位に直径1.5×2Cmの脱毛病巣が認められ,発赤と高

度の浸潤を伴い,その辺縁は多少隆起し,中心部はやゝ

陥凹して軽度の色素沈着と毛細管拡張が認められる.自

覚症状はない,検査:血液像はリンパ球の比較的増多を

呈し,尿所見は正常.梅毒血清反応陰性.組織;表皮はj

萎縮し,一部に角栓の形成を見る.真皮に於いては血忙

周囲並びに汗腺周囲及び更にその深部に,主としてリン

パ球よりなる細胞浸潤が認められ,毛嚢及び脂腺は殆ど

消失して一部に痕跡的に残存するに過ぎない.尚真皮層

は全体として肥厚し,汗腺はその中央に位置している,

一部に膠原線維の変性が認められ,血管の変化として一

部にEndarteriitis obliterans の所見心認められる。

 Paget病(東大)

57才女.29年前左化膿性乳腺炎,7年前左乳頭部疼

痛,やがて声爛,2年前左乳房に腫瘤,現在乳頭消失し

潰瘍化,周囲に境界鮮明な分葉状紅斑,乳房と左朕裔に

腫瘤,

 Melanotic freckle (Hutchinson) (東大)

 51才男.現病歴:20年前現在皮疹の存する部に米粒大

の黒色斑あり.これは5年前には銅貨大に拡大した.更¨

に3年前より漸次拡大,時に軽い座標あり,屡々痴皮を

形成した.現症:下背部正中線よりやや左側に5×3 cm

全休として境界鮮明な不規則形の局面あり.局面内右側

より下部にかけては禰漫性暗黒褐色の色素沈着で,僅か・

に皮膚面より隆起する.左上半部には淡褐色乃至暗褐色,

の小色素斑が散在する.検査:血液所見ほゞ正常,尿の

jラニソ反応陰性.組織:主変化は表皮にあり,原形質

の大きく明るい,円形又は立方形で,大形の核を有するヽ

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昭和36年5月20日

細胞が集団をなし又は個々に基底細胞層より表皮上層,

角質層直下迄存在する.又所によりjunction activity

が認φられ色素を有する細胞もある.真皮上層には担色

細胞及び淋巴球,形質細胞の浸潤を認める.腫瘍細胞は

乳頭直下の真皮にも散見する. Dopa反応では多数の

Dopa陽性のタラノサイトが表皮基底層より角質層直下

に至る間に観察出来, Dopaoxidase活性も正常皮膚の

それに比較して強度であ.る.

 転移性皮膚癌 (東大)

 43才女.現病歴:7年前幽門狭窄にて胃切除を受け

た.昨年8月以来上記手術痘痕部附近に紅斑を生じ漸次

拡大,扁平に隆起する.白覚症状なし.現症しひ高部の

手術痘痕部を中心として小児手掌大の境界鮮明な扁平に

隆起した紅斑あり,浸潤を伴う.その右方に1×3cm皮

下硬結を触れる.検査:胃X線検査にて胃残存部に陰影

欠損は認められず,通過障害もない.組織:真皮より皮

下脂肪組織にかけて印環細胞の浸潤を認める.福代良一

:印環細胞あり,原発巣は胃にあると思うが,X線透視

では異常所見がない.

 Addison病(東大)

 37才女.既往歴:昭和21年膿腎症で右腎摘出,昭和31

年結核性子宮内膜炎で子宮全摘.現病歴=5年前頬に淡

褐色素斑,次第に拡大,2年前肝斑兼雀卵斑と診断され

た.全身倦怠感,頭痛,完奮しやすくなり,やせた.現

症1顔面及び舌先,頬粘膜に色素沈着.検査:Thorn試

験―21.5%, Robinson-Kepler-Power試験でも機能不

全.横山 結:顔以外の部の色素沈着は如何.福代良一

:生理的着色部に増強,手掌にも色素沈着あり,

561

 先天性表皮水庖症(東大)

 29才女.家族歴:近親に同一疾息なし,子供2人も異

常なし.現病歴z 11才頃より機械的摩擦を受けた部位に

水庖を生じ,後に軽度の痘痕を残す.現症z四肢末梢,

肘頭,膝蓋等に大小の水庖,廉爛,痴皮,痘痕が混在,

趾爪は一部変形.組織:表皮下水庖.

 酒皺様結核疹(東大)

 42才女.既往に結核性疾患なし,ツ反応廿.昨年春よ

り顔面に自覚症なきI皮疹.現症こ両頬,前額,順部,鼻

先に禰漫性発赤,毛細管拡張,粟粒乃至米粒大の丘疹,

膿庖が集談.組織:真皮の所々に類上皮細胞,リソパ球

の小浸潤巣.福代良一;臨床的に酒散,組織学的比類上

皮細胞集団あり,酒銀様結核疹としてよいか.谷奥喜平

:酒鉄様結核疹.米国ではこれを否定するが,我々は認

めてよい.

 色素性扁平紅色苔寵(東医大)

74才男.約4年前より前額,両頬,項部にかけて一様

に大豆大の扁平,梢々隆起せる皮疹生じ一部融合,自覚

症状なし.紫灰色の色素沈着あり,夏季には全身倦怠感

を伴って増悪する.組織:表皮非薄化,真皮乳頭下層に

膠原線維の塩基性変性帯が水平に走り,その上方に淋巴

球性細胞浸潤あり,担色細胞を混ずる.

 円板状紅斑性狼庸(慶大)

 横山 砧:限局性蒙皮症か.北村包彦:限局性案皮症.

 Pyodermia chronica exulcerans (慶大)

 光沢苔癖(慶大)

 Erythrokeratodermla variegata CRille) (慶大)

 横山 砧:本症は晩発性魚鱗癖に属する疾思と思う.

金沢地方会第193回例会

(昭和34年10月25 H,於金大)

 Xanthomatosisの1例 広根孝衛,山崎泰助(金大)

 過コレステロール血症と関節部結節を伴う症例に,最

初リノール酸を18日間投与したが血清コレステロール値

は低下せず,次いでベニオールを投与し15回目に血清=・

レステロールは初めの3/5低下した.こt,でベニオールを

中止した所再び上昇,投与を再開して再び低下.又関節

部結節は切除し組織学的に検索,い

織球によって満された結節で,内外管部,肘関節仲側,

膝蓋部に見られる黄色腫と因を一にしたものである.

 先天性局所性黄色腫の2例 谷口 馨,向来義彦(農

協高岡),塚田貞夫(金大)

 家族的発生及び血族結婚を認めず,血中脂質の正常な

る先天性黄色腫の2児.本症例はMcDomaughのne-

voxantho-endotheliomaに属するものと考える.尚,

 ≫°Sr による血管腫の治療 鈴木 博,久田欣一(金

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562

大,放)

 血管腫に対するβ線外面照射療法は,Raやレ線照射

より深部透達力弱く優れた治療法である.演者は"Sr

アプリヶ-ター(50mc, 700rad/sec)によ`る治療を

行い可成りの効果をみた.術式は1週1回500~1500

rad, 3週で1クールとし,6週間隔で3~4クール行

う.s2P吸取紙法に比し次の如き利点がある.9oSrの半

減期が長く長期間使用可能.治療費低廉,外来でいっで

も使用できる.2)線量率大なる為1回の治療時間が短く

小児の治療に好適.3)線量率明確で毎回正確な線量で治

療できる.4)装置を作る煩しさやその際の汚染を全く考

える必要がない.以上の点から特に小病巣に対して非常

に便で推賞し得る装置と考える.

  トリアムシノロンの局所的応用 中島啓雄,木下 瞭

 (金木)

 Kenacort・A軟膏及びKenalog creamを湿疹様変化

を主徴とする病変に応用した成績を述べ,併せてster-

Old hormone の局所応用に就き簡単な考察を加えた.

有効率はKenacort-A軟膏では92.3%, Kenalog crearn

では84.6%,後者の使用中1例に増悪がみられた.尚経

口投与に於けると同様局所応用に於いても, mineralo-

corticoid作用の少たい薬剤か望ましい.

 メリアンによる感染性皮膚疾患の治験 西原勝雄,広

根孝衛,池田真康(金大)

 感染性皮膚疾患28例にjリアソ(sulfaphenazol)を

使用した.症例は膿痴疹3例,癌腫症9例,毛嚢炎1

例,尋常性抜癒3例,湿疹様病変に感染を伴ったもの9

例及びその他3例で,全例に於いて葡萄球菌を証明.著

効或は有効23例,無効5例.尚基礎的実験に於いて本剤

の血中有効濃度を中心に簡単な考察を加えた.

 Darier氏病の1例 近 小弥太(小松病院),北村清

隆(金大)

 23才男.13才に発病,発疹は胸部腹部頭部に存在.頭

部では脂漏性湿疹と極めて類似するも座禅なく,陳旧な

る発疹は苔癖様で,腹部のものは列序性母斑を思わせ又

日本皮膚科学会難誌 巻71第 第5号

同部に小指頭大のヶpイドが存在.何れも夏は増悪し,

冬は全治はしないが軽快する,家族歴,既往症に異常な

く,内臓,血液,自律神経検査に異常はない.本疾患は

先天性素質に基く異常角化と思われるが,他の角化症と

異なり冬期に軽快するのは,恐らく汗腺及び皮脂腺の分

泌異常による表皮のpHの変化と関係があるのではない

か.尚本邦70例の文献について観察を加えた.

 農村小児の皮膚病 塩岡 清(礪波厚生)

 昭和32年8月より約2ヵ年間の,満6才未満の小児外

来患者39名に就て調査の結果,農村部では①湿疹,皮膚

炎,膿痴疹,火傷は農繁期に多く,②真菌症,凍癒,刺

虫症は町部に較べ可成り多く,③通院日数が1日少い等,

皮膚科的に見ても農村環境の改善,衛生管理の向上,農

作業の軽減の必要があると云う成績を示した.

 興味ある2症例について 松本燎一(富山市民),山崎

泰助(金大)

 1)多形溶出性紅斑より結節性紅斑に移行せる1例:

30才,家婦.前腕,下腿の多形湯出性紅斑を治療,発疹

が殆んど消槌したため治療を中止した所,約4日後両下

腿に結節性紅斑が発生した.これらの症状は本症例では

同一の発生機転によるものと思われ,臨床症状こそ梢異

たるか,これ等2つの疾患更に動脈周囲炎乃至バザソ氏

硬結性紅斑等を加え,溶出性紅斑乃至皮膚血管炎として

一括しようとする最近の見解に一つの支持を与える症例

であると信ずる.

 2)毛嚢に一致せる尋常性白斑の1例りO才,男子.

背部に発生せる尋常性白斑,一部は毛嚢一致性の小白斑

で,その部に於ける Dopa反応は陰性.毛嚢は今日迄

多数の学者によりpigment potential の特に高い部位

と考えられているか,これは寧ろ逆の症例として興味か

ある.

 興昧ある脂腺母斑の1例 西原勝雄,長谷川真常(金

大)

 生後1ヵ月の女児.顔面.被髪頭部及び右側頚部に亘

って線状,帯状乃至斑状の局面多発,且列序性に配列.

金沢地方会第194回例会

(昭和34年12月TL3日,於金大)

奇異な外観を呈した淋巴管腫と思われる1例について

松本館一(富山市民),山崎泰助(金大)

 25才,家婦.4~5才頃から右大腿の略々全面を占め

る水庖形成に気付き,これは次第に一部血庖状√一部腫

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昭和36年5月20日

濾状となり.更に時々感染を伴い該部に浮腫と疼痛が出

現する.組織学的に検索した所,水庖,血庖の部位は限

局性皮膚淋巴管腫であり,腫瘍状の部位はFabry-Zieg-

enbein の云う母斑性角化性淋巴管腫に一致すると思わ

れる所見を得た.‥

 石灰化表皮腫の1例 広根孝衛,秋山清秀(金大)

 13才女子の左側頚部と右上腕外側に発生した石灰化表

皮腫を摘出し,組織学的に検索した.併せて本邦文献に

見られた本症72例に自験例を加えて,統計的観察を試み

た.著者らは本症の病因として母斑性要因を重視した

t≒

 癈摩性皮膚疾患に対するハイスタミン錠治験 西原勝

雄,中島啓雄,木下瞭(金大)

 ハイスタミソ錠は塩酸ジフェニールピラリソをイオソ

交換樹脂に吸着させ作用を持続化した新抗ヒスタミン剤

で,高度の抗ヒスタミソ性と軽度の抗アセチルコリン性

とを有する.クイスタミソ錠を50例の癈肆性皮膚疾患に

用い,止律効果を40例(80%)に,皮疹改善効果を47例

 (94%)に認めた.副作用は3例(6%)に認めたに過

ぎない.なお35例(70%)は朝夕2回の投与で十分に止

椋効果が得られた.

 アズノール軟膏による皮膚疾患の治験 高田 仝(鳴

和病院)

 合成グァヤズレソを主剤とせる皮膚外用薬アズノ・-ル

軟膏に5%の割合に亜鉛華を混じ,皮膚炎,急性湿疹,

慢性湿疹,火傷其の他の皮膚疾患計35例に用いた.急性

皮膚炎,溶出性傾向強き急性湿疹には極めて良好な成績

を得,慢性湿疹では5例中2例に悪化をみ,火傷並びに

潰瘍には極めて有効であった.本剤は無刺戟性,無臭,

着色しない,清拭が容易である等の長所を有する.しか

し温度により硬度がかなり変化し,夏期はとくにやわら

かすぎて使用に不便である.演者は5%に亜鉛華を混入

することにより,或程度硬度の変化を防ぎ得た.

          スライド供覧

 尋常性乾癖(鳴和病院)

 47才,女.1ヵ月前発病.肘,膝,大腿,仙骨部,背

などに丘疹乃至局面散在.背部のお灸のあとに一致して

皮疹が見られる.

 挽状固定尊麻疹(金大)

563

 47才,男.10年前下腿に始まり,現在ではよ腿,上肢

に及んでいる.

 人工皮膚炎(金大y

 TL4才,女.四肢,肩及び前胸部に,巾0.5~1.0 cm長

さ5~10cmの直線状の皮疹が可成り多数見られ,皮疹は

表皮剥離,血痴,色素沈着などで一部癒痕化し,全て一

定の方向に走り,丁度指爪で掻昶する方向に一致する.

顔面には全然変化がない.癈岸はなく,自発痛がある.

 薬疹(金大)

 20才,男.3日前ソボリソを内服した所,約10分後,

手背にピリピリする感じが起り,そこに紅斑か生じた.

紅斑は下腿,ロ唇及びその周囲にも現われ,水庖を形成

するものもある.貼布試験ではスルピリソは陽性,ピラ

ビタールは陰性.

 角性痙麿(金大)

 12才,女,右肘関節の伸側に粟粒大毛孔性紅色丘疹が

数十個集銕.丘疹は中心に白色の固い鯨状突起を有し,

又弧立性懲融合することはない.

 汗孔角化症(金大)

 48才,男.四肢,腹部,背部などに定型的発疹散在.

 先天性掌踏角化腫(金大)

 16才,男.生後間もなく手掌より始まり,足畝に及

ぶ.指腹,手掌,足浪は厚く角化し蒼白色.家系に同症

を見ない.                  ∧

 皮角(金大)

 36才,男.左第5趾の根部,趾間面に大豆大の可成り

隆起した固い腫瘍がある,切除標本は大さ1.0×0.8X

 1.3aii,重さ1.8 g.

 Recklinghausen母斑症(金大)

 19才,女.殆んど全身に亘って,粟粒大から小児手掌

大までの茶褐色の色素斑が多数存在,同時に皮膚面から

僅かに隆起し或は可成り明瞭に隆起した軟い腫瘍が無数

私散在.

 BournevillがPringle母斑症(金大)

 32才,男.顔面に丘疹,背部に粒起革皮膚,側胸部に

白斑,旅寓,股部などに疵贅様小腫瘍,頭皮に限局性肥

厚を認め,指趾爪の変形を伴う.また眼底所見として左

乳頭鼻側に白斑あり.泌尿器科的には異常なく,脳波及

びEKGは正常.

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564 日本皮膚科学会雑誌 第71巷 第5号

金沢地方会第195回例会

(昭和35年2月21日,於金大)

 Acrodermatitis continua suppuratiraの1例 谷

口 馨,伊予 進(高岡農協),塚田貞夫(金天)

 44才,女.15~16才の頃より職業上右第3指に和裁用

の指輪を嵌めていた.約2年前より指輪の跡に発赤,小

膿庖,廉爛を生じ,これらは両手指,右足に拡大,種々

の治療に抵抗を示した.現在右第1,第2,第3,第4

指指尖より手背手掌に発赤,小膿庖,粛爛が混在,所々

に痴皮を認める,爪廓炎を起しているが爪甲の脱落はな

い.第2,第3,第4,第5指及び右足内繰前方に同様

症状あり.自覚症状は軽度の疼痛,灼熱感.膿庖より溶

血性葡萄球菌を証明.

 先天性に発症したと思われれるFibroangiomaの1例

谷口 馨,伊予 進(高岡農協),塚田貞夫(金大)

 1年6ヵ月の女児.生来,両足背が腫脹.同部の皮膚色

は略々正常で,触知すると蒙固で疼痛はない.組織学的

に皮下脂肪織は結合織線維によって置換され膠原の増殖

が強く血管の新生増殖は特に真皮の深層に於いて著明で

血管腫の像を呈する.結合織線維の量的な面から云えば

本症はAugiofibromaというよりはFibroangiomaと

称する方が妥当であろう.

 光沢苔癖症例追加 中島啓雄,柳瀬功一(金大)

 13才,男.皮疹は両肘高,下腹部及び両大腿内側に見

られ白覚症状はなし.組織は定型的で,細胞浸潤はリソ

゛球,組織球及び上皮様細胞からなり,ラングパソス氏

型巨細胞を認めず.尚本症は本邦第20例目に当り,モれ

らの年令,発生部位,臨床症状並びに病因について考察

を加えた.

 Dexamethasoneによる皮膚疾患治験 木下 瞭,美

川郁夫(金大)

 Dexamethasoneを30例に使用し,全例に効果を認め

た.急性湿疹,接触性皮膚炎などでは著効を見たが,輦

皮症,悪性円形脱毛症などでは効果は顕著でなく従来の

corticosteroidの効果と一致した.維持量に就き効果

を比較するとprednisolone の約6.7倍, 6a;-inethyl-

prednisoloneの約5.3倍である.

 諸検査成績は,正常範囲内の変動を示すに過ぎなかっ

た.副作用は不眠,夜同頻尿等が目立ち,1例に感染症

の併発を見た.

 E. p.ホルモンによる皮疹の1例 松本錬一(富山市

民),山簡泰助,三木 甫(金大)

 卵巣機能障碍性月経困難症を有する24才の未婚女子

に,E.P, ホルモ9ソを注射,最初は異常を認めなかつた

が,約2ヵ月後の第4回目注射で顔面に著明な発赤,腫

脹,板縁,四肢に多形溶出性紅斑様発疹を生じた.安息

香酸エストラヂオ゛ルとプロゲステロンの乱切試験を行

い,後者に陽性反応を皇したので,本剤中の黄体ホルモ

ンによる皮疹と考える.皮疹発生の状況及‘び他に異常な

くして, 12%の好酸球増多症を認めた点から,アレルギ

ー反応によるものと考える.尚, endocrine allergy の・

関与も除外出来ない.

 顔面播種状粟粒性狼盾に関する知見 近 小弥太(小

松市民),長谷川

 本症の組織には3つの型があるのではないか.第TLぼ

従来の結核結節型,第2にはsarcoidを思わすもの,

第3はrheuma様結節を思わす心のである.同一患者

の皮疹を多数に検索した結果につき,この3種の組織像

が同時に存在する知見を得た. Gansの言う様に本症は

アレルギーの場が広いために同一患者の皮疹にも差異が

生ずるものか,或はこれが個疹の経過の諸相を現わすも

のか不明である.更に二,三の症例を検索,前記3型へ

の分類が可能と考え,追求中である.またこの組織像O

差が治療の難易にも関係があるものではなかろうか.小

林栄治:本症が難治だと一概に見ないで,病相に適した

方法をとるなら座雍と同じように処置出来るのではない

か.三木録三:壊疸にならない形のもので非特異性の治

療で治つたと思われる例を経験した.

          スライド供覧

 腕時計バンド皮膚炎(富山市民)

 黒色革製のバソド着用後約5ヵ月目に,バソドに一致

して発赤,落屑,癈縁を認め.加療中同じバンドを反対

側前腕に着用し1Hで同様の発疹を生じた.

 膿皮症

 64才,農夫.4日前顔面に膿庖を発生,1両目で全身

に拡大.粟粒大より大豆大までの紅色丘疹か播種,その

頂点には小膿庖を有する.頭部,顔面には担皮形成が著

明,体温38°C.血液培養(一).膿庖から黄色葡萄球菌を

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昭和36年5月20日

証明.

 ゴム腫

 30才,女.第190回当地方会で供覧した患者.満1ヵ

年のマファルゾール療法により麹痕治癒した.但し,ワ

氏反応は陽性.

 下腿潰瘍

 14才,女.4年前右下腿伴側に外傷それか潰瘍化し漸

次増大.半年前某病院に入院1ヵ月位で治癒したが,退

院後再び潰瘍を形成.上記部に貨弊大の潰瘍2個あり,

565

組織学的には非特異性炎症.

 毛孔性紅色枇糠疹

 20才,女,約7ヵ月前発病,医治を受け一時軽快,最

近再び増悪した.肘頭と膝蓋部とに対称性に紅色局面か

あり,辺縁部には鱗屑を被った毛孔性小丘疹が散在.

 土肥氏鱗状毛嚢性角化症

 12才,女.2年前発病.側胸部より腹部にかけて,粟

粒大より扁豆大までの淡褐色円形の板状鱗屑が散在.中

心に毛孔の認められるものが多い.・自覚症状はない.