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学会抄録 東京地方会第526回例会(研究会)(昭和50年3月5日,東京) 円形脱毛症に対する後頭神経ブロック療法について 渡辺 靖,伊藤一成,永島敬士,松井恒雄(中央鉄道) 円形脱毛症には肩凝り,頭重,手足が冷えやすいなど の不定愁訴と思われる症状があるが,これらのうち肩凝 り,頭重などに重点をおいて観察すると大小後頭神経に 一致して圧痛があることが分った.そこで局所麻酔剤を 用いてそれら神経ブgツクを行うと,それの支配領域で は皮膚温は1.5°Cから4°C近く上昇するものがあること が分った.これによって神経ブgツクによる治療を始め たが,多発型においては1.5~2ヵ月くらいで硬毛の発 生を見るようになった.これは昭36~42年の間に観察す ることができた平均治療期間,つまりセファラソチソ, 抗ヒスタミソ剤による治療剤では単発型で4ヵ月から7 ヵ月,多発型で4ヵ月から1年6ヵ月くらいで硬毛が発 生するのに比べれば,はるかに早い治療期間であるよう に思われる.全脱毛症においても1週1回のブロック10 回くらいで毛孔の開大,嚢毛の発生を見た.本療法の適 応は圧痛の強いもので,アトピー皮膚炎を合併していな いものである. 小嶋理一(東京医大):圧痛点と病変部との関係は? 渡辺 靖:① 圧痛点は三叉神経の開口部,大小後頭 神経に一致してみられるが,およそ病巣部が右にある場 合は右に圧痛点が強く,左にある場合は左側に強いよう だ.② アトピー皮膚炎を合併するものについては,い ずれ発表する機会もあると思うが,圧痛点は非常に弱い ようである. 吉田実夫(東大):① 経過はどのぐらい観察してい るか.② 新生して来た頭髪の経過はどうか.③ 以前 発表された抗ヒ剤大量療法の長期観察の結果はどうか. 渡辺 靖:① ブ・=・ツク療法を行った例では,発毛は 1,5ヵ月くらいで硬毛を発生してくる.しかし多発型で は目下25例くらいのうち2例に再発のあるものがある. 抗ヒスタミソ剤とくにペクアクチソの大量療法の薬 理作用は分っていないが,ステロイドの副作用よりはは るかに副作用が少なく,再発も見られたが,ステロイド 379 よりはかなり少ないようであった. アナフラクトイド紫斑に対するDDSの使用経験 辺義次,千見寺ひろみ,岡本昭二(千大) 第35回東日本連合地方会でDDSのアレルギー性血管 炎に対する効果について発表したが,特にアナフラクト イド紫斑の症例を抽出し,それ以後経験した症例とをあ わせて検討した.対象は37例である.ほとんどの症例で 投与翌日から新生を見ず,また紫斑は3日からおそくも 7日までに消失した. DDSは皮膚症状にはきわめて有 効であるが,下血や高度の蛋白尿症例には紫斑以外には 無効であった. 小嶋理一(東京医大):作用機序は? 野波英一郎(関東逓信):DDSの漸減長期治療によ り,腎所見も非常に改善された例を経験している. 田辺義次:(小嶋先生へ)① 作用機序に関する説は 今述べたものが殆んどである.②ASLO値上昇は23 %くらいで, ASLO値と治療効果の間に特別な関連はな いと考えている.(野波先生へ)① アナフラクトイド 紫斑に, DDSを長期投与した経験がないのでなんとも いえない.② 合併する腎炎はまさにimmune complex diseaseと考えられるので,皮疹の場合と同じような作 用形式を期待するのは無理かと思った.但し長期投与の 場合には,先生の例を説明しうる別な機作があるのかも 知れない. UVAによる乾癖の治療 井村 真,戸田 浄,小堀 辰治(東京逓信) 血中のソラーレンの濃度は内服後1時間半で最高に達 し,約48時間でOになる.連日内服した場合には皮膚の 蓄積効果が問題になる.演者らは皮膚の光過敏反応を指 標にして,フラーレンの表皮内の推移をみたところ,2 ~4時間をピークに比較的短時間で低下する.連日投与 でも表皮の過敏性は殆んど一定である.ただし角層巾の 蓄積については,その可能性があると考えられる. 植松茂生(名市大):約十数年前,当教室の水野が,

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学会抄録

東京地方会第526回例会(研究会)(昭和50年3月5日,東京)

 円形脱毛症に対する後頭神経ブロック療法について

渡辺 靖,伊藤一成,永島敬士,松井恒雄(中央鉄道)

 円形脱毛症には肩凝り,頭重,手足が冷えやすいなど

の不定愁訴と思われる症状があるが,これらのうち肩凝

り,頭重などに重点をおいて観察すると大小後頭神経に

一致して圧痛があることが分った.そこで局所麻酔剤を

用いてそれら神経ブgツクを行うと,それの支配領域で

は皮膚温は1.5°Cから4°C近く上昇するものがあること

が分った.これによって神経ブgツクによる治療を始め

たが,多発型においては1.5~2ヵ月くらいで硬毛の発

生を見るようになった.これは昭36~42年の間に観察す

ることができた平均治療期間,つまりセファラソチソ,

抗ヒスタミソ剤による治療剤では単発型で4ヵ月から7

ヵ月,多発型で4ヵ月から1年6ヵ月くらいで硬毛が発

生するのに比べれば,はるかに早い治療期間であるよう

に思われる.全脱毛症においても1週1回のブロック10

回くらいで毛孔の開大,嚢毛の発生を見た.本療法の適

応は圧痛の強いもので,アトピー皮膚炎を合併していな

いものである.

 討 論

 小嶋理一(東京医大):圧痛点と病変部との関係は?

 渡辺 靖:① 圧痛点は三叉神経の開口部,大小後頭

神経に一致してみられるが,およそ病巣部が右にある場

合は右に圧痛点が強く,左にある場合は左側に強いよう

だ.② アトピー皮膚炎を合併するものについては,い

ずれ発表する機会もあると思うが,圧痛点は非常に弱い

ようである.

 吉田実夫(東大):① 経過はどのぐらい観察してい

るか.② 新生して来た頭髪の経過はどうか.③ 以前

発表された抗ヒ剤大量療法の長期観察の結果はどうか.

 渡辺 靖:① ブ・=・ツク療法を行った例では,発毛は

 1,5ヵ月くらいで硬毛を発生してくる.しかし多発型で

は目下25例くらいのうち2例に再発のあるものがある.

② 抗ヒスタミソ剤とくにペクアクチソの大量療法の薬

理作用は分っていないが,ステロイドの副作用よりはは

るかに副作用が少なく,再発も見られたが,ステロイド

379

よりはかなり少ないようであった.

 アナフラクトイド紫斑に対するDDSの使用経験 田

辺義次,千見寺ひろみ,岡本昭二(千大)

 第35回東日本連合地方会でDDSのアレルギー性血管

炎に対する効果について発表したが,特にアナフラクト

イド紫斑の症例を抽出し,それ以後経験した症例とをあ

わせて検討した.対象は37例である.ほとんどの症例で

投与翌日から新生を見ず,また紫斑は3日からおそくも

7日までに消失した. DDSは皮膚症状にはきわめて有

効であるが,下血や高度の蛋白尿症例には紫斑以外には

無効であった.

 討 論

 小嶋理一(東京医大):作用機序は?

 野波英一郎(関東逓信):DDSの漸減長期治療によ

り,腎所見も非常に改善された例を経験している.

 田辺義次:(小嶋先生へ)① 作用機序に関する説は

今述べたものが殆んどである.②ASLO値上昇は23

%くらいで, ASLO値と治療効果の間に特別な関連はな

いと考えている.(野波先生へ)① アナフラクトイド

紫斑に, DDSを長期投与した経験がないのでなんとも

いえない.② 合併する腎炎はまさにimmune complex

diseaseと考えられるので,皮疹の場合と同じような作

用形式を期待するのは無理かと思った.但し長期投与の

場合には,先生の例を説明しうる別な機作があるのかも

知れない.

 UVAによる乾癖の治療 井村 真,戸田 浄,小堀

辰治(東京逓信)

 血中のソラーレンの濃度は内服後1時間半で最高に達

し,約48時間でOになる.連日内服した場合には皮膚の

蓄積効果が問題になる.演者らは皮膚の光過敏反応を指

標にして,フラーレンの表皮内の推移をみたところ,2

~4時間をピークに比較的短時間で低下する.連日投与

でも表皮の過敏性は殆んど一定である.ただし角層巾の

蓄積については,その可能性があると考えられる.

 討 論

 植松茂生(名市大):約十数年前,当教室の水野が,

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380 学 会 抄 録

東京地方会で報告した一部を追加する. 8-MOPの組織

内濃度は,ラットでは経口投与後2時間では血清中より

表皮,真皮,肝の方がはるかに高濃度であった.またヒ

トに8-MOPを経口的に与え紫外線照射の影響を調べる

と,内服2~3時間後が最も強く,その影響は30時間後

屯尚かなり強く認められた.

 小堀辰治:(植松先生に)組織濃度をヒトでも行った

か.ヒトと動物で組織濃度は同じと考えているか.n

 佐藤吉昭(東歯医大):臨床的な問題として, 8-MOP

十UVA療法で, Kobtier型を含めて悪化した例はどの

位の頻度であったか.

 井村 真:局面型乾癖についていえば,すみやかに

軽快してゆくが, Erythrodermieに近い症例にphotoche-

motherapyをほどこし,増悪をきたしたことがある.症

例を選ぶことが必要と考える.

 戸田 浄:症例によって反応性は違うように考える.

Erythrodermie になっているような症例ではいろいろ期

待できないような反応を示すことがある.照射量は常に

紅斑量で水庖を作らないようにコントロールする必要が

ある.

 小嶋理一(東京医大):症例によって,有効,無効が

あり,ある程度症例を選んだ方がよい.

 強皮症のDNCB療法 植松茂生,水野信行(名市

大)

 PSSの患者3例にDNGB溶液塗布療法を行った.全

例に皮膚症状の著しい改善が認められた.8ヵ月観察例

では自・他覚症状のほか,血液化学,肺機能および肺線

維症も軽快した.他の2例で局所の組織化学的検討を行

った.その結果,治療7日目の真皮ではデルマタソ硫酸

およびコソド|=・イチソ硫酸A,Cは減少していた.シア

ル酸およびヒアルロソ酸は変化していなかった.

 顔面播種状粟粒性狼唐のテトラサイクリン療法 石川

英一,野口哲郎,久保川 透(群大)

 症例1 , 26歳男.昭47年4月頃より下眼険,鼻唇溝に

粟粒大ないし米粒大,淡紅色丘疹多発,ツ反(-).昭47年

7月から12月までINAH, sinomin併用,不変.昭49年

1月より,テトラサイク仁

内服で軽快.症例2 , 18歳男.昭47年8月頃より,下眼

険縁近くに紅色丘疹多発.顔面全体に拡大.ツ反(-).

昭47年9月より昭49年5月迄INAH等,抗結核療法する

も丘疹新生あり.昭49年6月から12月迄TC 1日1 g

内服で軽快.

 討 論

 吉田実夫(東大):① テトラサイクリン療法を行わ

れた根拠は何か.② 昭49年6月来,3例の本症にテト

ラサイクリン療法(1日750nig)を試み,1例のみ6ヵ

月後に皮疹の新生が抑制されている例を経験してトる.

本例は初診前4年間某医で皮膚結核の治療をうけていた

か無効であった.テトラサイクリソを使用しはじめた根

拠は,泗劃にも類上皮細胞肉芽腫がみられ,泗鼓に本剤

が有効なので,試みに使用したわけである.上記例はツ

反応陽性(11×14n)であったが,一方ツ反応確認用で

4×4日で陰性の症例では無効で,他剤に変えざるを得

なかった.

 石川英一:抗結核療法剤が無効であったことに加え

て,臨床的にrosaceaが本症に類似することから, te-

tracyclineを試用した.

 北郷 修(都立駒込):lupus miliaris は一般診断用

PPDまたは2,000倍旧ツベルクリソによっては約20%陰

性であるが,このような陰性例7例に100倍旧ツベルク

リン,または確認診断用PPDによるツ反を行なったとこ

ろ,6例まではツ反陽性であった.またlupus railiaris

にはINAHよりもエタソブトールの方が有効であるこ

とが多い.

 上野賢一(東京医大):① 組織像でfibrinoid de-

generation,角質の真皮内排出を強調されたが,病因に

関して何か考えがあるか.② テトラサイクリン1日l

gを長期間投与することは,副作用の点などからいかが

なものだろうか.

 石川英一:① 組織学的には, Hommasseが類上皮細

胞肉芽腫の近くにみられることについては,毛嚢由来の

前者が後者惹起の因になっているのではないかと考えた

い,② テトラサイクリン治療に当っては,1~2ヵ月

毎に一般臨床検査を行い,異常のないことを確認してい

る. 1年テトラサイクリソを投与した症例1でも全く異

常を認めていない.

 永井隆古(横市大):ツベルクリン反応は確認診断用

を用いたか.もし,そうでないとすれば,ツ反応陽性,

陰性は問題にしなくてよいと思われる.

 川村太郎(埼玉医大):ツベルクリン反応陽性で抗結

核剤が有効であったものと,今日報告の症例との間に組

織像に相違はなかったか.

 石川英一:供覧症例の組織像は本症に定型的と考え

る.ただし,抗結核剤の有効であった(?)症例との組

織像の異同については,現在検討中だが,それとと釘こ

抗結核剤が果して有効であったのか,あるいは抗結核療

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東京地方会第526回例会

法で非特異的に効いたのか,自然軽快したのかの点につ

いても検討する必要があると考えられる.

 山碕 順(東京):テトラサイクリソの効果云々につ

いては意見はないが,唯今の話から,本症の診断は常に

必ずしも容易でない感じをもった.

 小嶋理一(東京医大):① l.m.d.f.の病気をどういう

ふうに考えているか.② acne vulg. にテトラサイクリ

ソを使ったのと比較して効果の程度は?

 ツベルクリンによる接触皮膚反応 峯村協成,中嶋

弘,新井裕子,北村和子,毛利 忍,永井隆吉(横市

大)

 目的:モルモットおよびヒトにツベルクリン(ツ)接

触皮膚反応を起させ,この反応が接触アレルギー型か否

かを検討した.成績:ツ原液でopen patch testでモルモ

ットに遅延型反応強陽性, 33%ツ軟膏closed patch test

でモルモット,ヒトに陽性, \.2,%で陰性.病理組織学

的にはあるもの,ある部位ではprimary irritantderma-

titis様の像を(但し対照群は陰性),ツ反応型の像を,接

触アレルギー型の像などを呈しており,結論を出し得な

かった.感作,誘発の方法,抗原の強さ,性状などの解

析が必要かと思われる.

 討 論

 川村太郎(埼玉医大):臨床所見が一見皮膚炎様にス

ライドでは見え,皮内反応の場合と所見を異にするかに

見えるが,このことは反応の本質の相違によるものでは

なく,反応の場が表皮(ないし毛嚢上皮)との遠近の差

によっておこるものと考えるか.

 峯村協成:先生の考えの通りでよいかと考える.

 eoslnophjllc pustular foUlcuUtls におけるZrCl4

のパッチテスト 漆畑 修,水野惇子,石原 勝,安田

利顕(東邦大)

 36歳男,ジルコニウム製造工員と21歳男,電気器具工

員の2例のE.P.F・患者に15種のアレルゲンのほか,Z「

Cl,, LAS, I, KIのパッチテストをした. ZrCl.以下の

物質の陽性反応は皮膚刺激に関与するもので,第1例は

ZrC],, LAS, I貼布部,および絆創膏貼布部に,肉眼

的,組織学的に本症皮疹と一致する膿庖の発生をみた.

 討 論

 中山秀夫(済生会中央);① ZIの反応性を検討す

る際に,ZrC14以外のZrイヒ合物の反応性も検討する必

要があるのではないか?例えば,Zrの他の荷電のもの,

あるいはアンモニウム塩など.② 疾患は夏に増悪する

傾向はないか.

381

 漆畑 修:① 使用したZrCLはどうしてCIのつい

たものを使ったのかは,患者が現場で接しているものが

ZrC14であったから.② 皮疹は季節には関係ないよう

に思われる.

 村上通敏(北里大):① ZrCI, とeosinophilic pust-

ular folliculitisの病因と何らかの結びつきを想定できる

か.② Behget disease,Sneddon-Wilkinson の角層下膿

庖症の5%CuCI,などの金属抗原によるpatch被験部

位でも,本症と類似の組織反応をしばしば呈する.

 漆畑 修:ZrCLは単なる刺激性物質として作用して

いるように思われる.

 石原 勝:① ZrCIi, I, KIのパッチテスト成績は,

全て刺激反応と考えられた.従って,これらを本症の原

因物質として直結させることは勿論できない.② 但し

本症の患者は刺激物の接触により皮疹が誘発される可能

性があるということは考えられる.すなわち本症患者は

特異なskin d≒)ositionをもっていると推測する.

 安田利顕;ZrCI4貼布による反応は,この疾患の患者

では外からの刺激を受けると,毛異性にこの疾患特有の

反応が起りやすいことを示すものと解したい.

 太藤重夫(京大):いわゆるKobner現象と考える.

 アトピー性皮膚炎患者におけるリンパ球のsubpopu・

latlon (第1報) 小山啓一郎,石氏道夫,神田行雄,

笹川正二(慈大)

 アトピー性皮膚炎患者34例,正常人18例の末梢血リン

パ球のsubpopulationをT,B細胞のマーカーとして各々

羊赤血球pセット形成,補体レセプターの存在を利用し

分類し,正常人のT細胞82j±6.0%, B細胞23.3±6.2

%に対しアトピー性皮膚炎患者ではT細胞は62.6±6.9

%,B細胞は44.7±8 7 0/であり,T細胞は低値,B細

胞は高値である.また臨床症状の差や,アトピー素因の

差により, T,B細胞に各々差はない.なおリンパ球数は

正常人とアトピー性皮膚炎患者に差はみられない.

 討 論

 北郷 修(都立駒込):アトピー性皮膚炎の症例で

DNCB testが陰性例が多く,血清lgG値が正常範囲の上

限を示す症例も多いことと, T-cellのsubpopulationが

低下していて, B-cellのsubpopulationが高値を示すこ

とと関連があるように思われる.         トJ

 中山秀夫(済生会中央):比較された2群, atopic

dermatitisと, control群の年齢差は如何か.

 小山啓一郎:T-cell(%)は成人より乳幼児は多少割

合(%)が低いが,取り立てて問題にするような差では

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382 学 会 抄 録

ないと思われる.

 各種皮膚疾患における血清lgE濃度 田村多絵子,

服部 瑛,海老原俊子(群大)

 皮膚疾患320例(アトピー性皮膚炎144例,蒋麻疹31

例,汎発性常皮症23例, SLE 18例,天庖厨12例,乾癖

8例等)についてradioimmunosorbent test kid (Phar-

macia)にて血清lgE濃度を測定した.その結果アトピ

ー性皮膚炎では病状によりlgE濃度に差がみられ,小

児例では高値は少なく, 10―20歳台で高値が多かった.

モの他結節性蝉疹, SLE,類天庖厨等に高い例をみた.

 討 論

 服部 瑛:(永井先生に)同一患者でアトピー性皮膚

炎の病状が異なっている時点で,血中lgE濃度をそれ

ぞれ測定してみたが,差は認められなかった.

 北郷 修(都立駒込):prurigo nodularis の患者の血

清lgE値が高かったとのことだが,アトピーとprurigo

nodularisとの関係はあるのか.アタリカではatopic

dermatitisのprurigo type といわれているものがある

が,このtypeはどのよりなものであるか,御存じの方

があれば教示されたい.

 河島敏夫(都立大久保):IgE level と家系との関連

性?

 服部 瑛:兄弟例については倹索できなかった.

 野口義圀(帝京大):いずれもenergischの仕事に敬服

しているが, atopic dermatitisの免疫学的解析には組織

レベルにおけるリンパ球の同定,末梢血ではRAST法

によるspecific IgE の同定か大切だと思う.

 疵贅ウィルス抗体について 新村真人(東大)

 吏贅患者の約20%は,吏贅ウィルスに対する流血抗体

を保有している.この抗体か吏贅の治癒に関与している

かどうかについて,特に最近,吏贅の自然治癒傾向のみ

られたもの,免疫不全性疾患,あるいは免疫抑制療法に

よって,吏贅の多発した患者等の抗体保有率につき検討

した.

 討 論

 西川武二(慶大):正常人における抗体保有率は患者

ないし既往者と比べて如何.

 新村真人:正常といっても子供の頃に洗贅かあったか

もしれないか,いずれにしても一般人でも数%の陽性率

はあるようである.私自身イボの出来た記憶はないが,

1年程ウィルスの実験したあとで測定してみると陽性で

あった.

 opso・ヽJzed Candidaによるリンパ球免疫粘着(予

報) 野口義圀,河 陽子(帝京大)

 Candida albicansの胞子をヒト血清にincubateすると

opsonizeされ,胞子壁にIgG, IgM, C3が蛍光抗体法

で観察される.このものはin vitroで好中球に貪食(im-

mune phagocytosis)されるが,リンパ球に作用させる

と,リンパ球に前記の胞子か付着するのが観察される.

付着の状況は多彩であるが,付着しないもの,1~2コ

のもの,3コ以上のもの(いわゆるrosette形成)など

に大別されるが,その意義については検討を進めてい

る.

 討 論

 石原和之(国立がんセンター):同様の方法で,電顕

で観察した所,リンパ球の細胞膜に突起様物が認めら

れ,それにカソジダの胞子が附着しているのが認められ

た.

 中嶋 弘(横市大):同様な方法でザイモザソでもg

セットを作った.この細胞かB-cellであるか否かを検

討したく,細胞表面のlgを蛍光抗体法でみると,ロゼ

ットを作っていたザイモザソが離れてしまう.この理由

につきよい考えかあったら教示されたい.

 野口義圀:(河島先生へ) T-cell側の問題は本日の予

定ではなかったが, Mendes et al. C1974)の報告した

combined rosette形成の方法に倣って試みた.その所見

はE rosette.YAC rosette もできたか,EにもYACに

もつくリンパ球が稀にみられ判断に苦しんだ.(中嶋先

生に)C3 receptor でEACを分離する方法は良く判ら

ない.一般にはEをNH.Clで溶解しているようであ

る.EAの間で解離する場合は溺の低い条件も考えられ

る.

 cow snout およびcow hoof角層切片を用いた尿素

溶液浸漬実験 手塚 正(東医歯大),村松豊二郎,稲本

敏男(コーワ研)

 15μの厚さにクリオスタットで作成したcow hoof お

よびcow snout角層をデシケーター中で充分乾燥後,種

々の尿素液に一定時間浸潰し,再びデシケーターで乾燥

して,各々に保持された水分量,尿素量を測定した.

co恥7snoutでは著しい水分の増加がみとめられ,これは

標本中に附着した尿素量と比例した.

 討 論

 戸田 浄(東京逓信):ケラチソ線維より線維間物質

がより水分保持能かあるのか.尋常性魚鱗癖では線維閣

物質の発達が悪いので水分保持能が低下するのか.

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東京地方会第526回例会

 手塚 正:① water holding capacity はfibrous pro-

teinsにもかなりあると思われるが,むしろmatrix pro-

teinの糖質にあると想像している.② 電顕的には,先

生のいわれるように細胞内線維の増加が認められるとい

う報告があるが,これは細胞が圧縮されているために,

そのように見えるのだと思う.

 長島正治(慶大):ureaの角化症に対する効果は,

water holding capacity の上昇とkeratinocytesそのもの

に対する効果との2つが考えられるが,どちらを重視す

るか.

 手塚 正:臨床的に有効なのは角質剥離作用と,水分

保持能力の改善にあると思う.

 皮膚スポロトリコージスの病理組織学的観察 北村啓

次郎,原田敬之,西川武二,旗野 倫(慶大)

 昭37年より昭49年迄に慶大皮膚科で経験したスポロト

リコージス36例につき病理組織学的に検討した.モの結

果,基本的には非特異的慢性肉芽腫性炎であるが,それ

に加えて出血(鉄染色で確認),好中球の小膿瘍,毛細血

管の増生拡張及び浮腫,いわゆる細胞増殖圏などが高頻

度にみられ,定型的な三層構造は殆んど認められなかっ

た.組織内菌要素では遊離胞子か断然多いが,大小不同

があり,胞子の出芽又は破片の如き像を呈するものもみ

られた.

 討 論

 中嶋 弘(横市大):asteroid body の星芒状部は蛍光

抗体法でどのような所見を呈するか.

 北村啓次郎:蛍光抗体染色においてasteroid tissue

formの星芒体は全く蛍光を発しなかった,

 占部治邦(九大):限局型か85%というのはリンパ管

型に比してかなり高値であると思う.

 北村啓次郎:臨床的統計の病型で,限局性皮膚型が85

%というのは高値であると指摘されたが,その通りだと

思う.ただ,最近の報告では限局性皮膚型が漸増してい

ると述べられているので,臨床統計上,従来の報告と殆

んど同じと述べたわけである.

 皮膚疾患とASLO値 大塚秀人,柴田東佑夫,小

嶋理一(東京医大)

 各種皮膚疾患におけるASLO値,ASK値, Blue-ASLO

値について検索した.多形惨出性紅斑,掌踪膿庖症につ

いてはASLO値高値例が見られた.又ASLO値低値例

ではASK値の高値例も見られた.又非特異的なASLO

高値例についてはβりポ蛋白除去後のASLO値を検索

した.

383

 討 論

 長島正治(慶大):ASLO値が正常になっても皮膚症

状が改善しないこと,或いはモの逆もある.このような

ものを如何考えるか.

 大塚秀人:ASLO値測定は1回のみではあまり意味が

なく,かならず2回以上測定しており,又βリポ蛋白

の関与が大なのでβ-リポ蛋白除去後のASLO値を必ず

測定している.

 全身性アミロイド症とM蛋白-3症例の検討からー

池沢善郎,内山光明,中嶋 弘(横市大),塩之入 洋,

加藤 孝,三宅淳一,宮木一行(同第2内科),田中一男,

伊藤 章(同第1内科)

 自験例3例並びに「ア」症を認めていない多発性骨髄

腫のM蛋白を硫安分画で抽出し, Sephadex G-lOOにて分

子量を概算した.その結果から全身性「ア」症の有無に

かかわらず> B-J蛋白は恐らくL鎖のdimerで,時に

monomerを混じていることが示唆された.以上より自

験例の症例1,2はdimerのB-J蛋白で,症例3はIgG

のM蛋白であることから,これらM蛋白の自己抗体活性

の可能性が残され,この面からの「ア」症の発生病理の

検討も必要と思われる.

 討 論

 野口義圀(帝京大):免疫学的解析の面で努力された

貴重な報告と思う,討論の中でmyelomaとamyloidosisと

の関係や位置づけが問題となったが,臨床分類の上では

必ずしも古い分類に一致しないと思う.たとえば≒ht

chain disease をふまえimmunoproliferative disease と

いう過渡的なカテゴリーも,この場合必要ではないだろ

うか.

 池沢善郎:従来全身性アミロイド症の分類は様々だ

が,代表例としてあげると① 遺伝性アミロイドーシ

ス,② 続発性アミロイドーシス,③ 骨髄腫に伴うア

ミロイドーシス,④ 原発性アミロイドーシスがあり,

① は別として,従来③と④は皮膚の沈着,巨大舌等の沈

着パターンが同じで,肝,肺等に多い②とは違うとされ

てきた.一方,M蛋白血症という点からみると③と④の

間に同じ面があるが,今回報告した症例3は沈着パター

ンが続発性で,しかも続発性に極めて稀なM蛋白血症を

伴っていることから,続発性と原発性にも本質的違いが

ないように思‰従って全身性アミl=lイド症というワク

の中で,M蛋白血症という視点から再検討する必要があ

るかと思う.また,従来M蛋白のdetectが不十分な面

があり,その面の執拗な追求が求められるように思り.

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384 学 会 抄 録

 滝沢清宏(東大):多発性骨髄腫の診断根拠は,骨の

punched out lesion があればよいのか,異型形質細胞が

腫瘍性増殖であるか否かの決め手は?

 池沢善郎:多発性骨髄腫の診断は典型例についてはよ

いが,河合によれば骨髄所見で一応形質細胞の10%以上

の増多並びに形質細胞の異型性で診断してよいとのこと

である.しかしやはり骨の打ち抜き像がないとむずかし

いとのことである.しかし時にdiffuse lesion の場合,

osteoporosisの形をとることもあるという.全身性アミ

l=・イド症に伴う例では,概して,骨の打ち抜き像を呈す

ることは少なく,しかも,形質細胞増多の数も時期,部

位により10%台から30%台によく変動することが多く,

単なるmonoclonal gammonopathy (plasma cell hyper-

plasia)との鑑別が特にむずかしいと思う.ここでアミ

ロイド症との関連で興味あることは,多発性骨髄腫の中

では稀なBence-Jones蛋白型のものがかえってアミロイ

ド症では多いということであり,しかも,骨打ち抜き像

がないということと思う.

 血管炎,汎発性輦皮症患者における血中テストステロ

ン量 田村多絵子(群大)

 皮膚[al管炎(皮膚アレルギー性血管炎男5例,女

2例, O'Leary-Montgomery-Bransting症候群男女各1

例,皮膚結節性動脈周囲炎女3例,結節性血管炎女2

例), Burger病(男26例),汎発性常皮症(男2例,女14

例)の血中テストステロソ量をradioimmunoassayによ

り測定した.血管炎群患者は男子例で健康人(504.7±

173iig/dl)に比し低値を示した(385.7±231.9ng/dl).他

方汎発性掌皮症の女子例では健康人(33.5±9.7ng/dl)に

比し高値の傾向が認められた(41.7±17.9ng/dl).

 皮膚割断面の走査電顕による観察 内山光明,中嶋

弘(横市大)

 生検で得られた皮膚をグルクール・オスミウムニ重固

定後, 2, 3の割断法により皮膚断面を剖出,走査電頭

で観察した.真皮内の浸潤細胞を剖出することは技術上

の問題があるが,観察し得た範囲では,表面構造,大きさ

等によりいくつかの型に分類することはできた.しかし,

それらがいずれの細胞に相当するかは現状では推定の域

を出ず,光顕,透過電顕との比較,あるいは他の手技に

より今後検討をつづけることが必要であると思われた.

 討 論

 川崎 了(東京医大):カミソリによる試料割断の時

期を教えられたい.

 内山光明:カミソリ割断の時期は90%アルコールにお

くときに行う.なお割断の方法によって良い場所がえら

れないのは半ば運によるところが多いようだ.

 adnexal polyp of neonatal sldn の電顕像(第1

報) 佐藤昌三,平賀京子,西島明子,肥田野 信(東

京女医大)

 肥田野は新生児期の初期に主として乳彙にみられる小

腫瘍をneonatal pilar polypと仮称して報告したが(日皮

会誌,83 : 151, 1973),のちにこれをadnexal polyp of

neonatal skin と命名した(Brit. J. Dermatol. 92 : 1975,

in press).今回は本小腫瘍の表皮,真皮の構成要素を超

微構造的に観察したので予報的に述べた.詳細は原著と

して報告する.

 討 論

 上野賢一(東京医大):① 示されたケラチノサイト

は被覆表皮部のものか.② 新生児正常皮膚を比べて差

はあるか.

 免疫電顕による水庖性類天庖唐の研究 増谷 衛,小

川秀興,種田明生,庄司道子(順天大)

 68歳女に観られた典型例を蛍光抗体法直接法及び間接

法所見を本として免疫電顕を行った.結果は石倉がbul-

lous pemphigoid で述べる如く,電顕的基底膜が水庖底

となり得るものと考えられる.又直接法ではplasma

membraneとbasal laminaの間にlgGの沈着かある如

くに観えた.何れにしても固定法の改良が必要であり,

これによる結果は追って発表する.

 討 論

 西川武二(慶大);免疫電顕的な観察の下でlupus

erythematosusとbullous pemphigoid では免疫グgプリ

ン沈着部位に差異が見られるか.

 増谷 衛:免疫電顕によるSLEの直接法の観察はま

だ行っていないので,本症との比較は出来ない.

 色素細胞母斑治療後の再発機序について一巨大ならび

に局面性色素細胞母斑の再生色素斑に関する研究一 遠

藤幹夫,今川一郎,森嶋隆文(日大)

 巨大ならびに局面性色素細胞母斑病巣に主として剥削

術を施し,その再生色素斑を蛍光法(Falck & Hillarp)

にて観察した.その結果,再生色素斑は境界母斑に一致

し,これら境界部活性はエクリン汗管走入表皮突起に著

明であった.また,真皮内エクリン汗管壁にもメラニソ

産生細胞の出現をみた.以上から,点状集銕性母斑のみ

ならず他の色素細胞母斑の再発に際してもエクリン汗管

が重要な役割を演ずるといえよう.

 討 論

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東京地方会第527回例会

 上野賢一(東京医大):術前dermal nevi であったも

のが,再発時にjunction nevi の像を呈することの説明

は?

 遠藤幹夫:①未処置の母斑の病理組織学的所見は,ほ

とんど真皮内母斑を示したが,再生色素は境界母斑の像

を呈した.かかる変化は次の機序に基づく.即ち,エ

クリン汗管壁に樹枝状蛍光細胞が出現し,次いで円錐部

に著明に境界部活性を形成する.かかる樹枝状蛍光細胞

は,メラノサイトではなく母斑細胞そのものと推測して

いる.

 悪性黒色腫のBCG療法 内山光明,亀田 洋,峯村

協成,永井隆吉(横市大)

 悪性黒色腫の10例についてBCG療法を行った.9例

は外科的に腫瘍切除施行,その前後よりBCG経皮接種

を行った.口蓋原発で皮膚に多発性転移を来たした1例

は,局注,経皮接種,内服を併せて行った.8~12ヵ月

385

間観察した5例では, BCG接種にもかかわらず再発を

みたものが2例で,うち1例は死亡した.口蓋原発,転

移多発の1例も死亡した.残り4例はまだ観察期間が6

ヵ月以内と短いが現在のところ再発をみていない.

 培養メラノーマ細胞の形態について 高橋 久,金子

修,福田典子,添田周吾,田島マサ子,佐藤ひろ子(帝

京大)

 78歳男.足底に発生し,同側リンパ節転移を示したメ

ラノーマ症例より,組織培養にて樹枝状突起を有する神

経細胞様形態の腫瘍細胞を培養,この細胞はガラス面に

附着する不定形の単層培養細胞の形態に変化しj pile up

した部位も見受けられた.細胞内にメラニン穎粒を認め

た.培養液中のグルコースの量の変化で,この細胞は再

び樹脂状突起を生じ,メラニソ穎粒を多発した.継代培

養によって球形の浮游細胞に変化した.

東京地方会第527回例会(東京医学会と共催)(昭和50年4月19日,東京)

 Incontlnentla plgmentl (Bloch-Sulzberger)の1

例 大原国章(東大)

 生後26日女児.生下時より皮疹が存在.初診時,両爪

径~下肢,肢高~上腕にかけ,線状に配列する小水庖

と,墨流し様の色素沈着.水庖の組織像は,好酸球を含

む表皮内水庖と,真皮上層の細胞浸潤.辺縁部では細胞

問浮腫と好酸球の遊走.好酸球\2%, breast milk jaun-

dice以外には小児科,眼科,整形外科,口腔外科的に

異常所見なし.生後5ヵ月現在,軽度に陥凹する色素沈

着のみを認める.

 増殖性天抱腹の1例 紫芝敬子(東大)

 58歳男.外科医.家族歴,既往歴に特記すべきものな

し.現病歴,昭38年蝋径部にも膿庖出現,口腔内,肢

高,臍周囲に屯病変.昭42年頭部に膿庖を含む結節出

現,昭45年より頭部の結節は増大し超手挙大となる.

steroid内服.昭50年2月当科入院.頭部腫瘤部の組織

は好酸球を主とする表皮内abscess. suprabasal acantho-

lysis.血沈促進,頭部膿より細菌培養(十).蛍光抗体直

接法(十).蛍光抗体間接法×80.治療は腫瘤を含め頭皮

の大半を切除,中間層植皮.

 mixed bu皿ous disease と思われる1例折原俊

夫,石川英一(群大)

 41歳女パ

躯幹に湿潤傾向のある癈嫁性紅色皮疹出現,徐々に拡

大.初診昭49年12月9日.歯銀に廉爛面,躯幹・上腕・

大腿に胡桃大までの周囲堤防状に隆起した紅斑あり.一

部紅斑上に緊張性小水庖及び落屑をみる.白血球9,100/

mms(好酸球57%).組織学的に表皮下水庖で煉融解もみ

る.蛍光抗体法で病変皮膚表皮細胞問に7・グロブリソの

沈着が示唆された.経過:black light 照射で増悪し,

sulfisomezole 1日2 910日間内服後,水庖新生はなく

なった.

 paper money sl・h・加茂紘一郎,田村晋也(慶大)

 48歳男.昭49年夏,右上腕に毛細血管拡張が多数出現

し,漸次背部丿

56,総コレステl=・-ル134, BSP 14.3%,血中総蛋白

7.2g/dl, A/G 1.1, r-グロブリン26.2%,LDH 447, ISO-

zyme v. 35.7%,エストロン3.4μ幻dl,エストラジオー

ル4.3,エストリオール23.0等から慢性肝炎活動型乃

至肝硬変と診断し,この皮膚症状を肝に由来するpaper

money skin と診断した.

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386 学 会 抄 録

 討 論

 久木田 淳(東大):病名としてよいのか,症状名で

はないか.

 加茂紘一郎:clinical entityというよりは,やはり

paper money skin は症状名とした方が宜しいか.

 安田利顕(東邦大):paper money skin.red palm い

ずれもvascular spiderのvariantで,この例は肝硬変に

伴う種々のvariantを伴うvascular spiderというのか

よい.

 加茂紘一郎:paper money skin とvascular spider,red

 palm等は同列のもの.

 川村太郎(埼玉医大):この題名はentityというより

はvascular spiderと同列にかくべきものであろう.ドイ

ツ語のGeldscheinhautはしばしば用いられる用語と思

う.

 polkUoderma atrophica万”slvasculare (Jacobl)

の1例 石氏道夫(慈火)

 45歳女.昭49年2月頃,顔面両上腕に紅色丘疹出現.

漸次拡大し初診時には全身に紅斑及び色素沈着が細網状

に存在,一部に鱗屑を附着す.検査所見に異常なく,組

織では表皮の萎縮,基底細胞の液状変性,真皮上層の小

円形細胞浸潤,血管の拡張と周囲の細胞浸潤,深層皮膚

附属器の軽度萎縮等を認める.ステフイド内服・外用に

より紅斑,落屑は改善されるも色素沈着は不変.

 討 論

 旗野倫(慶大):通常Jacobi型のpoikilodermaは

皮膚筋炎を考えるべきである. CPK 28単位を示したこ

ともあって,筋肉の精査が必要であろう.

 石氏道夫:確かにCPKにはやや充進が認められる.

クレアチニソ, LDH, CPK等をさらに再検し, der-

matomyositisを検討すべきと思われる.

 猫より感染したMicrosporum canls による皮膚白

癖の家族内集団発生例 菅谷潤子,岡部省吾(同愛記

念)

 東京都江東区在住の一家族5名.昭49年12月初旬にも

らった猫より感染し,中旬より家族内に次々と皮疹を生

じた.皮疹は一見,斑状小水庖性白癖様,或は膿価疹様

であった.患者の鱗屑,猫の毛から同様の培養所見を得

た.サブロー培地にて,表面は白色絨毛で被われ中心部

粉末状で辺縁に向って放射状に凹溝.裏面は帯黄褐色.

鏡検により胞子壁の厚い10数個の房室に分れた多数の大

分生子,小分生子,結節器官,厚膜胞子を認めた.

 討 論

 岩重 毅(昭大):① M. canisの直接鏡検で他の

菌糸よりやや太い菌糸は認められなかったか.② 病猫

と患者のM, canis の大分生子の発育上に相違は見られ

なかったか.

 菅谷潤子:① 検鏡では認められなかった.② 相違

はみられなかった.

 sycosis trlchophytlca の1例 楠 俊雄,原田誠

一(日本医大),大野忠義(富士宮市立総合)

 54歳男.数日前,上口唇部の発赤腫脹,膿庖に気付

く.現症:上口唇部に膿庖,痴皮よりなる小結節2個あ

り,自発痛,圧痛さらに右I~V指爪の爪白癖も認め

る.トリ=1フィチソ反応(升),毛髪,膿庖,痴皮,爪さ

らに上唇紅の鱗屑の直接鏡検陽性,培養でいずれからも

T.rubrum を分離,組織のPAS染色Grocott染色で,

主として毛外性大胞子菌寄生を示す.治療:トリコフ4

チン注射18回,約2ヵ月で皮疹は完治.

 trichostasis spinulosa の1例 小林敏男,古賀道

之(佼成),吉田公乃利(中野区)

 19歳女.約10年前より両上肢仲側,大腿後面より膝関

節部,下腿後面にかけて,更に両前腕屈側および腰部に

半米粒大までの常色ないし暗紅色丘疹が生じ,一部黄色

調を持つもの,青黒色の内容物を透見するものも見られ

る.表面平滑.頂点に鱗屑をつけるものもある.組織所

見:数十本の毛髪が貯留する拡張した毛包周囲に結合織

が増生する.スソプ像:鱗屑をもつ丘疹より数本の毛

髪の萌出あり.

 顔面巨大血管腫の1例 田口修之(群大)

 11ヵ月女児.初診昭49年6月6日,家族歴に特記すべ

きことなし.満期産正常分娩.生下時体重3,400g.生

後1ヵ月で心室中隔欠損を指摘される.生後2日目に左

額部より左上眼険にかけて鶏卵大淡紅色の斑が出現,徐

々に色調を増し拡大.次第に隆起.初診時,紫紅色手挙

大,左服裂をふさく≒ 圧縮性顕著.ときに表面より出

血.血小板数53万,主としてコルチロステl=・イドの内服

および雪状炭酸圧抵により,皮疹は槌色,扁平化.

 討 論

 長谷川末三(都南総合):ステロイド剤の奏効機序に

ついて教示されたい.

 田口修之:いわゆるカサバッハ・メリット症候群では

ステgイドが著効を示すことが知られているが,(もち

ろん放射線療法を併用しないと難しいということもあ

るが),同じようにcavernous hemangiomaで血小板数

減少を伴わないもので乱 ステロイドを内服させて良

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東京地方会第527回例会

好な結果を得だのを, 1967年ZaremとE(%erton, 1968

年Fost & Esterly合わせて十数例報告があり,その後

も同様の報告がみられるので,ステロイドを用いた.

 angloblastomaの1例 長島典安(日大)

 5ヵ月男児,初診昭49年12月17日.左肩甲部~左肢高

部にかけて,圧痛ある数個の小結節を有する淡紫青色の

浸潤性局面を認め,組織学的には多数の毛細管を有する

境界明確な腫瘍塊としてみられ,腫瘍細胞はヘマトキシ

リソに淡染性で,大型,円形の核を有するものから,比

較的濃染性で紡錘状核を有するものまでの各段階の細胞

で構成され,核分裂はほとんど認めない.以上よりan-

gioblastoma (中川)と診断した.

 討 論

 川村太郎(埼玉医大):栓球及びフ4ブリノゲソ検査

の成績は如何か.

 長嶋典安:血液一般検査は血小板がやや増加している

以外は異常はみとめられなかった. fibrinogenの定量は

行っていない.

 solitary juvenile xantfaogranuloma 山本須賀

子,石川謹也(川崎市立川崎)

 生後4ヵ月男.生下時より右肩に米粒大の腫瘍あり漸

次増大してきた.11×13四大,高さ9叩の淡紅色,有茎

性,弾性軟の腫瘍で,表面に一部痴皮を付着する.黄色

調はない.他に腫瘍を認めず, cafe au lait spot や貧血

性母斑もない.眼科所見及び検査成績に異常はなくコレ

ステロール値も150lilg/(ll.組織学的に表皮は非薄化し,

表皮直下より真皮深層にかけて密な浸潤細胞を認める.

それらは好酸球及び多数のTouton型巨細胞を混じた

組織球よりなり,真皮深層に泡沫細胞を多数認める.浸

潤細胞はズダソ皿染色にて陽性.

 肉芽腫性口唇炎の1例 堀口峯生,富沢尊儀,山口淳

子,安西 喬(関東労災)

 31歳男.初診昭49年10月26日.家族歴:特記すべき事

なし.既往歴:昭47年上歯槽に炎症.昭48年「智歯」を

抜去.頭部外傷(-).現病歴:約2ヵ月前より原因不明

387

の上口唇腫脹出現し,持続している.現症:自覚症状を

欠く上口唇の著明な浮腫性腫脹で,軽度発赤,落屑を伴

う.触診で弾性硬.皺状舌,脳神経症状(-),歯科学的

に異常なし.組織:真皮上層の浮腫,上層~中層の細小

血管,リンパ管の拡張,小円形細胞,プラスマ細胞の浸

潤をみとめる.

 Paget現象を呈した前立腺部尿道癌の1例 大橋義

一,池沢善郎(横市大),松岡俊介(同泌尿器科)

 63歳男.初診昭49年12月26日.3年前膀胱の移行上皮

癌のため,膀胱前立腺全摘術及び尿路変更術を施行.約

6ヵ月前より外尿道口に一致して乾癖様皮疹出現.組織

にて表皮内に異型核を有する胞体の明るい大型細胞が細

胞巣を形成してみられた.細胞質はPAS, alcianblue と

もに陰性.前立腺部尿道および膀胱にも同様の腫瘍細胞

がみられ,前立腺部尿道癌に伴う外尿道口周囲性Paget

病としてよい症例と考えた.

 討 論

 池田重雄(埼玉医大):前立腺から経尿道的に,移行

上皮癌が亀頭上皮に迄lateral invasion したとすれば,

演題の通りで良い.但し,癌が一部真皮内に転移し,モ

こから亀頭上皮に波及したとすれば,むしろ前立腺癌の

epidermotropic carcinoma といいたい.

 大橋義一:そのように考えたい.近日中に泌尿器科へ

入院して手術予定.

 血管肉腫の1例 本田まりこ,田村義龍,笹川正二

 (慈大)

 78歳男.初診昭50年2月14日.約3ヵ月前に左頭頂部

に自覚症のない暗紫紅色半米粒大丘疹発生.外傷の既往

はない.漸次,増数増大し,5×lOcmの潰瘍形成.組織

所見:表皮をのぞく全層に著明な出血と腫瘍細胞の増生

がみられる.腫瘍細胞は明るい細胞で,明瞭な核小体と

楕円形ないし多角形の核を有す.異型核細胞,多核細胞

及び核分裂像もみられ一部管腔構造を形成する.鍍銀染

色で嗜銀線維の内側または外側に腫瘍細胞が増殖する所

見が認められる.

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388 学 会 抄 録

東京地方会第528回例会(昭和50年5月17日,東京)

 慢性膿皮症の1例 吉永和恵,青木 寛(都立豊島),

太田雍徳(大宮日赤)

 65歳男.約8年来左脊部に化膿性炎症を反復し,次第

に拡大,多数の痩孔を形成.検査にて糖尿病を認めた・

組織所見:真皮には結合織の肥厚と形質細胞,リンパ球

を主とする細胞浸潤,角質を入れる長大な表皮索或は表

皮嚢腫を認めた.鑑別すべきものにpilonidal sinus,hi-

droadenitissuppurativaがあるが,長期にわたる膿皮症

の存在により異常に発達した角化性上皮索が皮中に増加

したpyoderma chronica abscedens et suffodiensの特異

型と考えた.

 顔面に見られた湿疹様白癖の1例 岩重 毅(東京)

 8歳女.顔面,特に下顎部,鼻部,左頬部,前額の一

部に湿疹様の潮紅,落屑局面あり,一部境界明瞭の個所

あり,鏡検により糸状菌(十),培養によりT, asteroides

をえた.グリセオフルビンの内服と抗白癖剤の塗擦によ

り3週後治癒.

 スポロトリコーシスの1例 松島伊三雄,富沢尊儀

 (東邦大)

 41歳女.農業.初診昭50年3月6日.現病歴,昭49年

12月中旬,誘因なく前額中央部に‾半米粒大紅色丘疹出

現,10日後周囲に同様の丘疹発生.1ヵ月後これらの丘

疹増大融合し浅い潰瘍形成.組織は真皮全層に多核白血

球,形質細胞,シンパ球,組織球からなる慢性炎症性肉

芽腫の像を呈した. PAS染色で組織内菌要素認めず,

スポロトリキソ反応陽性.組織片からSporothrix schen-

ckiiを培養,同定した.ヨードカリ内服にて略治,

 スポロトリクム症の1例 山本須賀子,石川謹也(川

崎市立川崎),原田敬之(慶大)

 2歳女.約6ヵ月前に眉間に切創を受け,その1ヵ月

後に同部の硬結に気づいた.初診時,皮疹は18×19皿

大,小丘疹の融合した浸潤性局面で潰瘍化は認められな

い.自覚症もない.スポ9トリキソ反応陽性.組織学的

に真皮の比較的浅層に多数の巨細胞を混える炎症性肉芽

腫が認められ, PAS染色にて多数の菌要素を見出した.

菌培養によりSporotrichum schenckii と同定した.

 ブロム剤によるスポロトリコーシスの治療 中嶋

弘,内山光明,峯村協成,毛利 忍(横市大)

 6例のスポロトリコーシス患者に,ブロムカリおよび

プgムナトリウムをそれぞれ2.0g内服させて,ヨード

カリとほぼ同程度の効果がみられた.この事実はKleba-

noflfのいうMPO十halide十H202殺菌機構が治癒機転に

関与していることを臨床的に裏付けたものと考えたい.

 討 論

 占部治邦(九大):ブロム剤無効例について説明され

たい.ヨードカリと本剤との比較,副作用についてお尋

ねする.

 中嶋 弘:無効例は1例(39歳女,リンパ管型)あっ

た.効力はヨードカリよりやや弱いか,同程度と思う.

副作用は全く認めていない.

 chromomycosisの1例 泉二治子,斉藤隆三(北

里大),加藤知忠(相模原市)

 73歳女.4年前より右前腕伸側に境界鮮明な廉爛,

痴皮よりなる3.5×3.2CII1の病巣認む.誘因不詳.病理組

織は不規則な表皮肥厚と真皮上~中層に肉芽腫性炎症

像,組織中に菌要素を認める.培養にてRhinocladiella

pedrosoiを同定.治療は病巣辺縁から幅約l cmの健常

皮膚を含め,皮下脂肪織の深さまで切除し,中間層植皮

術施行.その後アンフォテリシンB点滴.術後約5ヵ月

の現在まで再発を認めない.

 風疹―成人例 小沢 明,松尾康朗,新妻 寛(東海

大)

 昭50年3月中句より1ヵ月間に,7例の風疹(17歳

~33歳,男5人,女2人)を経験した.臨床像は定型

的.風疹に対する補体結合反応を測定.ペア血清から抗

体価の上昇を確認した.現在,当地方に流行中.

 討 論

 林 紀孝(日本医大):都下町田市でも流行をみてい

る.成人例もかなりみられた.

 肥田野 信(東京女医大):1966年頃流行した風疹に

比して,① 紅斑の大小不同が目立つ,② 丘疹状のも

のがある,③ ロ内疹が屡々ある,④末梢血に異型リン

パ球が余り見られぬ等の特徴があるように思う.

 西脇宗一(関東中央):世田谷地区でも流行してい

る.軟口蓋粘膜に粟粒大のきらきら光る丘疹がみられる

ことが多い(13例中9例).

 小沢 明:①内疹について,2例にみられた.② 東

海大学での患者の初診する科について0小児は小児科

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東京地方会第528回例会

へ, ii)薬疹等と思い内科→皮膚科へくる場合もあっ

た.

 妊娠性庖疹の1例 野口哲郎(群大)

 27歳妊婦.妊娠2回にわたり皮疹の出現をみた.初回

妊娠8ヵ月で発症,9ヵ月で出産後,軽快.今回妊娠6

ヵ月で再発,腹部,下肢,上肢へ拡大.初診時,下腹

部,前腕屈側,下肢伸側に栂指頭大までの紅斑上に緊満

性小水庖が集族し,一部環状に配列する.ヨードカリ反

応30%陽性.白血球増多,黄体化ホルモソ高値.皮疹基

底膜部に免疫グロブリソ, C3(0沈着認めず.組織像は

表皮直下に顕著な浮腫と,組織球,好酸球の浸潤を認め

る.

 亜鉛療法が奏効した腸性肢端皮膚炎の1例 片山

洋,石川英一(群大)

 19歳男.両親は従兄妹同士.姉に同症あり,離乳期よ

り始まり肢端部位等に紅斑,廉爛,痴皮形成が出現し,

頭髪の完全脱毛や慢性の下痢をきたした.2歳10ヵ月の

時当科受診.皮疹と下痢はその後増悪と寛解をくり返

し,その都度エソテ|=・ビオホルムを内服したが全治する

ことはなかった.昭50年1月23日より硫酸亜鉛を1日

 300liig内服.数日にして下痢は止まり皮疹も軽快傾向を

示し,投与後3ヵ月現在皮疹の著明な改善が見られる,

 討 論

 小堀辰治(東京逓信):Znの作用機序はわかってい

るか.

 片山 洋:わかっていない.AE患者に合成食餌を与

え皮疹を悪化させることなく,キノリン系薬剤を減量し

ていたが,ある時皮疹が悪化し,いくらキノリン系薬剤

を増量しても皮疹は改善しなかった.その後合成食餌中

のZnが低値であることに気づいた.

 遠藤幹夫(日大):本症の9歳男児例に硫酸亜鉛400

mg/dayの内服を行い皮疹の著明な改善と毛髪,爪の再

生をみた.なお,血中亜鉛濃度は亜鉛療法開始前では20

μg/dl以下,1ヵ月後では135μg/dlであった,詳細は次

回報告予定.

 肉芽腫性口唇炎 大熊守也(東医歯大),関根玲子(同

第2口腔外科)

 26歳家婦.初診昭49年11月6日.既往歴:5年前より

虫歯.1年半前より上口唇の発赤,腫脹.自覚症状な

し.検査:血算,血液化学,胸部ン線,陰性. DNCB,

ツ反,陽性.脳波はsleep pattern, Kveim 陰性.組織

所見:境界鮮明は組織球性肉芽腫,軽度浮腫,プラスマ

細胞なく,サルコイドを思わせた.偏光顕微鏡陰性,2

389

日目よりり唇腫脹が軽減し始め,2ヵ月後消失した.

 ドサ」と鑑別か困難な症例.異常脳波は最初の報告.

 再発性浮腫結合性肉芽腫症 下重孝子,村上通敏(北

里大)

 昭49年2月頃より,上口唇に発赤及び腫脹を生じ,同年

5月頃より,頬部にも同様症状の出現.皺状舌,顔面麻

捧はない.口唇の組織所見で,肉芽腫性口唇炎Csarcoid

型反応)と診断.表在リソパ節触知せず.胸部レ線像,

BHL陰性. Kveim反応陰性.斜角筋のリンパ節生検正

常.眼科的所見なし.脳波正常.以上よりsarcoidosis否

定.ステロイド投与にて軽快.経過観察中.

 blepharitis gl‘anulomatosa 村上通敏(北里大)

 38歳女,初診昭50年1月28日.家族歴・既往歴特にな

い.初診の約2週間前より軽度癈岸のある眼険腫脹を生

じ,次第に持久性かつ他側に波及.神経麻疹,皺状舌,

表在リンパ節腫脹ない.血液一般,尿,肝機能,血清化

学,免疫グロブリン等正常.胸部XP,脳波異常ない.ツ

反応強陽性. Kveim反応陰性.病理組織学的所見:真皮

上層より皮下組織に及ぶ浮腫性変化,中層の血管拡張,

リンパ管拡張をみ,リソパ結節性の肉芽腫性炎症.

 土肥氏鱗状毛嚢性角化症の1例 永瀬憲子,酒井弥寿

子,青木良枝(東京女医大)

 28歳女.初診昭50年1月250.家族歴,既往歴に特記

すべきことなし.現病歴:2年前より,両替部に鱗状の

角化が出現.皮疹はしだいに,両腰部から,大腿屈側面

に拡大,自覚症状なし.現症:上記部位に鱗状の角化が

あり,その中心は毛嚢に一致し,小淡黒色点を認める.

鱗屑は中心部で固着,辺縁部で皮膚から剥離.組織所

見:全般に角層は肥厚し,毛嚢口上の層状角質増殖は,

辺縁部で遊離している.毛嚢口は著しく開犬し,角栓で

満たされている.毛嚢口に接した基底細胞層には,特に

メラニソ色素の増殖は認められない.汗口開口部も,角

栓で閉塞されている.

 keratoderma cUmactericum (Haxthausen)の

1例 星 健二,中村進一,宗像 醇(日本医大第1)

 59歳女.初診昭49年9月250.家族歴:特記すべき事

なし.既往歴:2~3年前より,リウマチ性関節炎及

び高血圧症にて内服加療中.経過及び現症:初診の約半

年前より,何ら誘因なく両足底の角質増殖を認め,種々

の外用剤を試るも病変は増大し,足底の略全面をおおい

亀裂を生じ,歩行困難を訴える.手掌に同様皮疹は認め

ず.血液及び内分泌検査に異常なく,既往歴及び組織検

査により,木疾患と診断vit A酸軟膏塗布により略治,

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390 学 会 抄 録

 討 論

 小堀辰治(東京逓信) ; keratoderma climactericum と

いう診断をわれわれはっけるのが大変むずかしい.閉経

後におこることが絶対的条件であるか.

 星 健二:原著の中でHaxthausenは閉経後数年と表

現しているのでそれに追従したkeratodes of the palms

and soles の名称を使用しているものもある.

 fo万lUcular mu万clnosisの1例 前田哲哉,田辺義次

 (千大)

 53歳家婦.既往に異常なし.約2年前から右頬部に

癈悍性皮疹あり徐々に拡大.現症:前頭部に鶏卵大の紅

斑浸潤性脱毛局面レ前額,口囲,右肩甲部,肩甲間部に

浮腫性紅斑隆起あり,一部では丘疹が混在.背部では掻

破痕が著明,一般検査では異常なし.病理組織変化は毛

のう皮脂腺系の著明な浮腫で,とくに皮脂腺構造は失な

われている.顕著なのう腫様構造はないが,全体として

諸家の報告に一致している.

 cutaneous endon・:etrlos万ls万 石川謹也,山本須賀子

 (川崎市立川崎)

 33歳女.3年前に第2子を分娩,その半年後位より発

生.後陰唇交連部に小豆大迄の数個の灰黒色の腫瘤を交

える11×14日大の皮下硬結あり,月経時特に疼痛なし.

切除,割を入れるに灰黒色の腫瘤部より黒色の液の流出

あり.組織:真皮内に大小多数の不規則の腺様管腔あ

り,大きな管腔には赤血球を充満するものが多く,管腔

壁は1層の分泌細胞よりなり,所によりそれが破壊し多

数の赤血球が結合織内に流出している部もある.管腔周

囲にはNovakがpseudoxanthoma cells と命名している

ヘモジデリソを貪食し,胞体の明るく見える組織球の集

団が一部広範囲に認められる.

 ミベリー被角血管腫 堀口峯生,富沢尊儀,山口淳

子,安西 喬(関東労災)

 20歳女.初診昭50年1月31日.家族歴,既往歴に特記

すべき事なし.3~6歳頃冬期凍唐に罹り易かった.現

病歴:6歳頃より指趾背側に点状紅斑出現し,後に一部

いぼ様に隆起してきた.自覚症状(-),増加傾向あり.

現症:指趾背側に半米粒大迄の暗赤色雀卵斑様の紅斑が

散在,手指の中節より末梢ではやや隆起して硬く表面角

化性で吏贅状,指趾の冷感(十).組織:角質増生(十).

乳頭層内いっぱいに毛細血管拡張(十).治療:電気凝

固.

 Kasabach-MerHtt症候群の1例 大塚藤男,新村

真人(東大)

 1歳7ヵ月女児.項,背部の巨大血管腫に加えて,

談寫,ソヶイ部にも血管腫がみられる.血小板はl~3

万.

 討 論

 犬塚藤男:① β-トロソのメリットは骨障害が少な

い.② 放射線照射後の通常経過lOOORad前後で血小

板の増加とともにtumorの消桔がみられるのが普通であ

る.

 median cervical cyst 関 真佐忠,宮里肇,浜

松輝美,池田重雄(埼玉医大)

 5歳女.約1年半前,前頚中央の小豆大腫瘤に気づい

たが,その後屡々排膿,廉爛庖皮形成を繰返す.現症:

前頚中央に9×6叩の表面廉爛せる肉芽腫様皮疹で,

周辺に癩痕,硬結を触れる. median cervical cyst と診

断,摘除.術時所見:頚部正中に痩管を有する22×7川

のト字状の嚢胞で,上端は舌骨下縁に附着し,下端は

m. sternohyoideus 内に遊離して終る.

 ケラトアカントームの2例 東 ちえ子,上野賢一

 (東京医大)

 症例1 , 72歳女,1ヵ月前から上口唇に皮疹生じ,組

織学的にKAと診断,軟レ線5-FU軟膏によるODTに

て完全に消退.症例2, 83歳女.2ヵ月前から老人性色

素斑の上に皮疹生じ,臨床的にKAと診断,軟レ線にて

消退.又,過去10年間の20例について統計的に観察.

 下腿に生じたkeratoacanthomaの1例 白岩照男,

山本達雄(都養育院)

 84歳女.初診昭50年2月28日.昭49年11月中旬,右下

腿前面に紅色丘疹出現.次第に増大し約3ヵ月後の初診

時18×15四半球状隆起性,辺縁堤防状,中央吏状腫瘤と

なった.癈年感(十).切除.組織:腫瘍は個角化,角真

珠を伴う煉細胞増殖からなり中心に角質を有し,辺縁で

はいわゆるLippenbildungがある.腫瘍細胞間浮腫が見

られ疎融解を呈する所もある.真皮にはリンパ球を主体

とする密な細胞浸潤が見られる.

 solitary reticulohistiocytoma の1例 都留紀子

 (東大分院)

 48歳女.約1年前右第Ⅲ指爪廓に何ら誘因なく米粒大

腫瘤出現.漸次増大.圧痛,自発痛共(-).初診時右第

�指爪廓に16×20×8川の多房半球状に隆起した腫瘤あ

り,表面平滑,光沢有り,弾性軟.下床への浸潤はない.一

般臨床検査成績異常なし.組織:真皮全層にわたり膠原

線維によって囲まれた明るい原形質と大きな核を有する

細胞とground glass様原形質を有する多核巨細胞よりな

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東京地方会第528回例会

る増殖巣.

 apocrlne cystadenomaの2例 今井清治,宮里

肇,浜松輝美,池田重雄(埼玉医大)

 症例1 , 22歳男.発症時期不明.右肢高に米粒大の有

茎性腫瘤.常色で弾性軟,臨床的にskin tagを疑って切

除.症例2 , 28歳男.約1年半前より左側頭部に示指頭

大の腫瘤,漸次増大.某医で穿刺され,血性液体の排出

をみたという.36×38×1511m,半球状に隆起した淡青色

乃至褐青色腫瘤,表面平滑,弾性軟で圧痛なく,下床と

は可動性あり.臨床的に血腫を疑って腫瘤を切除縫縮・

2ヵ月後も再発なし.いずれも組織学的にはapocrine

cystadenotna.

 pllar cystの1例 田嶋公子,関 真佐忠,浜松輝美,

池田重雄(埼玉医大)

 43歳女.5年前より頭頂部の小豆大以下の腫瘤に気付

く,徐々に増大し初診時(昭50年3月31日)には28×27

×7回の半球状に隆起せる弾性硬腫瘤となった.組織:

真皮中層に硬い角質を容れた嚢腫.その壁は数層の重層

上皮から成り,中心部に行くにつれ細胞が大型となり突

然核を失って桐密な角質に移行し,毛嚢の構造に類似.

一部に不全角化やkeratohyalin穎粒を有する細胞もある

ことからhybrid cyst と見倣される.

 陰部Faget病の1例 佐久闘将夫,滝沢清宏,石橋

康正(東大)

 54歳男.頑癖で当科受診したが頑癖略治後右陰のう下

部から会陰に連圏状の小ビラソ面が散在する皮疹を残

す.又左陰の似こは母指頭大の落屑性紅斑あり.組織で

定型的なPaget細胞の中に多量のソラニンを含む.この

細胞はDopa反応陰性, PAS及びalcian blue は弱陽

性.電顕上でPaget細胞はケラチノサイトと異なってト

ノフィラメソトに乏しく,その東の形成がみられない.

又ケラチノサイトとはデスモゾームで結合している.

 討 論

 小堀辰治(東京逓信):Paget cell は明らかにkera-

tinocyteと異なる細胞であるといってよいか.その最大

の相違はtonofilament所見であるとのことであるが,こ

れで鑑別できるか.

 佐久闘将夫:Paget細胞はケラチノサイトではないと

いうことである.

 石橋康正:Paget細胞内には微細構造上tonofilament

と一致するfilamentを認めているが,それはkeratino-

cyte内に見られるものと異なってtonofibrilという東

の形成を示さない.

391

 陰嚢に生じた基底細胞上皮腫の1例 小幡宏子,中内

洋一(三楽)

 46歳男.家族歴・既往歴:特記すべきことなし.現病

歴:皮疹は10歳代後半からあった?現症:陰嚢左前面の

基部近くに小豆大,類円形,弾性硬の皮表より平坦に隆

起する結節あり.表面中央が廉爛化し辺縁は部分的に

黒褐色を呈する.臨床的にkeratoacanthoma又はgiant

raolluscumを疑って切除したが,組織像は一部adenoid

type,殆んどの部はsolid type のBCEであった.陰嚢

のBCEは報告例も少く興味ある症例と考え報告した.

 皮膚転移癌の1例 宮崎和広,大熊守也(東医歯大)

 58歳男.初診の約1年前より多量の市販胃腸薬内服.

半年後,項部に栂指頭大の腫瘤を認める乱自覚症状を

欠くため放置,漸次数を増し,紅斑も出現したため来

院,現症:下顎部より頚部,上胸部及び項部より上背部

にかけ小指頭大より鶏卵大の紅色の腫瘤を認め,一部著

明に乳頭腫様増殖を示す.胸背部には紅色の浸潤性局面

を触れる.組織:真皮上層の著明な浮腫と多数の印環細

胞を認めた.腫瘍細胞はPAS陽性.

 lentlgo maligna melanomaの1例 早坂健一,

石原和之(国立がんセンター)

 60歳男.10年前より左足疏部に黒色色素斑あり,漸次

増大し, 5.3×2.6CI11の扁平な局面で中心部は軽度の硬結

があった.既往歴,家族歴に特筆すべきものはない.入

院時の血液生化学,血清,胸部X-Pに異常なし.手術

は中枢端へ5Cm離し,腫瘍切除,全層遊離植皮術,左蝋径

部リンパ廓清術を行ない経過は良好.組織:悪性黒子黒

色腫で,リンパ節転移はなく, PHA, lymphocyte cytoto・

xic test は正常者に近い値を示した.

 ビデオ患者供覧

 汎発性白癖菌性肉芽腫 磯山勝男,滝沢清宏,久本田

淳(東大),寺山 勇(茨城県立中央)

 45歳男,農業.昭38年腎臓病を指摘された.昭46年6

月,右手背に頑癖様皮疹を生じ漸次拡大.某医でSLE

を疑診され,昭48年11月より約2ヵ月間ステロイド内

服.昭49年2月頑癖様皮疹は消失し,全身に落屑性病変

出現.この頃右下腿に皮下結節ないし膿瘍が出現し漸次

増数す.高血圧症,腎不全,糖尿病を合併する.ツ反,

トリコフィチン反応, 5 % DNCB感作共に(-).皮下膿

瘍と全身所々の鱗屑より紅色菌を分離.

 討 論

 中嶋 弘(横市大):① 血液学的に異常所見はなか

ったか.② 現在残っている鱗屑性局面は菌陰性とのこ

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392 学 会 抄 録

とだが,如何なる皮疹と考えるか.③ 細胞性免疫不全

は基礎疾患(いくつかあげてある)とステロイド内服の

ためと考えるのか.(滝沢先生に)白癖菌性肉芽腫は細

胞性免疫不全性疾患に伴うものと考えたいが,従って,

malignant lymphoma などを更に検討する必要があるの

ではないか.

 滝沢清宏:体液性免疫異常や血液疾患(白血病や悪性

リンパ腫)を示唆する所見は得られなかった.治療中,

経時的に鱗屑内の菌要素を検索したが,本ビデオをとる

 (治療後)時点では検鏡・培養共陰性であった.菌陰性

後の落屑性変化の原因は不明である.

 Rud症候群 小川喜美子,斉田俊明,石橋康正,久

木田 淳(東大)

 iO歳男.生下時より魚鱗癖様紅皮症(非水庖型)あ

り.10ヵ月頃より身長・体重の発育遅延,4歳よりてん

かん発作出現.現在他に知能低下・幼稚症・洙儒・両側

停留宰丸および皐丸の発育不全・両側白内障あり.組

織:表皮は軽度に肥厚し不全角化を示す角層はうすく,

願粒層直上で剥離,血中テストステロソ・血中FSH・尿

中17-KS低値. HCG負荷によるテストステロソ, LH-

RH負荷によるFSH, LH は反応あり.

 melanozn万aに併発したvitiUgo vulgaris万井村

真,戸田 浄,小堀辰治(東京逓信)

 72歳女.昭43年に顔面,前腕,前胸,手背部に尋常性

白斑が生じ,昭48年,左凩径部リンパ節腫脹に気付き切

除,組織検査の結果メラノーマの転移と診断.原発巣は

左質部の色素斑と考えられ,組織学的にはlentigo mふ

igna melanomaの像を示した.白斑部は副腎皮質ホル

モソ軟膏ODTで色素再生を示している・

 討 論

 上野賢一(東京医大):① 白斑を併発した悪性黒色

腫は脱色,退縮することと,増大することといずれのこ

とが多いか.② 抗メラノサイト抗体を考えるとき,ど

のような検索か必要か.

 戸田 浄:皮疹の悪性度と白斑の発生,yラノームの

皮疹のregressionとは無関係と思う.抗メラニソという

ことでの特別な検索の仕方は私はよく分らない.

 川村太郎(埼玉医大):組織所見と臨床所見とから

melanoma with adjacent epidermal component of len-

tingo maligna pattern(McGuvern et al. Cancer 1973)

と必ずしも一致しないかと思われるが,対案として

compound nevusから悪性黒色腫が生じたといり考えは

如何か?

 戸田 浄:3型分類に入れるとすればlentigo ma-

Iignaに入ると考える.先に存在していた色素斑はcom-

pound type のnevusと思う・

 生後7ヵ月より発症したWeber・Christian病の1例

 山崎紘之,小堀辰治(東京逓信)

 生後7ヵ月,発熱とともに下腹部に紅斑,結節を生

じ,やがて自潰,癩痕治癒した.その後同様の症状を数

力月毎に前後9回繰返した.組織は脂肪織の軽度の壊死

と,多核白血球,リンパ球,組織球を主体とした,細胞

浸潤を示し,いわゆるfoam ceHを散見する.現在べ夕

ノサソソO.Snig,イムラソ30Dlgにて経過観察中.

 テレビ診断

 nevus depigmentosus syste”1万atlcus井村 真,

戸田 浄,小堀辰治(東京逓信)

 2歳男.家族歴に特記すべきことなし.生下時よりほ

ぼ左半側に顔面から上肢,下肢に及ぶ列序性不完全色素

脱失斑がある.拡大傾向はない.表皮剥離DOPA反応

陽性.左眼底の偽神経炎様変化を認める他,頭部X線検

査, EEG,脳シンチグラム,理学的検査で異常を認めな

し≒

 討 論

 安田利顕(東邦大) :nevus depigmentosusであるが,

眼にpseudoneuritisがあり.首が左に傾いているところ

は神経症状の有無について調査する必要がある.という

のはsyndromeであるか否かが,もう1つの問題点であ

る.

 堀 嘉昭(北里大):piebaldismとは白斑部にメラノ

サイトが存在するという点及び,白斑の分布が主として

片側にみとめられる点で鑑別されると思う.従って,本

症の診断は白斑内に島嶼状に正常乃至は色素増強する斑

がみられるが,皮膚科的にはnevus depigmentosus, そ

れに神経症状もあるらしいとのことなので,今までに発

表のない一つのsyndromeと考えたい.

 結節性粘液水腫 庄司道子,宮崎寛明(順天大)

 43歳男.販売業.既往歴,家族歴に特記すべきことな

し現病歴:約20年前機械的圧迫部位に一致して発症,

昨年7月急に増大腫張.自覚症状なし.現症:前頭,前

額,頬部,下顎部に扁平隆起せる大小の紅色結節,両側

下眼険頬骨部に浮腫状の腫瘤.全身所見,一般検査,甲

状腺検査,各も異常なし組織学的には真皮中~下層,

皮下組織にムチソ沈着HAaseで完全に消化される,

電気泳動では大部分HA僅かにChS-Bを含む.

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東京地方会第529回例会

 類天庖唐 荻原洋子(東京女医大)

 62歳男,主訴:全身の紅斑,丘疹,癈禅.初診:昭50

年3月10日.現病歴:昭50年2月半ば頃,両肘裔,両膝

嵩に発疹出現,加療をうけたが,全身に拡がった.昭50

年3月12日~4月21日まで第1『可入院.ジベルバラ色枇

糠疹として,種々治療を試みたが,良好とならず,4月

28H,両下肢に小水庖出現.組織で表皮下水庖,ジュー

リソダ庖疹状皮膚炎として,レダキソ服用するも,良好

とならず,水庖は大型となって来た.

 討 論

 石川英一(群大):ロ腔粘膜に弛緩性水庖あり.躯幹,

四肢にデューリング庖疹状皮膚炎のあること,組織学的

にpartial acantholysisを思わす所見のあることは,私達

が先にDuhring庖疹状皮膚炎ないしpemphigusと関連

0あるmixed哨)eとして報告したものに一致している.

私達の症例では,直接法でICにy-ダr=・ブリソの沈着

をみとめ,またシノミソで著効を認めた.結果を教えら

れたい.

393

 久木田 淳(東大):再発はないか.

 折原俊夫(群大):水庖の再発はないが,一時的に惨

出性紅斑が軽く出現したことがある.シノミソ2gを続

けているうちに消樋した.

 川村太郎(埼玉医大):① 肥田野教授の忌憚ない意

見は? ② 私もinternal disorders,特にinternal malig-

nancyを一番考えたいと思う.また第2位として菌状息

肉症その他の細網症も亦考えたいと思う.後者であって

稀に小水庖性ないし湿潤も見られる場合もあってよいと

思う.

 肥田野 信(東京女医大):(川村教授へ)悪性腫瘍

を含めた全身性疾患の湿疹様乃至水庖性類天庖盾型反応

と考えているが,湿疹様変化と水庖との関係も不明.

 安田利顕(東邦大):臨床的にはmalignant lymphoma

とくにmycosis fungoides と考えられる.水庖形成は

bullous pemphigoidの型で,これはmalignant Iymphoma

にしばしばみる.そのとき底部に異型性の淋巴球をみ

る.

東京地方会第529回例会(昭和50年6月14日,東京)

 pyodermla chronica abscedens et sufiFodlens

 (加藤)の経過中に有輯細胞癌を併発した1例 林 紀

孝(日本医大)

 73歳男.初診昭48年7月5日.約3年前,左脊部に化

膿性皮疹が初発,漸次周囲に拡大し膿庖あるいは皮下

膿瘍を形成し分泌物の排出量も増加してきた.初診時

臨床診断はpyoderrnia chronica abscedens et suffodiens

 (加藤)で,組織所見に悪性変化はみられなかった.然

るに約3週間後には局所の発赤腫脹疼痛は強度となり,

一部に噴火口状の隆起を認め,悪臭ある血性膿汁の排出

をみたので同部を生倹し,異常に増加した有煉細胞集塊

を認めた.真菌や結核菌は証明されなかった.

 討 論

 肥田野 信(東京女医大):piJonidal cyst ではなか

ったか.

 林 紀孝:pilonidal cyst は,正中部に近い部位に生

じ,この点,左腎部に多く発生することが多い, pyo-

dermia chronica abscedens et suifodiens(Kato)と異な

る.臨床像はよく似ており.種々論議のあるところであ

る.

 富沢尊儀(関東労災):本例の経過は3年で短かいけ

れども,慢性膿皮症が前癌状態で早く手術をした方がよ

いといわれるが?

 林 紀孝:手術療法が一般的と思われ,この説に賛成

である.しかし,本例は,初診より急速に進行し,全身

症状も悪化して,手術を施行し得なかった.

 吉田実夫(東大):① (肥田野先生に)診断につい

ては加藤型の膿皮症としてよいと思う. pilonidal sinus

~cystを3例経験しているが,全例脊部正中に病変がみ

られた.② 加藤か昭17年に本症の病名を提唱した時す

でに慢性膿皮症が前癌状態である可能性のあることを述

べている.昭49年の東日本連合地方会で本症の手術例を

供覧した時,いくつかの施設から木症の病変部に扁平上

皮癌の発生をみたという発言があった.又,統計によれ

ば125例中4例つまり約3%に発癌をみたという.即ち,

本症は前癌状態としてあつかうべきである.本症は中年

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394 学 会 抄 録

男子に多いとされるが,本症が難治のためで加藤の論文

に17歳男の例かおり,私も15歳男の例を治療中である.

本症を初期に診断しえた時には,簡単な切除縫合で軽快

し,経験観察を充分にすれば,大きい病巣を形成せずに

すむものと考えられる.

 毛唐様変化を呈したカンジダ症の1例 藤井弘人(群

大)

 51歳男.初診,昭50年1月24日.1ヵ月来,上口唇部

に紅色丘疹生じ,次第に増大,融合AB-PC,副腎皮質

ホルモソ軟膏外用にて,更に増悪,当科を受診.初診

時,鼻背,鼻翼,上口唇ほぼ全体に,大豆大までの淡紅

色の小結節が融合し,腫瘤様に腫脹,隆起を示し,表面

に粟粒大の膿庖が散見された.膿庖からStaph. epider-

midis,カンジダを証明し,抗生物質で効なし,1%ピ

オクタニソチソクワックス外用にて略治.

 討 論

 香川三郎(東医歯大):カンジダ症のとき,この場合

では毛唐様病変という場合には,毛のう内に菌糸性の増

殖をみとめた方が都合かよいと思うが,如何.カンジダ

性毛唐というものが本当にあるのか.

 藤井弘人:当科受診前に細菌感染と思われるものかお

り,抗生物質投与,ステロイド軟膏外用などで,二次的

にカンジダ症が誘発され,それが増悪し主体となったと

考える。PAS染色,生検組織片の検索で,菌要素を供

覧し得なかったがCandidaが,本症例の病因的役割を

なしていると考えられる.

 顔面に生じたスポロトリコーシスの1例 岩津都希

雄,苅谷英郎(千大)

 60歳農婦.初診昭49年7月30日.昭48年12月頃より前

額正中部に小丘疹出現.初診時,前額部,眉間,右鼻根部

に表面萎縮性の不規則な形の紅斑を認める.スポロトリ

キソ反応陽性.組織学的にPAS染色で菌要素を認め,

培養にてSporothrix schenckiiを得る.ヨードカリ内服に

て完治.なお本症例はDLEを思わせる特異な臨床像を

呈L,病型も従来の分類にはあてはまりにくく,苅谷の

分類でいう中間型に属すると思われる.

 スポロトリコージスの4例 廻神輝家(藤沢市民)

 最近1ヵ月間に4例を経験.全例スポロトリクム・シ

ェソキーと同定.即ち8合,藤沢市,左手背部の中心自

潰せる皮疹.62合,藤沢市,右足背部の結節.以上2例

は限局型,58♀,横浜市,顔面の鱗屑,軽度の萎縮をと

もなえる皮疹,その周囲にも増加,61♀,藤沢市,サボ

テンを刺してから約4ヵ月後右前腕に結節を生じ末梢に

向って更に2個出現,個疹との間に小豆大の皮下結節2

個を認める.以上2例はリンパ管型.

 スポロトリコージスの9例 小宮 勉(自治医大),菅

井昂夫(宇都宮市)

 59歳女,右前腕伸側,固定型.47歳女,右手関節伸

側,固定型.15歳女,右上腕仲側,固定型.5歳女,鼻

右側,固定型.65歳女,右前腕,リンパ管型.19歳女,

右頬,リンパ管型.12歳女,左前腕,リンパ管型.9歳

女,左頬,リンパ管型.6歳男.右下眼険,固定型.以

上9例,全例栃木県在住のスポロトリコージスを,昭49

年4月から1年間に経験した.組織内菌要素7例中5例

証明.スポロトリキソ反応6例中6例陽性であった.

 討 論

 香川三郎(東医歯大):問題の中間型であるが,固定

型のすぐ近くにみる衛星状の転移は,原病巣からの自己

接種と考えにくい所もあるので,リンパ管型としてよい

と思う.顔面に.くることが多いの乱局所のリンパ系の

複雑さを思わせる.

 岩津都希雄(干大):スポロトリコーシスの皮疹の拡

大の方法には,① 連続に拡大するもの,② 表在リン

パ管をつたわってsatellite lesionをつくり,これが融合

していくもの,③ リソ八行性に遠隔へ転移するものの

3通りがある.①,②は限局型,③はリンパ管型として

いるが,②,③のどちらにいれてよいか困惑する症例

は,苅谷の分類の“中間型”とした方が病型分類が円滑

にいくと思われる.

 園田節也(東京医大):リンパ管型で末梢方向に拡る

ものかあるが,これをどう考えたらよいか.

 香川三郎:原発巣より遠位に転移が起ることは時々あ

る,理由はわからないが,リソパ管などに病変かあれば

逆流が起ってもよいので,そのためのものでないかと想

像している.

 M.’:arlniunを分離した皮膚の非定型抗酸菌症の1

例 新井春枝(北里大),阿部美知子(同臨床検査部)

 36歳主婦.初診昭49年12月3 t3. 10月下旬熱帯魚槽清

掃にて右PIP背面に外傷,難治性潰瘍形成.現症:右

PIP背面に1.0×0.3ciii,暗紅色浮腫性腫脹,中央部潰瘍

有.生検材料の小川培地(25°C)に黄色,平滑なコロニ

ー形成.カタラーゼ,耐熱カタラーゼおよび光発色性試

験陽性,ナイアシンテスト陰性バ)・寸言言ぺ

INA 200mg/day 投与1ヵ月目に手背部に半米粒大皮下

結節3ヶ触知,肉芽の増大も認む. rifampicin投与に

変更後略治.

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東京地方会第529回例会

 小児皮膚筋炎の1例 久保川 透(群大)

 4歳女.初診昭50年2月19H.家族歴,特記すべきこ

となし.3歳の時顔面の発赤,続いて両側肘頭の潮紅を

指摘された.発熱,関節痛,筋肉痛はなかった.初診時,

両側上眼険,頬,肘頭,膝蓋に境界鮮明な淡紫紅色紅斑

を主とし,毛細血管拡張,色素脱失,粟粒大落屑性丘疹

が混在.臨床的に筋症状はないか,三角筋からの筋生検

で筋線維の大小不同,染色性不同とともに,筋電図で筋

原性の異常所見が認められた.

 石灰沈着を伴った皮膚筋炎の小児例 桑原京介,西山

千秋(口大)

 6歳頃から顔面の紅斑と筋力低下が発来し,2年前か

ら皮膚筋炎にて加療.筋力低下は改善するも,なお萎縮

性.眼囲から頬部および指背は紫紅色.右前額,耳介部

から耳後部はpoikiloderma様を呈する.5ヵ月前から

両膝蓋,両肘頭に広く石灰沈着が生じ,一部自潰.現

在,検査上,電解質, CPK,尿中クレアチソ, GOT, GPT

等の値は正常範囲であり, EMGでmyogenic pattern・

組織学的に筋に変性,血管周囲性細胞浸潤をみた.

 討 論

 石原 勝(東邦大):① 小児例には悪性腫瘍の合併

例の報告はないか.② 石灰化例の予後か一般に良い理

由.③ ASLO高値と本症とは無関係と考えるか.

 桑原京介:① 小児皮膚筋炎では悪性腫瘍の合併は私

の調べた所ではみとめなかった.② 本疾患の石灰沈着

は予後良好の徴候であり,他の膠原病,たとえばSLE,

竃皮症でも石灰沈着をみとめるが,これらの場合はSLE,

sclerodermaの進行化を伴っている点で相差をみとめ

る.③ ASLO値が高いのは扁桃腺炎の合併のためと考

えている.皮膚節炎とは無関係である.

 腸性肢端皮膚炎に対する亜鉛療法について 森嶋隆

文,遠藤幹夫(日大)

 9歳男.I歳8ヵ月以来,腸性肢端皮膚炎心診断にて

enterovioformの内服を継続するも寛解,増悪を繰返して

いた.亜鉛療法開始前の臨床像は下痢を欠く他定型的,

検査成績は血清亜鉛20μg邱以下を除き正常範囲.そこ

で,硫酸亜鉛400昭/口を投与したところ,1週後,亜鉛

値は103μg/dlと上昇するとともに諸症状は寛解傾向を

示し,1ヵ月後,亜鉛値は135μg/dlとなり,肢端や開口

部の皮疹は消失し,発毛は顕著となり,爪病変亀改善さ

れた.

 討 論

 石原 勝(東邦大):演者は血清亜鉛値の低下を本症

395

の発症要因として重視されたが,東大例は如何.

 森嶋隆文:腸管における亜鉛吸収障害が腸性肢端皮膚

炎の病因と考えたい.最近,本症の20歳女子例に対し,

血清亜鉛値を測定したところ,やはり,20μg/dl以下と

極めて低値であった.

 中林康青(東大):当科における最近の症例では,血

清亜鉛値は本年2月と4月と2回測定しているが,前回

は740μg/dl,今回は70μg/dlで目下再検中である.なお

正常値は80~113μg/dlである.

 胃腫瘍を伴っ/だbuUous penヽ:phtgold中山創生,

井上隆義(山梨県立中央)

 82歳男.2年前より癈掠性紅斑が躯幹に出没.1年前

頃より小水庖形成も伴う.躯幹,四肢に暗赤色紅斑と栂

指頭大までの小水庖~水庖多数あり,一部環状に配列

す.白血球増多,末梢血好酸球増加(47%)あり. KJ

貼布(-).組織学的に表皮下水庖. eosinophilic papillary

microabscess ( ―). prednisolone内服により皮疹軽快

す.胃X-Pにて胃体部に巨大腫瘤を認む.腹水多量に

あり.胃の自覚症状は認めなかったが吐血2回あり.胃

腫瘤の精査は行い得ず.

 討 論

 石原 勝(東邦大):ロ腔粘膜疹は?経過の点で内臓

悪性腫瘍合併例と異なる点がみられたか.

 中山創生:① 口腔内病変はみられなかった.② 胃

腫瘤を認めたからとして皮疹にはそれを有せざるものと

は差がないようである.

 ダリエー病の1例 大井千恵子,河村俊光(武蔵野赤

十字)

 40歳男.昭49年4月3日meningiomaで開頭手術をう

け,2日後より躯幹,四肢に癈捺を伴う皮疹を生じた.

4月19日初診時には,上記部位にほぼ毛嚢一致性の,米

粒大までの紅色丘疹が密または疎に散在し,一部落屑を

伴い,軽度の色素沈着も見られた.その後丘疹は一部疵

状の角化を示すものもあった.臨床および組織所見より

ダリエー病と考え,ビクミソA内服療法を行い,約6ヵ

月後には,胸部に少数の丘疹をのこして治癒した.

 討 論

 岩下健三(武蔵野赤十字):本例は私もみたが臨床

的,組織学的に明らかにDarier病としてよいが,本来,

Darierのいったものとはその発症,経過などがやや違

う.かといって,単にkeratosis follicularis とするのは

勿論当らない.強いていえば,「いわばDarier病」と

でもいったかよいかと思う.同様な例は京都時代にも経

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396 学 会 抄 録

験している.なおDarier病の血液ビ・A量は,私が北大

時代にしらべたところでは,時に不足例もみられたが,

大部分は正常であった,

 prurlgo plgmentosa の1例木村哲明,内藤全之

輔,中嶋 弘(横市大)

 22歳女.約5年前より背部,前胸部に癈塚の著しい皮

疹が繰返し出現する.皮疹は粗大網目状,やや隆起した

紅斑で色素沈着を伴う.臨床検査成績でGOT, GPT値

軽度上昇するも他の肝機能検査は正常域.ブ菌ト反強陽

性,ヨード貼布試験陽性.病理組織学的には中等度の血

管周囲性単核細胞浸潤と,メラノファージを認める.ス

テロイド軟膏外用で消槌しつつある.

 討 論

 長島正治(慶大):誘因と思われるものはなかったか.

症例は典型的なものと思われる.

 木村哲明:特に原因となるものは考えられない.

 pseudo-acanthosis㎡gricansの1例 田代博嗣,

林 紀孝(日本医大),大竹 稔,大津文雄(同第1内

科)

 17歳男.初診昭49年11月9日.10歳で体重増加がはじ

まり,11歳の時日大病院で皮膚の色素沈着を指摘され

た.その後体重はますます増加し初診時には113kgとな

った.頚部・肢窓部・陰股部には初診時色素沈着を伴う

表皮0乳嘴状肥厚がみられ,その組織像は,過角化と乳

頭腫様増殖を示している,内科的には,脂肪肝が証明さ

れたが,肥満の原因と思われる合併症はみられなかっ

た.下垂体および副腎機能に異常は認めず,

 討 論

 石原 勝(東邦大):肥満が原因か?治療は?

 田代博嗣:肥満だと考える.現在皮膚科的には施行し

ているが,内科的に脂肪肝の加療が必要と考える.

 先天性魚鱗癖様紅皮症(水庖型)の2例 安達一彦,

小山啓一郎,神田行雄(慈大)

 症例1,8歳男.全身ビマン性紅斑と角質増殖を主と

し一剖ビラソ性潮紅あり,四肢関節部に著明,症例

2, 22歳女,躯幹,四肢皮膚粗粧鱗屑附着し苔孵化有,

四肢関節部に著明.2例共生下時より紅斑水庖落屑をく

り返す.水庖形成は5歳,9歳で止む.家系内血族結婚

なく同様皮疹発生例もない,組織所見は共に著明な角質

堆積と表皮肥厚.有鯨層,穎粒層の細胞空胞化,浮腫,

穎粒変性及びケラトヒアリン穎粒の粗大化をみる.

 先天性血管拡張性大理石様皮斑 山口淳子,富沢尊

儀,如口峯生,安西 喬(関東労災)

 3ヵ月女児.初診昭50年4月17日.正常満期分娩.家

族歴,既往歴に特別なことなし.生下時より右上肢,下

肢に粗大な網目様または樹枝状の不規則なやや陥凹する

紫紅色斑あり.右上肢(患側)は左上肢よりやや細いが

両下肢の太さに差なく,四肢の長さにも差かない.骨

X-Pで長管骨に左右差,異常を認めない.組織学的に

は真皮特に汗腺周囲に血管の拡張と軽度増殖.血管周囲

に細胞浸潤.初診より1ヵ月後の現在,皮疹は著しく消

極している.

 pachyderi・operlostosis斎藤隆三(北里大),草野

英二(同内科)

 40歳男.8歳頃より“ばち指”.その頃より顔面の脂

漏,発汗過多.28歳膝関節痛にて某病院で精査を受けた

際,脛骨の骨膜肥厚を指摘さる.本年精査の目的で当病

院受診.ばち指,顔面の脂漏,前額部の黄色小丘疹,前

額及び眉間に深い皺あり,掌紋の角質増生はない. cutis

verticisgyrata(-).病理学的に皮膚のムチソ性浮腫と,

顔面の脂腺増殖肥大をみる.家系内に本例を含め13例の

同症あり.本例は第19回日本リウマチ学会総会にて発表

した.

 サルコイドーシスの1例 山口全一(日天)

 64歳女.初診昭49年5月10日.既往歴,家族歴に特記

する事なし.現病歴:約4年前に顔面,約1年前に右脊

部,右下肢に自覚症のない皮疹を生ず.現症:上記部位

に大豆大から母指頭大までの紫紅色或は褐色の結節多

発.リンパ腺腫大C-).検査成績:PPD(-),DNCB感

作(-),BHL(-),虹彩炎(十),心電図に完全右脚

ブロック(十),Kveim (十),PHA正常範囲内.病理組

織;真皮~皮下組織に大小の類上皮細胞肉芽腫形成,異

物(-).

 討 論

 石原 勝(東邦大):心に病変をみとめる症例の予後

は一般に不良と考えられるか.

 山口全一:サルコイドーシスの剖検例には心病変が死

囚となる症例が多く,予後は不良であると思われる.

 第二期梅毒疹の1例 武沼永治,中村進一,堀 好道

 (日本医大第一)

 23歳男.初診昭50年3月1日.昭49年4月頃女性との

接触機会をもち,同年9月頃より両手掌,足底,陰の

う,陰茎に丘疹及び鱗屑を伴う紅斑が出現したといい

STS定量で320倍,TPHA定量で5120倍の高値を示し

た.現在合成ペニシリン内服で加療中,内服後約2週間

で発疹は消腿した.

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東京地方会第529回例会

 討 論

 石原 勝(東邦大):最近の梅毒疹は本例のように緩

庫を認める例が少くないと演者がいわれたが,戦前ある

いは戦後みられた梅毒疹には癌徐例は時にみられたか.

 中村進一:最近の梅毒は庫み等,自賞症の加わるのが

特長となっている.

 単発性肥肝細胞症の1例 比留間政太郎,人交敏勝,

石本光秋(東医歯大),村田英雄(同小児科)

 3ヵ月男児.生後1ヵ月頃,右上腕外側に小指頭大

の色素斑に気づく,外力で,その部に水庖形成をみる

が,顔面発赤,ショック症状等なし.皮疹は19 ×15田楕

円形の淡黄褐色の色素斑で,中央はやや隆起し浸潤を触

れる.組織では,表皮直下より真皮中層におよぶ方形の

肥畔細胞の腫瘍状増殖を認める.血算,血液生化学,尿,

骨X-P,骨髄穿刺,何れも正常.

 討 論

 西脇宗一(関東中央):組織はraastocytomaに似て

いるようだが如何か

 比留間政太郎:臨床的には浸潤をふれるやや隆起した

斑で, mastocytomaとは異なる.組織学的にもraastocy-

tomaとは異なる.          し

 Letterer-Siwe病の2例 赤城久美子,寺山 勇(茨

城県立中央),泉 紀子(同小児科)

 第1例,5ヵ月男児.生後3日日より躯幹に紅色丘疹

発生,出没繰り返すも軽決せず.同時期より陰股部に紅

斑,廉爛,小潰瘍が発生.3ヵ月目より歯旛腫脹,膿

付着.4ヵ月目より右眼球突出.肝3.5横指,腫辺縁触

知.骨欠損なし.臨床検査成績ほぼ正常.組織学的に真

皮上層に大型組織球様細胞の密な浸潤.一部表皮内に侵

入.ステ9イド内服で経過観察中,第2例,7ヵ月男

児,生後5ヵ月より躯幹に紅色丘疹,陰股部に小潰瘍形

成.10ヵ月で死亡.

 討 論

 石原 勝(東邦大):本症の如く難治性の場合,コル

チコステgイドの大量療法あるいは化学療法について如

何に考えられるか.

 赤城久美子:治療についてはsteroid大量療法の報告

はなく,むしろvinblastin sulfateに よる著効例の報告が

多い,患児はdecadron syiup 1噌 投与したか,かなり

大量の方と思う.

 eccrine hidrocystoma万の2例 石川謹也(川崎市

立川崎)

 第1例,51歳女.4年前より顔面に発生.季節的に変

397

化はない.眼険及びその周囲に2皿u大迄の丘疹の多発が

認められ,透明で一部のものは青色調を帯びている.穿

刺すると液の排出を見る.第2例,50歳女.4~5年前

より発生.発汗を強く訴える.眼険及びその周囲,上口

唇に多数の透明な丘疹が認められる.組織学的に2例と

も丘疹部に一致して真皮内に壁の極めて扁平化した嚢腫

が1個見られる.なお,その周囲にも拡大した汗管が多

数存在する.内容としてPAS陽性の物質が僅少に認め

られる.

 討 論

 野波英一郎(関東逓信):発生原因について?

 石川直也:汗の汗管内貯溜によって生じたものと思考

する.

 eccrlne spiradenoma 篠島 弘,露木重明(関東

逓信)

 42歳男.6週前に右大腿後面中央部にある有痛性皮下

腫瘤に気づく.圧痛があり,放散痛,自発痛,癈嫁は欠

如する.腫瘍はやや堅く皮下との癒着はなく,球形,ア

ズキ大で皮膚面よりやや隆起し,青味をおびる.真皮下

部から皮下にかけ厚い結合織性被膜に包まれた腫瘍塊

が1コ存在する.腫瘍細胞は淡染大型核と濃染小型核を

有する2種の細胞よりなり,偽管状,索状,小葉状の配

列をとる。Kersting ・Helwig 組織分類のtype A に属

す.

 pilar cyst の1例 木村俊次(慶大)

 60歳男.昭49年3月初診.約10年前から出現し徐々に

増大.現症:右側頭部に弾性軟,胡桃大,下床と可動性

ある暗赤色ドーム状腫瘤あり.被覆表皮と一部癒着し,

粘伺性物質の排出(十).組織像:重層扁平上皮の壁をも

つ嚢腫で,間質側の細胞は小型でpalisade pattern を有

し,内腔に向うと共に大型,明調化して好酸性均質な嚢

腫内容に移行.壁の一部に細胞間橋と好塩基性穎粒(十).

大型明調細胞はPAS陽性.嚢腫内容はSudan black

B, Kossa陽性.

 討 論

 森岡貞雄(口火):pilar cyst の典型と考える.ただこ

の特有な角化は正常毛包では見られず, catagen毛包(内

毛根鞘の消失している)にのみこれと同じ角化か認めら

れた.従ってpilar cyst はcatagen~telogen期の外毛根

鞘細胞の角化と一致すると考えている.

 石灰化上皮腫の1例 大原国章(東大)

 16歳女.右肩に32×23皿の弛緩性,淡紅褐色の軟らか

い水庖があり,その中に凹凸不整の20×14mの黄白色調

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398 学 会 抄 録

に透見できる弾性硬の結節がある.上記診断で切除.結

節の組織は典型的.

 討 論

 野波英一郎(関東逓信):臨床症状が特異であるが,

臨床的に本症と診断された根拠は?

 大原国章:臨床診断は昨年6月埼玉医大,本年1月日

大の報告がある.水庖形成の機転は機械的外力の刺激に

よるものかと思う.水庖上よりの触診で,凹凸不整に触

れ,黄白色調に透見できる.

 池田重雄(埼玉医大):水庖形成を伴った石灰化上皮

腫の臨床診断は,①水庖底に石灰化上皮腫に個有のかた

い腫瘤塊がふれる,②水庖膜上から,屡々石灰化上皮

腫の割面乃至表面でみられるような乳白色,穎粒をもっ

たゴツゴツした腫瘤塊が透見される等による.自験例

は多発例であったので,ことさら臨床診断が容易であっ

た.

 山碕 順(東京):昭8年頃東大教室で経験しだ慢

性の肉芽腫”を,その上に伴った症例を所謂ボトリオミ

コーゼを合併せる石灰化表皮腫の1例として皮膚科雑誌

に記載したことかある.

 keratoacanthomaの1例(BLM使用)平賀京子

 (東京女医大)

 65歳女.昭49年3月眉間部の打撲1週後腫瘤発生,急

速に発育し1ヵ月後当科初診.入院時5×5×3cm不整三

角形,弾性硬,周囲発赤し,中央に大豆大の深い潰瘍を

認めた.全身状態良好.検査成績:好酸球増多.組織所

見:真皮深層まで比較的異型性の軽い腫瘍細胞浸潤.治

療としてbleomycin 15nig隔日筋注行い, 225liigで癩痕性

治癒.副作用なし.1年後の現在再発なし.

 討 論

 野波英一郎(関東逓信):bleomycin局注による治

験例の報告はあるが,全身投与による治験の報告はあ

るか.

 上野賢一(東京医大):① ブレオ全身投与の経験は

ない.② この例ではブレオ局注・軟レ線少量照時も一

つの選択たり得よう.

 レ線取扱者にみられた角化性ならびに前癌性病変につ

いて 辻口喜明,石川豊祥,森嶋隆文(日大)

 67歳男.薬剤師.27歳頃より,7年間,X線照射や透

視を手伝っていた.34歳頃より,左手背や顔面等の被曝

部に紅斑や角化性病変が出現したのに気づいていた.左

手指背は全体に発赤し,処々に,現状皮疹が多発混在.

左頬や右外眼角部に老人性角化症様病変が散在.組織学

的に手背や顔面の紅斑は前癌性病変に一致し,疵状皮疹

はこれを欠く.これら皮疹に5-FU軟膏ODTを施行.

紅斑は容易にびらん化するも現状皮疹はこれに抗した.

 討 論

 池田重雄(埼玉医大):前癌性皮膚病変に対する治療

法の一つにL cryotherapyがある5-FU軟膏ODTより

も容易で効果が確実である.①雪状炭酸圧抵療法だけ

でも1~2分,2サイクルで充分に治る.②液体窒素の

スプレーだと,より操作が簡単,効果も確実である.

 野波英一郎(関東逓信):旧いレ線照射部に老人性角

皮腫やボーエソ様変化など多彩な悪性変化が見られる

が, actinic senile keratosis として一括して考えられな

いか.

 辻口喜明:右外眼角部の角化性紅斑と左手背の紅斑は

組織像は異るが同一機序によって発生していると推測さ

れる.しかしこれら各々の異なる病変を一括して一つの

病名でいうのは困難である.

 上野賢一(東京医大):放射線による前癌状態の組織

像は極めて種々であり,一つの名で表現することは難か

しいであろう.

 papillo”`万atosis cutis carclnoldes Gottron の1

例 伊藤正俊,幾瀬伸一,安田利顕(東邦大)

 46歳男,30歳の時慢性乳嘴状潰瘍性膿皮症が足背膝宮

部にあり癩痕治癒,5年前より癩痕外側部には小指頭

大,常色の硬い丘疹を生じた.皮疹は漸次拡大し,うず

ら卵大となる.その後2年間は特別変化なく,3年前よ

り皮疹再び漸次拡大,86×70回の帯黄赤色の円板状に隆

起する腫瘤で表面は現状ないし乳嘴状である.悪臭もあ

る.臨床諸検査成績は異常ない.組織学的所見は典型的

であった,治療は中間層植皮術を施行.再発を認めな

い.j

 討 論

 野波英一郎(関東逓信):本邦では上野賢一先生の報

告があるので,何か追加を願いたい.

 上野賢一(東京医大):本症の腫瘤型の典型と思う.

 intrae万ipidermal eplthello;・naを伴ったBowen cai>

clnomaの1例 樋口道生,寺尾 尚(横浜中央)

 66歳男.3年前より,右大転子上後方に自覚症を欠く

皮疹が出現.絆創膏を貼るのみで放置していた,昭50年

1月8日,増大してきたため当科受診.大きさ2.2×2.4

cm弾性軟,乳頭状に隆起,表面はビラソ,出血し細穎粒

状を呈する腫瘤1ケ.組織学的に表皮増殖は著明,個角

化,澄明細胞など細胞異型性あり,配列不正.病巣辺縁

Page 21: 学会抄録 - drmtl.orgdrmtl.org/data/086060379.pdf · 石川英一:① 組織学的には, Hommasseが類上皮細 胞肉芽腫の近くにみられることについては,毛嚢由来の

東京地方会第529回例会

部では, intraepidermal epithelioma の像をみとめる.

又,腫瘍細胞内に弾力線維をみとめ,大型のエオジソ淡

染の細胞はPAS陽性であった.

 顕著な胃転移を示した外陰部悪性黒色腫の1例 斎藤

光子,高橋秀東,上野賢一(東京医大)

 63歳女.外陰部に手挙大黒色腫瘤.入院時より空腹時

胃痛を訴え,レ線,胃カノラより転移を認む.剖検では

全身に遠隔転移があり,特に腹腔内転移が顕著であっ

た.胃転移は,剖検で1/4程度にみられるが,生前より

確認される例は比較的めずらしい.

 morphea-Ilke basal cell epltbelloix・aの1例大

滝倫子(東医歯大)

 51歳女.初診の約2年前より上腹部中央の色素沈着に

気付き放置,漸次拡大.初診時,上腹部に22mx33回ほ

ぼ楕円形,わずかに扁平隆起した硬い浸潤性局面を認

399

め,表面は黄白色光沢あり,中央部に褐色の色素沈着を

有す.組織所見では円形ないし横に配列した索状の基底

細胞腫細胞巣が真皮に認められ,一部の細胞巣内にメラ

ニソ穎粒の増加がある.又,jラノファージが真皮内に

散見される部位も認められた.切除後,再燃なし.

 最近経験した有韓細胞癌の持続動注例 早坂健一,石

原和之(国立がんセンター),柳田英夫(田浦共済)

 65歳男.大工.数年前より主に右第1,2指,指間に

腫瘍形成あり,某医で治療うけるも軽快せず増悪. BLM

5 mg/day にてA. collateralis ulnaris proximalis より持

続動注施行,総量150ilig軽快し,腫瘍は脱落.動注後,

第1,2指切断,植皮術施行,特に副作用はみられなか

った.光顕写真,電顕写真を合わせて経時的に観察した

ので報告した.