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昭和40年11月20ほ 学会抄録 岡山地方会第113 1回例会 (昭和39年5月24日,於岡大) 特別講演 皮膚及び粘膜のカンジダ症 福代良一(金大) 武田克之(徳大):女性の成人型陰部カンジダ症のス ライドと思われるが.女性の成人にかかる症例が見られ るか. 福代良一:糖尿病の婦人の外陰,腔および乳房下には しばしば見られると成書に記載がある.私はまだ経験し ていな・い. 山崎正雄,(広島市):爪廓炎はカソジダ+細菌感染, 自癖菌十細菌感染によって腫脹と疼痛か起るのではない か.その証拠にはマイシリソ等の抗生物質で腫脹と疼痛 力yとれる場合がある. 福代良一:そういう場合,抗生剤を使った経験がまだ ないので,検討したいと思う. 香曽我部芳夫(岡山市)zトリ=・マイシンの他,よい 外用療法を御教示願いたい. 福代良一zピオタタニソ液または普通の抗白癖菌剤外 用がよい. 一般演説 症例3題 癈津を伴なえる小児の列序性苔癖様母斑, 陰門萎縮症.フランベジア様梅毒 地土井襄璽,松尾克 彦,竹中生昌(広大) 吉田彦太郎(岡大)こ発疹の初期に丘疹があったか. Leverの本ではlichen sclerosus et atrophicans とは 伺一の疾患として扱っているようであるが,最近のDer- mat. Wschr. の報告では別症と考え,丘疹の有無,肛 門周囲への拡大等を鑑別点としてあげているようであ る. 松坂義孝(広島市):わたくしたもの診療所で経験し た顕症梅毒は.37年に6, 38年に71, 39年は5月末で20 である.38年度のそ,れを,性器に発疹を有する他の疾患 と,30日間における頻度を比較すると,淋疾14.3人.他 の尿道炎14人.梅毒6.7人.庖疹4.6人,尖圭コソジロ 849 マ2.9人,軟性下m 2.3人,薬疹L7人,その他となる. 39年度は増加の勢がややおとろえたように感じられる が,よそではいかがであろうか. 須賀清次郎(松山市):前回松山地方め梅毒について 報告したが,38年末より本年にかけて漸次減少したよう である. 副腎皮質ホルモン使用中に発生した帯状庖疹雀部将 (広島市民) 副腎皮質ホルモソ剤使用中に発生した帯状庖疹n例 (昭和29年7月より39年4月まで)につき報告したが,特 に重症例が多いとは思わない. 追加 福代良一(金大):私の教室では帯状庖疹,とくに眼 の附近にできた場合,初期にステロイドを使って炎症と 疼痛の軽快したのを見た例が2丿3ある.次に,紅皮症 にステロイド療法を行ない,その経過中に帯状庖疹を発 した例を最近みた. わが外来における爪白癖について 山崎正雄(広島 市) 私は昨年700例の爪白癖患者に接する機会を得,これ に国産グリセオフルビンを使用し,その治験について今 年1月広島地方会において発表したが,今回は本年度5 月までに来院ぜる患者約100例についてスライドに,より その臨床像並ぴに浸苛性加里標本の顕微鏡写真を供覧す る.水虫を主訴とせる患者108名中爪に菌糸を証明せる もの96名88.8%でそのうち第5趾爪に変化のあったもの 92名95.0%であった.すなわち健康保険のグリセオフル ビン使用基準には爪,頭部,体の大部において菌糸を証 明せるものに限るとの規定があるが,少なくとも診療所 を訪れるいわゆる水虫患者には熱心に検索すればかがり の高率に爪より菌糸を証明しグリセオフルビン投与可能 例のあることを強調したい. 患者供覧 サルコイドーシス 野原 望(岡大) 49才主婦.右頬に.貨幣大硬結性暗紅色斑,所々に表在

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昭和40年11月20ほ

学会抄録

岡山地方会第113 1回例会

  (昭和39年5月24日,於岡大)

          特別講演

 皮膚及び粘膜のカンジダ症 福代良一(金大)

 討 論

 武田克之(徳大):女性の成人型陰部カンジダ症のス

ライドと思われるが.女性の成人にかかる症例が見られ

るか.

 福代良一:糖尿病の婦人の外陰,腔および乳房下には

しばしば見られると成書に記載がある.私はまだ経験し

ていな・い.

 山崎正雄,(広島市):爪廓炎はカソジダ+細菌感染,

自癖菌十細菌感染によって腫脹と疼痛か起るのではない

か.その証拠にはマイシリソ等の抗生物質で腫脹と疼痛

力yとれる場合がある.

 福代良一:そういう場合,抗生剤を使った経験がまだ

ないので,検討したいと思う.

 香曽我部芳夫(岡山市)zトリ=・マイシンの他,よい

外用療法を御教示願いたい.

 福代良一zピオタタニソ液または普通の抗白癖菌剤外

用がよい.

          一般演説

 症例3題 癈津を伴なえる小児の列序性苔癖様母斑,

陰門萎縮症.フランベジア様梅毒 地土井襄璽,松尾克

彦,竹中生昌(広大)

 討 論

 吉田彦太郎(岡大)こ発疹の初期に丘疹があったか.

Leverの本ではlichen sclerosus et atrophicans とは

伺一の疾患として扱っているようであるが,最近のDer-

mat. Wschr. の報告では別症と考え,丘疹の有無,肛

門周囲への拡大等を鑑別点としてあげているようであ

る.

 松坂義孝(広島市):わたくしたもの診療所で経験し

た顕症梅毒は.37年に6, 38年に71, 39年は5月末で20

である.38年度のそ,れを,性器に発疹を有する他の疾患

と,30日間における頻度を比較すると,淋疾14.3人.他

の尿道炎14人.梅毒6.7人.庖疹4.6人,尖圭コソジロ

849

マ2.9人,軟性下m 2.3人,薬疹L7人,その他となる.

39年度は増加の勢がややおとろえたように感じられる

が,よそではいかがであろうか.

 須賀清次郎(松山市):前回松山地方め梅毒について

報告したが,38年末より本年にかけて漸次減少したよう

である.

 副腎皮質ホルモン使用中に発生した帯状庖疹雀部将

 (広島市民)

 副腎皮質ホルモソ剤使用中に発生した帯状庖疹n例

(昭和29年7月より39年4月まで)につき報告したが,特

に重症例が多いとは思わない.

 追加                 ‥

 福代良一(金大):私の教室では帯状庖疹,とくに眼

の附近にできた場合,初期にステロイドを使って炎症と

疼痛の軽快したのを見た例が2丿3ある.次に,紅皮症

にステロイド療法を行ない,その経過中に帯状庖疹を発

した例を最近みた.

 わが外来における爪白癖について 山崎正雄(広島

市)

 私は昨年700例の爪白癖患者に接する機会を得,これ

に国産グリセオフルビンを使用し,その治験について今

年1月広島地方会において発表したが,今回は本年度5

月までに来院ぜる患者約100例についてスライドに,より

その臨床像並ぴに浸苛性加里標本の顕微鏡写真を供覧す

る.水虫を主訴とせる患者108名中爪に菌糸を証明せる

もの96名88.8%でそのうち第5趾爪に変化のあったもの

92名95.0%であった.すなわち健康保険のグリセオフル

ビン使用基準には爪,頭部,体の大部において菌糸を証

明せるものに限るとの規定があるが,少なくとも診療所

を訪れるいわゆる水虫患者には熱心に検索すればかがり

の高率に爪より菌糸を証明しグリセオフルビン投与可能

例のあることを強調したい.

           患者供覧

 サルコイドーシス 野原 望(岡大)

 49才主婦.右頬に.貨幣大硬結性暗紅色斑,所々に表在

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性リンパ節腫大.それらの組織像は壊死を伴なわない類

上皮細胞結節形成.レ線像で肺門腫脹あり.血清7-グ

ロブリン増加.マントー陰性.経過すでに3年余.

 討論

 福代良一(金大):1)供覧された患者はサルコイド

ーシスの診断基準の2つを満足させている.従って,

Kveim反応が陰性でも診断に間違いないと思う.2)サ

ルコイドーシスの治療には一般にステロイドが使われ,

一応は効くが,再発は防ぎえない.

 地土井襄璽(広大):64才女性.10年前から両側頬部

に皮下結節を生じたが自覚症状はなかった.切除後段々

と紅味を増して来た.東京大学皮膚科を受診しサルコイ

ドーシスと診断された. Kveim反応陽性. KM, neois-

cotin,PAS, hydrocortisone 局注等有効であったし,テ

ラシソが著効を呈した.今後経過をみてみたいと思う.

 診断例(リール黒皮症?) 野原 望(岡大)

 34才男.約1年前より,両耳前部に始まり,次第に両

頬I,側頚,両肩,両上勝(主に仲側)に波及した網状紫

褐色色素沈着,軽い落屑を伴な緊 自覚症なし.臨床

検査正常.生検像は表皮萎縮,軽度の基底層液状変性,

組織学的色素失調.

 討論

 福代良一(金大):臨床的にリール黒皮症と色素性苔

癖を考えたが,組織学的にぱ前者をとりたい.

 広渡隆治(岡山市):臨床像,組織像よりmelanosis

を考える.なおポマード使用との関係はどうか.

 ウェーバー・クリスチアン病 吉田彦太郎(岡大)

 18才女子.家族歴:母は慢性募麻疹に罹患中.既往歴

:特記すべきことなし.昭和38年11月,左上腕皮下に軽

度の圧痛ある小結節を生じ,約1ヵ月後自然に消槌.同

年12月初旬より右腰部,仙骨部に同様結節を生じ,38°C

までの発熱を伴なう.以後発熱とともに結節の数を増す

も,個疹は巌痕化することなく消失す.末血像,肝機

能,萍機能に異常なく,腹腔鏡は肝表面に軽度の変性を

認める以外著変なし.皮膚生検像は皮下組織の脂肪肉芽

腫性変化を示すも,血管壁の変性,泡沫細胞,巨細胞等

は認められない.しかし肝組織所見は血管壁の変性,小

葉中心部の肝細胞の変性,わずかな脂肪滴の増量等がみ

られた. Rothmann-Makai脂肪肉芽腫症との異同を論

ずるも,発熱,肝組織の変化等を考慮してウェーバー・

クリスチアソ病と考えた.

日本皮膚科学会雑誌 第75巷 第11号

 追加

 地土井襄璽(広大):33才女性.12年前より発熱と同

時に皮下に有痛性結節を生じ.切開により2,3週のう

ちにおさまる.中には切開に.よらずして治るものもあ

る.6年前にこのような発疹を次々と生じていたが,こ

こ数年間は治まった状態におった.昭和39年5月再び右

上腕部に示指頭大の皮下結節を訴えて来院,現在組織検

査中である.他に血沈値の促進.貧血. A/Gの低下が

見られた.以上Weber-Christian病の 1例を追加し

た.

 討論

 福代良一(金大):症例にっいては演者の意見に全面

的に賛成である.広大の追加例に対し,切開して出たも

のは純粋に膿汁であったか,組織融解物であったか,お

伺いしたい.

          スライド供覧

 疵贅状表皮発育異常症 浅越博雅(岡大)=

 第1例:42才女子.血族結婚なし.父に同様の皮疹

(少数). 18才頃,両側前腕,下腿に丘疹発生し徐々に増加

し,四肢全体,左側腹部にも発生.各種治療に抵抗.第

2例:34才男子.家族に同症なし.16才頃両手背に小豆

大までの丘疹発生,徐々に増加し,四肢,顔,頚,躯幹

に及んだ.皮疹は両側とも腕豆大までの扁平な丘疹で淡

褐色,散在或いは集籐,一部で融合する.組織学的には

いずれも有辣細胞の著明な空胞変性を示した.

 Dermatitis Factitia 中北 隆(岡大)

 34才,農家の主婦.精神分裂症気質にヒステリー性格

を加味した性格変位が基盤となり,恵まれない家族生活

からの逃避として,約4年間にわたり,強塩酸をみずか

らの皮膚に塗布し,顔面,四肢,躯幹に次々と奇怪な壊

死,潰瘍巣を作り,遂にはいわゆるマゾヒズムに至った

dermatitis factitia の1例を報告し,若干の考察を加

えた.

 討論

 福代良一(金大):本例における行為が何か目的をも,.

つてやったものかとヅ

すれば診断の通りであると思う.われわれの所で最近み,

た症例は,特別な目的なく, reurotic excoriation に属

するものであった.

 偽性黒色表皮腫 戸田雅子(岡大)

 扁平紅色苔癖の1例 小野公義(岡大)

 汗管腫 月野木清徳(岡大)

 色素性薔薇疹 大森純郎(岡大)

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昭和40年11月20日

 25才男子,16才男子の2例を報告した.いずれ4)原因

不明.

スポロトリコーシス 吉国彦太郎(岡大,川崎病院),

山口 司(川崎病院)

 皮膚-リソパ管型に属する52才女(雑役婦,岡山県都

窪郡早島町在住)の1例を報告した.現病歴:昭和38年

秋,誘因なく左手関節部に皮下小結節を生じ,間もな《

潰瘍化す.約1ヵ月後中枢に向う索状硬結及び小結節を

生じ,やがて潰瘍化す.臨床検査所見:血液像,内臓機

能検査は正常.スポロトリキン反応強陽性.組織所見:

巨細胞を混ずる慢性肉芽腫性炎症,菌要素はPAS染色

を行なうも見いだし得ない.菌学的所見:組織片の一部

をサブロー葡萄糖寒天培地,牛脳心臓惨出液葡萄糖寒天

培地に接種し,スポロトリクム菌を認めるとともに,同

菌の二桧注を確認し,マウス腹腔内接種陽性`を認めた.

なお本症例は山陽地方における第6例に相当する.詳細

は臨床皮泌, 19, 359 (昭40)の原著参照.

 良性皮膚リンパ腫症 野原 望(岡大)

 50才男子.左耳前部の無痛性小指頭大半球状結節.表

面平滑,弾力性硬,常色.摘出,その組織像はリンパ球

型細胞及び細網細胞様細胞の浸潤,処々に濾胞様構造を

みる.末血の好酸球は2%.再発をみず.

 ケラトアカントーム 野原 望(岡大)

 65才男子.左鼻入口部下に,つ約1ヵ月前より発生し

851

て,急速に増大(雀卵大)した硬い腫瘍.表面に小凹寓

を多数認める.表皮の索状増殖,角質嚢胞形成,角質で

充たされた表皮の陥入像などを生検にて証した.

 追加

 地土井襄璽(広大):61才女子,左上眼瞼部に小さい自

覚症状のない腫瘤を生じた.径1.5cm.軽い褐色で中心

部に陥凹を認めた.組織学的に検索し上記診断と思われ

た.詳細は原著に譲る.

 毛嚢虫症 山崎正雄(広島市)

 昨年来ニキビ様発疹を顔面に生せる鉄道職員,32才男

子の局所より,検鏡によりdemodexを証明し,顔面の

写真と虫体とを供覧した.

 梅毒疹4例 山崎正雄(広島市)

 最近初期硬結を訴えず,第2期疹として来院せる患者

4例の写真を供覧する.いずれも血清反応陽性で,皮疹

を見る時必ず梅毒を考えて診ねばならぬと自省する次第

である.

 討論

 福代良一(金大):1)毛嚢虫は注意して調ぺると,

痙療様皮疹,特に鼻尖のそれに良く見つかるように思

う.

 2・ 最近の顕症梅毒のうち,第2期疹では掌詰の乾癖

様梅毒疹をしばしば見るが,この型が昔よりも多いので

はないかという感じがする.

岡山地方会第114回例会

   第32回総会

  (昭和40年2月21日,於岡大)

 Keratoacanthomaの1例 ふ野公義(岡大)

 51才男子,工員.26才の時マラリア罹患.1ヵ月半

前,右鼻翼に半米粒大小結節を自覚,次第に増大,軽い

圧痛の他に自覚症状なし.初診時,腫瘤は半球状,柵指

頭大,淡紫紅色,表面平滑であるが中心部に血痴あり,

他に軽い落屑,毛細血管拡張あり.硬度弾性靭.表在

性リン腺腫脹なし.全剔出,全層遊離植皮術を行なっ

た.組織所見は,中心部の著明な角質増殖,表皮の著明

な増殖,乳頭延長あり,林細胞は膨化,少数の異常角化

細胞を見るが,核分裂像なく,異型性少ない.真皮に小

珊型細胞浸潤著明.術後3ヵ月半で再発徴候なし.

 フォアダイス病の2例 服部昌利(岡大)

 25才及び17才男子.いずれも1,2年前から上口唇の

黄白色丘疹を認めている.自覚症状なし.既往歴でとも

に腎炎に罹患.発疹はいずれも上口唇層紅部で,黄白色,

粟粒大,皮表よりわずかに隆起する丘疹で,帯状に集

銕,硬度は正常.第2例では他に陰茎包皮内板に同様な

皮疹を認めた.組織所見では,真皮に皮脂腺が多数見ら

れ,あるものは表皮と排泄管様構造をもって連絡する

が,その部にも髪はない.第1例では電気焼灼後,卵胞

ホルモソ軟膏外用により改善を見た.

 スポdトリコージス(四国第1例)浅越博雅(岡大)

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 四国地方でのスポロトリコージスの第1例(皮膚-リ

ソパ管型)を報告したレ患者は61才女子,農業,香川

県在住.昭和39年U月初句,.誘因なく右第4指背に発

赤,隆起性硬結を生じ,間もなく潰瘍化,続いて12月中

旬,右腕に末端から肩に向って順次結節を多発.スポロ

トリキソ反応陽性.培養で多数の皺壁を有する褐色,湿

潤性の集落を作り,検鏡により定型的なSporotrichum

schenckii ,を認めた.

 皮膚弛緩症の1例 中北 隆(岡大)

 25才女子.両親従兄妹同志.生来発育遅延し,歩行障

害あり.約4年前から,頚,躯幹の皮膚が弛緩し,徐々

に増強し,皺嚢を作って突出部が下垂して来た. トルコ

鞍狭小.内臓強度下垂,結腸に憩室,肋軟骨の骨化,左

眼に梨地眼底,副交感神経緊張完進等の異常を認めた.

組織像では弾力線維の退化,断裂,巻転,石灰沈着を認

める.以上より本邦第8例目の皮膚弛緩症として報告し

た.

 追加

 亀田隆徳(愛媛県立中央):皮膚弛緩症に合併,左膀

胱ヘルニアの症例を追加.該患者は浮腫を伴なって皮膚

弛緩を認める外,膀胱に7,8個所の憩室を認め,その

うち凩蹊部ヘルこヤ状に膨隆したものを腸ヘル于ヤと誤

診された.

 討論

 吉田彦太郎(岡大):頚部皮膚に見られた毛孔珍開様

の変化は,本症の場合見られるものか.

 中北 隆:皮膚弛緩部に毛孔拡大を見る例かおる.

 尋常性狼唐の1例 中北 隆(岡大)

 12才女子.2才頃,結核性髄膜炎.約4年前から左頬

部に疵贅状小結節を生じ,徐々に拡大し.1年後に貨幣

太となり,一部湿潤し痴皮形成,一部では癩痕化する.

周囲への浸潤は軽い.-氏反応強陽性.組織所見で巨細

胞内にシヤウマソ小体が認められた.

 色素性茸麻疹の1例 植木宏明(岡大)

 1才男子で生後4ヵ月頃より癈禅性丘疹に始まる褐色

斑,浸潤を四肢,躯幹に認める.発育は遅れ気味で,し

ばしば風邪に罹患.他に先天性心室中隔欠損症,肺動脈

狭窄症,肝牌腫大,低y-globulin血症を伴なう.血液

像,出血時間に異常なし.病変部皮膚にmast-cell及

びヒスタミソ値の著明な増加を認めたが血中ヒスタミソ

値は正常であった.治療としてシノメこン親水ワセリン

塗布にて経過観察中.病因的には遺伝的な要因或いは先

天性の網内系欠陥の想定されるウソナ型の1例を報告し

日本皮膚科学会雑誌 第75巷 第U号

た.

 弾力線維性仮性黄色腫 月野木清徳(岡大)

 最近の4年間に当教室において弾力線維性仮性黄色腫

の9例を経験し,このうち2名の患者について,本症の

系統的全身疾患との立場から入院精査を行たった.2例,

とも眼底に網膜色素線条を認めたが,胃腸管の透視或い

は胸部撮影においても大動脈その他血管系における臨床

的変化は殆んど認め得なかった.

 疵贅状表皮発育異常症 大森純郎(岡大)

 最近経験した3例につき,組織学的に以前から開題と

なっている有麻細胞の変性の形,すなわち透明変性か空

胞変性かを検討した.症例は全例とも血族結婚なく,家

族内発生なく.第1例は16才男子,4才頃発症,顔,四

肢,手背及び足背に,第2例は42才女子,17才頃発症,

四肢,手背及び足背に,第3例は34才男子,16才頃発症

顔,頚,肢寓,躯幹,四肢,手背及び足背に扁平疵贅状

発疹を見るが,年令,家族歴,部位から必ずしも典型で

ない.その結果,第1例のみ透明変性,他の2例は空胞

変性の像を認めた.組織所見より診断を考慮すぺきかど

うか症例を追加して検討したい.

 石灰化上皮腫の2例 竹中 守(済生会岡山),植木宏

明(岡大)

 1) 19才女子.約2年前,右上腕に打撲を受け,そO

部にエンドウ大の腫瘤を認めていたが,次第に半球状に

皮表に隆起して来た.全剔出後組織所見で,境界鮮明な

肉芽組織に囲まれて特徴的なbasophilic cell とsha-

dow cell を認め,石灰沈着も証明した. 2) 67才女性.

2ヵ月前,階段から転落し,前額部打撲,その部に小指

頭大半球状,平滑な腫瘤を生じた.組織学的に第1例と

同様の像を呈した.2例ともに打撲に続いて発症したむ

ので,何らかの誘因的役割りを果したものかと考える.

 Toxic Epidermal Necrolysis ? 雀部 将(広島市

民)

 62才女のtoxic epidermal necrolysis と思われるI.

例につき報告した.原因としては約1ヵ月前より内服l

を続けていたtriptanol, pyrethia, phenobarbital及び

brovarinのうち後の2者が考えられる.

 討論

 野原 望(岡大): 生検像にKoagulationsnekrose

の所見なく, Lyellと診断するには賛成できない.薬疹

であるとするには異論がない.

 早期顕症梅毒の動向 松坂義孝(広島市)

 37年6月より39年12月までに135例の顕症梅毒を診療

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昭和40年11月20日

した.37年下瘤8, I期疹1. 38年63と16, 39年44と17

で計下瘤n5,n期疹34,合併するもの14であった.も

っともおおいのは38年後半50, 39年前半29,38年前半39

年後半23である.39年は38年に比して20例減,となって

いる.治療は油製ペニシリソG60万注を中心として,0

回2例,1~4回22例,5~9回23例で約3分の▽1は不

完全治療のまま中絶している.成績は陰性のまま16例,

陰転28例,一部陽転11例,陽性のまま80例で約半数以上

は潜伏梅毒に移行している.詳細は「皮膚科の臨床」の

原著参照.

 討論

 広渡隆治(岡山市):表におったように,硬性下瘤は

それほど多発するものか.もし多発するとすればわれわ

れの既定観念を捨てねばならぬが.

 須賀清次郎(松山市):昨今の下瘤は硬性下瘤と混合

下瘤の区別のっき難いものが少なくない.混合下瘤は硬

性下瘤の雑感染を起したものと考える方が良い.

 顕症梅毒治癒に必要なるペニシリン量の検討 須賀清

次郎(松山市)

 昭和35年9’月から昭和39年末まで254例の顕症梅毒を

診ている.38年夏を頂上として当地方では減少して=)つあ

るようである.これら症例のうち梅毒血清反応が陽性で

あった亀ので,陰性化するまでPを注射することが出来

た51例について,その所要量を調ぺると,硬性下瘤,混

853

合下瘤では約2000万程度,I期疹では3500万程度を要し

ている.私も血清陰転化までPを注射する必要のない場

合の多いことを認めるか,決定的な必要量を示すことの

出来ない現在,学会が性病指針などに.量を示すのは困る

場合がおこるのではないか.

 討論

 松坂義孝(広島市):早期顕症梅毒で,血清反応陽性

のものには,陰転するまでPCを中心に,出来るだけ

大量あたえるべきであろう.陽性のままに移行すると,

血清反応のみでの治癒判定は困難となると思われる.

 須賀清次郎:性病指針の標準量は今まで240万, 600

万,今回1200万と変って来ている.量は定めるぺきでな

い.指針に学会の答申によったように書いてある.指針

を入念に再検討して欲しい.

 最近の2,3の抗生物質による治験 荒田次郎,藤田

慎一(岡大)

 methylchlorophenylisoxazolyl penicillin (metho-

cillins),lincomycin (lincocin), demethylchlortetra-

cycline (ledermycin)の3種抗生物質に.ついて血中濃

度,抗菌力.臨床成績を報告した.

 教室における遊離植皮術の成績 野原 望,月野木清

徳,仙波雅子,申北 隆,服部昌利(岡大)

 教室における遊離植皮術の成績につき報告,検討し

た.

長崎地方会第162回例会

日本小児科学会長崎地方会第46回例会と合同

 (昭和40年7月3日,於諌早市道具屋旅館)

           一般講演

 降圧剤による日光疹症例 下村雪雄(長崎市民)

 降圧剤による日光疹8例につyヽて,スライドを供覧し

た.初疹時,2例は日光皮膚炎.1例は黒皮症,5例は

photoleucomelanodermatitisの状態であった.起因薬

剤はchlorobenzene-2-4. disulfonamide, benzylhydro-

chlorothitzide, chlorthalidone, hydroflumethiazide,

5-chloro-2-4,disulfamyltolueneである.既往の内服薬

剤量を調査すると約1ヵ月間から6ヵ月間である.日光

皮膚炎の発症は2月の終りから3月が大部分であった.

本症の臨床像の特長,診断,鑑別診断,治凱にっいて経

験を述べた.               ・

 尋常性痙唐の治療について 今福博明(長崎市)

 Zn+ + , Cu+゛イオンによる局所療法.硫酸銅または硫

酸亜鉛の3~5%溶液を用いそれを陽極としてイオソト

フオレーゼ療法を行なった.効果としては,薬理学的にモ

ルモットの腸管を用い抗ヒスタミソ作用,抗セロトニソ

作用,抗ブラジキこソ作用,生物学的に酵素阻害を証明

し皮脂の分泌抑制効果を認めた.なお外用薬として蛋白

変性剤(ハイレソ石鹸,三塩化酢酸,酢酸アルミ,酢酸

亜鉛)を併用して尋常性座療に有効であった.

Page 6: 学会抄録 - drmtl.orgdrmtl.org/data/075110849.pdf · 福代良一:糖尿病の婦人の外陰,腔および乳房下には しばしば見られると成書に記載がある.私はまだ経験し

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          スライド供覧

 日焼け止めクリームの効果,オロナイン軟膏皮膚炎,

薬疹(マイシリン),薬疹, Toxic Epidermal Necr・

olysis Lyell,カンジダ性爪及び爪囲炎,紅色陰癖,電撃

傷,汎発性輦皮性,全身性エリテマトーデス, Tricho・

epithelioma, Superficial Basal Cell Epithelioma.

日本皮膚科学会雑誌‘第75巷 第11号

(長大)

 ジューリング庖疹状皮膚炎(三菱飽之浦)

 水痘,顕症梅毒(佐世保共済)

 特発性ケロイド(長崎原爆)

 いわゆるMid-line Granuloma,淋巴性皮膚白血病

(広大)