介護サービス向上のために · 2018-11-08 ·...

東京都国民健康保険団体連合会 平成24年3月 介護サービス向上のために 介護サービス向上のために 介護サービス向上のために 苦情対応から学ぶ

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東京都国民健康保険団体連合会

東京都国民健康保険団体連合会

平成24年3月

介護サービス向上のために介護サービス向上のために介護サービス向上のために苦情対応から学ぶ

介護サービス向上のために

苦情対応から学ぶ

平成24年3月

東京都国民健康保険団体連合会

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苦情対応の位置付けと役割……………………………………………………

1 介護保険制度における苦情対応の位置付け…………………………………………………2 苦情対応の役割…………………………………………………………………………………3 事業者に求められるもの………………………………………………………………………

相談・苦情対応のポイント……………………………………………………

1 苦情相談窓口の設置……………………………………………………………………………2 初期対応…………………………………………………………………………………………3 記録及び保存……………………………………………………………………………………4 苦情対応マニュアル等の作成…………………………………………………………………5 個人情報の取り扱い……………………………………………………………………………

介護サービスにおける苦情への対応…………………………………………1 共通する苦情の要因……………………………………………………………………………2 介護サービス別の苦情…………………………………………………………………………(1) 居宅介護支援(2) 訪問介護(3) 通所介護、通所リハビリテーション(4) 短期入所生活介護、短期入所療養介護(ショートステイ)(5) 特定施設入居者生活介護(6) 介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設(施設サービス)

危機管理…………………………………………………………………………

1 危機管理の必要性………………………………………………………………………………2 安全配慮義務について…………………………………………………………………………3 事故対応のポイント……………………………………………………………………………4 事故発生を防ぐためのポイント………………………………………………………………5 状態悪化時の対応ポイント……………………………………………………………………

参 考 資 料   「東京都における介護サービスの苦情相談白書」より一部抜粋…………………………………

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目 次 C o n t e n t s

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1苦情対応の位置づけと役割

 介護保険制度は、高齢者の「介護」を社会全体で支え合う制度であり、高齢者の尊厳の保持、自立支援及び在宅介護を基本理念としています。介護保険制度では、高齢者が心身の状況に応じて自ら介護サービスを選択し、住み慣れた地域において自立した生活ができるよう在宅サービスを重視した多様なサービスが用意されています。

 また、介護保険制度では、利用者保護の観点から、利用者が、提供された介護サービスに不満のある場合は、苦情を申し立てることができることとされており、基本的には、事業者 (介護サービス事業者、居宅介護支援事業者、介護予防サービス事業者、介護予防支援事業者 )、保険者(区市町村)及び国民健康保険団体連合会が苦情対応をすることとなっています。

(1)利用者の権利擁護 介護保険制度は、利用者と事業者が対等の立場に立って結ぶ「契約」によりサービス提供が開始されますが、利用者は情報量も少なく、事業者と比べて弱い立場にあります。そのため、利用者又はその家族からの苦情を受け付けるための窓口の設置が制度化されました。 苦情対応には、利用者が介護サービスを適切に利用できるように権利を擁護する重要な役割があります。

(2)介護サービスの質の維持・向上 介護サービスは、利用者と事業者との「契約」により提供されるものですが、公的な保険である以上、サービスの質については一定の水準を確保していく必要があります。事業者には、利用者等からの苦情をサービス改善のきっかけとしてとらえ、サービスの質の維持・向上に活かすことが求められます。 また、苦情対応業務を通じ、不適正・不正な介護サービスが発見されることがあり、適正な介護サービスの提供に向けたチェック機能を果たすことも期待されます。

(1)経営姿勢① 利用者本位の事業運営 介護保険制度は高齢者の「介護」を社会全体で支える仕組みであるとともに、公的な保険であり、福祉、保健、医療等必要なサービスが連携して総合的に利用者本位に提供されることを目的とした事業運営が求められます。② 行動規範の遵守 介護サービスは人間の尊厳にかかわる対人援助サー

ビスであることから、事業者には、倫理 (モラル )と使命 (ミッション )を自覚し、プロ意識に徹し、利用者の最善の利益を尊重し援助する行動規範の遵守が求められます。③ 地域福祉の担い手 事業者には、事業目的の実現に向けて、介護保険制度の理念を職場に浸透させ、職員一人ひとりが理念を共有し、新しい地域福祉を実現する担い手としての自覚を高めることが求められます。

1 介護保険制度における苦情対応の位置付け

2 苦情対応の役割

3 事業者に求められるもの

苦情対応の位置付けと役割

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2 苦情対応の位置づけと役割

1 自立支援 介護を必要とする状態であってもその人らしい暮らしをいきいきと過ごすために、残存している能力を最大限に引き出し、適切な生活環境を整え、日常生活を再建していくことが必要です。さらに、生きる意欲とできる限り社会性を持って生活ができるように支援することが求められます。多様な要介護状態の利用者がありますが、それぞれの利用者が尊厳を保持し、その有する能力に応じた「自立」した生活を送ることができるよう考えることが大切です。

2 利用者本位 サービスを提供する側が介護の専門家としての判断や価値観を利用者に押し付けてはいけません。介護を必要とする生活であっても利用者自身の生活であり、自分で判断・選択する「自己決定」が基本です。利用者が適切な判断ができるように、十分な情報や専門的な知見、判断基準を提供したり、考え方の整理を行うなどして、判断を支援することが必要です。

3 保健・医療、福祉の連携 介護保険制度は、介護を必要とする生活を送る上で必要なサービスを総合的に提供する仕組みです。個々の介護支援専門員が保健・医療、福祉の全ての領域に精通することを求めているのではなく、不得意な領域はその領域の専門家と協働して、常に3つの領域の総合性が保たれ、専門的な視点が複合的に注がれているようにすることが大切です。

4 介護の社会化 介護を共同連帯の仕組みで支えるという意味合いとともに、家族による介護に加えて、専門的な知識と技術に裏づけされた介護を適切に提供することを意味します。介護保険制度によって専門サービスが的確に提供されることで、家族や助け合いによるサービスなどが活きてきます。

5 サービスの競い合い 介護支援専門員も含めて、サービス提供事業者は競い合いのなかで、利用者から選ばれる立場です。平成18年4月からは「介護サービス情報の公表」が実施されるようになるなど、サービスの質に対する利用者の目が一層厳しくなっていきます。目先の利用者満足ではなく、真に利用者のためになる介護支援業務の質が問われてきます。

※参考:東京都介護支援専門員養成研修資料「居宅介護支援専門員業務の手引【改定(2版)】」より (平成23年4月発行)

介護保険制度の基本理念

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3苦情対応の位置づけと役割

(居宅介護支援の事例)

・居宅サービス計画の利用者・家族への説明、同意が遅れていた。

・モニタリング時のサービス実施状況の把握が不十分だった。

・利用者の状態が悪化していたにもかかわらず、十分把握できていなかった。

・居宅サービス計画の実施状況を把握するため、モニタリング記録を改善し、訪問介護等サービス提供時間中の訪問、またサービス担当者会議を積極的に計画することで各サービスの提供状況を家族と共に把握することとし、次の居宅サービス計画を的確に作成し、利用者等の同意を得やすくなった。

・主治医と連携して適切な状態把握に努めるとともに、主治医や家族、関係事業所等とサービス担当者会議を開催し、情報交換等の連携を綿密に図るようにした。

(2)利用者等に開かれた相談体制の確立 事業者は相談窓口を設置し、相談技術を習得した相談員の配置により、適切な情報の提供を行うとともに、職員間、各職種間で十分に連携して利用者が相談しやすい体制を整備することが必要です。サービスの基準を定めた厚生労働省令(以下「運営基準」)には、事業者は利用者等からの苦情に迅速かつ適切に対応するよう明示されています。(各サービスごとの運営基準を参照してください。)

(3)意識改革  ~苦情をサービス改善の契機に~ 介護保険制度の定着とともに、利用者等の権利意識が高まり、苦情を申し立てやすい環境も整備されてきました。事業者は日頃から危機管理を徹底し、職員の意識改革を

進め、苦情に対して適切に対応できるよう備えておくことが必要です。 また、苦情はサービス改善のきっかけとしてとらえ、積極的に活用することが重要です。本会が文書による指導助言を行った事業者に対して改善状況の確認調査をした結果を見ると、事業者は改善に向けて取り組み、成果を上げていましたが、今後とも継続して改善を図っていくことが大切です。 苦情検討委員会の設置等を行い、苦情の分析を行うことにより、苦情の発生要因の究明、再発防止策の検討、実施につなげることが重要です。苦情から事業者が抱える問題点を汲み取り、真摯に対応することが、結果としてサービスの質の向上につながります。

(訪問介護の事例)

・サービス提供責任者が管理者を兼務しており、サービス提供責任者としての業務を十分行っていなかった。・利用者・家族の要望もあり、居宅サービス計画に水分補給とあったにもかかわらず、訪問介護計画に記載せず、実施していなかった。

・管理者が、管理監督者の立場としての業務を優先できるよう、業務内容の見直しを行った。また、サービス提供責任者業務も兼務する場合は、他のサービス提供責任者より業務量を軽減した。

・居宅サービス計画に基づき利用者の状態、家族の要望を反映した訪問介護計画の作成、変更を行い、利用者・家族への説明を丁寧に行うよう徹底した。

・サービス担当者会議への参加などで介護支援専門員と情報交換を図ることとした。

「改善状況確認調査」の改善事例

苦情及び調査の結果 指導助言後の改善状況

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4 苦情対応の位置づけと役割

・サービス提供開始時に、腕の内出血を発見していたにもかかわらず、家族に連絡していなかった。

・サービス提供開始時に、介護支援専門員から情報を受け家族の要望を聞いていたにもかかわらず、記録がなく、通所介護計画にも反映されていなかった。

・サービス提供を開始する時に、利用者の状態を十分確認することとした。

・利用者の状態変化を発見したときは、速やかに家族に連絡するとともに、担当介護支援専門員や主治医等に迅速に報告することとした。

・利用者について得た情報を適切に記録し事業所内での情報の共有に努め、居宅サービス計画の内容に沿って通所介護計画を作成し、職員で情報を共有することとした。・通所介護記録に記載事項を増やし、記録の記入を職員に指導し徹底した。

・帰りの送迎車に乗り込む際、転倒し骨折したが、そのまま帰宅させていた。・家族の問い合わせに対して、転倒はないと主張し、きちんとした説明をしていなかった。

・居宅療養管理指導についての説明が不十分で、利用者が理解できていなかった。

・事故発生時の家族への連絡手順、対応マニュアルを見直した。

・事故防止委員会でのヒヤリハット事例分析の取り組みを行った。・転倒リスクの高い利用者をピックアップし、定期的に確認することで、注意喚起するようにした。

・送迎時の誘導手順等の見直しを行い安全配慮について検討した。

・家族に説明する際は必ず、当日担当した職員に確認してから行うようにした。

・契約書及び重要事項説明書の内容を利用者等が理解できるよう丁寧に説明して、同意を得て交付するよう徹底するとともに、パンフレットを作成し渡すようにした。

・薬学的管理指導計画書を事前に作成し、説明後にサービス提供を開始するようにした。

(通所介護の事例)

(居宅療養管理指導<薬剤師>の事例)

・独居の利用者の状態が悪化していることを発見したにもかかわらず、介護支援専門員や家族に連絡していなかった。

・独居の利用者の緊急連絡先一覧(主治医・担当介護支援専門員も含む)を作成し、事業所全体で情報を共有化できるようにして連絡体制を強化した。

・訪問介護員が利用者の状態変化等を発見した際は、独自に判断せず必ず事業所に連絡するよう文書で周知を図り、サービス提供責任者を要として家族・介護支援専門員と連携をとるよう徹底した。

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5苦情対応の位置づけと役割

・記録には、指導内容等の記載はあったが、利用者の状態等についての記録が少なく、状態の変化に応じた対応が行われていたか確認できなかった。

・利用開始時の利用者の状態把握が十分でなく、骨折事故につながっていた。

・事故状況の説明が不十分であったため、家族は納得できなかった。

・入居後、転倒事故が2回繰り返し発生していた。再発防止への取り組みが不十分だった。

・私物の管理が徹底せず、紛失を繰り返していた。

・薬剤管理指導記録に薬学的管理指導の内容に加えて、利用者の病状、心身等の状態を記載するようにした。

・介護支援専門員や主治医等と連携を密にし、医師からの指示内容や利用者・家族及び関係事業所との連絡記録を残すようにした。それにより、介護支援専門員からサービス担当者会議に呼ばれるようになるなどの変化があった。

・サービス利用前に事前訪問し、チェックリストを作成して、利用者の状態把握を徹底した。

・事故発生時は担当者から早急に家族に電話連絡し、事故の状況説明と事故後の対応についての説明を行うようにした。・受診が必要な場合は、出来る限り家族に立会いを求め、担当者も受診に付き添い受診が終わるまで対応をし、その間に事故についての説明を行うようにした。詳細は職員間で確認してから再度行うようにした。また、退所後の様子も電話連絡にて確認するようにした。

・事故直後のほか、毎月、事故再発防止会議を開催し、事故の原因・対策を協議して再発の防止に取り組み、月1回、全職員参加の会議を開催して、情報の共有化を図った。・運営本部では系列事業所をブロックに分け、担当者を配置して事故や苦情に対する支援体制を構築した。

・私物管理のマニュアルを作成し、持ち物チェックの流れを明確にした。・持ち物チェックリストを作成し丁寧に記入することで、私物の紛失が減少し連絡漏れが無くなった。

(短期入所生活介護の事例)

(特定施設入居者生活介護の事例)

・入所時に入所者の状態を十分把握しないままサービス担当者会議を開催し、計画を作成していたため、入所後、食事が取れないなどの状況に対応できなかった。

・入所に際して、介護・看護・相談員の職種から2名が事前訪問し情報を入手した後、入所判定会議を開催し、多面的に入所者の状態を把握するよう努め、計画作成に反映させるようにした。

(介護老人福祉施設の事例)

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6 苦情対応の位置づけと役割

・入所者の状態悪化に際して、施設医師が診察した結果や外部医療機関への受診の必要性について家族に十分伝えていなかった。

・医師に経過観察を指示されたにもかかわらず、熱が 40℃近くなったのに緊急時対応をしていなかった。

・入所者の状態に変調が認められた場合、施設医師の診察の結果、医療機関への転院の必要があるときは、施設医師から十分な説明をし、支援相談員から連携病院等に依頼し、医療連携体制をとるようにした。

・定期的に協力医療機関を受診 (往診 )して、日頃の状況を主治医に理解してもらえるようにした。医師との連絡ノートの活用など、職員間で情報の共有化を図り、医療機関とより密接な連携体制の強化を図った。

(介護老人保健施設の事例)

(認知症対応型共同生活介護の事例)

・入所中発熱し入院となったが、家族に詳細な経過説明を行っていなかった。

・状態悪化時の対応や家族への連絡等について、細かく記録に残すようにした。・より具体的な状態を報告するため、介護職員が家族に連絡する体制を構築し、家族への連絡内容は介護主任が必ず相談員や施設長に報告するようにした。それにより家族とのコミュニケーションが良く取れるようになった。

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7相談・苦情対応のポイント

 介護サービスを提供する中で、利用者等から不安、不満や要望などの相談等が事業者に寄せられてき

ます。このような相談等に対して、事業者は利用者の立場に立った誠意ある対応が求められます。

 事業者は、利用者等からの介護サービスに係る相談やその他介護に関する全般的な相談に迅速かつ適切に対応するため、利用者等が相談しやすい窓口を設置する必要があります。

<ポイント>① 相談(苦情)を受け付ける窓口を設置し、担当者を決める。② ささいな苦情も担当者につなぐことができるよう、職員間の連絡体制を整える。③ 担当者の氏名、連絡先は、利用者等と取り交わす契約書や重要事項説明書等にあらかじめ記載し、利用者等に説明する。

 苦情が発生した場合、事業者は事実確認と原因究明を迅速に行い、対応について相談者に適切に説明するなど、初期における対応が特に重要です。初期対応の遅れにより、解決が困難になる場合が多く見受けられます。

<ポイント>① 苦情内容を正確に把握するとともに相談者の思いを受け止める。② 事実関係の確認や原因の究明を迅速に行う。③ 相談者に対して、把握した事実等について、適宜適切にわかりやすく説明する。④ 対応については、個人的判断で対応せず、組織として統一した対応をする。

 苦情については、記録を残す必要があります。苦情内容や対応経過を記録することにより、事実が確認できるとともに職員間の情報の共有化が図られ、相談者への一貫した対応につながり、苦情対応を円滑に進めることができます。また、原因の究明や再発防止策の検討、問題点の明確化など、サービスの質の向上に向

けた取り組みに活用することができます。 なお、記録の保存期間については、運営基準上はサービス提供終了後2年間となっていますが、民法等の関係からは、必要な保存期間が異なる場合があります。(P33、Ⅳ危機管理 -3 -(4)参照)

相談・苦情対応のポイント

1 苦情相談窓口の設置

2 初期対応

3 記録及び保存

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8 相談・苦情対応のポイント

<ポイント>① 相談、要望等もできる限り記録する。② 記入に際しては、時系列に、客観的(主観を排して)事実のみを記載する。③ 記録様式は、必要な事項が簡潔に記載でき、職員の負担にならないよう工夫する。

④ 管理者等が記録を活用して、事業所内のサービス状況を確認、把握する等、記録をサービスの向上につなげる。

 苦情対応の手段等を示した苦情対応マニュアル等を事業所の状況に合わせて作成し、実際に活用できるものとすることが必要です。

<ポイント>① 苦情対応マニュアル等を作成する。② 職員に周知するとともに、常に活用できるように適宜見直しを行い、適切に対応できるマニュアル等にする。

 昨今の新聞紙面をにぎわす個人情報の置き忘れなどの紛失や漏洩問題は、介護の現場においても決して他人ごとではありません。 電子データ化されている利用者情報は、取り扱いを誤ると一瞬のうちに大量のデータを流出させる危険にさらされます。 事業者は、利用者等の個人情報を詳細に知り得る立場にあり、個人情報の管理を的確に行い、利用者が安心してサービスを利用できるよう徹底する必要があります。

<ポイント>① 個人情報の管理は的確に行う。② 個人情報の置き忘れなどの事故が発生した場合は、事実の確認と謝罪を迅速に行う。③ 原因等を究明し再発防止策を徹底する。④ 個人情報を慎重に取り扱うことについて組織として徹底を図る。⑤ 取り扱いについては「個人情報の保護に関する法律」(注1)、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」(注2)、「ガイドラインに関するQ&A〔事例集〕」(注3)等を遵守する。

注1 個人情報の保護に関する法律 (平成15年法律第57号)

注2 医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱

いのためのガイドライン(平成16年12月24日 老

発第1224002号)

注3 「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱

いのためのガイドライン」に関するQ&A(平成17年

3月厚労省 事務連絡)

4 苦情対応マニュアル等の作成

5 個人情報の取り扱い

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9相談・苦情対応のポイント

事業所における相談・苦情対応のフロー図

東京都国保連合会

相談苦情

調査/指導

関係機関居宅介護支援事業所地域包括支援センター在宅介護支援センター         等

相談受付担当者傾 聴 記 録

事業所

相談苦情

相談苦情

相談苦情

相 談 者

サービス提供職員報告

管理者・職員等

協議・検討・情報の共有

助言

説明

第三者委員会苦情調整委員会     等

通知 等

通知 等

調査

指導助言

調査

指導助言 相談

苦情

相談苦情

連携連絡

連携連絡

区市町村(保険者)

東京都

連携連絡

説明謝罪

苦情対応 ※詳細は次章へ

事実確認原因究明改  善

納得しない

場合

相 談 者

諮問・助言

連携・引継

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10 介護サービスにおける苦情への対応

 苦情に至るケースを見ると、サービス種別を問わず共通した苦情の要因が見受けられます。事業者としては特に以下の点に留意する必要があります。

(1)利用者・家族への説明の不足 サービス提供が適切に行われていたとしても、説明が不十分だったために苦情となる例が多く見受けられます。事故や状態悪化の経過等に関する説明が不足していたために不信感を招き、苦情となる例もあります。 また、事業者としては十分説明を行ったつもりでも、利用者や家族は十分理解できていないままサービスが行われたために苦情となる場合もあり、口頭での説明だけでなく、文書による説明を併せて行うなどにより利用者等の理解と同意について適切に確認していく工夫が必要です。

主な苦情例●契約内容や重要事項説明書を説明されたが、内容が十分にわからなかった。

●サービス計画等の交付や十分な説明がなく具体的なサービス内容がわからない。

●転倒事故があったが、詳しい状況等の説明が職員によって異なり、謝るだけで事実がわからない。

●苦情を言っても、どのような対応や改善をしたのかの説明がない。

(2)利用者の状態把握の不足 利用者の状態把握が十分行われていなかったことが原因で、転倒や状態悪化等利用者の状態変化に適切に対応できないケースが見受けられます。利用者の転倒、状態悪化等を防止し、適切に対応するためには、利用者の状態を日頃から正確に把握し、必要に応じ計画を見直していくことが大変重要です。

主な苦情例●介護支援専門員は、利用者の状態が変化したにもかかわらず、居宅サービス計画の変更をしてくれなかった。

●車いすからベッドへの移乗の際に転倒し、けがをした。職員が利用者の状態をよくわかっていなかったのではないか。

(3)情報共有及び連携の不足 職員間で必要な情報の共有化が出来ていない等、利用者にかかわる関係者間での連携不足に起因する苦情や事故等が見受けられます。 利用者に安全に適切なサービスを提供するためには、事業所内において職員の役割や責任を明確にして情報の共有化を図り、日頃から関係機関と密接に連携し、円滑にサービス提供が行えるよう、連携体制を確立しておくことが重要です。

主な苦情例●訪問介護員間の引継ぎがなく、介護方法を再度、教えなければならなかった。

●相談員に要望や苦情を言ったが、現場の職員に伝わっていなかった。

●職員間で利用者の状態等について申し送りをしていなかったため、状態悪化に適切に対応してもらえなかった。

(4)記録の不備 記録は、事業者が提供したサービスの具体的な内容や、利用者の状態を適切に把握するために重要なものです。事故、状態悪化、苦情等の対応を実証するものであり、利用者等からサービス提供状況等の説明を求められた時の説明資料となります。 事業者は、必要な情報が的確に記録できるよう整備するとともに、保管を徹底する必要があります。

主な苦情例●発熱し入院したため、事業所に説明を求めたが、記録がないため詳しい経過がわからないと言われた。

●転倒骨折したため介護記録の開示を求めたが、骨折に関する具体的記載がなかった。

介護サービスにおける苦情への対応

1 共通する苦情の要因

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11介護サービスにおける苦情への対応

(5)事業者からの契約解除 利用者へのサービス提供の継続が困難になったため、契約解除を行った結果、苦情となるケースが見受けられます。 サービスの継続が難しい場合は、サービス担当者会議の開催や地域の社会資源を活用するなど、事業者はサービスの継続に向けて最大限の働きかけを行う必要があります。しかし、正当な理由により、やむを得ず事業者が契約を解除しなければならない場合には、契約書に記載している内容に則って対応することが大切です。その際には、一定の予告期間をもって通知を行うなど適切な手続きをとる必

要があるとともに、利用者へのサービス提供が滞らないよう居宅介護支援事業者等への連絡や、適切な他の事業者の紹介など、必要な措置をとることも必要です。

主な苦情例●事前通知が一切なく、利用当日にヘルパーが来なかった。その後も連絡がなかった。

●契約終了の話を突然された。また、次の事業所の紹介もしてもらえなかった。

●利用者・家族に対して事前の相談や連絡もなく事業者から一方的に契約解除を文書で通知された。

(1)居宅介護支援 居宅介護支援は、介護サービス利用や調整等の「要」であり、その役割は多岐にわたっています。サービスの担い手である介護支援専門員(ケアマネジャー)は、要介護者等が可能な限り居宅で自立した生活を営めるよう総合的に支援する重要な役割を担っています。 居宅介護支援では、利用者の心身の状況やニーズの把握が不十分なまま居宅サービス計画が作成され苦情となる例や利用者等とサービス事業者との調整不足や関係機関等の連携不足のために苦情となる例が見受けられます。

 適切な居宅サービス計画の作成、サービス調整等を行うには、利用者が自立した日常生活を営むことができるように支援する上で、解決すべき課題の把握(アセスメント)や提供されるサービスの実施状況の把握(モニタリング)が重要です。特に、独居の利用者の場合、家族と介護支援専門員、サービス事業者の認識に齟齬が生じ苦情になる例もあり、家族や地域の見守りネットワーク等との連携も適宜適切に行うことが必要です。 また、医療依存度が高い利用者が増えており、医療系サービスを含む介護サービス全般への知識を一層深めるとともに、医療機関等関係機関との適切な連携が求められています。

2 介護サービス別の苦情

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12 介護サービスにおける苦情への対応

② サービス担当者会議の開催 作成した居宅サービス計画を効果的かつ実現可能なものとするために、各サービス担当者からなるサービス担当者会議の開催により、利用者の状況等に関する情報を共有し、サービス等の調整を図ることが重要です。特に利用者の状態の変化や、サービス提供上問題があった場合は、利用者・家族と密接に連絡をとり、サービス事業者と調整してサービス担当者会議を開催し、居宅サービス計画の変更等を行う必要があります。<厚生省令第 38 号第 13 条 指定居宅介護支援の具体的取扱方針>

③ 利用者・家族への居宅サービス計画の説明と交付 居宅サービス計画の内容や費用について、利用者・家族が内容を理解できるよう丁寧に説明し、同意を得るとともに計画書や利用票を交付する必要があります。<厚生省令第 38 号第 13 条 指定居宅介護支援の具体的取扱方針>

④ モニタリング 居宅サービス計画の実施状況の把握は、利用者の状態を把握するとともに、サービス提供上の課題や調整等を行う上で大変重要です。居宅サービス計画作成後のモニタリングを確実に行い、必要な介護サービスの提供が行われるように努める必要があります。<厚生省令第 38 号第 13 条 指定居宅介護支援の具体的取扱方針>

⑤ 記録の整備 記録は、居宅介護支援にかかわる実施経過を示すものであり、サービス評価及びサービスの質の向上に役立つものです。アセスメントの記録を整備するとともに、家族及び関係機関やサービス提供事業者との連絡記録、サービスの実施状況(モニタリング)の記録、居宅支援経過記録の内容を充実させる必要があります。<厚生省令第 38 号第 29 条 記録の整備>

① 利用者の状態把握(アセスメント)と居宅サービス計画の作成 居宅サービス計画の作成にあたっては、利用者の心身の状況や環境、家族の要望等を適切に把握し利用者が自立した日常生活を営むことができるよう、解決すべき課題を把握し、必要なサービスを計画することが重要です。<厚生省令第 38 号第 13 条 指定居宅介護支援の具体的取扱方針>

サービス提供上の留意点

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13介護サービスにおける苦情への対応

独居の利用者居宅サービス計画の説明等が不十分だった

苦 情 概 要

 居宅サービス計画や介護の内容等について説明が不十分であった。

調査で把握した状況

① 利用者は独居で生活していたため、多くのサービスを必要としていたが、家族から、「経済的に大変なので毎月の自費分はなるべく少なくして欲しい」旨の要望があった。  居宅サービス計画やサービス担当者会議の記録を見ると、利用者は夜間12時間以上1人の状態が続いているにもかかわらず、状態悪化時の対応や夜間等1人でいる時間の問題点が十分検討されていなかった。② 利用者は、サービス提供開始後から状態の悪化が見られ、介護支援専門員は主治医の往診時に訪問した際、主治医から認知症の進行や夜間トイレ時のリスクなどの助言を得ていた。  また、訪問介護事業所からも、トイレ時の問題や緊急訪問をした等の報告を受けていたが、利用者の状態悪化や独居での介護の限界等について、主治医や家族、関係事業所とどのように連携し、家族に説明していたのか記録が少なく確認できなかった。

苦情の要因と対応のポイント

① 居宅サービス計画の作成と支援  利用者は独居で介護度も重いため、日々、心身の状況を家族、サービス提供事業者、主治医等と連携して把握し、居宅サービス計画に反映させると共に、サービス担当者会議などを通じた家族との密接な連携やサービス提供事業所への連絡などきめ細かい支援を行う必要がある。 独居の利用者の居宅介護支援は、利用者の心身の状態の変化に適切に対応するため介護保険サービスを含む、総合的な援助が必要となる。

② 主治医や家族等との連携 利用者が安心して日常生活を継続していくには、利用者の心身の状況の変化や介護サービス等の対応について、状態悪化等の予測も含め、主治医や家族、サービス事業者間で情報を共有し、適切にサービスが提供されるよう努めることが重要である。 特に独居の場合には、生活環境を含め総合的に判断する必要があり、サービス担当者会議や、往診等の機会を活用し、主治医や家族等と在宅でのサービス提供の限界や対応のあり方、課題等について話し合い、関係事業者と密接に連携を図り対応していくことが重要である。

居宅介護支援

*要介護5*独居*大腿骨骨頭壊死で動けず、認知症がある

*利用者の子の配偶者*近隣に居住、日中は就労

利用者の状況 相談者の状況

利用者・相談者等の状況

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14 介護サービスにおける苦情への対応

要介護から要支援へ、再び要介護へ変更となったが、必要なサービスが受けられなかった上説明が不十分で仕組みが理解できなかった

苦 情 概 要

 更新申請により要介護1から要支援2となったが、仕組み等の説明が不十分で理解できなかった。その後、狭心症で入院した。区分変更申請したところ、要介護1となったが、突然サービス提供できないと言われた。

調査で把握した状況

① 関係事業者一同で訪問して制度の説明をしていたが、介護予防支援もこれまでの事業者が地域包括支援センターから委託を受けて提供されたことや、利用者の状況からサービス内容は変わらなかったことなどもあり、理解しにくい状況が見られた。② 再び要介護1への変更後は、事業所の変更を伝えていたが利用者が納得しないこともあり、契約解除の説明や他事業者への支援等調整ができず介護支援サービスが提供されない状況が続いていた。

苦情の要因と対応のポイント

① 介護予防サービスの説明  介護サービスと、介護予防サービスはサービスの利用方法等が異なるため、変更のつど利用者・家族が理解できるようわかりやすく丁寧に説明する必要がある。

② 区分変更に伴う契約解除 要介護から要支援へ、要支援から要介護への区分変更に伴い、制度上、事業所の変更を要するにもかかわらず、次の契約が出来なくなり必要なサービスが利用出来なくなることは問題である。 地域包括支援センター等関係事業者間の連携を密接に行い、利用者に必要なサービスが円滑に継続して提供されるよう支援する必要がある。

居宅介護支援 ・ 介護予防支援

*要介護1→要支援2→要介護1*狭心症、変形性膝関節症、腰痛等

*利用者本人

利用者の状況 相談者の状況

利用者・相談者等の状況

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15介護サービスにおける苦情への対応

(2)訪問介護 訪問介護は利用件数も多く、在宅介護の柱となるサービスです。利用頻度も多いことから、苦情件数は他のサービスと比べて多くなっています。 訪問介護では、サービス時間が守られない、依頼したことが行われない、利用者の状態悪化に気づかなかった等のサービスの調整ミスや訪問介護員の知識、技術不足による訪問介護員の資質に関わる苦情が見受けられます。 また、サービス提供中に物を壊した、物が紛失したなど、訪問介護員が疑念を持たれる苦情も見受けられます。さらに、苦情から契約解除に発展し、その解除方法を巡ってさらなる苦情となる場合も少なくありません。 訪問介護員間やサービス提供責任者との連携不足、利用者等への説明不足に起因するものも多く見受けられます。サービス提供責任者が介護の実施状況を的確

に把握するとともに、介護支援専門員や家族との調整を適宜適切に行う必要があります。そのほか、介護保険サービスと自費負担によるサービスを組み合わせて利用している場合、時間や介護内容の区分けが不明確であったことから利用方法を巡って苦情となることもあります。 事業所としては、カンファレンスの実施や研修の充実などによって、個々の訪問介護員の力量を高めることはもちろんですが、管理者やサービス提供責任者が適切に管理責任を果たすことも非常に重要です。 サービス提供責任者は、利用者のサービスに関わる調整や訪問介護計画書の作成、訪問介護員へのサービス内容の指示や業務管理など、多くの責務があります。 サービス提供責任者は訪問介護サービスの指南役として、大きな役割を持っているため、管理者は、サービス提供責任者が有効に機能できるような体制を整備することも必要です。

① 管理者及びサービス提供責任者の責務 管理者は、訪問介護事業所の従業者及び業務の管理を一元的に行うとともに従業者に対して運営基準等を遵守させるために必要な指揮命令を行う必要があります。また、サービス提供責任者は訪問介護の利用申込みに係る調整・利用者の状態の変化やサービスに関する意向の定期的な把握・サービス担当者会議への出席等により居宅介護支援事業者等と連携を図る等の業務をする必要があります。<厚生省令第 37 号第 28 条 管理者及びサービス提供責任者の責務>

② サービス内容の説明と訪問介護計画の作成 サービス開始時には、利用者・家族に重要事項を記した文書を交付し、サービス提供体制等について十分説明する必要があります。また、サービス提供責任者は、利用者の状況を把握し、必要なサービスの内容について十分検討を行い、居宅介護支援事業者と密接な連携を図り、居宅サービス計画の内容に沿った訪問介護計画を作成し、サービスの内容について利用者・家族に十分説明して交付する必要があります。<厚生省令第 37 号第 8 条 内容及び手続きの説明及び同意><厚生省令第 37 号第 24 条 訪問介護計画の作成>

サービス提供上の留意点

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16 介護サービスにおける苦情への対応

④ 関係機関等との連携 日頃から、サービス担当者会議等を通じて介護支援専門員、その他の関係機関と円滑な協力体制の構築を図っておく必要があります。また、利用者・家族等とも日頃から、連携を密にする等、信頼関係の構築を図っておく必要があります。<厚生省令第 37 号第 14 条 居宅介護支援事業者等との連携>

⑤ 介護職員の資質の向上  管理者等は、訪問介護員としての倫理や介護の技術、知識について、従業者の研修参加の機会を確保し、事業所内で勉強会を開催する等、実際に介護にあたる職員の資質を向上させる必要があります。<厚生省令第 37 号第 28 条 管理者及びサービス提供責任者の責務>

③ サービス提供と実施状況把握 サービスを行った際には、できるだけ具体的内容を記録し、サービス提供後に利用者から確認印等を貰うなど、客観的にサービス提供の事実がわかるようにする必要があります。また、サービス提供責任者及び管理者は、訪問介護員のサービス提供の実施状況を確認する必要があります。<厚生省令第 37 号第 19 条 サービスの提供の記録><厚生省令第 37 号第 28 条 管理者及びサービス提供責任者の責務>

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17介護サービスにおける苦情への対応

掃除だけを行ってもらったが、身体介護を算定されていた

苦 情 概 要

 掃除だけで来てもらい、身体介護の内容のサービスを受けていないのに、身体介護の請求があり驚いた。

調査で把握した状況

① 訪問介護計画書には、身体介護として訪問時の健康チェック、移動時の歩行介助、自立支援のために行う家事援助時の声かけ等が記載されていたが、訪問介護員への指示書には具体的な指示はなかった。  また、訪問介護員の記録には、健康チェックした具体的な内容や自立支援ケア内容の記載がない日などが散見され、サービスの必要性や実施内容について記録が不十分であった。  さらに、モニタリング記録や家族からの連絡内容の記録、サービス提供責任者の記録は作成しておらず、担当介護支援専門員への報告書には、居宅サービス計画に沿った訪問介護の提供が出来ていない状況があるにもかかわらず、報告されていなかった。② 居宅介護支援事業所が、併設の事業所だったため、日ごろから介護支援専門員を経由して要望等を聞いており、利用者・家族との意思疎通に欠け相互理解が困難な状況が見られた。  また、苦情を受けた後、事業所としてサービス提供内容や記録、訪問介護員への聴取などの検証等がどのように行われ、苦情対応していたのかなど確認できなかった。

苦情の要因と対応のポイント

① 訪問介護サービスの提供と管理者等の責務  管理者及びサービス提供責任者は、適切なアセスメントを行い、利用者・家族の要望を踏まえて具体的な訪問介護計画を作成し、適切な手順書等の作成を行うとともに、正確なサービス提供記録の作成など適宜指導等を行う必要がある。 また、日ごろから利用者の状況やサービス実施状況等について把握し、家族や介護支援専門員に適時適切に報告するなど連携を密にして、訪問介護サービス内容の変更など必要に応じ対応できるように情報を共有化する必要がある。

② 苦情対応等 苦情や要望等について、利用者等の声として広く受け止めるため、日頃から利用者・家族と円滑な意見交換ができる関係を構築する必要がある。 苦情等があった場合は、事実関係の確認や原因の究明等を迅速かつ適切に行い、把握した事実をもとに対応策や再発防止策などを検討し、利用者等に対して懇切丁寧に説明を行い適切に対応するとともに、その結果についても具体的に記録する必要がある。

訪問介護①

*要介護2*独居*週4回利用

*他地域に在住する子

利用者の状況 相談者の状況

利用者・相談者等の状況

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18 介護サービスにおける苦情への対応

事前通知がなく契約解除された

訪問介護②

苦 情 概 要

 突然電話で契約解除され、後日文書通知があった。解除理由は「損害賠償請求されることが再三あり訪問介護員が訪問できない。」とされていたが、そのような事実はない。

調査で把握した状況

① 利用者等に適切に対応できる訪問介護員がいなくなったため介護支援専門員に相談し、家族との話し合いの提案をしていたが、家族の都合で延期となっている間に訪問介護員が食器等を壊したかのように言われ、賠償を求められたことなどから継続できないと判断し、今後のサービスの調整や家族への説明をしないままサービスを終了した。② サービス提供責任者は管理者も兼務しており多忙な状況で、利用者宅への訪問や家族からの電話などへの対応が十分できていなかった。  家族から直接介護指示等があるため訪問介護員は負担となっており、また、家族からの要望等について事業所内で検討した結果を介護支援専門員経由で伝えるため家族との意思の疎通に欠け、相互理解が困難な状況であった。

苦情の要因と対応のポイント

① 事業者からの契約解除  事業者がやむをえない事情により契約解除する場合は、具体的に継続困難な理由等を示し利用者・家族の理解と同意が得られるよう懇切丁寧に説明し、次のサービスが円滑に利用できるよう関係機関と連携して支援を行う必要がある。 突然の契約解除とならないよう契約書に則った手続き等を適切に行う必要がある。

② 家族への対応 あらゆる機会に示される家族からの要望や苦情について、その都度事実確認や対応策の検討等を迅速に行い、自ら利用者・家族に懇切丁寧に説明し理解を求める必要がある。 介護支援専門員等と連携しての対応や対応経過を記録するなど情報の共有化を図り、事業所として利用者等へ一貫した対応を行う必要がある。

*要介護3、大腿骨骨折のリハビリ中 *利用者の同居の子*日中就労のため不在がち

利用者の状況 相談者の状況

利用者・相談者等の状況

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19介護サービスにおける苦情への対応

(3)通所介護、 通所リハビリテーション 通所介護、通所リハビリテーション(以下「通所系サービス」という)は、利用者の社会的孤立感の解消、心身機能の維持及び家族の介護負担軽減を図るなど、在宅での生活を支える上で重要なサービスです。 通所系サービスでは、送迎時やサービス提供中の事故、状態悪化時の対応が悪かったことや説明不足が原因となる苦情が見受けられます。 通所系サービスは、利用者が在宅生活を送りながら

一定時間家族から離れてサービスを受けるため、サービス提供中の利用者の状態悪化や事故発生については、特に迅速な家族との連携、説明が不可欠です。また、限られた人員配置の中で利用者に安全なサービスを提供するためには、日頃から利用者の状態を適切に把握するとともに、家族や担当介護支援専門員、主治医との連携を密に行い、緊急時の対応や安全配慮に関しても情報交換を行い、リスクの共有化を図っておくことが大切です。

① 利用者の状態把握と適切な通所介護計画の作成 サービスの提供の開始に際しては、利用者の心身の状況や他の介護サービスの利用状況等の把握に努め、利用者の状態に応じた適切な通所介護計画を作成し、その内容について、利用者・家族に説明し、同意を得る必要があります。<厚生省令第 37 号第 105 条(第 13 条準用) 心身の状況等の把握><厚生省令第 37 号第 99 条 通所介護計画の作成>

② 適切なサービス提供と利用者・家族との連携 サービスの提供にあたっては、サービスの提供方法等について、利用者・家族に理解しやすいように説明し、常に利用者の状態を的確に把握しつつ、相談援助や機能訓練等必要なサービスを適切に提供する必要があります。<厚生省令第 37 号第 98 条 指定通所介護の具体的取扱方針>

③ 居宅介護支援事業者等との連携 通所系サービスは、利用者が在宅生活を送りながら利用するサービスであるため、担当する居宅介護支援事業者等との連携が重要です。サービスの提供に当たっては、居宅介護支援事業者等との密接な連携に努める必要があります。<厚生省令第 37 号第 105 条(第 14 条準用) 居宅介護支援事業者等との連携>

④ 状態悪化、事故等発生時の対応 利用者に状態悪化や事故等が発生した際には、速やかに主治医に連絡を行う等の必要な措置を行うと共に、家族や担当介護支援専門員、保険者に迅速に連絡する必要があります。なお、事故等が発生した場合の対応方法については、あらかじめ定めておく必要があります。<厚生省令第 37 号第 105 条(第 27 条準用) 緊急時等の対応><厚生省令第 37 号第 105 条(第 37 条準用) 事故発生時の対応>

サービス提供上の留意点

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20 介護サービスにおける苦情への対応

泊まりがある通所介護を利用したが、利用中の状況について十分な説明がなかった

通所介護①

苦 情 概 要

 泊まりがある通所介護を利用していたが、1か月後体調が急変し、緊急搬送され入院となり、下肢に褥瘡が見つかったが、事業所からは何の報告もなかった。利用中の状況等を事業所に聞いたが、十分な説明がなかった。

調査で把握した状況

① 契約の際に交付された重要事項説明書には、実際の職員体制と異なっている点がみられた。研修についても、管理者を始め従業員の定期的、計画的な研修は行われていなかった。② 通所介護計画書には、作成日、利用者の個人情報、具体的なサービス内容等について記載がなかった。  また、アセスメント記録もなく、介護職員は作成された通所介護計画書等を見る機会がなく、日常的に活用できる状況ではなかった。

③ 職員のメモには、管理者から褥瘡の処置を行うよう職員に指示があった旨記載があったが、介護記録には褥瘡の状態や対応についての記載はなかった。介護記録の記載が少なく、体調急変時の記録もなく、どのようにサービスが提供されていたのか確認できなかった。

  また、サービスの提供開始にあたり、事前のアセスメントがなく、サービス提供についてのマニュアルもなかった。  さらに、生活相談員や介護職員などの業務内容や責務が不明確なうえ、管理者等の交代も頻繁に行われていた。④ 家族への対応は、事業所として精査することなく、記録を見せることで説明に代えており、苦情対応記録もほとんどなく、苦情対応が不十分な状況であった。

苦情の要因と対応のポイント

① 通所介護サービスの契約と重要事項説明書等の交付  契約書および重要事項説明書は、事業所が責任を

持ってサービス提供等を約束する重要な書類であり、事業所の現状と齟齬がないよう正確な書類を作成するとともに、利用者・家族が理解できるよう丁寧に説明し、適切な契約を行う必要がある。

② 通所介護計画 通所介護サービスの提供に当たっては、適切なアセスメントを行い、利用者・家族の要望を踏まえて利用者の心身の状態に応じた具体的な通所介護計画を作成するとともに、その内容を利用者・家族等に十分説明し、同意を得る必要がある。

③ サービス提供と記録 介護保険サービスに引き続き宿泊を伴うサービス提供をしている現状から、保険外サービスの提供状況も踏まえて利用者の状態把握に努め、事業所内での情報を共有し、利用者の状態に即したサービス提供が的確にできるよう体制を整え、サービス提供中の利用者の状態やサービス提供内容等を具体的に記録し家族を含め関係者間で連携を密接に図る必要がある。 また、サービスの利用開始時には、医療情報を含め家族等から利用者について情報提供を受け、職員間で共有することが重要である。 さらに、管理者をはじめとする職員の業務内容を明確にし、計画的な研修や業務マニュアルの整備などを行う必要がある。

④ 苦情対応について 利用者・家族等からの苦情や要望は真摯に受け止め、事実関係の確認や発生原因を究明し、把握した事実をもとに再発防止策などを検討し、利用者・家族等に対して誠実に懇切丁寧な説明を行い納得が得られるように努める必要がある。 また、組織的な対応が出来るよう苦情マニュアル等を作成するなど体制を整備し、苦情記録の記載方法や苦情の対応方法について明確にする必要がある。

*要介護5*認知症、変形性脊椎症*泊まりがある通所介護を1か月利用

*別居の子

利用者の状況 相談者の状況

利用者・相談者等の状況

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21介護サービスにおける苦情への対応

帰宅後、足の痛みを訴え骨折が判明したが、事業所の説明がなく、その後、一方的に契約解除された

苦 情 概 要

 通所介護サービスから帰ってすぐ「足が痛い」と言い、食欲もないため救急車で病院へ行ったところ、足の甲の骨折との診断を受けた。翌日、介護支援専門員を通して当日の状況を聞いてもらったが、事業所からの説明はなかった。 骨折から2か月以上経ってから、「報告書」とともに解約通知書を何の説明もなく渡され、納得できない。

調査で把握した状況

① 当日の通所介護サービス利用時、利用者は通常の散歩に自力で参加するなど特段の異常は見られなかった。  翌日、担当介護支援専門員から骨折について事実確認の問い合わせがあり、職員にも確認後、「転倒など骨折につながる事実はなかった」と報告した。利用者宅にも電話したが繋がらず、家族には直接説明できなかった。  1週間後のサービス提供時に、利用者は歩行困難な状態であったが、痛みを訴える様子はなく、家族からも質問はなかったため、利用者の状態変化の経過や心身状況の確認等を行っていなかった。② 2か月後、保険者からの連絡で、初めて苦情となっていることを知った。  管理者が家族に説明したが納得されなかったため、後日保険者も同席のうえ話し合いを行ったが納得されなかった。当日の状況と要望についての見解を記載した報告書を作成し、利用者宅に持参して説

明しようとしたが、話を聞いてもらえなかった。これ以上の対応は無理と判断し、解約通知書を渡し、保険者と担当介護支援専門員に解約の意向の連絡も同時に行っていた。

苦情の要因と対応のポイント

① サービス提供に係わる説明  サービス提供後に、利用者の心身の状態に変化が見られた場合にも、速やかに利用者の心身の状態を把握するとともに、サービス利用時の利用者の状態や事業所としての対応等について、家族等に、具体的にわかりやすく丁寧に説明する必要がある。

② 契約の解除 契約解除については、事前に関係者と協議し、サービスの継続について保険者や介護支援専門員に相談するとともに、利用者・家族にサービス提供が困難な状況等を伝える必要がある。 やむを得ない事情により、事業所としてサービス提供が困難であると判断した場合は、具体的な理由を示して利用者・家族の理解と同意が得られるよう懇切丁寧に説明し、介護支援専門員や保険者との連携を密に行い、利用者へのサービス提供が滞らないよう必要な支援を行うとともに、契約解除の手続きは契約書に則って適切に行う必要がある。

通所介護②

*要介護4*認知症*週3回利用

*同居の子*利用者と二人で生活

利用者の状況 相談者の状況

利用者・相談者等の状況

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22 介護サービスにおける苦情への対応

(4)短期入所生活介護、短期入所療養介護 短期入所生活介護・短期入所療養介護(以下「ショートステイ」という)は、一時的に居宅において日常生活を営むのに支障がある者等を対象としたサービスであり、在宅介護を継続していく上で必要なサービスです。ショートステイではサービス利用中の状態悪化や転倒等の事故による苦情が見受けられます。ショートステイは、在宅での生活の延長で行われるものですが、利用者にとっては在宅から施設へと急激に生活環境が変化することから、利用者の心身の状況や在宅での介護サービスの利用状況について、家族や介護支援専門員等から、十分情報収集してサービスを提供する必要があります。

 同じ利用者が繰り返し利用するいわゆるリピーターも多くなっていますが、再利用時に事業所が利用者の心身の状況に変化がないと思い込み、利用者の心身の状況把握がおろそかになったために事故が発生した事例もあります。このことからも毎回の利用開始時に利用者の直近の心身の状況を適切に把握することが非常に重要となります。 事故防止のため、利用者の心身の状況に関する申し送りを丁寧に行うなど職員間の情報の共有化を図る必要があります。利用者の状態が変化した際、どのような場合に家族に連絡するか、連絡先と併せて事前に家族と確認しておくことも重要です。

① 利用者の状態把握と適切な短期入所生活(療養)介護計画の作成 ショートステイサービスは、利用者にとっては居宅から施設へと環境等が変わるため、心身の状況が不安定になりやすく事故等が起こりやすいサービスです。利用にあたっては、受け入れる施設と利用者の家族とが密接に連携し、利用者の心身状況の確認及び介護にあたっての留意点等を把握することが大切です。利用者の状況は、その都度、変化していることが予測されるため、最新の利用者の状態をもとに短期入所生活介護計画を作成する必要があります。<厚生省令第 37 号 第 140 条(第 13 条準用・短期入所生活介護) 第 155 条(第 13 条準用・短期入所療養介護) 心身の状況等の把握><厚生省令第 37 号 第 129 条(短期入所生活介護) 短期入所生活介護計画の作成  第 147 条(短期入所療養介護) 短期入所療養介護計画の作成>

② 状態悪化、事故等への対応 利用者の状態悪化や事故等が発生した場合は、看護職を中心に適切に対応し、家族、主治医や協力医療機関等に迅速に連絡する必要があります。また、状態悪化や事故等の経過や対応について、利用者・家族に適宜適切に説明するとともに、保険者への事故報告を迅速に行う必要があります。<厚生省令 第 37 号 第 136 条(短期入所生活介護) 緊急時等の対応><厚生省令 第 37 号 第 140 条(第 37 条準用・短期入所生活介護) 第 155 条(第 37 条準用・短期入所療養介護) 事故発生時の対応>

サービス提供上の留意点

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23介護サービスにおける苦情への対応

利用中に利用者の状態が悪化したが、家族に連絡や報告がなかった

苦 情 概 要 退所日に発熱していると連絡があったが、その15分後、昼食を食べている際に窒息事故が起こり、搬送先の病院で死亡した。 また、サービス利用2日目から継続的に熱が出ていたが、家族への連絡は一切なかった。

調査で把握した状況① 初回利用の際、家族から、食事時にむせがあると情報提供があったが、短期入所生活介護計画には、具体的な記載がなかった。また、介護記録等には初回利用時から継続的に記載があり、介護職員から生活相談員への報告、誤嚥に対する見守り強化による対応、詳細な記録を行うことになっていた。  しかし、看護職員等の専門職員による具体的な検討、食事形態や介助方法の変更等のルールがなく、短期入所生活介護計画の変更なども行われていなかった。  また、短期入所生活介護計画書は、事前に家族への説明、同意、交付がなく、毎回のサービス提供終了後の送迎時に計画書と利用中の様子が記載された手紙を交付して、家族から押印を得ていた。② 介護記録等からみると、利用者は入所翌日の朝、発熱があり、その後やや解熱していた時もあったが、継続的に発熱していた状況であった。

  しかし、意識、食事・水分摂取状況が良好であったため様子観察とし、家族には連絡を入れていなかった。

  また、窒息事故当日の朝食時には、立位が保持できず車いすでフロア移動、傾眠、食事摂取量の減少などの状態変化が見られたが、介助方法や食事形態の変更についての検討や対応等は行っていなかった。

苦情の要因と対応のポイント

① サービス提供と短期入所生活介護計画  利用者の心身の状況について適切な情報把握が必要不可欠であり、収集した情報を的確にサービス提供の基盤である短期入所生活介護計画に反映させる必要がある。 サービス提供前に、短期入所生活介護計画を利用者・家族が理解できるよう説明し同意を得て交付し、職員、家族の共通の認識のもとに確実にサービスを提供することが大切である。 さらに、サービス提供上問題を把握した際には、速やかにケース担当者会議等で検討を行い、サービスの変更等適宜適切な対応を行う必要がある。

② 状態悪化時の対応と家族への連絡 利用者の状態悪化に迅速かつ適切に対応するためには、日ごろの利用者の状態を適切に把握するとともに、状態に変化があった場合、家族や主治医、介護支援専門員等と密接に連携して適切に対応をすることが重要である。 また、利用者・家族が安心してサービスを受けられるよう各職員の責務を明確にし、常に危機意識をもってサービス提供ができるように、マニュアル等の再整備や研修等によりリスク管理体制を整え、事業所の責務を果たす必要がある。

短期入所生活介護

*要介護4*脳梗塞により片麻痺、認知症*食事は自立(きざみ食、やわらかい物を提供)*短期入所生活介護を毎月定期的に利用*今回は10回目の利用で5日間の利用

*同居の子

利用者の状況 相談者の状況

利用者・相談者等の状況

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24 介護サービスにおける苦情への対応

(5)特定施設入居者生活介護 特定施設入居者生活介護(以下「特定施設」という。)は、近年、有料老人ホーム等の増加により、利用者数が急激に増加しています。有料老人ホームをはじめとする特定施設は、施設により、入居金や医療対応、サービス提供方法等が様々な形態となっており、利用者・家族にとっては、提供されるサービスの内容等が大変わかりにくくなっています。 入居にあたって、利用者は、有料老人ホーム等の入居契約とともに、介護保険サービスを利用する場合には、特定施設サービスの契約を締結しますが、利用者・家族は、それぞれの契約内容等が十分理解できないままサービスを受け、苦情となる場合が目立っています。 契約書や重要事項説明書には、介護内容や人員体制、入居一時金の取り扱い等についてわかりやすく記載するとともに、利用者・家族が理解できるよう懇切丁寧

に説明する必要があります。また、有料老人ホーム等としてのサービスと介護保険サービスとして行われるサービスについても十分な説明を行い、同意を得ることが必要です。 特定施設の中でも有料老人ホームは、入居一時金を支払って入居するケースが大半であることから、利用者は金額に見合ったサービス水準を求めていますが、職員の配置や医療対応の状況など、利用者が想定しているサービスと事業所の提供できるサービスの間に齟齬が生じ、説明や理解不足によって苦情に発展するケースが見受けられます。 説明不足による苦情を解消するため、日頃から有料老人ホーム等と特定施設双方の契約やサービス内容等について、利用者・家族が理解できるよう入居当初だけでなく、サービス提供開始後も適宜、具体的に十分な説明を行うことが大切です。

① 契約書、重要事項の説明 契約にあたって、介護内容や人員体制、入居一時金の取り扱い等について、利用者・家族にわかりやすく、十分説明する必要があります。<厚生省令第 37 号 第 178 条 内容及び手続きの説明及び契約の締結等>

② 介護サービスについての説明 利用者にとっては、有料老人ホーム等と特定施設の関係はわかりにくいため、提供する介護サービスの内容や人員体制、サービスの提供方法等について、利用者にわかりやすく説明し、理解を得ることが重要です。<厚生省令第 37 号 第 183 条 指定特定施設入居者生活介護の取扱方針>

サービス提供上の留意点

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25介護サービスにおける苦情への対応

ノロウイルスの蔓延に正しい対策がとられなかったのではないか

苦 情 概 要

 施設内で発生したノロウイルスが原因で、入居からわずか8日目に入院し、入院から5日後に亡くなった。 施設内でノロウイルスが蔓延したことに対して、正しい対策を講じていなかったのではないか。

調査で把握した状況

① 入居2日目から発症者が続いていた。  入居4日目から、協力医療機関の往診医への連絡、他医療機関への受診、保険者と保健所への連絡、発症した利用者への対応、利用者全員の入浴中止、看護職員による利用者の胃腸炎症状の有無の確認を行っていた。職員については担当以外の階への出入り自粛、未発症者の対応後に発症者の対応、手洗い・マスクの使用の徹底、体調不良時は自己申告し出勤停止とする等の対応をしたが、職員の感染や各階の利用者からノロウイルスの感染者が出た。  しかし看護 ・介護記録等に感染症対応の具体的な記録がなく、感染症対応マニュアルはあったが職員への周知は不十分であった。感染終息後に感染症対策委員会が行われていたが、今回の感染対応についての検討は行われていなかった。② 家族へは発生通知を送付し、面会自粛措置を行った。発症者の家族には毎日状況報告し、発症していない利用者の家族へは週1回の状況報告を行っていた。

  入居7日目の午前中、利用者に嘔吐があったことを介護職員が家族に電話したがつながらずメールで連絡した。メールを見た家族から同日、電話で利用者の状態や対応等について問い合わせがあったが詳しい説明をしていなかった。その後、家族が来所したが面会を断り、説明もしていなかった。③ 特定施設サービス計画には、糖尿病などの持病があるため1日のカロリーと塩分を守り症状悪化を防ぐ目標が立てられていた。  しかし、介護記録、食事水分チェック表によると入居当初から食事摂取量が少なく、入居5日目からはほとんど食事が摂れていなかったが、このことについて、事業所としてどのように検討し対応したのか記録がなく確認できなかった。

苦情の要因と対応のポイント

① 感染症への対応  感染症が発生した際には、組織として速やかに対応し、発症者の状態や対応について具体的に記録することにより職員間で情報を共有することが大切である。 また、事業所の実態に即した感染症マニュアルを整備して、研修等により職員に周知を図るとともに、感染症対策委員会などで具体的実践的な対応策等の検討を行う必要がある。 さらに、日頃から利用者、職員の健康管理を徹底し、研修等により感染症への職員の意識を高めるとともに、職員や協力医療機関との連携体制等を明確にすることも重要である。

特定施設入居者生活介護

*要介護3*糖尿病、軽度の心不全*入居前1か月間入院し病院から直接入居

*別居の子

利用者の状況 相談者の状況

利用者・相談者等の状況

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26 介護サービスにおける苦情への対応

② 家族への説明 利用者の状態悪化時は、適宜適切に家族に情報を伝える必要があり、利用者の状態等を家族に伝える事項や方法を明確にして、利用者・家族、施設職員に周知し、確実に伝える体制を整え、情報が確実に伝わるようきめ細かい説明及び配慮を行う必要がある。 また面会謝絶等で直接会うことができなくなった利用者・家族については、心情を考慮して懇切丁寧に説明する等により、家族が状況を理解し適切に判断できるよう支援する必要がある。

③ 特定施設サービス計画に基づく介護 食事は、健康状態を維持し良好に保つ基本であり、特に食事摂取に課題のある利用者には具体的な支援策を計画に位置づけ、摂取量等を観察記録するとともに、食事が摂れない場合には看護・介護職員が連携して対応し、主治医に意見を求める等適切な健康管理を行う必要がある。 利用者の心身の状態を明確に把握し、問題点を明らかにして、特定施設サービス計画に反映させるとともに、職員間で情報の共有を行い、実施状況の把握によって計画との齟齬がみられた場合には、原因や対応策を検討する必要がある。

(6)介護老人福祉施設、介護老人保健施設、   介護療養型医療施設 介護保険制度は、在宅介護を基本理念としていますが、在宅で介護することが困難となった要介護者に対し、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設(以下「施設」という。)が用意されています。入所者は重度化しており、転倒事故や状態悪化・急変が起こりやすくなっています。 また、家族が日頃の入所者の状態を十分理解していない場合もあり、転倒等の事故発生時や入所者の状態悪化時の対応について苦情となることが多くなっています。その他にも、私物の紛失、職員の言動が不適切、十分な介護サービスが受けられないなどの苦情が見受けられます。 苦情となる原因には、入所者の心身状況やリスク情報(事故歴、行動特性など)及び家族の要望の把握が不十分、職員の技能が未熟、緊急時対応の遅れ、入所者等への説明不足などがありますが、施設と入所者・家族との信頼関係が日頃から図られていなかったこと

も苦情につながっています。苦情の原因や再発予防について検討し、研修の充実、緊急時の対応の見直し、入所者・家族への丁寧な説明、職員間における入所者の情報の共有化に努める等が大切です。 施設サービスにおいては、施設の種別により機能や役割、設置基準、職員体制などが各々異なっていますが、特に医療対応の相違について家族が十分に理解していないことが多いことから、入所者の状態悪化時の対応等に関する苦情が発生しています。入所時には、施設の概要及び施設サービスに関する重要事項を家族が理解できるよう丁寧に説明し、同意を得ておくことが重要となります。 また、適切な施設サービス計画を作成し確実に実施していくためには、職員間の連携体制が不可欠であることから、研修やカンファレンスによる職員の資質の向上が課題となります。そして何よりも、日頃から情報の共有化や意思の疎通を図り、施設と家族の信頼関係を構築しておくことが大切です。

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27介護サービスにおける苦情への対応

① 入所者の状態の把握 入所にあたっては、入所者の状態を家族、主治医など関係者に確認し、介護内容や留意点について、家族を含めた関係者間で十分に話し合う必要があります。<厚生省令第 39 号第 7 条 入退所 (*介護老人福祉施設の省令を例示。以降同様。)>

② 適切なサービス提供と記録の活用、職種間の連携 入所者の状態に応じた適切な介護を行うとともに、介護内容や入所者の状態について適切に記録することが重要です。さらに、入所者の状態の変化や状態悪化時に適切に対応できるよう、記録を活用し職員間で情報の共有化を図る必要があります。<厚生省令第 39 号第 11条 指定介護福祉施設サービスの取扱方針><厚生省令第 39 号第 37 条 記録の整備>

④ 状態悪化や事故への対応 介護サービスの適切な実施には、看護、介護職員の知識・技術の向上が不可欠です。状態悪化や事故に適切に対応するためには、状態悪化時及び事故発生時の対応について留意すべき症状等も含めてマニュアル化する等、業務に関する検討や職場研修を充実し、介護サービスの質の向上を図る必要があります。<厚生省令第 39 号第 35 条 事故発生の防止及び発生時の対応>

③ 施設サービス計画の作成と入所者・家族への説明  施設サービス計画は、入所者の生活の質に直接影響する重要なものであることを認識し作成する必要があります。また、計画内容について、入所者・家族に十分説明し、同意を得る必要があります。 また、入所者の心身の状態やサービスの提供の状況について、家族に対し適宜適切に説明する必要があります。特に状態の急変時は家族も動揺していることから、身体状況やその後の方針の説明には、家族の心情を汲み取り、できる限りわかりやすい言葉を用いるなど、細かい配慮が必要です。<厚生省令第 39 号第 12 条 施設サービス計画の作成><厚生省令第 39 号第 15 条 相談及び援助>

サービス提供上の留意点

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28 介護サービスにおける苦情への対応

入浴時に骨折したが、事故対応や説明に納得がいかない

介護老人福祉施設

苦 情 概 要

 「入浴時にいすから落ちたが、施設医に見せたところ異常がなかった」と報告を受けた。しかし、後日、足の向きがおかしく痛がるため整形外科を受診し、大腿骨骨折と言われた。 施設の事故対応やその後の対応及び説明に納得がいかない。

調査で把握した状況

① 入所者はいす浴での入浴を実施していたが、事故当時は座位が保てず、ずり落ちが見られたため、ベルトをはずし背もたれ部分を倒して入浴介助を行っていた。入浴後脱衣所へ移動し、背もたれを元の位置に戻した際、ベルトが未着用だったためイスからずり落ち、前にある棚に左前額部をぶつけた。  浴室内では2人体制で介助を行っていたが、脱衣所では職員1人で対応していた。  施設サービス計画書、アセスメント、モニタリング等には入浴方法に関する具体的な記載はなく、事故後に作成された計画書にも特記等の記載はなかった。② 事故後直ちに看護職員が左前額部や左下肢等の発赤を確認した。  痛みの訴えもあったが部位の特定はできず、受け応えはできていたため、嘔吐や意識レベルの変化に注意するよう指示を出し、施設医へは報告しなかった。昼食時来所していた家族に報告したところ、昼

食を食べないとの訴えがあり、施設医の診察を受けた。頭部のCT検査で異常がない旨、家族に報告した。 後日、足を痛がるため家族が整形外科を受診させ、骨折が判明した。

苦情の要因と対応のポイント

① 施設サービスの提供  介護サービスの提供にあたって、事業者は入所者の心身の安全を守る義務がある。 入所者が安全に入浴できるよう、具体的入浴方法について十分検討し、施設サービス計画等で明確にするとともに、実施状況を確認し、提供困難な状況であれば対応について検討する必要があった。 入所者の特性を考慮し、安全に配慮した介護方法を検討するとともに、サービスの提供に細心の注意を払い、事故の発生を防ぐ必要がある。

② 入所者の状態把握と職員間の連携 事故や状態悪化等により入所者の状態が変化した場合には、医師、看護・介護職員等で情報を共有して、家族等関係者と連携を図るとともに、医療機関へつなぐなど迅速・適切に対応する必要がある。 また、日ごろからの入所者のさまざまな状態変化等に対し常に危機意識をもってサービス提供ができるよう、マニュアル等の再整備や研修等によりリスク管理体制を早急に整えるとともに、入所者の状態やサービス提供状況を継続的、具体的に把握し情報を共有化するため、記録の整備、充実を図り、配置医をはじめとして各職員が職責を果たせるよう努める必要がある。

*要介護4*認知症

*入所者の子

入所者の状況 相談者の状況

入所者・相談者等の状況

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29介護サービスにおける苦情への対応

食事時のとろみ剤の使用を、家族に説明なく中止していた

介護老人保健施設

苦 情 概 要

 入所時から食事時にはとろみ剤を使うよう依頼していたが、家族に相談なく使用を中止し、母の状態についてのきちんとした説明もなかった。 その後、状態が悪化し退所することとなったが、施設はほとんど支援してくれなかった。

調査で把握した状況

① 食事や水分摂取においてむせる等の症状がある場合は、水飲みテストを行っている。入所時に水飲みテストを実施し、軽いとろみ剤を使用して経過観察を行っていたが、むせ込みがなかったため再度水飲みテストを実施し、とろみ剤を使用せず経過観察を行うこととなった。  しかし、家族には水飲みテストの実施やとろみ剤の使用中止について、使用中止後に看護職員から説明していた。  その後、むせ込みがあり再び水飲みテストを実施し、とろみ剤の使用を再開したが、家族への説明をいつどのように行ったか確認できなかった。② 入所約1か月後より血圧の上昇や食事摂取量のむら、発熱、痰のからみ等が見られ、看護職員が状況を説明し、精密検査が出来る病院受診を勧めていた。家族は、在宅時の主治医への受診を希望し、家族自身が連絡をとっていたが、受診には至らず、その後も、入所者の状態は悪化した。

  状態悪化の状況や精密検査の必要性等の説明を、家族が十分理解できていたとは言えなかった。また、施設が、家族や在宅時の主治医等とどのように連携し支援したのか記録が少なく確認することが出来なかった。

苦情の要因と対応のポイント

① サービス提供及び家族への説明  入所者にとって、食事摂取は適切に療養するうえで重要であり、入所者の食事摂取状況や食事形態の変更等について家族が理解できるよう丁寧に説明し、家族と連携を密にして適切に対応する必要がある。 特に、家族が要望していることについては、施設ができる対応やサービス提供方法等について懇切丁寧に説明を行い、理解と同意を得て施設サービスの提供に努める必要がある。

② 状態悪化時の対応 状態悪化時には、入所者の状態や今後の予測等について家族が理解出来るよう具体的に説明し、家族が入所者の状況等を理解し適切に判断できるよう支援するとともに受診等の支援を適切に行うなど入所者の状態悪化を防ぐため適切に対応する必要がある。 特に、家族等が施設外部の医師と連携している場合などには、家族の協力を得て施設外部の医師と連携を図るなどにより施設と家族や関係者が情報を共有化し、入所者・家族が安心して施設サービスを受けられるよう努める必要がある。

*要介護5*脳出血による片麻痺、嚥下障害、認知症

*同居の子*主介護者

入所者の状況 相談者の状況

入所者・相談者等の状況

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30 危機管理

 最近の介護サービスにかかわる苦情等の事例を見ると、事業所内で転倒・骨折等の事故が発生し、利用者の家族等が苦情申立あるいは弁護士を立てて折衝、更には、裁判に発展するケースもあります。 また、示談のうえ和解した場合でも、結果として事業者が一定額を利用者・家族に支払うケースがあります。これらは、良質・安全なサービス提供への

利用者の権利意識が強まった表れと思われます。 危機管理とは、危険の存在や事故の発生を事前に予測して適切な予防策を講じたり、万一事故が起きた場合は、素早く対応して被害を最小限に食い止めることであり、事業者は危機管理意識を高め、適切に対応する必要があります。

(1)安全配慮義務とは 介護サービスにおいて、事業者は契約で定めたサービスを行うほか、利用者の心身の安全を守るという義務があり、それを果たさなければなりません。なぜなら、利用者は常に潜在的リスクを有しており、事業者はそのリスク情報を把握しているため、一般にサービス提供に伴い事故が起き被害が生じれば、事業者側に安全配慮義務違反という過失責任が課せられる場合が多くあります。

(2)安全配慮義務を果たすために 安全配慮義務を果たすということは、人の生命、身体、健康を保護するために現場(食事介助、入浴介助、排泄介助等)で手を尽くすことです。この現場対応で、介護の専門職には裁量的な判断が求められます。事故予見の判断を誤り、また、事故回避措置を誤ると安全配慮義務違反または行為ミスとして事業者は事故被害に対する損害賠償の責任を問われます。 判例では、重要な争点として下記の2点が注目されています。

① リスクの発見(結果の予見可能性) 危険・事故が予見できれば即時に対応し、利用者自らが危険に接近した場合でも、事故を回避するための積極的措置を講じなければなりません。つまり、事故発生の予見可能性の有無が問題となります。

・兆候、異常の発見 ・現場、個人差による予見可能性の判断・介入のタイミングの判断

 事故についての「予見可能性」の有無の問題は、訴訟においては最大の争点になるといっても過言ではありません。「安全配慮義務」違反の存否の判断に大きく影響することになります。 いずれも研修と訓練を要する難しい問題ですが、専門職として修得しなければなりません。

危機管理

1 危機管理の必要性

2 安全配慮義務について

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31危機管理

 介護サービス提供中に発生した転倒等による事故について、事業者は生命、身体の保護を最優先とし、迅速に対応するとともに被害を最小限に食い止めなければなりません。 事業所は事故発生時の対応についてあらかじめマ

ニュアル等に定めておき、職員に周知徹底しておくことが大切です。 施設での事故対応を例としてマニュアル等に盛り込む留意点を例示しましたので参考にしてください。

 利用者が転倒又は転落等しているのを発見した場合、最初に利用者の身体状況を把握することが重要となります。発見者は主に次のような点に注意して観察します。

ア 負傷部位の確認(打撲、外傷、内出血等)イ 疼痛の有無及び程度ウ 意識ははっきりしているか。エ 顔色は悪くなっていないか。オ 吐き気、嘔吐はないか。カ 負傷部位の変形や皮膚の変色はないか。キ 負傷部位の腫れがないか。

上記の確認を行ったうえ、施設医師又は看護職員に連絡し、即救急対応する必要性の有無を判断します。

また、看護職員等が来るまでに、次のような応急処置をしておくことが大切です。

ア 出血がある場合:清潔な布やタオルで傷口を軽く圧迫しておく。

イ 頭部を打った可能性がある場合:周囲の安全を確認して動かさない。

ウ 骨折の症状が少しでもある場合:動かさずに骨折部位の固定をする。

 事故発生後の適切な心身の状態把握及び応急処置は、その後の対応に大きな影響を及ぼしますので、職員に周知徹底しておくことが大切です。

(1)初期の状態観察

② 結果回避の措置・対応 具体的な救済のための行為義務があり、放置すれば安全配慮義務違反となります。つまり、危険・事故の予見可能性があった場合、その結果発生を回避する努力を如何にしたかが問題となります。

・人命、身体保護のための最適な措置をとる。・緊急時にはマニュアルでは間に合わない場合がありえます。  各現場それぞれの場面によって異なる措置を、適切に実行するためには、日常の訓練の積み重ねを必要とします。

3 事故対応のポイント

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32 危機管理

 発見者は施設医師又は看護職員に連絡し、即救急対応する必要性の有無を判断します。その結果、救急車対応や協力医療機関へ搬送等する場合、職員1名は同行し、一連の経過や利用者の状態を把握してください。また、その経過を必ず家族等に報告してください。

ア 緊急対応は、組織内の連絡網に沿って行う(例:看護師長→施設長)。

イ 協力医療機関、嘱託医(介護老人福祉施設の場合)の連絡先の確認。

 多くの施設において、夜勤時間帯は医師及び看護職員が不在となるため、転倒又は転落等の事故に備え、連絡網の整備などマニュアル等を作成し、職員に周知する必要があります。

(2)施設医師・看護職員への連絡

 事故対応における苦情で、最も多いのが家族への連絡に関するものです。家族への連絡が適切に行われていなかったり、職員の引継ぎが十分なされていないことが苦情につながるため、慎重な対応が求められます。家族への連絡を適切に実施するには、次のような点を事前に決めておき、職員に周知しておくとともに家族とも協議しておく必要があります。

ア どのような場合に● 利用者の心身の状態がどのような場合

に連絡するのか。イ いつ

● 深夜における事故発生については、いつの時点で連絡するのか。

ウ 誰が、誰に● 介護担当者が連絡するのか、それとも医

師又は看護職員が連絡するのか。管理者が連絡するのか。(連絡体制の整備)

● キーパーソンに連絡するのか。不在の場合は誰に連絡するのか。

(事前に複数の緊急連絡先の確認)

(3)家族への連絡

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33危機管理

 事業者は、サービス提供中に発生した事故に関して、発生状況や対応経過等を家族等に対し説明する必要があります。事実に基づいた説明を行うためには事故に関する記録が重要な役割を果たすので、必ず記録をとるようにしてください。また、記録に基づき、当該事故の関係者を含めて組織的な検討を行い、事故原因を特定する必要があります。事業者だけでは事故原因が特定できない場合があるので、予め外部の専門家(弁護士、医師、学識経験者等)を

選任しておき、アドバイザーとしての役割を担ってもらうことも考えられます。なお、記録の保存期間については、運営基準上では2年間となっています。しかし、民法において不法行為による損害賠償の請求権は3年間【民法709、724条】、安全配慮義務違反(債務不履行)による損害賠償の請求権は10年間【民法415条】と規定されていることから、このことを踏まえた対応が必要となります。

(4)事故に関する記録と原因の特定(事故報告書の作成)

 事故原因が判明したら、迅速に家族と面談し、事故に関する経過や原因など、客観的事実に基づいて正確に説明を行ってください。事実を曖昧に説明したり、隠したりすると利用者等に不信感を与え、苦情が大きくなる要因になります。事業者は、事故が発生してしまった場合は真摯に受け止め、利用者家族に対応するよう心がけてください。事業者として、利用者及びその家族の怒りを緩和させ、冷静な話し合いができるような状況にしていくことが大切です。以上の対応については、組織上の管理者が迅速に行うべきものでありますが、誤解等を

回避するために、事故に関する経過や原因を把握している職員も同行するようにしてください。 なお、利用者等への説明は誰が行うかについても、十分検討し、誤解や不信が生まれないよう注意することも大切です。

(5)利用者等に対する誠実な対応

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34 危機管理

保険者 事業者の過失の有無にかかわらず、次の事項を事故報告書としてまとめ、区市町村等に報告します。なお、区市町村への報告事項については予め各区市町村へ確認してください。

ア 利用者● 氏名、性別、年齢、被保険者番号、要介

護度イ 事故の概要

● 事故状況、発生日時、発生場所、経緯、原因

ウ 事故時の対応● 治療した医療機関とその所在地● 治療の概要● 家族への連絡状況

エ 利用者の経過

居宅介護支援事業所 居宅サービス提供中に事故が発生した場合、利用者を担当している居宅介護支援事業者に事故の経過等を連絡し、今後の利用者に対する介護サービスの提供等について協議してください。

保険会社 損害賠償問題が予想される事故の場合は、事業者が加入している保険会社等にも事故に関する報告をします。その際には、保険者に報告したとおり事実を正確に報告してください。なお、事業者の過失の有無によって、保険の種類が異なりますので加入している保険会社に確認してください。

(6)関係機関への連絡

 (5) のように利用者等に説明したが、納得を得られないなど、解決に至らなかった場合、利用者との最終的な解決に向けて示談交渉する場合があります。

示談交渉するときは、できる限り弁護士などの専門家に相談等をしながら臨むようにすることも大切なことです。

(7)示談(紛争の回避に向けて)

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35危機管理

参考 事故対応のフロー図

損害保険会社

事故報告書どおり事実に基づき、報告する。

保 険 者

過失の有無に関係なく、事故報告書にて事故の報告を行う。

居宅介護支援事業所担当介護支援専門員

居宅サービスの場合…

事 故 発 生

  利用者等が納得しない場合など

(7)示談(紛争の回避に向けて)・弁護士など専門家に相談しながら対応する。

(5)利用者等に対する誠実な対応・事故に関する経過や原因等を事実に基づき、利用者等に説明する。

(4)事故に関する記録と原因の特定・事故の発生状況や対応経過について、関係職員が記録する。(→事故報告書の作成)・記録に基づき、事業所内で検討し、事故原因を特定する。

(3)家族への連絡・どのような場合に連絡をするのか、事前に家族と協議しておく。・事前に家族と協議をした結果に基づき、連絡する。

(2)施設医師・看護職員への連絡・連絡網に基づき、施設医師又は看護職員に連絡し、今後の対応について指示等を受ける。・救急車対応や協力医療機関へ搬送等した場合、職員1名は同行し、一連の経過や利用者の状態を把握する。・医師、看護職員への連絡網などを整備しておく。

(1)初期の状態観察・利用者の身体状況を注意して観察し、必要に応じて応急処置をする。

(6)関係機関への連絡

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36 危機管理

 施設は、介護職員、看護職員、生活相談員、機能訓練担当者等、多職種の職員が勤務しています。したがってADL情報、判断力(認知症)の程度、事故歴、診療情報提供書、服薬状況など入所者の心身状況及び事故発生の

リスク要因を把握し、ケアカンファレンス等において、個人情報保護に配慮して関係職員が情報を共有し、事故発生の未然の防止策を徹底することが大切です。

(1)入所者の心身の状況把握と情報の共有

 入所者の心身の状況把握を行ったのち、計画担当介護支援専門員は施設サービス計画を作成することになります。入所者が現に抱える問題点を明らかにし、解決すべき課題を把握するとともに、入所者の家族の希望を勘案して次の事項を記載した施設サービス計画を作成してください。

総合的な援助の方針

ア 生活全般の解決すべき課題イ サービスの目標及びその達成時期ウ サービスの内容エ サービスを提供する上での留意事項等 施設サービス計画について、事業者は入所者又はその家族に対して説明し、同意を得るとともに計画書を交付してください。

(2)適切な施設サービス計画の作成及び家族への説明

  入所時の重要事項を説明する際に…

 事業所における緊急時の対応方法について、入所時に行う重要事項の説明の際に文書を交付しながら入所者等と確認し、同意を得ておくこともトラブル回避の有効な方法であり、必要不可欠なことです。また、この時点で管理者や生活相談員等は入所者の心身状況及び生活歴や介護歴、家族等の視点からのリスク要因や不安を十分に把握しておく必要があります。

4 事故発生を防ぐためのポイント(施設サービスの事例)

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37危機管理

 定期的に入所者に面接するなど施設サービス計画の実施状況を把握し、併せて利用者の日常の状態を把握してください。また、実施

状況及び日常の状態について、入所者等及び担当者との連絡を継続的に行うとともにその結果を記録してください。

(3)モニタリングの実施

 事業所ごとに事故発生のリスク要因は異なっているため、事故防止委員会等で事故やヒヤリ・ハットの記録を分析して、潜在しているリスク要因を把握し、それを有効活用して具体性のある再発防止策を検討する必要があります。 また、事故発生防止マニュアル等を作成し、事故発生の防止に向けてマニュアルに沿った日常業務の実施を徹底してください。

※事業所において本部などの上部組織がある場合、本部の統一した事故防止マニュアルをそのまま適用させている事業所が見受けられます。しかし、各事業所ごとに設備や介護 ・居住環境がそれぞれ異なります。そのため、その状況に応じた各事業所ごとのマニュアル作成が必要です。

(4)事故やヒヤリ・ハットの検証と事故発生防止マニュアルの作成

 職員間において、事故発生のリスク要因等が共有されていても、サービスを提供する職員の介護技術や知識が不十分であれば、転倒・

転落の事故が発生する可能性が高くなります。事業所内外を問わず、介護技術や知識に関する研修等の機会を確保する必要があります。

(5)介護技術等の研修の充実

※参考「福祉施設におけるリスクマネジメント」

多久島耕治 著

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38 危機管理

 本会に寄せられた苦情には、利用者の状態悪化への対応が適切でなかったために苦情となった事例も多く見られます。

 利用者の状態悪化に適切に対応するためのポイントは、前述の事故発生を防ぐためのポイント(施設サービスの事例)とほぼ同じですが、特筆すべき点として以下の点が考えられます。

 サービス開始時に利用者の心身の状況を適切に把握することは、その後の円滑なサービス提供のために非常に重要であり、状態悪化時の適切な判断と対応につなげることができます。特に通所系サービス、ショートステイなど、家族が利用者を預け、繰り返し利用する介護サービスでは、事業者は利用者の心身の状態変化がないものと安易に判断し、十分に利用者の直近の状態を把握しないままサー

ビス提供が行われたことにより、事故等が発生し苦情に至ったケースが見受けられます。 心身の状態の把握を適切に行うためには、主治医との連携や診療情報提供書を求めるなど情報収集を十分行う必要があります。日頃からサービスに係わる事業者、介護支援専門員、家族、主治医等関係者間での密接な連携を行い、利用者に適切なサービスを提供にしていく必要があります。

(1)サービス提供開始時の適切な状態把握

 利用者の状態悪化に適切に対応するためには、サービス提供に際して利用者の状態の変化を早期にキャッチすることが重要です。

 日頃から体温などのバイタルチェックや食事、水分摂取状況等を含めた利用者の状況を把握し、記録し、職員間での情報の共有に努める必要があります。

(2)日頃の的確な状態把握

 利用者は、高齢で疾患等を抱えている利用者も多く、常に状態が変化する可能性があります。 利用者の状態に変化が起こった時には、利用者の状態を的確に把握し、状態に合わせた適切な処置を行うとともに、医師に連絡するなどの対応を行わなければなりません。 また、利用者の状態は時間の経過によって

変化することもあります。経過を追って利用者の状態観察を行い、状態に変化が表れたときには、迅速に医師につなげることが重要です。 状態観察にあたっては、発熱の状態や意識の有無、嘔吐の様子など、できるだけ詳しく確認し、記録に留め、その後の処置につなげる必要があります。

(3)状態悪化時の適切な対応

5 状態悪化時の対応ポイント

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39危機管理

 利用者の状態が悪化し、医療対応が必要になった場合は、速やかに医師、看護職員等の医療関係者に連絡し指示を仰ぐ等の対応が必要です。 しかし、現場では、利用者の状態の変化に気づいても、医師や看護職員に連絡しなければならない緊急を要する状態であるか否かと

いう判断ができないまま、さらなる状態の悪化を招いたケースも散見されます。 日頃から、状態悪化時の対応の判断基準について整理しマニュアル等にまとめ、医療関係者との連携を密に行う等、緊急時に備えた体制を整えることも大切です。

(4)医療との連携

 高齢者の心身の状態は日々変化します。特に施設サービスなど、家族と離れた場所でサービスを行う場合、利用者の状態を十分家族に伝えていないため、家族が認識している利用者の心身の状態と実際の状態の間に差異が生じ、急激な状態変化が起きた

際の対応を巡って苦情になるケースもあります。 日頃から家族とコミュニケーションを図り、利用者の心身の状態やサービス提供の状況、抱えている課題などについて、共通認識を持つことが大切です。

(5)家族との連携

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40 参 考 資 料

参 資考 料

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41参 考 資 料

「東京都における介護サービスの苦情相談白書」より一部抜粋参考資料

1 高齢者介護にかかわるデータ

2 苦情等の状況

● 要介護(要支援)認定者 (単位:人)

区 分 平成20年4月末

平成21年4月末

平成21年9月末

平成22年4月末

平成22年9月末

東京都

要支援1 50,427 53,363 53,955 54,767 58,771

要支援2 51,455 52,882 52,520 54,293 54,821

経過的要介護 27

要介護1 61,958 63,670 66,614 69,124 72,471

要介護2 70,061 71,831 73,300 75,344 77,076

要介護3 63,004 64,764 63,382 62,631 61,462

要介護4 52,400 53,278 55,204 56,500 56,819

要介護5 45,265 46,838 49,439 51,517 53,137

計 394,597 406,626 414,414 424,176 434,557

全 国

要支援1 551,720 574,997 597,971 603,560 646,281

要支援2 629,071 661,881 647,915 653,899 655,822

経過的要介護 1,460 167

要介護1 769,388 788,133 821,762 852,325 886,016

要介護2 806,110 822,691 831,720 854,158 874,017

要介護3 711,337 737,951 724,645 712,847 701,504

要介護4 578,873 589,512 610,706 629,757 634,055

要介護5 500,255 514,758 539,056 563,671 582,900

計 4,548,214 4,689,923 4,773,942 4,870,217 4,980,595

出典:厚生労働省「介護保険事業状況報告」(暫定)

● 苦情分類項目別(9 項目)の状況 (単位:件、%)

区 分

東京都内 国保連合会「苦情・相談」(別掲)( )内は苦情の再掲

20年度 21年度 22年度 20年度 21年度 22年度

件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合

①要介護認定 295 8.1 225 7.8 251 9.6 17 1.9 20 1.9 12 1.2

②保険料 1,011 27.7 427 14.8 244 9.3 8 0.9 7 0.7 5 0.5

③ケアプラン 84 2.3 69 2.4 63 2.4 19 2.1 29 2.7 19 1.9

④サービス供給量 34 0.9 34 1.2 13 0.5 2 0.2 1 0.1 0 0.0

⑤介護報酬 31 0.8 25 0.9 18 0.7 67 7.6 58 5.5 24 2.4

⑥その他制度上の問題 176 4.8 139 4.8 89 3.4 43 4.9 56 5.3 26 2.6

⑦行政の対応 137 3.7 99 3.4 74 2.8 16 1.8 31 2.9 22 2.2

⑧サービス提供・保険給付 1,569 42.9 1,576 54.8 1,545 59.0 420 47.5 531 50.0 485 48.1

⑨その他 317 8.7 284 9.9 322 12.3 293 33.1 328 30.9 416 41.2

合計3,654 100.0 2,878 100.0 2,619 100.0 885 100.0 1,061 100.0 1,009 100.0

(400) (511) (475)

注1 構成比(割合)を示す数値は小数点第2位を調整しているため、総数と内訳が一致していない場合がある(以降の構成比(割合)も同様)

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42 参 考 資 料

● サービス種類別苦情の状況及び利用件数

注1)利用件数については、国保連合会の介護給付費の実績を用いた。

区 分

東京都 利用件数

20年度 21年度 22年度21年 3月 22年 3月 23年 3月

件数 割合 件数 割合 件数 割合

居宅サービス計 1,155 73.5 1,094 69.5 1,129 72.9 614,624 656,499 702,216

居宅介護支援 354 22.6 332 21.1 351 22.7 163,755 173,150 181,760

訪問介護 404 25.7 316 20.1 305 19.7 104,005 106,120 109,132

訪問入浴介護 13 0.8 24 1.5 21 1.4 12,028 12,176 12,421

訪問看護 14 0.9 27 1.7 29 1.9 29,510 31,144 33,309

訪問リハビリテーション 5 0.3 11 0.7 17 1.1 4,530 4,977 5,500

居宅療養管理指導 4 0.3 12 0.8 5 0.3 63,756 71,425 83,088

通所介護 122 7.8 133 8.4 150 9.7 76,760 85,640 94,627

通所リハビリテーション 30 1.9 23 1.5 36 2.3 18,940 19,582 19,933

短期入所生活介護 100 6.4 93 5.9 95 6.1 18,030 19,534 19,721

短期入所療養介護 14 0.9 11 0.7 9 0.6 3,459 3,418 3,365

特定施設入所者生活介護 54 3.4 64 4.1 78 5.0 21,006 23,255 26,004

福祉用具貸与 21 1.3 29 1.8 20 1.3 98,845 106,078 113,356

特定福祉用具販売 7 0.4 9 0.6 - - -

住宅改修 13 0.8 10 0.6 13 0.8 - - -

施設サービス計 249 15.9 317 20.1 266 17.2 63,153 64,198 64,970

介護老人福祉施設 130 8.3 167 10.6 155 10.0 35,447 36,289 37,532

介護老人保健施設 107 6.8 123 7.8 99 6.4 19,122 19,879 19,949

介護療養型医療施設 12 0.8 27 1.7 12 0.8 8,584 8,030 7,489

地域密着サービス計 44 2.9 69 4.4 47 3.1 16,451 17,886 19,489

夜間対応型訪問介護 2 0.1 2 0.1 2 0.1 1,475 1,850 2,145

認知症対応型通所介護 4 0.3 22 1.4 7 0.5 9,139 9,536 9,771

小規模多機能型居宅介護 5 0.3 9 0.6 5 0.3 590 894 1,239

認知症対応型共同生活介護 31 2.0 33 2.1 28 1.8 5,158 5,420 6,075

地域密着型特定施設入居者生活介護 1 0.1 1 0.1 4 0.3 69 109 131

地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 1 0.1 2 0.1 1 0.1 20 77 128

介護予防サービス計 121 7.9 96 6.1 103 6.7 140,612 147,955 163,512

介護予防支援 46 2.9 46 2.9 41 2.7 58,504 61,286 66,809

介護予防訪問介護 54 3.4 29 1.8 34 2.2 39,110 39,610 42,020

介護予防訪問入浴介護 78 64 75

介護予防訪問看護 1 0.1 2 0.1 1 0.1 2,402 2,546 2,903

介護予防訪問リハビリテーション 1 0.1 2 0.1 417 452 562

介護予防居宅療養管理指導 1 0.1 4,594 4,608 5,177

介護予防通所介護 8 0.5 4 0.3 15 1.0 19,711 21,599 24,778

介護予防通所リハビリテーション 4 0.3 5 0.3 5 0.3 3,464 3,467 3,568

介護予防短期入所生活介護 1 0.1 371 340 328

介護予防短期入所療養介護 52 42 38

介護予防特定施設入居者生活介護 2 0.1 3 0.2 2,885 2,899 3,093

介護予防福祉用具貸与 1 0.1 4 0.3 2 0.1 8,948 10,948 14,047

特定介護予防福祉用具販売 1 0.1 1 0.1

介護予防住宅改修費 1 0.1 2 0.1

介護予防認知症対応型通所介護 1 0.1 50 52 36

介護予防小規模多機能型居宅介護 20 33 64

介護予防認知症対応型共同生活介護 2 0.1 6 9 14

合計 1,569 100.0 1,576 100.0 1,545 100.0 834,840 886,538 950,187

単位:件、%

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43参 考 資 料

※ 「苦情発生率」:利用件数1万件当たりの苦情件数=苦情件数÷〈利用件数÷10,000件〉注1) 苦情件数は、平成22年4月から平成23年3月までの累計件数である。注2)利用件数は、国保連が平成22年4月から平成23年3月までに提供されたサービスとして請求を受け審査決定した給付実績にかかる利用件

数の累計である。注3)事業者数は、国保連が平成23年3月に提供されたサービス(請求遅延含む)として請求を受け審査決定し実際に支払いを行った事業者数である。

単位:件、%

区分苦情件数

利用件数 事業者数苦情発生率(件/対1万件)

22年度 21年度 20年度構成比

要介護(介護給付)

居宅サービス計 1,129 73.1 8,188,496 12,521 1.38 1.43 1.59居宅介護支援 351 22.7 2,132,736 2,883 1.65 1.63 1.81訪問介護 305 19.7 1,292,529 2,618 2.36 2.51 3.22訪問入浴介護 21 1.4 146,761 158 1.43 1.66 0.91訪問看護 29 1.9 388,276 652 0.75 0.74 0.40訪問リハビリテーション 17 1.1 64,116 192 2.65 1.90 0.95居宅療養管理指導 5 0.3 936,968 2,072 0.05 0.15 0.06通所介護 150 9.7 1,091,229 2,040 1.37 1.35 1.36通所リハビリテーション 36 2.3 238,205 286 1.51 0.98 1.33短期入所生活介護 95 6.1 239,223 429 3.97 4.08 4.70短期入所療養介護 9 0.6 42,258 163 2.13 2.58 3.26特定施設入居者生活介護 78 5.0 295,076 459 2.64 2.40 2.27福祉用具貸与 20 1.3 1,321,119 569 0.15 0.23 0.18特定福祉用具販売 ― ― ― ― ―住宅改修費 13 0.8 ― ― ― ― ―

施設サービス計 266 17.2 778,826 649 3.42 4.15 3.30介護老人福祉施設 155 10.0 446,590 404 3.47 3.86 3.07介護老人保健施設 99 6.4 239,302 162 4.14 5.27 4.72介護療養型医療施設 12 0.8 92,934 83 1.29 2.74 1.14

地域密着型サービス計 47 3.0 226,170 884 2.08 3.30 2.29夜間対応型訪問介護 2 0.1 24,257 21 0.82 1.01 1.28認知症対応型通所介護 7 0.5 117,217 408 0.60 1.93 0.37小規模多機能型居宅介護 5 0.3 13,057 75 3.83 9.59 8.60認知症対応型共同生活介護 28 1.8 68,793 368 4.07 5.19 5.12地域密着型特定施設入居者生活介護 4 0.3 1,439 7 27.80 8.07 13.95地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 1 0.1 1,407 5 7.11 24.01 41.15

要支援(予防給付)

介護予防給付サービス計 103 6.7 1,889,503 7,367 0.55 0.55 0.74介護予防支援 41 2.7 775,079 361 0.53 0.64 0.67介護予防訪問介護 34 2.2 493,951 2,334 0.69 0.62 1.16介護予防訪問入浴介護 787 46介護予防訪問看護 1 0.1 32,937 516 0.30 0.68 0.36介護予防訪問リハビリテーション 6,387 111 3.68 2.06介護予防居宅療養管理指導 60,207 939 0.19介護予防通所介護 15 1.0 282,043 1,688 0.53 0.16 0.35介護予防通所リハビリテーション 5 0.3 42,736 249 1.17 1.20 1.00介護予防短期入所生活介護 4,131 182 2.29介護予防短期入所療養介護 402 34介護予防特定施設入居者生活介護 3 0.2 36,371 392 0.82 0.60介護予防福祉用具貸与 2 0.1 153,142 454 0.13 0.33 0.11介護予防認知症対応型通所介護 548 21 16.58介護予防小規模多機能型居宅介護 613 29 54.64介護予防認知症対応型共同生活介護 2 0.1 169 11 118.34 105.26特定介護予防福祉用具販売 ― ― ― ― ―介護予防住宅改修費 ― ― ― ― ―

合計 1,545 100.0 11,082,995 21,421 1.39 1.52 1.60

● サービス種類別の苦情件数・利用件数と苦情発生率

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平成24年3月東京都国民健康保険団体連合会介護福祉部 介護相談指導課〒102-0072東京都千代田区飯田橋三丁目5番1号東京区政会館11階電話 03-6238-0011(代表)直通 03-6238-0173(編集担当)   03-6238-0177(苦情相談窓口)株式会社 丸井工文社

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