平成25年度 学生便覧 正誤表(第7回)日本語教育概論Ⅰ 073 ② ② 1 ... 学 部 平成25年度 学生便覧 正誤表(第7回) ... 社会言語学 067 ②②②②
鋼道路橋塗装・防食便覧について...
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鋼道路橋塗装・防食便覧について-塗装便覧の改訂-
耐寒材料チーム
1.はじめに
(社)日本道路協会では「鋼道路橋塗装便覧」(以下「塗装便覧」という。)を改訂し、平成17年12月に「鋼道路橋塗装・防食便覧」(以下「新便覧」という。)を発刊しました。新便覧のタイトルについては「防食」という文言が加えられ、内容についても塗装便覧では「塗装」のみでしたが、新便覧では「塗装、耐候性鋼材、溶融亜鉛めっき、金属溶射」の4種類が取り扱われています。 今回は塗装便覧と新便覧「塗装編」との改訂内容を明らかにするため、「塗装編」を中心に解説します。
表-1「鋼道路橋塗装・防食便覧」の目次
2.新便覧の概要
鋼道路橋の腐食損傷に対して、防食技術をまとめたものとしては、塗装便覧があり、一般の技術者に広く鋼橋防食関連のガイドブックとして使われてきました。塗装便覧が鋼橋の腐食損傷に対応する防食技術ガイドブックとして使われていたのは、防食技術を代表する対策として塗装が一番多く使われてきたことからきています。 近年は、これまで多く使われてきた塗装以外にも、耐候性鋼材、めっきや金属溶射といった新技術があらわれ、国内、海外の橋梁で多く使われる事例が報告されるようになってきています。そこで、これらの各種の防食技術で鋼橋に適用できるものを一冊のガイドブックとして、とりまとめたものが新便覧です。 新便覧では、ライフサイクルコスト(以下「LCC」という。)低減の考えを主流に、防食技術を総合的に記述し、各防食技術共通の事項を取り纏めた共通編と、各種の防食技術を詳説する塗装編、耐候性鋼材編、溶融亜鉛めっき編、金属溶射編で構成されています(表
-1)。 共通編は、鋼橋の腐食実態を説明、原因に対応する防食方法の選定ができるようにまとめられており、その中では、各種防食技術の特徴が整理されています(表
-2)。 耐候性鋼材編では、防食の機能を付加した鋼材として、「JIS G 3114 溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材」の無塗装用(SMA‒ W)と、従来の耐候性鋼材に比べ、塩分に対する耐候性を高めた新しい耐候性鋼材(ニッケル系高耐候性鋼材)の特徴、設計・施工法、点検、維持管理における留意点などについて解説しています。 めっき編・溶射編では、それぞれの工法の原理、損傷、設計、施工、維持管理の留意点や採用にあたって配慮すべき点などを解説しています。
第Ⅰ編共通編
第1章 総則
第2章 鋼道路橋の腐食
第3章 鋼道路橋の防食法
第4章 防食設計
第5章 施工管理
第6章 維持管理
第Ⅱ編塗装編、第Ⅲ編耐候性鋼材編、
第Ⅳ編めっき編、第Ⅴ編溶射編
第1章 総論
第2章 防食設計
第3章 構造設計上の留意点
第4章 製作・施工上の留意点
第5章 施工
第6章 維持管理
第7章 塗替え塗装(塗装編のみ)
解 説
72 寒地土木研究所月報 №643 2006年12月
3.「塗装編」について
3.1総論について
・重防食塗装系を基本(LCC 考慮)
・A、a塗装系→十分な防食性能を有している場合
など→鉛・クロムフリーさび止めを用いる
・B、b(塩化ゴム系)、タールエポキシ樹脂塗料
は廃止
塗装編において推奨している塗装は、LCC を比較した結果、防食下地には耐食性に優れたジンクリッチペイント、下塗りには遮断性に優れたエポキシ樹脂塗料を使用し、上塗りには耐候性に優れたふっ素樹脂塗料を用いた重防食塗装系を基本としています。したがって、これまで採用していたA、B塗装系は、新設の道路橋には推奨しないこととされています。ただし、一般環境にある橋梁で既にA、a塗装系が塗布されていて十分な防食性能を有している場合、および20年以内に架け替えが予定されている場合などには、A、a塗装系を適用することも可能であるとされています。なお、A、a塗装系の適用に当たっては、従来使われ
ていた塗料の一部に有害重金属(鉛、クロムなど)を防錆顔料として含有しているものがありましたが、環境への配慮から「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(グリーン購入法)の特定調達品目に有害重金属を含有しない重防食下塗塗料が掲載され、平成15年11月に鉛・クロムフリーさび止めペイントがJIS 化されたため、A、a塗装系は、鉛・クロムフリーさび止めペイントを用いた塗装系に替えられています。B、b塗装系は、塩化ゴム系塗料の製造時に国際的に規制されている四塩化炭素を使用するなどの理由から、また、タールエポキシ樹脂塗料は発癌性の疑いのあるコールタールを含むため作業者の安全衛生の観点から新便覧では取り扱われないこととされました。
3.2新設塗装について
(1)一般外面塗装系
・C-5塗装系が基本
・A-5塗装系も可能だが条件有り
・C-5塗装系は全工場塗装
一般外面塗装系には、総論で述べましたように重防
表-2 代表的な鋼道路橋の防食法
寒地土木研究所月報 №643 2006年12月 73
食塗装系C-5塗装系(表-3)を基本としています。 ただし、一般環境に架設する場合で特に LCCを考慮する必要のない場合や、20年以内に架け替えが予定されている場合などでは、鉛・クロムフリーさび止めペイントを使用するA-5塗装系(表-4)の適用してもよいこととされています。 なお、各表中の赤文字部分は塗装便覧と比べて使用量が変更されているところです。
(2)内面塗装系
・内面の色相は明色仕上げ
・外面A-5塗装→内面D-6塗装
内面塗装にはD-5(表-5)、D-6(表-6)塗装系がありますが、一般外面の塗装系がA-5塗装系の場合には、内面用にはD-6塗装系を適用することがよいとしています。 また、内面の色相は点検時の証明効果をよくするために、明色仕上げすることがよいとしています。
(3)鋼床版裏面の塗装
鋼床版裏面は、グースアスファルト舗設時に180℃程度まで温度が上昇するため耐熱性に優れていることが必要なため、一般外面にはC-5塗装系、内面にはD-5塗装系を適用することがよいとしています。
(4)摩擦接合部の塗装
摩擦接合継手の連結部では、現場塗装開始前までのさびの防止、また、現場塗装時の素地調整作業の容易さなどから無機ジンクリッチペイントを塗装することがよいとしています。
3.3塗替塗装について
・重防食塗装系を基本(LCC 考慮)→十分な防食性
能を有している場合などa塗装系(鉛・クロムフ
リーさび止め)も可
・塗装系の変更→旧塗膜は素地調整1種(ブラスト)
で除去することが基本
・現場塗装でもスプレー塗装を認める
・外面は弱溶剤、内面は無溶剤塗料
(1)塗替え方式
塗替え方式は「全面塗替え」、「部分塗替え」、「局部補修」があり、「部分塗替え」は桁端部、連結部、下フランジ下面などの特定部位の塗膜劣化が著しい場合に適用することにより「全面塗替え」の時期を延ばすことが可能であるとしています。ただし、「部分塗替え」の適用に当たっては、長期的な視点での経済性の検討及び足場費用軽減のため移動足場などの適用を検討することがよいとしています。
(2)塗装仕様
塗替えにおける塗装仕様についても、LCC 低減などの観点から、重防食塗装系を基本としています。なお、新便覧での重防食塗装系とは防食下地に耐食性に優れたジンクリッチペイント、上塗りには耐候性に優れたふっ素樹脂塗料を用いたものとしています。過去に一般塗装系A、a、B、b系から重防食塗装系c系へ塗替えた時に素地調整3種を用いた場合、防食下地にジンクリッチペイントがないことになりますので、塗替えの際は確認してください。
塗料名使用量(g/㎡)
膜厚(μm)
塗装間隔
素地調整 ブラスト処理 ISO Sa2 1/2 - - 4時間以内
プライマー 無機ジンクリッチプライマー 160 (15) 6ヶ月以内
2次素地調整 動力工具処理 ISO St3 - - 4時間以内
第1層 変性エポキシ樹脂塗料内面用 410 120 1~10日
第2層 変性エポキシ樹脂塗料内面用 410 120
塗装工程
製鋼工場
橋梁製作工場
塗料名使用量(g/㎡)
膜厚(μm)
塗装間隔
素地調整 ブラスト処理 ISO Sa2 1/2 - - 4時間以内
プライマー 長ばく形エッチングプライマー 130 (15) 3ヶ月以内
2次素地調整 動力工具処理 ISO St3 - - 4時間以内
第1層 変性エポキシ樹脂塗料内面用 410 120 1~10日
第2層 変性エポキシ樹脂塗料内面用 410 120
橋梁製作工場
塗装工程
製鋼工場
塗料名使用量(g/㎡)
膜厚(μm)
塗装間隔
素地調整 ブラスト処理 ISO Sa2 1/2 - - 4時間以内
プライマー 長ばく型エッチングプライマー 130 (15) 3ヶ月以内
2次素地調整 動力工具処理 ISO St3 - - 4時間以内
下塗り 鉛・クロムフリーさび止めペイント 170 35 1~10日
下塗り 鉛・クロムフリーさび止めペイント 170 35 ~6ヶ月
中塗り 長油性フタル酸樹脂塗料中塗 120 30 2~10日
上塗り 長油性フタル酸樹脂塗料上塗 110 25現場
塗装工程
製鋼工場
橋梁製作工場
塗料名使用量(g/㎡)
膜厚(μm)
塗装間隔
素地調整 ブラスト処理 ISO Sa2 1/2 - - 4時間以内
プライマー 無機ジンクリッチプライマー 160 (15) 6ヶ月以内
2次素地調整 ブラスト処理 ISO Sa2 1/2 - ‑ 4時間以内
防食下地 無機ジンクリッチペイント 600 75 2~10日
ミストコート エポキシ樹脂塗料下塗 160 ‑ 1~10日
下塗り エポキシ樹脂塗料下塗 540 120 1~10日
中塗り フッ素系樹脂塗料中塗 170 30 1~10日
上塗り フッ素系樹脂塗料上塗 140 25
塗装工程
製鋼工場
橋梁製作工場
表ー3 一般外面の新設塗装仕様 C-5塗装系
表ー4 一般外面の新設塗装仕様 A-5塗装系
表ー5 内面用新設塗装仕様 D-5塗装
表ー6 内面用新設塗装仕様 D-6塗装
74 寒地土木研究所月報 №643 2006年12月
新便覧に掲載されている主な塗替え塗装系を表―7
に示します。また、旧塗膜と塗替え塗装系の組み合わせを表―8に示します。 なお、表―7中の赤文字部分は塗装便覧と比べて使用量が変更されているところです。塗替えでは目標膜厚の明記はありませんが、使用量の減少が膜厚を減少させてもよいということではありません。 Rc-Ⅱの場合、素地調整は2種ですが、健全なジンクプライマーやジンクリッチペイントを残し、他の旧塗膜は全面除去することとされています。また、過去に旧塗膜がB、b系からc系へと塗り替えられた場合には、割れ、はがれ、膨れ等の欠陥が見受けられたり、今後発生する可能性もあるので(写真-1)、この場合は素地調整1種を行うのがよいとしています。
(3)施工
塗替え時の塗装方法として、「スプレー塗り」、「ロ
規格 使用量(g/m2) 塗装間隔素地調整 1種 - 4時間以内下塗り 有機ジンクリッチペイント 600 1~10日下塗り 弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗 240 1~10日下塗り 弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗 240 1~10日中塗り 弱溶剤形フッ素樹脂塗料用中塗 170 1~10日上塗り 弱溶剤形フッ素樹脂塗料上塗 140
規格 使用量(g/m2) 塗装間隔素地調整 3種 - 4時間以内下塗り 弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗 200 1~10日下塗り 弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗 200 1~10日下塗り 弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗 200 1~10日中塗り 弱溶剤形フッ素樹脂塗料用中塗 140 1~10日上塗り 弱溶剤形フッ素樹脂塗料上塗 120
規格 使用量(g/m2) 塗装間隔素地調整 4種 - 4時間以内下塗り 弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗 200 1~10日中塗り 弱溶剤形フッ素樹脂塗料用中塗 140 1~10日上塗り 弱溶剤形フッ素樹脂塗料上塗 120
規格 使用量(g/m2) 塗装間隔素地調整 3種 - 4時間以内下塗り 鉛・クロムフリーさび止めペイント (140) 1~10日下塗り 鉛・クロムフリーさび止めペイント 140 1~10日下塗り 鉛・クロムフリーさび止めペイント 140 1~10日中塗り 長油性フタル酸樹脂塗料中塗 120 2~10日上塗り 長油性フタル酸樹脂塗料上塗 110
規格 使用量(g/m2) 塗装間隔素地調整 2種 - 4時間以内下塗り 有機ジンクリッチペイント (240) 1~10日下塗り 弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗 200 1~10日下塗り 弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗 200 1~10日中塗り 弱溶剤形フッ素樹脂塗料用中塗 140 1~10日上塗り 弱溶剤形フッ素樹脂塗料上塗 120
規格 使用量(g/m2) 塗装間隔素地調整 3種 - 4時間以内第1層 無溶剤形変性エポキシ樹脂塗料 300 2~10日第2層 無溶剤形変性エポキシ樹脂塗料 300
Rc-Ⅰ(スプレー)
Rc-Ⅲ(はけ、ローラー)
Rc-Ⅳ(はけ、ローラー)
Ra-Ⅲ(はけ、ローラー)
Rc-Ⅱ(はけ、ローラー)
Rd-Ⅲ(はけ、ローラー)
2
2
2
2
2
2
表-7 主な塗替え塗装系
写真-1 B、b系からc系へ塗替えた場合に見られ
る塗膜劣化
塗替え塗装系
旧塗膜素地調整
特徴
Rc-ⅠA、Ba、b、c
1種 ブラスト工法により旧塗膜を除去し、スプレー塗装する。
Rc-ⅢA、B、Ca、b、c
3種工事上の制約によってブラストできない場合に適用する。耐久性はRc-Ⅰ塗装系に比べて著しく劣る。
Rc-ⅣCc
4種 旧塗膜に欠陥がなく、美観を改善するために行われる。
Ra-ⅢAa
3種A塗装系の塗替えで十分な塗膜寿命を有していて、適切な維持管理体制がある場合などに適用する。
Rc-ⅡB
b、c2種
工事上の制約によってブラストできなく、かつ、B系、b系の旧塗膜に適用する。
Rd-ⅢDd
3種暗く換気が十分に確保されにくい環境の内面塗装に適用する。
表-8 旧塗膜と塗替え塗装系の組み合わせ
寒地土木研究所月報 №643 2006年12月 75
ーラーブラシ塗り」が追加され、「はけ塗り」も含めて3種類の方法があります。素地調整1種を行った場合には、下塗りから上塗りまで「スプレー塗り」を行うこととしています。 また、塗替え前に行う水洗いの基準である旧塗膜上の付着塩分量について、塗装便覧では100mg/ ㎡とされていましたが、新便覧では50mg/ ㎡と変更されています。
4.おわりに
経済活動や社会生活を支えている社会基盤である橋梁の機能を維持することは必要不可欠なことであり、鋼材の腐食損傷を防止することの重要性はいうまでもないことと思われます。社会資本ストックの高齢化や厳しい国の財政状況などから、新設橋梁の LCCの低減だけではなく、既設橋梁においても可能な限りLCC の低減をはかることが求められ、今回の便覧の改訂にあたっては、このような目的を達成するための様々な防食技術が盛り込まれていますが、今回は「塗装編」を中心に説明しました。従いまして、その他の防食技術について鋼橋の建設、維持管理に携われる皆様は改めて新便覧をご覧いただければと思います。
(文責:林田 宏)
76 寒地土木研究所月報 №643 2006年12月