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害虫誘引植物を用いたトマト 白ぶくれ症の抑制効果 岡山県農林水産総合センター 農業研究所 永井一哉・飛川光治

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害虫誘引植物を用いたトマト白ぶくれ症の抑制効果

岡山県農林水産総合センター

農業研究所 永井一哉・飛川光治

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植物間には依存又は相互依存して

植食者の攻撃を防ぐ機能があるAtsatt and O’Dowd(1976)

「Plant Defense Guilds. 」 Science

①餌を提供して,植食者の天敵の個体数を増加させる植物

(Insectary Plants)

②植食者を引き付け,他の植物への食害を弱める植物

(Attractant-Decoy Plants)

③刺,有害物質,好まない臭いなどで忌避させて,

植食者の食害を阻止する植物 (Repellent Plants)

②+③=Push-Pull法

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天敵×

くっついた.動けない.

美味そうなトマトだ.その前に、

きれいな花の花粉で腹ごしらえ.

誘引植物(カリブラコア,ペチュニアやカリフォルニアポピー)

によるアザミウマ防除

アザミウマの“ねぐら”

トマト畑

移動して来た個体が直ちにトマトに産卵・加害するので,天敵での防除は困難です.また,トマトでは送粉昆虫や天敵昆虫が利用されていて,殺虫剤の散布は制約されます.

ヒラズハナアザミウマ成虫は,圃場の外から飛来し,トマトの果実に産卵して,白ぶくれ症を発生させます.

カリフォルニアポピー

カリブラコア,ペチュニア

送粉昆虫や天敵

ヒラズハナアザミウマの成虫はカリブラコア,ペチュニアやカリフォルニアポピーなどの花に多く集まります.しかし、これら草花ではアザミウマは粘着物質にくっつくなどして、増殖しにくいことを見つけました.

アザミウマ(害虫)

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カリブラコア

カリブラコア

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31m

カリブラコア区無処理区

5.2m

10m

3m

2.6m

トラップ

11m

トマト

10m

3.5mカリブラコア

トラップ

トラップ

トラップ

トマト トマト

トマト

カリブラコア(ナス科)

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表.トマトの花でのアザミウマの発生と白ぶくれ症の発生推移

1果当たり白ぶくれ発生箇所数 花房 処理

着果高

(cm)

開花時期

(月/旬)

花当たり

アザミウマ個体数 6月 19日 6月25日 7月1 日 7 月7日 7月15日 7月22日

第1花房 カリフ ラ゙コア 33 6/上 0.4 0.4 1.3 1.9

無処理 31 6/上 1.0 1.7 1.8 2.6

第2花房 カリフ ラ゙コア 54 6/中 1.1 1.6 2.4 1.8

無処理 50 6/中 5.6 1.8 2.4 2.5

第3花房 カリフ ラ゙コア 77 6/下 2.5 2.2 1.7 1.6

無処理 72 6/下 13.5 5.8 4.7 3.3

第4花房 カリフ ラ゙コア 99 6/下~7/上 12.0 1.3 0.4

無処理 94 6/下~7/上 24.4 0.5 0.6

第5花房 カリフ ラ゙コア 118 7/上 1.7 0.3 0.4

無処理 116 7/上 4.3 0 0

第6花房 カリフ ラ゙コア 143 7/中 0.1 0.2

無処理 140 7/中 0.2 0.2

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表.収穫物での白ぶくれ症被害

7月中旬 7月下旬 8月上旬 8月中旬 合計

カリブラコア 無処理 カリブラコア 無処理 カリブラコア 無処理 カリブラコア 無処理 カリブラコア 無処理

調査果数 64 67 47 55 82 51 50 64 243 237

出荷等級低下 8 15 9 13 8 7 1 2 26 37

出荷不能 3 2 1 3 0 0 0 0 4 5

被害果率(%) 17 25 21 29 10 14 2 3 12 18

注:収穫果実を白ぶくれ症の被害程度から、少:被害はあるがほぼ問題ない程度、多:出荷等級が低下する程度、甚:出荷不可に分け、多と

甚の果実を被害果として被害果率を計算した。

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誘引植物としての利用

2.ヒメハナカメムシの温存植物

カリフォルニアポピーとペチュニア

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トマト

図3.実験圃場内での試験区の配置 (永井・飛川, 2010を改編)

トマト

1m

混植区 対照区

10m 10m11m

3.3m

1.5m (畝)

3.3m

1.7m

8m

トラップ

3.3m

32m

トラップ

トラップ

トラップ

ポピー

ペチュニア

図.

試験区(処理と無処理)はカリブラコアの試験と逆に配置

無処理

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図4. 調査圃場の外縁に設置した粘着トラップでの  ヒラズハナアザミウマ雌成虫の誘殺数の推移。  注:個体数は1トラップ1日当たりで示す。    垂線は標準誤差を示す。  (永井・飛川, 2010を改編)

0

1

2

3

4

5

6

6月2日-10日

6月10日-16日

6月16日-24日

6月24日-30日

6月30日-7月 7日

7月7日-15日

7月15日-22日

誘殺個体数

図.