救急診療(PRIMARY SURVEY)における撮影技術の 標準化に ......救急診療(PRIMARY...
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救急診療(PRIMARY SURVEY)における撮影技術の標準化に向けて
~ 胸部編 ~
大阪市立大学医学部附属病院 中央放射線部
工藤禎宏,庄垣雅史,中前光弘1),西池成章2),樫山和幸3),坂下惠治2)
1) 奈良県立医科大学附属病院,2)りんくう総合医療センター,
3)大阪府立急性期・総合医療センター
※日本救急撮影技師認定機構「救急診療における一般撮影の撮影条件
と画像処理に関する検討WG」
日本臨床救急医学会CO I 開示
筆頭発表者名: 工藤 禎宏
演題発表に関連し,開示すべきCO I 関係にある
企業などはありません.
背景
救急診療(Primary survey)における単純X線撮影は,検出器の
ディジタル化に伴い撮影条件や画像処理パラメータの標準化が
必要となってきている.
それに伴い,日本救急撮影技師認定機構では,WGでこれらの
諸問題について検討している.
目的
胸部撮影について標準化の指針を提示すること.
使用機器
• X線高電圧装置:DHF-155H(HITACHI)
• X線管:UH-6GC-41T(HITACHI)
• 線量計: Radcal 9015型 放射線モニタ( Radcal社)
• 胸部ファントム:PBU-10(京都科学)
• バーガーファントム:41318-010 凹型10型(京都科学)
• グリッド
3:1集束型 中間物質 アルミニウム,集束距離 130cm
グリッド密度 40本/cm(三田屋製作所)(以下3:1)
6:1集束型 中間物質 アルミニウム,集束距離 130cm
グリッド密度 40本/cm(三田屋製作所)(以下6:1)
8:1集束型 中間物質 アルミニウム,集束距離 130cm
グリッド密度 40本/cm(三田屋製作所)(以下8:1)
方法
アンケート調査を行いPrimary Survey時の胸部X線撮影の撮影
条件等現状把握を行った.
その結果を踏まえ撮影条件を大きく左右する種々の散乱線除去用グリッドを使用し,透過線量とコントラストの関係を求めた.
現状把握・アンケート調査
[方法・項目]
• 日本救急撮影技師認定機構のホームページにアップ
• 平成22年11月1日~平成23年1月31日の期間で実施
[回答]
• 123施設(1.大阪府 28,2.東京都 14,3.神奈川県 12)
現状把握・アンケート内容
標準一般男性(胸部15cm厚)での撮影条件
通常診療時(病室出張撮影時) 以下,通常
救急診療時(Primary survey) 以下,救急
救急診療時(Primary survey) バックボード使用時
以下,救急B
① 管電圧
② mAs値
③ グリッド使用の有無 以下,グリッド有(+),グリッド無(-).
④ 使用しているグリッドについてお答えください.
グリッド比,グリッド密度,集束距離
結果① 管電圧
通常(-) 通常(+)
救急(-)救急(+)
救急B(-)
救急B(+)
0
5
10
15
20
25
30
59以下 60~69 70~79 80~89 90~99 100~109 110~119 120以上
施設数
管電圧(Kv)
結果②
通常(-)
通常(+)
救急(-)
救急(+)
救急B(-)
救急B(+)
0
10
20
30
40
50
60
4以下 5~9 10~14 15~19 20~24
施設数
mAs値(mAs)
mAs値
結果➂ グリッド使用の有無ついて
57 61 65
43 39 35
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
通常 救急 救急B
グリッド(-)
グリッド(+)
結果 使用しているグリッドについて
3:13:1 3:1
4:1
4:14:1
5:1
5:15:1
6:1
6:16:1
8:1
8:1
8:1
10:1 12:1
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
通常 救急 救急B
グリッド比
結果 使用しているグリッドについて
30本 30本 30本
34本34本 34本
36本36本
36本
40本40本 40本
60本 60本 60本
ミクロファイン ミクロファイン ミクロファイン
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
通常 救急 救急B
グリッド密度
結果④ 使用しているグリッドについて
100 100100
110 110
110120 120120
130130
130150
150150180 180 180
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
通常 救急 救急B
集束距離
∞∞∞
アンケート結果・まとめ
1. 胸部撮影
約6割がグリッドを使用.
グリッド比は3:1,6:1,8:1
グリッド密度は34本,40本
2. 撮影管電圧
グリッド(-) 60kV~69kV
グリッド(+) 80~100kV
3. 撮影mAs値
グリッド(-) 5~9mAs
グリッド(+) 4mAs以下
Primary Surveyにおける胸部撮影の標準化に向けて
検討項目
管電圧とグリッドの関係
① 視覚評価:CDダイヤグラム,正規化順位法
② コントラスト
方法① 視覚評価
バーガーファントム: CDダイヤグラム
胸部ファントム画像:正規化順位法
評価者:診療放射線技師10名
経験年数 2~23年
評価項目:以下の項目を総合的に評価
全体像の印象
縦隔部の描出
心臓部に隠れたチューブ
方法 試料の作成
バーガーファントム,胸部ファントム
60kV~90kVの10kV毎の4段階
グリッド4種類(G(-),3:1,6:1,8:1)
胸部ファントム
バーガーファントム
視覚評価:CDダイヤグラム
直径1~5.5mmまで0.5mmさで10段階
深さ1~5.5mmまで0.5mm差で10段階
①
⑩
結果 各管電圧におけるグリッドの評価
グリッド(-)
3:1
6:18:1
1
2
3
4
5
6
1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5
深さ
直径(mm)
グリッド(-)
3:1
6:1
8:1
1
2
3
4
5
6
1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5
深さ
直径(mm)
グリッド(-) 3:1
6:1
8:1
1
2
3
4
5
6
1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5
深さ
直径(mm)
グリッド(-)
3:1
6:1
8:11
2
3
4
5
6
1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5
深さ
直径(mm)
60Kv 70Kv
80Kv 90Kv
※ 到達線量同じ
結果 各グリッドにおける管電圧の評価
60Kv
70Kv
80Kv 90Kv
1
2
3
4
5
1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5
深さ
直径(mm)
60Kv
70Kv
80KV90Kv
1
2
3
4
5
1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5
深さ
直径(mm)
60Kv70Kv
80Kv
90Kv
1
2
3
4
5
1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5
深さ
直径(mm)
60Kv
70Kv
80Kv
90Kv
1
2
3
4
5
6
7
1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5
深さ
直径(mm)
グリッド(-) 3:1
6:1 8:1
※ 到達線量同じ
視覚評価:正規化順位法
A
DC
B
※ 到達線量同じ
結果 各管電圧におけるグリッドの評価
グリッド(-) 8:1 3:16:1
-1.2 -1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8
* : significantns: not significantl.s.d.(5%)=0.534
*
*
*
ns
nsns
60Kv
結果 各管電圧におけるグリッドの評価
3:1
8:1グリッド(-) 6:1
-1.2 -1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8
*
*
l.s.d.(5%)=0.385* : significantns: not significant
*
70Kv
結果 各管電圧におけるグリッドの評価
8:1グリッド(-) 3:1 6:1
-1.2 -1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6
*
*
*
ns
nsns
* : significantns: not significantl.s.d.(5%)=0.467
80Kv
結果 各管電圧におけるグリッドの評価
6:1 8:1グリッド(-) 3:1
-1.2 -1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8
*
*
*
ns
* : significantns: not significantl.s.d.(5%)=0.344
*
*
90Kv
結果 各管電圧におけるグリッドの評価
グリッド(-) 8:1 3:16:1
-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1
60Kv
3:1
8:1グリッド(-) 6:1
-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1
70Kv
8:1グリッド(-) 3:1 6:1
-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1
80Kv
6:1 8:1グリッド(-) 3:1
-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1
90Kv
全ての管電圧でグリッド(-)は低い評価
90kVで3:1低い評価
結果 各グリッドにおける管電圧の評価
90Kv 70Kv80Kv 60Kv
-1 -0.5 0 0.5 1 1.5
*
*
*
* : significantns: not significantl.s.d.(5%)=0.428
ns
ns
*
グリッド(-)
結果 各グリッドにおける管電圧の評価
60Kv 80Kv70Kv90Kv
-1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8
*
*
*
nsns
l.s.d.(5%)=0.459
* : significantns: not significant
*
3:1
結果 各グリッドにおける管電圧の評価
80Kv 70Kv60Kv90Kv
-1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8
*
*
*
nsns
*
* : significantns: not significantl.s.d.(5%)=0.484
6:1
結果 各グリッドにおける管電圧の評価
60Kv 90Kv70Kv 80Kv
-0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
* : significantns: not significant
*
*
ns
*
l.s.d.(5%)=0.619
*
*
8:1
結果 各グリッドにおける管電圧の評価
90Kv 70Kv80Kv 60Kv
-1 -0.5 0 0.5 1 1.5
グリッド(-)
60Kv 80Kv70Kv90Kv
-1 -0.5 0 0.5 1
3:1
80Kv 70Kv60Kv90Kv
-1 -0.5 0 0.5 1
6:1
60Kv 90Kv70Kv 80Kv
-0.5 0 0.5 1
8:1
90kVで低い評価
90kVの高圧,60kV低圧低い評価 90kVの高圧が高い評価
結果 コントラスト
A
B
A:肺野の平均値(ディジタル値)B:皮膚の平均値(ディジタル値)
コントラスト=(皮膚の平均値 - 肺野の平均値) / 皮膚の平均値
3:16:1 8:1
G-
0
1
2
3
4
5
60kV 70kV 80kV 90kV
管電圧を上げるとコントラストが低くなるが,低くなる割合がグリッド(ー)や3:1は大きい
6:1,8:1は大きな差はない
考察
胸部撮影では,グリッド間で描出能の差異がなかった
ため,3:1,6:1,8:1どのグリッドでも臨床使用可能と考え
られる.
Primary Surveyにおいて、 6:1グリッドを使用すること
は,胸部,骨盤部一連の撮影ができ,迅速な対応と
診断能の高い画質の提供を両立できると考えられる.
結語
グリッドは,被ばく軽減,画像コントラスの観点から6:1が
推奨された.
胸部ポータブル撮影では,X線斜入の影響から高格子比
グリッドを敬遠する施設も多い.しかしPrimary Survey時に
求められる画像を考慮すると6:1グリッドを使用するのが
望ましい.
御清聴ありがとうございました.