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カイコの繭から糸を繰ってみよう!

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カイコの繭から糸を繰ってみよう!

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生糸 900g

繭 約4.9 kg

(2,600粒)

蚕 約2,700頭

桑葉 約 98kg

一個体あたり、約2.2gの繭、繭糸長さ1300m、 1箱(2万頭)で33.8kgの繭生産 絹織物 1反(700g)作るには

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蚕種製造業

桑苗業

養蚕業

製糸業

生糸取引業

撚糸業

機織業

染色業

小売業

生糸検査

繭検定

蚕糸・絹業概要 分業化されている

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mature larva

Spinning and

cocooning

1st instar larva

3rd instar larva

4th instar larva

5th instar larva

pupa

moth

孵化

毛振い

2齢

3齢

4齢

5齢

1齢

2眠

3眠

4眠

熟化

熟蚕

吐i糸

営繭

蛹化

羽化

成虫、蛾

産卵

休眠卵

非休眠卵

人工孵化

1眠

3齢

越冬

カイコの生活環

カイコの生活環

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カイコは何故、丸く産卵するのか?

蛾輪に入れて産卵させている

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脱皮 頭蓋(水色)の後ろに三角の 部分が生じる。 この下に次の頭蓋ができている。

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普通の蚕は幼虫期に4回脱皮する。 脱皮時、頭蓋や気管も新しくなる。 古い頭蓋 新しい頭蓋

幼虫の脱皮molting, ecdysis, exuviation

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全齢食下量に対する各齢の食下量割合

齢別 給桑量g 食下量g 食下率(%)1 77.5 18.52 23.9 0.092 313.6 82.45 26.3 0.383 965.0 418.81 43.4 1.894 4183.0 2250.45 53.8 9.975 28800.0 18023.75 62.6 87.67

合計 34239.1 20793.98 60.7 100.00 日115号×中108号

全齢食下量に対する各齢割合(%)

1000頭のカイコの各齢桑葉食下量

1.89%

0.09%

0.38%

9.97%

87.67% 食下量の95%は4,5齢

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第1図 幼虫

眼状紋

頭部

腹脚 胸脚 気門

尾脚

尾角

星状紋 半月紋

胸脚(Thoracic leg) 3対 腹脚(Abdominal leg) 4対

尾脚(Caudal leg) 1対

眼状紋(Eye spot)

半月紋 (Crescent marking)

星状紋 (Star spot)

尾角 (Caudal horn)

胸部(Thorax) 腹部(Abdomen)

頭部(head)

気門(Spiracle)

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吐糸(とし spinning) 絹糸腺で合成蓄積していた絹タンパク質を吐糸口から吐き出すこと

吐糸直前 熟化 ripening体が透き通って縮む 熟蚕 mature larva, matured silkworm 営繭を始める時期に達した蚕 繭を作るところを探して動き回る wandering

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上 唇

上 顋 (大あご)

下 唇

粒状体

下唇肢

第11図 頭部前面

立琴板

吐糸管

下 顋 (小あご)

触角

下顋髭

下唇総基部 底板

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下唇

小顋肢 (臭覚器官)

下唇肢

粒状体 (味覚器官)

小顋

吐糸管 ここから繭糸が 吐き出される。

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oesophagus

trachea

mid gut

silk gland

malpighian tubes

colon

rectum

絹糸腺 (silk gland)

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3 前部糸腺 anterior silkgland 4 中部糸腺前区anterior division of middle silkgland 5 中部糸腺中区 middle division of middle silkgland 6 中部糸腺後区 posterior division of middle silkgland 7後部糸腺 posterior silkgland

絹糸腺 (silk gland)

後部糸腺

中部糸腺

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蚕の繭の色はいろいろあるのか?

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上 透明な体液(白血) 下 黄色い体液(黄血)

上 透明な絹糸腺 下 黄色い絹糸腺

様々な色の繭

桑の葉の色素が体液を通って 繭の糸につく。

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色がつくのはセリシンの部分 ここは糸を引く時にお湯に溶けしまうので生糸にはほとんど色がつかない。

黄繭の絹糸は色付きのセリシン

絹糸の断面

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繭層 cocoon shell(layer) 蛹 pupa

脱皮殻 exuvium

繭の構成

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蚕の世界/古川茂樹より

羽化 うか eclosion, emergence 成虫化 imagination

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カイコの成虫 飛びません

メス オス

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繊維 細く長いものを繊維と呼ぶ

繊維の種類 有機繊維 天然繊維 動物繊維 羊毛、絹等 植物繊維 麻、綿、竹繊維、バナナ繊維等 合成繊維 再生繊維 (木材や綿実より合成 レーヨン等) 半合成繊維 (木材と石油、牛乳と石油より合成 アセテート等) 合成繊維 (石油より合成 ポリエチレン、アクリル等) 無機繊維 (金属、ガラスより ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、アスベスト)

短繊維と長繊維 羊毛や綿のように数センチの繊維を短繊維

絹のようにその長さで織物や編物を作ることができる長く連続した繊維を長繊維と呼ぶ

繊維がわかる本/平井東幸2004)日本実業出版 改編

シルク 家蚕糸を指し、野蚕の吐糸した糸は野蚕糸として区別される

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繭生産を目的として飼育されている絹糸昆虫 カイコ サクサン、エリサン、テンサン、タサールサン、 ムガサン、ヨナクニサン ハチ(hornet silk) クモ絹(Spider silk)

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目・上科・ 科 和名 生息地

チョウ目 カイコ 中国原産

カイコガ科 クワコ 中国、日本

カイコ上科 Bombycidae ウスバクワコ 中国、朝鮮半島

Bombycoidae インドクワコ ヒマラヤ

テンサン 日本、朝鮮半島、中国東北部、台湾

サクサン 中国

タサールサン インド

ヤママユガ科 ムガサン インド

Saturniidae シンジュサン 日本、中国、インド

エリサン インド、ベトナム、中国

テグスサン 中国南部、東南アジア

クスサン 日本、中国北部

クリキュラ インドネシア

ヨナグニサン 沖縄、中国南部、東南アジア、インド

ロスチャイルドヤママユガ 南アメリカ、メキシコ

セクロピアサン 北アメリカ クワコ、樟蚕、 柞蚕、 天蚕、 カイコ

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天蚕(テンサン)

天蚕/赤井・栗林編著 サイエンスハウス 天蚕の繭 蚕の繭

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絹の特性 ①こしがある。 ②吸湿性がよい ③染色性が良い ④熱を伝えにくく、保温性の良い生地を作れる。 ⑤光沢、風合いが良い、深みのあるつやがある。

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繊維の太さ 絹糸では単位d(デニール)を用いる 9000mで1gの糸を1dとする。 農家で飼っているカイコの糸はだいたい3d位

10μm 10nm 100nm 1μm 1nm 1mm 100μm

綿

羊毛

頭髪

ダニ 花粉 細胞 バクテリア ウイルス DNA

繊維がわかる本/平井東幸2004)日本実業出版 改編

化学繊維

神経繊維

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綿

ラミー (苧麻)

羊毛

BOKEN一般財団法人 ボーケン品質評価機構) (HP

繊維の側面と断面 断面 側面

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絹(生糸)の断面 セリシンを解かし、 数本の繭糸をより合わせて1本の生糸にする。 日 137 号×支 146 号

シルクの手引き書/日本絹業協会 Hp 大日本蚕糸会 Hp

家蚕繭の新たな特徴としての光沢・色彩とその評価, 岡田 英二, 中島 健一, 三澤 利彦, 宮崎 栄子, 間瀬 啓介, 高林 千幸, 日本シルク学会誌, Vol. 16 (2007) P 83-89

繭糸の断面 f;フィブロイン、s;セリシン

マユ糸の構造 カイコが吐く絹糸は、わずか0.02mmという細さで

ある。その糸の断面は、三角おにぎりを2つつなげたような形をしている。この三角の部分がフィブロイン、フィブロインを接着して1本の糸にしているのが、

セリシンと呼ばれる物質である。一対の絹糸腺でつくられた2本のフィブロインが、吐糸管から吐きだされるときにまとめられて1本になるため、このような形となるのだ。

カイコはマユをつくるために、2日以上もこの糸を吐き続け、その長さは約1,500mにもなる

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セリシン:カイコ幼虫の中部絹糸腺で合成される。

親水性基を多く含むため熱水やアルカリ水中で溶解する。

溶解性の相違によりセリシンⅠ~Ⅳの4種類に分けられる。

繭糸の断面 f;フィブロイン、s;セリシン

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通常、繭を熱水に浸し、セリシンを溶解させて繭から糸を繰る

繭糸の断面 f;フィブロイン、s;セリシン

繭層から繭糸1本を引き出すには、繭層の繭糸を膠着しているセリシンを熱水や化学薬剤などによって膨潤軟化させる。

煮る条件によって違うが若干セリシンが残ったフィブロインが引き出される。