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監修: 自治医科大学 皮膚科学講座 准教授 小宮根 真弓先生 膿 疱 性 乾 癬(汎 発 型) について

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監修:自治医科大学 皮膚科学講座 准教授 小宮根 真弓先生

膿疱性乾癬(汎発型)について

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膿疱性乾癬(汎発型)とは、発熱や全身倦怠感などの全身症状とともに全身の皮膚が赤くなり、その赤い皮膚の上に膿疱という膿をもったぶつぶつができる病気で、乾癬という皮膚の病気の1種類です。膿疱は血液中の白血球などが集まったもので、周囲の人にはうつりません。そして、再発を繰り返すという特徴があります。膿疱性乾癬にはいくつか種類があり、全身症状を伴って発症する汎発型のほかに、比較的症状の軽い再発環状型、疱疹状膿痂疹と呼ばれる妊娠中に現れる膿疱性乾癬(汎発型)などがあります。日本乾癬学会の調査(2009年~2012年)において、乾癬患者に占める膿疱性乾癬(汎発型)患者の割合は2.3%で、男女差はありませんでした1,2)。なお、膿疱性乾癬の中でも、膿疱性乾癬(汎発型)は、厚生労働省の指定難病の1つとされており、医療費の受給対象となります。現在、特定疾患受給を受けている患者さんは全国で約2,000人です(詳細は7頁をご覧ください)。

膿疱性乾癬(汎発型)とは?

1)Ito T, et al. J Dermatol. 2017 Nov. 8. doi: 10.1111/1346-8138.14105.[Epub ahead of print]2)難病情報センター.膿疱性乾癬(汎発型). http://www.nanbyou.or.jp/entry/168(2017年10月10日アクセス)3)Johnston A, et al. J Allergy Clin Immunol. 2017; 140: 109-120.より改変

我が国の乾癬の種類別 罹患割合1)

尋常性乾癬85.6%(7,840例)

関節症性乾癬 6.0%(554例)その他 0.9%(79例)

乾癬性紅皮症 1.5%(141例)

小児乾癬 0.3%(21例)限局型膿疱性乾癬 0.3%(26例)

滴状乾癬 3.2%(291例)

膿疱性乾癬(汎発型)2.3%(212例)

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の う ほ う せ い か ん せ ん は ん ぱ つ が た

ほうしんじょうのう か しん

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膿疱性乾癬(汎発型)の原因は?

一部の患者さんで、遺伝的な要因により、体内の炎症を抑えるはたらきが弱まることや、逆に炎症を起こすはたらきが高まることが知られています。本来炎症は体にとって必要な反応ですが、膿疱性乾癬の患者さんではこの炎症が高度になり過ぎて発熱したり、皮膚が赤くなったり、膿疱ができてしまうのです。しかし、これまでに知られている遺伝的な要因がなくても、膿疱性乾癬を発症することも多く、未知の要因も関与していると考えられています。

膿疱性乾癬発症のメカニズム3)

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遺伝的要因による炎症の活発化

皮疹の炎症・浮腫・紅斑・膿疱形成皮膚症状

発熱・関節痛・浮腫全身症状

活性化

炎症が抑制できない状態

炎症細胞

炎症細胞炎症細胞

角化細胞

炎症性タンパク質炎症細胞が活性化することで、炎症性タンパク質*が放出され、皮膚に炎症をおこします

*サイトカインと呼ばれるタンパク質のことで、免疫に重要な役割を果たしています。通常は、炎症を引き起こすサイトカイン(炎症性タンパク質)と抑制するサイトカインがバランスよく放出され、身体に過剰なダメージは与えません。このバランスが崩れて炎症反応が過剰に起こると、膿疱性乾癬などの炎症性疾患の一因となります。

炎症

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膿疱性乾癬(汎発型)の症状は?

最初は、皮膚が熱い感じがして、赤くなり、寒気がしたり、むくみが出たり、高熱が出現します。その後、皮膚の赤くなった場所に膿疱と呼ばれる膿をもった発疹が出てきます。関節の痛みや変形、爪の変色・変形、目の炎症で目がかすむなどの症状が出てくることもあります。重症の場合には、肺に水が溜まることで呼吸ができなくなったり(呼吸不全)、心臓の働きが悪くなったりすることもあります(心不全)。

膿疱性乾癬の症状

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膿疱性乾癬に伴う、爪及び関節症状の例

全身に広がる皮膚症状

写真提供:小宮根 真弓先生

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膿疱性乾癬(汎発型)の治療は?

膿疱性乾癬(汎発型)と診断されたら、適切な初期治療の後、重症度や、年齢、妊娠の有無などを考慮して治療が選択されます。まずは入院して発熱やむくみなどの全身の管理をしながら、膿疱性乾癬(汎発型)の治療をしていきます。

再発を繰り返すため、治療が長期にわたることがあります。まずは症状を改善し、生活の質(QOL)を向上させるため、医師と相談しながら自分に合った治療法を見つけましょう。

免疫を抑制して、炎症を改善します。

膿疱を中心とした皮膚症状及び発熱などの全身症状の原因である活性化した白血球などを血液中から除去し、症状を改善します。

ビタミンA誘導体、免疫抑制薬、副腎皮質ステロイド

生物学的製剤と呼ばれる薬剤で、皮膚や関節の症状を改善します。

TNFα阻害薬、その他の生物学的製剤

点滴などで速やかに全身炎症を抑えます。

副腎皮質ステロイド

説明

使用するお薬/機器の種類

顆粒球単球吸着除去療法

皮膚に軟膏やクリームを塗ることにより、炎症を抑えたり、表皮細胞の増殖を抑えて皮膚症状を改善します。

急性期の全身症状がおさまった時期には、通常の治療で症状が改善しない場合や、お薬の量を減らして、副作用を軽減させるために紫外線を皮膚に照射する光線療法を行うことがあります。※逆に光線療法で悪化することもあるため、注意が必要です。

副腎皮質ステロイド、ビタミンD3製剤、免疫抑制薬

心・呼吸不全に対する治療

関節症状に対する治療

顆粒球単球吸着除去療法

内服療法

注射薬

外用療法

光線療法

治療の種類

皮膚症状に対する治療

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膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版.日皮会誌. 2015; 125: 2211-2257.より作図

関節の痛みや変形がみられる場合には、皮膚症状に対する治療に加えて、内服療法や注射薬による治療を追加することがあります。

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日常生活の注意点は?

食事や運動など、基本的には制限はありません。ただし、症状の悪化や再発する場合がありますので、次のようなことに注意が必要です。

感 染症

風邪をひいたり、虫歯があると、皮膚症状が悪化したり、再発することがありますので、健康的な生活を心がけ、身体を清潔に保つようにしましょう。

皮 膚のトラブル

けが、強くこする、日焼けなどで悪化することがありますので、注意しましょう。

妊 娠する可能性がある場合

そ の他

内服薬の中には、服用した場合には一定期間は妊娠が制限されたり、妊娠している方や授乳されている方は服用できないものがありますので、妊娠する可能性がある、または、妊娠している場合は、早めに医師と相談しましょう。また、妊娠をきっかけに再発することがありますので、妊娠した場合は医師に相談しましょう。

他の疾患で処方された薬剤の服用をきっかけとして再発することがありますので、再発の徴候がみられた場合には、すぐに受診しましょう。一般的に、ストレスで皮膚症状が悪化することがあります。ストレスは早めに解消するようにしましょう。

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指定医療機関

医療受給者証の有効期間は?

難病指定医を受診し、診断書の交付を受ける。難病指定医および指定医療機関については、難病情報センターホームページで検索するか、お住まいの都道府県の窓口にお問い合わせください。

申請者(対象患者)

申請

受診

医療受給者証交付

診断書交付

保健所等

提出

都道府県(審査)

主な必要書類1 特定医療費支給認定申請書、診断書2 住民票、市町村民税(非)課税証明書などの課税状況を 確認できる書類(こちらは世帯全員分が必要です)3 健康保険証の写し など

指定難病とは?

難病の中から一定の基準を満たしたものを、「指定難病」として厚生労働省が定めており、現在、330疾病が指定されています(2017年4月1日時点)。膿疱性乾癬(汎発型)は指定難病の1つで、全国で約2,000人の患者さんが登録されています。指定難病の患者さんは、医療費助成の対象となります。医療費助成を受けるには、医療費受給者証が必要です。難病指定医による診断書や必要書類を都道府県窓口に申請して、医療費受給者証を交付してもらいましょう。詳細は、お住まいの市区町村の役所、保健所等へお問い合わせください。また、難病情報センターのホームページ(http://www.nanbyou.or.jp/)にも詳しく掲載されています。

医療費受給者証の申請について

原則として申請日から1年以内で都道府県が定める期間です。1年ごとに更新の申請が必要です。

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担当医師名

連絡先

HUR1563AKAPP--JP-4243

2018年3月作成

医療機関名