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分離工学演習2(連続蒸留塔) 1 分離工学演習2「連続蒸留塔の設計(続)」 1.フラッディング(溢汪) 棚段塔内における蒸気量が増加して棚段の処理能力を超過すると、段上の液は蒸気によって持ち上げ られて流下できなくなり、ついには塔頂から溢(あふ)れて運転不能となる。このような塔内異常現象 をフラッディング(溢汪、いつおう)といい、処理量の上限に相当する。棚段塔におけるフラッディン グ蒸気速度(最大許容蒸気速度)U F [ft/s]は、次の SoudersBrown(サウダース-ブラウン)式で与えら れる。 L V F V [ft/s] U C (1.1) ただし、C は定数、ρ L は液密度[kg/m 3 ]ρ V は蒸気密度[kg/m 3 ]上式の定数 C は、次式で定義されるフローパラメーターを用いて、フラッディング点に関する Fair(フ ェア)の相関図より読み取ることができる。 V L Flow parameter L V (1.2) ただし、L は液の質量流速[kg/s]V は蒸気の質量流速[kg/s]実際の蒸気速度 U [ft/s]は、フラッディング蒸気速度 U F 7080%程度に設定した値 U FC [ft/s]を基準に、 表面張力による補正を行うことで決定される。 0.2 FC [ft/s] 20 U U (1.3) ただし、σ は液の表面張力[dyn/cm]図1 フラッディング点に関する Fair の相関図 1)

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分離工学演習2(連続蒸留塔)

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分離工学演習2「連続蒸留塔の設計(続)」

1.フラッディング(溢汪)

棚段塔内における蒸気量が増加して棚段の処理能力を超過すると、段上の液は蒸気によって持ち上げ

られて流下できなくなり、ついには塔頂から溢(あふ)れて運転不能となる。このような塔内異常現象

をフラッディング(溢汪、いつおう)といい、処理量の上限に相当する。棚段塔におけるフラッディン

グ蒸気速度(最大許容蒸気速度)UF [ft/s]は、次の Souders‒Brown(サウダース-ブラウン)式で与えら

れる。

L VF

V[ft/s]U C   …(1.1)

ただし、C は定数、ρLは液密度[kg/m3]、ρV は蒸気密度[kg/m3]。

上式の定数 C は、次式で定義されるフローパラメーターを用いて、フラッディング点に関する Fair(フ

ェア)の相関図より読み取ることができる。

V

LFlow parameter L

V  …(1.2)

ただし、L は液の質量流速[kg/s]、V は蒸気の質量流速[kg/s]。

実際の蒸気速度 U [ft/s]は、フラッディング蒸気速度 UFの 70~80%程度に設定した値 UFC [ft/s]を基準に、

表面張力による補正を行うことで決定される。

0.2

FC[ft/s]20

U U …(1.3)

ただし、σは液の表面張力[dyn/cm]。

図1 フラッディング点に関する Fair の相関図 1)

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分離工学演習2(連続蒸留塔)

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2.塔径

塔の断面積 A [m2]は、段上の有効接触面積 Aa [m2]と液が流下する溢流(いつりゅう)部面積 Ad [m2]を

用いて次式で与えられる。 a d2A A A …(2.1)

上式において、溢流部面積 Ad に 2 が乗じられているのは、棚板一枚につき、液が上段から流下する部分

と下段へ流下する部分の 2 箇所の溢流部(ダウンカマー)が存在するためである。

有効接触面積 Aaは、蒸気速度 U [m/s]と蒸気流量 Q [m3/s]を用いて次式で表される。

aQAU

…(2.2)

棚段塔径 D [m]は、棚段塔の塔断面積 A を用いて次式より求められる。

4AD …(2.3)

図2 多孔板の断面図

3.エントレインメント(飛沫同伴)

棚段を上昇する蒸気速度が大きくなると、段上で沸騰している液が細かな液滴となり、蒸気に持ち去

られるようになる。このような塔内異常現象を飛沫同伴(エントレインメント)という。棚段状の液が

蒸発することなく液のまま上段に上がると、その段で気液平衡に達する前に次の段へ移ることになるた

め、蒸気中の低沸点成分組成は、設計上のそれよりも小さくなる。飛沫同伴を完全に抑止することは困

難であり、許容される飛沫同伴量は、通常、実際の蒸気量の 10%程度以下である(飛沫同伴率 0.1 以下)。

飛沫同伴率 Ψは、蒸気量 V [kg/s]に対する飛沫同伴量 E [kg/s]の比で定義される。

EV

  …(3.1)

飛沫同伴率 Ψ は、飛沫同伴率に関する Fair の相関図より読み取ることができる(横軸は、フローパラメ

ーター)。飛沫同伴率が 1 のとき、蒸気の全量が液滴に相当し、塔内はフラッディング状態にある。図中

の%フラッドは、フラッディング蒸気速度 UFに対する実際の蒸気速度 U の比で表される。

F

%flood 100UU

 [%] …(3.2)

溢流部面積Ad

溢流部面積Ad

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○

有効接触面積(多孔板)

Aa

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図3 飛沫同伴率に関する Fair の相関図 2)

4.トレイダイナミクス(圧力損失)

多孔板塔内の蒸気は、棚板に空けられた小さな孔を通過する際に流路を狭められ、段上の液の表面張

力に打ち勝って気泡を生成する。液内部では、気泡となった蒸気が液の流れに逆らって上昇するととも

に、気液接触に伴う蒸留現象が起こる。すなわち、蒸気気泡の凝縮、ならびに液の蒸発が起こる。液表

面まで達した蒸気気泡は、液の表面張力に打ち勝って液表面から脱出し、新しい蒸気相を形成する。蒸

気の推進力は蒸気圧であり、棚板の孔を通過して液表面から脱出するまでに減少する。この減少分を圧

力損失 p [Pa]といい、液柱の高さで表したものを圧力損失頭(ヘッド損失)h (= p/ρLg) [m]という。

ある棚段における蒸気の全圧力損失頭 ht [in]は、乾燥した棚板の小孔を通過する際の摩擦損失頭(乾き

圧力損失)hd [in]、段上の液内部を上昇する際の圧力損失頭(液層圧力損失)hl [in]、蒸気が段上の液の表

面張力に打ち勝って液表面から脱出する際の圧力損失頭(泡沫層圧力損失)hσ [in]の和で表される。 t d l σh h h h …(4.1)

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図4 棚段塔内の流動と主な棚板 1,3)

図5 多孔板塔の圧力損失

①乾き圧力損失 hd の計算 オリフィス板通過時の圧力損失を修正した Liebson(リーブソン)らの式で与

えられる。

2Vh

do L

[in] 0.186 UhC

  …(4.2)

ただし、Uhは孔通過時の蒸気速度[ft/s]、Co はオリフィス流出係数、ρLは液密度[lb/ft3]、ρV は蒸気密度[lb/ft3]。

オリフィス流出係数 Coは、Liebson の相関図より求められる。

hda

dh

hw

hd

多孔板

hcl

hdc

泡沫層

泡沫層

清澄層

how

hhg下降管

dh:孔径

hd:孔通過時の圧力損失(乾き圧力損失)

hw:液層通過時の圧力損失(堰高)

how:液層通過時の圧力損失(溢流高)

hhg:液勾配圧力損失

hσ:液の表面張力に打ち勝つ際の圧力損失

(泡沫層圧力損失)

hdc:清澄液高さ

hda:ダウンカマークリアランス通過時の圧力損失

hcl:ダウンカマークリアランス

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図6 Liebson の相関図 4)

②液層圧力損失 hlの計算 堰(せき)高さにある液層内を蒸気が通過する際の圧力損失 hw [in]、堰以上

に高い位置(溢流高さ)にある液層内を蒸気が通過する際の圧力損失 how [in]、棚段上の液面に勾配があ

る場合の圧力損失 hhg [in]を用いて次式で与えられる。

l w ow hg( 2)h h h h …(4.3)

ただし、βは泡沫係数(エアレーションファクタ)。

棚段上の液は、沸騰状態にあることから、正味の液として存在する割合は、滞留液のそれよりも小さい。

泡沫係数 βは、正味の液割合に相当し、Hutchinson(ハッチンソン)らの相関図より求められる。図中の

横軸は、次式で与えられる。

Va Va VF U …(4.4)

ただし、UVa は有効接触面積を通過する蒸気速度[ft/s]、ρV は蒸気密度[lb/ft3]。

堰を溢流しない液の内部を蒸気が通過する際の圧力損失 hw は、堰の高さに等しい。一方、堰を溢流す

る液の内部を蒸気が通過する際の圧力損失 how [in]は、堰上の液高さに等しく、次の Francis(フランシス)

の式で与えられる。

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Low w

w[in] 0.48 Qh F

L …(4.5)

ただし、Fw は堰上液高さ補正係数、QLは液流量[gal/min]、Lw は堰長さ[in]。

堰上液高さ補正係数 Fwは、Bolles(ボレス)の相関図より求められる。

棚段上の液面に勾配がある場合の圧力損失(液勾配圧力損失)hhg [in]は、次式で与えられる。 2

f f fhg

H[in]

12f U Lh

gR …(4.6)

ただし、ff は泡摩擦係数、g は重力加速度[ft/s2]、Lf は泡沫層の流路長さ(堰と堰の間の距離)[ft]、RH は

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泡沫層流路の動水半径[ft]、Ufは泡沫層が棚段上を横切る流速(泡沫層速度)[ft/s]。

泡摩擦係数 ffは、レイノルズ数 Rehの関数であり、Smith の相関図より求められる。

H f Lh

LRe R U

…(4.7)

ただし、ρLは液密度[lb/ft3]、μLは液粘度[lb/(ft・s)]。

泡沫層流路の動水半径 RH [ft]は、ぬれ辺長に対する流路断面積の比で与えられる。

av fH

av f2W h

RW h

wav 2

D LW …(4.8)

ただし、D は塔径[ft]、hfは泡沫層高さ[ft]、Lwは堰長さ[ft]、Wavは平均流路幅[ft]。

泡沫層高さ hf [in]は、相対泡沫密度係数 fを用いて次式で表される。

cf

f

hh

c w ow( )h h h …(4.9)

ただし、hc は清澄液高さ[in]。

相対泡沫密度係数 fは、Hutchinson らの相関図より求められ、泡沫係数 βとの間には、次の関係式が成り

立つ。

f 12

…(4.10)

上式を式(4.8)に代入して相対泡沫密度係数 fを消去すると、次式が導かれる。

w owf

( )[in]

2 1h hh …(4.11)

泡沫層流速 Uf [ft/s]は、次式で与えられる。

Lf

f av[ft/s]

7.48QUh W

…(4.12)

ただし、hfは泡沫層高さ[ft]、QLは液流速[gal/s]、Wavは平均流路幅[ft]。

泡沫層の流路長さ Lf [ft]は、入口堰と出口堰の間の距離に相当する。下降管(ダウンカマー)の幅(堰

から塔壁までの最大幅)H [ft]、流路長さ Lf [ft]、塔径 D [ft]の間には次の関係式が成り立つ。 f 2D L H …(4.13)

③泡沫層圧力損失 hσの計算 次式より求められる。hσの単位は、インチ[in]で与えられる。

σL h

[in] 0.04hd

  …(4.14)

ただし、dhは棚板の孔径[in]、σは液の表面張力[dyn/cm]、ρLは液密度[lb/ft3]。

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図7 Hutchinson らの相関図 5)

図8 Bolles の相関図 2)

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図9 Smith の相関図 2)

5.ウィーピング(液漏れ)

多孔板塔の場合、孔を通過する蒸気速度がある値よりも小さくなると、段上の液が自重で孔から漏れ

るようになる。この場合、段上における液の滞留時間が短くなるため、一部で十分な気液接触が行われ

ず、気液間における低沸点成分の物質移動量が減少する。このような塔内異常現象をウィーピング(液

漏れ)という。Fair によれば、ウィーピングが起こるかどうかは、乾き圧力損失 hdと泡沫層圧力損失 hσの和、ならびに液層圧力損失 hw および how の和の大小関係で決まる。

すなわち、次式が満たされるとき、ウィーピングは起こらない。 d σ w owh h h h   …(5.1)

一方、次式が満たされるとき、ウィーピングが起こる。 d σ w owh h h h   …(5.2)

ウィーピングの判定には、ウィープ点に関する Fair の相関図を用いる。この相関図より読み取った hd + hσの値が、hd と hσをそれぞれ別途計算して得られる hd + hσの値よりも小さい場合、すなわち式(5.1)が成り

立つ場合は、ウィーピングは起こらない。

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図 10 ウィープ点に関する Fair の相関図 5)

(Ah:多孔板の孔面積, Aa:有効接触面積)

6.ダウンカマーバックアップ(下降管内の清澄液面高さ)

下降管の断面積が不十分であると液は流下しきれなくなり、ついには液面が下降管の上端に達してフ

ラッディングが起こる。この場合、蒸留塔は操作不能となる。したがって、段間隔は少なくとも泡沫層

の液面高さ以上が必要となる。設計上は、泡沫を含まない清澄液の液面高さ hdc [in]の 2 倍程度とする。

dc t l da f( )h h h h f 0.5 …(6.1)

Lda

da[in] 0.03

100Qh

A da w clA L h …(6.2)

ただし、Adaはダウンカマークリアランス断面積[ft2]、hclはダウンカマークリアランス[ft]、hda はダウンカ

マークリアランス通過時の圧力損失[ft]、Lw は堰の長さ[ft]、QLは液流量[gal/min]、 fは泡密度係数。

参考文献

1)J.D Seader, E.J. Henley, D.K. Roper; Separation Process Principles (3rd Ed.), Wiley (2010), Chapter 6.6

2)H.Z. Kister; Distillation (Design), McGraw-Hill Education (1992), Chapter 6

3)亀井三郎編; 化学機械の理論と計算(第 2 版), 産業図書(1975), 5 節

4)化学工学協会編; 化学工学便覧(改訂四版), 丸善(1978), 7.4 章

5)B.D. Smith; Design of Equilibrium Stage Processes, McGraw-Hill Inc.(1963), Chapter 15

6)河東 準, 岡田 功; 蒸留の理論と計算, 工学図書(1962), 14 章

7)吉田文武, 森 芳郎編; 詳論 化学工学Ⅱ「単位操作Ⅱ」, 朝倉書店(1967), 17・135~17・151 章

8)大江修造; 絵とき 蒸留技術 基礎のきそ, 日刊工業新聞社(2008), 4 章

9)大江修造; 蒸留技術大全, 日刊工業新聞社(2017), 6 章

10)大野光之; 初歩から学ぶ化学装置設計, 工業調査会(2009), 4 章

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設計問題1

次の設計条件における多孔板塔について、以下の問いに答えよ。

段間隔 b 60 cm (24 in)

表面張力 σ 13 dyn/cm(ダイン毎センチ)

液密度 ρL 812 kg/m3

蒸気密度 ρV 2.85 kg/m3

蒸気流量 V 6600 kg/h (0.643 m3/s)

液流量 L 4200 kg/h (0.00144 m3/s)

(1-1)蒸気速度 U [m/s]を求めよ。ただし、フラッディング時の 80%を基準とする。

(1-2)塔径 D [m]を求めよ。ただし、溢流部面積 ADは、塔の断面積 A の 10%であるものとする。

(1-3)(1-1)のときの飛沫同伴量 E [kg/s]を求めよ。また、許容される範囲内に収まっているかどうか判定せ

よ。ただし、%フラッド値は、安全を見込んで一の位を切り上げるものとする。

設計問題2

次の設計条件における多孔板塔について、以下の問いに答えよ。

塔径 D 1.2 m

棚段の板厚 t 1.5 mm

棚段の孔径 dh 12.7 mm

棚段の孔面積 Ah 0.0715 m2

有効接触面積 Aa 0.859 m2

出口堰の高さ hw 51 mm

出口堰の長さ Lw 940 mm

下降管(ダウンカマー)幅 Lf 188 mm

ダウンカマークリアランス hcl 38.1 mm

表面張力 σ 13.5 dyn/cm

液密度 ρL 647 kg/m3

蒸気密度 ρV 4.65 kg/m3

液粘度 μL 0.4 cP

蒸気流量 V 1.44 kg/s

液流量 QL 4.25 m3/h

(2-1)乾き圧力損失 hd [in]を求めよ。ただし、棚段の板厚と孔径の比は、小数第二位を四捨五入して小数第

一位までの値を用いるものとする。

(2-2)泡沫係数 βを求めよ。

(2-3)清澄層圧力損失 hw + how [in]を求めよ。ただし、堰長さと塔径の比は、小数第二位を四捨五入し

て小数第一位までの値を用いるものとする。

(2-4)液層圧力損失 hl [in]を求めよ。ただし、棚段上の液勾配は無視できるものとする。(hhg≒0)

(2-5)泡沫層圧力損失 hσ [in]を求めよ。

(2-6)全圧力損失 ht [in]を求めよ。

(2-7)ウィーピングの有無を判定せよ。

(2-8)下降管内の清澄液面高さ hdc [in]を求めよ。

答(1-1)1.36 m/s, (1-2)0.87 m, (1-3)0.150 kg/s, (2-1)0.639 in, (2-2)0.7, (2-3)2.29 in, (2-4)1.60 in, (2-5)0.0267 in,

(2-6)2.26 in, (2-7)無, (2-8)7.74 in

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分離工学演習2(連続蒸留塔)

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単位換算

1 in(インチ)=2.54 cm

1 ft(フィート)=12 in=0.3048 m

1 lb(ポンド)=0.4536 kg

1 gal(ガロン)=0.004546 m3

1 lb/ft3(ポンド毎立方フィート)=16.02 kg/m3

1 cP(センチポアズ)=0.0006720 lb/(ft・s)=0.001 Pa・s

●自分の力で解くこと。どうしても分からなければ、途中まででよい。

(真面目に解いていることが伝われば、極端に低い点数にはならない。)

●過去の解答やクラスメートが作成したレポートを書き写さないこと。

(採点する側の気持ちを考えること。ズルをするような自分に満足か?)

●書き写しが疑われる場合は、レポート点を保留の上、当人を呼び出して事情を聴取する。

(不正が明らかとなった場合は、当該レポートを受理しない。不合格。)