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修士論文 風車の有効利用に関する基礎的研究 教科領域教育専攻 生活・健康系コース M92857H 福田治夫

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修士論文

風車の有効利用に関する基礎的研究

教科領域教育専攻

生活・健康系コース

M92857H

福田治夫

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目 次

第1章序論 …一一・・一一一・・・・・・・…一・…一一一・・・・… 1

第2章 実験装置および測定方法 … 一一・・一一・・一・…一… 6

2.1 実験装置 ・一■“一一一一一・・■■… ■■■■■・… 一一・・一一t一一・・一・・一■i一■■一一… 6

2.1.1 風洞 … 一・・・…一・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 6

2.1.2 流速分布測定装置 i・・・… 一一t’一一’’”一 … 一一一一一一.7

2.1.2.1 5孔ピトー管 ・…… …・・・・… …・…・… 8

2.1.2.2 建物等障害物の模型 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 13

2.1.3 風車実験装置 ・・・・・・・・・… 一s・・・・・・… 一・・… 13

2.1.3.1 トルクピックアップと直流サーボモーター ・・15

2.1.3.2 静ひずみ計 ・・・・… …・…・…… …・…・・16

2.1.3.3 回転計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 一t・・・・・・… 17

2.1.3.4 抵抗器 ・…・・… …・・・… 一一・一一・・t1t一・・…17

2.1.3.5 スライダックと整流器 ・…・・・・… …・…・・18

2.1,3.6 サボニウスローター ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 19

第3章 実験結果および考察 ・一一…・・一一・T一一一・一一一・一一i-ii・23

3.1 模型高さが流速分布におよぼす影響 一一・・・・・・・・・・・… 23

3.1。1 流速分布 ・・・・… ‘・・・… 一一一一・・・・・… 一一・・一一・・23

3,1.2 主流部とよどみ域の境界線 … …・…… …・・23

3.1.3 ローター設置位置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 2 8

3.2 設置位置の風車出力におよぼす影響 ・・・・・・… 一・・・… 29

3.2.1 風車性能に関する無次元数 ・…・・一一・・・・・・… 6』』29

3.2.2 抵抗側バケットとよどみ域の相対位置 ・・… …・・30

3.2.3 レイノルズ数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 一一・・・・・… 31

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3. 2. 4

3. 2. 5

3. 2. 6

3. 2. 7

風が風車に与える

正味の回転トルクと回転損失トルク ・一t一一一・t一・32

D・O. 1 5m,H・0.3mの場合 … …・… 一・…・…・…34

D・0.15m,H・0.2mの場合 ・・・・・・・・・・・・・・… …・… 40

D・0.09m,H・0.3mの場合 ・・・・・・・・… …… …・… 46

第4章 結論 … t一・・・・・・・・・・・・・… 一・一・一一・一一・一一・・・・・・… 50

4.1 流速分布 ・・・・・・・・・・… t一…・・・・・・・・・・・・・・… 一一… 50

4.2 設置位置の風車におよぼす影響 ・・・・… 一一・・一一一一一一一一一一・・一t・51

4.2.1 D・0.15m,H・0.3mの場合 ・・・・・・・・… …… …・…51

4.2.2 D・0.15m,H・0.2mの場合 … …・・・・・・・・・… 51

4.2.3 D・0.09m,H・0.3mの場合 … …… …・…・・52

4.2.4 最適パラメータ ・…・・・・・… …・…・・… …・・52

4.3 今後の課題 ・・・・… 一一・… 一一一t ・・’’”.t’’’’”.52

謝辞 … 一一・一一・■■・… ■■・■■・・・…一■・・・・・・・・・・・・… ■■・■t… 53

文献 ・一一・ … ・・ 一一一 ・・一・・一・・ ・・一・・ ・・ 一一一一一 ・・ 54

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第樟序論

人類は古くから火を使用し,この熱のエネルギーを様々な形で利用し生

活を快適なものに改善してきた.そして18世紀には,石炭を利用したワッ

トの蒸気機関とダービー親子のコークス高炉の発明を機に産業:革命が起こ

り,技術は著しく進歩した.19世紀後半には,オットーエンジン,ディー

ゼルエンジンなどで代表される内燃機関の普及がめざましく,エネルギー

の消費量は増大した,さらに近年は,科学技術の進展がますます著しく,

より快適な生活を求めエネルギーの消費量はさらに増大している.

さて,世界人口は1990年の約53億人から2025年には約85億人と約1.6倍に

増加するとみられ(1),エネルギー消費量も人口に比例して増大すると考え

られる.その反面化石燃料を中心とした石油,天然ガス,石炭,ウラン

235の前盛年数はそれぞれ43年,61年,276年,82年で(2),しかも,開発途上

国のエネルギー消費の32%は木材中心であり,これらの国が化石燃料への

転換を行えば,さらに早い時期に使い果たすことになると予測される(2).

また,この化石燃料を消費することでCO 2等の発生による都市温暖化,ひ

いては地球温暖化の問題を引き起こし,NO。等の影響による酸性雨などの環

境問題も深刻化している.

これに対し,枯渇することのないエネルギーとして自然エネルギーがあ

り,太陽放射,風力,海洋,バイオマス,地熱エネルギーなどがあげられ

る.これらの自然エネルギーの利用は環境への影響が少なく,再生可能で

無尽蔵であるが,エネルギー密度が低いことが欠点である.そのうちの一

つに風力エネルギーがあるが,風力エネルギーの資源量は全世界で1.2×

1015Wあり,推定収集可能量は10×1012Wで効率を10%としても1×1012W

1

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(2) ニなり1990年現在の世界の発電量3.3×1012W(1)の約30%を補うことが

できる.この風力エネルギーを取り出す装置が風車である.風車の出力は

気象条件に左右され常に一定した風向,風速が得られないため,内燃機関

のように安定した出力が確保されない欠点はあるが,環境への影響が少な

く注目されている.

古くから,風車は灌概・揚水用動力源として多く利用されてきたが,当

時使用されていた風車はトルクは大きいが効率,出力ともに低い.しかし,

近年風車の開発が進み高効率なものや高出力のものが製作されるとともに

用途に応じて種々の形式の風車が用いられている.例えば大規模発電等に

は低トルク高回転型のプロペラ風車やダリウス風車が用いられ,小規模発

電や揚水等には高トルク低回転型のサボニウス風車や多翼型風車などが用

いられている.

現在の世界での風車利用は,次のようにまとめられる.

ヨーロッパの現状

ヨーロッパにおける風力資源は豊富で,各国において風力発電開発計画

が進められており,西暦2000年までには約4GW以上の風力発電設備が計画

されている.特に地形が平坦なデンマークにおいては,個人の所有も含め

て約1000機,約16MWが発電されており,西暦2000年までにはデンマーク

の全使用電力の10%を風力発電が占める予定である.また,ベルギーは風

車製造が活発でアメリカを中心に世界各国に輸出している(3).

アメリカの現状

古く開拓時代より揚水用多翼型風車が多く使用され,オイルショック以

来カリフォルニア州では風況のよい広大な土地と税制上の優遇政策で大規

模なウインドファームが建設され,1987年の総発電量は1700GWhに達し

ている.また,建設コストは,風車と発電機本体が75~85%,残りの25~

一2

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15%が設置場所の整備,電気工事,用地代などである(3).

日本の現状

わが国は,季節風がよく吹き潜在的な風力エネルギーは高く,明治初期

より風車は主に灌概・揚水用動力として利用されていたが,産業構造の変

化等の理由により現在ではほとんど利用されていない(3).

また,わが国の地形は複雑で山間部が多く,平坦な場所には都市が多く

存在し人口が集中しているため,風のエネルギー密度が低く広大な用地の

必要な風車に適した場所は稀である.

青森県津軽半島竜飛岬に建設された東北電力のウインドファームを例に

取ると,先行研究(5)によれば,竜飛州より対岸の下北半島桑畑山の方が風

況がよいにもかかわらず,青函トンネル建設工事関連施設の跡地に建設さ

れた.その主な理由は,すでに整地された用地が確保されるため建設コス

トが抑えられる,青函トンネル用送電線に隣接し発電した電力をその回線

に乗せられる,また近隣の消費地である青森市に近いので送電ロスが少な

いこと等があげられる(6)’(7).

しかし,夏期の夜間は,人口密度の低い竜飛岬ではあるが,プロペラ風

車の風切り音盤の騒音が付近の民家へおよぼす影響を配慮して,十分な風

が吹くにもかかわらず運転されていない.このように,わが国では大型風

車の普及には多くの問題点がある.

したがって,これらの風車利用の諸問題を解決するには,小型風車の有

効利用を考え,エネルギー不足を補うことが重要である.

この小型風車の一つとしてサボニウス風車があり,この風車は1929年フ

ィンランド人のS.J.Savoniusが開発したもので,抗力・揚力複合型である

(8).サボニウス風車は他の風車に比べ構造が簡単で低速のため騒音も少な

く自己起動に優れているが,高速型風車に比べ効率が低いため利用例が少

一3

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ない.しかし,効率を高めるためバケットの最適断面形状を求める研究(9)

や,バケットの枚数およびオーバーラップ比等,種々のパラメータの効率

におよぼす影響を詳細に調査する研究も行われている(lo).また,ロータ

ーを案内ダクトの中に設置したり(11)~(14),周囲に静止案内羽根(15)や偏

流板(8)等の付属装置を設置してサボニウスローターに流入する流れを変化

させ効率を上げる研究や,さらに,ローターを2基以上並列に設置したと

きの相互干渉による性能向上の研究(16)もなされた.

上記の研究は一様藍鼠にサボニウス風車を設置した場合の性能向上を目

的とした研究であり,構造上の特徴を生かし設置場所を工夫することによ

りサボニウス風車を有効に活用する方策に関する研究はいまだなされてい

ない.

本研究では,建物等障害物の影響で生じる風のベルヌーイ効果(風の収

束作用)(17)と形成されるよどみ域を利用し,サボニウス風車の出力増大

を図ることを試みる.すなわち,風車の回転軸が建物屋上に平行になるよ

うに置き,建物上部に形成される流れのよどみ域に抵抗側バケットが入り,

流れの収束作用によって増速された主流部(よどみ域の外側)に駆動側バ

ケットが入るように風車を設置することにより一様流中に設置した場合よ

り出力の増大が期待できる.風車を屋上に設置する場合,プロペラ風車や

ダリウス風車では,建物等に影響されない流れの中にローターを設置させ

るためには,一般に建物と同じ高さの塔上に設置することが必要とされ

(17) Cしかもそのような場合でも風車出力は平坦な場所に設置した場合と

ほぼ等しく,出力の増大は図れない.したがって,サボニウス風車を用い

ることにより都市等の消費地に近く,建物等障害物がある場合でも,それ

らの障害物を積極的に利用し,風力エネルギーを少しでも有効に利用する

方策を見い出すことを目的とした.

4一

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実験としては,まず建物等障害物の模型を風洞吹出し口に設置し,模型

周囲の流速分布の計測を行なった.その後サボニウス風車を模型上部に設

置して性能試験を行い,風車設置の最適位置に関するパラメーターを求め

た.

第1章では,本研究の背景,研究テーマの設定理由,目的,意義,およ

び内容の概要について述べた.第2章では,実験装置および実験方法を述

べ,第3章では本実験より得られた結果を示し考察を行う.また,第4章

では本研究で明らかになった結果をまとめ,サボニウス風車の設置場所の

最適パラメータの提案を行う.

5

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第2章実験装置および測定方法

2.1 実験装置

実験装置は,風を供給するための風洞,建物等障害物の模型の周囲の流

れを調べるための流運分布測定装置,およびサボニウス風車の特性を調べ

るための風車実験装置の3つに分けられる.

2.1.1 風洞

図2.1に風洞の全体図を示す.空気は⑤の風量調節弁から吸い込まれ,④

→②→③→②と通り,風洞吹出し口①から一様速度の風となって流出する.

③の整流格子は軸に直角な方向の風の偏りを取り,②の整流金網は軸方向

の流速の凹凸を消すためのものである.風速は風量調節弁からの吸い込み

量を調節することによりOm/sから約12m/sの間で可変である.

①風洞吹出し口、② 整流金網

③ 整流格子

④シロッコファン⑤ 風脚調節弁

⑥電動機(三相交流7.5W)ファン仕様

風量 278m3/min

回車云数 720rpm

6121

770 eos 133S

e一一疇一ロー p

300

1,i;;

一“s

図2.1風洞

一6一

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2.1.2 流速分布測定装置

図2.2に流速分布測定装置の全体図を示す.この装置は,風洞吹出し口前

方に建物等の模型とともに設置される.5孔ピトー管を水平および垂直方

向に移動させて,風向および風速を三次元的に測定し,模型の影響による

流れの増速模様およびよどみ域の存在を明ちかにした.

図2.2 流速分布測定装置

7

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2.1.2.1 5孔ピトー管

図2.3に示す5孔ピトー管は,管中央の孔とその周囲に軸対称に4つの孔

をもつピトー管で,これにより流速の三次元的計測が可能である.なお,

孔に作用する圧力は,図2.4に示すべッツ型マノメ一口により測定した.風

向および風速は図2.5に示す検定曲線と計算式により算出する.

まず,図2.2に示すように,5孔ピトー管をそのz軸(図2.3)が風洞出

口断面に平行かつ水平になるように設置する.5孔ピトー管をz軸(図

2.3)を中心として回転させ,孔P・とP5の圧力が釣り合うときの回転の角

度βを読み取る.ピトー管の先端が下向きを正とし,上向きを負とした,

すなわち,吹きあがる角度を正にとり,下方に流れる角度を負とした.し

たがって,風が風洞の軸方向から吹くときがβ=0。である。次に,3ヶ所

の圧力P1,P,, P3を測定し

g一 一2-itsEl一一Ef’一’pP, 2一 p, 一・・・・・・・…一・・・・・・・・・・・・・… (2・1)

で定義されるξを求め,検定曲線(図2.5)より,風の左右への偏向角αを

求めた.図2.5に示すように,風上に向かって左方向からの風向を正,右方

向からの風向を負とした。つぎに風向がαとなるときのξ・を検定曲線から

読みとる.ただしPvを動圧とすると,ξdは次式で定義される.

gd=tht,一p”一p, ’’’’’’’”・・・・…’・・・・…(2・2)

上式を変形すると,

Pvニξd(2Pe-P1-P3) こm[nAq〕 一一一一… 一一i一・・… (2・3)

となり,ベルヌーイの定理より,風速Vは次式で求められる.

V= V2 g 一S-1/i[}i-ir P v × fut o o [M・f’S] ’’’’’’’’’’” (2’4)

8

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ただし,9は重力加速度9.8m/s,ρaqは1atmにおける水の密度で温度t(℃)

との関係式(18)

p aq=一5, 64495 × IO-4 × t2+2. 04301 × 10’3 × t+ 101. 975 [kgfs2/m‘] ・ ・ (2.5)

を用いて求めることができる.ρairは空気密度で,気圧をPat[mmHg]とす

ると,

pair= 一i一;t6i-i]gi16B-riggg66t × 一1]g/li-t ×一g一 [kgfs2/,4] ・・・… (2.6)

より求めることができる(18).

なお,検定曲線(図2.5)は,同じ風洞を用い,風速と風向を一定に保ち,

5孔ピートー管のP4とP,が釣り合うように設置(β一・ O。に設定)し,つ

ぎに中央の孔を中心としてz軸を含む水平面内でα=100間隔に回転させ,

それぞれのαに対するPエ,P2およびP3を測定し,式(2・1)(2・2)を用

いて整理した結果である.また,その場合のPvは標準ピトー管を用い,5

孔ピトー管の中央の孔と同じ位置で測定した。図2.5に示したξdとαの式

は,それぞれ最小自乗法により測定点から求めた式である.

一9一

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36 40 305

卜。唱

β

z軸

A・71

i

’8

R A部詳細図PP1

ΦP

1

マノメータへ

EiiiiEiiiiEiE:iige=一

z軸

Pig

、W‘う. f’ pmt’一tA11

.sエi

が臓細一馴■■蝋蕉 窩

‘N肇こ蓑

図2.3 5孔ピトー管

一10一

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製作所 理化精機工業

型式 ベッツ型 200mmAq

F-213 No.3244

図2,4 ベッツ型マノメータ

11

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財n

好 2ξd

20 0 20 40 u

0O↓

RR、R

一2\

PRR 〔1>0

ξ

一4〆R朗

〔1〈0

gd = 1. 19+(一9. 514117x10一‘)a+(2. 533762x10一’)a2+(1. 234614xlO’5)a3

+(7. 892789xLO一’)a‘+(一1. 755214xIO一‘)aS

a:1. 86764i+(一1. 552254x10)E+( 一一 1. 377129)g2+(4. 126546x10-2)g3

図2.5 5孔ピトー管検定曲線

12

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2.1.2.2 建物等障害物の模型

図2.6に本実験で使用した建物等障害物の模型を示す.模型は合板を用い

て製作し,各寸法は風洞吹出し口の寸法と風車の大きさを考慮して決定し,

幅0.5m,奥行き0.375m,高さH=0.2,0.3,0.4mの3種類の箱状のもので

ある.

nw .,一_,・r・pm剛tT・r・・一・…糊咽一 塙 同一tt「「陣卿脚㎜

礁謡罷「∬1∵=

1灘:無.欝㍗

㌃輪∴』一幽鑑為・

i繍藤野一・欝

a’?一

g 轟

H=0.3mの場合

図2.6 建物等障害物の模型

2.1.3 風車実験装置

図2.7に風車実験装置の全体図を示す.この装置は風洞装置の吹出し口前

方に設置され,風車と模型の相対位置を変え得る構造となっている.また,

風車の回転軸はボールベアリングを介して風車支持板に取り付けられてい

る.通常は,負荷が風車ローターの回転軸に連結され,風車の回転数が負

13

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荷に応じて変化する,しかし,本実験装置ではローターの出力トルクに比

し,トルクピックアップのスリップリングの摩擦トルクが大きく,風によ

る回転力だけでは必要な回転数に達しないため直流モーターにより回転力

を与えた.したがって風による風車の正味の回転トルクを求めるために,

同じ回転数における風車ローターをつけた場合のトルクと,ローターを付

けずに回転軸のみを回転させた場合の回転損失トルクとの差をとるという

方法を用いた.直流モーターの回転数の調節は,スライダックを用いて行

った.また,直径Dが0.15mのローターでは低速回転時には,風がロータ

ーに与える回転トルクが軸受や直流モーターの抵抗トルク以上となり,そ

れ以下の回転数の制御が困難なため,直流モーターを発電機として利用し,

発電された直流をスライド抵抗器に接続し,回転数を制御した.

図2.7 風車実験装置

14 一

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2.1.3.1 トルクピックアップと直流サーボモーター

図2・8にトルクピックアップと,直流サーボモーターを示す.

トルクピックアップを貫通する軸に貼られたひずみゲージのひずみを

図2.9に示す静ひずみ計で測定し校正係数をかけてトルクに換算した.

きポL_.._..τ 轟

トルクピックアップ 直流サーボモータ

製作所 共和電業 製作所 山洋電機

型式 TP-2KCM 型式 No.808-862431

容量 2kgf・cm 定格 24V/2400r, p. m

校正係数 0.001332kgf・cm/10』6

図2.8 トルクピックアップと直流サーボモータ

15 一

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2,1.3.2 静ひずみ計

図2.9に静ひずみ計を示す.

’、一㌶謬1騰にreleti-i”’・:

k.’. .... . L i-Lc”r”t’

製作所

型式

最小目盛

ブリッジ電圧

ゲージ率

図2.9

共和電業

SM-60D

10×10-6ひずみ

L 6V DC

2. 00

静ひずみ計

16 一

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2.1.3.3 回転計

図2.10に回転計を示す.

,,...一一LJ

製作所 横河電機

型式 3632

図2.10 光電式回転計

2、1、3.4 抵抗器

図2.11に抵抗器を示す.

製作所 東北電機製作所

型式 SYB No.87016

抵抗 78/19.5Ω

電流 2.5/5A

図2.11 抵抗器

17 一

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2.1.3.5 スライダックと整流器

図2.12にスライダックと整流器を示す.

・幽摩輕『

D

蔭H誌・1覧

e

一一 D君泌.血鯉馳.:■唖口』∴t晃

製作所 東京芝浦電機株式会社

型式 SKIIO

定格一次電圧 100V

定格二次電圧 0~125V

定格二次電流 10A

二次最高電流 10A

定格周波数 50/60Hz

定格容量 IKVA

図2.12 スライダックと整流器

一一 18 一

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2,1.3.6 サボニウスローター

図2.13に実験に使用した2種類のサボニウスローターとローター回転軸

を示した.ローター端面板およびバケットの材質はアルミニウムである.

サボニウスローターの寸法およびローター回転軸寸法を図2.14~図2.16

に示した.ローターの形状,および寸法はそれぞれ最適な性能になるよう

選び(le),バケット形状はバッハタイプ,オーバーラップ比はそれぞれ

0.24,0.28である。

11i-mmJlmlmiiemi,ipMie”,

’』

P賊

・・ @ .ノ

図2.13 ローター本体と付属品

19

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図2.14 D=0.15mのローター本体

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図2.15 D=0.09mの。一ター本体

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㍑ローター端面板lf

ll

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階Il

ll

Il

ll

図2.16 ローター回転軸

一22一

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第3障 実験結果および考察

3.1.建物高さが流速分布におよぼす影響

3.1.1 流速分布

図2.3に示した5孔ピトー管を用い,模型上部の流速分布を測定した.ま

ず,模型を風洞吹出し口前方中央に設置し,風洞中央の垂直面面内での模

型上部の流速分布を測定した.その結果,流れは模型の垂直方向への速度

成分をもつが,水平方向の偏り(α)はほとんどないことが明らかとなり,

したがって風車回転軸および模型前面は風洞吹出し口面に平行に設置する

ことにした.実験は模型の高さH=O.2,0.3,0.4mの3種類では風速U=

10m/sで行なった.さらにH=0.3mでは流れの相似性を確認するため風速

U;6m/sでも実験を行なった.模型上部の流速分布の測定結果を図3,1~図

3.4に示す.畠中,点で示している位置は,流速と風速Uの比が0.2以下で

よどみ域であると考えられる位置である.

図3.1~図3.4に示したように,模型の影響でベルヌーイ効果があり主流

部では約10%当館される部分が認められ,よどみ域の形成も明らかになっ

た,また,図3.2,図3.3より流速分布がほぼ等しくなることが確認できた.

3.1.2 主流部とよどみ域の境界線

模型上部の流速分布より,流れにおける主流とよどみ域の境界線を2次

式で近似し,模気高さHをパラメータとして次式を求めた.

Yミ3.23×2/H ・・・・・・・・… ■■・・・・・・・… 一一・・・・… (3・1)

ただし Y:模型前縁からの水平距離[mm]

X:模型上端からの垂直距離[mm]

一 23

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図3.1~図3.4に示す模型上部の実線が式(3・1)による2次曲線である.

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. . . . . .一sX.NN“N 22一

・ ・ ・ ・ .・ 一一XtX・“N

N N$.. 一$N

H =O.2m

U =10 m/s

模型

tsi NK. NS.

図3.l H=0.2mにおける流速分布(Ui 1em/s)

一 24

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● ● 「「さ◎ \\\\\● ○ \\\\」1● ●

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\\\

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H=O.3m

U=10m/s

コ=

模型

図3.2 H=0.3mにおける流速分布(U== 10m/s)

一25一

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● 鳩 \\\\\■ ●

.ミ \\\ \\\

\\\

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H=0.3m

U瓢6m/s

模型

図3. 3 H=0.3mにおける流速分布(U=6m/s)

一26一

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.\\\\\ 逗● ■ ●

\\\

\\\

、\\

H嵩0.4m

U司Om/s.

模型

図3. 4 H=0.4mにおける流速分布(U=・ 10m/s)

一27一

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3.1.3 ローター設置位置

図3.5に示すようにローター外周と模型上端とのすき間をD/10とし,風車

の抵抗側のバケットがよどみ域に入り,ローター中心が前述の境界線(式

(3・1))上にくる位置を求め,その位置を基準位置AOとした.基準位置A

Oをもζに水平方向(X・0。6D)にD/4およびD/8間隔で位置A-1~A5を設定

した.次に位置AOの上方D/4でも水平方向(X・0.85D)に同じようにD/8間

隔で位置B一正~B2を設定レ,さらに位置AOの上方D/2(X・LID)の位置C

を設定した.

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BO

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Y

32306D}ZH

図3.5 ローター設置位置の説明図

一28一

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3.2 設置位置の風車出力におよぼす影響

3.2.1 風車性能に関する無次元数

一定速度の風が一定方向から風車に流入した場合,風のエネルギーをど

れだけ風車が取り込み,軸出力として利用可能なエネルギーに変換できる

かが,風車の性能の善し悪しを決定するといえる.しかし,風車が大型に

なればなるほど,また,風速が大きくなればなるほど軸出力が大きくなる

のが当然で軸出力をそのまま比較することは無意味である.したがって,

風車の大きさや風速に関係なく性能比較できるように,無次元数として出

力係数:Cpおよび速度比φを次式のように定義し,実験結果を整理した.

2Ttu c,== MpUA D co ip = 2U

ただし T

co

p

U

A,

なお,

トルク [kgf・mコ

:ロータの回転角速度〔rad/s]

:空気密度[kgfs2/m4]

:風速〔m/s]

二D×L[M2]

ローター長さ[m]

(3’2)

(3・3)

出力係数Cpは風車の出力と風車の投影面積を通過する風のもつ運

動エネルギーの比である。速度比φはローター外周の回転速度と風速の比

である.

29

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3.2.2 抵抗側バケットとよどみ域との相対位置

抵抗側バケットとよどみ域との相対位置を明らかにするために図3.6に示

すように,ローターの中心から境界線に垂直に半径を引きよどみ域に入る

ローターバケットの径方向の長さとローター半径の比を次のように定義し

た.

Bs × 1 0 0 [%] … 一一一一一一・・・・・… (3・4) Bc== B,

ただし B,:ローター半径がよどみ域にある割合[%]

Bs:よどみ域に入るローターバケットの径方向の長さ

BR:ローター半径(=D/2)

境界線

よどみ域

主流部

!! ,’一需隔 /! ノ/ 、\

! ! 、 ノ ノ ヘ ノ ノ

/ ! \ ’ ; \ 1 、

碗 tJ’ 1 謡 \1 / ノ / / ノ ノ ,’ ノ ぐ一一 1! 、 ノ

図3.6 抵抗側バケットとよどみ域と1の相対位置

一 30

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3.2.3 レイノルズ数

風車のレイノルズ数は一般に次式で定義される.

Re= LYIit1L ’’’’’’”r’’’’’’’’’’’’’’’’’’” (3’s)

ただし R.:レイノルズ数

U :風速[m/s]

D :代表長さ(風車の直径) [m]

り :空気の動粘性率[m2/s×10-6]

(ンは,気温20℃,気圧760mmHgのとき15.15m2/s×IO“6である.)

実験に用いた風車でD=0.15m, U=10m/sのときは,式(3・5)より

R.i=i1×105. ’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’” (3r6)

となる.

次に,D=0.09m, U ・= 10m/sのときは,

同じく式(3・5)より

Re;6×10‘ ’’’’’’’’’’’’’’’’”・’’’’’’’’’’’’” (3’7)

となる.

実機の一例として,D=2m, U=10m/sを仮定した場合にはレイノルズ

数は式(3・5)より

Re=1・32×106 ’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’” (3’8)

となり,実験の場合に比してR。数は1桁以上大きな値となる.一般にレイ

ルズ数が大きくなるとCpは増大する(19).したがって,ローター直径Dが

大きくなる実機では本実験結果で得られたCpより若干大きいCpとなるこ

とが予測される.

一 31

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3.2.4風が風車に与える正味の回転トルクと回転損失トルク

風が風車に与える正味の回転トルクを算出するためには,風車を支持し

ている軸受およびトルクピックアップの軸受の回転損失トルクを予め測っ

ておく必要がある.本実験では2種類の直径のローターを使用したため軸

受の回転損失トルクは軸受にかかる荷重により変化する.したがって,そ

れぞれの場合の軸受の回転損失トルクを測るため,風車p一夕一をはずし

風車と同じ重さの重りを回転軸に付け一様流中で測定した.

損失トルクに対応するひずみの測定結果を図3.7,図3.8に示した.図中

の実線は最小自乗法で求めた曲線である.風が風車に与える正味の回転ト

ルクに対応するひずみSは次式で求め図2.8に示した校正係数をかけて回転

トルクを求めた.

S-S’ 一S, ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… (3・9)

ただし S :風車の正味回転トルクに対応するひずみ

S’:ローターを取り付けたときの回転トルクに

対応するひずみの測定値

SL:軸受の回転損失トルクに対応するひずみの測定値

一32一

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× 10-6

0

一20

“一

一40

o

図3.7

× 10-6

0

-20

co“ 一40

-60

幽0

図3.8

1000 2000 3000 r.p.m.

D=0.15mの場合の回転損失トルク

1000 2000 r.p.m

D=O.09mの場合の回転損失トルク

一33一

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3.2.5 D=0.15m, H: O.3mの場合

図3.9に,基準位置AO(X・0.6D,Y・3.23(0.6D)2/H)と同じ垂直距離

X・0.6Dでの性能を示した.まず,模型を取り除き基準位置AOに相当する位

置に風車のみを設置した場合では,出力係数C,の最大値は0.167となり,

この値を性能比較の基準とした。次に,風車を模型上の基準位置AOに設置

した場合では,ローター半径がよどみ域にある割合B、は100%,Cpの最大

値は0.179となり風車のみを設置した場合に比べて出力は約7%増大した.

基準位置AOの前方(3/8)Dの位置A2(X・O.6D,Y・3.23(0.6D)2/H一(3、!8)D)で

は,B、は約61%と小さくなり, Cpの最大値は0.190となり風車のみを設置

した場合に比べて出力は13.8%増大した.さらに前方D/2の位置A3

(X・O. 6D, Y・3. 23(0.6D)2/H-D/2)では, B。は約49%となり, Cpの最大値

は0.191と位置:A2より若干良くなり風車のみを設置した場合に比べて出力

は14.4%増大した.これら位置A2およびA3では,抵抗側バケットの抵抗

トルクが最も大きくなるバケット先端部がよどみ域に位置することにより

抵抗が減少し,さらにバケットがよどみ域から出ると同時に下から吹き上

げる風を受け,バケットが駆動力を得る回転範囲が広くなるためと考えら

れる。また,Cpの値が大きいφの値の範囲も広い.風車を位置A3よりさ

らに前方に設置すると,よどみ域の影響が薄れBcの値も小さくなりCpは

減少する.

したがって,基準位置と同じ垂直距離X・0。6Dでは,風車の設置場所は基

準位置AOよりD/2前方の位置A3近傍が良い.

34

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Oe2

aoO,1

D=O.1 5m

U=10m/s

H=O.3m

t

tt

1

位ur一一 A-1

-asF AO

一一Z一一 Al

-O一一 M

-e)一 A3

一〈〉一 A4

一“一 A5

一⑧一風車のみ

魚’ \、\

’、 \’、

も冷 柚

、 NN

bNN

N

N

N

N

ss

o O,5 1,0 1.5

¢

図3.9 X=O.6Dにおける性能’

一35一

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図3.10に,基準位置上方垂直距eex・e. 85Dでの性能を示した.基準位置

AOの上方D/4の垂直距離X・0.85Dの位置BO(X・0.85D,Y・3.23(0.6D)2/H)で

は,B。は約53%, Cpの最大値は0.181となり風車のみを設置した場合に比

べて出力は約8%増大した.しかし,Bcの値が位置A2, A3での値の中間

値であるにも関わらずCpの最大値の増大の程度が小さいのは増速された主

流部に抵抗側バケットが位置:しているが,駆動力を受ける回転の範囲が

A2, A3の場合よりも狭いためと考えられる.

位置BOのD/8前方の位置Bl(X・0.BsD,Y・3.23(0.6D)2/H-D/8)では,

B、は約43%と小さくなり,Cpの最大値は0.175で風車のみを設置した場合

に比べ一て出力は約5%増大した.位置BOの後方D/8の位置B-1(X・O.85D,

Y・3.23(0.6D)2/H+D/8)では, B・は約70%と大きくなり, Cpの最大値は

0.177で風車のみを設置した場合に比べて出力の増大は約6%であった.

したがって基準位置上方の垂直距離X・0.85Dでは,風車の設置場所は位置

BO近傍が良い.

一36一

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O.2

ao

O.1

D=O.15mU=1 Om/s

H=O.3m

一v一一

一一一iD一一一一

一一伝一一一

一一’煤I’一一

〇u

×

XXNF’臆

NNI> xsc

位置

B-1

BO

Bl

B2

風車のみ

\並「

x

o O.5 1.0 1.5

¢

図3.10 X・0.85Dにおける性能

一37一

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図3.11に,3種類の垂直方向の位置AO, BO, Cでの性能を示した.

基準位置AOの上方D/2の位置C(X・1.1D,Y・3.23(0.6日目2/H)では, B。は

約29%と小さく,Cpの最大値は0.173となり風車のみを設置した場合に比

べて出力は約4%の増大にとどまった.Cpの増大の割合が小さく特性曲線

が風車のみを設置した場合の性能に近づくのは,風車設置位置が模型上部

より離れ,一様流中に近づきベルヌーイ効果やよどみ域の影響が薄れるた

めと考えられる.

O.2

Qo O.1

D=O.15mU=1 Om/s

H=O.3m.

位置

AO

BO

c

風車のみ

o Oe5 1 .0 1 .5

¢

図3,11 位置AO, BO, Cにおける性能

一 38

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図3.12にX・0.6D,0.85Dにおける性能のうちで,最もCpが大きくなる位

置A3, BOの性能を示した.図より明らかなように位置A3(X・0.6D,

Y・3.23(0.6D)2/H-D/2)近傍に風車を設置した場合(Bc≒49%)がCPの増

大が大きく,風車のみを設置した場合に比べて出力は約14%増大した.

以上の結果より,建物等障害物の影響で生じるベルヌーイ効果並びに形

成されるよどみ域を有効に利用することにより,サボニウス風車の出力増

大を図ることが可能であることが明らかとなった.

O,2

ao

O.1

D=O.1 5m

U=t Om/s

H=O.3m.

位置

e A3一一

f)一一 BO

+風車のみ

o O.5 1.0 1 .5

¢

図3、12 位置A3, BOにおける性能

一 39

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3.2.6 D== O.15m, H=0.2mの場合

図3. 13は,基準位置AO(X・0.6D,Y・3.23(O. 6D)2/H)と同じ垂直距離

X・0.6Dでの性能である.まず,模型を取り除き基準位置AOに相当する位置

に風車を設置した場合では,出力係数Cpの最大値は0.174となり,この値

を性能の基準とした.次に,風車を模型上に設置した場合の基準位置AOの

前方(3/8)Dの位置A2(X・0.6D,Y・3.23(0.6D)2/H一(3/8)D)では, B、は約

59%,Cpの最大値は0.180.tなり風車のみを設置した場合に比べて出力は

約3%増大した.さらに前方D/2の位置A3(X・0.6D,Y・3.23(0.6D)2/H-D/2)

では,B、は約61%で, C,の最大値は0.186となり風車のみを設置した場合

に比べて出力は約7%増大した.位置A2および位置A3では, H=0.3mの

場合と同じようにCpの値が大きいφの値の範囲も広い.風車を位置A3よ

りさらに前方に設置すると,よどみ域の影響が薄れB。も小さくなりCpは

減少する.

したがって,基準位置と同じ垂直距離X・0.6Dでは,風車の設置場所は基

準位置AOより前方D/2の位置A3近傍が良い.

一40一

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O.2

ao

O.1

D=O.1 5m

U=10m/s

H=O.2m

7

t

7t

位置

一一一oD一一 AO

一一 ?鼈?A2

e A3一〈〉一 A4

+風車のみ

N

N

s

1

1

tt

x[ゴ

o O.5

¢

1 .0

図3.13 X・O.6Dにおける性能

1.5

41

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図3.14に,基準位置上方垂直距離X・0.85Dでの性能を示した.基準位置

AOの上方D/4の位置BO(X・0.85D,Y・3.23(0.6D)2/H)では, B・は約53%,

Cpの最大値は0.195となり風車のみを設置した場合に比べて出力は約12%

増大した.位置BOの前方D/8の位置B1(X・0.85 D, Y・3.23(0.6D)2/H-D/8)

では,B。は約43%と小さくなるが, Cpの最大値は0,193で風車のみを設置

した場合に比べて出力は約11%の増大となり位置BOの場合とほぼ等しい性

能となった.さらに,位置BOの後方D/8の位置B一正(X・O.85D,

Y・3.23(0.6D)2/H+D/8)では, B、は約60%, Cpの最大値は0.189となり,

風車のみを設置した場合に比べて出力は約9%増大した.

したがって基準位置上方の垂直距離X・0.85Dでは,風車の設置場所として

は位置BGおよびBl近傍が良い.

一42一

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O.2

ao

O.1

D=O.t 5m

U=1 Om/s

H=O,2mer」or一一“exNsk

り 、

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一.SiL一一

一一一i1〉一一一一

一一 沿鼈

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\ ▽’,

位置

B-1

BO

Bt

風車のみ

N

N,x,cag(,

黙 N〈

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x s

o O.5

¢

1.0

図3.14 X・O.85Dにおける性能

1 .5

一43一

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図3.15に,3種類の垂直方向の位置AO, BO, Cでの性能を示した.基

準位置AOの上方D/2の位置C(X・1.1D,Y・3.23(0.6D)2/H)では, B。は約

8%と小さく,Cpの最大値は0.185となり風車のみを設置した場合に比べて

出力は約6%増大した.Cpの増大の割合が小さく特性曲線が風車のみを設

置した場合の性能に近づくのは,風車設置位置が模型上部より離れ,一様

流に近づきベルヌーイ効果やよどみ域の影響が薄れたためと考えられる.

O.2

ao O.1

D=O.15mU=1 Om/s

.H=O,2m

・一一一一

i1>一一一

岳一一p一一

位置

AO

BO

c

風車のみ

o O,5 1 .0 1 s5

¢

図3.15 位置AO, BO, Cおける性能

44 一

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図3.16に,X・O. 6D,0.85Dにおける性能のうちで最もCPが大きくなる位

置A3, BOの性能を示した,図より明らかなように, H ・O.2mの場合には

適切な風車設置位置は位置BO(X・0.85D,Y・3.23(0.6D)2/H)近傍(B。≒

53%)で,Cpが大きく,風車のみを設置した場合に比べて出力は約12%増

大した.しかし,H=0.2mの場合は, H=0.3mの場合と比べてCPが最大

となる設置:位置がA3でなくBOとなり,また出力の増大の割合も約12%で

H=0.3mの場合の約14%より小さい.これは,模型の高さが低く境界線の

勾配が緩やかになり,ベルヌーイ効果も小さくなるためと考えられる.

O.2

ao

O.1

D=O.15m

U=10m/s .H=O.2m

位置

一一一一i[1)一 A3

一一一一i1〉一一 BO

㊥一風車のみ

o O.5 1.0 ¢

図3,16 位置A3, BOにおける性能

1 .5

45

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3.2.了 D=O.09m, H=0.3mの場合

図3.17~図3.19に,直径D=O.09mのローターを高さH=O.3mの模型上

に設置した場合の性能を示した.しかし,D=0.09mの場合の測定値は,

風車の受風面積が小さいため出力トルクも小さく,相対的に測定誤差が大

きく,測定値のばらつきが大きくなった.したがって,図3.17~図3. 19に

示した結果は,まず各位置での特性曲線を3回求め,その結果より各φで

のCpの平均値を求めた.3回の測定値のばらつきは平均値に対して±7%

程度もあるため,本節に示す結果は,今後の測定方法改善のための単なる

資料と考えている,したがって,以下には定量的な考察を避け,定性的な

考察のみを述べる.

図3.17は,基準位置AO(X・0.6D,Y・3.23(0.6D)2/H)と同じ垂直距離

X・0。6Dでの性能である.全体的にはD=o.15mの場合の結果(図3.9)と同

様の傾向を示しており,Cpの最大値については位置A3が, Cpが大きいφ

の範囲が広いという点では位置A2が良い.

46 一

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02

ao

O.1

D=O.09m

U=1 Om/s

H=O.3m ty

t

位置

一一Z一 AO一一 c一一 A2

eA3K>一一一 A4

一⑭一風車のみ

’Eユ

’{コ

NN

N

1

N

[コ

o O.5

¢

1 .0

図3。17 X・O.6Dにおける性能

1.5

47

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図3.18に,基準位置上方垂直距離X・0.85Dでの性能を示した. D=0.15

mの場合の結果(図3。10)と同様に,位置BO,Bl,B2における性能の

差はほとんどなく,いずれも風車のみの場合の性能より良い.

O.2

ao

O.1

D=O.09mU=1 Om/s

H=O.3m

4ノ

AZ..

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’ 、

’▽一

一一siz一.一

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位置

B-1

BO

Bl

B2

風車のみ

xN

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o O.5 1 eO 1.5

¢

図3.18 X=O.85Dにおける性能

一48一

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図3.19にX=O.6D,0.85Dにおける性能のうちで最もCpが大きくなる

位置の性能を示した.D== O,15mに対する結果(図3.12)と同様に位置

A3のCpが最も大きくなっている.

O.2

ao

O.1

D=O,09m

U=10m/s

H=O.3m

e A3一を一層 a1

+風車のみ

o O.5 1.0 1 .5

¢

図3.19 位置A3, B1における性能

一 49

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第4章繍

本研究は,建物等障害物の影響で生じる風のベルヌーイ効果と形成され

るよどみ域を利用し,サボニウス風車を一様流中に設置した場合より以上

の出力を得ることを目的とした.実験としては,建物等障害物の模型を風

洞吹出し口に設置し,模型周囲の流速分布を調査し,次にサボニウス風車

をその回転軸が模型屋上に平行になるように置き,流れのよどみ域に抵抗

側バケットが入り,増速された主流部に駆動側バケットが入るように設置

し性能を測定した.測定結果は模型を取り除き風車のみを設置した場合と

比較した.

4.1流速分布

建物等障害物の流速分布におよぼす影響の調査を,H=0.2,0.3,0. 4m

の3種類の模型を用い風速10m/sで行い,さらにH=O.3mでは風速6m/sで

も実験を行い流れの相似性を確認した.本実験より風の流れの主流部とよ

どみ域の形成が明らかになり,ベルヌーイ効果により主流部では約10%増

速する部分があることが判明した.

測定結果をもとに,模型上部の流れにおける主流部とよどみ域の境界線

を二次式で近似し,模型高さHをパラメータとして次式を求めた.

Y-3. 23×2/H

ただし Y:模型前縁からの水平距離

X:模型上端がらの垂直距離

一50一

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4.2 設置位置の風車出力におよぼす影響

4.2.1 D=0.15m, H==O.3mの場合

B。が100%となる基準位置AOでは,風車のみを設置した場合に比べて出

力は約7%増大したが,それより前方D/2の位置A3では, B。は約49%と小

さくなるにもかかわらず出力は約14%増大した.これは,抵抗側バケット

の抵抗トルクが最も大きくなるバケット先端部がよどみ域に位置すること

により抵抗が減少するとともに,さらにバケットがよどみ域から出ると同

時に下から吹き上げる風を受け,バケットが駆動力を得る回転範囲が広く

なるためと考えられる.また,Cpの値が大きいφの値の範囲も広い.基準

位置上方では,風車設置位置が模型上部より離れ,一様流に近づきベルヌ

ーイ効果の影響が薄れるためCpの増大の割合が小さく,特性曲線は風車の

みを設置した場合の性能に近づく.

したがって,適切な風車設置位置は,B。が約49%となる位置A3

(X・0.6D,Y・3.23(0.6D)2/H-D/2)近傍である.

4. 2. 2 D ・=O.15m, H=O.2mの場合

適切な風車設置位置は基準位置の上方D/4の位置BO(X・0.85D,

Y・3.23(O.6D)2/H)近傍で, B。は約53%となり風車のみを設置した場合に

比べて出力は約12%増大した.しかし,H=0.2mの場合では, H;O.3m

の場合に比べて模型の高さが低く境界線の勾配が緩やかになり,ベルヌー

イ効果は生じるが風の持つエネルギーが十分に収束されていないため出力

の増大の割合が約12%とH:=O.3mの場合の約14%に比べて減少した.

51

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4.2.3 D=0.09m, H=0.3mの場合

D=0.09mの場合には,風車の受風面積が小さく出力トルクも小さくな

り相対的に測定誤差が大きくなった.したがって,まず各設置位置での特

性曲線を3回求め,平均値を求めた.結果は定性的にはD=0.15mの:場合

と同じになり,位置A3における性能が良いことが判明した.

4.3 最適パラメータ

本実験より,流れにおける主流部とよどみ域の境界線の式が有効である

こと,建物等障害物の高さと使用するサボニウス風車の直径が決まれば適

切な設置場所が求められることが明らかになった.風車の最も適切な設置

場所はA3およびBO近傍で,抵抗側バケットの抵抗トルクが最も大きくな

る先端部がよどみ域に入るようにBcがおおよそ50%となる位置がよく,一

様卒中に風車を設置する場合より出力が10%以上増大する.すなわち,特

別な装置を用いずに設置場所の工夫で建物等障害物の影響で生じるベルヌ

ーイ効果とよどみ域を有効に利用することにより,サボニウス風車の出力

増大を図ることが可能であることが明らかになった.

4.4 今後の課題

風車直径D=0.09mの場合の測定精度を上げるための実験装置の改良が

必要である.改良できれば模極出さHと風車直径Dの比が異なったデータ

を多く求めることができ,建物等障害物の影響で生じるベルヌーイ効果並

びに形成されるよどみ域を有効に利用することのできる種々のパラメータ

をより明らかにすることが可能となる.

本研究は,サボニウス風車の回転軸を建:物屋上に平行に設置し実験を行

ったが,これらの結果は建物側面にサボニウス風車を縦軸型として設置す

る場合にも有効である.

一52一

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本研究を行うにあたり,生活・健康系教育講座技術分野の小川武範教授

ならびに久光脩文教授には終始懇切丁寧なるご指導,ご鞭挺を賜りました

ここに深く感謝の意を表します。また,研究の折々に貴重なるご助言を賜

りました技術分野の諸先生方に厚くお礼申し上げます.

さらに,本実験用ローターを製作して頂きました株式会社ムサシノ機器

製作所ならびに同企画開発部長長友靖雄氏に厚くお礼申し上げます.

最後に,兵庫教育大学大学院での2年間にわたる研究の機会を与えて頂

きました大阪府教育委員会,守口市教育委員会,ならびに守口市立大久保

中学校の教職員の方々に厚くお礼申し上げますとともに,研究を進めるに

あたりご協力頂きました本学技術分野院生の方々に深く感謝いたします.

1993年12月20日

福田治夫

53

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文献

(1) 矢野恒太記念会編:世界国勢図絵1994-1995,国勢社,1993,

pp. 83-210.

(2) 竹下寿英:エネルギー資源制約社会と文明観,日本機械学会誌,

VoL 95. No. 878, 1992, pp. 13-18.

(3) 清水幸丸:風力発電技術,パワー社,1990,pp.11-26.

(4) 牛山泉,三野正洋:小型風車ハンドブック,パワー社,1990,

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(5) 清水幸丸編:自然エネルギー利用学,パワー社,1990,pp.16-17.

(6) 長井浩:竜飛ウィンドパーク見学記,日本風力エネルギー協会,

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(7) 東北電力(株)電力技術研究所原子力・新エネルギー研究室:竜飛

ウィンドパーク,東北電力(株),1991

(8) 小川武範,吉田治夫:サボニウス風車に関する研究(第3報,ロー

タ端面板および偏流板の効果),日本機械学会論文集B,51巻471号,

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(10)牛山泉,長井浩,篠田仁吉:サボニウス風車の最適設計形状に関す

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(11) A.Sabzevari:Performance Characteristics of Concentrator-

Augmented Savonius Wind Rotors, Wind Engineering, Vol.1.No.3,

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一54一

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(12) S.Sivasegaram:Secondary Parameters Affecting the Performance

of Resistance-Type Vertical-Axis Wind Rotors,Wind Engineering,

Vol.2. No.1, 1978, pp.49-58.

(13) S.Sivasgaram:Concentration Augmentation of Power in a

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(15) 小川武範,田原和之,鈴木計夫:サボニウス風車に関する研究(第

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(16) 小川武範,吉田治夫,杉浦伸一:サボニウス風車に関する研究(第

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Tunnel Performance Data for Two-and Three-Bucket Savonius

Rotors, J.ENERGY, VOL.2, No.3, 1978, pp.160-164.

一 55