集 究極ミニマム「医療安全基礎講座」 看 · (スライド集)の紹介...

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特集 「全職員」を対象とした医療安全基礎講座の提案 チーム医療の観点から安全文化の醸成を目指すためには,病院業務にかか わるすべての人たちが安全対策の基本を少しでも理解し,実践することが重 要である。 方策の一つとして,現在,全国の医療機関においてさまざまな安全講座が 開催され,一定の成果を上げている。しかし,これらの取り組みが本当に「全 職員」を対象にしたものであるかというと,少々疑問があるように思われる。 講演のテーマは診療に関連した専門的なものが多く,受講者も看護師,医師, 薬剤師をはじめとする医療従事者に偏っており,看護補助者,ケアワーカー, 委託業者など,必ずしも医療が専門でない職種の人たちにとっては参加しに くいのが現状であろう。 しかし,件数は少ないものの,これらの非専門職による医療事故も報告さ れている。例えば,看護補助者が入院患者の食事介助後にベッド柵を上げる のを忘れて生じた転落事故,看護補助者による難聴患者の誤認を発端とした 患者取り違え検査ミス,清掃職員が拭き残した床の水たまりで松葉杖の患者 が滑った転倒事故,あるいは最近のご多分に漏れず,外部委託業者による消 費期限切れ食材の病院納入事件もある。やはり,すべての人たちに安全意識 の向上を促すような対策が望まれる。 さらに,医療専門職が行う診療過程においても,専門外の人たちに安全管 理の手助けをしてもらえることがある。例えば,入院病棟を離れて独歩中の 患者に生じた点滴ラインの逆血を真っ先に指摘してくれたのが清掃職員で あった事例もある。 一口に医療安全講座といっても,総論的なものから,職種を限定した専門 的な各論に至るものまで多岐にわたる。本稿では,「誰にでも分かりやすい」 医療安全の基礎講座を想定し,医療専門職以外の人たちも含め,職種を超え, すべての人たちが日常業務をミスなく実施するための基本となる安全情報を 必要最小限の知識が全職員に伝わる 究極ミニマム「医療安全基礎講座」 佐野厚生総合病院 施設概要病床数531床(一般376床,感染症4床,療養型100床,精神51床), 診療科目数22科,職員構成(2014年12月1日現在):総職員数794人(常勤医師81人,看護師352 人,薬剤師26人など) 【2013年度診療実績】 一日外来患者数平均983.6人,一日入院患者数平均451.8人,病床利用率85.7%, 平均在院日数(一般)15.2日,(全体)19.3日 奥澤星二郎 佐野厚生農業協同組合連合会  佐野厚生総合病院 院長 1978年慶應義塾大学医学部卒,同一般・消化器外科入局。1985~1987年米国マサチューセッ ツ総合病院留学。2000年より佐野厚生総合病院勤務。2001年よりヒヤリ・ハット劇場を主宰。 2010年院長,慶應義塾大学医学部外科客員教授。2013年全国公私病院連盟副会長。 病院安全教育 Vol.2 No.5 65

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特集2

医療安全研修は「全職員」が対象となるだけに、「どんな職

種の人にも分かる、役立つ内容」を企画すべく、担当各位は

苦心されていることと思います。本特集では、看護補助者、

介護職、委託業者など、医学的な専門教育・訓練を受けて

いないチームメンバーにも、医療安全の大切さ、そして「ど

う行動すべきか」を伝える教材、取り組み、また安全を担

保する上で基礎となる教育などの参考例を紹介します。

看護補助者・介護職員・委託業者にも!

医療専門職でなくてもわかる

安全研修&教材

「全職員」を対象とした医療安全基礎講座の提案

 チーム医療の観点から安全文化の醸成を目指すためには,病院業務にかか

わるすべての人たちが安全対策の基本を少しでも理解し,実践することが重

要である。

 方策の一つとして,現在,全国の医療機関においてさまざまな安全講座が

開催され,一定の成果を上げている。しかし,これらの取り組みが本当に「全

職員」を対象にしたものであるかというと,少々疑問があるように思われる。

講演のテーマは診療に関連した専門的なものが多く,受講者も看護師,医師,

薬剤師をはじめとする医療従事者に偏っており,看護補助者,ケアワーカー,

委託業者など,必ずしも医療が専門でない職種の人たちにとっては参加しに

くいのが現状であろう。

 しかし,件数は少ないものの,これらの非専門職による医療事故も報告さ

れている。例えば,看護補助者が入院患者の食事介助後にベッド柵を上げる

のを忘れて生じた転落事故,看護補助者による難聴患者の誤認を発端とした

患者取り違え検査ミス,清掃職員が拭き残した床の水たまりで松葉杖の患者

が滑った転倒事故,あるいは最近のご多分に漏れず,外部委託業者による消

費期限切れ食材の病院納入事件もある。やはり,すべての人たちに安全意識

の向上を促すような対策が望まれる。

 さらに,医療専門職が行う診療過程においても,専門外の人たちに安全管

理の手助けをしてもらえることがある。例えば,入院病棟を離れて独歩中の

患者に生じた点滴ラインの逆血を真っ先に指摘してくれたのが清掃職員で

あった事例もある。

 一口に医療安全講座といっても,総論的なものから,職種を限定した専門

的な各論に至るものまで多岐にわたる。本稿では,「誰にでも分かりやすい」

医療安全の基礎講座を想定し,医療専門職以外の人たちも含め,職種を超え,

すべての人たちが日常業務をミスなく実施するための基本となる安全情報を

必要最小限の知識が全職員に伝わる究極ミニマム「医療安全基礎講座」

佐野厚生総合病院 施設概要▶病床数531床(一般376床,感染症4床,療養型100床,精神51床),診療科目数22科,職員構成(2014年12月1日現在):総職員数794人(常勤医師81人,看護師352人,薬剤師26人など)【2013年度診療実績】一日外来患者数平均983.6人,一日入院患者数平均451.8人,病床利用率85.7%,平均在院日数(一般)15.2日,(全体)19.3日

奥澤星二郎佐野厚生農業協同組合連合会 佐野厚生総合病院 院長1978年慶應義塾大学医学部卒,同一般・消化器外科入局。1985~1987年米国マサチューセッツ総合病院留学。2000年より佐野厚生総合病院勤務。2001年よりヒヤリ・ハット劇場を主宰。2010年院長,慶應義塾大学医学部外科客員教授。2013年全国公私病院連盟副会長。

病院安全教育 Vol.2 No.5 65

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取り上げて「基礎講座のためのモデル教材

(スライド集)」を作成し,本誌読者専用WEB

サイトに掲載した。

全職種(非医療職を含む)に 配慮した「分かりやすさ」の心得とは

 「人は誰でも間違える」というように,「忘

却」という人間の特質は「つらい過去を忘れ

て今日を生きる」ための優れた能力である反

面,「過去から学ぶことができずに失敗を繰

り返す」という重大な欠陥でもある。人に大

切なことを伝えるのは本当に難しい。

 基礎講座のためのモデル教材作成に当たっ

ては,「間違いやすい」という人間特性を考慮

し,あくまで「理解のしやすさ」を第一に,伝

えたい安全情報を絞り込み,専門用語に偏ら

ない平易な表現を用いて「シンプル化」「見え

る化」することに努めた。1枚のスライドに

つき主題となる情報は一つだけとすることを原

則として,表示は大きく,文字数も減らした。

 教育・研修の要点は「夏の芝生の雑草取

り」である。夏の芝生の雑草は,取っても2~

3日するとすぐに生えてきてしまう。芝生を

きれいに維持するには,雑草をいつまでも繰

り返して取り続けなければならない。安全講

座も同様で,いくら熱心に伝えても,多忙な

医療の現場ではすぐに忘れられてしまうもの

である。指導する側にとって,全職種に配慮

した「分かりやすさ」の心得とは,「相手の

立場に立って,何度でも繰り返し伝える忍耐

力」に尽きるのではないだろうか。

基礎講座のためのモデル教材 (スライド集)の紹介

 「120分」のフルバージョンと「60分」の

ショートバージョンの2つのモデル教材(ス

ライド集)を新たに作成した。パワーポイン

ト2010を用い,フルバージョンは109枚のオ

リジナルスライドから構成されている。一

方,「60分」バージョンではフルバージョン

のスライドの中から55枚を厳選した。すべ

てのスライドは,医療安全管理者が一見した

だけで容易にプレゼンテーションできること

を前提に作成した。ぜひ,本誌読者専用WEB

サイトからダウンロードしていただき,講演

者にもスライドの「分かりやすさ」を確認い

ただきたい。

 なお,講演時間は講師のスピーチの速度や

追加説明などによって異なるが,「120分」

バージョンでは90分から120分程度,「60分」

バージョンでは45分から60分程度と推測し

ている。「120分」バージョンを基本に,自

施設に合った講演時間などを考慮し,どちら

かを選択されたい。本教材の使い方はどこま

でも自由である。そのまま利用されるもよ

し,あるいは,あくまで「叩き台」として,

不要と思われるスライドを削除したり,自施

設のデータを追加したりするなど,適宜内容

を修正されたい。

モデル教材の概要 「“必要最小限”の知識・認識」という視点

で絞り込んだ安全情報を5つの章に整理,分

類した。最後の章では,改めて「特に伝えた

い5つの要点」を強調した。なお,膨大な関

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本誌で紹介されている「医療安全基礎講座スライド集」がダウンロードできます。http://www.nissoken.com/ps

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連データの取捨選択においては浅学ながら,

半ば独断で行ったことをお許しいただきた

い。まずは,皆さんに本教材の内容を評価し

てもらえるよう,表1に各章ごとのスライド

の概要を示した。

「120分」バージョンにおける スライド解説 「120分」バージョンのモデル教材を構成

する全109枚のスライドについて,プレゼン

テーションの順番どおりに各要旨をまとめた

(表2)。「60分」バージョンで使用するスライ

ド55枚もすべて含まれているので参考にされ

たい。どちらのバージョンでも,事前に短時

間のスライドショーを行いながら本文を一読

するだけで,プレゼンテーションの基本資料

として簡便に利用できるものと考えている。

この「講座」を どう次へつなげていくか

 本基礎講座は,非専門職も含め,誰もが分

インシデント=ヒヤリ・ハット業務中に一つ間違えたら事故になりそうな「ヒヤリ」としたり「ハッ」とした経験

アクシデント=医療事故医療施設(病院など)で発生する人身事故医療行為と直接関係ないもの(転倒など),患者だけでなく,職員の被害も含む

図1 インシデントとアクシデント

1.ヒューマンエラーは人間の本質的欠陥

2.医療現場はミスが起こりやすい環境

図2 医療ミスを根絶できない要因

1.単純な確認ミスが多い

2.同じようなミスを繰り返す

3.医療の複雑性(医療訴訟)

図3 医療ミスの特徴

1.ハインリッヒの法則

2.スイスチーズ理論

3.環境システムの整備

図4 知ってほしい 防止対策の基本

1.すべての医療は患者が本人であることの確認から始まる

3.医療安全には思いやりのある接遇が必須である

5.医療安全の前では全職員が平等である

4.環境整備 5S活動の徹底・業務の5S

2.円滑なチーム医療が事故を未然に防ぐ

当たり前の業務を当たり前にこなす

図5 これだけは伝えたい5つの基本

第Ⅰ章 ミスのない医療の大切さスライド番号 3~13(120分Ver.)/3~6(60分Ver.)

•ミスのない医療の大切さ •医療安全管理者の役割•チーム医療の重要性

第Ⅱ章 医療ミスはなくならないスライド番号 14~ 64(120分Ver.)/7~ 23(60分Ver.)

•インシデントとアクシデントとは(図1)•ヒヤリ・ハット報告制度(「120分」バージョンのみ)•ヒヤリ・ハットおよび医療事故報告の現状•医療ミスを根絶できない要因(図2)「人は誰でも間違える」・環境の不備•医療ミスの特徴(図3) 単純な確認ミスの繰り返し・医療の複雑性

第Ⅲ章 知ってほしい 防止対策の基本スライド番号 65~ 95(120分Ver.)/ 24~ 45(60分Ver.)

•防止対策の基本(図4)ハインリッヒの法則・スイスチーズ理論・環境システムの整備(5S活動)

第Ⅳ章 安全を支える医の心スライド番号 96~99(120分Ver.)/46~47(60分Ver.)

•互いを思いやる心の大切さ

第Ⅴ章 これだけは伝えたい5つの基本(図5)スライド番号100~ 108(120分Ver.)/ 48~ 54(60分Ver.)

1.患者を誤認しない2.すべての人たちが安全を支える3.周囲に気を配る4.きれいな職場にミスはなし5.全職員が平等である

表1 モデル教材の概要

病院安全教育 Vol.2 No.5 67

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スライド番号

スライド番号要旨 要旨

すべての職員が知っておくべき究極ミニマム「医療安全基礎講座」

目次

目次 第Ⅰ章 ミスのない医療の大切さ

ミスのない医療は患者側,医療者側ともすべての人の望みである

どんなに最新の診療を行っても医療ミスがあっては何の意味もない

医療ミスが大きな事件に発展すると…病院は存続の危機に直面する

医療ミスの被害者は患者側だけでなく,ミスを犯した職員の双方である

すべての病院改革は医療安全を基軸とすべきである

すべての職員が協力し,チーム医療で安全対策に取り組む

医療安全管理者とは病院全体の安全管理業務の中心となる職員である

安全管理者の主な業務一覧 「教育・研修の実施」は重要な仕事である

当院における主な医療安全組織図(適宜,自施設のものに変更)

専門職だけでなく,非専門職も含め,みんなの連携が安全を支える

目次 第Ⅱ章 医療ミスはなくならない

インシデントとアクシデントとは(図1と同じ)

インシデントの用語説明 一般には「ヒヤリ・ハット」と同義語

ヒヤリ・ハット事例1 看護師のうっかりミス

ヒヤリ・ハット事例2 薬剤師のうっかりミス

アクシデントの用語説明 「医療事故」と同義語

医療ミスの用語説明 医療事故の一部で,医療従事者の過失による医療過誤

医療安全対策の基本とは 過去の事例の要因分析・再発防止対策・周知

ヒヤリ・ハット報告制度 厚労省の指導の下,全国の病院で導入されている

ヒヤリ・ハット報告制度の概要 報告収集・分析による安全対策の立案・職員周知

ヒヤリ・ハット報告制度の要点 自主的報告・懲罰なし・提出しやすい工夫

ヒヤリ・ハット報告制度の効果を検証する(表題)

全国のヒヤリ・ハットおよび医療事故報告件数の推移(表題)

ヒヤリ・ハット報告件数の推移 年間60万件を超えて増加

ヒヤリ・ハット報告件数の推移 棒グラフ(日本医療機能評価機構安全情報より)

平成25年度ヒヤリ・ハット報告の内訳 「薬剤」・「療養上の世話」が多い

医療事故報告件数の推移 年間3,000件を超えて増加傾向

医療事故報告件数の推移 棒グラフ(日本医療機能評価機構安全情報より)

平成25年度医療事故報告の内訳 「療養上の世話」・「治療・処置」が多い

ヒヤリ・ハットと事故との内容の相違 事故ではヒヤリ・ハットに比し,「療養上の世話」「治療・処置」が多く,防止困難な状況と考えられる

業務別の主な事故の内容一覧

医療事故は減少せず,ヒヤリ・ハット報告制度は十分に活用されていない

ヒヤリ・ハット報告制度が活用できない要因(表題)

ヒヤリ・ハット報告制度の概要(スライド23と同じ)

活用できない要因 1 報告の収集は比較的容易

活用できない要因 2 要因分析と防止対策の立案が困難という意見がある

活用できない要因 3 防止対策を職員へ周知するのが最も困難である

さまざまな伝達方策がなされているものの,職員への周知が難しいことを強調

「ひとに大切なことを伝えるのは本当に難しい」

医療ミスを根絶できない理由(表題)(図2と同じ)

その1 ヒューマンエラーは人間の本質的欠陥(表題)

「人は誰でも間違える」ことは改善できない欠陥であり,医療ミスの要因

医療ミスの発生要因は誰もが経験している日常のヒューマンエラーと同じ

日常のヒューマンエラー 事例1 外出の際の部屋の電気の消し忘れ

日常のヒューマンエラー 事例2 買い物を忘れたまま帰宅

医療の世界でも日常生活と同じようなヒューマンエラーが茶飯事に起きている

日常生活では「些細なミス」が,病院業務では「重大な医療事故」へと発展する

その2 医療現場はミスが起こりやすい環境(表題)

多忙・多重業務・連携不足・5S不備などの悪しき環境因子は医療界が抱える課題

残念ながら,安全な医療は存在しない

医療ミスの特徴(表題)(図3と同じ)

その1 単純な確認ミスが多い(表題)

医療ミスの多くは高度なシステムの不備ではなく,「うっかりミス」が要因

「心臓と肺の取り違え手術事件」の概要 安全管理の気運を高めるキッカケとなった事件

患者誤認防止のリストバンド(写真)

その2 同じようなミスを繰り返す(表題)

最近1年間だけでも「確認ミス」が主因と思われる医療事件が後を絶たない

「確認ミス」が主因となった最近の医療事件一覧 1

「確認ミス」が主因となった最近の医療事件一覧 2

その3 医療の複雑性 医療訴訟との関連(表題)

不確実な医療は医療ミスと誤解され,医療訴訟へと発展することがある

目次 第Ⅲ章 知ってほしい 防止対策の基本

業務にかかわるすべての人たちが医療安全の基本を理解・協力する

知ってほしい 防止対策の基本(表題)(図4と同じ)

その1 ハインリッヒの法則(表題)

ハインリッヒの法則 すべての労働災害における重要な経験則

ハインリッヒの法則の説明1 1対30対300の法則

ハインリッヒの法則の説明2 ヒヤリ・ハット事例が300件

ハインリッヒの法則の説明3 そのうち10分の1の30件が医療事故となる

ハインリッヒの法則の説明4 30件のうち,1件が重大な事故となる

ハインリッヒの法則の説明5 まとめ

たった一回だけ安全業務を実施しなかったためにミスが起こるのではない

何度も安全業務を怠り続けると,そのうちの一件が事故になる

日頃から安全マニュアルを守り,正しく作業することが事故防止の第一歩となる

その2 スイスチーズ理論(表題)

スイスチーズ理論 チーム医療による事故防止の基本的な概念

スイスチーズ理論の説明1 スイスチーズにはいくつも穴があいている

スイスチーズ理論の説明2 赤棒がチーズの穴を通るようにエラーが発生する

スイスチーズ理論の説明3 穴の開き方の違う2枚のチーズがあれば

スイスチーズ理論の説明4 2枚目のチーズでエラーを防止できる

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表2 「120分」バージョンのスライド要旨

病院安全教育 Vol.2 No.568

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かりやすい「“必要最小限”の知識・認識」

という視点から,伝えたい安全情報を絞り込

み解説したものである。実際の分析手法や実

施などにおける具体的で詳細な方策について

は,各施設,各部署の実情に合わせ,本誌で

取り上げられているようなほかの専門的で優

れた研修内容も参照の上,引き続き,より深

く展開していただきたい。

 医療の安全対策に終わりはない。今回のモ

デル教材が多くの施設において,「全職員」,

特に医療専門職でない職種や新入職員の方々

を対象とした「安全に関する基礎教育」の一

助となれば幸いである。

 ご意見,ご質問は遠慮なく下記までお寄せ

いただきたい。

okusawa@jasanoko.or.jp

引用・参考文献1)日本医療機能評価機構:医療事故情報収集等事業,

平成18 ~25年年報.2)奥澤星二郎:救急外来のクレーム・暴言 上手な対

応のポイント―救急外来における接遇NG事例を用いた医療安全教育,救急看護トリアージのスキル強化,Vol.4,No.4,P.68 ~74, 2015.

3)奥澤星二郎:実践!「ヒヤリ・ハット劇場」企画・開催のポイント,第2回 全職種・全職員を “巻き込む” シカケ,病院安全教育,Vol.2,No.3,P.74 ~80,2015.

4)奥澤星二郎:実践!「ヒヤリ・ハット劇場」企画・開催のポイント,第1回 企画・広報・準備・開催のプロセス,病院安全教育,Vol.2,No.2,P.48 ~54, 2014.

5)奥澤星二郎:実例で紐解くヒヤリ・ハット劇場の作り方,第3回 医療ミスと接遇不良,病院安全教育,Vol.1,No.6,P.100 ~107, 2014.

6)奥澤星二郎:実例で紐解くヒヤリ・ハット劇場の作り方,第2回 「同姓異名患者の取り違え検査ミス」の要因と防止対策,病院安全教育,Vol.1,No.5,P.42 ~48, 2014.

7)奥澤星二郎:実例で紐解くヒヤリ・ハット劇場の作り方,第1回 看護師間の連携不足による点滴業務ミス, 病院安全教育,Vol.1,No.4,P.43 ~49, 2014.

8)奥澤星二郎他:インシデント事例をシンプルに「見える化」して伝える!「ヒヤリ・ハット劇場」12年間の成果とその本質,病院安全教育,Vol.1,No.3,P.24 ~28,2013.

スライド番号

スライド番号要旨 要旨

スイスチーズ理論の説明5 さらに3枚のチーズがあれば

スイスチーズ理論の説明6 3枚目のチーズでエラーを防止できる

個人のミスは複数の職員が協力して防止することが基本となる

スイスチーズ理論の説明7 穴が大きいと枚数が多くてもエラーを防止できない

スイスチーズ理論の説明8 それぞれのチーズの穴を小さくすることも大切

スイスチーズ理論の説明9 全体の総括

スイスチーズ理論の説明10 みなさんのご理解とご協力をお願いします

その3 環境システムの整備(表題)

環境因子はエラー発生に大きく影響 医療現場ではミスが起こりやすい

環境改善のポイントは5S活動 整理・整頓・清掃・清潔・しつけ

5S活動 例1 写真 ナーススーテーションの机 5S前後で比較

5S活動 例2 写真 病棟器材庫 5S前後で比較

目次 第Ⅳ章 安全を支える医の心

医療安全は「互いを思いやる心」から始まる

他人を思いやる心配りとは,当たり前のことを自然にできる姿勢のこと

同僚を思いやる心配りがチーム医療の基盤となる

目次 第Ⅴ章 これだけは伝えたい5つの基本

単純なヒューマンエラーを防止できれば,医療事故は激減する

これだけは伝えたい5つの基本(図5と同じ)

その1 すべての医療は患者が本人であることの確認から始まる

患者誤認防止の一つ 「患者にフルネームと生年月日を尋ねる」

その2 円滑なチーム医療が事故を未然に防ぐ 患者を含め,すべての人たちが参加する

その3 医療安全には思いやりのある接遇が必須である

その4 環境整備 5S活動の徹底 きれいな職場にミスはなし・業務の5S

その5 医療安全の前では全職員が平等である

ご清聴ありがとうございました

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表2の続き

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病院安全教育 Vol.2 No.5 69