一般口演 15...O2-021 乳児ビタミンD不足に対する栄養指導 鶴田 1恵子1、棚橋...

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O2-021 乳児ビタミンD不足に対する栄養指導 鶴田 恵子 1 、棚橋 順子 1 、土屋 千枝 1 、川井 進 1 仲 佳代 2 、上田 由美 2 1 川井小児科クリニック 2 認定NPO法人アレルギー支援ネットワーク 【はじめに】 近年、ビタミンD(VD)不足の乳幼児の増加が報告されてい る。VDは不足すると骨の発育に影響し、小児期の成長にか かせない栄養素である。 今回、当院の乳児健診に来院した児のVD値を測定し、「VD 不足」を認めた乳児に対しVDサプリメント補充を含む栄養 指導や日光浴指導を行った。 【対象と方法】 対象は2018年11月~ 2019年1月末までに乳児健診に来院 した乳児41名のうち、VDの検査を希望した35名。 血清25OHD値20 ng/mL以上を「VD正常」、12ng/mL以上 20 ng/mL未満を「VD不足」、12 ng/mL未満を「VD欠乏」 と判定した。さらに栄養方法、日光浴の時間、日焼け止め の使用の有無について調査を行った。 「VD不足」「VD欠乏」と診断した乳児に、当院で作成した離 乳食レシピの冊子を用いて1日に必要なVDを摂るための離 乳食を指導した。レシピにはビタミンD含有食材(育児用ミ ルク、卵黄、しらす、鮭、ヒラメ、キノコ類等)と含有量を 明記し、各離乳期別に簡単にVDが摂取できるような内容に した。 ま た「VD不 足 」「VD欠 乏 」 の 乳 児 に は サ プ リ メ ン ト1日 400IU(10μg)補充投与をすすめた。 指導4週間後、血清25OHD、Ca、Pの再検とALPおよびPTH の血液検査を行った。 【結果】 血液検査を行った35名中「VD正常」は43%(15名)、「VD不 足」は37%(13名)、「VD欠乏」は20%(7名)であった。 栄養方法別でみると、血清25OHD値は母乳栄養児15.2± 12.2ng/mL、ミルク栄養児32.7±11.3ng/mLで有意に母乳 栄養児が低値であった。 母乳栄養児の87%(20名/23名)が「VD不足」「VD欠乏」で あった。一方、ミルク栄養児に「VD不足」「VD欠乏」は見ら れなかった。血清Ca値は母乳栄養児10.7±10.8 mg/dl、ミ ルク栄養児10.6±0.9 mg/dlで両群とも正常値であった。 日光浴実施と血清25OHD値には相関はなかった。 食事指導後は離乳食にきのこ類、魚を加え、摂取頻度を増 やすことが出来ていた。 VD400IU(10μg)/日補充した9例は4週間後血清25OHD値 が13.8±7.9ng/mLか ら24.7±9.5 ng/mLに 上 昇 が み ら れ た。血清Ca、P、ALPおよびPTH値は異常なかった。 【まとめ】 乳児の約60%に「VD不足」「VD欠乏」を認めた。そのほとん どが母乳栄養児でミルク栄養児には「VD不足」「VD欠乏」 は認められなかった。母乳栄養の乳児に対し、積極的なVD サプリメントの補充、VD含有の離乳食指導および日光浴指 導が必要と考えた。 O2-022 幼児後期の咀嚼能力と児の食習慣との関 連と保護者の認識 一丸 あゆみ、高野 政子 大分県立看護科学大学大学院 看護学研究科 【目的】 本研究は幼児後期の咀嚼能力と児の食習慣との関連と保護 者の認識を明らかにすることを目的とした。 【方法】 調査は2018年5月~ 7月に実施した。対象者はA市認可保育 所12施設に通う4歳児、5歳児と保護者とした。児の咀嚼能 力測定には色変わりチューインガム(以下、ガムと記す)を用 いた。保護者の調査は児のデータと対にするため記名式自 記式質問紙を用いた。分析は属性を記述統計し、保護者を2 群に分けt検定、共分散分析し、児の咀嚼能力を2群に分け カイ二乗検定した。統計解析にはSPSS Statistics23を用いた (有意水準5%)。自由記述はカテゴリー分類した。本学研究 倫理安全委員会の承認を得た。 【結果】 質問紙は490部配布し、387組(有効回答率96.5%)を分析対 象とした。児は4歳児215人(55.6%)、5歳児172人(44.4%)、 男児185人(47.8%)、女児202人(52.2%)であった。保護者の 属性は母親353人(91.2%)、父親33人(8.5%)、年齢は37歳以 上193人(49.9%)、37歳未満184人(47.5%)、就業状況は就業 (常勤・パート)378人(97.7%)、専業主婦9人(3.2%)であった。 児の月齢と咀嚼能力とは相関係数r=0.411であり、増齢に伴 い咀嚼能力は有意に高かった(p<0.001)。児の年齢を共変 量とした共分散分析では、咀嚼能力は男児が有意に高かっ た(p=0.028)。児の食習慣や咀嚼の様子では「好き嫌いが少 ない」(p=0.030)、「キュウリ等を噛み切り、奥歯でよく噛ん で食べることができる」(p=0.044)、「食べ物を強く、ゆっく り噛むことができる」(p=0.044)、「噛んだ後、上手に飲み込 むことができる」(p=0.005)で、そう思う群の児の咀嚼能力 が高かった。保護者の認識では「ご飯を作る時に児に手伝 いをさせている」(p=0.045)で、咀嚼能力低群の保護者が高 群より手伝いをさせていた。自由記述では、保護者は根菜 類を硬い食品として食事に取り入れていた。また、保護者 は児によく噛むよう口頭で声かけしていたが、児の飲み込 み方や咀嚼を教える方法がわからない等を不安や困り事と 回答していた。 【考察】 幼児後期の咀嚼能力は性差があり、増齢に伴い高値になる こと、咀嚼能力が高い児は「好き嫌いが少ない」「奥歯でよ く咀嚼する」「上手な嚥下ができる」等が特徴と考える。ま た、保護者は「咀嚼指導の方法がわからない」との意見が 多いため、幼児後期の食行動への指導では、様々な味覚を 幼児期前期から体験させることや児の咀嚼について奥歯で よく噛むように伝えること等が必要と考える。 24 25 22 24 一般口演 15 栄養・食育 座長:花木…啓一(鳥取大学医学部 保健学科) 209 The 66th Annual Meeting of the Japanese Society of Child Health Presented by Medical*Online

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O2-021乳児ビタミンD不足に対する栄養指導

鶴田恵子1、棚橋順子1、土屋千枝1、川井進1、仲佳代2、上田由美2

1川井小児科クリニック2認定NPO法人アレルギー支援ネットワーク

【はじめに】近年、ビタミンD(VD)不足の乳幼児の増加が報告されている。VDは不足すると骨の発育に影響し、小児期の成長にかかせない栄養素である。今回、当院の乳児健診に来院した児のVD値を測定し、「VD不足」を認めた乳児に対しVDサプリメント補充を含む栄養指導や日光浴指導を行った。

【対象と方法】対象は2018年11月~ 2019年1月末までに乳児健診に来院した乳児41名のうち、VDの検査を希望した35名。血清25OHD値20 ng/mL以上を「VD正常」、12ng/mL以上20 ng/mL未満を「VD不足」、12 ng/mL未満を「VD欠乏」と判定した。さらに栄養方法、日光浴の時間、日焼け止めの使用の有無について調査を行った。

「VD不足」「VD欠乏」と診断した乳児に、当院で作成した離乳食レシピの冊子を用いて1日に必要なVDを摂るための離乳食を指導した。レシピにはビタミンD含有食材(育児用ミルク、卵黄、しらす、鮭、ヒラメ、キノコ類等)と含有量を明記し、各離乳期別に簡単にVDが摂取できるような内容にした。また「VD不足」「VD欠乏」の乳児にはサプリメント1日400IU(10μg)補充投与をすすめた。指導4週間後、血清25OHD、Ca、Pの再検とALPおよびPTHの血液検査を行った。

【結果】血液検査を行った35名中「VD正常」は43%(15名)、「VD不足」は37% (13名)、「VD欠乏」は20% (7名)であった。栄養方法別でみると、血清25OHD値は母乳栄養児15.2±12.2ng/mL、ミルク栄養児32.7±11.3ng/mLで有意に母乳栄養児が低値であった。母乳栄養児の87%(20名/23名)が「VD不足」「VD欠乏」であった。一方、ミルク栄養児に「VD不足」「VD欠乏」は見られなかった。血清Ca値は母乳栄養児10.7±10.8 mg/dl、ミルク栄養児10.6±0.9 mg/dlで両群とも正常値であった。日光浴実施と血清25OHD値には相関はなかった。食事指導後は離乳食にきのこ類、魚を加え、摂取頻度を増やすことが出来ていた。VD400IU(10μg)/日補充した9例は4週間後血清25OHD値が13.8±7.9ng/mLか ら24.7±9.5 ng/mLに 上 昇 が み ら れた。血清Ca、P、ALPおよびPTH値は異常なかった。

【まとめ】乳児の約60%に「VD不足」「VD欠乏」を認めた。そのほとんどが母乳栄養児でミルク栄養児には「VD不足」「VD欠乏」は認められなかった。母乳栄養の乳児に対し、積極的なVDサプリメントの補充、VD含有の離乳食指導および日光浴指導が必要と考えた。

O2-022幼児後期の咀嚼能力と児の食習慣との関連と保護者の認識

一丸あゆみ、高野政子

大分県立看護科学大学大学院 看護学研究科

【目的】本研究は幼児後期の咀嚼能力と児の食習慣との関連と保護者の認識を明らかにすることを目的とした。

【方法】調査は2018年5月~ 7月に実施した。対象者はA市認可保育所12施設に通う4歳児、5歳児と保護者とした。児の咀嚼能力測定には色変わりチューインガム(以下、ガムと記す)を用いた。保護者の調査は児のデータと対にするため記名式自記式質問紙を用いた。分析は属性を記述統計し、保護者を2群に分けt検定、共分散分析し、児の咀嚼能力を2群に分けカイ二乗検定した。統計解析にはSPSS Statistics23を用いた(有意水準5%)。自由記述はカテゴリー分類した。本学研究倫理安全委員会の承認を得た。

【結果】質問紙は490部配布し、387組(有効回答率96.5%)を分析対象とした。児は4歳児215人(55.6%)、5歳児172人(44.4%)、男児185人(47.8%)、女児202人(52.2%)であった。保護者の属性は母親353人(91.2%)、父親33人(8.5%)、年齢は37歳以上193人(49.9%)、37歳未満184人(47.5%)、就業状況は就業(常勤・パート)378人(97.7%)、専業主婦9人(3.2%)であった。児の月齢と咀嚼能力とは相関係数r=0.411であり、増齢に伴い咀嚼能力は有意に高かった(p<0.001)。児の年齢を共変量とした共分散分析では、咀嚼能力は男児が有意に高かった(p=0.028)。児の食習慣や咀嚼の様子では「好き嫌いが少ない」(p=0.030)、「キュウリ等を噛み切り、奥歯でよく噛んで食べることができる」(p=0.044)、「食べ物を強く、ゆっくり噛むことができる」(p=0.044)、「噛んだ後、上手に飲み込むことができる」(p=0.005)で、そう思う群の児の咀嚼能力が高かった。保護者の認識では「ご飯を作る時に児に手伝いをさせている」(p=0.045)で、咀嚼能力低群の保護者が高群より手伝いをさせていた。自由記述では、保護者は根菜類を硬い食品として食事に取り入れていた。また、保護者は児によく噛むよう口頭で声かけしていたが、児の飲み込み方や咀嚼を教える方法がわからない等を不安や困り事と回答していた。

【考察】幼児後期の咀嚼能力は性差があり、増齢に伴い高値になること、咀嚼能力が高い児は「好き嫌いが少ない」「奥歯でよく咀嚼する」「上手な嚥下ができる」等が特徴と考える。また、保護者は「咀嚼指導の方法がわからない」との意見が多いため、幼児後期の食行動への指導では、様々な味覚を幼児期前期から体験させることや児の咀嚼について奥歯でよく噛むように伝えること等が必要と考える。

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一般演題・ポスター 

6月24日㊎

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6月24日㊎

一般口演 15 栄養・食育座長:花木…啓一(鳥取大学医学部 保健学科)

209The 66th Annual Meeting of the Japanese Society of Child Health

Presented by Medical*Online