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UDC 613. 2 : 546. 23 労働科学 59 10(1983) ( 453 ) ].Science of Labou γVol. 59, No. 10 セレンの両面作用:欠乏症と中毒症 高木和男* SELENIUM : BOTHSIDEACTION, DEFFICIENCY ANDPOISONING By KazuoTAKAGI* In 1856, Madison discovered that theparticular disease occured among war horses whichwerefeededwiththefodderproducedinalkaliarea, and, in1934, Franke explained that the disease was resulted from the intake of excess Selenium which contained in grainsproducedinhighSeleniumarea. After the discovery, bythen Seleniumwas considered as a poisonous substance. Moreover in the war timeworkershandling Selenium get frequently violent inflamation at ngernails, and, besides, workers who touched selenitesalt were attacked by very severepainoveramonth, sothatpoisonouspropertyof Seleniumwasmore confirmed. However, when Minamata disease occured and fear of mercury spread over the world, and it was notedthenthatregardlessofthe concentration of mercury in tuna tissue, itwasnotpoisonousforthesakeof Selenium which is contained at thesame time togetherinthattissue. After this pointing by Ganther (1972), exploration of biological availability of Selenium progressed widely. And it wasproved that several Selenium defficient areas exist in the world and Keshan disease would appear among inhibitants of these areas andsomeotherquestionsconcerningseveraldiseaseswereraised. And it is noted nowthatSeleniumisanutrient whichisrequired in a very small quantity and the requirement of Selenium is 60 100 μg/d. When the intake is under 30 ug/d, itis possible thatde ciencysymptomwill appearand it is recently noted that Selenium and vitamin E are importantnutrientsfor allanimals to help them maintain the maximum level of theirowndefencemechanisms against diseases and other enviro- mentalmenace. 串労働科学研究所・客員所員 Assoc. MemberoftheInstituteforScienceofLabour

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UDC 613. 2 : 546. 23

労働科学 59巻 10号 (1983)( 453 )

]. Science of LabouγVol. 59, No. 10

セレンの両面作用:欠乏症と中毒症

高木 和男*

SELENIUM : BOTH SIDE ACTION, DEFFICIENCY

AND POISONING

By

Kazuo TAKAGI*

In 1856, Madison discovered that the particular disease occured among war horses

which were feeded with the fodder produced in alkali area, and, in 1934, Franke explainedミ

that the disease was resulted from the intake of excess Selenium which contained in

grains produced in high Selenium area.

After the discovery, by then Selenium was considered as a poisonous substance.

Moreover in the war time workers handling Selenium get frequently violent inflamation

at 五ngernails, and, besides, workers who touched selenite salt were attacked by very

severe pain over a month, so that poisonous property of Selenium was more confirmed.

However, when Minamata disease occured and fear of mercury spread over the

world, and it was noted then that regardless of the concentration of mercury in tuna

tissue, it was not poisonous for the sake of Selenium which is contained at the same time

together in that tissue.

After this pointing by Ganther (1972), exploration of biological availability of

Selenium progressed widely. And it was proved that several Selenium defficient areas

exist in the world and Keshan disease would appear among inhibitants of these areas

and some other questions concerning several diseases were raised.

And it is noted now that Selenium is a nutrient which is required in a very small

quantity and the requirement of Selenium is 60~100 μg/d. When the intake is under

30 ug/d, it is possible that de伍ciencysymptom will appear and it is recently noted that

Selenium and vitamin E are important nutrients for all animals to help them maintain

the maximum level of their own defence mechanisms against diseases and other enviro-

mental menace.

串労働科学研究所・客員所員

Assoc. Member of the Institute for Science of Labour

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J. い きさつ

セレンは英語名 Selenium,原子番号 34の元素

であり,原子量 78.9,周期表を見ると非金属元素

68族の 3番めの元素であり,クラーク数 10-s

の 70番目の元素である。日本語をもし英語のま

ま読むとセレニウムとなり,原子番号 58のセリ

ウム Ceとまぎらわしいので,日本名はセレンで

ある。

セレンの毒性についての科学的研究報告は,

USAの SouthDakota 〈ミズリ一川上流地方〉の

獣医 Madisonが, 1856年に軍馬でアルカリ病を

観測したのがはじまりとし、う。氏の報告は,ある

地方の馬糧がこの疾病を起こしやすいことを認め

たので、あった。それ以後,セレンの毒性について

の報告が重ねられていて,セレンは毒性物質とし

て考えられていた。

水俣病の発生によって,世界的に食品中の水銀

含有量が問題になり, USA においては多数の食

品について水銀の分析が行われたが, 日本産マグ

ロ健詰肉中に水銀含有量が多いことが発見され,

USA市場からボイコットを受けて,日本の水産

業界が大恐慌を来たしたときに, H.E. Ganther

の Science誌上(1972)に発表された報告によ

って,マグロ肉中の水銀を食用しでも,同じくマ

グロ肉に含有されるセレンのために解毒されるこ

とがわかった。これは,まさに日本の水産業界に

とっては福音であったので、あるが,それ以後セレ

ンの生理作用についての研究が多く報告され,セ

レン欠乏症の存在することもわかってきた。

以下,これらの経緯について総括してみようと

思う。

11. セレンの毒性について

セレソの毒性についての報告は,前述のごと

く, T.C. Madisonが 1860年に上院の特別報告

に記載したのにはじまる。この内容は,ある地方

産の穀類を用いた馬糧が,軍馬に疾病を起こすこ

とを記したものである。 これについで South

Dakota農業大学の Frankeら1)が,この疾病の流

行する地方の穀物が特に有害なことを明らかに

しその原因はこれらにセレンが多く含有される

ということによることを,動物実験により確かめ

Fig. 1, 2 Congential alkali disease 14-days old colt of a mare presented by Franke, Public Health Rep., Vol.51 (44), 1936 先天的アルカリ症生後 14日目のメス

馬 Frankeによる

た。

この疾病は馬,牛, 豚に発生し,アルカリ病と

いわれているもので,鉱物質含有量の多い飲用水

によると考えられていたものであるが,馬は特に

タテガミ,尾の毛が脱落し,体重が減少し衰弱

しやせてしまい, ヒズメが巻きこまれる症状を現

わす。

長期にわたるセレン投与により,動物は食餌の

摂取が減少し成長が減退し, 貧血になってく

る。ラットと犬では,小血球性低色素性貧血がは

げしく進行し,肝臓は各種の程度に壊死性,出血

性となる。馬のタテガミ ,尾は脱毛するが,豚や

有蹄動物では赤くただれ,足が曲がってくる。ま

た,かさぶたができる。長骨の接合部分の腐食の

ために足が固くなり,また曲がってくる。心臓の

萎縮は通常の場合に見られる。このようなセレン

中毒症状は, 5~lOppm の Seを含有した飼料

で, 2~3週間ののちに出現することが普通であ

る。 15~20ppmが含有された場合には, 2~3

日で発現する。そして死亡する。セレンの有害作

用の機序は不明である。中毒量のセレンを摂取し

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たとき,血液や組織中のセレン量は確実に上昇し

て,肝や腎では 5~7ppm まで上がり,筋では

1~2ppmになる。これ以上になると,摂取にし

たがって排出が行われるから,セレγは体内にこ

れ以上継続して貯えられるということはない。

セレンは,その周期表上の位置から推測して,

生体内で、は硫黄化合物中の硫黄の代わりにはいる

のであろうと想定されていた。そして,主として

セレノシスチンまたはセレノメチオニンとして,

単独またはタンパク質となっているのであろうと

いう考えであるが,現在は別の研究もすすめられ

ている。すなわち,セレンを含有する化合物はシ

スチンやメチオニンの分間に伴っているので,単

純にセレナイトの形で、硫黄化合物と結合している

のではないか, という推測である 2)。

セレナイトは数種の酵素を阻害する。その一つ

はデヒドロゲナーゼの阻害である。また,ユリア

ーゼの阻害である。セレンの阻害作用は HS-基

の転移の点にあるのではないかということが,

in vitroで Wrightにより示されている3¥Klugら4)は,セレン鉄を与えたラットの肝コハ

ク酸脱水素酵素の活性は減少するが, :iilt素を与え

ると正常値にもどると報告している。これは Lav-

vander ら55,6)が,セレン中毒を発生させた犬,

豚,ニワトリ,牛などで, lil:c素を与えるとセレン

の排出が増加することを実験していることと対応

している。

III. ヒ卜に対するセレンの有害作用

Smithら7,8)は, セレン中毒を発生する地方で,

ヒトが家畜のように激しいセレン中毒にかからな

い理由を追求するため,まずこの地方の住民 111

家族についての調査を行った。これらの家族は農

業か牧畜に従事する人たちで,その地区は 17地

区に分かれるが,すべて白亜地帯のセレンを含有

する土地で,アルカリ地帯といわれる地区であ

る。家族員は計 167人であるが, 90家族中の

127人が選ばれた。

この家族には歯の悪い人,黄色に退色した皮

膚,皮膚の発疹などが 20世帯に見られた。ま

た,関節炎をともなう関節の変質が 15例見ら

れ, 5人には爪や指の変形が見られた。また,他

の5人には皮下の浮腫が見られたが,これは心臓

C 455)

または腎機能の障害によるものであろう。

これらの家族について,尿中のセレンの分析が

行われた。分析は,当時かなり困難であったが,

比濁法によってて行われた。この結果は,最高が

133 μg/dlであり, 2~50μg/dlの範囲に 74%が

含まれていた。この量は,家畜の尿に排出される

ものよりも少ない。

以上のようであるが, ヒトは動物のようにひど

い状態にはなっていない。これは, ヒトは動物の

ようにセレン地帯から得られる食物にのみたよっ

ておらず,他地方から移入した食物を混ぜ、て食べ

ているためで、あろうと考えられていた。

ヒトはセレン地区に居住しても,家畜のような

激しいセレン中毒を発生しないのであるが,セレ

ンによる急性症状については戦前から報告があ

り,セレンは職業病の原因となる物質として認め

られていた。

久保田町土,セレン整流器の製造を行っている

工場において,従業員が亜セレン酸による激しい

爪床炎を発生することを見でおり,これに対し

て,作業後に 5%のハイポ液による手指のてい

ねいな洗浄が,対策として有効なことを述べてい

る。また,作業者のほとんどすべてに白血球減

少, リンパ球増多症を認めたという。またセレン

中毒に対して,タ γパク質の多量投与の効果につ

いて実験している。

中村10)は,亜セレ γ酸の急性中毒について症例l

報告を行っている。この急性症状を発生した男子

は亜セレン酸のはいった瓶をこわしてしまったのI

で,内容物を素手で他の容器に入れかえたという

のであった。その夜中から痛みがひどく,翌日来

院したというのである。各種の試験を行ったが,

亜セレン酸の中毒と判定して, 10%λ、イポ液を

数回にわたって静注したとし、う。

事故を起こしたのは 9月1日であったが, 9月

11日には疹痛は全くなくなり, 思考力も平常に

もどった。爪床の赤褐色の着色は 10月初旬にも

残り, 10月20日にもまだ赤変して残っていたと

いう。このよさな激痛は,亜セレシ酸が還元する

ときに起こると考えられ,ていた。

IV. 水銀中毒とセレン

水俣病がメチノレ水銀の中毒であることが判明し

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( 456)

てからは,水銀の恐しさが世界中の関心のまとと

なって,食品中の水銀含有量の調査が各国で盛ん

に行われるようになった。 1970年に USAで行わ

れた調査では,マグロ健詰肉中の水銀について,

USAでは 0.5 ppmを超えるものが 25%を占め

るのに,英国ではこのようなものが 5.2%にす

ぎず,平均値は 0.19ppm であったと発表され

たω。日本から輸入されるものに高濃度の水銀含

有を示すものがあることがわかり, 日本産のマグ

ロ健詰は売れなくなって日本に返送され(1972

年ころ〉,そのため日本中の水産倉庫は遠洋のマ

グロに満たされるということになった。マグロ肉

の水銀が,最近進んできた海洋汚染と関係するか

どうかを調べるため,水産庁では約 10年前に捕

獲したマグロのアルコーノレ標本について水銀の分

析を行ったが,現在と同程度の水銀含有量を示し

ていた。さらに中央市場で,常に,マグロの試食

を行っている職員について毛髪の水銀を測定した

ところ,これも通常以上の水銀を含有していた

が,水銀中毒の症状は発生していなかった。以上

のように,マグロ肉中の水銀の害否については疑

問をもたれてきたが, しかし日本のマグロの売れ

ゆきには大きく影響していた。

このとき, Science誌上に H.E. Gantherらの

記事が発表された1ヘGantherらの実験は,ウズ

ラを試験動物として,マグロ肉に含まれると同量

のメチル水銀を混じた大豆とトウモロコシの混合

飼料(飼料1)と,同量のメチル水銀を含有する

マグロ肉を飼料(飼料2)としたものと,さらに

飼料1にマグロ肉に含有されると同程度のセレン

を添加した飼料(飼料3)の 3種の飼料を用いて

ウズラを飼ったところ,飼料2,飼料3で飼育し

たものは水銀による中毒症状を発生しなかった。

なお,飼料に加えたメチノレ水銀の量は 20ppmで

あった。

この記事は,翌年 NutritionReview誌に紹介

されて,広く栄養関係者に知られるようになっ

た13¥

この後, 日本でも水銀の害作用を阻止するため

のセレンの作用について,各方面での研究が重ね

られ, 1976年6月 23~24日には,「水銀とセレ

ン」と題するシンポジウムが, 52人の参加者によ

ってもたれ,このまとめが「水銀とセレン」の題

のもとに出版されるに至った14)。

v. セレンとビタミンE

ビタミンEは, invitroでも酸化防止作用があ

って,脂溶性物質の酸化防止剤として用いられて

いるが,体内でも脂肪の酸化を防止する作用があ

ることもわかっている。

ピタミンEのこのような作用と Seとは,相助

作用をもっということが,次第にわかってきた。

ビタミンEと Seとの関係が知られたのは,栄養

性筋ジストロフィー(ビタミンE欠乏のメスから

生まれた仔に生じる筋無力症〉に, ビタミンEが

効果のあることがわかって,この研究の過程で

Seの効果がわかったことである。

Bonetti ら山は, ウサギやモルモットの筋無力

症には Seは無効であるが,ラットにおいてはビ

タミンEの欠乏のある限度までは Seが有効に作

用すると報告しており, Dziaba16>または Mik-

kelsen17lらは,仔羊に対して Seは著しく有効で

あると報告している。

しかしこれ以後の報告は,両者の関係につい

て有意で、あるものは少ない。たとえば Hugh

ら18)のサケ飼育の実験, Naliniら山の酸化したコ

ーン油を用いる動物の飼育についての Seとビタ

ミンEの効果, Paulら20)らが鹿について行った

実験では, ビタミンEの効果を認めても, Seが

ビタミンE効果を助けることは明かでなかった。

VI. 微量栄養素としてのセレンの

生理作用

食物として摂取するセレンの生理作用につい

ては,最近の Nutrition abstract and review

に, 279の文献をもって,ニュージーランドの

Robinsonと Thomsonとにより総括的な紹介が

なされている 21)。以下,この記事の紹介を主とし

て,セレンの生理作用について記すことにする。

1980年に Lublockで、聞かれたセレンの生物学

と医学についての第2回国際会議において, M.

Scottは, SeとビタミンE (V. E)とは,動物が

病気や外部からの干渉に対して生命を防護するた

めの抵抗力を維持するのに重要な物質である, と

述べている。

すなわち,ニュージーランドには Se不足地帯

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があり,住民には異常な Se不足状態が見られ,

同様の地域はフィンランド,スウェーデγ,中国

の一部にも見られる。中国での研究は22),西安医

学院と中国医学院でなされているが,心筋障害を

ともなう病気(Keshandisease,克山病〉が中国

東北部,黒竜江省から西南部の雲南省にかけて発

生していると報告され,毛髪中の Seが 0.2ppm

以上では発病せず, 0.12ppmで発病するなどの

研究がくわしくなされている。

Seの生理的作用機序については, Schwarzと

Foltzが V.E欠乏による肝壊死に Seの微量が有

効であると発表し(1957),また Millsは同年に,

グノレタチオンパーオキシダーゼ(GSHPx)がヘモ

グロビンの破壊や血液の凝固を防止して赤血球

を破壊から守ることを発表したが, 1973年に

Rotruckら23)は, GSHPxが, Seを含む酵素であ

ることを証明した。これ以後, この方面の研究が

進展した。

GSHPxは分子量約8万で四つの部分から構成

され,その各部分に Seを含んでおり, Seは

GSHPxの活性部分として,セレノシスチンが

Selenolの形で存在するのであるが, Seのとり込

みについては諸説があり確定はしていない。この

説にしたがえば, グノレタチオンは含硫アミノ酸シ

スチンを構成要素とするものであるが, GSHPx

はこのシスチンの硫黄の代わりに Seが置き換わ

ったものであるということになる。

GSHPxは,いろいろな物から分離されている。

たとえば, ヒトの胎盤,大動脈,血小板(栓球〉,

赤血球などである。赤血球中のこの酵素は人体全

体中の存在量の 10%を占めている。この酵素は

過酸化脂肪などの条件を防止し,この作用はカタ

ラゼやジスムターゼや V.Eと同様である。

GSHPxは,体内で発生する過酸化物: HO基

に対応して,これを防止するために働き,また老

齢化による過酸化物の発生に対して働き特殊な貧

血症,たとえば地中海貧血などを予防する。しか

し, 動物によっては, たとえばウサギのごとく

Se非依存性の GSHPxをもっているものもある。

血液中の栓球の凝集作用についても, GSHPx

は特殊に働く。栓球には他の組織より濃厚に

GSHPxが含まれるが, これの減少はプロスタサ

イクリンの合成を抑制するため,栓球は凝集しゃ

C 457)

すくなり,血液は凝固を起こしやすくなる。さら

に, GSHPxは,栓球の凝集の第一段階で露出し

てくるリン脂質を作るアラキドン酸の代謝とも関

係する。

また, Spallholzら24)は, GSHPxが細胞の免疫

作用に参与することを述べている。このことは,

Serfoss と Ganther, ま7こは Boyneと Aurthur

によっても追試されている。

肝での代謝と Seとの関係について, Burkは

ラットでは Seが欠乏した場合にフェノールパル

ピタールによるチトクローム類の阻害が見られる

といっている(1974)。そして,このような作用は

GSHPxとは関係がなく, Se欠乏によって発生し

た欠陥は,少量の Seを投与すると直ちに回復す

るが,それは GSHPxの活性の上昇よりもはるか

に早くみられる。 Seは, タンパク質と結合した

Se-シスチγの形で作用しているものと思われ

る。また, Seは精子生成に必要なものである

という報告が, Wuら25>, Brown ら26>, Behne

ら27)によってなされている。

Seはカドミウム,水銀,枇素,銀,鉛などの重

金属の害作用に抵抗するものであることが,

Levanderら(1980),Ganther (1980), Parizek

ら(1980), Whang erら(1980)によって, NY

科学アカデミー誌などほ発表されているとし、う。

片山洋子ら28)はマウスを Se添加食または無添

加食で2週間飼育したのち,①Goldthioglucose

を腹腔内に注射して 2日後,①15日後,①Gold

thioglucoseを注射しない対照の 3群に分け,肝

臓中の金(Au)と SH基を含むタンパグ質の生

成がどのように影響されるのかについて検討して

いる。そして Se添加食の場合,分子量 10,000

以下の Au-チオネインの生成を促進したが,分子

量 10,000前後の Auチオネインに対してはあま

り影響はなかったといっている。

A. 食物中の Se

食物中の Se含有量は,土壌の Se含有量に影

響されて,地方により 100倍の聞きがある。たと

えばニュージーランド,フィンランド,中国に育

つものでは 0.01 μg/g, USAでは 0.2~0.2 μg/g

であり, SeFe土壌の土地では 25μg/gのものま

である。デンマークでは土地に亜セレン酸を噴霧

する方法が行われ,中国では葉にスプレーする方

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( 458)

Table 1 Estimated Human Dietary Intake of Se* μg/d

ヒトの 1日の Se摂取量〈計算値〉

Finland U. S. A. Food U. K. Japan Canada U.S. A. South I Venezuela

1975 1979 Dakota

I 32 I 50"-'60 J 60 1 88 1 98"-'2

Table 2 Summary of Metabolic Balance Studies of Se in Man

ヒトについての Se平衡試験

Le~fh Se Protein ! ~parent JUrinary Plasma Se Diet Subjects intake intake orption Se Balance 血摂 Se

study Se タンノ4ク

見吸掛収%率の 尿μ中:e排/d出 平μg/衡d 食 事 被験者(d期ay間s) 摂μ取g/量d 質摂g/取d量 ng S目~/ml ng S後e/ml

N.Z. (a) constant 2平 18 25

( b) self-selected 4平 14 24

U.S.A. ( c) constant, white 12 o 15 81

bread

white bread+ 80 12 260 150 μg selenite

法がとられているが,種子中への移行は少なかっ

たとし寸。動物には Seの一定微量が必要である

から,ニュージーランドでは牧場に Se化合物を

散布しているとし、う。

魚に含有される Se量は,水銀問題のためによ

く調査をされている。

ヒトの 1日の摂取量について, Seの摂取は食

物からが主であって,飲料水からの摂取は特別な

地方以外は 3.5 μg/l (USA)程度である。ただ

し, ワイオミ γグ州やニューメキシコ州では 200

μg/lになることもある。

Watkinsonは,摂取食物中の含有量について,

各地のデータから表1を作成した。

中国人は,その居住地産の穀物を摂取するので,

その土地の Se含有量により, Se摂取量は 11~

4990 μg/dのような広い範囲になる。 Keshan病

(克山病〉を発生する地方に住む婦人では, 5.7~

19. 7 μg/dである。中国での例のように,世界の

各地での Se摂取量はかなり大きなへだたりがあ

る。

B. Seの生物的効果

微量栄養素の研究は,環境条件を考慮したうえ

でなければIならない。 Seについての研究は,①

吸収,②移送,①排出,④体内分布,⑦生体内で

の活性物質への転化(transformation)などであ

93

61

46

50

60 13. 8 +1.1

55 13. 1 +o. s 58

68 54 +1

44 104 +10 118 130

り,①~④まではかなり研究が進んでいるが,①

は部分的に明らかにされているにすぎない。

C. 吸 収

Seの吸収の測定には,糞便中への内因性 Seの

排出を考慮しなければならないが,これはパング

レア酵素の形で醇臓成分として腸管中に出てくる

ものであり,この部分は再吸収される。このよう

な実験の成績を表2に示す。

D. 移動〈中間代謝〉

赤血球,白血球,栓球〈血小板〉中の Seの形

についての研究はないが,血援中の Seはタンパ

ク質と結合した α3,(3ーグロプリンの形か,リボタ

ンパク質に結合していると報告されている。血築

中の濃度は,赤血球の濃度よりも摂取量に大きく

影響される。 75Seによる半減期の測定では, Se-

メチオニンは非常にゆっくりと代謝するが,セレ

ナイトではかなり速やかに代謝するとし、う。

E. 排出

Seの排出は主として尿であり,糞はこれに次

ぎ,またごくわず、かで、あるが呼気や皮膚からの排

出もある。 Se の吸収量を測定するのに,尿中排

出を測定することは有効である。 Lavenderは,

Se摂取量の 55~60%が尿中へ出てくると報告

している。

F. 体内分布

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全身としては,ニュージーランドの人たちは 6

mgの Seをもっていて,他の地方の人たちの

12~20mg より低い。ニュージーランド人につい

ては,各臓器中の分布は低いが,副腎では例外的

に高い。しかしこの量は USA人の副腎の量を

超えることはない。

G. 生理的有効性

GSHPxを生成するためには, Se-メチオニ γ

でもセレナイトでも,その効果に甲乙はない。し

かし植物源からのセレナイトは 60%が有効で

あるのに,動物性食品では 25%が有効であるに

すぎない。

Se欠乏ラットの肝の GSHPx活性を回復する

ことを指標として調べたところ,牛の腎の場合に

セレナイトの 97%に相当する効果を示したが,

加熱した小麦のセレン第一鉄では 83%であっ

C 459)

た。マグロや他の海産物については低い値が示さ

れるが,その理由は不明である。

ヒトについての有効性の実験は困難である。有

効性の有無は,投与の効果として調べるわけであ

るが,すでに Se濃度の高い人たちで、は効果が現

われなし、から,ニュージーランド地方の人たちは

このような試験には好都合である。

Se化合物の両形,すなわち Seメチオニンとセ

レナイトとの差は,赤血球の GSHPxの活性によ

っても差が見られなかった。

また,被験者による 2カ年半にわたる試験で

も,両化合物の有効性の差を示すことはできなか

った。

南ダコタの高 Se含有の小麦についての試験で

は(100μg Se/d), USAから報告されている血中

濃度レベルに達したものはなく, Seメチオニン

Table 3 Clinical Response to Se Supplementation

セレシ投与の実験

Country Number Evidence of Se Supp投le与ment Clinical of low Se status Se respo・

疾 病 subjects 低 Seの発現 nse 国名

被験者数 事項 Form [Doset ?与m量gSelDuration 反応形投 期間

Keshan disease* China c¥_oios

hair Se selenite旧l(Ol5to 4 yr ,./ Chen. et al. (1980) yr) blood Se 3wk-1

. 5-1 wk-1)

Cardt~1ye~pa thf 1 u. s. A. 1 intake selenite 9 d-1 4wk ,./ Coll p al. 981) (2 yr) C <lOμg Se/d) (2 d-1)

Haemolytic anaemia Italy 1 GSHPx selenite 2 d-1 40 d ?

Pernoa et al. (1977, 1978)

NCL-Juveni】e Finland 8 GSHPx selenite 0. 1 d-1 3 to 4 yr ,./ -nfantile kg-1 body wt ×

Mucular complaints-TPN N.Z. 1 blood Se, Se met 0. 1 d-1 24 d J Van Rij et al. (1979 a) GSHPx intake -Se

Robinson et al. (1981)* N.Z. 40 blood Se, selenite 0. 1 d-1 4wk × GSHPx

Thomson et al. (1982) N.Z. 23 blood Se, selenite 1 to 3 wk-1 0. 5 to ?

GSHPx or month-1 15 yr

Bruce et al. (1981) Sweden 17 一 0. 2 d-1 2wk ?

Van Rij et al. (1981) N.Z. 4 blood Se, 30 d × GSHPx

Fell et al. (1980) u. K. 12 RBC, GSHPx selenite . 9 mg d-1 7wk ×

King et al. (1981) U.S. A. 1 REC Se, selenite . 4 d-1 to 12 d to × GSHPx . 1 d-1 5months

Clinical assesment of response : ,/, response;×, no response ; ? , not clear of doubtful.

串 Doubleblind study.

Res~1o0~se in od levels

血中上昇

,./

,./ ,./

~ ,./

J ?

~/ ,./

,./ ,./

,./

,./ ?

,./ J ,./ J

t Dose calculated from reported dose (in parentheses) usually as sodium selenite ; therapeutic dose,

<0. 5 mg Se d-1.

Semet-Se as selenomethionine ; NCL as neuronal ceroid lipofuscinosis ; TPN =total parenteal nutrition.

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( 460)

とセレナイトの中間に位置する有効性を示した。

GSHPxの活性の上昇は, 2人の被験者とも 4~

8週間で、水平になった。

これらのほか, Perona(1978), Westermarck

(1977), Spooner (1980)などにより,患者に投与

して試験されている。このうち Westermarckの

ものは,脳神経のリポフスチン症に7週間投与し

たものであり, Lombeek らのものは, フェニー

ノレケトン尿症の子供の非常に低い赤血球,血柴

Se, GSHPx kこ対して Se濃度の高いイースト

C 45 μg Se/cl)を与えたものである。血疑 Seは

4週間で正常値に達したが,赤血球の Seや

GSHPxが正常値に達するには 9~15週を必要と

した。 Se状態が正常な人たちに投与しでもこれ

らの値が高くなることはないが,低 Se状態の人

に対しては著しい効果を示し,投与2日後に効果

が現われ, 1~ 3週間で正常値を回復する。

栓球の GSHPxについても投与試験が多く行わ

れている。また,ニュージーランド住民の栓球の

GSHPxは低いのだが,海外からの移住者では滞

在が長びくと低下してくる。

H. Seの保持状態の判定法

Seの保持状態を判定するのに GSHPx測定は

有効であるが,これのみでは不十分で,判定を誤

るおそれがある。表4のような各種の事項の測定

が行われている。

表4のような各種項目の数種について調べてい

る。最も迅速なものは GSHPxをしらべる方法で

あり,またこれを栓球,赤血球について行う方法

Table 4 Se状態判別のための測定項目

測定項目 試 料

1. Se量 栓’’爪

球手

血’

赤爪’

足検

摂’生

血髪織

’毛組

液’,

血球尿

2. 酵素活性

GSHPx

GSH転移酵素

血液

赤血球,白血球

血摂,好中球カタラーゼ

過酸化物ジスムターゼ|栓球, リンフォサイト

3. 相互作用物質

ピタミン, E,C,A |血液,毛

タンパク質 |血摂,足爪

Zn, Cu, Fe |赤血球,指爪

Cd, Hg, Pb |白血球,尿

である。

Seの分析法としては蛍光測定法(Mertz,

Koh, Brown, Watkinson)中性子活性化法とし

て Zeeman効果の非焔光的吸収スベクトル法や

ガスグロマト法が用いられる。

血中や毛の Se測定は,日常の Se摂取状態を

知るのによい。赤血球中の Seは長期間,血禁中

の Seは短期間の状態、を知るために用いられ, 24

時間尿や爪などの Seの測定は高濃度暴露に対し

て行われる。 Se高濃度地方では, Seのはいった

洗剤が用いられているから注意が必要である。

また,他の栄養素との関連が盛んに研究されて

いる。

I. Se欠乏の影響

微量栄養素の欠乏状態ということについて,

Mertz29lはその栄養素が正常より少ない状態にあ

るというだけでなく,その栄養素の投与によって

症状が回復するとし、う場合も含まれると定義して

いる。

しかしニュージーランド住民の場合,

GSHPx値は低く, Se投与により高められるが,

それが健康状態として良好であるか否かの判定は

困難である。このようなことから Seの状態の判

定は著しく困難で,加えるに動物の種類によって

Seへの対応が異なるため, ヒトに対しての応用

ができにくいということがあるのである。

Se欠乏は心臓病と関係があるということにな

っているが, ニュージーランド南部のミノレトンで

の健康状態についての調査では,この地方は低

Se地帯であり,赤血球,血柴 Se,GSHPx活性

などの低下と心臓病の危険性,たとえば収縮時

圧,拡張時圧,脈樽,血祭脂質, リポタンパク質

濃度などとの関係についての基準は作れなかっ

7こ。

また同様に,低 Se状態と筋破壊またはノウ胞

性線維症との関係づけも困難である。フィンラン

ド, ノルウェーの低 Se地帯でしばしば多発性硬

化症が報告されており,デンマーグやイスラエノレ

でGSHPxの低下が見られている。ニュージーラ

ンドの患者では, GSHPx値は低いが,年齢との

関係はまだ究明されておらず,アルコール性肝硬

変やアノレコール性心筋症,心臓脚気などとの関係

についても研究は残されている。

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C 461)

Table 5 Disease which have been linked with a Low Se Status

低セレン状態と関連する諸疾病

n

O

.唱

A&El ν

.唱EqU

’十目L u

h

a

m

m

a

n

σb

a

pA

e

v--噌i

e戸

n叫

E

m

N

U

ρ山

Sickle cell anaemia

Keshan disease

Hypertension

Ischaemic heart disease

Alcoholic cardiomyopathy

Alcoholic cirrhosis

タンパク質,エナジー不足低栄養状態

溶血性貧血

カマ状赤血球性貧血

ケツシャン病(克山病〉

高血圧症

虚血性心疾患

アルコール性筋疾患

アルコール性肝硬変

Pancreatitis

Cystic fibrosis

Infertility

拝,k Y<..

ノウ胞性線維症

不妊症

Cancer

Muscular complaints

Arthritis

jf ソ

筋痛の訴え

関節炎

Muscular dystrophy

Multiple sclerosis

Neuronal ceroid lipofuscinosis (NCL)

筋肉ジストロフィー

多発性硬化症

神経セロイド性リポフスチン症

Aging

Werner’s syndrome

Macular degeneration

V6

h4

・・ua

p

nu n

-噌EA

4EL

戸U

VA

C

・1

t

a

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h

υ

a

a

t

--ゐ内ヨ

D

C

老 齢

ウエルネル症候群

平衡班萎縮

糖尿症性網膜症

白内障

表5は,低 Seと関係すると考えられる疾病で

ある。

また,点滴を受けている患者に Seが異常に

低いことが報告されており,早産児において血液

的に Seと V.Eとの状態が興味をよんでいる。

また一方,ダウン症候群,晴息などで GSHPxの

上昇が報告されているが,これは酸素不足による

ストレスと関係があるのであろうと思われる。

以上,列記した各種の疾病と Seとの関係は,

いろいろいわれ研究されているが,すべての場合

に, Seとあげられた疾病とに関係があるとし、い

きることは慎重を要する。不幸なことに,試験動

物によって Seに対する対応が異なるため,これ

ら疾病と Seとの関係を研究することは困難であ

る。 Seと疾病との関係を知るためには, Seの投

与実験が実行可能な重要な方法ということになり

そのため二重盲験試験が行われている。

ただ,臨床的な対応では, Keshan病について

は有意な関係が示されている。

vu. おわ り に

セレンは有毒物質だと,長いあいだ思われてい

たのであるが,水銀中毒の防止にセレンが役割を

もっているということがわかってから,セレンの

生理作用について見なおされ,さらにセレン不足

地帯で発生する Keshan病とセレンの関係が明

らかとなり,また他の多くの疾患とセレン欠乏と

の関連性が疑われるものもかなり見られるように

なって,かつての有毒物質が今では微量栄養素と

いわれるようになってきた。本文は,これらのい

きさつについて,あらましを記述したものであ

る。

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