対策工法とその整備イメージについて 1.ぬかるみ対策・木道 整...

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1 対策工法とその整備イメージについて 1.ぬかるみ対策・木道 整備事例 (1)自然石による歩行路の確保、洗掘防止対策 ●涸沢~アヤメが原、アヤメが原~四の沼、四の沼周辺、四の沼~五の沼、五の沼周辺 【概要】 ・ぬかるみやすい箇所に自然石を利用したステップを設置し、歩行路を確保する。 ・自然石の設置により水が流れる方向をコントロールし、登山道の外に排水する。 ・自然石の設置により土砂の堆積、安定を図る。 【適用箇所】 ・樹林帯やハイマツ帯、ササ帯等のぬかるみ箇所、洗掘や水路化している登山道。 【メリット】 ・容易に設置できる。 ・周辺の景観になじみやすい。 ・費用が安価である。 【デメリット】 ・自然石が周囲で入手できない場合は、運搬費が必要となる。 ・深い水溜まり箇所には適さない。 自然石を利用したステップ 飛石状に設置された自然石 資料1-4

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対策工法とその整備イメージについて

1.ぬかるみ対策・木道 整備事例

(1)自然石による歩行路の確保、洗掘防止対策

●涸沢~アヤメが原、アヤメが原~四の沼、四の沼周辺、四の沼~五の沼、五の沼周辺

【概要】 ・ぬかるみやすい箇所に自然石を利用したステップを設置し、歩行路を確保する。 ・自然石の設置により水が流れる方向をコントロールし、登山道の外に排水する。 ・自然石の設置により土砂の堆積、安定を図る。 【適用箇所】 ・樹林帯やハイマツ帯、ササ帯等のぬかるみ箇所、洗掘や水路化している登山道。 【メリット】 ・容易に設置できる。 ・周辺の景観になじみやすい。 ・費用が安価である。 【デメリット】 ・自然石が周囲で入手できない場合は、運搬費が必要となる。 ・深い水溜まり箇所には適さない。

自然石を利用したステップ 飛石状に設置された自然石

資料1-4

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ぬかるみ

樹枝等(登山道に垂直)

(2)樹枝を利用した路面保護

●三の沼周辺、五の沼周辺

【概要】 ・伐採した枝を歩道に対して横に並べ歩行路面を保護する。 ・歩道幅より長い枝を置くことにより排水効果がある。 【適用箇所】 ・樹林帯やハイマツ帯、ササ帯等のぬかるみやすい箇所。 ・付替ルートの地盤が軟弱な箇所。 【メリット】 ・ルート付替え時の現地発生材を有効に利用することができる。 ・設置が簡単である。 ・周辺の景観になじむ。 ・費用が安価である。 【デメリット】 ・多数の樹枝が必要となる。 ・洗掘により水路化した箇所では排水効果はない。 ・やや歩きにくい。 ・深い水溜まりには適さない。

路面に樹枝を敷き詰める(大雪山) 長い枝を置くことで排水効果がある(朝日連峰)

図 樹枝による路面保護のイメージ図

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(3)木道A:枕木+床板(木材)

●二の沼周辺、アヤメが原周辺、四の沼周辺、五の沼周辺、羅臼湖周辺

【概要】 ・地面に枕木を置いてその上にカスガイ等で床板を固定。 ・床板は隙間をあけて設置する。 【適用箇所】 ・流水がない箇所、地盤が極端に軟弱ではない箇所、樹の根等が露出していない箇所 【メリット】 ・施工が比較的容易である。 ・老朽化した場合に修理が比較的容易にできる。 ・湿原の乾燥化等への影響はないと考えられる。 ・すれ違い時に、枕木が退避場所になる。 【デメリット】 ・枕木の下は植生が生育できない。 ・多量の枕木が必要である。 ・路面が平坦でない箇所への設置は難しい。 ・融雪期等に水位が上がるところでは、流出する恐れがある。

枕木+床板 (大雪山沼の平) 高さ調整のため枕木の下に角材を設置(尾瀬沼)

※床板は隙間をあけて設置する

※融雪期等に流水によって木道が流出する恐れがある箇所では、ピンで地面に固定する

図 枕木+床板の整備イメージ

1400 400 1400 400 1400

床板:カラマツ 105×105×1800 枕木:カラマツ 160×160×1200

ピン D22(0.5m) ※ピンは床板より低く設置し、

1/2以上を地中に埋める

750

床板:カラマツ 105×105×1800 枕木:カラマツ 160×160×1200

ピン D22(0.5m)

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(4)木道B:枕木(嵩上げ)+床板+ピン(鉄筋)

●二の沼南側木道部、アヤメが原(一部) 【概要】 ・枕木を重ねカスガイで固定し、その上に床板を隙間をあけて設置する。 ・枕木の本数によって、木道の設置高を調整する。 ・流水を阻害しないよう配慮して枕木を設置し、ピン(鉄筋)で地面に固定する。 【適用箇所】 ・木道の嵩上げが必要な箇所(周辺より地盤が低い場所、流水や水たまりがみられる場所) 【メリット】 ・水位変動が大きい箇所、水たまりができやすい箇所に安定した歩行路を確保できる。 ・従来の木道のように杭を打ち込まないため、乾燥化等の植生への影響がなくなる。 ・杭を打ち込む工法に比べて老朽化したときの交換が容易で植生への影響も少ない。 【デメリット】 ・高く嵩上げする箇所では、多量の枕木を使うためコストが高い。 ・枕木がずれないように、点検や管理が必要である。

木道の高さを確保するため枕木を重ねて設置した事例

床板+枕木+浅い杭(尾瀬沼)

※枕木や床板は、カスガイで固定する

図 床板+枕木+ピンの整備イメージ

ピン D22(0.8~1.2m)

750

床板:カラマツ 105×105×1800 枕木:カラマツ 160×160×1200

1200

1400 400 1400 400 1400

床板:カラマツ 105×105×1800 枕木:カラマツ 160×160×1200

ピン D22(0.8~1.2m) ※ピンは床板より低く設置し、 1/2以上を地中に埋める

300

~700

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(5)木道C・展望デッキ:枕木+グレーチング+ピン(鉄筋)

●三の沼展望デッキ及びデッキへの接続部(高層湿原内)・付替ルートの湿原横断部

羅臼湖展望デッキの一部及びデッキへの接続部(高層湿原内)

【概要】 ・床板にグレーチングを使用する。グレーチングの下に光が入るため植生回復が期待できる。 【適用箇所】 ・高層湿原等の植生回復を図る箇所 【メリット】 ・デッキや木道の下に光が入るため、植生の生育が可能である。 ・耐久性がある。 ・必要な強度や規格に応じた製品をつくることができる。 【デメリット】 ・人工的で周辺の自然景観となじみにくい。 ・費用が高価である。 ・枕木が不同沈下した場合にゆがみやグラつきが生じる恐れがある。

整備 4年後(大雪山沼の平) グレーチングのデッキ

※地盤が低い箇所では枕木を重ねて嵩上げする

※融雪期等に流水によって木道が流出する恐れがある箇所では、ピンで地面に固定する

図 枕木+グレーチング+ピンの整備イメージ

ピン D22(0.5~0.8m)

床板:グレーチング 3枚 250×1000 枕木:カラマツ 160×160×1200

1000 900 1000 1000 1000

ピン D22(0.5~0.8m)

床板:グレーチング 3枚 250×1000 枕木:カラマツ 160×160×1200

750

1200

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図 三の沼展望デッキ整備イメージ

ピン D22(0.8m)

ピン D22(1.5m)

枕木:カラマツ 160×160×3000

400

760

1100

床板:グレーチング 250×1500

床板:グレーチング 250×1000

台: 500×500×H350

金具でグレーチングと固定

1100

760

400

床板:グレーチング 250×1000

台: 500×500×H350

床板:グレーチング 250×1500

750

2500

ピン D22(0.5~0.8m)

床板:グレーチング 3枚 250×1000

枕木:カラマツ 160×160×1200

床板:グレーチング 250×1500

ピン D22(0.8m)

表流水の方向

表流水の方向

床板:グレーチング

250×1000

1000

1500

台: 500×500×H350

金具でグレーチングと固定

2500

1500 1000

デッキ GL+400

GL+1100

GL+760

デッキ GL+400

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図 最終展望デッキ整備イメージ

4000

1000

5000

5000

床板(カラマツ)

床板(グレーチング)

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(6)木橋:木杭+床板(木材)

●羅臼湖周辺

【概要】 ・地面に枕木を置いてその上にカスガイ等で床板を固定。 ・床板は隙間なく設置する。木橋の両端を地盤高に併せて設置し、枕木は地面に埋め込む。 【適用箇所】 ・幅員が狭い水路を横断する箇所 【メリット】 ・施工が比較的容易である。 ・老朽化した場合に修理が比較的容易にできる。 【デメリット】 ・水位の変動があるため木道より腐朽が早い。

※床板は隙間をあけずに設置する

図 木橋の整備イメージ

750

床板:カラマツ 105×105×1800~2000

根太:カラマツ 160×160×1200

丸太φ150

床板:カラマツ 105×105×1800~2000

根太:カラマツ 160×160×1200

丸太φ150

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(7)橋:基礎(ピンファウンデーション)+支柱、桁(アルミ材)+床板(グレーチング)

●アヤメが原周辺、羅臼湖周辺

【概要】 ・腐朽、破損しやすいため耐久性及び強度が高い構造、素材とする。 ・高欄は積雪が多く破損しやすいため設けない。 ・通行時の安全性を確保するため幅員を広く(約 1.5m)し、床板は滑りにくいものにする。 ・景観に配慮し、グレーチングの色はダークグレーとする。 【適用箇所】 ・幅員が広い水路を横断する箇所 【メリット】 ・水位変動がある場所でも耐久性がある。 ・構造が強固である。 【デメリット】 ・老朽化した場合に修理が難しい。 ・ピンファウンデーションの撤去が困難である。 ・人工的な構造物であり、周辺景観と調和しにくい。

ピンファウンデーションの基礎

図 橋の標準構造図

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2.植生復元対策 整備事例

(1)土留工(ササ・樹枝を利用した土留工) 【概要】 ・現地のササや樹枝などを利用した土留工。ササ等を束ねて洗掘部に設置する。 ・複数の土留を連続して設置し、流速を落として土砂の流出を防ぐ。 ・植生が侵入しやすい。 【適用箇所】 ・洗掘が生じている箇所 ・洗掘が予想される箇所

【留意事項】 ・ササまたは樹枝を直径 15cm 程に束ねる方法、そのまま流路内に置き重石を載せる方法、樹 枝を適切な長さに切って作をつくる方法などがある。現地で入手できる材料や洗掘状況に応 じて使い分ける。 ・落葉等を背後につめるとより効果がある。 ササでつくったダム 2 年後の土砂堆積状況

樹枝を利用した土留工(背後に葉を詰める) 1 年後の土砂堆積状況

樹枝やササを束ねてつくる土留工