輸血後肝炎対策...輸血後肝炎対策 ーその歴史と現状ー 香川県赤十字血液センター所長 本田豊彦 2014年7月 感染症との戦い 肝炎 輸血後肝炎の第1例報告は、1943年の
知っておきたい小児の肝機能障害 - Gunma...
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知っておきたい小児の肝機能障害
小児科専門医必修セミナー
群馬大学大学院小児科学分野 龍城 真衣子、石毛 崇、羽鳥 麗子
本日の内容
・ 肝腎な肝臓 ・ 肝機能異常を見つけたら? “乳児肝機能障害の鑑別Point” “症例問題” ・ 肝炎ウイルスの種類と慢性肝臓病の経過 ・ B型肝炎
肝腎な肝臓
・ さまざまな代謝作用を行う
糖 糖分の貯留と放出を調節
たんぱく アルブミン,凝固因子, 合成アンモニアの代謝
脂肪 コレステロールや脂肪酸の代謝
・ 解毒や排泄
・ 薬物の解毒,アルコールの代謝 ・ 細菌や異物,毒素を処理する. ・ ホルモンの代謝
・ 重量
・ 体重の約4~5% ・ 肝腫大とは? → 呼気時に1cm以上触れる(年長児)
肝機能異常を見つけたら?
1. 肝実質障害か胆道系の障害か?
2. 肝疾患以外の原因はないか?
✓ ASTが優位に高値 ✓ LDH, CK, アルドラ‐ゼを確認 心筋障害、筋疾患、溶血性疾患 溶血を伴う採血 激しい運動、筋肉注射
3. AST/ALT値と年齢に応じた疾患を鑑別
✓ AST/ALT値 <100 、100~500、 >500 ✓ 年齢 新生児、乳幼児期、学童期
AST/ALTの異常をきたす主な疾患 活性値(IU/L) 疾患 特徴
AST/ALT >500 劇症肝炎 数千~数万の著明な上昇と低下、肝性昏睡、PT↓、HPT↓、NH3↑
急性肝炎 初期にAST>ALTだが数日で逆転。肝炎ウイルスマーカー、TORCH症候群の検索
Reye症候群 劇症肝炎との鑑別、水痘・Fluの先行感染の有無 うっ血肝 ショック、急性右心不全など原因検索
先天性代謝異常 尿素サイクル異常症・有機酸代謝異常症などによる2次性肝機能障害。
AST/ALT =100~500
慢性肝炎(活動型) 非活動型と比べ高値。AST<ALTが多い。肝炎ウイルスマーカーの検索。
薬剤性肝障害 肝炎型・混合型・胆汁鬱滞型がある。服薬中止で改善。Eosi↑、 薬剤リンパ球刺激試験
胆道閉鎖症 新生児・乳児肝炎との鑑別が重要。生後60日までに手術。 肝内胆汁鬱滞症 原因検索が必要。通常AST>ALT。Alagille症候群など。
AST/ALT <100 慢性肝炎(非活動型) AST<ALTが多い。肝炎ウイルスマーカーの検索。 Wilson病 ALT優位の慢性肝炎型が多いが肝硬変・劇症肝炎型もあ
る。
全身疾患 甲状腺機能亢進症、低栄養、血球貪食症候群など。 (今日の小児診断指針より一部改変)
乳児の肝機能障害をみたらどのように 鑑別しますか??
5つのCheckPoint
① 黄疸の有無 ② 先天代謝異常の有無 ③ 自己免疫性疾患の有無 ④ 肝画像診断 ⑤ 肝逸脱酵素が正常値をとったことがあるか
① 黄疸の有無
・ 原因診断のためにまずウイルス検索をする ⇒8割は原因ウイルスの同定ができない! ・ 血中アミノ酸分析、乳酸、ガラクトース、尿中有機酸を測定する。
② 先天代謝異常の有無
・ 乳児に多い ・ 肝逸脱酵素は正常化せず常に3桁を推移することが多い。
③ 自己免疫性疾患の有無
・ 乳児に少なく年長児に多い。Wilson病、脂肪肝も同様。
④ 肝画像診断
・ 肝脾腫の評価 (脾腫がなく肝腫大がつよいとき・・・→ 肝型糖原病) ・ 脂肪肝の評価 (CT値:定量的に評価できる)
⑤ 肝逸脱酵素が正常値をとったことがあるか
・ 先天代謝異常は肝逸脱酵素は正常化せず常に3桁を推移することが 多い。
以上の疾患が否定された、黄疸のない肝機能障害は 「原因不明のウイルスによる乳児肝炎」と考えてよい。
薬剤性肝機能障害、筋原性疾患の除外
症例
在胎40週1日、出生時体重3010g、APS 8-9, 正常分娩で出生。 母乳栄養。新生児マススクリーニングでは異常なく、新生児黄疸は軽度だった。1か月健診では体重増加良好であった。日齢40頃より黄疸が目立ってきたが母乳性黄疸と考え病院を受診しなかった。日齢73、痙攣・意識障害を来し救急搬送となった。JCS300、BP78/60mmHg、酸素マスク10L/分でSpO2 95%便は淡黄色、肝は4cm軟。血液検査にて総ビリルビン10.5mg/dL, 直接ビリルビン 8.5 mg/dL, , BS 180mg/dl, AST 184 U/L, ALT 130 U/L, LDH 890 U/L,γ-GTP 921 U/L, 血清総胆汁酸 141μmol/L, PT 24% 。
Q1; 救急外来でまずすることは?
Q2; 何を考え、どのような検査を行うか?
Q1; 凝固障害に対しビタミンK2 投与 Q2; ①腹部エコー:胆嚢や肝外胆管が観察されない、左右肝内 胆管が不明瞭である ②十二指腸液検査:胆汁の流出なし ③胆道シンチグラフィー ④肝生検
Answer
胆道閉鎖症について ・ 閉塞性黄疸(黄疸、濃尿、灰白色便)がある。 ・ 便の色調が黄色であることを理由に胆道閉鎖を除外しない (20~30%の症例で新生児期を過ぎてから淡黄色便が出現 まれに生後4ヶ月頃より便色変化の報告もあり) ・ 4~5%に頭蓋内出血を伴う ・ 肝外性の徴候の有無を検索しAlagille症候群を除外する。 ・ 肝門部空腸吻合術が選択される。胆汁性肝硬変の進行例では 肝移植が選択されることもある。 (田澤雄作. 新生児胆汁うっ滞,日本小児科学会雑誌 2007;111:1493-1514.)
【参考】 乳児胆汁うっ滞性疾患について 乳児黄疸ネット www.jspghan.org/icterus/
肝炎ウイルスの種類と慢性肝臓病の経過
肝疾患の進行過程
肝障害をおこすウイルス
・ 肝炎ウイルス A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス 非A~C型ウイルス ・ 非肝炎ウイルス 単純ヘルペスウイルス、EBウイルス、サイトメガロウイルス ヒトヘルペスウイルス6、アデノウイルスなど *TORCH症候群:トキソプラズマ、風疹、サイトメガロ、 ヘルペス
B型肝炎
1.感染経路 2.感染の形態 3.治療 4.母子感染予防(新しい指針) 5.今後の問題
B型肝炎 感染経路
感染の形態
HBVキャリアの自然経過
✓多くは小児期に肝炎を発症し、成人になる前に75%がSC (seroconversion)を起こす
✓肝機能異常がみられてから3年間に約50%がSCを起こして 肝炎は鎮静化する
✓肝炎が持続すると、肝硬変および肝細胞癌に進展するリスク が次第に増加する
幼少期 20歳前後
免疫寛容期 → 肝炎期 → 無症候性 SC キャリア期
B型慢性肝炎の治療 〈対象〉 HBe抗原陽性で6ヶ月以上にわたりトランスアミナーゼ高値が持続し、肝生検で硬変へと進展する可能性が予測される例 (肝機能が正常の無症候性HBVキャリアは治療対象外)
1) インターフェロン 1回/週投与 24~48週投与 2) 経口抗ウイルス薬 ① ラミブジン:HBV逆転写酵素阻害薬 ② アデフォビル:ラミブジン耐性株に有効 ③ エンテカビル:長期投与でも変異株が少ない 3) その他 (グリチルリチン製剤、ウルソデオキシコール酸、 小柴胡湯など)
B型肝炎ウイルス母子感染予防のための新しい指針
変更点 ・ 生後2ヶ月時のHBIGを省略 ・ 生後12時間以内を目安に HBワクチンとHBIGの投与
今後の問題
・ HBキャリアの父親の子 →20%が感染、5-10%がキャリア化 ・ 現在の母子感染予防措置では父子感染を予防 することはできない ・ 日本には少なかった遺伝子型AのB型肝炎が性感染症 により若年成人に急速に蔓延している →universal vaccinationの導入が望まれる