多環芳香族炭化水素類(PAHs 分析1. Captiva EMR-Lipid クリーンアップと GC/MS/MS...

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食品中多環芳香族炭化水素類(PAHs 分析 トリプル四重極 GC/MS/MS による分析 ワークフローと消耗品ガイド

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食品中の 多環芳香族炭化水素類(PAHs)の分析トリプル四重極 GC/MS/MS による分析 ワークフローと消耗品ガイド

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参考文献1. Honda, M., Suzuki, N., Toxicities of

Polycyclic Aromatic Hydrocarbons for Aquatic Animals, Int. J. Environ. Res. Public Health 2020, 17(4), 1363

2. U.S. Food and Drug Administration, 2010, accessed July 2020, Protocol for Interpretation and Use of Sensory Testing and Analytical Chemistry Results for Re-opening Oil-Impacted Areas closed to Seafood Harvesting due to the Deepwater Horizon Oil Spill,

3. Commission Regulation (EU) 836/2011, Official Journal of the European Union, 2011, 215, 9

4. Commission Regulation (EU) No 835/2011, Official Journal of the European Union, 2011, 215, 4

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多環芳香族炭化水素(PAHs)は、魚・肉・油・牛乳などの脂肪の多い食品に生体蓄積する性質があり、低濃度でも人体に対する極めて強い毒性があります(1)。米国食品医薬品局(FDA)は、海産食品に対して低 ppb レベルでの

PAH 分析を義務付けています(2)。欧州連合の規則(3)では、食品マトリックスに含まれる一連の PAH を EU PAH4(4)

として規制しています。

Captiva EMR-Lipid

Agilent J&W GC カラム

食品マトリックスからの分析対象物質の分離

脂肪を多く含んだ食品マトリックス中の PAH の分析における課題の一つは、食品マトリックスに含まれる大量の脂質から分析対象物質を抽出することです。Agilent Captiva Enhanced Matrix Removal(EMR)-Lipid は、従来法と比較して、実装がずっと簡単で、分析対象物を損失することなくサンプルマトリックスを除去できる極めて効率的なサンプル前処理製品です。

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PAH 異性体の分離

PAH を分析する際の課題の一つは、同じ化学構造を有する PAH 異性体をクロマトグラフィーで分離することです。質量分析計では、これら異性体は分子量が同じであるため、簡単には区別できません。EUPAH4 およびより広範な EUPAH(15 + 1)の双方に、GC 質量分析計では分離が困難で共溶出を起こす重要なペアが含まれています。PAH に合った GC カラムの選択は、分析の目的に依ります。表 1 は、重要な規制食品の PAH および一般的な不純物を、推奨するカラムでどの程度うまく分離できるかについて示したものです。

表 1. 主な規制対象 PAH :SCF(PAH15+1)、JECFA(PAH13)、CONTAM(PAH8)

分析対象物質リスト DB-EUPAH * Select PAH * DB-5ms ウルトライナート*

ベンゾ[a]アントラセン x x x

シクロペンタ[c,d]ピレン x x x

トリフェニレン(不純物)共溶出

x共溶出

クリセン x

ベンゾ[b]フルオランテン x x x

ベンゾ[j]フルオランテン x x共溶出

ベンゾ[k]フルオランテン x x

ベンゾ[a]ピレン x x x

インデノ[1,2,3-c,d]ピレン x x x

ジベンゾ[a,h]アントラセン x x x

ベンゾ[g,h,i]ペリレン x x x

ジベンゾ[a,e]ピレン x x x

コロネン(不純物) x x x

ジベンゾ[a,h]ピレン x x x

ジベンゾ[a,i]ピレン x x x

ジベンゾ[a,l]ピレン x x x

5-メチルクリセン x x x

ベンゾ(c)フルオレン x x x

トータル分析時間 28 分以内1 45 分以内2 22 分以内1

最大動作温度 320~340 ℃ 325~350 ℃ 325~350 ℃

ラボにおける利点PAH への高い特異性

経済性

PAH への高い特異性

生産性

汎用性

生産性

選択ガイド

– クリセンの分離が重要でない場合の トリフェニレンの分離に最適

– 16 種類すべての EPA PAH の正確な定量

– 特異的な選択性によりすべての異性体を分離

– クリセン存在時にトリフェニレンから クリセンを分離する唯一のカラム

– 汎用カラム – 報告が必要な PAH 異性体が少ない 場合に、多くの EPA メソッドで有効

* x = 完全なベースライン分離1. 6 ページのアプリケーションノート 5 を参照してください。2. 6 ページのアプリケーションノート 8 を参照してください。

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ディスクリミネーション

つぎのような場合、ディスクリミネーションが問題となります。

a. 注入口の温度設定が低すぎ(<300℃ )、インレットライナ内でサンプル気化が不完全である場合。

b. スプリットレス注入保持時間が、サンプルをすべて分析カラムのヘッドに効果的に移送するように最適化されていない

c. 選択された注入口ライナが不適切である場合。クロマトグラフでは、高分子量の PAHs の感度反応低下として観察されます。

ディスクリミネーションを回避するための推奨注入パラメータ範囲はつぎのとおりです。

– 注入量:1~ 2 µL

– 注入口温度:300~ 320 oC

– MS ソースおよびトランスファーライン温度:320 oC

– パージ時間:45~ 90 秒、スプリットレス

– ガラスウールまたはフリットライナ付き4 mm スプリットレスライナ

– 高沸点 PAH をカラムに導くために、20~ 50 psi でパルスドスプリットレス注入を 0.9 分間。PAH などの分子量が大きく沸点の高い分析対象物のスプリットレス/PTV/MMI タイプの注入には、液相の「コールドトラッピング」効果がよく用いられます。通常、初期オーブン温度を 75 oC とすれば、多くのサンプル溶媒で高品質のピーク形状が得られます。

– 高カラム流量で、注入口(およびシステムの)での気化試料ロスを防止: 0.15 mm:1.2 mL/min He、0.18 mm および 0.25 mm:1.2~ 1.4 mL/min He、 注意:内径 0.18 mm および 0.25 mm の GC カラムでは、より高流量で使用できますが、MS 感度が低下します。HES ソースに対しては、1.5 mL/min を超える流量は推奨されません。

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PAH 分析でトリプル四重極 GC/MS システム(GC/TQ)を最適化する

ためのベストプラクティス

– リテンションギャップおよび/またはバックフラッシュを使用して、サンプルのキャリーオーバーをなくし、メンテナンスを減らして分析サイクル時間を短縮します。

– 定流量モードで分析を実施します。

– 加熱ゾーンを十分に断熱して高温に保ち、システムのコールドスポット発生による感度低下を防ぎます。

– MS トランスファーラインとイオン源を 300 ℃ より高い温度に保ちます。温度設定が低すぎると、PAH のピークがテーリングします。内径 0.15/0.18 mm の高効率 GC カラムを使用して、分離性能を損なうことなく分析時間を短縮します。

– Agilent JetClean を使用することで、特に高マトリックスサンプルで、イオン源を手動で洗浄するメンテナンス頻度を大幅に減らします。 水素(0.33 mL/min)でイオン源を連続的にクリーニングすることにより、検量線の直線性と PAH 分析中のレスポンス精度が大幅に向上することが実証されています。

– 分子量が大きい PAH は冷蔵保存中に溶液から漏出する可能性があるので、キャリブレーション混合物を希釈または調製する前に PAH 標準液が室温になるようにします。

– 9 mm のエクストラクタレンズを使用して、PAH が付着、堆積する可能性のある表面を最小限にします。

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アプリケーションノート

サンプル前処理条件および GC メソッド最適化の詳細については、次のアジレントアプリケーションノートを参照してください。(カッコ内は資料番号)

1. Captiva EMR-Lipid クリーンアップと GC/MS/MS によるサケと牛肉に含まれる 19 種類の多環芳香族炭化水素化合物の測定(5994-0553JAJP)

2. 食用油中の多環芳香族炭化水素化合物13 種の測定(5994-1483JAJP)

3. PAHs in Chocolate and Peanuts with Agilent J&W Select PAH and longer GC columns(5991-2299EN)

4. Polycyclic Aromatic Hydrocarbon (PAH) Analysis in Fish by GC/MS using Agilent Bond Elut QuEChERS dSPE Sample Preparation and a High Efficiency DB-5ms Ultra Inert GC column(5990-6668EN)

5. PAH Analysis with High Efficiency GC columns: Column selection and Best practices(5990-5872EN)

6. Agilent J&W Select PAH GC カラムと Agilent Intuvo 9000 GC による EU および EPA の PAH 分析の再現性向上(5994-0877JAJP)

7. GC/MS Analysis of European Union (EU) priority Polycyclic Aromatic Hydrocarbons (PAHs) using and Agilent DB-EUPAH GC column with a column performance comparison(5990-4883EN)

8. Separation of 54 PAHs on an Agilent J&W Select PAH GC columns(SI-02232)

9. Different Stationary Phases for PAH Analysis(PAH分析ためのさまざまな固定相)(Food Quality & Safety magazine)(https://www.foodqualityandsafety.com/article/different-stationary-phases-for-pah-analysis/)

10. Agilent 8890GC による欧州連合多環芳香族炭化水素(EUPAH)の分析(5994-0485JAJP)

11. 測定困難なマトリックスにおける PAH の GC/MS 分析の最適化Agilent 5977 シリーズ GC/MSD、JetClean、ミッドカラムバックフラッシュの使用(5994-0499JAJP)

12. 測定困難なマトリックスにおける PAH の GC/MS/MS 分析の最適化 Agilent 8890/7000D トリプル四重極 GC/MS、JetClean、ミッドカラムバックフラッシュ(5994-0498JAJP)

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品名 部品番号

サンプル前処理用消耗品

Captiva EMR-Lipid カートリッジ、3 mL、300 mg 5190-1003

セラミックホモジナイザ 5982-9312

Agilent 加圧式マニホールド(PPM-48) 5191-4101

Captiva EMR-Lipid カートリッジ、6 mL、600 mg 5190-1004

Bond Elut Jr PSA、500 mg 12162042B

標準液

EU PAH(15+1)標準液キット; 250 µg/mL 5190-0487

EPA PAH 標準液(校正用標準液); 500 µg/mL 8500-6035

注入口の消耗品

注入口セプタム、高性能グリーン、ノンスティック、11 mm、50 個 5183-4759

注入口セプタム、高性能グリーン、ノンスティック、11 mm、100 個 5183-4759-100

ウルトライナートスプリットレス、シングルテーパー、ガラスウール 5190-2293

ガラスフリット付きウルトライナートスプリットレス シングルテーパライナ 5190-5112

ウルトライナートゴールドシール、ワッシャ付き、1 個 5190-6144

ウルトライナートゴールドシール、ワッシャ付き、10 個 5190-6145

セルフタイトカラムナット、カラー付き、注入口用 G3440-81011

セルフタイトカラムナット、カラー付き、MSD 用 G3440-81013

セルフタイトナット用交換用カラー G3440-81012

15 % グラファイト/85 % ポリイミドフェラル、内径 0.4 mm、10 個 5181-3323

5 µL ALS シリンジ、ニードル固定型、23-26s/42/コーン 5181-1273

5 µL ALS シリンジ、ニードル固定型、23-26s/42/コーン 6 個 5181-8810

10 µL ALS シリンジ、ニードル固定型、23-26s/42/コーン 5181-1267

10 µL ALS シリンジ、ニードル固定型、23-26s/42/コーン 6 個 5181-3360

20 倍拡大鏡 430-1020

GC カラム 7890、8890、8860

Agilent J&W DB-EUPAH、20 m x 0.18 mm、0.14 µm 121-9627

Agilent J & W DB-5ms 20 m x 0.18 mm、0.18 µm 121-5522UI

Agilent J & W Select PAH、30 m x 0.25 mm、0.15 µm CP7462

Agilent J & W Select PAH、15 m x 0.15 mm、0.10 µm CP7461

不活性フューズドシリカチューブ、5 m、0.15 mm 160-7625-5

食品サンプルの PAH 分析用の推奨部品、消耗品 次の表に、食品マトリックス中の PAH 分析に必要な部品、消耗品を示します。

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Intuvo GC カラム

Agilent J&W DB-EUPAH、Intuvo GC カラム 20 m x 0.18 mm、0.14 µm 121-9627-INT

Agilent J & W DB-5ms 20 m x 0.18 mm、0.18 µm 121-5522UI-INT

Agilent J & W Select PAH、Intuvo GC カラム、30 m x 0.25 mm、0.15 µm CP7462-INT

Agilent J & W Select PAH、15 m x 0.15 mm、0.10 µm CP7461-INT

Intuvo の消耗品

ガードチップ、Intuvo スプリット/スプリットレス G4587-60565

Intuvo 注入口チップ G4581-60031

フローチップ、Intuvo、D2-MS G4581-60033

フローチップ、Intuvo、固定済み HES MS tail G4590-60109

注入口/MSD(Intuvo)ポリイミドガスケット 5190-9072

MS の消耗品

EI フィラメント(7000A/B/C/D、5977B Inert Plus、5977A エクストラクタ、イナートまたはステンレス鋼、および 5975 システム用)

G7005-60061

7010 トリプル四重極 GC/MS 用 HES フィラメント G7002-60001

ドローアウトプレート、9 mm、不活性イオン源 G3440-20022

ドローアウトプレート、9 mm、エクストラクタイオン源 G3870-20449

ガスフィルタ

7890 用ガスクリーンキャリアガスキット CP17988

8890 および 8860 用ガスクリーンキャリアガスキット CP179880

ガスクリーンキャリアガスフィルタ用交換カートリッジ CP17973

Intuvo 用ガスクリーンフィルタキット CP17995

バイアル・キャップ

2 mL スクリュートップ、茶色、ラベル付、不活性処理済 、認定、100 個 5183-2072

スクリューキャップ、青色、認定、PTFE/シリコン/PTFE セプタム 5182-0723

100 µL バイアルインサート、ガラス、樹脂足付 5181-8872

2 mL、スクリュートップ、茶色、ラベル付、認定、100 個 5182-0716

9 mm 青スクリューキャップ、PTFE/RS、500 個 5185-5820

アジレントは、EPA PAH- 500 µg/mL および EU PAH(15+1)-250 µg/mL の標準と、食品マトリックス中の PAH を微量でも高い信頼性と再現性をもって分析するために必要なすべての GC 消耗品を提供しています。

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Agilent CrossLab:「見えない価値」を「目に見える成果」へ

機器という枠を越えて、サービス、消耗品、ラボ全体のリソース管理から構成される CrossLab は、ラボの効率の向上、運用の最適化、機器の稼働時間の延長ユーザースキルの開発などを支援します。

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ホームページwww.agilent.com/chem/jp

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本製品は一般的な実験用途での使用を想定しており、医薬品医療機器等法に基づく登録を行っておりません。本文書に記載の情報、説明、製品仕様等は予告なしに変更されることがあります。

アジレント・テクノロジー株式会社 © Agilent Technologies, Inc. 2020Printed in Japan, August 4, 20205994-2016JAJP