日立評論1957年2月号:熱間ダイス鋼 HDC の鍛錬方...
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U.D,C. るる9.15.2る.27.292.018.45d
熱間ダイス銅H・DCの鍛錬方法を異にせる
太物の機械的性質についてA Comparative Study of EfEect of the Various Forging Methods
On the MechanicalProperties of Hot Die SteelHDC
小 柴 定 雄* 田 中 和 夫** 稲 田 朝 雄**Sadao Koshiba Kazuo Tanaka Asao Inada
内 容 梗 概
熱間ダイス鋼HDCの鍛造方法を変えた3種の太物材について,鍛伸方向に直角と平行方向および,
それぞれの位置における中心と外側部の組織および機械的性質につき実験した。その結果,素延べのま
まのものは据込せるものに比して組織,機械的性質ともに劣り,据込圧縮のままのものはこれをさらに
据込戻しせるものに比し,端部と中央部との差が著しく,また各位置においては外側の方が中心部のも
のより良好である。熱閉式験においても常温の場合とほぼ同様の傾向を示した。
〔Ⅰ〕緒
HDC ほ
言
問ダイス鋼として広く使用されているが,
本実験は素延べのままのもの,据込圧縮のままのものお
よびこれをふたたび長さ方向に据込戻しせる3橙の太物
につき鍛仲方向に平行と直角およびそれぞれの方向の中
心と外側郡における組織,機械的性質などにつき検討
し,もって太物製造上および使用上の参考に資した。
〔ⅠⅠ〕試料および実験方法
料は750kg角型鋼塊を200mm串→180mm串
に鍛伸し・弟1図④に示すごと.く抑湯部分を長さ約
150mm切捨後ほぼ中央部より長さ300工nmのa,b
およびc試料を採取した。次に同国⑳のごとくa試料は
素延べのままとしb試料は長さ方向に約兢J据込圧縮
し,そのままの状態にて1801nm串,長さ300mmに
成形し,C 料は同じく約兢7据込圧縮後これを再びも
との長さ方向に据込戻して1釦mm串,長さ300mm
にした。次にこれら3種の試料につきそれぞれ舞2図④
に示すごとく試料の端部より長さ方向に直角に幅6mm
のステッキバイトを用いて厚さ20皿mずつに(1),
(2),(3)および(4)の4個の 料を割出し,残部
の試料は長さ方向に同じく 20mm幅のものを中心より
2個(7および8)と両外側より1個ずつ(5)および
(6)を割出した。これらの符号はそれぞれa試料のも
のをal~a8,b 料をbl~b8,C試料のものはcl~
C8とした。ただしa2試料は割出失敗のため実験でき
なかった。次に㊥図は長さ方向に直角に割出したものに
おける試験片採取方法を示すが,図のごとく中心より 2
等分し左側ほ熱間,右側を常温 験用とし両者対称的に
もとの中心および外側部より幅15mmのものを採取し
9000C空冷,8000c炉冷後抗張試験片(平行部の径は熱
問用7mm¢.常温用10mm¢)と衝撃試験片に機械
*日立金属工業株式会社安来工場 工博
**日立金属工業株式会社安来工場
ββ中
(の 四 C 2仰中
十ぶ j仰{卿 +成形 瑠
1■■■■■■■l
一鍛伸方向第1図 試料採取位置㊧および鍛造方法⑳略図
⑦㌍認諾濫〟トー一棟問抗張言式叛徒/好一一-一触闇衝重言搬
第2図 試験片採取方法略図
第1衰 試料の化学成分
W Ⅴ Cu
26(享 昭和32年2月 日 立 評 論
仕上した。この場合試験片の採取方
向はal~a4およぴcl~C4ほ鍛伸
方向に直角,bl~b4は平行とな
る。また◎図は長さ方向の場合を示
す。すなわち前述と同様中心よ・り 2
等分し,左側を熱問,右側を常温試
験用とし,抗張,衝撃試験片をそれ
ぞれ対称的にもとの中心部1箇所,
および外側部2箇所より採敢した。
この場合の鍛伸方向は前述の長さ方
向に直角のものの逆になる。弟l表
に化学成分を示す。また実験方法は
次のごとくである。
(り 断面マクロ組織
前述の■20mm幅に割出しした各
試料につき強腐蝕法によりそれぞれ
の品位を判定した。
(2)検械的性質
各試験片は脱炭防止のためケース
を用い同材の削粉を充填し,1,05ぴC
に30分保持後油焼入,6008cに1時
間焼戻し各試験を行った。ただし熱
間の試験温度は6000cとし30分保持
した。なお衝撃値はすべて同一位置
より試験片を2本ずつ採取しその平
均値をもって示し,また鍛伸方向に
平行(b系試料は直角)に採取せる
試料の外側都についても同様両者の
平均値を示した。
(3)硬度,顕微鏡組織
常温において試験せる衝撃試験片
についてロックウェル硬度およびミ
クロ組織を調べた。
〔ⅠⅠⅠ〕実験 結 果
a5(2.25)
第39巻 第2号
a3(2.50)
a4(2.50)
al(2.50)
a7(2.25)
平行方向
第3図
b5(2.25)
a2(2.50)
直角方向
素延べのままのもの:の断面マクロ組織
b3(2.50) bl(2.25)
b7(2.50)
直角方向
第4図
(り 断面マクロ組織
弟3~5図は各試料の断面マクロ組織にして図中の
()内数字は品位判定結果を示す。
素延べのままのものにおいては一般にほかのものに比
してファイバ組織が明瞭に現われておらず鋳造時の組織
に近く,とくに中心部より外側部に近い方が粗大な傾向
を示す。据込圧縮のままのものにおいては平行方向の場
合端部より中央部にしたがい帝位を低下し,また直角方
向においても外側に比し中心部の方が劣る。また据込戻
しせるものの直角方向のものは中心部に偏析が著しく,
平行方向においても外側に比し中心部の品位ほ劣る。
(2)一常温槙械的性質,硬度および組織
b4(2.75) b2(2.50)
平行∵方向
据込圧縮のままのものの断面マクロ組織
舞d図は 延べのままのものにおける結果を示すが,
鍛伸方向に直角の場合 料端部と中央部において抗張力
は僅かながら・中窄郡の方が高いが衝撃値は低い傾向を
示し,伸,絞および硬度ほ大差なく,また各位置の中心
と外側部においては抗張力は中心の方がやや高いがその
ほかは大差ない。次に平行方向の場合前述の直角方向に
比し抗張力は高いがそのほかにおいては大差ない。弟7
図は裾込圧縮のまま?ものの結果を示す。鍛伸方向に平
行の場合試料端部と中央部において硬度・抗張力は大差
ないが伸,絞および衝撃値は低下し,特に絞において著
しい。また各位琴においては中心に比し外側部が高い値
を示す。また直角方向においても同様中心に比し外側部
の万が一般に高い。次に第8図は据込戻しせるものの結
熱間ダイス鋼HDCの鍛錬方法を異にせる太物の機械的性質について
c5(2.50) c3(2.50) cl(2.25)
c7(2.75)
平行方向
c4(2.75) C2(2.75)
底角方向
第5図 据込戻しせるものの断面マクロ組織
果であるが鍛伸方向に直角の場合硬度,抗 力は端部と
中央部において大差ないが伸,絞および衝撃値は中央部
の方がや■や高目であり.かつ各位置においては前者と同
様外側部が高く,また平行方向においても同
高い。
弟9図は各杭張試験片の破面状況を示す。
まのものは破傾がもつとも粗くか
つ外側の方が中心部より僅かに粗
い憤向を示す。
弟10図ほalの中心部,舞11
~13図ほblの外側,中心部お
よぴb4の中心部,第14,15図
((0)軍モ嘩寄藁.き、撃鶴転
(彗q嚢・山草
へ~豊こ{蛸だ
〃♂ 皮イ 外側部 中心部
試 料
第6図 素延べのままのものの常
温における硬度,機械的性質
(至宝)モ堵撃
「加奈・卓こ逼嘉痘
(ヾご
中食・u菅
‥・√.∴㌧⊥
l、、
∵
加脚
が
‥・、.侶■.†夕
延べのま
267
はClの外側および中心部の組織を
示す。すなわちa~1の中心部は粗大
な結晶粒を示し,また外側部もこれ
とほぼ同様の組織を示すが,粒度ほ
わずかに粗い憤向を示す。-blは外
側,中心部ともに微細であるが,b4
の中心部では炭化物か網状に現われ
ている。またClは中心 外側部と
もに網状がみられ,特に中心部に多
い。
(3)熱間機械的性質
策1占,け囲および弟18函にそ
れぞれの試験結果を示すが,前述の
常温における場合に比して一部異な
った傾向を示すものもあるが,素延
べのものは据込せるほかの両者に比
しそれぞれの値がもつとも低く,据
込圧縮のままのものは,さらに据込戻しせるものに比し
端部と中央部におけるそれぞれの値の差が大きく,また
これら両者の各位置においては外側の方が中心部より高
い。よって傾向としては常温の場合と同様である。
直角方向
〝■一----------r
J■--・--・・、
〟
-・・・-、
〔ⅠⅤ〕結果に対する老察
前述の据込圧縮のままのものに
おいて端部と中央部との組織およ
び機械的性質に著しい差が生じて
いるが,これは鍛造過程において
据込圧縮後.そのままの状態にて
成形するため特に端部に軽い鎚打
(§電きモ瀞、彗へ畏き、哩、撃管
・
ニ・"・・ご.-‥・
∂~ ガ ∂イ 外側呂ロや′L誹
古式 料
第7図 据込圧縮のままのものの
常温における硬度,機械的性質
バしZ
/〃
〟♂〃/ C~ β √イ 外傾帽β 中心部
∴ t
第8図 据込戻しせるものの常温
における硬度,機械的性質
268
素延べのまま
据込圧緒のまま
堀込戻しせるもの
昭和32年2月
直角方向
日 立 評
平行方向
第9図 各試料の常温抗張試験片破面状況
を数回繰返し与えたためであり,この点鍛錬係数の大き
い場合にはこの傾向は減少するものと考えられる。なお
著者の一人がHDC(CO・26%,Cr2・52%.WlOA6%,
VO・40%)の16m皿単について本実験と同一熱処理後
常温において試験せる結果は抗張力約149kg/mm2,仲
1・.㌧∴..L.
∴
∴、\‥
へ加島〔仁叫芯~
♂J α∠ 外側岩区中ノ亡訝
試 料
雪中町.恕)、撃旭辱
へ空電棄・山草
‥・■.∴‥
外側部
中
外側新
中心部
外側郡
中心部
第39巻 第2号
第10図 al中心部組織×420
(1,0500C油,6000C空)
第12図 bl中心部組織
×420
(1,0508c油,600ロC空)
第14図 cl外側部組織
×420
(1,0508C抽,6000C空)
〃
即
ガ
ヘ、畳-畠こ嘩耽笹
註)
電笠・u尊
ムク ム∫ メイ 外側部中心部
三式 料
第16図 素延べのままのものの熱 第17図 据込圧縮のままのものの
間における機械的性質 熱問における機械的性質
忘恩ぎこ蒜藍
∴ミI
/α7
第11図 bl外側部組織
×420
(1,0500C油,6000C空)
第13図 b4中心部組織
×420
(1,0500C油,6000C空)
第15図 cl中心部組織×420
(1,0500C油,6000C空)
(平行方向)
J
コ正
〝■-----・・■-・一
C/ `了 以 外相り部 中止宣耳
試 料
第18図 据込戻しせるものの熱間
における機械的性質
熟間ダイス鋼HDCの鍛錬方法を異にせる太物の機械的性質について 269
約12%,絞約39%であり.これに比較すればこの種太物
の機械的性質はやや劣る。
〔Ⅴ〕結
前述の結果を要約すると次のごとくである。すなわち
素延べのものにおいては鍛錬不十分であり,据込圧縮の
まま成形せるものは端部と中央部における組織および機
械的性質の差が著しい。据込戻しせるものは中心部に著
しい偏析があり,各位置における中心と外側郡との差は
大きいが,端部と中央部においてほ前者に比しその差は
少ない。
しかしてこれら3撞のものを比較すると素延べのもの
は全般的に機械的性質が悪くまた据込圧縮のままのもの
と据込戻しせるものでほ前者の方が幾分よい傾向を示し
ている。
部京本
東東日
日
[口
日
日
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へノ′\一(-へ′\′\/\へへ-/\一\-へ〈〈/几\/-\ノ~、/、一(-〈ノ\ノ、へ/-ノ、・(一、-(一一
一ノー、一一--1--・一一一一--/・一一一\ノ・、′、〈′-・-ノ\/、′、.へノへ′\.へ_′
、二
Vol.39 立
◎関西電力株式会社殿山発電所納17,000kW カプ
ラソ水車および発電機
◎ガス再循環による蒸気温度調整
◎中国電力株式会社湖発電所自動負荷周波数調整装
置
◎新しい誘導電圧調整器
◎電子顕微鏡の永久磁石励磁方式とその特性
◎記録装置を用いた炎光分析の一例
◎関西電力株式会社八日市営業所納クロスバー式自
発 行
月支 次
(昭和31年10~12月受付分)
執 筆 者
埋__ 属
戸畑工場
安来工場
安来工場
安来工場
安来工場
安来工場
安来工場
安来工場
執 筆 者
久伸雄男雄実勇雄夫夫豊夫豊雄男郎吾大豊大夫豊
昭
定常定輝
定和信
信
定常喜欣信
信六
板村柴重柴沼田柴中村藤村藤柴重持水村藤村安藤
山木小九小西住小田中佐中佐小九新清中佐中一佐
へ/~、-′-/\/\/\ノ(\/、-′\ノ〈\\′〉~、′--一【~、・〈/、一--一一------\ノ、一、一、一、′、/-(/\-′一一へ一、√\/\〈〈/\′\/〉\〈/\/\/\ノー}一
、て評 論 No.3
動交換機の概要
◎PTM端局装置について
◎高真空整流管の許容動作条件
◎架空送電線の弛度測定用クリノメータ
◎常温打抜加工用フェノール樹脂積層板
◎鋳造の力学的研究
◎高張力鋼の熔接性に関する二三の考察
◎13Cr不銑鋼に関する二三の考察
◎砂かみの生成に関する二三の考察
所 日 立 評 論 社 東京都千代田区九ノ内1丁目4番地 振替口座東京71824番
店 株式会社オーム社書店 東京都千代田区神田錦町3丁目1番地 振替口座東京20018番
晶
75,000kWタービンケーシングの製造
ノ、/\/\′-J-・・・・-ノヽ/\/\/\一\/\ノ\/、ノーーノーー\/\ノーノノ、、/\′\/〉\/\一\〈(〈---〉〉--/〉-〉-、一一一一一一--ノ、一一--ノ\ノ\/\ノ\′\/~-ノ′、・・
近時夕一ビンの出力を大ならしむるため温度,圧力と
もに上昇の憤向にあり,これにならって各部品に対し高
温高圧の条件が厳格となってきた。日立製作所日立工場
においても各関係方面と協力し従来のMo系,CrMo
第1図 新東京発電所納75,000kW
高圧クーピソケーシソグ
ー___′\ノ\/、ノー\/-〈---、/\/\一-\ノ〈\/「、-(〉√-〉一-/、/\一、一\/、ノ、-ノ〉へノ、ノ~〉′~一、/\/\/~~~ノ、ノ「ノ〉
大型部品用高抗張力鋳鋼
普通鋳鋼品ほ肉厚部において強度,靭性ともに鍛造品
に劣り,耐熱性,耐蝕性,耐磨耗性など宜おいても最近
の苛酷な設計条件を満足することができなくなった。日
立製作所ではそのため低Ni鋳鋼,低Cr鋳鋼,Mo鋳
鋼,低Mn鋳鋼およぴNiCr鋳鋼など種々の特殊鋼鋳
鋼を用途に応じ利用してきた。しかしとくに大物肉厚部
品に対してはさらにすぐれた性質を与えるため各関係者
の協力により焼戻脆性を抑制し,しかも焼入能の大きな
NiCrMo系の材料を大物高抗張力鋳鋼として採用し
た。その結果とくに耐蝕耐磨耗用 に対し満足すべき結
呆を得た。すなわち抗張力は同程度の炭素含有量の低
Ni鋳鋼,低Cr鋳鋼,Mo鋳鋼および低■Mn鋳鋼など
より高い値を示しており,十分目的を達していることが
わかる。なお化学成分においてNi2%を選定したこと
はこの附近において靭性が最高値を示すためであり,ま
たこのことは周知の事実でもある。
その化学成分,顕微鏡組織,機械的性質の一例をそれ
紹
系鋳鋼から一歩を進めCrMoV系の大出カタービン部
品鋳鋼品の を行っている。もちろん4500C,50気圧
程度のタービン部品に対してはMo鋳鋼およびCrMo鋳
鋼程度の材料で高温強度およびクリープ抵抗ほ十分であ
る。CrMoV系鋳鋼品はさらに温度圧力ともに高いタ
ービン部品に用いられる材料の一つで,とくに抗張力が
高いことが特長である。弟1図に示した新東京発電所
納75,000kW高圧タービンケーシングは同系の鋳鋼品で
過去における最大のもので,その製造匿あたっては十分
な計画と細心の注意がはらわれており,完成後はr線照
射により内部の健全性を確認した製品である。すなわち
抗張力はMo鋳鋼CrMo鋳鋼より約30%高く,5000C
以上の高温におけるクリープ限も大幅に上昇し使用条件
を十分満足させるものである。舞2図にその顕微鏡組織
写真を示すが,安定なソルバイト組織である。
第2図 CrMoV鋳鋼の顕微鏡組織 ×400
第1 表 NiCr Mo鋳鋼の化学成分
第3図 NiCrMo鋳鋼の顕微鏡組織 ×400
第2表 NiCr Mo鋳鋼の機械的性質
241
ぞれ弟1表,第3図,第2表に示す。