大学生の防災行動の実態と防災行動を規定する要因...

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大学生の防災行動の実態と防災行動を規定する要因 清水 裕(昭和女子大学生活機構研究科〉 はじめに 大地震などによる広域災害が発生しだ揚合の対策は国や自治体が中山となって進めているが,過去の大 きな災害時には,自治体関係者が被災したことにより,初期の苅応が遅れたり,火災や生き埋めが同時多発 的に発生したために対応しきれなかった倒ち多数醇在した.そのため,近隣住民が火災を消火したり,生き 埋めになった人を救出するなどの活動ち少なからず行われており,大地震など広域災害が発生した揚合に は,一般の人々も発災への準備をしておく必要が不司欠であるといえる.東京都内をはじめ多くの自治体で は,地域における自主防災組織の結成を促しだり,発災時に活動できるよう訓練を実施レている.しかレな がら,防災訓練参加者には高齢者が多いことが指摘されている(松井, 2003). 東京都内において実施された 一般住民の防災行動に関する実態調査からは, 10-20 歳代の青年層がそれより高い年齢層よりも防災意識 が希薄で,大地震に備えた苅策ち十分にとっていなし 1 ことが明らかになっており(警視庁大震災対策委員 識調査においても,地域防災活動への積極的参加の意思や防災に関する情報取得の意思は, 20 歳代がそれ より高い年齢層よりも僅かった.また,新井・元吉・松井・西道・清水・竹中・田中・福岡・堀・水田 (2005) においても,自主防災組織への参加者に比べて大学生の防災意識が極端に怪い事実が示されており,青年層 の防災に対する意識の倍さが懸愈される状況にある. 一般住民の防災行動を規定する要因に関する最近の研究としては,元吉・高尾・池田 (2005) がある.元吉 (2005) は,東海豪雨災害の被災者を苅象に調査を実施し,家庭における防災行動を促進させるには,長期 的効果は小さいが,リスクを周知し,人々の恐怖感情を刺激することが有効であるほか,地域防災行動の意 図を高めるためにはリスク情報の提供だけでは不十分で,防災とは直接関係ない社会考慮や地域コミュニテ ィに対する意識を高めることが重要であるとしている. 本研究においては,防災意識の値さが懸怠される大学生の防災行動の実態を明らかにするととちに,大学 生の防災行動を促進させるべく,大学生の防災行動を規定している要因を明らかにすることを目的とする. 元吉ら (2005) においては, “恐怖感情を刺激すること"と“地域コミュ二ティに対する意識を高めること" が防災行動の規定因とされていることから,これら 2 要因が防災行動に及ぼす影響を中山に検討を行う. 方法 手続きと被調査者 200812月に,東京都内の大学 3 校の学生を苅象に,留め置き法による質問紙調査 を実施した.質問紙は 501部を配布し, 393 部を回収しだ.未回答部分の多い 10 部を除い疋結果,有刻回 答者叡は 383 名(女性 222 名.男性 161 名,平均年齢 20.20 歳,範囲 18-25 歳,標準偏差1.1 4) ,有刻回 収率は 76 .4%となっ疋. 質問紙の構成 質問紙は, 1. デモグラフィック特性, 2. 居住形態(実家・寮・実家と寮以外), 3. 居住都道府県, 4.現在居住する建物の種類(木造モルタル・鉄筋コンクリート・鉄骨の中高層・その他), 5. 実家の地域で発生が懸怠される災害, 6. 現在居住する地域で発生が懸怠される災害, 7. 個人ででき る防災行動の中で必要と考えられるもの(自由記述), 8. どのような状況が生じたら地震への対策を今以 上に行うかけ 8 項目 2 件法), 9. 体験したことのある災害等の有無 (9 項目 2 件法), 10. 家族が体 験したことのある災害等の有無 (9 項目 2 件法), 11. 災害時に避難所へ避難する司能性 cr 避難すると思 J から「避難しないと思う」までの 4 件法), 12. 地震に備えて日頃とっている行動の有無 (14 項目 2 法), 13. 地震に備えて日頃とっている行動を始めたきっかけ〈自由記述), 14. 地震に備えて実家でと っている対策の有無 (14 項目 2 件法), 15. 地震に備えて現居住地でとっている対策の有無 (14 項目 2 47

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大学生の防災行動の実態と防災行動を規定する要因

清水 裕(昭和女子大学生活機構研究科〉

はじめに

大地震などによる広域災害が発生しだ揚合の対策は国や自治体が中山となって進めているが,過去の大

きな災害時には,自治体関係者が被災したことにより,初期の苅応が遅れたり,火災や生き埋めが同時多発

的に発生したために対応しきれなかった倒ち多数醇在した.そのため,近隣住民が火災を消火したり,生き

埋めになった人を救出するなどの活動ち少なからず行われており,大地震など広域災害が発生した揚合に

は,一般の人々も発災への準備をしておく必要が不司欠であるといえる.東京都内をはじめ多くの自治体で

は,地域における自主防災組織の結成を促しだり,発災時に活動できるよう訓練を実施レている.しかレな

がら,防災訓練参加者には高齢者が多いことが指摘されている(松井, 2003). 東京都内において実施された

一般住民の防災行動に関する実態調査からは, 10-20歳代の青年層がそれより高い年齢層よりも防災意識

が希薄で,大地震に備えた苅策ち十分にとっていなし1ことが明らかになっており(警視庁大震災対策委員

会・警視庁警備J~'理学研究会,2006),宮城県仙台市において実施された一般住民の消防・防災に苅する意

識調査においても,地域防災活動への積極的参加の意思や防災に関する情報取得の意思は, 20歳代がそれ

より高い年齢層よりも僅かった.また,新井・元吉・松井・西道・清水・竹中・田中・福岡・堀・水田(2005)

においても,自主防災組織への参加者に比べて大学生の防災意識が極端に怪い事実が示されており,青年層

の防災に対する意識の倍さが懸愈される状況にある.

一般住民の防災行動を規定する要因に関する最近の研究としては,元吉・高尾・池田(2005)がある.元吉

ら(2005)は,東海豪雨災害の被災者を苅象に調査を実施し,家庭における防災行動を促進させるには,長期

的効果は小さいが,リスクを周知し,人々の恐怖感情を刺激することが有効であるほか,地域防災行動の意

図を高めるためにはリスク情報の提供だけでは不十分で,防災とは直接関係ない社会考慮や地域コミュニテ

ィに対する意識を高めることが重要であるとしている.

本研究においては,防災意識の値さが懸怠される大学生の防災行動の実態を明らかにするととちに,大学

生の防災行動を促進させるべく,大学生の防災行動を規定している要因を明らかにすることを目的とする.

元吉ら(2005)においては, “恐怖感情を刺激すること"と“地域コミュ二ティに対する意識を高めること"

が防災行動の規定因とされていることから,これら2要因が防災行動に及ぼす影響を中山に検討を行う.

方法

手続きと被調査者 2008年 12月に,東京都内の大学3校の学生を苅象に,留め置き法による質問紙調査

を実施した.質問紙は 501部を配布し, 393部を回収しだ.未回答部分の多い 10部を除い疋結果,有刻回

答者叡は 383名(女性 222名.男性 161名,平均年齢 20.20歳,範囲 18-25歳,標準偏差1.14),有刻回

収率は 76.4%となっ疋.

質問紙の構成 質問紙は, 1.デモグラフィック特性, 2.居住形態(実家・寮・実家と寮以外), 3.

居住都道府県, 4.現在居住する建物の種類(木造モルタル・鉄筋コンクリート・鉄骨の中高層・その他),

5.実家の地域で発生が懸怠される災害, 6.現在居住する地域で発生が懸怠される災害, 7.個人ででき

る防災行動の中で必要と考えられるもの(自由記述), 8.どのような状況が生じたら地震への対策を今以

上に行うかけ8項目2件法), 9.体験したことのある災害等の有無 (9項目2件法), 10.家族が体

験したことのある災害等の有無 (9項目 2件法), 11.災害時に避難所へ避難する司能性 cr避難すると思

うJから「避難しないと思う」までの4件法), 12.地震に備えて日頃とっている行動の有無 (14項目2件

法), 13.地震に備えて日頃とっている行動を始めたきっかけ〈自由記述), 14.地震に備えて実家でと

っている対策の有無 (14項目2件法), 15.地震に備えて現居住地でとっている対策の有無 (14項目2

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件法). 16. これまでに参加したことのある防災訓練や講演の有無 (12項目 2件法). 17. これまでに

家族が参加レたことのある防災訓練や講演の有無 (12項目 2件法). 18.防災対策への関山度 cr非常に

閲I~\があるJ : 7から「全く関I~\がないJ : 1の7件法〉とその理由(自由記述). 19.地震についての考え

方 (7項目. rそう思うJ: 4から「そう思わないJ: 1の4件法). 20.居住地域および地域活動への関山

(9項目. rそう思うJ: 4から「そう思わないJ: 1の4件法〉の質問から構成されている.

なお,調査項目に関しては,東京都内 1区の2町に居住する成人の一般住民と神戸市内に居住する一般住

民を苅象に防災対策の実態に関するサンプリング調査を実施した,清水・西道・堀・松井・元吉・竹中・新

井・田中・水田・福岡(2008)の項目を援用した.

結果

本研究においては, “居住する都道府県", “現在居住する建物の種類", “本人および家族が体

験レたことのある災害等"の質問項目は分析に使用しなかっ疋.

1 .防災行動の実施率

(1 )実家居住者と実家・寮以外居住者の家庭内における防災行動

清水ら(2008)において使用レた,家庭内における災害準備に関する質問項目を用いた.実家・寮以外に居

住する学生の実家における防災行動の実施状態と現住居における実施状態,実家に居住する学生の実家にお

ける実施状態を単純集計し, Table 1に質問項目ごとの実施率を示しだ.統計的検定は行わなかつだが,実

家・寮以外に居住する学生の実家における実施状態と実家に居住する学生の実家における実施状態の聞には

叡値に大きな聞きはなかったが,実家・寮以外に居住する学生の現住居に闘して, “懐中電灯を常備してい

る", “救急用の医薬昂を常備レている

止苅策をレている"' “自宅や家財を守るために地震保険に加入している", “家族3日分程度の非常用食

料昂を常備レている", “カセットコンロとガスボンベを常備している", “家族3自分程度の飲料水を常

備している"の実施率が,実家における実施率よりも極端に僅かった.

また,実家における実施率ち“懐中電灯を常備している"が6割を超えていだ以外は,“医薬品の準備",

“携帯ラジオの常備

“飲料水の常備

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家庭内防災行動

懐中電灯を常備している 45 救急用の医薬品を常備している 22 携帯ラジオを常備している 21 家具等の転倒防止や落下防止対策をしている 21 自宅や家財を守るために地震保険に加入している 19 家族3日分程度の非常用食料品を常備している 15 カセットコンロとガスボンベを常備している 13 家族3日分程度の飲料水(1人あたり9リットル)を常備している 11 建築方法や補強で家の耐震性を高めている 8 消火器や消火用バケツ(三角バケツなど)を常備している 6 ヘルメットや防災ずきんを常備している 5 家具等を安全な場所に配置している 4 非常用毛布や寝袋などを常備している 4 あてはまるものはない 15 註)n:項目ごとの実施者数.%:項目ごとの実施率

48

n % 66.1 23.8 31.9 34.2 18. 1 21. 8 16.4 21.8 9. 1 13. 1 6.4 13. 1 4.0 16.4

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(2)一般的な防災行動

一般的な防災行動の実施率に闘しては.Table2のように, “自治体力がt決め疋指定避難揚所を確認してい

て話レ合つてしい1る"など,避難に閣する防災行動の実施率が相対的に高い.ただし,絶対的な割合は,最大

でも3割未満と非常に値い.

Table2 防災行動を実施している割合

防災行動自活体が決めた指定避難場所を確認しである自宅以外の避難場所(集合場所)を決めてある安全な場所への避難ルートや方法などについて話し合っている地震のときのとっさの行動を話し合っている貴重品などはすぐ持ち出せるようにしてある帰宅できないときの行動を話し合っているいつも風呂に水をためおいてある災害時の家族との連絡方法を決めてある自宅の耐震強度を確認してある勤務先・学校などから自宅まで徒歩で帰宅してみたことがある一時避難所まで歩いて行ってみたことがある災害伝言ダイヤル(171)などの使い方を話し合っているその他地震に備えた行動はとっていない註)n:項目ごとの実施者数, %:項目ごとの実施率

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(3)本人および家族の避難訓練・防災に闘する講演等への参加

本人および家族の避難訓練・防災に関する講演等への参加経験に闘して,本人と家族の別に肯定率を集計

した CTable3).本人・家族ともに経験率の高さによる順位は同様であるが,全体的に家族よりも本人の

経験率の方が高めであった.本人に闘してみると, “避難訓練"と“応急教護"の肯定率が 50%を超えて

いた.ま疋, “消火訓練"も4割以上が経験していたほか, “防災関係の施設の見学", “防災に関する講

演"と“三角巾や応急担架の使い方に関する訓練"ち 15%前後が経験レてい疋.

Table3本人および家族の避難訓練・講演への参加経験家人(N=378) 豪震(N=368)

訓練および講演 n % n %

避難訓練 312 82.5 250 67.8 応急救護(心肺蘇生法,人工呼吸など)のやり方に関する訓練 192 50.8 142 38.6 消火器や消火ホースの使い方に関する訓練 156 41. 3 110 29.9 防災関係の施設の見学 62 16.4 37 10. 1 防災に関する講演 58 15.3 46 12.5 三角巾や応急担架の使い方に関する訓練 57 15. 1 42 11. 4 救出活動訓練 29 7. 7 32 8. 7 炊き出し訓練 19 5.0 21 5. 7 避難所運営に関する訓練 7 1.9 14 3.8 避難所運営に関する講演 2 .5 10 2. 7 その他 10 2.6 9 2.4 防災訓練や講演には参加していない 43 11. 4 79 21. 5 註)n:項目ごとの参加経験者数,%:項目ごとの経験率

(4)防災対策への関山度

防災対策への関山度を“非常に関I~\がある" :7から“全く関山がない" : 1で尋ねたところ,平均値は

3.97.標準偏差は 1.37であり,平均値はほぼ中点に位置していた.つぎに,関山のある側の3選択肢へ

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Table4 防災対策への関心の有無とその理由防災対策への闘心の有無

理由 関心がない どちらともいえない 心がある 合計

現実味がない・実 がわかない・危機感が n 43 15 19 77 ない % 35.0略 34.9略 12.0略 23.8首

地震が起きそうで怖い n 5 。 62 67

% 4.1略 .0略 39.2覧 20. 7略

いざという時に備えて対策するに越したこ n 2 30 33

とはない % 1.6覧 2.3覧 19.0首 10.2首

地震は起きないと思う・被災すると思えな n 21 4 6 31

い・自分は大丈夫 % 17.1略 9.3略 3.8首 9.6略

経験がない n 14 8 8 30

% 11. 4覧 18.6覧 5. 1弘 9.3略

面倒・手が固らない n 8 5 6 19

% 6.5略 11. 6略 3.8覧 5. 9略

興味ない・意識しない n 13 4 2 19 % 10.6略 9.3略 1.3略 5. 9覧

諦めている n 11 4 16 % 8. 9覧 9.3略 .6首 4.9首

死にたくない n 。 。 8 8 9也 .0略 .0覧 5. 1略 2.5略

家族が防災関係の仕事をしている n 。 2 3

% .8略 .0略 1.3略 .9略

大地震を経験した n 。 2 3

% .8首 .0略 1.3略 .9略

その他 n 4 2 12 18 9も 3.3世 4. 7略 7.6略 5. 6略

合計 n 123 43 158 324 % 100.0略 100.0略 100.0略 100.0略

の回答を“関山がある"にまとめ,関山のない側の3選択肢への回答を“関山がない"にまとめ,中点であ

る“どちらともいえない"とともに,当該関山度を選択レた理由を,なるべく元の文章に忠実な形で 11力

テゴリとその他のカテゴリに筆者が分類・集計レた CTable4)• “関山がない"において最も多かった理

由は“現実昧がない・実感がわかない・危機感がない"であり, “地震は起きないと思う・被災すると思え

ない・自分は大丈夫", “経験がない"と“興味ない・意識レない"がそれに続いていた. “どちらともい

えない"に聞レても. “現実昧がない・実感がわかない・危機感がない"が最も多く, “経験がない"がそ

れに続いていた. “関I~\がある"においては, “地震が起きそうで怖い"が最も多く. “いざとし1う時に備

えて対策するに越したことはない"がそれに次いで多かつだ.

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準備の内容危険のないよう家具を配置情報収集部屋の荷物を高く積まない衣服の準備薬の準備周辺地図・ハザードマップの準備消火器の準備ラジオの準備簡易トイレの準備ヘルメット・防災ずきんの準備毛布の準備携帯電話の準備近所との連携火災報知機の設置

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2.防災行動の実施意図と災害時の避難行動意図

(1 )個人ができる防災行動の中で準備が必要と考えられる事柄

個人でできる防災行動の中で,どのような準備を必要と考えているのかを自由記述で尋ね,筆者が分類 ・

集計を行った CTable5).最ち多く挙げられたのが “非常禽の準備"で約2割と多く. 5%以上のものは,

“避難場所・避難所の確認'¥ “家具の固定",飲料水の準備“,"防災グッズの準備“,"非常口・避難

経路の確認ヘ避難袋・防災袋の準備"が続いた.

(2)現在以上に地震への防災行動強化を意図する状況

どのような状況が生じだら現在以上に地震に苅する苅策を実施するかを尋ねた.実際の地震の発生に闘し

ては.Fig.1のように, 震度3の地震が1日に3回発生しだ揚合に防災行動を強化すると回答したのは3割

であり,震度5の地震が1回発生したi君合には約5割,震度4の地震が7日に3回発生レた揚合と震度5の

地震が1日に 2回以上発生した揚合には約6割であった.急に防災対策を強化する人が増加し,商后等に防

災用晶を購入する人が殺到する可能性が懸怠される一方,残りの4割は震度5の地震が1日に3回発生して

も防災行動を強{じしないことを示唆している.特にこれらの人々への対応を考える必要がある.

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10 。γ』 震度3 γ」 震度4 γ」 震度5 γ」 震度5 γ」 震度δ

3 の 3 の 1 の 2 の 3 の

団 震地 田 震地 田震地 田震地 団 震地

発達が 発蓄が 発生後;制付 『発基が 生発イ主主 対日

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Fig.1 防災行動を強化するきっかけとしての実際の地震発生

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Fig.2 防災行動を強化するきっかけとしての政府の発表

51

つぎに,政府が大地震

の発生確率を発表しだ

揚合について尋ねたと

ころ. Fig.2のように,

“20年以内に震度 6'"

7の地震が 80%の確率

で起きる"までは7%程度であるが,“ 10年以内

に震度 6"'7の地震が

80%の確率で起きる"で

は約2割, “5年以内に

震度6'"アの地震が 80

%の確率で起きる"では

約4割, “1年以内に震

度6"'7の地震が 80%

の確率で起きる"では

約7割になる.つまり,

現在中央防災会議が発

表している“30年以内に

マグニチユード 7程度

の地震が発生する司能

性が 70%“では.5%程

度の大学生が防災行動

を強化しようと意図す

る程度であるといえよ

う.50%を超える大学生

に防災行動を強化させ

るだめには, " I年以内

に震度6"'7の地震が

80%の確率で発生する“

というように,大地震

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%

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親しい人から備蓄等

準備していると聞い

た後

親しい人が備蓄等準

備した方がよいと

言った後

親しい複数の人から

備蓄等準備している

と聞いた後

Fig.3 親しい他者が行っている防災行動からの影響

% 40

:30

20

10

。テレビで司会者が備

蓄等準備した方がよい

と話した後

テレビで専門家が備蓄

等準備した方がよいと

話した後

テレビで被災者が備蓄

等準備した方がよいと

話した後

Fig.4 テレビの出演者による影響

の発生予想を明確に示す

必要があるといえるが,

実際には難しいと考えら

れる.

親しい他者からの影響

についてみると.Fig.3

のように, “親しい人か

ら備蓄等準備を している

と聞いた後"には 1割程

度が防災強化を意図した

のに対して, “親 しい複

数の人から備蓄等準備を

していると聞いた後"に

は防災強化意図が4割以

上に上昇した.また,

親しい人が備蓄等準備を

しだ万がよいと言った後

,には 2割程度が防災行

動の強化を意図レた. I

人の親しい人からの影響

よりち複数の親しい人が

備蓄等準備をしている揚

合の方が約4倍の影響が

あるといえよう.

テレビによる影響に閲

しては. Fig.4のように.

“司会者が備蓄等準備を

した方がよい"と話した

だけでは,防災行動の強

化を意図する大学生は 1

割に満たないが, “専門

家や被災者が備蓄等準備

をした方がよい “と話した揚合には約 3割の大学生が防災準備行動の強化を意図 した.テレビによる影響

よりも親しい複数の他者からの影響の方が行動意図に与える影響力T強いことを示唆している.

(3)避難所への避難に対する態度とその理由

阪神・ 淡路大震災クラスの地震が起きて, 電気 ・ガス・水道が.Ltまってち,自宅が倒壊しなかった揚合.

避難所に避難するかどうかを尋ね,さらにその理由を自由記述で回答してちらった CTable6). “避難す

ると思う"と“疋(5iん避難すると思う"を合わせだ“避難する"は 72.5%. “避難しないと思う"と“疋

(5iん避難しないと思う"を合わせた “避難 しない"は. 27.5%であり,約7割が“避難する"と回答した

一方,約3割は“避難しない"と回笛した.また,避難する理由としては, “家が崩壊するなど危隙だから

避難する'¥ “家で伺ちできないから避難する", “食料.水.物資力がT欲レい力か、ら避難する

安l山山b山lだ力か、ら避難する"力がT上位に挙力がtり'他万, 避難しない理由としては, “ I~\理的に居I~\t也がよいから家に

いる", “共同生活が苦手だから家にいる", “家の方が安全だから家にいる'¥ “避難所は混んでいるか

ら家にいる"が上位に挙がった.避難しない理由として,苅人関係が苦手であることに起因する理由が上位

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に挙がっているが,極めて少数ながら“本当に避難が必要な人のために避難しない"という利他的な理由ち

存在した.

Table6避難所への避難に関する態度とその理由

避難所への避難に関する態度理由 避難しないと思うたぶん避鍵しないと思うたぶん避雛すると思う避難すると思う 計

家が崩壊するなど危険だから避難する 。 47 58 106 .0略 .3略 14.7目 18. 1略 33. 1略

家で何もできないから避難する 。 。 25 11 36 .0目 .0目 7.8拡 3.4目 11. 3目

食料・水・物資が欲しいから避難する 。 2 14 9 25 .0拡 .6略 4.4略 2.8覧 7.8覧

人がいて安心だから避難する 。 12 11 24 .0覧 .3首 3.8目 3.4略 7.5略

情報収集のために避難する 。 。 8 6 14 .0覧 .0略 2.5覧 1.9略 4.4略

余震が怖いから避難する 。 。 6 5 11 .0九 .0弘 1.9拡 1.6略 3.4百

みんなが避難するから避難する 。 。 6 7 .0略 .0略 1.9覧 .3略 2.2略

その他の理由で避難する 。 5 3 9 .0目 .3略 1.6略 .9覧 2.8明

心理的1::居心地がよいから家にいる 4 18 2 25 1.3略 5.6弘 .6略 .3略 7.8時

共同生活が苦手だから家にいる 2 18 。 21 .6九 5.6覧 .3協 .0略 6.6略

蒙百万が安全だから家にいる 3 6 。 10 .9目 1.9目 .3略 .0略 3. 1略

避難所は混んでいるから家にいる 4 5 。 。 9 1.3覧 1.6覧 .0略 .0覧 2.8覧

他に避難すべき人がいるから家にいる 3 。 。 4 .9弘 .3覧 .0首 .0唱 1.3目

ペットを飼っているから家にいる 2 。 。 3 .3覧 .6略 .0目 0略 .9拡

家に帰ってくる人がいるから家にいる 。 。 。.3覧 .0覧 .0略 .0覧 .3略

その他の理由で家にいる 5 10 。 。 15 1.6目 3. 1目 .0協 .0目 4. 7目

合計 23 65 127 105 320 7.2首 20.3覧 39. 7略 32.8覧 100.0覧

註)上段:n,下段:総和の%

ところで.Table 1にあるように,実家居住者において実家に非常用の食料を備蓄したり.飲料水を備蓄

している割合は2割強であり,実家・寮以外の層住者の揚合には 1割未満である.電気・ガス・水道が止ま

るような大きな地震の揚合,一般商屈も被害を受けると予想されることから,避難所ヘ避難しないと回答し

疋3割の中に,上記の2割の食料や飲料水の備蓄をしている人が仮に全て含まれていたとしても,残り T割

は食料や飲料水を確保するために避難所へ行かざるを得なくなると考えられる.また,本研究においては,

防災行動の実態として. “いつも風邑に水を溜め置いてあるか"も尋ねているが,溜め置いているのは

Table2のように.380人中の 29人であり.7.6%とわずかであった.レたがって, “避難レない"と回

筈したうちの最倍でも2割以上は,トイレに使用する水を確保できていなし1ため,避難所へ避難せざるを得

なくなると考えられる.さらに,だとえ食料や飲料水・生活用水が確保できていても,夜lこなり電気の明か

りがないにもかかわらす,散らかっ疋家の中にいて余震が続く状況にもかかわらす避難せずにいるのは難し

いのではないかと推測される.

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3.防災行動と関連する要因

(1 )防災行動を始めるきっかけと認識されている要因

地震に備えて日頃から行っている防災行動に闘して回答してもらったうえ,その行動をとるきっかけにな

った要因を自由記述で回答してもらった.自由記述の回答は,筆者が“その他"を含む 12種類と"特に理

由なし"に分類し疋 CTable7).

総じて, “テレビなど報道"と“他地域での大地震発生"が大きな割合で防災行動を始めるきっかけと認

識されてい疋.具体的にみると, “テレピなど報道"は' “災害時の家族との連絡方法を決めてある

自治体力がt決めた指定避難揚所を確認してある"と“自宅以外の避難場所(集合揚所〉を決めてある"におい

て4割から5割強を占めており,避難先に関する内容を中山とした家族での話レ合いのきっかけとして認識

されていた.

特になし

その他

地震を体験した時

防災行動実行のきっかけとなった要因

家自引普偶自物族治つ段然分理の体越か・で的影 の し ら な 調 距響広・のんベ離

報通習とたのや学慣な・近回先 〈見さ覧の た板変

学校行事などの教育

地震が起きるとする情報

防災行動実行のきっかけとなった要因

他地減での大地震の発生

ナレピなど報道

防災行動

Table7

2 81

2.5100.0

o 58

0100.0

1 44

2.3100.0

2 40

5.0100.0

o 25 0100.0

2 24

8.3100.0

o 24

0100.0

o 23 0100.0

o 20 0100.0

1 20

5.0100.0

o 18 0100.0

o 18

0100.0

1 6 16.7100.0

3

U一4

M

一1M一oo-4m一IM--M一IM--M一IM--M一1M一0

0

oo-oo-2M一1

M一2

M一1

M一oo-oo-oo--M一oo--M一。。

4

M一1川一

IM--口一

oo-oo-oo-0050-3

山一

oo-6

則一。。

5

M一1げ一

IM--M一1

M一IM--M一005050-oo-0050

6 4 4 10

7.44.9 4.9 12.3

1 0 0 3

1.7 0 0 5.2

o 0 1 0

0o 2.3 0

o 1 0 0

02.5 0 0

o 0 0 1 0o 0 4.0

o 0 2 1 0o 8.3 4.2

o 000

0000

o 6 0 0 026.1 0 0

o 0 9 0 0o 45.0 0

1 0 1 3

5o 0 5.0 15.0

000 3

0o 0 16.7

o 0 2 3 0o 11. 1 16.7

o 0 0 0

o 0 0 0

4

M一5

M一4

M一2

M一2

M一3山一

1

M一3

m一1

M一1日一

3川一

oo-00

n

m一8

m一4

U一2

M一4

m一oo--M一00522

川5

2

2川・

1川

3

U一4

M一2

M一2日一

1

M一3日一

022U一0050一oo-0050

6

M一m

m一7

m一ω則一

4

m一4川一

7山一

2

U一2川一

2

m一5

m一1

M

一00

m

m一幻則一

ω一山一印刷一

6則一

6

m一日山一9

んか一

7則一

4

m一6

m一2川一

3則

自治体が決めた指定避難場所を n

確認してある % 地震のときのとっさの行動を n

話し合っている %

自宅以外の避難場所(集合場所) n

を決めてある %

安全な場所への避難ルートや n

方法などについて話し合っている %

帰宅できないときの行動を n

話し合っている %

貴重品などはすぐ持ち出せるようIn

しである %

災害時の家族との連絡方法を n

決めてある %

自宅の耐震強度を確認してある n

% いつも風呂に水をためおいである n

%

勤務先・学校などから自宅まで n

徒歩で帰宅してみたことがある %

災害伝言ダイヤル(171)などの n

使い方を話し合っている %

一時避難所まで歩いて行ってみた n

ことカ1ある %

その他 n

9也

“他地域での大地震発生"も, “災害時の家族との連絡方活を決めてある

1 )などの使い方を話し合つてしい1る

で約3割と高く'家族との話レ合しい1のきつ力か、けとレて認識されていた.そのほ力か、' “風自に水をためおいて

いる"は普段からの習慣, “自宅の耐震強度を確認しである"は引っ越しゃ通学先の変化がきっかけと認識

されていた.

(2)大地震発生への不安・懸愈と居住地域・地域活動への関山が防災行動に及ぼす影響

“地震への不安・懸怠の高まり"と“居住地域・地域活動への関I~\" の要因が防災行動に及ぼす影響を

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検討した.

①防災行動項目の因子分析

防災行動に関する 11項目に闘して,最尤法プロマックス回転による因子分析を行った結果.4因子が抽

出された (Table8).

Tabl e 8 防災行動項目の因子分析結果(因子パターン)

因子項目内容 F1 F2 F3 F4

災害時の行動に関する話し合い自宅以外の避難場所(集合場所)を決めてある . 71 一.13 .12 一.16 安全な場所への避難ルートや方法などについて話し合っている .64 .18 一.13 ー.03地震のときのとっさの行動を話し合っている .47 .02 .03 . 15 帰宅できないときの行動を話し合っている .41 一.12 .21 .06

自宅における防災対策いつも風呂に水をためおいである ー.15 .52 .29 ー.05自宅の耐震強度を確認しである .08 .46 ー.03 一.08貴重品などはすぐ持ち出せるようにしてある ー.05 .41 .02 .02

避難場所の確認

一時避難所まで歩いて行ってみたことがある . 10 .06 .65 .02 自治体が決めた指定避難場所を確認しである . 15 . 13 .27 . 13

災害時の連絡方法に関する話し合い災害伝言ダイヤル (171)などの使い方を話し合っている ー.11 一.12 . 11 .63 災害時の家族との連絡方法を決めてある . 15 . 12 一.12 .49

因子間相聞 F 1 .41 .10 .53 F2 .38 .29

F3 .08 註)因子抽出法:最尤法,回転法 Kaiserの正規化を伴うプロマックス法

第1因子は“災害時の行動に関する話レ合い",第2因子は“自宅における防災苅策",第3因子は“避

難場所の確認'¥第4因子は“災害時の連絡方法に関する話し合い"と命名できた.

つぎに,地震についての考え方 (7項目.APPENDIX1参照〉のうちの“大地震発生への不安・懸意"

を内容とする5項目と.居住地域および地域活動への関山 (9項目.APPENDIX2参照)に闘して,それ

ぞれの内的一貫性を確認するため.Chronbachのα係叡を算出した. “大地震発生への不安・懸怠" (α

=.73) ・“居住地域および地域活動への関J~\" (α=.86)ともに高い内的一貫性を有レていると解釈でき疋.

②防災行動と“大地震発生への不安・懸怠"・“居住地域および地域活動への閲I~\" との聞の関連性

防災行動の各因子と“大地震発生への不安・懸意"および“居住地域および地域活動への閉山"との聞の

関連性について Pearsonの積率相関係数を算出したところ. Table9のように, “大地震発生への不安・

Table9 防災行動と大地震発生への不安・懸念および地域および地域活動への関心との関連性

防災行動 大地震発生への不安・懸念 地域および地域活動への関心

緊重両面肩動に関する話し合い r .190柿 . 129本

N 370 365

避難場所の確認 r .052 . 188輔

N 370 365

自宅の防災対策 r . 136神 . 155柿

N 370 365

災害時の連絡方法に関する r 話し合い N

. 158特 .164柿

370 365

註)林 :pく.01. *: p<. 05

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懸怠"は“緊急時の行動に関する話し合い,",¥' “自宅の防災苅策

,の3因子との間に有意な正の相関力がT認められた.他方' “地域および地域活動への関I~\" は,防災行動の

4つ全ての因子との聞に有意な正の相闘が認められた.疋だし,いすれも相関係叡は2 未満の弱い相関で

あった.

③防災行動に及ぼす“大地震発生への不安・懸怠"・“居住地域および地域活動への関山"の影響

“大地震発生への不安・懸怠"と“地域および地域活動への関I~\" を説明変数, “防災行動"を目的変数

とした,ステッブワイズの重回帰分析を行った. Fig.5のように, “大地震発生への不安・懸意"は,

“災害時の行動に関する話し合い", “自宅の防災対策", “災害時の連絡方法に閲する話し合い"に弱い

ながら有意な正の影響を及ぼしていた.また, “地域および地域活動への関I~\" は, “避難場所の確認",

“自宅の防災苅策¥“災害時の連絡方法に関する話し合い"に弱いながら有意な正の影響を及|ましていた.

重決定係叡の値が極めて小さく,他要因による影響ち考慮すべきであるが. “大地震発生への不安と懸意"

および“地域および地域活動への関I~\" が防災行動に弱いながらも影響を与えていることが示唆されたとい

えよう.

大地震発生への不安・懸念

.19市場*

災害時の行動に関する話し合い

R2=.05**事

避難場所の確認

R2=.04*車

Note 様車 *:p<.001. 市場 :p<.01,本 :p<.05

地域および地域活動への関心

自宅の防災対策

R2=.04*事 R2=.05*準帯

Fig.5 大地震発生への不安・懸念および地域活動への関心が防災行動に及ぼす影響

考察

大学生が防災行動を行っている割合は,避難訓練・応急教護訓練・消火訓練など,学校の行事として行

われる訓練以外は非常に僅く,金銭的コストのかからない避難場所の確認や,避難場所・連絡方法等につい

ての家族との話し合いなどであっても実施率は3割以下であったことからι防災対策の実施を促す脳要があ

るが,中でも実家・寮以外に居住する学生の実施割合が極舗に怪かったため,防災苅策の実施を特に促す必

要があると言えよう.防災対策をしている割合は怪いが.個人でどのような防災対策ができるかに関しては,

非常食・飲料水の準備,家具の固定,防災グッズの準備等,緊急性の高い苅策が上位に挙げられていたほか,

靴の準備やハザードマップの準備が挙げられるなど,防災苅策に関して詳細な知識を有する学生ち害在する

が,その割合は少ないと解釈できる.

防災対策への関山についても高いとはいえす,関山のない学生は,災害の発生に現実昧を感じることが

できす,楽観的に考えていると解釈できる一万.防災苅策に関山のある学生は,発災に対して恐怖感がある

と解釈できる.この結果は元吉ら(2005)と対応レているといえよう。

大地震発生への不安・懸意が防災行動に及ぼす影響に関する分析からは,説明力は値いが、大地震発生へ

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の不安・懸怠が防災行動を促進させる結果が示された CFig.5).レかし,現在以上に地震への防災行動を

強化することを 50%以上の学生に意図させるためには,震度4以上の地震が1日に3回以上発生しだり,

震度5以上の地震が1日に 1回以上発生するなど,実際に大きな震度の地震が発生するか,“ 1年以内に震

度6rv7の地震が 80%の確率で起きる"と政府から発表される揚合 CFig.1.Fig. 2)のように,大地震

の発生が極端に逼迫していることが伺える状況にならないと防災対策を強化しないと解釈できる.しかしな

がら,防災行動を実行したきっかけに関する分析結果 CTable7)からは,テレビなどの報道や他地域での

大地震の発生がきっかけになったと認識されている防災行動ち多く,防災行動強化を意図する状況に関して

は,“テレビで専門家が備蓄等準備した方がよいと話しだ後"には約3割が対策強化を意図すると回答して

いる CFig.4).また,この防災行動強化を意図する状況の分析からは, “親レい複叡の人が備蓄等準備を

していると聞いた後"にも4割以上が苅策強化を意図すると回答している CFig.3)ことから,周囲の親し

い人の多くが備蓄等の準備をしていることを聞くと.テレビで専門家が備蓄等準備を勧めるよりも大地震発

生への不安・懸患が高まり,防災行動を意図する司能性が高くなると推測される.

避難所への避難に関する態度については.7割以上が避難すると回答しだが.3割弱は避難しないと回答

した CTable6).しかし,少なくとも2割以上は生活用水が確保できていないため,避難所のトイレを使

用するなど,避難せざるを得なくなると予想される.ライフラインが止まるような地震災害時に生活する状

況をイメージできるような知識をもたせる必要があろう.

防災行動には“大地震発生への不安・懸怠"とともに説明力は値いが、 “地域および地域活動への関山"

も有意な影響を及ぼしていた CFig.5).影響力としては弱いが,居住地域に愛着を持たせたり,地域行事

やお祭りに参加するなど,近隣とのつきあいや地域的なつながりを持たせることも防災行動を促進させるこ

とにつながると考えられる.本研究においては、大学生の家庭内における防災行動を中山に検討したが、今

後は地域における防災活動を促進させる方法に関レても検討する必要があろう.

引用文献

新井洋輔・元吉忠寛・松井 豊・西道 実・清水 裕・竹中一平・田中 置・福岡欣治・堀 津元・水田

恵三 2005防災意識尺度作成の試み 日本社会I~\理学会第 46 回大会発表論文集. 702-703.

警視庁大震災対策委員会・警視庁警備山理学研究会 2006 大震災対策のためのI~\理学的調査研究

平成 18年度ー災害時における都民等の地域別意識調査一 警視庁大震災対策委員会

松井 豊 2003 広域災害に対する地域防災体制のあり方に関する社会I~\理学的研究 平成12年度~平成14

年度科学研究費補問金基盤研究(c)(1)報告書

元吉忠寛・高尾堅司・池田三郎 2005家庭および地域における防災行動の規定因に関する研究日本社会

I~\理学会第 46 回大会発表論文集. 138・139.

仙台市消防愚 2006 仙台市消防・防災に対する市民意識調査報告書 同所発行

清水 裕・西道 実・堀 洋元・松井 豊・元吉忠寛・竹中一平・新井洋輔・田中 優・水田恵三・福岡

欣治 2008家庭内の防災行動に関する研究一東京と神戸の一般住民間における比較一 昭和女子大学

生活I~\理研究所紀要. 10. 13・21.

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APPENDIX1

a. 近いうちに大きな地震が起きそうでI~\配である

b.いつ大きな地震が起きてもおかしくない

C. 私の住む地域は大きな地震の被害を受けやすい

d.大きな地震のことを考えると落ち着かない

e.大きな地震に遭うときが必ずくる

f.大きな地震は起きてしまえばあきらめるしかない

g. 大きな地震が起きても乗り切ることができる

Note. 大地震発生への不安・懸志尺度としてaから eまでの5項目を用いた.

APPENDIX2

a. 自分の住んでいる地域に愛着がある

b.近隣とのつきあいや地域的なつながりを大切にしだい

C. 町内会や自治会などの集まりには参加すべきである

d.地域での行事やお祭りなどには参加すべきである

e.地域での防災活動に参加したい

f.地域での防災訓練には参加すべきである

g. 災害に備えて自主防災組織などにかかわりだい

h. 自主防災組織の活動で地震の被害を減らすことができる

i .地域で防災の準備をしておけば,いざというときに役立つ

Note. 地域および地域活動への関山尺度として以上の9項目を用いだ.

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