砂防堰堤の基礎盛土へのISM工法(砂...
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砂防堰堤の基礎盛土へのISM工法(砂防ソイルセメント)の適用
(株)本間組土木本部技術部 田中 修
国土交通省北陸地方整備局湯沢砂防事務所 山本 悟
(株)本間組土木本部土木部 高塚 慶
1.はじめに
ISM(In Situ Mixing)工法は,砂防施設等の危険な環境下での作業を軽減するための省人化及び建設コス
ト縮減を目的に建設省北陸地方建設局(現国土交通省北陸地方整備局),(財)先端建設技術センター他に
より研究開発された現位置攪拌混合工法である.
本報告では,主に現位置での攪拌混合を主体に実績を積んだ ISM 工法を,短時間で大量に「砂防堰堤の基
礎盛土」へ適用を行った経緯とその改善を行った施工方法などについて報告を行うものである.
2.概要
平成16年10月の新潟県中越地震により発生した芋川(寺野地区)の河道閉塞部の恒久復旧のために3
基の砂防堰堤の計画がされた.
この砂防堰堤は、河道を閉塞した莫大な土砂の崩壊による下流域への二次災害を防止するという大きな目
的があり早急な完成が望まれた.図-1に縦断計画を示すが,上流側2カ所の砂防堰堤の基礎として砂防ソ
イルセメントによる基礎盛土があり,堰堤の早急な完成を望むためにはこの基礎盛土の施工進捗の確実性と
早さが要求される.
図-1 砂防堰堤の縦断
3.砂防ソイルセメント工法の選定と施工方法の検討
3.1 砂防ソイルセメントへの要求事項
基礎盛土としての砂防ソイルセメントへ要求された概要を表-1に示すが,約 37,000m3の基礎盛土を砂
防ソイルセメントを用いて天候による休止等を含め
3 ヶ月間で施工しなければならないという工程上の
大きな制約がある.
3.2 砂防ソイルセメントの工法選定
砂防ソイルセメント施工方法は,ISM 工法のよう
に主にスラリー状のセメントミルクを現位置で攪拌
混合を行う工法と,主に粉体を事前に攪拌混合し施
工場所まで運搬した後締固め転圧を行う INSEM
(IN-site Stabilized Excavated Materials)工法があるが,ISM 工法の場合の標準的な施工能力が 50~80m3/日
項 目 要求事項 備 考
1.6N/㎜2 3号堰堤基礎部
1.0N/㎜2 2号堰堤基礎部
施工規模 約37,000m3 2箇所合計
施工可能期間 約3ケ月間降雪前に作業を完了させるため
資材の供給場外からの資材供給を極力減らすこと
地震後の交通事情が非常に悪いため
設計基準強度
表-1 砂防ソイルセメントへの要求事項
/セット1)であるのに対して INSEM 工法の場合,事前の攪拌混合の方法にもよるが 40~600m3/日2)と非
常に大量な施工が可能である.なお,双方の工法共に骨材となる土砂については,現地発生土砂を利用する
ことが可能で,地震による災害復旧工事が各地で進捗される中,不要となる現地発生土砂を場外の土捨場を
求めずに有効利用できるといった共通のメリットを有している.
工法の適否は土質性状により決定されるため,現地発生土(ここでは,特に地震により発生した崩落面の
安定のために実施される地滑り対策工事で発生する土砂)の砂防ソイルセメント用骨材としての適用性の確
認を行うために実施した室内配合試験の結果を表-2に示す.
INSEM 工法の場合,ISM 工法と同
じ単位セメント量で同等以上の強度
を確保するためには,容積率で 50%
もの砕石を添加する必要があること
が判る.このことは,必要な砂防ソ
イルセメントを構築するために,約
19,000m3という多量の砕石を場外
から供給することとなり震災復旧工
事が各地で進捗する中,材料の安定
供給といった点から現実的でない配
合と考えられた.
さらに,INSEM 工法については,事前に混合した INSEM 材を図-1に示すような場所へ安定的に運搬す
る手段を確保する必要もあるため,施工上の問題より採用は非常に難しいものと判断された.
一方,ISM 工法については施工機械のセット数を増やすことや施工方法を改良することで,施工能力を増
大することができれば,表-1に示した要求事項を満足することができる.
3.3 ISM 工法による砂防ソイルセメントの施工方法の検討
1)施工方法
ISM 工法による砂防
ソイルセメントの大量
施工を実現させるため
の課題は「1セット当
たりの施工能力を如何
に増加させるか」であ
り,現位置で攪拌混合
を行うといった施工方
法を採用する限り無理
であるため,図-2の
方法での施工の可否を
検討した.
図-2での施工は,
現位置での攪拌混合を
行わずに簡易プラント
的な場所で事前に砂防ソイルセメント(以降 「ISM 材」という)の攪拌混合をし,コンクリートポンプな
どで施工場所へ運搬打込みを行う方法である.
このため,実施工に先立ちポンプ打設の可否も合わせて実証実験を行った.
図-2 ISM 材の大量施工方法の概念
単位セメント量 砕石添加量 単位容積重量
C G w
kg/m3
容積率(%) t/m3
7d 28d
200 1,730 0.87 1.51250 1,850 1.31 2.15300 1,760 1.74 3.29350 1,780 2.13 3.65
1,875 0.67 0.87
1,828 0.44 0.61 50㎏/m3加水
1,958 0.86 1.28
1,949 1.31 1.94 25㎏/m3加水
1,952 1.56 2.23
2,028 2.43 3.99 25㎏/m3加水
(財)砂防・地すべり技術研究センターによる試験結果
ISM 0
INSEM 200
0
25
50
試料名
圧縮強度
備 考N/mm2
表-2 事前室内配合試験結果
2)実証実験
①解砕選別実験
事前に攪拌混合された ISM 材を運搬打設するた
めに汎用性の高いコンクリートポンプの使用を想定
した場合,骨材とする現場発生土砂を粒径 50 ㎜以下
に解砕選別する必要がある.
バックホウの先端に写真-1に示す解砕選別装置
を取付け、現地発生土砂への適用実験を行い、その
結果解砕選別が可能でありその施工能力も満足する
ことを確認した。
写真-2に解砕選別後の不要土砂を、写真-3に
解砕選別後の利用土砂を示す。
②圧送試験
ISM 材の攪拌混合が可能なヤー
ドは図-1の閉塞土砂の上部であ
り,運搬距離は 150m以上と離れ
ていると共に,高低差は 32m以上
であった.
このような条件下での圧送の可
否を確認するため,現場に実機を持ち込み打設場所への圧送
試験を行い,コンクリートポンプで圧送できることを確認す
ることができた.
ポンプ施工を考慮して ISM 材の流動性を 60 分程度保持す
るために事前の室内配合試験で混和剤の選定を行い、その効
果を確認した。(図-3 参照)
以上のことから ISM 工法の選定に至った.
4.施工結果
4.1 ISM 材の攪拌混合
写真-4に ISM 材の攪拌混合ヤード全景を写真ー5にツインヘッダーによる攪拌混合状況を示す.
バックホウの先端にツインヘッダーを取り付けた ISM 材の攪拌混合機は3台配置されている.
図-4に実際の施工での ISM 材の施工進捗を示すが,砂防ソイルセメントの施工上の要求であった,休止
写真-1 解砕選別機
写真-2 選別後の不要土砂 写真-3 選別後の利用土砂
図-3 スランプの経時変化
写真-4 ISM 材の攪拌混合 写真-5 ISM 材攪拌混合状況
などを含む全施工期間での平均打設量は 400m3程度,実作業日当たりの平均打設量は 500m3程度で施工を
行うことができた.
4.2 ISM 材の配合と強度
ISM 材の品質は実施工に先
立ち実施した室内配合試験よ
り表-3のとおり決定した.
また,実施工の結果得られ
た強度を表-4に示すが,全
て設計基準強度を満足するこ
とができた.
5.まとめ
ISM 工法は,全国各地の砂防工事などで堰堤本体
(地中部)を中心にこれまで約 14 万m3の施工実績
を有する工法である.
限られた期間で数万m3単位の比較的低強度の
ISM 材を砂防堰堤の基礎盛土として利用したのは初の試みであったが,施工能力・品質共に満足の行く結果
を得ることができた.さらに今回実施した,簡易プラント方式を用いたツインヘッダーによる攪拌混合性能
についても,確実性が高いことも確認できたため,同様な砂防堰堤の基礎盛土への適用性が非常に高い工法
であると考えられる.
6.最後に
写真-6に,雪深い山古志の地で一冬越冬し本
年 H18 年春に確認することができた「砂防堰堤の
基礎盛土に適用した ISM 盛土」を示すが,十分な
強度が確認され現在この ISM 盛土を基礎として
鋼製枠による堰堤の構築が進められている.
ISM 工法の適用に際しては,詳細設計の実施者
である開発技建(株),並びに ISM 工法研究会か
ら助言を頂いた.ここに記して厚く御礼申しあげ
ます.
0
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3 5 0 0 0
4 0 0 0 0
0 1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 6 0 7 0 8 0 9 0 経過日数 (日 )
累計
施工量(m3)
累計 (m 3 )
図-4 ISM の施工実績
打設場所 2号えん堤基礎部 3号えん堤基礎部設計基準強度 1.00 1.60配 合 強 度 2.15 3.29最 大 値 2.93 4.16最 小 値 1.02 1.64
全体平均強度 1.70 2.51
単位 N/㎜2
表-4 ISM 材の強度
参考文献等 1)「現位置攪拌混合固化工法(ISM 工法)設計・施工マニュアル(H13.5)」(財)先端建設技術センター・
ISM 工法研究 2)独立行政法人土木センター土砂管理研究グループ火山・土石流チーム HP
写真ー6 ISM 工法による砂防堰堤の基礎盛土
表-3 ISM 材の配合 打設場所 2号えん堤基礎部 3号えん堤基礎部
設計基準強度 1.00 N/㎜2 1.60 N/㎜2
配合目標強度 1.97 N/㎜2 3.25 N/㎜2
割増係数 1.97 1.97
セメント添加量 高炉セメントB種 250㎏/m3 高炉セメントB種 300㎏/m3
混和剤添加量 レオソイル100A セメント重量比2%