代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】...

82
Meiji University Title �-���- Author(s) �,Citation �, 75(2-3): 1-81 URL http://hdl.handle.net/10291/1313 Rights Issue Date 2002-12-25 Text version publisher Type Departmental Bulletin Paper DOI https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/

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Meiji University

 

Title代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法

五〇四条の横断的考察-

Author(s) 平野,裕之

Citation 法律論叢, 75(2-3): 1-81

URL http://hdl.handle.net/10291/1313

Rights

Issue Date 2002-12-25

Text version publisher

Type Departmental Bulletin Paper

DOI

                           https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/

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法律論叢

第七五巻

第二

・三号

(二〇〇二

・一二)

【論

】代

理における顕名主義

ついて

民法

一〇〇条と商法五〇四条

の横断的考察

1

問題

の提起

2

妥当な解決

はいかにあるべきか

3

立法

の確認

4

民法

一〇〇条

について

5

商法五〇四条

について

6

本稿

のまとめと横断的解釈論

1

問題の提起

-

[凶

ω

問題意識は民商法共通

代理における顕名についての

一般的理解によれば、民法と商法とでは異なる原

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2

則が採用されているといわれるが

(少数の異論はある畢溜)、いずれも出発点においては同じ問題意識を共有してい

(1

)

た。その問題意識とは次のようなものである。

代理人が顕名をせずに契約をした場合には、意思表示解釈の

一般原則によると、①意思表示

の客観的解釈によ

り代理人が契約当事者と扱われ、本人との契約関係は認められず

(意思表示理論の原則①といっておく)、②他方で、

代理人には契約をする意思がないため

(意思欠映)、代理人との間の契約は錯誤で無効になりかねず

(意思表示理論

の原則②といっておく)、そうすると相手方は本人にも代理人にも契約の効力を主張しえな

いことにな

ってしまい、

契約を締結した相手方にと・て酷である・

このような結論を回避して代理人を救済するために、民法

・商法はそれぞれ異なる解決方法を採用したことに

なる。

主(1)

但し、次の点は注意しておこう。先ず、

旧民法にはこの問題意識はなく、現行民法

一〇〇条

の起草に際し

ての問題意識

ある

こと。ま

た、商法五〇四条にお

いては、旧商法の原案を起草

した

ロエスレルの段階ではこのような問題意識が明示され

ていたが、後述するよう

に現行商法

の起草趣旨にはこのような問題意識は示されて

いな

いこと

(妙

49以下)、

である。

ω

それぞれの解決方法の選択

「凶

民法の解決方法-

顕名主義

・代理人の無効主張制限+顕名主義の例外的排除?

民法は九九条で

顕名主義を採用し、代理人が顕名をしなかった場A口には、本人を契約当事者とする意思表示はなく、代理人を契

約当事者とする意思表示があるものと扱う

(意思表示理論の原則①を容認する)。そして、過失なくして代理人を契

.

約当事者と思

った相手方を保護するために

一〇〇条本文を設けて、代理人は自分との間に成立するとされる契約

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の効

を争

いえな

いも

のと

た。

ち先

の代

の自

が契

る意

思欠

に、

の間

に成

のと

る契

が無

とさ

のを

、代

理人

が自

ら契

約を

る意

った

「看

す」

いう

て、

思欠

いう

であ

(意思表示理論

の原則②を排除。詳しくは56以下に後述する)。

そう

と、

の責任

いわ

ば法

でも

いう

べき

とな

るが

(民法

一一七条の履行責任まで負わされ

る無権代

理人

の責任を髪髭

させる)、

のよ

の責

ば相

が代

の代

理意

って

いた

は過失により知らなか

・た場合には認める必要が三

.そのため、相手方が慧

または善意でも有過失の場A・に

は、原則に戻り法定責任は認められずに看徴す効果は否定され・代理人による無効の主張が認められ・相手方は

つ隷

誰との間にも契約の成立が認められないかのさ

つである.しかし、民法はそのさ

つな解決ではな-、相手方が代

理人の代理意思を知

っていたまたは習

えた場合には、

一〇〇条但書は九九奎

項を準用するものとした.即ち、

代理人との間に契約の成立を認めず

(成立を認めて無効とするのではなく)代理人との間の契約成

立を主張すること

 

でき

いが、

の間

の契

の成

しう

るも

のと

のであ

(意思表示理論

の原則②の排除

が認められ

に理

い場Aロに、例外的

に非顕名主義を導入)。

①相手方になん・の保護もなくな・てし零つのは蕩

では芝

他方で・②代理人が代羅

の藷

内で代理意

って行

った行

つき、

に効

を帰

も本

に不

では

いの

で、

のよう

る。

のよう

に、

民法

二段

の保

護を

用意

、@

は代

に意

の原則

いう

の法定

が認

い場

には、

二次

にま

便宜

・政

、顕

の例

て本

の間

の契

関係

の成

立を

によ

る相

の保

るも

とし

たと

いえ

よう

(但し、後述

のよう

3

に民法

一〇〇条但書は黙示的に顕名があ

った場合

の規定

に過ぎないと

いう解釈もある)。

一〇

原案

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には

ったも

であ

り、

対す

る例

る意

であ

った

のか

は必

はな

い。

4

ω

商法の解決方法-

非顕名主義+代理人の法定責任?

他方で、本人にも代理人にも契約の効力を

えな

こと

への対

、商

は本

で非

主義

を採

用す

こと

より

の契

の成

立を

いう

(意思表示理論

の原則①

を排除)。

相手

とし

ては

の代

ても

ロす

わち

にも契

の効

いと

いう

、本

の契

の成

を認

ても

ると

ころ

であ

る。

エス

ルは

のよ

題意

に基

て、

現行

四条

に受

がれ

旧商

のであ

(眼

50)。

地業

、、

、、、、、、、、、、、、

ころ

が、

は民

とは

って、

の基

原則

(意思表示理論

の原則①)

に反

て本

の契

の成

を肯

たた

、代

理ん

当事

ど信

σ保

の問

が残

た。

のた

旧商

は代

への損

の請

可能

とさ

いる

だけ

であ

った

、現

四条

は、

の代

理意

った相

は代

対し

「履

の請

を為

こと

を妨

と規

(商法五〇四条但書)。

民法

は異

り本

の契

の成

立を

てし

ったが

に、相

手方

「代

理人

の間

の契

の成

」と

いう

頼保

が残

され

わけ

であ

(意思表示理論の原則①を復

活さ

せ、本人

との契

約関係を重畳的

に認めたというよりは、代理

人は履行責任だけを負担)。

かし

ば初

民法

のよ

人と

の間

に契

の成

め、

のみ顕

の修

をす

れば

いよう

に思

われ

るが

どう

て非

主義

の間

の契

の成

いう

こと

拘泥

しな

らな

いの

か疑

が残

ろう

エス

ルの敷

いた

レー

(それもイギリ

ス法そのも

のではない)

立法

に新

たな

レー

ルを付

った

であ

が、

どう

民法

一〇

〇条

は十

では

(1)

のか、

納得

いく

いる

は思

い。

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工ス

ルの時

民商

の調

十分

でな

いの

たし

いが、

行商

の時

(ちなみに、民法

は明治二九年、商法は明治三二年制定)、

民法

一〇

〇条

の解

が商

は十

では

いのか

を議

なけ

った

はず

であ

るが

民法

一〇

でも

十分

でき

よう

の特

殊性

が強

調

だけ

であ

(それもかならずしも納得

のいく説明

ではな

い妙

鍔)。

(1)

なお、代理

の問題を考えるにあ

たっては、代理制度

が認められず間接代理

(委任契約)だけ

であ

ったのが、代理

(直接代

理)が認められるよう

にな

って

いったのは、単

に本人の名

で契

約をすると

いう便宜だけでなく、そ

の背景

には、本

人の相手

レつ

方また相手方

の本人

に対す

る、直接

に自己

の名で

(な

いし自己の権利として)請求を可能

にすると

いう要請があ

ったことを、

ウ 蜘

この三者間

の法律

関係

の分析

のアプ

ローチには必要なことを考慮す

べき

である。

このことを気

づかせる素材

として英米法は

貴重である。

轟耕

ω

共通点

.相違占…の整理

こ・で民法

.商法

のそれぞれの処理の共通占….相違占{をま・めて検討課題を指摘

、・。

は以

のよう

であ

る。

(

「図

明示

の顕名

がな

ても

示的

に顕

がざ

憾むと

る場

には

顕名

の民

の下

でも、

があ

とし

の間

のみ契

の成

が認

めら

、代

等責

負う

こと

はな

(民法

一〇〇条但

書)。

た、

名主

いえ

、黙

でも

があ

の契

のみ

めら

にす

(商

法五〇四条但書

は適用

にならな

い。

なお、

いかなる場合

が顕名に該当するのか、署名代理

のよう

に本人の名を示す場Aロでもよ

5

のか

つい

ては

、本

稿

では

わな

い)。

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6

[…」

黙示の顕名がない場合でも、相手方が代理人の代理意思を知

っていれば、本人との間にのみ契約関係が認

められ、代理人の責任は認められない。このような扱

いが、相手方に過失がある場合にも認められるかについて

は、①民法では

一〇〇条但書で無過失も要件となっているので認められるが、②商法では五〇四条但書が悪意の

場合のみを規定しているので、過失がある場合については解釈により分かれる

(無過失を要求すれば民法と同じ)。

[]

ω

相違点

民法と商法の相違点は㈱①②以外の場合の規律という

ことになってくる。即ち、顕各がを↑か

つ相手方が代理人の代理意思を知りえなかった場合の法的処理において、民商法で解決が異なるにすぎないこと

になる。

民法におけ・処理

民法では代理人・の間に契約関係が認められ・里

本全

係甚

拠かむごど催でぎを睡。相手方が代理行為であったことを知

った後の相手方の保護としては、①本人との契約を

欲するならば、本人と相手方との契約により代理人を解放して本人

.相手方に契約を成立させる合意をすること

は妨げられず、それで+分といえよう。②また、本人

・代理人、代理人

・相手方の契約関係が成立するが、間接

法「

代理をめぐる法理により相手方さらには本人の保護が図られる

(・の占…は別稿で論ず・).但し、民法学説には、.・

の場合に相手方に本人との契約関係の成立を選択することを認める学説があること後述するようである

(妙

")。

[凹

商法における処理

商法では、五〇四条本文で本んど㊨附に築紛が庇立かむごどを削掛どレで、、代墨ん

にも履行請求ができることを規定している

(民法のように本文と但書が選択の関係に立つのではなく、商法五〇四条では、

本文の保護に更に但書の保護が付加される)。しかし、但書の趣旨については、単に代理人にも履行請求ができるだけ

なのか

(起草者の意思に合致し、文言にも一番忠実)、それとも、契約関係

の選択を認める趣旨なのか、更にはかなり

文言から離れるが民法と同じように代理人だけが契約当事者となるというものなのか、後述のように学説上争い

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があ

("

弼以

)。

こう

て、

いず

にし

ても

は、

の代

意思

を知

いこ

に過

い場

に収敏

る。

こで

に当

のど

のよう

問題

にな

のか

た、

のよ

いかな

る解

が妥

のと

のか

、考

みよ

う。

2

妥当な解決は

いかにあるべきか

匠卸

あ・べき妥当な結論三

冗員契約を例・して、当事者のどちらの側に本人が位置づけられ・かに一

分けて考

えてい・、フ.代理効が木口定され代理人と相手方との間の契約が認められた場A.には、結果とし

て間接代理と同じ

ことになるので・間接代理の議論に解消されるこ・にな蒐

甜こ

鞭(-)難擬讃灘講

論繁盛業繋藁縢鞭羅輪箏撫

藤浩先生傘寿記念

現代

民法学

の理論と課題』

(平

一四)二六三頁)。本稿は

これまでの研究

の延長

にある。

ω

本人売主ケース

「凹

相手方の債務-

代金債務について

Aの商品を代理人Bが顕名をしな

いでCに売却をしたという事

7

例で考えていこう。先に確認したように、相手方が代理人の代理意思を知らない場合が問題である。

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8

相手方の保護

一方で、相手方Cは代金債務については債務者たを地位に立つため、先ずCの弁済の

保護を考える必要がある。①本人との間に当然に契約を成立させれば

(妙非顕名主義)、代金債権者はAになる。@

CのB

への支払については民法四七八条による保護を図ることができるが、⑤それでは相手方CがBを契約当事

者と信じ、Bとの相殺を期待している場合には、民法四七八条では対応できない。◎また、相手方がBを債権者

と信じて行

った合意についても、同様である。これに対して、②代理人との間に契約の

(有効な)成立を認めれ

(顕名主義ベースの相手方保護)、Bを代金債権者としてなしたCの弁済や、BとなしたA皇恩は有効となる。

7

また・相手方cの保護についても・④代理σ妻

で管

を穰

を保葉

があ

が、

を知

った後

ついて

は、

と本

いず

債権

とす

か選

ても

いと

か、

も本

みを

権者

とし

て扱

べき

か、

いず

れを

のと考

は評

が分

かれ

こと

る。

の本

のみを

とす

立場

は、

の利

に不

の代

理法

よう

とす

るイ

ス法

の立

であ

n・、間

つき

な本

があ

ば、

意思

理論

の整

てま

のよう

に考

必要

はな

いこと

13に述

る。

本人の保護

他方で、顕名がされた場合であれば、本人と相手方との間に契約関係が成立し、本人は相

手方から代金を取得しえたはずである。代理人が顕名をしなかった場合には相手方の保護を考えなければならな

いとしても、代理が成立した場合と同様に、本んが確実に代金を取径でぎをよ・努に引む必要がみむ。というのは、

代理関係を認めれば、A鮎

Cの直接の代金債権が成立し、Bの債権者に横取りされる危険はな

いが、BC間に売

買契約の成立を認めB妙

Cの債権の成立を認めると、Bの債権者に代金を横取りされる危険性があり、このこと

から本人を保護する必要がある

(この問題意識がイギリス法の不開示の代理法理の出発点であることは28に述べる)。

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①もし、相手方と本人との間に契約の成立を認めれば、本人は直接に相手方から代金を獲得

できる

(畢非顕名主

義)。②しかし、相手方と代理人との間に契約の成立を認めれば

(妙顕名主義の例外を認めない)、先の疑問が当ては

まるが、この場合には結果として間接代理と同じになり、本人保護の適切な規律があれば問題はない。民法の

般規定により、本人は代理人が取得した債権を取得できる

(民法六四六条二項)。そのため、AC間に契約関係を認

かを↑でか本ん砂債権保護愉阻庁π、相手方の代理人との契約関係の成立

への信頼保護を優先させまた意思表示

の理論を貫徹しても、特に弊害はない.

相手方の債権について

目的物の裂

請求、引蓬

滞による損害賠償請求、暇疵

があ.た場合の損

つに

害賠償や修補

・代物引渡請求なども問題にはなろう。特定物の場合には履行の強制の問題があり、相手方として

義粧

は代理人では他人物売買になり増が明かないので、本人との契約関係を認め本人に履行請求できる.芝

が好まし

い。損害賠償については、相手方の金銭債権として次のケースに準じた処理が考えられよう。

麟綱

ω%

ついて

相手方としては目的物の引き渡しを誰にすれば責任を免れるのかとい垂

関係があるが、さらに、代理人を契約当事者として信じて行う免除などの合意についても、これを有効として相

手方を保護する必要がある。従

って、11以下のω㈲の議論がそのままあてはまろう。

「…巴

ω

相手方の債権について1

代理人への請求を認める必要性

相手方が代理人の代理意思を知らず代理

人を契約当事者と信じたがために契約をした場合には、相手方の信頼を保護し代墨ん

~外論求を認ぬむ必要がわ

 コ

へる。①

人と

手方

の間

に契

の成

てし

まう

(妙

非顕名主義)、

これ

できな

こと

にな

ので、相

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o

方保護のための特別規定をさらに用意する必要がある。②これに対して、代理人と相手方との間に契約の成立を

1

認めると、この問題は生じない。そして、もし代理人に支払能力がなくても、間接代理と同様

の法律関係になる

ので、民法六五〇条二項で代理人の本人に対する委任関係上の債権が認められ、目的物を取得する本人から相手

方は確実に代金債権の回収ができる仕組みにな

っている

(但し、民法六五〇条二項についての理解は一致していない)。

そのため、代理人の代理意思を知らなかった場合においても相手方に本人との間に契約関係を認めても、必ずし

も棚ぼた利益という批判はあたらな

いが、また逆に、相手方保護のために本人との間に直接の契約関係を認めな

ければならない必然性もない。

ところが、間接代理

・直接代理の区別を知らない英米法では、間接代理の事例にまで、不開示の代理を認めて

本人

・相手方の間に契約関係を認めることになり

(というよりは、間接代理についての救済法理であ

った可能性がある)、

本人が代理人に代金を支払ったが、代理人が支払不能になり代金を相手方に渡していな

い場合

に、本人が相手方

に二重払いさせられるリスクを負担することになる。英米法とは異なり、間接代理については別に適切な法理が

用意されていれば、間接代理には非顕名代理は適用することなくこの点は回避できるのである

(間接代理の法的解

決のために、直接代理も含めて不開示の代理法理により律する必然性はなく、間接代理については別の法理を用意するのが筋で

あろう)。

岡巴

ω

結論の妥当性以外の理論的検討課題

結論

の妥当性だけが法的議論のすべてではなく、代理理論や奮思表

示理論などとの理論的整合性といったことも考える必要がある。

[…凹

代理権+代理意思だけでよく顕名は相手方の利益保護のための要件か

代理効の発生

のためには、本人

側については代理権の存在及び代理人の代理意思に基づいた行為だけで十分であり、顕名というのは相手方を保

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護するための要件にすぎず、代理効を顕名という意思表示の効力と位置づける必要はなく、相手方が代理行為で

あることを知っていればよいという理解も考えられる。また、相手方が代理行為の事実を知らなか

ったが、知り

えた場合にも代理効を認めることが可能となる。

また、このような立場を突き詰めていけば、単に相手方に不測の損害をこうむらせないよう

にする保護を考え

ればよいことになり、顕名がなくても相手方が代理行為につぎ悪意または有過失ならば、非顕名主義を採用する

・とが可能な・とについて、理論的な纏

が可能となる.

意思表示解釈による当妻

の認定との関係

契約当薯

の認定も慈

表示解釈であり、顕名がなければ

つに

意思表示解釈の

一般理論では、行為者たる代理人が契約当.事者と認定されるものと考えられる。顕名とは、従っ

義駐

て、契

のた

必要

い・つ.・と

にな

り、

-

でも

いな

ないことになる。顕名なしに本人との契約関係を認めるのは、政策的な法定の制度という

ことになるが、安易に

ナ捌

このような最後の切り札を出すことが許されるのか疑問となろう。非顕名主義は意思表示理論に対する重大な例

に理

外を認めるものであることを改めて確認すべきである。

・て・問震

代理においては・の意思表示解釈の甕

論に例淋を認めてまで・相手方が善意無過失であ

ても原則として非顕名主義を採用する必要性があるのかということである。ωにおける結論の妥当性といった実

践的な

いし政策的な理由が、その必要性を根拠づける説明という

ことになろうが、相手方が善意無過失

の場合に

顕名主義の下でも妥当な解決が図られるどいうのであれば、二つの選択肢の二者択

一において非顕名主義の旗色

は非常に悪くならざるを得ない。

ユー

ω

本稿の提案11意思表示理論を重視した処理

以上のはしばしに述べたことから分かるように、私として

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2

は、この問題について敢乏て意思表示理論に反した特例を認めなければならな

いとは考えない。次のような解決

1

を是とすることになる。

]

代理効が生じるためには原則として顕名が必要

本人が契約当事者とされるためには、契約締結行為

をする代理人ではなく、別に存在する本人が契約当事者であることが表示されていることが必要である。そのた

めには、黙示的にでも顕名があればよく、契約の場所

(本人の営業所での契約など)など諸般

の事情から黙示的

(1

)

に顕名がされているものと認められればよい。黙示的にも顕名が認められない場合には、契約当事者は行為者で

ある代理人と認定搾

ることになる・そして・起草者の懸念した意思欠鉄により代理人との間

に成立したものと

、、

、、

る契

が無

にな

ので

はな

いか

いう

いては

、特

別規

く、

いて

表意

の錯

いて

の粗

再認

可笛

隈駆

でぎ

ょ・ナ

(意思表示理論

の原則②は問題

にならず・意

思表示理論

の原則①を適用し

てよ

い)。

、意

対し

て例

で実

よう

た本

の債権

つい

ては

接代

法一

き本人を保護するために不開示の代理とい・つ意思表示理論の例外を認めて打

つ必要はな

い.嬰

に禽

独自の解決法理を認めることができ、間接代理と直接代理とを区別しないで、委任者保護というために代理理論

また意思表示理論が破壊されるという

のは本末転倒であろう。そして、相手方が代理の事実を認識した後に、本

人との契約を欲したならば、本人と相手方の合意により両者間に契約を成立させ、代理人を免責すればよく、意

思表示理論を修正してまで本人との契約を法定の効果で成立させる必要はない。

例外を全く否定すべきではない

相手方が代理意思を知りまたは知りえた場合

黙示的にも顕名があ

ったとは認められな

いが、代理の事

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手方

が知

って

いる

は知

た場

(従

って、錯誤

の要件を充す場合)、代

の契

が錯

によ

にな

いう

相手

とし

ては本

の間

に契

の成

立を

ても

った

ろう

。そし

て、本

の効

果帰

られ

ても

か特

に利益

が害

いう

はな

(相手方を保護するために本人

に代理行為

の利益享受を否定したところを、元

に戻す

だけ

である)。

の点

で、

顕名

の原

いて例

があ

、相

が悪

の場

は主

観的

は意

いると

いえ

る。

て、

18

に述

たよ

るか関心を相手方としては有していなか・たような場合には・直裁に本人との契約関係を認め

ても不都合ではな

義粧

い.但し、・の場合には、本人が明らかになり権利主張をして-るまでは、代理人として行為した者と行

った弁

済等の行為を有効として相手方を保護する必要性は残される。従

って、このような場合には、例外的に本人から

ナ捌

主張があると本人との契約関係のみが認められるとする処理が考えられる。しかし、間接代理

の法理で十分に本

に理

人が保護されるのであれば

(民法六四六条二項、六五〇条二項、また私見では優先的ないし排他的代位権)、敢えてこの例

外は不要であ・・い・てもよい・

そうすると、本人の保護は間接代理の法律関係についての、適切な救済法理があればよく、代

理法理のレベルで

問題を解決する必要はないことになる。

この間接代理についての本人更には相手方を保護す

る法理については、

(2)

便宜上別稿で扱うことにする。

以上の結論を解釈論としてどう実現するかは、民法

一〇〇条と商法五〇四条を横断的に考察しなければならな

ヨー

い大きな問題である。あるべき方向としては、以上の結論にマッチするのは民法

一〇〇条であるため、商法五〇

うに、・の場合の代理効は理論的にも説明が可能肥である.

相手方にとり誰との契約かは垂

祝していなかった場A・

更には、意思表示理論として誰との契約であ

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4

四条

民法

一〇

=兀的

をす

べき

であ

る。

釈論

とし

のそ

のよう

の実

いて

は、

に提

をす

(

2

H>41)。

注(1)

ところで、「本

人が誰か」が大規模店舗の場合

には客

11消費者

には明確

ではな

い場合もある。デ

パート

の中の売場はそのデ

パート

の売場

のみならず、

ケー

ス貸しといって売

場を別

の業者

に貸して営業をさ

せている場所

が多く占められて

いる。

その

ような知識のな

い消費者

はデパートが経営して

いるも

のと誤解す

ることもありえよう

(店全体としての統

一がいろ

いろされ

ている)。そ

のため、判例

には、デパートのペ

ット売り場で買

ったイ

ンコがオウム病にかか

っていて、そのために買主

の家族

[

が病気になり死亡し

た事例

で、商法

二三条

の類推適用に基づきデ

パートに

「名板貸人と同様

の責任を負わなければならな

い」

とした

(最判平七

・一一・三〇判時

}五五七号

=二六頁)。

(2)

とりあえず、

10注

1にあげた文献参照。

論律法

3

立法の確認

ω

大陸法における顕名主義

大陸法では意思表示理論に忠実に顕名主義が当然視されているといえよう。フ

ランス民法と日本民法

一〇〇条がそれに倣ったドイツ民法の規定を確認するにとどめよう。

フランス民法

フランス民法

一九八四条

一項では、受任者は、「委任者のためまたその名で何らかのこ

を為

(δ℃。ロ<。冒αΦ建

ρ器

一ρロ㊦筈。。。①℃。ロニ

Φヨ㊤a

寒け暮

。。8

8

ヨ)」を

るも

のと

れ、本

の名

示す

は当

いる。

、本

は法

には

当事

とし

の資格

を取

るが

は、

の名

では

なく

、本

の名

取引

つ、そ

ことを

(相手方)

が知

って

いる場

のみ

られ

Page 16: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

(1)

(2∀

いと

いわ

いる。

こと

は当

れ、

ったく

ってよ

ほど議

がな

い。

フラ

ンス商

問屋

(8ヨ巳

。。。。一8

①)

の規

が、

いて

の特

い。

ω

ドイツ民法

委任と代理を分離しないフランス民法に従った旧民法を放棄し、現行民法は代理を委任か

ら独立させ総則に規定するドイツ民法の方式に倣った立法を行った。そして、

一〇七条二項の直接訴権の規定など

旧民法を引き継いだ規定が残っているものの、ドイツ民法

(当時草案)を参考にして新たに代理規定が導入されてい

る・

一。。条もその;

であり・ドイツ民空

山ハ四条

一項では・代理人は

・代羅

の範囲内で本人の名王

て卯

ユ㊦円子日

Nロの酔㊦げ。=ユ㊦口くσ詳円①θロロ四。。ヨ僧。げ⇔酔巨

Z㊤日①昌

匹①。。ぎ

円白目①e①冨①ロ)」行

つこ

の要

れは、黛

が認稔

前か幕

接代理

、(盟

、奮

、、麺

に認嘗

よ・み

、(霧

)、を区梁

かに・間接袋

も本人のためにするものである故に、本人の名において行・・とを要件とし

(3V

け肪

ドイツ民竺

六四条二項では、代理人の行為につき他人の名です

つ意思が認識できない場A・には、代理人に自

"解糟糠晶鋸強熱恥舞嚢蒼

海羅鷲無理謹嚇

した権利義務を間接代理の法理によりとして本人に転嫁できるので、代理人に対する救済策は存していると言わ

(5V

いる。

ドイ

ツ法

いて、顕

名主

が特

に問

題視

いな

いのは

のよう

があ

のと

いえよ

お、

ドイ

ツ商

八三

は問

いて規

た、

関係

いて

の商

規定

はあ

、商

の中

日本

四条

に匹

る特

(商事代理にも顕名主義

が貫徹される)。

15

Page 17: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

 1

(1)

隷δヨ①=話

∬甲

虫鼠

色①昏o界

。ヨ

一L①ω℃ユ9一℃窪

×8

9田富

。。忌9窪

×"お¢ρ

E

8

目。

(2)

○霧。・■門①ρ■一ω∋駄

目Q。りρ

Uμo。㊤ω回訓

α①刈は、買付け

の受任者が自己

の名で契約をした場合

には、その者が直接契約上の債

務を負担する

ことを認

め、但し、受任者

の委任者

に対す

る直接

の求償

は害されることはな

いことを認めて

いる。連鎖的売買

における暇疵担保

ついても、訴えられた者

が前

の売主を訴訟

に保証

のために呼び出すと

いう制度

があるよう

だが、そのよ

うな訴訟法的制度

により解

決されるのであろうか。

(3)

大西耕三

『代理の研究』

(昭三)六三頁以下参照。

(4)

民法

一〇〇条

の起草者富井博士

は、

一〇〇条と並

べてドイ

ツ民法

一六四条

二項を掲げ

(富井政章

『民法原論巻之

一総則』

(明三六)四九〇頁)。

(5)

大西

.前掲書

(注3)七〇頁。なお、本稿で既出

の出典

についての表示

であるが、単に

(注

3)という場合

には、同じ並

の注

の意味であり、それ以前

の並び

の注

については注

の前

の本文

の通し番号を表示する。例えば

(10注

1)と

いったよう

に。

論律

ω

英米法におけ・不開示の代理

は、・イツ民法

の雪

に訴訟法の完全分離が行われてい三

・い

う点も考慮しなければならな

いが、非顕名主義と評価される法理を採用しているものと評価されてい荷鴨不開示

の代理といわれる法理である

(隠れた代理、非顕名代理などとも訳される)。

英米法は、代理法のヨー

ロッパでの展開の影響をほとんど受けることなく、判例によ

って固有に形成され、方

法論的に具体的生活関係に即したものであり、代理の発展に際しては商取引の実用的な諸考量

がされ、体系上の

限界付けや教義学的な原理原則による理由づけはどうでもよかったといわれ、

ヨー

ロッパ大陸法の間接代理と直

(2

)

接代

の峻別

は、

米法

では

の対

を有

いも

のと

いわ

る。

て、

「非

顕名

の法

は非

に多

み、典

型的

判官

(-・)

であ

・て・

これを

の法

にま

めあ

こと

は適

い」

と評

い菟

Page 18: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

注(1)

英米法

における隠れた代理な

いし不開示の代理法理を紹介す

る文献としては、樋

口範雄

『アメリカ代理法』

(平

一四。初出

「アメリカ代理法のイ

メージ」法協

一一七巻二号

(平

一二)一=

頁以下)、田中英夫

「d昌臼。。⊆o。。Φ自℃『ぎ。督巴」同

『英米法

研究3英米法と日本法』

(昭六三)

一八

】頁以下

(初出は、『英米

私法論集』

(昭三八))、神崎克郎

「商事代理における非顕名

主義」神戸法学雑誌

一五巻二号

(昭四〇)二九四頁以下)、小林佳雄

「イギリ

ス法

における不開示

の代

理と日本商法

におけ

非顕名主義」関西大学大学院法学ジャーナル六四号

(平四)五九頁以下、島田陽子

「英米法

における代理基礎理論」法と政治

五〇巻三

・四号

(平

一一)二三五頁以下、などがある。

(2)

ュラーフライ

エンフ

ェルス

・奥田昌道

「英米の代理法と

ヨー

ロッパ代理法

の乖離

と接近

の諸相

ω」法学論叢

=

=

一号

一一頁

(昭六二)。

へ仙

(3)

ュラーフライ

エンフ

ェルス

・奥田昌道訳

「英米の代理法と

ヨー

ロッパ代

理法

の乖離

と接近

の諸相

②」法学論叢

一二

一巻

三量

(昭六三

粧顕

イギリスにおける不開示の代理法理

イギリス法における起源

イギリスにおいて代理はコモンロー上認められないものであ

ったが、相手

こ理

方は本人の存在を知

っていたか否かにかかわらず、直接本人を訴えることはできず、代理人に訴えを起こすこと

ができるだけで萱

代理人は後に本人に対して弁済を要求す…

にな二

つの訴訟を招き時間と費用の浪

であ

った。

の後、

に、

ロー

では代

理人

て本

と相

の間

で契

しう

にな

そして・不開示の代理が裁判上最初に是認されたのは・

四三年の。・9ヨ.・豪

く.≧婁

8

巡回陪裏

判に

いて

であ

、代

(間接代理と直接代理を区別しな

いので、代理人と呼んでよ

いのかは疑問はあるが)

によ

って商

れ、

の支

を隠

た本

が相

に求

て訴

た事

であ

る。

が破

が相

 1

に代

への支

いを

いよ

に注意

にも

わら

手方

が代

に支

いを

てし

った

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8

に問題とされた。ピ8裁判官は本人と相手方の間の売買契約の成立を認め、本人の請求を認容したものといわれ

(2)

ている。これを見る限り、この法理の起源は、相手方保護ではなく不開示の本人が相手方から給付を受けること

を確保することにあ

ったといえようか。

GD

不開示の代理法理の根拠

不開示の代理法理という契約上の権利義務に関する法

一般的アプ

ロ!

(3

)

(4

V

チと矛盾する法理を説明するために、いくつかの創意にとんだ理論が提唱されてきたといわれる。①不開示の本

人を信託受益者として扱い、本人と代理人との間の関係を受託者と信託受益者との関係として、

エクイティ上の

(5

V

決を

める

明、②

の代

理を

}類

と考

(契約譲渡になろう

か)、不

の本

が黙

々の

権利霧

を代理人から譲曼

けて・自ら訴えたり・相手方から訴えられたりすることができるさ

つにな確

た説明である。

しかし、いずれも説明として成功しているとは評価されておらず、最近では、不開示の代理を、訴訟循環を回避

するエクイティ上の合理的な解決方法であるとも説明されているが、楓本的を理由ば、、、断恥弥でσ優称ざL、に

:

(7v

:

:

、:

:

、:

、:

、:

:

:

あるようである。その商取引の便利さということであるが、本人が相手方から対価を得る前に代理人が破産した

場A口に、通常の契約法理を適用すると、不開示の本人が相手方に直接請求できな

いので、「代現ん㊨

「般債権巻に

配当される資産を膨らませるという不開示の本人にとって不当な結果を招く恐れがあるが、不

開示の代理の法理

を採用することにより、不開示の本人を訴訟参加させ、当事者間

の利益状況に遭った妥当な結果を導き出せるの

(8)

である」といわれる。

これが正しいとすれば、不開示の代理の法理は理論的な研究の成果ではなく、腎接代理外事働に朴レで本んを

保護する適切な法理がなかったイギリス法において、本人の利益を保護するための結論の妥当性を模索した苦し

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紛れの法理であ

ったといえよう。従って、わが国において、商取引の特殊性から非顕名主義を

正当化しようとす

ることは反省を迫られるべきであり

(餌以下参照)、受任者の委任事務処理上取得した権利を委任者が取得できた

り、直接訴権などの法理で間接代理が解決できれば済んだ問題である。従

って、これが不開示の代理法理の存在

理由であ

ったのだとしたならば、わが国では、10以下の問題につき妥当な結論が間接代理で導

き出せる以上、導

入の必要性はなか

ったものといえようか。

不開示の代理法理の帰結としての本人の二重払いのリスク

間接代理であれば、本

・代理人間に契

-

約関係が認められるため、本人が代理人に代金を支払

ったような場合に、本人は免責されるが、本人

・相手方に

つに

直接の契約関係の成立を認めるとそれは無効になり、本人は代理人が破産などしてそれを相手方に渡していなけ

(9)

れば、代金の二重払いを強いられる・とになる.本来の間接代理にまで、不開示の代理法理を適用すると・のよ

うな不都合があるが、大陸法的には間接代理の場合には本人を契約当事者とするという代理意思がないので、不

ナ捌

開示の代理法理を導入しても、間接代理は間接代理として別に規律されるのでこの点の不都合は回避できる。

ω

①δ。註8

について

契約当時、相手方が代理人との契約であると信じていた場A口には、相手方

(第三者と

耀

英米法では表示される一

ある)は黛

んに馨

本人が明らかにな・た後に一

を相手方がなしうるが、相手方が代理人と本人のいずれか

一方に対して自らの権利を放棄したことを明らかにする

必要があるといわれる。そして、「結局、イギリス法の不開示の代理に於いても、アメリカのそれと同様に㊦δ。島8

の法理が行われているが、

一般に紹介されている如く、『第三者が責任を追及する場合、二個の債務が並存する』

わけではな

い。なぜならば、第三者に対する第

一次的な責任は代理人が負わなければならないので、第三者が代

 1

理人に対して自らの権利を放棄したことを明らかにして本人に対する責任を追及することを選択しない限り臨本

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(10

V

O

人が責任を負わされることはないので、二個の債務が並存することは理論上あり得な

いからであるLといわれる。

2

第三者

(相手方)

の不測の損害は回避されている

①諄

口が行われるまでは、本人が相手方を訴え

たり

をす

とは

でき

い。

の契

の成

、不

の代

いても

三者

(相

)

に不

の損害

ことを

いる

から

であ

る。

人以

の者

が契

に介

こと

が許

れな

い場

に、

の本

の訴

訟参

と相

に不

の損害

を与

こと

から

であ

る。

し、

不開

の本

人を

場合

に、

が責

ると

のも相

に不

の損

を与

る恐

があ

ので、

択権

め、

に不

の本

を拘

せる

こと

り相

(11)

の保

って

いる

こと

る。

(1)

・前掲論文

(27注

1)二五三頁以下。

(2)

島田

・前掲論文

(27注1)二四

一頁による。

一入世紀には、信用取引の発展と共

に、間接代

理よりも直接代理が用

いられる

融・

霞陰縫難

硬雛縮縫理確雛蟻辞搬癖鯨鷺

燃蹉訴

セイ子

「英米

の代理法

の研究

(二)」法学論叢入五巻四号

(昭四四)二六頁)。

(3)

この法理については、

ハー

バード大学

}ヨ①。・教授が、初

めて理論的正当性を問題とし廃止を唯

一唱えたも

のと

いわれてい

(島

・前掲論文

(27注

1)二四七頁)。

(4)

小林

・前掲論文

(27注

1)六二頁参照。

(5)

・前掲論文

(27注

1)二四七頁以下参照。代金債権も信託財産なので、代理人の債権者は差し押さえられな

いことに

なろう

か。

(6)

・前掲論文

(27注1)二五〇頁以下参照。

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(7)

・前

掲論

(27注

1)

二七

一頁

によ

と、

英米

は、署

はさ

ど重視

せず

、損

や利

に着

て、関

当事

に、

いか

にし

て正義

、あ

いは、

るか

いう

こと

に重

いて

いたと

いわ

る。

(8)

・前

(27注

1)

頁。

(9)

・後

掲論

(27注

1)

頁以

照。

(10)

・前

(27注

1)

頁。

中教

や神崎

の債

つあ

のよ

な紹

る。

(11)

・前

掲論

(27注

1)

頁。

メリ

カ法

では

相手

(第

三者

)

いか

る権

か、

た、

(第

)

が訴

る相

手方

いて議

があ

(樋

・前掲

(27注

1)

一七

)。①多

の州

では、

択義

ルー

ルを認

、第

三者・本

人・袋

のどち・か

一方・

か濃

できな

・.但・、代理を知・ず袋

入・対す・判決を得・後・、代理人が響

で満足を得られなか

った場合

であれば、そ

の時点

で判明した本人に対し

て改めて訴

えることができると

いわれている。②

いつ

少数

の州では、判決としても本人と代理人とを並べた形で出す

ことができ

ると

いわれる。判決に基

づきどちらにも強制執行

でき、

・ず

れか

の饗

のリ

・クを回避

できる.最近の傾向は

・ちら

・好意的

であると

いわれる.

粧纐

日本法

への示唆

英米法

のわが国の議論

への示唆としては、評価が分かれていると

い・てよい.先ず

これを商法五〇四条の母法としてどれだけ評価するか、また、わが国の私法ないし取引法の下での解釈論上の評

こ型

分け

とが

でき

よう

↓図

イギリス法研究の意味についての評価

民法

一〇〇条については、既述のようにドイツ民法

(草案)に

ったも

のと

ってよ

いが

、商

〇四

いて

(むしろ五〇四条但書)、

述す

るよ

起草

はイ

ス法

たも

と説

いる。

の意

で、

草者

が導

よう

たイ

ス法

の理論

のよう

なも

であ

った

か研

こと

は、

のあ

であ

る。

それ

によ

、①

一方

で、

ス法

と商

四条

の差

され

、②

どう

イギ

ス法

で不

が要

のか

の根拠

が商

ユ2

いて説

明さ

いる

根拠

づけ

と同

か、

て、

の根拠

づけ

がわ

いる

のと異

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2

のだ

たら

が国

いてそ

のよう

本当

に必

のか

(また、イギリ

ス法

と異なるわが国

の商法五〇四

2

条に

ついて

の根拠づけが妥当なのか)、

の課

明ら

にさ

から

であ

る。

これを

討す

とな

、.イ

を解

釈論

とし

て無

に導

入す

こと

べき

であ

る。

 α

ス法

と商

四条

の差

ス法

と商

四条

は次

のよ

と指

(1)

る。

いず

も運

用上

の差

り、

には

の根

ついて

ス法

と商

四条

の説

が大

こと

は後

相違点・

イギ・スの不開示の代理は・代理人が本人のためにすることを契魂

結当時に明らかに茎

相手方もこれを知らずまた知ることを得なか

った場合にのみ適用されるが、商法五〇四条は、代理人が顕名をし

なくても、相手方が勇

む棊

ごどを知駆劇存

知駆得だ掛合に劇毒

屠ざ拓脊

相違点2

イギリスの不開示の代理では、代襲んが

「拠的に相手方に朴レで権利を役・、義勝を葺抵かを

が、商法五〇四条は、本人が契約当事者として第

一次的に直接相手方に対して義務を負う。これはイギリス法と

の大きな差であり、イギリス法の取り扱いを配慮し、それをドイツ法律行為論と調和させようとして商法五〇四

(2

)

条の規定を設けたと理解するものもある。

相違点3

イギリスでは取次と代理との区別がされておら麗

日李

は他方・代理と取次ぎとを区別し・

(間接代理)

は商

四条

は適

にな

い。但

、イ

ス法

でも、

具体

は取

と代

は微

に判

が違

ってき

てお

り、

ケー

では本

二重

いさ

った

が、

不開

示代

は二

が容

いる

いわ

いる。

解釈論としての評価

Page 24: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

解釈論としての積極的評価

小林佳雄氏は、商法五〇四条につき、明治期の立法者が、イギリスの不開

示原則の法理をドイツ法律行為論と調和させようとして同条の規定を設けたことを念頭に置いて、イギリス法を

参考にして解釈をする必要性を強調し・また・実際にイギリス法を参考にした解釈論を展開す瓠.(善

田中誠二博士が、民法の顕名主義と商法の不開示の代理法理は、原則

・例外というよりも異なる原理であると

いった旨の主張をしているが

(後述)、英米法の研究からそれを後押ししょうとする見解もあ

る。それによると、

}

商法規定を民法上の代理の例外と見るのは正し-ない..英米の隠れた代理は、隠れた本人相手方間の契約関係を

てい

発生させるという直接代理的側面と、代理人相手方間に契約関係を発生させる間接代理的側面を、併せ持

つ代理

であ

いう

でき

って、

〇四

の代

は、

の代

は全

く異

のであ

ると

(5)

えるのが蕩

である・といわれる.

解釈論としての消極的評価

学説には、英米法を持ち出すのは唐突であるとい・た批判的な評価もある.

(6V

のよう

に述

べる

こ理

「本

を意

と無

のも

とし

て、

の根

とし

て英

米法

のは唐

コモ

・ロー

源の諸原則嫉

高度取引社会から生成したものではない可能性が強いか皇

較法においても慎重な豪

必要

」。

本稿の評価

先ず、不開示の代理法理が、間接代理について本人

(ないし委任者)を救済する適切な法理

がな

いイギリス法において、本人保護のために生み出されたものであり、間接代理まで含むが故に本人の二重払

いのリスクを負担させることになること、また、不開示の代理法理自体が多様なものであり、実体法を純粋化し

ヨ2

た日本法において単純な規定に実現できるものではな

い点で問題がある。何度も述べるように、イギリス法でも

Page 25: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

4

意思表示理論からいって問題があることは気がつかれており、そのような不合理を容認してま

で実現しようとし

2

た本人保護につき、間接代理と同様の法律関係になっても本人の保護

(また相手方の保護)が十分に可能なのであ

れば、敢えて意思表示理論ないし代理理論に混乱を生じさせない方法での解決がされるべきである。その意味で、

選択肢としてはイギリス法を選ぶ必要はない。更には、後述するように、必ずしも商法五〇四条はイギリス法の

正確な導入ではなく、擬似イギリス法ともいえるような立法にすぎないものである。

小林.前掲論;

注-)δ

八頁以下の指摘に幾

(2)

森本滋

「商法五〇四条と代理制度」『現代私法学

の課題

と展望

中』

(昭五七)二九四頁。

(3)

前掲論文

(押手

)二七

、大塚龍児

.問屋の委託実行行為

により生ずる法律関係の響

…から見た・。・・轟

の法理」

『現代商法学の課題下

一二}=

(昭五〇)も参照。但し、本人

・代理人間

で本

人の名で契約をするか、代理人の名で契約

をす

るかいずれと合意して

いるかは区別できる

はずであ

り、前者の場A口に顕名がされなか

った場合も後者

と効果

の点で差

いというだけ

である。

(4)

小林

・前掲論文

(27注1)

一〇二頁以下。

(5)

・前掲論文

(27注1)二七

一頁。日本

の代理理論

の方向性に

ついて、英米法的観点

から検討し

て行き

たいと

いう

(同二

七三頁)D

(6)

小島康裕

「商行為の代理と代理人に対する履行

の請求」

『商法

の判例と論理』

(平六)}=

頁。

[幽

その他の立法等

英米法と大陸法との接点を持

つような立法をいくつか参考のために見ておこう。

一九入三年ジュネーブ草案

一九入三年二月

一五日にジュネ!ブでの外交会議で可決された草案は、次

(1

)

のような内容であるといわれる。

}二条は直接代理の原則を確立し、相手方は、代理効が生じるためには代理人として行為したことを知ってい

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か、ま

は、

知り

べかり

こと

を要

る。

かし

、諸般

の事

ら、

とえ

問屋

に関

て、

理人

のみ

を拘

よう

と欲

いる

こと

が判

る場

であ

規定

こま

は大

を承

いる。

これ

に続

=二条

は、

英米

念も

よう

いる

は、

が代

が代

とし

て行

とを

た、

ったと

は、

とし

て代

だけ

が相

に対

て拘

る。

イろ三

ル代理法

六五年七旦

三・のイスラエル代理法は、起草に協力した・↓

ッパ及びア・

リカの諸国から移住してきた法律家達の比較法的知識を利用した妥協的産物であるといわれ、次のような規定で

(2)

義駐

.もし行為の時占…で相手方が代理の.・とを全斎

らず

または本人の里

性を知らなかった場A・には、代理人

の行為は、本人と代理人とを連帯債務的に義務づける。しかしながら、権利者となるのは代理人だけである。そ

ナ謝

れでも本人は、相手方との関係で代理人が有するすべての権利を承継することができる。ただし、承継が権利の

に理

性質もしくは緒要件の上から、または詳細な緒事情からして権利と調和しないときはこの限り

ではないL(イスラ

エル代理法主

注(1)

ュラー

フラ

ンフ

ェルス

・奥

・前

(27注

3)

「②

・完

一四

頁。

ら原

確認

いな

い。

(2)

ュラー

フラ

ンフ

ェルス

・奥

・前

(27注

3)

「②

・完

一五

によ

る。

5

旧巴

ω

日本民法の規定

この問題に関する民法規定を先ず確認しておこう。

2

民法九九条

「代理人力其権限内

二於テ本人ノ為メニスルコトヲ示シテ為シタル意思表示

ハ直接本人二対シテ

Page 27: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

其効力ヲ生ス

26

②前項ノ規定

ハ第三者力代理人

二対シテ為シタル意思表示二之ヲ準用スL

民法

一〇〇条

「代理人力本人ノ為メニスルコトヲ示サスシテ為シタル意思表示

ハ自己ノ為

メニ之ヲ為シタル

モノト看倣ス但相手方力其本人ノ為メニスルコトヲ知り又

ハ之ヲ知ルコトヲ得

ヘカリシトキ

ハ前条第

一項ノ規定

ヲ準用ス」

[幽

旧民法

旧民法では財産取得篇の第

=

章が

「代理」と表示されているが、代理と委任を区別しない

フランス民法に従・た立法であり・ボア・†

ド草案の一

§

委任)の訳であるといえさ

顕名に関して旧

民法は次のよ・γな規定を置くのみである。

旧民法二二九条

「①代理ハ当事者ノ

一方力其各弥朕デ其称益ゐ為刃莇ル事塗行かユト引他ノ

一方

二委任

スル

契約ナリ

②代理人力委任者ノ利益ノ為メニスルモ自己ノ名ヲ以テ事ヲ行ウトキ

ハ其契約

ハ仲介ナリ」

点線部はフランス民法

一九八四条

一項とまったく同じであり、この点についてフランス民法を修正しようとし

た趣旨は全く窺えない。

偏巴

ω

現行民法

の起草過程

法典調査会民法議事速記録

(商事法務研究会

.日本近代立法資料叢書1』二六頁以

下)によると、民法

一〇〇条は原案

一〇

一条であり次のような規定が提案されていた。原案では現行民法

一〇〇

条但書が規定されていない。

法典調査会原案

一〇

一条

「代理人力本人ノ為メニスルコトヲ示サスシテ為シタル意思表示

ハ自己ノ為メニ之

ヲ為シタルモノト看倣

ス」

Page 28: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

(1)

起草

規定

の原

を担

た富

起草

が次

のよ

明す

る。

「他人の代理人とし

て為す意思を表

示する事を怠

った場合には、縦令自己

の為めにする意思

がな

いにしても、〔代理人は〕其

意思表示

に拘束

されると云う事

に規定す

るのは実際甚

だ必要

のこと

であろうと考えましたのであります」「他人

の代理人として

為す意思

の表明の無

い場合は、唯直接に本人

に対し効力を生ぜな

いと云う丈け

では足りな

い、第

三者

に取

って

〔代

理人が〕自

己の為

めに為したるも

のと見

るのは当然のことであ

ろうと思う。然るに其第三者に対し

て代理人が何ん

の責も負

わな

いと云う

事であ

っては実際

に甚だ弊害

があろうと思

います、夫故に本条

の規定を置

いたのであります」。「『自己の為めに』と云う

のは自

己の利益と云う

のではなくして第三者に対する責任を定めたのであります」。

岡巴

磯部四郎

の修正案

磯部四郎は修正案として、「代理人力本人ノ為メニスルコトヲ示サ

スシテ為シタル意

a

思表示二葉

其重

一隻

Lという提案をす苑

これに対して・圭

寧は・実際はそれは原基

9

条と同じ・とになるのではないかという疑問を提起するが、磯部四郎は・れに対して、・自己・為・二之ヲ為シタ

名頭

ルモノト看倣スLというのは語弊があるとして、意味が同じでも修正案の方が適切であると反論する。しかし、こ

る甜

の修正案は決により賛成少数で否決される。

ぼ幽

村田保の修正案

一〇〇条

(現行九九条)で本人に効力が生じるた劫には

「本人ノ為

メニスルコトヲ示

テL

いう

こと

が要

であ

こと

が明

にさ

おり

一〇

一条

一〇

で裏

から

いる

で、

(3

)

一〇

】条

は蛇

あり

べき

であ

いう

が出

る。

これ

に菊

成す

る。

これ

に対

て、

次郎

は、

一〇

一条

は代

の責

を規

のであ

「自

の方

ら履

むる

云う

こと

は(4V

許さぬが宜しい唯第三者の方から代理人に向て履行を求むることを許して置いた方が宜しいと思います」という。

この削除説も決に付されて賛成少数で否決される。

27

その後の但書の追加

その後原案にはなかった但書が現行民法

一〇〇条には追加され

るが、どのような

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(5)

8

経緯で但書が追加されたかは明らかではない。明治二七年整理案第二号にはまだ但書は付されていない。明治二

2

(6)

九年

一月配布

の民法修正案で、但書が括弧書きとされて追加されているが、それに至る議論は不明である。

注(1)

『日本近代

立法資料叢書

1法典調査会民法議事速記録

一』

(商事法務版)

二六頁以下。

(2)

『日本近代立法資料叢書

1法典調査会民法議事速記録

一』

(商事法務版)

二九頁。

(3)

『日本近代立法資料叢書

1法典調査会民法議事速記録

一』

(商事法務版)

三二頁。

一・

籍雛購難

民懸

難語

乳纏

恥四百岱

(6)

『日本近代立法資料叢書15民法修正案』

(商事法務

版)

一五頁。

岡巴

日本商法の規定

まず現行商法の規定を確認すると次のようである。

商法五〇四条

「商行為ノ代理人力本人ノ為メニスルコトヲ示ササルトキト錐モ其行為

ハ本

人二対シテ其効力

ヲ生

ス但相手方力本人ノ為メニスメコトヲ知ラザリシトキ

ハ代理人

二対シテ履行ノ請求ヲ為ス

コトヲ妨ヶス」(原

案では

「為スコトヲ得」)

鳳巴

旧商法の規定

ロ.エスレル草案

現行商法五〇四条

の規定は、ドイツ人ロエスレルの起草した旧商法の規定にまでさ

(

かのぼるが、現行商法

の起草に際して但書が追加されたという修正がされている。まず、旧商法の原案を起草し

たロエスレルの草案は次のようであった。

ロエスレル草案三九五条

「代理人本人ノ為

(明カニ本人ノ名義ヲ以テスルト否トヲ論セス)為シタル商業

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取引

二付テ

ハ本人

二対シテ直接

二権利義務ヲ受クル者ト

スL

ロエスレル草案三九九条

「代理者他人ノ為メニ商業取引ヲ為シタル場合

二於テ、若シ其相手方自己ノ過失

アラスシテ其代理タル事実ヲ知ラス又本人ノ何者ナルヲ知ラサルトキ

ハ、其相手方

ハ代理者

二於テ契約ヲ履行セ

サルカ為メニ生シタル損害ヲ該代理者

二対シ要求スルノ権利アル者トス」(

1)

のよ

規定

いた理

は、

ロエ

スレ

によ

ば以

のよう

であ

る。

「其

の人抑

の事

らず

だ其

の取

と信

は、

みれ

「契

に非

るな

」。

「契

に必

る人

の同

を欠

ばな

」。

「主

〔11本

其契

つに

自己に関せざるを以て其権利を得ず、代人も自から之を得るの意なかりしが故に亦た同じく其権利なし」。このよ

義粧

うな場合には、.其取引を取結びたる人は代人に対して璽

.を償わしむるの権あり.如何となれば其契約の無効に

帰したるは代人の罪なればなりL。しかし、「交易上に於ては双方共に悪意を以て為したるに非

ざれば、此取引を

ナ捌

許すを以て習例とせり。故に初め代理を明託せざりしと錐も後に至りて之を許諾することあるべし。然し若し代

に理

人に犯戻あるに於ては、自ら其責を負わざるべからざること勿論にして

(第三九九条)、此場合に於ては相手方其

取引を結びた・の代人に対して有す・所の弁償要求権を同至

人に施及す・を得…

あ条

条の原則は・

のよ

場合

にも

る。

かし

らな

った

手方

に損

はな

い。

の法律

(スミ

スの名を援用)、相

手方

は本

に対

て義務

とが

が、先

に対

て責

いる

が、

が契

の権

なく

て義

のみを

のは当

ので

はな

い。

明確

はな

いが、

の契

も代

の契

(不成立との区別が+分

されて

いな

い)

せず

 2

に、本

によ

り本

に契

せ、三

九条

によ

に損

賠償

づけ

たと

いう

のと

いえよ

Page 31: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

これ

がイ

ギ.リ

ス法

を採

用し

たも

のだ

一言

って

いな

い。

ろイ

の学説

を排

いる

であ

(イ

30

ギリ

ス法で不開示の代理が認められるに至

った理由

は、

このような意思表示理論によるも

のではなく、本人

の保護という実践的

(2)

な考慮

であ

った。そ

の意味で、英米法の不開示の代理とドイツ法律行為論.とを調和

させよう

としたも

のであると

いう評価

は、正

(3)

鵠を

ついている)、

かし

は相

に酷

であ

で相

を保

たも

であ

る。

↑り

旧商法

そして、明治二三年商法典

(旧商法)は、第六節

「代理」において次のよう

に規定を置いてい

旧商法三四二条

ダルト百獣

任者ノ為二代理人巌

結ヒタル商取引二因リ委

任者

ハ直接二第三者

二対シテ権利ヲ得義務ヲ負ウ」

(ロエスレル草案三九五条)

旧商法三四五条

「代理人力他人ノ為メ商取引ヲ取結ヒタル場合

二於テ相手方力自己ノ過失

二非スシテ代理ナ

ルコトヲ知ラス又

ハ委任者ヲ知ラサリシトキ

ハ其相手方

ハ委任者ノ不履行

二因リテ被

ムリタル損害

二付キ其代理

(4)

二対

賠償

ヲ求

ル権

リ」

(ロエ

ル草

九条

)

エス

ル草

の表

の翻

訳を

であ

当時

の注

エス

レル

の説

ぼ等

(5)

ものである。岸本は次のように説明をしている。

本条は、「代理人其人を以て直ちに本人なりと思惟せし場合に付ても亦た規定せしものとす。即ち代理人が単に

自己の名義を以て商取引を取結びしときに於ても猶お其取引は委任者と相手方との間に直接の関係を生ずるもの

と為せしなり」。本人

・相手方間は

「合意なきを以て契約の成立するものに非ず」、代理人

・本人間は代理人に契

約をする意思がないため

「合意の存する理由なしゆえに此の如き取引は法理上無効たる可きも

のの如し。然りと

錐も商業上に於ては其巳むを得ざるものあるを以て、彼等に悪意ありしに非ざる以上は此取引を許すを以て慣例

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とす。是れ本条が単純の理論に拘泥せずして其互に相知らざるを双方間に直接の効果を生ぜし

むる所以なりL。

注(1)

日工スレル氏起稿

『商法草案上巻』六〇

一~六〇

二頁。日工スレル氏起稿

「商法草案契約之部』三

一五頁以下も内容は同じ

であるが、

訳が異なる。

(2)

森本

・前掲論文

(40注2)二九四頁。

(3)

司法省

・ロエスレル氏起稿

『商法草案上巻』六〇

一頁以下。

(4)

『日本近代立法資料叢書

17法律取調委員会商法第二読会会議筆記』

(商事法務

版)三七頁

では、本条は全く議論

されてい

い。

いつ

(5)

岸本辰雄

『商法正義第

3巻』

(信山社復刻版)三〇七一三〇入貢。

隷駐

ω

現行商法の起草過程

現行商法五〇四条は明治三一葦

新商法典制定以来不変の規定

である.明治三二

年新商法では二六六条であ・たものであり・昭和

一三年の改正により委

番号が繰り下げられているが・内容の

けお

いな

い。

旧商

の三

四五

但書

て合

よう

な規

であ

つ、

旧商

轄謙縫鹸翼潮解脈撃薮卸羅癖鶴駕籠額羅裂縫

に、

「為す

こと

妨げ

ではな

「為す

とを

得」

とな

って

いた)。

起草理由

商法修正案参考書では、本条の起草理由として次の考

に説明されてい弱㌧

商行為に民法

一〇〇条を適用することは

「極めて不便なるを免れず、故に本案は既成商法に倣い特に新民法と

反対の主義を採り、商行為の代理人が仮令本人の為めにすることを示さざるときと難も、其行為は当然本人に対

31

して其効力を生ずべく、相手方の知不知を問わざることを規定したり。其他本条但書の規定は既成商法中に存せ

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32叢

ざる所なりと錐も、其本人の為めにするものなることを知らざりし相手方をして必ず本人に対してのみ請求を為

すべきものとせば、之が為め非常の損失を受け結局商行為の実行を阻害す

べきを以て、本案は二三の外国立法例

に倣い本人の為めにするものなることを知らざりし相手方は代理人に対しても亦履行の請求を為すことを得るも

のと為したりL。

ここでの

「二三の外国立法例」が何かは明示されていない。但し、法典調査会第五九回商法委員会議事要録に

(3

)

と、

「英法

の主

に倣

いた

のな

され

いる。.明治

の新商

は、

一八

一年

ツ旧商

が、

ツ旧商

は商

四条

に該

当す

る規

はな

い。

た、

一入

のド

ツ新

、従

って現

も同

の規

存在

しな

い。

し、

エス

ルが

いた英

ここ

で参

(というよりも、英米法を参照した旧商法典が参照された)

こと

は疑

いな

い。

田中

二博

によ

ロエ

レル草

で遡

のこ

とを

にじ

、「商行

一般

に関

る商

独自

の原

て、非

(4)

則を

のであ

る」

いわ

いる。ま

た、

「旧商

は元

民法

によ

補充

せず

鎖完

のと

て起

ら、

に民法

と反

の主義

を採

にな

った

にす

い。

つま

り、

が大

の顕

(…

)

を採

った

のに

、商

むし

ろ英

法系

の非

(…

)

に着

が窺

(…

)。

ば、

民法

規定

は別

に商

独自

の原

て解

べき

であ

る」

いう

原案

に対

ては

、富

より

「代

て」

いう

のを

「代

に対

ても」

と修

こと

(梅が

(5

)

賛成)、穂積

によ

、「為

こと

を得

いう

のを

「為す

こと

を妨

げず

いう

が出

され

た。

現行

では

の修

が採

いる

。「代

に対

ても

「も

」を

、本

・代

いず

に対

ても

とを

しょ

正案

が採

った理

は、

はな

い。

Page 34: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

起草理由説明の評価

内池教授は、「しかし本条立法の直接のねらいがどこにあ

ったのか、民法の原則を

商行為に適用して生ずべき不便

・不都合とは具体的に何を指すのか、本人

・相手方の利益調和をどこではかるの

(6V

か等の諸点は、この理由説明でも判然としない」と評している。商法五〇四条の立法趣旨の理解として学説が

般に説明している内容が妥当なものかについては、後述するところで説明するが

(與以下)、そこで述べるように、

起草趣旨にあげられているような商行為の特性による理由づけが合理的なものか疑問視するのが近時の学説の傾

向であるといえよう。後述するように、商法典の起草に当た

った梅博士が非顕名主義を絶賛し

ており、可能なら

ば民法にも導入す

べき意図で有

たことが窺われ・せめて商法において非顕名嚢

を導入しようとした可能性が

つに

り、

の調

が十

には

考慮

たも

のか

は疑

が残

る。

義主名

..'

(1)

『日本近代立法資料叢書

19』(商事法務版)三五五頁。なお、現行商法

の起草委員は、梅謙次郎、岡野敬次郎、田部芳

の三

であり、加整

治と志田契

が補助育

とな

・て

・る.商法

の起草過程・

つ・ては、志

田鐸太郎

・日本商法典

の饗

其改正』

に詳し

い。

(2)

『日本近代立法資料叢書21法典調査会商法修正案参考書』

(商事法務版)

 一五頁。『商法修正案

理由書』二三二頁も同じ。

(3)

『日本近代立法資料叢書

19』

(商事法務版)三五五頁。

(4)

田中

誠二ほか

『コンメ

ンタール商行為法』

(昭四人)七四頁。

(5)

『日本近代立法資料叢書

19』

(商事法務版)

三五五頁。

(6)

内池慶四郎

「判批」民商

一巻三号二〇〇頁。

日本における立法の特色

以上の簡単な比較法と日本法の起草過程の概観から日本の立法の代理におけ

ヨ3

る顕

る特

が浮

ってく

る。

それ

は、

民法

と商

で、

一方

で顕

、他

で非

主義

Page 35: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

34叢

採用するといったように足並みがそろっていないことである。民法典論争の原因の

一つに、フランス人が原案を

起草した旧民法とドイツ人が原案を起草した旧商法との間に矛盾が多々見られ調整が必要であることがあ

ったが、

商取引の特殊性を理由にここでの差が容認されてしまったのである。

しかし、顕名主義を採用するドイツ法やフランス法では、民法

・商法で区別をしておらず、非顕名主義を採用

する英米法でも商取引か否かという区別をしていない。

一方で、商行為以外につき大陸法、他方で、商行為につ

き英米法というちぐはぐな採用が適切なものとは思われまい。

しかも、商法五〇四条の規定についても、これが擬似イギリス法的規定であることは、以上

の説明と後述する

商法五〇四条

の根拠についての理解

の説明を見れば明らかになる。英米法の不開示の代理法理

における利害関係

人の利害を妥当に調整しようとする取り扱いを、「ドイツ法律行為論と調和させようとして、商法五〇四条の規定

(1)

を設け亮と理解することが妥当であろう」などとも言われていることは既に述べたようである。果たして、民商

両法を起草した梅博士がそのような考えであ

ったかは定かではないが、英米法の不開示の代理とも異なることは

確かである。このように、①民事

・商事で差を設けたこと、また、②商事代理についての規定

が英米法の不開示

の代理とも毛色の異な

った特殊な規定にな

っていることが、わが国の代理における顕名をめぐ

る特色であり同時

に問題点であるといえよう。

注(1)

森本

・前

(40注

2

)

二九

一頁。

Page 36: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

4

民法

一〇

〇条

ついて

ω

起草者の説明

まず起草者の説明を聞いてみよう。民法施行後に書かれたものであり、必ずしも純粋な

起草趣旨の説明とは異なると思われるので、民法施行後の民法研究の出発点としてここに説明をする。

博士

代理規定の原案を墾

口田井博士は、まず民法

δ

・条

文につき概ね次の考

に述べ

(1)

仙に

民法

一〇〇条本文について

九九条のため、本人のためにすることを示さなかった場合には、代理の要

義駐

件を欠-ため発

レで勢

を害

↑、また、代饗

に客

土愚

が誕

猛…暫

ごど

がわ

・ナむ

、、ご

愉故

主慰的

掛合

か否

で異

むむ

、(沁三条・、沁五条凱、、い・衝か

か心

砂鑑肝

をを

、チ

たら

ヘヘ

 

 と

こと

は実

に、

規定

が必

る。

で、

にす

ことを

った場

に理

は、

が自

ため

にし

たも

のと

解す

が当

であ

ら、

一〇

〇条

で代

理人

は自

のた

にし

たも

の・看徹して第三者

(相手方)を保護したものであ・

(民生

・・条と共に・イツ民望

六四条二項を引用する)・

民法

一〇〇条但書について

次に、民法

一〇〇条但書については、相手方が本人のためにすることを知っ

いる

か知

は、

「其

理上

の効

生ず

るも

のと

(一〇〇条但書と共にドイ

ツ民法

一六四

一項を引用)

が、

「是

題な

とす

」、民

一〇

〇条

「著

の範

と謂

し、

の必要

に出

るも

のに

て、

理意

の表

と同

べき

こと

に付

は異

き所

ら3

(デルンブルヒ

=

七節)。而も代理の原則として本人の為めにすることを示すの必要は之が為めに其根基を失う

Page 37: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

(2

)

6

に非

りL

と述

べる。

お、

が、

四条

の規

に対

て疑

いる

は後

3

(↓

甜)。

注(1)

『民法

一総

(大九

)

~四

頁。

(2)

・前

掲書

(注

1)

四九

~四

一頁

岡巴

梅博士

梅博士は、民法

一〇〇条本文につき次のように説明する。

顕名がないので

「代理なきが故に其意思表示は本人に対して効力を生ずることを得ず而して代理人には自己の

為めにすみ意思なきが故に其意思表示は代理人に対しても亦効力あるべからず究境するに此意思表示は全く無効

たらざることを得ずと錐も此の如くんば第三者は動もすれば不慮

の損害を萎むり取引の安全を害すること実に少

からざるべし」。そのため、「凡そ代理人が本人の為めにすることを示さずして為したる法律行為は其意思

の眞に

自己の為めにするに在ると本人の為めにするに在るとを問わず総て自己の為めに之を為したるものと看敏し以て

(1)

と欲

たり

(九

三条

)」。

、民

一〇

〇条

いては

、「前

〔一1九

に採

る主

の狭

に失

ころ

へり

と云

(2

)

べし

いう

お、

は商

四条

いて

は高

評価

をし

いる

こと

は後

(商法五〇四条

は商

法典

の起草者梅博士

の支持す

ると

ころである尋

81)。

た、

る基

いて、

博士

いた

こと

は、

調

の議

明ら

であ

注(1)

梅謙次郎

『民法要義巻之

一総則編』

(復

刻版)二五九

一二六〇頁。

Page 38: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

(2)

梅謙次郎

・前掲書

(注

1)二六〇頁

霜囲

ω

顕名という要件の位置づけ

本人のためにすることを示すこと1

旧民法やドイツ民法またフランス民法

では、本人の名において行うこと一

は、どのような法的意義を有するものなのであろうか。

代理意思の表示

代理効は代理意思の効果

まず、代理効を代理権の効力に尽きず、代理意思を代理

(1

V

人が有しそれを表示したことにより、表示に従

った代理効が発生するという理解が可能である。これによれば、

「代理意思を表示する意思表示」が代理行為の成立のためには必要であり、また、その意思表示

の効力として代理

いっ

が生

とに

る。

「代

人行

と、代

いて本

に効

の生

る根

、そ

欲す

る代

に搬

の意

にあ

る.

の意

(代

理意

)

の表

が、

九条

いう

.本

ノ為

ニス

・当

示・

・と

わち

る。

たが

って、

行為

に際

て、

れを

てな

こと

にし

(2)

なら

い」

る。

お駄

のよう

量口す

るも

のは

いが、

は代

理意

の効

であ

ると

いう

こと

承認

され

るようである。例えば、「代理人の行為によって本人に法律効果が帰するのは、本人の為めに為すと云う効果意思

の効力である。」「代理人の行為によって何故本人に法律効果が生ずるかの理論的根拠に就いては、九九条、

一〇

〇条の解釈上、代理人が本人の為めにする効果意思を有したが為めであ

って、其意思の効力として法律が本人の

(3)

為めに其法律効果の発生を認めたものと解すべきである」といわれている。

契約当事者の認定の問題-

相手方に不測の損害を与えないための要件

これに対し、代理人に代理権

37

て代

意思

さえ

、本

人側

は代

理効

が発

こと

に支

、顕

いう

のは、

Page 39: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

8

に自分のした契約の当事者が誰かという点について、不測の損害を被らせないようにするためのいわば取引安全

3

保護のための要件と考えることもできる。また、誰を契約当事者とする契約がされているのかという、事実認定

の問題であると考えることもできよう。誰と契約をするつもりなのか、当事者の契約意思の認定問題である。顕

名がないと相手方は代理人自身と契約をするつもりであり、他方で、代理人は本人を契約当事者とするつもりで

あり、意思の合致はない。意思主義的解釈では契約は成立しえないが、客観的な解釈を行えば顕名がない以上は

契約締結行為をした者が契約当事者と認定されることになる。それを排除し契約当事者とする要件が顕名である

}

ということになる・

但し、そうすると、相手方が代理人の意思を知

っていたりまたは知りえた場合でも、相手方

に本人との契約を

ずる意思がないことは変わらず、この客観的処理を修正して契約不成立としたり、契約無効としたりすることが

許されるというだけになる。民法

一〇〇条但書は、法の定めた特別の効果ということにならざるを得ない。

代理人の免責要件

辻教授は、「顕名は、他人効を生ずるための要件というよりも、むしろ代理人がその

意思表示の効果を免れるための要件

(免責要件)と考えるべきである。理論上は、代理権その他の管理権さえあ

れば、他人効は生じうるのであり、これに加えて、顕名があれば、現実の行為者

(代理人)に

ついての免責効が

(4)

生ずるのに対し、顕名がなければ、かかる免責効は生じないというだけのことである」と述べる。これによれば、

代理権があり代理人に代理意思さえあれば、代理効が生じるべきであり

(これは非顕名主義を原則とするものである)、

顕名は代理人をその行為について相手方に対する責任を免責するための要件にすぎないことになり、民法九九条

に反し商法五〇四条を妥当祝するような説明である。

授権や商法五〇四条を例にして、「これは、理論上は、顕名がなくても、行為者に代理権など本人のために行為

Page 40: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

る資

ば、

に効

が生

じう

こと

示し

いる

顕名

は、

むし

手方

に自

の法律

行為

の相

が誰

であ

かを

せ、

によ

って、

為者

の意

の効

に行

れる

べき

のと考

(5)

えることができるLというのもこれに近い説明といえようか。

本稿の立場

本稿としては、代理の場倉は契約当事者の認定が問題になる特殊な類型

として位置づけて

(特殊なと

いう

のは、通常

は別

の者と勘違

いしたと

いう

のに対し、そ

の相手方を当事者

と勘違

いしたという事例

だから

である)、

自分

が当事

でな

ことを

、④

にと

って

はそ

の契

の効

享受

め、

⑤代

理人

にと

って

は、

が当

事者

され

こと

回避

るた

の要

いう

こと

にな

る。

て、

ぜそ

のよ

な要

が必

にな

つに

は、

手方

の保

ため

であ

いえ

よう

(本人にと

っては、代理人の代理権

と代理意思

で+分であり、②

の立場が正

義註

・).

の軽

目から

は、

顕名

があ

った

か不口か

ではな

-

当事

に相

手方

が誰

と契

約を

る意

田心で

った

が重

要であり、①当事者の主観的

一致があれば顕名がなくても本人を契約当事者とする契約の成立を認めてよい。問

ナ捌

題は、②相手方に過失があり、本人と契約をする意思がない場合であり、いずれの意思を優先させるべきかとい

に理

う契約解釈の問題となり、相手方が知り得ない場合には相手方の意思を優先するが、相手方に過失がある場合に

は代理人の意思を廃

してよい妻

られ寒

の彙

相手方に過失があ・菱

本人・の契約が成立

することになるが、重過失がない限り相手方は錯誤無効を主張する可能性が残される。

注(1)

大西

・前掲書

(26注3)六二頁以下。

(2)

佐久間毅

『代理取引の保護法理』(平

=二)

一九頁。伊沢和平

「商事代理

の非顕名主義

について」『現代企業法

の展開』七頁

39

が、「契

約の当事者をそ

の者

(行為者)自身

とするか、行為者

ではなく他人とするかは、まず

は、行為している行為者が決定

しているはず

であり、

この行為者

の意思

にお

いて契約当事者を誰としょうとし

ているのかが基本

になるべきではな

いか」

Page 41: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

いう

のも同旨か。

む4

(3)

勝本正晃

『新民法総則』

(昭二七)二二

一頁。小島孝

「商行為の代理」小橋

・山口編

『判例演習講座商法H』

一一頁も、次

の②

のような面もあるが、代理意

思の表示としての顕名と

いう

ことを中心とし、重点は意思表示理論

よりする本

質的な面

ると

いってよ

いという。

この立場では、商法五〇四条は相手方に

つき、法律により抽象的

・客観的な

(代理に

ついての)効

果意思を擬制し

たも

のと位置づけられ

(小島

・前掲論文

一二頁)。

(4)

辻正美

『民法総則』

(平

一一)二七八頁

(同

「代理」法学教室

一=二号

(平二)三九頁も同様)。

(5)

佐久間

・前掲書

(注2)二〇頁。

F凹

民法

一〇〇条本文の理解

民法施行後の学説は、民法

一〇〇条の趣旨の理解につきほぼ起草者と同様の説

明を受け継いでいる。それは次の二つの要点に分けられよう。

代理人を当事者とする契約の成立は意思表示解釈としては当然

まず、代理人が顕名をしない限り、意

思表示の客観的解釈の結果、代理人を当事者とする契約が成立したものと扱われることになるが、この点は意思

表示理論の当然の帰結であり、民法

一〇〇条の法定の効果としてそうなるのではない

(-に述べた意思表示理論によ

る原則①)。

「看徹す」という点に意義がある

ところが、代理人との間で契約が成立したとしても、故意的な場合

は心

留保

の規

(九三条但書)、

い場

は錯

の規定

によ

(民法九五条)、

手方

は代

の契

が無

とさ

てし

まう

る。

に、

理制

の信

維持

ため

に、

が自

ため

にな

のと看

(11意思と表示の不

一致なし)無

の主

じ、・代

ついて効

たも

(1)

のと

いう

理解

がさ

Page 42: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

注(1)

鳩山秀夫

『増訂改

版日本民法総論』

(昭五)四〇七頁、於保不二雄

『民法総則講義』

(昭四

一)二二〇頁、須永醇

『新訂民法

総則要論』

(平九)二

一九頁、四宮和夫

『民法総則

〔第四版補正版〕』

(平八)二四四頁も同旨

か。また、石田喜久夫編

『民法

総則』(昭六〇)二〇三頁

(高森八四郎)「民法九三条

の心裡留保と同じく、意思表示は相手方

の立場からみて客観的

に意味

けられ、表意者はそ

のよう

に意味づけられた表示

に拘束

され、義

務づけられると

いう意思表

示解釈

一般原則を表明した規

定と考えてよい」

という。他方で、川島武宜

『民法総則』

(昭四〇)三六四頁

「同条

のも

つ機能

は、客観的

には、

むしろ意

思表示の解釈問題を個

々の具体的な事情に依存させないで

一義的

に解決し、また代理人が

『錯誤』を主張することを封ず

る、

という点にあ

るであろう」と

いう。

匠の

ω

相手方から代理の効果を主張しうるか

民法

一〇〇条但書が適用される場合は別として、相手方が豊里忌無

過失であり本文が適用される場倉

、後日、代理意思で代理人が契約をしていた・とを相手方が知

った場倉

、相

手方は本人との契約が成立していることを主張しうるのであろうか。原則は代理権ある代理人が代理意思で契約

るけ

をすれば本人が契約当事者となるはずのところを、特に相手方保護のために例外を認めたというのであれば、相

お駄

手方が特別の保護

(本人との契約の成立の不.走

代理人との契約の無効の排除)を放棄して原則に戻

ることは可能

であ

ろう。しかし、代理という

のはそのような構造をも

つ制度なのかが問題である。

「…凹

選択否定説

ほとんど議論されることはないが、古くには中島博士の、ドイツには代理人は従として担

保の責任を負うという学説があるが、本規定は明瞭にこのような解釈を否定したものであると

いう説明が注目さ

(1)

る。

のも

とし

ては、

が、

条本

は、単

に相

いう

こえ、

を客

(2

)

一的に性格づける趣旨のものとみられるLと述べ、このような選択を否定する。相手方が本人との契約を欲す

41

る場

に、通

ば本

れを

絶す

こと

はな

いであ

ろう

から

、本

・相

の合

で本

・相

の契

Page 43: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

2

に変更し代理人を免責することは許されるであろう。問題は、本人がこのような合意を拒絶す

る場合であり、代

4

理人が顕名をしていたらその効力を拒絶しえなかったのであるから、本人に拒絶を認めなくても

(11選択肯定説を

採用しても)結論としては不都合ではない。

しかし、選択肯定説は意思表示の一般理論と調和するかが疑問であり、また、先に見たよう

に、本来本人との

契約が成立するところを代理人保護

のために特別に代理人と法定の効果で契約を成立させたも

のではないのであ

(何度もいうように法定の効果は看散すということに意味があるだけ)、相手方が特別の法定の保護を放棄するという

には

・意

一般

理論

から

いかと

る・

「四

選択肯定説

学説には本人との間の契約を選択することを相手方に認める主張が少数ながらされている。

辻教授は、顕名を代理人の免責事由程度に位置づけることは先に述べたが

(↓碍)、「相手方の側からは、代理行

為であることにつき善意無過失であ

っても、なお本人に対して代理行為の効果を・王張することができるが、相手

方が本人との間の法律関係を主張した場合には、もはや民法

一〇〇条本文によ

って代理人との間の法律関係を主

(3)

張することはできないものと解すべきである」という。また、高森教授も、本人からの主張は

「本条の趣旨から

否定されるべきではもちろんであるけれども、相手方が了承するかぎり有効な代理行為と認めてもよいと思われ

る」。相手方から代理行為を主張することは認めてよい。「心裡留保において、表示がなされたあと、相手方が表

意者

の真意を知り、その上で真意に応じた効果を欲するかぎり・それを認めても妨げないのと同じであ箪

その

他、石田穣教授も、民法

一〇〇条本文は相手方を保護する規定であるから、相手方の方から本

人に法律効果が帰

(5)

属することを主張するのは差し支えないという。

肯定説では、後述の商法五〇四条但書についての契約関係の選択を認めようとする判例

(妙

溜以下)と等しい結

Page 44: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

論になる。民法商法区別否定説とは別の形で、民商法の差がこの立場では解消されることになる。

注(1

)

玉吉

「民

釈義

一総

則』

(大

一四)

五入

頁。

(2

)

『民法

(第

二版

)』

(昭

五九

)

一三

山輝

『民法

(平

一二)

三頁

旨。

(3

)

・前

(醒注

4)

頁。

(4

)

田編

・前

(67注

-)

二〇

(高

)。

(5)

田穣

『民法

(平

四)

五頁

匠の

民法

一〇〇条但書の趣旨

民法

一〇〇条但書がどのような趣旨の規定であり、どのような場A口に適用さ

れるものなのかは学説上議論がある.民法

一〇〇条が適用された判例は少ない.寺の元住撃

自己名義で銀行に

寺の金を預金したが、その債権が元住職の債権者により差し押さえられたため寺が異議を提起した事例で、民法

るけ

一〇〇条本文により住職個人の預金になり、寺はその預金債権の譲受けを受けない限り債権者

になれないとして、

(-)

寺の主張を排除した判例などがある。

↓國

意思表示解釈規定説

まず、代理行為であることが推断される場合には代理行為とし

て成立し、要する

に顕

名あ

いえ

明示

であ

必要

はな

諸般

の事

黙示

の意

でも

いと

いう

規定

いと

いう

(ドイ

ツ民法

一六四条

一項後段、

スイ

ス債務法三二条

二項

が引用される)

があ

。意

の理

(2V

論から当然のことを注意的に規定したにすぎないという

ことになる。

この立場によれば、民法

一〇〇条但書は民法九九条の顕名は黙示であってもよいという

ことを注意的に規定し

43

だけ

の規定

いう

こと

る。

かし

のよ

な趣

で規

のであ

の但書

一〇

Page 45: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

44

なく

一項

に規

べき

であ

った

いえ

よう

のよ

には

せず

一〇

〇条

に但

とし

て規定

いう

は、

九条

の顕

の原則

に対

を認

いう

で持

せて

いも

と思

る。

単なる意思表示解釈規定ではないという理解

民法

一〇〇条但書は当該事情以外の事由から相手方が偶

然知りまたは知り得べかりし場合に適用になるものであり、単なる注意的規定ではないとする理解が、昔から有

(3

)

(4

)

力であり通説といえようか。この立場では、民法

一〇〇条但書は、顕名主義に対する例外という

ことになる。

幾代教授は、「相手方の純粋に個人的かつ偶然的な事由によ

ってであ

っても、とにかく相手方

が代理意思を知り

えたよ な場合に・なお純粋の客観主義ないし表示義

を貫いて代理行為の盛

坐を否認することは・ややかたく

がす

るL。

のよう

な場

に認

ても相

が不

に損

こう

いう

は生

ので、

.

でよ

いと

い濾

この立場では、なぜ本人乏の間に契約が成立するのかを説明する必要があるが、私見はすでに述べたようであ

る。「特殊事情によってにせよ、相手方が代理人の代理意思を知りえた以は代理行為の成立を否認すべき理由はな

い」、代理人と相手方が

一致した理解に立つのならば、表示の客観的意義を考慮するまでもなく、両者の考えてい

(6

)

がそ

のま

妥当

と説

とが

る。

かし

かり

で、

の理解

致を

いう

のは

は思

い。

お、

が本

のた

にす

る意

で行

為を

こと

って

(7)

る限

の本

が誰

かま

で知

って

いる必

はな

いと

いわ

る。

注(1)

浦和地判大

一二

・二

・一七法律評論

一二巻民法二七四頁。なお、大阪地判昭三五

・一・二八判夕

一〇六号九八頁

(評釈とし

て、田辺明

.民事研修四九号三九頁)は、商法五〇四条を適用し

て架空名義

の預金に

つき本人を預金者とする

(そ

の後、預金

Page 46: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

者に

ついては出掲者説な

いし客観説

が採用され、意思表示理論から切り離

される)。そ

のほか、民法

一〇〇条

が問題とされた

事例として、東京地判平九

・九

・爪判夕九七九号

一六二頁は、血統登録申込の代行を任された業者

が、本人

の名を示さず自己

の名

で申込手続きを行

った事例で、民法

一〇〇条本文を適用して、本人

のためにする

ことを知り得なか

ったも

のとして、本

人を申込手続き

の当事者とは認められな

いとした。また、福

岡高判昭五九

・七

・二〇判夕五四二号二

一入頁

(評釈とし

て、橋

本恭宏

・明治短期大学紀要四〇号

}〇

一頁)

は、X

の代理人AがXの名を示さず妹B

の名で土地を購入した事例で、民法

〇〇条

に照らして、売主との間

では買主はA

(Bではなく)と

「看倣される」が、Xと

の問では

「間接代理と類似

の関係が生

じ」、両者間ではXが土地の所有権を取得し、Yの名で建築依頼をした旅館についても、請負人と

の関係

ではYが所有権

を取

得するが、同様にXとの関係

では、

Xが間接代理

の場合

に準じて所有権を取得するとしている。

(2)

・前掲書

(59注1)四五〇頁、穂積積遠

『改訂民法総論』

(昭六)三五二頁、我妻栄

『新訂民法総則』

(昭四〇)三四六頁

を脳

(旧版

の見解

いる)、

・前

掲書

("注

2)

二〇

ど。

(3)

鳩山

.前響

(σ奎

四・吉

、曄道文芸

.日本民法要論

一巻緒論総則・(大九)四五吾

、中島

.前墾

("注

-)五

入三頁、石田文次郎

『現行民法総論』(昭五)三八六頁、岩

田新

『民法総則新論』

(昭

一六)五二五頁、石本

雅男

『民法総則

(改訂版)二

昭三七)二九九頁、薬師寺志光

.改訂

民法総論新雫

巻・(昭四五)六〇五頁、石・編

・前掲書

(σ苧

)二

・三頁

(高森)、於保不

二籍

.注釈民法

(4)・(昭和四二)三五夏

浜上則雄)、石田穣

.前掲書

("注,)四。四頁、船越

『民

(改

版)』

(平

=

二)三

一五

頁。

こ璽

(4)

勝本

.前

掲書

(醒注

3

)

二〇

石本

.前

掲書

(注

3)

頁。

(5)

・前

("注

2

)

一〇

一三

一頁

(6)

部育

「非顕

の代

と商

四条

=

二四

(平

)

一五

(7)

田穣

・前

("注

5)

〇四

、大

判昭

一二

・四

・=

二判

決全

一八

五頁

、北

川善

太郎

「民法

(第

)』

(平

一四

)

一九

一頁

45

[…凹

本人を明らかにしない顕名の有効性

代理意思を明らかにするが、本人を特定しないで、さらには現在明

らかにできな

いがある人から依頼されているといった顕名も有効なのか、議論は少ないが民法上は問題になる。

有効説

薬師寺博士は、「本人が

一時的に代理人及び相手方に知れていない場合

(例えば甲乙顕名中、執

Page 47: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

6

れか

一方のため法律行為をするが如し)

のみならず、客観的に不確定な場合

(例えば買手の氏名を留保して買手

4

の代理人として売買をするが如し)と錐も代理は有効であるL。「民法が

『本人ノ為メニスルコトヲ示シテ』意思

表示を為すべきことを代理の要件とするのは、特定人を指名せよとの趣旨ではなく、意思表示

の効果を行為者以

外の他人のために発生させようとする代理意思の表示を命ずる趣旨と解すべきであるから、本人が確定したとき

にその者に法律効果を帰属させる仕組で、差当り不確定な本人のために法律行為をすることは、少しも理論上の

矛盾ではないといわなければならな

い。尤もこの場合においては、本人が確定するときに至るまでは、法律行為

の効果の帰響

の確定を欠く故・代理行為は完全な効果を発斯

るに由なきこと勿訟繭である」三

幾代教授も、「効果の帰属者がだれであるかが重要な意味をも

つような契約の場合なら、相手方のほうで契約を

成立させる意思表示をしないであろうし、当事者が誰か問わないような種類

・内容の取引であって、ただちに本

人が確定されなくてもよいと相手方が了解する場合なら、代理行為の成立を認めても格段不都合はないように思

(もち

ろん

の効

現実

に発生

のは

、本

が確定

たと

いう

こと

にな

る)。そ

て、右

のよう

に考

えら

とす

ば、

に確

いる本

在す

かわ

らず

さし

って

は本

だれ

か表

かく

為者

以外

に本

が存

こと

だけ

てな

る行

(実

、ま

はあ

ろう

が)、右

と同じ条件のもとで代理行為として認めてよいように思われるLとい旭

また・田山教授も

・相手方が誰である

かが重要な取引である場合をのぞいては、行為者以外に本人が存在することだけを示してなされる行為も、相手

方が承知している場合には許されると考えてよいLと賑聴~

無効説

(不成立)

学説には、このような顕名を認めない主張ガある。高森教授は、「しかし、法律行為

の・玉体が誰であるかを示すものが顕名だと考えるならば、それが誰であるかは特定されなければならないであろ

Page 48: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

う。当事者が誰かを問わな

いような種類

・内容の取引であ

って、ただちに本人が確定されなく

てもよい場合も皆

無ではなかろうが、実際にはまれであろうし、本人が確定しないがきり不成立としてもとりたてて不都合はない

(4

)

であ

L

いう

注(1)

薬師寺

・前掲書

("注

3)六〇三頁。そ

の他、有効と認めるも

のに、近藤英吉

「註釈

日本民法

(総則篇ご

(昭七)三八○

頁、田島順

『民法総則』

(昭

=二)三八四頁。

(2)

幾代通

・前掲書

(70注

2)三

一〇頁。

へ仙

(3)

田山

.前掲書

(窪

2)

二〇二項。

(4

)

田編

・前

(67注

1)

一頁

(高

森)。

蟻駝

ω

解釈による顕名主義の例外

ω

の議論で選択肯{疋説に立てば、民法の議論が商法の規定

に近づ≦

とにな

るけ

るが、更に民法九九条、

一〇〇条にかかわらず、解釈により商行為以外にも顕名を要件としな

い代理を肯定しよ

お耽

・つとする学説があり、商法五〇四条本文と同じ結論を肯定することになる.

たと

ば、

我妻

は、

「相

手方

が代

人個

に少

しも

いて

いな

い取

、例

、特

の個

人を

はな

く、

の営

業主

を相

や、

の相手

が何

であ

っても

つかえ

のな

い取

引な

いて

は、

の例外

とし

て、

お本

いて効

と解

べき

では

いか。

ぜな

ら、

関係

の利

妥当

に調

こと

にな

るか

であ

る」。

このよ

結論

は民

いても

べき

であ

る。

「ただ

し、商

は本

・代

いず

も請

しう

る関

が、

民法

は、本

か代

いず

47

いて請

しう

にな

と解

さな

るま

いL

いう

Page 49: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

 4

(1)

・前

(器注

2)

四七

~三

入貢

田穣

・前

掲書

("注

2

)

四〇

が賛

5

五〇

四条

いて

ω

商法五〇四条の趣旨

商法五〇四条につき、但書と合わせて全体的に考察して、これ

が非顕名主義を採

用し窺

てよいのかについては少数の反対が豊

・…

ギ蓬

・第茨

的には代理…

契約関係・認

めるも

のであ

り、不開示の代理法理が厳密

に非顕名主義と

いえる

のか疑問)、

少な

立法

てそ

の趣旨

は説

く、

名主

対す

る立

反対

が近

くな

ってき

い薪㌧

(-)適影

胸駕

禦鯖

ボ験

黎批難難蜜

鯉述婿

同巴

非顕名主義という理解

一般的な理解は、起草者の説明通り商法五〇四条を非顕名主義を原則どした

規定と理解している。意味があるかはおくが、民法学者による評価と商法学者による評価を分けて説明しよう。

σり

民法学者による評価

民法学者も商法五〇四条は民法とは異なり非顕名主義の原則を採用したものと

理解

いる

が、

のよう

立法

の賛

いて

の評

は分

る。

積極的評価

商行為の特殊性から商事代理については、このような特則は妥当なものと理解するないし

(1

)

.少

とも

立法

異議

えな

のが、

民法

学者

とし

ても

一般

理解

いえ

よう

か。

お、近

教授

は、民

Page 50: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

一条

パラ

に商

法五

〇四

い、

「代

理関

が制

白な

であ

る」

とし

「こ

は、

(2)

の代

理関

いう

社会

とす

のであ

るか

ら、

て顕名

は要

れな

い」

いう

(但し、

民法七六

一条に

ついては、自宅

での契約は別として、普通

は既婚者

か否かも知り得な

い状況で契約をし

ているはずであり、そ

よう

に言い切れるかは疑問がある)。

に注

のは

、岡

次郎

に商

法典

の起

草を

、民

のみな

らず

の起草

でもあ

った梅

の評

(3

)

価である。梅博士は、旧商法二四二条の本人の名をもってなすことを要しないとする立法は、「是れ頗る実際に便

てい

利なる所にして世の進運に伴い漸漸此主義を採用するに至るべきは余が信じて疑ざる所なりと錐も民法に於ては

(4)

各国の立法例および学説大抵皆此主義を採らず」「本条に於ては此普通説を採」つたと説明する。商法典を起草し

義粧

た梅が・のさ

つに説明していると.・うからみて、商法五〇四条は梅の意見が採用されたものと推測される.また、

民法

一〇〇条に原案になか

った但書が途中で追加されたのも、民法に続いて起草に入った商法典で非顕名主義を

ナ捌

導入しようとした梅が、民法において妥協の産物として民法

一〇〇条の但書の追加を提案した

のかもしれない。

論稽軽

視魏

掴縫.難

難難雛

隷農α

(5)

通念

に反

一大

異例

たし

て至

べき

は大

いに疑

ことを

判的

であ

る。

のも

のと

て、

当否

ついて

「立法

論議

る余

と思

べる

が、

に富

(6V

を引

用し

いな

い。

だし

の後

は、

学者

の間

でも

顕名

つき

とも

は批

が強

って

いる

のに、

民法

は商

四条

に言

立法

を述

べる

くな

って

いる

のは不

であ

49

(梅博士

の影響と

いう

よりは、民法学者

の商法五〇四条

についての議論

の不勉強

によるも

のといえよう

か)。

Page 51: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

商法学者による積極的評価

 り

5

反対説としての廃止論

後述するように、民法と内容的に異ならないとさえ断言する学説まで登場して

いる

(妙

86以下、

勝)、

いわ

い学

も、

立法

とし

は批

判的

が多

い。

(7)

は、民

の原

に対

る改悪

で、存

べき理

いと

い、大

授も

、但

の解

とし

民法

と同

いう解

釈は調和しないが・本条の存在の理由は乏しいとい酋~平出教授は・商法五〇四条は不必要な規定であり爵

(

9

V

原則を変更することはかえって不当であり、この規定は削除すべきであるという。

[…囲

廃止論に対する擁護論

@

廃止論が少数説であった時期

起草者

の考えに従い、商事代理についてはこのような立法は合理的な

ものという理解が商法学者には蔓延していた時期に、少数説として右に見たような廃止論が主張されていたが、

それに対する擁護論からの反論がされている。先

の松本博士による疑問の提起に対しては、志

田博士は、確かに

商行為

一般にこのような広汎な立法をするのは問題があることを自認しながらも、きわめて当を得た立法である

(-o)

と反論をしている。小町谷博士も、「しかし相手方の利益は、同条但書によって充分に保護せられているから、寧

(11

)

ろ取引の実状に適した立法と云うべきではあるまいか」と反論する。

旧巴

廃止論が多数になった以後の時期

戦後は立法論として疑問視する学説が多数登場し、解釈論として

民法と変わらないとさえ述べる学説があり、両者をあわせればこちらが通説ないし多数説といえるであろう。そ

のような批判的雰囲気

の中でも、その合理性を擁護しようとする学説も健在であり、沢野教授

は次のように述べ

(12)

本人は、代理人によって相手方と取引をした期待があり、この期待は保護される必要がある。代理人に権利義務

Page 52: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

を認める必要はない。問題は相手方の保護であり、相手方としては二重弁済の必要がない場合

であれば、本人の

要求に応じることは格別不利益ではない。本人出現前の代理人

への弁済等の行為を本人に対抗

できることになっ

ている。商法五〇四条は、但書ではっきりしていない代理人の権利取得を明記し、また、本人出現前の代理人

の弁済等の行為を本人に対抗できることを明記するなどの手直しをすべきである。

ス法

立場

の評

の基礎

にあ

ると

いえ

よう

か。

非顕

・王義

の結

、本

の間

に契

が成

[

す・ので、商法五・四条但書の代理人の債務が法定

の債務・い三

・にな殖

渓仙

(-)

士、日豊

.民法総則嚢

)四九八頁など.

(2)

近江幸治

『民法講義

-民法総則

〔第三版〕』

(平

=二)一二

二頁。

(3)

商法学者としての梅

の位置づけ

・つ・ては、高田晴仁

.梅嚢

郎と商法L新嘉

信九号

(平

一三)

以下参

照。

(4)

・前

(59注

1)

七頁

ナ捌

(5)

・前

(58注

1)

一頁

こ型

(6)

沼馳

一郎

『民法

(明三

)

一頁

(7)

松本

丞…治

『商行為法』

(大三)五三頁。

(8)

大隅健

一郎

『商行為法』

(昭三七)三四頁。

(9)

平出慶道

『商行為法

(第二版)』

(昭元)

】○八頁。鈴木竹雄

『新

版商行為法

・海商

・保険』

(平五)

一六頁、石井照久

・鴻

常夫

『商法行為法上巻』

(昭四九)五九頁など。近藤光男

『商行為法

〔第四版〕』(平

一四)

一五三頁や小島康裕

「商行為

の代

理と代

理人

に対する履行

の請求」

『商法

の判例と論理』

(平六)二三頁も民法

一〇〇条だけで十分

であるとし

て廃止論を支持

する。小島孝

「商行為

の代理」小橋

・山

口編

『判例演習講座商法

H』

(昭四八)

=二頁、森川隆

「商法五〇四条小論」『近代企

業法の形成と展開』

(平

一一)

一〇二頁

(同九六頁によると、顕名主義

のルー

ツはドイ

ツ旧商法

であり、

このことは顕名主義

51

が商

取引

にも

A口す

こと

を裏

いう

)

同様

Page 53: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

(10)

田鐸太郎

『商行為法』

(昭

一六)

一九頁。

 5

(11)

小町谷操三

『商行為法論』

(昭

一八)六

一頁。

田中誠二

『新版商行為法』(昭三三)入七頁、同

『コンメ

ンター

ル商行為法』

(昭四人

・喜多

了祐らと共著)七四頁も

これと同旨。

(12)

沢野直紀

「商事代理

の非顕名主義」西南学院大学法学論集

一七巻二~四号

(昭六〇)

一〇八頁以下。同

「商事代理

の非顕名

主義」竹内編

『特別講義商法

H』

(平

七)入三頁以下も同様。

(13)

志田

・前掲書

(注10)

一入頁。

民法と変わらないという理解

また後述するがここで述べておこう。

民法学者による評価

於保博査

商法五・案

文は本人の・め・す…

を示す…

を要しない

と積

に非

主義

って

いるわ

はな

「本

ノ為

ニス

コト

ヲ示

サザ

シト

トイ

エド

モ」

って

いる

にす

い・

は顕

が常

であ

り・

った場

に関

規定

であ

る・

行為

であ

ることを知りえない場合や個性が問題にならない場合にまで

一律に適用しなければならないということにはなら

ないはずである.同条の解釈論としての通説と少数説との対立はまったく形式的解釈論の鯉

であ犠

また、水

掛論に終らざるをえな

い.・の議論には裂

の意義は認められない.以上の考

に毒

する.

その後も、内池教授も

「むしろ五〇四条本文は、相手方

・代理人双方にともに代理意思ある場A口を前提として、

ただ代理意思の表示が欠けているときに、民法

一〇〇条本文の

『自己ノ為メニ之ヲ為シタルモノト看倣ス』規定

を排斥して、直接に本人相手方に法律関係の成立すること、すなわち表示のない代理意思の合致する範囲で簡易

(2

V

迅速な契約の成立をはかった規定と解される」という。教科書においても、高森教授は、商法五〇四条は

「民法

の意思表示の

一般原則の表明にすぎず、したがって民法

の顕名主義の例外であるとして、顕名

がなくかつ相手方

が豊呈思・無過失にもかかわらず、本人に対して効力を生ずることがあるとの見解は克服さるべきではないか。商

Page 54: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

(3)

法五〇四条に独自の意義を認めるのなら、挙証責任が逆になるというほかないであろう」といい、石田穣教授も

(4

)

四条

民法

一〇

〇条

は同

であ

い、能

見教

、商

民法

では

原則

と例

が逆

にな

って

おり

(5)

証明責任が逆にな

っているという。

口凹

商法学者による評価

立法論的な批判にとどまらず、解釈論として、かなり文理を無

視して、商法五〇

四条は顕名主義の原則の下での民法

一〇〇条と内容として変わらな

いという主張がされている。竹田博士は、民

(6

)

一〇〇条但書と同趣旨といい、西原教授は出発点が逆になっているため、立証責任に差が出てくるにすぎない

(7)

という.小島教授は、近時..の学説を徹底した主張をするものであり、概ね次のよ、つに述べる.

商法五〇四条は、当事者の通常の意思表示の解釈の規定であって、民法九九条と違

フことを規定していない。本

条を意思表示と無関係のものとして、その根拠として英米法を持ち出すのは唐突過ぎる.商人の世界では、単発的

顕る

取引よりもはるかに当事者の信頼関係が重要である。商行為にあっては、当事者の同

一性は問題にならないなど

けお

という見解は、商法五〇四条の辻褄合わせの苦し紛れの解釈によ

って、現実の商取引を無視す

る誤りを犯してい

(8)

糠魑

勘離

籍急難

が鍵

謹腰獺

襯誘頓鑓

(9)

とき

は、

はそ

の責

って

おり

、商

る立

証責

の転

を否

こと

にな

であ

の学

に対

ては

、商

但書

が、

の相

の代

に対

る請

「妨

ス」

とし

いる

(10)

に反

に、

は無

であ

と評

いる。

3

にロ

ごノ

(1)

於保不二雄

「判批」民商

六〇巻

一号

一〇三頁。

Page 55: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

(2)

池慶

「判批

】巻

一九九

 5

.(3

)

田編

・前

掲書

(67注

1

)

二〇

(高

)。

(4)

田穣

・前

掲書

("注

5)

頁。

(5

)

四宮

・能

『民法

版』

(平

一四)

(6

)

田省

『商

行為

(昭六

)

一二

(7

)

西

『商

法』

(昭

)

一二三

(8)

康裕

・前

(85注

9

)

一頁

(9)

康裕

・前

(注

8)

頁。

・前

「判

(注

1)

}〇

六頁

に主

いた

ころ

であ

る。

(-。)

江窯

治郎

.商取引法

(第三版)・

(平

一四三

・二頁.・た、大陸法的・意嚢

示理論

・則

った民望

・・条

・簑

・・、

英米法の隠れ

た代理理論

は、隠れた本人相手方に契約関係を成立させる直接代

理的側面と、相手方代理人間

に契約関係を成

立させる間接代理的側面を併せ持

つ代理

であると

いう

ことができると述

べ、商法五〇四条の代理は民法上

の代理とは全く異

なるものと考えるのが適当

であるという

(小島孝

・前掲論

(85注9)八頁も解釈の限界を超えていると

いう)。

判例について

判例においては・学説の影響を受けて民法と内容的に異ならないとして・民苧

商法

の調

ろう

とす

るも

のも

った

昭和

四三

の最

("

90)

によ

顕名

の規

とし

を高

く評

ると

いう

起草

の状

にま

で時

の針

が戻

った

のよ

って

る。

民法

一〇〇条と同じという理解

一部

の判決には、商法五〇四条は民法

一〇〇条と内容的には同じであ

り、証明責任が異なるだけという理解をするものがあ蒐

後者によれば・商法五。四条が適用されるのは・・相手

方において代理人が本人のために行為したことを知りうべかりし場合にかぎるのであって、形式的に商行為であ

るというだけで軽々に商法第五〇四条本文の規定を適用することは許されない」とし、単に民法に対して証明責

任の転換を図

ったものというべきであると判示されている。

Page 56: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

蘭曲

特則としての非顕名主義という理解

最判昭四三

・四

.二四民集二二巻四号

一〇四三頁

(名古屋高判昭四

〇・一〇・一四の上告審妙注1)は、商法五〇四条但書を顕名主義に対する例外と認めその理由として次のように説

明する。

「営業者が商業使用人を使用して大量的、継続的取引をするのを通常とする商取引において、

いちいち、本人

の名を示すことは煩雑であり、取引の敏活を害する慮れがある

一方、相手方においても、その取引が営業主のた

めされたものである・とを知っている場合が多

い等の事由により、簡易

迅速を期する便宜のために、と-に商

行為の代理について認められた例外であると解される」。

つに

本判決には数多くの判例評釈が出されるが、民法学者による評釈もあり、その中で於保博士

による

「本判決は、

義粧

にお

顕名

王義

の本

いて

は何

ふれ

いな

いが

民法

の立

は、

て、

おけ

顕名主

・非

名主

の本

つき、

反省

の機

をも

、代

展す

こと

を期

い」、

いう

(2)

は今

一度

てよ

いも

であ

る。

にで

一;

京地判昭三九三

五判タ=ハ…

七一

名古屋高判昭四。.一。二

四高民集 

六号五。一

(2)

・前

「判

批」

(87注

1

)

一〇

頁。

55

[…凹

非顕名主義の根拠のまとめと検討

民法の顕名主義に対して商行為における非顕名主義というものが、

本当に合理性のあるものなのか、今

一度再検討をしてみよう。その前

に、先ず非顕名主義が誰を保護する制度な

のか確認をしておこう。

商法五〇四条本文は相手方保護の規定か

Page 57: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

6

起草者の理解

非顕名主義

の基礎を作

った

日工スレルによれば、もし何も規定しないと、民法の顕名主

5

義により本人につき契約が成立せず、他方で意思表示の

一般原則により代理人を契約当事者とすると、意思欠訣

により無効になり、どちらにしても相手方は保護されないことになり、それを回避して相手方を保護するために

本人との契約の成立を認めるために非顕名主義を採用したというものである。

しかし、この理解には疑問がある。というのは、民法の原則では相手方が保護されないという

のであるが、民

法という私法の原則法で

一〇〇条により代理人との契約の成立を認めることにより、相手方の保護を図

っている

のである。「民法の原則法では相手方がなんら保護されないから非顕名主義」というのではではなく、「民法

一〇

○条の保護では商取引については十分ではないから非顕名主義」ということを説明する必要がある。そのために

は商行為の特殊性が説明されるだけであるが、その適否を後に再検討しよう。

相手方保護の制度ではないという理解

森川教授は、商法五〇四条本文は相手方保護

の規定ではないか

  

 

らこそ、但書によ

って相手方を保護する意味が生きてくるはずであると述べ、商法五〇四条本文の非顕名主義は

法一

相手方保護の制度ではないと理解するよ、つである.そ、・すると、代理人に代理行為を委任した本人にそのとち

の効

を享

よう

とす

る制

(本人の保護

のための制度)、相

手方

にと

って

それ

で商

の特殊

から

て不

都合

はな

不都

があ

な場

は商

四条

で相

手方

ったよ

に理解

こと

ろう

ス法

の不

の代

が、

の破

を保

(間接代理におけ

る)

であ

った

こと

は、

29

に述

べた

ω

非顕名主義の根拠

それでは、商行為についてはどこに特殊な扱いをすべき特殊性

があるのであろう

か。これまで指摘されている点を取り上げて、検討してみよう。なお、非顕名主義が法人格否認の法理を採用す

Page 58: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

(2∀

るまでもなく問題をより適切に解決する方法として注目されている。学説の説明には、後述

の①の簡易迅速性、

(3

)

(4

)

(5)

であ

こと

のみを

るも

の、②

みを

の、

と②

みを

の、

と③

の契

の内

(6)

(7)

当事

が誰

は重

い点

つをあ

の、そ

て、①

~③

のす

てをあ

るも

のと

があ

る。

お、

(8

V

の変

て、

の敏

と安

いう

ことを

る説

明も

お、非顕

主義

いう

こと

から

、「代

は、簡単

に自

の名

のみ

を以

て、本

のた

に取

なし

べく」

と・顕名を不要とするにとどまらず代理人の名で行

・てもよい三

・た理解もされてい宛

て伽

いちいち名を示す.・とは煩雑であり、取引の警

を霊目する

しかし、本人の名を伝えるのは口頭で箪

に行えるのに、このような手続きさえ省略することが、果たしてどれだけ取引の敏活や簡易

.迅速に資するとい

えるのかは疑問視されてい菊

相手家

・てい・場合が多

確かに相手方が知

・ていれば、顕名が隼

も代理効を認めてもよい

が、

民法

一〇

でも但

で認

いる

ころ

であ

り、

それ

に更

に例外

め、

を充

たさ

(11)

耀

罫嘗麓庭謳難聴口糧初雛稲羅麟製知解稲孫携繍浦

が多

いと

いう

のは、

顕名

でも

しま

いか

、顕

の場

同様

に意

を解

てよ

いと

いう

(13V

過ぎず、継続的取引のない当事者間に、商法五〇四条を適用することは自己矛盾となると批判される。

なお、代理の事実を知

っていることが多いというのは、店舗での商業使用人による販売などが考えられている

といってよいが、日本では実質個人経営でありながら法人化している場合があり、相手方が契

約当事者は会社か

57

経営者個人か

「はっきり区別せず、どちらでも実質は同じである位の気持であったことが認められ」、その場合に

Page 59: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

8

商法五〇四条を問題にすることなく、契約当事者

(事例は売買契約の章王)を会社とした判決があ瓠~

5

当事者の没個性

更には、商取引においては当事者が誰か個性が問われないことが多

いということもい

る。

に、

スー

パー

も売

って

いる

よう

な商

品を

、値

は注

ら買

いう

とは

どう

でも

のか

い。

かし

のよう

がさ

る。

「諾成

の拘

が認

めら

引社

にお

ては

、取

の当

は互

いに補

パー

る。

は継

続的

取引

は、

事者

の信

って形

いる。

の世

では

一回

限り

の単

発的

るか

当事

の信頼

が重

であ

(…略

)。商

行為

にあ

って

は、

当事

の同

一性

問題

なら

いな

いう

は商

四条

の辻

A口わ

の苦

の解

って、

の商

引社

誤り

いる」・

は契

の難

いか

かか

であ

に妥

るも

ので

く・

顕名主義を原則としつつ、例外として顕名がなくても代理が認められる契約類型を個別的に明らかにすることが

(15)

であ

いわれ

る。

規律する生活事実が異なる

以上のような諸特徴が生じる根本的原因として、商法と民法とではその規

律する生活事実が異なるという商的色彩論的思考があると見られている。民法的生活関係は、単発的な法律関係

であるから、顕名主義が原則とされ、商法の対象たる生活事実は、企業の取引であり、営利の意思をもって反復

継続的大量的かつ集団的に行われるということが前提として想定されている。しかし、商法の独自性に対しては、

それは独断であり、ドイツで民商並立の説得的な説明は困難であり、並立にいたったのは商法

の文理を強調した

ゴールドシュミットの影響というほかないとして、そもそも民商法の分離自体について、大きな批判がされてい

(16V

る。

Page 60: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

まとめ

結局

以上のような非顕名主義の根拠とざれているものは、森本教授によれば、せいぜい民法

一〇

〇条

の立

証責

換す

の正当

とし

て、す

、少

数説

(妙

86~

87)

根拠

づけ

のも

(17

)

であ

にす

い。

のた

め、

今後

は、

の多

は少

(民法

と内容的に変わらな

いという考え)

に移

では

いか

と推

いわ

いる。

でも

が、

ス法

の採

、不

の代

理が理論的に優れているという理由によるのではなく、イギリスの経済が発展しておりそのような経済社会を実

現するには、同様の法制度を採用すればよいといったようなものであ

ったのかもしれない。いずれにせよ非顕名

主義の導入は軽率であり、立法としては後世に禍根を伸すものであ

ったといえよう。不開示の代理法理を認める

つに

ス法

は、民

と商

とを

いの

で、わ

が国

で挙

るよ

(多

分に意思表示理論的色彩

義駐

を持

.た)

根拠

づけ

はさ

らず

人保

の結

の妥

い・つ実

が考

いる

だけ

であ

る.

顕る

エヲ

りき

(1)

森川

・前掲論文

(85注9>九三頁。

こ型

(2)

田中誠二

.前掲書

(85注

11)七五頁。菊池博

「商法五〇四条

の研究」判タニ三八号五八頁

(昭四四)。個人企業

の代表者

明示的

な顕名をしなか

った事例

につき、東京地判昭五六

・九

・二五は、貸付に際して代表取締役が、会社が貸主であ

ることを

明示しなか

ったが、

相手方

である借主が貸付をし

た者が代表取締役であ

ることを知

っていたものと推認できることから、仮

に代表者個人

が貸主であ

ると相手方

が考えて

いたとしても過失があるとして、商法五〇四条、民法

一〇〇条

但書

の趣旨から

て、原告

である会社との間に消費貸借契約が成立するとしている。

また、東京高判昭四六

・一・二八は、

相模商事株式会

社、A商店、有限会社A商店は、名称を異にしながらも、その実体はそれぞれ別個

のものではなく、しかもその実質はA

の個

人企業とほとんど選

ぶところがな

い状態

であ

ったところ、

Yらは相手方を

「A商店」

として取引を始め、以来数年間

これを

継続してきており、YらはA個人と信じ

ていたものであり、そう信じたことに過失があ

ったとは

いえな

いとし、

Yら

がBよ

59

り債権差押

・転付命令を受けた以上、第三債務者

としてBに債務

の弁済

をし

たことは当然

であ

って、

Yらが弁済をし

たこと

ついて過失があ

ったとす

べき特段の事情もな

いとし、取引の効果がYとA個人と

の間

に帰属し、民法四七八条、

一〇〇条

Page 61: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

本文、商法五〇四条但書

の規定

の趣旨を援用す

るまでもなく、Yらのし

た弁済は有効

であるとした。

む6

(3)

志田

・前掲書

(85注

10)

一入頁、青木徹

『商

行為論』

(明三九)七頁、飯島喬平

『商法商行為』

(出版年不

明)

一七頁。

(4)

伊澤孝平

『商行為法保険法海商法』

(昭三〇)二八一二九頁。

(5)

田中誠二

・前掲書

(85注

11)七三一七四頁

(更には、要するに

コ商取引

の敏活と安全Lを害しな

いためと、①

の変種的な説

明もしている)、根田正樹

『企業取引法』(平九)

一四九頁。

(6)

松波仁

一郎

『改正日本商行為法』(大二)二三

一頁、柳

川勝二

『商法論綱』

(明四五)三五

一頁、中村武

『商行為法概説』

(昭

一二年)五五頁、大濱信泉

『商行為法』(大

=二)八九頁以下、同

『商

行為法第

一分冊』(昭三)

}二八頁以下、大隅

・前掲書

(85注

8)三三頁。

(7)

大橋光雄

『商行為法講義』

(昭七)二八頁以下、大森忠雄

『新版商法総則

・商行為法』(昭五六)

一入四頁、坂

口光

『商行

為法』(平

】二)

」七六頁、服部

・星川編

『基本法

コンメ

ンター

ル商法総則

・商行為法

〔第三版〕』(平三)入七頁

〔山崎悠基〕。

(8)

小町谷

・前掲書

(85注11)五入貢、松木太郎

『註解商行為法』

(昭二五)三九頁も同旨。

(9)

小町谷

・前掲書

(85注11)五入貢。

(10)

服部育生

「非顕名

の代理と商法五〇四条」

(平二)三三五頁など。

(11)

・前掲論文

(85注9)九

一頁。

(12)

服部

・前

掲論文

("注6)三三五頁。

(31)

小島康裕

・前掲論文

(窪

9)賀

(14)

昭三

・四

一四

民集

六巻

〇七

(15)

・前

(凋注

6)

一二五

頁。

(16)

康裕

・前

(85注

9

)

一入

下。

(17)

・前

(40注

2)

六頁

・前

(η注

6

)

三三

理的

いと

いう。

ω

酋法五〇四条の適用範囲

商法五〇四条が適用される行為については、いろいろな観点

から判例上問題と

いる。

Page 62: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

[…凹

代表者の行為

代表者の行為

(代表行為)については、その性質を代理と同じものと考えるかは学説上争

いがあるが、代理についての規定は代表に

一般的に類推適用してよいと考えられており、商法五〇四条もその例

外ではない。大判大七

・五

・一五民録二四輯八五〇頁により、会社の取締役が会社のためにすることを示さずにな

(1

)

した商行為につき、商法二六六条

(現行五〇四条)が適用になることは当然であるという。事例

は、取締役が本人

のためにすることを示さずに、融資、その担保のための保証契約また抵当権設定契約をした事例であり、会社の

債権であることが認められている。五〇四条の代表行為についての適用については学説に異論はないといえよう。

絶対的商行為にすぎない場A・を除外

電気賛

の販売を営薯

(個人三

が、羊毛の加工、販売等に従事

つに

A

ら羊

し、

て利

を得

が、

X

は羊

の売

に携

って

いな

いた

め、

A

に他

への

義駐

売却の代羅

を芝

て、Yに羊毛を売却した.しかし、Yが代理の妻

を知

ってな

いし知呈

た証拠はない.絶

対的商行為ではあるが

(商法五〇一条

一号)、このような商行為に商法五〇四条が適用されるのかが問題とされた。

ナ捌

商法五〇四条の規定は、「企業主体の経営活動がその組織の下にある補助者の行為により大量且

つ継続的に展開

に理

される場合、之に含まれる個々の行為につき

一々その名を表示することが煩雑で取引の敏活を害する慮れあり、又

相手方も行為の毒

を認識す・に困難がな-その必要のないのを通常・す・等の事情を考慮して民法の規定

(同

法第

一〇〇条)を修正したものと解される」。従って、形式的に商行為というだけで商法五〇四条の規定の適用を

認めることはその趣旨に反する。本件では商法五〇四条の趣旨にかんがみその適用を受ける事例ではなく、Aの

(2)

った売

X

の効

を生

じな

い。

のよう

に判

X

Y

に対

る請

いる。

(3)

(4)

この点

ついて

は、

これ

に賛

成す

る学

絶対

いても

四条

の適

る学

61

る。

Page 63: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

2

「…凹

相手方にとってのみ商行為になるにすぎない場合

本人にとって商行為ではなく、相手方にとって商行

6

(5)

為にすぎない場合については、商法五〇四条は適用されないという判例がある。

注(1)

その後

の判例として、東京地判昭四三

=

下民集

一九巻

一一・一二号八二

}頁

(評釈として、伊藤宣博

・ジ

ュリ

ト四人八号

一二五頁、久留島隆

.法学研究四四巻

一号

一一六頁、戸塚登

・商事法務研究五八○号

一六頁、石井真司

『銀行取引

判例百選

〈新

版〉』五二頁)。

(2)

岐阜地判昭三七

・二

・六下民集

一三巻二号

一七〇頁。

(3)

田中

・前

(85注

11)

一頁

、同

ほか

・前

掲書

(85注

H)七

、田

中昭

「判

批」商

二七

頁、

「商

四条

の法意

『商

の争

(第

版)』

(昭

三)

二〇

ど。

一馨

,晶削掲訟.文(醐注9二

四耳

平出.並別掲書

(溺注9二

。貢

なζ

[…凹

商法五〇四条但書は過失があっても適用されるか

民法

一〇〇条では、相手方が代理の事実を知っている

場合や知りえた場合には、本人との間に契約の成立を認めているが、商法五〇四条では、相手方が代理を知

って

いた場合には本人との契約関係の成立のみだけが認められ、代理人

への履行請求という保護は否定されることに

なる。では、商法五〇四条但書では、代理の事実を知らなければよいのであろうか。

無過失必要説

民法の

一般規定でさえ相手方に過失があれば保護されないのであるから、まして企業活動

の簡易迅速性を旨とする商法において、民法以上に相手方を保護するものとは到底考えられな

いといわれており、

古-は少数説であ・た蝿

近時は通説・もいえる学説とな・てい苑

も・先

の最判昭四=一●四

西

(妙90)

が無過失必要説を採用しており、これが学説の通説化に与えた影響は大きい。なお、証明責任

については、学説

Page 64: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

が分かれている。

[…凹

@

無過失まで立証を必要とする学説

非開示代理行為を本人に帰貢するのが建前であれば、相手方がと

くに代理人への帰責を選択するには、相手方自身が代理意思

の不知及び不知についての無過失を立証すべきもの

(3∀

と考える学説がある。

「……」

善意の立証でよいという学説

学説には、相手方は善意のみを主張すればよく、代理人の側でその不

(4

)

知が過失に基づくことを証明すれば、代理人はその責任を免れることができるというがもある。民商法の差を否

てい

定する立場からは、昭和四三年最判は、代理人が無過失を証明して責任を免れるも

のとし、商法による立証責任

(5)

の転

を否

・商

の代

の距離

とん

くし

てし

った

で高

く評

いわ

る。

義駐

無過失不要説

民法とは異な・て、過失がある場合を排除していない、換言すれば代理人に対する請求

ができるためには無過失であることを要求していないことから、規定の通り過失の有無は問わないというのが古

一は通説であ

・蜷

近時はすでに述べた雪

に・無過失必要説が通説であるが・長谷部氏は・代理の常道

(意思表

に理

一般理論

の適用と

いう

ことか)

から

いえ

に戻

であ

に特

の犠

を強

いる

ではな

いた

(7)

め、

過失

があ

って

も、

った代

に責

任を

せる

のが

妥当

であ

ると

いる。

の問

は、

四条

民法

一〇

の関

いて

の理解

かか

であ

る。

いと

いう

では、

の内

調

ため

に無

要求

しな

辻褄

が合

(商取引のみ同じ制度

の下で過失

があ

ってもよ

いと

いう理由はな

い)。

って、

の内

が異

いう

どう

であ

る。

では、

があ

る場

は、

を解

て本

を契

とす

のに対

て、商

は、

の契

約関

の成

ヨ6

に加

て代

理人

にも

請求

でき

(または代理人との契

約の選択か)

いう

民法

の保

護を

であ

Page 65: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

め、

そ軽

いわ

はな

いと

いえよ

の特

から

を軽

こと

理化

 6

(8)

でき

とも

い。

注(1)

川勝

『商

(明

四〇

)

二頁

川勝

・昌

『改

為法

(昭

五)

二頁

(2)

大濱

『商

法第

一分

冊』

(昭

)

=

二〇

頁、

・前

(85注

8

)三

、西

・前

(87注

7)

一二三

、神

崎克

『商

1

(昭

八)

、大

忠雄

『新

版商

・商

為法

(昭

六)

一六五

平出

・前

掲書

(85注

9)

一〇

四頁

正樹

『商

行為

(平

九)

一五

頁、

・前

(85注

12)

一〇八

(3)

田中

・前

掲書

(85注

11)

『コンメ

ンター

ル』

○頁

ど。

(4)

・前

掲書

(注

2)

五三

(5

)

・前

(85注

9

)

二三

(6)

青木

・前響

(窪

3天

真・松本

・前書

五三頁・水星

・商行為法論』(大九二

〇入貢・大濱

・前書

(注2)空

買、石井照久

『商法

H』(昭三二)

=二頁、小町谷

・前掲書

(85注11)六〇頁、松木

・前掲書

(99注8)三九頁、田中誠二

・前

掲書

(85注11)『商行為』人入頁、椎津盛

『商行為法』(大

一四)五〇頁、など。判例としては、東京高判昭三九

・一〇

・二

三下民集

一五巻

一〇号二五〇七頁、判夕

一七〇号

二二入頁

(評釈に、菅原菊志

.法学三

一巻二号六七頁がある)。

(7)

長谷部茂吉

「判批」金法五二五号

一〇頁。

(8)

なお、悪意

とされるためには、本人が誰

かまで知

って

いる必要

はな

い。東京高判昭四七

・一一・二八判例時報六九三号九

は、本

人が目的物であ

る自動車ならびに必要書類をす

べて相手方

に引渡し、売主としての義務

の履行を終

って

いるのであ

るからと

いう条件

つきであ

るが、相手方

にと

って本人

が売買の相手方

であることが特に差支

のあるような特段

の理由

のな

限り、たとえ相手方にお

いて本人が何人

であるかを知らずまたこれを知らな

いことに

ついて過失がなか

ったとしても、被控

訴人が、訴外人

が自分自身

のためでなく第三者

のために本件売買契約をするも

のであることを知

っているときは商法五〇四

の但書を適用す

べき場Aロに該当

しな

いとして

いる。

[凹

ω

商法五〇四条但書の理解をめぐって

商法五〇四条但書

の理解をめぐ

っては、旧商法原案の起草者

ロエス

Page 66: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

レルにより、

フランス民法に従う旧民法との関係を考慮することなく、英米法の不開示の代理法理をそりまま導

入するのではなく、かなりデフォルメした形で旧商法原案が起草されたことは既にみた。ところが、その後、非

顕名主義自体が疑問視され民法と異なる内容ではないとしたり、代理人

への履行の請求を許す

だけでは十分では

なく、代理人との契約関係を認めて本人

へは履行請求を認めるだけとか、本人と代理人とのいずれの契約関係を

選択できるという立場など、起草者の意図また条文の文言と大きく異なる学説まで登場し、百花綴乱の状況を呈

していゑ

そもそも民事代理・商事代理・を顕名問題について区割す…

が綾

法的に異例であ・のみならず、

てい

商事代理につき導入された非顕名主義も英米法の不開示の代理法理をそのままの姿で導入したものではなく、特

つに

殊日本的な非顕名主義

の立法にな

っていることは何度も述べたところである。

義駐

事例の分類

先ず

誰から商法五・四条の本文が主張され、誰から但書が主張され

るのか、妻

を整

聾しておこう。次の三

つに整理がされている。

ナ捌

「凹

本人権利主張型

先ず、本人が相手方に本人

・相手方間に契約が成立することを前提

として、履行請求

に理

がされることが考えられる。商法五〇四条本文のみが適用される場合であればこれは当然認められることになる。

って、問題は商法五〇四条但書が適用される場合である。商法五〇四条但書が適用される場合に、相手方に対

して債権者

の地位に立つのは誰かという問題として議論されることになる。

①商法五〇四条但書に基づいて相手方が代理人に対して履行請求をなしうるのみであれば、相手方に対して債

権者になるのは本文の適用により本人のみということになる。これに反し、②民法と同じであ

れば代理人との契

約関係のみになり債権者も当然代理人となり、また、③判例のように本人か代理人かいずれの契約関係によるか

5にり

選択を認めれば、相手方が代理人を選んだならば本人には債権は認められな

いことになる。

Page 67: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

6

[凹

相手方による本人

への法律関係主張型

次に、相手方が本人に対して履行請求など権利主張をすること

6

が許されるかについては、商法五〇四条本文の適用のみによる場合にはできることになり、ここでも商法五〇四条

但書の場合が問題になる。①不真正連帯債務という考えでは、本人に履行請求できるのは当然

であるが、②民法と

同じ内容だという考えでは、善意無過失の相手方とは代理人のみが契約関係を認められることになるので、代理

の事実を知ったとしても当然には本人に履行請求できないことになる。③本人と代理人との契約関係を相手方が

(1)

選択できるという立場では、本人との契約関係を選択しない限り、相手方は本人に履行請求できないことになる。

「國

相手方による代理人

への法律関係主張型

最後に、相手方から代理人に対して履行請求や債務の弁済な

どのことがなしうるかについて、更に分けてみていこう。

代理人への履行請求

商法五〇四条本文しか適用にならない場合には、本人

への履行請求ができるだ

けであり、代理人への履行請求はできな

いことになる。但書が適用になる場合には、①不真正連帯債務説では代

理人

への履行請求は当然でき、②民法と同じであるという立場では代理人にのみ履行請求ができ、③契約の選択

を認める立場では、相手方が代理人を選んだ場合にのみ代理人に履行請求ができるにすぎな

いことになる。

代理人を債権者とする法的主張

代理人との関係における相殺など、相手方が代理人を債権者とする

法的主張ができるかについても、商法五〇四条本文のみが適用される場合には認められず、但書が適用される場

合が問題になる。①不真正連帯債務説では債権者はあくまでも本人とな

ってしまい、起草者の立場に立つことの

不十分性がこの点で指摘されたことは後に述べる通りである。②民法と同じ内容であるという立場では、代理人

との間にのみ契約関係が認められるので、債務のみならず債権も代理人に認められることにな

る。また、③契約関

係の選択を認める学説では、相手方が代理人を選択すれば債務のみならず債権も代理人に認められることになる。

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これまでの判例研究によれば、

田田のような法的主張が認められた判例は多くなく、判例を見る限り、商法五

〇四条本文に規定する商事代理の非顕名王義の原則の存在土暑

は意外に大書

ないと評されたこともある塑

日、その評者は、商法五〇四条本文を理由に相手方

・本人間に法律関係を認めた判例が相当数あり、商事代理の

(3)

非顕名主義の原則の存在意義は小さくないと変更している。

注(1)

特殊な事例

として、

ABが共同経営するキャバレー

のための酒類の注文

につき、

Aがクラブでの使用

のために注文した事

π

で、Aに

ついては当事者

としてなしたも

のであり、他方

で、Bに

ついては顕名せざる代理人とし

て行

ったも

のとして、高

しつ

法五〇四条本文により同五

一一条

に基づ

いて、ABは連帯し

て代金の支払

いを義

務づけられるという判決があ

(東京地判

り 靭

昭四六

.入

.一入判時

六五四号六四頁

.評釈として、柴

田博

.ジ

ュリ

スト五九七号

一四八頁がある)。

(2)

沢野直紀

コ商事代

理の非顕名主義L西南学院大学法学論集

一七巻

・三

・四号

(昭六〇)入九頁。

名顕

(3)

沢野直紀

「商事代

理の非顕名主義」竹内編

『特別講義商法H』

(平七)七三頁。

脆爾

ω

・判例

の状

を負響

蝶蝶

嚢な解釈適継継蕪

輔繰

建蕪

が共に債務を負担し、相手方はいずれから履行を受けてもよいという考えがある。この立場も、契約関係を誰と

の間で認めるかで、次の二つに分けられる。

[凹

本人との間に契約関係の成立を認める学説

相手方が代理人代理意思を知らなかった場合にも、本人

7

相手方の間に契約関係を成立させ、その場合に相手方が不測の損害を被ることを防ぐため、相手方は代理人に対

6

(2)

しても履行請求をなしうるという立場が、古くは通説であった。

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8

@

への批

かし

の立場

は起

の意

にA口致

た、

れ故

に文

にも

A口致

、相

6

手方保護というその目的からみて、代理人に債務だけを認めるのでは十分なものとはいえないと批判がされてい

る。すなわち、通常は、履行請求が問題になるのであろうが、相手方が代理人を債権者と考えて相殺を期待して

いることは考えられるし、また、代理の事実を知らずに代理人から自分の債務についての免除等の合意を受けた

場合に、たとえそれが本人

・代理人間の善管注意義務に反するものであ

ったとしても、相手方を保護する必要が

(3

V

.

のた

め、

の問

の解

のた

ださ

のが、

の②

の学

であ

る。

この批判について

このような批判はこの説

への誤解によるものだと反論されている。即ち、本説は

・相手方に不測の損害を与えない限りにおいて・本人が当該契約に介入することを詞曲めているも

のであり看

相殺

のケースの如く、本人が当該契約に介入すれば、明らかに相手方に不測の損害を与えてしまう場合にまで本人の

(4V

契約

への関与を認めるものではないからであるLと。

「…凹

不真正連帯債務説共通の批判

法律効果が代理人と本人とに並存して及ぶとするのは理論的とはいえ

法一

いと

いる

(契約関係が認め、れる本人、の関係は代理の効果

代理人の霧

は代理の効果

ではな、法定

の霧

だとすれば説明はつこう)。商法五〇四条本文のおかげで、相手方は後日本人を発見し本人との契約関係を欲する限

り、本人は自ら意欲していた法律関係を拒むことはできず、本人

・相手方に契約関係が成立し、代理人に対する

法律効果は及ばな

い、但書に基づいて本人に対する権利を放棄して代理人との契約関係を選択する場合には、代

理人との契約関係のみが認められ、「つまり、相手方に対して責任を負わなければならな

い債務者は本人か代理人

かのどちらか

一方であり、本人に対する効果と代理人に対する効果が共に発生することはなく、相手方が本人に

対する効果を放棄してはじめて、代理人に対する効果が現れてくると考えられるので、これら

が不真正連帯債務

Page 70: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

(5V

の関係に立つとは考えられないものであるLという。

[…凹

代理人との間に契約関係の成立を認める学説

神崎説

神埼教授は、上に述べたような疑問から、代理について善意無過失の相手方保護としては、

民法のように代理人との間に契約関係の成立を認め、相手方は履行請求としては代理人と本人とにいずれにも請

(6)

求できると考える。神崎教授によると、代理人が代理意思を示さず、相手方が代理意思を知り得なかった場合に

は・商事代理についても民塗

。。条の原則どおり・代理人が契約当事者となるが・商法五・四条但書は相手方

てい

が本人の責任追及をできることを前提にしており、本人と代理人とを不真正連帯債務者としての地位を認めよう

つ隷

としている。民法

一〇〇条では、間接代理と同様の法律関係となり本人には債権者代位権しか認められないこと

になるが・これにより本人に対す・直接の請求権を認めた・・にな冤

顕る

田中誠二博士も、これによると、わが国の非開示代理は英米法のそれとは異なることにな

ってしまうが、その

けお

方が善意

・無過失の相手方に対しても本人と代理人との債権者地位が競合的に存在するとみる英米法よりは優れ

に網

てい瞬と難

.蘇ゼ

商法五。四条但書の文理にそぐわな一

を本人と信じた相手 

(9)

本人と代理人の両者に対する権利を認める必要はないと批判がされている。これでは本人との間に代理効を認め

ないのであるから、非顕名主義ではなくなってしまうが、英米法に近づけた解釈であるという

ことはできる。ま

た、意思表示の一般理論通り代理人との契約関係を認めて、そのような代理人を用いた本人に使用者責任を彷彿

(10)

させるような責任を認めるようなものになる。

69

また、わが国には代理制度と共に間接代理という制度が認められているのに、神崎説では、両者を広く実質上

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0

一に取

り扱

おう

とす

のであ

のよう

一般

の妥当

はな

の余

があ

とも

7

(11)

には

れら

ので

はな

かろ

と評

され

る。

注(1)

この説が起草者意思

に最も近

いと、森本

・前掲論文

(40注

2).二九

四頁は評価す

る。

(2)

岡野敬次郎

『商行為及保険法』

(昭三)九頁以下、志

・前掲書

(85注10)

一入頁、飯島

・前掲書

(99注

3)

一八頁、青木

前掲書

(99注

3)七頁、大濱

・前掲書

(溜注2)九

一頁、松波

・前掲書

(99注6)二三二頁、中村

・前掲書

(99注6)五六頁、

小町谷

・前掲書

(85注11)六〇頁以下、大隅

・前掲書

(85注

8)〕二三頁以下、戸田修二

『商行為法』

(昭三七)三六頁、本間

輝雄

「商法五〇四条と顕名主義」金法五三三号

八頁、廣

田民生

「商行為

の代理と委

任」

『現代裁判法大系⑯商法総則

・商行

為』(平

一一)

一五

一頁、鴻常夫

「判批」『商法

(総則

・商行為)判例百選

〔第三版〕』(平六)八三頁)。長谷部茂吉

「判批」金

法五二五号

一一頁も同様か。

(3)

平出

。前垂

9)

δ

六頁・

この問題を初めて提起した

のが神崎論文である・

(4)

小林

・前掲論文

(27注1)九七頁。

(5)

小林

・前掲論文

(27注1)九八頁。

(6)

神崎克郎

「商事代理におけ

る非顕名、王義」神戸法学雑誌

】五巻二号

(昭四〇)二九四頁以下。小町谷

・前掲書

(85注11)六

〇一六

一頁、菅原菊志

「判批」法学三

一巻二号

二四二頁も同旨か。但

し、神崎

・前掲書

(27注1)五三頁では、相手方

が本

と代理人と

の法律関係の選択ができるとし、但し、相手方

が本人の存在を知らず

に代理人との法律関係を主張した場合には、

その後

に本人との法律関係を知

ったとしても、もはや本

人との法律関係

の選択を主張する

ことができな

いと

いう。そ

の理由

とし

て、「相手方

に本人との法律関係

を選択することを認める実質的な利益

が存在しな

いからである」と

いう。

(7)

森本教授

は、神崎説

によれば、「商法五〇四条

は、その但書が民法

一〇〇条本文の特則となるのであ

って、商法五〇四条本

文は無意義な規定と

いう

のであろう」と評し

ている

(森本

・前掲論文

(40注

2)二九〇頁)。また、少なくとも文理解釈上相

当の無理があ

(前掲論文二八○頁)、わが国

では代理制度

の他

に間接代理が認められ

ているので、両者を実質的上同

一に取

り扱う

ことになつ、

このような

一般

理論

の妥当性

についてはなお検討の余地があるとも

いう

(前掲論文二九〇頁)。

(8)

田中誠二ほか

・前掲書

(85注H)

『コンメンター

ル』

七九

一入○頁。

Page 72: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

(9)

・前

(85注

9)

一〇

七頁

近藤

・前

(85注

9)

一五

二頁

(10)

メリ

カ代

は本

の使

用者

いれ

て議

いる

(樋

・前

(27注

1)

〇頁

)。

(11)

・前

(40注

2)

二九

一、頁

ω

第二説

(民商法区別否定説)

非顕名主義について立法論として疑問視するのみな

らず、解釈論とし

(1)

ても商法五〇四条は民法

一〇〇条但書と同趣旨のものにすぎず、実質的に差はないという立場も主張されている。

(2)

ただ証明責任に差があるにすぎないものと考えられる。これによれば、先ず商法五〇四条但書

につき、無過失ま

てい

で要求した上で、代理人が豊呈思無過失の場合には代理人との間に契約関係が成立し、善意無過失という要件を満

つ隷

た,ない場合には、代理人との間の契約関係が成立茎

本文によ,本人と隅

で契約関係が成立する..,にな

と考

る.

明ら

に起

草者

の意

文言

に反

にも

かわ

よ、・な

で登

ると

ころ

に・

王義

の疑

の根

の深

を感

る・

ナ捌

士も

、商

〇四条

本文

は顕名

った

とし

ても、

って

いる

だけ

であ

り、積

に顕

を不

に摺

餌欝

避馨

解釈訟、の対山ユであ犠

水掛論におわ、ざ、をえず

この説に対しては、相手方は代理人との間の法律関係しか認められないとすると、代理人が破産などにより履

(5)

行ができなくな

った際に不測の損害を被ってしまうと批判される。しかし、それは間接代理に

つき適切な法的処

理方法を有せず不開示の代理法理により解決しようとしたイギリス法を前提とした批判であり、間接代理につき

当事者の利益を保護する制度を有している法制度の下ではあたらない批判である。

71

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 7

(1)

西

・前

(87注

7)

】二

頁以

、於

・前

「判

批」

(87注

1)

一〇

三頁

『財

理権

』五

注④

、竹

・前

掲書

(87注

6)

】二頁

、服

・星

川編

『基本

ンメ

ンタ

ル商

総則

・商

〔第

版〕』

(平

)人

〔山

崎悠

〕、森

川隆

「商

法五

四条

小論

『近

代企

の形成

と展

(平

=

)

八頁

一〇

頁。

(2)

西

・前

(87注

7)

によ

ば、①

は、代

が本

への代

を主

張す

るた

は、相

の悪

は過

しな

らな

いが

、②

は、

の効果

る相

のほう

で、

めに

とを

て知

った

こと

を証

明し

ばな

いこ

にな

る。

(3)

文言

調

しな

こと

は、

の論

者自

が承

いる

(竹

・前

掲書

(87注

6)

一二頁

)。

(4)

・前

「判

(87注

1)

一〇

三頁

(5)

・前

論文

(27注

1)

頁。

第三説

(契約関係選択説)

本人との間と代理人との関係にも契約関係が成立し・相手方はいずれか

(1

)

て請

のであ

}方

選択

ば他

の契

滅す

いう

る。

判例

四三

・四

・二

(壮

90)、商

但書

は、

「相手

のた

、相

と代

の間

にも

法}

の法律関係が生ずるものとし、相手方は、その湊

に従

い、本人との葎

関係を否定し、代理人との法律関

係を主張することを許容したものと解するのが相当であり、相手方が代理人との法律関係を主

張したときは、本

人は、もはや相手方に対し、右本人相手方間の法律関係の存在を主張することはできないものと解すべきである」

とこの立場を採用している。しかし、田中誠二博士は、判旨の説明の統

一的な理解はできず、「-いわば漫然と代理

の民法規定に商法規定を関係づけた讐

がある」と批判をしてい殖

平出教授は、相手方が代理人を選択すると、代理人の行為が本人に対して効力を生じなかったことになる点で、

規定の文理にそぐわないが、「解釈論の範囲で不当な結果を生ずることが最も少ない」として、これに賛成してい

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嗣…]

いかなる行為があ

った場合に選択を認めるか

相手方にいかなる行為があ

った場合に選択があ

ったもの

と認めるかにつき、次のように学説を分けることができよう。

瞬…]

裁判上の請求を要しないものとする学説

学説

・判例は特にこの選択の意思表示を、裁判上の請求で

しなければならな

いとはいっていないため、裁判外の選択の意思表示

(黙示でもよ

いことになろう)も有効とい

(4)

こと

る。

これ

が判

の立場

と考

いる

が、

し、

の立

将来

少数

へと

いく

では

(5)

つい

かと

され

いる

裁判上の請求を要するものとする学説

次の、第四説の立場であるが参考までに紹介してぞ

と、小

林氏は、相手方は知らなか

・たのであれば、いずれの法律関係を欲するか確定してからその効果を及ぼす・とが

(6)

でき、これは自らの権利を行使して訴える場合にのみ適用されるという。

け訪

鰯…]

本人の出現の前後で分ける考え

相手方の選択が問題になるのは、代理の意図でされた行為でありまた

蛤2.、になる交

その時占…で相手方の選択を待たずに法律関係が部分的に確{疋する

[圏

森本説

森本教授は、神崎教授の提案を受け入れ代理人を債務者として扱うだけでは足りないが、し

(7)

、代

理関

にな

った

以後

つい

ては本

の利

も保

護す

べき

であ

て、

のよう

に述

る。

法五

但書

は、

の場合

にお

いて相

が不

の損

っては

らな

いと

いう

立法

の基

益衡

事例

いて具

に表

たも

のにす

に履

課す

によ

って

除去

3 

ヘヘ

ヘへ

 

ヘヘ

ヘヘ

ヘへ

い不

の損

場合

は、

但書

を広

く類

て妥

を探

べき

であ

る。

「す

の間

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4

て、

に対

て弁

は弁

の提供

をす

ると

は本

に対

ても

。代

理関

7

の存

い間

に相

が代

た代

、支

払猶

の合意

同様

であ

の抗

(8V

、、

、、

ついても

こと

が妥

当す

る」。

但書

いて相

の無

過失

は必

でな

い。

立証

いて

は、取

に当

関係

の存

った

こと

つき相

手方

に立

あり

日相

が代

理関

った

こと

(9)

いて

は本

に立

があ

る。

沢野説

沢野教授は、相手方の債権者的地位と債務者的地位とに分けて考察する。①相手方砂債権者

位については・相手方はいずれかを選択して請求し るものであり・弁済その他によ

って・どちらかの法律

関係が消滅するまで継続するが・②椙手函

者鑑

位については・本人が出現し相手方に代理関係を証明し

て相手方に請求してきた以上は、いったん発生した代理人の権利は消滅し、本人の権利のみが残り、相手方は本

(10)

人にのみ弁済しなければならなくなるという。非顕名であれ、代理人が代理意思をも

って行為

した以上、代理行

為としての効力を認めることが望ましいが、相手方の不測の損害を避けるために、相手方が代

理を知るまでの間

の相手方の代理人に対してなした弁済等、相殺も有効であるとして、代理人の債権者的地位を認める立場もこれ

(11

)

に近

いものといえようか。

[凹

本人

・代理人の催告権

本人

・代理人の不安定な地位を解放するために、本人

・代理

人に相手方に対す

る催告権を認める必要性があるが、

いかなる規定を根拠にし、いかなる効果を認めるかで次の二つの学説に分か

れている。

@

民法五四七条類推適用説

平出教授は、民法五四七条を類推適用して、本人または代理人に選択権を

認め、催告後相当期間内に選択権を行使しなければ、相手方は催告をレだ昔ど砂法律関係を選択でぎを…とい聡惚

Page 76: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

民法

=

四条類推適用説

神崎教授は、民法

=

四条を参照とし、確答がない場合

には代理んど外法

(13

)

律関係が選択されたものとして扱うという。

この説

への批判

小島孝教授は、理論的には、本人と相手方また相手方と代理人との間

で一、一重に契紺が応

(

14

)

立す

こと

の説

は困

であ

、意

どう

服す

かと

いう

いる

る。

英米法的な訴訟上の法律関係と実体法的法律関係をきれいに分離してしまわない法体系では可能だが、わが国の

民商

のよう

に訴

訟法

と切

てし

って

いる実

では、

は難

いか

れま

い。

淫飢

(・)

大隅

.前里

目(誓

8)三三頁以下、神崎克郎

.商行為法

-・(昭四八)五二頁以下、平出

.前里

目(誓

・二

・四頁以

下、

一〇八頁、伊澤孝平

『商行為法保

険法海商法』二九頁、本間輝雄

「商行為の代理」河本

一郎編

『商法H総則

・商行為

・手

形小切手』

(昭五二二

・三頁、根甲

前掲書

(響

・二

五・真

しかし、江頭

・前響

(窪

m)二四三頁

はそ

の結論

当否は疑問と

いう。

田中耕太郎講述

『商行為法講義要綱昭和入年度』二〇~二

一頁は第三説ともとれる説明をし

ていた。

よノ

 

(2)

田中

・前掲

(85注

11)

『コ

ンメ

ンタ

ル』

頁。

(3)

平出

・前響

(窪

9=

・八耳

(4)

判例

とし

ては、最判昭四三

(妙

90)以後

いく

つか注目される判決が現れて

いる。東京高判昭

六三

・三

・九判時

一二八二号

一五〇頁

(評釈として江頭憲治郎

・ジ

ュリ

スト九九四号

一〇二頁、山

口忍

・判夕七〇六号

一九四頁、福瀧博之

・商事法務

二六三号九

一頁)

は、代理人に対し

て、相手方

が別件訴訟を提起

して勝訴判決を受けたとし

ても、契約上

の法律関係

ではな

く不法行為上の法律関係

であるとし

て、相手方による代理人との法律関係

の選択があ

ったも

のと

いう主張が否定されている。

また、大阪高

判昭六〇

・=

・一四判夕五八三号九

一頁

(評釈として、久留島隆

・金判七四八号四三頁)は、「商法五〇四条

但書

に基づく相手方

の選択権は、

一方との法律関係の選択

により他方と

の法律関係を消滅させるも

のであるから、相手方か

一方に対しその法律関係を否定す

る旨

の意思表示によ

って行なう

べき

であり、

かつ、それで足りるも

のと

いうべきである

75

が、本

人の出現前

には選択権を行使す

べき前提を欠くから、相手方

が本人

の出現前

に代理人から全部又は

一部

の履行を受け

一事をも

つて、右選択権が行使されたとして本人との法律関係

を否定したも

のと認めることはできないし、また、相手方

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において本人の出現

によ

って不測

の損害を被るおそれ

がな

い場合

は右選択権を行使する利益を有しな

いのであるから、相手

 7

が本人及び代理人

の双方

から債務の履行を求められ

た際に、

いずれ

の請求

にも応ぜず

、債権者不確知を理由に供託した

事をも

つて、本人と

の法律関係を否定したものと認める

ことはできな

いも

のと

いう

べき

であるLと

いう。

(5)

森本

・前掲論文

(40注2)二九九頁。判例

としては、代理人.に対して別件訴訟を提起し勝訴判決を受けたが、契約上の法律

関係

ではなく、不法行為上の法律関係であ

るとし

て、相

手方

により代

理人と

の法律

関係

の選択があ

ったも

のとは認めな

た判決として、前掲東京高判昭六三

・三

・九

一五〇頁がある。

(6)

小林

・前掲論文

(27注1)

一〇三頁以下。相手方が訴訟にお

いて本人との法律関係を否定し、代理人を相手方契

約当事者

とし

て主張したことにより、商法五〇四条所定

の選択権

の行使

があ

ったものと認定した判決

とし

て、宮崎

地判昭五七

・六

三〇判夕四七八号

一三八頁

がある。

(7)

の前提

について、顕名主義に

ついての、取引

の安全保護

.法律関係

の明確性

の維持

いう政策的目的を達成するための、

一つの技術的要請として理解し、例外的

に代理人

の内心的効果意思を基準として代理効を認

める

ことが可能

になるという理

がある

(森本

・前掲論文

(40注2)二九七頁以下)。

(8)

森本

・前掲論文

(40注2)二九五頁。江頭

・前掲書

(87注10)二四三頁は、森本論文を引用しながら、「相手方が代

理人と

の法律関係を主張した場合

にも、本人㊨相手方に対す

る請求権

は消滅せず、

ただ相手方は本人

の請求に対し代理人に対し

対抗

できたはず

の抗弁を提出できると考えるべき

であろう」

という。

同璽

代理の非顕義

竹内一

嚢鉾

杢頁以下も華

(11)

・前

(η注

6)

七頁

(12)

・前

掲書

(85注

9)

一〇

八頁

。小

「商

の代理

」小

・山

口編

『判例

講座

H』

(昭

)

一〇頁

、根

(10注

2)

一五〇

同旨

(13)

克郎

『商

・商

法通

(新

版)』

(平

一)

 六

頁。.

(14)

・前

(85注

9)

一五頁

ω

第四説

(不開示代理法理説)

イギリス法における不開示の代理法理を研究し、そ

の成果により商法

Page 78: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

(1

)

五〇四条の解釈論を行おうという見解として、小林氏の見解がある。①先ず、商法五〇四条本文により、イギリ

ス法とは異なり、第

一次的に本人と相手方との間に法律関係が認められる。例外的に、本人が自らの権利を主張

して相手方を訴えることが適切ではない場合があり、相手方が代理の事実を知らずまた知りえなか

ったために、

相手方に不測の損害を与えてしまう場合である。②その場合には、商法五〇四条但書により、本人と代理人のい

ずれの法律関係を欲するか確定してからその効果を及ぼすことができる。これは、第三説のように本人と代理人

(

2

)

との両者との間に法律関係が並存し、選択をするのとは異なる。そして、選択が行われたというためには、本人

てい

あるいは代理人に対していずれか

一方に対して自らの権利を放棄したことを明らかにする必要

があゆ、相手方が

つ隷

自らの権利を主張して訴える場合にのみ適用される。

そして、本人及び代理人が相手方に催告をした場A口に、相

手方が相当期間内に馨

し三

と・霧

い慕

法欝

係が盛手

顧る

注目

され

る主

であ

が、

これ

つい

て論

され

いな

い。

けおこ

………縄

鰍驚輸類矧…眠

6

本稿

のまとめと横断的解釈論

77

口回

ω

民商法区別の適否

.

比較法的に見て、代理行為

の顕名について商行為か否かにより区別をする立法はな

Page 79: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

8

た、商

立法

説得

いえず

(妙

理)、

の内

米法

のも

ので

はな

7

(1)

とは

いが

いこと

はす

たよう

であ

(↓

認以下)。

のた

め、

で区

せず

規定

た上

で、事

に差

があ

ば、

に応

理的

いく

いう

程度

の運

める

と思

る。

注(1)

小島康裕

・前掲論文

(85注9)

二三頁も、民法財産法は企業法なのであ

るから、

民事代理と商事代理とを区別す

る理由は

いという。

[凹

ω

発点

顕名主

・非

顕名主

いず

とす

べき

は、制

、出

顕名主

ベー

にす

べき

か、

それ

とも

顕名

ベー

スに

べき

であ

た、

は、

こま

で実

現す

でき

であ

 に

立法論-

顕名・王差脚ベース

(大陸法主箏我)

代理人との契約関係の成立

顕名をしな

い以上代理人が契約当事者となるのは、意思表示解釈理論の帰

結であり、それは法定

の特別の効果ではない

(1の意思表示理論の原則①)。そして、無効とされることの排除につ

いては、心裡留保のみならず錯誤においても、相手方の認識可能性を要求することで十分対応可能であり、民法

一〇〇条本文の意思擬制を用意するまでもない。要するに、-の意思表示理論の原則②は、特別規定を置くまで

もなく、その適用を排除できるのである。

なお、本稿の問題は、代理人が顕名をしなかったが、積極的に自分を契約当事者とする表示もしていない場合

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の処理であり、代理人が積極的に自分の名で自分を当事者とする契約をしたという場A口は対象

とはされない。そ

のような場合には、売買契約であれば問屋

(間接代理)の法律関係が成立するだけであり、もしその場合にまで

商法五〇四条を適用したのでは、間接代理制度を代理とは別に用意していることが意味をなさなくなる。

例外的に顕名なき代理効を認めることができる

顕名がなくても、相手方が代理であ

ることを知

ってい

れば、主観的な意思の合致があるので、本人を契約当事者とすることができる。また、相手方が代理の事実を知ら

ない・とについて過失がある場合には、代理人を契約に拘束させて相手方を保護する必要はな

い.レかし、代理

てい

人との契約を無効にして終わりにするよりは、その場合に本人につき契約の成立を認めても不当ではないために、

つ隷

補充的に顕名がな一ても本人との間に契約が成立する・とを認めてもよい

(その意味で顕名嚢

の例外を訓酌め・).相

手方に過失があ

・ても相手方と代理人との契約の成立を認め、代理人に本人に対する契約上の地位の引受請求を

認めるという解決も考えられるが

(過失ある相手方は異議を述べられない)、迂遠である。

ナ捌

「凹

相手方が豊呈思無過失の場合に、相手方に代理の事実を知った後に、本人との契約関係を選択することを認

馳解

ホ鷲

棚捌舘鄭

鶴澗蝦離職前議

縮縫

蒜耀翻控

合意により本人との契約に変更されると思われるからである。また、たとえ本人がこのような合意に応じないと

しても、間接代理の法理で相手方は保護されるので

(別稿で論じる)、やはり敢えて意思表示理論に例外を認める

必要はないという

ことを貫徹してよいであろう。

「凹

立法論の結論について

間接代理と直接代理、ないし、問屋と代理とを区別することは、意思表示理論の

9 

帰結

であ

(利益と

いう観点からは、委任者と相手方との間に給付が確実に交換されることを保障す

る必要があるのは変わらな

Page 81: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

80

いとしても)、これを区別しないことに由来する不開示の代理法理を敢えて採用する必要性は乏し

い。但し、民法

の顕名主義の例外として、相手方に本人との契約関係を認めることも可能であるが、相手方が重過失でなければ、

本人との契約につき錯誤無効を主張する余地を残しておく必要がある。それ以外については、相手方の考えてい

た通り、代理人との契約関係の成立を認め、本人

への権利については間接代理の法理で相手方を救済すればよい。

[凹

ω

解釈論について

問題は解釈論である。民法

一〇〇条を商事代理に適用しても、特

に不都合があると

は思われない。通常は黙示的に顕名が見られ、民法九九条の原則どおりでも不都合はなく、たとえ顕名があ

ったと

思われない事例でも・相手方が代理を知りまたは過失により智

ない場合として、民望

Q・条但書により処理

こと

でき

(顕名をしたこと、相手方

が代理行為である

ことを知りま

たは知りえた

ことの証明責任

は、相手方

・代理人

間では代理人が負担する)。

接代

いて

の法

によ

り相

の給

の交

保障

され

いる

であ

の場

に本

の契

で認

る必

はな

い。

って、

のは、

が本

の名

に契

つ、相

が代

の代理

を知

ったと

ったき

て例

場合

に限

る。

おけ

る異

った

規律

の不

に言

一的規

の必

り、

によ

切な

であ

から

民法

の規

一本

こと

い。

の方

は、

姑息

な解

であ

が、商

五〇

の適

を、

のみ着

し、

の個性

に着

いな

い売

いし

に準

取引にのみ限定し陛制限解釈し

(我書

士が疑

論として顕冬王義の例外を認めようとしていた事例妙贋ど

それ以外は

(2V

っても

一〇〇

によ

いう

こう

の結

果、

の適

は殆

ど考

いこ

にな

。本

稿

は商

四条

いて

の私

を述

こな

った

のは、

のよう

理由

によ

であ

り、

も論

がな

るか

であ

る。

険負

の債

権者

(五三四条

一項)

のよ

に、立

Page 82: 代理における顕名主義について-民法一〇〇条と商法 URL DOI...【説論】 法律論第叢七五巻第二・三号(二〇〇二・一二) 代理における顕名主義について

として適切ではな

い規定につき、制限解釈という手法により実質的にその規定を形骸化させる

ことは許されない

ものではあるまい。

注(1)

例外的に商法五〇四条が適用される事例は、このよう

に本人側

の個性が相手方

により重視されて

いない場A口であるから、但

が適用される余地

がなくなる。そ

の結果、商法五〇四条但書

は完全に死文化する

ことになり、また、商法五〇四条但書を

めぐる議論をする必要はなくなる

(民法

一〇〇条但書の議論だけ

ですむ)。同条本文が適用される極

めて異例

な事例では、相

手方

の代理人との契約

の成

への信頼を問題にす

る必要はなく、相手方

・本人間に契約

の成

立が認められるだけになる。

(2)

小島籍

・前掲論

(窪

9と

一三頁は・・輩

名代理が許されるのは・継続的取引関係にあるのが通常

の商行為にあ

・て

こつ

は、顕名

の場合と同様に評価され得るところにそ

のA口理性を求

める立場から

は、形式的

に商行為とな

るからと

いって、商法

五〇四条本文を適用す

ることは許

されな

いLと

いう。服部

・前掲論文

("注6)三三六頁は、商法五〇四条

の適用を、「代理

人が代理関係裏

示し

つ竃

本人の名前を秘し・相手方・取引をす

・場A・に限・解釈も不可能

で・あるま

い」三

纐鮒

〔付

記〕本稿は、法律行為研究会における顕名主義について切報告に基づいたものである。席

上ご意見を頂いた

こ馴

先生方に感謝をしたい。また、民法

一〇〇条による処理で不都合ではないことの論証として、間接代理と同じ法律関

係にな

・ても不響

でない・・を説明す・必要があ・が、それは別稿に馨

81